JP2014101299A - ジアリルレゾルシンの製造方法 - Google Patents

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Noriyuki Mitani
紀幸 三谷
Kiyoshi Omori
潔 大森
Yasunori Fukuda
康法 福田
Yoshikazu Nakagawa
賢和 中河
Yoshiki Ogami
誉志貴 大上
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Abstract

【課題】本発明は、より簡便に、より高収率で、より安定的に、すなわちより工業的に、ジアリルレゾルシンを得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】レゾルシンと塩化アリルとを反応させてレゾルシンをジアリルエーテル化する第1工程と、第1工程で得られたレゾルシンのジアリルエーテル化物をクライゼン転移反応させる第2工程とを含むジアリルレゾルシンの製造方法において、前記第1工程のレゾルシンと塩化アリルの反応の少なくとも一部を、含窒素非プロトン性極性溶媒中に未溶解の水酸化ナトリウムが存在している状態で行うことを特徴とするジアリルレゾルシンの製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、レゾルシンと塩化アリルとを反応させてレゾルシンをジアリルエーテル化する第1工程と、次いで第1工程で得られたレゾルシンのジアリルエーテル化物をクライゼン転移反応させる第2工程とを含んでなるジアリルレゾルシンの製造方法に関する。
例えばジアリルレゾルシンなどのアリル置換フェノール類は、ファインケミカルズの中間原料、ポリマー製造用原料やポリマー改質剤、エポキシ樹脂の原料、エポキシ樹脂の硬化剤として有用である。
フェノール類をハロゲン化アリルによってアリルエーテル化し、次いでアリルエーテル化したフェノール類をクライゼン転移反応させて、アリル置換フェノール類を得ることは既に知られている。
特許文献1には、フェノール類とハロゲン化アリルとを水溶媒の存在下に反応してアリルエーテル化し、次いでアリルエーテル化生成物をクライゼン転移反応させる、アリル基置換フェノール類の製造方法が開示されている。
特許文献2には、フェノール類のβ,γ−不飽和アルケニルエーテルをクライゼン転移反応させてβ,γ−不飽和アルケニル基置換フェノール類を得る反応において、予め該エーテルに対して5重量%以上のβ,γ−不飽和アルケニル基置換フェノール類を共存させて行うことを特徴とするβ,γ−不飽和アルケニル基置換フェノール類の製造方法が記載されている。
しかしながら、これらの文献は、具体的にはビスフェノールAやポリフェノールなどの特定のフェノール類を用いた場合について開示しているだけであった。
特許文献3には、本願発明者らによる、フェノール系オリゴマーの原料として使用するジアリルレゾルシンについての記載がある。しかしながら、ジアリルレゾルシンの製造方法について、必ずしも詳細には開示されていない。
特開平2−282343号公報 特開昭62−29543号公報 国際公開WO2012/057228号公報
本発明は、レゾルシンと塩化アリルとを反応させてレゾルシンをジアリルエーテル化する第1工程と、次いで第1工程で得られたレゾルシンのジアリルエーテル化物をクライゼン転移反応させる第2工程とを含んでなるジアリルレゾルシンの製造方法について、工業的にジアリルレゾルシンを得ることができる製造方法を提供することである。
この製造方法によれば、より簡便に、より高収率で、より安定的に、すなわちより工業的に、ジアリルレゾルシンを得ることができる。
本発明は、以下の事項に関する。
1. レゾルシンと塩化アリルとを反応させてレゾルシンをジアリルエーテル化する第1工程と、第1工程で得られたレゾルシンのジアリルエーテル化物をクライゼン転移反応させる第2工程とを含むジアリルレゾルシンの製造方法において、
前記第1工程のレゾルシンと塩化アリルの反応の少なくとも一部を、含窒素非プロトン性極性溶媒中に未溶解の水酸化ナトリウムが存在している状態で行うことを特徴とするジアリルレゾルシンの製造方法。
2. 第1工程において、前記水酸化ナトリウムの少なくとも80質量%が2mm以上の粒径を持つ粒子状又はフレーク状であることを特徴とする上記1に記載のジアリルレゾルシンの製造方法。
3. 第1工程において、含窒素非プロトン性極性溶媒中、未溶解の水酸化ナトリウムの存在下に、レゾルシンを10分間以上撹拌した後に、塩化アリルを添加してレゾルシンをジアリルエーテル化することを特徴とする上記1または2に記載のジアリルレゾルシンの製造方法。
