JP2014084904A - 歯車構造体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持部材は、円筒状の支持側嵌合面を備え、歯車部材は、円筒状の歯車側嵌合面と、軸第一方向側において支持部材側に突出する当接部と、軸第二方向側において支持部材側に突出するように変形されたかしめ部と、を備え、かしめ部の硬度は、支持部材の硬度より高い歯車構造体。
【選択図】図4
Description
特許文献1の技術では、歯車部材と、歯車部材を支持する支持部材とは、ボルトにより締結されて一体的に回転するように構成されている。
また、ボルトを用いて締結される場合は、周方向の複数の位置(例えば、8箇所)で締結されるため、ボルト分だけ歯車構造体の重量が増加すると共に、コストが増加する課題があった。
また、上記の特徴構成によれば、かしめ部と支持部材との接触面で、フレッティング摩擦が生じたとしても、かしめ部の硬度は支持部材の硬度より高くされているので、硬度の低い支持部材側の磨耗を多くし、硬度の高いかしめ部側の磨耗を抑制することができる。よって、かしめ部の磨耗により、歯車部材が支持部材から軸第一方向側に抜け落ちることを防止できる。
特に、上記の製造方法によれば、かしめ部を変形させる前に、歯車部材を支持部材に嵌合させ、その後、かしめ部を支持部材側に変形させることで、軸方向両側からかしめ部及び当接部により支持部材を挟みこむことができる。
その結果、歯面同士の摩擦や荷重伝達のため、歯部の硬度を高くし、変形し難くすることができる。一方、かしめ部の硬度は、歯部の硬度より低くされるので、支持部材側に突出するように変形させ易くすることができる。
その結果、歯面同士の摩擦や荷重伝達のため、歯部の硬度を高くし、変形し難くすることができる。一方、かしめ部の硬度は、歯部の硬度より低くされるので、支持部材側に突出するように変形させ易くすることができる。
図2は、本実施形態に係る歯車構造体1の断面図である。この図に示すように、歯車構造体1は、歯車部材10と、歯車部材10を支持する支持部材11とを備えており、歯車部材10が支持部材11に嵌合されて一体的に回転する構成となっている。
支持部材11は、円筒状の支持側嵌合面12を備えている。
歯車部材10は、歯面を構成する歯部16と、支持側嵌合面12に嵌合する円筒状の歯車側嵌合面13と、を備えている。
歯車部材10は、歯車側嵌合面13に対して軸方向一方側である軸第一方向X1側において支持部材11側に突出し、支持部材11の軸第一方向X1側の面に当接する当接部14を備えている。また、歯車部材10は、歯車側嵌合面13に対して軸方向他方側である軸第二方向X2側において、歯車側嵌合面13に対して支持部材11側に突出し、支持部材11の軸第二方向X2側の面に当接するかしめ部15を備えている。ここで、かしめ部15の硬度は、支持部材11の硬度より高くされている。
支持部材を用意する工程#01では、円筒状の支持側嵌合面12を備えた支持部材11を用意する。
歯車部材を用意する工程#02では、歯面を構成する歯部16と、支持側嵌合面12に嵌合する円筒状の歯車側嵌合面13と、歯車側嵌合面13に対して軸第一方向X1側において支持部材11側に突出した当接部14と、歯車側嵌合面13に対して軸第二方向X2側に備えられ、支持部材11の硬度より高い硬度を有するかしめ部15と、を備えた歯車部材10を用意する。
嵌合工程#03では、歯車部材10の歯車側嵌合面13を、支持部材11の支持側嵌合面12に、軸第一方向X1側から嵌合させて、歯車部材10の当接部14を支持部材11の軸第一方向X1側の面に当接させる。
かしめ工程#04では、かしめ部15を、歯車側嵌合面13に対して支持部材11側に突出するように変形させて、支持部材11の軸第二方向X2側の面に当接させる。
