JP2014087850A - 耐酸化性と切屑排出性にすぐれた表面被覆切削工具および表面被覆ドリル - Google Patents

耐酸化性と切屑排出性にすぐれた表面被覆切削工具および表面被覆ドリル Download PDF

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Abstract

【課題】湿式高速の深穴用ドリル加工に用いられた場合にも長期間に亘りすぐれた耐酸化性と切り屑排出性を維持する表面被覆ドリルを提供する。
【解決手段】超硬合金焼結体からなる工具基体上に、(AlCr1−x)N{x=0.3〜0.7}の成分系からなる平均層厚0.5〜7.0μmの硬質被覆層が存在する表面被覆工具において、前記硬質被覆層が、工具基体の切れ刃稜線部から0.5mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.6≦x≦0.7であり、かつ、前記工具基体の切れ刃稜線部から2.0mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.3≦x<0.6であることにより、前記の課題を解決する。
【選択図】図2

Description

本発明は、表面被覆切削工具に関し、さらに詳しくは、ドリル本体の先端部外周に切屑排出溝が形成されるとともに、この切屑排出溝のドリル回転方向を向く内周面の先端に切刃が設けられ、主として炭素鋼(S55C)よりなる加工物に断続切削加工またはドリル深穴加工をするのに用いられる長期間に亘りすぐれた耐酸化性と切屑排出性を維持する表面被覆ドリルに関するものである。
このようなドリルとしては、軸線を中心として該軸線回りにドリル回転方向に回転される概略円柱状のドリル本体の先端側が切刃部とされ、この切刃部の外周に一対の切屑排出溝が、軸線に関して互いに対称となるように、該切刃部の先端面、すなわちドリル本体の先端逃げ面から後端側に向かうに従い軸線回りにドリル回転方向の後方側に捩れる螺旋状に形成され、これらの切屑排出溝の内周面のうちドリル回転方向を向く部分の先端側の先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成された、いわゆる2枚刃のソリッドドリルが知られている。従って、このようなソリッドドリルでは、切屑排出溝内周面のドリル回転方向を向く部分の先端側がこの切刃のすくい面となり、切刃によって生成された切屑は、このすくい面から切屑排出溝の内周面を摺接しつつ、切屑排出溝の捩れによって後端側に送り出されて排出されることとなる。このようなドリルでは、ドリル本体の耐酸化性および切り屑排出性の向上のために種々の方法が採用されている。
例えば、特許文献1においては、基体表面に、TiとAlの複合窒化物層、TiとAlの複合炭窒化物層、TiとAlの複合炭化物層の内の1種の単層または2種以上の複数層からなるTiとAlの複合化合物層を被覆してなる表面被覆切削工具において、基体表面に被覆されたTiAl複合化物層のTi/Alの比が基体表面方向に変化しておりかつエッジ部においてTi/Alの比が最も高くなっていることにより、すぐれた切削性能を長期に亘って発揮することができる表面被覆切削工具が開示されている。
また、特許文献2においては、TiAl化合物膜形成工程中に真空容器と基体間に印加する基材電圧を−20V〜−300Vの範囲で連続的および/または段階的に降下させたのち上昇させることにより、成膜されたTiAl化合物膜被覆部材の耐酸化性が向上し密着性が高くなるため、耐摩耗性および耐欠損性にすぐれた表面被覆切削工具が得られることが開示されている。
また、特許文献3においては、超硬基体の表面に、AlとCrの複合酸窒化物層からなる硬質被覆層を1〜15μmの平均層厚で物理蒸着してなり、層厚方向に沿ってAlおよび酸素の最高含有点とCrおよび窒素の最高含有点とが所定間隔において交互に繰り返し存在し、前記両最高含有点間でAlと酸素およびCrと窒素の含有割合がそれぞれ連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、さらに、前記Alおよび酸素の最高含有点が特定組成式を有し、前記Crおよび窒素の最高含有点の間隔が、0.01〜0.1μmである硬質被覆層を構成する表面被覆超硬合金製切削工具が開示されている。
特開平8−267306号公報 特開2003−94208号公報 特開2004−344990号公報
