JP2014091359A - ブレーキ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ブレーキペダルの踏み込み操作に伴うシステムオン条件が満足されることにより制御可能な状態になったときに、ブレーキ液圧の立ち上がり応答性を向上できるブレーキ装置を提供すること。
【解決手段】 ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴うシステムオン条件が満足されることにより制御可能な状態になったときに、更新記憶されている学習原点Sgと初期原点Ssとを比較して、ブレーキ踏み込み解除側の位置となる方を検出原点S*に設定し、該設定した検出原点S*に基づき算出したストローク検出手段(ストロークセンサ17)の検出値Sに基づいてアクチュエータ(アクチュエータ部16)を制御する。
【選択図】 図4
【解決手段】 ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴うシステムオン条件が満足されることにより制御可能な状態になったときに、更新記憶されている学習原点Sgと初期原点Ssとを比較して、ブレーキ踏み込み解除側の位置となる方を検出原点S*に設定し、該設定した検出原点S*に基づき算出したストローク検出手段(ストロークセンサ17)の検出値Sに基づいてアクチュエータ(アクチュエータ部16)を制御する。
【選択図】 図4
Description
本発明は、車両のブレーキ装置に関する。
従来、ブレーキ操作により進退移動する入力部材のストロークを検出するストローク検出手段の検出値に基づき、マスタシリンダ内でブレーキ液圧を発生させるためのアクチュエータを制御すると共に、複数のシステムオン条件のいずれかが満足されることにより上記制御が可能な状態になるブレーキ装置が知られている。例えば特許文献1に記載のブレーキ装置は、コントローラが、ブレーキペダルの踏み込み操作以外の操作(例えばイグニッションオン)に伴うシステムオン条件が満足されることにより制御可能な状態になったときは、ストローク検出手段の検出原点を学習し、その後ブレーキ操作がなされると、上記学習した検出原点(学習原点)に基づき算出したストローク検出手段の検出値に基づいてアクチュエータを制御する。一方、ブレーキペダルの踏み込み操作に伴うシステムオン条件が満足されることにより制御可能な状態になったときは、予め記憶された初期原点に基づき算出したストローク検出手段の検出値に基づいてアクチュエータを制御する。
上記従来のブレーキ装置では、ブレーキペダルの踏み込み操作に伴うシステムオン条件が満足されることにより制御可能な状態になったときに、検出原点が学習されるまでは初期原点を用いることとしているため、ブレーキ液圧の立ち上がりが遅れるおそれがあった。本発明の目的とするところは、ブレーキペダルの踏み込み操作に伴うシステムオン条件が満足されることにより制御可能な状態になったときに、ブレーキ液圧の立ち上がり応答性を向上できるブレーキ装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明のブレーキ装置は、好ましくは、ブレーキペダルの踏み込み操作に伴うシステムオン条件が満足されることにより制御可能な状態になったときに、更新記憶されている学習原点と初期原点とを比較して、ブレーキペダルの踏み込み解除側の位置となる方を検出原点に設定し、該設定した検出原点に基づき算出したストローク検出手段の検出値に基づいてアクチュエータを制御することとした。
よって、ブレーキペダルの踏み込み操作に伴うシステムオン条件が満足されることにより制御可能な状態になったときに、ストローク検出手段の検出値が、踏み込み解除側の検出原点に基づき算出されることで踏み込み側の位置(大きいストローク値)となるため、ブレーキ液圧の立ち上がり応答性を向上することができる。
以下、本発明のブレーキ装置を実現する形態を、図面に基づき説明する。
[実施例1]
[構成]
図1は、実施例1のブレーキ装置(以下、装置1という。)を適用した車両のブレーキシステムを示す。図2は、装置1の部分断面図である。図1に示すように、ブレーキシステムは、運転者のブレーキ操作が入力される操作部材であるブレーキペダル2と、ブレーキペダル2に接続され、ブレーキ操作に基づき動作して車両に制動力を付与するためにブレーキ液圧P(具体的には油圧)を発生する装置1と、2つの配管7,8を介して装置1に接続され、装置1で発生したブレーキ液圧Pを配管23〜26を介して車両の各輪に設けられたキャリパ(ホイルシリンダ)31,41,51,61に分配する液圧装置21と、電力線72を介して装置1に接続され、装置1に電源電力を供給するバッテリ等の電源装置71と、通信線46を介して装置1及び液圧装置21に接続され、これら装置1,21の作動を制御する車両制御装置22と、を有している。キャリパ31〜61は、供給される液圧に応じた推力により摩擦材をロータ32〜62に押し付け、これにより各車輪に制動力が発生する。装置1(コントローラ4)と液圧装置21と車両制御装置22は、通信線46を介して互いに接続されており、これらの間で情報信号の伝送(送受信)が行われる。通信方式は、シリアル通信でもよいし、CAN等の多重通信でもよい。
[構成]
図1は、実施例1のブレーキ装置(以下、装置1という。)を適用した車両のブレーキシステムを示す。図2は、装置1の部分断面図である。図1に示すように、ブレーキシステムは、運転者のブレーキ操作が入力される操作部材であるブレーキペダル2と、ブレーキペダル2に接続され、ブレーキ操作に基づき動作して車両に制動力を付与するためにブレーキ液圧P(具体的には油圧)を発生する装置1と、2つの配管7,8を介して装置1に接続され、装置1で発生したブレーキ液圧Pを配管23〜26を介して車両の各輪に設けられたキャリパ(ホイルシリンダ)31,41,51,61に分配する液圧装置21と、電力線72を介して装置1に接続され、装置1に電源電力を供給するバッテリ等の電源装置71と、通信線46を介して装置1及び液圧装置21に接続され、これら装置1,21の作動を制御する車両制御装置22と、を有している。キャリパ31〜61は、供給される液圧に応じた推力により摩擦材をロータ32〜62に押し付け、これにより各車輪に制動力が発生する。装置1(コントローラ4)と液圧装置21と車両制御装置22は、通信線46を介して互いに接続されており、これらの間で情報信号の伝送(送受信)が行われる。通信方式は、シリアル通信でもよいし、CAN等の多重通信でもよい。
図2に示すように、装置1は、電動式の液圧発生装置であり、ブレーキ液圧を発生するマスタシリンダ10と、ブレーキペダル2の踏み込み操作および踏み込み解除操作により進退移動する入力部材15と、入力部材15に対して相対移動可能に配置されたアシスト部材13にアシスト推力を加えることによりアシスト部材13を進退移動させてマスタシリンダ10内でブレーキ液圧を発生させるためのアクチュエータ部16と、入力部材15の進退移動量(操作ストローク)を検出するストローク検出手段としてのストロークセンサ17と、複数のシステムオン条件のいずれかが満足されることにより制御可能な状態になると共に、ストロークセンサ17の検出値に基づいてアクチュエータ部16を制御するコントローラ4と、を有している。上記入力部材15と、アシスト部材13を含むアクチュエータ部16とは、ケース12内に配置されて電動式の倍力装置(ブースタ)を構成している。コントローラ4は、インバータ回路を有しており、電源装置71から電力線72を介して受けた直流電力を交流電力に変換し、この交流電力を制御してアクチュエータ部16の電動モータ11に供給することで、電動モータ11の回転方向やトルクを制御する。なお、図1においては、コントローラ4とケース12とを別体構造としているが、これらを一体構造としてもよい。
液圧装置21は、マスタシリンダ10からの液圧に基づき各キャリパ32〜62へ供給する液圧を定める。また、液圧装置21は、その内部に、液圧を発生するためのポンプや液圧を制御するための電磁弁をアクチュエータとして備えており、マスタシリンダ10の液圧に基づくことなく各キャリパ32〜62へ供給する液圧を制御可能に設けられている。これにより、アンチロックブレーキ制御(ABS)や横滑り防止制御、トラクション制御、その他の車両の操縦安定性を向上する制動力制御を実行することができる。
車両制御装置22は、カメラやレーダ等の外界認識センサやナビゲーションシステムからの情報に基づき車両の走行状態を変化させる制御(例えば車両追従制御や高度道路交通システムITS)を担うようになっている。車両制御装置22は、走行状態を変化させるために必要な制動力を担うためのブレーキ液圧を発生させることができる装置1に対して、必要な制動力やこれに相当するトルク、液圧等の情報を、制御要求として、通信線46を介して装置1のコントローラ4に伝達する。また、車両制御装置22は、車両の運動エネルギを電力に変換する回生制御を担い、車両減速中に車両駆動用アクチュエータを発電機として動作させて電源装置(バッテリ)71に電力を回生するときに発生する回生制動力と、キャリパ32〜62に供給される液圧に由来する液圧制動力とを協調させる、所謂、回生協調制御のための制御要求の出力を行う。したがって、車両制御装置22が、回生量やこれに相当する回生ブレーキ量、トルク、液圧等の情報を、制御要求として、通信線46を介して装置1のコントローラ4に伝達することによって、コントローラ4は、液圧制動力分のブレーキ量が、回生制動力分のブレーキ量だけ少なくなるようにアクチュエータ部16を制御することができる。
