以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
先ず、本発明の一実施例に係る画像形成装置の全体的な構成及び動作について説明する。
図1は、本実施例の画像形成装置100の要部の模式的な断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することのできる、中間転写方式を採用したタンデム型のフルカラーレーザービームプリンターである。
画像形成装置100は、複数の色成分に分解された画像情報に従って形成した各色のトナー像を、中間転写体としての中間転写ベルト6上に順次に重ね合わせて一次転写した後、転写材Pに一括して二次転写する。このトナー像を転写材に定着させることで記録画像を得る。画像形成装置100は、複数の画像形成部として、第1、第2、第3、第4のステーションSa、Sb、Sc、Sdを有する。本実施例では、第1〜第4のステーションSa〜Sdは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する。
尚、本実施例では、第1〜第4のステーションSa〜Sdの構成及び動作は、使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合には、いずれかの色用に設けられた要素であることを示す符号の末尾のa、b、c、dは省略して総括的に説明する。
ステーションSは、像担持体としての感光体である感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、駆動手段としてのモータ(図示せず)によって図中矢印R1方向(反時計回り)に回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、その回転方向に沿って順に、次の各手段が設けられている。先ず、帯電手段としてのローラ状の帯電部材である帯電ローラ2である。次に、露光手段としての露光装置(レーザースキャナー)3である。次に、現像手段としての現像装置4である。次に、ブラシ状の転写部材を備える一次転写ブラシとされる一次転写手段5である。次に、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーナー7である。
又、各ステーションSの各感光ドラム1と対向するように、中間転写体としての無端状のベルトである中間転写ベルト6が配置されている。中間転写ベルト6は、円筒状且つ無端状のフィルムで形成され、駆動ローラ61、二次転写対向ローラ62及びテンションローラ63の3個のローラに張架されている。中間転写ベルト6は、駆動ローラ61が図中矢印R2方向(時計回り)に回転駆動されることによって、図中矢印R3方向(時計回り)に周回移動(回転)する。本実施例では、感光ドラム1の表面の移動速度(周速度)と中間転写ベルト6の表面の移動速度(周速度)とは略同じ速度である。中間転写ベルト6の内周面(裏面)側において、中間転写ベルト6を挟んで各感光ドラム1と対向する位置に、各一次転写手段5が配置されている。詳しくは後述するように、一次転写手段5は、中間転写ベルト6の裏面に押圧されている。これにより、感光ドラム1と中間転写ベルト6とが接触することで、一次転写部B1が形成されている。又、中間転写ベルト6の外周面(表面)側において、中間転写ベルト6を挟んで二次転写対向ローラ62と対向する位置には、二次転写手段としてのローラ状の転写部材である二次転写ローラ8が配置されている。二次転写ローラ8は、中間転写ベルト6を介して二次転写対向ローラ62に押圧されている。これにより、中間転写ベルト6と二次転写ローラ8とが接触することで、二次転写部B2が形成されている。又、中間転写ベルト6を挟んで駆動ローラ61と対向する位置には、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーナー65が配置されている。
画像形成時には、回転する感光ドラム1の表面は、帯電ローラ2により一様に帯電させられる。このとき、帯電ローラ2には、帯電電圧印加手段としての帯電電源(図示せず)から、所定の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。帯電した感光ドラム1の表面に、露光装置3より画像情報に従ったレーザ光Lが照射される。これにより、感光ドラム1上に静電潜像(静電像)が形成される。
感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像装置4によりトナー像として現像(可視化)される。現像装置4は、回転可能な現像剤担持体に現像剤としてのトナーを担持して感光ドラム1との対向部(現像位置)に搬送し、感光ドラム1上の静電潜像に応じて感光ドラム1上にトナーを供給する。このとき、現像剤担持体には、現像電圧印加手段としての現像電源(図示せず)から、所定の現像電圧(現像バイアス)が印加される。本実施例では、現像装置4は、反転現像方式にて、感光ドラム1上の静電潜像を現像する。即ち、現像装置4は、帯電処理された後に露光されて電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の画像部(露光部)に、感光ドラム1の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性に帯電したトナーを付着させて静電潜像を現像する。
回転する感光ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写部B1において、一次転写手段5の作用により、回転する中間転写ベルト6上に転写(一次転写)される。この時、一次転写手段5には、一次転写電圧印加手段としての一次転写電源50から、トナー像を形成するトナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。
一次転写工程において中間転写ベルト6に転写されずに感光ドラム1上に残留したトナー(一次転写残トナー)は、ドラムクリーナー7によりクリーニングされる。ドラムクリーナー7は、感光ドラム1の表面に当接する板状の弾性体であるクリーニングブレード71と、回収トナー容器72と、を有する。クリーニングブレード71は、感光ドラム1の表面に付着したトナーを除去するためのクリーニング部材である。クリーニングブレード71によって回転する感光ドラム1の表面から除去されたトナーは、回収トナー容器72に回収される。
例えばフルカラー画像を形成する際には、以上のような帯電、露光、現像、一次転写工程が、中間転写ベルト6の表面の移動方向上流側から順番に、第1〜第4のステーションSa〜Sdにおいて行われる。これにより、中間転写ベルト6上に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされるようにして転写されたフルカラー画像用の多重トナー像が形成される。
