JP2014081869A - 配線膜、タッチパネルセンサ、スパッタリング用Cu合金ターゲット材及び配線膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低抵抗で導通性に優れる配線膜を提供する。
【解決手段】In,Ga,Sn,Znの少なくともいずれかを含む複合酸化物からなる透明導電膜が形成された基板の透明導電膜上に設けられるCu合金膜を備え、Cu合金膜は、純度3N以上の純Cuに、前記純Cuの酸化物よりも標準生成自由エネルギーの低い酸化物を生成する元素を含有する。
【選択図】図1
【解決手段】In,Ga,Sn,Znの少なくともいずれかを含む複合酸化物からなる透明導電膜が形成された基板の透明導電膜上に設けられるCu合金膜を備え、Cu合金膜は、純度3N以上の純Cuに、前記純Cuの酸化物よりも標準生成自由エネルギーの低い酸化物を生成する元素を含有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、配線膜、係る配線膜を用いたタッチパネルセンサ、係る配線膜の製造に用いるスパッタリング用Cu合金ターゲット材及び係る配線膜の製造方法に関する。
近年、券売機、現金自動預け払い機(ATM)、スマートフォン、タブレットPC、カーナビゲーションシステム等の様々な電子機器の表示・入力デバイスとしてタッチパネルセンサが使用されている。
例えば、特許文献1には、静電容量式のタッチパネルセンサの構造が記載されている。係る構造は、基板の表裏面にITO(InSnO(Indium Tin Oxide):酸化インジウムスズ)等の透明導電膜を備える。透明導電膜は、X−Y座標に直交するパターンをなし、銀(Ag)インク等の金属配線パターンを介して電圧検知回路に接続されている。これにより、基板の表裏面の各透明導電膜の間の電圧変化を検知することができる。
また、例えば特許文献2には、静電容量検出において、液晶表示装置等からの輻射ノイズの影響を抑えるシールド層を備える入力装置及びその製造方法が記載されている。シールド層は、Agインク等を印刷してパターン形成されたものである。なお、最近では、Agインク(Agペースト)による配線の低抵抗化も検討されており、例えば非特許文献1によれば、50μΩcm程度の抵抗率に抑えることができる。
また、例えば特許文献3には、透明導電膜に直接接続するアルミニウム(Al)合金膜からなる引き回し配線を備えるタッチパネルセンサが記載されている。Al合金膜は、透明導電膜との電気伝導性と密着性とに優れた組成となっている。また、係るAl合金は、スパッタリングにより成膜され、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチングによりパターニングされている。
越石健司・黒沢理 共編"タッチパネルがわかる本"、オーム社、2011年5月20日
上述のように、様々な電子機器に使用されるタッチパネルセンサにおいては、高精細化のための電極数の増加により、また、デザイン上の観点から縁の部分が狭小化された狭額縁のパネルに対応するべく、配線パターンを100μm以下の細線とすることが要求されている。
しかしながら、例えば特許文献1,2においてはAgインク等が用いられており、このようなAgペーストのスクリーン印刷技術には寸法精度の限界がある。また、上述のように、Agペーストによる配線の抵抗率は、50μΩcm程度にしか抑えることができない。これは、純銅(Cu)の2μΩcmや純Alの3μΩcmに比べると非常に高く、厚い配線が必要となってしまう。
また、特許文献3では、低抵抗率のAl合金膜に寸法精度の高いフォトリソグラフィによるパターニングを行っているが、Al系の材料には別の難点がある。透明導電膜は、上述のITOや、或いはIZO(InZnO:酸化インジウム亜鉛)や、IGZO(InGaZnO:酸化インジウムガリウム亜鉛)等の複合酸化物からなる。Al系の材料を用いると、係る透明導電膜との界面に、絶縁性の酸化アルミニウムが形成されてしまい易く、透明導電膜との導通性に懸念が生じる。
本発明の目的は、低抵抗で導通性に優れる配線膜、係る配線膜を用いたタッチパネルセンサ、係る配線膜の製造に用いるスパッタリング用Cu合金ターゲット材及び係る配線膜の製造方法を提供することである。
本発明の第1の態様によれば、
タッチパネルセンサに用いられる配線膜であって、
In,Ga,Sn,Znの少なくともいずれかを含む複合酸化物からなる透明導電膜が形成された基板の前記透明導電膜上に設けられるCu合金膜を備え、
前記Cu合金膜は、
純度3N以上の純Cuに、前記純Cuの酸化物よりも標準生成自由エネルギーの低い酸化物を生成する元素を含有する
配線膜が提供される。
タッチパネルセンサに用いられる配線膜であって、
In,Ga,Sn,Znの少なくともいずれかを含む複合酸化物からなる透明導電膜が形成された基板の前記透明導電膜上に設けられるCu合金膜を備え、
前記Cu合金膜は、
純度3N以上の純Cuに、前記純Cuの酸化物よりも標準生成自由エネルギーの低い酸化物を生成する元素を含有する
配線膜が提供される。
本発明の第2の態様によれば、
前記Cu合金膜に含有される元素はNiである
第1の態様に記載の配線膜が提供される。
前記Cu合金膜に含有される元素はNiである
第1の態様に記載の配線膜が提供される。
本発明の第3の態様によれば、
前記Niの前記Cu合金膜中の平均濃度が2原子%以上7原子%以下である
第2の態様に記載の配線膜が提供される。
前記Niの前記Cu合金膜中の平均濃度が2原子%以上7原子%以下である
第2の態様に記載の配線膜が提供される。
本発明の第4の態様によれば、
In,Ga,Sn,Znの少なくともいずれかを含む複合酸化物からなる透明導電膜が形成された基板の前記透明導電膜上に設けられるCu合金膜を備え、
前記Cu合金膜は、
純度3N以上の純Cuに膜中の平均濃度が2原子%以上7原子%以下のNiを含有する
配線膜が提供される。
In,Ga,Sn,Znの少なくともいずれかを含む複合酸化物からなる透明導電膜が形成された基板の前記透明導電膜上に設けられるCu合金膜を備え、
前記Cu合金膜は、
純度3N以上の純Cuに膜中の平均濃度が2原子%以上7原子%以下のNiを含有する
配線膜が提供される。
本発明の第5の態様によれば、
前記透明導電膜と前記Cu合金膜との間に設けられる純度3N以上の純Cu膜を備える
第1〜第4の態様のいずれかに記載の配線膜が提供される。
前記透明導電膜と前記Cu合金膜との間に設けられる純度3N以上の純Cu膜を備える
第1〜第4の態様のいずれかに記載の配線膜が提供される。
本発明の第6の態様によれば、
前記Cu合金膜の厚さは10nm以上50nm以下であり、
前記純Cu膜の厚さは50nm以上200nm以下である