4. 第1工程において、レゾルシン100質量%に対して含窒素非プロトン性極性溶媒が500〜5000質量%の割合であることを特徴とする上記1〜3のいずれか1項に記載のジアリルレゾルシンの製造方法。
5. 第1工程において、含窒素非プロトン性極性溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンからなる群から選ばれることを特徴とする上記1〜4のいずれか1項に記載のジアリルレゾルシンの製造方法。
6. 第1工程において、ジアリルエーテル化する反応を終了後、反応混合物中の未溶解物を、ろ過によって、分離して除くことを特徴とする上記1〜5のいずれか1項に記載のジアリルレゾルシンの製造方法。
7. 第2工程において、沸点が190〜250℃の有機溶剤中で加熱して、レゾルシンのジアリルエーテル化物をクライゼン転移反応させることを特徴とする上記1〜6のいずれか1項に記載のジアリルレゾルシンの製造方法。
8. 第2工程において、前記有機溶剤がジフェニルエーテル、γ−ブチロラクトン、ケロシン、及びトリグライムからなる群から選ばれることを特徴とする上記1〜7のいずれか1項に記載のジアリルレゾルシンの製造方法。
本発明によれば、レゾルシンと塩化アリルとを反応させてレゾルシンをジアリルエーテル化する第1工程と、次いで第1工程で得られたレゾルシンのジアリルエーテル化物をクライゼン転移反応させる第2工程とを含んでなるジアリルレゾルシンの製造方法について、工業的にジアリルレゾルシンを得ることができる製造方法を提供することができる。
この製造方法によれば、より簡便に、より高収率で、より安定的に、すなわちより工業的に、ジアリルレゾルシンを得ることができる。
本発明のジアリルレゾルシンの製造方法は、レゾルシンと塩化アリルとを反応させてレゾルシンをジアリルエーテル化する第1工程と、次いで第1工程で得られたレゾルシンのジアリルエーテル化物をクライゼン転移反応させる第2工程とを含むジアリルレゾルシンの製造方法において、前記第1工程のレゾルシンと塩化アリルの反応の少なくとも一部を、含窒素非プロトン性極性溶媒中に未溶解の水酸化ナトリウムが存在している状態で行うことを特徴とする。
第1工程の溶媒として使用される含窒素非プロトン性極性溶媒は、分子内に窒素原子は有するがプロトン性を有さない極性溶媒であればよく、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、及び1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノンなどを好適に例示できる。
第1工程の溶媒として含窒素非プロトン性極性溶媒以外の溶媒を用いると、反応しなかったり、反応しても、僅かだけであったり、副生成物が多かったり、塩が生成して高粘度化して取扱いが難しくなったりするなどの問題が生じる。
第1工程の含窒素非プロトン性極性溶媒は、混合溶媒でも構わないが、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンからなる群から選ばれるいずれかであり、より好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドである。
また、第1工程の含窒素非プロトン性極性溶媒は、レゾルシン100質量%に対して、好ましくは500〜5000質量%、より好ましくは1000〜3000質量%の割合で使用することが、目的とするレゾルシンのジアリルエーテル化物を高収率で得ることができるので好適である。
本発明において、レゾルシンをジアリルエーテル化する第1工程は、反応の少なくとも一部が、含窒素非プロトン性極性溶媒中に未溶解の水酸化ナトリウムが存在している状態で行われる。これは、第1工程の反応終了まで継続して、即ち反応の全部に渡り、未溶解の水酸化ナトリウムが存在していてもよいが、反応の少なくとも初期段階で未溶解の水酸化ナトリウムが存在していればよいことを意味する。具体的には、第1工程の反応の少なくとも初期段階で、(水酸化ナトリウムの一部は当然溶解しているが、)水酸化ナトリウムの少なくとも一部、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上が、反応混合物中に「未溶解の状態で存在すること」である。