中間転写ベルト6上のトナー像は、二次転写部B2において、二次転写ローラ8の作用により、転写材P上に転写(二次転写)される。即ち、転写材供給部20において、カセット21に収容されている転写材Pが、供給ローラ22により送り出された後、レジストローラ23により二次転写部B2に所定のタイミングで供給される。それと略同時に、二次転写ローラ8には、二次転写電圧印加手段としての二次転写電源80から、トナー像を形成するトナーの正規の帯電極性とは逆極性の直流電圧である二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。
二次転写工程において転写材Pに転写されずに中間転写ベルト6上に残留したトナー(二次転写残トナー)は、ベルトクリーナー65によりクリーニングされる。ベルトクリーナー65は、中間転写ベルト6の表面に当接する板状の弾性体であるクリーニングブレード64と、回収トナー容器66と、を有する。クリーニングブレード64は、中間転写ベルト6の表面に付着したトナーを除去するためのクリーニング部材である。クリーニングブレード64によって回転する中間転写ベルト6の表面から除去されたトナーは、回収トナー容器66に回収される。
トナー像が二次転写された転写材Pは、定着手段としての定着装置9へと搬送される。定着装置9は、転写材Pを搬送しながら加熱及び加圧する。転写材P上の未定着トナー像は、熱と圧力により転写材P上に定着される。その後、転写材Pは搬送ローラ(図示せず)により機外に搬送される。
ここで、本実施例の画像形成装置100は、感光ドラム1及び中間転写ベルト6の周速度に相当するプロセススピードが116mm/sの、A4サイズの転写材Pへの画像形成に対応したプリンターである。又、本実施例では、感光ドラム1の直径は20mmである。
又、本実施例では、中間転写ベルト6として、厚さが60μmで、導電剤を混合することにより体積抵抗率を109Ωcmに調整した、ポリイミド樹脂のフィルムを用いた。この中間転写ベルト6は、駆動ローラ61、二次転写対向ローラ62、テンションローラ63の3軸に張架され、テンションローラ63により総圧約20Nの張力が付与されている。
又、本実施例では、二次転写ローラ8として、体積抵抗率が107〜109Ωcm、硬度が30°〜40°である弾性体ローラを用いた。この二次転写ローラ8は、中間転写ベルト6を介して二次転写対向ローラ62に対し、総圧約39.2Nで押圧されている。この二次転写ローラ8は、中間転写ベルト6の回転に伴い、従動して回転する。又、二次転写ローラ8には、二次転写電源80から、0〜4.0kVの二次転写電圧の印加が可能とされている。
2.一次転写手段
次に、一次転写手段5の構成について説明する。
図2は、一次転写手段5の構成を示す模式的な斜視図である。一次転写手段5としては、導電性を有する繊維(導電性繊維)で形成されたブラシ繊維51が密に配列されたブラシ部材を備える一次転写ブラシ5を用いることができる。
本実施例では、一次転写ブラシ5の短手方向の寸法Wは4mmである。一次転写ブラシ5の短手方向は、感光ドラム1の回転軸線方向に対して略垂直(中間転写ベルト6の移動方向と略平行)に配置される方向である。又、本実施例では、一次転写ブラシ5の長手方向の寸法Lは250mmである。一次転写ブラシ5の長手方向は、感光ドラム1の回転軸線方向と略平行(中間転写ベルト6の移動方向と略直交する方向)に配置される方向である。但し、一次転写ブラシ5の長手方向の寸法Lのうち、ブラシ繊維51が設けられている領域(起毛部)5Aの寸法Kは230mmである。そして、一次転写ブラシ5の長手方向の両端部には、それぞれ寸法Jが10mmの、ブラシ繊維51が設けられていない領域(非起毛部)5Bが、略均等に設けられている。
本実施例では、一次転写ブラシ5の短手方向の寸法Wを4mmとすることで、一次転写ブラシ5と中間転写ベルト6との間に十分な幅のニップ(後述)を形成することができる。又、一次転写ブラシ5の長手方向における起毛部5Aの寸法Kを230mmとすることで、一次転写部B1に搬送されるA4サイズの転写材Pの同方向の幅に対しても一次転写手段として十分な幅とすることができる。
一次転写ブラシ5のブラシ部材としては、パイル織物タイプのブラシ部材や静電植毛タイプのブラシ部材を好ましく使用することができる。
パイル織物とは、ブラシ繊維51となるパイル糸を、たて糸とよこ糸とから成る基布の隙間に織り込んで形成されたものである。これを導電性接着剤などによって基板52上に接着するなどして固定することでブラシ部材が得られる。
又、静電植毛とは、高圧静電界における静電吸引力を利用し、予め接着剤を塗布した基板52上に、ブラシ繊維51となる短繊維を略垂直に投錨させる方法であり、これによってもブラシ部材が得られる。
ブラシ繊維51としては、導電性を有する繊維(導電性繊維)、特に導電剤を含有させた合成繊維を好ましく使用することができる。例えば、カーボン粉末を分散したナイロンやポリエステルなどを材料としたものを好ましく使用することができる。又、単糸繊度が2〜15dtex、直径が10〜40μm、乾強度が1〜3cN/dtexの範囲内のものを好ましく使用することができる。又、ブラシ繊維51の抵抗率ρfiberは、102〜108Ωcmの範囲内であることが転写効率の向上などの点で好ましい。
尚、抵抗率ρfiberは、次の方法により測定される。繊維の50本をひと束とし、約1cmの間隔をもって束の表面に金属プローブを接触させる。そして、高抵抗計AdvantestR8340A(株式会社アドバンテスト製)などを用い、印加電圧を100Vとして抵抗値Rfiberを実測し、下式により抵抗率ρfiberを算出する。
ρfiber=Rfiber×(繊維直径/2)2×3.14×50
本実施例では、ステンレス製の略一様に平坦な基板52の上面52Aに、基布とパイル糸とで形成されたパイル織物が固定されることで、一次転写ブラシ5が構成されている。本実施例では、基板52は、短手方向の寸法が上述のWとされ、長手方向の寸法が上述のLとされる矩形の板金である。そして、本実施例では、パイル織物のパイル糸で構成されたブラシ繊維51は、基板52の上面52Aに対して略垂直な方向(法線方向)に起毛している。
中間転写ベルト6に当接させられていない状態で(即ち、中間転写ベルト6に当接することで変形させられていないと仮定したときに)、ブラシ繊維51が基板52の上面52Aから伸び出ている方向を、「起毛方向」と呼ぶ。本実施例におけるブラシ繊維51の起毛方向については後述する。各ブラシ繊維51の基板52を起点とした長さ(繊維長)は、例えば1〜5mmとすることができる。又、導電性線51の基板52上における配列密度は、例えば5000〜50000本/cm2とすることができる。
尚、図中、一次転写ブラシ5のパイル織物を構成する基布の図示は省略されている。
