以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係るラッチ錠Xは、例えば室内空間と室外空間とに連通する出入口を回転しながら開閉し得る開き戸に適用可能なものである。出入口は、例えばドア枠などの枠体によって仕切られる空間であり、本発明の「開口部」に相当する。
開き戸は、一方の側縁部を蝶番等でドア枠に回転可能に取り付けた吊元側として、出入口を閉成し得る閉じ位置と、出入口を開放した開き位置との間で回転しながら移動するものである。開き位置は、閉じ位置に対して所定角度となる任意の位置に設定することができる。また、開き位置は、建物の構造やユーザのニーズに応じて例えば出入口に対する開き戸の開き角度が略180度または略90度、或いはその他の適宜の角度となる位置に設定される。また、本実施形態に係るラッチ錠Xを取り付けた開き戸を所定の開き位置で開き戸キャッチャなどの機構を利用して固定可能な構成にするか否かは適宜選択できる。
本実施形態のラッチ錠Xは、開き戸のうち反吊元側の側縁部(本発明の「開放端」に相当)に設けられ、閉じ位置にある開き戸を所定の一方向に所定角度回転させて閉じ位置に到達した時点で、出入口の寸法を規定するドア枠に取り付けたストライクS(図14参照)に嵌合して開き戸の回転動作を停止させるものである。また、本実施形態のラッチ錠Xは、閉じ位置にある開き戸を閉め操作時とは逆方向に回転させる所定以上の操作力を付与することで、ストライクSとの嵌合状態が解除されるものである。
そして、本実施形態に係るラッチ錠Xは、図1に示すように、開き戸の幅方向に突没動作可能なラッチ爪11、及びラッチ爪1を開き戸の厚み方向と同一方向であるラッチ爪1の厚み方向Tに揺動可能に支持する支持部2を主体としてなるラッチ作動体ユニットUと、ラッチ作動体ユニットUを突出方向に付勢するユニット付勢部3と、ラッチ作動体ユニットUの所定以上の没入動作を規制可能なストッパ4と、内部空間55にラッチ作動体ユニットUの一部、ユニット付勢部3及びストッパ4を収容した状態で開き戸の開放端近傍に組み込まれるハウジング5とを備えたものである。
ラッチ作動体ユニットUは、ラッチ爪1及び支持部2に加えて、先端部を支持部2に固定した軸6と、軸6の基端側領域に固定され且つユニット付勢部3の先端が当たる当接部7とを備えている。円柱状をなす軸6の基端側領域における所定箇所には周回する溝を形成し、この溝にリング状の当接部7を嵌め込んでいる。本実施形態では、当接部7として例えばEリングを適用している。当接部7の外縁は軸6の外周面よりも軸6の径方向に突出した位置にあり、この当接部7にユニット付勢部3の先端部が当たるように設定している。なお、当接部7として、OリングやCリングを適用したり、軸6の外周面から軸6の径方向外側へ突出する鍔部(軸6と一体であってもよいし、別体であっても構わない)を適用してもよい。
本実施形態ではユニット付勢部3として、図1に示すように、単一のコイルバネを適用している。ユニット付勢部3を構成するコイルバネの先端側開口の内径は、軸6の外径より大きく且つ当接部7の外径より小さい値である。ユニット付勢部3は、先端側領域の内部空間に軸6の基端側領域を収容して先端をラッチ作動体ユニットUの当接部7に当てるとともに、基端をハウジング5の一部(具体的には後述するハウジング5の基端片53)に当てた状態でハウジング5内の所定箇所に配置される。
ストッパ4は、図1に示すように、軸6の外径よりも大きい内径を有するボス部41と、ボス部41に保持されたストッパ本体42とを備えたものである。ボス部41は、軸6のうち当接部7を取り付けた位置よりも先端側(突出端側)に配置される。また、ストッパ本体42は、ボス部41に直接保持されるベース421と、ベース421の両端部からラッチ爪1の先端に向かって延出し且つボス部41よりも優先してラッチ作動体ユニットUの支持部2に当接し得る延出部422と、ハウジング5に形成した孔に差込可能な差込部423とを一体に備えたものである。このようなストッパ4は、ラッチ作動体ユニットUが図1に示す位置と図2に示す位置の間で突没移動した場合であっても、その突没移動に連動することなく、ハウジング5内の所定箇所に留まり、ラッチ作動体ユニットUが所定距離没入した時点で、ストッパ本体42の延出部422が支持部2の基端面21に当接またか近接することにより、ラッチ作動体ユニットのそれ以上の没入動作を規制することができる。
支持部2は、図1、図3乃至図6に示すように、概略直方体形状をなすブロック体であり、ストッパ4の先端部(具体的にはストッパ本体42の延出部422の先端部)が当たり得る基端面21を、ラッチ作動体ユニットUの突没方向Wに直交する平坦な面に設定する一方、ラッチ爪1が当たり得る先端面22を、基端面21に平行な平坦面22aと、平坦面22aに連続し且つ平坦面22aに対して所定角度傾斜させた支持傾斜面22bの2つの領域に分けて設定している。支持傾斜面22bは、平坦面22aから離間するにしたがって漸次基端面21に近付く傾斜に設定されている。また、支持部2には、先端面22に開口する凹状の支持受部23を形成している。本実施形態では、金属素材からなる一体成形品の支持部2を適用している。
