JP2014098473A - 圧力リング装着ピストン - Google Patents

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Abstract

【課題】圧力リング装着ピストンにおいて、第2圧力リングをリング溝面から離間しやすくして、オイル消費を低減することである。
【解決手段】圧力リング装着ピストン18は、第1リング溝40にピストン移動方向の移動可能に配置された第1圧力リングであるトップリング34と、第2リング溝42にピストン移動方向の移動可能に配置された第2圧力リングであるセカンドリング36とを含む。セカンドリング36のクランク室側の軸方向片側の端面である第2端面、または第2端面に対向する第2リング溝42のリング溝面を対向形成面として、対向形成面は、表面粗さの最大深さよりも大きな凸部または凹部を有している。
【選択図】図2

Description

本発明は、圧力リング装着ピストンに関し、特にピストンの複数のリング溝に燃焼室側からクランク室側に向かって第1圧力リングと第2圧力リングとオイルリングとが順に配置された構造に関する。
従来から内燃機関用ピストンの外周面に複数のリング溝を設けるとともに、複数のリング溝に圧力リング及びオイルリングを配置することが行われている。
特許文献1には、2ピース構造のオイルリングが記載されている。オイルリングが油膜によってリング溝の下面に付着することを抑制し、オイルリングの上面とリング溝との間からリング溝内のオイルが吸い上げられるのを抑制するために、リング溝の下面またはオイルリングの下面に凹部が設けられている。
特許文献2には、第1圧力リングであるトップリングにおいて、皿バネ状の断面を持ち、シリンダにピストンが嵌合された場合に、トップリングが、ピストンのリング溝の溝面と対向する軸方向端のリング端面を有し、リング端面に溝面と平行またはほとんど平行な平滑部を設けることが記載されている。この場合、トップリングは、断面形状で燃焼室側の外側上向きか、またはクランク室側の外側下向きの姿勢を有する。
特許文献3には、ピストンの外周面で、トップリングと第2圧力リングであるセカンドリングとの間のセカンドランドと対向する空間の圧力上昇によって、セカンドリングの下面がリング溝に押し付けられる力を低減するために、セカンドリングの下面をテーパ形状とすることが記載されている。
特開2010−270868号公報 特開昭61−11441号公報 特開2000−9225号公報
第2圧力リングは、ピストンの往復移動に伴う慣性力と、シリンダ壁面との間の摩擦力と、リング両側の圧力差等とに影響されてリング溝内で移動する。この場合、第2圧力リングにおいて、ピストンの移動方向や移動速度の変化にかかわらず、第2圧力リングのクランク室側端面と第2リング溝のリング溝面との間の油の介在によりリング溝面に第2圧力リングが吸着されたままとなる場合がある。この場合、クランク室側のオイルが燃焼室側に運ばれて消費されるという「オイル上がり」が生じて、オイル消費が大きくなる可能性がある。
本発明の目的は、圧力リング装着ピストンにおいて、第2圧力リングをリング溝面から離間しやすくして、オイル消費を低減することである。
本発明に係る圧力リング装着ピストンは、外周面に燃焼室側からクランク室側に向かって第1リング溝と第2リング溝とオイルリング溝とが順に形成された内燃機関用のピストン本体と、前記第1リング溝にピストン移動方向へ移動可能に配置され、前記第1リング溝の溝底径よりも大きい内径を有する第1圧力リングと、前記第2リング溝にピストン移動方向へ移動可能に配置され、前記第2リング溝の溝底径よりも大きい内径を有する第2圧力リングとを備え、前記第2圧力リングのクランク室側の第2端面、または前記第2端面に対向するリング溝面を対向形成面として、前記対向形成面は、表面粗さの最大深さよりも大きな凹部または、凸部を有している。
なお、本発明において、「凸部」には、第2圧力リングの第2端面を全面にわたって径方向外側に向かって第2溝面側に傾斜させてテーパ面とした場合の外周端は含まないし、「凹部」には同じ場合の内周側部分は含まない。
本発明に係る圧力リング装着ピストンにおいて、好ましくは、前記対向形成面の円周方向に対して直交する平面で切断した場合の断面形状は、一部または全部に軸方向に突出するように形成され、少なくとも一部が断面円弧の曲線である凸部を有する。
本発明に係る圧力リング装着ピストンにおいて、好ましくは、前記凸部は、前記第2圧力リングの前記第2端面に全周にわたって軸方向に突出するように形成され、前記第2リング溝内における前記第2圧力リングの移動にかかわらず、前記凸部の頂部は前記第2溝面に軸方向に対向している。
本発明に係る圧力リング装着ピストンにおいて、好ましくは、前記対向形成面に、油に対する濡れ性を低下させる濡れ性低減処理が施されている。
本発明の圧力リング装着ピストンによれば、第2圧力リングの第2端面と第2リング溝のリング溝面との間に油が存在する場合でも、凹部、または凸部から外れた部分と、対向面との対向部分で隙間が大きくなるので油の移動及び変形の自由度が高くなり、全体として第2圧力リングとリング溝面との付着力が低減され、第2圧力リングがリング溝面から離間しやすくなる。このため、オイル上がりを抑制して、オイル消費を低減できる。
