本発明の実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。よって、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
なお、本明細書等において「上」や「下」という用語は、構成要素の位置関係が「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁膜上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁膜とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
また、本明細書等において「電極」や「配線」という用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合などをも含む。
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、「ソース」や「ドレイン」という用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
また、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限はない。
また、本明細書等で用いる「チャネル」とは、キャリアが流れる部分のことをいい、「チャネル形成領域」とは、チャネルが形成されうる領域のことをいう。また、本明細書等において、チャネル長方向とは、チャネル形成領域において電流が流れる方向のことであり、ソース電極からドレイン電極へと向かう方向、またはその反対の方向のことをいう。
(実施の形態1)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置の構成および作製方法について、図1乃至図8を参照して説明する。
まず、基本の記憶素子の構成と素子特性について図30を用いて説明する。
図30(A)は記憶素子の基本構造であり、トランジスタ160(第1のトランジスタ)と、トランジスタ162(第2のトランジスタ)とで構成される。
ここで、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続されている。また、第1の配線SL(ソース線)トランジスタ160のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線BL(ビット線)とトランジスタ160のドレイン電極とは、電気的に接続されている。そして、第3の配線S1(第1信号線)とトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線S2(第2信号線)と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続されている。
酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ160は十分な高速動作が可能なため、該トランジスタを用いることにより、記憶内容の読み出しなどを高速に行うことが可能である。また、酸化物半導体を用いたトランジスタ162は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、トランジスタ162をオフ状態とすることで、トランジスタ160のゲート電極の電位を極めて長時間にわたって保持することが可能である。
第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位として、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ160のゲート電極に与えられる。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位として、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、トランジスタ160のゲート電極の電位がnodeAに保持される。
このとき、nodeAに保持されている電位が2VならHigh、0VならLowとすると図30(B)に示すように、Highのときは、ゲート電圧Vgが0Vの場合にドレイン電流Idが流れ、Lowのときゲート電圧Vgが0Vの場合にドレイン電流Idが流れない。本発明の一態様の記憶素子は、このような素子特性を有している。
<半導体装置の回路構成>
半導体装置が有する記憶素子(以下、メモリセルとも記す)の回路図の一例を図1に示す。図1に示すメモリセル200は、第1の配線SL(ソース線)と、第2の配線BL(ビット線)と、第3の配線S1(第1信号線)と、第4の配線S2(第2信号線)と、第5の配線WL(ワード線)と、トランジスタ160(第1のトランジスタ)と、トランジスタ162(第2のトランジスタ)と、トランジスタ161(第3のトランジスタ)と、から構成されている。トランジスタ160およびトランジスタ161は、酸化物半導体以外の材料を用いて形成されており、トランジスタ162は酸化物半導体を用いて形成されている。
ここで、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続されている。また、第1の配線と、トランジスタ160のソース電極とは、電気的に接続され、トランジスタ160のドレイン電極と、トランジスタ161のソース電極とは、電気的に接続されている。そして、第2の配線と、トランジスタ161のドレイン電極とは、電気的に接続され、第3の配線と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続され、第5の配線と、トランジスタ161のゲート電極とは電気的に接続されている。
また、酸化物半導体膜にチャネルが形成されるトランジスタ162に安定した電気特性を付与するためには、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低減し、高純度真性化することが有効である。高純度真性化とは、酸化物半導体膜を真性または実質的に真性にすることをいう。なお、実質的に真性という場合、酸化物半導体膜のキャリア密度は、1×1017cm3未満、好ましくは1×1015cm3未満、さらに好ましくは1×1013cm3未満である。酸化物半導体膜において、水素、窒素、炭素、シリコン、および主成分以外の金属元素は不純物となる。酸化物半導体膜中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。
例えば、酸化物半導体中でシリコンは、不純物準位を形成する。また、該不純物準位がトラップとなり、トランジスタの電気特性を劣化させることがある。具体的には、酸化物半導体膜のシリコン濃度を1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。なお、トランジスタのゲート絶縁膜としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコンなど、シリコンを含む絶縁膜が多く用いられるため、酸化物半導体膜のチャネルをゲート絶縁膜と離間した層に形成することが好ましい。
また、酸化物半導体膜中で水素および窒素は、ドナー準位を形成し、キャリア密度を増大させてしまう。
また、ゲート絶縁膜と酸化物半導体膜との界面にチャネルが形成される場合、該界面で界面散乱が起こり、トランジスタの電界効果移動度が低くなる。このような観点からも、トランジスタのチャネルは、酸化物半導体膜の、ゲート絶縁膜と離間した層に形成されることが好ましい。
トランジスタのチャネルをゲート絶縁膜から離すためには、例えば、以下のような構成とすればよい。
酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜およびゲート絶縁膜の間に設けられた酸化物膜と、を有する。酸化物膜は、酸化物半導体膜を構成する元素一種以上から構成され、伝導帯下端のエネルギーが酸化物半導体膜よりも0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上または0.15eV以上、かつ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下または0.4eV以下真空準位に近い酸化物膜である。なお、酸化物半導体膜は少なくともインジウムを含むと、キャリア移動度が高くなるため好ましい。このとき、ゲート電極に電界を印加すると、伝導帯下端のエネルギーが小さい酸化物半導体膜にチャネルが形成される。即ち、酸化物半導体膜とゲート絶縁膜との間に酸化物膜を有することによって、トランジスタのチャネルをゲート絶縁膜と接しない層(ここでは酸化物半導体膜)に形成することができる。また、酸化物半導体膜を構成する元素一種以上から酸化物膜が構成されるため、酸化物半導体膜と酸化物膜との界面において、界面散乱が起こりにくい。従って、該界面においてはキャリアの動きが阻害されないため、トランジスタの電界効果移動度を高くすることができる。
次に、回路の動作について具体的に説明する。
メモリセル200への書き込みを行う場合は、第1の配線を0V、第5の配線を0V、第2の配線を0V、第4の配線を2Vとする。データ”1”を書き込む場合には第3の配線を2V、データ”0”を書き込む場合には第3の配線を0Vとする。このとき、トランジスタ161はオフ状態、トランジスタ162はオン状態となる。なお、書き込み終了にあたっては、第3の配線の電位が変化する前に、第4の配線を0Vとして、トランジスタ162をオフ状態にする。
その結果、データ”1”書き込み後にはトランジスタ160のゲート電極に接続されるノード(以下、nodeA)の電位が約2V、データ”0”書き込み後にはnodeAの電位が約0Vとなる。nodeAには、第3の配線の電位に応じた電荷が蓄積されるが、トランジスタ162のオフ電流が極めて小さい、あるいは実質0であることから、トランジスタ160のゲート電極の電位は長時間にわたって保持される。書き込み動作のタイミングチャートの一例を図3に示す。
次に、メモリセルの読み出しを行う場合は、第1の配線を0V、第5の配線を2V、第4の配線を0V、第3の配線を0Vとし、第2の配線に接続されている読み出し回路を動作状態とする。このとき、トランジスタ161はオン状態、トランジスタ162はオフ状態となる。
データ”0”、つまりnodeAが約0Vの状態であればトランジスタ160はオフ状態であるから、第2の配線と第1の配線間の抵抗は高い状態となる。一方、データ”1”、つまりnodeAが約2Vの状態であればトランジスタ160がオン状態であるから、第2の配線と第1の配線間の抵抗は低い状態となる。読み出し回路は、メモリセルの抵抗状態の違いから、データ”0”,”1”を読み出すことができる。なお、書き込み時の第2の配線は0Vとしたが、フローティング状態や0V以上の電位に充電されていても構わない。読み出し時の第3の配線は0Vとしたが、フローティング状態や0V以上の電位に充電されていても構わない。
なお、データ”1”とデータ”0”は便宜上の定義であって、逆であっても構わない。また、上述した動作電圧は一例である。動作電圧は、データ”0”の場合にトランジスタ160がオフ状態となり、データ”1”の場合にトランジスタ160がオン状態となるように、また、書き込み時にトランジスタ162がオン状態、書き込み時以外ではオフ状態となるように、また、読み出し時にトランジスタ161がオン状態となるように選べばよい。特に2Vの代わりに、周辺の論理回路の電源電位VDDを用いてもよい。
なお、上記説明は、電子を多数キャリアとするnチャネル型トランジスタを用いる場合についてのものであるが、nチャネル型トランジスタに代えて、正孔を多数キャリアとするpチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。
<半導体装置の断面構成>
図2は、上記半導体装置の構成の一例である。図2には、半導体装置の断面を示す。ここで、図2に示される半導体装置は、下部に酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ160およびトランジスタ161を有し、上部に酸化物半導体を用いたトランジスタ162を有するものである。なお、トランジスタ160、トランジスタ161およびトランジスタ162は、いずれもn型トランジスタとして説明するが、p型トランジスタを採用しても良い。特に、トランジスタ160およびトランジスタ161は、p型とすることが容易である。
図2に示すように、トランジスタ160およびトランジスタ161は基板100上に形成されている。基板100は、例えば、n型またはp型の導電型を有する単結晶シリコン基板、化合物半導体基板(GaAs基板、InP基板、GaN基板、SiC基板、ZnSe基板等)等を用いることができる。図2では、n型の導電性を有する単結晶シリコン基板を用いた場合を例示している。
トランジスタ160およびトランジスタ161は、素子分離絶縁膜101により、電気的に分離されている。素子分離絶縁膜101の形成には、選択酸化法(LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法)またはトレンチ分離法等を用いることができる。なお、基板100としてSOI(Silicon On Insulator)型の半導体基板を用いてもよい。この場合、素子分離は、半導体層をエッチングにより素子ごとに分割すればよい。
トランジスタ162は、上述した、酸化物半導体膜にチャネルが形成されるトランジスタであり、当該トランジスタは、安定した電気特性が付与されている。
トランジスタ160は、高濃度不純物領域107および低濃度不純物領域108と、ゲート電極109と、基板100とゲート電極109の間に設けられたゲート絶縁膜106aと、を有する。ゲート電極109の周囲にはサイドウォール絶縁膜136が形成されている。
トランジスタ161は、高濃度不純物領域103および低濃度不純物領域104と、ゲート電極105と、基板100とゲート電極105の間に設けられたゲート絶縁膜106bと、を有する。ゲート電極105の周囲にはサイドウォール絶縁膜135が形成されている。
トランジスタ162は、多層膜130と、多層膜130上にソース電極となる導電膜132aおよび導電膜133aと、多層膜130上にドレイン電極となる導電膜132bおよび導電膜133bと、多層膜130、導電膜133aおよび導電膜133b上のゲート絶縁膜131と、ゲート絶縁膜131上の多層膜130と重畳し、かつ、導電膜133aおよび導電膜133bと重畳しない領域に設けられたゲート電極134とを有する。
トランジスタ160およびトランジスタ161上には、絶縁膜116が設けられている。絶縁膜116には開口部が形成されており、上記開口部に、高濃度不純物領域103に接して配線110および配線111が形成され、高濃度不純物領域107に接して配線112および配線113が形成されている。また、ゲート電極109に接して配線115が形成されている。
