JP2014077523A - 歯車機構 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の相手歯車に同時に噛み合う伝動歯車を含む歯車機構において、歯車同士のバックラッシを除去しつつ生産性を高める。
【解決手段】複数の相手歯車11,13に対して同時に噛み合う伝動歯車12を含む歯車機構10である。伝動歯車の一方の面のみに、複数の相手歯車に対する伝動歯車の各々のバックラッシを同時に除去するための補助歯車21が設けられている。補助歯車は、伝動歯車の回転中心線DLに対して同心に位置し、伝動歯車に対して相対回転を規制されるとともに、複数の相手歯車に噛み合う複数の歯21cを有する。補助歯車の歯数は、伝動歯車の歯数の2倍である。補助歯車は、複数の相手歯車に対して伝動歯車の2倍の歯が噛み合っている。補助歯車の複数の歯は、片持ち曲がり梁状に形成されるとともに、各々の相手歯車において隣り合う2つの歯の、互いに向かい合う両方の歯面に対し、撓んで予圧を付与した状態で同時に接している。
【選択図】図2

Description

本発明は、例えば遊星歯車機構のように、複数の歯車(以下、「相手歯車」という。)に対して同時に噛み合うことが可能な伝動歯車を有した歯車機構に関し、特にバックラッシを除去するように改良された技術に関する。
複数の相手歯車に対して同時に噛み合うことが可能な伝動歯車を有している歯車機構には、例えば遊星歯車機構がある。この遊星歯車機構は、中心の太陽歯車と、複数の遊星歯車と、内歯歯車(リング歯車)と、複数の遊星歯車を支持するキャリアと、から成る。遊星歯車は伝動歯車に相当し、太陽歯車及び内歯歯車は複数の相手歯車に相当する。この遊星歯車機構においても、噛み合い状態を円滑にするためには、複数の相手歯車に対する伝動歯車の各々のバックラッシを除去することが好ましい。遊星歯車機構においてバックラッシを除去する技術は、特許文献1から知られている。
特許文献1で知られている遊星歯車機構の概要を、図14に基づいて説明する。図14(a)は、特許文献1で知られている遊星歯車機構200の断面を示している。図14(b)は、図14(a)のb−b線に沿った断面を示している。図14(c)は、図14(a)のc−c線に沿った断面図であって、太陽歯車201に対する遊星歯車203及び一方の補助歯車204の噛み合い状態を示している。図14(d)は、図14(a)のd−d線に沿った断面図であって、内歯歯車202に対する遊星歯車203及び他方の補助歯車205の噛み合い状態を示している。
図14(a)及び図14(b)に示されるように、遊星歯車機構200は、太陽歯車201と、内歯歯車202と、太陽歯車201及び内歯歯車202に同時に噛み合う複数の遊星歯車203とから成る。太陽歯車201の歯幅や内歯歯車202の歯幅は、遊星歯車203の歯幅よりも大きい。各遊星歯車203の歯幅方向両端面には、補助歯車204,205がそれぞれ取り付けられている。該各補助歯車204,205は、いわゆるシザースギヤの構成であって、遊星歯車203に対し同軸上で相対回転が可能であり、しかも、該遊星歯車203に対して回転方向に弾性変位をすることができる。太陽歯車201は、矢印DR方向にのみ回転するものと考えられる。該太陽歯車201が矢印DR方向へ回転したときに、遊星歯車203及び内歯歯車202は逆方向の矢印SR方向へ回転する。
図14(a)及び図14(c)に示されるように、一方の補助歯車204は、太陽歯車201だけに噛み合うものであり、矢印DR方向とは逆方向へ付勢されて、該太陽歯車201の歯面に接触している。太陽歯車201が矢印DR方向へ回転したときに、該太陽歯車201と遊星歯車203との間のバックラッシを除去することができる。
図14(a)及び図14(d)に示されるように、他方の補助歯車205は、内歯歯車202だけに噛み合うものであり、矢印SR方向へ付勢されて、該内歯歯車202の歯面に接触している。この結果、遊星歯車203が矢印SR方向へ回転したときに、遊星歯車203と内歯歯車202との間のバックラッシを除去することができる。
しかしながら、太陽歯車201が矢印DR方向とは逆方向へ回転(逆回転)した場合には、図14(c)に示されるように太陽歯車201に対して遊星歯車203及び一方の補助歯車204が噛み合うときに、図14(d)に示されるように遊星歯車203と内歯歯車202との間のバックラッシΔを必ずしも除去できるとは限らない。遊星歯車機構200は、正回転と逆回転の両方向で用いる場合が多いので、太陽歯車201の正転時と逆転時の双方において、バックラッシを除去できることが好ましい。
また、該遊星歯車機構200は、各遊星歯車203の歯幅方向両端面にそれぞれ補助歯車204,205を設ける構成であり、部品数が多く構成が複雑になるので、生産性を高める上でも改良の余地がある。
また、遊星歯車機構200の強度を確保する上で、遊星歯車203の歯幅を今以上に小さくすることはできない。従来と同等の歯幅を有した該遊星歯車203の両端面に、補助歯車204,205を設けたので、補助歯車204,205の厚み分だけ、遊星歯車機構200の寸法は軸方向に長くなってしまう。大型化した遊星歯車機構200を各種の装置に搭載すると、該装置自体の大型化の要因となるので、搭載性を高める上で不利である。
2つの歯車同士のバックラッシを除去する構成の、一般的な歯車機構は、特許文献2乃至5から知られている。
特許文献2で知られている歯車機構では、動力伝達用歯車(相手歯車)から動力が伝達される伝動歯車の歯幅方向両端面に、補助歯車がそれぞれ取り付けられている。伝動歯車はヘリカルギヤである。該補助歯車は、真直片持ち梁状の歯にスリットを入れた形状である。伝動歯車に対して、該補助歯車は歯厚方向に均等に張り出しており、また、歯先が突出している。