本実施形態では、歯車部材10は、図2に示すように、傘歯車式差動歯車装置DFの傘歯車の保持器CA(以下、傘歯車保持器CAと称す)に固定されるリングギヤRGとされている。そして、支持部材11は、傘歯車保持器CAと一体回転するように構成されている。
本実施形態では、傘歯車式差動歯車装置DFのリングギヤRGは、カウンタギヤ機構CGを介して、変速機構TMの出力ギヤOに駆動連結されており、変速機構TMの入力軸Iは、トルクコンバータTCを介して内燃機関ICの出力軸ICOに駆動連結されている。
内燃機関ICは、燃料の燃焼により駆動される機関であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの公知の各種内燃機関を用いることができる。本例では、内燃機関ICのクランクシャフト等の出力軸ICOが、トルクコンバータTCを介して入力軸Iに駆動連結されている。
トルクコンバータTCは、駆動力源としての内燃機関ICの出力軸ICOの回転駆動力を、内部に充填された作動油を介して、入力軸Iに伝達する装置である。このトルクコンバータTCは、出力軸ICOに駆動連結されたポンプインペラと、入力軸Iに駆動連結されたタービンランナと、これらの間に設けられ、ワンウェイクラッチを備えたステータと、を備えている。そして、トルクコンバータTCは、内部に充填された作動油を介して、駆動側のポンプインペラと従動側のタービンランナとの間で駆動力の伝達を行う。トルクコンバータTCは、ロックアップクラッチを備えている。
トルクコンバータのタービンランナに駆動連結された入力軸Iには、変速機構TMが駆動連結されている。本実施形態では、変速機構TMは、変速比の異なる複数の変速段を有する有段の自動変速機構とされている。変速機構TMは、これら複数の変速段を形成するため、遊星歯車機構等の歯車機構と複数の係合装置とを備えている。変速機構TMは、各変速段の変速比で、入力軸Iの回転速度を変速するとともにトルクを変換して、出力ギヤOへ伝達する。複数の係合要素の係合及び解放が制御されて、遊星歯車機構等の各回転要素の回転状態が切り替えられ、形成される変速段が切り替えられる。
カウンタギヤ機構CGは、カウンタ軸CG3と、第一カウンタギヤCG1と、当該第一カウンタギヤCG1より小径の第二カウンタギヤCG2と、を有して構成されている。第一カウンタギヤCG1は出力ギヤOに噛み合っている。第二カウンタギヤCG2は、傘歯車式差動歯車装置DFのリングギヤRGに噛み合っている。カウンタギヤ機構CGは、出力ギヤOの回転方向を逆転させると共に、出力ギヤOに伝達されるトルクを傘歯車式差動歯車装置DFのリングギヤRGへ伝達させる。
傘歯車式差動歯車装置DFは、互いに噛み合う傘歯車であるピニオンギヤPG及びサイドギヤSGを用いた差動歯車装置とされている。傘歯車式差動歯車装置DFは、第二カウンタギヤCG2からリングギヤRGに伝達された回転及びトルクを、傘歯車保持器CAに伝達し、傘歯車保持器CAに伝達された回転及びトルクを、傘歯車保持器CAが保持するピニオンギヤPG(PG1、PG2)を介して、左右2つのサイドギヤSG1、SG2に分配して伝達する。
傘歯車保持器CA内には、左右2つの車軸AX1、AX2のそれぞれと一体回転する一対のサイドギヤSG1、SG2と、当該2つのサイドギヤSG1、SG2の双方に噛み合うと共に傘歯車保持器CAと共に回転する一対のピニオンギヤPG1、PG2と、が収容されている。
本実施形態では、図2に示すように、傘歯車式差動歯車装置DFは、トルクコンバータTC、変速機構TM、及びカウンタギヤ機構CGなどを収容する駆動装置収容ケースCs内に収容されている。
傘歯車保持器CAは、傘歯車であるピニオンギヤPG1、PG2及びサイドギヤSG1、SG2を内側に保持するためにケース状に形成されたケース状部20を備えている。
