JP2009030558A - ピストンリング及び内燃機関用ピストン - Google Patents

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Abstract

【課題】ガスシールを確実に行いつつオイル掻き性能を備え、ピストンの軽量化、フリクションの低減を行なうと共に、組み付け性が向上し、かつ低コスト化を図ることができるピストンリング及び内燃機関用ピストンを提供する。
【解決手段】本実施の形態に係るピストンリング10Aは、シリンダボア内壁と摺動し、ガスシールを行なうガスシール環状摺動部13と、シリンダボア内壁と摺動し、オイル掻きを行なうオイル掻き環状摺動部14と、ガスシール環状摺動部13とガスシール環状摺動部13と間にガスシール・オイル掻きの両方の機能を有するガスシール・オイル掻き環状摺動部17とからなり、リング溝12内に設けられる基部15にガスシール環状摺動部13とガスシール・オイル掻き環状摺動部17とオイル掻き環状摺動部14とが上下一体として形成されると共に、各環状摺動部同士の間又は異なる環状摺動部同士の間に各々間隙16を形成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、内燃機関に適用されるピストンリング及び内燃機関用ピストンに関するものである。
内燃機関のピストンには燃焼室の気密保持やオイルの燃焼室への侵入を防止するためにピストンリングが取り付けられている。ピストンリングは、ピストン外周に形成されたリング溝(リンググルーブ)に装着される。一般に内燃機関のピストンでは、ガスシールを行ない気密保持の役割を主として担うコンプレッションリングと、シリンダボア内壁(以下、「シリンダ壁」という。)の余剰したオイルを掻き落とす役割を主として担うオイルリングとの2種類のピストンリングが設けられている。
内燃機関用ピストンを示す分解図を図11に示す。図11に示すように、ピストン101の上部外周には、3つのリング溝102〜104が形成されている。これらリング溝102〜104にはピストンリング105〜107がそれぞれ装着される。これらピストンリング105〜107のうち、上側の2つのリング溝102、103に装着されるピストンリング105、106は、主として燃焼室の気密保持の役割を担うガスシールとして機能する第1及び第2のコンプレッションリングとなっている。また、最下部のリング溝104に装着されるピストンリング107は、主としてシリンダ壁の余剰オイルの掻き落としの役割を担うオイルリングとなっている。
また、コンプレッションリングとして用いられるピストンリング105、106、オイル掻きリングとして用いられるピストンリング107は一般に円環状の平板形状とされ、ピストンリング105〜107には合口108が設けられている。また、ピストン101のピストンボス109にはピストンピン110が装着され、このピストンピン110にはスナップリング111−1、111−2が装着されている。ここで、ピストンリング105〜107の内周面と外周面との間の肉厚を「リング幅」といい、その上面と下面との間の肉厚を「リング厚さ」という。
このように、従来の内燃機関用ピストン101には、上部側のリング溝102、103にコンプレッションリングとして用いられるピストンリング105、106を設けると共に、下部のリング溝104にオイル掻きリングとして用いられるピストンリング107を設け、各々別々に内燃機関用ピストンに装着し、シール及びオイルの掻き落としを行なうようにしていた。
また、オイルリングとして用いられるピストンリング107として、例えばコイルエキスパンダー付きの2ピース構造のピストンリングが用いられており、油掻き性、接触圧の維持能力などに優れている。
また、ピストンの軽量化、ピストンリングのコスト削減のため、オイルリングとして用いられている従来の2ピース構造のピストンリングに代えて、1ピース構造のピストンリングが用いられている。図12は、従来の1ピース構造のピストンリングの構成を簡略に示す概略断面図である。図13は、図12のピストンリングの構成を簡略に示す斜視図である。図12、13に示すように、従来の1ピース構造のオイルリング121は、外周側に上部突条122、下部突条123と、この両突条122、123の中間に中央突条124を設け、内周側にはピストンのリング溝部125と点接触する断面形状が略円弧状のピストン接触面126を設けている。また、下部突条123及び中央突条124のシリンダ壁127との接触面には、少なくとも1個以上のオイル落し部128a、128bを上下非対称位置に設け、各突条間の溝部分には、外周から内周に至る貫通孔129を複数個設けている(特許文献1)。