そして、配線110は、絶縁膜116上に形成された配線117に接続されており、配線111および配線112は、絶縁膜116上に形成された配線118に接続されており、配線113は、絶縁膜116上に形成された配線120に接続されており、配線115は、絶縁膜116上に形成された配線119に接続されている。
配線117乃至配線120上には、絶縁膜121が形成されている。絶縁膜121には開口部が形成されており、絶縁膜121上には、上記開口部において配線119に接続された配線122と、配線123とが形成されている。また、配線122および配線123上には、絶縁膜124が形成されている。
絶縁膜124上に、酸化物半導体膜130bを含む多層膜130を有するトランジスタ162が形成されている。トランジスタ162は、多層膜130上にソース電極として機能する導電膜132aおよび導電膜133aと、ドレイン電極として機能する導電膜132bおよび導電膜133bと、ゲート絶縁膜131と、並びにゲート電極134とを有する。導電膜132aは、絶縁膜124に設けられた開口部において、配線122に接続されている。
配線123が、絶縁膜124を間に挟んで多層膜130と重なる位置に設けられている。配線123は、トランジスタ162のバックゲートとしての機能を有する。配線123は、必要に応じて設けられる。
トランジスタ162は、絶縁膜144および絶縁膜145に覆われている。絶縁膜144としては、絶縁膜145から放出された水素が多層膜130に侵入するのを防ぐ機能を有する絶縁膜が好ましい。
導電膜146が絶縁膜145上に設けられている。ゲート絶縁膜131、絶縁膜144および絶縁膜145に設けられた開口部において、導電膜146は導電膜133bに接している。
<半導体装置の作製方法>
次に、上記半導体装置の作製方法の一例について説明する。以下では、はじめに下部のトランジスタ160およびトランジスタ161の作製方法について図4および図5を参照して説明し、その後、上部のトランジスタ162の作製方法について図6および図7を参照して説明する。
<下部のトランジスタの作製方法>
まず、半導体材料を含む基板100を用意する(図4(A)参照)。半導体材料を含む基板100としては、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することができる。ここでは、半導体材料を含む基板100として、単結晶シリコン基板を用いる場合の一例について示すものとする。なお、一般に「SOI基板」は、絶縁表面上にシリコン半導体層が設けられた構成の基板をいうが、本明細書等においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体層が設けられた構成の基板をも含む概念として用いる。つまり、「SOI基板」が有する半導体層は、シリコン半導体層に限定されない。また、SOI基板には、ガラス基板などの絶縁基板上に絶縁層を介して半導体層が設けられた構成のものが含まれるものとする。
基板100上には、素子分離絶縁膜を形成するためのマスクとなる保護膜170を形成する(図4(A)参照)。保護膜170としては、例えば、酸化シリコンや窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどを材料とする絶縁膜を用いることができる。なお、この工程の前後において、トランジスタのしきい値電圧を制御するために、n型の導電性を付与する不純物元素やp型の導電性を付与する不純物元素を基板100に添加してもよい。半導体がシリコンの場合、n型の導電性を付与する不純物としては、例えば、リンや砒素などを用いることができる。また、p型の導電性を付与する不純物としては、例えば、硼素、アルミニウム、ガリウムなどを用いることができる。
次に、上記の保護膜170をマスクとして用いてエッチングを行い、保護膜170に覆われていない領域(露出している領域)の基板100の一部を除去する。これにより分離された半導体領域171が形成される(図4(B)参照)。当該エッチングには、ドライエッチングを用いるのが好適であるが、ウェットエッチングを用いても良い。エッチングガスやエッチング液については被エッチング材料に応じて適宜選択することができる。
次に、半導体領域171を覆うように絶縁層を形成し、半導体領域171に重畳する領域の絶縁層を選択的に除去することで、素子分離絶縁膜101を形成する(図4(B)参照)。当該絶縁膜は、酸化シリコンや窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどを用いて形成される。絶縁層の除去方法としては、CMPなどの研磨処理やエッチング処理などがあるが、そのいずれを用いても良い。なお、半導体領域171の形成後、または、素子分離絶縁膜101の形成後には、上記保護膜170を除去する。
次に、半導体領域171上に絶縁膜を形成し、当該絶縁膜上に導電材料を含む層を形成する。
絶縁膜は後のゲート絶縁膜となるものであり、CVD法やスパッタリング法等を用いて得られる酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAlxOy(x>0、y>0))等を含む膜の単層構造または積層構造とすると良い。他に、高密度プラズマ処理や熱酸化処理によって、半導体領域171の表面を酸化、窒化することにより、上記絶縁膜を形成してもよい。高密度プラズマ処理は、例えば、He、Ar、Kr、Xeなどの希ガス、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスを用いて行うことができる。また、絶縁膜の厚さは特に限定されないが、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。
導電材料を含む層は、アルミニウムや銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材料を用いて形成することができる。また、導電材料を含む多結晶シリコンなどの半導体材料を用いて、導電材料を含む層を形成しても良い。形成方法も特に限定されず、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。なお、本実施の形態では、導電材料を含む層を、金属材料を用いて形成する場合の一例について示すものとする。
その後、絶縁膜および導電材料を含む層を選択的にエッチングして、ゲート絶縁膜106a、ゲート絶縁膜106b、ゲート電極105およびゲート電極109を形成する(図4(C)参照)。
次に、半導体領域171にリン(P)やヒ素(As)などを添加して、浅い接合深さの低濃度不純物領域104および低濃度不純物領域108を形成する(図4(C)参照)。なお、ここではn型トランジスタを形成するためにリンやヒ素を添加しているが、p型トランジスタを形成する場合には、硼素(B)やアルミニウム(Al)などの不純物元素を添加すればよい。なお、低濃度不純物領域104および低濃度不純物領域108の形成により、半導体領域171のゲート絶縁膜106aおよびゲート絶縁膜106bの下部には、チャネル形成領域172およびチャネル形成領域173が形成される(図4(C)参照)。ここで、添加する不純物の濃度は適宜設定することができるが、半導体素子が高度に微細化される場合には、その濃度を高くすることが望ましい。
次に、サイドウォール絶縁膜135およびサイドウォール絶縁膜136を形成する(図4(D)参照)。サイドウォール絶縁膜135およびサイドウォール絶縁膜136は、ゲート絶縁膜106a、ゲート絶縁膜106b、ゲート電極105およびゲート電極109を覆うように絶縁膜を形成した後に、当該絶縁膜に異方性の高いエッチング処理を適用することで、自己整合的に形成することができる。また、この際に、当該絶縁膜を部分的にエッチングして、ゲート電極105およびゲート電極109の上面を露出させると良い。
次に、ゲート電極105、ゲート電極109、低濃度不純物領域104、低濃度不純物領域108、サイドウォール絶縁膜135およびサイドウォール絶縁膜136等を覆うように、絶縁膜を形成する。そして、低濃度不純物領域104および低濃度不純物領域108と接する領域に、リン(P)やヒ素(As)などを添加して、高濃度不純物領域103および高濃度不純物領域107を形成する(図5(A)参照)。その後、上記絶縁膜を除去する。
次に、上述の工程により形成された各構成を覆うように、絶縁膜116を形成する(図5(B)参照)。絶縁膜116は、酸化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル等の無機絶縁材料を用いて形成することができる。また、ポリイミド、アクリル等の有機絶縁材料を用いて形成することも可能である。なお、ここでは、絶縁膜116の形成後には、その表面を、CMPやエッチング処理などによって平坦化しておくことが望ましい。
その後、上記絶縁膜116に、高濃度不純物領域103、高濃度不純物領域107およびゲート電極109にまで達する開口を形成し、当該開口に、ソース電極またはドレイン電極となる配線110、配線111、配線112および配線113と、ゲート電極109と接続する配線115を形成する(図5(C)参照)。配線110、配線111、配線112、配線113および配線115は、例えば、開口を含む領域にPVD法やCVD法などを用いて導電膜を形成した後、エッチング処理やCMPなどの方法を用いて、上記導電膜の一部を除去することにより形成することができる。
なお、上記導電膜の一部を除去して配線110、配線111、配線112、配線113および配線115を形成する際には、その表面が平坦になるように加工することが望ましい。例えば、開口を含む領域にチタン膜や窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を形成する場合には、その後のCMPによって、不要なタングステン、チタン、窒化チタンなどを除去すると共に、その表面の平坦性を向上させることができる。このように、配線110、配線111、配線112、配線113および配線115を含む表面を平坦化することにより、後の工程において、良好な電極、配線、絶縁膜、半導体膜などを形成することが可能となる。
配線110、配線111、配線112、配線113および配線115として用いることができる材料について特に限定はなく、各種導電材料を用いることができる。例えば、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウムなどの導電性材料を用いることができる。
次に、配線110と接続する配線117、配線111および配線112と接続する配線118、配線115と接続する配線119、および配線114と接続する配線120を形成する。(図5(D)参照)。配線110、配線111、配線112、配線113および配線115は、ゲート電極105等と同様の方法および材料を用いて形成することができる。
次に、上述の工程により形成された各構成を覆うように、絶縁膜121を形成する(図5(D)参照)。絶縁膜121は、絶縁膜116と同様の方法および材料を用いて形成することができる。また、絶縁膜116上にはトランジスタ162が形成されるため、水素をブロックする窒化絶縁膜にすることが好ましい。
以上により、半導体材料を含む基板100を用いたトランジスタ160およびトランジスタ161が形成される。なお、上記工程の後には、さらに電極や配線、絶縁膜などを形成しても良い。配線の構造として、絶縁膜および導電膜の積層構造でなる多層配線構造を採用することにより、高度に集積化した半導体装置を提供することができる。
<上部のトランジスタの作製方法>
次に、図6および図7を用いて、絶縁膜121上にトランジスタ162を作製する工程について説明する。なお、図6および図7は、絶縁膜121上の各種電極や、トランジスタ162などの作製工程を示すものであるから、トランジスタ162の下部に存在するトランジスタ160およびトランジスタ161については省略している。
まず、絶縁膜121に、配線119にまで達する開口を形成し、当該開口に、配線122を形成する。また、後に形成される絶縁膜124を間に挟んで多層膜130と重なる位置に配線123を配線122と同時に形成する。配線123は、トランジスタ160のバックゲートとしての機能を有する。配線123は、必要に応じて設けられる。(図6(A)参照)。配線122および配線123は、配線110などと同様の方法および材料を用いて形成することができる。
次に、絶縁膜121、配線122および配線123を覆う絶縁膜124を形成する(図6(A)参照)。ここでは、絶縁膜124の形成後には、その表面を、CMPやエッチング処理などによって平坦化しておくことが望ましい。絶縁膜124は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウムなどで形成することができる。なお、絶縁膜124として、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウムなどで形成することで、トランジスタ160およびトランジスタ161側(下部)から不純物、代表的にはアルカリ金属、水、水素などが、多層膜130に拡散することを抑制できる。絶縁膜124は、スパッタリング法またはCVD法を用いて形成することができる。
次に、絶縁膜124上の配線123と重畳する領域に酸化物半導体膜を含む多層膜130を形成する(図6(B)参照)。
多層膜130について、図8を用いて説明する。
図8に示す多層膜130は、酸化物膜130aと、酸化物膜130a上に設けられた酸化物半導体膜130bと、酸化物半導体膜130b上に設けられた酸化物膜130cと、を有する。なお、以下では多層膜130が三層である場合について説明するが、多層膜130が二層または四層以上であっても構わない。例えば、多層膜130は、酸化物膜130aと、酸化物膜130a上に設けられた酸化物半導体膜130bと、を有する構成としてもよいし、多層膜130は、酸化物半導体膜130bと、酸化物半導体膜130b上に設けられた酸化物膜130cと、を有する構成としてもよい。
酸化物膜130aは、酸化物半導体膜130bを構成する元素一種または二種以上から構成され、酸化物半導体膜130bよりも電子親和力が0.2eV以上小さい酸化物膜である。このとき、ゲート電極に電界を印加すると、多層膜のうち、電子親和力の大きい酸化物半導体膜130bにチャネルが形成される。即ち、酸化物半導体膜130bとゲート絶縁膜との間に酸化物膜130aを有することによって、トランジスタのチャネルをゲート絶縁膜と接しない層(ここでは酸化物半導体膜130b)に形成することができる。また、酸化物半導体膜130bを構成する元素一種以上から酸化物膜130aが構成されるため、酸化物半導体膜130bと酸化物膜130aとの界面において、界面散乱が起こりにくい。従って、該界面においてはキャリアの動きが阻害されないため、トランジスタの電界効果移動度を高くすることができる。