本発明の実施形態の圧力リング装着ピストンを組み込んだエンジンを示す概略部分断面図である。 図1のA部拡大図である。 セカンドリングを示している図2のB部拡大図である。 図3に示したセカンドリングの端面図である。 (a)は図3のC部拡大図であり、(b)は(a)の径方向位置に応じたセカンドリングの下端面と第2リング溝面との付着力を示す図である。 本発明の実施形態と同様の構成において、エンジンの高負荷運転状態で、クランク角度に応じた筒内圧Pa及びセカンドランド圧P1と、比較例のセカンドランド圧P2との計算結果、及び、ピストンの移動方向とを示す図である。 比較例を示している図3に対応する図である。 本発明の実施形態において、セカンドランド圧が小さくなる理由を説明するための図3の拡大対応図である。 本発明の実施形態の別例の第1例を示している図4に対応する図である。 本発明の実施形態の別例の第2例を示している図3に対応する図である。 図10の構成において、リング溝内でセカンドリングの内周面の一部が溝底面に接触した場合でのセカンドリングの径方向反対側の2個所を示す断面図である。 本発明の実施形態の別例の第3例を示している図3に対応する図である。 本発明の実施形態の別例の第4例を示している図3に対応する図である。 図13の構成において、リング溝内でセカンドリングの内周面の一部が溝底面に接触した場合でのセカンドリングの溝底面との接触部とは径方向反対側の断面図である。 本発明の実施形態の別例の第5例を示している図3に対応する図である。 図15のD−D断面図である。 図15の構成のセカンドリングの端面図である。 (a)は図16のE部拡大図であり、(b)は(a)の周方向位置に応じたセカンドリングの下端面と第2リング溝の溝面との付着力を示す図である。 本発明の実施形態の別例の第6例を示している図2に対応する図である。 ピストン移動時の油膜の動きを示す、図19のF部拡大対応図である。 本発明の実施形態の別例の第7例を示している図3に対応する図である。 図21において、セカンドリングがピストンに対し上に移動した場合の第2リング溝内のオイル挙動を示す図である。 本発明の実施形態の別例の第8例を示している図3に対応する図である。 図23の構成のセカンドリングの端面図である。 本発明の実施形態の別例の第9例を示している図3に対応する図である。 本発明の実施形態の別例の第10例を示している図3に対応する図である。 本発明の効果確認のために行った実験結果を示しており、エンジンの運転時にセカンドリングがリング溝下面に付着した場合と付着しない場合とでオイル吸い上げ量の差を比較した図である。
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。なお、以下の説明では、ピストンを自然吸気式のガソリンエンジンに使用する場合について説明するが、ピストンが往復移動する他のエンジンに適用することもできる。また、以下ではエンジンとして、シリンダが略鉛直方向に形成された直列複数気筒の場合を説明するが、これに限定するものではなく、V字形の複数気筒、水平対向の複数気筒等の他の形式のエンジンに適用してもよい。また、以下では、すべての図面において同様の要素には同一の符号を付して説明する。
図1は、本実施形態の圧力リング装着ピストンを組み込んだエンジンを示す概略部分断面図である。内燃機関であるガソリンエンジン10は、エンジン本体12を形成するシリンダブロック14に略鉛直方向に形成された複数のシリンダ16と、各シリンダ16の内側に上下方向に往復移動する圧力リング装着ピストン18と、圧力リング装着ピストン18に上端部が結合された結合ロッド20と、結合ロッドの下端部が結合されたクランク軸22とを備える。クランク軸22の両端部はエンジン本体12に回転可能に支持される。クランク軸22の軸方向中間部は、エンジン本体12の下部内側のクランク室24に配置される。クランク室24にはエンジンオイルである潤滑油が溜まっている。シリンダブロック14の上側にシリンダヘッド26が結合され、シリンダヘッド26とシリンダブロック14と圧力リング装着ピストン18の上面とにより燃焼室28が形成されている。
図2は、図1のA部拡大図を示している。圧力リング装着ピストン18は、ピストン本体32と、トップリング34と、セカンドリング36と、オイルコントロールリングであるオイルリング38とを含む。ピストン本体32は、上端部が塞がれた略円筒状で、外周面の上側に燃焼室28側からクランク室24側に向かって、第1リング溝40と第2リング溝42とオイルリング溝44とが順に形成されている。各リング溝40,42,44は、ピストン本体32の外周面に全周に沿って形成された断面矩形状である。
また、ピストン本体32は、オイルリング溝44とピストン内部空間46とを通じさせるように形成された油孔であるドレンホール48を含んでいる。ピストン内部空間46は下側のクランク室24と通じている。ドレンホール48の一端部はオイルリング溝44の内周部及び下部に接続され、ドレンホール48の他端部はピストン本体32の内壁に開口している。
オイルリング38は、3ピース型であり、上下2つの環状サイドレール50,52と、環状サイドレール50,52間に介装された環状スペーサ54とを含み、オイルリング溝44に装着されている。環状スペーサ54は、上下2つの環状要素の外周部同士を連結部で連結して形成され、各環状要素によって、各環状サイドレール50,52をオイルリング溝44の上下のリング溝面に押し付けている。また、各環状要素の内周端部で環状サイドレール50,52を外周側に押し広げて、周方向の張力を付与することで、各環状サイドレール50,52の外周縁をシリンダ16の壁面に摺接させている。環状スペーサ54の連結部に厚み方向に貫通する孔を形成してもよい。