該補助歯車は、真直片持ち梁状の歯にスリットを入れただけなので、歯厚方向のばね定数の設定に自由度がない。また、補助歯車は、歯厚方向に均等に張り出している。噛み合い位置により補助歯車の与圧量(相手歯車によって圧縮される力)の変動が大きく、歯車機構の回転トルクの変動が大きくなり、振動が発生しやすい。
また、特許文献2で知られている歯車機構では、上述のように、各補助歯車の歯が伝動歯車の歯に対して突出している。このため、相手歯車に対して伝動歯車の1つの歯の噛み合いが終了した後も、補助歯車の歯は相手歯車に噛み合ったままの状態になる。これでは、補助歯車に発生する曲げ応力や面圧が過大になり得る。補助歯車の耐久性を確保するには、この補助歯車の歯幅を大きくすることが考えられる。しかし、補助歯車の歯幅が大きくなった分、歯車機構の寸法は軸方向に長くなってしまう。大型化した歯車機構を各種の装置に搭載すると、該装置自体の大型化の要因となる。
特許文献3で知られている歯車機構では、ピニオン(相手歯車)から動力が伝達される伝動歯車の歯幅方向両端面に、弾性を有した補助歯車がそれぞれ取り付けられている。伝動歯車はヘリカルギヤである。伝動歯車の歯に対して、各補助歯車の歯は歯先から歯元にかけて歯厚を均等に突出している。歯厚の違いによって、バックラッシを除去することができる。
しかし、補助歯車の歯底円の径は、伝動歯車の歯底円の径と同じに設定されている。このような補助歯車では、相手歯車に噛み合ったときに、歯先の弾性変形は或る程見込めるものの、歯元は回転方向に変形することができない。この結果、該歯元が変形しにくい分、該歯元に付与される与圧(相手歯車によって歯元を圧縮される力)は大きい。該歯元に付与される与圧が過大であると、該歯元の部分では、伝動歯車が相手歯車に噛み合うことは困難になる。従って、動力は相手歯車から補助歯車のみに直接に伝達され得る。このときに、補助歯車は過大な面圧を受ける。補助歯車の耐久性を確保するには、該補助歯車の歯幅を大きくすることが考えられる。しかし、補助歯車の歯幅が大きくなった分、歯車機構の寸法は軸方向に長くなってしまう。大型化した歯車機構を各種の装置に搭載すると、該装置自体の大型化の要因となる。また、補助歯車は、歯厚方向に均等に張り出している。噛み合い位置により補助歯車の与圧量の変動が大きく、歯車機構の回転トルクの変動が大きくなり、振動が発生しやすい。
特許文献4で知られている歯車機構では、ピニオン(相手歯車)から動力が伝達される伝動歯車の歯幅方向一端面に、補助歯車が取り付けられている。伝動歯車はヘリカルギヤである。補助歯車は、板状又は線状のバネ部材によって構成されている。該補助歯車の歯の歯厚は、伝動歯車の歯の歯厚よりも大きい。歯厚の違いによって、バックラッシを除去することができる。
板状のバネ部材から成る補助歯車の歯は、歯先側から見て、歯幅方向外側に開放した略U字状に折り曲げ形成されている。このため、補助歯車の歯の歯幅は大きい。歯幅が大きい分、歯車機構の寸法は軸方向に長くなってしまう。大型化した歯車機構を各種の装置に搭載すると、該装置自体の大型化の要因となる。しかも、補助歯車の歯は、略U字状の開放端だけが相手歯車の歯に接触する、いわゆる点接触又は線接触である。このため、補助歯車の歯に発生する面圧が大きいので、該歯の摩耗の進みは早い。歯の摩耗が激しいことによって、歯に付与される与圧が、使用時間の経過に伴って大きく変化することにつながる。これでは、バックラッシを除去する除去性能が大きく変化してしまう。バックラッシの除去性能を安定させるには、改良の余地がある。
線状のバネ部材から成る補助歯車は、伝動歯車の歯幅方向一端面の輪郭に沿って線材が一筆書きのように折り曲げられることにより、全体が花の模様状に構成されている。個々の花びらに相当する円環状の部分は、補助歯車の歯を構成している。該補助歯車の歯は、伝動歯車の歯に沿うとともに、該伝動歯車の歯面から歯溝側へ突出しており、相手歯車の互いに相対する2つの歯面に挟まれて弾性変形することにより、バックラッシを除去する。
しかし、線状のバネ部材から成る円環状の補助歯車の歯は、伝動歯車の歯面から歯溝側へ突出した部位にしか、相手歯車から与圧(相手歯車によって補助歯車の歯を圧縮する力)を付与されない。つまり、相手歯車の歯に対して伝動歯車の歯が噛み合い始める領域では、相手歯車の歯に対して補助歯車の歯がまだ接触しないことがあり得る。このため、前記噛み合い始める領域では、補助歯車は相手歯車から与圧を付与されない。よって、補助歯車への与圧の付与され方が急激に変化する。噛み合い位置によって、補助歯車の与圧量の変動が大きく、歯車機構の回転トルクの変動が大きくなり、振動が発生しやすい。
特許文献5で知られている歯車機構は、時計に採用されるものであり、ピニオン(相手歯車)から動力が伝達される伝動歯車の歯の構成に特徴がある。この伝動歯車は、完全な剛性を有している歯(剛性歯)と、弾性変形が可能な歯(バネブレード)とを、周方向に交互に設けることによって、相手歯車の歯を挟み込んでいる。挟み込みの構成によって、バックラッシを除去することができる。
しかし、1つの伝動歯車に性質の異なる歯を設けるので、伝動歯車の構成が複雑になり、生産性を高める上で不利である。しかも、剛性歯の歯数は、バネブレードを有している分だけ少なくなってしまう(半分になる)ので、それぞれの剛性歯間のピッチが粗くなる。このため、相手歯車に対する伝動歯車の有効な噛み合い範囲において、実際に動力を伝達している剛性歯の歯数が少なくなる。該剛性歯の歯数が少ない分、噛み合い率が下がるので、歯車の許容伝達トルクが低下する。低下する伝達トルクを補うためには、歯幅を大きくすることが考えられる。しかし、歯幅が大きい分、歯車機構の寸法は軸方向に長くなってしまう。大型化した歯車機構を各種の装置に搭載すると、該装置自体の大型化の要因となる。
