JP2014088587A - 容器用鋼板、その製造に用いられる処理液、および、容器用鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼板および上記鋼板の表面の少なくとも一部を覆う錫めっき層を有する錫めっき層付き鋼板と、上記錫めっき層付き鋼板の上記錫めっき層側の表面上に配置された皮膜とを有する容器用鋼板であって、上記皮膜が、ZrおよびSiを有し、上記皮膜は、上記錫めっき層付き鋼板の片面あたりのZr換算の付着量が1.0〜40.0mg/m2であって、上記錫めっき層付き鋼板の片面あたりのSi換算の付着量が1.0mg/m2以上60.0mg/m2未満であり、上記皮膜のSiとZrとの質量比(Si/Zr)が0.10以上2.00未満であり、上記皮膜の赤外線吸収(IR)スペクトルにおいて、波数1550〜1800cm-1の範囲にカルボニル基(C=O)に由来する吸収ピークを示すことを特徴とする容器用鋼板。
【選択図】なし
Description
しかしながら、昨今の環境問題を踏まえて、Crの使用を規制する動きが各分野で進行しており、容器用鋼板においてもクロメート処理に替わる処理技術がいくつか提案されている。
例えば、特許文献1には、「Crを用いず、樹脂密着性に優れ」るものとして([0013])、「金属板の少なくとも片面に、ZrおよびOを含む皮膜を有し、該皮膜のF量が片面あたり0.1mg/m2未満であることを特徴とする表面処理金属板」が開示されており([請求項1])、ここでいう「金属板」は「電気Snめっき鋼板」である([請求項3])。
本発明者らは、特許文献1に開示された容器用鋼板(表面処理金属板)について、さらに検討を行なった。その結果、PETフィルム等の樹脂をラミネートした後にレトルト処理を行なった際に、樹脂であるフィルムに対する密着性(以下「樹脂密着性」ともいう)が不十分となる場合があることが分かった。
また、本発明者らは、ラミネート後の容器用鋼板を所定条件下でトマトジュースに浸漬すると、樹脂であるフィルムが変色する場合があり、変色に対する耐性(以下「耐変色性」ともいう)に劣ることが分かった。このとき、本発明者らは、この変色が、めっき層に含まれる錫(Sn)の酸化によるものであることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(12)を提供する。
(2)上記皮膜が、さらにTiを有し、上記錫めっき層付き鋼板の片面あたりのTi換算の付着量が0.01〜8.00mg/m2である、上記(1)に記載の容器用鋼板。
(3)上記錫めっき層付き鋼板と上記皮膜との間に、リン量が0.01mg/m2以上5.00mg/m2未満であるリン含有層を有する、上記(1)または(2)に記載の容器用鋼板。
(4)上記錫めっき層付き鋼板が、表面にニッケル含有層を有する鋼板を用いて形成された、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の容器用鋼板。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の容器用鋼板の製造に用いられる処理液であって、オキシ酢酸ジルコニウムと、コロイダルシリカとを含有することを特徴とする、処理液。
(6)さらに、硝酸イオンである陰イオンと、カリウムイオン、アンモニウムイオンおよびナトリウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の陽イオンと、を含有する、上記(5)に記載の処理液。
(7)上記オキシ酢酸ジルコニウムの含有量が0.3〜15.0g/Lであり、上記コロイダルシリカの含有量が0.01〜5.00g/Lである、上記(5)または(6)に記載の処理液。
(8)さらに、チタン化合物を含有する、上記(5)〜(7)のいずれかに記載の処理液。
(9)上記チタン化合物の含有量が0.01〜10.00g/Lである、上記(8)に記載の処理液。
