JP2014084515A - Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法及びCu−Ga合金スパッタリングターゲット - Google Patents

Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法及びCu−Ga合金スパッタリングターゲット Download PDF

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Abstract

【課題】割れや欠けが生じることなく、容易にCu−Ga合金スパッタリングターゲットを製造する。
【解決手段】Cu−Ga合金粉末中におけるGa量が15.15〜50質量%で残部がCuであるCu−Ga合金粉末と、Cu粉末とを質量比で99:1〜70:30の割合で配合した混合粉末を用い、溶射法にて基材上に皮膜を形成し、Ga量が15〜45質量%で残部がCu及び不可避的不純物からなるCu−Ga合金スパッタリングターゲットを製造する。
【選択図】図3

Description

本発明は、CIGS(Cu−In−Ga−Se四元系合金)太陽電池の光吸収層の形成に使用されるCu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法及びその製造方法により得られたCu−Ga合金スパッタリングターゲットに関する。
近年、クリーンエネルギーの一つとして、太陽光発電が注目され、結晶系Siの太陽電池が主に使用されているが、供給面やコストの問題から、薄膜太陽電池の中でも変換効率の高いCIGS(Cu−In−Ga−Se四元系合金)系の太陽電池が注目され、実用化されている。
CIGS太陽電池は、基本構造として、ソーダライムガラス基板の上に形成された裏面電極となるMo電極層と、このMo電極層の上に形成された光吸収層となるCu−In−Ga−Se四元系合金膜と、このCu−In−Ga−Se四元系合金膜からなる光吸収層の上に形成されたZnS、CdSなどからなるバッファ層と、このバッファ層の上に形成された透明電極とを備える。
Cu−In−Ga−Se四元系合金膜からなる光吸収層の形成方法としては、蒸着法が知られているが、より広い面積での均一な膜を得るためにスパッタ法によって形成する方法が提案されている。
スパッタ法は、先ず、Inターゲットを使用してスパッタによりIn膜を成膜し、このIn膜の上にCu−Ga合金スパッタリングターゲットを使用してスパッタすることによりCu−Ga合金膜を成膜し、得られたIn膜及びCu−Ga合金膜からなる積層膜をSe雰囲気中で熱処理してCu−In−Ga−Se四元系合金膜を形成する方法である。
スパッタ法により形成されたCu−In−Ga−Se四元系合金膜の品質は、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの品質に大きく依存するため、高品質なCu−Ga合金スパッタリングターゲットが望まれている。
このCu−Ga合金スパッタリングターゲットは、一般に平板型が主流となっているが、利用効率としては20〜30%程度であり、特にCu−Ga合金スパッタリングターゲットの場合、Gaメタルが希少資源であることからも利用効率に優れたターゲットが必要とされている。
そのため、近年では円筒型が開発されている。円筒型ターゲットは、スパッタリングターゲットの内側にマグネットが全面にあるため、ターゲット材の全面がエロージョンエリアとなり利用効率としては60%以上であることから、平板型ターゲットと比べて利用効率は高く、注目されている。
このCu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法でも主流である平板型においては、例えば溶解・鋳造法が知られているが(例えば、特許文献1参照)、CIGS系太陽電池用途の組成のCu−Ga合金は脆くて非常に割れやすいという問題がある。そのため、加工が困難であり歩留まりが大きく低下することから、近年では溶解・鋳造法に比べて粉末焼結法による製造方法が一般的である。
粉末焼結法において、特にCu−Ga合金の特有の性質である割れやすいという問題に対しては、例えば特許文献2のターゲットの製造方法が知られている。特許文献2のターゲットは、例えば図10に示すような高Ga含有Cu−Ga二元系合金粒を低Ga含有Cu−Ga二元系合金からなる粒界相で包囲した二相共存組織とすることで、加工における切削時の割れ、または欠損のないCu−Ga二元系合金ターゲットとしている。
しかしながら、特許文献2の製造方法により製造されるCu−Ga二元系合金スパッタリングターゲットは、脆弱な高Ga含有Cu−Ga合金相を有しているため、特に、この脆弱な相において切削時または、その前のホットプレス時の圧力負荷により容易にマイクロクラックが発生する。そのため、マイクロクラックを有した高Ga含有Cu−Ga二元系合金相の粒界に低Ga含有Cu−Ga二元系合金相が存在し包囲したとしても、割れの抑制には寄与するが、場合によりマイクロクラックが進展し、時として重大な割れにも発展することから適当ではない。
