JP2014076589A - 繊維ボード - Google Patents

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Abstract

【課題】強度、寸法安定性及び透湿性が良好であり、軽量化が可能な繊維ボードを提供する。
【解決手段】繊維を粒状接着剤で接着して得られる繊維ボード1である。繊維ボード1は、繊維が、主構成繊維2と、微細繊維3との混合物で構成され、主構成繊維2と微細繊維3との混合比が、重量比で50:50〜90:10である。主構成繊維2は、植物繊維で形成される繊維であり、平均繊維長5mm以上100mm以下、平均繊維径70μm以上400μm以下の繊維である。微細繊維3は、麻系天然繊維、ヤシ繊維及び農産廃棄物繊維から選ばれる一種以上の植物繊維を平均繊維径20μm以上70μm未満の範囲に解繊した繊維である。
【選択図】図1

Description

本発明は、繊維ボードに関する。
パーティクルボード(PB)、中密度繊維板(MDF)などの木質系ボードは、建築用材料として幅広い分野で使用されている。これらは、製材時の残廃材や製紙未利用低質チップ、建築解体材などから得られる木材小片、木質繊維を熱硬化性樹脂などの接着剤で接着して板状に成形して形成されたものである。このため木質資源の有効活用といった観点から環境に優しい材料である。また、上記した木質系ボードは、木材を製材して得られる挽き板に比べて品質が安定している、異方性が少なく加工性が良好である、などの特徴を有している。
しかしながら、上記した木質系ボードは、構成要素として木材小片や木質繊維などを用いているため、一般的には挽き板に比べて強度が十分でなく、吸水時あるいは吸湿・乾燥時の寸法変化が大きい。中でもMDFなどの木質繊維板は、床材に用いた場合、目隙や突き上げなどが生じることがあり、壁材などに用いた場合、十分な強度や透湿性能が得られず、施工後の寸法変化によって壁の反りが発生することがあるという課題があった。また、ドア・扉材などの内装部材の基材として用いた場合、十分な強度が得られにくく、さらには寸法変化に起因する反りや狂いが大きくなりかねないなどの課題があった。
このため本出願人は、上記課題に対して、ケナフ(アオイ科の一年生草本類)などの靭皮部分から得られる繊維を集合させた繊維マットに液状接着剤を含浸させて作製した繊維ボードを提案している(特許文献1参照)。
特許第4085961号公報
上記繊維ボードは従来の木質系ボードに比べて、高強度、高い寸法安定性、及び良好な透湿性を有している。しかしながら、上記繊維ボードであっても、近年の住宅部材に求められる要求がより高まっている状況においては、基本機能を維持しながらより一層の軽量化が望まれている。
繊維ボードの軽量化の方策として、繊維量を減らして繊維ボードの密度を低減することが挙げられる。しかしながら、この方策は繊維量を減らしているため、繊維の絡み合いが少なくなると共に、繊維同士の接触点が少なくなり、繊維同士の接着性が損なわれることがある。すなわち、繊維の優れた特徴を十分に活かすことが出来なくなる。つまり、軽量化を図ることによって、良好な強度及び寸法安定性を有した繊維ボードを得ることが困難となる。繊維同士の接着性を高めるために、繊維マットに含浸させる液状接着剤を増やすことが考えられるが、液状接着剤自体が繊維に浸透し易いという特性を有するため、接着性の向上効果が小さい。また、繊維内部に浸透した液状接着剤が硬化すると、繊維自体の寸法変化が抑制されるという利点がある一方で、繊維が脆くなり、繊維自体のもつ粘り強さを活かすことができなくなる場合がある。つまり、良好な強度を有した低密度の繊維ボードを、液状接着剤を用いて作製することが難しかった。
