JP2014099415A - 燃料電池用電極触媒層、膜電極接合体及び固体高分子型燃料電池。 - Google Patents
燃料電池用電極触媒層、膜電極接合体及び固体高分子型燃料電池。 Download PDFInfo
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Abstract
運転温度80〜120℃、湿度60%RH以下という高温低加湿条件下であっても、良好な出力特性を有する固体高分子型燃料電池、及び前記燃料電池を実現し得る燃料電池用電極触媒層及び膜電極接合体を提供すること。
【解決手段】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有し、当量重量が250〜680であるプロトン伝導性フッ素系高分子電解質と、導電性粒子上に触媒粒子を担持した複合粒子と、を含む燃料電池用電極触媒層。
−(CF2CF2)− (1)
−(CF2−CF(−O−(CF2CFXO)m−(CF2)n−SO3Z))− (2)
(一般式(2)中、Xはフッ素原子、塩素原子又はパーフルオロアルキル基を示し、mは0〜5の整数を示し、nは0〜6の整数を示す。ただし、m及びnは同時に0にならない。Zはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属原子、又は水素原子を示す。)
【選択図】なし
Description
特に、固体高分子型燃料電池は、その他の燃料電池と比較して低温で作動することから、車載用電源や家庭用コジェネレーションシステムに用いられるものとして期待されている。
また、特許文献2には、EWが555〜715であり、側鎖に特定の官能基を2個有する繰り返し単位を含むフッ素系高分子電解質が開示されている。そして、このフッ素系高分子電解質を用いた発電用セルは、セル温度80℃、水素燃料ガスの加湿温度50℃、空気ガスの加湿温度70%の低加湿条件で比較的高い出力電圧を実現している。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、運転温度80〜120℃、湿度60%RH以下という高温低加湿条件下であっても、良好な出力特性を有する固体高分子型燃料電池、及び前記燃料電池を実現し得る燃料電池用電極触媒層及び膜電極接合体を提供することを目的とする。
[1]
下記一般式(1)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有し、当量重量が250〜680であるプロトン伝導性フッ素系高分子電解質と、導電性粒子上に触媒粒子を担持した複合粒子と、を含む燃料電池用電極触媒層。
−(CF2CF2)− (1)
−(CF2−CF(−O−(CF2CFXO)m−(CF2)n−SO3Z))− (2)
(一般式(2)中、Xはフッ素原子、塩素原子又はパーフルオロアルキル基を示し、mは0〜5の整数を示し、nは0〜6の整数を示す。ただし、m及びnは同時に0にならない。Zはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属原子、又は水素原子を示す。)
[2]
前記mが0であり、前記nが2であり、前記Zが水素原子である、上記[1]記載の燃料電池用電極触媒層。
[3]
前記フッ素系高分子電解質は、下記一般式(3)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(4)で表される繰り返し単位を有する前駆体から得られるものであり、
前記前駆体のメルトフローレートが10.0g/10分以下であり、
前記フッ素系高分子電解質を90℃の熱水中に5時間静置して得られる処理後電解質の質量保持率が、前記フッ素系高分子電解質の質量に対して97質量%以上である、上記[1]又は[2]記載の燃料電池用電極触媒層。
−(CF2CF2)− (3)
−(CF2−CF(−O−(CF2CFXO)m−(CF2)n−SO2F))− (4)
(一般式(4)中、X、m及びnは前記一般式(2)におけるものと同義である。)