図2に示すように、入力部材15は、ブレーキペダル2の操作により進退移動する入力ロッド151と、入力ロッド151の移動に基づき進退移動する入力ピストン152とを有している。入力部材15は、ブレーキペダル2が踏み込まれると(運転者から見て)奥方向に前進し、ブレーキペダル2が踏み戻される(放される)と(運転者から見て)手前方向に後退する。以下、説明のため、入力部材15の移動方向にx軸を設け、前進方向を正方向、後退方向を負方向とし、入力部材15の位置Siは、前進方向へ向かうほど大きな値をとり、後退方向へ向かうほど小さな値をとると定義する。入力ロッド151のx軸負方向端はブレーキペダル2に対して相対回動可能に接続されている。入力ロッド151のx軸方向中間部には外径側に広がる鍔状のストッパ部153が設けられている。入力ロッド151のストッパ部153よりもx軸正方向側は先細り形状に設けられており、そのx軸正方向端は入力ピストン152のx軸負方向端に形成された凹部155に嵌合して入力ピストン152に連結されている。入力ピストン152は段付の円柱状に設けられ、そのx軸負方向側には、外径側に広がるバネ受(リテーナ)としての鍔部154が形成されている。鍔部154のx軸正方向側には、略円柱状のストッパ部156が形成されている。ストッパ部156のx軸正方向側には、ストッパ部156よりも小径に略円柱状の受圧部157が形成されている。
アクチュエータ部16は、アクチュエータの電動部分としての電動モータ11(固定子110及び回転子112)と、電動モータ11(回転子112)の動力を変換してアシスト部材13に直動推力を伝達する回転直動変換機構としてのボール−ネジ機構119とを有している。これら電動モータ11とボール−ネジ機構119とは、電動モータ11により駆動され、運転者のブレーキ操作力を補助するための液圧を発生させるアシスト部材13としてのブースタピストン102や、入力部材15やブースタピストン102を付勢してそれらのx軸方向位置を調整する付勢部材としてのバネ180、181、182とともに、これら各部材を保持するハウジングとしてのケース12に軸心を一致させて収容されている。なお、電動モータ11やボール−ネジ機構119は、必ずしもケース12内に軸心を一致させて収容されている必要はなく、アシスト部材13に対して電動モータ11やボール−ネジ機構119を別軸でケース12に設けるようにしても良い。この場合、電動モータ11やボール−ネジ機構119を必ずしもケース12に収容しなくてもよい。
ケース12のx軸正方向側には、ブースタピストン102を案内・支持する支持部120が、ケース12内に突出する略円筒状に開口形成されている。ケース12のx軸負方向側は階段状に形成されており、内径が比較的大きい第1ストッパ部121と、第1ストッパ部121よりも内径が小さくケース12の外側(ブーツ内)に開口する第2ストッパ部122とを構成している。第1ストッパ部121の内径は入力ロッド151のストッパ部153の外径よりも大きく、第2ストッパ部122の内径はストッパ部153の外径よりも小さく設けられている。ストッパ部153は、第2ストッパ部122に当接/離反可能に設けられており、第2ストッパ部122は、入力ロッド151のx軸負方向側への移動を規制する。ケース12の第1ストッパ部121には、スライド軸115を案内・支持する孔123がx軸方向に貫通形成されている。
電動モータ11は、三相交流電力により駆動する永久磁石型の同期モータである。なお、電動モータ11としては、誘導モータやDCブラシレスモータ等でもよく、特に永久磁石型の同期モータに限定されない。電動モータ11の固定子110はケース12に設置されており、コントローラ4からの供給電力により回転磁界を発生する。回転子112は、永久磁石を有しており、固定子110の内周側に、ケース12内に設けられた軸受111により回転可能に支持されている。回転子112は、固定子110が発生する回転磁界により回転駆動され、トルクを発生する。
ボール−ネジ機構119は、回転子112と、この回転子112の内周側に設置されるスライド軸115とを有している。回転子112は、その内周側が中空となっており、その内周面にはボール114と噛合う溝が形成されている。スライド軸115は、その外周面に複数のボール114と噛合う溝が形成されている。回転子112の回転(トルク)は、複数のボール114を介してスライド軸115に伝達され、スライド軸115をx軸方向に移動させる。スライド軸115は、略円筒状に設けられており、その(ケース12内に収容された部分の)x軸負方向側には、内径側に広がる鍔状にストッパ部116が設けられている。スライド軸115には、ストッパ部116からx軸負方向側に延びる被支持部118が設けられており、被支持部118はケース12の第1ストッパ部121に設けられた貫通孔123内に相対移動可能に設置されている。ストッパ部116(のx軸負方向側)は、ケース12の第1ストッパ部121に当接/離反可能に設けられており、第1ストッパ部121は、スライド軸115のx軸負方向側への移動を規制する。
アシスト部材13としてのブースタピストン102は、略円筒形状に形成されており、ケース12のx軸正方向側の支持部120に設けられた貫通孔124内に、ケース12に対して移動可能に設置されている。ブースタピストン102のx軸負方向端には外径側に広がる鍔状のストッパ部103が形成されている。このストッパ部103は、スライド軸115の内周側に、スライド軸115に対してx軸方向に移動可能に設置されている。ストッパ部103(のx軸負方向側)は、スライド軸115のストッパ部116に当接/離反可能に設けられている。ブースタピストン102の内周側には、x軸正方向寄りの位置に壁部107が設けられ、壁部107には、入力ピストン152のストッパ部156よりも小径の孔108がx軸方向に貫通形成されている。貫通孔108には、入力ピストン152の受圧部157が相対移動可能かつ液密的に設置されている。入力ピストン152の受圧部157は、マスタシリンダ10のプライマリ液室104における受圧面積がブースタピストン102の受圧面積よりも充分小さくなるように設けられている。壁部107よりもx軸負方向側のブースタピストン102の内周には、内径側に広がるバネ受(リテーナ)としての鍔部109が形成されている。なお、入力ピストン152、すなわち入力部材15には、必ずしもマスタシリンダ10のプライマリ液室104に臨む受圧部157を形成する必要はなく、入力部材15は、アシスト部材13に対して相対移動可能に設けられていれば、アクチュエータ部16のフェール時以外はマスタシリンダ10のピストンに踏力を伝達しない、いわゆるブレーキバイワイヤ形式用の入力部材であっても良い。
ケース12の支持部120(のx軸負方向端)とブースタピストン102のストッパ部103(のx軸正方向側)との間には、ブースタピストン102をx軸負方向側に付勢するバネ182が設置されている。バネ182は、ブースタピストン102を初期位置(限界位置Sb0)に戻すセット荷重として働き、電動モータ11がトルクを発生させていないとき、ブースタピストン102のストッパ部103及びこれに当接するスライド軸115のストッパ部116を、例えばケース12の第1ストッパ部121まで移動させる。また、ブースタピストン102の壁部107(のx軸負方向端)と入力ピストン152の鍔部154(のx軸正方向側)との間には、バネ181が設置され、入力ピストン152の鍔部154(のx軸負方向側)とブースタピストン102の鍔部109(のx軸正方向側)との間には、バネ180が設置されている。これらのバネ180、181は、その付勢力により、入力ピストン152(入力部材15)をブースタピストン102に対して中立位置に戻し、ブースタピストン102が初期位置(限界位置Sb0)にあるときには入力部材15を初期位置(限界位置Si0)に戻すセット荷重として働く。なお、バネ180、181は、必ずしも設ける必要はなく、いずれか一方のみを設けても良いし、両方設けないようにしてもよい。