この1ピース構造のピストンリング121では、内周側の断面形状が略円弧状であるため、ピストン接触面126がリング溝部125の壁面と点接触をして、自由自在に角度を変え、各突条122〜124がシリンダ壁127に追随するようにしている。また、オイル落し部128a、128bによって各突条122〜124で掻き集めたオイルを効率的にシリンダ下部に戻すと共に、複数個の貫通孔129を通してシリンダ下部に効率よく戻すようにしている。
これにより、図11に示すような従来の2ピース構造のピストンリングの油掻き性、接触圧を維持しつつ、製造コストが安いピストンリングを製造するようにしていた。
特開平10−252890号公報
しかしながら、1ピース構造のピストンリング121は、リング溝部125で点接触しているため、例えばピストンが上死点で傾いた時、図14に示すようにピストンの揺動に伴いピストンリング121も傾き、上部突条122のシリンダ壁127への面圧が上がると共に、下部突条123とシリンダ壁127との間に隙間を生じ、シリンダ壁127とのオイル掻き性能が悪化する、という問題がある。
また、オイル落し部128a、128bが交互に形成されているため、各突条122〜124間の溝部分に形成される空間131に掻き落としたオイルが溜まる、という問題がある。
その結果、シリンダ壁127と各突条122〜124との間の油膜が厚くなり、オイル掻き性能が悪化し、フリクションが増加する、という問題がある。
本発明は、前記問題に鑑み、ガスシールを確実に行いつつオイル掻き性能を備え、ピストンの軽量化、フリクションの低減を行なうと共に、組み付け性が向上し、かつ低コスト化を図ることができるピストンリング及び内燃機関用ピストンを提供することを課題とする。
本発明に係るピストンリングは、内燃機関のピストンの外周面に周設されたリング溝に設けられるピストンリングであって、シリンダボア内壁と摺動し、ガスシールを行なう少なくとも一つ以上のガスシール環状摺動部と、シリンダボア内壁と摺動し、オイル掻きを行なう少なくとも一つ以上のオイル掻き環状摺動部とからなり、前記リング溝内に設けられる基部に前記ガスシール環状摺動部と前記オイル掻き環状摺動部とが上下一体として形成されると共に、前記ガスシール環状摺動部と前記オイル掻き環状摺動部同士との間に間隙を形成することを特徴とする。
本発明に係るピストンリングにおいては、ガスシールとオイル掻きの両方の機能を有する少なくとも一つ以上のガスシール・オイル掻き環状摺動部が、前記ガスシール環状摺動部と前記オイル掻き環状摺動部との間に設けられ、前記基部に一体として形成されていることを特徴とする。
本発明に係るピストンリングにおいては、前記オイル掻き環状摺動部が、掻き落としたオイルを落とすオイル戻し穴を少なくとも一つ以上有することを特徴とする。
本発明に係るピストンリングにおいては、前記ガスシール環状摺動部を構成する一つの摺動部の厚さが、0.5〜2.0mmであることを特徴とする。
本発明に係るピストンリングにおいては、前記オイル掻き環状摺動部を構成する摺動部全体の厚さが、全体で1.0〜3.0mmであることを特徴とする。
本発明に係るピストンリングにおいては、前記ガスシール・オイル掻き環状摺動部を構成する一つの摺動部の厚さが、0.5〜2.0mmであることを特徴とする。
本発明に係る内燃機関用ピストンは、本発明のピストンリングを備えていることを特徴とする。
本発明によれば、ピストンリングにガスシール環状摺動部とオイル掻き環状摺動部とを各々少なくとも一つ以上設け、基部に一体として形成することにより、一つのピストンリングでガスシール及びオイル掻きの両方の性能を備えることができる。これにより、ピストンを軽量化し、フリクションを低減すると共に、組み付け性の向上を図り、コストの低減を図ることができる。
また、前記ガスシール環状摺動部同士の間、前記オイル掻き環状摺動部同士の間、又は前記ガスシール環状摺動部と前記オイル掻き環状摺動部同士との間に間隙を形成することにより、ピストンリング全面にかかる圧力を少なくすることができるため、ピストンリングの浮き上がりを防止し、ガスシールを確実に行うことができる。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