この工程の初期段階では、まず溶媒中に溶解している水酸化ナトリウムが反応に関与する。反応が進むと、溶媒に溶解していた水酸化ナトリウムは消費される。そしてその後は、未反応の水酸化ナトリウムが新たに溶媒中に溶解しながら反応に関与することになる。すなわち、「未溶解の水酸化ナトリウムの存在下に」反応を行うことによって、未溶解の水酸化ナトリウムが溶媒中に溶解する工程が、反応溶媒中の水酸化ナトリムの濃度を制御することになり、第1工程を通じてほぼ一定濃度の水酸化ナトリウムがジアリルエーテル化反応に関与するような好適な反応条件になると思われる。換言すれば、第1工程は、「未溶解の水酸化ナトリウムの存在下に」反応を行うことによって、極めて温和且つ安定的なジアリルエーテル化の反応条件を得ている。
ここで、初期段階とは、レゾルシンと塩化アリルの反応時間全体の、例えば初期の10%まで、好ましくは20%まで、より好ましくは30%のまで時間を意味する。
また、未溶解の水酸化ナトリウムは、第1工程の反応の中期から終期段階まで、例えば反応時間全体の70%まで存在していることが好ましく、また反応の全部に渡り存在していることも好ましい。
本発明の第1工程において、このような好適な反応条件を提供するためには、好ましくは100質量%中少なくとも80質量%(好ましくは90質量%、より好ましくは90〜95質量%)が0.5mm以上の粒径を持つ粒子状又はフレーク状の水酸化ナトリウムを使用すること、より好ましくは100質量%中少なくとも80質量%(好ましくは90質量%、より好ましくは90〜95質量%)が2mm以上の粒径を持つ粒子状又はフレーク状の水酸化ナトリウムを使用すること、更に好ましくは100質量%中少なくとも80質量%(好ましくは90質量%、より好ましくは90〜95質量%)が3mm以上の粒径を持つ粒子状又はフレーク状の水酸化ナトリウムを使用することが望ましい。なお、工業的に入手できる水酸化ナトリウムは、通常粒径が揃っているので、100質量%中少なくとも80質量%(好ましくは90質量%、より好ましくは90〜95質量%)の粒径は、ここで示した粒径の最小値以上であって、その3倍(好ましくは2倍)の値以下の範囲に含まれる。例えば粒子状の場合の最大値は通常最小値の2倍以下であり、フレーク状の場合の最大値は通常最小値の3.5倍以下、好ましくは3倍以下である。
ここで、「粒径」とは、形状が粒子状やフレーク状のものであっても、同一の体積の球としたときの直径を意味している。なお、使用する水酸化ナトリウムの形状については、球状、タブレット状、針状、フレーク状などであってよく、特に限定がある訳ではない。より球に近い形状を粒子状、より平板に近いものをフレーク状と呼称したが、粒径という用語を用いたために水酸化ナトリウムの形状が球状に限定的に解釈されことがないようにするためである。すなわち、本発明において、「粒子状又はフレーク状」の水酸化ナトリウムは、全ての形状の水酸化ナトリウムを意味している。なお、水酸化ナトリウムの形状は、好ましくは球状を含むいわゆる粒子状又は平板に近いいわゆるフレーク状である。本発明においては、形状よりも溶解に関与する表面積が適度に小さいことが重要である。
この様な水酸化ナトリウムとしては、例えば、和光純薬工業社製 試薬特級水酸化ナトリウム(半錠剤状)、試薬1級水酸化ナトリウム(半錠剤状)、東ソー社製 フレーク苛性ソーダ、パール苛性ソーダ、関東電化工業社製 フレーク苛性ソーダなどが工業的に容易に得ることができるので好ましい。
これらの中でも、その100質量%中少なくとも80質量%が2mm以上の粒径を持つ粒子状又はフレーク状の水酸化ナトリウムである、和光純薬工業社製 試薬特級水酸化ナトリウム(半錠剤状)、試薬1級水酸化ナトリウム(半錠剤状)、東ソー社製 フレーク苛性ソーダ、関東電化工業社製 フレーク苛性ソーダなどがより好ましい。
本発明の第1工程において、水酸化ナトリウムを含窒素非プロトン性極性溶媒中に完全に溶解させてレゾルシンと塩化アリルとを反応させると、反応の再現性が低くなり安定してジアリルエーテル化物を得ることが難しくなるし、更に、レゾルシンのモノアリルエーテル化物や、レゾルシンのジアリルエーテル化物に更にアリル基が導入されたトリ体や、その他の副生成物などが多量に生成して、目的とするレゾルシンのジアリルエーテル化物を高収率で得ることが難しくなる。
