JP2014099796A - スペクトル拡散クロック・ジエネレータ - Google Patents

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Abstract

【課題】特別な変調制御回路を搭載することなく、VCOにより発振されるクロック信号のスペクトル電力を充分に拡散することができるスペクトル拡散クロック・ジエネレータを得ることを目的とする。
【解決手段】 基準クロック信号frの周期毎に、基準クロック信号frと比較クロック信号fpの位相差θを検出し、HレベルとLレベルの2値からなる矩形波信号であって、そのHレベルとLレベルの時間幅の差Wが位相差θに比例しており、その位相差θが零であれば、その時間幅の差Wが零である矩形波信号を出力するEX−OR型位相比較器2を設ける。
【選択図】図1

Description

この発明は、出力クロックの周波数を一定周波数帯域内で変動させることで、出力クロックの周波数スペクトル電力を上記周波数帯域に拡散させて、出力クロックの周波数及び出力クロックの高調波のスペクトル電力のピークを低下させることが可能なスペクトル拡散クロック・ジエネレータに関するものである。
従来のスペクトル拡散クロック・ジエネレータは、位相同期回路であるPLL(Phase Locked Loop)と周波数変調器と加算器から構成されている。
加算器は、PLL内のループフィルタから出力されるVCO(電圧制御発振器)の制御信号に対して、周波数変調器の出力信号を重畳し、周波数変調器の出力信号が重畳されている制御信号をVCOに出力するようにしている。
これにより、VCOは、周波数変調器の出力信号が重畳されている制御信号の電圧値に応じた周波数のクロック信号を発振する。
VCOにより発振されたクロック信号は、スペクトル拡散クロック・ジエネレータの出力信号であると同時に、PLL内の分周器でN分周され、N分周後のクロック信号がPLL内の周波数位相比較器にフィードバックされる。
従来のスペクトル拡散クロック・ジエネレータでは、電源の投入などによって起動されると、VCOにより発振されるクロック信号の周波数が定常値に至るまでの間、PLLとして動作する。
PLLが定常状態に到達すると、PLLのロック状態が外れない周波数帯域内で、周波数変調器の出力信号を変動させることで、VCOにより発振されるクロック信号の周波数を変動させる。
即ち、スペクトル拡散クロック・ジエネレータは、PLLが定常状態に到達すると、PLLの出力クロックに周波数変調をかけている。
この周波数変調により、VCOにより発振されるクロック信号のスペクトル電力が上記の周波数帯域内に拡散される。
その結果、PLLの出力クロックに周波数変調をかけない場合と比較して、出力クロックを周波数変調した場合の方が、出力クロックのスペクトル電力のピークが低減する。
また、スペクトル拡散クロック・ジエネレータとして流用可能なPLLが以下の特許文献1に開示されている。
このPLLは、EX−OR型位相比較器、波形整形回路、VCO及び分周器から構成されている。
このEX−OR型位相比較器は、入力端子から入力される基準クロック信号と、分周器から帰還されてくる比較クロック信号との位相差を検出し、Hレベルの時間幅とLレベルの時間幅との差が、その位相差に相当する時間幅と等しい矩形波信号を波形整形回路に出力する。
波形整形回路は、EX−OR型位相比較器から矩形波信号を受けると、その矩形波信号における波形の歪み(例えば、オーバシュートやアンダーシュートなどによる歪み)を除去する波形整形を行って、歪みがない矩形波信号をVCOに出力する。ただし、波形に歪みがない場合は、波形整形を行わない。
VCOは、波形整形回路から矩形波信号を受けると、その矩形波信号がHレベルである期間中、Hレベルの電圧値に対応する周波数のクロック信号を出力し、その矩形波信号がLレベルである期間中、Hレベルの電圧値に対応する周波数のクロック信号を出力する。
VCOから出力されるクロック信号の周波数と基準クロック信号の周波数との周波数差を、位相比較タイミングから次の位相比較タイミングまで期間中積分し、その積分結果が0になると、VCOから出力されるクロック信号の周波数と基準クロック信号の位相同期が確立したことになる。
位相同期の確立後は、矩形波信号におけるHレベルの時間幅とLレベルの時間幅とが等しい状態が継続し、定常状態となる。
なお、位相を比較する周期の長さは、基準クロック信号の周期と等しく、定常状態においては、VCOの電圧対周波数特性にしたがって、Hレベルに対応する周波数のクロック信号と、Lレベルに対応する周波数のクロック信号とが、位相比較周期の半周期ずつ交互にVCOから出力され続ける。
特許文献1に開示されているPLLをスペクトル拡散クロック・ジエネレータとして流用すると、VCOの電圧対周波数特性にしたがって、Hレベルに対応する周波数のクロック信号と、Lレベルに対応する周波数のクロック信号とが交互に出力されて、VCOの出力信号が2つに分散される。