トップリング34は、第1リング溝40に配置された第1圧力リングである。セカンドリング36は、第2リング溝42に配置された第2圧力リングである。後述する図4に示すように、トップリング34は、鋼等の金属から周方向一部に合口56を有する略円環状に形成される。セカンドリング36も同様である。トップリング34及びセカンドリング36は、それぞれ第1リング溝40及び第2リング溝42の内側に、ピストン移動方向である上下方向に移動可能に配置される。
セカンドリング36は、第2リング溝42の溝底径よりも大きい自由状態での内径da(図4)を有する。セカンドリング36を第2リング溝42に装着しシリンダ16内にピストン18を組み付けた状態では、セカンドリング36の内周面と第2リング溝42の溝底との間に径方向の隙間が形成される。また、セカンドリング36の外周面には、軸方向に対し傾斜したテーパ面92が形成されている。同様に、トップリング34は、第1リング溝40の溝底径よりも大きい自由状態での内径を有する。また、トップリング34を第1リング溝40に装着しシリンダ16内にピストン18を組み付けた状態では、トップリング34の内周面と第1リング溝40との間に径方向の隙間が形成される。トップリング34及びセカンドリング36の外周縁は、シリンダ16の壁面に摺接する。
ピストン本体32の外周面で、第1リング溝40よりも燃焼室28側には円筒面状のトップランド58が形成され、第1リング溝40と第2リング溝42との間には円筒面状のセカンドランド60が形成される。トップランド58とシリンダ16との間は筒状のトップランド空間62となり、セカンドランド60とシリンダ16との間は筒状のセカンドランド空間64となる。また、ピストン本体32の外周面で第2リング溝42とオイルリング溝44との間には円筒面状のサードランド66が形成される。サードランド66部分の圧力はクランク室24の圧力である大気圧とほぼ同じになる。
図3はセカンドリング36を示している図2のB部拡大図であり、図4はセカンドリング36の端面図である。セカンドリング36の軸方向片側の端面である第2端面であり、対向形成面である下端面80は、この下端面80の径方向外側部分にセカンドリング36の全周に渡って軸方向に突出形成された概略筒状の凸部68を有する。図4では砂地により凸部68を示している。凸部68の下端は平坦面としている。
図5において、(a)は図3のC部拡大図であり、(b)は(a)の径方向位置に応じたセカンドリング36の軸方向一端の下端面80と、第2リング溝42の第2リング溝面である下溝面84との付着力を示す図である。セカンドリング36の下端面80に形成された凸部68は、下端面80の表面粗さの最大深さよりも大きい軸方向高さを有する。例えば、表面粗さの最大深さに対して凸部68の軸方向高さを10倍以上とする。また、表面粗さの最大深さを50μm未満とする場合に、凸部68の軸方向高さを50μm以上としてもよい。セカンドリング36が第2リング溝42の下溝面84に押し付けられる場合に、セカンドリング36と第2リング溝42とは、凸部68と同じ範囲である、図5のPで示す範囲で接触する。範囲P以外である凸部68から外れた部分では、セカンドリング36と下溝面84とが大きく離れている。また、セカンドリング36の凸部68では、セカンドリング36をピストン本体32に組み付けた後、シリンダ16内側に組み付ける前の状態で、セカンドリング36が内周面の一部を第2リング溝42の溝底面74に突き当てるように径方向に移動した場合でも、凸部68の外周縁が第2リング溝42からはみ出ないように凸部68の径方向位置及び寸法を規制することが好ましい。
このような圧力リング装着ピストン18によれば、セカンドリング36の下端面80と、この下端面80と対向する第2リング溝42の下溝面84との間に図5で砂地で示す潤滑油が存在する場合でも、下端面80全体を表面粗さが存在するだけの平坦面とする場合に比べて下溝面84との接触面積を減少させて、凸部68から外れた部分と下溝面84との対向部分で隙間が大きくなるので油の移動及び変形の自由度が高くなる。このため、全体としてセカンドリング36と下溝面84との付着力が低減され、セカンドリング36が下溝面84から離間しやすくなる。すなわち、油膜によるセカンドリング36と下溝面84との付着力は、図5に範囲Pで示す部分である凸部68の下端と同じ範囲部分でのみ大きく作用する。このため、セカンドリング36と下溝面84との間において、油膜による付着力の総和を低減できる。
このように油膜による付着力を低減できるので、エンジン運転時にセカンドリング36が第2リング溝42内で軸方向に移動して第2リング溝42の下溝面84に接触した場合でも、ピストン本体32の移動による慣性力や、セカンドリング36両側の圧力差等に応じてセカンドリング36が第2リング溝42から離間しやすくなる。このため、オイル消費に関係するセカンドリング36の設計の容易化を図れ、クランク室24側の油が燃焼室28に運ばれて消費されるオイル上がりを抑制して、オイル消費、特に設計外のオイル消費を低減できる。
次にこの理由をさらに詳しく説明する。エンジン内でオイル消費が生じる現象としては様々な形態があるが、本実施形態では、特にオイル上がりに着目した。オイル上がりの要因としては次の(1)から(3)がある。
(1)圧力リング及びオイルリングであるピストンリングと、シリンダとの摺動面において形成された油膜が蒸発して消費される。
(2)ピストンリングとシリンダとの摺動面において形成された油膜をピストンリングが掻き上げて消費される。
(3)ピストンリングとシリンダ及びピストンとで囲まれた複数の空間(ピストンランド部)において、隣接する空間(ピストンランド部)との間のブローバイガス流れ等による圧力差によってオイルがピストンの上方に運ばれて消費される。
