JP2014095345A - 内燃機関 - Google Patents
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Abstract
【課題】シリンダーヘッドと排気ポートとの間の遮熱性を従来よりも向上した内燃機関を提供する。
【解決手段】シリンダーヘッド7に形成された排気ポート6の内面12の少なくとも一部に、表面に複数の凸部13を有する低い熱伝導率を有する遮熱部材14を、それらの凸部13が接触するように設置する。遮熱部材をジルコニア系セラミックスから形成する。また遮熱部材と排気ポートの内面との間に、ジルコニア系セラミックスからなる遮熱プレートを介在させることで、遮熱性を更に向上することが出来る。
【選択図】図1
【解決手段】シリンダーヘッド7に形成された排気ポート6の内面12の少なくとも一部に、表面に複数の凸部13を有する低い熱伝導率を有する遮熱部材14を、それらの凸部13が接触するように設置する。遮熱部材をジルコニア系セラミックスから形成する。また遮熱部材と排気ポートの内面との間に、ジルコニア系セラミックスからなる遮熱プレートを介在させることで、遮熱性を更に向上することが出来る。
【選択図】図1
Description
本発明は内燃機関に関し、更に詳しくは、従来よりも高い遮熱性を維持することができる内燃機関に関する。
現在、内燃機関を使用する自動車エンジンや産業エンジンなどにおける排ガス規制は年々厳しくなっているが、それに加えて近年では、世界的な地球温暖化への対策の一つとして、厳しい燃費規制の導入も検討されている。それらに対応するために各自動車メーカでは、エンジン性能であるエンジン燃費改善及びエンジン排ガス低減を目的とした様々なデバイスの研究開発が進められている。
前者の内燃機関の燃費改善には大きく分けて2つの手段がある。その1つはエンジン及び補機のフリクション低減であり、もう1つはエンジン本体の燃焼を改善することによる熱効率の向上である。フリクション低減については、吸排気バルブを停止してポンピングフリクションを低減するなどの非常に複雑なシステムが既に導入されている。また、熱効率の向上については、ハイブリッドシステムや排気エネルギー回収(ターボ、ターボコンパウンドや廃熱回収装置)などの技術が開発されている。このように近年ではエンジンの研究開発が進んでいるため、それぞれの手段は非常に高い領域に到達しており、今後選択できる燃費改善手段は非常に限られたものとなっている。
後者のエンジンの排ガス低減にも大きく分けて2つの手段がある。その1つは、エンジン本体で排ガスの排出量を低減させる方法(例えば、EGRシステム)であり、もう1つは後処理装置を用いて排ガスを低減させる方法である。各自動車メーカ及び各車両の戦略により、いずれかの方法が選択されることになるが、上述したように近年の排ガス規制は非常に厳しいため、それら両方の方法を同時に使用するケースが一般的となっている。
このように、厳しい排ガス規制に加えて燃費規制も導入されたことにより、燃費と排ガスを同時に改善しなければならなくなっている。しかし、燃費の改善を行うことは、燃焼効率の向上による排気損失の低減やエンジン燃料消費量の低減につながるため、結果としてエンジン排気温度の低下を招くことになる。エンジン排気温度が低下すると、排気熱を利用しているターボ・ターボコンパウンド・ランキングサイクルなどの機能の低下や、エンジン後方に取り付けられた後処理装置(DOC/DPF/SCR)において、排ガス温度の低下により排ガス浄化率が低減し、車両からの排ガスが増加してしまうことになる。すなわち、エンジンの燃費改善とエンジン(車両)の排ガス低減とは、トレードオフの関係にあり、それらを同時に改善することは技術的に非常に困難である。
ところで、内燃機関であるエンジンの燃焼室では、燃焼により発生する燃焼ガス温度は非常に高い領域に到達する。この燃焼室の構成部品であるシリンダーヘッドには、その上方に吸排気バルブやそれらを駆動するカムシャフト及びロッカーアームなどの動弁系システムが一体的に取り付けられている。これらの作動部品については、潤滑のためのオイルが供給されるとともに、水を冷媒とする冷却により温度が管理されている。一般的なエンジンにおける水による冷却は、シリンダーヘッド内に成形された冷却水路であるウォータジャケット内に冷却水を循環させて、シリンダーヘッド全体を冷却することにより行われる。
このときのシリンダーヘッドの冷却温度は、エンジンの設計で設定された温度範囲内にコントロールされ、シリンダーヘッド及びそれに備えられた部品の耐久性を確保するようになっている。逆に言えば、エンジンの燃焼ガスが最高温度に到達するエンジンの最大負荷の馬力ポイントにおいても、シリンダーヘッドは、その最高温度に対して非常に低いレベルの温度まで冷却されているため、大きな冷却損失を生じていることになる。