また、剛性歯と剛性歯との間にバネブレードが配置されているので、伝動歯車の総歯数が奇数の場合には、剛性歯とバネブレードのいずれか一方が連続する部位ができてしまう。従って、伝動歯車の歯数の設定が困難になる。
このような特許文献2乃至5で知られている一般的な歯車機構の技術を、特許文献1の遊星歯車機構に採用しただけでは、遊星歯車機構においてバックラッシを確実に除去し、回転トルクの変動を低下させ、且つ生産性を高めることはできない。
独国特許公開第19757433号明細書 特開2001−336610号公報 特開2007−232161号公報 特開2008−189172号公報 特開2008−309795号公報
本発明は、複数の相手歯車に対して同時に噛み合うことが可能な少なくとも1つの伝動歯車を含む歯車機構において、各歯車同士のバックラッシを確実に除去しつつ、回転トルクの変動を低下させ、歯車機構の生産性を高めることができる技術を提供することを課題とする。
請求項1に係る発明によれば、複数の相手歯車に対して同時に噛み合うことが可能な少なくとも1つの伝動歯車を含む歯車機構において、前記伝動歯車の一方の面のみに、前記複数の相手歯車に対する前記伝動歯車の各々のバックラッシを同時に除去するための補助歯車が設けられ、この補助歯車は、前記伝動歯車の回転中心線に対して同心に位置し、且つ前記伝動歯車に対して相対回転を規制され、前記複数の相手歯車に噛み合う複数の歯を有し、この複数の歯の歯数が、前記伝動歯車の歯数の2倍に設定されることにより、前記補助歯車は、前記複数の相手歯車に対して前記伝動歯車の2倍の歯が噛み合っており、前記補助歯車の複数の歯は、この補助歯車の回転方向にバネ特性を有して撓み変形が可能な、片持ち曲がり梁状に形成されるとともに、前記伝動歯車の歯の歯面よりも歯厚方向へ突出しており、前記各々の相手歯車において隣り合う2つの歯の、互いに向かい合う両方の歯面に対し、撓んで予圧を付与した状態で同時に接している、ことを特徴とする歯車機構が提供される。
請求項2に記載のごとく、好ましくは、前記補助歯車の各歯の前記歯厚方向への突出量は、歯底から歯先へ向かうにつれて漸増している。
請求項3に記載のごとく、より好ましくは、前記補助歯車の各歯は、厚さ、幅、又は、厚さと幅の両方が、歯底から歯先へかけて減少している。
請求項4に記載のごとく、より好ましくは、前記補助歯車は、樹脂材料によって構成されている。
請求項1に係る発明では、伝動歯車には、複数の相手歯車に対する伝動歯車の各々のバックラッシを同時に除去するための補助歯車が設けられている。補助歯車の歯数は、伝動歯車の歯数の2倍である。このため、補助歯車は、複数の相手歯車に対して伝動歯車の2倍の歯が噛み合う。補助歯車の複数の歯は、各々の相手歯車において隣り合う2つの歯の、互いに向かい合う両方の歯面に対し、撓んで予圧を付与した状態で同時に接している。従って、伝動歯車の正転時と逆転時とのどちらの場合であっても、複数の相手歯車に対して、各歯車同士のバックラッシを確実に除去することができる。
しかも、補助歯車の複数の歯は、この補助歯車の回転方向にバネ特性を有して撓み変形が可能な、片持ち曲がり梁状に形成されるとともに、伝動歯車の歯の歯面よりも歯厚方向へ突出している。このような簡単な構成の補助歯車は、伝動歯車の一方の面のみに設けられている。このため、正逆両方の回転に対するバックラッシを確実に除去するための補助歯車を備えた伝動歯車の構成は簡単である。従って、歯車機構の生産性を高めることができる。さらには、複数の相手歯車に対して、各歯車同士のバックラッシを確実に除去するのに、補助歯車を、伝動歯車の一方の面のみに設けるだけでよい。このため、歯車機構を小型にすることができるとともに、各種の装置に対して歯車機構を容易に配置することができる。また、補助歯車の複数の歯は片持ち曲がり梁状の構成であるから、上記特許文献2のように略歯形形状をした真直片持ち梁状の歯にスリットを入れる構成よりも、歯厚方向のばね特性の設計の自由度が向上する。
以上のように、請求項1に係る発明では、複数の相手歯車に対して同時に噛み合うことが可能な少なくとも1つの伝動歯車を含む歯車機構において、各歯車同士のバックラッシを確実に除去しつつ、歯車機構の生産性を高めることができる。
請求項2に係る発明では、補助歯車の各歯の歯厚方向への突出量は、歯底から歯先へ向かうにつれて漸増している。このため、補助歯車の各歯は、バネ特性を有して撓み変形し、複数の相手歯車の各歯と伝動歯車の各歯との間のバックラッシを、個別に独立して吸収することができる。これらのことから、歯先から歯元まで、ばねの与圧により発生する回転トルクの変動を低減することができる。
請求項3に係る発明では、補助歯車の各歯における厚さだけ、幅だけ、又は、厚さと幅の両方が、歯底から歯先へかけて減少している。このように、各歯の断面を適宜に設定することにより、片持ち梁のバネ特性が最適となるように設定することができる。しかも、各歯の断面が歯底から歯先へかけて減少することによって、補助歯車の軽量化を図ることができる。
請求項4に係る発明では、補助歯車は樹脂材料によって構成されている。このため、補助歯車と複数の相手歯車との噛合いを比較的円滑にすることができるとともに、歯同士が当たるときの歯当たり音や、歯面同士が摺動するときの摺動音をより低減させることができる。しかも、樹脂の粘弾性(粘性と弾性の両方をあわせもった性質)により、複数の相手歯車に対する補助歯車の歯の噛み合い部分の他、補助歯車自身における制振効果がある。さらには、補助歯車を樹脂の成型品とすることができるので、補助歯車の生産性を高めることができる。