これにより、単一周波数に電力が集中する場合よりも、電力ピークが幾分小さくなるが、2つの周波数スペクトルに電力が集中するため、電力の拡散としては十分な状態ではない。
特開2004−40227号公報(第4頁から第10頁、図1から図5)
従来のスペクトル拡散クロック・ジエネレータは以上のように構成されているので、PLLが定常状態に到達すると、VCOにより発振されるクロック信号の周波数を変動させる周波数変調器を搭載すれば、VCOにより発振されるクロック信号のスペクトル電力のピークを低減することができる。しかし、PLLが定常状態に到達した時点で、周波数変調器の出力信号の変動を開始させる制御を行う特別な変調制御回路を実装しなければならない課題があった。また、周波数変調器を搭載することで、構成の複雑化やコスト高などを招く課題があった。
また、特許文献1に開示されているPLLをスペクトル拡散クロック・ジエネレータとして流用する場合、2つの周波数スペクトルに電力が集中するため、スペクトル電力を充分に拡散することができない課題があった。
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、特別な変調制御回路を搭載することなく、VCOにより発振されるクロック信号のスペクトル電力を充分に拡散することができるスペクトル拡散クロック・ジエネレータを得ることを目的とする。
この発明に係るスペクトル拡散クロック・ジエネレータは、基準クロック信号の周期毎に、基準クロック信号と比較クロック信号の位相差を検出し、高電圧レベルと低電圧レベルの2値からなる矩形波信号であって、その高電圧レベルと低電圧レベルの時間幅の差が上記位相差に比例しており、その位相差が零であれば、その時間幅の差が零である矩形波信号を出力する位相比較器を設け、電圧制御発振器が、位相比較器から出力された矩形波信号の電圧値に応じた周波数のクロック信号を発振するようにしたものである。
この発明によれば、基準クロック信号の周期毎に、基準クロック信号と比較クロック信号の位相差を検出し、高電圧レベルと低電圧レベルの2値からなる矩形波信号であって、その高電圧レベルと低電圧レベルの時間幅の差が上記位相差に比例しており、その位相差が零であれば、その時間幅の差が零である矩形波信号を出力する位相比較器を設け、電圧制御発振器が、位相比較器から出力された矩形波信号の電圧値に応じた周波数のクロック信号を発振するように構成したので、特別な変調制御回路を搭載することなく、電圧制御発振器により発振されるクロック信号のスペクトル電力を充分に拡散することができる効果がある。
この発明の実施の形態1によるスペクトル拡散クロック・ジエネレータを示す構成図である。 VCO4の電圧−周波数特性を示す説明図である。 基準クロック信号fr、比較クロック信号fp及びVCO4により発振されるクロック信号fsの波形例を示す説明図である。 EX−OR型位相比較器2の基本動作を説明する説明図である。 スペクトル拡散クロック・ジエネレータが発散する場合の位相面解析特性と、それに対応するVCO4の出力周波数を示す説明図である。 スペクトル拡散クロック・ジエネレータが収束する場合の位相面解析特性と、それに対応するVCO4の出力周波数を示す説明図である。 スペクトル拡散クロック・ジエネレータがアトラクタ状態である場合の位相面解析特性と、それに対応するVCO4の出力周波数を示す説明図である。 スペクトル拡散クロック・ジエネレータがアトラクタ状態である場合のVCO出力スペクトルと、PLLのVCO出力スペクトルとを対比する説明図である。 この発明の実施の形態2によるスペクトル拡散クロック・ジエネレータを示す構成図である。 この発明の実施の形態3によるスペクトル拡散クロック・ジエネレータを示す構成図である。 基準クロック信号fr、比較クロック信号fp及びCP9から出力されるクロック信号fsの波形例を示す説明図である。 周波数位相比較器8の基本動作を説明する説明図である。 この発明の実施の形態4によるスペクトル拡散クロック・ジエネレータを示す構成図である。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるスペクトル拡散クロック・ジエネレータを示す構成図である。
図1において、基準クロック信号入力端子1は基準クロック信号frを入力する端子である。
排他的論理和型位相比較器(以下、「EX−OR型位相比較器」と称する)2は基準クロック信号入力端子1から入力される基準クロック信号frの周期毎に、その基準クロック信号frとクロック分周器5から出力された比較クロック信号fpの位相差θを検出し、Hレベル(高電圧レベル)とLレベル(低電圧レベル)の2値からなる矩形波信号であって、HレベルとLレベルの時間幅の差Wが位相差θに比例しており、その位相差θが零であれば、その時間幅の差Wが零である矩形波信号を出力する機器である。
アトラクタ・フィルタ3は例えば抵抗器、コンデンサ、コイルなどの受動素子(単体としては、線形な特性を持つ受動素子)で構成されており、EX−OR型位相比較器2からVCO(電圧制御発振器)4に出力される矩形波信号を濾過して、VCO4により発振されるクロック信号fsの周波数をアトラクタ状態とする。
