以下、本発明をシンクロチルト式の事務用回転椅子Cに適用した場合の一実施形態につき、図面を参照して説明する。
この椅子Cは、図1〜図23に示すように、脚体1と、この脚体1の上部に支持され水平旋回可能な支持基部2と、この支持基部2の上に配された座3と、前記支持基部2に後傾動作可能に設けられた背支桿4と、この背支桿4に取り付けられた背凭れ5とを具備してなる。
<脚体>
脚体1は、図1〜図6に示すように、キャスタ13を有した脚羽根タイプの脚ベース11と、この脚ベース11の中心部に立設した脚支柱12とを具備してなる。前記脚支柱12は、ガススプリングを主体に構成された通常のもので、この脚支柱12の上端部に前記支持基部2が取り付けられている。
<支持基部>
支持基部2は、図1〜図6、図9及び図15に示すように、前記脚体1によって水平旋回可能かつ上下方向に昇降可能に支持されたもので、前記脚支柱12に装着されたハウジング20と、このハウジング20に貫装される背凭れ支持用の主軸21と、この主軸21に力を付与して前記背凭れ5の後傾動作に対して弾性反発力を発生させる図示しない傾動反力発生機構とを具備してなる。前記傾動反力発生機構は、図示しないコイルスプリングやガススプリング等を用いて前記主軸21に回転方向の弾性反発力を付与し得るように構成されたものであるが、通常のものであるため説明を省略する。
<座>
前記座3は、図1〜図13に示すように、アウターシェル31と、このアウターシェル31上にスライド案内機構33を介して前後方向にスライド移動可能に配設されたインナーシェル32と、このインナーシェル32を所望のスライド位置に移動させてロックするためのスライド位置決め機構34と、前記インナーシェル32上に配されたクッション35と、このクッション35及び前記インナーシェル32の周縁部326下面326cをくるむ座表皮材36とを備えたものである。
前記アウターシェル31は、図2〜図9、図11〜図13及び図20〜図23に示すように、上面31c側に着座者からの荷重を受け止める荷重受け面P3を有したものである。アウターシェル31は、前半領域31aと後半領域31bとで上面31cの形態を異にするものである。アウターシェル31は、アウターシェル本体311と、このアウターシェル本体311の上面311aに突設された前記縦リブ312、横リブ313及び斜めリブ314と、前記アウターシェル本体311の下面311bにおける前記後半領域31bの中央付近を凹陥させた形態をなし前記アウターシェル本体311の上面311a側に突出する包囲壁315a及びこの包囲壁315aの突出端315bを閉塞する天壁315cを有した後半中央部315とを備えたものであり、硬質合成樹脂を用いて一体に成形されている。前記後半中央部315の天壁315cの下面315eには、下向き縦リブ315f及び下向き横リブ315gが突設されている。前記縦リブ312、横リブ313及び斜めリブ314の突出端面312a、313a、314aと、前記後半中央部315の天壁315cの上面315dとは1枚の仮想共通曲面P2に属するように構成されている。この仮想共通曲面P2の前記前半領域31aに属する部分は、前後方向においては各部がほぼ一定の高さを保ち、左右方向においては中央部から左右両側縁に向かって漸次上昇するように湾曲させてある。前記仮想共通曲面P2の前記後半領域31bに属する部分は、前後方向においては前側が前方に向かって漸次上昇するように湾曲させてあるとともに、その他の部分が各部がほぼ一定の高さを保つように形成してあり、左右方向においては中央部から左右両側縁に向かって漸次上昇するように湾曲させてある。前記荷重受け面P3は、前記後半領域31bの周縁を除く領域に設定されたもので、前記仮想共通曲面P2に属するように設定されている。具体的には、この荷重受け面P3は、前記天壁315cの上面315dとこの上面315dの左右両側に配された縦リブ312、横リブ313及び斜めリブ314の突出端面312a、313a、314aにより構成されている。この荷重受け面P3は、前記後半領域31bに設定された座位基準点S1を中心にして形成されたもので、その座位基準点S1よりも前側に前方に向かって漸次上昇する傾斜部分P31を備えている。この傾斜部分P31を設けることによって、着座者の前方へのずれを抑制することができるとともに、着座時のフィット感を向上させることができるようにしてある。なお、このアウターシェル31の下に設けられた第1のレバー23は、反力調整用のもので、前記支持基部2内に設けられた前記傾動反力発生機構のスプリング予圧を調整するようになっている。第2のレバー24は、座3の高さ位置を調整するためのもので、このレバー24に接続された図示しないワイヤーは、前記縦リブ312に形成された凹部312b及びアウターシェル本体311の孔311cを通して前記脚体1の脚支柱12の上端付近に導かれている。第3のレバー25は、背凭れ5の角度を調整するためので、このレバー25に接続された図示しないワイヤーは、前記縦リブ312に形成された凹部312c及び後半中央部315の天壁315cに形成された溝315hを通してアウターシェル31の下側に配された図示しない背凭れ角度調整用のガススプリングに導かれている。これらワイヤーの接続構造は通常のものであるため、説明を省略する。
前記インナーシェル32は、図3〜図12及び図20〜図23に示すように、前記荷重受け面P3に対応する部位に着座者からの荷重を前記荷重受け面P3に担持させるための荷重伝達部分327dを備えたもので、周縁近傍部に周縁部326側が高くなる段部325を備えたシェル状をなすインナーシェル本体321と、このインナーシェル本体321の周縁部326の上面326aに突設されたリブ326bとを備えたもので、弾性変形可能な合成樹脂により一体に成形されている。前記周縁部326は、前記座表皮材36の外方縁364によりくるまれるもので、その最外縁に上方に向けて延出する上向き壁326dを備えている。このインナーシェル本体321の前記段部325に囲まれた領域327は、前記アウターシェル31の前半領域31aにおける縦リブ312、横リブ313及び斜めリブ314の突出端面312a、313a、314aに摺動可能に密接し得る前半シェル部分327aと、前記アウターシェル31の後半領域31bにおける縦リブ312、横リブ313、斜めリブ314の突出端面312a、313a、314a及び前記天壁315cの上面315dに摺動可能に密接し得る後端シェル部分327bと、この後端シェル部分327bの前縁を前記前半シェル部分327aの後縁に滑らかに連続させる中間シェル部分327cとを主体にして構成されている。そして、前記中間シェル部分327cに前記荷重伝達部分327dが設けられている。この荷重伝達部分327dは、前記中間シェル部分327cに前後方向に伸びる複数本のスリット327gを、左右方向に間隔をあけて形成したものであり、無負荷状態においては、この荷重伝達部分327dの下面327eと前記荷重受け面P3との間に空間327fが形成されている。この荷重伝達部分327dは、前記スリット327gの存在により厚み方向に比較的容易に弾性変形し得るようになっており、着座者からの荷重を受けた場合に下方に弾性変形して前記アウターシェル31の荷重受け面P3に当接するように構成されている。すなわち、着座者からの荷重は、前記荷重伝達部分327dを介して最終的に前記アウターシェル31の荷重受け面P3によって受け止められるようにしてある。
