JP2014091930A - 小口径コンクリート場所打ち杭による地盤補強工法 - Google Patents

小口径コンクリート場所打ち杭による地盤補強工法 Download PDF

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Abstract

【課題】殆んど無排土で施工でき、安定した品質を容易に確保でき、低コストで施工可能な地盤補強工法を提供する。
【解決手段】ケーシング1先端に係合する先端掘削翼2は、ケーシング先端を閉塞し、板状刃と翼部を有する。先端掘削翼2はケーシング1の貫入時回転方向にはケーシングと係合して一体に回転し、引き抜き時の逆回転に対してはケーシングから外れる。ケーシング1を地盤に回転・圧入して所定深度まで貫入し、次いで、ケーシング1内にコンクリート等の注入材7を打設し、鉄筋を挿入することなく注入材7が固まらないうちにケーシングを引き抜いて、小口径コンクリート杭を築造する。先端金具2はケーシングの先端から外れて掘削孔の底に残る。ケーシングが小径であり掘削土はそれほど多くないので殆んど無排土で施工できる。掘削孔径が確保されたケーシング内に注入材を打設するので、品質の安定した小口径コンクリート杭が得られる。
【選択図】図1

Description

この発明は、小規模の建築物や擁壁などの小規模構造物に適用して好適な小口径コンクリート場所打ち杭による地盤補強工法に関する。
小規模建築物に採用されている地盤補強工法として、小径の鋼管杭や既製コンクリート杭を打設する既製杭工法が広く採用されている。例えば特許文献1で採用している工法は、地盤をオーガードリルで掘削しながら鋼管杭を埋め込む工法である。また、特許文献5の回転貫入鋼管杭工法では鋼管先端に溶接固定した鋼製翼に特徴がある。
また、例えば先端部に攪拌翼を有する掘削攪拌ロッドを地中に貫入させる等して、地盤を掘削しながらセメント系固化材を注入して、掘削した原地盤土とセメント系固化材と攪拌混合させ固化させ、柱状杭(ないし柱状補強体)を造成するいわゆる柱状改良杭工法も広く採用され、具体的な施工方法としては種々の工法がある(特許文献2、特許文献3)。
また、地盤をアースオーガー等で掘削し、その掘削孔に、排出した掘削土とセメント系固化材とを混合した改良土を埋め戻し締め固めることで柱状補強体を形成するいわゆる乾式の柱状改良杭工法もある(特許文献3ではこの工法も採用)。
ところで、場所打ち杭工法の代表的な工法の一つであるオールケーシング工法は、先端に掘削刃を持つケーシングを揺動圧入等により地盤に圧入し、ケーシング内をハンマーグラブで掘削・排出し、掘削孔に鉄筋かごを挿入し、コンクリートを注入しながらケーシングを引き抜くことで鉄筋コンクリート杭を造成する工法(例えば特許文献4で採用されている)であるが、施工設備が大掛かりであり、一般に小規模建築物には適さない。また、排出土の処理に費用がかかり、環境問題も生じる。リバース工法、アースドリル工法等も同様である。
特開2002−356846 特開2006−283438 特開平11−247175 特開2002−115481 特開2010−281205
上記の鋼管杭や既製コンクリート杭は、杭材を生産工場から現場へ搬送するのが容易でなく、コストも高くなるという問題がある。また、地盤状況によっては杭の長さ調整が必要となるという問題もある。また、回転貫入鋼管杭工法では、鋼管を現場溶接した時の品質確保の問題や、使用する鋼管が高価であるという問題もある。
また、柱状改良杭工法は所望の強度を安定して得ることが必ずしも簡単でないという品質確保の問題があり、また、施工に伴い発生する残土の処理の問題もある。
上記のような背景のもと、オールケーシング工法やリバース工法、アースドリル工法等の工法は小規模建築物の施工には適していないが、そのような場所打ち杭工法を部分的に変更、簡易化し、小口径であることを生かして掘削土の排出を無くすか少なくすることができれば、小規模建築物用の工法として従来の小規模建築物用の工法の欠点を解消することが可能ではないか、という観点で開発を進めて本発明を得ることができた。