本発明の第1工程において、好ましくは100質量%中少なくとも80質量%(好ましくは90質量%、より好ましくは90〜95質量%)が0.5mm以上の粒径を持つ粒子状又はフレーク状の水酸化ナトリウムを、より好ましくは100質量%中少なくとも80質量%(好ましくは90質量%、より好ましくは90〜95質量%)が2mm以上の粒径を持つ粒子状又はフレーク状の水酸化ナトリウムを、更に好ましくは100質量%中少なくとも80質量%(好ましくは90質量%、より好ましくは90〜95質量%)が3mm以上の粒径を持つ粒子状又はフレーク状の水酸化ナトリウムを使用して、未溶解の水酸化ナトリウムの存在下に反応を行うと、再現性よく安定してジアリルエーテル化物を得ることができ、更に、レゾルシンのモノアリルエーテル化物や、レゾルシンのジアリルエーテル化物に更にアリル基が導入されたトリ体や、その他の副生成物などの生成を抑制でき、その結果、目的とするレゾルシンのジアリルエーテル化物を高収率で得ることが容易になるので特に好適である。
水酸化ナトリウムとして、100質量%中少なくとも80質量%が0.5mm未満の粒径を持つような粒子状又はフレーク状の水酸化ナトリウムを使用すると、水酸化ナトリウムが容易に溶解して、反応の再現性が低くなり安定してジアリルエーテル化物を得ることが難しくなるし、更に、レゾルシンのモノアリルエーテル化物や、レゾルシンのジアリルエーテル化物に更にアリル基が導入されたトリ体や、その他の副生成物などの生成を十分には抑制できなくなって、目的とするレゾルシンのジアリルエーテル化物を高収率で得ることが難しくなる。
水酸化ナトリウムは、レゾルシン1モルに対して、1.8モル以上、好ましくは1.8〜4.0モル、より好ましくは2.0〜3.0モル程度の割合で用いるのが好適である。使用量が少ないと反応が未完了になり、使用量が多過ぎるのは非経済的であり、また反応終了後の処理が難しくなる。
さらに、本発明の第1工程においては、含窒素非プロトン性極性溶媒中、未溶解の水酸化ナトリウムの存在下に、レゾルシンを10分間以上、好ましくは20分間以上、より好ましくは30分間以上、さらに好ましくは40分間以上撹拌した後で、塩化アリルを添加して、依然として未溶解の水酸化ナトリウムが存在する状態で、レゾルシンをジアリルエーテル化することが好ましい。なお、撹拌は通常は3時間以下である。
この様な撹拌工程を追加することで、反応の再現性が高くなり、目的とするレゾルシンのジアリルエーテル体を、より安定して高収率で得ることができるので好適である。
第1工程の反応においては、塩化アリルは、レゾルシン1モルに対して、1.8モル以上の割合で用いるのがよく、好ましくは1.8〜4.0モル、より好ましくは2.0〜3.0モル程度の割合で用いるのが好適である。使用量が少ないと反応が未完了になり、使用量が多過ぎるのは非経済的であり、また反応終了後の処理が難しくなる。
なお、反応混合物中に塩化アリルを添加する際は、一度に全部を添加しても構わないが、ジアリルエーテル化反応の発熱によって反応温度が影響を受けることがあるので、反応温度に影響しないようにするために、滴下などの方法で徐々に(連続又は断続的に)反応系に添加することが好ましい。
第1工程は、限定するものではないが、好ましくは、常圧下、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で、80℃以下、好ましくは10〜40℃程度の低温で、1〜20時間、好ましくは2〜10時間程度、撹拌混合しながら反応を行うことが好適である。
反応温度が高くなり過ぎたり、反応時間が長くなり過ぎたりすると、レゾルシンのジアリルエーテル化物にアリル基が更に導入されたトリ体や、その他の副生成物が多く生成して、目的とするレゾルシンのジアリルエーテル化物を高収率で得ることが難しくなるので好ましくない。これらの反応条件は、目的物以外の副生成物を抑制し、目的物の生成量を最大化するように選択される。
本発明の場合、第1工程の反応中に、未反応の水酸化ナトリウムは徐々に溶解して反応に関与すると共に、反応の結果塩化ナトリウムが生成して析出する。したがって、第1工程の反応が終了しても、反応混合物は未溶解物を含む混合物になっている。
本発明においては、第1工程の終了後、反応混合物中の未溶解物を、ろ過によって極めて簡便に分離して除いて容易に目的のレゾルシンのジアリルエーテル化物を主成分とする反応生成物を得ることができるので好適である。この反応生成物は、本発明の第2工程の原料として好適に使用することができる。
得られたろ液(反応生成物)におけるレゾルシンのジアリルエーテル化物の純度は、HPLC測定における面積百分率で、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。不純物としては、未反応のレゾルシン、レゾルシンのモノアリルエーテル化物、レゾルシンのジアリルエーテル体にアリル基が更に導入されたトリ体などが含まれる。