マスタシリンダ10は、ケース12に接続されている。マスタシリンダ10は、液圧を発生する加圧室として、ブースタピストン102(及び入力ピストン152)により加圧されるプライマリ液室104と、有底円筒状のセカンダリピストン105により加圧されるセカンダリ液室106とを直列に有する、所謂、タンデム型のマスタシリンダとなっている。プライマリ液室104には配管7が連通し、セカンダリ液室106には配管8が連通している。また、各液室104、106には、ブレーキ液を貯留するリザーバが接続されている。プライマリ液室104とリザーバとの連通は、ブースタピストン102が初期位置(非制動時の待機位置Sbt)からx軸正方向へ所定距離だけ移動することで遮断される。同様に、セカンダリ液室106とリザーバとの連通はセカンダリピストン105の前進により遮断される。また、プライマリ液室104内には、セカンダリピストン105の(x軸負方向側)底部のx軸負方向側とブースタピストン102の壁部107のx軸正方向側(受圧面)との間に、ブースタピストン102を初期位置に向かって付勢する戻しバネ183が設置されている。セカンダリ液室106内には、マスタシリンダ10内のx軸正方向端部(底部)とセカンダリピストン105の底部のx軸正方向側(受圧面)との間に、セカンダリピストン105を初期位置に向かって付勢する戻しバネ184が設置されている。
ブースタピストン102と入力ピストン152はマスタシリンダ10のプライマリピストンとして機能し、これらのピストン102、152がx軸正方向側に移動することで、プライマリ液室104の液圧(マスタシリンダ圧)Pが上昇する。すなわち、入力ピストン152がx軸正方向に移動することで、プライマリ液室104の容積が圧縮され、マスタシリンダ圧Pが発生する。また、アシスト部材であるブースタピストン102にアシスト推力を加え、これをx軸正方向に移動させることでも、マスタシリンダ10内で液圧Pが発生する。具体的には、スライド軸115のストッパ部116がブースタピストン102のストッパ部103に当接した状態で、スライド軸115がx軸正方向に移動することで、マスタシリンダ10のプライマリ液室104にブースタピストン102が押し込まれ、マスタシリンダ10の出力液圧Pが上昇する。また、プライマリ液室104の液圧に基づきセカンダリピストン105がx軸方向に移動し、プライマリ液室104の液圧とセカンダリ液室106の液圧とが略同じとなる位置で停止する。このようにして、プライマリ液室104とセカンダリ液室106とからは、略同じ液圧Pが供給される。すなわち、ブースタピストン102の推進により各液室104、106で加圧された作動液が、配管7,8を経由してブレーキ液圧Pとして液圧装置21に供給される。
コントローラ4は、ブレーキスイッチ5、イグニッションスイッチ6、ストロークセンサ17、液圧センサ140,141、及び回転センサ113が接続され、これら各センサの信号を受け取れるようになっている。ブレーキスイッチ5は、ブレーキペダル2に設けられたペダルスイッチであり、ブレーキランプスイッチとしても機能するものであり、ブレーキペダル2の操作の有無、すなわちブレーキ操作の始まりと終わりとをオンオフスイッチで検出して、その情報信号をコントローラ4に出力する。イグニッションスイッチ6は、車両の運転席に設けられているオンオフスイッチであり、そのオン操作が車両システムの起動を意図する操作となる。
ストロークセンサ17は、ブレーキペダル2に設けられ、ブレーキペダル2の操作量(踏み込み/踏み戻し量)、言い換えると入力部材15の進退移動量(操作ストローク)ないし位置に応じた信号をコントローラ4に出力する。コントローラ4は、ストロークセンサ17の検出値Sを所定の検出原点(ゼロ点)S*に基づき算出する。すなわち、入力部材15は運転者によるブレーキペダル2の操作に応じてx軸方向に進退移動する。ここでブレーキペダル2と入力ロッド151の幾何学的関係が決まっているため、ストロークセンサ17の出力値(信号)と入力部材15の位置ないしx軸方向移動量とを同じものとして扱うことができる。よって、検出原点S*に対するストロークセンサ17の出力値の偏差に基づき、入力部材15の位置ないし進退移動量を、ストロークセンサ17の検出値Sとして算出する。なお、ストロークセンサ17が設けられる部位は、ブレーキペダル2に取付けられる以外にも、装置1(ケース12)と一体又は装置1の内部に取付けることとしてもよい。ストロークセンサ17の代わりに、入力部材15の進退移動量を直接検出することとしてもよい。ストロークセンサ17は、回転センサであっても直動センサであってもよく、また、例えば可変抵抗を用いたポテンショメータやロータリエンコーダであってもよい。また、回転スリットを用いて光ピックアップで検知する方式であっても、磁気素子を用いて磁気の変化を検知する方式であってもよい。
液圧センサ140は、プライマリ液室104の液圧を計測するようになっており、液圧センサ141は、セカンダリ液室106の液圧を計測するようになっている。液圧センサ140,141は、計測した液圧の情報信号をコントローラ4に出力する。なお、両液室104、106の液圧は略同じとなるため、どちらか一方のみを備えることとしてもよいし、プライマリ液室104若しくはセカンダリ液室106のいずれか一方に両液圧センサ140,141を備えるようにしても良い。回転センサ113は、回転子112の外周位置に設けられており、回転子112の磁極の位置(回転角度ないし回転位相)を検出し、その情報信号をコントローラ4に出力する。回転センサ113の出力値、すなわち所定の原点(ゼロ点)からの回転子112の回転量に基づき、スライド軸115のx軸方向移動量を算出することができる。回転センサ113として、光や磁気を用いたエンコーダないしレゾルバを用いることができる。
コントローラ4は、電動モータ11を駆動するための三相交流電流をスイッチング素子により生成するインバータ回路を備えている。インバータ回路は、ホール素子やシャント抵抗等により構成される電流センサを備えている。回転センサ113や電流センサにより検出された情報は、固定子110に供給される電流の制御に用いられ、これにより回転子112の回転位置や速度、言い換えるとスライド軸115すなわちブースタピストン102の位置や速度が制御される。コントローラ4は、ストロークセンサ17の検出値に基づきブースタピストン102の目標位置を算出し、ブースタピストン102の実際の位置Sbが目標位置となるように、回転センサ113等の検出値に基づき電動モータ11の作動を制御する。これにより、運転者のブレーキペダル操作に応じた液圧Pをマスタシリンダ10に発生させることができる。
具体的には、ブレーキペダル2(入力ロッド151)の操作によって入力ピストン152を前進させると、コントローラ4からの制御電流によって電動モータ11の回転子112を回転させ、ボール−ネジ機構119のスライド軸115を介してブースタピストン102を前進させて入力ピストン152に追従させ、プライマリ液室104及びセカンダリ液室106を加圧する。これにより、ブレーキペダル2の操作に応じて電動モータ11によるアシスト力を付与して倍力制御を行う。このとき、プライマリ液室104の圧力が入力ピストン152を介して入力ロッド151(ブレーキペダル2)にフィードバックされる。また、各種センサの検出に基づいて、コントローラ4によって電動モータ11の回転を適宜制御することにより、ブレーキアシスト制御、回生協調制御、車両追従制御等のブレーキ制御を実行可能である。回生協調制御においては、ブースタピストン102をx軸負方向側に引き戻す方向に電動モータ11を回転制御することで、回生制動力相当の液圧制動力を減少させる制御を行う。ここで、入力ピストン152とブースタピストン102とは相対変位可能に設けられているため、上記ブレーキ制御時に所望の倍力比を発生させることができる。すなわち、入力ピストン152の受圧面積とブースタピストン102の受圧面積の比に応じた倍力比、及び/又は入力ピストン152とブースタピストン102の相対変位量Δxに応じた倍力比に倍力された液圧を液室104、106に発生させるようになっている。なお、入力ピストン152の移動に対して、入力ピストン152とブースタピストン102の相対変位量Δxを可変とすることで倍力比を可変とすることが可能となっている。この場合、入力ピストン152の移動量に対して、相対変位量Δxを漸増させることで、ブレーキペダル2の踏み込みストロークに対する液圧上昇度合いが高くなる、所謂ショートストローク感を運転者に与えることができる制御(進み制御)が可能となっている。また、入力ピストン152の移動に対して、入力ピストン152とブースタピストン102の相対変位量Δxを一定、例えば0にすることで倍力比が一定となる制御(等倍制御)を行ってもよい。
ここで、装置1のシステムの作動状態におけるブースタピストン102(アシスト部材13)と入力部材15との位置関係について説明する。ブレーキペダル2が踏まれておらず、装置1のシステムが起動しておらず、かつ、電動モータ11に電力が供給されていないとき(システムオフでペダル非操作時)に、ブースタピストン102は、バネ182の付勢力によりx軸負方向側へ押され、そのストッパ部103がスライド軸115のストッパ部116に当接するとともに、スライド軸115のストッパ部116はケース12の第1ストッパ部121に当接してx軸負方向側への移動が制限されている。この状態におけるブースタピストン102の位置を限界位置Sb0とし、スライド軸115の位置を限界位置Sm0とする。また、この状態では、ブレーキペダル2が踏まれていないため、バネ180、181のセット荷重により入力部材15はブースタピストン102に対して中立位置にある。言い換えると、入力部材15に対してバネ180、181の付勢力の合成ベクトルがx軸正方向にもx軸負方向にも作用せず、ブースタピストン102に対して入力ピストン152が中立位置に保持される。ブースタピストン102が限界位置Sb0にあるときの入力部材15の中立位置を、入力部材15の限界位置Si0とする。なお、この限界位置Si0にあるとき、入力ロッド151のストッパ部153がケース12の第2ストッパ部122に当接して入力部材15のx軸負方向側への移動が制限されることとしてもよい。