ラッチ爪1は、図1、図3、図7乃至図9に示すように、支持部2の先端面22に当接し得る基端面11と、開き位置にある開き戸を閉じ位置に向かって移動させた際にストライクSの一部に当たる閉じ側傾斜面12と、閉じ位置にある開き戸を開き位置に向かって移動させた際にストライクSの一部に当たる開き側傾斜面13とを有する平面視略三角形状をなすものである。本実施形態では、金属素材からなる一体成形品のラッチ爪1を適用している。
ラッチ爪1の基端面11は、支持部2の先端面22のうち平坦面22aと平行な面であり、突没方向Wに直交する面である。基端面11の厚み寸法(突没方向Wに直交する方向である厚み方向T、つまり閉じ側傾斜面12と開き側傾斜面13が対峙し得る方向)の寸法は、支持部2の厚み寸法と略同じである。
閉じ側傾斜面12は、基端面11との境界部分である基端から先端に向かって緩やかな円弧を描きながら漸次開き側傾斜面13の先端に向かって傾斜する面である。本実施形態では、図7に示すように、閉じ側傾斜面12の基端と先端を結ぶ直線L1と、突没方向Wに平行な線であり且つ閉じ側傾斜面12の基端に交差する第1基準線LS1との内角θ1を30度乃至45度のうち適宜の角度(図示例では36度)に設定している。
開き側傾斜面13は、基端面11に近い位置に設定した基端から先端に向かって漸次閉じ側傾斜面12の先端に向かって傾斜する面である。本実施形態では、開き側傾斜面13の基端と基端面11との間に、基端面11に対して垂直または略垂直な面、言い換えれば突没方向Wに平行または略平行な面(以下では「垂直面14」と称す)を形成している。本実施形態のラッチ爪1は、開き側傾斜面13の基端と先端を結ぶ直線L2と、突没方向Wに平行な線であり且つ開き側傾斜面13の基端に交差する第2基準線LS2との内角θ2を10度乃至35度のうち適宜の角度(図示例では18度)に設定している。
すなわち、本実施形態のラッチ爪1では、第1基準線LS1に対する閉じ側傾斜面12の内角θ1を、第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2よりも大きく設定している。ここで、第1基準線LS1に対する閉じ側傾斜面12の内角θ1、及び第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2は、その値(角度)が90度に近いほど、突没方向Wに直交する線に平行な基端面11に対する立ち上がり角度が小さくなり、基端面11に対して緩やかな傾斜面になる一方で、その値(角度)が小さくなるほど、突没方向Wに直交する線に平行な基端面11に対する立ち上がり角度が大きくなり、基端面11に対して急な傾斜面になる。
したがって、本実施形態のラッチ爪1は、閉じ側傾斜面12を開き側傾斜面13よりも基端面11に対して緩やかな面に設定した(換言すれば、開き側傾斜面13を閉じ側傾斜面12よりも基端面11に対して急な面に設定した)ものである。
このような傾斜角度に設定した閉じ側傾斜面12及び開き側傾斜面13の先端同士が交わる点(以下では、「ラッチ先端点P」と称す)は、図7に示すように、ラッチ爪1の厚み方向Tの中心TS(以下では、「ラッチ厚中心TS」と称す)よりも開き側傾斜面13側に寄った(偏位した)位置になる。また、本実施形態のラッチ爪1は、図3及び図8に示すように、高さ方向Hの中央部分に、樹脂製の緩衝用ラッチ爪Jを取り付けるための緩衝用ラッチ爪取付部15を形成している。
緩衝用ラッチ爪Jは、図10に示すように、緩衝用ラッチ爪取付部15に嵌め込んで取り付けた状態で、平面視においてラッチ爪1の閉じ側傾斜面12、開き側傾斜面13にそれぞれ略一致する閉じ側傾斜面J2、開き側傾斜面J3を備えた樹脂製の一体成形品である。具体的に、緩衝用ラッチ爪Jは、ラッチ爪1の平面視外縁形状に略一致する外縁形状を有する中空状のものであり、内縁形状をラッチ爪1の緩衝用ラッチ爪取付部15に嵌合可能な形状に設定し、ラッチ爪1の基端面11に相当する部分に形成した開口部J1を広げるようにして、ラッチ爪1の先端側から緩衝用ラッチ爪取付部15に取り付けることができる。本実施形態では、緩衝用ラッチ爪Jの閉じ側傾斜面J2、開き側傾斜面J3がラッチ爪1の閉じ側傾斜面12、開き側傾斜面13よりも僅かにラッチ爪1の厚み方向Tに出っ張るようにし、閉じ操作時には、緩衝用ラッチ爪Jの閉じ側傾斜面J2がラッチ爪1の閉じ側傾斜面12よりも優先してストライクSの一部に当たり、開き操作時には、緩衝用ラッチ爪Jの開き側傾斜面J3がラッチ爪1の開き側傾斜面13よりも優先してストライクSの一部に当たるように構成している。これにより、開き戸の開閉時に金属製のラッチ爪1のみがストライクSの一部に当たる場合と比較して、衝撃音を和らげることができる。