[4]
前記触媒粒子に対する前記フッ素系高分子電解質の質量比が0.1〜10である、上記[1]〜[3]のいずれか記載の燃料電池用電極触媒層。
[5]
前記一般式(1)で表される繰り返し単位、及び前記一般式(2)で表される繰り返し単位を有し、当量重量が250〜680であるプロトン伝導性フッ素系高分子電解質と、導電性粒子上に触媒粒子を担持した複合粒子と、低級アルコールと、を含み、前記フッ素系高分子電解質のスルホン酸単位モル当りの低級アルコール溶媒量(低級アルコール/SO3H)(mol比)が100以上である、燃料電池用電極触媒組成物。
[6]
前記mが0であり、前記nが2であり、前記Zが水素原子である、上記[5]記載の燃料電池用電極触媒組成物。
[7]
前記フッ素系高分子電解質は、前記一般式(3)で表される繰り返し単位、及び前記一般式(4)で表される繰り返し単位を有する前駆体から得られるものであり、
前記前駆体のメルトフローレートが10.0g/10分以下であり、
前記フッ素系高分子電解質を90℃の熱水中に5時間静置して得られる処理後電解質の質量保持率が、前記フッ素系高分子電解質の質量に対して97質量%以上である、上記[5]又は[6]記載の燃料電池用電極触媒組成物。
[8]
前記触媒粒子に対する前記フッ素系高分子電解質の質量比が0.1〜10である、上記[5]〜[7]のいずれか記載の燃料電池用電極触媒組成物。
[9]
上記[5]〜[8]のいずれか記載の燃料電池用電極触媒組成物から形成された燃料電池用電極触媒層。
[10]
上記[1]〜[4]、[9]のいずれか記載の燃料電池用電極触媒層を備える膜電極接合体。
[11]
上記[10]記載の膜電極接合体を備える固体高分子型燃料電池。
[12]
プロトン伝導性高分子電解質膜の片面に燃料極、もう一方の面に空気極が各々配置された膜電極接合体を備える固体高分子型燃料電池であって、
前記燃料極及び空気極は、触媒とプロトン伝導性フッ素系高分子電解質とを含有するガス拡散電極であり、
運転温度をT℃としたときに下記式(7)を満たす固体高分子型燃料電池。
燃料ガス及び/又は空気ガスの加湿温度が(T−15)℃であるときの単位電流密度(A/cm2)≧燃料ガス及び/又は空気ガスの加湿温度がT℃であるときの単位電流密度(A/cm2) (7)
[13]
運転電圧を0.7Vの定電圧で20時間保持した後、前記式(7)を満たす、上記[12]記載の固体高分子型燃料電池。
[14]
前記プロトン伝導性高分子電解質膜がプロトン伝導性フッ素系高分子電解質を含む、上記[12]又は[13]記載の固体高分子型燃料電池。
[15]
前記膜電極接合体が上記[10]記載の膜電極接合体である、上記[12]〜[14]のいずれか記載の固体高分子型燃料電池。
本実施形態の燃料電池用電極触媒層(以下、単に「電極触媒層」ともいう。)は、下記式(1)で表される繰り返し単位と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位とを有し、かつ当量重量(以下「EW」と表記する)が250〜680であるフッ素系高分子電解質を含む。
−(CF2CF2)− (1)
−(CF2−CF(−O−(CF2CFXO)m−(CF2)n−SO3Z))− (2)
燃料電池用電極触媒層の製造方法としては特に限定されず、従来公知の製造方法であってもよい。例えば、以下の(第1の工程)〜(第5の工程)の各工程、
(第1の工程)フッ素系高分子電解質の前駆体を得る工程と、
(第2の工程)上記前駆体に化学処理を施してフッ素系高分子電解質を得る工程と、
(第3の工程)上記フッ素系高分子電解質を溶媒に溶解又は懸濁してフッ素系高分子電解質溶液を得る工程と、
(第4の工程)上記フッ素系高分子電解質溶液と上述の複合粒子と溶媒とを混合した混合液を得る工程と、
(第5の工程)上記混合液を用いて高分子電解質膜上に電極触媒層を形成する工程と、
を含む。以下、各工程について説明する。
第1の工程では、フッ素系高分子電解質の前駆体を得る。