そして、このインナーシェル32は、スライド案内機構33を介して前記アウターシェル31上に所定の範囲内で前後方向にスライド移動可能に配されており、前記荷重受け面P3の連動移行を伴うことなしに当該座3の着座奥行寸法を変更することができるようになっている。すなわち、このインナーシェル32をアウターシェル31に対してスライド移動させることによって、座3の着座奥行寸法を変更することができるが、前記荷重受け面P3はアウターシェル31に設けられているため、前記インナーシェル32のスライド移動に連動して移動することはない。
前記スライド案内機構33は、図6〜図13に示すように、前記インナーシェル32の複数個所に形成され前後方向に延びる案内スリット322と、これら各案内スリット322にそれぞれスライド自在に貫装され上端に前記インナーシェル32の上面32aに摺接する抜止頭部332を有した複数のスライダ331と、これら各スライダ331の下端部333を固定すべく前記アウターシェル31に設けられた複数のスライダ取付部31eとを備えたものである。詳述すれば、前記案内スリット322は、前記インナーシェル32の四隅部近傍にそれぞれ形成されたもので、これら各案内スリット322の周囲には、前記スライダ331の抜止頭部332を包囲する頭部保護用リブ323がそれぞれ突設されている。前記各頭部保護用リブ323の突出端面323aは、前記仮想共通曲面P2に属するように設定されている。また、前記各スライダ331の抜止頭部332の上面332aは、前記各頭部保護用リブ323内に収まるように傾斜させてある。前記各スライダ331は、対応する前記案内スリット322に沿ってスライドし得る角柱状をなすものであり、下端面334に図示しないねじ孔を有している。前記各スライダ取付部31eは、前記アウターシェル31の四隅部近傍にそれぞれ形成されたもので、前記スライダ331の下端部333を上から嵌合させることができる有底角筒状をなすものである。そして、これら各スライダ取付部31eの底31fには、前記アウターシェル31の下面31d側からビス31gを挿通させることができる図示しないビス挿通孔が形成されており、前記ビス31gを前記ねじ孔311cに螺着することによって前記各スライダ331を前記アウターシェル31に固定するようにしてある。なお、図11及び図12では、スライダ331を二点鎖線で示している。
以上の構成をなすスライド案内機構33により案内されて前後方向にスライドするインナーシェル32は、前記スライド位置決め機構34により所望のスライド位置で位置決めしロックすることができるようになっている。
前記スライド位置決め機構34は、図6〜図13に示すように、下ロック位置(D)から上ロック解除位置(U)までの間で昇降動作可能な操作部材341と、インナーシェル32のスライド移動に伴ってこの操作部材341に選択的に対応する複数の位置決め用の係合部31rとを具備してなる。このスライド位置決め機構34は、前記操作部材341が前記下ロック位置(D)に降下して対応する係合部31rに係合した状態で前記インナーシェル32のスライド移動が禁止され、前記操作部材341が前記上ロック解除位置(U)まで上昇した状態で前記係合部31rとの係合が解除されて前記インナーシェル32のスライド移動が許容されるようにしたものである。前記操作部材341の操作端349は、前記アウターシェル31の下面31d側に突出させてあり、前記アウターシェル31に前記操作部材341の上昇を前記上ロック解除位置(U)において係止する当り面31mを設けている。前記操作部材341は、前記アウターシェル31及び前記インナーシェル32のいずれとも別体をなす独立した部品であり、前記インナーシェル32の上に配設されたクッション35の弾性反発力により下ロック位置(D)方向に弾性付勢されるものである。
詳述すれば、前記操作部材341は、前記インナーシェル32の保持部324に昇降可能に貫装され下端側を前記アウターシェル31に設けられた前後に延びるスリット31hを通過させて該アウターシェル31の下面31d側に突出させた操作部材本体343と、この操作部材本体343の上端に設けられ前記クッション35の下面35bに添接する薄板状をなす頭部344と、前記操作部材本体343の中間部分に設けられ、前記アウターシェル31に設けられた複数の係合部31rのいずれかに選択的に係合するロック爪345と、前記操作部材本体343の下端に設けられ前記当り面31mに当接する抜け止め突起346と、この抜け止め突起346を包持するようにして前記操作部材本体343の下端部にビス348を用いて取り付けられ前記操作端349を構成する押しボタン347とを備えたものである。前記当り面31mは、前記アウターシェル31の下面31dにおける前記スリット31hの開口端に沿って形成されたものであり、この当り面31mに前記操作部材341の抜け止め突起346の上向き面346a及び押しボタン347の上向き面347aを当接させて前記インナーシェル32とともに前後にスライドさせることができるように構成されている。換言すれば、前記操作部材341は、座3の上面側に指を掛けた状態で操作することができるような位置に設けられており、座3に指を掛けた状態を維持しつつ操作部材341の押しボタン347を操作することで、当該操作部材341を含む座3の主要部を前記アウターシェル31に対して移動させ、座3の着座奥行寸法を変更することができるようになっている。すなわち、前記押しボタン347を指で押し込む動作がそのまま係合解除動作になるになるように構成されており、その係合解除状態で抜け止め突起346の上向き面346a及び押しボタン347の上向き面347aを当り面31mに摺接させながらインナーシェル32を前後にスライドさせることができるようになっている。前記押しボタン347を当り面31mに当接させているのは、操作部材341の作動範囲を一定に保って各部に無理な応力が作用するのを防止するとともに、操作の感触を向上させるためであり、前記押しボタン347を当り面31mに摺接させながらインナーシェル32を前後にスライドさせるようにしているのは、前述したように座3の上面に指を掛けた状態を維持しつつ操作部材341の押しボタン347を操作して着座奥行寸法を変更することができるようにするためである。
なお、前記保持部324の外側及び前記スリット31hの前端部外側には、図7〜図9に示すように、前記抜け止め突起346を通過させるための切り欠き324a、31kがそれぞれ設けられている。前記保持部324の外側に設けられた切り欠き324aと、前記スリット31hの前端部外側に設けられた切り欠き31kとは、インナーシェル32を最も前進させた状態で合致するように位置づけられており、その状態でのみ、前記操作部材341を前記インナーシェル32及びアウターシェル31に装着できるようになっている。この保持部324の内側は、連結リブ324bを介して座3の左前側に配された案内スリット322の頭部保護用リブ323と一体化されている。すなわち、前記保持部324は、前記案内スリット322の一つに隣接配置されたものである。
前記クッション35は、図3〜図6及び図8〜図12に示すように、例えばモールドウレタンの下面35bに不織布を貼設したもので、前記インナーシェル32の上面32aに載設されており、前記インナーシェル32の周縁部326とともに前記座表皮材36によりくるまれている。