(1)(2)については、ピストンリングとシリンダとの摺動面における油膜形成能力に関わるピストンリング摺動面に加わる面圧と、ピストンリング摺動面の形状及びシリンダの表面形状を含む形状及びオイルの蒸発量に関わる油膜の温度に基づいた計算によっておよその設計が可能である。
一方、(3)については、通常、ピストンリングに作用する慣性力、摺動面摩擦力、リング両側の圧力差に基づいてピストンリングのリング溝内での上下挙動を算出することによって、オイル上がりに対して不都合なピストンリング挙動が発生しないように設計を行なう。例えばピストンリングの設計においては、上記の3つの力の合力に応じてピストンリングが上下に移動するように、ピストンリングの高さ、幅、合口寸法等の寸法、重量、張力、ランド空間の体積、ピストンリングとリング溝との上下方向の寸法差等を決定する。ただし、実際には、ピストンリングとリング溝との間に潤滑油が入った場合に、ピストンリングに作用する上記の3つの力に加えて油の表面張力と粘性とによって、油膜による付着力がピストンリングに作用することが分かった。このため、常には設計どおりのピストンリング挙動を実現できずに設計外のオイル消費現象が発生する場合がある。特に、ピストンリングを挟んで隣接する空間に作用する圧力差が大きい部位においては圧力差による潤滑油の移動が活発になるため、オイル消費量が急増することが分かった。例えば、自動車用エンジンのピストンにおいて本実施形態のようにトップリング及びセカンドリングとオイルリングの3本のリング構成にすることが多い。この中で、トップリング及びセカンドリングにおいてはオイルリングと比較してリング上下の圧力差が大きくなりやすい。このため、(3)に関わるオイル消費が発生しやすい。
ピストンリングに作用する油膜の付着力は、基本的にはピストンリングとリング溝面との接触面積と、そこに介在する油量とに応じて変化し、接触面積が大きいほど大きくなり、油量が多くなるほど小さくなる。実際のピストンリングとリング溝面との表面には粗さが存在する。このため、ピストンリングとリング溝面との間に介在する油膜の厚さが表面粗さと同等になるまでは、ピストンリングとリング溝面との接触面積の増加によって付着力も増加して、油膜厚さがそれ以上になると油膜が流動しやすくなり、これによって付着力が低下する傾向となる。
本実施形態によれば、このような理由からセカンドリング36の下端面80において、油膜による第2リング溝42の下溝面84との付着力を低減できる。図5において、Pの範囲では付着力が接触面積の増大に応じて大きくなるが、Rで示す範囲Pから外れた部分では油膜が流動しやすくなって付着力が低下する。このため、実機実働状態におけるセカンドリング36の挙動を、上記の3つの力(慣性力、摩擦力、圧力)によって設計された状態に近づけることができ、(3)に関わるオイル上がりに対し、設計外での現象発生を低減可能となる。
特に、エンジンの燃焼を伴う負荷運転状態では、図1の燃焼室28の筒内圧は正圧またはほぼ0となる。図6は、本例において、エンジンの高負荷運転状態で、クランク角度に応じた筒内圧Pa及びセカンドランド圧P1と、比較例のセカンドランド圧P2との計算結果、及び、ピストンの移動方向とを示す図である。なお、図6において、吸入、圧縮、膨張、排気の期間は、バルブタイミングによってずれる場合がある。
図6に示すように、クランク角度によって筒内圧Paは、ピストン18の上昇に伴って圧縮後半から膨張前半にわたって急激に増大した後、急激に減少する。筒内圧Paの上昇時にはトップリング34の合口からセカンドランド空間64に筒内ガスが流入するが、エンジンの低回転域ではセカンドリング36の合口からサードランド66側にガスが抜けるので、セカンドランド空間64の圧力であるセカンドランド圧が過度に上昇することはない。
一方、エンジンの高回転域では行程に要する時間が短くなるのでセカンドリング36の合口からガスを逃がすだけではセカンドランド圧が上昇してしまう。この場合、セカンドリング36の慣性力が大きくなるため、本実施形態では、圧縮行程後半においてセカンドリング36が第2リング溝42の下溝面84から上溝面88側に移動する。その際、セカンドリング36と第2リング溝42との間で一時的に上下面間の隙間がガス通路として開放され、セカンドランド空間64のガスがサードランド66側に放出されてセカンドランド圧P1の上昇が抑制される。
一方、破線P2で示す比較例は、本実施形態と異なり、図7に示すようにセカンドリング36の下端面80に凸部を形成していない。このため、エンジン回転数が高くなってもセカンドリング36が第2リング溝42の下溝面84から移動せず、セカンドランド圧が大きく上昇する場合がある。この場合、セカンドランド圧は、図6に破線P2で示すように変化する。すなわち、圧縮行程後半でピストン移動方向が上から下に変化するのにもかかわらず、セカンドリング36が第2リング溝42の下溝面84に付着したままとなることで、膨張行程後半で図6の破線αで囲んだ部分でセカンドランド圧P2が筒内圧Paよりも高くなる。この場合、図2のトップリング34が両側の圧力差で第1リング溝40の下溝面から上溝面側に押し上げられて、セカンドランド空間64内のガスの燃焼室28への逆流によって、トップリング34近傍及びセカンドランド空間64内の潤滑油の蒸気が燃焼室28に流出し、オイル消費を増大させる。