(10)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の容器用鋼板を得る、容器用鋼板の製造方法であって、上記(5)〜(9)のいずれかに記載の処理液中に上記錫めっき層付き鋼板を浸漬する、または、浸漬した上記錫めっき層付き鋼板に陰極電解処理を施すことにより、上記皮膜を形成することを特徴とする容器用鋼板の製造方法。
(11)上記(3)または(4)に記載の容器用鋼板を得る、容器用鋼板の製造方法であって、リン供給源を含む溶液中に上記錫めっき層付き鋼板を浸漬する、または、浸漬した上記錫めっき層付き鋼板に陰極電解処理を施すことにより、上記リン含有層を形成した後に、上記(5)〜(9)のいずれかに記載の処理液中に、上記リン含有層が形成された上記錫めっき層付き鋼板を浸漬する、または、浸漬した上記リン含有層が形成された上記錫めっき層付き鋼板に陰極電解処理を施すことにより、上記皮膜を形成することを特徴とする容器用鋼板の製造方法。
(12)上記陰極電解処理を施す際の電解電流密度が、0.05〜7.0A/dm2であり、上記陰極電解処理の通電時間が、0.1〜5秒である、上記(10)または(11)に記載の容器用鋼板の製造方法。
本発明の容器用鋼板は、錫めっき層付き鋼板と、錫めっき層付き鋼板の錫めっき層側の表面上に配置された皮膜とを有する。そして、この皮膜が、ZrおよびSiを特定比で含有し、さらに、カルボニル基(C=O)を含むことにより、樹脂密着性および耐変色性に優れる。
上記効果が得られるメカニズムは明らかではないが、皮膜中に析出するSi化合物が大きな比表面積を有しており、この化合物によるアンカー効果によって樹脂(フィルム)と皮膜との密着性が向上する、樹脂と皮膜との界面において高温下での水分の拡散が抑制されることで錫めっき層におけるSnの酸化が抑制される、皮膜中でZrとの複合化合物を形成することで上記効果が相乗的に向上する等の理由が考えられる。
また、皮膜中に含まれるカルボニル基によって、皮膜表面の親水性が低下することで、水分の拡散が抑制されると考えられる。さらに、カルボニル基の存在によって樹脂フィルム、特にポリエステル系フィルムとの相溶性が向上し、その結果密着性が向上すると考えられる。
なお、上記メカニズムは推測であり、上記メカニズム以外であっても本発明の範囲内であるとする。
錫めっき層付き鋼板は、鋼板および鋼板の表面の少なくとも一部を覆う錫めっき層を有する。以下に、鋼板および錫めっき層の態様について詳述する。
錫めっき層付き鋼板中の鋼板の種類は特に制限されるものではなく、通常、容器材料として使用される鋼板(例えば、低炭素鋼板、極低炭素鋼板)を用いることができる。この鋼板の製造方法、材質なども特に規制されるものではなく、通常の鋼片製造工程から熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍、調質圧延等の工程を経て製造される。
Ni含有層としてはニッケルが含まれていればよく、例えば、Niめっき層、Ni−Fe合金層などが挙げられる。
鋼板にNi含有層を付与する方法は特に制限されず、例えば、公知の電気めっきなどの方法が挙げられる。また、Ni含有層としてNi−Fe合金層を付与する場合、電気めっきなどにより鋼板表面上にNi付与後、焼鈍することにより、Ni拡散層を配位させ、Ni−Fe合金層を形成することができる。
Ni含有層中のNi量は特に制限されず、片面当たりの金属Ni換算量として50〜2000mg/m2が好ましい。上記範囲内であれば、耐硫化黒変性により優れ、コスト面でも有利となる。
錫めっき層付き鋼板は、鋼板表面上に錫めっき層を有する。該錫めっき層は鋼板の少なくとも片面に設けられていればよく、両面に設けられていてもよい。
錫めっき層中における鋼板片面当たりのSn付着量は、0.1〜15.0g/m2が好ましい。Sn付着量が上記範囲内であれば、容器用鋼板の外観特性と耐食性に優れる。なかでも、これらの特性がより優れる点で、0.2〜15.0g/m2が好ましく、加工性がより優れる点で、1.0〜15.0g/m2がさらに好ましい。
また、錫めっき層としては、Ni含有層を表面に有する鋼板に対して錫めっきを行い、さらに通電加熱などにより錫を加熱溶融させ、錫めっき最下層(錫めっき/地鉄界面)にFe−Sn−Ni合金、Fe−Sn合金層などが一部形成した錫めっき層も含む。