座表皮材36は、図1〜図5及び図10〜図12に示すように、下方に開口する扁平袋状をなす表皮材本体361と、この表皮材本体361の開口縁に形成された袋縫い部362と、この袋縫い部362に挿通させた紐362aとを備えたものである。前記表皮材本体361は、伸び特性の異なる複数種類の張地361a、361bを外面に突出するミミ363を介して縫合させてなるものである。具体的には、表皮材本体361は、比較的厚手で伸びにくい第1の張地361aと、比較的薄手で伸縮性に富む第2の張地361bとをミミ363を介して縫合されたものである。なお、張地の伸び特性の違いに関わる要素としては、厚みの違い、材質の違い、織物と編物等構造的な違い等が挙げられる。前記第1の張地361aは、主として着座面P1を構成する位置に設けられるもので、前記クッション35の上面35a及び前面35cを覆う形態をなしている。第2の張地361bは、前記着座面P1以外の領域に設けられるもので、前記クッション35の側面35d、背面35e及びインナーシェル32の周縁部326下面326cを覆う形態をなしている。前記袋縫い部362は、前記紐362aで絞ることにより前記インナーシェル32の周縁部326下面326c側に添接することになり、そのインナーシェル32をアウターシェル31に装着した状態で、このインナーシェル32とアウターシェル31との間の隙間に収まるようになっている。なお、前述したインナーシェル32は、前記段部325を形成する上向きに伸びた起立壁325aと、最外縁に設けられ上方に向けて延出する上向き壁326dとの存在によって、中央から周辺に向かうに従って徐々に上方に延びる形態をなしている。換言すれば、このインナーシェル32は、平面視方形状のもので、前記座表皮材36を紐締めすることで張設する座くるみに使用される前記周縁部326付近の形状を、最外縁に向かって段階的に上昇し続けるようなものにしている。そして、前記座表皮材36の袋縫い部362は、前記インナーシェル32の下面に段差を形成している段部325の外側に沿って配されており、この袋縫い部362がインナーシェル32の下面から突出して該インナーシェル32のスライド動作の邪魔になるのを防止している。すなわち、前記段部325の内外において、インナーシェル32の下面に、外側が内側よりも高くなるように段差が形成されているので、その段差の外側に前記袋縫い部362を配することによって、この袋縫い部362がインナーシェル32の下面からアウターシェル31側に突出するのを防止することができる。なお、図3〜図5、図11及び図12では、座表皮材36を二点鎖線で示している。
<背支桿>
背支桿4は、図3、図4、図6、図9、図15及び図16に示すように、厚肉鋼板等により作られた左右対をなす背支桿本体41と、これら背支桿本体41の基端部41a間に架設された傾動反力発生機構用の軸42と、前記背支桿本体41の先端間を剛結する先端連結材43と、前記背支桿本体41の先端部41c上縁から内側に延出させた左右対をなす取付板44と、前記背支桿本体41の中間部41b上縁間に架設されたシンクロロッキング機構26を構成するための後軸45とを備えたもので、基端部41aの軸孔に挿通させた主軸21を介して前記支持基部2に回動可能に取り付けられている。前記背支桿本体41の中間部41bには、カバー取付用の孔41dと、カバー位置決め用の突起41eとが設けられている。前記取付板44には、複数のボルト挿通孔44aが穿設されており、これら各ボルト挿通孔44aに対応する下面にはナット44bがそれぞれ溶接等により固設されている。そして、この取付板44の上面44cが前記背凭れ5を取り付けるための取付面44dをなしている。前記取付板44間には、前記背凭れ角度調整用のガススプリングの先端部を配するための隙間44eが形成されている。
前記シンクロロッキング機構26は、図3〜図5に示すように、座3と背凭れ5とを一定の角度割合で傾動動作させるためのもので、前記座3のアウターシェル31の前端側を前軸27を介して前記支持基部2の前端部に前後移動可能に支持させるとともに、前記アウターシェル31の後端側を後軸45を介して背支桿4の中間部41bに支持させたものである。前軸27は、前記支持基部2の前端部に設けられた長孔22に前後摺動可能に設けられたもので、その両端部が前記アウターシェル31の前端側下面に設けられた前軸保持部31nに保持されている。後軸45は、前述したように前記背支桿4の中間部41bに架設されたもので、その両端部がアウターシェル31の後端側下面に設けられた後軸保持部31pに保持されている。
<背凭れ>
前記背凭れ5は、図1〜図6及び図14〜図18に示すように、背板51と、この背板51をくるむクッション52と、このクッション52の外側に被せられた背表皮材53とを備えたものである。
前記背板51は、図3〜図5及び図14〜図18に示すように、柔軟性を有する背シェル54と、この背シェル54に装着した剛性を有する前記背ジョイント55と、前記背シェル54の下端部54aに装着され該背シェル54の下端部54a前面54eに対向する前壁562を有した背アンダーカバー56とを備えたものであり、この背アンダーカバー56の前壁562背面564と前記背シェル54の下端部54a前面54bとの間に、下方に開放された収容部57が形成されている。
背シェル54は、図3〜図5及び図14〜図18に示すように、着座者の腰に対応する腰部54cが大きく湾曲するとともに上方に行くに従って平板に近づく3次元形状をなすものであり、弾性変形可能な板状をなすシェル本体541と、このシェル本体541の前面541fから一体に突設された複数の縦リブ542、横リブ543及び斜めリブ544と、前記シェル本体541の中央下部における背面を凹陥させた形態をなし前記シェル本体541の前面541f側に突出する包囲壁546及びこの包囲壁546の突出端を閉塞する前壁547を有したジョイント取付部545とを備えたものである。そして、前記縦リブ542、横リブ543及び斜めリブ544の突出高さ寸法を、前記背シェル54の腰部54c中央付近が高く且つ前記背シェル54の周縁に向って漸次連続して低くなるように設定し、前記各縦リブ542、横リブ543及び斜めリブ544の突出端面542a、543a、544aとが、1枚の仮想共通曲面P4に属するように構成してある。前記ジョイント取付部545の前壁547の前向き面547aは、前記仮想共通曲面P4と面一に構成されている。また、シェル本体541の前面541fには、後述するランバーサポート用のエアバッグ71を保持するための袋体取付用のナット部541aと、前記背アンダーカバー取付用のナット部541cが一体に設けられており、前記袋体取付用のナット部541aの先端面541bは、前記仮想共通曲面P4に属している。前記シェル本体541、前記縦リブ542、前記横リブ543、前記斜めリブ544、前記ジョイント取付部545、袋体取付用のナット部541a及び背アンダーカバー取付用のナット部541cは、合成樹脂を用いて一体に成形されている。
前記シェル本体541は、前記3次元形状に対応して滑らかに湾曲する弾性変形可能な板状のもので、両側縁及び上縁に前方へ一定高さで突出する周壁541eを備えている。
前記縦リブ542同士の左右方向の間隔及び前記横リブ543同士の上下方向の間隔は、前記腰部54c中央付近が狭く、周辺が広く設定されている。前記背シェル54の前記横リブ543及び斜めリブ544には、前記エアバッグ71と前記ポンプユニット73とを連結するエアチューブ76を案内するための案内部543b、544bを部分的に凹設している。