VCO4はアトラクタ・フィルタ3から出力された矩形波信号の電圧値に応じた周波数のクロック信号fsを発振する機器である。
クロック分周器5はVCO4により発振されたクロック信号fsをN分周(Nは自然数)し、N分周後のクロック信号fsを比較クロック信号fpとしてEX−OR型位相比較器2に出力する機器である。
クロック信号出力端子6はVCO4により発振されたクロック信号fsを出力する端子である。
図2はVCO4の電圧−周波数特性を示す説明図である。
VCO4は、図2に示すように、電圧−周波数特性において、線形な特性を示す範囲で使用するものとする。
VCO4により発振されるクロック信号fsの周波数において、周波数fからの変化分gが、入力電圧Vの関数g(V)で表されるとすると、図2の電圧−周波数特性より、下記の関係になることが明らかである。
|V−V|=|V−V|=E(定数)
g(V−V)=−g(V−V)=df
g(0)=0
df=G(定数)
したがって、VCO4の電圧対周波数感度Kは、下記の式(1)のように表される。
K=G/E(定数) (1)
VCO4に入力される矩形波信号をV+xとすると、VCO4により発振されるクロック信号fsの周波数yは、下記の式(2)に示すように、VCO4の電圧対周波数感度Kを用いて表すことができる。
y=f+g(x)=f+Kx (2)
ここでは、図1のスペクトル拡散クロック・ジエネレータの初期状態での周波数の関係は、f=N×fr、かつ、fr=fpであるとする。ただし、Nは自然数を含む正の仮分数である。
図3は基準クロック信号fr、比較クロック信号fp及びVCO4により発振されるクロック信号fsの波形例を示す説明図である。
図4はEX−OR型位相比較器2の基本動作を説明する説明図である。
次に動作について説明する。
まず、基準クロック信号入力端子1より入力された基準クロック信号frは、EX−OR型位相比較器2に入力される。
また、VCO4により発振されたクロック信号fsがクロック分周器5によってN分周され、N分周後のクロック信号fsである比較クロック信号fpがEX−OR型位相比較器2に入力される。
EX−OR型位相比較器2は、基準クロック信号frの周期毎に、その基準クロック信号frと比較クロック信号fpの位相を比較して、その基準クロック信号frと比較クロック信号fpの位相差θを検出する。
EX−OR型位相比較器2は、基準クロック信号frと比較クロック信号fpの位相差θを検出すると、HレベルとLレベルの時間幅の差Wが位相差θに比例しており、その位相差θが零であれば、その時間幅の差Wが零である矩形波信号を出力するアトラクタ・フィルタ3に出力する。
ここで、EX−OR型位相比較器2から出力される矩形波信号のHレベルの電圧値Vが電圧値Vより高い電位であり、その矩形波信号のLレベルの電圧値Vが電圧値Vより低い電位であるとする。
また、電圧値Vと電圧値Vの差と、電圧値Vと電圧値Vの差とは、絶対値が等しく、符号が異なる電位であるものとする。
即ち、下記の関係が成立するものとする。
−V=E(定数)
−V=−E(定数)
ただし、E>0とする。
EX−OR型位相比較器2からアトラクタ・フィルタ3に出力される矩形波信号は、基準クロック信号frの1周期分の間に付加あるいは削減すべき位相量が、Hレベルの時間幅とLレベルの時間幅との差になっている。
したがって、比較クロック信号fpが基準クロック信号frよりθだけ位相が進んでいる場合や、比較クロック信号fpが基準クロック信号frよりθだけ位相が遅れている場合、EX−OR型位相比較器2から出力される矩形波信号の信号波形は、図3のようになる。
ここで、図4に示すように、電圧値Vの位置を基準線として、この矩形波信号のHレベルの部分と、Lレベルの部分とを見ると、図2の電圧−周波数特性より、Hレベルの部分は、位相を進める要素となり、Lレベルの部分は、位相を遅らせる要素となる。
アトラクタ・フィルタ3は、EX−OR型位相比較器2から矩形波信号を受けると、その矩形波信号を濾過して、VCO4により発振されるクロック信号fsの周波数をアトラクタ状態とする。
アトラクタ状態は、位相軌跡が、一定の座標点の近傍を或る一定範囲で変動し続ける状態である。
VCO4は、アトラクタ・フィルタ3から矩形波信号を受けると、図2の電圧−周波数特性にしたがって、その矩形波信号の電圧値に応じた周波数のクロック信号fsを発振する。
VCO4により発振されたクロック信号fsは、クロック信号出力端子6から外部に出力される他に、クロック分周器5に入力される。
クロック分周器5は、VCO4からクロック信号fsを受けると、そのクロック信号fsをN分周し、N分周後のクロック信号fsを比較クロック信号fpとしてEX−OR型位相比較器2にフィードバックする。
以下、図1のスペクトル拡散クロック・ジエネレータの回路動作を定量的に記述する数式モデルについて説明する。
まず、時刻t=0における基準クロック信号frと比較クロック信号fpの位相差をθとすると、時刻t>0における位相差Ψ(t)は、下記の式(3)で与えられる。