この低密度の繊維ボードの強度物性を改善する方策として、例えば、粒状接着剤を用いることが考えられる。粒状接着剤は固形の接着剤であり、液状接着剤に比べて繊維内部に浸透し難いため、繊維内部への接着剤の浸透によって繊維を脆くすることなく繊維自体の粘り強さを活かすことが可能となる。
しかしながら、次のような問題があった。すなわち、平均繊維長が10〜200mm程度であり平均繊維径が数十〜数百μmの繊維の集合体に、粒状接着剤をより均一に分散させ、繊維同士の接着性を十分に確保することが困難であった。つまり、粒状接着剤は液状接着剤に比べて繊維内部への浸透が抑えられるが、繊維へ付着し難くなる。結果として、繊維マットに粒状接着剤を混合しても粒状接着剤が繊維マットから脱落し易くなり、繊維マットに混合した接着剤を繊維同士の接着性向上に十分に活かすことができず、繊維同士の接着性を十分に確保することが困難であった。繊維同士の接着性を確保するために、繊維マットに粒状接着剤を過剰に混合させることが考えられる。しかしながら、この場合には粒状接着剤の脱落等によって繊維マット中に粒状接着剤の偏析等が生じ、粒状接着剤を均一に分散させることが困難であるという問題が残され、結果として十分な強度を有する繊維ボードを得ることができない。さらには、この場合には高コスト化につながるだけでなく、過剰な粒状接着剤により透湿性が損なわれたり、接着剤染みによる外観不良の発生や、成形時にパンクや熱板への付着などのトラブルを引き起こすおそれがあった。
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、強度、寸法安定性及び透湿性が良好であり、軽量化が可能な繊維ボードを提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明の繊維ボードは、繊維を粒状接着剤で接着して得られる繊維ボードであって、前記繊維は、植物繊維で形成される平均繊維長5mm以上100mm以下及び平均繊維径70μm以上400μm以下の主構成繊維と、麻系天然繊維、ヤシ繊維及び農産廃棄物繊維から選ばれる一種以上の植物繊維を平均繊維径20μm以上70μm未満の範囲に解繊した微細繊維との混合物であり、前記主構成繊維と前記微細繊維との混合比が、重量比で50:50〜90:10であることを特徴とする。
この繊維ボードにおいては、前記主構成繊維を形成する植物繊維が、麻系天然繊維、ヤシ繊維及び農産廃棄物繊維から選ばれる一種以上の植物繊維であることが好ましい。
この繊維ボードにおいては、前記微細繊維が、前記主構成繊維の解繊度を高めて製造した繊維であることが好ましい。
この繊維ボードにおいては、前記微細繊維が、前記主構成繊維の原料繊維を解繊して前記主構成繊維を製造した際に副次的に生成される繊維であることが好ましい。
この繊維ボードにおいては、前記繊維が、ドンゴロス袋を解繊して得られる繊維であることが好ましい。
この繊維ボードにおいては、繊維ボードの密度が、500〜900kg/mの範囲であることが好ましい。
本発明によれば、強度、寸法安定性及び透湿性が良好であり、軽量化が可能な繊維ボードを得ることができる。
本発明の繊維ボードの一実施形態を模式的に示す断面図である。 (a)は、ジュート繊維の断面構造を示し、(b)は、ジュート繊維をさらに解繊して得られた微細繊維の外観を示す。 (a)は、バガス繊維の外観を示し、(b)は、バガス繊維をさらに解繊して得られた微細繊維の外観を示す。 繊維ボードの製造フロー図である。
本発明の繊維ボードは、繊維を粒状接着剤で接着して得られる。この繊維ボードは、繊維が、主構成繊維と、微細繊維との混合物で構成されている。主構成繊維と微細繊維との混合比が、重量比で50:50〜90:10である。主構成繊維は、植物繊維で形成される繊維であり、平均繊維長5mm以上100mm以下、平均繊維径70μm以上400μm以下の繊維である。微細繊維は、麻系天然繊維、ヤシ繊維及び農産廃棄物繊維から選ばれる一種以上の植物繊維を平均繊維径20μm以上70μm未満の範囲に解繊した繊維である。