第5の態様に記載の配線膜が提供される。
前記Cu合金膜の厚さは10nm以上50nm以下であり、
前記純Cu膜の厚さは50nm以上200nm以下である
第5の態様に記載の配線膜が提供される。
本発明の第7の態様によれば、
前記Cu合金膜は、
前記透明導電膜に直接接するよう前記透明導電膜上に設けられ、厚さが100nm以上300nm以下である
第1〜第4の態様のいずれかに記載の配線膜が提供される。
前記Cu合金膜は、
前記透明導電膜に直接接するよう前記透明導電膜上に設けられ、厚さが100nm以上300nm以下である
第1〜第4の態様のいずれかに記載の配線膜が提供される。
本発明の第8の態様によれば、
線幅が100μm以下の細線にパターニングされている
第1〜第7の態様のいずれかに記載の配線膜が提供される。
線幅が100μm以下の細線にパターニングされている
第1〜第7の態様のいずれかに記載の配線膜が提供される。
本発明の第9の態様によれば、
前記Cu合金膜の表面近傍には、
前記Niが前記平均濃度よりも高い濃度で含有された濃化層が形成されている
第1〜第8の態様のいずれかに記載の配線膜が提供される。
前記Cu合金膜の表面近傍には、
前記Niが前記平均濃度よりも高い濃度で含有された濃化層が形成されている
第1〜第8の態様のいずれかに記載の配線膜が提供される。
本発明の第10の態様によれば、
前記基板は、
光透過性硬質プラスチックフィルム、ガラス基板、または石英基板である
第1〜第9の態様のいずれかに記載の配線膜が提供される。
前記基板は、
光透過性硬質プラスチックフィルム、ガラス基板、または石英基板である
第1〜第9の態様のいずれかに記載の配線膜が提供される。
本発明の第11の態様によれば、
第1〜第10の態様のいずれかに記載の配線膜が、前記基板の前記透明導電膜上に設けられている
タッチパネルセンサが提供される。
第1〜第10の態様のいずれかに記載の配線膜が、前記基板の前記透明導電膜上に設けられている
タッチパネルセンサが提供される。
本発明の第12の態様によれば、
第1〜第10の態様のいずれかに記載の配線膜の製造に用いられ、
純度3N以上の純Cuに、前記Cu合金膜に含有される元素と同一の元素を含有するCu合金材からなる
スパッタリング用Cu合金ターゲット材が提供される。
第1〜第10の態様のいずれかに記載の配線膜の製造に用いられ、
純度3N以上の純Cuに、前記Cu合金膜に含有される元素と同一の元素を含有するCu合金材からなる
スパッタリング用Cu合金ターゲット材が提供される。
本発明の第13の態様によれば、
In,Ga,Sn,Znの少なくともいずれかを含む複合酸化物からなる透明導電膜が形成された基板の前記透明導電膜上に、
スパッタリングにより、純度3N以上の純Cuに、前記純Cuの酸化物よりも標準生成自由エネルギーの低い酸化物を生成する元素が含有されるようCu合金膜を成膜する
配線膜の製造方法が提供される。
In,Ga,Sn,Znの少なくともいずれかを含む複合酸化物からなる透明導電膜が形成された基板の前記透明導電膜上に、
スパッタリングにより、純度3N以上の純Cuに、前記純Cuの酸化物よりも標準生成自由エネルギーの低い酸化物を生成する元素が含有されるようCu合金膜を成膜する
配線膜の製造方法が提供される。
本発明の第14の態様によれば、
フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング又はリフトオフにより、前記Cu合金膜を線幅が100μm以下の細線にパターニングする
第13の態様に記載の配線膜の製造方法が提供される。
フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング又はリフトオフにより、前記Cu合金膜を線幅が100μm以下の細線にパターニングする
第13の態様に記載の配線膜の製造方法が提供される。
本発明の第15の態様によれば、
酸素ガスが微量に含まれる不活性ガスの気流中で、150℃以上300℃以下の温度にて、前記Cu合金膜を加熱する
第13又は第14の態様に記載の配線膜の製造方法が提供される。
酸素ガスが微量に含まれる不活性ガスの気流中で、150℃以上300℃以下の温度にて、前記Cu合金膜を加熱する
第13又は第14の態様に記載の配線膜の製造方法が提供される。
本発明によれば、低抵抗で導通性に優れる配線膜、係る配線膜を用いたタッチパネルセンサ、係る配線膜の製造に用いるスパッタリング用Cu合金ターゲット材及び係る配線膜の製造方法が提供される。
<本発明者等が得た知見>
上述の特許文献3のように、例えばアルミニウム(Al)合金膜は低抵抗率を有するが、表面に絶縁性の酸化アルミニウム(AlO)が形成され易い。特に、複合酸化物からなる透明導電膜との界面に酸化アルミニウムが形成されてしまうと、透明導電膜との導通性が低下し、配線膜としての信頼性に懸念が生じる。
上述の特許文献3のように、例えばアルミニウム(Al)合金膜は低抵抗率を有するが、表面に絶縁性の酸化アルミニウム(AlO)が形成され易い。特に、複合酸化物からなる透明導電膜との界面に酸化アルミニウムが形成されてしまうと、透明導電膜との導通性が低下し、配線膜としての信頼性に懸念が生じる。
一方で、例えば液晶パネルの薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)アレイ配線等にも用いられる銅(Cu)系の材料の酸化物は、非絶縁性である。本発明者等は、この点に着目し、Cu系材料をタッチパネルセンサ用配線膜として用いれば、たとえ透明導電膜との界面に酸化銅(CuO)等が形成されても導通性が充分に確保されるのではないかと考えた。また、Cu系材料はAl系材料より酸化自体も起こり難い。
しかしながら、Al系材料では、例えば常に空気等に曝される露出した表面であっても、一旦、酸化被膜が形成されるとそれ以上酸化が進行しないのに対し、Cu系材料では、長期の間に内部にまで酸化が進行してしまう。これにより、配線膜としての抵抗率を低下させてしまう懸念がある。
本発明者等は、係る懸念点を解消すべく鋭意研究を行った。その結果、純Cuに所定元素を含有させて合金化することで酸化の進行が抑制され、低抵抗で導通性に優れる配線膜が得られることを見いだした。
本発明は、発明者等が見いだしたこのような知見に基づくものである。
<本発明の第1実施形態>
(1)タッチパネルセンサ用配線膜の構成
以下に、本発明の第1実施形態に係るタッチパネルセンサ用配線膜の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るタッチパネルセンサ用配線膜10の断面図である。
(1)タッチパネルセンサ用配線膜の構成