本発明は、小規模構造物に適用可能な小口径コンクリート杭に特化することで、残土の排出が殆んどなく、安定した品質を確保することが容易で、しかも施工が容易かつ低コストで施工できる小口径コンクリート場所打ち杭による地盤補強工法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する請求項1の発明は、ケーシングとこのケーシングの先端に係脱可能に取り付けられてケーシングの回転・圧入を促進するための先端掘削翼とを用いて施工する、小口径コンクリート場所打ち杭を用いた地盤補強工法であって、
前記先端掘削翼は、ケーシング径より大径でケーシングの先端開口を閉塞する一部切欠き円板部とこの一部切欠き円板部に基部が固定された、尖った先端部を有する板状刃とからなるとともに、前記一部切欠き円板部は、ケーシングの先端開口を閉塞する円形閉塞部と、この円形閉塞部に連接してケーシング外周面より半径方向外方に一部切欠き鍔状に延在する一部切欠きの翼部とからなり、前記翼部における前記切欠き部の片側近傍は上向きに傾斜して上向き傾斜面部を形成し、他側近傍は下向きに傾斜して下向き傾斜面部を形成する構造であり、
かつ、ケーシングの貫入時回転方向に対してはケーシングと係合して一体に回転し前記貫入時回転方向と逆方向の回転に対してはケーシングから外れるようにケーシングに係合しており、
前記ケーシングの先端に前記先端掘削翼を係合させた状態で当該ケーシングを、ケーシング上端部に接続した回転・圧入駆動装置により地盤に回転・圧入して所定深度まで貫入し、
次いで、前記ケーシング内にコンクリート、モルタル、砕石混合セメントミルクのいずれかである注入材を打設し、
鉄筋を挿入することなく前記注入材が固まらないうちに前記ケーシングを、前記先端掘削翼がケーシングの先端から外れて残るように、前記貫入時回転方向と逆方向に回転させながら引き抜いて杭を築造することを特徴とする。
請求項2は、請求項1の小口径コンクリート場所打ち杭による地盤補強工法において、
前記ケーシングを、ケーシング上端部に接続した回転・圧入駆動装置により回転・圧入して所定深度まで貫入した後、前記回転・圧入駆動装置をケーシングから切り離し、
次いで、前記ケーシング内に注入材を打設した後、前記回転・圧入駆動装置をケーシングの上端部に再接続し、その後、ケーシングを引き抜くことを特徴とする。
請求項3は、請求項1又は2の小口径コンクリート場所打ち杭による地盤補強工法において、前記先端金具は、前記一部切欠き円板部の前記板状刃と反対側の面に、前記ケーシングの先端部に嵌合する短い円筒部を溶接固定した構造であることを特徴とする。
請求項4は、請求項3の小口径コンクリート場所打ち杭による地盤補強工法において、
前記一部切欠き円板部は、円形鋼板を切り込み曲げ加工して製作したものであり、前記円形鋼板に、当該一部切欠き円板部に溶接固定される前記円筒部の下端外周に沿うように所定範囲に円弧状の切込みaを設け、前記切込みaを含む所定範囲を半径方向外側への2本の切込みbによって扇形状に切り欠いて切欠き部cを形成し、 前記切込みaの各終端と円形鋼板の中心を結ぶ線分の延長線dを折曲げ線として前記切欠き部cの片側を上方に折曲して上向き傾斜面部を形成し、前記切欠き部cの他側を下方に折曲して下向き傾斜面部を形成してなり、前記上向き傾斜面部および前記下向き傾斜面部の切込み部aにおける傾斜部と非傾斜部の交差部とを溶接接合して、前記切欠き部cを介在させて対向する上向き傾斜面部と下向き傾斜面部とが形成された翼部を設けたことを特徴とする。
請求項5は、請求項3又は4記載の小口径コンクリート場所打ち杭を用いた地盤補強工法において、前記ケーシングと先端掘削翼との係合構造が、前記ケーシング先端部内面に円周方向に間隔をあけて固定した2箇所以上の突起と、前記先端掘削翼の一部切欠き円板部の円形閉塞部の内面に固定された、前記各突起に係合可能な態様のL形係合片とによる係合構造であることを特徴とする。