近年の切削加工装置の自動化はめざましく、加えて切削加工に対する省力化、省エネ化、低コスト化さらに効率化の要求も強く、これに伴い、高送り、高切り込みなどより高効率の切削加工が要求される傾向にあるが、前記従来表面被覆切削工具においては、各種の鋼や鋳鉄を通常条件下で切削加工した場合に特段の問題は生じないが、耐酸化性と耐摩耗性が必要とされるとともに切屑がドリルの切屑排出溝に詰まり易い湿式高速の深穴用ドリル加工に用いた場合には、切屑排出溝に切屑が詰まり易く、これが原因で、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
特に、前記特許文献1乃至3に開示された従来技術における硬質被覆層の蒸着形成中のバイアス制御による組成制御では、バイアス効果の大きいエッジ稜線の近傍部において、原子量の小さいAlが選択的に除去されてしまい、原子量の大きいTiやCrを集中分布させることは出来ても、Alをエッジ部に集中分布させることは技術的に困難であった。
そこで、本発明者らは、前述のような観点から、耐酸化性にすぐれた表面被覆切削工具を提供すべく、さらには、湿式高速の深穴用ドリル加工に用いられた場合にも長期間に亘りすぐれた耐酸化性と切り屑排出性を維持する表面被覆ドリルを提供すべく、表面被覆切削工具の工具基体上に(AlCr1−x)Nの成分系からなる平均層厚0.5〜7.0μmの硬質被覆層が存在する表面被覆切削工具において、エッジ部にAlを集中分布させることにより耐酸化性および切り屑排出性を向上させる点に着目し鋭意研究を行った結果、次のような知見を得た。
超硬合金焼結体からなる工具基体上に、硬質被覆層が存在する表面被覆工具において、
(a)組成が(AlCr1−x)N{x=0.3〜0.7}の成分系からなり、かつ、平均層厚が0.5〜7.0μmであって、
(b)硬質被覆層が、工具基体の切れ刃稜線部から0.5mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.6≦x≦0.7であり、かつ、
(c)工具基体の切れ刃稜線部から2.0mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.3≦x<0.6であることにより、
前記表面被覆切削工具の耐酸化性と切り屑排出性を著しく向上させることができることを見出した。
さらに、前述したような硬質被覆層を再現性よく形成すべく、その形成方法について鋭意研究したところ、図1の概略説明図に示される物理蒸着装置の1種である圧力勾配型Arプラズマガンを利用したイオンプレーティング装置にWC基超硬合金からなる工具基体を装着し、
工具基体温度:400〜430℃
プラズマガン放電電力:3kW、
放電ガス流量:アルゴン(Ar)ガス 25〜40sccm、
工具基体に印加する直流バイアス電圧:−400V、
という条件でボンバード処理を行った後、蒸着ステップとして、
工具基体温度:400〜430℃
蒸発源1:金属Cr、
蒸発源1に対するプラズマガン放電電力:8〜11W、
蒸発源2:金属Al、
蒸発源2に対するプラズマガン放電電力:8〜11kW、
反応ガス流量:窒素(N)ガス 100sccm、
放電ガス流量:アルゴン(Ar)ガス 35sccm、
工具基体に印加する直流バイアス電圧:−10V、
蒸着時間:30〜240min、
という条件のもと特定の硬質被覆層の形成を行い、更に、ごく表層へのイオン照射処理ステップとして、
工具基体温度:400〜430℃
蒸発源:金属Al、
プラズマガン放電電力:8kW、
放電ガス流量:アルゴン(Ar)ガス 50sccm、
工具基体に印加する直流バイアス電圧:−0.8〜−2kV、
蒸着時間:20〜40min、
という特定の条件下で、プラズマ中で高バイアスによりAlイオン表面処理を行う、いわゆるプラズマ浸漬イオン注入法を行うことにより、工具基体のエッジ部にAlを再現性よく集中分布させることが出来るということを見出した。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 超硬合金焼結体からなる工具基体上に、硬質被覆層が存在する表面被覆工具において、
(a)前記硬質被覆層が、組成式:(AlCr1−x)N{x=0.3〜0.7}の成分系からなり、かつ、平均層厚0.5〜7.0μmであって、
(b)前記硬質被覆層が、工具基体の切れ刃稜線部から0.5mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.6≦x≦0.7であり、かつ、
(c)前記工具基体の切れ刃稜線部から2.0mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.3≦x<0.6である、
ことを特徴とする表面被覆工具。
(2) 前記硬質被覆層の組成比xの値が、硬質被覆層の最表面から深さ方向に沿って減少していることを特徴とする(1)に記載の表面被覆工具。