以下に、本発明の第1実施形態に係るタッチパネルセンサ用配線膜の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るタッチパネルセンサ用配線膜10の断面図である。
図1に示すように、タッチパネルセンサ用配線膜10は、例えば透明導電膜32が形成された基板31の透明導電膜32上に設けられる銅(Cu)合金膜11を備える。また、タッチパネルセンサ用配線膜10は、例えば透明導電膜32とCu合金膜11との間に設けられる純Cu膜12を備える。
基板31は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる光透過性の硬質プラスチックフィルムや、ガラス基板、石英基板等の矩形状等に形成された透明基板である。
透明導電膜32は、例えばインジウム(In)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)の少なくともいずれかを含む複合酸化物からなる薄膜である。具体的には、複合酸化物として、ITO(InSnO(Indium Tin Oxide):酸化インジウムスズ)や、IZO(InZnO:酸化インジウム亜鉛)、IGZO(InGaZnO:酸化インジウムガリウム亜鉛)等が挙げられる。
また、透明導電膜32は、例えばスパッタリングにより成膜されたスパッタリング膜である。なお、透明導電膜32は、パターンを有さず基板31の略全面を覆う平板状であってもよく、或いは、マトリックス状に配置されるドットや、複数本の帯状のパターン等を有していてもよい。
Cu合金膜11は、例えば厚さが10nm以上50nm以下のCu合金からなる薄膜である。Cu合金膜11は、例えば純度3N(99.9質量%)以上の純Cuにニッケル(Ni)を含有する。含有されるNiは、Cu合金膜11中の平均濃度が2原子%以上7原子%以下となっている。
純Cu膜12は、例えば厚さが50nm以上200nm以下の純Cuからなる薄膜である。純Cu膜12を構成する純Cuは、例えば3N(99.9質量%)以上の純度を有する。
また、Cu合金膜11と純Cu膜12とは、例えばそれぞれがスパッタリングにより成膜されたスパッタリング膜である。これらのCu合金膜11と純Cu膜12とにより、タッチパネルセンサ用配線膜10が構成される。
タッチパネルセンサ用配線膜10は、例えばフォトリソグラフィ技術を用いたエッチングにより、線幅が100μm以下の複数本の細線にパターニングされている。各細線は、例えば矩形状に形成された基板31の一辺に沿って、互いに平行となるよう、透明導電膜32上に離間して配置されている。また、例えば各細線の一端などに、電極パッドとして機能する平面視で矩形状や円形状等の部位を備えていてもよい。
タッチパネルセンサは、主に、タッチパネルセンサ用配線膜10と、基板31と、透明導電膜32と、により構成される。
つまり、タッチパネルセンサは、例えばタッチパネルセンサ用配線膜10が透明導電膜32上に設けられた2枚の基板31を重ね合わせて構成される。このとき、例えば一方の基板31の透明導電膜32上に、もう一方の基板31が透明導電膜32を上方に向けて重ね合わされている。これにより、上方の基板31は、各透明導電膜32間に介在される絶縁層の役割を果たす。また、このとき、例えばそれぞれの基板31に設けられるタッチパネルセンサ用配線膜10が互いに直交する向きに重ね合わされている。
また、タッチパネルセンサは、上側の基板31の露出した透明導電膜31とタッチパネルセンサ用配線膜10との表面を覆う保護膜や、操作面となるカバーガラス等を備えている。また、タッチパネルセンサは、例えばタッチパネルセンサ用配線膜10と電気的に接続されて電気信号の入出力を行うフレキシブルプリント基板等を備える。
このように構成されるタッチパネルセンサは、例えば様々な電子機器の液晶表示装置の表面等に取り付けられ、表示・入力デバイスとして使用される。
(2)タッチパネルセンサ用配線膜の製造方法
次に、本実施形態に係るタッチパネルセンサ用配線膜10の製造方法について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の第1実施形態に係るスパッタリング用銅(Cu)合金ターゲット材100が装着されたスパッタリング装置50の縦断面図である。
次に、本実施形態に係るタッチパネルセンサ用配線膜10の製造方法について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の第1実施形態に係るスパッタリング用銅(Cu)合金ターゲット材100が装着されたスパッタリング装置50の縦断面図である。
(各膜の成膜の概要)
基板31上にそれぞれ形成される透明導電膜32、純Cu膜12、Cu合金膜11は、上述のように、例えばスパッタリングにより成膜される。各膜の成膜を行うには、それぞれの膜と略同一組成の材料から構成されるスパッタリング用ターゲット材がそれぞれ用いられる。
基板31上にそれぞれ形成される透明導電膜32、純Cu膜12、Cu合金膜11は、上述のように、例えばスパッタリングにより成膜される。各膜の成膜を行うには、それぞれの膜と略同一組成の材料から構成されるスパッタリング用ターゲット材がそれぞれ用いられる。
すなわち、タッチパネルセンサ用配線膜10を製造するには、例えば図2に示すスパッタリング装置50内にスパッタリング用複合酸化物ターゲット材を装着し、基板31上に透明導電膜32を成膜しておく。その後、必要に応じて、透明導電膜32のパターニングを行ってもよい。
このように、透明導電膜32が形成された基板31の透明導電膜32上に、純Cu膜12とCu合金膜11とを順次成膜してタッチパネルセンサ用配線膜10を製造する。
透明導電膜32上に純Cu膜12を成膜するには、例えばスパッタリング装置50内にスパッタリング用純Cuターゲット材を装着し、透明導電膜32上に純Cuが所定厚さで堆積されるようスパッタリングを行う。
また、純Cu膜12上にCu合金膜11を成膜するには、例えばスパッタリング装置50内にスパッタリング用Cu合金ターゲット材100を装着し、純Cu膜12上にCu合金が所定厚さで堆積されるようスパッタリングを行う。
このように、透明導電膜32をはじめとする各膜は、スパッタリング用ターゲット材の種類を変えることで、同様の方法により成膜することができる。以下に、スパッタリング用Cu合金ターゲット材100を用いてCu合金膜11を成膜する場合について詳述する。
(Cu合金膜の成膜)
スパッタリング用Cu合金ターゲット材100は、例えばタッチパネルセンサ用配線膜10の製造に用いられ、Cu合金膜11と略同一の組成を有する。つまり、スパッタリング用Cu合金ターゲット材100は、純度3N以上の純Cuに平均濃度が2原子%以上7原子%以下のNiを含有するCu合金材からなり、スパッタリングによりCu合金膜11を成膜するよう構成されている。