本発明の小口径コンクリート場所打ち杭による地盤補強工法によれば、ケーシングの外径が小径であり掘削土はそれほど多くないので、殆んど無排土で施工でき、残土処理も不要となる。
また、先端掘削翼を係合させたケーシングを貫入して孔を掘削した後、掘削孔の底に先端掘削翼を残置させてケーシングのみを引き抜きながらケーシング内に注入材を注入するので、すなわち、掘削孔径が確保されたケーシング内に注入材を打設するので、品質の安定した小口径コンクリート杭の築造が可能である。
簡略化して言えば、ケーシングを貫入させ、注入材を注入し、鉄筋を挿入することなくケーシングを引き抜くという単純な施工手順で、品質の安定した口径コンクリート杭を得ることができるので、施工が容易であり、施工コストも安く済む。
既製杭工法と異なり、杭材を生産工場から搬送することが不要なので、この点でも工事全体としてのコストも安く済み、施工管理も容易になる。
このように、本発明によれば、小規模構造物に適用可能な小口径コンクリート杭に特化することで、残土の排出が殆んどなく、安定した品質を確保することが容易で、しかも施工が容易かつ低コストで施工が可能となる。
また、場所打ち杭であるから地盤状況によっては杭の長さ調整が必要となるという問題は生じないし、回転貫入鋼管杭工法と異なり、鋼管を現場溶接した時の品質確保の問題や、使用する鋼管が高価であるという問題もない。
本発明における先端掘削翼は、その翼部が、切欠き部空間cを挟んで片側に上向き傾斜部、他側に下向き傾斜部を有する構造なので、翼部の両傾斜部により大きな推進力が得られ、回転・圧入装置による押し込み力と合わせてケーシングの貫入が円滑に行なわれる。
また、ケーシングを貫入させて掘削する際、翼部が板状刃と協働して地盤の掘削を行うので、翼部の推進力が効率よく機能するとともに、翼部の両傾斜部と板状刃との相乗作用により、効率的に掘削することができる。
また、掘削孔の底に残置される先端掘削翼の形状を、例えば請求項4のようなL形係合片を持つ形状等の、硬化した注入材と一体係合する形状とすることで、先端掘削翼の広い翼部で大きな支持力を確保できることができる。すなわち、周面摩擦による支持力だけでなく、特許文献5の回転貫入鋼管杭工法と同様に先端支持力も確保することが可能となる。
本発明の一実施例の小口径コンクリート場所打ち杭による地盤補強工法の施工手順を説明する図である。 図1の地盤補強工法に用いるケーシング及びその先端に係合させた先端掘削翼を示すもので、(イ)は前記先端掘削翼をケーシングに係合させた状態で示した正面図、(ロ)は(イ)のA−A断面図、(ハ)は上側部分は(イ)のB−B断面図であるが下側部分は(イ)の左側面図で示した図ある。 図2における先端掘削翼のみを示すもので、(イ)、(ロ)、(ハ)はそれぞれ、図2の(イ)、(ロ)、(ハ)における先端金具のみを示す図である。 図3の先端掘削翼における一部切欠き円板部を円形鋼板から切り込み曲げ加工して製作する要領を説明するため図であり、(イ)は素材の円形鋼板の平面図、(ロ)は製作した一部切欠き円板部の模式的な正面図である。 図2におけるケーシング先端部と先端掘削翼との係合構造の一箇所を示す斜視図である。 (イ)は先端掘削翼をケーシングの先端に係合させた状態で示した斜視図、(ロ)は先端金具を分離させた状態で示した斜視図である。 本発明の地盤補強工法の適用例を示すもので、(イ)は適用した小規模建築物のべた基礎の平面図、(ロ)は(イ)におけるC部の拡大断面図である。
以下、本発明の小口径コンクリート場所打ち杭による地盤補強工法を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施例の小口径コンクリート場所打ち杭による地盤補強工法の施工手順を説明する図である。以下の実施例では、ケーシングとして直径216.3mmφの鋼管を使用して施工している。
(1)図1(イ)のように、小口径コンクリート杭を造成しようとする杭芯位置に合せて、先端に鋼製の先端掘削翼2を係合させたケーシング1をセットする。先端掘削翼1の詳細構造については後述する。