本発明の実施例1に係る歯車機構の平面図である。 図1の2−2線に沿った断面図である。 図2に示された歯車機構の分解図である。 図1に示された補助歯車の拡大した図である。 図1に示された伝動歯車の歯と補助歯車の歯との関係を拡大して表した斜視図である。 図1に示された内歯歯車に対する伝動歯車及び補助歯車の噛み合い構成を説明する図である。 本発明の実施例2に係る歯車機構の平面図である。 図7の8−8線に沿った断面図である。 図8に示された歯車機構の分解図である。 図7に示された補助歯車の拡大した図である。 図7に示された伝動歯車の歯と補助歯車の歯との関係を拡大して表した斜視図である。 図7に示された内歯歯車に対する伝動歯車及び補助歯車の噛み合い構成を説明する図である。 図12に示された伝動歯車の歯と補助歯車の歯との関係を説明する図である。 従来の遊星歯車機構の概要を説明する図である。
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
実施例1に係る歯車機構について図1乃至図6に基づき説明する。図1及び図2に示されるように、歯車機構10は、例えば遊星歯車機構によって構成されている。この遊星歯車機構10(歯車機構10)は、遊星歯車機構10の中心CLに位置する1つの太陽歯車11と、この太陽歯車11を中心として自転しながら公転する複数(例えば4つ)の遊星歯車12と、この複数の遊星歯車12の周りを公転する1つの内歯歯車13と、複数の遊星歯車12を回転可能(自転可能)に支持する1つのキャリア14と、から成る。
太陽歯車11と内歯歯車13とキャリア14とは、遊星歯車機構10の中心CL上に配列されている。太陽歯車11は、遊星歯車機構10の中心CL上に位置している回転軸15に対して一体に形成され、又は別部材として取り付けられている。複数の遊星歯車12は、太陽歯車11に対して等ピッチで放射状に配列されるとともに、この太陽歯車11に噛み合っている。内歯歯車13は、複数の遊星歯車12を包囲するように位置し、全ての遊星歯車12に噛み合うための内歯13aを有する。キャリア14は、回転軸15に対して相対回転可能に位置し且つ嵌合しており、複数の遊星歯車12を個別に回転可能に支持するための複数(例えば4つ)の支軸16を有する。太陽歯車11とキャリア14との間には、ワッシャ17が介在している。
遊星歯車機構10の駆動形式には、太陽歯車11を固定して用いるソーラ型と、内歯歯車13を固定して用いるプラネタリ型と、キャリア14を固定して用いるスター型と、がある。太陽歯車11が固定されたソーラ型においては、キャリア14が入力部材または出力部材となり、内歯歯車13が出力部材または入力部材となる。内歯歯車13が固定されたプラネタリ型においては、太陽歯車11(回転軸15)が入力部材または出力部材となり、キャリア14が出力部材または入力部材となる。キャリア14が固定されたスター型においては、太陽歯車11(回転軸15)が入力部材または出力部材となり、内歯歯車13が出力部材または入力部材となる。
太陽歯車11の歯11a、各遊星歯車12の歯12a、内歯歯車13の歯13aの歯形は、例えばインボリュート歯形である。
ここで、複数の遊星歯車12を基準として、各歯車11,12,13同士の関係を、次のように定義する。複数の遊星歯車12に噛み合う太陽歯車11及び内歯歯車13は、複数の遊星歯車12に対して相手の歯車であるから、適宜「相手歯車11,13」という。また、複数の遊星歯車12は、太陽歯車11及び内歯歯車13に対して力を伝達する歯車であるから、適宜「複数の伝動歯車12」という。つまり、遊星歯車機構10(歯車機構10)は、複数の相手歯車11,13に対して同時に噛み合うことが可能な少なくとも1つの伝動歯車12を含む。
図1乃至図3に示されるように、複数の伝動歯車12には、一方の面12bのみに、それぞれ補助歯車21が設けられている。ここで、「一方の面12b」とは、各伝動歯車12の回転中心線DL方向の一方の端面12bのことである。例えば、補助歯車21は、この補助歯車21に形成されている複数の貫通孔22を挿通した複数のビス23によって、伝動歯車12に取り付けられている。複数の補助歯車21は、複数の相手歯車11,13に対する、それぞれの伝動歯車12の各々のバックラッシを同時に除去するための、バックラッシ調整用歯車である。この複数の補助歯車21は、遊星歯車機構10の駆動形式が、ソーラ型とプラネタリ型とスター型の、どの構成においても、バックラッシを同時に除去することが可能である。
各補助歯車21は、各伝動歯車12の回転中心線DLに対して同心に位置し、各伝動歯車12に対して相対回転を規制されている。つまり、各補助歯車21は、各伝動歯車12に対する径方向及び回転方向の相対的な位置が決められている。例えば、前記複数のビス23によって位置決めされる。又は、位置決め用の凹凸嵌合によって位置決めされる。凹凸嵌合による場合には、各伝動歯車12の一方の面12bと各補助歯車21の対向面とに形成される2つずつ(図面には1つのみ示している。)の凸部24と凹部25との嵌合によって位置決めされる。図3に示されるように、キャリア14の支軸16に対してワッシャ26、伝動歯車12、補助歯車21は、この順に嵌合されるとともに、止め輪27によって軸方向に位置決めされている。
図2に示されるように、伝動歯車12の歯幅に補助歯車21の歯幅を加えた総歯幅は、太陽歯車11の歯幅や内歯歯車13の歯幅よりも若干小さく設定されている。
以下、1つの伝動歯車12と、この伝動歯車12に取り付けられている1つの補助歯車21について、詳しく説明する。残りの伝動歯車12及び補助歯車21も前記1つと同じ構成なので、説明を省略する。
図4に示されるように、補助歯車21は、回転中心線DLを基準とする中空円盤状の本体21aと、この本体21aの外周面21bの全周にわたって設けられた複数の歯21cと、から成る。本体21aは、金属材料又は樹脂材料によって構成されており、貫通孔22と凹部25とが形成されている。複数の歯21cは、ばね鋼板等の金属製の板ばねによって構成されている。