スパッタリング用Cu合金ターゲット材100は、例えばタッチパネルセンサ用配線膜10の製造に用いられ、Cu合金膜11と略同一の組成を有する。つまり、スパッタリング用Cu合金ターゲット材100は、純度3N以上の純Cuに平均濃度が2原子%以上7原子%以下のNiを含有するCu合金材からなり、スパッタリングによりCu合金膜11を成膜するよう構成されている。
スパッタリング用Cu合金ターゲット材100は、例えば純度3N以上の無酸素銅(OFC:Oxygen-Free Copper)の原料に、純度3NのNi原料を所定量配合し、溶解して鋳造した後、圧延および熱処理を行うことで製造される。
スパッタリング用Cu合金ターゲット材100が装着されるスパッタリング装置50は、例えば直流(DC)放電と磁石とを用いてプラズマを励起させるDCマグネトロンスパッタリング装置として構成されている。なお、図2に示すスパッタリング装置50はあくまでも一例である。
図2に示すように、スパッタリング装置50は、真空チャンバ51を備えている。真空チャンバ51内の上部には基板保持部52sが設けられ、成膜対象となる基板Sが、成膜される面を下方に向けて保持される。基板Sは、例えば上述の工程を経て、被成膜面となる純Cu膜が予め透明導電膜上に形成されたガラス基板等である。
真空チャンバ51内の底部には、図示しない水冷等の冷却機構と磁石とを備えるターゲット保持部52tが設けられ、例えばスパッタリング用Cu合金ターゲット材100が接合された図示しないバッキングプレートが保持される。これにより、スパッタリング用Cu合金ターゲット材100が、基板Sの被成膜面と対向するよう、スパッタリング面を上方に向けて保持される。なお、スパッタリング装置50内に複数の基板Sを保持して、これら基板Sを一括処理、或いは連続処理するよう構成されてもよい。
また、真空チャンバ51の一方の壁面にはガス供給管53fが接続され、ガス供給管53fと対向する他方の壁面にはガス排気管53vが接続されている。ガス供給管53fには、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガスを真空チャンバ51内に供給する図示しないガス供給系が接続されている。ガス排気管53vには、Arガス等の真空チャンバ51内の雰囲気を排気する図示しないガス排気系が接続されている。
係るスパッタリング装置50にて基板Sへの成膜を行う際は、Arガス等を真空チャンバ51内に供給し、スパッタリング用Cu合金ターゲット材100を接地(アース)して、基板Sに正の高電圧が印加されるよう、真空チャンバ51に対してDC放電電力(DCパワー)を投入する。
これにより、主にスパッタリング用Cu合金ターゲット材100と基板Sとの間にプラズマが生成され、プラスのアルゴン(Ar+)イオンGが、スパッタリング用Cu合金ターゲット材100のスパッタリング面に衝突する。Ar+イオンGの衝突により、スパッタリング用Cu合金ターゲット材100から叩き出されたCuやNi等のスパッタリング粒子Pが基板Sの被成膜面へと堆積されていく。
このとき、スパッタリングCu合金ターゲット材100の下方に配置されたターゲット保持部52tの磁石により、スパッタリングCu合金ターゲット材100の表面に磁場空間が形成されてプラズマが高密度化し、実用レベルにまでスパッタ速度を高めることができる。またこの間、スパッタリング用Cu合金ターゲット材100は、バッキングプレートを介して水冷等により冷却されており、不必要な温度上昇を抑制することができる。
以上により、基板S上には、例えばCu合金からなるスパッタリング膜Mが形成される。なお、上述した透明導電膜32および純Cu膜12の成膜方法もこれに準ずる。
(純Cu膜およびCu合金膜のパターニング)
上述のように成膜されたCu合金膜11と純Cu膜12とを、例えばフォトリソグラフィ技術を用いたエッチングによりパターニングする。
上述のように成膜されたCu合金膜11と純Cu膜12とを、例えばフォトリソグラフィ技術を用いたエッチングによりパターニングする。
すなわち、Cu合金膜11上に、例えばレジストパターンを形成し、係るレジストパターンをマスクとしてCu合金膜11と純Cu膜12とをそれぞれエッチングして、線幅が100μm以下の複数本の細線にパターニングする。
以上により、Cu合金膜11と純Cu膜12とからなるタッチパネルセンサ用配線膜10が製造される。
(3)本実施形態に係る効果 本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
(a)すなわち、本実施形態では、膜中に所定の平均濃度のNiを含有するCu合金膜11を、タッチパネルセンサ用配線10の一部に用いている。これにより、タッチパネルセンサ用配線10の内部への酸化の進行を抑制し、低抵抗で導通性に優れるタッチパネルセンサ用配線膜10が得られる。
上述のように、例えばAl系材料では、一旦表面に薄い酸化被膜が形成されると、それが酸化を抑制する不動態被膜として働き、それ以上酸化が進行しない。Cu合金膜11においても、膜中に含有されたNiが膜の表面で酸素(O2)と結びついて酸化被膜を形成し、酸素がそれ以上、膜内部へと浸入して酸化が進行してしまうのを抑制する。
Niによる酸化抑制効果は、CuよりもNiの酸化物の標準生成自由エネルギーが低いことに起因すると考えられる。つまり、NiはCuよりも酸素と結び付き易く酸化され易い。よって、Cu合金膜11の表面でNiが酸化されて強固な酸化被膜となり、それ以上の酸化の進行を抑制すると考えられる。以下の表1に、NiおよびCuの酸化物の標準生成自由エネルギーを示す。
本実施形態では、膜中のNiの平均濃度を2原子%以上としているので、係る酸化の抑制効果が充分に得られ、長期間に亘って安定的にタッチパネルセンサ用配線膜10の抵抗率を低く維持することができる。
また、本実施形態では、膜中のNiの平均濃度を7原子%以下としているので、Ni自体によるCu合金膜11の高抵抗率化を抑制することができる。これにより、従来技術におけるAgペーストや、Al合金膜等を用いた配線膜と比較して、充分に低い抵抗率を得ることができる。
以上により、タッチパネルセンサの高速動作が可能となり、タッチパネルセンサの性能を向上させることができる。
(b)また、本実施形態では、タッチパネルセンサ用配線膜10を、Cu合金膜11と純Cu膜12との積層構造としている。これにより、酸化の進行を抑制しつつ、タッチパネルセンサ用配線膜10の抵抗率をさらに低下させることができる。
すなわち、Cu合金膜11よりも更に低抵抗率の純Cu膜12をタッチパネルセンサ用配線膜10の一部に用いることで、タッチパネルセンサ用配線膜10の抵抗率をさらに低下させ、また、タッチパネルセンサ用配線膜10の膜厚を低減することができる。