杭打ち機3のリーダ4には、ケーシング1の頭部に連結されてケーシング2を回転・圧入する回転・圧入駆動装置5がリーダ4に沿って昇降自在に設けられている。回転・圧入駆動装置5として、アースオーガーのオーガー駆動部を用いることができる。
(2)次いで、ケーシング1の鉛直性を確認した後、回転・圧入駆動装置5によりケーシング1を回転・圧入させながら、所定深度まで埋設する(図1(ロ))。
本発明の工法は先端支持力と周面摩擦力により所定の支持力を確保できる工法である。
先端掘削翼2は、詳細は後述するが、ケーシング1の貫入時回転方向に対してはケーシング1の先端に係合し、貫入時回転方向と逆方向の回転に対してはケーシング1の先端から外れる構造である。
また、ケーシング1が貫入される際、先端掘削翼2で掘削された土砂は、ケーシング1の外径が小径であり発生する掘削土はそれほど多くないので、掘削土が地上に排出されることは殆んどない。
このように殆んど無排土で施工することができ、残土処理をする必要がない。
(3)次いで、回転・圧入駆動装置5をケーシング1から切り離す(図1(ハ))。
(4)次いで、ケーシング1内に注入材を注入する(図1(ニ))。
注入材としては、コンクリート、モルタル、砕石混合セメントミルクのいずれかを用いる。注入された注入材を7で示す。
(5)次いで、回転・圧入駆動装置5を再度ケーシング1に接続する(図1(ホ))。
(6)次いで、回転・圧入駆動装置5を貫入時の回転方向と逆方向に回転させながら、ケーシング1を引き抜く(図1(ヘ))。
その際、ケーシング先端に係合していた先端掘削翼2は、ケーシング1の逆回転によりケーシング1から外れて、掘削孔の底に残る。したがって、ケーシング1内に注入された注入材7はケーシング1を引き抜く際に掘削孔内に充満していく。
ケーシング1を引き抜いた後、注入材頭部の深度を確認・調整して小口径コンクリート杭の築造作業を完了する。
注入された注入材7が硬化すれば、所望の性能を備えた小口径コンクリート杭が得られる。
本発明工法により施工された小口径コンクリート杭は、鉛直支持力のみを期待して施工されるものであり、所定の設計・施工方針に従って設計・施工された小口径コンクリート杭の長期並びに短期荷重時の鉛直荷重に対する支持能力が、設計通りの性能を有することが実験によって確かめられた。
前記先端掘削翼2の詳細構造について説明する。
図6(イ)は先端掘削翼2をケーシング1の先端に係合させた状態で示した斜視図、(ロ)は先端掘削翼2を分離させた状態で示した斜視図である。
図2(イ)は先端掘削翼2をケーシング1の先端に係合させた状態で示した正面図、(ロ)は(イ)のA−A断面図、(ハ)は上側部分は(イ)のB−B断面図であるが下側部分は(イ)の左側面図で示した図である。
図3は図2における先端掘削翼2のみを示すもので、(イ)、(ロ)、(ハ)はそれぞれ、図2の(イ)、(ロ)、(ハ)における先端金具のみを示す図である。
図4は図3の先端掘削翼2における一部切欠き円板部12を円形鋼板から切り込み曲げ加工して製作する要領を説明するため図であり、(イ)は素材の円形鋼板(但し、切欠き部cが形成された段階のもの)12’の平面図、(ロ)は製作した一部切欠き円板部12の模式的な正面図である。
前記先端掘削翼2は、ケーシング径より大径でケーシング1の先端開口を閉塞する一部切欠き円板部12と、この一部切欠き円板部12に基部が溶接固定された図示例では正三角形状の板状刃13と、前記一部切欠き円板部12の前記板状刃13と反対側の面に溶接固定された、前記ケーシング1の先端部に嵌合する短い円筒部11とを備えた構造である。そして、詳細構造は後述するが、図5に示すようなケーシング1との係合構造15を有している。
前記一部切欠き円板部12は、ケーシング1の先端開口を閉塞する円形閉塞部121(ケーシング1の円周内部分)と、この円形閉塞部121に連接してケーシング外周より半径方向外方に一部切欠きの鍔状に延在する翼部122とからなり、前記翼部122における前記切欠き部cの片側近傍は上向きに傾斜して上向き傾斜面部122aを形成し、他側近傍は下向きに傾斜して下向き傾斜面部122bを形成する構造である。
