JP2014094861A - 板ガラスの成形ノズル - Google Patents

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Abstract

【課題】成形される板ガラスに波打ちが生じて平坦度が低下したり、温度差によるひび割れ等が生じ、板ガラスの品質が低下するのを抑制できる板ガラスの成形ノズルを提供すること。
【解決手段】本発明に係る板ガラスの成形ノズルは、垂直方向に延伸した第1の流路と、記第1の流路の下端部において第1の流路と連通し、下端部から左右に分岐する第2の流路と、第2の流路から下方に延伸するスリット状の第3の流路と、を備え、第2の流路の両端は、流路の径が細くなる先細り形状となっていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、板ガラスの成形ノズルに関し、特に、厚みが2.0mm以下の板ガラスを成形する板ガラスの成形ノズルに関する。
板ガラスの成形方法として、細長い開口(スリット)から溶融したガラス(以下、溶融ガラスと記載)を流出させてロールアウトにて板ガラスを成形する手法が従来から用いられている。通常、ガラスの溶融状態を保つため、スリットには電流が流され、高温に保たれている。
しかしながら、スリットは、その形状により均一に加熱することが難しく、また、場所により放射冷却による効果が異なる。このため、スリットから流出する溶融ガラスの温度がスリットの長さ方向において不均一となる。特に、スリット端部は、冷却されやすい。このため、スリット端部において、溶融ガラスの温度が低下し、粘性が増大しやすい。この結果、成形される板ガラスに波打ちが生じて平坦度が低下したり、温度差によるひび割れ等が生じ、板ガラスの品質が低下していた。
従来の板ガラスの製造方法では、スロットノズル(スリット)へ溶融ガラスを供給する配管内での圧力低下を一定とし、スロットノズルの長手方向における溶融ガラスの流量を均一にすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1で提案される手法では、溶融ガラスの温度による粘性の変化が考慮されておらず、スリットから流出する溶融ガラスの温度分布を均一にすることが難しい。成形ノズルは、側方外周面からの熱の逃げやバスバーを介した放熱があるため、溶融ガラスはスリットの端部に向かうにつれて冷却量が相対的に多くなる。このため、溶融ガラスの温度を高精度に制御しようとしても、実際に溶融ガラスの温度を均一に制御しスリットからの流出量を幅方向に均一にすることは難しい。
また、ロールアウト法により、板厚2.0mm以下のガラス板を成形する場合、スリットから流出した溶融ガラスが大気中に滞留すると温度低下によりガラスの粘性が高くなり変形能が低下する。このため、ロールとスリットとの間隔は出来るだけ近接させる必要がある。そのため、たとえ成形ノズルの壁面からの圧力損失を均一にできたとしても、スリットや溶融ガラスは冷却源となるロールに熱を奪われてしまい、端部に行くにつれて冷却される。この結果、スリットから流出する溶融ガラスの粘性を均一とすることができず、スリットから流出する溶融ガラスの流量にばらつきが生じる。このため、却って、成形される板ガラスに波打ちが生じて平坦度が低下したり、温度差によるひび割れ等が生じたりしていた。
特開2005−231992号公報
本発明は、成形される板ガラスに波打ちが生じて平坦度が低下したり、温度差によるひび割れ等が生じ、板ガラスの品質が低下するのを抑制した板ガラスの成形ノズルを提供することを目的とする。
本発明に係る板ガラスの成形ノズルは、垂直方向に延伸した第1の流路と、記第1の流路の下端部において第1の流路と連通し、下端部から左右に分岐する第2の流路と、第2の流路から下方に延伸するスリット状の第3の流路と、を備え、第2の流路の両端は、流路の径が細くなる先細り形状となっていることを特徴とする。
本発明によれば、第2の流路の両端が、流路の径が細くなる先細り形状となっているので、スリット状の第3の流路の長手方向における溶融ガラスの流量及び温度分布を均一とすることができる。このため、成形される板ガラスに波打ちが生じて平坦度が低下したり、温度差によるひび割れ等が生じ、板ガラスの品質が低下するのを抑制することができる。
実施形態に係る板ガラスの成形ノズルの斜視図である。 実施形態に係る板ガラスの成形ノズルの正面図である。 実施形態に係る板ガラスの成形ノズルの断面形状を示す図である。 実施形態に係る板ガラスの成形ノズルの開口の形状を示す図である。 比較例に係る板ガラスの成形ノズルの正面図である。 実施例及び比較例に係るシミュレーション結果である。