例えば、フェノールスルフォン酸錫めっき浴、メタンスルフォン酸錫めっき浴、またはハロゲン系錫めっき浴を用い、片面あたり付着量が所定量(例えば、2.8g/m2)となるように鋼板表面にSnを電気めっきした後、Snの融点(231.9℃)以上の温度でリフロー処理を行って、錫単体のめっき層の最下層にFe−Sn合金層を形成した錫めっき層を製造できる。リフロー処理は省略した場合、錫単体のめっき層を製造できる。
皮膜は、上述した錫めっき層付き鋼板の錫めっき層側の表面上に配置される。
皮膜は、その成分として、Zr(ジルコニウム元素)およびSi(ケイ素元素)を含有する。さらに、皮膜は、錫めっき層付き鋼板の片面あたりのZr換算の付着量(以下、「Zr付着量」ともいう)が1.0〜40.0mg/m2であり、錫めっき層付き鋼板の片面あたりのSi換算の付着量(以下、「Si付着量」ともいう)が1.0mg/m2以上60.0mg/m2未満であり、皮膜のSiとZrとの質量比(Si/Zr)が0.10以上2.00未満である。
フッ素量は、XPS分析により皮膜の最表面におけるZrとFとの原子比を測定し、上記の蛍光X線による表面分析で測定したZr付着量を基に算出することができる。
装置: Varian製 FTS−3100
測定方法: ATR/GEプリズム
分解能: 4cm-1
積算回数: 32回
本発明の容器用鋼板は、上述した錫めっき層付き鋼板と、上述した皮膜との間に、P(リン元素)を含有するリン含有層を有するのが好ましく、具体的には、リン量(錫めっき層付き鋼板の片面あたりのP換算の付着量(P付着量))が、0.01mg/m2以上、5.00mg/m2未満であるリン含有層を有するのが好ましい。
このようなリン含有層を有することで、本発明の容器用鋼板における錫めっき層の酸化が抑制されて、耐変色性がより優れる。本発明において、リン含有層は上述した皮膜に覆われるため、PETフィルム等の樹脂に対する密着性が劣ることがなく、樹脂密着性も良好である。
そして、本発明の容器用鋼板の耐変色性がさらに優れるという理由から、リン含有層中のリン量は、0.1〜5.0mg/m2が好ましく、0.5〜3.0mg/m2がより好ましい。
なお、リン含有層中のリン量は、蛍光X線による表面分析により測定できる。
上述した本発明の容器用鋼板を製造する方法としては、特に限定されないが、後述する処理液(以下、「本発明の処理液」ともいう)中に錫めっき層付き鋼板を浸漬する、または、本発明の処理液中に浸漬した錫めっき層付き鋼板に陰極電解処理を施すことにより、上述した皮膜を形成する皮膜形成工程を少なくとも備える方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)であるのが好ましい。
以下、本発明の製造方法について説明を行い、この説明の中で、併せて本発明の処理液についても説明する。
皮膜形成工程は、錫めっき層付き鋼板の錫めっき層側の表面上に、上述した皮膜を形成する工程であって、後述する本発明の処理液中に錫めっき層付き鋼板を浸漬する(浸漬処理)、または、浸漬した鋼板に陰極電解処理を施す工程である。陰極電解処理は、浸漬処理よりも、より高速に、均一な皮膜を得ることができるという理由から好ましい。なお、陰極電解処理と陽極電解処理とを交互に行う交番電解を実施してもよい。
以下に、使用される本発明の処理液、陰極電解処理の条件などについて詳述する。
本発明の処理液は、Zr(ジルコニウム元素)およびSi(ケイ素元素)を含有する上記皮膜を形成するためのものであり、Zrの供給源として、オキシ酢酸ジルコニウムを含有し、Siの供給源として、コロイダルシリカを含有する。
本発明の処理液におけるオキシ酢酸ジルコニウムの含有量は、0.3〜15.0g/Lが好ましく、3.0〜9.0g/Lがより好ましい。
本発明に用いるコロイダルシリカの平均粒子径は、40nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、20nm以下がさらに好ましい。コロイダルシリカの平均粒子径がこの範囲であれば、皮膜中に析出するSi化合物の比表面積がより大きくなり、樹脂密着性がより優れる。