図1は、本発明の繊維ボードの一実施形態を模式的に示す断面図である。
図1の繊維ボード1は、主構成繊維2と微細繊維3とが混合され、繊維同士が粒状接着剤由来の接着剤(以下、単に「接着剤」と記す場合がある。)4で接着されている。具体的には、比較的大きな繊維径を有する主構成繊維2同士がゆるやかに湾曲して絡み合って形成される集合体の空隙部分5に、比較的小さな繊維径を有する微細繊維3が均一に分散し、繊維同士が接着剤4で接着された状態となっている。
このような繊維ボードは、主構成繊維、微細繊維及び粒状接着剤の混合物を熱圧成形することによって得られる。主構成繊維、微細繊維及び粒状接着剤の混合により、主構成繊維の集合体の空隙部分に微細繊維及び粒状接着剤が入り込み、微細繊維及び粒状接着剤が均一に分散する。微細繊維は、植物繊維の解繊による微細化によってその表面が毛羽立った構造を有しているので、微細繊維の表面に粒状接着剤が付着し易くなっている。粒状接着剤の微細繊維表面への付着によって、粒状接着剤は混合物から脱落しにくくなっており、また、粒状接着剤の偏析等が生じにくくなっている。このため、混合物においては、粒状接着剤の均一な分散を維持できるようになる。このような混合物を熱圧成形することによって、繊維同士を接着剤で効果的に接着させることができ、主構成繊維の絡み合いを強固にすることができる。こうして得られる繊維ボードは、高い透湿性を有しながら、主構成繊維による強度及び寸法安定化の作用が効果的に働く。したがって、繊維ボードの密度が比較的低密度であっても、つまり、繊維ボードを軽量化した場合でも、強度、寸法安定性及び透湿性が良好である。
このような繊維ボードは、床材、壁材、天井材、野地板等の建築用部材として利用することができる。また、ドア、扉材等の内装部材の基材として利用することもできる。
本実施形態においては、主構成繊維として、例えば、麻系天然繊維、ヤシ繊維、農産廃棄物繊維、木質繊維等の植物繊維を用いることができる。
麻系天然繊維は、ケナフ、ジュート、亜麻、ラミー、ヘンプ、サイザル等の靭皮繊維系植物を原料とする繊維である。靭皮繊維系植物は、既に紡績や不織布工業の中で一般的な工業原料として流通しており、安定的な調達が可能である。この靭皮繊維系植物の靭皮部分から得られる繊維束を機械的に解繊することによって、高強度で良好な寸法安定性を有する繊維を得ることができる。また、解繊条件を適宜設定することにより、繊維束を所定の繊維長、繊維径にまで解繊でき、目的とする繊維を比較的容易に得ることができる。
靭皮繊維系植物から平均繊維長5mm以上100mm以下、平均繊維径70μm以上400μm以下の麻系天然繊維を得る場合、例えば、次の手順に従って、目的とする繊維を得ることができる。まず、靭皮繊維系植物の靭皮部分から、長さが数十cm〜数m、幅が5mm〜30mmの靭皮繊維束を採取する。次いで、ロータリーカッター等でおおよそ5〜10cmの長さとなるように靭皮繊維束を切断する。次いで、反毛機と呼ばれる機械にかけることにより、靭皮繊維束を平均繊維長が5mm以上100mm以下、平均繊維径が70μm以上400μm以下になるまで解繊する。反毛機は、先端の尖ったピンや切断刃を備えたシリンダーが高速回転する機構を有した機械であり、本機械に靭皮繊維束を通過させることによって、束状となった靭皮繊維束を分離し、解繊、繊維化できる。なお、平均繊維長は繊維長分布測定機等を用いて計測される。平均繊維径は、光学顕微鏡あるいは電子顕微鏡の画像から複数箇所における繊維径を測定した平均値として計測される。
ヤシ繊維は、油ヤシ、ココヤシ等の植物を原料とする繊維である。この植物原料も安定的な調達が可能である。油ヤシ、ココヤシ等の果実房部分からヤシ油を搾り取った後の繊維質部分を、上記した靭皮繊維束と同様に、所定の繊維長、繊維径にまで解繊することによって、高強度な繊維を容易に得ることができる。