ピニオン回転軸PSは、回転軸心Xoに直交交差する向きにケース状部20を貫通して、ケース状部20と一体回転するように固定されている。第一ピニオンギヤPG1及び第二ピニオンギヤPG2は、ケース状部20の内側で、径方向に互いに対向する位置に配置され、ピニオン回転軸PSは、これらピニオンギヤPG1、PG2の中心部を貫通して、これらをピニオン回転軸PS周りに回転可能に支持している。
第一サイドギヤSG1及び第二サイドギヤSG2は、ケース状部20の内側で、ピニオンギヤPG1、PG2を挟んで、軸方向Xに互いに対向する位置に配置される。
第一車軸AX1は、軸第一方向X1側から第一突出部21の径方向内側を貫通して、第一サイドギヤSG1の内周面にスプライン嵌合されている。第二車軸AX2は、軸第二方向X2側から第二突出部22の径方向内側を貫通して、第二サイドギヤSG2の内周面にスプライン嵌合されている。
また、第一突出部21の内周面は、第一車軸AX1の外周面を回転可能に支持している。第二突出部22の内周面は、第二車軸AX2の外周面を回転可能に支持している。
本実施形態では、歯車部材10は、傘歯車式差動歯車装置DFの傘歯車保持器CAに固定されるリングギヤRGとされている。支持部材11は、傘歯車保持器CAと一体的に回転するように構成されている。
本実施形態では、支持部材11は、少なくとも径方向に延在している円環状の部材とされている。図2に示す例では、支持部材11は、ケース状部20における軸第二方向X2の径方向外側端部から軸第二方向X2及び径方向外側に延出し、ケース状部20と一体形成されている。なお、支持部材11は、ケース状部20と別体とされ、支持部材11の径方向内側の端部が、ケース状部20にボルト等の締結部材により、固定されるように構成されてもよい。この場合は、支持部材11の径方向内側の端部にボルト等の締結部材が配置されるので、締結部材を油面より上方に配置すれば、当該締結部材によって、支持部材11の下部が浸かるように貯蔵された油を掻き混ぜることを抑制できる。
歯車部材10は、リングギヤRGの歯面を形成する歯部16と、支持側嵌合面12に嵌合する円筒状の歯車側嵌合面13と、を備えている。本実施形態では、図2から図4に示すように、歯車部材10は、円筒状の部材とされており、歯部16は、歯車部材10における歯車側嵌合面13とは反対側の面に設けられている。ここでは、歯部16は、歯車部材10の外周面に形成されており、歯車側嵌合面13は、歯車部材10の内周面に形成されている。
歯車部材10は、歯車側嵌合面13に対して軸第一方向X1側において支持部材11側に突出し、支持部材11の軸第一方向X1側の面に当接する当接部14を備えている。本実施形態では、当接部14は、歯車部材10の軸第一方向X1側の端部において、歯車側嵌合面13に対して支持部材11側である径方向内側に突出した円筒状部とされている。そして、このような円筒状の当接部14の軸第二方向X2側の面が、円筒状の支持部材11(嵌合面支持部17)の軸第一方向X1側の面に当接している。
歯車部材10は、歯車側嵌合面13に対して軸第二方向X2側において、歯車側嵌合面13に対して支持部材11側に突出し、支持部材11の軸第二方向X2側の面に当接するかしめ部15を備えている。本実施形態では、図2、図4に示すように、かしめ部15は、歯車部材10の軸第二方向X2側の端部において、歯車側嵌合面13に対して支持部材11側である径方向内側に突出している円環状の部材とされている。かしめ部15は、かしめ工程#04により変形される前は、図3に示すように、歯車側嵌合面13に対して支持部材11側(径方向内側)には突出しておらず、歯車部材10の軸第二方向X2側における径方向内側の端部において、軸第二方向X2側に突出した円環状の部材とされている。なお、図3の例では、変形前のかしめ部15の支持部材11側(径方向内側)の周面は、歯車側嵌合面13よりも支持部材11から離れる側(径方向外側)に位置している。これにより、歯車部材10を、支持部材11に軸第一方向X1側から嵌め込みやすくなっている。