また、問題なくホットプレス体を切削することができたとしても、スパッタ装置に装入する際にバッキングプレートにスパッタリングターゲットを貼り付ける(ボンディング)必要がある。ボンディングの方法としてIn、または、In合金をロウ材として用いるのが一般的であり、加熱した上でスパッタリングターゲットとバッキングプレートをボンディングするが、その際にCu−Ga合金スパッタリングターゲットとロウ材であるIn又はIn合金との熱膨張率の差に伴い応力が発生する。その際に脆弱な高Ga含有Cu−Ga合金スパッタリングターゲットは割れるという問題も顕在化していることからして適当ではない。
一方で、円筒型のスパッタリングターゲットの製造方法としては、一般に熱間等方圧プレス(HIP)法が知られているが(例えば、特許文献3参照)、CIGS系太陽電池用途の組成のCu−Ga合金は脆くて非常に割れやすいという問題があるため、HIP時における高圧負荷により割れが発生することから適当ではない。
また、円筒型ターゲットは、近年長尺化しており、3,000mm級の円筒型ターゲットが望まれているが、例えば特許文献4ではホットプレスで作製した複数個の段部が付いた焼結体を組み合わせて長尺のスパッタリングターゲットを作製する製造方法が知られている。複数の焼結体を組み合わせて長尺にした場合には、焼結体間の隙間に残存するガスがスパッタリング時に異常放電が発生する原因になるため適当ではない。
また、仮に、円筒型で長尺のスパッタリングターゲットが作製できたとしても、その後のバッキングチューブとのボンディング時には熱膨張率の差における応力の発生に伴って割れる可能性があるほか、特に円筒型についてはボンディングが困難であり、均一にロウ材を付けるのは困難とされており、所々で接着できていない部分が存在する可能性が高い。更に、例えばターゲットをバッキングチューブに割れることなくボンディングできたとしても、使用時に剥がれる可能性があることからして適切ではない。
特開2000−73163号公報 特開2008−138232号公報 特開平5−39566号公報 特開平7−228967号公報
本発明は、上記実情に鑑みて提案されたものであり、割れや欠けが生じることなく、容易にCu−Ga合金スパッタリングターゲットを製造することが可能であるCu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法及びCu−Ga合金スパッタリングターゲットを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、脆性であるCu−Ga合金スパッタリングターゲットにおいて割れや欠けを発生させないために、Cu−Ga二元系合金相内に強固かつ延性のCu相を層状で存在させた組織とすることで割れや欠けを抑制することを見出した。
上述した目的を達成する本発明に係るCu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法は、Cu−Ga合金粉末中におけるGa量が15.15〜50質量%で残部がCuであるCu−Ga合金粉末と、Cu粉末とを質量比で99:1〜70:30の割合で配合した混合粉末を用い、溶射法にて基材上に皮膜を形成することを特徴とする。
上述した目的を達成する本発明に係るCu−Ga合金スパッタリングターゲットは、Ga量が15〜45質量%で残部がCu及び不可避的不純物からなるものであり、基材上に溶射法により形成され、Cu−Ga二元系合金相内にCu相が層状に存在する組織からなるターゲット材を有することを特徴とする。
本発明では、Cu−Ga合金粉末とCu粉末とを所定の割合で配合し混合して得られた混合粉末を用い、溶射法により基材の表面上に皮膜を形成する。これにより、本発明では、Cu−Ga二元系合金相内にCu相が層状に存在する組織からなる皮膜によってターゲット材が形成され、割れや欠けが生じないCu−Ga合金スパッタリングターゲットを得ることができる。また、本発明では、溶射法により直接基材上に皮膜によるターゲット材を形成するため、ボンディングによる割れや欠けが生じることを防止できる。更に、本発明では、基材の形状や寸法に関わらずCu−Ga合金スパッタリングターゲットが製造することができる。
本発明を適用した円筒型のCu−Ga合金スパッタリングターゲットの斜視図である。 本発明を適用した平板型のCu−Ga合金スパッタリングターゲットの斜視図である。 本発明を適用したCu−Ga合金スパッタリングターゲットのターゲット材の断面の一部拡大写真である。 図4(A)は、本発明を適用した円筒型のCu−Ga合金スパッタリングターゲットの平面図であり、図4(B)は、図4(A)のX−X’における断面図である。 図5(A)は、本発明を適用した平板型のCu−Ga合金スパッタリングターゲットの平面図であり、図5(B)は、図4(A)のY−Y’における断面図である。 Cu−Ga合金粉末のみで作製した従来のCu−Ga合金スパッタリングターゲットのターゲット材の断面の一部拡大写真である。 実施例1のCu−Ga合金スパッタリングターゲットの電子プローブマイクロアナライザーによるマッピング分析結果の写真である。 実施例1のCu−Ga合金薄膜の表面の電子プローブマイクロアナライザーによるマッピング分析結果の写真である。 従来例1のCu−Ga合金スパッタリングターゲットの電子プローブマイクロアナライザーによるマッピング分析結果の写真である。 高Ga含有Cu−Ga二元系合金相を低Ga含有Cu−Ga二元系合金相を包囲した従来のCu−Ga合金スパッタリングターゲットの模式図である。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施の形態」という。)について、図面を参照しながら以下の順序で詳細に説明する。