農産廃棄物繊維は、さとうきび、とうもろこし、竹、イネ等の農産廃棄物を原料とする繊維である。例えば、さとうきびから糖分を煮出した後の搾りかす(以下、バガスと称する)を乾燥した後、繊維状に加工することにより、かさ密度の小さなバガス繊維を得ることができる。そして、上記した靭皮繊維束と同様に、所定の繊維長、繊維径にまで解繊することによって、目的とする繊維を容易に得ることができる。バガスは、従来、廃棄されるか、ボイラー燃料や紙の原料、家畜飼料や肥料等に用いられていたが、環境問題の高まりから、利用可能なバイオマス資源として、近年注目を集めている。
バガス以外にも、とうもろこしや竹の茎、稲藁等の原料を解繊することにより、目的とする農産廃棄物繊維を得ることが出来る。従来は廃棄されていた原料を用いることで、廃棄物を削減することができ、貴重な資源を節約することができる。また、繊維ボードのコスト低減も可能となる。
木質繊維は、針葉樹や広葉樹等を原料とする繊維である。木質繊維は、一般的にMDF原料として用いられている、雑木、木工屑、廃材、欠陥のある材木、間伐材等を利用することができる。このため、地球環境面から貴重な資源となる木質系原料を有効に利用することできる。このような木質系原料を、上記した靭皮繊維束と同様に、所定の繊維長、繊維径にまで解繊することによって、目的とする繊維を容易に得ることができる。
主構成繊維は、麻系天然繊維、ヤシ繊維、農産廃棄物繊維、木質繊維等の植物繊維を適宜組み合わせて使用することができる。繊維ボードの強度や寸法安定性をより向上させ、また繊維ボードをより安価に得るという観点から、麻系天然繊維、ヤシ繊維及び農産廃棄物繊維から一種以上を選択して使用することが望ましい。
主構成繊維は、上記のとおり、平均繊維長5mm以上100mm以下、平均繊維径70μm以上400μm以下の繊維である。
平均繊維長及び平均繊維径が上記範囲内であれば、繊維ボードが低密度でありながらも、主構成繊維の絡み合いによる強度及び寸法安定化の作用が効果的に働くことが可能となる。したがって、軽量化した場合でも、強度、寸法安定性及び透湿性が良好な繊維ボードを提供することができる。この観点から、平均繊維長として、好ましくは10mm以上70mm以下であり、より好ましくは30mm以上60mm以下であることが望ましい。平均繊維径として、好ましくは100μm以上350μm以下であり、より好ましくは150μm以上300μm以下であることが望ましい。
主構成繊維の平均繊維長が5mmより短いと、繊維同士の絡み合いが少なく、また繊維間の接着部分も少なくなるので、繊維ボードとして十分な強度を得ることができない。主構成繊維の平均繊維長が100mmより長いと、主構成繊維が屈曲した状態となり、繊維長さ方向の寸法変化が小さいという特徴を活かしにくくなり、寸法安定性が低下する。また、主構成繊維の集合体を均一な構造となるように形成することが難しい。これによって、繊維ボードの密度のばらつきが大きくなることがあり、また強度面において欠陥となる部分が生じることがあり、繊維ボードの強度や寸法安定性を十分に高めることができなくなる。
主構成繊維の平均繊維径が70μmより細いと、繊維間の空隙が小さくなり、微細繊維及び粒状接着剤を均一に分散させることが難しくなる。主構成繊維の平均繊維径が400μmより太いと、その剛直性によって繊維同士の絡み合いが少なくなって、繊維ボードとして十分な強度を得ることができない。また、繊維ボード表面の凹凸が大きくなり、表面平滑性が低下することもある。
本実施形態においては、微細繊維として、麻系天然繊維、ヤシ繊維及び農産廃棄物繊維から選ばれる一種以上の植物繊維を平均繊維径20μm以上70μm未満の範囲にまで機械的に解繊して得られる繊維が用いられる。