また、本実施形態のラッチ爪1は、図3、図7及び図8等に示すように、基端面11から支持部2側に向かって突出し且つ支持部2に形成した支持受部23に挿入可能な挿入部16を形成している。本実施形態では、支持受部23及び挿入部16をそれぞれ高さ方向Hに複数(図示例では2つ)配置している。そして、ラッチ爪1の挿入部16を支持部2の支持受部23に挿入した状態で、支持受部23を介して支持部2の高さ方向Hに貫通する回転軸挿通孔24と、挿入部16に形成した回転軸挿通孔17が相互に連通し、これら回転軸挿通孔24,回転軸挿通孔17に共通の回転軸Kを圧入することによって、ラッチ爪1及び支持部2を一体的に組み付けることができる。
ここで、図11に示すように、ラッチ爪1の基端面11を支持部2の先端面22のうち平坦面22aに当接させた状態で形成されるラッチ爪1の基端面11と支持部2の先端面22との隙間(具体的には、ラッチ爪1の基端面11と支持部2の支持傾斜面22bとの隙間)を介して突没方向Wに対面するラッチ爪1の基端面11と支持部2の先端面22との間に、第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2が小さくなる方向へラッチ爪1を付勢するラッチ爪付勢部8を配置している。
本実施形態では、ラッチ爪付勢部8として圧縮バネを適用している。ラッチ爪付勢部8は、ラッチ爪1の基端面11に形成したバネ保持用凹部11s(図8及び図9参照)に先端部を挿入し、支持部2の先端面22のうち支持傾斜面22bに形成したバネ保持用凹部22s(図3乃至図6参照)に基端部を挿入した圧縮状態にある。本実施形態では、ラッチ爪1と支持部2の間に複数(図示例では2つ)のラッチ爪付勢部8をラッチ錠Xの高さ方向Hに異なる位置に配置している。
支持部2に一体的に組み付けたラッチ爪1は、ラッチ爪付勢部8の付勢力によって第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2が小さくなる方向へ付勢されているため、図11に示す姿勢、すなわち、基端面11を支持部2の先端面22のうち平坦面22aに圧接した姿勢(以下では「通常姿勢」と称す)をとり、それ以上開き側傾斜面13の内角θ2(第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2)が小さくなることはない。本実施形態に係るラッチ錠Xでは、通常姿勢にあるラッチ爪1の基端面11と支持部2の先端面22における支持傾斜面22bとの内角θ3が10度乃至15度のうち適宜の角度(図示例では12度)となるように設定している。そして、通常姿勢にあるラッチ爪1の開き側傾斜面13に所定以上の外力が作用した場合に、ラッチ爪1は、ラッチ爪付勢部8の付勢力に抗して前記回転軸Kを中心に、ラッチ爪1の基端面11を支持部2の先端面22のうち支持傾斜面22bに近付ける方向、すなわち通常姿勢時に形成されるラッチ爪1と支持部2の支持傾斜面22bの間に形成される隙間を無くす方向へ揺動(傾動)する。ここで、本実施形態のラッチ錠Xは、支持部2に対するラッチ爪1の揺動中心、つまり、支持部2に対するラッチ爪1の枢支点Kをラッチ厚中心TSよりも開き側傾斜面13側に偏位させた位置に設定している。
また、本実施形態では、図3及び図5に示すように、支持部2の先端面22のうち平坦面22aに形成した窪みに弾性部材G(例えばゴム)を圧入し、この弾性部材Gの先端部に圧力が作用していない状態で弾性部材Gの先端部が支持部2の平坦面22aよりも若干ラッチ爪1側に突出するように構成している。したがって、ラッチ爪1が、その基端面11と支持部2の先端面22のうち支持傾斜面22bの間に形成される隙間を無くす方向へ揺動した姿勢(以下では「揺動姿勢」と称す)から通常姿勢に戻った際に、基端面11が弾性部材Gの先端部に当たることで、基端面11が金属製の支持部2の平坦面22aにのみ直接当たる態様と比較して衝撃音を低減することができる。
これと同様の目的で、本実施形態では、ラッチ爪1の基端面11のうち、揺動姿勢時に支持部2の先端面22のうち支持傾斜面22bに接触し得る面の所定箇所に窪みを形成し、その窪みに例えばゴム等の弾性部材(図示省略)を圧入してもよい。この場合、ラッチ爪1が、通常姿勢から揺動姿勢に姿勢変更した際に、基端面11に設けた弾性部材が支持部2の支持傾斜面22bに当たることで、基端面11が金属製の支持部2の平坦面22aにのみ直接当たる態様と比較して衝撃音を低減することができる。