図4及び図5に示されるように、これらの歯21cは、本体21aの外周面21bから径外方へ延びた片持ち曲がり梁状に形成されるとともに、補助歯車21の回転方向Ruへのバネ特性を有した撓み変形が可能に構成されている。つまり、これらの歯21cは、板面が補助歯車21の回転方向Ruを向いている。
さらに、各歯21cは、伝動歯車12の歯12aにおける両方の歯面12c,12cに概ね沿って、1つずつ位置している。つまり、補助歯車21の歯21cの歯数は、伝動歯車12の歯12aの歯数の2倍である。伝動歯車12の歯12aの歯面12cは曲面であり、この曲面に対して補助歯車21の歯21cは概ね沿う円弧状に形成されている。
このように、複数の歯21cは、伝動歯車12の歯12aの歯面12cに概ね沿う円弧状である。このため、複数の歯21cは、相手歯車11,13のピッチ円の近傍において、相手歯車11,13の各歯面11c,13c(図1、図6参照参照)に接することが可能である。従って、相手歯車11,13の各歯面11c,13cに対する、補助歯車21の歯21cの滑りを抑制することができるので、この結果、歯21cの摩耗を低減できる。
複数の歯21cは、複数の相手歯車11,13(図2参照)に同時に噛み合うように構成される。言い換えると、各歯21cは、補助歯車21の回転方向Ruへ撓んで、複数の相手歯車11,13の歯11a,13a(図2参照)に同時に接することが可能である。つまり、複数の歯21cの一部が太陽歯車11の歯11aに噛み合うとともに、複数の歯21cの他の一部が内歯歯車13の歯13aに噛み合っている。
ここで、内歯歯車13に対する伝動歯車12(遊星歯車12)及び補助歯車21の関係について説明する。太陽歯車11に対する伝動歯車12及び補助歯車21の関係については、上記内歯歯車13に対する関係と実質的に同じなので、説明を省略する。
図6は伝動歯車12、内歯歯車13及び補助歯車21の噛み合い部分を、伝動歯車12の回転中心線DL(図1参照)に沿う方向から見て、拡大して表している。図6(a)は、内歯歯車13に対する伝動歯車12との噛み合い構成を示している。図6(b)は、伝動歯車12と補助歯車21との構成を示しており、図5に示される構成と同じである。図6(c)は、内歯歯車13に対する伝動歯車12及び補助歯車21の噛み合い構成を示している。
図6(a)に示されるように、伝動歯車12の歯12aと内歯歯車13の歯13aとの間にはバックラッシδ(隙間δ)を有している。このバックラッシδは、例えば歯車のモジュールの1/4程度の大きさである。この歯12a,13a同士のバックラッシδを除去するために、図6(b)に示される補助歯車21が採用されている。複数の歯21cは、伝動歯車12の歯12aの歯面12cよりも、歯12aの歯厚方向へ突出している。つまり、伝動歯車12及び補助歯車21を、伝動歯車12の回転中心線DL(図1参照)に沿う方向から見たときに、伝動歯車12において隣接し合う2つの歯12a,12a間に、補助歯車21において隣接し合う2つの歯21c,21c(以下、「1対の歯21c,21c」という。)が位置している。つまり、補助歯車21の複数の歯21cの歯数が、伝動歯車12の歯数の2倍に設定されることにより、補助歯車21は、内歯歯車13に対して伝動歯車12の2倍の歯21cが噛み合っている。
図4、図5及び図6(b)に示されるように、1対の歯21c,21cの基端同士は、連結板21dによって繋がれている。この連結板21dは、1対の歯21c,21cに一体に折り曲げ形成されており、本体21aの外周面21bにビス、リベット、接着剤等の固定部材21eによって固定されている。この結果、1対の歯21c,21cの基端は、本体21aの外周面21bに固定される。
補助歯車21において、本体21aの外周面21bに対する、複数の歯21cの基端の部位は、各歯21cの歯底を成す。以下、本体21aの外周面21bのことを、適宜「補助歯車21の歯底21b」という。伝動歯車12の歯12aの歯面12cに対する、補助歯車21の各歯21cの歯厚方向への突出量、つまり1対の歯21c,21cの突出量は、歯底21bから歯先21fへ向かうにつれて漸増している。
より詳しく述べると、1対の歯21c,21cの基端、つまり歯底21bと内歯歯車13の歯13aの歯先との間の、周方向の隙間(基端の隙間)は、歯12a,13a同士のバックラッシδよりも大きく設定されている。この基端の隙間が大きいほど、1対の歯21c,21cの弾性変位と予圧の調整幅が大きいので、設計の自由度が増すとともに、加工が容易である。
一方、図6(b)に示されるように、伝動歯車12の歯12aの歯面12cに対し、補助歯車21の各歯21cの歯先21fにおける、歯厚方向への突出量は、αである。この突出量αは、伝動歯車12、内歯歯車13及び補助歯車21の単体の制作公差と、これらの歯車12,13,21の組立公差とを、勘案して設定される。つまり、前記各々の公差を吸収することが可能な大きさに設定される。
図6(c)に示されるように、補助歯車21における1対の歯21c,21cは、内歯歯車13のなかの、伝動歯車12の歯12aが位置している歯溝13bに入り込んで、内歯歯車13の隣接し合う2つの歯13a,13aの、互いに向かい合う両方の歯面13c,13cに対し予圧を付与して撓んだ状態で接する。言い換えると、補助歯車21の複数の歯21cは、伝動歯車の歯12の歯面12cよりも歯厚方向へ突出しており、内歯歯車13において隣り合う2つの歯13a,13aの、互いに向かい合う両方の歯面13c,13cに対し、撓んで予圧を付与した状態で接している。