Figure 2014099796

ただし、基準クロック信号frの周期をTとする(基準クロック信号frの周波数がf/Nであるから、T=N/f
n回目(nは自然数)の位相比較タイミングおいて、時刻t=n・Tにおける基準クロック信号frと比較クロック信号fpの位相差(基準クロック信号frの位相から比較クロック信号fpの位相を減算した位相)をθとすると、アトラクタ・フィルタ3に入力される矩形波信号の電圧値h(t)は、下記の式(4)で示されるステップ関数U(t)を用いると、比較クロック信号fpが基準クロック信号frより位相が遅れている場合(θ>0の場合)、下記の式(5)で与えられる。

Figure 2014099796

Figure 2014099796
比較クロック信号fpが基準クロック信号frより位相が進んでいる場合(θ<0の場合)についても、アトラクタ・フィルタ3に入力される矩形波信号の電圧値h(t)は、上記の式(5)と同様になる。
矩形波信号の電圧値h(t)を加工するアトラクタ・フィルタ3の構成は、次の2つの伝達関数で表すことができる。
1番目のアトラクタ・フィルタ3の伝達関数F(s)は、下記の式(6)で与えられる。sはラプラス変換の複素変数である。

Figure 2014099796
また、2番目のアトラクタ・フィルタ3の伝達関数F(s)は、下記の式(7)で与えられる。

Figure 2014099796
ここで、2π/T=ω/N、N・(π+θ)/ω=τとおくと、n回目の位相比較タイミングにおいて、矩形波信号の電圧値h(t)を1番目のアトラクタ・フィルタ3の伝達関数F(s)に作用させた場合、n+1回目の位相差θn+1は、下記の式(8)のようになる。
Figure 2014099796
また、n回目の位相比較タイミングにおいて、矩形波信号の電圧値h(t)を2番目のアトラクタ・フィルタ3の伝達関数F(s)に作用させた場合、n+1回目の位相差θn+1は、下記の式(9)のようになる。