このような構成を有するラッチ作動体ユニットUの一部を内部空間55に収容するハウジング5は、図1に示すように、開き戸の開放端の端面に略一致させた状態で開き戸に固定可能な開き戸固定片51に、ラッチ作動体ユニットUの突没動作の許容するラッチ爪挿通開口部52を形成したものである。ハウジング5のうち、開き戸固定片51に対向する基端片53が、ユニット付勢部3の基端部を当てた状態でユニット付勢部3を支持するユニット付勢部保持片として機能する。ハウジング5は、開き戸固定片51及び基端片53(ユニット付勢部保持片)を有するハウジング本体54と、ハウジング本体54に固定可能なカバー部(図示省略)とを備え、これらハウジング本体54及びカバー部によって外部空間と仕切られる内部空間55に、ラッチ作動体ユニットUの一部、具体的には軸6、支持部2の全体及びラッチ爪1の一部を収容可能に構成している。
そして、ハウジング5の内部空間55においてハウジング5の基端片53と、軸6の基端側領域に固定した当接部7との間に配置したユニット付勢部3の付勢力によってラッチ作動体ユニットUは常時ハウジング本体54から突出する方向に付勢され、ラッチ作動体ユニットUのうち少なくともラッチ爪1がラッチ爪挿通開口部52を介してハウジング5の外部に露出している(図1参照)。この状態を突出状態とすると、突出状態にあるラッチ作動体ユニットUに対して没入方向へ移動させる所定以上の外力が付与された場合に、ラッチ作動体ユニットUは、ユニット付勢部3の付勢力に抗して没入方向へ移動(後退)する。その結果、ラッチ爪1の基端側領域がラッチ爪挿通開口部52を介してハウジング5の内部空間55に収容され、ラッチ爪1の先端側領域のみが僅かにハウジング5の外部に露出した状態(没入状態)になる(図2参照)。なお、没入状態では、ラッチ爪1全体がハウジング5の内部空間55に収容されるように設定することも可能である。
本実施形態のラッチ錠Xは、ストッパ本体42の差込部423をハウジング5に形成した孔に差し込むことでストッパ4全体を、ラッチ作動体ユニットUの突没移動に連動することなくハウジング5内における所定箇所に固定することができる。
また、本実施形態では、突出状態にあるラッチ作動体ユニットUが没入状態に移行することを規制するロック機構9をハウジング5内に設けている。ロック機構9は、図12に示すように、突出状態にあるラッチ作動体ユニットUのうち、支持部2の基端面21に当接または近接するロック位置と、図1及び図2に示すように、ラッチ作動体ユニットUが突出状態及び没入状態の何れの状態であってこのラッチ作動体ユニットUに接触し得ないロック解除位置との間で移動するロック杆91を主体としてなり、ロック杆91をロック解除位置に向かって付勢するロック杆付勢部92を備えている。本実施形態では、ロック杆91に形成した操作孔93に挿入して嵌合している例えば操作キーなどの操作部(図示省略)に適宜の操作力を付与することで、ロック杆91をロック位置とロック解除位置との間で移動できるように構成している。
次に、このような構成を有するラッチ錠Xを開放端に取り付けた開き戸の開閉操作に伴うラッチ錠Xの作動及び作用について図1、図2、図11乃至図16等を参照しながら説明する。なお、図11、図13乃至図16は、開き戸の開閉操作に伴うラッチ錠Xの動作変化をストライクSとの関係で模式的に示す図であり、一部を省略したり、単純化して示している。特に、ラッチ爪1に樹脂製の緩衝用ラッチ爪Jを取り付けた本実施形態のラッチ錠Xでは、閉じ操作時には、緩衝用ラッチ爪Jの閉じ側傾斜面J2がラッチ爪1の閉じ側傾斜面12よりも優先してストライクSの一部に当たり、開き操作時には、緩衝用ラッチ爪Jの開き側傾斜面J3がラッチ爪1の開き側傾斜面13よりも優先してストライクSの一部に当たるように構成しているが、緩衝用ラッチ爪Jの閉じ側傾斜面J2、開き側傾斜面J3は、平面視においてラッチ爪1の閉じ側傾斜面12、開き側傾斜面13にそれぞれ略一致するため、以下では、便宜上、閉じ操作時にラッチ爪1の閉じ側傾斜面12が当たり、開き操作時にラッチ爪1の開き側傾斜面13が当たる構成として説明する。なお、本実施形態における「ラッチ爪1」を「ラッチ本体」とし、このラッチ本体に緩衝用ラッチ爪を取り付けたものを本発明の「ラッチ爪」として捉えた場合、緩衝用ラッチ爪Jの閉じ側傾斜面J2、開き側傾斜面J3が「ラッチ爪」の「閉じ側傾斜面」、「開き側傾斜面」であると捉えることも可能である。
本実施形態に係るラッチ錠Xは、反吊元側の側縁部の所定の高さ位置において開き戸の幅方向に突没動作可能なラッチ作動体ユニットUを、図1及び図11に示す突出状態と、図2及び図13に示す没入状態(退避状態)との間で変化させ、図14に示すように、ラッチ爪1がストライクSの嵌合凹部S1に係合することによって開き戸を閉じ位置に保持するものである。