1.Cu−Ga合金スパッタリングターゲット
2.Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法
2−1.準備工程
2−2.混合粉末作製工程
2−3.溶射工程
2−4.機械加工工程
1.Cu−Ga合金スパッタリングターゲット
Cu−Ga合金スパッタリングターゲット(以下、単にターゲットともいう。)には、例えば円筒型のものと、平板型のものがある。図1に示す円筒型のターゲット1は、円筒型の基材2上にターゲット材3が形成されたものであり、図2に示す平板型のターゲット4は、平板型の基材5上にターゲット材6が形成されたものである。
ターゲット1、4のターゲット材3、6は、図3に示すようにCu−Ga二元系合金相7内にCu相8が層状に存在する組織からなるものである。なお、図3中の写真において、白い部分がCu−Ga二元系合金相7であり、灰色部分がCu相8である。この図3は、図1に示す円筒型のターゲット1において、図4(A)及び(B)に示すようにターゲット1の線分X−X’における断面組織である。図2に示すような平板型のターゲット1の場合にあっては、図5(A)及び(B)に示すように線分Y−Y’における断面の断面組織となる。
ターゲット1、4のターゲット材3、6は、Cu−Ga二元系合金相7内にCu相8が層状に存在する組織からなり、断面組織をみると図3に示すようにCu−Ga二元系合金相7の層間にCu相8が介在するように存在している。このようなターゲット1、4のターゲット材3、6では、脆弱なCu−Ga二元系合金相7の層間に強固かつ延性なCu相8が存在することにより、割れを抑制することができ、厚みを厚くすることができる。
ターゲット1、4は、Cu−Ga二元系合金相7だけではなく、Cu相8が含まれていることによって、図6に示すようなCu−Ga合金粉末のみを原料として基材上に溶射して形成したCu−Ga二元系合金相のみからなる場合に比べて、割れや欠けを防止することができる。Cu−Ga二元系合金相のみからなるターゲットは、図6に示すように、Cu−Ga二元系合金相内に欠けが多く存在するため、割れやすく厚みを厚くすることができない。なお、図6の写真において、白く写っている部分がCu−Ga二元系合金相であり、黒く写っている部分が欠けている部分である。
また、ターゲット1、4は、脆弱なCu−Ga二元系合金相7内に強固かつ延性のCu相8が層状に介在しているが、層状に介在させることにより適度な延性が付与されるため、応力が負荷された場合においても応力が緩和され、マイクロクラックの発生を抑制することができる。このような層状の組織は溶射法により実現されるが、溶射法は溶融した金属粒子を飛行させて堆積させるため、金属粒子に高いエネルギーを付与する必要があり、このことにより皮膜に衝突する際には高い衝撃エネルギーとなり、密着性が高まる。
また、皮膜に衝突した溶融粒子は極短時間で凝固し、構成元素が拡散することはほとんどないため、脆性な金属間化合物が形成されにくく、マイクロクラックの発生を抑制できる。ターゲット1、4に強い応力が負荷され、マイクロクラックが発生した場合でも、Cu相が層状に介在していることによりマイクロクラックの伸延が止まるため、品質に影響を及ぼすような割れや欠けにまで発展しない。このような事象は、ターゲット1、4の加工時に限らず、スパッタの際の熱応力による割れや欠けも防止できる。
なお、粉末焼結法でも、Cu−Ga二元系合金相をCu相で包囲することで、応力を緩和する効果が発現するが、焼結時に構成元素が拡散するため、Cu−Ga二元系合金相とCu相の境界部に脆性な金属間化合物が形成されやすく、マイクロクラックの発生を十分に抑制することはできない。また、更に強い応力が負荷された場合、発生したクラックが発展して大きな割れや欠けが生じる。
また、ターゲット1、4は、原料となるCu−Ga合金粉末とCu粉末を混合した混合粉末を溶射法により基材2、5に直接吹き付けて、Cu−Ga二元系合金相7とCu相8とからなる皮膜を形成しているため、ボンディングによる熱膨張率の差に伴う応力により生じる割れや欠けを防止することができる。
ターゲット1、4は、Gaの含有量が質量比で15〜45質量%であり、残部がCu及び不可避的不純物からなる。Gaの含有量が15質量%よりも少ない場合には、例えば太陽電池のCu−In−Ga−Se四元系合金膜を形成する際に、膜に含まれるGaの含有量が少なくなってしまう。一方、Gaの含有量が45質量%よりも多い場合には、割れが発生するおそれがある。したがって、Gaの含有量は質量比で15〜45質量%とする。
ターゲット1、4は、Gaを15〜45質量%含有し、Cu−Ga二元系合金相7内にCu相8が層状に存在することによって、円筒型や平板型等の形状や寸法に関わらず割れや欠けを防止できる。また、ターゲット1、4は、長尺状のものであっても従来のように複数のターゲット材を繋ぎ合わせる必要がなく、一つのターゲット材で形成することができる。これにより、このようなターゲット1、4は、従来のように複数の焼結体を繋げたターゲットの場合に生じるスパッタ時の異常放電の発生を防止することができる。
2.Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法
Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法では、Cu−Ga合金粉末とCu粉末とを所定の割合で混合した混合粉末を基材2、5の表面上に溶射法により吹き付ける。これにより、この製造方法では、基材2、5上にCu−Ga二元系合金相7内にCu相8が層状に存在する組織からなる皮膜によってターゲット材3、6が形成されたCu−Ga合金スパッタリングターゲット1、4を得ることができる。このようなターゲットの製造方法では、割れることのないターゲット1、4を容易に製造することができる。
また、溶射法を用いた場合には、混合粉末が溶射時に高温に曝されることにより、Ga成分が昇華してしまい、ターゲット1、4に含まれるGaの含有量が少なくなってしまう場合がある。しかしながら、本発明を適用したターゲットの製造方法では、使用する混合粉末の粒度を調整することで、溶射時における酸化の抑制及びCu−Ga合金粉末中のGa成分の昇華によるGa元素の歩留まり低下を抑制することができる。これにより、このターゲットの製造方法では、高品質且つ安定的なターゲットを得ることができる。
また、このターゲットの製造方法では、Cu−Ga合金が脆性であるため溶射皮膜の組織内部に割れや欠けが発生することをより効果的に防止するため、上述したようにCu−Ga合金粉末にCu粉末を混合した混合粉末とすることに加えて、割れや欠けが発生しにくい溶射条件とする。これにより、このようなターゲットの製造方法では、割れや欠けの発生がより防止されたターゲット1、4を得ることができる。
また、このターゲットの製造方法では、溶射法を用いることで分割のない一体型のターゲット1、4の製造が可能であり、且つ、直接基材2、5に溶射することでボンディングを必要としないため、割れや欠けるが発生することなく、長尺状のターゲット1、4を容易に製造することができる。
更には、このターゲットの製造方法では、溶射法を用いることで基材2、5の形状、寸法に左右されることなく、ターゲット1、4を製造することが可能なため、平板型及び円筒型のどちらでも製造工程を変更することなく、ターゲット1、4を容易に製造することができる。
具体的に、ターゲットの製造方法では、所定の粒度に調整されたCu−Ga合金粉末とCu粉末とを所定の割合で混合し、得られた混合粉末を基材2、5の表面上に溶射することでCu−Ga二元系合金相7とCu相8とからなる皮膜を形成する。形成された皮膜がターゲット材3、6となる。
ターゲットの製造方法は、例えば、準備工程、混合粉末作製工程、溶射工程、機械加工工程を有する。
<2−1.準備工程>
準備工程では、原料となるCu−Ga合金粉末、Cu粉末を用意し、混合粉末を作製するための混合割合を決定する。
Cu−Ga合金粉末は、Ga15.15〜50質量%を含み残部がCuであることが好ましい。Gaが15.15質量%未満になると、溶射にてターゲット1、4を作製しても、Ga量が少ないため太陽電池にしたとしても目的の特性が得られない。また、Gaが50質量%より多いと、溶射にて形成されたCu−Ga二元系合金スパッタリングターゲットにおけるCu−Ga二元系合金相が非常に脆くなってしまうため、例えばCu相が存在しても割れを抑制することが困難となる。
Cu−Ga合金粉末の製造方法については特に指定はないが、例えば粉砕法、あるいはアトマイズ法が使用できる。粉砕法はCu原料及びGa原料を溶解炉などで溶解した後に鋳造する。得られた鋳塊はスタンプミルやディスクミルなどで粉砕することで塊状の粉末が製造される。また、アトマイズ法についてはガスアトマイズ法、水アトマイズ法、遠心アトマイズ法などを用いることで球状または不定形状の粉末が製造される。
Cu−Ga合金粉末の粒度分布は、20〜210μmから選択される範囲に整粒した粒度範囲であることが好ましい。
Cu−Ga合金粉末の粒度が20μm未満になると表面積が大きくなることで酸化し易くなるため、溶射にて得られた皮膜は酸化してしまうことから、ターゲット1、4を作製してスパッタリングした時に異常放電が発生するおそれがある。溶射法を使用する場合、10000℃を超える高温のプラズマジェットを利用することになるが、粉末の粒度が細かいとCu−Ga合金中のGa成分は昇華するため、目的の組成が得られない。
一方で、Cu−Ga合金粉末の粒度が210μmより大きくなると、溶射により得られる皮膜の密度が低下するため、ターゲット1、4を作製してスパッタリングした時に、特にポアの部分に含有しているガスの影響で異常放電が発生してしまう。
Cu−Ga合金粉末の粒度分布は、溶射方法によって適宜調整することを好ましい。例えば、溶射プロセスにプラズマ溶射を選択する場合には、10000℃を超える高温のプラズマジェットを利用することになるため、粉末の粒度が細かいとCu−Ga合金中のGa成分は昇華し、目的の組成が得られないことから好ましくない。そのため、プラズマ溶射を選択する場合には、Cu−Ga合金粉末の粒度分布は53〜200μmの範囲内にあることが好ましい。
また、溶射プロセスにフレーム溶射を選択する場合には、フレーム燃焼温度3000℃程度の燃焼炎ジェット流を利用することになる。そのため、プラズマ溶射と比べると利用する温度は低いことから、酸化もしくはGaの昇華は抑制される。したがって、フレーム溶射を用いる場合には、Cu−Ga合金粉末の粒度分布は20〜53μmであることが特に好ましい。