このように、前記基端の隙間と前記突出量αとを設定することによって、補助歯車21の各歯21cは、バネ特性を有して撓み変形し、内歯歯車13の各歯13aと伝動歯車12の各歯12aとの間のバックラッシδを、個別に独立して吸収することができる。この結果、歯12a,13a同士の打音の発生や作動音を、極力抑制することができる。さらには、歯12a,13a同士の良好な噛合い状態を維持することができる。さらには、歯12a,13a同士が衝当することなく、緩やかに当たって噛合うので、歯車機構10の耐久性を、より高めることができる。さらには、伝動歯車12と内歯歯車13とのいずれか一方が急反転した場合であっても、歯車12,13間の力の伝達に時間遅れの発生を抑制することができる。
図示してはいないが、補助歯車21の各歯21cは、厚さだけ、幅だけ、又は、厚さと幅の両方が、歯底21bから歯先21fへかけて減少している。このように、各歯21cの断面を適宜に設定することにより、片持ち梁のバネ特性が最適となるように設定することができる。しかも、各歯21cの断面が歯底21bから歯先21fにかけて減少することによって、補助歯車21の軽量化を図ることができる。
図3に示されるように、補助歯車21の外径dbは、伝動歯車12の外径do以下であって且つ伝動歯車12のピッチ径dpよりも大きく設定されている(do≧db>dp)。このような径を設定した理由は、次の通りである。つまり、伝動歯車12の歯12aは、相手歯車11,13に対して力を伝達するものであるから、相当の強度を有している。これに対し、補助歯車21の歯21cは、バックラッシδを調整するように弾性変形が可能に構成されており、相手歯車11,13に対して力を伝達することが可能な強度を有していない。このため、補助歯車21の歯21cは、過剰な力が加わることによって、塑性変形をすることがないように、上述の径の関係に設定されている。歯21cは、過剰な力が加わった場合に弾性変形して、伝動歯車12の歯12aの歯面12cに当たり、それ以上に変形しない。つまり、伝動歯車12の歯12aは、補助歯車21の歯21cに作用する最大力を規制するための、リミッタの役割を果たす。
実施例1の説明をまとめると、次の通りである。図1に示されるように、実施例1では、伝動歯車12には、複数の相手歯車11,13に対する伝動歯車12の各々のバックラッシを同時に除去するための補助歯車21が設けられている。補助歯車21の歯数は、伝動歯車12の歯数の2倍である。このため、補助歯車21は、複数の相手歯車11,13に対して伝動歯車12の2倍の歯が噛み合う。
補助歯車21における2つの歯21c,21cは、複数の相手歯車11,13のなかの、伝動歯車12の歯12aが位置している歯溝11b,13b(図6参照)に入り込む。そして、補助歯車21における2つの歯21c,21cは、相手歯車11において隣り合う2つの歯11a,11aの、互いに向かい合う両方の歯面11c,11cに対し、予圧を付与して撓んだ状態で接している。同時に、補助歯車21における他の2つの歯21c,21cは、相手歯車13において隣り合う2つの歯13a,13aの、互いに向かい合う両方の歯面13c,13cに対し予圧を付与して撓んだ状態で接している。従って、伝動歯車12の正転時と逆転時とのどちらの場合であっても、複数の相手歯車11,13に対して、各歯車11,12同士のバックラッシδと、各歯車12,13同士のバックラッシδと、を確実に除去することができる。
しかも、補助歯車21の各歯21c,21cは、伝動歯車12の歯12aの歯面12cよりも歯厚方向へ突出した片持ち曲がり梁状に形成されるとともに、補助歯車21の回転方向Ruへのバネ特性を有した撓み変形が可能に構成され、補助歯車21の回転方向Ruへ撓んで複数の相手歯車11,13の歯11a,13aに接することが可能な構成である。
つまり、補助歯車21の複数の歯21cは、この補助歯車21の回転方向Ruにバネ特性を有して撓み変形が可能な、片持ち曲がり梁状に形成されるとともに、伝動歯車12の歯12aの歯面12cよりも歯厚方向へ突出している。
このような簡単な構成の補助歯車21は、伝動歯車12の一方の面12bのみに設けられている。このため、正逆両方の回転に対するバックラッシを確実に除去するための補助歯車21を備えた伝動歯車12の構成は簡単である。従って、歯車機構10の生産性を高めることができる。さらには、複数の相手歯車11,13に対して、各歯車11,12同士又は各歯車12,13同士のバックラッシを確実に除去するのに、補助歯車21を、伝動歯車12の一方の面12bのみに設けるだけでよい。このため、歯車機構10を小型にすることができるとともに、各種の装置に対して歯車機構10を容易に配置することができる。
以上のように、実施例1では、複数の相手歯車11,13に対して同時に噛み合うことが可能な少なくとも1つの伝動歯車12を含む歯車機構10において、各歯車11,12同士のバックラッシと、各歯車12,13同士のバックラッシと、を確実に除去しつつ、回転トルクの変動を低減し、歯車機構10の生産性を高めることができる。
実施例2に係る歯車機構について図7乃至図13に基づき説明する。図7は上記図1に対応して表している。図8は上記図2に対応して表している。図9は上記図3に対応して表している。図10は上記図4に対応して表している。図11は上記図5に対応して表している。図12は上記図6に対応して表している。
実施例2の歯車機構100は、上記図1乃至図6に示されている複数の補助歯車21を、図7乃至図13に示された実施例2の複数の補助歯車121に変更したことを特徴とし、他の構成については上記図1乃至図6に示す構成と同じなので、説明を省略する。