[第一の実施の形態]
図1は、本実施の形態に係るピストンリングが装着された内燃機関用ピストンの断面構造を示す概念図である。図2は、図1中のA部分の内燃機関用ピストンのリング溝付近の拡大断面図である。
図1、2に示すように、本実施の形態に係るピストンリング10Aは、ピストン11の上部外周面に形成されている一つのリング溝12に装着される。本実施の形態に係るピストンリング10Aは、内燃機関のピストン11の外周面に周設されたリング溝12に設けられるピストンリングであって、図示しないシリンダボア内壁(以下、「シリンダ壁」という。)と摺動し、ガスシールを行なう少なくとも一つ以上のガスシール環状摺動部13と、図示しないシリンダ壁と摺動し、オイル掻きを行なう少なくとも一つ以上のオイル掻き環状摺動部14とからなり、リング溝12内に設けられる基部15にガスシール環状摺動部13とオイル掻き環状摺動部14とが上下一体として形成されると共に、ガスシール環状摺動部13同士の間、オイル掻き環状摺動部14同士の間、ガスシール環状摺動部13とオイル掻き環状摺動部14との間に各々間隙16を形成するものである。
本実施の形態に係るピストンリング10Aでは、ガスシール環状摺動部13が、第一のガスシール環状摺動部13−1と、第二のガスシール環状摺動部13−2とからなり、基部15の上部側に設けている。尚、ガスシール環状摺動部13は2つに限定されるものではない。ガスシール環状摺動部13を基部15の上部側に設けることで、ガスシールを行い燃焼室の気密保持を保つことができる。
また、本実施の形態に係るピストンリング10Aでは、オイル掻き環状摺動部14は、第一のオイル掻き環状摺動部14−1〜第三のオイル掻き環状摺動部14−3とからなり、基部15の下部側に設けている。尚、オイル掻き環状摺動部14は3つに限定されるものではない。オイル掻き環状摺動部14を基部15の下部側に設けることで、図示しないシリンダ壁の余剰オイルを掻き落とすことができる。
また、本実施の形態に係るピストンリング10Aは、ガスシールとオイル掻きの両方の機能を有する少なくとも一つ以上のガスシール・オイル掻き環状摺動部17が、ガスシール環状摺動部13とオイル掻き環状摺動部14との間に設けられ、基部15に一体として形成されている。
ガスシール・オイル掻き環状摺動部17は、第一のガスシール・オイル掻き環状摺動部17−1、第二のガスシール・オイル掻き環状摺動部17−2とからなる。尚、ガスシール・オイル掻き環状摺動部17は2つに限定されるものではない。ガスシール環状摺動部13とオイル掻き環状摺動部14との間に、ガスシール・オイル掻き環状摺動部17を設けることで、ガスシールを行うと共に、図示しないシリンダ壁の余剰オイルを掻き落とすことができる。
本実施の形態に係るピストンリング10Aでは、ガスシール環状摺動部13同士の間、オイル掻き環状摺動部14同士の間、前記ガスシール・オイル掻き環状摺動部17同士の間、ガスシール環状摺動部13とオイル掻き環状摺動部14との間、オイル掻き環状摺動部14とガスシール・オイル掻き環状摺動部17との間、又はガスシール環状摺動部13とガスシール・オイル掻き環状摺動部17との間に各々間隙16が形成されている。
なお、本発明において、これらの各環状摺動部同士又は異なる環状摺動部との間に形成される間隙を、所謂ラビリンスボリュームという。
本実施の形態に係るピストンリング10Aのように、ガスシール環状摺動部13を構成する摺動部同士の間、オイル掻き環状摺動部14を構成する摺動部同士の間、ガスシール・オイル掻き環状摺動部17を構成する摺動部同士の間、又はこれらの異なる環状摺動部同士の間に各々間隙16を形成することにより、ピストンリング10Aの全面にかかる圧力を低減することができるため、例えば気筒の膨張行程で流入する高圧のブローバイガスによってピストンリング10Aが浮き上がるのを抑制することができる。これにより、ガスシールを確実に行うことができ、燃焼室の気密保持を保つことができる。