前記一部切欠き円板部12は、直径350mmφの円形鋼板を切り込み曲げ加工して製作したものであり、その製作要領を図4を参照して説明すると、素材の円形鋼板12’に、当該一部切欠き円板部12に溶接固定される前記円筒部11(図4に2点鎖線で示す)の下端外周に沿うように所定範囲に円弧状の切込みaを設け、前記切込みaを含む所定範囲を半径方向外側への2本の切込みbによって扇形状に切り欠いて(切除して)切欠き部cを形成し、前記切込みaの各終端と円形鋼板12’の中心を結ぶ線分の延長線dを折曲げ線として前記切欠き部cの片側を上方に折曲して前記上向き傾斜面部122aを形成し、前記切欠き部cの他側を下方に折曲して前記下向き傾斜面部122bを形成し、前記上向き傾斜面部122aおよび前記下向き傾斜面部122bの切込み部aにおける傾斜部と非傾斜部の交差部とを溶接接合して製作する。これにより、切欠き部cを介在させて対向する上向き傾斜面部122aと下向き傾斜面部122bとを有する一部切欠きの鍔状の翼部122が円形閉塞部121の周囲に形成される。
上記構造の先端掘削翼2において、ケーシング1を回転させて地盤に貫入させる際、下向き傾斜部122bが、掘削刃である板状刃13と協働して地盤の掘削を行うとともにケーシング1を下方に引きずり込む推進力を得るように機能する。 また、上向き傾斜部122aも推進力を得るように機能する。これら、下向き傾斜部122bおよび上向き傾斜部122aの推進力が回転・圧入装置5による押し込み力に加わって、円滑な貫入が行なわれる。
先端掘削翼2のケーシング1に対する係合構造15は、図5にも斜視図で示すように、ケーシング1の先端部内面に溶接固定した、図示例ではケーシング1の直交する2つの直径方向の4箇所の突起17と、前記先端掘削翼2の一部切欠き円板部12の円形閉塞部121の裏面(板状刃13と反対側の面)に固定された、前記各突起17に係合可能な態様のL形係合片14とによる係合構造である。
ケーシング1の貫入時回転方向は右回転であり、ケーシング1が右回転(矢印a)すると、ケーシング1側の突起17が先端掘削翼2のL形係合片14に当たるので、先端掘削翼2はケーシング1と一体に回転する。引き抜き時にケーシング1が左回転(矢印b)すると、ケーシング1側の突起17は先端掘削翼2のL形係合片14から離れるので、ケーシング1を引き抜いた時、先端掘削翼2はケーシング1から外れて掘削孔底に残る。
なお、先端掘削翼2とケーシング1との係合構造はこの実施例に限らず、その他適宜の構造を採用することができる。
なお、先端掘削翼2として次の仕様が好適である。
(1)一部切欠き円板部
・材質:JISG3106(溶接構造用圧延鋼材)に規定されるSM490A、又はこれと同等以上の機械的性質を有するもの。
・直径φ350mm×厚さ12mm
(2)円筒部:JISG3101(一般構造用圧延鋼材)に規定されるSS400、又はこれと同等以上の機械的性質を有するもの。
(3)板状刃:JISG3101(一般構造用圧延鋼材)に規定されるSS400、又はこれと同等以上の機械的性質を有するもの。
上記の地盤補強工法によれば、上記の通り、殆んど無排土で施工でき、残土処理も不要となる。
また、掘削孔径が確保されたケーシング1内に注入材を打設するので、品質の安定した
小口径コンクリート杭の築造が可能である。
また、先端掘削翼2を係合させたケーシング1を貫入して孔を掘削した後、掘削孔の底に先端掘削翼2を残置させてケーシング1のみを引き抜きながらケーシング1内に注入材7を注入するので、すなわち、掘削孔径が確保されたケーシング1内に注入材7を打設するので、品質の安定した小口径コンクリート杭の築造が可能である。
簡略化して言えば、ケーシングを貫入させ、注入材を注入し、鉄筋を挿入することなくケーシングを引き抜くという単純な施工手順で、品質の安定した小口径コンクリート杭を得ることができるので、施工が容易であり、施工コストも安く済む。