得られたろ液(反応生成物)は、必要に応じて塩酸などの酸によって中和や水による洗浄を行った後で、減圧蒸留によって溶媒を容易に除去することができる。更に必要に応じて、減圧蒸留を行ってより精製したレゾルシンのジアリルエーテル化物を得ることもできる。
本発明の第2工程は、第1工程で得られたレゾルシンのジアリルエーテル化物をクライゼン転移反応させる工程である。クライゼン転移反応は、公知の定法によって行うことができる。すなわち、触媒の存在下又は非存在下、溶媒の存在下又は非存在下に、レゾルシンのジアリルエーテル化物を、概ね、130〜250℃の温度範囲で、0.1〜100時間加熱することによって行うことができる。
しかしながら、レゾルシンのジアリルエーテル化物をクライゼン転移反応する場合には、1分子中の2個のエーテル結合がクライゼン転移反応を行うために、転移に伴う発熱量が非常に大きくなる。このため、第1工程で得られた反応生成物(レゾルシンのジアリルエーテル化物)を単独で加熱すると、反動温度の制御が難しくなって、目的のジアリルレゾルシンを好適に得ることが難しくなる。
本発明の第2工程においては、第1工程で得られた反応生成物(レゾルシンのジアリルエーテル化物)を、沸点が190〜250℃の有機溶剤中で加熱して、レゾルシンのジアリルエーテル化物をクライゼン転移反応させることが、転移に伴う発熱を好適に制御できるので工業的に好適である。
沸点が190〜250℃の有機溶剤としては、例えばジフェニルエーテル、γ−ブチロラクトン、ケロシン、トリグライムなどを好適に挙げることができる。有機溶剤は混合物でも構わない。また有機溶剤は、トリグライムおよびγ−ブチロラクトンから選ばれることが特に好ましい。
本発明において、第2工程後の反応混合物(反応性生物)は、好ましくは減圧蒸留によって溶剤を除去することによって容易に目的のジアリルレゾルシンを得ることができる。得られるジアリルレゾルシンの純度は、HPLC測定による面積百分率で、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
本発明で得られるジアリルレゾルシンは、通常2,4−ジアリルレゾルシンと4,6−ジアリルレゾルシンとの異性体混合物である。これらの異性体混合物の割合は特に限定されるものではないが、概ね2,4−ジアリルレゾルシンと4,6−ジアリルレゾルシンとの合計100%中、4,6−ジアリルレゾルシンが5〜85%である。
なお、第2工程後の反応性生物から溶剤を除去するために減圧蒸留を行った後、更に引き続いて減圧蒸留によってジアリルレゾルシンを精製する場合には、蒸留の初期では2,4−ジアリルレゾルシンが主成分の留分が得られるが、蒸留の中期から後期では、2,4−ジアリルレゾルシンと4,6−ジアリルレゾルシンとが約50:50の割合からなる異性体混合物を好適に得ることができる。
この異性体混合物は、例えばポリマー原料としてそのまま好適に使用できる。なお、必要に応じて更に精製すれば、各異性体を分離して各異性体の単体とすることもできるので、各異性体の単体としても好適に使用することができる。
本発明で得られるジアリルレゾルシンは、フェノール樹脂の原料として好適に用いることができる。また、公知の方法、例えばエピクロルヒドリンのようなエピハロヒドリン類によって水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属水酸化物の存在下10〜120℃程度の温度でグリシジルエーテル化する方法によって容易にエポキシ化することができる。このジアリルレゾルシンのエポキシ化化合物は、いわゆるエポキシ樹脂として好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
以下の例で用いた測定方法等を示す。
HPLCの測定方法
下記条件によって、高速液体クロマトグラフ分析を行った。
カラム:東ソー社製 ODS−80Ts 250×4.6mm
検出方法:可視検出器(UV254nm)
移動相:アセトニトリル/水(容積割合)=60/40
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
サンプル:試料0.1gを移動相10gで希釈したものをサンプルとした。サンプル量は20μLとした。
第1工程の場合には、反応生成物におけるレゾルシンのジアリルエーテル化物の純度(目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の収率に相当する)を、レゾルシンのジアリルエーテル化物に加えて、未反応のレゾルシン、レゾルシンのモノアリルエーテル化物、及びレゾルシンのジアリルエーテル化物にアリル基が更に導入されたトリ体などの原料と副生成物を含む反応性生物の全てのピーク面積の合計100%に対して、目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物のピーク面積の割合(面積%)として求めた。