Figure 2014099796
上記の式(8)又は式(9)が、アトラクタ・フィルタ3のパラメータの設定値範囲を決定する数式モデルとなる。いずれの数式モデルを用いるかは、アトラクタ・フィルタ3の構成によって決める。
ところで、システム動作にアトラクタ状態を発生させるアトラクタ・フィルタ3のパラメータの設定値範囲を求め方は、システムが非線形であるため、解析的には求まらない。このため、位相面解析という方法を用いる。
位相面解析では、位相差θを縦軸、時刻t=nTにおける比較クロック信号fpの周波数(この周波数は、位相差θの単位時間変化量として、数式モデルより求まる)を横軸とするグラフに、座標(θ,f)の軌跡をプロットする。その軌跡の変化から、システム動作がアトラクタ状態であるか否かを判別することできる。
アトラクタ状態であることが分かれば、アトラクタ状態であるときのアトラクタ・フィルタ3のパラメータの変化より、そのパラメータの設定値範囲が明らかとなる。
図5、図6及び図7は位相面解析(左側の図)と、それに対応する比較クロック信号fpの周波数の変化(右側の図)との一例を示している。
図5は、スペクトル拡散クロック・ジエネレータが発散する場合の位相面解析特性と、それに対応するVCO4の出力周波数を示しており、周波数の変化からも明らかなように、スペクトル拡散クロック・ジエネレータとしても、PLLとしても使用することができない。
図6は、スペクトル拡散クロック・ジエネレータが収束する場合の位相面解析特性と、それに対応するVCO4の出力周波数を示しており、周波数の変化からも解るように、PLLとしての動作になっている。
図7は、スペクトル拡散クロック・ジエネレータがアトラクタ状態である場合の位相面解析特性と、それに対応するVCO4の出力周波数を示しており、位相軌跡が一定の座標点(図7の例では、中央の点)の近傍を或る一定範囲で変動し続けている。
しかも、この位相軌跡は、同じ軌跡上を通ることがない。つまり、周波数の変化で見ると、同じパタンで周波数が変化することがなく、しかも発散せず、一定の周波数の近傍に留まり続けている。
このような周波数変化は、PLLとしては使用することができないが、スペクトル拡散クロック・ジエネレータとしては申し分ないものである。
図8はスペクトル拡散クロック・ジエネレータがアトラクタ状態である場合のVCO出力スペクトル(図7の状態のVCO出力スペクトル)と、PLLのVCO出力スペクトルとを対比する説明図である。
図8からも明らかなように、システム動作がアトラクタ状態となったVCO出力は、スペクトル拡散クロック・ジエネレータとして利用可能である。
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、基準クロック信号frの周期毎に、基準クロック信号frと比較クロック信号fpの位相差θを検出し、HレベルとLレベルの2値からなる矩形波信号であって、そのHレベルとLレベルの時間幅の差Wが位相差θに比例しており、その位相差θが零であれば、その時間幅の差Wが零である矩形波信号を出力するEX−OR型位相比較器2を設け、VCO4が、EX−OR型位相比較器2から出力された矩形波信号の電圧値h(t)に応じた周波数のクロック信号fsを発振するように構成したので、特別な変調制御回路を搭載することなく、VCO4により発振されるクロック信号fsのスペクトル電力を充分に拡散することができる効果を奏する。
また、この実施の形態1によれば、アトラクタ・フィルタ3が、EX−OR型位相比較器2からVCO4に出力される矩形波信号を濾過するように構成しているので、EX−OR型位相比較器2から出力される矩形波信号に歪みが含まれていても、迅速かつ高精度にVCO4により発振されるクロック信号fsの周波数をアトラクタ状態に引き込むことができる効果を奏する。
実施の形態2.
図9はこの発明の実施の形態2によるスペクトル拡散クロック・ジエネレータを示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
アトラクタ生成回路7はEX−OR型位相比較器2からVCO4に出力される矩形波信号の波形を変形して、VCO4により発振されるクロック信号fsの周波数をアトラクタ状態とする回路である。
上記実施の形態1では、EX−OR型位相比較器2からVCO4に出力される矩形波信号を濾過する(矩形波信号を適当に削って、波形を変形する)アトラクタ・フィルタ3を実装しているものを示したが、アトラクタ・フィルタ3の代わりに、EX−OR型位相比較器2からVCO4に出力される矩形波信号を削るだけでなく、信号の付加などの処理を含む波形変形を行うアトラクタ生成回路7を実装するようにしてもよい。
アトラクタ生成回路7は、例えば、ワンショット・マルチバイブレータ、発振器、蓄積遅延器、積分器などを作動するために電力を必要とする能動素子と、ダイオード、クリッパ、サイリスタなどの受動素子(単体で非線形な特性を持つ素子)とで構成される。
なお、アトラクタ生成回路7のパラメータの設定範囲は、アトラクタ・フィルタ3と同様に、パラメータの設定範囲を決定する数式モデル(式(8)又は式(9)の数式モデル)によって決定される。
実施の形態3.
図10はこの発明の実施の形態3によるスペクトル拡散クロック・ジエネレータを示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