Cu−Ga合金粉末と供するCu粉末は、特に指定はないが、例えば電解法、アトマイズ法より得られるものが使用できる。例えば、電解法は、硫酸銅溶液などの電解液中で電気分解により陰極に海綿状または樹脂状の形状のCuを析出させて粉末が製造される。また、ターゲット1、4に不純物が混入することを防止するため、純Cu粉末を用いることが好ましい。
また、Cu粉末の粒度分布は10〜210μmが好ましい。Cu−Ga合金スパッタリングターゲットにおけるCu相8はターゲット1、4における脆性を抑制する効果を有する。そのため、Cu−Ga二元系合金相7内にCu相8が層状となって存在することが適当であり、Cu粉がCu−Ga合金粉よりも小さいことにより脆性をより抑制することができる。
そして、準備工程では、上述した原料となるCu−Ga合金粉末とCu粉末とを製造するターゲット1、4に応じて混合割合を決定する。混合割合は、ターゲット1、4の組成において質量比にてGa15〜45質量%の範囲であり、残部がCuとなるように行う。
ターゲット1、4におけるGa量が45質量%よりも多い場合には、溶射工程時にGaの染み出しが発生し、また、Ga量が多いほど脆弱な化合物が形成され、割れやすくなることから好ましくない。一方で、ターゲット1、4におけるGa量が15質量%よりも少ない場合、作製されたターゲットを用いて太陽電池にしたとしても目的の特性が得られないことから好ましくない。
したがって、上述したGa量となるように原料のCu−Ga合金粉末とCu粉末とを99:1〜70:30の割合とする。混合粉末中におけるCu粉末が1質量%より少ない場合では、得られるターゲット1、4におけるCu−Ga二元系合金相7とCu相8においてCu相8の形成が不十分であることから、割れの抑制が不十分となり、基材2、5に溶射した際の熱応力で割れる可能性があり、また、その後の機械加工中でも割れる可能性があることから好ましくない。一方で、Cu−Ga合金粉末中のCu粉末が30質量%より多いとターゲット1、4におけるCu相8が多くなることからスパッタリングにより得られたスパッタ膜において膜内分布が不均一となることから、太陽電池にした際にその特性にバラツキが見られることから好ましくない。
<2−2.混合粉末作製工程>
次に、上述の準備工程で決定した混合割合を元にCu−Ga合金粉末とCu粉末とを混合して混合粉末を作製する。混合方法は、特に限定されることなく、任意の混合機を用いて混合する。
<2−3.溶射工程>
溶射工程では、混合粉末作製工程で作製した混合粉末を溶射法により基材2、5上に吹き付けて、Cu−Ga二元系合金相7内にCu相8が層状に形成された組織からなる皮膜を形成し、ターゲット材1、4を得る。
溶射方法は、常法、つまり、溶射ガンを使用した大気または減圧プラズマ溶射法もしくは高速フレーム溶射などの高温フレーム溶射法を用いることができる。なお、プラズマ溶射であれば45〜210μmの粒度範囲の混合粉末が使用され、高速フレーム溶射であれば10〜63μmの粒度範囲の混合粉末が使用される。このような粒度範囲の混合粉末を用いることにより、溶射の際にGaが昇華してターゲット材3、6に含まれるGaの含有量が減少することを防止できる。
溶射工程では、ターゲットの溶射加工に先立ち、密着性向上のため基材2、5の表面をAlやSiC砥粒を用いてサンドブラスト処理し荒らしておくことが好ましい。
また、溶射工程では、サンドブラスト処理の後、溶射する混合粉末と基材2、5との熱膨張差を緩和し、密着力を高めるために、混合粉末を溶射する前にアンダーコート層を形成しても良い。
アンダーコート材料としては、Ni−Cr、Ni−Al、NiCrAlY、CoNiCrAlY等が挙げられる。アンダーコートの膜厚は、30〜100μm程度が望ましい。
サンドブラスト処理及びアンダーコート層を形成する場合には、サンドブラスト処理の後アンダーコート層を形成し、このアンダーコート層上にCu−Ga合金粉末とCu粉末を吹き付けて皮膜を形成する。例えば大気プラズマ溶射の場合では、混合粉末を高温プラズマガス中、好ましくは皮膜に割れや欠けが発生しにくいようAr、Ar+H、Ar+Heなどの非酸化雰囲気下の高温プラズマガス中で半溶融状態にしつつ、基材2、5上に付着させ、Cu−Ga二元系合金相7内にCu相8が層状に存在する皮膜を形成する。
また、溶射ガン先端に溶射流を覆うシールドボックスを取り付け、内部にArやN等の不活性ガスをフローさせると皮膜の酸化を軽減することが可能であり、均質で高密度なCu−Ga二元系合金相7にCu相8が層状に存在する皮膜が形成されるため望ましい。
溶射法による皮膜の組織は、Cu−Ga二元系合金相7、Cu相8を有しており、Cu−Ga二元系合金相7内にCu相8が層状に存在している。一般に、ターゲットの割れのメカニズムは、機械加工中などにおける応力負荷により、脆性であるCu−Ga二元系合金相にマイクロクラックが発生する。このマイクロクラックは、応力がかかる都度、進展し、大きなクラックとなり割れが生じる。このマイクロクラックを抑制するためには、図3に示すように、強固かつ延性に富んだCu相8を層状にCu−Ga二元系合金相7内に配置させることでマイクロクラックを抑制し、且つ、マイクロクラックの進展を止めることでクラックを抑制することが可能である。