そして、ブレーキペダル2が踏まれておらず、かつ装置1のシステムがイグニッションスイッチ6のオン(イグニッションオン)により起動し、電動モータ11に電力が供給可能なとき(システムオンでペダル非操作時)に、ブースタピストン102は所定の待機位置Sbtに待機するように制御される。待機位置Sbtは、好ましくは、ブースタピストン102をx軸負方向側へ移動させて回生協調制御を実行することを可能とする余裕分である。ブースタピストン102が待機位置Sbtにあり、かつバネ180、181のセット荷重により入力部材15がブースタピストン102に対して中立位置にあるとき、この位置を入力部材15の待機位置Sitとする。装置1のシステム作動中、ストロークセンサ17の検出原点S*はこの待機位置Sitに設定され、この検出原点S*を基準として検出される入力部材15の位置Siに基づきブースタピストン102の位置Sbが制御される。よって、ストロークセンサ17の検出原点S*が待機位置Sitと一致しているとき、ストロークセンサ17の検出値Sがゼロとなるように電動モータ11(スライド軸115)を制御すれば、ブースタピストン102が待機位置Sbtに位置することになる。言い換えると、検出原点S*が待機位置Sitと一致していないとき、検出値Sがゼロとなるように電動モータ11(スライド軸115)を制御すれば、ブースタピストン102が待機位置Sbtからズレた位置に待機することになる。
上記状態からブレーキペダル2が踏まれると、ブースタピストン102は、電動モータ11の駆動により、ストロークセンサ17の検出値Sに応じて待機位置Sbtからx軸正方向に移動するように制御される。ここで、スライド軸115のストッパ部116とケース12の第1ストッパ部121とが当接していないとき、回転子112の回転位置と、スライド軸115及びブースタピストン102の位置とは、一定の関係があり、同じものとみなしてよい。ストロークセンサ17の検出値Sと同じ量だけブースタピストン102を移動させると、入力部材15とブースタピストン102の相対位置が中立位置に保持されることとなり、一定の倍力比が得られる。ストロークセンサ17の検出値Sに対してブースタピストン102の移動量を増減させると可変の倍力比が得られ、例えばブースタピストン102の移動量を相対的に増やすことでブレーキアシスト制御等が可能となり、減らすことで回生協調制御等が可能となる。
ここで、本実施例においては、車両システムの起動を意図する操作がない(例えばイグニッションスイッチ6がオフの)状態であっても、ブレーキ操作(ブレーキペダル2の踏み込み操作)が行われるとブレーキスイッチ5のオンにより装置1のシステムが起動し、コントローラ4がアクチュエータ部16を制御可能な状態となって、電動モータ11に電力を供給してブースタピストン102を作動させてブレーキ液圧を発生可能なようになっている。この制御の詳細については、後述する。なお、システムフェール等によって電動モータ11を駆動できない場合には、電動モータ11によるスライド軸115の移動が出来ない状態となり、電動モータ11による倍力作用は得られない。この場合、運転者がブレーキペダル2(入力ロッド151)を操作すると、入力ピストン152に伝達された推力は、バネ181、ひいては入力ピストン152のストッパ部156を介してブースタピストン102に伝達され、ブースタピストン102が移動する。よって、スライド軸115のストッパ部116とブースタピストン102のストッパ部103が離間してこれらが相対移動することになる。これにより、所定の踏力でブレーキペダル2を操作したときに、両液室104、106に最低限のブレーキ力が確保できる程度の液圧を発生させることができる。
コントローラ4は、電気的にデータの消去/書き換えが可能な半導体記憶装置としてEEPROMを有している。EEPROMは、ストロークセンサ17の検出原点S*を記憶し、かつこれを書き換え(更新記憶)可能に設けられており、検出原点記憶部を構成している。具体的には、EEPROMは、検出原点S*の初期値、すなわち仮の検出原点である初期原点Ssを装置1のシステム起動前から予め記憶し、かつ、装置1のシステム起動後に学習処理により更新された検出原点S*、すなわち学習原点Sgを逐次記憶する。EEPROMは、装置1の現在の(すなわち今回の)システム起動時に学習される学習原点Sgのみならず、装置1の過去の(すなわち前回や前々回等の)所定回数のシステム起動時に学習された学習原点Sgをも記憶するように設けられている。このように更新記憶された検出原点S*は適当なタイミングで読み出され、ストロークセンサ17の検出値Sの算出に用いられる。
図3は、コントローラ4にて実行される制御の流れの一例を示す。この制御の流れは、車両システムの起動を意図する操作、本実施例においてはイグニッションスイッチ6のオン操作に伴い装置1のシステムのオン(起動)条件が満足されることによりコントローラ4が起動する場合のほか、車両システムが起動していない状態で運転者のブレーキ踏み込み操作、具体的にはブレーキスイッチ5のオンに伴い装置1のシステムオン条件が満足されることによりコントローラ4が起動する場合を含み、所定の制御周期で繰り返し実行される。
ステップS1では、ブレーキスイッチ5の検出値がオン(ブレーキペダル2の操作有り;図中、ブレーキスイッチを「BSW」で表す)であればS7へ進み、オフ(操作無し)であればステップS2へ進む。
ステップS2では、イグニッションスイッチ6の検出値がオン(図中、イグニッションスイッチを「IGN」で表す)であればステップS3へ進み、オフであればステップS1へ戻る。
ステップS3では、コントローラ4が起動してアクチュエータ部16を制御可能な状態になる。その後、ステップS4へ進む。すなわち、イグニッションスイッチ6がオンであれば、車両システムの起動を意図する操作があったと判断できるため、これにより装置1のシステムオン条件が満足されたとして、コントローラ4を起動状態とする。なお、車両システムの起動を意図する操作の有無を判断するために、イグニッションスイッチ6の検出値に限らず、例えばドアスイッチのアンロック、ドアレバーによる運転席ドアの開放、運転席への乗り込み、シートベルトの締結操作等の検出値をCAN経由でウェイクアップ信号として受信して用いることとしてもよい。電動自動車であれば、車両の電力供給システムを起動するためのスイッチの検出値(レディオン操作)を用いることができる。
ステップS2では、イグニッションスイッチ6の検出値がオン(図中、イグニッションスイッチを「IGN」で表す)であればステップS3へ進み、オフであればステップS1へ戻る。
ステップS3では、コントローラ4が起動してアクチュエータ部16を制御可能な状態になる。その後、ステップS4へ進む。すなわち、イグニッションスイッチ6がオンであれば、車両システムの起動を意図する操作があったと判断できるため、これにより装置1のシステムオン条件が満足されたとして、コントローラ4を起動状態とする。なお、車両システムの起動を意図する操作の有無を判断するために、イグニッションスイッチ6の検出値に限らず、例えばドアスイッチのアンロック、ドアレバーによる運転席ドアの開放、運転席への乗り込み、シートベルトの締結操作等の検出値をCAN経由でウェイクアップ信号として受信して用いることとしてもよい。電動自動車であれば、車両の電力供給システムを起動するためのスイッチの検出値(レディオン操作)を用いることができる。
ステップS4では、ストロークセンサ17の検出原点(ゼロ点)S*の学習条件が満足されたか否かを判定する。学習条件が満足されていればステップS5へ進み、満足されていなければステップS1へ戻る。学習条件は、例えば、ブレーキペダル2が踏まれていない状態が所定時間継続しており、通信線46から制御要求を受けていないことである。また、液圧装置21が液圧制御を行っている場合、マスタシリンダ10のブレーキ液圧Pや、入力部材15やブースタピストン102の位置が変動する可能性がある。よって、学習は、液圧装置21がキャリパ(ホイルシリンダ)31,41,51,61への液圧制御を行っていないときに行うことが好ましい。上記のブレーキペダル2が踏み込まれていない状態であるか否かの判定は、入力部材15の位置Siとブースタピストン102の位置Sbとの関係特性(ブースタピストン102を若干移動させたときの入力部材15の位置の変化特性)を見ることで、より正確に行うことができる。なお、学習処理の条件は上記に限らず、適宜選択可能である。