本発明者は、比較例でセカンドリング36の慣性力が増加してもセカンドリング36が第2リング溝42の下溝面84から移動しない要因として、第2リング溝42内の油の表面張力と粘性とによってセカンドリング36が下溝面84に付着する現象があることを突き止めた。図6に一点鎖線P1で示す本実施形態の場合、セカンドリング36の下端面80と下溝面84との接触面積を小さくできるので油による付着力を低減でき、セカンドリング36が、図8に示すように、第2リング溝42の下溝面84から移動しやすくなる。このため、セカンドランド空間64のガスがサードランド66側に抜けてセカンドランド圧P1がほぼ大気圧となるように小さくなる。この結果、セカンドランド圧P1が筒内圧Paよりも高くなる期間をなくすか、または少なくできて、燃焼室28への潤滑油を含むガスの逆流現象を抑制し、オイル上がりを抑制してオイル消費を低減できる。
一方、特許文献1に記載された構成では、オイルリングやオイルリング溝に凹部を形成しているが、オイルリングからはオイルリング溝の内側以外にオイルリングの合口からも油の通過が可能である。オイルリングを通過した油は、トップリングとセカンドリングとの組み合わせで形成される各ランド空間の圧力の関係によって燃焼室に運ばれてオイル上がりが生じる場合がある。このようなオイル上がりに対して特許文献1は有効な手段を開示するものではない。本実施形態では、セカンドリング36の挙動を適正に設計することができ、オイルリング38の上側に作用する圧力を適正化できることで、オイルリング38の合口を介しての油の通過を低減することができる。
なお、特許文献1には、圧力リングに対して高温高圧によるリング溝への凝着を抑制する提案として、圧力リングのリング溝との当接面に冷却効果を生じる潤滑油を保持する溝を形成することが記載されている。ただし、この溝は本実施形態の凸部68とは異なる目的で考えられたもので、本実施形態の圧力リング装着ピストン18を考え付くための示唆となるものではない。
また、特許文献3の技術では、セカンドランド部の圧力が上昇した際に圧力差によってセカンドリングが下面に押しつけられる力を低減することを目的として,セカンドリング下面をテーパ形状としている。
(1)このような特許文献3の技術においてはセカンドリングとピストンの中心軸が一致している場合は第2リング溝の下側エッジとピストンリング下面との接触部を全周でシールをすることが可能である。一方、セカンドリングとピストンの中心軸が一致しない場合には、全周にわたってセカンドリングの下面でシールをすることができなくなる。ピストンではシリンダ軸方向の上下動以外にピストンピンを中心とした首振り運動、スラスト方向への平行移動といった動きがある。また、セカンドリングは、自身の張力でシリンダに追従することによりセカンドリングの中心軸はシリンダの中心軸に近くなっている。このため、シリンダとピストンの軸が一致するタイミングはエンジンの全行程の中でもほんの一部でしかない。したがって、多くの行程でセカンドリングの下面で全周にわたってシールできない可能性がある。
(2)また、テーパ状のセカンドリングと、第2リング溝のエッジとにおいて全周にわたってシールを行なうためにはセカンドリングのテーパ形状が全周にわたって同一形状であることが求められる。ただし、シリンダ内径より大きく製作したセカンドリングを圧縮してシリンダ内に装着するといった一般的なピストンリングの構造において、リング全周にわたって変形形状を想定したテーパ加工が必要となるため、製造コストが増大する要因となる。
(3)また、特許文献3の技術において、セカンドリングと第2リング溝とのシール位置は第2リング溝の下側の外周エッジとなるので、セカンドリングの上下動と径方向の移動とに伴って第2リング溝の下側エッジ部に過度の面圧が発生する。この場合、特に自動車用エンジンに一般的に使用されるアルミ合金製ピストンでは、アルミの凝着摩耗を起こしやすくなる。凝着摩耗が発生するとセカンドリング下面と、第2リング溝のエッジ部との表面粗さが急激に大きくなり、セカンドリング下面のシール性が確保されなくなり、ブローバイガス量が急増する要因となる。
本実施形態では、第2リング溝42の外周エッジにシール位置を設定する必要がないため、セカンドリング36との間での全周シールの確保と、セカンドリング36及び第2リング溝42との接触部を面接触とすることによる摩耗対策とが可能となる。
なお、凸部68はセカンドリング36の全周にわたって形成する場合に限定せず、種々の数及び形状の凸部を採用できる。
図9は、本発明の実施形態の別例の第1例を示している図4に対応する図である。図9の構成では、図4に示した構成と異なり、セカンドリング36の下端面80の合口56の周方向両側の近傍の径方向内側部分のみに凹部69が形成されている。図9では、砂地により凹部69以外の部分を示している。
このような構造のセカンドリング36を使用する場合でも、上記の実施形態と同様にセカンドリング36が凹部69の形成位置で下溝面84との距離が大きくなるので、下溝面84との接触面積が小さくなり、セカンドリング36が下溝面84から離間しやすくなる。このため、セカンドリング36は、合口56近傍から下溝面84から剥がれて剥がれた隙間が連鎖的に全周に広がることで、セカンドリング36全体が下溝面84から離間する。このような構成では、セカンドリング36の全周に凹部を形成する場合に比べてセカンドリング36の重量が大きくなるため、セカンドリング36の慣性力が大きくなる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図4に示した構成と同様である。なお、図示は省略するが、図9の構成で、セカンドリング36の径方向内側部分の凸部と凹部69との位置を逆にすることもできる。この場合も、セカンドリング36は下溝面84から離間しやすくなる。
図10は、本発明の実施形態の別例の第2例を示している図3に対応する図である。図11は、図10の構成において、第2リング溝42内でセカンドリング36の内周面の一部が溝底面74に接触した場合でのセカンドリング36の径方向反対側の2個所を示す断面図である。