(実施形態)
図1は、実施形態に係る板ガラスの成形ノズル100(以下、成形ノズル100と記載)の斜視図である。図2は、成形ノズル100の正面図である。図3は、成形ノズルの断面形状を示す図である。図3(a)は、図1の線分X−Xにおける断面形状を、図3(b)は、図1の線Y−Yにおける断面形状を、図3(c)は、図1の線分Z−Zにおける断面形状を、それぞれ示している。図4は、成形ノズル100の開口(スリット)の形状である。以下、図1〜図4を参照して、成形ノズル100の構成について説明する。なお、成形ノズル100は、厚みが2.0mm以下の板ガラスを主に成形する。
(成形ノズル100の構成)
成形ノズル100は、第1の中空パイプ110(第1の流路)と、第2の中空パイプ120(第2の流路)と、スリットノズル130(第3の流路)とを備える。第1の中空パイプ110は、垂直方向に延伸している。第1の中空パイプ110の上端110Aは、図示しない溶融ガラスの供給機構(例えば、ガラスの溶融炉や撹拌槽)に接続されている。第1の中空パイプ110の内部は、第1の流路FC1を形成する。
第2の中空パイプ120は、中央部120Aが第1の中空パイプ110の下端110Bと接続され、第1の中空パイプ110の下端110Bから左右下方向に向かって延伸する。第2の中空パイプ120は、第1の中空パイプ110の下端110Bと接続される中央部120Aを中心として左右対称の形状をしている。
さらに、第2の中空パイプ120は、中央部120Aから左右の端部120B,120Cへ向かうに従い径が細くなる先細りの形状となっている。つまり、図3に示すように、第2の中空パイプ120は、中央部120Aから左右の端部120B,120Cへ向かうに従い断面積が小さくなっている。このため、第2の中空パイプ120は、中央部120Aから左右の端部120B,120Cへ向かうに従い電気抵抗が高くなっている。第2の中空パイプ110の内部は、第2の流路FC2を形成し、第1の中空パイプ110の下端110Bにおいて、第1の流路FC1と連通している。
第2の中空パイプ120の左右の端部120B,120Cには、第2の流路FC2を塞ぐ蓋C1,C2が設けられている。さらに、蓋C1,C2の端部120B,120Cには、中空パイプP1,P2がそれぞれ設けられている。中空パイプP1,P2の断面積は、端部120B,120Cの断面積よりも小さくなっている。つまり、中空パイプP1,P2の電気抵抗は、第2の中空パイプ120よりも高くなっている。
第2の中空パイプ120の左右の端部120B,120Cに設けられた中空パイプP1,P2には、通電用のバスバーB1,B2がそれぞれ接続される。該バスバーB1,B2は、図示しない電極に接続され、バスバーB1,B2を介して成形ノズル100に電流が流れる(通電される)。この通電により、電気抵抗に応じたジュール熱が発生して、成形ノズル100が加熱される。
スリットノズル130は、図4に示すように、第2の中空パイプ120の下側に設けられて下方に延伸し、幅Wが0.5mm〜8.0mm、長さLが100.0mm〜1000.0mmのスリット状の開口130Aを有する。スリットノズル130は、第3の流路FC3を形成し、第2の流路FC2と連通している。第2の流路FC2から流れてきた溶融ガラスは、この第3の流路FC3により板状となり、開口130Aから流出する。
なお、成形ノズル100は、導電性でかつ耐火性の材料で構成することが好ましい。このような材料として、例えば、白金(Pt)や白金合金(例えば、白金とロジウム(Rh)との合金))を使用することができる。
(成形ノズル100の放熱)
次に、成形ノズル100の放熱について説明する。
図1を参照してもわかるように、第2の中空パイプ120の中央部120Aでは、前方(矢印α)、後方(矢印β)、上方(矢印γ)、下方(矢印δ)の4方向において放射冷却が発生するのに対して、第2の中空パイプ120の左右の端部120B,120Cでは、前方(矢印α)、後方(矢印β)、上方(矢印γ)、下方(矢印δ)の4方向に加え、側方(矢印ε、矢印ζ)の5方向において放射冷却が発生する。さらに、第2の中空パイプ120の左右の端部120B,120Cでは、バスバーB1,B2への熱伝導による熱損失が発生する。
つまり、第2の中空パイプ120の端部120B,120Cは、第2の中空パイプ120の中央部120Aに比べて非常に冷却されやすいことがわかる。このため、成形ノズル100を均一に加熱する従来の加熱方法では、第2の中空パイプ120の中央部120Aに比べて、第2の中空パイプ120の端部120B,120Cの温度が低くなる。