ステップS5では、検出原点S*の学習処理を実行する。その後、ステップS6へ進む。検出原点S*の学習は、ブースタピストン102が後退方向(x軸負方向)に移動できる限界位置Sb0に達したときのストロークセンサ17の出力を基準として行い、この出力値に所定の値βを加えた値を学習値とする。この所定の値βは、回生ブレーキ相当の液圧ブレーキ力を減少させることができるようにブースタピストン102がストロークするための余裕代である。この学習処理により、検出原点S*が待機位置Sitに近づくように補正される。なお、学習処理の方法は上記に限らず、適宜選択可能である。
ステップS6では、学習が終了した検出原点S*(学習原点Sg)を基準としてストロークセンサ17の検出値Sを算出し、この検出値Sを用いて電動モータ11の制御(ブレーキ制御)を実行する。例えば、倍力比を大きくする進め制御や倍力比を小さくする遅れ制御を行う。
ステップS6では、学習が終了した検出原点S*(学習原点Sg)を基準としてストロークセンサ17の検出値Sを算出し、この検出値Sを用いて電動モータ11の制御(ブレーキ制御)を実行する。例えば、倍力比を大きくする進め制御や倍力比を小さくする遅れ制御を行う。
ステップS7では、コントローラ4が起動し、アクチュエータ部16を制御可能な状態になる。その後、ステップS8へ進む。すなわち、ブレーキスイッチ5の検出値がオンであれば、運転者の制動意図を示すブレーキペダル2の踏み込み操作があったと判断できるため、これにより装置1のシステムオン条件が満足されたとして、コントローラ4を起動状態とする。なお、ブレーキスイッチ5以外のセンサの検出値により、ブレーキペダル2の踏み込み操作の有無を判断してもよい。
ステップS8では、(ステップS5で学習された)学習原点SgがEEPROMに記憶されているか否かを判定する。すなわち、今回のイグニッションオンによるシステム起動時だけでなく、前回や前々回等のイグニッションオンによるシステム起動時に、ステップS5で学習されEEPROMに記憶された学習原点Sgが1つでもあるか否かを判定する。1つでも記憶されていればステップS9へ進み、全く記憶されていなければステップS13へ進む。
ステップS9では、EEPROMに予め記憶された初期原点Ssを読み込む。その後、ステップS10へ進む。初期原点Ssとしては、装置1が車両に搭載されたとき(工場出荷時)や装置1の調整時に予め記憶される値Ss0を用いる。この記憶値Ss0は、例えば、入力部材15の限界位置Si0よりも僅かに進み側(x軸正方向側)に設定することができる。なお、初期原点Ssを、記憶値Ss0よりも所定幅αだけ大きな(進み側の)値に設定することとしてもよい。所定幅αは、装置1のシステムオフ時にストロークセンサ17の出力を変動させる可能性のある要因、具体的には、温度ドリフトや機械ガタ(ブレーキペダル2等のガタ)、又は検出回路の誤差等を考慮し、これらの要因による出力変動の影響を抑制できる大きさとすることが好ましい。
ステップS10では、EEPROMに記憶されている学習原点Sgのうち最新のものを、(ステップS12において)初期原点Ssと比較するために、読み込む。その後、ステップS11へ進む。
ステップS8では、(ステップS5で学習された)学習原点SgがEEPROMに記憶されているか否かを判定する。すなわち、今回のイグニッションオンによるシステム起動時だけでなく、前回や前々回等のイグニッションオンによるシステム起動時に、ステップS5で学習されEEPROMに記憶された学習原点Sgが1つでもあるか否かを判定する。1つでも記憶されていればステップS9へ進み、全く記憶されていなければステップS13へ進む。
ステップS9では、EEPROMに予め記憶された初期原点Ssを読み込む。その後、ステップS10へ進む。初期原点Ssとしては、装置1が車両に搭載されたとき(工場出荷時)や装置1の調整時に予め記憶される値Ss0を用いる。この記憶値Ss0は、例えば、入力部材15の限界位置Si0よりも僅かに進み側(x軸正方向側)に設定することができる。なお、初期原点Ssを、記憶値Ss0よりも所定幅αだけ大きな(進み側の)値に設定することとしてもよい。所定幅αは、装置1のシステムオフ時にストロークセンサ17の出力を変動させる可能性のある要因、具体的には、温度ドリフトや機械ガタ(ブレーキペダル2等のガタ)、又は検出回路の誤差等を考慮し、これらの要因による出力変動の影響を抑制できる大きさとすることが好ましい。
ステップS10では、EEPROMに記憶されている学習原点Sgのうち最新のものを、(ステップS12において)初期原点Ssと比較するために、読み込む。その後、ステップS11へ進む。
ステップS11では、ステップS10で読み込んだ学習原点Sgが所定の異常閾値範囲内であるか否かを判断する。異常閾値範囲内であればステップS12へ進み、異常閾値範囲外であればステップS13へ進む。この異常閾値範囲は、ストロークセンサ17の検出原点S*として通常取りうる範囲に設定する。すなわち、この異常閾値範囲を超えた検出原点S*に基づき算出したストロークセンサ17の検出値Sを用いてアクチュエータ部16を制御した場合には不適切なブレーキ液圧が発生して(又は適切なブレーキ液圧が発生しないで)正常なブレーキ制御を実行できず、この異常閾値範囲を超えた検出原点S*は明らかに異常な値と判断できる、そのような範囲を異常閾値範囲として設定する。本実施例では、異常閾値範囲を初期原点Ssに基づき設定する。具体的には、初期原点Ssからブレーキペダル2の踏み込み側(x軸正方向側)に所定量だけ離れた位置を異常閾値範囲の上限(上限閾値)とし、初期原点Ssからブレーキペダル2の踏み込み解除側(x軸負方向側)に上記所定量だけ離れた位置を異常閾値範囲の下限(下限閾値)とする(図4参照)。
ステップS12では、初期原点Ssと、ステップS10で読み込んだ学習原点Sgとの位置関係(ブレーキペダル2の踏み込み側であるか踏み込み解除側であるか)を判断する。初期原点Ssが学習原点Sgよりも踏み込み解除側、言い換えると入力部材15の後退側(x軸負方向の戻り側)の値であれば、ステップS13へ進む。それ以外の場合、すなわち初期原点Ssが学習原点Sgと同じ値であるか又は学習原点Sgよりも踏み込み側、言い換えると入力部材15の前進側(x軸正方向の進み側)の値であれば、ステップS14へ進む。
ステップS13では、初期原点Ssを検出原点S*に設定する。その後、ステップS15へ進む。
ステップS14では、S10で読み込んだ学習原点Sgを検出原点S*に設定する。その後、ステップS15へ進む。
ステップS15では、ステップS13,S14で設定した検出原点S*を基準としてストロークセンサ17の検出値Sを算出し、この検出値Sを用いて電動モータ11の制御(ブレーキ制御)を実行する。具体的には、ブースタピストン102を検出値Sの量に応じて一定量まで進めた後に、検出値Sと同じ分だけ進める、所謂等倍制御を行うように電動モータ11を制御する。すなわち、ブースタピストン102を一定量進めた後、ストロークセンサ17により検出された入力部材15のx軸方向移動量と同じ量だけ変位するよう、言い換えると入力部材15とブースタピストン102の移動量が一対一となるよう、ブースタピストン102をx軸方向に移動させる。
ステップS13では、初期原点Ssを検出原点S*に設定する。その後、ステップS15へ進む。
ステップS14では、S10で読み込んだ学習原点Sgを検出原点S*に設定する。その後、ステップS15へ進む。
ステップS15では、ステップS13,S14で設定した検出原点S*を基準としてストロークセンサ17の検出値Sを算出し、この検出値Sを用いて電動モータ11の制御(ブレーキ制御)を実行する。具体的には、ブースタピストン102を検出値Sの量に応じて一定量まで進めた後に、検出値Sと同じ分だけ進める、所謂等倍制御を行うように電動モータ11を制御する。すなわち、ブースタピストン102を一定量進めた後、ストロークセンサ17により検出された入力部材15のx軸方向移動量と同じ量だけ変位するよう、言い換えると入力部材15とブースタピストン102の移動量が一対一となるよう、ブースタピストン102をx軸方向に移動させる。
図4は、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴いコントローラ4が制御可能な状態になったときに(図3のステップS1→S7)、ブレーキ制御(S15)に用いる検出原点S*をどのように選択し設定するかを示す概念図である。機械的な観点で見たときの理想の検出原点S*(待機位置Sit)を0で示す。ブレーキペダル2の踏み込み側を正、踏み込み解除側を負で表記する。異常閾値範囲は、初期原点Ssから正方向に所定量だけ離れた上限の異常閾値(+)と、初期原点Ssから負方向に上記所定量だけ離れた下限の異常閾値(−)との間の範囲である。破線の矢印は、学習原点Sgがこのように更新され得ることを示す。図4の(a)に示すように、読み込んだ(更新記憶された)学習原点Sgが異常閾値範囲外(Sg1のように過大、又はSg2のように過小)になっているとき、初期原点Ssを検出原点S*に設定する(S11→S13)。(b)に示すように、読み込んだ学習原点Sgが異常閾値範囲内にあり、初期原点Ssがこの学習原点Sgよりも踏み込み側(学習原点Sgが初期原点Ssよりも踏み込み解除側)にあるとき、踏み込み解除側に位置する方の学習原点Sgを検出原点S*に設定する(S12→S14)。(c)に示すように、読み込んだ学習原点Sgが異常閾値範囲内にあり、初期原点Ssがこの学習原点Sgよりも踏み込み解除側(学習原点Sgが初期原点Ssよりも踏み込み側)にあるとき、踏み込み解除側に位置する方の初期原点Ssを検出原点S*に設定する(S12→S13)。