本実施例では、代表的特性を有する一次転写ブラシ5のブラシ部材として、次の仕様のブラシ部材を用いた。
<一次転写ブラシの仕様>
・部材タイプ:パイル織物
・ブラシ繊維の材料:カーボン粉末を分散したナイロン繊維
・ブラシ繊維の単糸繊度:7dtex
・ブラシ繊維の直径:28μm
・ブラシ繊維の乾強度:1.6cN/dtex
・ブラシ繊維の抵抗率:106Ωcm
・繊維長:2mm
・配列密度:10850本/cm2
一次転写ブラシ5は、中間転写ベルト6を介して感光ドラム1と対向する位置において、中間転写ベルト6の裏面に当接させられる。
又、一次転写ブラシ5のブラシ部材には、一次転写電源50から、0〜1.0kVの一次転写電圧の印加が可能とされている。
3.一次転写ブラシの当接手段の構成
次に、一次転写ブラシ5の当接手段の構成について説明する。
従来、一次転写ブラシ5を中間転写ベルト6の裏面に当接させる際に、一次転写ブラシ5の取り付け位置が所望の位置からずれると、中間転写ベルト6と一次転写ブラシ5との間に形成されるニップ(裏面ニップ)が狙いの位置からずれるという課題がある。特に、このような裏面ニップの位置ずれは、一次転写ブラシ5の取り付け位置が中間転写ベルト6の法線方向に沿ってずれてしまった場合に顕著となる。
本実施例の目的の一つは、中間転写ベルト6と一次転写ブラシ5との間に形成されるニップを、部品の取り付け位置や部品寸法のばらつきによらず常に狙いの位置に安定して維持し、良好な一次転写性が得られるようにすることである。
そこで、本実施例では、画像形成装置100は、一次転写ブラシ5を中間転写ベルト6に当接させる当接手段10を備える(図3)。当接手段10は、一次転写ブラシ5を中間転写ベルト6に付勢するための付勢部材と、一次転写ブラシ5の移動可能方向を規制するためのガイド部材と、を有する。そして、付勢部材が一次転写ブラシ5のブラシ繊維51が中間転写ベルト6と接触するよう一次転写ブラシ5を中間転写ベルト6に付勢する。以下、更に詳しく説明する。
図3は、一次転写ブラシ5の当接手段の構成を示す模式的な断面図である。又、図4は、一次転写ブラシ5の長手方向の一方の端部における一次転写ブラシ5の当接手段の構成を示す模式的な斜視図である。本実施例では、各ステーションSa〜Sdの各一次転写部B1a〜B1dの構成は同じである。
本実施例では、一次転写ブラシ5は、当接手段10によって中間転写ベルト6の裏面に接近する方向と遠ざかる方向とに移動可能である。当接手段10は、台座11と、付勢部材としての圧縮コイルバネ(以下、単に「バネ」という。)12と、ガイド部材としてのガイドレール13と、を有する。本実施例では、バネ12とガイドレール13は、それぞれ一次転写ブラシ5の長手方向の両端部にそれぞれ1個ずつ2組設けれ、これら2組のバネ12とガイドレール13とによって、1個の台座11が移動可能に保持されている。一次転写ブラシ5の長手方向の両端部におけるバネ2とガイドレール13の構成は実質的に同じである。
一次転写ブラシ5は、基板52の底面(ブラシ繊維51が起毛している上面52Aとは反対側の面)52Bが、台座11の上面11Aに、接着、溶着、締結、係合などの固定手段によって固定されるか、単に載置されることで、台座11の上に保持される。本実施例では、台座11の上面11Aは、一次転写ブラシ5の基板52の底面52Bと略同一の形状を有する。台座11は、台座11とガイドレール13との間に配置されたバネ12による押圧力Fによって、中間転写ベルト6の裏面に向けて付勢される。これによって、一次転写ブラシ5は、中間転写ベルト6の裏面に当接させられる。
一次転写ブラシ5は、基板52の長手方向の両端部の非起毛部5B、5B(図2)における、一次転写ブラシ5の短手方向における両側部5C、5Cが、ガイドレール13の対向するガイド面13A、13Aにより案内される。即ち、一次転写ブラシ5の基板52は、その長手方向の両端部の非起毛部5B、5Bにおいて、ガイドレール13の両ガイド面13A、13A間に挟持される。これにより、本実施例では、一次転写ブラシ5の可動方向は、図中矢印D方向に規制されている。バネ12は、両ガイド面13A、13A間のバネ支持面13Bと、台座11の底面(一次転写ブラシ5を支持する上面11Aとは反対側の面)11Bと、の間に配置される。バネ12による押圧力Fが作用する方向も、図中矢印D方向と略平行な方向に規制される。本実施例では、一次転写ブラシ5の長手方向の両端部においてバネ12によって一次転写ブラシ5に作用する押圧力Fの合計である、一次転写ブラシ5を中間転写ベルト6に向けて付勢する総圧は1.96Nとされる。
ここで、本実施例では、感光ドラム1の回転軸線方向に対して略垂直な断面において、図中矢印Dで示される一次転写ブラシ5の可動方向、及び押圧力Fの方向は、中間転写ベルト6の法線方向と略平行(中間転写ベルト6の移動方向に対し略垂直)とされる。本実施例では、ガイド部としてのガイド面13A、13Aが中間転写ベルト6の法線方向と略平行な方向に延在することで、ガイドレール13の規制方向が中間転写ベルト6の法線方向と略平行とされている。
又、感光ドラム1の回転軸線方向に対して略垂直な断面において、ブラシ繊維51の起毛方向と中間転写ベルト6の移動方向R3とのなす角度(繊維傾斜角度)θは、70°≦θ≦90°とされる。
これにより、一次転写ブラシ5は、ブラシ繊維51が、中間転写ベルト6の法線方向に対して、中間転写ベルト6の移動方向に沿って下流側に倒された(傾斜した)状態で、中間転写ベルト6の裏面に接触する。
尚、本実施例では、一次転写ブラシ5のブラシ繊維51は、基板52の上面52Aに対して略垂直に起毛している。但し、例えば一次転写ブラシ5がパイル織物タイプの場合など、パイル糸が基布から離れるにつれて広がることがある。この場合でもパイル糸を構成する各ブラシ繊維51が上記繊維傾斜角度の条件を満たしていればよい。本実施例では、上述の繊維傾斜角度θとするために、感光ドラム1の回転軸線方向に対して略垂直な断面において、中間転写ベルト6の移動方向R3と台座11の上面11Aとのなす角度θbは、160°≦θb≦180°とされる。
ブラシ繊維51の中間転写ベルト6の移動方向上流側への倒れを良好に抑制し、一次転写部B1の上流側で生じる異常放電を良好に抑制するためには、ブラシ繊維51を僅かに傾斜させた状態で中間転写ベルト6の裏面に接触させればよい。しかし、この傾斜を大きくしすぎると、一次転写ブラシ5の基板52が中間転写ベルト6の裏面に接触し、傷などを生じさせ、縦スジ状(中間転写ベルト6の移動方向に沿う方向)の画像不良を引き起こすことがある。
本実施例の一次転写ブラシ5を用いて検討したところ、θ>90°とした場合、ブラシ繊維51の中間転写ベルト6の移動方向上流側への倒れが発生し、異常放電による縦スジ状の画像不良が発生することがあった。
一方、θ<70°とした場合、一次転写ブラシ5の基板52が中間転写ベルト6の裏面に接触し、傷による縦スジ状の画像不良が発生することがあった。