また、酸化物膜130cは、酸化物半導体膜130bを構成する元素一種または二種以上から構成され、酸化物半導体膜130bよりも電子親和力が0.2eV以上小さい酸化物膜である。このとき、ゲート電極に電界を印加すると、多層膜のうち、電子親和力の大きい酸化物半導体膜130bにチャネルが形成される。即ち、酸化物半導体膜130bとゲート絶縁膜との間に酸化物膜130cを有することによって、トランジスタのチャネルをゲート絶縁膜と接しない層(ここでは酸化物半導体膜130b)に形成することができる。また、酸化物半導体膜130bを構成する元素一種以上から酸化物膜130cが構成されるため、酸化物半導体膜130bと酸化物膜130cとの界面において、界面散乱が起こりにくい。従って、該界面においてはキャリアの動きが阻害されないため、トランジスタの電界効果移動度を高くすることができる。
例えば、酸化物膜130aおよび酸化物膜130cは、酸化物半導体膜130bと同じ元素(インジウム、ガリウム、亜鉛)を主成分とし、ガリウムを酸化物半導体膜130bよりも高い原子数比で含む酸化物膜とすればよい。具体的には、酸化物膜130aおよび酸化物膜130cとして、酸化物半導体膜130bよりもガリウムを1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上高い原子数比で含む酸化物膜を用いる。ガリウムは酸素と強く結合するため、酸素欠損が酸化物膜に生じることを抑制する機能を有する。即ち、酸化物膜130aおよび酸化物膜130cは酸化物半導体膜130bよりも酸素欠損が生じにくい酸化物膜である。
また、酸化物半導体膜130bがIn−Ga−Zn酸化物であり、酸化物膜130aもIn−Ga−Zn酸化物であるとき、酸化物膜130aをIn:Ga:Zn=x1:y1:z1[原子数比]、酸化物半導体膜130bをIn:Ga:Zn=x2:y2:z2[原子数比]とすると、y1/x1がy2/x2よりも大きくなる酸化物膜130aおよび酸化物半導体膜130bを選択する。好ましくは、y1/x1がy2/x2よりも1.5倍以上大きくなる酸化物膜130aおよび酸化物半導体膜130bを選択する。さらに好ましくは、y1/x1がy2/x2よりも2倍以上大きくなる酸化物膜130aおよび酸化物半導体膜130bを選択する。より好ましくは、y1/x1がy2/x2よりも3倍以上大きくなる酸化物膜130aおよび酸化物半導体膜130bを選択する。
また、多層膜130は、ゲート絶縁膜および酸化物半導体膜130bと接し、酸化物半導体膜130bを構成する元素一種以上から構成され、酸化物半導体膜130bよりも電子親和力が0.2eV以上小さい酸化物膜130cを含んでもよい。このとき、ゲート電極に電界を印加しても、酸化物膜130cにはチャネルが形成されない。また、酸化物半導体膜130bを構成する元素一種以上から酸化物膜130cが構成されるため、酸化物半導体膜130bと酸化物膜130cとの界面に界面準位を形成しにくい。該界面が界面準位を有すると、該界面をチャネル形成領域としたしきい値電圧の異なる他のトランジスタが形成され、トランジスタの見かけ上のしきい値電圧が変動することがある。従って、酸化物膜130cを設けることにより、トランジスタのしきい値電圧などの電気特性のばらつきを低減することができる。
また、酸化物半導体膜130bがIn−Ga−Zn酸化物であり、酸化物膜130cもIn−Ga−Zn酸化物であるとき、酸化物半導体膜130bをIn:Ga:Zn=x2:y2:z2[原子数比]、酸化物膜130cをIn:Ga:Zn=x3:y3:z3[原子数比]とすると、y3/x3がy2/x2よりも大きくなる酸化物半導体膜130bおよび酸化物膜130cを選択する。好ましくは、y3/x3がy2/x2よりも1.5倍以上大きくなる酸化物半導体膜130bおよび酸化物膜130cを選択する。さらに好ましくは、y3/x3がy2/x2よりも2倍以上大きくなる酸化物半導体膜130bおよび酸化物膜130cを選択する。より好ましくは、y3/x3がy2/x2よりも3倍以上大きくなる酸化物半導体膜130bおよび酸化物膜130cを選択する。
酸化物膜130aの厚さは、1nm以上50nm以下、好ましくは5nm以上50nm以下、さらに好ましくは10nm以上40nm以下とする。また、酸化物半導体膜130bの厚さは、1nm以上50nm以下、好ましくは3nm以上40nm以下、さらに好ましくは5nm以上30nm以下とする。酸化物膜130cの厚さは、1nm以上50nm以下、好ましくは3nm以上40nm以下、さらに好ましくは5nm以上30nm以下とする。
また、酸化物膜130a、酸化物半導体膜130bおよび酸化物膜130cに、結晶性の異なる酸化物半導体を適用してもよい。すなわち、非晶質酸化物半導体、ならびに単結晶酸化物半導体、多結晶酸化物半導体およびCAAC−OS(CAAC−OSの詳細については、実施の形態7を参照。)などの結晶質酸化物半導体を適宜組み合わせた構成としてもよい。また、酸化物膜130a、酸化物半導体膜130bおよび酸化物膜130cのいずれか一に非晶質酸化物半導体を適用すると、酸化物半導体膜の内部応力や外部からの応力を緩和し、トランジスタの特性ばらつきが低減される。
例えば、酸化物膜130aは、非晶質酸化物半導体または結晶質酸化物半導体であることが好ましい。また、チャネル形成領域となりうる酸化物半導体膜130bは結晶質酸化物半導体であることが好ましい。また、酸化物膜130cは、非晶質酸化物半導体であることが好ましい。酸化物膜130a、酸化物半導体膜130bおよび酸化物膜130cが順に積層された多層膜130を有する構造とすることで、トランジスタの経時変化や信頼性試験によるしきい値電圧の変動量を低減することができる。
酸化物半導体膜を含む多層膜130に適用可能な酸化物半導体として、エネルギーギャップが2.5eV以上、好ましくは2.7eV以上、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタ162のオフ電流を低減することができる。オフ電流の低減により、記憶素子が電位を長期間保持することができる。多層膜130の詳細については、実施の形態8にて詳しく説明する。
酸化物半導体膜を含む多層膜130としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二種類の金属を含む酸化物であるIn−Zn酸化物、Sn−Zn酸化物、Al−Zn酸化物、Zn−Mg酸化物、Sn−Mg酸化物、In−Mg酸化物、In−Ga酸化物、三種類の金属を含む酸化物であるIn−Ga−Zn酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn酸化物、In−Sn−Zn酸化物、Sn−Ga−Zn酸化物、Al−Ga−Zn酸化物、Sn−Al−Zn酸化物、In−Zr−Zn酸化物、In−Ti−Zn酸化物、In−Sc−Zn酸化物、In−Y−Zn酸化物、In−La−Zn酸化物、In−Ce−Zn酸化物、In−Pr−Zn酸化物、In−Nd−Zn酸化物、In−Sm−Zn酸化物、In−Eu−Zn酸化物、In−Gd−Zn酸化物、In−Tb−Zn酸化物、In−Dy−Zn酸化物、In−Ho−Zn酸化物、In−Er−Zn酸化物、In−Tm−Zn酸化物、In−Yb−Zn酸化物、In−Lu−Zn酸化物、In−Hf−Zn酸化物、四種類の金属を含む酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn酸化物、In−Al−Ga−Zn酸化物、In−Sn−Al−Zn酸化物を用いることができる。
ここで、In−Ga−Zn酸化物とは、In、GaおよびZnを主成分として含む酸化物という意味であり、In、Ga、Znの原子数比は問わない。
また、酸化物半導体として、InMO3(ZnO)m(m>0)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、MnおよびCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=2:2:1、またはIn:Ga:Zn=3:1:2の原子数比のIn−Ga−Zn酸化物を用いることができる。または、In:Sn:Zn=1:1:1、In:Sn:Zn=2:1:3またはIn:Sn:Zn=2:1:5の原子数比のIn−Sn−Zn酸化物を用いるとよい。なお、金属酸化物の原子数比は、誤差として上記の原子数比のプラスマイナス20%の変動を含む。
また、酸化物半導体膜を含む多層膜130に含まれる欠陥、代表的には酸素欠損はできる限り低減されていることが好ましい。例えば、磁場の向きを膜面に対して平行に印加した電子スピン共鳴法によるg値=1.93のスピン密度(酸化物半導体膜に含まれる欠陥密度に相当する)は、測定器の検出下限以下まで低減されていることが好ましい。
また、酸化物半導体膜を含む多層膜130は、水素をできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体膜を含む多層膜130において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、5×1018atoms/cm3未満、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体膜を含む多層膜130は、二次イオン質量分析法により得られるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタ162のオフ電流を増大させることがある。
このように、不純物(水素、窒素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属など)をできる限り低減させ、高純度化させた酸化物半導体膜を含む多層膜130とすることで、トランジスタ162がデプレッション型となることを抑制でき、トランジスタ162のオフ電流を極めて低減することができる。従って、良好な電気特性に有する表示装置を作製できる。また、信頼性を向上させた表示装置を作製することができる。
なお、高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタのオフ電流が低いことは、いろいろな実験により証明できる。例えば、チャネル幅が1×106μmでチャネル長が10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10−13A以下という特性を得ることができる。この場合、トランジスタのチャネル幅で除した数値に相当するオフ電流は、100zA/μm以下であることが分かる。また、容量素子とトランジスタとを接続して、容量素子に流入または容量素子から流出する電荷を当該トランジスタで制御する回路を用いて、オフ電流の測定を行った。当該測定では、上記トランジスタに高純度化された酸化物半導体膜をチャネル形成領域に用い、容量素子の単位時間あたりの電荷量の推移から当該トランジスタのオフ電流を測定した。その結果、トランジスタのソース電極とドレイン電極間の電圧が3Vの場合に、数十yA/μmという、さらに低いオフ電流が得られることが分かった。従って、高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、オフ電流が著しく小さい。
次に、絶縁膜124に、配線122にまで達する開口を形成し、当該開口、絶縁膜124上および多層膜130上に導電膜132を形成する。(図6(C)参照)。導電膜132は、PVD法やCVD法などの成膜法を用いて形成ことができ、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電膜を、単層で、または積層で用いることができる。
次に、導電膜132の一部の上にフォトリソグラフィ法を用いてレジストマスク174を形成する(図6(C)参照)。
次に、レジストマスク174をマスクとして導電膜132を選択的にエッチングし、導電膜132aおよび導電膜132bを形成する(図6(D)参照)。このとき、導電膜132aおよび導電膜132bの間隔は、上記レジストマスク174の形成の際に用いたフォトマスクによって決定される。また、後に形成される導電膜133aおよび導電膜133bと同様に電子ビームを用いた露光をによってレジストマスクを形成してもよい。
次に、絶縁膜124、導電膜132aおよび導電膜132bを覆う導電膜133を形成する(図7(A)参照)。例えば、スパッタリング法などを用いて導電膜133aおよび導電膜133bに適用可能な材料の膜を成膜することにより導電膜133を形成する。
次に、導電膜133上にレジストを形成し、該レジストに対して電子ビームを用いた露光を行い、レジストマスク175を形成する(図7(A)参照)。
レジスト材料としては、例えばシロキサン系レジストまたはポリスチレン系レジストなどを用いることができる。なお、作製するパターンの幅が小さいため、ポジ型レジストよりもネガ型レジストを用いることが好ましい。ポジ型レジストは、レジストを除去したい部分を全て描画しなければならず、処理時間が膨大になる。一方、ネガ型レジストは、マスクとしたい部分のみ描画するため、処理時間が少なくて済む。また、レジスト材料の厚さは、例えば作製するパターンの幅と1:1〜1:2の関係になることが好ましい。例えば、パターンの幅が30nmの場合には、レジストの厚さを30nm以上200nm以下とすることができる。
また、電子ビームを用いた露光では、レジストマスク175はレジストマスク174よりも薄い方が好ましい。レジストマスク175を薄くする場合、被形成面の凹凸をできるだけ平坦にすることが好ましい。本実施の形態の半導体装置の作製方法では、絶縁膜124に平坦化処理を行うことにより、絶縁膜124による凹凸が低減されるため、レジストマスクを薄くすることができる。これにより、電子ビームを用いた露光を精密に行うことができる。
このとき、電子ビームの照射が可能な電子ビーム描画装置において、例えば加速電圧は、5kV〜50kVであることが好ましい。また、電流強度は、5×10−12〜1×10−11Aであることが好ましい。また、最小ビーム径は、2nm以下であることが好ましい。また、作製可能なパターンの最小線幅が8nm以下であることが好ましい。
上記条件により、例えば、パターンの幅を30nm以下、好ましくは20nm以下、さらに好ましくは8nm以下にすることができる。
次に、レジストマスク175をマスクとして導電膜133を選択的にエッチングし、導電膜133aおよび導電膜133bを形成する(図7(B)参照)。なお、導電膜132aおよび導電膜133aはソース電極として機能し、導電膜132bおよび導電膜133bはドレイン電極として機能する。