第2工程の場合には、反応性生物におけるジアリルレゾルシンの純度(目的物のジアリルレゾルシンの収率に相当する)を、反応生成物の全てのピーク面積の合計100%に対して、目的物のジアリルレゾルシンのピーク面積の割合(面積%)として求めた。
粒径の確認方法
乾燥窒素雰囲気下のドライボックス中で、使用する水酸化ナトリウム20gから、適当な篩を用いて粒径が比較的小さなものを篩い落として除き、粒径が比較的大きなもののみからなり、試料全体に対して80質量%以上の試料を分離した。この分離された試料から、目視で比較的小さい粒径のものを複数個(十分な数)選び出し、各質量を測定してその中から最も軽いものを粒径が最も小さいものとした。
この粒径が最も小さいものの質量と水酸化ナトリウムの密度(2.13g/cm)とを用いて、この水酸化ナトリウムを球と仮定した場合の直径を算出し、本発明で使用する水酸化ナトリウムの少なくとも80質量%の水酸化ナトリウムの最小の粒径とした。
なお、以下の実験例では、試料全体に対して90〜95質量%の試料に分離し、その中から粒径が最も小さいものを選んだ。
〔実施例1〕
(第1工程)
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコに、和光純薬工業社製 試薬特級 水酸化ナトリウム(純度:97質量%、少なくとも80質量%の粒径は4.3mm以上) 44.49g(1.08モル)と、N,N−ジメチルホルムアミド 600gとを仕込んだところに、レゾルシン(純度:99質量%) 50.00g(0.45モル)を添加した。これを未溶解の水酸化ナトリウムの存在下に30℃で60分間撹拌した。その後、塩化アリル(純度:98質量%) 84.25g(1.08モル)を、20分間に亘って徐々に滴下して添加しながら、30℃にて6時間撹拌して反応させた。この間、反応混合液は未溶解物を含む不均一の状態のままであり、得られた反応混合液も不均一の状態であった。
この反応混合物をろ過して未溶解物を分離除去し、ろ液として目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物を主成分とする反応生成物を得た。
このろ液(反応性生物)を、減圧条件下に濃縮し、水及び塩酸を加えて中和し、トルエンで有機成分を抽出し、水洗を2回行った後、150℃、3mmHgにて溶媒除去と蒸留を行って、精製したレゾルシンのジアリルエーテル化物を得た。
なお、ろ液(反応性生物)をHPLC測定によって確認した結果、目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の純度(目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の収率に相当する)は、91.5%であった。図1にHPLC測定チャートを示す。結果を表1に示す。
〔実施例2〕
(第1工程)
水酸化ナトリウムを、東ソー社製 フレーク苛性ソーダ(少なくとも80質量%の粒径は3.6mm以上)に変えたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
反応性生物をHPLC測定によって確認した結果、目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の純度(目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の収率に相当する)は、87.3%であった。結果を表1に示す。
〔実施例3〕
(第1工程)
水酸化ナトリウムを、関東電化工業社製 フレーク苛性ソーダ(少なくとも80質量%の粒径は2.8mm以上)に変えたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
反応性生物をHPLC測定によって確認した結果、目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の純度(目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の収率に相当する)は、85.8%であった。結果を表1に示す。
〔実施例4〕
(第1工程)
水酸化ナトリウムを、東ソー社製 パール苛性ソーダ(少なくとも80質量%の粒径は0.8mm以上)に変えたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