前駆体は、本実施形態に係るフッ素系高分子電解質を生成可能なものであれば特に限定されない。その前駆体は、化学処理によって下記一般式(5)で表される基に変換される基を有することが好ましい。
−SO3Z (5)
ここで、式(5)中、Zは上記一般式(2)におけるものと同義である。
上記フッ化ビニル化合物としては、下記一般式(6)で表されるフッ化ビニル化合物が好ましい。
CF2=CF(−O−(CF2CFXO)m−(CF2)n−SO2F (6)
ここで、式(6)中、Xはフッ素原子、塩素原子又はパーフルオロアルキル基を示し、mは0〜5の整数を示し、nは0〜6の整数を示す。ただし、m及びnは同時に0にならない。
従って、上記前躯体は、好ましくは下記一般式(3)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(4)で表される繰り返し単位を有する。
−(CF2CF2)− (3)
−(CF2−CF(−O−(CF2CFXO)m−(CF2)n−SO2F))− (4)
(一般式(4)中、X、m及びnは前記一般式(2)におけるものと同義である。)
EWを小さくする観点からは、mは0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。また、本発明により奏する効果がより顕著となる傾向にあるため、nは2又は4であることが好ましく、nは2であることがより好ましい。なお、上記フッ化ビニル化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
第2の工程では、上記前駆体に化学処理を施してフッ素系高分子電解質を得る。上記化学処理としては、例えば、加水分解処理、酸処理が挙げられる。加水分解処理としては、例えば、上記前駆体を塩基性溶液に浸漬する処理が挙げられる。
第3の工程では、上記フッ素系高分子電解質を溶媒に溶解又は懸濁してフッ素系高分子電解質溶液を得る。なお、フッ素系高分子電解質溶液には、フッ素系高分子電解質を溶媒に懸濁して得られるフッ素系高分子電解質懸濁液も包含される。フッ素系高分子電解質溶液の状態として、より具体的には、液体中に液体粒子がコロイド粒子又はそれよりも粗大な粒子として分散して乳状をなす乳濁液、液体中に固体粒子がコロイド粒子又は顕微鏡で見える程度の粒子として分散した懸濁液、巨大分子が分散した状態のコロイド状液体、多数の小分子が分子間力で会合して形成された親液コロイド分散系であるミセル状液体も包含される。フッ素系高分子電解質溶液は、これらのうちの1種の状態であってもをよく、2種以上を組み合わせた状態であってもよい。
第4の工程では、上記フッ素系高分子電解質溶液と上述の複合粒子と溶媒とを混合した混合液すなわち燃料電池用電極触媒組成物(以下「電極触媒組成物」ともいう。)を得る。それらの混合は常法により行われ、溶媒中のフッ素系高分子電解質溶液及び複合粒子の分散性を向上させるために、様々な装置を用いてそれらの分散処理を行ってもよい。上記装置としては、例えば、ホモジナイザー、ボールミル、超音波処理、加圧分散処理が挙げられる。
第5の工程では、上記混合液を用いて高分子電解質膜上に電極触媒層を形成する。本実施形態の電極触媒層は、上記フッ素系高分子電解質溶液と複合粒子とを含有する混合液である電極触媒組成物を、高分子電解質膜、好ましくはフッ素系高分子電解質膜上に塗布して、更に乾燥及び熱処理を施すことで形成される。
あるいは、上記電極触媒組成物を基材上、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート上に塗布して、更に乾燥及び熱処理を施して電極触媒層を得た後、その電極触媒層を高分子電解質膜に積層して接合することによって、本実施形態の電極触媒層が形成される。この場合、電極触媒層と高分子電解質膜とをその積層方向に100〜200℃で加熱プレスすることにより、それらを接合することができる。
本実施形態のMEAは、高分子電解質膜上に電極触媒層を接合することにより得られる。なお、そのMEAがガス拡散層を備える場合も、電極触媒層と高分子電解質膜とを接合するのと同様に、電極触媒層に加熱プレスしてガス拡散層を接合すればよい。