かしめ部15が当接する支持部材11(嵌合面支持部17)の面は、径方向外側に向うに従って、軸第一方向X1に向かう傾斜面とされており、かしめ部15の変形量を小さくできるようにされている。
本実施形態では、嵌合工程#03において、歯車部材10の歯車側嵌合面13と支持部材11の支持側嵌合面12とは、焼き嵌め又は圧入により嵌合されるように構成されている。
焼き嵌めでは、支持側嵌合面12より直径が小さくされた歯車側嵌合面13を加熱して、歯車側嵌合面13の直径を膨張させ、支持側嵌合面12の直径より大きくさせる。この状態で、歯車部材10を支持部材11に嵌め込んだ後、冷却することにより、歯車側嵌合面13を支持側嵌合面12に密着させる。
圧入では、支持側嵌合面12より直径が小さくされた歯車側嵌合面13に対して軸方向の強い力を加えて、歯車側嵌合面13を支持側嵌合面12に嵌め込み密着させる。
或いは、変形前のかしめ部15における支持部材11と当接する面に、軸方向に延びる溝(ローレット)が形成されてもよい。かしめ部15を支持部材11に当接するように変形させる際に、かしめ部15のローレットを、より硬度の低い支持部材11に食い込ませ、周方向の滑りを抑制することができる。或いは、当接部14における支持部材11と当接する面に、径方向に延びる溝(ローレット)が形成されてもよい。歯車部材10を支持部材11に嵌め込む際、或いは、主トルク伝達方向におけるスラスト荷重に応じた荷重により、当接部14のローレットを、より硬度の低い支持部材11に食い込ませ、周方向の滑りを抑制することできる。
本実施形態では、歯車部材10は、はすば歯車とされており、歯車間でトルクを伝達する際に、歯車部材10に軸方向荷重(スラスト荷重)がかかるように構成されている。
歯車部材10が伝達するトルクの向きによって、歯車部材10に作用するスラスト荷重の向きが、軸第一方向X1又は軸第二方向X2で変化し、歯車部材10が伝達するトルクの大きさに比例して、歯車部材10に作用するスラスト荷重の大きさが変化する。
この歯車部材10に作用するスラスト荷重は、基本的に、歯車側嵌合面13と支持側嵌合面12との間の摩擦力により、支持部材11側に伝達される。しかし、スラスト荷重が嵌合面同士の摩擦力を超えた場合、嵌合面同士の摩擦力が低下した場合などにおいて、当接部14又はかしめ部15に作用するスラスト荷重が大きくなる。変形により形成されたかしめ部15よりも当接部14の方が、スラスト荷重に対する強さを大きくさせやすい。また、後述する第二の構成例では、当接部14の硬度は、かしめ部15の硬度より高くなっているため、スラスト荷重に対する強さを大きくさせやすい。
具体的には、当接部14が備えられている軸第一方向X1は、主トルク伝達方向のトルクを伝達している状態において歯車部材10に作用するスラスト荷重とは反対方向とされている。
本実施形態では、車両を前進方向に駆動する際に、駆動力源から歯車部材10にトルクが伝達されて、歯車部材10が伝達するトルクの向きが、主トルク伝達方向とされている。
3−1.かしめ部15と支持部材11との硬度差
歯車部材10のかしめ部15の硬度は、支持部材11の硬度より高くされている。詳細には、かしめ部15の硬度は、少なくとも、かしめ部15に接触する支持部材11の接触面の硬度より高くされていればよい。