既製杭工法と異なり、杭材を生産工場から搬送することが不要なので、施工コストも安く済み、施工管理も容易になる。
本発明工法で使用する杭打ち機は小型の杭打ち機を使用することができるので、その点でも施工が容易であり、コストが安価に済む。
このように、本発明によれば、小規模構造物に適用可能な小口径コンクリート杭に特化したことで、残土の排出が殆んどなく、安定した品質を確保することが容易で、しかも施工が容易かつ低コストで施工が可能となっている。
さらに、本発明における先端掘削翼2は、その翼部122が、切欠き部空間cを挟んで片側に上向き傾斜部122a、他側に下向き傾斜部122bを有する構造なので、翼部122の両傾斜部122a、122bにより大きな推進力が得られ、回転・圧入装置5による押し込み力と合わせて貫入が円滑に行なわれる。
また、ケーシング1を貫入させて掘削する際、翼部122に先立って板状刃13が地盤の掘削をするので、翼部122の推進力が効率よく機能するとともに、翼部122の両傾斜部122a、122bと板状刃13との相乗作用により、効率的に掘削することができる。
また、実施例の先端掘削翼2は、その一部切欠き円板部12にL形係合片14を持つので、打設した注入材7が硬化すると、硬化した注入材7とL形係合片14を介して一体化する。したがって、先端金具2の広い翼部122で大きな支持力を確保できることができる。すなわち、周面摩擦による支持力だけでなく、特許文献5の回転貫入鋼管杭工法と同様に先端支持力も確保することが可能となる。
図7に本発明の地盤補強工法の適用例を簡略化して示す。図7(イ)は本発明の地盤補強工法を適用して建築した小規模建築物の基礎(図ではべた基礎)の平面図、(ロ)は(イ)のC−C拡大断面図である。図示例ではべた基礎の基礎梁の間隔をあけた適宜の位置に、本発明工法による小口径コンクリート杭7’(図1(イ)の注入材7が硬化したものとして示す)を設置している。
なお、本発明の小口径コンクリート杭で支持する対象の基礎はべた基礎に限らず、布基礎、独立基礎でもよい。
本発明の地盤補強工法を複数実施したが、概略仕様は次の通りである。
(A)ケーシングの仕様
ケーシングの直径:φ216.3mm、
最大施工深さ:施工地盤面から10m
最小間隔:60cm(先端掘削翼の一部切欠き円板部外径の約1.7倍)
但し、使用するケーシングのサイズは上記サイズに限らず、例えばφ139.8mm〜φ318.5mm等のサイズが考えられ、好適にはφ165.2mm〜φ267.4mmのサイズである。
(B)注入材の仕様
(1)コンクリート(呼び強度:21N/mm
・単位セメント量:270kg/m以上
・水セメント比:65%以下
・スランプ:18cm以上
(2)モルタル(配合設計強度:21N/mm
・セメント:砂=1:3
・水セメント比:65%以下
・スランプフロー:20cm以上
(3)セメントミルク+砕石(配合設計強度21N/mm
(a)セメントミルク
・水セメント比:50%
・ブリージング率:3%以下
(b)砕石
・コンクリート用砕石2005(JIS規格 A−5005)
・5mm以上20mm以下の粒径
本発明の地盤補強工法は、長期接地圧が50kN/m以下の構造物に適用して好適である。
対象とする小規模構造物としては、例えば、地上3階以下、高さ13m以下、軒高9m以下、延べ面積1000m以下の各条件を満足する小規模建築物に適用して好適である。なお、高さ3.5m以下の擁壁に適用することもできる。
また、適用基礎構造としては、鉄筋コンクリート造で、基礎スラブ厚さが150mm以上の布基礎、べた基礎、及び独立基礎に適用して好適である。
また、本発明の工法は、砂質土地盤、粘性土地盤、ローム地盤に適用して好適である。
1 ケーシング
2 先端掘削翼
3 杭打ち機
4 リーダ
5 回転・圧入駆動装置
6 掘削孔
7 注入材(コンクリートなど)
11 円筒部
12 一部切欠き円板部
121 円形閉塞部
122 翼部
122a 上向き傾斜面部
122b 下向き傾斜面部