(3) 前記工具基体がドリル基体であり、ドリル先端から10mmの位置において、フルート溝の断面の内周に沿って、前記硬質被覆層の組成比xの値を測定したとき、xが0.6未満となる線分領域が、マージンとフルート溝部との稜線部を除き、50線分%以上の長さに亘って連続して存在することを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆ドリル。
(4) 前記超硬合金焼結体からなる工具基体上に、(AlCr1−x)N{x=0.3〜0.6}の成分系からなる平均層厚0.5〜7.0μmの硬質被覆層を蒸着形成した後、前記工具基体近傍に、電子密度が1016〜1018−3であるAlイオン、Arイオンおよび電子からなる高密度プラズマを形成した状態で、0.8kV以上の負バイアス電圧によりAlイオンにより前記硬質被覆層表面を処理することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の表面被覆工具または表面被覆ドリルの製造方法。」
に特徴を有するものである。
本発明について、以下に説明する。
本発明の表面被覆工具は、超硬合金焼結体からなる工具基体上に、(AlCr1−x)N{x=0.3〜0.7}の成分系からなる平均層厚0.5〜7.0μmの硬質被覆層を形成する。ここで、硬質被膜層の平均層厚が0.5μm未満では、所望の耐摩耗性が維持できず、一方、7.0μmを超えると硬質被覆層のチッピングなどが生じる。したがって、硬質被覆層の平均層厚は0.5〜7.0μmと定めた。
また、硬質被覆層の組成(AlCr1−x)Nにおいて、Alの含有割合xの値が、0.3未満ではAlの耐摩耗性が十分でなく、0.7を超えると六方晶組織へと変化するためNaCl型結晶が持つ強度を維持できない。したがって、Alの含有割合xの値は0.3〜0.7と定めた。
また、硬質被覆層が、切れ刃近傍、すなわち、工具基体の切れ刃稜線部から0.5mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.6未満では耐酸化性が不足し、0.7を超えると脆性が高くなりすぎ、硬質被覆層のチッピングにより寿命の原因となる。そこで、工具基体の切れ刃稜線部から0.5mmの位置において測定した最表面の組成比xの値を、0.6≦x≦0.7と定めた。
さらに、硬質被覆層が、切れ刃から離れた位置、すなわち、工具基体の切れ刃稜線部から2.0mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.3未満では耐酸化性が不足しすぎ、0.6を超えると脆性が高くなりすぎ、硬質被覆層のチッピングにより寿命の原因となる。そこで、工具基体の切れ刃稜線部から2.0mmの位置において測定した最表面の組成比xの値を、0.3≦x<0.6と定めた。
また、硬質被覆層の組成比xの値が、硬質被覆層の最表面から深さ方向に沿って減少させることによって、硬質被覆層の残留圧縮応力が最表面から工具基体表面に向けて連続的に高くなるため工具基体と硬質被覆層との間で剥離しにくくなる。また、最表面から工具基体表面に向けて残留圧縮応力が高くなるため、工具基体近傍の見かけ上の硬さが硬くなり、耐摩耗性が向上する。耐欠損性についても残留圧縮応力が高くなるため向上する。
さらに、前述の表面被覆工具において工具基体をドリル基体として、表面被覆ドリルとした場合に、フルート溝の断面の内周に沿って、硬質被覆層の組成比xの値を測定したとき、xが0.6以下となる線分領域が、切れ刃稜線部を除き、50線分%以上の長さに亘って連続して存在することによって、CrとAlが同量程度からCrリッチへと変化する硬質被覆層がフルート溝の断面内周に沿って連続して形成されることになるため、切削抵抗を小さく出来、フルート溝の内周面に切屑が衝突した際の衝撃を吸収して円滑に切屑をフルート溝の内周に沿って排出できるため、切り屑排出効果を高めることが出来る。
さらに、前述した表面被覆工具を再現性よく高効率で製造すべく、鋭意研究したところ、超硬合金焼結体からなる工具基体上に、(AlCr1−x)N{x=0.3〜0.6}の成分系からなる平均層厚0.5〜7.0μmの硬質被覆層を蒸着形成した後、工具基体近傍に、電子密度が1016〜1018−3であるAlイオン、Arイオンおよび電子からなる高密度プラズマを形成した状態で、0.8kV以上の負バイアス電圧によりAlイオンを硬質被覆層に注入するという、いわゆる、プラズマ浸漬イオン注入法によるエッジ効果を利用することにより、再現性よく、しかも高効率的で製造することが出来ることを見出した。ここで、工具基体上に蒸着形成する(AlCr1−x)Nの成分系からなる硬質被覆層の組成比xを0.3〜0.6とする理由は、蒸着工程に続くイオン注入工程で注入されるAlの量を考慮して、最終的な組成比を0.3〜0.7とするために必要なAlの含有量を算出したところ蒸着工程で形成する硬質被覆層の組成比xを0.3〜0.6とすることにより、イオン注入後の最終的な硬質被覆層の組成比xを0.3〜0.7とすることが出来ることを見出した。