また、エッチング条件を、薄いレジストマスク175と導電膜133とのエッチング選択比が高い条件とすることが好ましい。例えば、ドライエッチングで、エッチングガスとしてCl2およびHBrの混合ガスを用い、Cl2の流量比よりもHBrの流量比を高くすることが好ましい。例えば、Cl2:HBr=20:80の流量比であることが好ましい。また、誘導結合型プラズマによるエッチング(ICPエッチングともいう)の場合、ICP電力を500Wとしたとき、バイアス電力を30W〜40W以下にすることにより、レジストマスク175と導電膜133とのエッチング選択比を高くできる。
また、導電膜133aおよび導電膜133bの間隔は、導電膜132aおよび導電膜132bの間隔よりも狭い。特に導電膜133aおよび導電膜133bが導電膜132aおよび導電膜132bよりも抵抗が高い場合、導電膜133aおよび導電膜133bの間隔を短くすることにより、ソース電極、酸化物半導体膜、およびドレイン電極間の抵抗を小さくできる。
また、図7(B)に示すように導電膜133aが導電膜132aの上面および側面を覆い、導電膜133bが導電膜132bの上面および側面を覆う構造にすると好ましい。これにより、例えば導電膜133aおよび導電膜133bにより、導電膜132aおよび導電膜132bを保護できる。
このとき、トランジスタのチャネル長は、導電膜133aおよび導電膜133bの間隔である。チャネル長は、例えば50nm未満と短い。例えば、電子ビームを用いた露光により形成されたレジストマスクをエッチングマスクとして用いて導電膜133aおよび導電膜133bの間隔を短くすることにより、チャネル長を短くでき、トランジスタ162の微細化を達成することができ、半導体装置の高集積化を実現することができる。
次に、絶縁膜124、多層膜130、導電膜133aおよび導電膜133b上にゲート絶縁膜131を形成する。(図7(C)参照)。ゲート絶縁膜131は、プラズマCVD法、スパッタリング法等により、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を、単層で、または積層で用いればよい。
ゲート絶縁膜は、例えば、1層目を酸化シリコン層とし、2層目を窒化シリコン層とした多層膜とすればよい。この場合、酸化シリコン層は酸化窒化シリコン層でも構わない。また、窒化シリコン層は窒化酸化シリコン層でも構わない。酸化シリコン層は、欠陥密度の小さい酸化シリコン層を用いると好ましい。具体的には、電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)にてg値が2.001の信号に由来するスピンのスピン密度が3×1017spins/cm3以下、好ましくは5×1016spins/cm3以下である酸化シリコン層を用いる。酸化シリコン層は、過剰酸素を含む酸化シリコン層を用いると好ましい。窒化シリコン層は水素およびアンモニアの放出量が少ない窒化シリコン層を用いる。水素、アンモニアの放出量は、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy:昇温脱離ガス分光法)分析にて測定すればよい。
過剰酸素を含む酸化シリコン層とは、加熱処理などによって酸素を放出することができる酸化シリコン層をいう。酸化シリコン層を絶縁膜に拡張すると、過剰酸素を有する絶縁膜は、加熱処理によって酸素を放出する機能を有する絶縁膜である。
ここで、過剰酸素とは、加熱処理により酸化物半導体膜中や絶縁膜(酸化シリコンや酸化窒化シリコン)中を移動することが可能な酸素または本来の化学量論比にある酸素より過剰に存在する酸素または酸素の不足による酸素欠損(空孔)を過剰酸素により満たすまたは充填する機能を有する酸素をいう。
ここで、加熱処理によって酸素を放出するとは、TDS分析にて放出される酸素が酸素原子に換算して1×1018atoms/cm3以上、1×1019atom/cm3以上または1×1020atoms/cm3以上であることをいう。
ここで、TDS分析を用いた酸素の放出量の測定方法について、以下に説明する。
測定試料をTDS分析したときの気体の全放出量は、放出ガスのイオン強度の積分値に比例する。そして標準試料との比較により、気体の全放出量を計算することができる。
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコンウェハのTDS分析結果、および測定試料のTDS分析結果から、測定試料の酸素分子の放出量(NO2)は、数式(1)で求めることができる。ここで、TDS分析で得られる質量数32で検出されるガスの全てが酸素分子由来と仮定する。質量数32のものとしてほかにCH3OHがあるが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体である質量数17の酸素原子および質量数18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
NH2は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。SH2は、標準試料をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。ここで、標準試料の基準値を、NH2/SH2とする。SO2は、測定試料をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。αは、TDS分析におけるイオン強度に影響する係数である。数式(1)の詳細に関しては、特開平6−275697公報を参照する。なお、上記酸素の放出量は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000S/Wを用い、標準試料として1×1016atoms/cm2の水素原子を含むシリコンウェハを用いて測定した。
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分子のイオン化率を含むため、酸素分子の放出量を評価することで、酸素原子の放出量についても見積もることができる。
なお、NO2は酸素分子の放出量である。酸素原子に換算したときの放出量は、酸素分子の放出量の2倍となる。
または、加熱処理によって酸素を放出するとは、過酸化ラジカルを含むことをいう。具体的には、過酸化ラジカルに起因するスピン密度が、5×1017spins/cm3以上であることをいう。なお、過酸化ラジカルを含むとは、ESRにて、g値が2.01近傍に非対称の信号を有することをいう。
または、過剰酸素を含む絶縁膜は、酸素が過剰な酸化シリコン(SiOX(X>2))であってもよい。酸素が過剰な酸化シリコン(SiOX(X>2))は、シリコン原子数の2倍より多い酸素原子を単位体積当たりに含むものである。単位体積当たりのシリコン原子数および酸素原子数は、RBSにより測定した値である。
ゲート絶縁膜131および絶縁膜144の少なくとも一方が過剰酸素を含む絶縁膜を含む場合、酸化物半導体膜130bの酸素欠損を低減することができる。
以上のようにして構成されたトランジスタは、多層膜130の酸化物半導体膜130bにチャネルが形成されることにより、安定した電気特性を有し、高い電界効果移動度を有する。
次に、ゲート絶縁膜131上の配線123および多層膜130と重畳する領域にゲート電極134を形成する(図7(C)参照)。また、ゲート電極134は、導電膜133aおよび導電膜133bとは重畳しない。ゲート電極134は、ゲート電極105等と同様の方法および材料を用いて形成することができる。
次に、上述の工程により形成された各構成を覆うように、絶縁膜144および絶縁膜145を形成する(図7(D)参照)。絶縁膜144および絶縁膜145は、ゲート絶縁膜131と同様の方法および材料を用いて形成することができ、例えば、絶縁膜144は、酸化シリコン層とし、絶縁膜145を窒化シリコン層とすればよい。この場合、酸化シリコン層は酸化窒化シリコン層でも構わない。また、窒化シリコン層は窒化酸化シリコン層でも構わない。酸化シリコン層は、欠陥密度の小さい酸化シリコン層を用いると好ましい。具体的には、ESRにてg値が2.001の信号に由来するスピンのスピン密度が3×1017spins/cm3以下、好ましくは5×1016spins/cm3以下である酸化シリコン層を用いる。窒化シリコン層は水素およびアンモニアの放出量が少ない窒化シリコン層を用いる。水素、アンモニアの放出量は、TDS分析にて測定すればよい。また、窒化シリコン層は、酸素を透過しない、またはほとんど透過しない窒化シリコン層を用いる。
次に、ゲート絶縁膜131、絶縁膜144および絶縁膜145に開口部を形成し、開口部において、導電膜133bに接するように導電膜146を形成する(図7(D)参照)。導電膜146は、配線122等と同様の方法および材料を用いて形成することができる。
以上により、トランジスタ162が形成される。
なお、トランジスタ162は、上記に示したトップゲート構造に限られず、ボトムゲート構造のトランジスタを採用することも可能である。
また、本実施の形態では、ソース電極およびドレイン電極となる導電膜133aおよび導電膜133bのみ、電子ビームを用いた露光によってレジストマスクを形成した後にエッチング等により形成していたが、これに限られず、多層膜130およびゲート電極134を形成する際にも電子ビームを用いた露光によって形成したレジストマスクを用いることができる。電子ビームを用いた露光を行って形成したレジストマスクを用いることで、チャネル長方向の長さが1μmの多層膜130を形成することができる。また、当該レジストマスクを用いることで、チャネル長方向の長さが40nmのゲート電極134を形成することもできる。レジストマスクの形成において電子ビームを使って各部位を構成することで、一辺が1μm以上25μm以下の正方形に収まるトランジスタ162を形成することができる。
多層膜を用いたトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、これを用いることにより極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
また、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。また、フラッシュメモリなどにおいて必要とされる情報を消去するための動作が不要であるというメリットもある。
また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは十分な高速動作が可能なため、これを用いることにより、記憶内容の読み出しを高速に行うことが可能である。
また、上記のように構成されたトランジスタは、多層膜130の酸化物半導体膜130bにチャネルが形成されることにより、安定した電気特性を有し、高い電界効果移動度を有することが可能である。
さらに、電子ビームを用いた露光により形成されたレジストマスクをエッチングマスクとして用いて導電膜133aおよび導電膜133bの間隔を短くすることにより、チャネル長を短くでき、トランジスタ162の微細化を達成することができ、半導体装置の高集積化を実現することができる。
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、先の実施の形態において説明した半導体装置の応用例の一について説明する。具体的には、先の実施の形態において説明した半導体装置をマトリクス状に配列した半導体装置の一例について説明する。
図9に、m×nビットの記憶容量を有する本発明の一態様に係る半導体装置のブロック回路図を示す。
本発明の一態様に係る半導体装置は、m本の第4の配線S2(第2信号線)および第5の配線WL(ワード線)と、n本の第2の配線BL(ビット線)および第3の配線S1(第1信号線)と、複数のメモリセル200(1,1)〜メモリセル200(m,n)が縦m個(行)×横n個(列)(m、nは自然数)のマトリクス状に配置されたメモリセルアレイ210と、第2の配線および第3の配線と接続する駆動回路211や、第4の配線および第5の配線と接続する駆動回路213や、読み出し回路212といった周辺回路によって構成されている。他の周辺回路として、リフレッシュ回路等が設けられてもよい。
駆動回路211は、メモリセル200内のトランジスタ162のゲート電極に供給する第4の配線の電位を制御しており、データの書き込みを制御している。また、メモリセル200内のトランジスタ161のゲート電極に供給する第5の配線の電位を制御している。
駆動回路213は、メモリセル200内のトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方に供給する第3の配線の電位を制御しており、保持されるデータの制御をしている。また、メモリセル200内のトランジスタ161のソース電極またはドレイン電極の一方に供給する第2の配線の電位を制御している。
また、トランジスタ161に接続されている第2の配線および第5の配線の電位により、第1の配線と第2の配線間の抵抗が異なり、それに応じてデータを読み出している。
読み出し回路212は、読み出し時には、トランジスタと差動アンプを有し、メモリセルは格納されたデータ”0”,”1”に応じて抵抗が異なる。具体的には、選択したメモリセルのトランジスタ160がオン状態の場合には低抵抗状態となり、選択したメモリセルのトランジスタ160がオフ状態の場合には高抵抗状態となる。
メモリセルが高抵抗状態の場合、第2の配線の電位が参照電位Vrefより高くなり、差動アンプの出力からはデータ”1”が出力される。一方、メモリセルが低抵抗状態場合、第2の配線の電位が参照電位Vrefより低くなり、差動アンプの出力からはデータ”0”が出力される。このようにして、読み出し回路は、メモリセルからデータを読み出すことができる。
各メモリセルの代表として、メモリセル200(i,j)を考える。ここで、メモリセル200(i,j)(iは1以上m以下の整数、jは1以上n以下の整数)は、第2の配線BL(j)、第3の配線S1(j)、第4の配線S2(i)および第5の配線WL(i)、および第1の配線にそれぞれ接続されている。第1の配線には第1の配線電位Vsが与えられている。また、第2の配線BL(1)〜BL(n)および第3の配線S1(1)〜S1(n)は駆動回路211および読み出し回路212に、第5の配線WL(1)〜WL(m)および第4の配線S2(1)〜S2(m)は駆動回路213にそれぞれ接続されている。
図9に示した半導体装置の動作について説明する。本構成では、行ごとの書き込みおよび読み出しを行う。
第i行のメモリセル200(i,1)〜メモリセル200(i,n)に書き込みを行う場合は、第1の配線電位Vsを0V、第5の配線WL(i)を0V、第2の配線BL(1)〜BL(n)を0V、第4の配線S2(i)を2Vとする。このときトランジスタ162は、オン状態となる。第3の配線S1(1)〜S1(n)は、データ”1”を書き込む列は2V、データ”0”を書き込む列は0Vとする。なお、書き込み終了にあたっては、第3の配線S1(1)〜S1(n)の電位が変化する前に、第4の配線S2(i)を0Vとして、トランジスタ162をオフ状態にする。また、非選択の第5の配線は0V、非選択の第4の配線は0Vとする。