ジョイント取付部545は、シェル本体541の中央下部、すなわち、シェル本体541の下縁中央部分から腰部54c中央部分に至る背面視矩形状をなす領域を凹陥させたもので、門形をなす前記包囲壁546と、前記前壁547とによって背面側に開放された取付空間548が形成されている。前記包囲壁546は、前記縦リブ542、横リブ543及び斜めリブ544と一体に連続しており、また、前記前壁547の背面側には、補強リブ547bが設けられている。さらに、前記前壁547には、複数のボルト挿通孔547cが設けられており、このボルト挿通孔547cの前面側には、ボルト549頭部549aを収容するための座ぐり部547dが形成されている。
背ジョイント55は、図3〜図6及び図14〜図16に示すように、前記ジョイント取付部545に嵌装されるジョイント本体551と、このジョイント本体551の下端部から前方に延出させた取付アーム部552とを備えてなる側面視L字形をなすものであり、前記取付アーム部552を前記背支桿4の取付面44dに取り付けている。ジョイント本体551は、前記取付空間548に密に嵌り込む前面側が開放された扁平箱形のもので、その内部に補強リブ551aを備えている。前記ジョイント本体551の背面551bは、前記背シェル54の背面54dに面一に連続したものである。また、このジョイント本体551は、前記背シェル54のジョイント取付部545のボルト挿通孔547cに対応する部分にナット部551cを備えており、ジョイント本体551を前記取付空間548に嵌合させた状態で背シェル54の前面54e側から前記ボルト挿通孔547cを通して挿入したボルト549を前記ナット部551cに螺着することにより、背ジョイント55が前記背シェル54に取り付けられるようになっている。前記ジョイント本体551の下端部の前面には、複数の上向爪551dが形成されている。
取付アーム部552は、前記ジョイント本体551の下端部から一体に延出させたもので、前記背支桿4の取付面44dに添接する左右対をなす取付壁553と、これら両取付壁553同士を一体に連結する中央壁554と、前記両取付壁553の外側縁から下方に垂下させた垂下壁555とを備えたもので、前記両取付壁553の前記背支桿4のナット44bに対応する部位にボルト挿通孔553aが形成されているとともに、これら取付壁553の前端近傍部にカバー取り付け用の角孔553bが設けられている。前記中央壁554の上面554aは、前記両取付壁553の上面553cよりも上方に位置している。この取付アーム部552は、前記背支桿4の前記取付面44dに上側から装着したボルト556により取着されるものである。具体的には、前記取付アーム部552の垂下壁555間に背支桿4の先端部4aが収容されるようにして前記取付アーム部552を前記背支桿4の取付面44d上に被せ置き、取付アーム部552の上面552a側から前記ボルト挿通孔553aに挿入したボルト556を前記背支桿4の前記ナット44bに螺着することにより、取付アーム部552を前記背支桿4に固定している。このようにして、前記背シェル54が前記背ジョイント55を介して背支桿4に取り付けられている。
前記背アンダーカバー56は、図3〜図6及び図14〜図17に示すように、前記背シェル54の下端部54a前面54bに取り付けられる天壁561と、この天壁561の前縁から下方に延出させた前記前壁562とを備えたもので、前記前壁562の背面564と前記背シェル54の下端部54a前面54bとの間に下方に開放された収容部57が形成されている。しかして、前記収容部57は、前記背ジョイント55の取付アーム部552の存在により左右に分断されている。前記天壁561は、その後縁にビス孔563aを有した取付突起563を備えており、そのビス孔563aに挿通させたビス567を前記背シェル54の背アンダーカバー取付用のナット部541cに螺着することによって、該背アンダーカバー56が前記背シェル54に取り付けられている。前記前壁562は、背面側に複数の下方に屈曲した下向爪565aを有する中央前壁部分565と、この中央前壁部分565の両側に連続する両側前壁部分566とを備えたものであり、前記両側前壁部分566の内方端には、前記背ジョイント55の取付アーム部552の側面に当接又は近接する位置決め壁566aが設けられている。前記両側前壁部分566に対応する前記背シェル54の前面には、複数の上向爪54fが形成されている。
前記収容部57は、図5及び図15に示すように、後述するように前記背表皮材53の下端開口縁部531aを収容する役割を担うものであり、前記下向爪565a及び前記上向爪54f,551dは、前記背表皮材53の下端開口縁部531aを保持するためのものである。また、左右に分断された収容部57の一方には、後述するように作動機構の主要部たるエアー供給機構72のポンプユニット73が収容されている。
このように前記背板51は、前記背シェル54と、前記背ジョイント55と、前記背アンダーカバー56とを主体に構成されたものである。この背板51は、前記背ジョイント55の取付アーム部552及び前記収容部57の開口端付近を除く略全ての部位がクッション52によりくるまれている。
前記クッション52は、図3〜図6及び図15に示すように、前記背シェル54の前面54eに添設されるモールドウレタン521と、前記背シェル54の背面54dに添設されるスラブウレタン522とを背シェル54の両側縁付近で接合させてなるものであり、前述したように前記背板51を総ぐるみする形態をなしている。すなわち、このクッション52は、前記背シェル54と、この背シェル54に装着された前記背ジョイント55のジョイント本体551を総ぐるみするものである。前記モールドウレタン521は、型内でウレタンを発泡させて造られたもので、その背面には不織布が添設されている。このモールドウレタン521の背面は、前記背シェル54の仮想共通曲面P4に対応するように造形されたもので、前記縦リブ542、前記横リブ543、前記斜めリブ544の突出端面542a、543a、544a及び前記ジョイント取付部545の前向き面547aに当接するように設定されている。また、このモールドウレタン521の背面における周縁近傍部には、前記背シェル54の周壁541eを受け入れる溝521aが形成されている。前記スラブウレタン522は、予め一定厚さに成形された発泡ウレタン素材を所要の形状にカットしてなるものであり、図15及び図16においては、このスラブウレタン522の図示は省略してある。このようにしてなるクッション52の外面は、前記背表皮材53によりくるまれている。
前記背表皮材53は、図1〜図5及び図15に示すように、下端に前記下端開口縁部531aを有する袋状の表皮材本体531と、この表皮材本体531の下端開口縁部531aにおける前側中央部分に縫着された合成樹脂製の中央掛止部材532と、前記下端開口縁部531aにおける前側両側部分に縫着された左右対をなす合成樹脂製の両側掛止部材533と、前記下端開口縁部531aにおける後側に保持された金属製の掛止線材534とを備えたものである。なお、図3〜図5では、背表皮材53を二点鎖線で示している。