また、純Cu膜12を透明導電膜32との界面に配置しても、上述のように、酸化銅は非絶縁性のため、酸化銅が形成された場合であってもタッチパネルセンサ用配線膜10と透明導電膜32との導通性を充分に確保することができる。
また、純Cu膜12の上面をCu合金膜11で覆っているので、Cu合金膜11がバリア膜として機能し、純Cu膜12の上面側からの酸化を抑制することができる。これにより、タッチパネルセンサ用配線膜10の低抵抗率を長期間に亘って維持することができる。
(c)また、本実施形態では、タッチパネルセンサ用配線膜10を、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチングによりパターニングする。これにより、タッチパネルセンサ用配線膜10を線幅が100μm以下の細線とすることができる。
上述のように、例えば従来技術に係るAgペースト等のスクリーン印刷技術は寸法精度に限界があり、例えば線幅が100μm以下の細線を得ることが困難であった。
本実施形態では、フォトリソグラフィ技術を用いることで、タッチパネルセンサ用配線膜10を寸法精度よくパターニングすることができ、線幅が100μm以下の細線が得られる。これにより、高精細化や狭額縁のパネルへの対応が容易となる。
<本発明の第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るタッチパネルセンサ用配線膜の構成について、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に係るタッチパネルセンサ用配線膜20の断面図である。
次に、本発明の第2実施形態に係るタッチパネルセンサ用配線膜の構成について、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に係るタッチパネルセンサ用配線膜20の断面図である。
図3に示すように、本実施形態に係るタッチパネルセンサ用配線膜20は、Cu合金膜21の単膜構造を備える点が、積層構造を備える上述の実施形態とは異なる。
すなわち、タッチパネルセンサ用配線膜20は、例えば厚さが100nm以上300nm以下のCu合金膜21から構成される。Cu合金膜21は、透明導電膜32に直接接するように透明導電膜32上に設けられている。
その他、Cu合金膜21を構成するCu合金の組成や、細線に電極パッド等を有するタッチパネルセンサ用配線膜20の形状や透明導電膜32上での配置等は、上述の実施形態と同様である。
係るタッチパネルセンサ用配線膜20は、例えば上述の実施形態と同様の方法により、基板31の透明導電膜32上にCu合金膜21を成膜することで製造することができる。すなわち、スパッタリング装置50内にスパッタリング用Cu合金ターゲット材100を装着し、基板31の透明導電膜32上に直接、Cu合金が所定厚さで堆積されるようスパッタリングを行う。成膜されたCu合金膜21には、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチングによりパターニングを施す。
また、この後、所定の予備加熱を行って、Niが膜中の平均濃度よりも高い濃度で含有された濃化層をCu合金膜21の表面近傍に形成してもよい。すなわち、Cu合金膜21が形成された基板31を加熱炉等の中に入れ、例えば高純度のArガスや窒素(N2)ガス等の不活性ガスの気流中で、150℃以上300℃以下の温度にて加熱する。このような高純度の不活性ガスであっても、酸素(O2)ガスは微量に含まれる(例えば、数ppmオーダー)。よって、Niの原子が不活性ガス中に微量に含まれるO2ガスと反応し、Cu合金膜21の表面近傍に濃化する。
本実施形態によっても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態では、タッチパネルセンサ用配線膜20の全体をCu合金膜21により構成している。また、このとき、全体の膜厚を、上述の実施形態のタッチパネルセンサ用配線膜10の全体膜厚よりも厚くしている。これにより、タッチパネルセンサ用配線10の側面等の酸化の進行が抑制され、低抵抗率や導通性がよりいっそう安定して得られる。
また、本実施形態では、タッチパネルセンサ用配線膜20をCu合金膜21の単膜構造としている。これにより、工程数を減らすことができ、低コストでタッチパネルセンサ用配線膜20を製造することができる。
また、本実施形態では、所定の予備加熱により、Cu合金膜21の表面近傍にNiの濃化層を形成する。これにより、いっそう強固なNiの酸化被膜が、より確実に形成され、Cu合金膜21内への酸化の進行をいっそう抑制することができる。
また、本実施形態の予備加熱で、Cu合金膜21の表面近傍に膜中のNiの少なくとも一部が集まることで、Cu合金膜21の内部のNi濃度が低下する。よって、Cu合金膜21全体としては抵抗率が下がる。つまり、より一層、低抵抗のCu合金膜21を得ることができる。
また、本実施形態では、係る予備加熱により、スパッタリングによって堆積されたままの無秩序で規則性のないスパッタリング膜の結晶に原子の再配列が起こる。よって、タッチパネルセンサ用配線膜20の結晶性が向上し、抵抗率をいっそう低減することができる。
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
例えば、上述の実施形態では、Cu合金膜11,21には所定濃度のNiが含有されることとしたが、Niに加えて、或いは、Niに替えて、純Cuの酸化物よりも標準生成自由エネルギーの低い酸化物を生成する元素が含有されることとしてもよい。この場合、タッチパネルセンサ用配線膜の製造に用いるスパッタリング用Cu合金ターゲット材を、Cu合金膜に含有されることとなる元素と同一の元素を含有するCu合金材から構成すればよい。
また、上述の実施形態では、タッチパネルセンサ用配線膜10,20が、基板31の一辺に沿って平行な複数の細線にパターニングされていることとしたが、タッチパネルセンサ用配線膜10,20の形状や配置はこれに限定されない。
また、上述の実施形態では、タッチパネルセンサ用配線膜10,20のパターニングを、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチングにより行うこととしたが、例えばフォトリソグラフィ技術を用いたリフトオフ等により行ってもよい。
また、上述の実施形態では、タッチパネルセンサ用配線膜10を純Cu膜12とCu合金膜11との積層構造としたが、Cu合金膜が純Cu膜の側面に形成されていてもよい。これにより、いっそう酸化の抑制を図ることができる。