また、図3は、従来のピストンリングを示す概略断面図であり、図4は、図3の拡大図である。図3、4に示すように、気筒の膨張行程で燃焼圧の作用を受けると、例えば図11に示すような従来のピストンリング105はリング溝102の下面102bに位置している(図4中、実線)。しかし、リング溝102の下面102bは粗いため、リング溝102に流入した高圧のブローバイガスがピストンリング105の下面105bとリング溝102の下面102bとの間の隙間に入り込み、ピストンリング105の下方側に抜けてしまう。この際、高圧のブローバイガスによってピストンリング105が浮き上がり、リング溝102の上面102aに移動してしまう場合がある(図4中、破線)。
これに対し、図5に示すように、ピストンリング10Aはシリンダ壁18と接触し、高圧のブローバイガスはリング溝12の内部側に流入するが、本実施の形態に係るピストンリング10Aは、ガスシール環状摺動部13とオイル掻き環状摺動部14との間に各々間隙16が形成されているため、ピストンリング10Aの全面にかかる圧力を低減することができる。
このため、気筒の膨張行程で燃焼圧の作用を受けて高圧のブローバイガスがリング溝12の内部側に入り込んでも高圧のブローバイガスによってピストンリング10Aが浮き上がるのを防止することができ、ピストンリング10Aの下面15bをリング溝12の下面12bに接触させておくことができる。これにより、ガスシールを確実に行ないガス漏れを防ぎ、燃焼室の気密保持を保つことができる。
また、燃焼圧変化に伴う本実施の形態に係るピストンリング10Aを備えたピストンの従来品と比較したガスシール性能について説明する。
図6は、クランク角度の変化に伴う燃焼圧変化とピストンリングの移動の様子を示す図である。例えば、図6中の上側図面に示すように気筒の吸入工程で燃焼圧曲線の燃焼圧が低い時間T1の時には、図6中の下側図面に示すようにピストンリングはリング溝上面に位置している。そして、気筒の膨張行程で燃焼圧曲線の燃焼圧が上昇して燃焼圧の作用を受けると、図6中の下側図面に示すようにピストンリングはリング溝下面に移動する。そして、クランク角度が大きくなり燃焼圧曲線の燃焼圧が下降し、時間T2経過後では、図6中の下側図面に示すようにピストンリングはピストンのリング溝下面からリング溝上面に再度接触する。
図4に示すような従来のピストンリングでは、図6の下側図面に示すように、クランク角度が大きくなり燃焼圧曲線の燃焼圧が下降して時間T2になると、上述のように高圧のブローバイガスがピストンリング105の下面105bとリング溝102の下面102bとの間の隙間に入り込み、ピストンリングが浮き上がり、リング溝102の上面102aに移動してしまう。
これに対し、本実施の形態に係るピストンリング10Aは、図2、5に示すような各環状摺動部同士又は異なる環状摺動部の間に各々間隙16が形成されているため、ピストンリング10Aの全面にかかる圧力を低減させることができ、高圧のブローバイガスによってピストンリング10Aが浮き上がってリング溝12の上面12aに移動するのを防ぐことができる。このため、実施の形態に係るピストンリング10A(図6中、太線)は、図6の下側図面に示すように、燃焼圧曲線の燃焼圧が下降して時間T3で、リング溝12の上面12aに移動する。
よって、図4に示すような従来のピストンリング(図6中、破線)の方が、本実施の形態に係るピストンリング10A(図6中、太線)よりも早くピストンのリング溝下面からリング溝上面に浮き上がってしまうのが確認できる。
従って、本実施の形態に係るピストンリング10A(図6中、太線)の方が従来のピストンリング(図6中、破線)よりも長くピストンのリング溝の下面に位置することができるため、本実施の形態に係るピストンリング10Aを備えたピストンは従来のピストンよりも長時間ガスシールを行なうことができ、ガスシール性能を向上させることができる。
また、本実施の形態に係るピストンリング10Aの従来品と比較したガス漏れに対する信頼性について説明する。
従来のピストン101では、ピストンリング105〜107を複数設けているため、ピストンリング105〜107でガス漏れが複数箇所で起こる場合がある。これに対し、本実施の形態に係るピストンリング10Aでは、ピストン11にリング溝を一つだけ設けるようにしているため、ガス漏れが起こりうる箇所は1箇所のみである。よって、本実施の形態に係るピストンリング10Aは、従来品よりもガス漏れが起こる箇所を減らすことができ、ガスシール性能を向上させることができる。