[作用]
次に、本実施例の装置1の作用効果を説明する。装置1は、ブレーキペダル2の操作量に応じてアクチュエータ部16(電動モータ11)を駆動してアシスト部材13(ブースタピストン102)を推進し、マスタシリンダ10にブレーキ液圧Pを発生させて車両を制動するブレーキ装置であって、車両システムの起動を意図する操作(例えばイグニッションオン)がまだ行われていない状態でも、ブレーキペダル2が踏み込み操作された場合は、装置1のシステム(コントローラ4)を起動してブースタピストン102の作動によりブレーキ液圧Pをマスタシリンダ10に発生させることで、車両を制動させることができる(図3のステップS1→S7〜S15)。この場合、倍力比を一定とし、倍力比を大きくする進め制御や倍力比を小さくする遅れ制御を行わないことで、制動力をより確実に発生させつつ、意図しない制動力の発生を抑制することができる。本実施例では、ブレーキペダル2の操作の有無を検出するブレーキスイッチ5により操作有りと検出されたときに、コントローラ4が制御可能な状態になる。このようにブレーキスイッチ5により運転者の制動意図を直接的に検出することで、より確実かつ迅速に制動力を発生させることができる。また、従来から備えられているセンサを流用することで、センサの追加等が必要なく、簡易な構成とすることができる。
次に、本実施例の装置1の作用効果を説明する。装置1は、ブレーキペダル2の操作量に応じてアクチュエータ部16(電動モータ11)を駆動してアシスト部材13(ブースタピストン102)を推進し、マスタシリンダ10にブレーキ液圧Pを発生させて車両を制動するブレーキ装置であって、車両システムの起動を意図する操作(例えばイグニッションオン)がまだ行われていない状態でも、ブレーキペダル2が踏み込み操作された場合は、装置1のシステム(コントローラ4)を起動してブースタピストン102の作動によりブレーキ液圧Pをマスタシリンダ10に発生させることで、車両を制動させることができる(図3のステップS1→S7〜S15)。この場合、倍力比を一定とし、倍力比を大きくする進め制御や倍力比を小さくする遅れ制御を行わないことで、制動力をより確実に発生させつつ、意図しない制動力の発生を抑制することができる。本実施例では、ブレーキペダル2の操作の有無を検出するブレーキスイッチ5により操作有りと検出されたときに、コントローラ4が制御可能な状態になる。このようにブレーキスイッチ5により運転者の制動意図を直接的に検出することで、より確実かつ迅速に制動力を発生させることができる。また、従来から備えられているセンサを流用することで、センサの追加等が必要なく、簡易な構成とすることができる。
一方、ブレーキペダル2の踏み込み操作以外の操作、本実施例では車両システムの起動を意図する操作(イグニッションオン等)に伴い装置1のシステム(コントローラ4)が起動する場合、ストロークセンサ17の検出値Sの算出基準となる検出原点S*は、学習条件が満足されると行われる学習処理により、コントローラ4の起動直後よりも理想の検出原点S*(待機位置Sit)に近づくように補正される(ステップS1〜S5)。このため、ブレーキペダル2の操作量(入力部材15の位置ないし移動量)に対するブースタピストン102の位置ないし移動量の制御がより正確なものとなり、より正確なブレーキ制御が可能となる(ステップS6)。例えば、学習原点Sgでなく初期原点Ssを基準としてストロークセンサ17の検出値Sを算出し、これに基づきブレーキ制御を行った場合、この初期原点Ssが理想の検出原点S*(待機位置Sit)よりも踏み込み側にオフセットしていたとき、理想より大きな(進み側の)検出原点S*を基準とすることで、より小さなストロークセンサ17の検出値Sが算出されるため、ブレーキペダル2の操作量に対してアクチュエータ部16により発生できるブレーキ液圧Pの立ち上がり(昇圧)が遅れる(ブレーキペダル2の無効ストロークが大きくなる)おそれがある。これに対し、検出原点S*を学習処理によって理想の検出原点S*(待機位置Sit)に近づけることで、ブレーキ踏み込み操作に対するブレーキ液圧Pの立ち上がりを適切に早めることができる。一方、初期原点Ssが理想の検出原点S*(待機位置Sit)よりも踏み込み解除側(x軸負方向側)に設定されていたとき、理想より小さな(戻り側の)検出原点S*を基準とすることで、より大きなストロークセンサ17の検出値Sが算出されるため、ブレーキペダル2の操作量に対してアクチュエータ部16により発生するブレーキ液圧Pが過大となり、意図しない制動力が発生するおそれがある。これに対し、検出原点S*を学習処理によって理想の検出原点S*(待機位置Sit)に近づけることで、上記意図しない制動力の発生を抑制することができる。
ここで、上記のようにブレーキ操作により装置1のシステムを起動させる場合、既にブレーキペダル2(ないし入力部材15。以下同様。)が操作されているため、ブレーキペダル2の操作量を検出(ストロークセンサ17の検出値Sを算出)する際の正確な検出原点S*を設定することが困難な場合がある。すなわち、ブレーキペダル2が操作されていなければ、例えば検出原点S*を学習処理して補正することが可能であるが、上記のような場合、既にブレーキペダル2が操作されているため、学習処理は困難である。このように学習処理ができないときは、検出原点S*として、予め記憶された初期原点Ssを用いることが可能である。しかし、学習処理ができないときは一律に初期原点Ssを用いることとした場合には、ブレーキ操作以外の操作に伴い装置1のシステムを起動させる場合(学習処理により得られた学習原点Sgを用いることができる場合)との間で、検出原点S*が異なるおそれがある。このように装置1のシステム起動条件の違いに応じて検出原点S*が異なると、運転者のブレーキペダル2の踏み込み操作に伴うペダルフィーリングがシステム起動条件によって変化することとなり、これにより運転者に違和感を与えるおそれがあった。これに対して、本実施例では、ブレーキ操作により装置1のシステムを起動させる場合には、検出原点S*として一律に初期原点Ssを用いるのではなく、更新記憶されている学習原点Sg(具体的には、過去のシステム起動時の学習処理により得られた学習原点Sg)と初期原点Ssとを比較し、適当なほうを検出原点S*として用いることとした(ステップS1→S7〜S15)。よって、装置1のシステム起動条件の違いに応じて検出原点S*が大きく異なることが回避されるため、システム起動条件の違いによるペダルフィーリングの変化を低減することができ、運転者に違和感を与えることを抑制することができる。
一方、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴い装置1のシステムを起動させる場合、上記のように、更新記憶されている学習原点Sgと初期原点Ssとを比較し、適当なほうを選択して検出原点S*として用いることとした場合であっても、選択の仕方によっては、ブレーキ液圧Pの立ち上がりが遅れるおそれがある。すなわち、図4(c)に示すように、仮に、更新記憶されている学習原点Sgが初期原点Ssよりも踏み込み側(進み側)の位置であった場合、この学習原点Sgに基づき算出される検出値Sが、初期原点Ssに基づき算出される検出値Sよりも、踏み込み解除側(戻り側)の位置(小さいストローク値)となる。よって、初期原点Ssを検出原点S*として用いた場合に比べ、この学習原点Sgを検出原点S*として用いた場合には、検出値S(小さいストローク値)に基づき制御されるアクチュエータ部16により発生するブレーキ液圧Pの立ち上がりが遅れる(ブレーキペダル2の無効ストロークが大きくなる)おそれがある。この観点から、本実施例では、更新記憶されている学習原点Sgと初期原点Ssとの位置関係(ブレーキペダル2の踏み込み側ないし入力部材15の進み側であるか、または踏み込み解除側ないし戻り側であるか)を考慮に入れ、この位置関係に基づきどちらを検出原点S*とするかを選択するようにしたことで、ブレーキ操作により装置1のシステムを起動してブレーキ制御を行う際のブレーキ液圧Pの立ち上がりを早めることができる。具体的には、コントローラ4は、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴う装置1のシステムオン条件が満足されることにより制御可能な状態になったときに、更新記憶されている学習原点Sgと初期原点Ssとを比較して、ブレーキ踏み込み解除側の位置となる方を検出原点S*に設定し、この設定した検出原点S*に基づき算出した検出値Sに基づいてアクチュエータ部16を制御する(ステップS12〜S15)。このように、踏み込み解除側にある方の原点を検出原点S*として選択するので、その分、検出される入力部材15のストローク量が増えた状態でアクチュエータ部16(電動モータ11)を駆動することになるから、ブレーキ液圧Pがすぐに立ち上がるようになる。言い換えると、図4(b)(c)に示すように、選択可能な原点(学習原点Sgと初期原点Ss)のうち、他方に比べて踏み込み解除側の位置となる方の原点に基づき検出値Sを算出することで、検出値Sが、より踏み込み側の位置(大きいストローク値)となるため、この検出値S(大きいストローク値)に基づき制御されるアクチュエータ部16により発生するブレーキ液圧Pの立ち上がり応答性を向上する(ブレーキペダル2の無効ストロークを抑制する)ことができる。