また、上述の実施形態では、Cu合金膜21の表面近傍に濃化層が形成されることとしたが、濃化層は形成されていなくともよい。濃化層が形成されていなくとも、Cu合金膜11,21による所定の酸化抑制効果が得られる。また、濃化層を形成する予備加熱を行わないことで、コストの低減を図ることができる。
また、上述の実施形態では、図2に示すスパッタリング装置50により、タッチパネルセンサ用配線膜10,20等を成膜することとしたが、装置構成はこれに限られない。例えば、ターゲット材と基板との上下位置が逆の装置や、ターゲット材と基板とを垂直に立てて対向させる装置等、種々のタイプのスパッタリング装置を用いることができる。種類の異なる複数のターゲット材を装着し、同一装置内で各膜の成膜が可能な多元式スパッタリング装置等を用いてもよい。
また、上述の実施形態では、タッチパネルセンサは、一方の基板31の透明導電膜32上に、もう一方の基板31が透明導電膜32を上方に向けて重ね合わされることで構成されるとしたが、係る構成に限定されない。
タッチパネルセンサは、例えば2枚の基板31の透明導電膜32とは反対側の面を互いに貼り合わせて構成されていてもよい。
或いは、タッチパネルセンサは、両面に透明導電膜とタッチパネルセンサ用配線膜とがそれぞれ形成された基板を1枚用いて構成されていてもよい。
タッチパネルセンサのこれらの構成によっても、それぞれの透明導電膜の間に介在される基板が絶縁層の役割を果たす。
また或いは、タッチパネルセンサは、例えば絶縁性のドットスペーサを介在させ、透明導電膜が互いに対向するよう2枚の基板を重ね合わせて構成されていてもよい。
また、上述の実施形態に係るタッチパネルセンサ用配線膜10,20は、タッチパネルセンサ以外の用途に適用してもよい。
具体的には、タッチパネルセンサ用配線膜10,20は、例えば液晶パネルのTFTアレイ等のガラス基板上のゲート用、或いは、ITO等からなる透明導電膜としての画素電極膜上のソース−ドレイン電極用の配線膜等として適用することも可能である。例えば、Al合金膜等を配線膜として用いたTFTアレイ配線では、Alの酸化物の弊害を抑制するため、モリブデン(Mo)やチタン(Ti)等の高融点金属膜をITO等の複合酸化物からなる半導体膜との界面に介在させている。本願発明の配線膜をTFTアレイ配線に適用すれば、このような高融点金属膜を用いずとも、低抵抗で導通性に優れるTFTアレイ配線を得ることができる。
また、タッチパネルセンサ用配線膜10,20は、例えば長期環境信頼性が要求される照明などに用いられる発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や、有機エレクトロルミネッセンス(EL:Electro-Luminescence)等の配線膜、或いは、大規模集積回路(LSI:Large Scale Integration)等のシリコン(Si)基板上の配線膜等として適用してもよい。
(1)Cu合金膜/純Cu膜の積層構造の評価
本発明の実施例1〜6に係る評価用サンプルの評価結果について比較例1〜4とともに説明する。これらの評価用サンプルは、上述の第1実施形態に係るタッチパネルセンサ用配線膜10を模したCu合金膜/純Cu膜の積層構造を備える。
本発明の実施例1〜6に係る評価用サンプルの評価結果について比較例1〜4とともに説明する。これらの評価用サンプルは、上述の第1実施形態に係るタッチパネルセンサ用配線膜10を模したCu合金膜/純Cu膜の積層構造を備える。
(評価用サンプルの製作)
まずは、上述の実施形態と同様の方法、手順にて、純度3Nの純Cuに平均濃度を種々に変化させたNiを含有するスパッタリング用Cu合金ターゲット材をそれぞれ直径100mm、厚さ5mmの大きさに製作した。Niの平均濃度は、1原子%〜7.5原子%の間で変化させた。純度3Nの純Cuからなるスパッタリング用純Cuターゲット材も、これと準ずる方法、手順にて製作した。
まずは、上述の実施形態と同様の方法、手順にて、純度3Nの純Cuに平均濃度を種々に変化させたNiを含有するスパッタリング用Cu合金ターゲット材をそれぞれ直径100mm、厚さ5mmの大きさに製作した。Niの平均濃度は、1原子%〜7.5原子%の間で変化させた。純度3Nの純Cuからなるスパッタリング用純Cuターゲット材も、これと準ずる方法、手順にて製作した。
次に、図4に示すように、純Cu膜112とCu合金膜111とが格子状に複数区画に区切って形成された実施例1〜6および比較例1〜4に係る評価用サンプルを製作した。
すなわち、透明導電膜としてのITO膜132が形成された、厚さ0.7mmでサイズ50mm角のガラス基板131を準備した。ITO膜132は、In2O3−10質量%SnO2より構成される市販のスパッタリング用ITOターゲット材をスパッタリングし、50nmの厚さに成膜した。
次に、係るガラス基板131のITO膜132上に、上述のスパッタリング用ターゲット材を用い、純Cu膜112とCu合金膜111とをそれぞれ成膜して評価用サンプルを製作した。純Cu膜112とCu合金膜111との成膜時には、メタルマスクを用いた簡便な方法により、図4に示す評価用パターンを得た。
純Cu膜112の成膜時には、3mm角の開口部を2mm間隔で100マス(縦10マス×横10マス)有し、各開口部の4隅に矩形状の開口部を更に有するメタルマスクを用いた(図示せず)。係るメタルマスクをガラス基板131のITO膜132上に保持し、膜厚の異なる純Cu膜112を、4隅に電極パッド112eを備える3mm角の格子状に区切って100区画、ITO膜132上に形成した。
Cu合金膜111の成膜時には、3mm角の開口部を2mm間隔で100マス(縦10マス×横10マス)有するメタルマスクを用いた(図示せず)。係るメタルマスクをガラス基板131の純Cu膜112上に保持し、膜厚50nmのCu合金膜111を、3mm角の格子状に区切られた純Cu膜112上に形成した。また、Cu合金膜111の成膜時には、上述の種々のスパッタリング用Cu合金ターゲット材を用い、膜中に含有されるNiの平均濃度を個々に異ならせた。
なお、ITO膜132を含め、各膜のスパッタリングによる成膜は、株式会社アルバック製のDCマグネトロンスパッタリング装置(型式:SH−350)を用いて行った。以下の表2に、スパッタリングによる各膜の成膜条件を示す。
(評価用サンプルの抵抗率測定)
以上のように製作された実施例1〜6および比較例1〜4に係る評価用サンプルについて、大気中での加熱試験前後におけるシート抵抗を測定して抵抗率の評価を行った。
以上のように製作された実施例1〜6および比較例1〜4に係る評価用サンプルについて、大気中での加熱試験前後におけるシート抵抗を測定して抵抗率の評価を行った。