一方、コロイダルシリカの平均粒子径の下限値は特に限定されず、例えば、5nm以上が好ましい。
なお、平均粒子径はBET法(吸着法による比表面積から換算)により測定できる。また、電子顕微鏡写真から実測した平均値で代用することも可能である。
本発明の処理液におけるコロイダルシリカの含有量は、0.01〜5.00g/Lが好ましく、0.10〜4.00g/Lがより好ましい。
本発明の処理液が上記電導助剤を含むことにより、上記皮膜を形成できるラインスピードを高速化できる。すなわち、高速操業性に優れる。これは、電導助剤を含むことにより、処理液の電気伝導性すなわち液抵抗が低下・改善し、高速化に伴う高電流を通電することが容易になるためと考えられる。
上記電導助剤は、実質的には、上記陰イオンと上記陽イオンとがイオン結合した塩として、本発明の処理液に含まれ、その含有量としては、高速操業性がより優れるという理由から、0.1〜10.0g/Lが好ましく、0.5〜5.0g/Lがより好ましい。
本発明の処理液におけるTi化合物の含有量は、特に限定されないが、0.01〜4.00g/Lが好ましく、0.10〜2.00g/Lがより好ましい。
pHの調整には公知の酸成分(例えば、リン酸、硫酸)・アルカリ成分(例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア水)を使用することができる。
また、陰極電解処理の際の電気量密度は、0.20〜3.50C/dm2が好ましく、0.40〜2.00C/dm2がより好ましい。
なお、乾燥処理の際の温度としては、100℃以下が好ましい。上記範囲内であれば、皮膜の酸化を抑制することができ、皮膜組成の安定性が保たれる。なお、下限は特に限定されないが、通常室温程度である。
本発明の製造方法は、上述した皮膜形成工程の前に、以下に説明する前処理工程を備えていてもよい。
前処理工程は、アルカリ性水溶液(特に、炭酸ナトリウム水溶液)中で錫めっき層付き鋼板に陰極電解処理を施す工程である。
通常、錫めっき層の作製時にその表面は酸化されて、錫酸化物が形成される。該鋼板に対して、陰極電解処理を施すことにより、不要な錫酸化物を除去して、錫酸化物量を調整できる。
前処理工程の陰極電解処理の際に使用される溶液としては、アルカリ性水溶液(例えば、炭酸ナトリウム水溶液)が挙げられる。アルカリ性水溶液中のアルカリ成分(例えば、炭酸ナトリウム)の濃度は特に制限されないが、錫酸化物の除去がより効率的に進行する点から、5〜15g/Lが好ましく、8〜12g/Lがより好ましい。
陰極電解処理の際のアルカリ性水溶液の液温は特に制限されないが、40〜60℃が好ましい。陰極電解処理の電解条件(電流密度、電解時間)は、適宜調整される。なお、陰極電解処理の後に、必要に応じて、水洗処理を施してもよい。
このような前処理工程を経ることにより、錫めっき層付き鋼板の錫めっき層側の表面には、上述したリン含有層が形成される。その後、リン含有層が形成された錫めっき層付き鋼板は、上述した皮膜形成工程を経ることで、皮膜が形成される。
ここで、前処理工程に使用される溶液に含まれるP供給源としては、例えば、リン酸(オルトリン酸)、リン酸Na、リン酸水素ナトリウム、第1リン酸アルミニウム、第1リン酸マグネシウム、第1リン酸カルシウムなどのリン酸および/またはその塩が挙げられ、その含有量は、錫酸化物の除去がより効率的に進行する点、および所望のリン量を得るという点から、1.0〜20.0g/Lが好ましく、8.0〜12.0g/Lがより好ましい。
リン含有層を形成する前処理工程において、浸漬または陰極電解処理の際の液温は特に制限されないが40〜60℃が好ましい。また、陰極電解処理の電解条件は適宜調整されるが、例えば、陰極電解処理を実施する際の電解電流密度は、所望のリン量を得るという点から、0.05〜15.0A/dm2が好ましく、1.0〜12.0A/dm2がより好ましい。