ここで、本実施例では、図4(a)に示すように、初期原点Ssと比較される学習原点Sgが所定の異常閾値範囲外になっているときには、初期原点Ssを検出原点S*に設定する(ステップS11→S13)。言い換えると、更新記憶されている学習原点Sgが異常閾値範囲内にあるときに限り、この学習原点Sgを上記のように初期原点Ssと比較するようにした。このように、学習原点Sgが明らかに異常な値と判断できる場合には、この学習原点Sgを用いてアクチュエータ部16を制御することを抑制することで、不適切なブレーキ液圧Pが発生して(又は適切なブレーキ液圧Pが発生しないで)正常なブレーキ制御を実行できない事態を回避することができる。なお、本実施例では、異常閾値範囲を初期原点Ssに基づき設定するようにしたことで、異常閾値範囲を簡便に設定することが可能であり、特に、初期原点Ssから所定量だけ離れた範囲内を異常閾値範囲とすることで、より簡便に異常閾値範囲を設定することができる。なお、異常閾値範囲の設定方法はこれに限らないことは言うまでもない。
また、本実施例では、(ステップS12で初期原点Ssと比較するための)学習原点Sgが記憶されていないときには、初期原点Ssを検出原点S*に設定する(ステップS8→S13)。すなわち、コントローラ4のEEPROMのデータ書き込み動作の不良や、データ書き込み領域の失陥等により、学習原点Sgが全く記憶されていない事態も考えられる。このような事態に備え、学習原点Sgが記憶されていないときには初期原点Ssを検出原点S*に設定し、この初期原点Ssを用いてアクチュエータ部16を制御することで、ブレーキ制御を実行できない事態の発生を回避し、フェールセーフ性を向上することができる。
一方、(ステップS12で初期原点Ssと比較するための)学習原点Sgが記憶されているときには、記憶されている最新の値を用いて初期原点Ssとの比較を行う(ステップS8→S10→S12)。すなわち、例えば車両システムの起動を意図する操作(イグニッションオン)に伴いコントローラ4が起動した後、学習条件が満足される前にブレーキペダル2が踏み込まれる等により検出原点S*の学習が行われなかった場合(ステップS1〜S4→S1→S7)や、コントローラ4のEEPROMのデータ書き込み動作不良が発生した場合等には、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴いコントローラ4が起動状態となった際に、直近のコントローラ4の起動時に学習処理が行われていないことも考えられる。本実施例では、このような場合でも、記憶されている中でも最新の(上記直近の起動時以前のシステム起動時に学習された)学習原点Sgを用いて初期原点Ssとの比較を行い、上記のように比較結果に応じて設定した検出原点S*に基づきアクチュエータ部16を制御する(ステップS10,S12〜S15)。これにより、直近のシステム起動時における学習原点Sgが記憶されていないときは上記比較を行わず初期原点Ssを検出原点S*に設定してアクチュエータ部16を制御する場合に比べ、検出値Sが、踏み込み解除側の位置となる方の検出原点S*に基づき算出されて踏み込み側の位置(大きいストローク値)となるため、ブレーキ液圧Pの立ち上がり応答性を向上することができる。また、ペダルフィーリングの変化を低減可能である。
[効果]
以下、実施例1の装置1が奏する効果を列挙する。
(1)車両に制動力を付与するためにブレーキ液圧Pを発生するマスタシリンダ10と、ブレーキペダル2の踏み込み操作および踏み込み解除操作により進退移動する入力部材15と、入力部材15の操作ストローク(x軸方向位置Si)を検出するストローク検出手段(ストロークセンサ17)と、マスタシリンダ10内でブレーキ液圧Pを発生させるためのアクチュエータ(アクチュエータ部16)と、複数のシステムオン条件のいずれかが満足されることにより制御可能な状態になると共に、ストローク検出手段の検出値Sに基づいてアクチュエータを制御するコントローラ4と、を備え、コントローラ4は、少なくとも車両システムの起動を意図する操作(イグニッションオン等)に伴うシステムオン条件が満足されることにより制御可能な状態になったときに、ストローク検出手段の検出原点S*を学習して学習原点Sgとして更新記憶し、ブレーキペダル2が操作されると、学習原点Sgに基づき算出したストローク検出手段の検出値Sに基づいてアクチュエータを制御し、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴うシステムオン条件が満足されることにより制御可能な状態になったときに、更新記憶されている学習原点Sgと、予め記憶された初期原点Ssとを比較して、ブレーキペダル2の踏み込み解除側の位置となる方を検出原点S*に設定し、該設定した検出原点S*に基づき算出したストローク検出手段の検出値Sに基づいてアクチュエータを制御する。
よって、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴うシステムオン時におけるブレーキ液圧Pの立ち上がり応答性を向上することができる。また、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴うペダルフィーリングの変化を低減することができる。
以下、実施例1の装置1が奏する効果を列挙する。
(1)車両に制動力を付与するためにブレーキ液圧Pを発生するマスタシリンダ10と、ブレーキペダル2の踏み込み操作および踏み込み解除操作により進退移動する入力部材15と、入力部材15の操作ストローク(x軸方向位置Si)を検出するストローク検出手段(ストロークセンサ17)と、マスタシリンダ10内でブレーキ液圧Pを発生させるためのアクチュエータ(アクチュエータ部16)と、複数のシステムオン条件のいずれかが満足されることにより制御可能な状態になると共に、ストローク検出手段の検出値Sに基づいてアクチュエータを制御するコントローラ4と、を備え、コントローラ4は、少なくとも車両システムの起動を意図する操作(イグニッションオン等)に伴うシステムオン条件が満足されることにより制御可能な状態になったときに、ストローク検出手段の検出原点S*を学習して学習原点Sgとして更新記憶し、ブレーキペダル2が操作されると、学習原点Sgに基づき算出したストローク検出手段の検出値Sに基づいてアクチュエータを制御し、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴うシステムオン条件が満足されることにより制御可能な状態になったときに、更新記憶されている学習原点Sgと、予め記憶された初期原点Ssとを比較して、ブレーキペダル2の踏み込み解除側の位置となる方を検出原点S*に設定し、該設定した検出原点S*に基づき算出したストローク検出手段の検出値Sに基づいてアクチュエータを制御する。
よって、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴うシステムオン時におけるブレーキ液圧Pの立ち上がり応答性を向上することができる。また、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴うペダルフィーリングの変化を低減することができる。
(2)コントローラ4は、初期原点Ssと比較される学習原点Sgが、初期原点Ssに基づいて設定される所定の異常閾値範囲外になっているときに、初期原点Ssを検出原点S*に設定する。
よって、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴うシステムオン時に不適切なブレーキ液圧Pが発生して(又は適切なブレーキ液圧Pが発生しないで)正常なブレーキ制御を実行できない事態を回避することができる。
よって、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴うシステムオン時に不適切なブレーキ液圧Pが発生して(又は適切なブレーキ液圧Pが発生しないで)正常なブレーキ制御を実行できない事態を回避することができる。
(3)コントローラ4は、初期原点Ssと比較される学習原点Sgが記憶されていないときに、初期原点Ssを検出原点S*に設定する。
よって、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴うシステムオン時に、学習原点Sgが記憶されていない場合でもブレーキ制御を実行可能とすることができる。