これに対して、70°≦θ≦90°とした場合、異常放電や傷による縦スジ状の画像不良の発生は無かった。本実施例では、θ≒80°であった。
4.一次転写部のニップの配置
次に、一次転写部B1におけるニップの配置について説明する。図3には、一次転写部B1における各部材とニップとの位置関係も示されている。
図中のM1は、感光ドラム1と中間転写ベルト6との間に形成されるニップ(表面ニップ)を表す。本実施例では、駆動ローラ61とテンションローラ63との間に直線的に張架された中間転写ベルト6は、ステーションS毎に、感光ドラム1との間に中間転写ベルト6の移動方向における幅が1mmの表面ニップM1を形成する。
一方、図中のN1は、中間転写ベルト6と一次転写ブラシ5との間に形成されるニップ(裏面ニップ)を表す。ここで、裏面ニップN1は、中間転写ベルト6の移動方向における、複数のブラシ繊維51で構成される一次転写ブラシ5と中間転写ベルト6の裏面との接触開始点(始点)から接触終了点(終点)までの領域とする。本実施例では、一次転写ブラシ5のブラシ繊維51は、中間転写ベルト6に当接させられていない状態(即ち、ブラシ繊維51に圧力がかかっていない状態)では、一次転写ブラシ5の基板52の上面52Aに対して略垂直に起毛している。しかし、押圧力Fにより中間転写ベルト6の裏面に当接させられると、ブラシ繊維51は倒された状態となる。一次転写ブラシ5が中間転写ベルト6の裏面に対して角度(繊維傾斜角度θ)をもって当接させられるため、ブラシ繊維51の倒れ具合は中間転写ベルト6の移動方向上流側で大きく、下流側にいくにつれて小さくなる。この状態のブラシ繊維51には、一次転写ブラシ5の基板52の上面52Aに対して略垂直な起毛姿勢に戻ろうとする復元力が生じ、この力が、一次転写ブラシ5を中間転写ベルト6から遠ざける方向に押し戻す力(反力)となる。従って、一次転写ブラシ5は、押圧力Fと上記反力とが釣り合う位置まで中間転写ベルト6の裏面に侵入した位置で安定する。図3は、これら押圧力Fと上記反力とが釣り合った状態を示している。本実施例では裏面ニップN1の中間転写ベルト6の移動方向における幅は3.6mmである。
次に、良好な一次転写性を得るために重要である、一次転写部B1における各部材とニップとの位置関係を示す図中のs、t、uで表わされる領域について説明する。
図中のsは、感光ドラム1と中間転写ベルト6とが接触する表面ニップM1と、中間転写ベルト6と一次転写ブラシ5とが接触する裏面ニップN1とが、中間転写ベルト6の移動方向においてオーバーラップする領域(オーバーラップニップ)を表す。オーバーラップニップsは、転写電界が形成される領域である。オーバーラップニップsが形成されないと、良好な一次転写効率は得られない。本実施例では、オーバーラップニップsの中間転写ベルト6の移動方向における幅は1mmである。
図中のtは、オーバーラップニップsの中間転写ベルト6の移動方向下流側で、中間転写ベルト6に対して一次転写ブラシ5のみが接触する領域(テンションニップ)を表す。即ち、図中のtは、感光ドラム1と中間転写ベルト6とが接触する表面ニップM1に対して、中間転写ベルト6と一次転写ブラシ5とが接触する裏面ニップN1が、中間転写ベルト6の移動方向下流側にはみ出している領域を表す。テンションニップtは、オーバーラップニップsに形成される転写電界により付与され、オーバーラップニップsを通過した後にも中間転写ベルト6に残留した過剰な電荷が、一次転写ブラシ5上に流れて戻るための領域である。テンションニップtは、上記過剰な電荷に起因する異常放電による画像不良の発生を防止するために必要な領域である。本実施例では、テンションニップtの中間転写ベルト6の移動方向における幅は2.5mmである。
図中のuは、感光ドラム1と中間転写ベルト6とが接触する表面ニップM1に対して、中間転写ベルト6と一次転写ブラシ5とが接触する裏面ニップN1が、中間転写ベルト6の移動方向上流側にはみ出している領域(はみ出しニップ)を表す。即ち、図中のuは、オーバーラップニップsの中間転写ベルト6の移動方向上流側で、中間転写ベルト6に対して一次転写ブラシ5のみが接触する領域を表す。はみ出しニップuが大きくなると、一次転写部B1の中間転写ベルト6の移動方向上流側において、感光ドラム1と中間転写ベルト6との間に転写電界が形成された空隙が形成されてしまう。そのため、一次転写部B1に進入する前に感光ドラム1から中間転写ベルト6へとトナーが転写されてトナーが飛び散ったような画像となる現象(プレ転写による転写飛び散り)が生じることがある。本実施例では、はみ出しニップuの中間転写ベルト6の移動方向における幅は0.1mmである。
良好な一次転写性を得るためには、オーバーラップニップsとテンションニップtとの両者が形成される必要がある。又、はみ出しニップuが大きくないことも必要である。
本実施例では、中間転写ベルト6の移動方向におけるオーバーラップニップsの幅として1mm、テンションニップtの幅として2.5mmが確保されている。又、中間転写ベルト6の移動方向におけるはみ出しニップuの幅が0.1mmとなるように、画像形成装置100内で各部材が配置されている。これにより、良好な一次転写性が得られる。
尚、本実施例の構成で検討したところ、中間転写ベルト6の移動方向におけるオーバーラップニップsの幅は0.4mm以上、テンションニップtの幅は1mm以上、はみ出しニップuの幅は1mm以下とすることで、良好な一次転写性が得られることが確認された。尚、オーバーラップニップsの幅が大き過ぎると、オーバーラップニップs内でトナー像が擦擦され、画像が乱れることがある。このことから、通常、中間転写ベルト6の移動方向におけるオーバーラップニップsの幅は5mm以下とされる。又、テンションニップtの幅が大き過ぎると、中間転写ベルト6と一次転写ブラシ5の接触する面積が大きくなり、中間転写ベルト6が一次転写ブラシ5から強い擦動力を受け、中間転写ベルト6の走行安定性が悪化することがある。このことから、通常、テンションニップtの幅は10mm以下とされる。又、中間転写ベルト6の移動方向におけるはみ出しニップuの幅は0mmであってもよい。
5.部材取り付け位置の影響
感光ドラム1や中間転写ベルト6に対するガイドレール13の取り付け位置は、画像形成装置100の組み立て時の部品の位置決めのばらつきなどの影響で変動することがある。本実施例の画像形成装置100では、中間転写ベルト6の移動方向に沿う方向(図中矢印x方向に沿う方向)、中間転写ベルト6の法線方向に沿う方向(図中矢印z方向に沿う方向)のそれぞれに±0.5mm程度の範囲内で変動する。
図5は、中間転写ベルト6の移動方向に沿う方向におけるガイドレール13の取り付け位置のばらつきの影響を説明するための模式的な断面図である。
図5(a)は、中間転写ベルト6の裏面に対するガイドレール13の取り付け位置が、狙いの位置を基準として、中間転写ベルト6の移動方向に沿って上流側にδだけずれた場合の状態を示す。この場合の裏面ニップはN1lと示されている。