具体的には、実施例2の歯車機構100(遊星歯車機構100)は、補助歯車121が樹脂材料によって構成されている。このため、図7に示されるように、補助歯車121と複数の相手歯車11,13との噛合いを比較的円滑にすることができるとともに、歯11a,12a同士や歯12a,13a同士が当たるときの歯当たり音をより低減させることができる。また、歯11c,12c同士や歯12c,13c同士が摺動するときの摺動音をより低減させることができる。しかも、樹脂の粘弾性の特性により、複数の相手歯車11,13に対する補助歯車121の歯121aの噛み合い部分の他、補助歯車自身における制振効果がある。さらには、補助歯車121を樹脂の成型品とすることができるので、この補助歯車121の生産性を高めることができる。
以下、実施例2について詳しく説明する。図7乃至図9に示されるように、複数の伝動歯車12には、一方の面12bのみに、それぞれ補助歯車121が設けられている。つまり、補助歯車121は、この補助歯車121に形成されている複数の貫通孔22を挿通した複数のビス23によって、伝動歯車12に取り付けられている。複数の補助歯車121は、複数の相手歯車11,13に対する、それぞれの伝動歯車12の各々のバックラッシを同時に除去するための、バックラッシ調整用歯車である。この複数の補助歯車121は、遊星歯車機構100の駆動形式が、ソーラ型とプラネタリ型とスター型の、どの構成においても、バックラッシを同時に除去することが可能である。
各補助歯車121は、各伝動歯車12の回転中心線DLに対して同心に位置し、各伝動歯車12に対して相対回転を規制されている。つまり、各補助歯車121は、各伝動歯車12に対する径方向及び回転方向の相対的な位置が決められている。図8に示されるように、伝動歯車12の歯幅に補助歯車121の歯幅を加えた総歯幅は、太陽歯車11の歯幅や内歯歯車13の歯幅よりも若干小さく設定されている。
以下、1つの伝動歯車12と、この伝動歯車12に取り付けられている1つの補助歯車121について、詳しく説明する。残りの伝動歯車12及び補助歯車121も前記1つと同じ構成なので、説明を省略する。
図10に示されるように、補助歯車121は、回転中心線DLを基準とする中空円盤状の本体121aと、この本体121aの外周面の全周にわたって設けられた複数の歯121cと、から成る。
図10及び図11に示されるように、これらの歯121cは、本体121aの外周面から径外方へ延びた片持ち曲がり梁状に形成されるとともに、補助歯車121の回転方向Ruへのバネ特性を有した撓み変形が可能に構成されている。
さらに、各歯121cは、伝動歯車12の歯12aにおける両方の歯面12c,12cに概ね沿って、1つずつ位置している。つまり、補助歯車121の歯121cの歯数は、伝動歯車12の歯12aの歯数の2倍である。伝動歯車12の歯12aの歯面12cは曲面であり、この曲面に対して補助歯車121の歯121cは概ね沿う円弧状に形成されている。
複数の歯121cは、複数の相手歯車11,13(図7参照)に同時に噛み合うように構成される。言い換えると、各歯121cは、補助歯車121の回転方向Ruへ撓んで、複数の相手歯車11,13の歯11a,13a(図8参照)に同時に接することが可能である。つまり、複数の歯121cの一部が太陽歯車11の歯11aに噛み合うとともに、複数の歯121cの他の一部が内歯歯車13の歯13aに噛み合っている。
ここで、内歯歯車13に対する伝動歯車12(遊星歯車12)及び補助歯車121の関係について説明する。太陽歯車11に対する伝動歯車12及び補助歯車121の関係については、上記内歯歯車13に対する関係と実質的に同じなので、説明を省略する。
図12は伝動歯車12、内歯歯車13及び補助歯車121の噛み合い部分を、伝動歯車12の回転中心線DL(図1参照)に沿う方向から見て、拡大して表している。図12(a)は、内歯歯車13に対する伝動歯車12との噛み合い構成を示している。図12(b)は、伝動歯車12と補助歯車121との構成を示しており、図11に示される構成と同じである。図12(c)は、内歯歯車13に対する伝動歯車12及び補助歯車121の噛み合い構成を示している。
図12(a)に示されるように、伝動歯車12の歯12aと内歯歯車13の歯13aとの間にはバックラッシδ(隙間δ)を有している。この歯12a,13a同士のバックラッシδを除去するために、図12(b)に示される補助歯車121が採用されている。複数の歯121cは、伝動歯車12の歯12aの歯面12cよりも、歯12aの歯厚方向へ突出している。つまり、伝動歯車12及び補助歯車121を、伝動歯車12の回転中心線DL(図1参照)に沿う方向から見たときに、伝動歯車12において隣接し合う2つの歯12a,12a間に、補助歯車121において隣接し合う2つの歯121c,121c(以下、「1対の歯121c,121c」という。)が位置している。
図10乃至図13に示されるように、伝動歯車12の歯12aの歯面12cに対する、補助歯車121の各歯121cの歯厚方向への突出量、つまり1対の歯121c,121cの突出量は、歯底121bから歯先121fへ向かうにつれて漸増している。
より詳しく述べると、1対の歯121c,121cの基端、つまり歯底121bと、内歯歯車13の歯13aの歯先との間の隙間(基端の隙間)は、歯12a,13a同士のバックラッシδよりも大きく設定されている。この基端の隙間が大きいほど、1対の歯121c,121cの弾性変位と予圧の調整幅が大きいので、設計の自由度が増すとともに、加工が容易である。
一方、図12(b)に示されるように、伝動歯車12の歯12aの歯面12cに対する、補助歯車121の各歯121cの歯厚方向への突出量は、αである。この突出量αは、伝動歯車12、内歯歯車13及び補助歯車121の単体の制作公差と、これらの歯車12,13,121の組立公差とを、勘案して設定される。つまり、前記各々の公差を吸収することが可能な大きさに設定される。