周波数位相比較器8は基準クロック信号入力端子1から入力される基準クロック信号frの周期毎に、その基準クロック信号frとクロック分周器5から出力された比較クロック信号fpの位相を比較する機器である。
チャージ・ポンプ(以下、「CP」と称する)9は周波数位相比較器8の比較結果が、その比較クロック信号fpの位相が基準クロック信号frの位相より進んでいる旨を示していれば、Lレベルの電圧値V(第1の電圧値)の信号を出力し、その比較クロック信号fpの位相が基準クロック信号frの位相より遅れている旨を示していれば、Hレベルの電圧値V(第2の電圧値)の信号を出力し、その基準クロック信号frと比較クロック信号fpの位相が一致している旨を示していれば、電圧値Vの信号を出力する機器である。
上記実施の形態1では、EX−OR型位相比較器2が、基準クロック信号frと比較クロック信号fpの位相差θを検出するものを示したが、周波数位相比較器8が、基準クロック信号frと比較クロック信号fpの位相を比較するようにしてもよい。
EX−OR型位相比較器2の代わりに、周波数位相比較器8を実装する場合、位相比較結果の出力として3値が必要であるため、周波数位相比較器8の出力信号を加工するCP9を実装している。
次に動作について説明する。
ただし、VCO4の電圧−周波数特性は、上記実施の形態1と同様に図2であり、VCO4により発振されるクロック信号fsの周波数yや、スペクトル拡散クロック・ジエネレータの初期状態での周波数の関係についても、上記実施の形態1と同様であるとする。
図11は基準クロック信号fr、比較クロック信号fp及びCP9から出力されるクロック信号fsの波形例を示す説明図である。
また、図12は周波数位相比較器8の基本動作を説明する説明図である。
まず、は基準クロック信号入力端子1より入力された基準クロック信号frは、周波数位相比較器8に入力される。
また、VCO4により発振されたクロック信号fsがクロック分周器5によってN分周され、N分周後のクロック信号fsである比較クロック信号fpが周波数位相比較器8に入力される。
周波数位相比較器8は、基準クロック信号frの周期毎に、その基準クロック信号frと比較クロック信号fpの位相を比較し、その比較結果をCP9に出力する。
CP9は、周波数位相比較器8の比較結果を受けると、図11に示すように、周波数位相比較器8の比較結果が、比較クロック信号fpの位相が基準クロック信号frの位相より進んでいる旨を示していれば、Lレベルの電圧値Vの信号をアトラクタ・フィルタ3に出力する。
また、周波数位相比較器8の比較結果が、比較クロック信号fpの位相が基準クロック信号frの位相より遅れている旨を示していれば、Hレベルの電圧値V(第2の電圧値)の信号をアトラクタ・フィルタ3に出力する。
また、周波数位相比較器8の比較結果が、基準クロック信号frと比較クロック信号fpの位相が一致している旨を示していれば、電圧値Vの信号をアトラクタ・フィルタ3に出力する。
ここで、CP9の出力信号におけるHレベルの電圧値Vは電圧値Vより高い電位であり、Lレベルの電圧値Vは電圧値Vより低い電位であるとする。
また、電圧値Vと電圧値Vの差と、電圧値Vと電圧値Vの差とは、絶対値が等しく、符号が異なる電位であるものとする。
即ち、下記の関係が成立するものとする。
−V=E(定数)
−V=−E(定数)
ただし、E>0とする。
したがって、比較クロック信号fpが基準クロック信号frよりθだけ位相が進んでいる場合や、比較クロック信号fpが基準クロック信号frよりθだけ位相が遅れている場合、CP9の出力信号の信号波形は、図11のようになる。
ここで、図12に示すように、電圧値Vの位置を基準線として、CP9の出力信号のHレベルの部分と、Lレベルの部分とを見ると、図2の電圧−周波数特性より、Hレベルの部分は、位相を進める要素となり、Lレベルの部分は、位相を遅らせる要素となる。
アトラクタ・フィルタ3は、CP9の出力信号を受けると、その出力信号を濾過して、VCO4により発振されるクロック信号fsの周波数をアトラクタ状態とする。
VCO4は、アトラクタ・フィルタ3を通過した信号を受けると、図2の電圧−周波数特性にしたがって、その信号の電圧値に応じた周波数のクロック信号fsを発振する。
VCO4により発振されたクロック信号fsは、クロック信号出力端子6から外部に出力される他に、クロック分周器5に入力される。
クロック分周器5は、VCO4からクロック信号fsを受けると、そのクロック信号fsをN分周し、N分周後のクロック信号fsを比較クロック信号fpとして周波数位相比較器8にフィードバックする。
以下、図10のスペクトル拡散クロック・ジエネレータの回路動作を定量的に記述する数式モデルについて説明する。
まず、時刻t=0における基準クロック信号frと比較クロック信号fpの位相差をθとすると、時刻t>0における位相差Ψ(t)は、上記実施の形態1と同様に、式(3)で与えられる。
n回目(nは自然数)の位相比較タイミングおいて、時刻t=n・Tにおける基準クロック信号frと比較クロック信号fpの位相差(基準クロック信号frの位相から比較クロック信号fpの位相を減算した位相)をθとすると、アトラクタ・フィルタ3に入力される矩形波信号の電圧値h(t)は、下記の式(10)で示されるステップ関数U(t)を用いると、比較クロック信号fpが基準クロック信号frより位相が遅れている場合(θ>0の場合)、下記の式(11)で与えられる。