図5(b)は、中間転写ベルト6の裏面に対するガイドレール13の取り付け位置が、狙いの位置にある場合の状態を示す。この場合の裏面ニップはN1と示されている。
図5(c)は、中間転写ベルト6の裏面に対するガイドレール13の取り付け位置が、狙いの位置を基準として、中間転写ベルト6の移動方向に沿って下流側にδだけずれた場合の状態を示す。この場合の裏面ニップはN1rと示されている。
図5(a)、(b)、(c)に示すように、裏面ニップN1が中間転写ベルト6の移動方向上下流方向に移動すると、オーバーラップニップs、テンションニップt、はみ出しニップuの位置や幅も変化する。
本実施例では、ガイドレール13の取り付け位置が中間転写ベルト6の移動方向に沿って上記範囲内で変動した場合でも、前述した良好な一次転写性を得るためのニップの配置の条件は満たされている。即ち、本実施例では、ガイドレール13の取り付け位置が中間転写ベルト6の移動方向に沿ってばらついたとしても常に良好な一次転写性が得られるように、画像形成装置100内で各部材が配置されている。
一方、図6は、中間転写ベルト6の法線方向に沿う方向におけるガイドレール13の取り付け位置のばらつきの影響を説明するための模式的な断面図である。尚、図6において、中間転写ベルト6の移動方向に沿う方向におけるガイドレール13の取り付け位置は、狙いの位置(図5(b)に対応)とされている。
図6(a)は、中間転写ベルト6の裏面に対するガイドレール13の取り付け位置が、狙いの位置を基準として、中間転写ベルト6の法線方向に沿って中間転写ベルト6から遠ざかる方向にδだけずれた場合の状態を示す。この場合の裏面ニップはN1dと示されている。
図6(b)は、中間転写ベルト6の裏面に対するガイドレール13の取り付け位置が、狙いの位置にある場合の状態を示す。この場合の裏面ニップはN1と示されている。
図6(c)は、中間転写ベルト6の裏面に対するガイドレール13の取り付け位置が、狙いの位置を基準として、中間転写ベルト6の法線方向に沿って中間転写ベルト6に近づく方向にδだけずれた場合の状態を示す。この場合の裏面ニップはN1uと示されている。
図6(a)、(b)、(c)に示すように、本実施例では、ガイドレール13の取り付け位置が中間転写ベルト6の法線方向に沿って上記範囲で変動しても、裏面ニップN1d、N1、N1uは中間転写ベルト6の移動方向における位置、幅共に実質的に変化がない。
本実施例では、当接手段10による一次転写ブラシ5の押圧方向が中間転写ベルト6の法線方向と略平行(図中矢印z方向に沿う方向)である。そのため、ガイドレール13の取り付け位置が中間転写ベルト6の法線方向に沿って変化したとしても、次のようになるため影響がない。即ち、一次転写ブラシ5は、押圧力Fと一次転写ブラシ5のブラシ繊維51による反力とが釣り合う位置まで中間転写ベルト6の裏面に侵入し、中間転写ベルト6上の元の位置に当接したまま停止する。その結果、ニップの位置や幅に大きな変化は生じない。従って、良好な一次転写性が維持される。このように、本実施例の当接手段の構成は、中間転写ベルト6の法線方向に沿う方向におけるガイドレール13の取り付け位置のばらつきの影響を抑制するのに非常に有効である。
ここで、上述のような効果を良好に得るためには、バネ12の作用長が変化しても押圧力の変化が比較的小さなバネを用いることが好ましい。例えば、バネ12のバネ定数は、好ましくは20N/m〜2000N/m、より好ましくは100N/m〜300N/mとする。バネ定数が上記範囲より大きいと、次のような場合に、バネ12の実効的な圧力が大きく変化してしまうため、ニップの位置や幅の変化がやや大きくなることがあり(後述する比較例1に近づいた構成となる)好ましくない。即ち、前述した中間転写ベルト6の裏面に対するガイドレール13の取り付け位置のずれが生じ、一次転写ブラシ5が中間転写ベルト6の裏面に当接する状態でのバネ12の作用長が変化した場合である。又、バネ定数が上記範囲より小さいと、所定の一次転写圧を実現するためのバネ12の部品長が長くなり画像形成装置100の大型化を招くことがあり好ましくない。
尚、押圧力Fの方向と中間転写ベルト6の法線方向とは、完全に平行である必要はない。ガイドレール13の取り付け位置のばらつき程度を考慮し、適宜、略平行な条件とすればよい。本実施例の構成を用いて検討したところ、押圧力Fの方向が中間転写ベルト6の法線方向に対して30°以内の角度とされていれば、上述のような効果が良好に得られることが確認された。
<比較例1>
ここで、本実施例の効果を示すための比較例について説明する。尚、比較例(本比較例及び後述の他の比較例)の画像形成装置は、特に言及する相違点を除いて、本発明に従う実施例の画像形成装置と実質的に同一の構成とされる。比較例(本比較例及び後述の他の比較例)において本発明に従う実施例の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して説明する。
図7は、比較例1の画像形成装置100の一次転写部B1における各部材とニップとの位置関係を示す模式的な断面図である。
比較例1では、一次転写ブラシ5は、ステーションS毎に、画像形成装置100のフレームに対して直接ビスなどによって位置決めされた上で固定され、中間転写ベルト6の裏面に当接させられている。
又、比較例1においても、感光ドラム1の回転軸線方向に対して略垂直な断面において、ブラシ繊維51の起毛方向と中間転写ベルト6の移動方向R3とのなす角度(繊維傾斜角度)θは、70°≦θ≦90°とされる。
図8は、比較例1における、中間転写ベルト6の法線方向に沿う方向における一次転写ブラシ5の取り付け位置のばらつきの影響を説明するための模式的な断面図である。尚、図8において、中間転写ベルト6の移動方向に沿う方向における一次転写ブラシ5の取り付け位置は狙いの位置とされている。
図8(a)は、中間転写ベルト6の裏面に対する一次転写ブラシ5の取り付け位置が、狙いの位置を基準として、中間転写ベルト6の法線方向に沿って中間転写ベルト6から遠ざかる方向にδだけずれた場合の状態を示す。この場合の裏面ニップはN1dと示されている。
図8(b)は、中間転写ベルト6の裏面に対する一次転写ブラシ5の取り付け位置が、狙いの位置にある場合の状態を示す。この場合の裏面ニップはN1と示されている。
図8(c)は、中間転写ベルト6の裏面に対する一次転写ブラシ5の取り付け位置が、狙いの位置を基準として、中間転写ベルト6の法線方向に沿って中間転写ベルト6に近づく方向にδだけずれた場合の状態を示す。この場合の裏面ニップはN1uと示されている。
感光ドラム1や中間転写ベルト6に対する一次転写ブラシ5の取り付け位置は、画像形成装置100の組み立て時の部品の位置決めのばらつきなどの影響で変動することがある。比較例1の画像形成装置100では、中間転写ベルト6の法線方向に沿う方向(図中矢印z方向に沿う方向)に±0.5mm程度の範囲内で変動する。