その結果、データ”1”の書き込みを行ったメモリセルのトランジスタ160のゲート電極に接続されるノード(以下、nodeA)の電位は約2V、データ”0”の書き込みを行ったメモリセルのnodeAの電位は約0Vとなる。また、非選択メモリセルのnodeAの電位は変わらない。
第i行のメモリセル200(i,1)〜メモリセル200(i,n)の読み出しを行う場合は、第1の配線電位Vsを0V、第5の配線WL(i)を2V、第4の配線S2(i)を0V、第3の配線S1(1)〜S1(n)を0Vとし、第2の配線BL(1)〜BL(n)に接続されている読み出し回路を動作状態とする。読み出し回路では、例えば、メモリセルの抵抗状態の違いから、データ”0”,”1”を読み出すことができる。なお、非選択の第5の配線は0V、非選択の第4の配線は0Vとする。なお、書き込み時の第2の配線は0Vとしたが、フローティング状態や0V以上の電位に充電されていても構わない。読み出し時の第3の配線は0Vとしたが、フローティング状態や0V以上の電位に充電されていても構わない。
なお、データ”1”とデータ”0”は便宜上の定義であって、逆であっても構わない。また、上述した動作電圧は一例である。動作電圧は、データ”0”の場合にトランジスタ160がオフ状態となり、データ”1”の場合にトランジスタ160がオン状態となるように、また、書き込み時にトランジスタ162がオン状態、書き込み時以外ではオフ状態となるように、また、読み出し時にトランジスタ161がオン状態となるように選べばよい。特に2Vの代わりに、周辺の論理回路の電源電位VDDを用いてもよい。
次に、本発明の一態様に係る記憶素子の回路構成および動作の他の一例について説明する。
半導体装置が有するメモリセル回路の一例を図10に示す。図10に示すメモリセル220は、第1の配線SL、第2の配線BL、第3の配線S1と、第4の配線S2と、第5の配線WLと、トランジスタ160(第1のトランジスタ)と、トランジスタ162(第2のトランジスタ)と、トランジスタ161(第3のトランジスタ)と、から構成されている。トランジスタ160およびトランジスタ161は、酸化物半導体以外の材料を用いて形成されており、トランジスタ162は酸化物半導体を用いて形成されている。
図10に示すメモリセル220の回路は、図1に示したメモリセル200の回路と比較して、第3の配線と、第4の配線の方向が異なる。つまり、図10のメモリセル220の回路は、第3の配線を第5の配線方向(行方向)に配置し、第4の配線を第2の配線方向(列方向)に配置する構成としている。
ここで、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続されている。また、第1の配線と、トランジスタ160のソース電極とは、電気的に接続され、トランジスタ160のドレイン電極と、トランジスタ161のソース電極とは、電気的に接続されている。そして、第2の配線と、トランジスタ161のドレイン電極とは、電気的に接続され、第3の配線と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続され、第5の配線と、トランジスタ161のゲート電極とは電気的に接続されている。
図10に示すメモリセル220の回路の動作は、図1に示したメモリセル200の回路の動作と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図11に、m×nビットの記憶容量を有する本発明の一態様に係る半導体装置のブロック回路図を示す。
本発明の一態様に係る半導体装置は、m本の第3の配線および第5の配線と、n本の第2の配線および第4の配線と、複数のメモリセル220(1,1)〜メモリセル220(m,n)が縦m個(行)×横n個(列)(m、nは自然数)のマトリクス状に配置されたメモリセルアレイ230と、第2の配線および第4の配線と接続する駆動回路231や、第3の配線および第5の配線と接続する駆動回路233や、読み出し回路232といった周辺回路によって構成されている。他の周辺回路として、リフレッシュ回路等が設けられてもよい。
図11に示す半導体装置は、図9に示した半導体装置と比較して、第3の配線と、第4の配線の方向が異なる。つまり、図11の半導体装置は、第3の配線を第5の配線方向(行方向)に配置し、第4の配線を第2の配線方向(列方向)に配置する構成としている。
各メモリセルの代表として、メモリセル220(i,j)を考える。ここで、メモリセル220(i,j)(iは1以上m以下の整数、jは1以上n以下の整数)は、第2の配線BL(j)、第4の配線S2(j)、第5の配線WL(i)および第3の配線S1(i)、および第1の配線にそれぞれ接続されている。第1の配線には第1の配線電位Vsが与えられている。また、第2の配線BL(1)〜BL(n)および第4の配線S2(1)〜S2(n)は駆動回路231および読み出し回路232に、第3の配線S1(1)〜S1(m)および第5の配線WL(1)〜WL(m)は駆動回路233にそれぞれ接続されている。
図11に示した半導体装置の動作について説明する。本構成では、書き込みは列ごと、読み出しは行ごとに行う。
第j列のメモリセル220(1,j)〜メモリセル220(m,j)に書き込みを行う場合は、第1の配線電位Vsを0V、第5の配線WL(1)〜WL(m)を0V、第2の配線BL(j)を0V、第4の配線S2(j)を2Vとする。第3の配線S1(1)〜S1(m)は、データ”1”を書き込む行は2V、データ”0”を書き込む行は0Vとする。なお、書き込み終了にあたっては、第3の配線S1(1)〜S1(m)の電位が変化する前に、第4の配線S2(j)を0Vとして、トランジスタ162をオフ状態にする。また、非選択の第2の配線は0V、非選択の第4の配線は0Vとする。
その結果、データ”1”の書き込みを行ったメモリセルのトランジスタ160のゲート電極に接続されるノード(以下、nodeA)の電位は約2V、データ”0”の書き込みを行ったメモリセルのnodeAの電位は約0Vとなる。また、非選択メモリセルのnodeAの電位は変わらない。
第i行のメモリセル220(i,1)〜メモリセル220(i,n)の読み出しを行う場合は、第1の配線を0V、第5の配線WL(i)を2V、第4の配線S2(1)〜S2(n)を0V、第3の配線S1(i)を0Vとし、第2の配線BL(1)〜BL(n)に接続されている読み出し回路を動作状態とする。読み出し回路では、例えば、メモリセルの抵抗状態の違いから、データ”0”,”1”を読み出すことができる。なお、非選択の第5の配線は0V、非選択の第3の配線は0Vとする。なお、書き込み時の第2の配線は0Vとしたが、フローティング状態や0V以上の電位に充電されていても構わない。読み出し時の第3の配線は0Vとしたが、フローティング状態や0V以上の電位に充電されていても構わない。
なお、データ”1”とデータ”0”は便宜上の定義であって、逆であっても構わない。また、上述した動作電圧は一例である。動作電圧は、データ”0”の場合にトランジスタ160がオフ状態となり、データ”1”の場合にトランジスタ160がオン状態となるように、また、書き込み時にトランジスタ162がオン状態、書き込み時以外ではオフ状態となるように、また、読み出し時にトランジスタ161がオン状態となるように選べばよい。特に2Vの代わりに、周辺の論理回路の電源電位VDDを用いてもよい。
多層膜を用いたトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、これを用いることにより極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
また、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。また、フラッシュメモリなどにおいて必要とされる情報を消去するための動作が不要であるというメリットもある。
また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは十分な高速動作が可能なため、これを用いることにより、記憶内容の読み出しを高速に行うことが可能である。
また、トランジスタ162は、実施の形態1で説明した、多層膜に含まれる酸化物半導体膜にチャネルが形成されることにより、安定した電気特性を有し、高い電界効果移動度を有することが可能である。
さらに、トランジスタ162は、実施の形態1で説明した、電子ビームを用いた露光により形成されたレジストマスクをエッチングマスクとして用いてソース電極およびドレイン電極の間隔を短くすることにより、チャネル長を短くでき、トランジスタ162の微細化を達成することができ、半導体装置の高集積化を実現することができる。
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2とは異なる記憶素子の回路構成、作製方法および動作の一例について説明する。
半導体装置が有するメモリセルの回路図の一例を図12に示す。図12に示すメモリセル240は、第1の配線SL、第2の配線BL、第3の配線S1、第4の配線S2と、第5の配線WLと、トランジスタ160(第1のトランジスタ)と、トランジスタ162(第2のトランジスタ)と、容量素子164とから構成されている。トランジスタ160は、酸化物半導体以外の材料を用いて形成されており、トランジスタ162は酸化物半導体を用いて形成されている。
ここで、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子164の一方の電極とは、電気的に接続されている。また、第1の配線と、トランジスタ160のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線と、トランジスタ160のドレイン電極とは、電気的に接続され、第3の配線と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続され、第5の配線と、容量素子164の他方の電極とは、電気的に接続されている。
次に、回路の動作について具体的に説明する。
メモリセル240への書き込みを行う場合は、第1の配線を0V、第5の配線を0V、第2の配線を0V、第4の配線を2Vとする。データ”1”を書き込む場合には第3の配線を2V、データ”0”を書き込む場合には第3の配線を0Vとする。このとき、トランジスタ162はオン状態となる。なお、書き込み終了にあたっては、第3の配線の電位が変化する前に、第4の配線を0Vとして、トランジスタ162をオフ状態にする。
その結果、データ”1”の書き込み後にはトランジスタ160のゲート電極に接続されるノード(以下、nodeA)の電位が約2V、データ”0”の書き込み後にはnodeAの電位が約0Vとなる。
メモリセル240の読み出しを行う場合は、第1の配線を0V、第5の配線を2V、第4の配線を0V、第3の配線を0Vとし、第2の配線に接続されている読み出し回路を動作状態とする。このとき、トランジスタ162は、オフ状態となる。
第5の配線を2Vとした場合のトランジスタ160の状態について説明する。トランジスタ160の状態を決めるnodeAの電位は、第5の配線−nodeA間の容量C1と、トランジスタ160のゲート−ソースとドレイン間の容量C2に依存する。
図13には、第5の配線電位とnodeAの電位の関係を示す。ここでは、一例として、トランジスタ160がオフ状態でC1/C2≫1、オン状態でC1/C2=1であるとする。また、トランジスタ160のしきい値は2.5Vとする。図13に示すグラフの第5の配線電位が2Vの条件では、データ”0”の状態ではnodeAが約2Vとなるが、トランジスタ160はオフ状態である。一方、データ”1”の状態ではnodeAが約3.25Vとなり、トランジスタ160はオン状態となる。メモリセルはトランジスタ160がオン状態で低抵抗状態、オフ状態で高抵抗状態となる。従って、読み出し回路は、メモリセルの抵抗状態の違いから、データ”0”、”1”を読み出すことができる。なお、読み出しを行わない場合、つまり第5の配線電位が0Vの時には、データ”0”ではnodeAが約0V、データ”1”ではnodeAが約2Vとなり、いずれも、トランジスタ160はオフ状態となる。
なお、読み出し時の第3の配線は0Vとしたが、フローティング状態や0V以上の電位に充電されていても構わない。データ”1”とデータ”0”は便宜上の定義であって、逆であっても構わない。
上述した動作電圧は一例である。書き込み時の第3の配線の電位は、書き込み後にトランジスタ162がオフ状態となり、また、第5の配線電位が0Vの場合にトランジスタ160がオフ状態である範囲で、データ”0”、”1”の電位をそれぞれ選べばよい。読み出し時の第5の配線電位は、データ”0”の場合にトランジスタ160がオフ状態となり、データ”1”の場合にトランジスタ160がオン状態となるように選べばよい。また、トランジスタ160のしきい値電圧も、一例である。上述したトランジスタ160の状態を変えない範囲であれば、どのようなしきい値でも構わない。
<半導体装置の断面構成>
図14は、上記半導体装置の構成の一例である。図14には、半導体装置の断面を示す。ここで、図14に示される半導体装置は、下部に酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ160を有し、上部に酸化物半導体を用いたトランジスタ162および容量素子164を有するものである。なお、トランジスタ160およびトランジスタ162は、実施の形態1と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。
<半導体装置の作製方法>
次に、上記半導体装置の作製方法の一例について説明する。以下では、トランジスタ160およびトランジスタ162の作製方法については、実施の形態1と同様であるため説明を省略し、容量素子164の作製方法について図14を参照して説明する。
トランジスタ160上にトランジスタ162を形成後、トランジスタ162を覆うように絶縁膜144および絶縁膜145を形成する。次に、ゲート絶縁膜131、絶縁膜144および絶縁膜145に開口部を形成し、当該開口部および絶縁膜145上に導電膜146を形成し、当該導電膜を選択的にエッチングして、導電膜146および導電膜147を形成する。
よって、容量素子164は、導電膜133aと、ゲート絶縁膜131と、導電膜147とで形成することができる。
次に、上記半導体装置をマトリクス状に配列した半導体装置の一例について説明する。
図15に、m×nビットの記憶容量を有する本発明の一態様に係る半導体装置のブロック回路図を示す。
図15に示す本発明の一態様に係る半導体装置は、m本の第4の配線および第5の配線と、n本の第2の配線および第3の配線と、複数のメモリセル240(1,1)〜メモリセル240(m,n)が縦m個(行)×横n個(列)(m、nは自然数)のマトリクス状に配置されたメモリセルアレイ250と、第2の配線および第3の配線と接続する駆動回路211や、第4の配線および第5の配線と接続する駆動回路213や、読み出し回路212といった周辺回路によって構成されている。他の周辺回路として、リフレッシュ回路等が設けられてもよい。