Figure 2014099796

Figure 2014099796
比較クロック信号fpが基準クロック信号frより位相が進んでいる場合(θ<0の場合)についても、アトラクタ・フィルタ3に入力される矩形波信号の電圧値h(t)は、上記の式(11)と同様になる。
CP9の出力信号の電圧値h(t)を加工するアトラクタ・フィルタ3の構成は、上記実施の形態1と同様に、2つの伝達関数で表すことができる。
1番目のアトラクタ・フィルタ3の伝達関数F(s)は、上記の式(6)で与えられ、2番目のアトラクタ・フィルタ3の伝達関数F(s)は、上記の式(7)で与えられる。
ここで、2π/T=ω/N、N・|θ|/ω=τとおくと、n回目の位相比較タイミングにおいて、CP9の出力信号の電圧値h(t)を1番目のアトラクタ・フィルタ3の伝達関数F(s)に作用させた場合、n+1回目の位相差θn+1は、下記の式(12)のようになる。
Figure 2014099796
また、n回目の位相比較タイミングにおいて、CP9の出力信号の電圧値h(t)を2番目のアトラクタ・フィルタ3の伝達関数F(s)に作用させた場合、n+1回目の位相差θn+1は、下記の式(13)のようになる。
Figure 2014099796
上記の式(12)又は式(13)が、アトラクタ・フィルタ3のパラメータの設定値範囲を決定する数式モデルとなる。いずれの数式モデルを用いるかは、アトラクタ・フィルタ3の構成によって決める。
この実施の形態3でも、上記実施の形態1と同様に、位相面解析という方法を用いて、アトラクタ・フィルタ3のパラメータの設定値範囲を決定する。
以上で明らかなように、この実施の形態3によれば、基準クロック信号入力端子1から入力される基準クロック信号frの周期毎に、その基準クロック信号frとクロック分周器5から出力された比較クロック信号fpの位相を比較する周波数位相比較器8と、周波数位相比較器8の比較結果が、その比較クロック信号fpの位相が基準クロック信号frの位相より進んでいる旨を示していれば、Lレベルの電圧値Vの信号を出力し、その比較クロック信号fpの位相が基準クロック信号frの位相より遅れている旨を示していれば、Hレベルの電圧値Vの信号を出力し、その基準クロック信号frと比較クロック信号fpの位相が一致している旨を示していれば、電圧値Vの信号を出力するCP9とを設け、VCO4が、CP9の出力信号の電圧値h(t)に応じた周波数のクロック信号fsを発振するように構成したので、特別な変調制御回路を搭載することなく、VCO4により発振されるクロック信号fsのスペクトル電力を充分に拡散することができる効果を奏する。
また、この実施の形態3によれば、アトラクタ・フィルタ3が、CP9からVCO4に出力される信号を濾過するように構成しているので、CP9の出力信号に歪みが含まれていても、迅速かつ高精度にVCO4により発振されるクロック信号fsの周波数をアトラクタ状態に引き込むことができる効果を奏する。
実施の形態4.
図13はこの発明の実施の形態4によるスペクトル拡散クロック・ジエネレータを示す構成図であり、図において、図1及び図10と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
上記実施の形態3では、CP9からVCO4に出力される信号を濾過する(CP9の出力信号を適当に削って、波形を変形する)アトラクタ・フィルタ3を実装しているものを示したが、アトラクタ・フィルタ3の代わりに、CP9の出力信号を削るだけでなく、信号の付加などの処理を含む波形変形を行うアトラクタ生成回路7を実装するようにしてもよい。
なお、アトラクタ生成回路7のパラメータの設定範囲は、図10のアトラクタ・フィルタ3と同様に、パラメータの設定範囲を決定する数式モデル(式(12)又は式(13)の数式モデル)によって決定される。
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
1 基準クロック信号入力端子、2 EX−OR型位相比較器、3 アトラクタ・フィルタ、4 VCO(電圧制御発振器)、5 クロック分周器、6 クロック信号出力端子、7 アトラクタ生成回路、8 周波数位相比較器、9 CP(チャージ・ポンプ)。