大気中での加熱試験は、長期間に亘っての酸化抑制効果を評価するための加速試験である。具体的には、大気中で150℃にて1時間、各評価用サンプルを加熱した。加熱前に、各評価用サンプルの電極パッド112eにレジストを滴下し、加熱中の電極パッド112eの酸化を抑制した。レジストには、東京応化工業製の標準g線ポジ型フォトレジストOFPR−800を用いた。加熱後、電極パッド112eにアセトン(CH3OCH3))を滴下してレジストを除去し、電極パッド112eを露出させた。
シート抵抗の測定方法には、3mm角の各区画の4隅の電極パッド112e上面に電極の針を当てて行うファン・デル・パウ(van der Pauw)法を用いた。このように測定したシート抵抗から、各評価用サンプルの加熱試験前後でのシート抵抗変化率(加熱後/加熱前)を求めた。また、シート抵抗に、Cu合金膜/純Cu膜の膜厚を乗じて、加熱試験前後の抵抗率をそれぞれ求めた。
(評価用サンプルの評価結果)
以下の表3に、実施例1〜6および比較例1〜4に係る評価用サンプルの構成と、評価結果とを示す。なお、本実施例においては、シート抵抗変化率の許容値を1.28未満とし、加熱試験後の抵抗率の許容値を5.0μΩcm以下とした。表中、許容値を外れたものを太字の下線付きで示した。また、表中、酸化抑制効果ならびに抵抗率の評価、及び、これらを考慮した総合評価を、○(良)と×(不良)とで示した。
以下の表3に、実施例1〜6および比較例1〜4に係る評価用サンプルの構成と、評価結果とを示す。なお、本実施例においては、シート抵抗変化率の許容値を1.28未満とし、加熱試験後の抵抗率の許容値を5.0μΩcm以下とした。表中、許容値を外れたものを太字の下線付きで示した。また、表中、酸化抑制効果ならびに抵抗率の評価、及び、これらを考慮した総合評価を、○(良)と×(不良)とで示した。
また、各膜の膜厚が、Cu合金膜/純Cu膜=50nm/50nmである実施例1〜4および比較例2〜4の評価結果を図5のグラフに示す。グラフの横軸は、Cu合金膜111中のNiの平均濃度(原子%)であり、左側縦軸は抵抗率(μΩcm)であり、右側縦軸は、加熱試験前後でのシート抵抗変化率(加熱後/加熱前)である。また、グラフ上の●印は、各評価用サンプルの加熱試験後の抵抗率をプロットしたものであり、○印は、各評価用サンプルのシート抵抗変化率をプロットしたものである。なお、Cu合金膜111を備えず、純Cu膜112のみで100nmの膜厚となるよう構成された比較例1のシート抵抗変化率を参考までに◇印で示した。
図5および表3に示すように、Niの平均濃度が2原子%未満では、シート抵抗変化率が1.28以上となり、加熱試験により抵抗率が大きく上昇してしまった。また、Niの平均濃度が2原子%以上では、シート抵抗変化率がいずれも1.28未満であり、かつ、徐々に低下している。よって、優れた酸化抑制効果が得られていることが分かる。
また、Niの平均濃度が3原子%を超えると、シート抵抗変化率が1.00より小さく、加熱試験後のほうが抵抗率が低下している。これは、Niの平均濃度が高まったことで、不活性ガスの気流中で行う上述した第2実施形態における予備加熱と同様の効果が、大気中での加熱においても起きたと考えられる。つまり、Cu合金膜111の表面近傍にNiの濃化層が形成されると共に膜内部のNi濃度が低下し、また、Cu合金膜/純Cu膜の結晶性が向上し、加熱試験後に抵抗率が低下したと推察される。
また、加熱試験後の抵抗率は、Niの平均濃度が3原子%のときに最小値を示した。Niの酸化抑制効果による低抵抗率の維持と、Ni自体による抵抗率の上昇とのバランスにより、本実施例においては、係る平均濃度で略最適な値が得られたと考えられる。換言すれば、Niの平均濃度が2原子%未満での抵抗率の上昇は、Niの酸化抑制効果による低抵抗率の維持が不充分なためである。また、Niの平均濃度が7原子%超での抵抗率の上昇は、Ni自体による抵抗率の上昇によるためである。
一方、Cu合金膜/純Cu膜の積層構造全体の抵抗率は、Cu合金膜と純Cu膜とのそれぞれの膜厚の組み合わせで変化する。例えば、Cu合金膜/純Cu膜の積層構造では、比較例1のように純Cu膜のみを備える構造よりも、当初のシート抵抗が高めである。しかし、加熱試験後の抵抗率の上昇率は、純Cu膜のみを備える構造よりも低く抑えることができる。
また、積層構造全体の膜厚が増加すれば抵抗率は下がるが、Cu合金膜には主にバリア膜としての機能のみを担わせ、表3の実施例5,6に示すように、純Cu膜の膜厚を増加させたほうが有利である。
なお、実施例1〜6においては、従来技術に係るAgペーストやAl系配線膜に対して優位性が得られるようにとの観点から、抵抗率の許容値を5.0μΩcm以下としたが、これに拘束されるものではない。例えばタッチパネルセンサの要求仕様に応じて、Cu合金膜の厚さの下限値を10nmなどに設定することができる。これにより、配線膜全体での膜厚が例えば100nm以下となるよう構成し、抵抗率よりも配線膜全体の薄膜化をより優先させることとしてもよい。
(2)Cu合金膜の単膜構造の評価
次に、本発明の実施例7〜10に係る評価用サンプルの評価結果について説明する。これらの評価用サンプルは、上述の第2実施形態に係るタッチパネルセンサ用配線膜20を模したCu合金膜の単膜構造を備える。
次に、本発明の実施例7〜10に係る評価用サンプルの評価結果について説明する。これらの評価用サンプルは、上述の第2実施形態に係るタッチパネルセンサ用配線膜20を模したCu合金膜の単膜構造を備える。
(評価用サンプルの製作)
まずは、上述の実施形態と同様の方法、手順にて、純度3Nの純Cuに平均濃度を種々に変化させたNiを含有するスパッタリング用Cu合金ターゲット材をそれぞれ製作した。Niの平均濃度は、2原子%〜7原子%の間で変化させた。
まずは、上述の実施形態と同様の方法、手順にて、純度3Nの純Cuに平均濃度を種々に変化させたNiを含有するスパッタリング用Cu合金ターゲット材をそれぞれ製作した。Niの平均濃度は、2原子%〜7原子%の間で変化させた。
次に、図6に示すように、Cu合金膜111が格子状に複数区画に区切って形成された実施例7〜10に係る評価用サンプルを製作した。
すなわち、上述の実施例と同様のITO膜132が形成された基板131を準備した。次に、係るガラス基板131のITO膜132上に、上述のスパッタリング用Cu合金ターゲット材を用い、Cu合金膜121を成膜して評価用サンプルを製作した。Cu合金膜121の成膜時には、上述の実施例に係る純Cu膜112の成膜時に用いたものと同じメタルマスクを用い、4隅に電極パッド121eを備える3mm角の格子状に区切られたCu合金膜121の評価用パターンをITO膜132上に形成した。
なお、ITO膜132およびCu合金膜121の成膜には、上述の実施例と同様のDCマグネトロンスパッタリング装置、および成膜条件を用いた。
(評価用サンプルの抵抗率測定)