このラッチ錠Xは、閉じ位置にない開き戸を閉成方向に移動させた場合に、開き戸が閉じ位置に到達する直前で、それまで突出状態にあるラッチ爪1がドア枠の反吊元側の側縁部に設けたストライクSの一部に当たることで一時的に後退して没入状態となり(図13参照)、開き戸が閉じ位置に到達した時点でストライクSとの干渉が解消されたラッチ爪1が突出状態となってストライクSの嵌合凹部S1に嵌合して係合する(図14参照)ことにより、開き戸を閉じ位置に保持することができる。
具体的には、閉じ位置にない開き戸を閉成方向に移動した場合、閉じ位置に到達する直前で、それまでユニット付勢部3の付勢力によって突出状態にあるラッチ作動体ユニットUのうち、ラッチ爪1の閉じ側傾斜面12がストライクSの一部に当たる。ここで、ラッチ爪1は、図11に示すように、ラッチ爪付勢部8の付勢力によって第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2が小さくなる方向へ付勢され、基端面11を支持部2の先端面22のうち平坦面22aに圧接した通常姿勢をとり、それ以上開き側傾斜面13の内角θ2(第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2)が小さくならない姿勢にある。
この通常姿勢にあるラッチ爪1の閉じ側傾斜面12がストライクSの一部に当たり、開き戸の閉成方向への移動に伴って、閉じ側傾斜面12に対するストライクSの当接位置が漸次ラッチ爪1の先端に向かって偏位するとともに、ユニット付勢部3の付勢力に抗してラッチ作動体ユニットUが没入方向へ移動(退避)する。ラッチ作動体ユニットUの没入方向への移動量が増加するにしたがって、ラッチ作動体ユニットUの軸6に固定した当接部7に先端部を当てているユニット付勢部3(コイルバネ)の圧縮変形量も増加する。
そして、図13に示すように、ラッチ爪1に対するストライクSの当接位置が閉じ側傾斜面12と開き側傾斜面13の交点であるラッチ先端点Pに到達する直前からラッチ先端点Pに到達する時点にかけて、ラッチ作動体ユニットUの没入方向への移動量(すなわちユニット付勢部3の圧縮変形量)は最大になり、ラッチ作動体ユニットUは没入状態になる(図2参照)。引き続いて、ラッチ爪1に対するストライクSの当接位置がラッチ先端点Pを通過した時点で、ラッチ爪1の閉じ側傾斜面12に対するストライクSの当接状態が解除され、図14に示すように、ユニット付勢部3の弾性復帰力(復元力)によって、ラッチ作動体ユニットUが突出方向へ移動し、開き戸が閉じ位置に到達した時点でラッチ作動体ユニットUは突出状態になり、ラッチ爪1がストライクSの嵌合凹部S1に嵌合する。また、図2に示すように、ラッチ作動体ユニットUが没入状態になった時点で、ハウジング5内に固定したストッパ4の先端部(ストッパ本体42の延出部422の先端部)が支持部2の基端面21に当接または近接することで、ラッチ作動体ユニットUが過度に没入方向へ移動(退避)する事態を回避することができる。
本実施形態のラッチ錠Xでは、ラッチ先端点Pをラッチ厚中心TSよりも開き側傾斜面13に偏位させて、閉じ側傾斜面12を開き側傾斜面13よりも基端面11に対して緩やかな勾配に設定しているため、閉じ操作時にラッチ爪1が閉じ側傾斜面12をストライクSの一部に当てながら突出状態から没入状態に変化するまでの摩擦抵抗を、第2基準線LS2に対する内角θ2を45度未満に設定した傾斜面をストライクSに一部に当てながら突出状態から没入状態に変更する態様と比較して低減することができ、軽い操作力でラッチ錠Xのラッチ爪1をストライクSの嵌合凹部S1に嵌合させて開き戸を閉じ位置に保持することができる。特に、本実施形態では、閉じ側傾斜面12を緩やかな円弧状に設定することで、閉じ操作時のさらなる操作力の軽減化を実現している。
また、本実施形態のラッチ錠Xでは、図7に示すように、第1基準線LS1に対するラッチ爪1の閉じ側傾斜面12の内角θ1を45度以下に設定する一方で、第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2を第1基準線LS1に対する閉じ側傾斜面12の内角θ1よりも10度以下となる傾斜角に設定することによって、例えば、閉じ操作時の操作力の軽減化を図るべく第1基準線LS1に対する閉じ側傾斜面12の内角θ1を45度以下に設定するとともに、第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2を第1基準線LS1に対する閉じ側傾斜面12の内角θ1と同じ角度に設定した態様と比較して、閉じ側傾斜面12の基端から先端までの距離を長くすることができ、ラッチ爪1の基端面11からラッチ先端点Pまでの寸法、換言すれば突出方向Wに沿ったラッチ爪1の寸法を大きくすることができる。その結果、ラッチ爪1がストライクSの嵌合凹部S1に嵌合した状態において、嵌合凹部S1内へのラッチ爪1の進入量(進入深さ)を大きく(深く)することができ、良好な嵌合状態を維持することが可能である。このような形状をなすラッチ爪1を備えたラッチ錠Xであれば、実際の使用場面において開き戸とドア枠との隙間が設計時に想定した値以上に大きい場合であっても、嵌合凹部S1に対するラッチ爪1の進入量が小さく(嵌合深さが浅く)なってしまい、風などの意図しない外力によって嵌合状態が解除され易いという不具合を防止・抑制することが可能である。