反応性生物をHPLC測定によって確認した結果、目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の純度(目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の収率に相当する)は、78.8%であった。結果を表1に示す。
〔実施例5〕
(第1工程)
塩化アリルを添加する前の、N,N−ジメチルホルムアミド中、未溶解の水酸化ナトリウムの存在下にレゾルシンを撹拌する撹拌時間を30分間に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
反応性生物をHPLC測定によって確認した結果、目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の純度(目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の収率に相当する)は、86.4%であった。結果を表1に示す。
〔実施例6〕
(第1工程)
溶媒のN,N−ジメチルホルムアミドの量を475gに変更した以外は、実施例5と同様の操作を行った。
反応性生物をHPLC測定によって確認した結果、目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の純度(目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の収率に相当する)は、83.7%であった。結果を表1に示す。
〔参考例1〕
(第1工程)
溶媒のN,N−ジメチルホルムアミドの量を300gに変更した以外は、実施例5と同様の操作を行った。
反応性生物をHPLC測定によって確認した結果、目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の純度(目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の収率に相当する)は、66.7%であった。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
(第1工程)
溶媒としてイソプロピルアルコールを用いたこと、及び塩化アリルを添加する前にN,N−ジメチルホルムアミド中未溶解の水酸化ナトリウムの存在下にレゾルシンを撹拌しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
反応生成物をHPLC測定によって確認した結果、目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の純度(目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の収率に相当する)は、5.5%であった。結果を表1に示す。
〔比較例2〕
(第1工程)
溶媒としてトルエンを用いたこと、及び塩化アリルを添加する前にN,N−ジメチルホルムアミド中未溶解の水酸化ナトリウムの存在下にレゾルシンを撹拌しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行ったが、高粘度の塩が生成し反応は進まなかった。結果を表1に示す。
〔比較例3〕
(第1工程)
溶媒としてアセトニトリルを用いたこと、及び塩化アリルを添加する前にN,N−ジメチルホルムアミド中未溶解の水酸化ナトリウムの存在下にレゾルシンを撹拌しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
反応生成物をHPLC測定によって確認した結果、目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の純度(目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の収率に相当する)は、0.8%であった。結果を表1に示す。
〔比較例4〕
(第1工程)
溶媒としてメタノールを用いたこと、及び塩化アリルを添加する前にN,N−ジメチルホルムアミド中未溶解の水酸化ナトリウムの存在下にレゾルシンを撹拌しなかったこと、反応前に水酸化ナトリウムがほぼ溶解したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