また、溶射法は、基材2、5が円筒型であっても平板型であっても適用することができる。特に、円筒型のターゲット1は、装置の大型化により長尺化している。例えばホットプレス法やHIP法を用いた場合には、作製できるターゲットの長さに限度があるため、長尺状のターゲットを作製するには通常は短いターゲットを複数繋げた分割ターゲットとなってしまう。しかしながら、円筒型のターゲットは、脆性であるため、分割ターゲットでは端部で割れやチッピングが容易に発生する。分割が多いほど端部も多くなるため、割れやチッピングが発生する可能性が高くなり、ホットプレス法やHIP法は適当ではない。
ホットプレス法やHIP法に対して、溶射法は、ターゲットの長尺化が可能であるため、分割のない一体型で長尺状のターゲットを作製することができ、割れやチッピングの発生を抑制できる。
また、溶射法では、基材2、5の表面上に直接Cu−Ga二元系合金相7及びCu相8を形成することができるためボンディングをする必要がない。そのため、ボンディング時のCu−Ga二元合金とロウ材との熱膨張差による応力の発生がないことから割れの発生をより効果的に抑制できるほか、ボンディング工程を必要としないことから経済的にも有効である。
更には、溶射法は、基材2、5の形状や寸法に大きく左右されず、基材2、5上に皮膜を形成することができるという特徴を有する。そのため、Gu−Ga合金スパッタリングターゲットの主流である平板型でも、近年注目されている円筒型のどちらでもCu−Ga二元系合金相7及びCu相8からなる皮膜を形成することができるため、製造方法を変えることなくCu−Ga合金スパッタリングターゲット1、4が得られることから適当である。
<2−4.機械加工工程>
次に、溶射工程により基材2、4上に形成された皮膜からなるターゲット材3、6を加工してターゲット1、4を得る。
円筒型のターゲット1の場合には、例えば旋盤などで加工することで指定寸法に仕上げる。ただし、Gaの含有量が30質量%よりも高くなると形成される化合物の影響で急激に加工性が悪化し割れが発生する。このため、Gaの含有量が30質量%以上の場合は、円筒研削盤などで仕上げることでCu−Ga合金スパッタリングターゲット1を作製することができる。
また、平板型のターゲット4の場合であれば、例えばフライスなどで加工することで指定寸法に仕上げる。ただし、円筒型と同様に、Gaの含有量が30質量%よりも高くなると形成される化合物の影響で急激に加工性が悪化して割れが発生する。そのため、Gaの含有量が30質量%以上の場合は、平面研削などで仕上げることでCu−Ga合金スパッタリングターゲット4を作製することができる。
以上のように、このターゲットの製造方法では、Cu−Ga合金粉末中におけるGa量が15.15〜50質量%で残部がCuであるCu−Ga合金粉末と、Cu粉末とを質量比で99:1〜70:30の割合で配合した混合粉末を溶射法にて基材2、5に吹き付ける。このターゲットの製造方法では、基材2、5の表面上に脆弱なCu−Ga二元系合金相7内に強固かつ延性なCu相8が層状に存在する組織を有する皮膜を形成することができ、マイクロクラックを防止し、割れや欠けが生じないターゲット1、4を製造することができる。
更に、ターゲットの製造方法では、溶射法を用いることで基材2、5の形状や寸法に関わらず、一体型にCu−Ga二元系合金相7とCu相8とからなるターゲット材3、6を形成することができる。したがって、このターゲットの製造方法では、図1及び図2に示すように、円筒型や平板型で長尺状のものを一体型で形成することができる。
また、ターゲットの製造方法では、混合粉末中のCu−Ga合金粉末の粒度分布が20〜210μmの範囲内となるようにすることにより、溶射の熱による酸化を抑制でき、Ga成分の昇華によりGaが減少することを防止でき、高品質で安定的にターゲットを製造することができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットを作製するための出発原料として先ずGaを38.9質量%、残部がCuとなるように秤量して溶解・鋳造することでCu−Ga合金鋳塊を得た。その後、鋳塊をディスクミルにて粉砕することでCu−Ga合金粉末を作製し、分級することで150/53μm(最小粒径53μm、最大粒径150μm、平均粒径:90μm)とした。
作製したCu−38.9質量%Ga合金粉末と106/45μm(最小粒径45μm、最大粒径106μm、平均粒径:63μm)のガスアトマイズCu粉を用いて、スパッタリングターゲット時にCu−35質量%となるように混合するため、90:10の割合にして三次元混合機にて100rpmで1時間の条件で混合して混合粉末を得た。
得られた混合粉末を基材に溶射するが、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの成膜評価用としてφ75mmのCu製のバッキングプレートを用意した。また、Cu−Ga合金の組織観察用として10mm角のCu製平板を用意した。更にCu−Ga二元系合金相及びCu相からなる皮膜の加工性を評価するために20mm角のCu製平板を20個用意した。
基材をAl砥粒を用いたサンドブラスト処理により表面を荒らし、粗面化を行った。