加えて、本実施形態のラッチ錠Xでは、上述したように第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2を第1基準線LS1に対する閉じ側傾斜面12の内角θ1よりも小さい角度(10度乃至35度)に設定しているため、嵌合凹部S1の平面形状が矩形状である汎用のストライクSに対してラッチ爪1が嵌合している状態で開き戸を開成方向へ移動させる風などの外力が開き戸に作用した場合であっても、嵌合凹部S1のうち第2基準線と平行または略平行な内向き面に対する閉じ側傾斜面12の内角が小さいことで嵌合状態は解除され難く、嵌合状態を維持することができる。
さらに、本実施形態のラッチ錠Xは、ラッチ爪1のうち開き側傾斜面13の基端と基端面11との間に、第2基準線LS2に対する内角が、開き側傾斜面13の内角θ2よりも小さい面(本実施形態では第2基準線LS2に略平行な垂直面14)を形成し、嵌合状態でこの面(垂直面14)の少なくとも一部又はこの面(垂直面14)と開き側傾斜面13の境界領域が嵌合凹部S1の開口縁部S2((嵌合凹部S1のうち第2基準線LS2と平行または略平行な内向き面の基端部)に当接又は近接するように構成しているため、開き戸を開成方向へ移動させる風などの外力が開き戸に作用した場合にも良好な嵌合状態を維持することができる。なお、本実施形態では、ラッチ爪1のうち開き側傾斜面13の基端と基端面11との間に形成する面として、第2基準線LS2に略平行な垂直面14を形成した構成を例示したが、第2基準線LS2に対する内角が開き側傾斜面13の内角θ2よりも小さい面であればよく、第2基準線LS2に略平行な面でなくてもよい。
また、本実施形態のラッチ錠Xにおいて、ラッチ爪1をストライクSに嵌合させた状態でロック機構9のロック杆91をロック解除位置(図1参照)からロック位置(図12)に移動させることで、突出状態にあるラッチ作動体ユニットUの没入動作を規制したロック状態にすることができる。
一方、ラッチ錠Xによって閉じ位置に保持されている開き戸を開き位置に移動させる操作は、ロック機構9のロック杆91をロック位置からロック解除位置に移動させた状態で、開き戸の閉成方向側にいる使用者が開き戸を開成方向に押す操作力を付与したり、開き戸の開成方向側にいる使用者が開き戸を閉成方向に引く操作力を付与することで行うことができる。
具体的には、ラッチ爪1がストライクSの嵌合凹部S1に嵌合している状態で、開き戸を開成方向へ移動させる所定以上の操作力が付与されると、図15に示すように、ユニット付勢部3の付勢力によって突出状態にあるラッチ作動体ユニットUのうち、ラッチ爪1の開き側傾斜面13の基端又は基端近傍領域(開き側傾斜面13と垂直面14の境界部分を含む)が嵌合凹部S1の開口縁部S2に当たる。そして、ラッチ爪付勢部8の付勢力よりも開き側傾斜面13の基端又は基端近傍領域に作用する圧力が大きいことで、ラッチ爪1は、ラッチ爪付勢部8の付勢力に抗して枢支点K(回転軸K)を中心に、ラッチ爪1の基端面11を支持部2の先端面22のうち支持傾斜面22bに近付ける方向、すなわち通常姿勢時に形成されるラッチ爪1と支持部2の先端面22のうち支持傾斜面22bの間に形成される隙間を無くす方向へ揺動しながら、開き戸の開成方向への移動に伴って開き側傾斜面13に対するストライクSの当接位置が漸次ラッチ爪1の先端に向かって偏位し、ユニット付勢部3の付勢力に抗してラッチ作動体ユニットUが没入方向へ移動する。ラッチ作動体ユニットUの没入方向への移動量が増加するにしたがって、ラッチ作動体ユニットUの軸6に固定した当接部7に先端部を当てているユニット付勢部3(コイルバネ)の圧縮変形量も増加する。
そして、図16に示すように、ラッチ爪1に対するストライクSの当接位置が開き側傾斜面13と閉じ側傾斜面12の交点であるラッチ先端点Pに到達する直前からラッチ先端点Pに到達する時点にかけて、ラッチ作動体ユニットUの没入方向への移動量(すなわちユニット付勢部3の圧縮変形量)は最大になり、ラッチ作動体ユニットUは没入状態になるとともに、ラッチ爪1の揺動角度(首振り角度)が最大になる。ラッチ爪1に対するストライクSの当接位置がラッチ先端点Pを通過した時点で、ラッチ爪1の開き側傾斜面13に対するストライクSの当接状態が解除され、ユニット付勢部3の弾性復帰力(復元力)によって、ラッチ作動体ユニットUは突出方向へ移動して突出状態になり、ストライクSの嵌合凹部S1に対するラッチ爪1の嵌合状態が解除される。