反応生成物をHPLC測定によって確認した結果、目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の純度(目的物のレゾルシンのジアリルエーテル化物の収率に相当する)は、1.2%であった。結果を表1に示す。
〔実施例7〕
(第2工程)
温度計、仕込・留出口、冷却器および攪拌機を備えたガラス製4つ口フラスコに、前記実施例1と同様の操作によって得たレゾルシンのジアリルエーテル化物(純度98.6%) 200gを仕込み、そこに溶剤のトリグライム 200g加えて溶液とし、200℃にて4時間加熱撹拌してクライゼン転位を行わせた。
得られた反応溶液(反応生成物)をHPLC測定によって確認した結果、目的物のジアリルレゾルシンの純度(目的物のジアリルレゾルシンの収率に相当する)は、94.0%であった。内訳は、異性体の4,6−ジアリルレゾルシンが42.1%であった。図2にHPLC測定チャートを示す。結果を表2に示す。
なお、この反応溶液を減圧条件下で精密蒸留することによって、高純度のジアリルレゾルシンを得た。
〔実施例8〕
(第2工程)
溶剤をγ−ブチロラクトンに変えたこと以外は、実施例7と同様の操作を行った。
得られた反応溶液(反応生成物)をHPLC測定によって確認した結果、目的物のジアリルレゾルシンの純度(目的物のジアリルレゾルシンの収率に相当する)は、91.9%であった。内訳は、異性体の4,6−ジアリルレゾルシンが39.3%であった。結果を表2に示す。
なお、この反応溶液を減圧条件下で精密蒸留することによって、高純度のジアリルレゾルシンを得た。
Figure 2014101299
Figure 2014101299
本発明によって、レゾルシンと塩化アリルとを反応させてレゾルシンをジアリルエーテル化する第1工程と、第1工程で得られたレゾルシンのジアリルエーテル化物をクライゼン転移反応させる第2工程とを含むジアリルレゾルシンの製造方法について、工業的にジアリルレゾルシンを得ることができる製造方法を提供することができる。
この製造方法によれば、より簡便に、より高収率で、より安定的に、すなわちより工業的に、ジアリルレゾルシンを得ることができる。

Claims (8)

  1. レゾルシンと塩化アリルとを反応させてレゾルシンをジアリルエーテル化する第1工程と、第1工程で得られたレゾルシンのジアリルエーテル化物をクライゼン転移反応させる第2工程とを含むジアリルレゾルシンの製造方法において、
    前記第1工程のレゾルシンと塩化アリルの反応の少なくとも一部を、含窒素非プロトン性極性溶媒中に未溶解の水酸化ナトリウムが存在している状態で行うことを特徴とするジアリルレゾルシンの製造方法。
  2. 第1工程において、前記水酸化ナトリウムの少なくとも80質量%が2mm以上の粒径を持つ粒子状又はフレーク状であることを特徴とする請求項1に記載のジアリルレゾルシンの製造方法。
  3. 第1工程において、含窒素非プロトン性極性溶媒中、未溶解の水酸化ナトリウムの存在下に、レゾルシンを10分間以上撹拌した後に、塩化アリルを添加してレゾルシンをジアリルエーテル化することを特徴とする請求項1または2に記載のジアリルレゾルシンの製造方法。
  4. 第1工程において、レゾルシン100質量%に対して含窒素非プロトン性極性溶媒が500〜5000質量%の割合であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のジアリルレゾルシンの製造方法。
  5. 第1工程において、含窒素非プロトン性極性溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のジアリルレゾルシンの製造方法。
  6. 第1工程において、ジアリルエーテル化する反応を終了後、反応混合物中の未溶解物を、ろ過によって、分離して除くことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のジアリルレゾルシンの製造方法。
  7. 第2工程において、沸点が190〜250℃の有機溶剤中で加熱して、レゾルシンのジアリルエーテル化物をクライゼン転移反応させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のジアリルレゾルシンの製造方法。
  8. 第2工程において、前記有機溶剤がジフェニルエーテル、γ−ブチロラクトン、ケロシン、及びトリグライムからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のジアリルレゾルシンの製造方法。
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