また、従来のピストン101は、図7中の左側図面に示すように、トップランド112とセカンドランド113との間のリング溝102にガスシール用として第一のコンプレッションリングであるピストンリング105を装着している。そして、セカンドランド113とサードランド114との間のリング溝103にガスシール用として第二のコンプレッションリングであるピストンリング106を装着している。そして、サードランド114とフォースランド115との間のリング溝104にオイル掻き用としてオイルリングであるピストンリング107を装着している。
一方、本実施の形態に係るピストンリング10Aを備えたピストン11は、図7中、右側図面に示すように、ピストン11のリング溝12にガスシール及びオイル掻きの両方の機能を兼ね備えたピストンリング10Aを一つのみ装着するようにしている。
よって、ピストンに用いるピストンリングとして、本実施の形態に係るピストンリング10Aを用いれば、従来のピストンリング105〜107を用いる場合に比べ、図7中左側図面に示すようなピストンリングのリング厚さの差Hの分だけ省略することができる。このため、本実施の形態に係るピストンリング10Aを用いたピストン11の幅は従来品よりも低くすることができ、ピストン11を軽量化することができる。
また、本実施の形態に係るピストンリング10Aを用いれば、ピストン11を軽量化することで、図8に示すようにエンジン回転数を大きくするのに伴って、図11に示すような従来のピストン101よりもフリクションを低減することができるため、出力性能を大幅に向上することができる。
また、特に慣性力が大きい高速域においてフリクションの低減効果を著しく大きくすることができる。例えば、最大回転数6000rpmとして、本実施の形態に係るピストンリング10Aを装着したピストン11が図11に示すような従来のピストン101よりも約1/3程度軽量化したとすると、例えば約3%程度の出力性能を向上させることができる。
また、本実施の形態に係るピストンリング10Aでは、ガスシール環状摺動部13、オイル掻き環状摺動部14、ガスシール・オイル掻き環状摺動部17を構成する各々の環状摺動部の数を増減させることで、オイル消費、ガスシールのバランスを容易に調整することができる。
例えば、図9に示すように間隙16が小さいと、ピストンを持上げるランド圧力が高くなり、間隙16が大きい場合に比べてピストンリング10Aがリング溝12の上面12aに早く移動しまうため、ブローバイガスが増加し、オイル消費量が増大する。
一方、間隙16を大きくなるに従い、間隙16が小さい場合に比べてピストンリング10Aをリング溝12の下面12bに長く維持することができるため、ブローバイガスを低減し、オイル消費量を低減することができる。
よって、本実施の形態に係るピストンリング10Aのガスシール環状摺動部13、オイル掻き環状摺動部14、ガスシール・オイル掻き環状摺動部17を構成する各々の摺動部の数を変え、間隙16の大きさを調製することで、オイル消費、ガスシールのバランスを容易に調整することができる。
また、本実施の形態に係るピストンリング10Aを用いれば、従来品のように複数のピストンリングをピストンに設ける必要はなく一つのみで足りるため、ピストンの加工、ピストンリングのピストンへの組付けを容易に行なうことができる。
また、本実施の形態に係るピストンリング10Aでは、ガスシール環状摺動部13とオイル掻き環状摺動部14との間に、ガスシール・オイル掻き環状摺動部17を基部15と一体として設けるようにしているが、ガスシール環状摺動部13とオイル掻き環状摺動部14とにより、ガスシール及びオイル掻きが十分である場合にはガスシール・オイル掻き環状摺動部17を設けなくてもよい。
また、本実施の形態に係るピストンリング10Aでは、ガスシール環状摺動部13を構成する第一のガスシール環状摺動部13−1の摺動部の厚さd1は、例えば0.5〜2.0mmであるのが好ましい。尚、ガスシール環状摺動部13を構成する他の摺動部である第二のガスシール環状摺動部13−2の摺動部の厚さも第一のガスシール環状摺動部13−1の摺動部の厚さd1と同様である。
また、本実施の形態に係るピストンリング10Aでは、オイル掻き環状摺動部14を構成する第一のオイル掻き環状摺動部14−1〜第三のオイル掻き環状摺動部14−3の全体での摺動部の厚さd2は、例えば1.0〜3.0mmであるのが好ましい。