また、本実施形態に係るラッチ錠Xでは、ラッチ爪1の開き側傾斜面13に対するストライクSの当接状態が解除されることで、ラッチ爪付勢部8の弾性復帰力(復元力)によってラッチ爪1は、枢支点K(回転軸K)を中心に、ラッチ爪1の基端面11が支持部2の先端面22のうち平坦面22aに当接する方向へ移動し、揺動姿勢から通常姿勢に戻る。そして、ストライクSに対するラッチ爪1の嵌合状態が解除され、開成方向へ移動自在な状態になった開き戸を所定の開き位置まで回転移動させることができ、例えば開き戸キャッチャ等の機構を利用して開き戸を所定の開き位置に保持することができる。
このように、本実施形態に係るラッチ錠Xは、第1基準線LS1に対する閉じ側傾斜面12の内角θ1よりも第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2を小さく設定することで、ストライクSに嵌合しているラッチ爪1が風などの不意な外力によってストライクSから抜け外れる不具合を防止・抑制することができるとともに、嵌合状態にあるラッチ爪1に対して、開き側傾斜面13が嵌合凹部S1の開口縁部S2に当たる方向へ移動させる所定以上の操作力を付与することで、ラッチ爪1が、第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2を大きくする方向へ傾動する。その結果、嵌合凹部S1のうち第2基準線LS2に平行または略平行な内向き面に対する開き側傾斜面13も通常姿勢時よりも緩やかな傾斜面になり、開き操作時にラッチ爪1が開き側傾斜面13をストライクSの一部に当てながら突出状態から没入状態に変更するまでの摩擦抵抗を、通常姿勢時の傾斜角度を維持した開き側傾斜面13をストライクSの一部に当てながら突出状態から没入状態に変更する態様と比較して低減することができ、ストライクSに対するラッチ爪1の嵌合状態を解除して開き戸を開き位置に向かって回転移動させることができる。
特に、本実施形態では、通常姿勢時における第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2から最大5度ほど開き側傾斜面13が第2基準線LS2に対して大きくなるようにラッチ爪1を首振り動作(揺動)可能に構成しているため、嵌合状態にあるラッチ爪1に対して所定以上の力を与えることで、ラッチ爪1を嵌合凹部S1からスムーズに逃がして嵌合状態を解除することができる。
さらに、本実施形態のラッチ錠Xは、ストライクSに対するラッチ爪1の嵌合状態を解除して開き戸を開き方向へ移動させる場合に、開き戸を開き方向へ移動させる操作力とは別に例えばノブやレバー等の操作部を所定方向に回転させてラッチ爪を嵌合凹部内から完全に退避させる操作が要求されたり、ラッチ爪を突没方向に沿った軸回りに反転させる機構が不要であり、操作性の向上及び構造の簡素化を実現することができる。そして、本実施形態のラッチ錠Xを装着した開き戸に、開き操作時や閉じ操作時にユーザが把持する開き戸ハンドルや取っ手等の把持部を取り付ける場合、この把持部を取り付ける位置は、ラッチ錠Xの装着位置近傍に限定されることはなく、開き戸の設置箇所やユーザのニーズなどに応じて自由に設定することができる。さらに、把持部を取り付けない開き戸であっても、この開き戸を閉じ方向または開き方向に押したり、引くことでラッチ錠Xによって開き戸を閉じ位置に保持したり、閉じ位置にある開き戸を開けることが可能である。
また、本実施形態のラッチ錠Xは、ラッチ爪1を揺動可能に支持する支持部2を備え、支持部2に対するラッチ爪1の枢支点Kをラッチ厚中心TSよりも開き側傾斜面13側に偏位させた位置に設定しているため、ラッチ爪1の厚み寸法および首振り動作によるラッチ爪1の揺動範囲を開き戸の厚み寸法よりも小さくなければならないという設計条件下において、ラッチ爪1が第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2を大きくする方向へ揺動させる首振り動作を限られた小さなスペース内で効率良く行うことができる。
加えて、本実施形態のラッチ錠Xは、支持部2の先端面22のうちラッチ爪1の閉じ側傾斜面12側の領域(支持傾斜面22b)とラッチ爪1の基端部(基端面11)との間にラッチ爪1の揺動を許容する隙間を形成し、この隙間を介して対面する支持部2の支持傾斜面22bとラッチ爪1の基端面11との間に、第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2が小さくなる方向へラッチ爪1を付勢するラッチ爪付勢部8を配置しているため、簡単な構造でありながら、開き側傾斜面13に外力が作用した場合、その外力がラッチ爪付勢部8の付勢力よりも小さければラッチ爪1の首振り動作を規制してラッチ爪1と支持部2との間に形成した上述の隙間を確保することができる(通常姿勢を維持することができる)一方、ラッチ爪付勢部8の付勢力よりも大きい外力が開き側傾斜面13に付与された場合に、上述の隙間を無くす方向へラッチ爪1が揺動し、外力の大きさに応じてラッチ爪1の揺動角度が大きくなることで第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2を通常姿勢時よりも徐々に大きくすることができる。