本発明の表面被覆工具は、超硬合金焼結体からなる工具基体上に、硬質被覆層が存在する表面被覆工具において、硬質被覆層が、組成式:(AlCr1−x)N{x=0.3〜0.7}の成分系からなり、かつ、平均層厚0.5〜7.0μmであって、工具基体の切れ刃稜線部から0.5mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.6≦x≦0.7であり、かつ、工具基体の切れ刃稜線部から2.0mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.3≦x<0.6であることにより、長期に亘ってすぐれた耐酸化性と切り屑排出性を発揮するものである。
本発明の表面被覆工具の硬質被覆層(組成制御層)を蒸着形成するための圧力勾配型Arプラズマガンを利用したイオンプレーティング装置の概略図を示す。 本発明の表面被覆工具の硬質被覆層(組成制御層)の断面の組成分布を示す。 比較表面被覆工具を蒸着形成するためのアークイオンプレーティング装置の概略図を表す。
つぎに、本発明の表面被覆ドリルおよび表面被覆エンドミルを実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、平均粒径0.8μmのWC粉末、同2.3μmのCr粉末、同1.5μmのVC粉末および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、工具基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の丸棒焼結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さが10mm×80mmの寸法、並びにねじれ角30度の2枚刃形状をもったWC基超硬合金製のドリル基体D−1〜D−4をそれぞれ製造した。同様に前記の丸棒焼結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さが6mm×80mmの寸法、並びにねじれ角30度、先端R3mmの2枚刃形状をもったWC基超硬合金製のエンドミル基体E−1〜E−4をそれぞれ製造した。
ついで、これらのドリル基体D−1〜D−4の切刃にホーニングを施し、ドリル基体D−1〜D−4、エンドミル基体E−1〜E−4(以下、工具基体という)をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1の概略図に示される物理蒸着装置の1種である圧力勾配型Arプラズマガンを利用したイオンプレーティング装置に装着し、工具基体温度を400〜430℃とした状態で、プラズマガン放電電力3kW、放電ガスとして、Arガスを25〜40sccmの流量で装置内に流入し、工具基体に直流バイアス電圧を−400V印加した状態で、工具基体にボンバード処理を施した。
ついで、
工具基体温度:400〜430℃
蒸発源1:金属Cr、
蒸発源1に対するプラズマガン放電電力:8〜11kW、
蒸発源2:金属Al、
蒸発源2に対するプラズマガン放電電力:8〜11kW、
反応ガス流入口の反応ガス流量:窒素(N)ガス 100sccm
プラズマガン用放電ガス:アルゴン(Ar)ガス 35sccm、
工具基体に印加する直流バイアス電圧:−10V、
蒸着時間:30〜240min
という表2に示される条件のもと硬質被覆層の形成を行い、更に、
工具基体温度:400〜430℃
蒸発源:金属Al、
蒸発源に対するプラズマガン放電電力Al:8kW、
プラズマガン用放電ガス:アルゴン(Ar)ガス 50sccm、
工具基体に印加する直流バイアス電圧:−0.8〜−1.2kV、
蒸着時間:20〜40min
という表2に示される条件のもとプラズマ浸漬イオン注入処理を行うことにより、表3、4に示される組成分布を有する硬質被覆層(組成制御層)をドリル基体D−1〜D−4、エンドミル基体E−1〜E−4の表面に蒸着形成して、本発明表面被覆ドリル1〜15および本発明表面被覆エンドミル1〜15を製造した。参考として、表2に各形成条件における基体近傍で計測した電子密度を示す。1016−3未満では、荷電粒子の数、ひいてはAlイオンの空間濃度が低すぎ、刃先に対して所望のAl量を導入することが出来ず、1018−3を超えるとAlイオンの空間濃度が高すぎ、Al量の制御が出来なくなるため、基体近傍の電子密度は1016〜1018−3とすることが好ましい。なお、電子密度の測定には、静電プローブを用いる方法やレーザー光のトムソン散乱を利用する方法などがあり、対象のプラズマに対して最適な手法を適応して電子密度の桁数を見積もることは、プラズマ成膜に従事する技術者であれば当然実施できるものである。