一方でエンジンには、上記のシリンダーヘッドで発生した燃焼ガスを収集してエンジン後方へ流す排気マニホールドに排ガスを流す排気ポートが設けられている。そして、この排気マニホールドの下流側には、ターボなどの排気エネルギー回収装置や排ガス浄化装置などのデバイスが配置されているのが一般的である。従って、排気マニホールドには、単に燃焼ガスを収集し後方へつなげる配管部品としての機能だけでなく、排ガスのエネルギー損失を防止してその温度低下を回避することにより、後方のデバイスの仕事量を十分に確保する(エネルギー保存する)機能も求められている。しかしながら、排気マニホールドの温度を実測すると、高温の燃焼ガスを導入する入口部の温度が出口部の温度よりも非常に低くなっていることが分かる。この事象は、上述したように、エンジンの運転負荷が増加し燃焼ガスの温度が上昇しても、エンジンのシリンダーヘッドは冷却されていることに起因するものである。
以上のことから、エンジンにおいては2つのエネルギー損失が発生していることが分かる。1つ目は、高温である燃焼ガスのエネルギー利用が十分可能であるにもかかわらず、シリンダーヘッドの冷却によって排気マニホールドの入口部も冷却してしまうため、排ガス温度の低下を招いて、排気エネルギーの損失を生じさせていることである。2つ目は、高温状態を保ちたい排気マニホールドを冷却することで、熱交換を行う冷媒であるエンジン冷却水の温度を上昇させ、エンジンに無駄な冷却損失を増大させていることである。
このようなエネルギー損失を改善する方策の1つとして、シリンダーヘッドと排気ポートとの間の遮熱性を向上することが考えられる。例えば、特許文献1は、排気ポートの内面を、中空のセラミックス体であるポートライナーでライニングすることを提案している。
しかしながら、上記の方策では、ポートライナーの遮熱性が不十分であるという問題があった。
本発明の目的は、シリンダーヘッドと排気ポートとの間の遮熱性を従来よりも向上した内燃機関を提供することにある。
上記の目的を達成する第1発明の内燃機関は、排気マニホールドに接続する排気ポートがシリンダーヘッドに形成された内燃機関において、前記排気ポートの内面の少なくとも一部に、表面に複数の凸部を有する遮熱部材を、前記凸部が接触するように設置したことを特徴とするものである。
また、上記の目的を達成する第2発明の内燃機関は、排気マニホールドに接続する排気ポートがシリンダーヘッドに形成された内燃機関において、前記排気ポートの内面の少なくとも一部に、前記シリンダーヘッドを構成する材料よりも低い熱伝導率を有する遮熱部材を設置したことを特徴とするものである。
上記の第2発明の内燃機関においては、遮熱部材が表面に複数の凸部を有し、それらの凸部が排気ポートの内面に接触するように設置することで、排気ポートとシリンダーヘッドとの間の遮熱性をより向上することができる。
上記の第1発明の内燃機関においては、遮熱部材をシリンダーヘッドを形成する材料から形成する。あるいは、第1発明及び第2発明の内燃機関において、遮熱部材をジルコニア系セラミックスから形成する。
第1発明及び第2発明の内燃機関においては、遮熱部材と排気ポートの内面との間に、ジルコニア系セラミックスからなる遮熱プレートを介在させることで、遮熱性を更に向上することが出来る。また、排気ポートと排気マニホールドとの間に、ジルコニア系セラミックスを用いた排気マニホールドガスケットを介装することで、内燃機関システム全体の遮熱性を向上することができる。
第1発明の内燃機関によれば、シリンダーヘッドの排気ポートの内面の少なくとも一部に、表面に複数の凸部を有する低熱伝導率かつ高強度の材料からなる遮熱部材を、それらの凸部が接触するように設置したので、シリンダーヘッドと排気ポートとの間の遮熱性を従来よりも向上することができる。第2発明の内燃機関によれば、シリンダーヘッドの排気ポートの内面の少なくとも一部に、シリンダーヘッドを構成する材料よりも低い熱伝導度を有する遮熱部材を設置したので、シリンダーヘッドと排気ポートとの間の遮熱性を従来よりも向上することができる。
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1〜3は、第1発明の実施形態からなる遮熱部材をエンジンに取り付けた例を示す。
本実施形態においては、内燃機関であるエンジンは、シリンダーブロック1の上面に固定されたシリンダーヘッド2と、そのシリンダーヘッド2に接続する排気マニホールド3とを備えている。シリンダーブロック1の長手方向には、摺動可能なピストン4を収納する複数のシリンダー5が形成されている。また、鋳鉄材からなるシリンダーヘッド2には、シリンダー5内で燃焼した排ガスが通過する排気ポート6が形成されているとともに、その排気ポート6の一端部を開閉する排気バルブ7が取り付けられている。排気マニホールド3は、集合部に通じる分岐通路であるストレートポート8を介して排気ポート6と接続しており、それらの排気ポート6とストレートポート8とにより排ガスの通路9が構成されている。なお、シリンダーブロック1及びシリンダーヘッド2には、それぞれ冷却水が流れるウォータジャケット10が形成されている。