各メモリセルの代表として、メモリセル240(i,j)を考える。ここで、メモリセル240(i,j)(iは1以上m以下の整数、jは1以上n以下の整数)は、第2の配線BL(j)、第3の配線S1(j)、第4の配線S2(i)および第5の配線WL(i)、および第1の配線にそれぞれ接続されている。第1の配線には第1の配線電位Vsが与えられている。また、第2の配線BL(1)〜BL(n)および第3の配線S1(1)〜S1(n)は駆動回路211および読み出し回路212に、第5の配線WL(1)〜WL(m)および第4の配線S2(1)〜S2(m)は駆動回路213にそれぞれ接続されている。
図15に示した半導体装置の動作について説明する。本構成では、行ごとの書き込みおよび読み出しを行う。
第i行のメモリセル240(i,1)〜メモリセル240(i,n)に書き込みを行う場合は、第1の配線電位Vsを0V、第5の配線WL(i)を0V、第2の配線BL(1)〜BL(n)を0V、第4の配線S2(i)を2Vとする。このときトランジスタ162は、オン状態となる。第3の配線S1(1)〜S1(n)は、データ”1”を書き込む列は2V、データ”0”を書き込む列は0Vとする。なお、書き込み終了にあたっては、第3の配線S1(1)〜S1(n)の電位が変化する前に、第4の配線S2(i)を0Vとして、トランジスタ162をオフ状態とする。また、非選択の第5の配線は0V、非選択の第4の配線は0Vとする。
その結果、データ”1”の書き込みを行ったメモリセルのトランジスタ160のゲート電極に接続されるノード(以下、nodeA)の電位が約2V、データ”0”の書き込み後にはnodeAの電位が約0Vとなる。また、非選択メモリセルのnodeAの電位は変わらない。
第i行のメモリセル240(i,1)〜メモリセル240(i,n)に読み出しを行う場合は、第1の配線電位Vsを0V、第5の配線WL(i)を2V、第4の配線S2(i)を0V、第3の配線S1(1)〜S1(n)を0Vとし、第2の配線BL(1)〜BL(n)に接続されている読み出し回路を動作状態とする。このときトランジスタ162は、オフ状態となる。また、非選択の第5の配線は0Vとし、非選択の第4の配線は0Vとする。
読み出し時のトランジスタ160の状態について説明する。既に説明したように、トランジスタ160がオフ状態でC1/C2≫1、オン状態でC1/C2=1であるとすると、第5の配線電位とnodeAの電位の関係は図13のように表される。また、トランジスタ160のしきい値電圧は2.5Vとする。非選択のメモリセルは、第5の配線電位が0Vとなるため、データ”0”を有するメモリセルのnodeAは約0V、データ”1”を有するメモリセルのnodeAが約2Vとなり、いずれも、トランジスタ160はオフ状態となる。第i行のメモリセルでは、第5の配線電位が2Vとなるため、データ”0”を有するメモリセルのnodeAが約2Vとなり、トランジスタ160はオフ状態であるが、データ”1”を有するメモリセルのnodeAが約3.25Vとなり、トランジスタ160はオン状態となる。メモリセルはトランジスタ160がオン状態で低抵抗状態、オフ状態で高抵抗状態となる。その結果、第i行のメモリセルで、データ”0”を有するメモリセルだけが低抵抗状態となる。読み出し回路は、第2の配線に接続される負荷抵抗の違いから、データ”0”、”1”を読み出すことができる。
なお、読み出し時の第3の配線は0Vとしたが、フローティング状態や0V以上の電位に充電されていても構わない。データ”1”とデータ”0”は便宜上の定義であって、逆であっても構わない。
上述した動作電圧は一例である。書き込み時の第3の配線の電位は、書き込み後にトランジスタ162がオフ状態となり、また、第5の配線電位が0Vの場合にトランジスタ160がオフ状態である範囲で、データ”0”、”1”の電位をそれぞれ選べばよい。読み出し時の第5の配線電位は、データ”0”の場合にトランジスタ160がオフ状態となり、データ”1”の場合にトランジスタ160がオン状態となるように選べばよい。また、トランジスタ160のしきい値電圧も、一例である。上述したトランジスタ160の状態を変えない範囲であれば、どのようなしきい値でも構わない。
また、本発明の一態様に係る記憶素子の回路構成および動作の他の一例について説明する。
半導体装置が有するメモリセル回路の一例を図16に示す。図16に示すメモリセル260は、第1の配線SLと、第2の配線BLと、第3の配線S1と、第4の配線S2と、第5の配線WLと、トランジスタ160と、トランジスタ162と、容量素子164と、から構成されている。トランジスタ160は、酸化物半導体以外の材料を用いて構成されており、トランジスタ162は酸化物半導体を用いて形成されている。
図16に示すメモリセル260の回路は、図12のメモリセル240の回路と比較して、第3の配線と第4の配線の方向が異なる。つまり、図16のメモリセル260では第3の配線を第5の配線方向(行方向)に配置し、第4の配線を第2の配線方向(列方向)に配置する構成としている。
ここで、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子164の一方の電極とは、電気的に接続されている。また、第1の配線と、トランジスタ160のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線と、トランジスタ160のドレイン電極とは、電気的に接続され、第3の配線と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続され、第5の配線と、容量素子164の他方の電極とは、電気的に接続されている。
図16に示すメモリセル260の回路の動作は、図12に示したメモリセル240の回路の動作と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図17に、m×nビットの記憶容量を有する本発明の一態様に係る半導体装置のブロック回路図を示す。
本発明の一態様に係る半導体装置は、m本の第3の配線および第5の配線と、n本の第2の配線および第4の配線と、複数のメモリセル260(1,1)〜メモリセル260(m,n)が縦m個(行)×横n個(列)(m、nは自然数)のマトリクス状に配置されたメモリセルアレイ270と、第2の配線および第4の配線と接続する駆動回路231や、第3の配線および第5の配線と接続する駆動回路233や、読み出し回路232といった周辺回路によって構成されている。他の周辺回路として、リフレッシュ回路等が設けられてもよい。
図17に示す半導体装置は、図15に示した半導体装置と比較して、第3の配線と、第4の配線の方向が異なる。つまり、図17の半導体装置は、第3の配線を第5の配線方向(行方向)に配置し、第4の配線を第2の配線方向(列方向)に配置する構成としている。
各メモリセルの代表として、メモリセル260(i,j)を考える。ここで、メモリセル260(i,j)(iは1以上m以下の整数、jは1以上n以下の整数)は、第2の配線BL(j)、第4の配線S2(j)、第3の配線S1(i)および第5の配線WL(i)、および第1の配線にそれぞれ接続されている。第1の配線には第1の配線電位Vsが与えられている。また、第2の配線BL(1)〜BL(n)および第4の配線S2(1)〜S2(n)は駆動回路231および読み出し回路232に、第3の配線S1(1)〜S1(m)および第5の配線WL(1)〜WL(m)は駆動回路233にそれぞれ接続されている。
図17に示す半導体装置の動作は、図15に示した半導体装置の動作と同様であるため、詳細な説明は省略する。
多層膜を用いたトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、これを用いることにより極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
また、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。また、フラッシュメモリなどにおいて必要とされる情報を消去するための動作が不要であるというメリットもある。
また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは十分な高速動作が可能なため、これを用いることにより、記憶内容の読み出しを高速に行うことが可能である。
また、トランジスタ162は、実施の形態1で説明した、多層膜に含まれる酸化物半導体膜にチャネルが形成されることにより、安定した電気特性を有し、高い電界効果移動度を有することが可能である。
さらに、トランジスタ162は、実施の形態1で説明した、電子ビームを用いた露光により形成されたレジストマスクをエッチングマスクとして用いてソース電極およびドレイン電極の間隔を短くすることにより、チャネル長を短くでき、トランジスタ162の微細化を達成することができ、半導体装置の高集積化を実現することができる。
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態2および実施の形態3とは異なる記憶素子の回路構成および動作の一例について説明する。
半導体装置が有するメモリセルの回路図の一例を図18に示す。図18(A)に示すメモリセル280aおよび図18(B)に示すメモリセル280bは、それぞれ図1に示すメモリセル200および図10に示すメモリセル220と比較して、第1トランジスタと第3トランジスタの直列接続の関係を入れ替えた構成である。
ここで、図18(A)に示すメモリセル280aは、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続されている。また、第1の配線と、トランジスタ161のソース電極とは、電気的に接続され、トランジスタ161のドレイン電極と、トランジスタ160のソース電極とは、電気的に接続されている。そして、第2の配線と、トランジスタ160のドレイン電極とは、電気的に接続され、第3の配線と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続され、第5の配線と、トランジスタ161のゲート電極とは、電気的に接続されている。
また、図18(B)に示すメモリセル280bは、図18(A)に示したメモリセル回路と比較して、第3の配線と、第4の配線の方向が異なる。つまり、図18(B)に示すメモリセル回路は、第4の配線を第2の配線方向(列方向)に配置し、第3の配線を第5の配線方向(行方向)に配置する構成としている。
図18(A)に示すメモリセル280aおよび図18(B)に示すメモリセル280bの回路の動作は、それぞれ図1に示すメモリセル200および図10に示すメモリセル220の回路の動作と同様であるため、詳細な説明は省略する。
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態2乃至実施の形態4とは異なる記憶素子の回路構成および動作の一例について説明する。
半導体装置が有するメモリセルの回路図の一例を図19に示す。図19に示すメモリセル290の回路は、図1のメモリセル200の回路と比較して、nodeAと第1の配線との間に容量素子を有する構成としている。
図19に示すメモリセル290は、第1の配線SL、第2の配線BL、第3の配線S1と、第4の配線S2と、第5の配線WLと、トランジスタ160と、トランジスタ161と、トランジスタ162と、容量素子164と、から構成されている。トランジスタ160およびトランジスタ161は、酸化物半導体以外の材料を用いて形成されており、トランジスタ162は酸化物半導体を用いて形成されている。
ここで、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子164の一方の電極とは、電気的に接続されている。また、第1の配線と、トランジスタ160のソース電極と、容量素子164の他方の電極とは、電気的に接続され、トランジスタ160のドレイン電極と、トランジスタ161のソース電極とは電気的に接続されている。そして、第2の配線と、トランジスタ161のドレイン電極とは、電気的に接続され、第3の配線と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続され、第5の配線と、トランジスタ161のゲート電極とは、電気的に接続されている。
図19に示すメモリセル回路の動作は、図1に示したメモリセル回路の動作と同様であるため、詳細な説明は省略する。このような容量素子164を有することで、保持特性が改善する。
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、先の実施の形態で用いたトランジスタ162とは異なり、本発明の一態様に適応可能なトランジスタについて図20および図21を用いて説明する。
図20に示すトランジスタ350は、絶縁表面を有する層300上の酸化物膜130aと、酸化物膜130a上の酸化物半導体膜130bと、酸化物半導体膜130b上にソース電極となる導電膜132aおよび導電膜133aと、酸化物半導体膜130b上にドレイン電極となる導電膜132bおよび導電膜133bと、酸化物半導体膜130b、導電膜133aおよび導電膜133b上の酸化物膜130cと、酸化物膜130c上の金属窒化膜302aおよび金属窒化膜302bと、酸化物膜130c、金属窒化膜302aおよび金属窒化膜302b上のゲート絶縁膜131と、ゲート絶縁膜131上の多層膜130(酸化物膜130a、酸化物半導体膜130bおよび酸化物膜130cの積層膜)と重畳し、かつ、導電膜133aおよび導電膜133bと重畳しない領域に設けられたゲート電極134とを有する。
トランジスタ350の作製方法について図24を用いて説明する。
絶縁表面を有する層300上に多層膜130の一部である酸化物膜130aおよび酸化物半導体膜130bを順に形成する(図24(A)参照)。なお、絶縁表面を有する層300は、先の実施の形態の基板100や絶縁膜などを用いることができる。また、酸化物膜130aおよび酸化物半導体膜130bの材料や形成方法は実施の形態1を参酌することができる。
次に、酸化物半導体膜130b上に導電膜132aおよび導電膜132bを形成する。その後、導電膜132aおよび導電膜132b上に導電膜133aおよび導電膜133bを形成する(図24(B)参照)。なお、導電膜132aおよび導電膜133aはソース電極として機能し、導電膜132bおよび導電膜133bはドレイン電極として機能する。
導電膜132aおよび導電膜132bのゲート電極134と重畳する周縁部を階段状に形成してもよい。階段状の周縁部は、レジストマスクの後退(縮小)と後退したレジストマスクを用いたエッチングを複数回行うことで形成することができる。導電膜132aおよび導電膜132bの周縁部が階段状となることで、酸化物膜130cの段差被覆性を向上させることができる。また、導電膜132aおよび導電膜132bの材料、導電膜133aおよび導電膜133bの材料や形成方法は、実施の形態1を参酌することができる。