また、比較の目的で、前記ドリル基体D−1〜D−4、エンドミル基体E−1〜E−4の表面に、ホーニングを施し、ドリル基体D−1〜D−4、エンドミル基体E−1〜E−4をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図3に示される、Al−Cr合金をターゲットとして取り付けたアークイオンプレーティング装置内に装着し、工具基体温度を400〜430℃とした状態で、ターゲットに対するアーク放電電流を130A、放電ガスとして、Arガスを25〜40sccmの流量で装置内に流入し、工具基体に直流バイアス電圧を−400V印加した状態で、工具基体にボンバード処理を施した。
ついで、
工具基体温度:410〜430℃、
ターゲット:Al−Cr合金
ターゲットに対するアーク放電電流:130A、
チャンバー内のガス圧力:6Pa、
窒素(N)ガス割合:100%、
工具基体に印加する直流バイアス電圧:−300V、
という表5に示される条件のもと表6、7に示される組成を有する従来硬質被覆層をドリル基体D−1〜D−4、エンドミル基体E−1〜E−4の表面に蒸着形成して、比較表面被覆ドリル1〜15および比較表面被覆エンドミル1〜15をそれぞれ製造した。
つぎに、前記本発明表面被覆ドリル1〜15および比較表面被覆ドリル1〜15について、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:80mmの、JIS・SUS304(HB180)の板材、
切削速度: 80m/min.、
送り: 0.30mm/rev.、
穴深さ: 50mm、
の条件での炭素鋼の乾式高送り深穴あけ切削加工試験(通常の、加工穴深さ5Dの切削速度および送りは、0.20mm/rev.)、
を行い、10穴ごとに先端切刃面の逃げ面摩耗幅を測定し、その先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまで、若しくは工具の欠損等が原因で以降の切削ができなくなるまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表3、表6にそれぞれ示した。
つぎに、前記本発明表面被覆エンドミル1〜15および比較表面被覆エンドミル1〜15について、
被削材−平面寸法:200mm×250mm、厚さ:100mmの、JIS・S55C(HB250)の板材、
工具回転数:20000回転
テーブル送り: 0.33mm/rev.、
送り切り込み量:1.0mm
深さ切り込み量:0.3mm
の条件での炭素鋼の乾式高送りエンドミル切削加工試験(通常の工具回転数およびテーブル送りは0.25mm/rev.)を行い、1面、すなわち50mの切削長ごとに、先端切刃面の逃げ面摩耗幅を測定し、その先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.2mmに至るまで、若しくは工具の欠損等が原因でそれ以降の切削が出来なくなるまでの切削長を測定した。この測定結果を表4、表7にそれぞれ示した。
この結果得られた本発明表面被覆ドリル1〜15、本発明表面被覆エンドミル1〜15硬質被覆層を構成する平均層厚、さらに、比較表面被覆ドリル1〜15、比較表面被覆エンドミル1〜15の硬質被覆層を構成する従来層の平均層厚を、走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。
さらに、本発明表面被覆ドリル1〜15、比較表面被覆ドリル1〜15、本発明表面被覆エンドミル1〜15、比較表面被覆エンドミル1〜15の、工具先端から1mmの位置におけるフルート溝を構成する硬質被覆層のうち、切れ刃稜線から0.5mmの位置における組成と、同じく切れ刃稜線部から2.0mmの位置における組成を、オージェ電子分光分析により測定し、組成比xの値を決定した。さらに、各位置において深さ方向へのエッチング処理を行いながら、断続的に組成分析を行い、深さ方向に沿った組成xの値をそれぞれ決定し、表3、4、6、7に示した。さらに、本発明表面被覆ドリル1〜15に対して、ドリル先端から10mmの位置に存在するフルート溝において、フルート溝の内周部のうち、フルート溝とマージン部の稜線からフルート溝側へ2mm離れた線領域の長さを20点に分割し、各点において前記硬質被覆層の組成比xの値をそれぞれ測定し、それらの結果から、組成比xの値が0.6を下回る点の数を全測定点である20点で除した値(線分%)を、「フルート溝の断面の内周に沿って、前記硬質被覆層の組成比xが0.6未満となる線分領域が連続して存在する割合(線分%)」とし、表3、6に示した。