図8(b)の状態では、中間転写ベルト6の移動方向におけるオーバーラップニップsの幅として1mm、テンションニップtの幅として2.5mmが確保されている。又、中間転写ベルト6の移動方向におけるはみ出しニップuの幅が0.1mmとなるように、画像形成装置100内で各部材が配置されている。これにより、良好な一次転写性が得られる。
しかし、図8(a)の状態では、裏面ニップN1dが中間転写ベルト6の移動方向上流側に移動し、表面ニップM1に対して裏面ニップN1dが中間転写ベルト6の移動方向上流側に大きくはみ出すと共に、オーバーラップニップsが消滅している。
又、図8(c)の状態では、裏面ニップN1uが中間転写ベルト6の移動方向下流側に移動し、オーバーラップニップsが極狭い領域となっている。
そのため、図8(a)、(c)のいずれの状態においても、良好な一次転写性を得ることはできない。即ち、図8(a)の状態の場合、一次転写部B1の中間転写ベルト6の移動方向上流側で生じる異常放電による縦スジ状の画像不良が生じることがあると共に、良好な転写効率が得られず画像濃度が低下する。又、図8(c)の状態の場合、良好な一次転写効率が得られず画像濃度が低下する。
このように、部品の取り付け位置のばらつき、特に中間転写ベルト6の法線方向に沿う方向におけるばらつきが生じ得る場合、良好な一次転写性を確保するためには、本実施例の構成(押圧式構成)の方が比較例1の構成(固定式構成)に比べて有利である。本実施例では、部品の取り付け位置のばらつき、特に中間転写ベルト6の法線方向に沿う方向におけるばらつきに対するニップの位置や幅の変動が抑制されるからである。
即ち、本実施例の画像形成装置100は、トナー像を担持する像担持体1と、像担持体1に接触して移動可能な無端状のベルト6と、像担持体1からベルト6に向けてトナー像を転写する転写手段5と、を有する。この転写手段5は、導電性を備える繊維51及び繊維51を保持する基板52を備え、繊維51がベルト6の内周面に接触する。又、画像形成装置100は、転写手段5をベルト6に向けて付勢する付勢部材12と、転写手段5の移動方向を規制するガイド部材13と、を有する。そして、付勢部材12に付勢された転写手段5は、ガイド部材13によって移動方向を規制された状態で、ベルト6を介して像担持体1と対向する位置で、ベルト6に対して近づく方向及び遠ざかる方向に移動可能である。本実施例では、付勢部材12に付勢された状態の繊維51は、ベルト6の法線方向に対して、ベルト6の移動方向に沿って下流側に傾斜している。又、本実施例では、ガイド部材13の規制方向は、ベルト6の法線方向と略平行である。好ましくは、ベルト6に接触することで変形させられていない状態での繊維51の起毛方向と、ベルト6の移動方向とのなす角度θは、70°≦θ≦90°とされる。又、転写手段5がベルト6に接触することで、ベルト6の移動方向において、次の領域が形成される。一つは、像担持体1とベルト6とが接触する第一の接触部M1とベルト6と転写手段5とが接触する第二の接触部N1とが重なる領域sである。他の一つは、該重なる領域sよりも下流側で像担持体1及び転写手段5のうち転写手段5のみがベルト6に接触する領域tである。
以上、本実施例によれば、一次転写ブラシ5のブラシ繊維51のランダムな倒れが抑制されると共に、中間転写ベルト6と一次転写ブラシ5との間に形成されるニップが、部品の取り付け位置のばらつきによらず常に狙いの位置に配置される。従って、良好な一次転写性を安定して得ることが可能となる。
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1の画像形成装置と同じである。従って、実施例1の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
本実施例では、中間転写ベルト6と一次転写ブラシ5との間に形成されるニップが、部品の取り付け位置のばらつきのみならず、一次転写ブラシ5の繊維長などの部品寸法のばらつきにも影響されず、常に狙いの位置に維持されるようにする。
図9は、本実施例における一次転写ブラシ5の当接手段の構成を示す模式的な断面図である。本実施例では、各ステーションSa〜Sdの各一次転写部B1a〜B1dの構成は同じである。
図9に示すように、本実施例における一次転写ブラシ5の当接手段10の基本的な構成及び作用は、実施例1のものと同じである。但し、本実施例では、感光ドラム1の回転軸線方向に対して略垂直な断面において、図中矢印Dで示される一次転写ブラシ5の可動方向、及び押圧力Fの方向が、ブラシ繊維51の起毛方向と略平行とされる。本実施例では、ガイド部としてのガイド面13A、13Aがブラシ繊維51の起毛方向と略平行な方向に延在することで、ガイドレール13の規制方向がブラシ繊維51の起毛方向と略平行とされている。
尚、感光ドラム1の回転軸線方向に対して略垂直な断面において、ブラシ繊維51の起毛方向と中間転写ベルト6の移動方向R3とのなす角度(繊維傾斜角度)θは、実施例1と同様、70°≦θ≦90°とされる。本実施例では、θ≒80°であった。尚、θが90°の場合、実施例1と実質的に同一の構成となる。この点については後述する。
図10は、一次転写ブラシ5の繊維長のばらつきの影響を説明するための模式的な断面図である。
ブラシ状の転写手段は、その製造工程において、シャーリングなどにより、適宜、繊維の先端のカット処理などが行われ、所望の繊維長を有する部材として得られている。
図10(a)は、一次転写ブラシ5として、所望の繊維長(2mm)のものが使用された場合の状態を示す。この場合の裏面ニップはN1と示されている。
図10(b)は、一次転写ブラシ5として、所望の繊維長(2mm)よりも約0.6mmだけ短い繊維長のものが使用された場合の状態を示す。この場合の裏面ニップはN1sと示されている。
図10(a)、(b)に示すように、裏面ニップN1、N1sは、中間転写ベルト6の移動方向における始点(位置)、幅共に実質的に変化がない。
本実施例では、押圧力Fが作用する方向がブラシ繊維51の起毛方向と略平行とされている。そのため、一次転写ブラシ5の繊維長に変化が生じても、一次転写ブラシ5が押し込まれる先は、所望の繊維長の場合のブラシ繊維51の先端が接触する位置のままである。その結果、ニップの位置や幅にも大きな変化は生じない。従って、良好な一次転写性が維持される。このように、本実施例の当接手段の構成は、一次転写ブラシ5の繊維長の変化などの部品寸法の変化の影響を抑制するのに非常に有効である。ここで、部品寸法のばらつきとしては、繊維長のばらつきだけではなく、一次転写手段及び当接手段を含む一次転写部の構成部品において、繊維の起毛方向の寸法に影響するいずれの部品の寸法のばらつきであっても、上記同様の効果が得られる。