プロトン伝導性高分子電解質膜の片面に燃料極、もう一方の面に空気極が各々配置された膜電極接合体を備える固体高分子型燃料電池であって、
前記燃料極及び空気極は、触媒とプロトン伝導性フッ素系高分子電解質とを含有するガス拡散電極であり、
運転温度をT℃としたときに下記式(7)を満たす固体高分子型燃料電池である。
燃料ガス及び/又は空気ガスの加湿温度が(T−15)℃であるときの単位電流密度(A/cm2)≧燃料ガス及び/又は空気ガスの加湿温度がT℃であるときの単位電流密度(A/cm2) (7)
上記前駆体が有する不安定末端基を安定化する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、前駆体をフッ素化剤で処理して不安定末端基を−CF3に変換して安定化する方法、前駆体を加熱脱炭酸して不安定末端基を−CF2Hに変換して安定化する方法が挙げられる。
スルホン酸基の対イオンがプロトンの状態となっており、一方の主面の面積がおよそ2〜20cm2のフッ素系高分子電解質膜を、25℃で飽和NaCl水溶液30mLに浸漬し、攪拌しながら30分間放置した。次いで、その飽和NaCl水溶液中のプロトンを、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定した。中和滴定後に得られたスルホン酸基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっている電解質膜を純水ですすぎ、更に真空乾燥した後に秤量した。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、スルホン酸基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっている電解質膜の質量をW(mg)とし、下記式(A)より当量重量EW(g/eq)を求めた。
EW=(W/M)−22 (A)
フッ素系高分子電解質の前駆体のMFRは、ASTM規格D1238に従って、270℃、荷重2.16kgの条件下で、MELT INDEXER TYPE C−5059D(商品名、東洋精機社製)を用いて測定した。MFRの単位として、押し出された前駆体の質量を10分間当たりのグラム数で表した。
日本ベル(株)社製の高分子膜水分量試験装置MSB−AD−V−FC(商品名)を用いて、フッ素系高分子電解質膜の伝導度を測定した。
フッ素系高分子電解質膜を23℃、50%RHの恒温恒湿室に24時間静置後、秤量して処理前質量とした。次いで、その電解質膜を90℃の熱水中に浸漬して5時間の熱処理を施した。次に、電解質膜を浸漬した状態で熱水を冷却した後、電解質膜を水中から取り出し、23℃、50%RHの恒温恒湿室に24時間静置後、秤量して処理後質量とした。この処理後質量は処理後電解質の質量に該当する。下記式(B)により、電解質膜の質量減少率を算出した。質量減少率の数値が低いほど耐熱水溶解性が高いことを示す。
質量減少率(%)=(処理前質量−処理後質量)/処理前質量×100 (B)
後述のようにして作製した電極触媒層(フッ素系高分子電解質膜)及び膜電極接合体の電池特性(以下「初期特性」という)を調べるため、下記のような燃料電池評価を実施した。
まず、アノード側ガス拡散層とカソード側ガス拡散層とを対向させて、それらの間に下記のようにして作製したMEAを挟み込み、評価用セルに組み込んだ。アノード側及びカソード側のガス拡散層として、カーボンクロス(米国DE NORA NORTH AMERICA社製、ELAT(登録商標)B−1)を用いた。この評価用セルを評価装置((株)チノー社製)に設置して80℃に昇温した後、アノード側に水素ガスを300cc/分、カソード側に空気ガスを800cc/分で流し、アノード側及びカソード側共に常圧または0.15MPa(絶対圧力)に加圧した。それらのガスは、予め加湿されたものであり、水バブリング方式により、水素ガス及び空気ガス共に所望の温度で加湿して評価用セルへ供給した。そして、セル温度80℃、所望の加湿度の条件下、評価用セルを0.7Vの電圧で20時間保持した後、電流を測定した。