具体的には、前記表皮材本体531は、比較的厚手で伸びにくい第1の張地535と、比較的薄手で伸縮性に富む第2の張地536とをミミ537を介して縫合されたものである。前記第1の張地535は、主として前記クッション52の前面52aと上端面52bと背面52cの上半部分52dとを連続して覆う形態をなしている。第2の張地536は、前記クッション52の側面52f及び背面52cの下半部分52eを覆う形態をなしている。前記第1の張地535と前記第2の張地536との境界に位置するミミ537は、外面側に突出する突条形態をなすものであり、当該背表皮材53を前記クッション52に被せる際に、このミミ537部分を摘まんで引っ張ることができるようになっている。前記中央掛止部材532は、横断面視U字状に屈曲した先端部532aを有するものであり、その先端部532aを前記背板51の下縁、すなわち、前記背アンダーカバー56の中央前壁部分565の下縁に掛けるようにしてある。前記中央掛止部材532の先端部532aは、掛止状態において前記中央前壁部分565の背面565bと前記下向爪565aとの間に挟持され保持される。前記両側掛止部材533は、横断面視U字状に屈曲した先端部533aを有するものであり、その先端部533aを前記背板51の下縁、すなわち、前記背アンダーカバー56の両側前壁部分566の下縁に掛けるようにしてある。前記掛止線材534は、部分的に露出するようにして前記表皮材本体531の下縁部に取り付けられたものであり、前記背板51の下縁に掛止めされるようにしてある。すなわち、この掛止線材534は、前記表皮材本体531の下縁部とともに前記収容部57内に回し込まれた状態で前記上向爪54f,551dに掛止されるようになっている。
以上のようにしてなる背凭れ5は、立ち上がり部分を有しない前記背支桿4の上向きの取付面44dに取り付けられており、その取付部分全体がカバー集合体6により覆い隠されている。そして、この背凭れ5にランバーサポート装置7の全ての構成要素を組み込んでユニット化している。
<カバー集合体>
前記カバー集合体6は、図1〜図6、図14〜図16に示すように、前記背支桿4の下側を覆う下背支桿カバー61と、前記背支桿4の上側を覆う第1、第2の上背支桿カバー62、63とを備えてなるもので、前記第1の上背支桿カバー62と前記第2の上背支桿カバー63とは、互いに独立して着脱し得るようになっている。
前記下背支桿カバー61は、図1〜図6及び図14〜図16に示すように、前記背支桿4の下側を覆うカバー本体611と、このカバー本体611に一体に設けられ前記背板51の収容部57を閉塞して前記背表皮材53の下端開口縁部531aを前記収容部57内に保持する背板閉塞部612とを備えたものである。前記カバー本体611は、底板613と、この底板613の左右両側縁から立ち上がる左右の側板614と、これら両側板614の内面側に設けられ前記背支桿4の下面4b及び外側面4cに当接するカバー位置決め用のリブ614bとを備えたもので、合成樹脂により一体に成形されている。前記両側板614の内面には、前記背支桿4のカバー取付用の孔41dに係合する十字リブ状をなすカバー取付用の突起614aが突設されている。そして、このカバー本体611の後端に前記背板閉塞部612が一体に設けられている。前記背板閉塞部612は、中央部前縁が前記カバー本体611の底板613に連続する横長形状の蓋板615と、この蓋板615の両端部前縁から立ち上がる左右の前板616とを備えたもので、前記カバー本体611とともに合成樹脂により一体に成形されている。前記蓋板615は、前記背凭れ5の下端に開口する前記収容部57の開口形状に対応する形態をなすもので、両端部に左右対をなす両端取付ボス615aを有するとともに、中間部に左右対をなす中間取付ボス615bを備えている。前記両端取付ボス615a及び前記中間取付ボス615bは、それぞれ下面側から図示しないビスを上方に向けて挿通し得る形状をなしており、前記両端取付ボス615aに挿入されたビスが、前記背アンダーカバー56に設けられたナット部568に螺着されるとともに、前記中間取付ボス615bに挿入されたビスが、前記背シェル54に設けられた下背支桿カバー取付用のナット部541gに螺着されるようになっている。そして、かかる装着状態において、前記収容部57が前記背板閉塞部612の蓋板615により閉塞されるようにしてある。前記左右の前板616は、前記カバー本体611の側板614の後端に連続するもので、装着状態において前記背アンダーカバー56の前壁562に隙間を介して重なり合うように位置づけられている。すなわち、前記背表皮材53の前記両側掛止部材533が装着された下端開口縁部531aの前側部分は、これら前板616により隠される。また、前記背表皮材53における下端開口縁部531aの後側は、前記背板閉塞部612の後縁に抑えられた状態で前記収容部57内に収容保持される。
前記第1の上背支桿カバー62は、図3〜図6に示すように、前記背支桿4の前記取付面44dに対応する部分を覆うものであり、前記取付面44dに取り付けられた背凭れ5の取付アーム部552及びこの取付アーム部552を前記背支桿4に固定しているボルト556の頭部556aは、この上背支桿カバー62により隠されている。換言すれば、この上背支桿カバー62を取り外すだけで、前記取付アーム部552及び前記ボルト556の頭部556aを露出させることができ、前記背支桿4から前記背凭れ5を取り外すことが可能になる。この第1の上背支桿カバー62は、扁平な下向きチャンネル状のもので、後端に上方に立ち上がる鍔部621を有するとともに前端部下面に下端が先方に屈曲する取付爪622を有しており、その取付爪622を前記取付アーム部552に設けられた角孔553bに係合させてその後端側を押し下げることによって装着状態となる。装着状態においては、前記背表皮材53における下端開口縁部531aの中央掛止部材532がこの第1の上背支桿カバー62の鍔部621により隠されることになる。
第2の上背支桿カバー63は、図3〜図6に示すように、前記背支桿4の取付面44d以外の露出部分を覆うもので、前記第1の上背支桿カバー62とは独立している。
なお、以上説明したカバー集合体6における前記下背支桿カバー61の背板閉塞部612には、前記ランバーサポート装置7の操作レバー74を挿通させるための窓617が形成されている。
<ランバーサポート装置>
前記ランバーサポート装置7は、図2〜図6及び図14〜図19に示すように、前記背凭れ5の前記背シェル54と前記クッション52との間に配されたランバーサポート用のエアバッグ71と、このエアバッグ71にエアチューブ76を介して接続され前記エアバッグ71に対してエアーを供給し又は排出する前記エアー供給機構72とを具備してなる。
前記エアバッグ71は、図3〜図5及び図18に示すように、エアーの供給を受けて膨縮する通常のもので、可撓変形可能な袋体77を介して前記背シェル54の前面54eに保持されている。前記袋体77は、少なくとも左右方向の一端側が解放されたもので、上端部における左右両側部分に貫通させたビス78を前記背シェル54の袋体取付用のナット部541aに螺着することによって、前記背シェル54の前面54eに取り付けられている。そして、この袋体77内に前記エアバッグ71が収容されている。すなわち、前記背シェル54の腰部54c付近における前記縦リブ542、横リブ543及び斜めリブ544の突出端面542a、543a、544aに変形可能な袋体77が添設されており、この袋体77内に前記エアバッグ71が膨縮可能に保持されている。
前記エアー供給機構72は、図2、図6及び図14〜図19に示すように、前記エアバッグ71にエアーを供給するポンプユニット73と、このポンプユニット73を駆動するための操作レバー74とを備えたものであり、このエアー供給機構72の主要部をなす前記ポンプユニット73が前記背凭れ5の下部に形成された前記収容部57に収容されている。換言すれば、このエアー供給機構72は、基準位置S2を挟んでその両側に操作可能な前記操作レバー74と、前記基準位置S2に対して一方側すなわち上方側に操作された操作レバー74に付勢されて前記エアバッグ71にエアーを供給するポンプ731と、前記基準位置S2に対して他方側すなわち下方側に操作された前記操作レバー74に付勢されて前記エアバッグ71内のエアーを外部に放出するリリースバルブ732と、前記ポンプ731からの逆駆動力に起因して前記操作レバー74が前記基準位置S2を超えて他方側に作動するのを防止又は抑制する逆作動抑止手段733とを具備してなる。