尚、押圧力Fの方向とブラシ繊維51の起毛方向とは、完全に平行である必要はない。一次転写ブラシ5の繊維長などの部品寸法のばらつきの程度を考慮し、適宜、略平行な条件とすればよい。本実施例の一次転写ブラシ5を用いて検討したところ、ブラシ繊維51の起毛方向が押圧力Fの方向に対して10°以内の角度とされていれば、上述のような効果が良好に得られることが確認された。前述のように、例えば一次転写ブラシ5がパイル織物タイプの場合など、パイル糸が基布から離れるにつれて広がることがある。この場合でもパイル糸を構成する各ブラシ繊維51の起毛方向に対して、上記条件を満たしていればよい。
<比較例2>
ここで、本実施例の効果を示すための比較例について説明する。
図11は、比較例2の画像形成装置100の一次転写部B1における各部材とニップとの位置関係を示す模式的な断面図である。
比較例2においても、当接手段10は、台座11と、一次転写ブラシ5の長手方向の両端部にそれぞれ配置された2組のバネ12及びガイドレール13と、を有する。台座11は、台座11とガイドレール13との間に配置されたバネ12による押圧力Gによって、中間転写ベルト6の裏面に向けて付勢される。これによって、一次転写ブラシ5は、中間転写ベルト6の裏面に当接させられる。但し、比較例2では、ガイドレール13は、一次転写ブラシ5の基板52の長手方向両端の非起毛部分5B、5Bにおいて、基板52の上面52Aと台座11の底面11Bとを、対向するガイド面13A、13Aで挟持するように構成されている。これにより、比較例2では、一次転写ブラシ5の可動方向は、図中矢印E方向に規制されている。バネ12は、両ガイド面13A、13A間のバネ支持面13Bと、中間転写ベルト6の移動方向下流側の台座11の側面11Cと、の間に配置される。バネ12による押圧力Gが作用する方向も、図中矢印E方向と略平行な方向に規制される。比較例2においても、一次転写ブラシ5の長手方向の両端部においてバネ12によって一次転写ブラシ5に作用する押圧力Gの合計である、一次転写ブラシ5を中間転写ベルト6に向けて付勢する総圧は1.96Nとされる。
ここで、比較例2では、比較のため、感光ドラム1の回転軸線方向に対して略垂直な断面において、図中矢印Eで示される一次転写ブラシ5の可動方向、及び押圧力Gの方向は、本実施例とは大きく異なり、ブラシ繊維51の起毛方向に対して略垂直とされている。
尚、感光ドラム1の回転軸線方向に対して略垂直な断面において、ブラシ繊維51の起毛方向と中間転写ベルト6の移動方向R3とのなす角度(繊維傾斜角度)θは、実施例1と同様、70°≦θ≦90°とされる。
図12は、比較例2における、一次転写ブラシ5の繊維長のばらつきの影響を説明するための模式的な断面図である。
図12(a)は、一次転写ブラシ5として、所望の繊維長(2mm)のものが使用された場合の状態を示す。この場合の裏面ニップはN1と示されている。
図12(b)は、一次転写ブラシ5として、所望の繊維長(2mm)よりも約0.6mmだけ短い繊維長のものが使用された場合の状態を示す。この場合の裏面ニップはN1sと示されている。
図12(a)の状態では、中間転写ベルト6の移動方向におけるオーバーラップニップsの幅として1mm、テンションニップtの幅として2.5mmが確保されている。又、中間転写ベルト6の移動方向におけるはみ出しニップuの幅が0.1mmとなるように、画像形成装置100内で各部材が配置されている。これにより、良好な一次転写性が得られる。
しかし、図12(b)の状態では、裏面ニップN1sが中間転写ベルト6の移動方向上流側に移動し、はみ出しニップuが大きく形成されると共に、テンションニップtが消滅している。
比較例2では、一次転写ブラシ5の可動方向がブラシ繊維51の起毛方向に対して略垂直である。そのため、一次転写ブラシ5の繊維長が短くなると、一次転写ブラシ5は中間転写ベルト6の移動方向上流側に大きく押し込まれてしまう。その結果、ニップの位置に大きな変化が生じる。従って、良好な一次転写性を得ることができなくなる。
このように、一次転写ブラシ5の繊維長などの部品寸法のばらつきが生じ得る場合、良好な一次転写性を確保するためには、本実施例のようにブラシ繊維51の起毛方向と押圧力Fの方向とが略平行となる構成が有利である。即ち、本実施例では、ガイド部材13の規制方向は、ベルト6に接触することで変形させられていない状態での繊維51の起毛方向と略平行である。
以上、本実施例によれば、一次転写ブラシ5のブラシ繊維51のランダムな倒れが抑制されると共に、中間転写ベルト6と一次転写ブラシ5との間に形成されるニップが、一次転写ブラシ5の繊維長などの部品寸法のばらつきによらず常に狙いの位置に配置される。従って、良好な一次転写性を安定して得ることが可能となる。
ところで、繊維傾斜角度θが90°から大きく離れていない限り、ガイドレール13の取り付け位置が中間転写ベルト6の法線方向に沿う方向に変化したとしても、中間転写ベルト6と一次転写ブラシ5との間に形成されるニップは、狙いの位置付近に維持される。上記繊維傾斜角度θが90°から大きく離れていない場合とは、前述した70°≦θ≦90°の範囲内の程度である場合である。なぜなら、本実施例における押圧力Fの方向は、中間転写ベルト6の法線方向となす角が小さく、実施例1で説明した効果も同様に得られるためである。従って、本実施例の構成では、部品の取り付け位置のばらつきと、繊維長などの部品寸法のばらつきのいずれにもよらず、良好な一次転写性が確保される。上述のように、θが90°の場合、実施例1と実質的に同一の構成である。
以上より理解されるように、本実施例の構成における一次転写ブラシ5の押圧力Fの方向は、ブラシ繊維51の起毛方向と中間転写ベルト6の法線方向の間の中間的な方向とすることができる。この押圧力Fの方向は、画像形成装置100で生じ得る部品の取り付け位置のばらつきや、繊維長などの部品寸法のばらつきの大小関係を考慮した上で適宜決定することができる。その際、繊維長などの部品寸法のばらつきよりも、部品の取り付け位置のばらつきの方が大きければ、押圧力Fの方向を、中間転写ベルト6の法線方向に近い方向とすればよい。逆に、部品の取り付け位置のばらつきよりも、繊維長などの部品寸法のばらつきの方が大きければ、押圧力Fの方向を、ブラシ繊維51の起毛方向に近い方向とすればよい。
又、図13に示すような一次転写ブラシ5の当接手段の構成によっても本実施例と同様の効果を得ることが可能である。即ち、図13に示す当接手段10では、一次転写ブラシ5は、回動軸14を中心として回動可能な台座11により保持される。回動軸14は、中間転写ベルト6の移動方向において一次転写ブラシ5よりも上流に配置され、その回転軸線方向は感光ドラム1の回転軸線方向と略平行(中間転写ベルト6の移動方向R3に対して略垂直)に延びる。一次転写ブラシ5の基板52の上面52A、台座1の上面11A及び底面11Bは略平行である。又、バネ12は、台座11の底面11Bとバネ受け15との間に保持され、一次転写ブラシ5を中間転写ベルト6の裏面の方向に押圧する。この場合、回動軸14と、これを中心として回動する台座11が、一次転写ブラシ5の可動方向を規制するガイド部材として機能する。このような構成においても、押圧力Fの方向は、ブラシ繊維51の起毛方向と略平行(又はブラシ繊維51の起毛方向と中間転写ベルト6の法線方向の間の中間的な方向)であり、本実施例の効果が同様に得られる。