次に、酸化物半導体膜130b、導電膜133aおよび導電膜133b上に酸化物膜130cを形成する。その後、酸化物膜130c上に金属窒化膜を形成し、酸化物膜130cのゲート電極134と重畳する領域が露出するように選択的にバリア膜と酸化物膜130cをエッチングし、金属窒化膜302aおよび金属窒化膜302bを形成する(図24(C)参照)。
酸化物膜130cの材料や形成方法は、実施の形態1を参酌することができる。
金属窒化膜302aおよび金属窒化膜302bとしては、窒化チタン、窒化インジウム、窒化錫、窒化タンタル、窒化タングステン、窒化アルミニウム、窒化モリブデン等を用いることができる。
次に、酸化物膜130c、金属窒化膜302aおよび金属窒化膜302b上にゲート絶縁膜131を形成し、ゲート絶縁膜131上の多層膜130(酸化物膜130a、酸化物半導体膜130bおよび酸化物膜130cの積層膜)と重畳し、かつ、導電膜133aおよび導電膜133bと重畳しない領域にゲート電極134を形成する(図24(D)参照)。
ゲート絶縁膜131およびゲート電極134の材料や形成方法は、実施の形態1を参酌することができる。
次に、上述の工程により形成された各構成を覆うように、絶縁膜144および絶縁膜145を形成する、さらに酸化物膜130c、金属窒化膜302a、金属窒化膜302b、ゲート絶縁膜131、絶縁膜144および絶縁膜145に開口部を形成し、開口部において、導電膜133aおよび導電膜133bに接するように導電膜304aおよび導電膜304bを形成する(図21(E)参照)。
絶縁膜144および絶縁膜145の材料や形成方法は、実施の形態1を参酌することができる。また、導電膜133aおよび導電膜133bの材料や形成方法は、実施の形態1の導電膜146を参酌することができる。
以上のようにして、トランジスタ350を作製することができる。
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した表示装置に含まれているトランジスタにおいて、酸化物半導体膜を含む多層膜に適用可能な一態様について説明する。
上記酸化物半導体膜を含む多層膜の少なくとも一層は、非晶質酸化物半導体、単結晶酸化物半導体、および多結晶酸化物半導体の他に、結晶部分を含む酸化物半導体(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor:CAAC−OS)で構成されていることが好ましい。
CAAC−OSは、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OSは、非晶質相に結晶部および非晶質部を含む結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OSに含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OSには粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OSは、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
CAAC−OSに含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OSの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。なお、酸化物半導体を構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。
なお、CAAC−OSにおいて、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OSの形成過程において、酸化物半導体の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OSへ不純物を添加することにより、該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
CAAC−OSに含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OSの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OSの形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OSが形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
CAAC−OSの形成方法としては、三つ挙げられる。
第1の方法は、成膜温度を100℃以上450℃以下として酸化物半導体膜を成膜することで、酸化物半導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。
第2の方法は、酸化物半導体膜を薄い厚さで成膜した後、200℃以上700℃以下の熱処理を行うことで、酸化物半導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。
第3の方法は、一層目の酸化物半導体膜を薄い厚さで成膜した後、200℃以上700℃以下の熱処理を行い、さらに二層目の酸化物半導体膜の成膜を行うことで、酸化物半導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。
酸化物半導体膜にCAAC−OSを適用したトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。よって、酸化物半導体膜にCAAC−OSを適用したトランジスタは、良好な信頼性を有する。
また、CAAC−OSは、多結晶である酸化物半導体スパッタリング用ターゲットを用い、スパッタリング法によって成膜することが好ましい。当該スパッタリング用ターゲットにイオンが衝突すると、スパッタリング用ターゲットに含まれる結晶領域がa−b面から劈開し、a−b面に平行な面を有する平板状またはペレット状のスパッタリング粒子として剥離することがある。この場合、当該平板状またはペレット状のスパッタリング粒子が、結晶状態を維持したまま被成膜面に到達することで、CAAC−OSを成膜することができる。
また、CAAC−OSを成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制できる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素および窒素など)を低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下である成膜ガスを用いる。
また、成膜時の被成膜面の加熱温度(例えば基板加熱温度)を高めることで、被成膜面に到達後にスパッタリング粒子のマイグレーションが起こる。具体的には、被成膜面の温度を100℃以上740℃以下、好ましくは150℃以上500℃以下として成膜する。成膜時の被成膜面の温度を高めることで、平板状またはペレット状のスパッタリング粒子が被成膜面に到達した場合、当該被成膜面上でマイグレーションが起こり、スパッタリング粒子の平らな面が被成膜面に付着する。
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100体積%とする。
スパッタリング用ターゲットの一例として、In−Ga−Zn酸化物ターゲットについて以下に示す。
InOX粉末、GaOY粉末およびZnOZ粉末を所定のmol数で混合し、加圧処理後、1000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn−Ga−Zn酸化物ターゲットとする。なお、当該加圧処理は、冷却(または放冷)しながら行ってもよいし、加熱しながら行ってもよい。なお、X、YおよびZは任意の正数である。ここで、所定のmol数比は、例えば、InOX粉末、GaOY粉末およびZnOZ粉末が、2:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3または3:1:2である。なお、粉末の種類、およびその混合するmol比は、作製するスパッタリング用ターゲットによって適宜変更すればよい。
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態8)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明したトランジスタ162に用いることのできる多層膜130の詳細について図面を用いて説明する。
多層膜130のバンド構造について、図22および図23を用いて説明する。
なお、酸化物膜130aとしてエネルギーギャップが3.15eVであるIn−Ga−Zn酸化物を用い、酸化物半導体膜130bとしてエネルギーギャップが2.8eVであるIn−Ga−Zn酸化物を用い、酸化物膜130cとして酸化物膜130aと同様の物性を有する酸化物膜を用いた。また、酸化物膜130aと酸化物半導体膜130bとの界面近傍のエネルギーギャップを3eVとし、酸化物膜130cと酸化物半導体膜130bとの界面近傍のエネルギーギャップを3eVとした。エネルギーギャップは、分光エリプソメータ(HORIBA JOBIN YVON社 UT−300)を用いて測定した。また、酸化物膜130aの厚さを10nm、酸化物半導体膜130bの厚さを10nm、酸化物膜130cの厚さを10nmとした。
図22(A)は、多層膜130を酸化物膜130cからエッチングしつつ、各層の真空準位と価電子帯上端のエネルギー差を測定し、その値をプロットした図である。真空準位と価電子帯上端のエネルギー差は、紫外線光電子分光分析(UPS:Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy)装置(PHI社 VersaProbe)を用いて測定した。
図22(B)は、真空準位と価電子帯上端のエネルギー差から、各層のエネルギーギャップを引くことで、真空準位と伝導帯下端のエネルギー差を算出し、プロットした図である。
図22(B)を模式的に示したバンド構造の一部が、図23(A)である。図23(A)では、酸化物膜130aおよび酸化物膜130cと接して酸化シリコン膜を設けた場合について説明する。ここで、EcI1は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS1は酸化物膜130aの伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS2は酸化物半導体膜130bの伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS3は酸化物膜130cの伝導帯下端のエネルギーを示し、EcI2は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示す。
図23(A)に示すように、酸化物膜130a、酸化物半導体膜130bおよび酸化物膜130cにおいて、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化する。これは、酸化物膜130a、酸化物半導体膜130bおよび酸化物膜130c間で、酸素が相互に拡散するためである。
なお、酸化物膜130aおよび酸化物膜130cが異なる物性を有する酸化物膜である場合、例えば、EcS1よりもEcS3が高いエネルギーを有する場合、バンド構造の一部は、図23(A)のように示される。このとき、酸化物膜130aをIn:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]、酸化物半導体膜130bをIn:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]、酸化物膜130cをIn:Ga:Zn=1:6:4[原子数比]とすればよい。または、酸化物膜130aをIn:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]、酸化物半導体膜130bをIn:Ga:Zn=3:1:2[原子数比]、酸化物膜130cをIn:Ga:Zn=1:9:6[原子数比]とすればよい。
このように、主成分を共通として積層された酸化物半導体層は、各層を単に積層するのではなく連続接合(ここでは特に伝導帯下端のエネルギーが各層の間で連続的に変化するU字型の井戸構造)が形成されるように作製する。すなわち、各層の界面に酸化物半導体にとってトラップ中心や再結合中心のような欠陥準位、あるいはキャリアの流れを阻害するバリアを形成するような不純物が存在しないように積層構造を形成する。仮に、積層された酸化物半導体層の層間に不純物が混在していると、エネルギーバンドの連続性が失われ、界面でキャリアがトラップあるいは再結合により消滅してしまう。
連続接合を形成するためには、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装置(スパッタリング装置)を用いて各層を大気に触れさせることなく連続して積層することが必要となる。スパッタリング装置における各チャンバーは、酸化物半導体にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空排気(1×10−4Pa〜5×10−7Pa程度まで)することが好ましい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャンバー内に気体(とくに、炭素成分または水化合物を含む気体)が逆流しないようにしておくことが好ましい。
高純度真性酸化物半導体を得るためには、チャンバー内を高真空排気するのみならずスパッタガスの高純度化も必要である。スパッタガスとして用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が−40℃以下、好ましくは−80℃以下、より好ましくは−100℃以下にまで高純度化したガスを用いることで酸化物半導体膜に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
ここで、図23(A)に示すバンド構造において、例えば、EcI2をゲート絶縁膜、EcI2より左側にゲート電極がある構造を仮定すると、図23(A)に示すようにEcS1>EcS3となる伝導帯下端のエネルギーを有する構造が好ましい。なぜなら、ゲート電極側であるEcs3近傍のEcS2を電流が主に流れるためである。
また、酸化シリコン膜を挟んで酸化物膜130cとゲート電極を配置する場合、酸化シリコン膜はゲート絶縁膜として機能し、酸化物半導体膜130bに含まれるインジウムがゲート絶縁膜に拡散することを酸化物膜130cによって防ぐことができる。酸化物膜130cによってインジウムの拡散を防ぐためには、酸化物膜130cは、酸化物半導体膜130bに含まれるインジウムの量よりも少なくすることが好ましい。