前記ポンプユニット73は、図16、図18及び図19に示すように、前記操作レバー74を上下方向に回動可能に支持するレバー支持部材79に、前記ポンプ731と、前記リリースバルブ732と、前記逆作動抑止手段733とを組み付けてユニット化したものであり、前記操作レバー74が前記背凭れ5の下端から外方に突出するようにして前記収容部57に収容されている。前記レバー支持部材79は、前記収容部57の天井部分にビス止めされる頂板791と、この頂板791の前後両縁から下方に垂下させたレバー取付アーム792とを備えてなる金属製のもので、前記レバー取付アーム792に前記操作レバー74の基端部74aを軸により回動可能に支持させている。前記ポンプ731は、流入専用逆止弁を有したエア流入口731aと吐出専用逆止弁を有した吐出口731bとを備えたゴム製バルーンタイプのもので、押圧力を受けた場合に縮小して内部のエアーを前記吐出口731bから吐出し、その押圧力が消勢した場合に前記エア流入口731aからエアーを取り入れながら元の形に自己復帰するようになっている。前記リリースバルブ732は、前記ポンプ731の吐出口731bに直結されたもので、操作ボタン732aが押されない状態ではその吐出口731bを前記エアチューブ76を介して前記エアバッグ71に連通させておき、前記操作ボタン732aが押されている間だけ前記エアバッグ71内のエアーを大気中に放出するようになっている。なお、前記ポンプ731及び前記リリースバルブ732は通常のものであるため、詳細な構造説明は省略する。前記逆作動抑止手段733は、前記操作レバー74のレバー本体74bが前記基準位置S2から他方側に回動する領域で該レバー本体74bを前記基準位置S2方向に弾性付勢するバネ733aを備えたものである。
前記操作レバー74は、図1、図2、図4〜図6及び図14〜図19に示すように、前記レバー支持部材79に回動可能に支持された前記レバー本体74bと、このレバー本体74bに設けられ該レバー本体74bが前記基準位置S2から一方側に回動操作された場合に前記ポンプ731を付勢するポンプ押圧部74cと、前記レバー本体74bが前記基準位置S2から他方側に回動操作された場合に前記リリースバルブ732を付勢するバルブ押圧部74dとを備えたものであり、この実施形態においては前記ポンプ押圧部74c及び前記バルブ押圧部74dが前記レバー本体74bに一体に設けられている。前記操作レバー74は、その先端側を斜め下外側方に向けて配されており、この操作レバー74の先端操作部分74fを基準位置S2から上に引き上げることによって前記ポンプ731が前記ポンプ押圧部74cに押圧付勢され、前記操作レバー74を基準位置S2から下に押し下げることによって前記リリースバルブ732の操作ボタン732aが前記バルブ押圧部74dに押圧付勢されるようになっている。この操作レバー74は、前記レバー本体74bの基端部74eと、前記ポンプ押圧部74cと、前記バルブ押圧部74dとを前記収容部57内に収容したものであり、この操作レバー74の先端操作部分74fを構成する前記レバー本体74の先端側は、前記下背支桿カバー61の背板閉塞部612に設けられた窓617を通して外部に延出させてある。
なお、前記ポンプユニット73のポンプ731からリリースバルブ732を介して吐出されるエアーは、前記エアチューブ76を介して前記エアバッグ71に導かれる。このエアチューブ76は、前記収容部57の一方側に収容されたポンプユニット73から延出され、前記背支桿4と下背支桿カバー61との間を通過して前記収容部57の他方側に導かれ、この収容部57から背シェル54の前面54eを通って前記袋体77の裏面77a側に達し、その裏面77a側に露出させた前記エアバッグ71の図示しないエアー導出入口に接続されている。
以下、座3について詳述する。
本実施形態の座3は、前記アウターシェル31と、このアウターシェル31上に前後方向にスライド移動可能に配設された前記インナーシェル32と、このインナーシェル32の上方に配された前記クッション35と、このクッション35の外方に配される座表皮材36とを備えたもので、前記座表皮材36の外方縁364に設けられた紐362aを絞めることによって外方から前記インナーシェル32及びクッション35を覆う、いわゆる座くるみタイプのものである。また、本実施形態の座3は、着座奥行寸法を変更するための奥行変更手段を有しており、この奥行変更手段は、前記荷重受け面P3の連動移行を伴うことなしに前記座3の着座奥行寸法を変更し得るように構成されたものである。
前記アウターシェル31及びインナーシェル32は、それぞれ中央が下方に湾曲した形状をなしており、さらに、アウターシェル31の荷重受け面P3は前方部分が後方部分よりも上方に位置するように湾曲するとともに、インナーシェル32の荷重伝達部分327dは前方部分が後方部分よりも上方に位置するように湾曲している。
このアウターシェル31の荷重受け面P3の湾曲形状と前記インナーシェル32の荷重伝達部分327dの湾曲形状とは相互に異ならせている。すなわち、アウターシェル31の荷重受け面P3の傾斜部分P31よりも、インナーシェル32の傾斜を緩やかに設定している。そのため、インナーシェル32が前後方向中央部分で浮いた状態となりつつ前後でアウターシェル31に支持され、荷重がかかった際にはインナーシェル32の中央が下方に引っ張られて、弾性が出しやすい。また、アウターシェル31の荷重受け面P3の傾斜部分P31よりも、この傾斜部分P31に対応するインナーシェル32の荷重伝達部分327dの傾斜を緩やかに設定しているため、荷重受け面P3と荷重伝達部分327dの下面327eとの間には前記空間327fが形成されることとなる。この空間327fは、インナーシェル32をアウターシェル31に対して相対的に一番後方にスライド移動させたとき最も大きくなり、その際の上下寸法がおよそ10mm〜20mmになるように設定されている。
なお、アウターシェル31には、該アウターシェル31の荷重受け面P3の湾曲形状に沿って前記傾斜部分P31が形成されている。この傾斜部分P31の存在により、着座者の前方へのずれを抑制するとともに、着座時のフィット感を向上させることができる。この荷重受け面P3は、着座者の荷重の中心として設計上設定された座位基準点S1を中心にして形成されたもので、本実施形態のような1本脚の場合、支柱12に軸方向に着座者の荷重がかかるため、この支柱12の真上を座位基準点S1としており、前記傾斜部分P31がこの座位基準点S1よりも前側に配置されている。
この荷重受け面P3は、インナーシェル32及びこのインナーシェル32の荷重伝達部分327dのスライド移動に伴って動くことはない。すなわち、この荷重受け面P3は、キャスタ13により水平移動したり、シンクロロッキング機構26により傾動することはあるが、座3の着座奥行寸法を変更する操作によっては移動しない。そのため、後半中央部315に設けられた荷重受け面P3を一定位置に保ちながら座3の奥行き寸法を変化させることができる。