また、本実施の形態に係るピストンリング10Aでは、ガスシール・オイル掻き環状摺動部17を構成する第一のガスシール・オイル掻き環状摺動部17−1の摺動部の厚さd3は、例えば0.5〜2.0mmであるのが好ましい。尚、ガスシール・オイル掻き環状摺動部17を構成する他の摺動部である第二のガスシール・オイル掻き環状摺動部17−2の摺動部の厚さも第一のガスシール・オイル掻き環状摺動部17−1の摺動部の厚さd3と同様である。
また、本実施の形態に係るピストンリング10Aでは、リング溝12の上面12aと基部15の上面12aと対向する面15aとの間隔t1と、リング溝12の下面12bと基部15の下面12bと対向する面15bとの間隔t2とを合わせた間隔は、気密性、組み付け性を考慮して、例えば0.3〜0.5mmであるのが好ましい。
また、本実施の形態に係るピストンリング10Aでは、リング溝12の底面12cと基部15の底面15cとの間隔Tは、例えば0.5〜1mmであるのが好ましい。
このように、本実施の形態に係るピストンリング10Aによれば、ピストンリング10Aにガスシール環状摺動部13、オイル掻き環状摺動部14及びガスシール・オイル掻き環状摺動部17を各々少なくとも一つ以上基部15に設け、基部15に一体として形成することで、ガスシール及びオイル掻きの両方の性能を備えることができる。これにより、ピストンを軽量化し、フリクションを低減すると共に、組付け性の向上を図り、コストの低減を図ることができる。
また、ガスシール環状摺動部13同士の間、オイル掻き環状摺動部14同士の間、ガスシール・オイル掻き環状摺動部17同士の間、又はこれらの異なる環状摺動部同士との間に各々間隙を形成することにより、ピストンリング全面にかかる圧力を少なくすることができるため、ピストンリングの浮き上がりを防止し、ガスシールを確実に行うことができる。
[第二の実施の形態]
本発明の第二の実施の形態に係るピストンリングについて、図10を参照して説明する。
図10は、本発明の第二の実施の形態に係るピストンリングの構成を示す概略断面図である。
本実施の形態に係るピストンリングは、第一の実施の形態に係るピストンリングの構成と同様であるため、図1、2に示す第一の実施の形態1に係るピストンリングの構成と共通の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
図10に示すように、本実施の形態に係るピストンリング10Bは、第一のオイル掻き環状摺動部14−1、第二のオイル掻き環状摺動部14−2に、ガスシール環状摺動部13、オイル掻き環状摺動部14、ガスシール・オイル掻き環状摺動部17の何れか又は全部で掻き落としたオイルを落とすオイル戻し穴21−1、21−2を有するものである。
オイル戻し穴21−1、21−2を第一のオイル掻き環状摺動部14−1、第二のオイル掻き環状摺動部14−2に設けることにより、ガスシール環状摺動部13、オイル掻き環状摺動部14、ガスシール・オイル掻き環状摺動部17の何れか又は全部で掻き落としたオイルをオイル戻し穴21−1、21−2に落として、例えばクランクケース内に戻すことができるため、オイル消費を低減することができる。
また、オイル掻き環状摺動部14の剛性を制御することで、リング張力を低下することができるため、フリクションを低減し、燃費を向上させることができる。
なお、ピストンリングのシリンダ壁に対する追従性は下式(1)に示す追従性係数PKにて評価することができる。
K=(Ft・D)/(E・I)・・・(1)
tはリング張力、Dはシリンダ内径、Eは基部の縦弾性係数、Iは基部の断面係数である。
リング張力Ftはオイル掻き環状摺動部14の弾性が小さいほど小さくなるため、オイル掻き環状摺動部14のリング張力Ftが小さくなることにより、ピストンリング10Aの追従性係数PKは全体として低下し、ピストンリング10Bのシリンダ壁19に対するフリクションを低減し燃費が向上することができる。
従って、第一のオイル掻き環状摺動部14−1、第二のオイル掻き環状摺動部14−2、ガスシール・オイル掻き環状摺動部17の周囲にはオイルが滞留せず、ガスシール環状摺動部13、オイル掻き環状摺動部14、ガスシール・オイル掻き環状摺動部17によるオイルの掻き残しに起因するオイル消費量の増加、あるいはフリクションの増加を抑えることができる。
このように、本実施の形態に係るピストンリング10Bによれば、オイル掻き環状摺動部14にオイル戻し穴21を少なくとも一つ以上設け、掻き落としたオイルを例えばクランクケース内に戻すことで、オイル消費を低減することができると共に、オイル掻き環状摺動部14の剛性を制御することで、フリクションを低減し、燃費の向上を図ることができる。