この結果、スリットノズル130から流出する溶融ガラスの粘性が、長手方向における端部において上昇し、開口130Aから溶融ガラスの流量が、開口130Aの長手方向において均一とならず、成形される板ガラスに波打ちが生じて平坦度が低下したり、温度差によるひび割れ等が生じ、板ガラスの品質が低下してしまう。
これに対して、本発明の成形ノズル100では、第2の中空パイプ120を、中央部120Aから左右の端部120B,120Cへ向かうに従い径が細くなる先細りの形状とし、第2の中空パイプ120は、中央部120Aから左右の端部120B,120Cへ向かうに従い断面積が小さくしている。このため、第2の中空パイプ120は、中央部120Aから左右の端部120B,120Cへ向かうに従い電気抵抗が高くなり、中央部120Aから端部120B,120Cへ向かうほど、通電により発生する熱量を多くしている。
さらに、最も冷却されやすい端部120B,120Cに、端部120B,120Cよりも断面積よりも小さい中空パイプP1,P2を設けて、端部120B,120Cを加熱するようにしている。このため、スリットノズル130の開口130Aから流出する溶融ガラスの温度分布を、開口130Aの長手方向において略均一にすることができる。
この結果、スリットノズル130の開口130Aから流出する溶融ガラスの流量分布が開口130Aの長手方向において略均一となり、成形される板ガラスに波打ちが生じて平坦度が低下したり、温度差によるひび割れ等が生じ、板ガラスの品質が低下するのを効果的に抑制することができる。
また、第2の中空パイプ120の端部120B,120Cに、薄板ではなく中空パイプP1,P2を設けているので剛性が向上し、かつ、放熱面が小さく発熱性が高いというメリットがある。
なお、バスバーB1,B2からの放熱を抑制するために、バスバーB1,B2を耐熱性及び保温性に優れる部材(例えば、シリカアルミナファイバーからなる断熱ボード(例)ニチアス製MD16ボード)で覆うようにしてもよい。さらに、第2の中空パイプ120の端部120B,120Cを加熱する加熱手段(例えば、加熱コイル)をさらに備えるようにしてもよい。なお、加熱手段は、第2の中空パイプ120の両端部120B、120Cを互いに独立して加熱することができることが好ましい。
(ロールアウト成形)
本発明の成形ノズル100は、対向して配置された一対の圧延ローラー上に溶融状態のガラスを供給し、その溶融ガラスを圧延ローラーにて板状に成形する、いわゆるロールアウト成形に用いられるノズルであることが好ましい。本発明の成形ノズル100を用いて圧延ローラー上に溶融ガラスを供給することで、幅方向の溶融ガラスの供給量が均一となる。そのため、幅方向の厚みが均一で平坦性の高いガラス板を一対の圧延ローラーにてロールアウト成形することが可能である。
(その他の実施形態)
以上のように、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
次に、計算結果による実施例と比較例を参照してより具体的に本発明の成形ノズル100について説明する。
(実施例の成形ノズル)
初めに実施例に係る成形ノズルを説明する。実施例に係る成形ノズルには、図1〜図4を参照して説明した成形ノズル100を用いた。
(比較例の成形ノズル)
次に、比較例に係る成形ノズルを説明する。比較例に係る成形ノズルには、図5に示す成形ノズル200(長さLが340mm、幅Wが6mm)を用いた。以下の比較例に係る成形ノズルの説明では、図1〜図4を参照して説明した成形ノズルと同一の構成には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図5に示すように、比較例に係る成形ノズルは、第2の中空パイプ220が端部220B,220Cに向かって先細りとなっておらず、第2の中空パイプ220内にて壁面圧力損失が一定となるように構成されている。また、第2の中空パイプ220の端部220B,220Cに中空パイプP1,P2が設けられていない。
(シミュレーション結果)
図6は、実施例及び比較例に係る成形ノズル100及び成形ノズル200から溶融ガラスを流出させた場合のシミュレーション結果である。該シミュレーションでは、成形ノズル100,200の開口の形状を、長さLが340mm、幅Wが6mmとした。
なお、図6では、成形ノズルの開口の中心から端部に向けて4.85mmの等間隔に区切った場合の区間(流出方向に直交する面積:4.85mm×6mm)ごとの溶融ガラスの流量分布を示している。また、図6には、実施例のシミュレーション結果を菱形で、比較例のシミュレーション結果を丸で示している。さらに、図6では、縦軸にガラスの流量(mm/s)を示し、横軸に成形ノズルの中心からの端部への距離を示した。