以上のように製作された実施例7〜10に係る評価用サンプルのいくつかに対し、上述の実施形態と同様の方法、手順で予備加熱を行った。すなわち、評価用サンプルに対し、O2ガスが微量に含まれるArガスの気流中で、200℃の温度にて30分間の加熱を行った。
以上のように製作された実施例7〜10に係る評価用サンプルのいくつかに対し、上述の実施形態と同様の方法、手順で予備加熱を行った。すなわち、評価用サンプルに対し、O2ガスが微量に含まれるArガスの気流中で、200℃の温度にて30分間の加熱を行った。
次に、実施例7〜10に係る評価用サンプルについて、予備加熱の有り無しでのシート抵抗の測定と、さらに、大気中での加熱試験後のシート抵抗の測定とを行って、それぞれの状態における抵抗率の評価を行った。加熱試験およびシート抵抗の測定は、上述の実施例と同様の方法、手順で行った。
(評価用サンプルの評価結果)
以下の表4に、実施例7〜10に係る評価用サンプルの構成と、評価結果とを示す。なお、本実施例においては、シート抵抗変化率の許容値を1.28未満とし、加熱試験後の抵抗率の許容値を9.0μΩcm以下とした。
以下の表4に、実施例7〜10に係る評価用サンプルの構成と、評価結果とを示す。なお、本実施例においては、シート抵抗変化率の許容値を1.28未満とし、加熱試験後の抵抗率の許容値を9.0μΩcm以下とした。
また、実施例7〜10に係る評価用サンプルの評価結果を図7のグラフに示す。グラフの横軸はCu合金膜121中のNiの平均濃度(原子%)であり、縦軸はシート抵抗(mΩ/□)である。また、グラフ上の左側(白抜きの棒グラフ)は予備加熱なしの評価用サンプルの加熱試験後のデータであり、右側(黒塗りの棒グラフ)は予備加熱ありの評価用サンプルの加熱試験後のデータである。
図7および表4に示すように、実施例7,8、或いは、実施例9,10を比較すると、予備加熱を行うことで、いずれも大気中での加熱試験後のシート抵抗や抵抗率の減少がみられ、予備加熱による効果が認められる。ただし、加熱試験前後での抵抗率が最も高かった実施例9であっても、例えば従来技術に係るAgペースト等に比べると、充分な低さの抵抗率が得られている。
なお、実施例7〜10においては、Agペーストに対して優位性が得られるようにとの観点から、抵抗率の許容値を9.0μΩcm以下としたが、これに拘束されるものではない。例えばタッチパネルセンサの要求仕様に応じて、Cu合金膜の厚さの下限値を100nmなどに設定することができる。これにより、配線膜全体での膜厚が例えば100nm以下となるよう構成し、抵抗率よりも配線膜全体の薄膜化をより優先させることとしてもよい。
10 タッチパネルセンサ用配線膜
11 Cu合金膜
12 純Cu膜
20 タッチパネルセンサ用配線膜
21 Cu合金膜
31 基板
32 透明導電膜
100 スパッタリング用Cu合金ターゲット材
11 Cu合金膜
12 純Cu膜
20 タッチパネルセンサ用配線膜
21 Cu合金膜
31 基板
32 透明導電膜
100 スパッタリング用Cu合金ターゲット材
Claims (15)
- タッチパネルセンサに用いられる配線膜であって、
In,Ga,Sn,Znの少なくともいずれかを含む複合酸化物からなる透明導電膜が形成された基板の前記透明導電膜上に設けられるCu合金膜を備え、
前記Cu合金膜は、
純度3N以上の純Cuに、前記純Cuの酸化物よりも標準生成自由エネルギーの低い酸化物を生成する元素を含有する
ことを特徴とする配線膜。 - 前記Cu合金膜に含有される元素はNiである
ことを特徴とする請求項1に記載の配線膜。 - 前記Niの前記Cu合金膜中の平均濃度が2原子%以上7原子%以下である
ことを特徴とする請求項2に記載の配線膜。 - In,Ga,Sn,Znの少なくともいずれかを含む複合酸化物からなる透明導電膜が形成された基板の前記透明導電膜上に設けられるCu合金膜を備え、
前記Cu合金膜は、
純度3N以上の純Cuに膜中の平均濃度が2原子%以上7原子%以下のNiを含有する
ことを特徴とする配線膜。 - 前記透明導電膜と前記Cu合金膜との間に設けられる純度3N以上の純Cu膜を備える
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の配線膜。 - 前記Cu合金膜の厚さは10nm以上50nm以下であり、
前記純Cu膜の厚さは50nm以上200nm以下である
ことを特徴とする請求項5に記載の配線膜。 - 前記Cu合金膜は、
前記透明導電膜に直接接するよう前記透明導電膜上に設けられ、厚さが100nm以上300nm以下である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の配線膜。 - 線幅が100μm以下の細線にパターニングされている
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の配線膜。 - 前記Cu合金膜の表面近傍には、
前記Niが前記平均濃度よりも高い濃度で含有された濃化層が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の配線膜。 - 前記基板は、
光透過性硬質プラスチックフィルム、ガラス基板、または石英基板である
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の配線膜。 - 請求項1〜10のいずれかに記載の配線膜が、前記基板の前記透明導電膜上に設けられている
ことを特徴とするタッチパネルセンサ。 - 請求項1〜10のいずれかに記載の配線膜の製造に用いられ、
純度3N以上の純Cuに、前記Cu合金膜に含有される元素と同一の元素を含有するCu合金材からなる
ことを特徴とするスパッタリング用Cu合金ターゲット材。 - In,Ga,Sn,Znの少なくともいずれかを含む複合酸化物からなる透明導電膜が形成された基板の前記透明導電膜上に、
スパッタリングにより、純度3N以上の純Cuに、前記純Cuの酸化物よりも標準生成自由エネルギーの低い酸化物を生成する元素が含有されるようCu合金膜を成膜する
ことを特徴とする配線膜の製造方法。 - フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング又はリフトオフにより、前記Cu合金膜を線幅が100μm以下の細線にパターニングする
ことを特徴とする請求項13に記載の配線膜の製造方法。 - 酸素ガスが微量に含まれる不活性ガスの気流中で、150℃以上300℃以下の温度にて、前記Cu合金膜を加熱する
ことを特徴とする請求項13又は14に記載の配線膜の製造方法。
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