本例の構成では、上記の図1から図4に示した構成において、セカンドリング36の下端面80に全周にわたって断面円弧形の曲面が形成されている。この場合、対向形成面である下端面80は、セカンドリング36の円周方向に対して直交する平面で切断した場合の図10の断面形状で、径方向の全部に軸方向に突出するように形成され、全部が断面円弧の曲線である凸部68を有する。この凸部68は、セカンドリング36の周方向全体にわたって同一の断面形状を有し、第2リング溝42内におけるセカンドリング36の移動にかかわらず、凸部68の頂部Sは常に下溝面84に軸方向に対向している。頂部Sは、ほぼ円形の線状である。
例えば、セカンドリング36の凸部68では、図11に示すように、セカンドリング36をピストン本体32に組み付けた後、シリンダ内側に組み付ける前の状態で、セカンドリング36が内周面の一部を第2リング溝42の溝底面74に突き当てるように径方向に移動した場合でも、凸部68の外周縁である頂部Sが第2リング溝42からはみ出ないように凸部68の径方向位置及び寸法を規制することが好ましい。例えば、凸部68の頂部Sからセカンドリング36の内周面までの径方向寸法d1とセカンドリング36の内径daとの和である(d1+da)は、第2リング溝42の溝底径d2と第2リング溝42の溝深さd3との和(d2+d3)よりも小さくする((d1+da)<(d2+d3))。
このような構成によれば、凸部68の頂部Sと下溝面84との接触部は、概略円形の線状となるので、図1から図4に示した構成に比べて凸部68と下溝面84との接触面積を小さくでき、セカンドリング36を下溝面84からより離間しやすくなる。また、セカンドリング36をピストン本体32に組み付けた後、シリンダ内側に組み付ける前の状態で、セカンドリング36が径方向に移動した場合でも、凸部68の外周縁である頂部Sが第2リング溝42からはみ出ないように規制する構成によれば、セカンドリング36の軸心がピストン本体32の中心軸に対し傾斜した場合でもセカンドリング36が第2リング溝42の開口端縁に角当たりしにくくなる。このため、セカンドリング36及び第2リング溝42が削られることを防止して、セカンドリング36が2リング溝42の下溝面84に接触した状態で接触部を全周にわたってシールしやすくなる。その他の構成及び作用は、図1から図4の構成と同様である。
なお、図10のようにシリンダ16内にピストン18を組み付けたエンジンで、第2リング溝42内におけるセカンドリング36の移動にかかわらず、凸部68の頂部Sが下溝面84に軸方向に対向する構成を採用してもよい。
図12は、本発明の実施形態の別例の第3例を示している図3に対応する図である。本例の構成は、図1から図4の構成と、図10から図11の構成とを組み合わせた構成を有する。すなわち、セカンドリング36は、図1から図4の構成で、凸部68の下端面にセカンドリング36の全周にわたって同一の断面円弧形に形成された曲面部を有する。
上記構成によれば、図1から図4の構成の場合に比べて多くの部分で凸部68の下端面と第2リング溝42の下溝面84とを接触しないようにできる。また、図10から図11の構成の場合に比べて多くの部分である、凸部68から外れたセカンドリング36の径方向内側部分で下溝面84との距離を大きくできる。このため、上記の各構成の場合に比べてセカンドリング36の下端面80を下溝面84から離間しやすい。その他の構成及び作用は、図1から図4の構成または図10から図11の構成と同様である。
図13は、本発明の実施形態の別例の第4例を示している図3に対応する図である。図14は、図13の構成において、第2リング溝42内でセカンドリング36の内周面の一部が溝底面74に接触した場合でのセカンドリング36の溝底面74との接触部とは径方向反対側の断面図である。
本例の構成では、上記の図10,11に示した構成で、セカンドリング36の凸部68の下端面の頂部Sに軸方向に対し直交する平面上の平坦面90が形成されている。また、セカンドリング36の凸部68では、図14に示すように、セカンドリング36をピストン本体32に組み付けた後、シリンダ16内側に組み付ける前の状態で、セカンドリング36が内周面の一部を第2リング溝42の溝底面74に突き当てるように径方向に移動した場合でも、凸部68の頂部Sの外周端S0が第2リング溝42からはみ出ないように、凸部68の径方向位置及び寸法を規制している。例えば、凸部68の頂部Sの外周端S0からセカンドリング36の内周面までの径方向寸法d1とセカンドリング36の内径daとの和である(d1+da)は、第2リング溝42の溝底径d2と第2リング溝42の溝深さd3との和(d2+d3)よりも小さくする((d1+da)<(d2+d3))。頂部Sの両側の曲面部は同じ曲率半径を有する断面円弧形としてもよいが、異なる曲率半径を有する断面円弧形としてもよい。
このような構成の場合、セカンドリング36をピストン本体32に組み付けた後、シリンダ内側に組み付ける前の状態で、セカンドリング36が径方向に移動した場合でも、凸部68の外周縁である頂部Sの外周端S0が第2リング溝42からはみ出ないように規制するので、セカンドリング36の軸心がピストン本体32の中心軸に対し傾斜した場合でもセカンドリング36が第2リング溝42の開口端縁に角当たりしにくくなる。このため、セカンドリング36及び第2リング溝42が削られることを防止して、セカンドリング36が2リング溝42の下溝面84に接触した状態で接触部を全周にわたってシールしやすくなる。その他の構成及び作用は、図10から図11の構成と同様である。