このとき、陰極電解処理の通電時間は、特に制限されないが、0.1〜10.0秒が好ましく、0.3〜7.0秒がより好ましい。
短時間で所望のリン量を得るためには陰極電解処理を行うことが好ましい。
なお、浸漬または陰極電解処理の後に、必要に応じて、水洗処理を施してもよい。
以下の方法によって、錫めっき層付き鋼板を製造した。
まず、板厚0.22mmの鋼板(T4原板)を電解脱脂し、ワット浴を用いて第3表に示す片面当たりのNi付着量でニッケルめっき層を両面に形成後、10vol.%H2+90vol.%N2雰囲気中にて700℃で焼鈍してニッケルめっきを拡散浸透させることによりFe−Ni合金層(Ni含有層)(第3表にNi付着量を示す)を両面に形成した。
引き続き、上記表層にNi含有層を有する鋼板を、錫めっき浴を用い、第3表中に示す片面当たりのSn付着量でSn層を両面に形成後、Snの融点以上でリフロー処理を施し、錫めっき層をT4原板の両面に形成した。
浴温50℃、10g/Lの炭酸ナトリウム水溶液中または10g/Lのリン酸水溶液中に錫めっき層付き鋼板を浸漬し、第2表に示す条件にて、陰極電解処理を行った(前処理工程)。
その後、得られた鋼板を水洗し、pHを2.6に調整した第1表に示す組成の処理液(溶媒:水)を用い、第2表に示す浴温、電解条件(電流密度、通電時間、電気量密度)で陰極電解処理を施した。その後、得られた鋼板を水洗して、ブロアを用いて室温で乾燥を行い、皮膜を両面に形成した(皮膜形成工程)。
なお、第1表に示すコロイダルシリカとしては、日産化学工業社製のスノーテックスO(平均粒子径:15nm、固形分:20質量%)を用いた。
リン含有層のリン量(P量)、ならびに、皮膜のZr付着量、Si付着量およびTi付着量は、上述の方法により測定した。
また、皮膜について、赤外線吸収(IR)スペクトルを測定し、波数1550〜1800cm-1の範囲に、カルボニル基(C=O)に由来する吸収ピークが存在するかどうかを確認した。
作製した容器用鋼板の両面に、厚さ25μm、共重合比12mol%のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタラートフィルムをラミネートして、ラミネート鋼板を作製した。ラミネートは、210℃に加熱した鋼板とフィルムを一対のゴムロールで挟んでフィルムを鋼板に融着させ、ゴムロール通過後1sec以内に水冷して行った。このとき、鋼板の送り速度は40m/min、ゴムロールのニップ長は17mmであった。ここで、ニップ長とは、ゴムロールと鋼板が接する部分の搬送方向の長さのことである。そして、作製したラミネート鋼板について、次の樹脂密着性の評価を行った。
樹脂密着性の評価は、温度150℃、相対湿度100%のレトルト雰囲気における180°ピール試験により行った。180°ピール試験とは、図1(a)に示すようなフィルム2を残して鋼板1の一部3を切り取った試験片(サイズ:30mm×100mm)を用い、図1(b)に示すように、試験片の一端に重り4(100g)を付けてフィルム2側に180°折り返して30min間放置して行うフィルム剥離試験のことである。そして、図1(c)に示す剥離長5を測定し、次のように樹脂密着性を評価し、◎または○であれば樹脂密着性が良好であるとした。
◎:剥離長が10mm未満
○:剥離長が10mm以上15mm未満
△:剥離長が15mm以上50mm未満
×:剥離長が50mm以上
作製した容器用鋼板の両面に、樹脂密着性を評価したときと同様にしてラミネートし、ラミネート鋼板を作製した。市販のトマトジュースを入れたビーカーに、ラミネート鋼板の試験片(サイズ:50mm×100mm)を入れ、55℃の恒温槽に20日間放置する試験を行った。気相部(トマトジュースに浸かっていない部分)の変色を評価した。
試験前後のラミネート鋼板のL値、a値、b値をスガ試験機製カラーメーターSM-Tで測定し、試験前後の色差を以下のように計算して求めた。
ΔE=((L試験前−L試験後)2+(a試験前−a試験後)2+(b試験前−b試験後)2)0.5
その結果、次のように耐変色性を評価し、◎または○であれば耐変色性が良好であるとした。