本実施形態では、支持部材11は、鋳造部品(鋳鉄部品)とされている。本例では、ダクタイル鋳鉄とされており、日本工業規格(JIS)のFCD450が用いられている。一方、歯車部材10は、鋼部品とされている。本例では、クロムモリブデン鋼とされており、日本工業規格(JIS)のSCM420が用いられている。本実施形態では、かしめ部15の硬度は、支持部材11の硬度より、ビッカース硬さ(Hv)で、70〜200の範囲内で高くされている。本例では、ダクタイル鋳鉄(FCD450)の支持部材11は、150Hvとされ、クロムモリブデン鋼(SCM420)のかしめ部15の硬度は、後述する焼入れ処理により、220〜350Hvの範囲内とされている。
歯面を形成する歯部は、通常、歯面同士の摩擦や荷重伝達のため、浸炭・焼入れ処理などにより硬度が高くされ、変形し難くされる。しかし、かしめ部15の硬度が、歯部の硬度まで高くされると、支持部材11側に突出するように変形させ難くなる。
そこで、本実施形態では、かしめ部15の硬度は、歯部16の硬度より低くされている。本例では、かしめ部15の硬度は、歯部16の硬度より、ビッカース硬さ(Hv)で450〜550の範囲内で低くされている。また、歯車部材10は、かしめ部15及び歯部16とも同じ材質とされ、本例ではクロムモリブデン鋼(SCM420)とされている。しかし、後述する特別な浸炭・焼入れ処理などにより、かしめ部15の硬度は220〜350Hvの範囲内とされ、歯部16の硬度は720〜850Hvの範囲内とされる。
このような硬度差を有する歯車部材10の構成例として、以下で2つの構成例を説明する。
第一の構成例として、歯車部材10は、表層全体に内部よりも炭素濃度及び硬度が高い浸炭層を有している。そして、歯部16の表層は、歯車部材10の歯部16以外の部分の表層に比べて硬度が高くされている。
このような歯車部材10は、浸炭・徐冷処理及び部分焼入れ処理により用意される。すなわち、歯車部材を用意する工程#02では、歯車部材10の全体に対して浸炭・徐冷処理を行って、歯車部材10の表層全体の硬度を内部より高くし、その後、歯部16に対して部分焼入れ処理を行って、歯部16の表層の硬度を歯車部材10の歯部16以外の部分の表層に比べて高くする。以下、各処理について詳細に説明する。
浸炭・徐冷処理では、図5に示すように、歯車部材10の全体に対して、浸炭・徐冷処理を行う。ただし、浸炭・徐冷処理では、浸炭・徐冷処理により硬度が高くなり過ぎないように、加熱後の冷却速度が、油や水などの液体冷媒を用いる冷却の冷却速度より低くされる。加熱後、液体冷媒により急冷されると、オーステナイトからマルテンサイトに組織変態されて、硬度が大幅に増加する。一方、冷却速度を低下させると、オーステナイトからマルテンサイトへの組織変態が抑制されて、硬度増加が抑制される。浸炭・徐冷処理では、マルテンサイトへの組織変態を抑制できるような速度まで、冷却速度が低くされる。
本例では、浸炭・徐冷処理により、表層の硬度が、内部の硬度より60〜190Hvの範囲内で高くされる。
そして、冷却させる際に、オーステナイトからマルテンサイトへの組織変態を抑制して、歯車部材10の表層の硬度が内部の硬度より60〜190Hvの範囲内で高くなるように、雰囲気の気圧低下量を調整し、冷却速度を調整する。本例では、雰囲気の気圧は、少なくとも0.3bar以下に減圧される。また、本例では、浸炭・徐冷処理により、歯車部材10の表層の硬度は、220〜350Hvの範囲内とされるが、歯車部材10の内部の硬度は、浸炭・徐冷処理前の歯車部材10の硬度と同程度の160Hvとされる。