図15は、本発明の実施形態の別例の第5例を示している図3に対応する図である。図16は、図15の構成のセカンドリング36の端面図である。図17は、図15のD−D断面図である。
本例の構成では、セカンドリング36の下端面80は、この下端面80の放射方向に形成された複数の凹部75を有する。図17では、斜格子部により凹部75を示している。
図18において、(a)は図16のE部拡大図であり、(b)は(a)の周方向位置に応じたセカンドリング36の下端面80と、第2リング溝42の下溝面84との付着力を示す図である。セカンドリング36の下端面80に形成された凹部75は、下端面80の表面粗さの最大深さよりも大きい。セカンドリング36が第2リング溝42の下溝面84に押し付けられる場合に、セカンドリング36と第2リング溝42とは、凹部75から外れた範囲である、図18のPで示す範囲で接触する。範囲P以外である凹部75では、セカンドリング36と下溝面84とが大きく離れている。
このような構成でも、セカンドリング36と第2リング溝42の下溝面84との間に油が存在する場合でも、凹部75から外れた部分と、対向面である下溝面84との対向部分で隙間が大きくなるので油の移動及び変形の自由度が高くなり、全体としてセカンドリング36と下溝面84との付着力が低減され、セカンドリング36が下溝面84から離間しやすくなる。このため、オイル上がりを抑制して、オイル消費を低減できる。その他の構成及び作用は、図1から図4の構成と同様である。
図19は、本発明の実施形態の別例の第6例を示している図2に対応する図である。本例の場合、ピストン本体32の外周面のセカンドランド60とサードランド66とにおいて、ピストン軸方向の両端部に各リング溝40,42,44に向かって直径が大きくなる方向に緩やかに傾斜したテーパ面S1,S2,S3,S4を全周にわたって形成している。このため、ピストン本体32は、セカンドランド60とサードランド66とにおいて、第1リング溝40、第2リング溝42及びオイルリング溝44の周辺部で当該リング溝40,42,44に向かって外径が大きくなっている。
このような構成によれば、ピストン本体32が上下動に伴う加速度によってセカンドランド60及びサードランド66に付着した潤滑油がリング溝40,42,44に近づく際に、潤滑油がリング溝40,42,44から遠ざかる方向の速度成分を有するので、各リング溝40,42,44への潤滑油の侵入を抑制できる。例えば、図20でサードランド66の第2リング溝42側部分で示すように、ピストン本体32が矢印β方向に変位することに伴い、サードランド66に付着した潤滑油の油膜がガス流れに伴って第2リング溝42に向かって上昇する傾向となる場合がある。この場合、テーパ面S3に沿って油膜がシリンダ16側に案内されて第2リング溝42内に浸入する潤滑油を少なくできる。このため、セカンドリング36の端面と第2リング溝42の溝面との間に存在する油膜を少なくでき、セカンドリング36の端面の第2リング溝42への付着力を小さくできる。この結果、オイル消費をより少なくできる。他のテーパ面S1,S2,S4の場合の作用も同様である。その他の構成及び作用は、上記の図15から図18の構成の場合と同様である。なお、図19から図20の構成を、図15から図18の構成以外の上記の別の構成と組み合わせることもできる。
なお、本例において、テーパ面S1,S2,S3,S4の代わりに、ピストン本体32の外周面のセカンドランド60とサードランド66とにおいて、ピストン軸方向の両端部にリング溝40,42,44に向かって直径が大きくなる方向に湾曲した曲面を全周に形成してもよい。また、トップランド58の第1リング溝40の周辺部に第1リング溝40に向かって直径が大きくなるテーパ面または曲面を形成してもよい。また、各ランド58,60,66のいずれか1つまたは2つにおいて、リング溝40,42,44周辺部に同様のテーパ面または曲面を形成してもよい。
図21は、本発明の実施形態の別例の第7例を示している図3に対応する図である。本例の場合、セカンドリング36の上下両端面86,80と第2リング溝42の上下両溝面88,84との破線で示す部分に、油に対する濡れ性を低下させる濡れ性低減処理を施している。例えば、濡れ性低減処理として、樹脂層を形成する等の撥油性のコーティング処理や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子の投射等の濡れ性低減用の表面加工処理を採用できる。
このような構成によれば、濡れ性低減処理を施した面の油に対する濡れ性が低下する。このため、図22に示すようにセカンドリング36の上下の圧力差によってセカンドリング36が第2リング溝42内で移動し、セカンドリング36と第2リング溝42との間に矢印方向のガス流れが生じた場合に、セカンドリング36と第2リング溝42との間の油を容易に排出できる。この結果、油膜によるセカンドリング36の第2リング溝42への付着を抑制できる。その他の構成及び作用は、上記の図15から図18の構成の場合と同様である。なお、セカンドリング36の上下両端面86,80と上下両溝面88,84との一部の面のみに濡れ性低減処理を施してもよい。
図23は、本発明の実施形態の別例の第8例を示している図3に対応する図である。図24は、図23の構成のセカンドリング36の端面図である。本例の構成では、セカンドリング36の下端面は、散点状に分散された複数の凹部94を有する。図示の例では、各凹部94は、断面円形の半球状に窪んだ形状としているが、これに限定するものではなく、円筒孔状や、断面四角形または多角形等の種々の形状を採用できる。このような複数の凹部94は、例えばサンドブラスト加工やショットピーニング加工等によりディンプル加工を上端面に施すことで形成できる。