なお、アウターシェル31の荷重受け面P3には上方に突出するリブや突起等が形成されておらず、また、インナーシェル32の荷重伝達部分327dには前後方向に伸びるスリット327gが形成されているだけで、下方に突出するリブや突起等が形成されていない。そのため、アウターシェル31に対してインナーシェル32を前後スライド移動させる際に、滑らせやすくなっている。
前記アウターシェル31は、後半領域31bの中央付近に位置する後半中央部315を除き周縁に向かって漸次上昇して湾曲するように形成されたシェル状をなすアウターシェル本体311と、このアウターシェル本体311の上面311aにおける後半中央部315を除く部位に一体に設けられた縦リブ312、横リブ313及び斜めリブ314とを備えている。このアウターシェル31は、四隅近傍部に設けられた4つの前記スライダ取付部31eと、これらスライダ取付部31eのうち座3の左前に位置するスライダ取付部31eの外方に設けられた前記係合部31rと、この係合部31rの外方に設けられ上下方向に貫通する前記スリット31hと、このスリット31hの下面開口端部付近に設けられた前記当り面31mとを備えている。
前後スライドする座スライド機構の操作部である前記操作端349は、前記アウターシェル31の下方に配されており、この操作端349は座3の左側の側端縁よりも内側に配されている。この操作部材341は、押しボタン式のもので、着座面P1に対して上下方向に動作可能に設けられている。換言すれば、前記操作部材341の下部は、座3のアウターシェル31の下面31dから下方に突出し、着座者の指で上方に押し込む動作がそのまま前記係合部31rの係合解除動作になるように設定されている。すなわち、本実施形態においては、前記押しボタン347と前記係合部31rとは一体に形成されており、操作端349の上下方向の動作がそのまま伝わって係合部31rの上下方向の動作となる。このように、本実施形態の操作部材341は、前後方向にスライド移動するインナーシェル32に対して上下方向にスライド移動するものであり、択一的に係合状態と非係合状態とをとり得るものである。また、操作部材341の頭部344の上端面は平らで、下面35b側に図示しない不織布が添設された前記クッション35によって下方に押されるものである。
インナーシェル32の周縁部326に対応する部分は、インナーシェル32の下面326cとアウターシェル31の上面32aとの間に隙間が形成されている。一方、インナーシェル32の段部325に囲まれた領域327に対応する部分、すなわち、前記段部325の起立壁325aの内側に対応する部分は、インナーシェル32の下面とアウターシェル31の上面32aとの間に隙間が形成されていない。そして、この隙間のない座3の中央寄りの範囲内に、スライド案内機構33とスライド位置決め機構34とが配置されており、スライド動作中にガタなどが生じないように設定されている。
なお、このインナーシェル32の案内スリット322内に配される前記スライダ331の抜止頭部332の上面332aは、前記インナーシェル32の頭部保護用リブ323の突出端面323aと面一になるように設定されている。そして、クッション35の下面35bの前記スライド案内機構33に対応する部分は、前記頭部保護用リブ323の突出端面323a及びスライダ331の上面332aに対応させて傾斜させてある。このように、前記スライダ331を座3の湾曲に応じた形状とすることで、無用なクッション35の切り込みが不要となり、着座感を良くすることができる。
次に、着座奥行寸法の変更について図20〜図23を参照しながら説明する。なお、図20〜図23では、アウターシェル31とインナーシェル32とを左右方向中央より少しずれた箇所で切断した端面を示しており、インナーシェル32のスリット327gが設けられた荷重伝達部分327dにパターンを付している。
まず、図20及び図21では、インナーシェル32がアウターシェル31に対して相対的に後方に位置する状態、すなわちインナーシェル32が後方スライド位置に配されている状態を示している。図20に示すように、着座者の荷重がかかっていない状態では、前記アウターシェル31の荷重受け面P3とインナーシェル32の荷重伝達部分327dの下面327eとの間に比較的大きな空間327fが形成されている。この状態から、着座者の上方からの荷重がかかると、図21に示すように、インナーシェル32の柔軟性を有した荷重伝達部分327dが下方に撓み変形し、荷重受け面P3と荷重伝達部分327dの下面327eとが当接し、前記空間327fがなくなる。
次に、図22及び図23では、インナーシェル32がアウターシェル31に対して相対的に前方に位置する状態、すなわちインナーシェル32が前方スライド位置に配されている状態を示している。図22に示すように、着座者の荷重がかかっていない状態では、前記アウターシェル31の荷重受け面P3とインナーシェル32の荷重伝達部分327dの下面327eとの間に比較的小さな空間327fが形成されている。この状態から、着座者の上方からの荷重がかかると、図23に示すように、インナーシェル32の柔軟性を有した荷重伝達部分327dが下方に撓み変形し、荷重受け面P3と荷重伝達部分327dの下面327eとが当接し、前記空間327fがなくなる。
このように、前後スライド位置によって、座3のインナーシェル32の撓み可能な範囲が変化するようになっている。
なお、比較的体格の小さな着座者は、インナーシェル32を後方スライド位置に配することが多く、無荷重状態で前記空間327fが比較的大きく形成されているため、体重が軽くてもインナーシェル32が撓み、クッション性が出しやすいという効果が得られる。一方、比較的体格の大きな着座者は、インナーシェル32を前方スライド位置に配することが多く、無荷重状態で前記空間327fが比較的小さく形成されているため、体重が重くてもアウターシェル31でしっかり受け止められるという効果が得られる。
また、背凭れ5と着座面P1との距離は体格にかかわらずほぼ一定であり、座3の着座奥行寸法の変更に伴って荷重受け面P3が動いてしまう従来のものと比べて、本実施形態の座3は荷重受け面P3が前記スライド移動に伴って動くことがないため、体格の異なる多くの人に最適なフィット感を与えることができる。換言すれば、本実施形態の座3は、インナーシェル32をアウターシェル31に対してスライド移動させることによって、座3の着座奥行寸法を変更することができるが、前記荷重受け面P3がインナーシェル32のスライド移動に連動して移動することはないものである。すなわち、座3の着座奥行寸法を変更した際にこの変更に伴って動くことのないアウターシェル31に荷重受け面P3を設けている。そして、このアウターシェル31に設けられた傾斜部分P31の存在により、上述したように着座者の前方へのずれを抑制することができるとともに、着座者の下方への力が均一的にかかるためフィット感を向上させることができる。
また、この構造によって、インナーシェル32をアウターシェル31に対して後方にスライド移動させる動作が行いやすいという効果も得られる。すなわち、特にキャスタ13等移動手段が設けられている椅子Cにおいて、インナーシェル32をアウターシェル31に対して相対的に前に移動させる場合、着座者は背凭れ5に凭れてこの背凭れ5を足場のように使って腰を前方に押し出しながらスライド操作を行うことができるため、比較的容易に行えるものの、相対的に後ろに移動させる場合には足場のように使えるものがないため、着座者がすわったままこのようなスライド操作を行うことが難しいという問題があった。ところが、本実施形態のようなものであれば、インナーシェル32に設けられた荷重伝達部分327dが着座者からの荷重を受けた場合に下方に弾性変形し該荷重伝達部分327dと前記荷重受け面P3とが当接するので、インナーシェル32をアウターシェル31に対して相対的に後ろに移動させる場合、着座者が前記傾斜部分P31の傾斜の上端部付近に荷重を移して、この傾斜部分P31に体重をかけるようにして腰の位置を移動させれば、着座者の体重を利用してすべり台のような要領でインナーシェル32を後方に移動させることができる。このように、傾斜部分P31に着座者の荷重をかけることで、後方に滑り降りる力が生じて、従来よりも簡単に後方へのスライド動作を行うことができる。