本発明は内燃機関に限らず、ピストンリングを使用する限りにおいて各種の往復動型機関に適用することができる。例えば、外燃機関、コンプレッサ、ピストンポンプ等のピストンリングに対して本発明を適用してもよい。
以上のように、この発明に係るピストンリングは、ガスシール用及びオイル掻き用の環状摺動部を基部に一体として形成し、ガスシール及びオイル掻きの両方の性能を備えると共に、各環状摺動部同士又は異なる環状摺動部同士との間に間隙を形成することで、ガスシールを確実に行うことができる。これにより、ピストンを軽量化し、フリクションを低減すると共に、組み付け性を向上し、コストを低減することができるため、内燃機関用ピストンとして好適に使用することができる。
本発明の第一の実施の形態に係るピストンリングが装着された内燃機関用ピストンの断面構造を示す概念図である。 図1中のA部分の内燃機関用ピストンのリング溝付近の拡大断面図である。 従来のピストンリングを示す概略断面図である。 図3を詳細に示した拡大図である。 本発明の第一の実施の形態に係るピストンリングを簡略に示す図である。 クランク角度の変化に伴う燃焼圧変化とピストンリングの移動の様子を示す図である。 従来のピストンリングと本発明のピストンリングとの厚さを比較した図である。 エンジン回転数とフリクションとの関係を示す図である。 ラビリンスボリュームとブローバイガスとの関係を示す図である。 本発明の第二の実施の形態に係るピストンリングの断面構造を示す概念図である。 内燃機関用ピストンを示す分解図である。 従来のピストンリングの構成を簡略に示す概略断面図である。 図12のピストンリングの構成を簡略に示す斜視図である。 従来のピストンが傾いた時の状態を示す図である。
符号の説明
10A、10B ピストンリング
11 ピストン
12 リング溝
12a 上面
12b 下面
13、13−1、13−2 ガスシール環状摺動部
14、14−1〜14−3 オイル掻き環状摺動部
15 基部
16 間隙(ラビリンスボリューム)
17、17−1、17−2 ガスシール・オイル掻き環状摺動部
18 シリンダ壁
21−1、21−2 オイル戻し穴
1 ガスシール環状摺動部を構成する一つの摺動部の厚さ
2 オイル掻き環状摺動部を構成する摺動部全体の厚さ
3 ガスシール・オイル掻き環状摺動部を構成する一つの摺動部の厚さ

Claims (7)

  1. 内燃機関のピストンの外周面に周設されたリング溝に設けられるピストンリングであって、
    シリンダボア内壁と摺動し、ガスシールを行なう少なくとも一つ以上のガスシール環状摺動部と、
    シリンダボア内壁と摺動し、オイル掻きを行なう少なくとも一つ以上のオイル掻き環状摺動部とからなり、
    前記リング溝内に設けられる基部に前記ガスシール環状摺動部と前記オイル掻き環状摺動部とが上下一体として形成されると共に、
    前記ガスシール環状摺動部と前記オイル掻き環状摺動部同士との間に間隙を形成することを特徴とするピストンリング。
  2. 請求項1において、
    ガスシールとオイル掻きの両方の機能を有する少なくとも一つ以上のガスシール・オイル掻き環状摺動部が、前記ガスシール環状摺動部と前記オイル掻き環状摺動部との間に設けられ、前記基部に一体として形成されていることを特徴とするピストンリング。
  3. 請求項1又は2において、
    前記オイル掻き環状摺動部が、掻き落としたオイルを落とすオイル戻し穴を少なくとも一つ以上有することを特徴とするピストンリング。
  4. 請求項1乃至3の何れか一つにおいて、
    前記ガスシール環状摺動部を構成する一つの摺動部の厚さが、0.5〜2.0mmであることを特徴とするピストンリング。
  5. 請求項1乃至4の何れか一つにおいて、
    前記オイル掻き環状摺動部を構成する摺動部全体の厚さが、全体で1.0〜3.0mmであることを特徴とするピストンリング。
  6. 請求項2乃至5の何れか一つにおいて、
    前記ガスシール・オイル掻き環状摺動部を構成する一つの摺動部の厚さが、0.5〜2.0mmであることを特徴とするピストンリング。
  7. 請求項1乃至6の何れか一つのピストンリングを備えていることを特徴とする内燃機関用ピストン。
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