図12(c)に示されるように、補助歯車121における1対の歯121c,121cは、内歯歯車13のなかの、伝動歯車12の歯12aが位置している歯溝13bに入り込んで、内歯歯車13の隣接し合う2つの歯13a,13aの、互いに向かい合う両方の歯面13c,13cに対し予圧を付与して撓んだ状態で接する。
このように、前記基端の隙間と前記突出量αとを設定することによって、補助歯車121の各歯121cは、バネ特性を有して撓み変形し、内歯歯車13の各歯13aと伝動歯車12の各歯12aとの間のバックラッシδを、個別に独立して吸収することができる。この結果、歯12a,13a同士の打音の発生や作動音を、極力抑制することができる。さらには、歯12a,13a同士の良好な噛合い状態を維持することができる。さらには、歯12a,13a同士が衝当することなく、緩やかに当たって噛合うので、歯車機構100の耐久性を、より高めることができる。さらには、伝動歯車12と内歯歯車13とのいずれか一方が急反転した場合であっても、歯車12,13間の力の伝達に時間遅れの発生を抑制することができる。
図示してはいないが、補助歯車121の各歯121cは、厚さだけ、幅だけ、又は、厚さと幅の両方が、歯底121bから歯先121fへかけて減少している。このように、各歯121cの断面を適宜に設定することにより、片持ち曲がり梁状のバネ特性が最適となるように設定することができる。しかも、各歯121cの断面が歯底121bから歯先121fにかけて減少することによって、補助歯車121の軽量化を図ることができる。
図9に示されるように、補助歯車121の外径dbは、伝動歯車12の外径do以下であって且つ伝動歯車12のピッチ径dpよりも大きく設定されている(do≧db>dp)。このような径を設定した理由は、次の通りである。つまり、伝動歯車12の歯12aは、相手歯車11,13に対して力を伝達するものであるから、相当の強度を有している。
これに対し、補助歯車121の歯121cは、バックラッシδを調整するように弾性変形が可能に構成されており、相手歯車11,13に対して力を伝達することが可能な強度を有していない。このため、補助歯車121の歯121cは、過剰な力が加わることによって、塑性変形をすることがないように、上述の径の関係に設定されている。歯121cは、過剰な力が加わった場合に弾性変形して、伝動歯車12の歯12aの歯面12cに当たり、それ以上に変形しない。つまり、伝動歯車12の歯12aは、補助歯車121の歯121cに作用する最大力を規制するための、リミッタの役割を果たす。
実施例2によれば、上記実施例1と同様の作用効果を発揮することができる。
なお、本発明では、歯車機構10,100は、複数の相手歯車11,13に対して同時に噛み合うことが可能な少なくとも1つの伝動歯車12を含む構成であればよく、遊星歯車機構に限定されるものではない。例えば、歯車機構10,100は、差動歯車機構や不思議歯車機構(paradox gear reduction)であってもよい。不思議歯車機構には、不思議遊星歯車機構を含む。
本発明の歯車機構10,100は、遊星歯車機構、差動歯車機構、不思議歯車機構に採用するのに好適である。また、本発明の歯車機構10,100は、車両用電動パワーステアリング装置において、電動モータが発生したトルクをステアリング系に伝える機構として採用するのに好適である。
10…歯車機構(遊星歯車機構)、11…相手歯車(太陽歯車)、11a…歯、11b…歯溝、11c…歯面、12…伝動歯車(遊星歯車)、12a…歯、12b…伝動歯車の一方の面、12c…歯面、13…相手歯車(内歯歯車)、13a…歯、13b…歯溝、13c…歯面、14…キャリア、21…補助歯車、21b…歯底、21c…歯、21f…歯先、100…歯車機構(遊星歯車機構)、121…補助歯車、121b…歯底、121c…歯、121f…歯先、DL…伝動歯車の回転中心線、Ru…補助歯車の回転方向、α…補助歯車の各歯の歯厚方向への突出量、δ…バックラッシ。

Claims (4)

  1. 複数の相手歯車に対して同時に噛み合うことが可能な少なくとも1つの伝動歯車を含む歯車機構において、
    前記伝動歯車の一方の面のみに、前記複数の相手歯車に対する前記伝動歯車の各々のバックラッシを同時に除去するための補助歯車が設けられ、
    この補助歯車は、前記伝動歯車の回転中心線に対して同心に位置し、且つ前記伝動歯車に対して相対回転を規制され、前記複数の相手歯車に噛み合う複数の歯を有し、
    この複数の歯の歯数が、前記伝動歯車の歯数の2倍に設定されることにより、前記補助歯車は、前記複数の相手歯車に対して前記伝動歯車の2倍の歯が噛み合っており、
    前記補助歯車の複数の歯は、この補助歯車の回転方向にバネ特性を有して撓み変形が可能な、片持ち曲がり梁状に形成されるとともに、前記伝動歯車の歯の歯面よりも歯厚方向へ突出しており、前記各々の相手歯車において隣り合う2つの歯の、互いに向かい合う両方の歯面に対し、撓んで予圧を付与した状態で同時に接している、ことを特徴とする歯車機構。
  2. 前記補助歯車の各歯の前記歯厚方向への突出量は、歯底から歯先へ向かうにつれて漸増していることを特徴とする請求項1記載の歯車機構。
  3. 前記補助歯車の各歯は、厚さ、幅、又は、厚さと幅の両方が、歯底から歯先へかけて減少していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の歯車機構。
  4. 前記補助歯車は、樹脂材料によって構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の歯車機構。
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