また、シリンダーヘッド2の排気ポート6と、排気マニホールド3のストレートポート8との間には、排気マニホールドガスケット11Aが介装されている。
このようなエンジンにおいて、排気ポート6の内面12には、表面に複数の凸部13を有する遮熱部材14Aが、それらの凸部13が接触するように設置されている。なお、遮熱部材14Aの表面が、設置前の排気ポート6の内面12と同じ高さになるようにすることが好ましい。
遮熱部材14Aの材料としては、シリンダーヘッド2を形成する鋳鉄材、ステンレス鋼又はチタン合金などの金属材料を用いることができるが、その場合には低コストである鋳鉄材が好ましい。あるいは、ジルコニア系セラミックス又は窒化ケイ素系セラミックスなどのセラミックス材料を用いることができるが、その場合には熱的及び機械的特性に優れたジルコニア系セラミックスが好ましい。このジルコニア系セラミックスにおけるジルコニアの種類は特に限定するものではないが、温度変化に強いという観点から、安定化剤として希土類酸化物(例えば、酸化イットリウムなど)が添加された安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアを用いるのがよい。ジルコニア系セラミックスは、セラミックスのなかでも、熱伝導度が低く、かつ機械的強度が高いという特性を有している。
遮熱部材14Aの表面に形成された凸部13の形状は特に限定するものではないが、断面を矩形状(図2参照)とする他に、加工が比較的容易であって伝熱面積ができるだけ低くなるように、断面を一部球状(図3参照)とするようにしてもよい。また、凸部13の分布についても特に限定するものではないが、接触圧が均一になるように、千鳥格子状などの等間隔な分布とすることが好ましい。
このように、排気ポート6の内面12に、表面に複数の凸部13を有する遮熱部材14Aを、それらの凸部13が接触するように設置することで、排気ポート6とシリンダーヘッド2との間の遮熱性が従来よりも向上する。その結果として、排気マニホールド3へ流れる排ガスの温度低下が抑制されるので、エンジンの燃費及び排ガス処理性能が向上する。
また、遮熱部材14Aを鋳鉄材又はジルコニア系セラミックスから形成することで、遮熱部材14Aが従来よりも破損し難くなるので、破損片の発生・移動によるエンジン等への悪影響を防止することができる。
図4は、第2発明の実施形態からなる遮熱部材をエンジンに取り付けた例を示す。なお、図1と同じ部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施形態においては、エンジンの排気ポート6の内面12には、シリンダーヘッド2を形成する鋳鉄材よりも低い熱伝導度を有する遮熱部材14Bが設置されている。そのような遮熱部材14Bを形成する材料としては、ジルコニア系セラミックスが望ましく例示される。
このように、排気ポート6の内面12に、シリンダーヘッド2を形成する鋳鉄材よりも低い熱伝導度を有する遮熱部材14を設置することで、排気ポート6とシリンダーヘッド2との間の遮熱性が従来よりも向上する。その結果として、排気マニホールドへ流れる排ガスの温度低下が抑制されるので、エンジンの燃費及び排ガス処理性能が向上する。
また、遮熱部材14Aが従来よりも破損し難くなるので、破損片の発生・移動によるエンジン等への悪影響を防止することができる。
上記の遮熱部材14Bにおいても、図2又は図3に示すように、表面に複数の凸部13を形成して、それらの凸部13が内面12に接触するように設置することができる。そのようにすることで、材料の低熱伝導度と凸部13による小さい伝熱面積との相乗効果により、排気ポート6とシリンダーヘッド2との間の遮熱性が更に向上する。
第1発明及び第2発明の遮熱部材14A、14Bと排気ポート6の内面12との間には、例えば図5に示すように、ジルコニア系セラミックスの薄板からなる遮熱プレート15を介在させることで、遮熱性を更に向上することができる。なお、このように遮熱プレート15を介在させる場合においても、遮熱部材14Aの表面が、設置前の排気ポート6の内面12と同じ高さになるようにすることが好ましい。
遮熱部材14A、14Bを設置する排気ポート6の内面12の領域は、図1、4に示すように排気ポート6の全長に限るものではなく、例えば図6に示すように、ストレートポート8との接続部近傍の内面12のみに設置するようにしてもよい。また、排気ポート6の内面12の周方向全体ではなく、その一部にのみ設置するようにしてもよい。