13 板状刃
14 L形係合片
15 (先端金具とケーシングとの)係合構造
17 突起
12’(一部切欠き円板部の素材の)円形鋼板
a (円弧状の)切込み
b (半径方向外側への)切込み
c 切欠き部
d 折曲げ線

Claims (5)

  1. ケーシングとこのケーシングの先端に係脱可能に取り付けられてケーシングの回転・圧入を促進するための先端掘削翼とを用いて施工する、小口径コンクリート場所打ち杭を用いた地盤補強工法であって、
    前記先端掘削翼は、ケーシング径より大径でケーシングの先端開口を閉塞する一部切欠き円板部とこの一部切欠き円板部に基部が固定された、尖った先端部を有する板状刃とからなるとともに、前記一部切欠き円板部は、ケーシングの先端開口を閉塞する円形閉塞部と、この円形閉塞部に連接してケーシング外周面より半径方向外方に一部切欠き鍔状に延在する一部切欠きの翼部とからなり、前記翼部における前記切欠き部の片側近傍は上向きに傾斜して上向き傾斜面部を形成し、他側近傍は下向きに傾斜して下向き傾斜面部を形成する構造であり、、
    かつ、ケーシングの貫入時回転方向に対してはケーシングと係合して一体に回転し前記貫入時回転方向と逆方向の回転に対してはケーシングから外れるようにケーシングに係合しており、
    前記ケーシングの先端に前記先端掘削翼を係合させた状態で当該ケーシングを、ケーシング上端部に接続した回転・圧入駆動装置により地盤に回転・圧入して所定深度まで貫入し、
    次いで、前記ケーシング内にコンクリート、モルタル、砕石混合セメントミルクのいずれかである注入材を打設し、
    鉄筋を挿入することなく前記注入材が固まらないうちに前記ケーシングを、前記先端掘削翼がケーシングの先端から外れて残るように、前記貫入時回転方向と逆方向に回転させながら引き抜いて杭を築造することを特徴とする小口径コンクリート場所打ち杭を用いた地盤補強工法。
  2. 前記ケーシングを、ケーシング上端部に接続した回転・圧入駆動装置により回転・圧入して所定深度まで貫入した後、前記回転・圧入駆動装置をケーシングから切り離し、
    次いで、前記ケーシング内に注入材を打設した後、前記回転・圧入駆動装置をケーシングの上端部に再接続し、その後、ケーシングを引き抜くことを特徴とする請求項1記載の小口径コンクリート場所打ち杭による地盤補強工法。
  3. 前記先端掘削翼は、前記一部切欠き円板部の前記板状刃と反対側の面に、前記ケーシングの先端部に嵌合する短い円筒部を溶接固定した構造であることを特徴とする請求項1又は2記載の小口径コンクリート場所打ち杭を用いた地盤補強工法。
  4. 前記一部切欠き円板部は、円形鋼板を切り込み曲げ加工して製作したものであり、素材の円形鋼板に、当該一部切欠き円板部に溶接固定される前記円筒部の下端外周に沿うように所定範囲に円弧状の切込みaを設け、前記切込みaを含む所定範囲を半径方向外側への2本の切込みbによって扇形状に切り欠いて切欠き部cを形成し、前記切込みaの各終端と円形鋼板の中心を結ぶ線分の延長線dを折曲げ線として前記切欠き部cの片側を上方に折曲して上向き傾斜面部を形成し、前記切欠き部cの他側を下方に折曲して下向き傾斜面部を形成してなり、前記上向き傾斜面部および前記下向き傾斜面部の切込み部aにおける傾斜部と非傾斜部の交差部とを溶接接合して、前記切欠き部cを介在させて対向する上向き傾斜面部と下向き傾斜面部とが形成された翼部を設けたことを特徴とする請求項3記載の小口径コンクリート場所打ち杭による地盤補強工法。
  5. 前記ケーシングと先端掘削翼との係合構造が、前記ケーシング先端部内面に円周方向に間隔をあけて固定した2箇所以上の突起と、前記先端掘削翼の一部切欠き円板部の円形閉塞部の内面に固定された、前記各突起に係合可能な態様のL形係合片とによる係合構造であることを特徴とする請求項3又は4記載の小口径コンクリート場所打ち杭を用いた地盤補強工法。
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