粗面化した基材に、混合粉末を大気プラズマ溶射により、膜厚2mmのCu−Ga二元系合金相及びCu相からなる皮膜を形成した。プラズマガスにはAr+Hガスを用い、毎分50リットルの流量で300A、45Vの条件で10000〜20000℃のガスプラズマにより混合粉末を加熱溶融し、バッキングプレート上に吹き付けて成膜させた。ロボットアームに取り付けた溶射ガンをバッキングプレート上で上下左右に動かす操作を規程膜厚になるまで繰り返した。
得られたCu−Ga二元系合金相及びCu相からなる皮膜の組織を確認するために、組織観察用の平板を用いて断面を研磨した後、硝酸及び塩酸を任意の割合で調合したエッチング溶液を用いて断面をエッチングし、光学顕微鏡で観察した。結果を図3に示す。この結果より断面組織にはCu−Ga二元系合金相、Cu相が存在しており、これら相は層状を有していることが明らかである。Cu−Ga二元系合金相は図3中の符号7で示し、Cu相は符号8で示す。
更に、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)(JXA−8100)(日本電子(株)社製)により加速電圧15Vでマッピング分析を行い、元素分布を確認した。結果を図7に示す。図7においてAはCuマッピング像、BはGaマッピング像、Cは二次電子像、Dは各元素の成分値レベルであり、各元素のマッピング像は濃度を青〜赤で示し、濃度が高いほど赤色で示される。また、二次電子像は濃淡で示し、軽い元素ほど黒く、また重い元素ほど白く示される。この結果より断面組織観察結果と同様にCu−Ga二元系合金相とCu相の2相が存在しており、これらは層状組織を有していることを確認した。
次に、加工性の評価方法は、平板に溶射した20個の評価サンプルを平面研削にて加工を行い、割れ、または0.5mm以上のチッピングが発生する割合を算出し、発生率が0〜5%であれば(◎)、5〜15%であれば(○)、15%以上であれば(×)と評価した。上記方法で加工性の評価を行ったところ、20個の評価サンプル中で割れ、または、チッピングはすべて発生しなかった。
次に、得られたCu−Ga二元系合金相及びCu相からなる皮膜中のGa量を確認するために、ICP−AES(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析にて分析を行った。その結果、Ga量は33.0質量%であった。
次に、膜の評価をするため、得られたφ75mmのCu製バッキングプレートに形成されているCu−Ga二元系合金相及びCu相からなる皮膜を平面研削盤で加工し、厚さ6mmtに仕上げた。
得られたスパッタリングターゲットは、スパッタリング装置に取り付け、また、20mm×20mmのガラス基板をスパッタリングターゲットと対向させた位置に取り付け、装置内を3.0×10―4Paまで真空引きした後、ガス圧を4.0×10−1Paに保ち、投入電力200Wにて膜厚が500Åとなるようにスパッタリングを行った。得られたCu−Ga合金薄膜について膜内の均一性を評価する。その評価方法は、次のように行った。
均一性の評価方法として、得られたCu−Ga合金薄膜についてEPMA(Electron Probe MicroAnalyser)のライン分析によりビーム径を50μmとし、一方向に10mm走査してGa濃度を測定する。10mm間におけるGa濃度の最大値と最小値の差が1%未満であれば(○)、1%以上であれば(×)とした。この方法でCu−Ga合金薄膜の均一性を評価したところGa量の最大値と最小値との差は1%以下であった。
また、ガラス基板に成膜したCu−Ga合金薄膜の表面をEPMAのマッピング分析を行った。結果を図8に示す。図8においてCu、Gaとも均一に分布していることが明らかである。
(実施例2〜8、比較例1〜6)
実施例2〜8、比較例1〜6は、出発原料を表1に示す組成で秤量し、実施例1と同様に溶解・鋳造にて鋳塊を作製した。得られたCu−Ga合金鋳塊を粉砕して分級することで粒度調整をした。このCu−Ga合金粉砕粉末とCu粉末とを表1に示す割合で混合することでCu−Ga合金混合粉末を得た。
得られた混合粉末は、プラズマ溶射にてCu−Ga合金スパッタリングターゲットを得た。各評価は、実施例1と同様にして行い、評価結果を合わせて表2に示す。
(実施例9)
実施例9は、出発原料を実施例1と同様に配合し、基材については外径φ125mm(肉厚9.5mm)長さ500mmLのSUS製バッキングチューブを用いて溶射した。
得られたφ125mmのSUS製バッキングチューブに形成されているCu−Ga二元系合金相及びCu相からなる皮膜を加工するために円筒研削盤で加工し、厚さ6mmtのCu−Ga合金スパッタリングターゲットを得た。各評価は、実施例1と同様にして行い、評価結果を表2に示す。
(実施例10)
実施例10は、出発原料を実施例1と同様に配合し、溶射のプロセスとして高速フレーム溶射(HVOF溶射)にて行ったこと以外は実施例1と同様にしてCu−Ga合金スパッタリングターゲットを得た。各評価は、実施例1と同様にして行い、評価結果を表2に示す。
(従来例1)
従来例1では、出発原料として表1に示す組成のCu−Ga合金粉末を用意し(最小粒径45μm、最大粒径106μm、平均粒径:95μm)、更に30/5μm(最小粒径5μm、最大粒径30μm、平均粒径:17μm)のガスアトマイズCu粉を用いて、スパッタリングターゲットにおいてCu−32質量%となるように混合するため、90:20の割合で配合して三次元混合機にて100rpmで1時間の条件で混合してCu−Ga合金粉末を作製した。得られたCu−Ga合金粉末をホットプレス用黒鉛型に充填し、Ar雰囲気で焼結温度460℃、面圧25MPaの条件にてプレスした。