このようなセカンドリング36を使用する本例の場合も、セカンドリング36と下溝面84との付着力が低減され、セカンドリング36が下溝面84から離間しやすくなる。このため、オイル上がりを抑制して、オイル消費を低減できる。また、複数の凹部96をサンドブラスト加工やショットピーニング加工により形成する場合、加工が容易であり、製造コストを低減できる。その他の構成及び作用は、図1から図4の構成と同様である。
上記ではセカンドリング36の下端面80に凸部68または凹部69、75,94を形成する場合を説明したが、図25または図26に示すようにこの下端面80と対向する第2リング溝42の下溝面84に凹部96を形成してもよい。例えば凹部96を下溝面84に放射状に形成してもよい。この場合、図25に示すように、凹部96の外周端をピストン本体32の外周面に開口させてもよい。図26の構成では、凹部96の外周端をピストン本体32の外周面に開口させず、第2リング溝42の奥側に凹部96を形成している。凹部96は放射状に形成する場合に限定せず、種々の数及び形状の凹部96を採用できる。例えば、下溝面84の外周側に円環状の凹部を形成し、セカンドリングの下端面が下溝面84の凹部から内周側に外れた部分に接触可能となるように、セカンドリングと下溝面84とを軸方向に対向させてもよい。また、セカンドリング36の下端面80と下溝面84との両方に凸部または凹部を形成してもよい。
なお、第2リング溝の下溝面に形成する凹部は、散点状に形成された凹部としてもよい。また、セカンドリングの下端面または第2リング溝の下溝面に形成する凸部は、散点状に形成された円柱状等の柱状の凸部としてもよい。
図27は、本発明の効果確認のために行った実験結果を示しており、エンジンの運転時にセカンドリングがリング溝下面に付着した場合と付着しない場合とでオイル吸い上げ量の差を比較した図である。上記の実験では、セカンドリング36の下端面が第2リング溝42の下溝面84に付着する場合と付着しない場合とでオイル上がり量であるオイル吸い上げ量を評価した。実験はエンジン回転数の異なる2つの運転条件1,2で運転を行い、運転後にシリンダ16内及び吸気管内に付着したエンジンオイルの量を計測することで行った。運転条件2では、運転条件1の場合よりもエンジン回転数が高い。図27において「リング付着あり」がセカンドリング36が第2リング溝の下溝面84に付着した場合を、「リング付着なし」がセカンドリング36が下溝面84に付着しない場合を、それぞれ示している。図27の結果から明らかなように、本発明と同様の「リング付着なし」の構成では、「リング付着あり」の構成に比べてオイル吸い上げ量を大きく低減させることができた。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
10 ガソリンエンジン、12 エンジン本体、14 シリンダブロック、16 シリンダ、18 圧力リング装着ピストン、20 結合ロッド、22 クランク軸、24 クランク室、26 シリンダヘッド、28 燃焼室、32 ピストン本体、34 トップリング、36 セカンドリング、38 オイルリング、40 第1リング溝、42 第2リング溝、44 オイルリング溝、46 ピストン内部空間、48 ドレンホール、50,52 環状サイドレール、54 環状スペーサ、56 合口、58 トップランド、60 セカンドランド、62 トップランド空間、64 セカンドランド空間、66 サードランド、68 凸部、69 凹部、70 上端面、72 上溝面、74 溝底面、75 凹部、76 下端面、78 下溝面、80 下端面、84 下溝面、86 上端面、88 上溝面、90 平坦面、92 テーパ面、94,96 凹部。

Claims (4)

  1. 外周面に燃焼室側からクランク室側に向かって第1リング溝と第2リング溝とオイルリング溝とが順に形成された内燃機関用のピストン本体と、
    前記第1リング溝にピストン移動方向へ移動可能に配置され、前記第1リング溝の溝底径よりも大きい内径を有する第1圧力リングと、
    前記第2リング溝にピストン移動方向へ移動可能に配置され、前記第2リング溝の溝底径よりも大きい内径を有する第2圧力リングとを備え、
    前記第2圧力リングのクランク室側の第2端面、または前記第2端面に対向するリング溝面を対向形成面として、
    前記対向形成面は、表面粗さの最大深さよりも大きな凹部または、凸部を有している、圧力リング装着ピストン。
  2. 請求項1に記載の圧力リング装着ピストンにおいて、
    前記対向形成面の円周方向に対して直交する平面で切断した場合の断面形状は、一部または全部に軸方向に突出するように形成され、少なくとも一部が断面円弧の曲線である凸部を有することを特徴とする圧力リング装着ピストン。
  3. 請求項2に記載の圧力リング装着ピストンにおいて、
    前記凸部は、前記第2圧力リングの前記第2端面に全周にわたって軸方向に突出するように形成され、
    前記第2リング溝内における前記第2圧力リングの移動にかかわらず、前記凸部の頂部は前記第2溝面に軸方向に対向していることを特徴とする圧力リング装着ピストン。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1に記載の圧力リング装着ピストンにおいて、
    前記対向形成面に、油に対する濡れ性を低下させる濡れ性低減処理が施されていることを特徴とする圧力リング装着ピストン。
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