CF2=CF2及びCF2=CF−O−(CF2)2−SO3Hに由来する繰り返し単位を有し、EWが560のフッ素系高分子電解質を下記のように調製した。
攪拌翼と温調用ジャケットとを備えた内容積6リットルのSUS−316製耐圧容器に、逆浸透膜水2970g、C7F15COONH460g、及びCF2=CFOCF2CF2SO2F 510gを仕込んだ。次いで、その系内を窒素で置換した後に真空とし、その後、テトラフルオロエチレン(TFE)を内圧が0.2MPaGになるまで導入した。次に、耐圧容器内の混合液を400rpmで攪拌しながら、内温が38℃になるように温度を調整し、爆発防止材としてのCF4を0.1MPaG導入した後、内圧が0.58MPaGとなるように更にTFEを導入した。続いて、(NH4)2S2O86gを20gの水に溶解させたものを系内に導入し、重合を開始した。その後、耐圧容器の内圧を0.57MPaGに維持するようにTFEを随時追加した。
次いで、反応器内のガス状ハロゲン化剤を排気し、真空引きした後、フッ素ガスを窒素ガスで20質量%に希釈し得られたガス状ハロゲン化剤をゲージ圧が0.00MPaGの圧力になるまで反応器に導入して、3時間保持した。
その後、反応器を室温まで冷却し、反応器内のガス状ハロゲン化剤を排気し、真空引き、窒素置換を3回繰り返した後、反応器を開放し、280gの前駆体を得た。
得られた前駆体のMFRは2.9g/10分であった。
このフッ素系高分子電解質を混合液であるエタノール水溶液(水:エタノール=50.0:50.0(質量比))とともに5Lオートクレーブのガラス製内筒中に導入して密閉し、それらを撹拌翼で攪拌しながら、164℃まで内筒内を昇温して7時間保持した。その後、内筒内を自然に冷却して、固形分濃度5.5質量%の組成分布が均一なフッ素系高分子電解質溶液AS1を得た。
触媒粒子である白金(Pt)粒子を導電性粒子であるカーボン粒子に担持した複合粒子であるPt担持カーボン(田中貴金属(株)社製、商品名「TEC10E40E」、Pt36.0質量%担持)粒子0.70gに対し、上記電解質溶液AS2 2.22gとエタノール8.08gとを添加した後、それらをホモジナイザーで十分に混合して電極触媒組成物を得た。この電極触媒組成物は、エタノール/SO3H(mol比)が350であり、ゲル化のない流動性の高いインクであった。一方、エタノール/SO3H(mol比)が90である電極触媒組成物はゲル化が進行し、流動性の非常に低いインクであり、均質な電極触媒層を製造することが困難であった。この電極触媒組成物をスクリーン印刷法にてPTFEシート上に塗布した。塗布後、空気中、室温下で1時間、続いて160℃で1時間、乾燥した。このようにして、PTFEシート上に厚み10μm程度の電極触媒層を得た。これらの電極触媒層のうち、Pt担持量が0.15mg/cm2のものをアノード触媒層(厚み:5μm)として、Pt担持量が0.30mg/cm2のものをカソード触媒層(厚み:10μm)として、それぞれ用いた。
攪拌翼と温調用ジャケットとを備えた内容積6リットルのSUS−316製耐圧容器に、逆浸透膜水2980g、C7F15COONH460g、及びCF2=CFOCF2CF2SO2F 943gを仕込んだ。次いで、その系内を窒素で置換した後に真空とし、その後、TFEを内圧が0.2MPaGになるまで導入した。次に、耐圧容器内の混合液を400rpmで攪拌しながら、内温が38℃になるように温度を調整し、爆発防止材としてのCF4を0.1MPaG導入した後、内圧が0.50MPaGとなるように更にTFEを導入した。続いて、(NH4)2S2O86gを20gの水に溶解させたものを系内に導入し、重合を開始した。その後、耐圧容器の内圧を0.51MPaGに維持するようにTFEを随時追加した。
得られた前駆体のMFRは16g/10分であった。