以上に述べたように、本実施形態にかかる椅子Cは、着座奥行寸法を変更するための奥行変更手段を有した座3を具備してなり、前記座3が、着座者からの荷重を受け止める荷重受け面P3を有した硬質部材であるアウターシェル31を備えており、前記荷重受け面P3が、座位基準点S1を中心にして形成されたもので、その座位基準点S1よりも前側に、前方に向かって漸次上昇する傾斜部分P31を備えており、前記奥行変更手段が、前記荷重受け面P3の連動移行を伴うことなしに前記座3の着座奥行寸法を変更し得るように構成されたものであり、着座者の前方へのずれを抑制することができるとともに、着座奥行寸法を変更しても荷重受け面P3が連動して動かないため、体格の異なる多くの人に対して着座時のフィット感を与えることができる。
本実施形態では、前記硬質部材が、上面31c側に前記荷重受け面P3を有したアウターシェル31であり、前記奥行変更手段が、前記アウターシェル31の上にインナーシェル32を前後方向にスライド移動可能に設け、そのインナーシェル32をスライド位置決め機構34により所望のスライド位置に移動させてロックすることができるようにしたものであり、前記インナーシェル32が、前記荷重受け面P3に対応する部位に着座者からの荷重を前記荷重受け面P3に担持させるための荷重伝達部分327dを備えたものであるので、体格の異なる多くの人に対して着座時のフィット感を与えることができる。そして、アウターシェル31の形状に左右されずに着座面P1の形状を整えやすいという効果もある。詳述すれば、着座荷重がかかった際には着座者の臀部及び大腿部にフィットする傾斜部分P31を備えた荷重受け面P3を形成できるとともに、着座面P1を形成するクッション35の上面35aの形状は比較的平坦なものとすることができる。本実施形態では、クッション35の上面35aを比較的平坦なものとして外観を良くすることができるだけでなく座表皮材36を張りやすくできる。そして、着座した際には荷重受け面P3に対応したクッション35の上面35aが下方に凹むことになるため、着座者の前方へのずれを抑制しつつ着座時のフィット感を与えることができる。
また、前記インナーシェル32の荷重伝達部分327dは、着座者からの荷重を受けて前記荷重受け面P3に当接するまで厚み方向に弾性変形し得るものであり、無負荷時にはこの荷重伝達部分327dの下面327eと前記荷重受け面P3との間に空間327fが形成されているので、この空間327fによって着座時の衝撃が和らげられ、着座感を良くすることができる。
前記荷重伝達部分327dが、インナーシェル32の前記荷重受け面P3に対応する部位に、前後方向に延びる複数本のスリット327gを左右方向に間隔をあけで形成したものであるので、インナーシェル32をアウターシェル31上で前後方向に動かしやすく、さらに、着座者の荷重がかかっていない状態で隣接するスリット327g間でクッション35の下面35b側を適切に担持することができる。
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られない。
本発明の椅子は、背凭れを有していないものであってもよい。
奥行変更手段は、前述したようなアウターシェルに対してインナーシェル全体が相対的に前後方向に移動する前後スライド式のものの他に、例えば、シェルの変形可能な前端部が下部後方に巻き込まれた状態と前方に延伸された状態とを取り得る巻き込み式のもの、すなわち、前記シェルの前端部を巻き込まれた状態とすることで座の着座奥行寸法を小さくし、前記シェルの前端部を前方に延伸された状態とすることで座の着座奥行寸法を大きくするものが考えられる。さらに、一方のシェルに対してこの一方のシェルの前端部に設けられた他方のシェルが相対的に前後方向に移動する部分的な前後スライド式、換言すれば、一方のシェルの前端部から突没可能な他方のシェルが一方のシェルに没入された状態と前方に延伸された状態とを取り得る前方延長式のもの、すなわち、前記他方のシェルを一方のシェルに没入された状態とすることで座の着座奥行寸法を小さくし、前記他方のシェルを一方のシェルから前方に延伸された状態とすることで座の着座奥行寸法を大きくするものが考えられる。
硬質部材は、アウターシェルには限られず、インナーシェルやその他のシェルであってもよい。
荷重伝達部分は、着座者からの荷重を荷重受け面に担持させるために該荷重受け面に対応する部位に設けられたものであればどのようなものであってもよく、例えば、図24に示すように、インナーシェルX32の上下方向に貫通する窓を形成してもよい。すなわち、インナーシェルX32の荷重伝達部分X327dは、前記荷重受け面XP3に対応する全領域を除去してなる窓状のものであってもよい。なお、図24の各部分については、前記実施形態の対応する符号に「X」を付して詳しい説明を省略する。
また、図25及び図26に模式的に示すように、インナーシェルY32の荷重伝達部分Y327dが、可撓変形自在な材料により作られ、前記インナーシェルY32のスライド移動に係わらず常に前記荷重受け面YP3に略密着し得るものであってもよい。すなわち、本変形例にかかる座Y3は、着座者からの荷重を受け止める荷重受け面YP3を有したアウターシェルY31を備えており、前記荷重受け面YP3が、座位基準点YS1を中心にして形成されたもので、その座位基準点YS1よりも前側に、前方に向かって漸次上昇する傾斜部分YP31を備えており、前記奥行変更手段が、前記荷重受け面YP3の連動移行を伴うことなしに前記座Y3の着座奥行寸法を変更し得るようなものであり、前記インナーシェルY32が、前記荷重受け面YP3に対応する部位に着座者からの荷重を前記荷重受け面YP3に担持させるための荷重伝達部分Y327dを備えたものである。このインナーシェルY32の荷重伝達部分Y327dは、可撓変形自在な材料により作られているため、図25に示すようなアウターシェルY31に対してインナーシェルY32が相対的に後方に位置する場合に前記荷重受け面YP3に略密着するとともに、図26に示すようなアウターシェルY31に対してインナーシェルY32が相対的に前方に位置する場合にも該荷重伝達部分Y327dの形状を変えて前記荷重受け面YP3に略密着するようになっている。なお、図示していないが、図25と図26との間の状態であっても、前記荷重伝達部分Y327dが荷重受け面YP3に略密着している。このようなものであっても、上記実施形態に準じた効果が得られる。
また、インナーシェルに前後方向に伸びるスリットを設けていたが、この他に前後方向の延びるリブや凹凸部分等を作れば、前記アウターシェルに対して前後方向に移動する際、これらのリブや凹凸部分等にガイドされて前後方向に滑りやすくさせることができる。
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。