なお、排気ポート6の内面12の一部に遮熱部材14A、14Bを設置する場合には、図6に示すように、遮熱部材14A、14Bの表面と非設置部分の内面12とが面一になるようにする。
第1発明及び第2発明におけるエンジンにおいては、図7に示すように、遮熱性の高い排気マニホールドガスケット11Bを用いるようにしてもよい。
この排気マニホールドガスケット11Bは、図8に示すように、ジルコニア系セラミックスの薄板から構成された遮熱プレート16の両面にそれぞれ順に積層されたインナービードプレート17及びアウタービードプレート18と、それらの積層されたプレート群16、17、18を挟持する一対のアウタープレート19、19とから主に構成されている。
インナービードプレート17及びアウタービードプレート18は、表面に環状に延びるビード20、21が形成された薄肉の鋼板からそれぞれ構成されており、対向するビード20、21が互いに外側へ凸となるように積層されている。これにより、遮熱プレート16及びアウタープレート19との間の伝熱面積が小さくなる。
一対のアウタープレート19、19は、薄肉の鋼板から構成されており、エンジンに取り付けたときに排気ポート部11の端面及びストレートポート部13の端面にそれぞれ当接する。
また、排気マニホールドガスケット11Bを取り付けた際に排ガスの通路9に面する側面には、極薄肉の鋼板からなる笠状のセットプレート22が、一対のアウタープレート19、19の端部を挟持するようにして取り付けられており、積層されたプレート群16、17、18が排ガスの通路9へ脱落するのを防止している。更に、その反対側の側面においても、一対のアウタープレート19、19の端部を折り曲げて側面に沿ってそれぞれ延伸させることで、積層されたプレート群16、17、18が外部へ脱落するのを防止している。なお、それらの延伸部19a、19aは、伝熱経路とならないように、互いに接触することなく空隙23を形成している。
このように、ジルコニア系セラミックスからなる遮熱プレート16と、表面にビード20、21が形成されたビードプレート17、18とを交互に積層するようにしたので、ジルコニア系セラミックスの優れた遮熱性及び機械的特性と、ビード20、21による部材間の伝熱面積の低下との相乗効果により、排気マニホールドガスケット11Bの遮熱性及びシール性が高くなっている。
このような排気マニホールドガスケット11Bと遮熱部材14A、14Bとを組み合わせることで、エンジンに係るシステム全体の遮熱性を向上することができる。
1 シリンダーブロック
2 シリンダーヘッド
3 排気マニホールド
6 排気ポート
8 ストレートポート
9 通路
11A、11B 排気マニホールドガスケット
12 内面
13 凸部
14A、14B 遮熱部材
15 遮熱プレート
2 シリンダーヘッド
3 排気マニホールド
6 排気ポート
8 ストレートポート
9 通路
11A、11B 排気マニホールドガスケット
12 内面
13 凸部
14A、14B 遮熱部材
15 遮熱プレート
Claims (7)
- 排気マニホールドに接続する排気ポートがシリンダーヘッドに形成された内燃機関において、
前記排気ポートの内面の少なくとも一部に、表面に複数の凸部を有する遮熱部材を、前記凸部が接触するように設置したことを特徴とする内燃機関。 - 排気マニホールドに接続する排気ポートがシリンダーヘッドに形成された内燃機関において、
前記排気ポートの内面の少なくとも一部に、前記シリンダーヘッドを構成する材料よりも低い熱伝導率を有する遮熱部材を設置したことを特徴とする内燃機関。 - 前記遮熱部材が表面に複数の凸部を有し、前記凸部が前記排気ポートの内面に接触するように設置した請求項2に記載の内燃機関。
- 前記遮熱部材が、前記シリンダーヘッドを形成する材料からなる請求項1に記載の内燃機関。
- 前記遮熱部材が、ジルコニア系セラミックスからなる請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関。
- 前記遮熱部材と前記排気ポートの内面との間に、ジルコニア系セラミックスからなる遮熱プレートを介在させた請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関。
- 前記排気ポートと前記排気マニホールドとの間に、ジルコニア系セラミックスを用いた排気マニホールドガスケットを介装した請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関。
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