Claims (8)

  1. 基準クロック信号の周期毎に、上記基準クロック信号と比較クロック信号の位相差を検出し、高電圧レベルと低電圧レベルの2値からなる矩形波信号であって、上記高電圧レベルと上記低電圧レベルの時間幅の差が上記位相差に比例しており、上記位相差が零であれば、上記時間幅の差が零である矩形波信号を出力する位相比較器と、
    上記位相比較器から出力された矩形波信号の電圧値に応じた周波数のクロック信号を発振する電圧制御発振器と、
    上記電圧制御発振器により発振されたクロック信号を分周し、分周後のクロック信号を比較クロック信号として上記位相比較器に出力する分周器と
    を備えたスペクトル拡散クロック・ジエネレータ。
  2. 位相比較器から電圧制御発振器に出力される矩形波信号を濾過して、上記電圧制御発振器により発振されるクロック信号の周波数をアトラクタ状態とするアトラクタ・フィルタを備えたことを特徴とする請求項1記載のスペクトル拡散クロック・ジエネレータ。
  3. 位相比較器から電圧制御発振器に出力される矩形波信号の波形を変形して、上記電圧制御発振器により発振されるクロック信号の周波数をアトラクタ状態とするアトラクタ生成回路を備えたことを特徴とする請求項1記載のスペクトル拡散クロック・ジエネレータ。
  4. 基準クロック信号の周期毎に、上記基準クロック信号と比較クロック信号の位相を比較する位相比較器と、
    上記位相比較器の比較結果が、上記比較クロック信号の位相が上記基準クロック信号の位相より進んでいる旨を示していれば、第1の電圧値の信号を出力し、上記比較クロック信号の位相が上記基準クロック信号の位相より遅れている旨を示していれば、第2の電圧値の信号を出力するチャージ・ポンプと、
    上記チャージ・ポンプの出力信号の電圧値に応じた周波数のクロック信号を発振する電圧制御発振器と、
    上記電圧制御発振器により発振されたクロック信号を分周し、分周後のクロック信号を比較クロック信号として上記位相比較器に出力する分周器と
    を備えたスペクトル拡散クロック・ジエネレータ。
  5. チャージ・ポンプから電圧制御発振器に出力される信号を濾過して、上記電圧制御発振器により発振されるクロック信号の周波数をアトラクタ状態とするアトラクタ・フィルタを備えたことを特徴とする請求項4記載のスペクトル拡散クロック・ジエネレータ。
  6. チャージ・ポンプから電圧制御発振器に出力される矩形波信号の波形を変形して、上記電圧制御発振器により発振されるクロック信号の周波数をアトラクタ状態とするアトラクタ生成回路を備えたことを特徴とする請求項4記載のスペクトル拡散クロック・ジエネレータ。
  7. パラメータの設定範囲を決定する数式モデルによって、アトラクタ・フィルタのパラメータの設定範囲が決定されていることを特徴とする請求項2または請求項5記載のスペクトル拡散クロック・ジエネレータ。
  8. パラメータの設定範囲を決定する数式モデルによって、アトラクタ生成回路のパラメータの設定範囲が決定されていることを特徴とする請求項3または請求項6記載のスペクトル拡散クロック・ジエネレータ。
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