このMEAを用いて、燃料電池評価を上述のようにして行った。その結果、セル温度80℃、65℃の飽和水蒸気圧(湿度53%RHに相当)の条件下、0.7Vの電圧で20時間保持した後の電流密度は0.30A/cm2となった。その後、セル温度80℃、50℃の飽和水蒸気圧(湿度26%RHに相当)の条件下、0.7Vの電圧で20時間保持した後の電流密度は0.19A/cm2となった。高分子電解質の前駆体が高いMFRを示すことに起因して、より低加湿条件下では、実施例1と比べて劣る結果になったものと考えられる。一方、セル温度80℃、80℃の飽和水蒸気圧(湿度100%RHに相当)の条件下、0.7Vの電圧で20時間保持した後の電流密度は0.05A/cm2であった。
実施例1記載の電解質溶液AS2をガラス板上に注いで塗布(キャスト)した。次に、電解質溶液AS2をキャストしたガラス板をオーブンに入れて60℃で30分間予備乾燥した後、80℃で30分間乾燥させて溶媒を除去し、さらに120℃で1時間の熱処理を施し、膜厚約32μmのフッ素系高分子電解質膜を得た。
このフッ素系高分子電解質膜のEWは560であった。この電解質膜について、90℃熱水溶解試験を行ったところ、質量減少率は8.7質量%であった。
電極触媒層およびMEAの製造において、電極組成物を塗布後、空気中室温下で1時間、続いて120℃で1時間乾燥した以外は、すべて実施例1と同様にして電極触媒層およびMEAを作製した。このMEAを用いて、燃料電池評価を上述のようにして行った。その結果、セル温度80℃、65℃の飽和水蒸気圧(湿度53%RHに相当)の条件下、0.7Vの電圧で20時間保持した後の電流密度は0.26A/cm2となった。その後、セル温度80℃、50℃の飽和水蒸気圧(湿度26%RHに相当)の条件下、0.7Vの電圧で20時間保持した後の電流密度は0.14A/cm2となった。高分子電解質膜の熱処理条件に起因して、より低加湿条件下では、実施例1と比べて劣る結果になったものと考えられる。一方、セル温度80℃、80℃の飽和水蒸気圧(湿度100%RHに相当)の条件下、0.7Vの電圧で20時間保持した後の電流密度は0.03A/cm2であった。
実施例1記載の電解質溶液AS2をガラス板上に注いで塗布(キャスト)した。次に、電解質溶液AS2をキャストしたガラス板をオーブンに入れて60℃で30分間予備乾燥した後、80℃で30分間乾燥させて溶媒を除去し、さらに160℃で1分の熱処理を施し、膜厚約32μmのフッ素系高分子電解質膜を得た。
このフッ素系高分子電解質膜のEWは560であった。この電解質膜について、90℃熱水溶解試験を行ったところ、質量減少率は10.2質量%であった。
電極触媒層およびMEAの製造において、電極組成物を塗布後、空気中室温下で1時間、続いて160℃で1分乾燥した以外は、すべて実施例1と同様にして電極触媒層およびMEAを作製した。このMEAを用いて、燃料電池評価を上述のようにして行った。その結果、セル温度80℃、65℃の飽和水蒸気圧(湿度53%RHに相当)の条件下、0.7Vの電圧で20時間保持した後の電流密度は0.22A/cm2となった。その後、セル温度80℃、50℃の飽和水蒸気圧(湿度26%RHに相当)の条件下、0.7Vの電圧で20時間保持した後の電流密度は0.10A/cm2となった。高分子電解質膜の熱処理条件に起因して、より低加湿条件下では、実施例1に劣る結果になったものと考えられる。一方、セル温度80℃、80℃の飽和水蒸気圧(湿度100%RHに相当)の条件下、0.7Vの電圧で20時間保持した後の電流密度は0.03A/cm2であった。
攪拌翼と温調用ジャケットとを備えた内容積189リットルのSUS−316製耐圧容器に、逆浸透膜水90.5kg、C7F15COONH40.945g、及びCF2=CFOCF2CF2SO2F 5.68kgを仕込んだ。次いで、その系内を窒素で置換した後に真空とし、その後、TFEを内圧が0.2MPaGになるまで導入した。次に、耐圧容器内の混合液を189rpmで攪拌しながら、内温が47℃になるように温度を調整し、爆発防止材としてのCF4を0.1MPaG導入した後、内圧が0.70MPaGとなるように更にTFEを導入した。続いて、(NH4)2S2O847gを3Lの水に溶解させたものを系内に導入し、重合を開始した。その後、耐圧容器の内圧を0.7MPaGに維持するようにTFEを随時追加した。その際、TFEを1kg供給する毎に、CF2=CFOCF2CF2SO2Fを0.7kg供給して重合を継続した。