図6のシミュレーション結果では、実施例に用いた成形ノズル100の中空パイプ120が発熱源として機能しており、オリフィス(スリットノズル130)の温度は両端が高い状態になっている。また、図6に示すシミュレーション結果からは、実施例に係る成形ノズルから吐出した溶融ガラスの速流量分布が、オリフィスの長手方向において略均一となり、安定して流下していることがわかった。さらに、図6に示すシミュレーション結果からは、比較例に係る成形ノズルから吐出した溶融ガラスの流量が、中央部と比較し端部において低く、オリフィスの長手方向において流量分布が略均一となっていないことがわかった。
(ガラス板の成形)
次に、上記シミュレーション結果を基にして白金にて実施例に成形ノズル100を製作し、表面温度1250℃にて、スリットノズル130の開口130A(長さLが340mm、幅Wが6mm)から溶融ガラスを流出させ、ロールアウト法により、ガラス板を作成したところ、板厚1.5mmで幅300mmの薄板ガラス得ることができた。
また、上記シミュレーション結果を基にして白金にて比較例に係る成形ノズル200を製作し、表面温度1250℃にて、スリットノズル130の開口130A(長さLが340mm、幅Wが6mm)から溶融ガラスを流出させ、ロールアウト法により、ガラス板を作成したところ、ガラス板は、側面に向かうにつれて板厚が減少しており、厚みの均一なガラス板を得ることはできなかった。
本発明の板ガラスの成形ノズルは、成形される板ガラスに波打ちが生じて平坦度が低下したり、温度差によるひび割れ等が生じ、板ガラスの品質が低下することを抑制できるので、特に、厚みの薄い板ガラスをロールアウトで成形する際の成形ノズルに好適である。
100…成形ノズル、110…第1の中空パイプ、110A…上端、110B…下端、120…第2の中空パイプ、120A…中央部、120B,120C…端部、130…スリットノズル、130A…開口、B1,B2…バスバー、C1,C2…蓋、FC1…第1の流路、FC2…第2の流路、FC3…第3の流路、P1,P2…中空パイプ。

Claims (9)

  1. 垂直方向に延伸した第1の流路と、
    前記第1の流路の下端部において前記第1の流路と連通し、前記下端部から左右に分岐する第2の流路と、
    前記第2の流路から下方に延伸するスリット状の第3の流路と、
    を備え、
    前記第2の流路の両端は、
    流路の径が細くなる先細り形状となっていることを特徴とする板ガラスの成形ノズル。
  2. 前記第2の流路は、中空パイプで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の板ガラスの成形ノズル。
  3. 前記中空パイプは、
    前記第1の流路の下端部から両端部にかけて電気抵抗が高くなることを特徴とする請求項2に記載の板ガラスの成形ノズル。
  4. 前記中空パイプは、
    前記両端部に通電用のバスバーを備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の板ガラスの成形ノズル。
  5. 前記中空パイプの両端部を加熱する加熱手段をさらに備えることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の板ガラスの成形ノズル。
  6. 前記加熱手段は、前記中空パイプの両端部を互いに独立して加熱することができることを特徴とする請求項5に記載の板ガラスの成形ノズル。
  7. 前記中空パイプは、前記両端部に電気抵抗の高い高抵抗部を備えることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の板ガラスの成形ノズル。
  8. 前記中空パイプは、前記両端部に内部が閉塞された筒状体を備えることを特徴とする請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載の板ガラスの成形ノズル。
  9. 溶融ガラスを圧延してガラス板を成形する一対の圧延ローラー上に前記溶融ガラスを供給することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の板ガラスの成形ノズル。
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