浸炭・徐冷処理後に行う部分焼入れ処理では、図6に示すように、歯車部材10の歯部16に対して部分的に焼入れを行い、歯部16以外の歯車部材10の部分には焼入れを行わない。このような部分的な焼入れを行うために、部分焼入れ処理として高周波焼入れを行う。具体的には、高周波の電磁波や、電子ビームや、レーザビームなどを歯部16に対して照射して、少なくとも歯部16の表層(歯面)をオーステナイト化する温度(950℃)まで加熱させる。加熱後、油や水などの液体冷媒を用い急冷して、オーステナイトからマルテンサイトに組織変態させ、歯部16の表層(歯面)の硬度を更に増加させる。本例では、歯部16の表層(歯面)の硬度は、部分焼入れ処理により更に450〜550Hvの範囲内で増加され、最終的な硬度は、720〜850Hvの範囲内とされる。
第二の構成例として、かしめ部15の表層は、歯車部材10のかしめ部15以外の部分の表層に比べて、炭素濃度及び硬度が低くされる。
このような歯車部材10は、防炭処理及び浸炭・焼入れ処理により用意される。すなわち、歯車部材を用意する工程#02では、かしめ部15に防炭処理を行い、かしめ部15に防炭処理が行われた状態で、歯車部材10の全体に対して浸炭・焼入れ処理を行って、かしめ部15の表層の硬度を歯車部材10のかしめ部15以外の部分の表層の硬度より低くする。以下、各処理について詳細に説明する。
図7に示すように、浸炭処理によりかしめ部15の表層に炭素が浸透しないように、かしめ部15の表面全体を覆うように防炭剤を塗布する防炭処理を行う。
<浸炭・焼入れ処理>
かしめ部15に防炭処理が行われた状態で、歯車部材10の全体に対して浸炭・焼入れ処理を行う。具体的には、歯車部材10の全体に対して、ガス加熱炉を用いて、ガス浸炭、加熱を行う。加熱後、油や水などの液体冷媒を用い急冷して、オーステナイトからマルテンサイトに組織変態させ、歯車部材10の表層の硬度を増加させる。この際、防炭処理により、かしめ部15の表層には、浸炭層が十分に形成されていないので、焼入れ処理による硬度の増加が抑制される。本例では、かしめ部15以外の歯車部材10の表層の硬度は、720〜850Hvの範囲内とされ、かしめ部15の表層の硬度及び歯車部材10の内部の硬度は、220〜350Hvの範囲内とされる。なお、浸炭・焼入れ処理を行う前の歯車部材10の硬度は160Hvである。
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
10 :歯車部材
11 :支持部材
12 :支持側嵌合面
13 :歯車側嵌合面
14 :当接部
15 :かしめ部
16 :歯部
17 :嵌合面支持部
18 :支持壁部
20 :ケース状部
21 :第一突出部
22 :第二突出部
23 :第一支持軸受
24 :第二支持軸受
25 :第一ケース開口部
26 :第二ケース開口部
27 :第一シール部材
28 :第二シール部材
AX1 :第一車軸
AX2 :第二車軸
CA :傘歯車保持器
CG :カウンタギヤ機構
CG1 :第一カウンタギヤ
CG2 :第二カウンタギヤ
CG3 :カウンタ軸
Cs :駆動装置収容ケース
DF :傘歯車式差動歯車装置
I :入力軸
IC :内燃機関
ICO :内燃機関の出力軸
O :出力ギヤ
PG1 :第一ピニオンギヤ
PG2 :第二ピニオンギヤ
PS :ピニオン回転軸
RG :リングギヤ
SG1 :第一サイドギヤ
SG2 :第二サイドギヤ
TC :トルクコンバータ
TM :変速機構
W1、W2:車輪
X :軸方向
X1 :軸第一方向(軸方向一方側)
X2 :軸第二方向(軸方向他方側)
Xo :回転軸心
Claims (11)
- 円環状の歯車部材と、前記歯車部材を支持する支持部材とを備え、前記歯車部材が前記支持部材に嵌合されて一体的に回転する歯車構造体であって、
前記支持部材は、円筒状の支持側嵌合面を備え、
前記歯車部材は、
歯面を構成する歯部と、
前記支持側嵌合面に嵌合する円筒状の歯車側嵌合面と、
前記歯車側嵌合面に対して軸方向一方側である軸第一方向側において前記支持部材側に突出し、前記支持部材の前記軸第一方向側の面に当接する当接部と、