このように、ブラシ状の転写手段をベルトの裏面に対して、所定の方向に、所定の押圧力によって付勢することで、部品の取り付け位置や部品寸法のばらつきによらず、ベルトとブラシ状の転写手段との間に形成されるニップが狙いの位置に維持される。よって、良好な一次転写性が安定して得られる。
実施例3
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1の画像形成装置と同じである。従って、実施例1の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
図14は、本実施例における一次転写ブラシ5の構成を示す模式的な斜視図である。又、図15は、一次転写部B1における各部材とニップとの位置関係を示す模式的な断面図である。本実施例では、各ステーションSa〜Sdの各一次転写部B1a〜B1dの構成は同じである。
図14、15に示すように、本実施例における一次転写ブラシ5、一次転写ブラシ5の当接手段10の基本的な構成及び作用は、実施例1のものと同じである。但し、本実施例では、一次転写ブラシ5のブラシ繊維51は、基板52の上面52Aの法線方向に対して、中間転写ベルト6の移動方向に沿って下流側に傾斜して起毛している。感光ドラム1の回転軸線方向に対して略垂直な断面において、一次転写ブラシ5の基板52の上面52Aの法線方向と、ブラシ繊維51の起毛方向とのなす角度を起毛角度γとする。
ブラシ繊維51の中間転写ベルト6の移動方向上流側への倒れを良好に防止するためには、起毛角度γがないか、僅かな起毛角度γを設けた一次転写ブラシ5を中間転写ベルト6の裏面に接触させればよい。従って、起毛角度γは、γ≧0°とすることができる。
本実施例では、感光ドラム1の回転軸線方向に対して略垂直な断面において、図中矢印Dで示される一次転写ブラシ5の可動方向、及び押圧力Fの方向は、中間転写ベルト6の法線方向と略平行で、ブラシ繊維51の起毛方向とは起毛角度γにて傾斜している。上記中間転写ベルト6の法線方向と略平行な方向は、中間転写ベルト6の移動方向R3に対し略垂直な方向である。
これにより、一次転写ブラシ5のブラシ繊維51は、予め中間転写ベルト6の移動方向下流側に倒された状態で中間転写ベルト6の裏面に接触する。そして、接触することによって更に倒れ具合を増し、姿勢が安定化する。
ところで、本実施例における一次転写ブラシ5は、製造工程において、元々直立した起毛状態のブラシ部材に、高温に加熱された熱ローラを高圧力で表面圧接し、転がすことで得られる。従って、起毛角度を極端に大きくした一次転写ブラシ5を製造しようとすると、熱ローラにより多量の熱が部材の表面に与えられ、繊維がちぎれるなどのダメージが生じてしまう。このダメージを生じさせないためには、起毛角度γを、γ≦20°の範囲内に抑えることが好ましい。
本実施例の構成を用いて検討したところ、起毛角度γを、0°≦γ≦20°とすることで良好な一次転写性が確保できることが確認された。
即ち、本実施例では、転写手段5の繊維51は、基板52の法線方向に対して、ベルト6の移動方向に沿って下流側に傾斜して起毛している。特に、好ましくは、基板52の法線方向と、ベルト6に接触することで変形させられていない状態での繊維51の起毛方向とのなす角度γは、0°≦γ≦20°とされる。
尚、前述のように、例えば一次転写ブラシ5がパイル織物タイプの場合など、パイル糸が基布から離れるにつれて広がることがある。この場合でもパイル糸を構成する各ブラシ繊維51が、上記起毛角度の条件を満たしていればよい。
ここで、本実施例では、予め起毛角度γにて倒されたブラシ繊維51の先端で形成される面が、中間転写ベルト6の裏面と略平行に接触するように、一次転写ブラシ5が中間転写ベルト6の裏面に当接させられる。従って、中間転写ベルト6の裏面に接触する一次転写ブラシ5内のブラシ繊維51の倒れ具合が、中間転写ベルト6の移動方向上流側から下流側にかけて均一な分布となる。これにより、中間転写ベルト6の裏面にブラシ繊維51が接触して転写電界を形成する箇所も、実施例1や実施例2の構成と比較して、裏面ニップN1内で、より均一な分布を持つものとなる。つまり、ブラシ状の転写手段の有する特徴である、中間転写ベルト6の裏面に対する接触均一性が更に改善し、一次転写工程で生じる濃度ムラなどの画像不良が、より良好に抑制されるようになる。
以上、本実施例によれば、実施例1と同様の効果が得られると共に、ブラシ繊維51が基板52に対して傾斜した角度をもって起毛している一次転写ブラシ5を用いることで、一次転写工程で生じ得る濃度ムラなどの画像不良の発生もより良好に抑制される。
尚、本実施例における一次転写ブラシ5を用いて、実施例2と同様に、一次転写ブラシ5の起毛方向に対して押圧力の方向が略平行となる構成を採用することもできる。これにより、一次転写ブラシ5の繊維長のばらつきが大きような場合であっても、その影響を吸収することができる。
その他の実施例
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
上述の実施例では、画像形成装置は、中間転写ベルトを用いた中間転写方式の画像形成装置であるものとして説明した。しかし、ブラシ状の転写手段をベルト状の部材を介して像担持体に当接する方式の画像形成装置として、他の構成の画像形成装置も考えられる。例えば、複数の感光ドラム上のトナー像を、転写材搬送ベルト上を搬送される転写材上に順次直接転写する直接転写方式の画像形成装置などがある。図16は、直接転写方式の画像形成装置の一例の要部の模式的な断面図である。図16において、図1に示す中間転写方式の画像形成装置のものと同一又は対応する機能、構成を有する要素には同一符号を付している。直接転写方式の画像形成装置は、中間転写方式の画像形成装置における中間転写体としての中間転写ベルトの代わりに、転写材担持体としての転写搬送ベルト160を有する。そして、各ステーションSの各感光ドラム1上に形成されたトナー像が、各転写部Bにおいて転写手段としての転写ブラシ5の作用によって、転写材搬送ベルト160に担持されて搬送される転写材P上に順次に重ね合わせられるようにして転写される。その後、このトナー像は、転写材Pに定着させられる。このような直接転写方式の画像形成装置の各転写手段及びその当接手段の構成として、上記各実施例における一次転写手段及びその当接手段の構成を等しく適用することができ、上記各実施例と同様の効果を得ることができる。