また、図23(B)に示すように、酸化物膜130aおよび酸化物膜130cが同様の物性を有する酸化物膜であっても構わない。また、図21に示さないが、EcS1よりもEcS3が高いエネルギーを有しても構わない。
図22および図23より、多層膜130の酸化物半導体膜130bがウェル(井戸)となり、多層膜130を用いたトランジスタにおいて、チャネルが酸化物半導体膜130bに形成されることがわかる。なお、多層膜130は伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化しているため、U字型井戸(U Shape Well)とも呼べる。
なお、図24に示すように、酸化物膜130aおよび酸化物膜130cと、酸化シリコン膜などの絶縁膜との界面近傍には、不純物や欠陥に起因したトラップ準位が形成され得る。
また、酸化物膜130aおよび酸化物膜130cがあることにより、酸化物半導体膜130bと当該トラップ準位とを遠ざけることができる。ただし、EcS1またはEcS3と、EcS2とのエネルギー差が小さい場合、酸化物半導体膜130bの電子が酸化物膜130aまたは酸化物膜130cを超えてトラップ準位に達することがある。トラップ準位に電子が捕獲されることで、マイナスの固定電荷となり、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。
従って、EcS1およびEcS3と、EcS1とのエネルギー差を、それぞれ0.1eV以上、好ましくは0.15eV以上とすると、トランジスタのしきい値電圧の変動が低減され、安定した電気特性となるため、好ましい。
次に、高い結晶性を有する酸化物半導体膜130bの結晶成長のモデルについて、図25乃至図27を用いて説明する。
図25(A)は、高い配向性を有する多結晶酸化物半導体を含むターゲット1000にイオン1001が衝突し、結晶性を有するスパッタリング粒子1002が剥離する様子を示した模式図である。結晶粒は、ターゲット1000の表面と平行な劈開面を有する。また、結晶粒は、原子間の結合の弱い部分を有する。結晶粒にイオン1001が衝突した際に、原子間の結合の弱い部分の原子間結合が切れる。従って、スパッタリング粒子1002は、劈開面および原子間の結合の弱い部分によって切断され、平板状(またはペレット状)で剥離する。なお、スパッタリング粒子1002の有する平面の円相当径は、結晶粒の平均粒径の1/3000以上1/20以下、好ましくは1/1000以上1/30以下である。なお、面の円相当径とは、面の面積と等しい正円の直径をいう。
または、結晶粒の一部が劈開面から粒子として剥離し、プラズマに曝されることで原子間の結合の弱い部分から結合が切れ、複数のスパッタリング粒子1002が生成される。
イオン1001として酸素の陽イオンを用いることで、成膜時のプラズマダメージを軽減することができる。従って、イオン1001がターゲット1000の表面に衝突した際に、ターゲット1000の結晶性が低下すること、または非晶質化することを抑制できる。
ここで、高い配向性を有する多結晶酸化物半導体を含むターゲット1000の一例として、図26(A)に、結晶のa−b面と平行に見たときのIn−Ga−Zn酸化物の結晶構造を示す。また、図26(A)において、破線で囲った部分を拡大し図26(B)に示す。
例えば、In−Ga−Zn酸化物に含まれる結晶粒において、図26(B)に示すガリウム原子または/および亜鉛原子ならびに酸素原子を有する第1の層と、ガリウム原子または/および亜鉛原子ならびに酸素原子を有する第2の層と、の間の面が劈開面である。これは、第1の層および第2の層の有するマイナスの電荷を有する酸素原子同士が近距離にあるためである(図26(B)の囲み部参照)。このように、劈開面はa−b面に平行な面である。また、図26に示したIn−Ga−Zn酸化物の結晶は六方晶であるため、前述の平板状の結晶粒は内角が120°である正六角形の面を有する六角柱状となりやすい。
スパッタリング粒子1002は、プラスに帯電させることが好ましい。スパッタリング粒子1002が、プラスに帯電するタイミングは特に問わないが、具体的にはイオン1001の衝突時に電荷を受け取ることでプラスに帯電させればよい。または、プラズマが生じている場合、スパッタリング粒子1002をプラズマに曝すことでプラスに帯電させればよい。または、酸素の陽イオンであるイオン1001をスパッタリング粒子1002の側面、上面または下面に結合させることでプラスに帯電させればよい。
以下に、スパッタリング粒子の被成膜面に堆積する様子を図27を用いて説明する。なお、図27では、既に堆積済みのスパッタリング粒子を点線で示す。
図27(A)では、被成膜面1003は酸化物半導体膜が数層堆積した表面を有する。なお、被成膜面1003の下側には、非晶質膜1004が形成されている。図27(A)より、スパッタリング粒子1002がプラスに帯電していることで、スパッタリング粒子1002は被成膜面1003において、他のスパッタリング粒子1002の堆積していない領域に堆積していく。これは、スパッタリング粒子1002がプラスに帯電していることにより、スパッタリング粒子1002同士が互いに反発し合うためである。
図27(B)は、図27(A)の一点鎖線X−Yに対応する断面図である。このようにして堆積したスパッタリング粒子1002は、被成膜面1003に垂直な方向に結晶のc軸が揃っており、酸化物半導体膜130bは、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)となる。このように、酸化物半導体膜130bは、非晶質膜1004上にc軸が揃った結晶を作製することができる。
このように、堆積して得られる酸化物半導体膜は厚さが均一となり、結晶の配向の揃った酸化物半導体膜となる。スパッタリング粒子が、無秩序に堆積するのではなく、プラスに帯電したスパッタリング粒子同士が作用し合って被成膜面に垂直な方向にc軸が揃うように整然と堆積していくメカニズムは、物理的なエピタキシャル成長またはエピタキシャルデポジションと表現することができる。
以上のような方法で高い配向性を有する多結晶酸化物半導体を含むターゲットを使用することで、厚さが均一であり、結晶の配向の揃った酸化物半導体膜130bを成膜することができる。
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態9)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明した半導体装置を電子機器に適用する場合について、図28を用いて説明する。本実施の形態では、コンピュータ、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯情報端末(携帯型ゲーム機、音響再生装置なども含む)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどのカメラ、電子ペーパー、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)などの電子機器に、上述の半導体装置を適用する場合について説明する。
図28(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、筐体701、筐体702、表示部703、キーボード704などによって構成されている。筐体701と筐体702の少なくとも一つには、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減されたノート型のパーソナルコンピュータが実現される。
図28(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体711には、表示部713と、外部インターフェイス715と、操作ボタン714等が設けられている。また、携帯情報端末を操作するスタイラス712などを備えている。本体711内には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減された携帯情報端末が実現される。
図28(C)は、電子ペーパーを実装した電子書籍である。電子書籍720は、筐体721と筐体723の2つの筐体で構成されている。筐体721および筐体723には、それぞれ表示部725および表示部727が設けられている。筐体721と筐体723は、軸部737により接続されており、該軸部737を軸として開閉動作を行うことができる。また、筐体721は、電源731、操作キー733、スピーカー735などを備えている。筐体721、筐体723の少なくとも一つには、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減された電子書籍が実現される。
図28(D)は、携帯電話機であり、筐体740と筐体741の2つの筐体で構成されている。さらに、筐体740と筐体741は、スライドし、図28(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。また、筐体741は、表示パネル742、スピーカー743、マイクロフォン744、操作キー745、ポインティングデバイス746、カメラ747、外部接続端子748などを備えている。また、筐体740は、携帯電話機の充電を行う太陽電池749、外部メモリスロット750などを備えている。また、アンテナは、筐体741に内蔵されている。筐体740と筐体741の少なくとも一つには、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減された携帯電話機が実現される。
図28(E)は、デジタルカメラであり、本体761、表示部767、接眼部763、操作スイッチ764、表示部765、バッテリー766などによって構成されている。本体761内には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減されたデジタルカメラが実現される。
図28(F)は、テレビジョン装置であり、筐体771、表示部773、スタンド775などで構成されている。テレビジョン装置770の操作は、筐体771が備えるスイッチや、リモートコントローラ780により行うことができる。筐体771およびリモートコントローラ780には、先の実施の形態に示す半導体装置が搭載されている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減されたテレビジョン装置が実現される。
以上のように、本実施の形態に示す電子機器には、先の実施の形態に係る半導体装置が搭載されている。このため、消費電力を低減した電子機器が実現される。
<参考例>
多層膜中の酸化物半導体膜にチャネルが形成されるトランジスタが有する「低いオフ電流」を説明するため、以下に、多層膜を用いたトランジスタのオフ電流を求めた結果について説明する。
<多層膜を用いたトランジスタのオフ電流測定>
まず、測定試料について説明する。
まず、シリコン基板上に下地絶縁膜を形成した。下地絶縁膜として、CVD法にて厚さ300nmの酸化窒化シリコンを形成した。
次に、下地絶縁膜上に第1の酸化物膜を形成した。第1の酸化物膜は、In−Ga−Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比])であるターゲットを用いて、スパッタリング法にて5nm成膜した。なお、成膜ガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15sccm用い、圧力を0.4Paとし、基板の温度を200℃とし、DC電力を0.5kW印加することで成膜した。
次に、第1の酸化物膜上に酸化物半導体膜を形成した。酸化物半導体膜は、In−Ga−Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比])であるターゲットを用いて、スパッタリング法にて15nm成膜した。なお、成膜ガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15sccm用い、圧力を0.4Paとし、基板の温度を300℃とし、DC電力を0.5kW印加することで成膜した。
次に、酸化物半導体膜上に第2の酸化物膜を形成した。第2の酸化物膜は、In−Ga−Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比])であるターゲットを用いて、スパッタリング法にて5nm成膜した。なお、成膜ガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15sccm用い、圧力を0.4Paとし、基板の温度を200℃とし、DC電力を0.5kW印加することで成膜した。
次に、加熱処理を行い、酸化物半導体膜に含まれる水、水素等を脱離させた。ここでは、窒素雰囲気で、450℃、1時間の加熱処理を行った後、酸素雰囲気で、450℃、1時間の加熱処理を行った。
次に、下地絶縁膜および第2の酸化物膜上に導電膜を形成し、フォトリソグラフィ工程により該導電膜上にマスクを形成し、該マスクを用いて該導電膜の一部をエッチングし、ソース電極およびドレイン電極を形成した。なお、該ソース電極およびドレイン電極となる導電膜は、厚さ100nmのタングステン膜を形成した。
次に、第2の酸化物膜、ソース電極およびドレイン電極上にゲート絶縁膜を形成した。ゲート絶縁膜として、CVD法にて酸化窒化シリコン膜を30nm形成した。
次に、ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成した。スパッタリング法で厚さ30nmの窒化タンタル膜を形成し、該窒化タンタル上にスパッタリング法で厚さ135nmのタングステン膜を形成した。フォトリソグラフィ工程により該タングステン膜上にマスクを形成し、該マスクを用いて該窒化タンタルおよび該タングステン膜の一部をエッチングし、ゲート電極を形成した。
次に各構成を覆うように層間絶縁膜を形成した。層間絶縁膜として、スパッタリング法で厚さ70nmの酸化アルミニウム膜を形成し、さらに該酸化アルミニウム膜上にCVD法にて厚さ300nmの酸化窒化シリコン膜を形成した。
トランジスタのチャネル長L=0.73μm,チャネル幅W=1cm、ゲート電極とソース電極(またはドレイン電極)の間の長さLoffは、0.67μmである。
以上の工程により、試料のトランジスタを作製した。
続いて、作製したトランジスタのリーク電流結果について説明する。
測定条件は、Dry雰囲気、暗状態でVgs=−4V、Vds=1Vで85℃および125℃の2条件で行った。
図29に示すように85℃、125℃において、時間が経過してもそれぞれ1×10−21A/μm以下、1×10−19A/μm以下と低いオフ電流を示している。
以上より、多層膜を用いたトランジスタのオフ電流は極めて低いことが確認された。