前記歯車側嵌合面に対して軸方向他方側である軸第二方向側において、前記歯車側嵌合面に対して前記支持部材側に突出し、前記支持部材の前記軸第二方向側の面に当接するかしめ部と、を備え、
前記かしめ部の硬度は、前記支持部材の硬度より高い歯車構造体。 - 前記歯部は、前記歯車部材における前記歯車側嵌合面とは反対側の面に設けられていると共に、はすば歯車の歯面を構成し、
前記軸第一方向は、主トルク伝達方向のトルクを伝達している状態において前記歯車部材に作用する軸方向荷重と反対方向であり、
前記主トルク伝達方向は、前記歯車部材により伝達する時間が長い方のトルク伝達方向、又は前記歯車部材により伝達する最大トルクが大きい方のトルク伝達方向である請求項1に記載の歯車構造体。 - 前記歯車部材は、傘歯車式差動歯車装置の傘歯車の保持器に固定されるリングギヤであり、
前記支持部材は、鋳造部品であって前記保持器と一体的に回転するように構成されている請求項1又は2に記載の歯車構造体。 - 前記かしめ部の硬度は、前記歯部の硬度より低い請求項1から3のいずれか一項に記載の歯車構造体。
- 前記歯車部材は、表層全体に内部よりも炭素濃度及び硬度が高い浸炭層を有しており、
前記歯部の表層は、前記歯車部材の前記歯部以外の部分の表層に比べて硬度が高い請求項1から4のいずれか一項に記載の歯車構造体。 - 前記かしめ部の表層は、前記歯車部材の前記かしめ部以外の部分の表層に比べて、炭素濃度及び硬度が低い請求項1から4のいずれか一項に記載の歯車構造体。
- 前記歯車部材の前記歯車側嵌合面と前記支持部材の前記支持側嵌合面とは、圧入又は焼き嵌めにより嵌合されている請求項1から6のいずれか一項に記載の歯車構造体。
- 前記支持側嵌合面は、前記支持部材の外周面に形成され、
前記歯車側嵌合面は、前記歯車部材の内周面に形成されている請求項1から7のいずれか一項に記載の歯車構造体。 - 円環状の歯車部材と、前記歯車部材を支持する支持部材とを備え、前記歯車部材が前記支持部材に嵌合されて一体的に回転する歯車構造体の製造方法であって、
円筒状の支持側嵌合面を備えた前記支持部材を用意する工程と、
歯面を構成する歯部と、前記支持側嵌合面に嵌合する円筒状の歯車側嵌合面と、前記歯車側嵌合面に対して軸方向一方側である軸第一方向側において前記支持部材側に突出した当接部と、前記歯車側嵌合面に対して軸方向他方側である軸第二方向側に備えられ、前記支持部材の硬度より高い硬度を有するかしめ部と、を備えた前記歯車部材を用意する工程と、
前記歯車部材の前記歯車側嵌合面を、前記支持部材の前記支持側嵌合面に、前記軸第一方向側から嵌合させて、前記歯車部材の前記当接部を前記支持部材の前記軸第一方向側の面に当接させる嵌合工程と、
前記かしめ部を、前記歯車側嵌合面に対して前記支持部材側に突出するように変形させて、前記支持部材の前記軸第二方向側の面に当接させるかしめ工程と、
を備えた歯車構造体の製造方法。 - 前記歯車部材を用意する工程では、
前記歯車部材の全体に対して浸炭・徐冷処理を行って、前記歯車部材の表層全体の硬度を内部より高くし、その後、前記歯部に対して焼入れ処理を行って、前記歯部の表層の硬度を前記歯車部材の前記歯部以外の部分の表層に比べて高くする請求項9に記載の歯車構造体の製造方法。 - 前記歯車部材を用意する工程では、
前記かしめ部に防炭処理を行い、前記かしめ部に防炭処理が行われた状態で、前記歯車部材の全体に対して浸炭・焼入れ処理を行って、前記かしめ部の表層の硬度を前記歯車部材の前記かしめ部以外の部分の表層の硬度より低くする請求項9に記載の歯車構造体の製造方法。
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