表2、3、4に示される結果から、本発明表面被覆ドリルおよび本発明表面被覆エンドミルは、最表面に(AlCr1−x)Nの成分系からなる平均層厚が0.5〜7.0μmの硬質被覆層が存在し、硬質被覆層が、工具基体の切れ刃稜線部から0.5mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.6≦x≦0.7であり、かつ、工具基体の切れ刃稜線部から2.0mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.3≦x<0.6であることによって、すぐれた耐酸化性と切り屑排出性を発揮し、その結果、長期に亘ってすぐれた切削性能を示すことが明らかである。さらに、本発明表面被覆ドリルのうち、フルート溝の断面の内周に沿って、前記硬質被覆層の組成比xの値が0.6以下となる線分領域が、切れ刃稜線部を除き、50線分%以上の長さに亘って連続して存在する、本発明被覆ドリル10〜15は一段とすぐれた切り屑排出性と耐摩耗性を発揮しており長い工具寿命を示していることが明らかである。
これに対して、表5、6,7に示される結果から、比較表面被覆ドリルおよび比較表面被覆エンドミルは、硬質被覆層が、工具基体の切れ刃稜線部から0.5mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.6≦x≦0.7でないか、および/または、工具基体の切れ刃稜線部から2.0mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.3≦x<0.6でないので、耐酸化性および切り屑排出性の点で十分でなく、摩耗進行や切り屑詰まり等の発生等により、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
前述のように、本発明の表面被覆切削工具は、超硬合金焼結体からなる工具基体上に、(AlCr1−x)N{x=0.3〜0.7}の成分系からなる平均層厚0.5〜7.0μmの硬質被覆層が存在し、前記硬質被覆層が、工具基体の切れ刃稜線部から0.5mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.6≦x≦0.7であり、かつ、(b)前記工具基体の切れ刃稜線部から2.0mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.3≦x<0.6であることにより、すぐれた耐酸化性と切り屑排出性を備えており、その結果、長期に亘ってすぐれた切削性能を維持するものである。

Claims (4)

  1. 超硬合金焼結体からなる工具基体上に、硬質被覆層が存在する表面被覆工具において、
    (a)前記硬質被覆層が、組成式:(AlCr1−x)N{x=0.3〜0.7}の成分系からなり、かつ、平均層厚が0.5〜7.0μmであって、
    (b)前記硬質被覆層が、工具基体の切れ刃稜線部から0.5mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.6≦x≦0.7であり、かつ、
    (c)前記工具基体の切れ刃稜線部から2.0mmの位置において測定した最表面の組成比xの値が、0.3≦x<0.6である、
    ことを特徴とする表面被覆工具。
  2. 前記硬質被覆層の組成比xの値が、硬質被覆層の最表面から深さ方向に沿って減少していることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆工具。
  3. 前記工具基体がドリル基体であり、ドリル先端から10mmの位置において、フルート溝の断面の内周に沿って、前記硬質被覆層の組成比xの値を測定したとき、xが0.6未満となる線分領域が、マージンとフルート溝部との稜線部を除き、50線分%以上の長さに亘って連続して存在することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面被覆ドリル。
  4. 前記超硬合金焼結体からなる工具基体の上に、(AlCr1−x)N{x=0.3〜0.6}の成分系からなる平均層厚0.5〜7.0μmの硬質被覆層を蒸着形成した後、前記工具基体近傍に、電子密度が1016〜1017−3であるAlイオン、Arイオンおよび電子からなる高密度プラズマを形成した状態で、0.8kV以上の負バイアス電圧を印加してAlイオンにより前記硬質被覆層の表面を処理することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の表面被覆工具または表面被覆ドリルの製造方法。
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