そして、本実施形態のラッチ錠Xでは、ラッチ爪1が隙間を無くす方向へ揺動した状態で開き側傾斜面13に対する外力が付与されなくなった時点やその外力がラッチ爪付勢部8の付勢力よりも小さくなった時点で、ラッチ爪1はラッチ爪付勢部8の付勢力によって第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2が小さくなる方向へ揺動し、前記隙間を確保した通常姿勢に自動的に復帰する構成を実現できる。
また、第2基準線LS2に対する開き側傾斜面13の内角θ2が通常姿勢時よりも大きい揺動姿勢から通常姿勢に戻る際に、ラッチ爪1の基端面11が支持部2の先端面22のうち平坦面22aに当たることで衝撃音が発生し得るが、本実施形態のラッチ錠Xは、支持部2の平坦面22aに弾性部材Gを設け、揺動姿勢から通常姿勢に復帰した際に、弾性部材Gがラッチ爪1の基端面11と支持部2の平坦面22aとの間に介在するように構成しているため、弾性部材Gのクッション性で衝撃音を緩和したり、金属製パーツ同士が衝撃する際の不快音の発生事態を防止・抑制することができる。なお、上述の実施形態では、支持部2の平坦面22aに弾性部材Gを配置した態様を例示したが、ラッチ爪1の基端面11にうち支持部2の平坦面22aに対面する位置に弾性部材Gを配置することで上記の同じ効果を得ることができる。また、ラッチ爪1の基端面11又は支持部2の平坦面22aの何れか一方の面の一部又は一箇所に弾性部材Gを配置した態様に代えて、ラッチ爪1の基端面11又は支持部2の平坦面22aの少なくとも何れか一方の面全体又は複数箇所に弾性部材Gを配置した構成を採用することもできる。
このように、本実施形態に係るラッチ錠Xは、開き戸の閉じ操作時にストライクSの一部に当たるラッチ爪1の閉じ側傾斜面12を開き側傾斜面13よりも緩やかな勾配に設定するとともに、開き戸の開き操作時にストライクSの開口縁部S2に当たる開き側傾斜面13の勾配が閉じ操作時や嵌合時よりも緩くなるようにラッチ爪1を傾動可能に構成しているため、上述した種々の作用効果を得ることができる。そして、このようなラッチ錠Xを取り付けた開き戸は、荷物で両手がふさがっている場合や、ラッチ爪を作動させるノブ等の操作部への操作が困難な人にとっても閉じ位置からスムーズに開けることができるとともに、ラッチ錠Xによって閉じ位置に保持された状態では風などで容易に開き難いという優れた利点を有する。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、第1基準線に対する閉じ側傾斜面の内角や第2基準線に対する開き側傾斜面の内角の具体的な数値は、上述の実施形態で明示した数値に限定されることはなく、第1基準線に対する閉じ側傾斜面の内角が第2基準線に対する開き側傾斜面の内角よりも大きいという条件を満たせば、どのような角度に設定してもよい。特に、第2基準線に対する開き側傾斜面の内角を0度に近い値(角度)に設定した場合であっても、その値よりも第1基準線に対する閉じ側傾斜面の内角が大きければ本発明に包含される構成となり、このような構成であっても、開き操作時に第2基準線に対する開き側傾斜面の内角が大きくなる方向へ揺動することで、ストライクに対するラッチ爪の嵌合状態を解除することが可能である。
また、上述の実施形態では、閉じ側傾斜面を緩やかな円弧状に設定し、開き側傾斜面を直線状に設定した態様を例示したが、閉じ側傾斜面を直線状に設定したり、開き側傾斜面を緩やかな円弧状に設定しても構わない。
また、ラッチ爪を通常姿勢と揺動姿勢(首振り姿勢)との間で揺動可能に支持する支持部を備えたラッチ錠である場合、ラッチ爪の揺動中心(支持部に対するラッチ爪の枢支点)を、ラッチ厚中心と一致または略一致する位置に設定したり、ラッチ厚中心よりも閉じ側傾斜面側に偏位した位置に設定してもよい。
ラッチ爪の揺動可能な角度(揺動範囲)もまた任意に変更することが可能である。
また、緩衝用ラッチ爪を取付不要または取付不能なラッチ爪であっても構わない。
さらにはまた、上述の実施形態では、ラッチ爪のうち開き側傾斜面の基端と基端面との間に、第2基準線に対する内角が開き側傾斜面の内角よりも小さい面(一例として垂直面)を形成した態様を例示したが、開き側傾斜面の基端が基端面と直接連続している構成を採用することもできる。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。