◎:色差が2未満
○:色差が2以上、7未満
△:色差が7以上、15未満
×:色差が15以上
これに対して、皮膜中にコロイダルシリカに由来するSiが含まれない比較例1および2、ならびに、質量比(Si/Zr)が2.00以上である比較例3は、樹脂密着性が劣っていた。
2 フィルム
3 鋼板の切り取った部位
4 重り
5 剥離長
Claims (12)
- 鋼板および前記鋼板の表面の少なくとも一部を覆う錫めっき層を有する錫めっき層付き鋼板と、前記錫めっき層付き鋼板の前記錫めっき層側の表面上に配置された皮膜とを有する容器用鋼板であって、
前記皮膜が、ZrおよびSiを有し、
前記皮膜は、前記錫めっき層付き鋼板の片面あたりのZr換算の付着量が1.0〜40.0mg/m2であって、前記錫めっき層付き鋼板の片面あたりのSi換算の付着量が1.0mg/m2以上60.0mg/m2未満であり、
前記皮膜のSiとZrとの質量比(Si/Zr)が0.10以上2.00未満であり、
前記皮膜の赤外線吸収(IR)スペクトルにおいて、波数1550〜1800cm-1の範囲にカルボニル基(C=O)に由来する吸収ピークを示すことを特徴とする容器用鋼板。 - 前記皮膜が、さらにTiを有し、前記錫めっき層付き鋼板の片面あたりのTi換算の付着量が0.01〜8.00mg/m2である、請求項1に記載の容器用鋼板。
- 前記錫めっき層付き鋼板と前記皮膜との間に、リン量が0.01mg/m2以上5.00mg/m2未満であるリン含有層を有する、請求項1または2に記載の容器用鋼板。
- 前記錫めっき層付き鋼板が、表面にニッケル含有層を有する鋼板を用いて形成された、請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器用鋼板。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の容器用鋼板の製造に用いられる処理液であって、
オキシ酢酸ジルコニウムと、コロイダルシリカとを含有することを特徴とする、処理液。 - さらに、硝酸イオンである陰イオンと、カリウムイオン、アンモニウムイオンおよびナトリウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の陽イオンと、を含有する、請求項5に記載の処理液。
- 前記オキシ酢酸ジルコニウムの含有量が0.3〜15.0g/Lであり、前記コロイダルシリカの含有量が0.01〜5.00g/Lである、請求項5または6に記載の処理液。
- さらに、チタン化合物を含有する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の処理液。
- 前記チタン化合物の含有量が0.01〜10.00g/Lである、請求項8に記載の処理液。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の容器用鋼板を得る、容器用鋼板の製造方法であって、
請求項5〜9のいずれか1項に記載の処理液中に前記錫めっき層付き鋼板を浸漬する、または、浸漬した前記錫めっき層付き鋼板に陰極電解処理を施すことにより、前記皮膜を形成することを特徴とする容器用鋼板の製造方法。 - 請求項3または4に記載の容器用鋼板を得る、容器用鋼板の製造方法であって、
リン供給源を含む溶液中に前記錫めっき層付き鋼板を浸漬する、または、浸漬した前記錫めっき層付き鋼板に陰極電解処理を施すことにより、前記リン含有層を形成した後に、請求項5〜9のいずれか1項に記載の処理液中に、前記リン含有層が形成された前記錫めっき層付き鋼板を浸漬する、または、浸漬した前記リン含有層が形成された前記錫めっき層付き鋼板に陰極電解処理を施すことにより、前記皮膜を形成することを特徴とする容器用鋼板の製造方法。 - 前記陰極電解処理を施す際の電解電流密度が、0.05〜7.0A/dm2であり、前記陰極電解処理の通電時間が、0.1〜5秒である、請求項10または11に記載の容器用鋼板の製造方法。
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