次いで、反応器内のガス状ハロゲン化剤を排気し、真空引きした後、フッ素ガスを窒素ガスで20質量%に希釈し得られたガス状ハロゲン化剤をゲージ圧が0.00MPaGの圧力になるまで反応器に導入して、3時間保持した。
その後、反応器を室温まで冷却し、反応器内のガス状ハロゲン化剤を排気し、真空引き、窒素置換を3回繰り返した後、反応器を開放し、28kgの前駆体を得た。
得られた前駆体のMFRは3.0g/10分であった。
このMEAを用いて、燃料電池評価を上述のようにして行った。その結果、セル温度80℃、65℃の飽和水蒸気圧(湿度53%RHに相当)の条件下、0.7Vの電圧で20時間保持した後の電流密度は0.30A/cm2となり、実施例1のMEAに比べて電流密度が低くなった。その後、セル温度80℃、50℃の飽和水蒸気圧(湿度26%RHに相当)の条件下、0.7Vの電圧で20時間保持した後の電流密度は0.12A/cm2となり、より低い湿度条件においてはより低い電流密度しか得られなかった。一方、セル温度80℃、80℃の飽和水蒸気圧(湿度100%RHに相当)の条件下、0.7Vの電圧で20時間保持した後の電流密度は0.37A/cm2であり、より高い湿度条件において電流密度は増大した。
(1)本実施形態の電極触媒層及びMEAは、低加湿条件下で高い電池性能を有する燃料電池を実現し得る。
(2)前駆体のMFRを適切に設定することは、高温低加湿条件下での良好な出力性能を維持する観点から好ましい。
(3)高分子電解質膜の熱処理を適切に行うことは、高温低加湿条件下での良好な出力性能を維持する観点から好ましい。
[1]
プロトン伝導性高分子電解質膜の片面に燃料極、もう一方の面に空気極が各々配置された膜電極接合体を備える固体高分子型燃料電池であって、
前記燃料極及び空気極は、触媒とプロトン伝導性フッ素系高分子電解質とを含有するガス拡散電極であり、
運転温度をT℃としたときに下記式(7)を満たす固体高分子型燃料電池。
燃料ガス及び/又は空気ガスの加湿温度が(T−15)℃であるときの単位電流密度(A/cm2)≧燃料ガス及び/又は空気ガスの加湿温度がT℃であるときの単位電流密度(A/cm2) (7)
[2]
運転電圧を0.7Vの定電圧で20時間保持した後、前記式(7)を満たす、上記[1]記載の固体高分子型燃料電池。
[3]
前記プロトン伝導性フッ素系高分子電解質は当量重量が250〜680である、上記[1]又は[2]に記載の固体高分子型燃料電池。
[4]
前記プロトン伝導性フッ素系高分子電解質の前駆体のメルトフローレートが10.0g/10分以下である、上記[1]〜[3]のいずれか記載の固体高分子型燃料電池。
[5]
前記燃料極及び空気極は、当量重量が250〜680であるプロトン伝導性フッ素系高分子電解質と、導電性粒子上に触媒粒子を担持した複合粒子と、低級アルコールと、を含み、前記フッ素系高分子電解質のスルホン酸単位モル当りの低級アルコール溶媒量(低級アルコール/SO 3 H)(mol比)が170以上である、燃料電池用電極触媒組成物から形成されることを特徴とする、上記[1]〜[4]のいずれか記載の固体高分子型燃料電池。
[6]
前記プロトン伝導性高分子電解質膜がプロトン伝導性フッ素系高分子電解質を含む、上記[1]〜[5]のいずれか記載の固体高分子型燃料電池。
Claims (15)
- 下記一般式(1)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有し、当量重量が250〜680であるプロトン伝導性フッ素系高分子電解質と、導電性粒子上に触媒粒子を担持した複合粒子と、を含む燃料電池用電極触媒層。
−(CF2CF2)− (1)