よって、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴うシステムオン時に、学習原点Sgが記憶されていない場合でもブレーキ制御を実行可能とすることができる。
(4)コントローラ4は、学習原点Sgとして記憶されている最新の値を用いて初期原点Ssとの比較を行う。
よって、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴うシステムオン時に、直近のシステムオン時における学習原点Sgが記憶されていない場合でも、比較結果に応じて設定した検出原点S*に基づきアクチュエータ部16を制御することにより、ブレーキ液圧Pの立ち上がり応答性を向上することができる。また、ペダルフィーリングの変化を低減することができる。
よって、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴うシステムオン時に、直近のシステムオン時における学習原点Sgが記憶されていない場合でも、比較結果に応じて設定した検出原点S*に基づきアクチュエータ部16を制御することにより、ブレーキ液圧Pの立ち上がり応答性を向上することができる。また、ペダルフィーリングの変化を低減することができる。
(5)コントローラ4は、ブレーキペダル2の操作の有無を検出するペダルスイッチ(ブレーキスイッチ5)が接続され、ペダルスイッチにより操作有りと検出されるときシステムオン条件が満足されたとする。
よって、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴うシステムオン条件の成立を簡易な構成により判断することができる。
よって、ブレーキペダル2の踏み込み操作に伴うシステムオン条件の成立を簡易な構成により判断することができる。
[他の実施例]
以上、本発明を実現するための形態を、実施例に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。例えば、電動式の液圧発生装置は、ブレーキペダルの操作により進退移動する入力部材と、入力部材のストロークの検出値に基づき制御され、マスタシリンダ内でブレーキ液圧を発生させるためのアクチュエータとを有するものであればよく、実施例のものに限られない。また、初期原点や学習原点の設定は、実施例に示した具体的なものに限られない。
以上、本発明を実現するための形態を、実施例に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。例えば、電動式の液圧発生装置は、ブレーキペダルの操作により進退移動する入力部材と、入力部材のストロークの検出値に基づき制御され、マスタシリンダ内でブレーキ液圧を発生させるためのアクチュエータとを有するものであればよく、実施例のものに限られない。また、初期原点や学習原点の設定は、実施例に示した具体的なものに限られない。
2 ブレーキペダル
4 コントローラ
5 ブレーキスイッチ(ペダルスイッチ)
6 イグニッションスイッチ
10 マスタシリンダ
15 入力部材
16 アクチュエータ部(アクチュエータ)
17 ストロークセンサ(ストローク検出手段)
4 コントローラ
5 ブレーキスイッチ(ペダルスイッチ)
6 イグニッションスイッチ
10 マスタシリンダ
15 入力部材
16 アクチュエータ部(アクチュエータ)
17 ストロークセンサ(ストローク検出手段)
Claims (5)
- 車両に制動力を付与するためにブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと、
ブレーキペダルの踏み込み操作および踏み込み解除操作により進退移動する入力部材と、
該入力部材の操作ストロークを検出するストローク検出手段と、
前記マスタシリンダ内でブレーキ液圧を発生させるためのアクチュエータと、
複数のシステムオン条件のいずれかが満足されることにより制御可能な状態になると共に、前記ストローク検出手段の検出値に基づいて前記アクチュエータを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
少なくとも車両システムの起動を意図する操作に伴うシステムオン条件が満足されることにより制御可能な状態になったときに、前記ストローク検出手段の検出原点を学習して学習原点として更新記憶し、前記ブレーキペダルが操作されると、前記学習原点に基づき算出した前記ストローク検出手段の検出値に基づいて前記アクチュエータを制御し、
前記ブレーキペダルの踏み込み操作に伴うシステムオン条件が満足されることにより制御可能な状態になったときに、更新記憶されている前記学習原点と、予め記憶された初期原点とを比較して、前記ブレーキペダルの踏み込み解除側の位置となる方を前記検出原点に設定し、該設定した検出原点に基づき算出した前記ストローク検出手段の検出値に基づいて前記アクチュエータを制御する
ことを特徴とするブレーキ装置。 - 請求項1に記載のブレーキ装置において、
前記コントローラは、
前記初期原点と比較される前記学習原点が、前記初期原点に基づいて設定される所定の異常閾値範囲外になっているときに、前記初期原点を前記検出原点に設定することを特徴とするブレーキ装置。 - 請求項1に記載のブレーキ装置において、
前記コントローラは、
前記初期原点と比較される前記学習原点が記憶されていないときに、前記初期原点を前記検出原点に設定することを特徴とするブレーキ装置。 - 請求項1に記載のブレーキ装置において、
前記コントローラは、
前記学習原点として記憶されている最新の値を用いて前記初期原点との比較を行うことを特徴とするブレーキ装置。 - 請求項1乃至4のいずれかに記載のブレーキ装置において、
前記コントローラは、
前記ブレーキペダルの操作の有無を検出するペダルスイッチが接続され、
該ペダルスイッチにより前記操作有りと検出されるときシステムオン条件が満足されたとすることを特徴とするブレーキ装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012241435A JP2014091359A (ja) | 2012-11-01 | 2012-11-01 | ブレーキ装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012241435A JP2014091359A (ja) | 2012-11-01 | 2012-11-01 | ブレーキ装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2014091359A true JP2014091359A (ja) | 2014-05-19 |
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ID=50935775
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012241435A Pending JP2014091359A (ja) | 2012-11-01 | 2012-11-01 | ブレーキ装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2014091359A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2016194582A1 (ja) * | 2015-05-29 | 2016-12-08 | 日立オートモティブシステムズ株式会社 | 電動倍力装置 |
WO2019059201A1 (ja) * | 2017-09-25 | 2019-03-28 | 日立オートモティブシステムズ株式会社 | 電動倍力装置 |
-
2012
- 2012-11-01 JP JP2012241435A patent/JP2014091359A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2016194582A1 (ja) * | 2015-05-29 | 2016-12-08 | 日立オートモティブシステムズ株式会社 | 電動倍力装置 |
JPWO2016194582A1 (ja) * | 2015-05-29 | 2018-02-08 | 日立オートモティブシステムズ株式会社 | 電動倍力装置 |
US10647307B2 (en) | 2015-05-29 | 2020-05-12 | Hitachi Automotive Systems, Ltd. | Electric booster |
WO2019059201A1 (ja) * | 2017-09-25 | 2019-03-28 | 日立オートモティブシステムズ株式会社 | 電動倍力装置 |
CN111094090A (zh) * | 2017-09-25 | 2020-05-01 | 日立汽车系统株式会社 | 电动助力装置 |
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