得られた焼結体を平面研削にて加工していたところ、端部でチッピングが発生し、当該部位を基点として割れが発生したため中止とした。
なお、割れた焼結体でも健全な部分を用いて10mm角に切断し、実施例1と同様の条件で断面のEPMAマッピング分析を行い、元素分布を確認した。分析結果を図9に示す。図9のA,Bの各元素のマッピング像、Cの反射電子像、及びDの各元素の成分値レベルより、高Ga含有Cu−Ga合金相の周囲を低Ga含有のCu−Ga合金相が粒界相として包囲した組織を有しており、おおまかな成分値としては高Ga含有Cu−Ga合金相のGa量は30〜40%、低Ga含有Cu−Ga合金相のGa量は十数%以下であることを確認した。更に加工性を評価するため、20mm角に切断し、実施例1と同様の条件で加工性を評価したところ、20個の評価サンプル中で割れ、または、チッピングは8個発生した。
(従来例2)
従来例2では、出発原料を表1に示す配合割合で混合し、高周波誘導真空溶解炉(富士電波工業株式会社製)でAr雰囲気にて950℃に加熱して溶解し、鉄製の鋳型に鋳造した。得られた鋳塊を確認したところ、全面に割れが発生したため中止とした。
表1及び表2に示す結果から、実施例1乃至実施例10は、Cu−Ga合金粉末とCu粉末を混合した混合粉末を原料に用いて溶射法により、基材上にCu−Ga二元系合金相内にCu相が層状に存在する組織とすることで、比較例と比べてターゲットの加工性に優れ、ターゲットに含まれるGaの含有量が原料と比べてほとんど減少することなく、更に、Ga濃度が均一なスパッタ膜を形成できることがわかる。
比較例1の結果からターゲット中のGaの含有量が多い場合、脆弱となり加工性が悪くなることがわかる。比較例2の結果からCu−Ga合金粉末中のGaの含有量が多い場合、ターゲット中のCu−Ga二元系合金相が非常に脆くなり、Cu相が含まれていても割れが発生することがわかる。
比較例3の結果からCu粉の混合割合が少ない場合、ターゲット中に強固かつ延性なCu相が少ないため、脆くなり加工性が悪くなることがわかる。比較例4の結果からCu粉の混合割合が多い場合、Cu相が多くなり、薄膜の均一性が悪くなることがわかる。
比較例5の結果からCu−Ga合金粉末の粒度が大きい場合、ターゲットの密度が低下し、加工性が悪くなることがわかる。比較例6の結果からCu−Ga合金粉末の粒度が小さい場合、溶射の際にGaが昇華して、皮膜中のGaの含有量が減少し、薄膜の均一性が悪くなることがわかる。
また、実施例1乃至10は、高Ga含有Cu−Ga合金相の周囲を低Ga含有のCu−Ga合金相が粒界相として包囲した組織を有する従来例1と比較して、マイクロクラックが発生せず、加工性が良く、スパッタ膜中のGa濃度も均一となった。
実施例1乃至10と、溶解・鋳造方法を用いた従来例2と比較すると、従来例2ではターゲットを作製できなかったが、実施例1乃至10ではターゲットを作製することができ、加工性が優れたものとなった。

Claims (6)

  1. Ga量が15〜45質量%で残部がCu及び不可避的不純物からなるCu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法において、
    Cu−Ga合金粉末中におけるGa量が15.15〜50質量%で残部がCuであるCu−Ga合金粉末と、Cu粉末とを質量比で99:1〜70:30の割合で配合した混合粉末を用い、溶射法にて基材上に皮膜を形成することを特徴とするCu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法。
  2. 上記Cu−Ga合金粉末の粒度分布は20〜210μmの範囲内であることを特徴とする請求項1記載のCu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法。
  3. 上記Cu粉末の粒度分布は10〜210μmの範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のCu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法。
  4. 上記基材は、円筒型であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のCu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法。
  5. 長尺状の上記基材上に上記皮膜を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のCu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法。
  6. Ga量が15〜45質量%で残部がCu及び不可避的不純物からなるCu−Ga合金スパッタリングターゲットにおいて、
    基材上に溶射法により形成され、Cu−Ga二元系合金相内にCu相が層状に存在する組織からなるターゲット材を有することを特徴とするCu−Ga合金スパッタリングターゲット。
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