−(CF2−CF(−O−(CF2CFXO)m−(CF2)n−SO3Z))− (2)
(一般式(2)中、Xはフッ素原子、塩素原子又はパーフルオロアルキル基を示し、mは0〜5の整数を示し、nは0〜6の整数を示す。ただし、m及びnは同時に0にならない。Zはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属原子、又は水素原子を示す。) - 前記mが0であり、前記nが2であり、前記Zが水素原子である、請求項1記載の燃料電池用電極触媒層。
- 前記フッ素系高分子電解質は、下記一般式(3)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(4)で表される繰り返し単位を有する前駆体から得られるものであり、
前記前駆体のメルトフローレートが10.0g/10分以下であり、
前記フッ素系高分子電解質を90℃の熱水中に5時間静置して得られる処理後電解質の質量保持率が、前記フッ素系高分子電解質の質量に対して97質量%以上である、請求項1又は2記載の燃料電池用電極触媒層。
−(CF2CF2)− (3)
−(CF2−CF(−O−(CF2CFXO)m−(CF2)n−SO2F))− (4)
(一般式(4)中、X、m及びnは前記一般式(2)におけるものと同義である。) - 前記触媒粒子に対する前記フッ素系高分子電解質の質量比が0.1〜10である、請求項1〜3のいずれか1項記載の燃料電池用電極触媒層。
- 前記一般式(1)で表される繰り返し単位、及び前記一般式(2)で表される繰り返し単位を有し、当量重量が250〜680であるプロトン伝導性フッ素系高分子電解質と、導電性粒子上に触媒粒子を担持した複合粒子と、低級アルコールと、を含み、前記フッ素系高分子電解質のスルホン酸単位モル当りの低級アルコール溶媒量(低級アルコール/SO3H)(mol比)が100以上である、燃料電池用電極触媒組成物。
- 前記mが0であり、前記nが2であり、前記Zが水素原子である、請求項5記載の燃料電池用電極触媒組成物。
- 前記フッ素系高分子電解質は、前記一般式(3)で表される繰り返し単位、及び前記一般式(4)で表される繰り返し単位を有する前駆体から得られるものであり、
前記前駆体のメルトフローレートが10.0g/10分以下であり、
前記フッ素系高分子電解質を90℃の熱水中に5時間静置して得られる処理後電解質の質量保持率が、前記フッ素系高分子電解質の質量に対して97質量%以上である、請求項5又は6記載の燃料電池用電極触媒組成物。 - 前記触媒粒子に対する前記フッ素系高分子電解質の質量比が0.1〜10である、請求項5〜7のいずれか1項記載の燃料電池用電極触媒組成物。
- 請求項5〜8のいずれか1項記載の燃料電池用電極触媒組成物から形成された燃料電池用電極触媒層。
- 請求項1〜4、9のいずれか1項記載の燃料電池用電極触媒層を備える膜電極接合体。
- 請求項10記載の膜電極接合体を備える固体高分子型燃料電池。
- プロトン伝導性高分子電解質膜の片面に燃料極、もう一方の面に空気極が各々配置された膜電極接合体を備える固体高分子型燃料電池であって、
前記燃料極及び空気極は、触媒とプロトン伝導性フッ素系高分子電解質とを含有するガス拡散電極であり、
運転温度をT℃としたときに下記式(7)を満たす固体高分子型燃料電池。
燃料ガス及び/又は空気ガスの加湿温度が(T−15)℃であるときの単位電流密度(A/cm2)≧燃料ガス及び/又は空気ガスの加湿温度がT℃であるときの単位電流密度(A/cm2) (7) - 運転電圧を0.7Vの定電圧で20時間保持した後、前記式(5)を満たす、請求項12記載の固体高分子型燃料電池。
- 前記プロトン伝導性高分子電解質膜がプロトン伝導性フッ素系高分子電解質を含む、請求項12又は13記載の固体高分子型燃料電池。
- 前記膜電極接合体が請求項10記載の膜電極接合体である、請求項12〜14のいずれか1項記載の固体高分子型燃料電池。
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