麻系天然繊維、ヤシ繊維及び農産廃棄物繊維の詳細については、上記した主構成繊維において説明したものと同様であるのでその説明を省略する。これら麻系天然繊維、ヤシ繊維及び農産廃棄物繊維は、後述するように、細胞壁からなる単繊維の集合体として構成されている。この集合体は、隣接する単繊維が外力によって界面で分離し易くなっている。このため、麻系天然繊維、ヤシ繊維及び農産廃棄物繊維を所定の繊維径にまで解繊すると、単繊維が分離するなどの毛羽立った構造を有する微細繊維が得られる。
微細繊維として、主構成繊維として用いられる麻系天然繊維、ヤシ繊維及び農産廃棄物繊維から選ばれる一種以上の植物繊維の解繊度を高めて製造した繊維を用いることができる。例えば、麻系天然繊維、ヤシ繊維、又は農産廃棄物繊維を主構成繊維として用いる場合、その繊維を製造する解繊工程において、反毛回数を増やすなど解繊条件を変更する。そして、平均繊維径20μm以上70μm未満になるまで繊維を微細化し、主構成繊維と組み合わせる微細繊維を製造する。これによれば、主構成繊維及び微細繊維の原料繊維の種類が1種類ですむため、製造工程を簡略化できるといった利点が得られる。
微細繊維として、主構成繊維の原料繊維を解繊して主構成繊維を製造した際に副次的に生成される繊維(カディス繊維)を用いることもできる。すなわち、屑繊維として廃棄される繊維を微細繊維として用いる。カディス繊維は、平均繊維径20μm以上70μm未満の繊維であり、その表面が毛羽立った構造である。このため、粒状接着剤が付着し易い。また、繊維長が比較的短いため、主構成繊維の集合体の空隙部分により均一に分散し易い。したがって、より安価で、強度、寸法安定性及び透湿性が良好な繊維ボードを得ることができる。
また、穀物等の輸送袋として大量に流通しているドンゴロス袋を所定の繊維径にまで解繊して得られる繊維を、主構成繊維や微細繊維として用いることもできる。ドンゴロス袋は、ジュート等の麻系天然繊維を編んで作られている。このため、ドンゴロス袋を解繊することにより、優れた強度特性を有する麻系天然繊維が得られるといった利点に加え、原料繊維の安定調達が可能であるという利点がある。さらに、使用済みのドンゴロス袋を廉価に購入可能であるため、より安価で、強度、寸法安定性及び透湿性が良好な繊維ボードを得ることができる。
微細繊維は、上記のとおり、平均繊維径20μm以上70μm未満の繊維である。
平均繊維径が上記範囲内であれば、毛羽立った構造が効果的に形成され、粒状接着剤が微細繊維に付着し易くなる。これによって、粒状接着剤の脱落、偏析等が生じにくくなり、繊維ボードが低密度でありながらも、主構成繊維の絡み合いによる強度及び寸法安定化の作用が効果的に働くことが可能となる。したがって、軽量化した場合でも、強度、寸法安定性及び透湿性が良好な繊維ボードを提供することができる。この観点から、平均繊維径として、好ましくは25μm以上60μm以下であり、より好ましくは30μm以上40μm以下であることが望ましい。また、同様の観点から、微細繊維の平均繊維長は、例えば、5mm以上100mm以下であることが望ましい。より好ましくは5mm以上50mm以下であり、さらに好ましくは10mm以上30mm以下である。
微細繊維の平均繊維径が70μm以上であると、その表面に粒状接着剤が付着し難くなる。また、径が太くなることによって、主構成繊維が絡み合った集合体の空隙部分に均一に分散され難くなる。このため、主構成繊維の接着強度が不十分となり、繊維ボードの強度や寸法安定性を十分に高めることができないことがある。微細繊維の平均繊維径が20μmより細いと、解繊される過程で、例えば5mm未満の繊維長になるなど、繊維長が短くなることが多い。この場合、主構成繊維が絡み合った集合体の空隙部分に微細繊維が均一に分散せず、脱落、偏析しやすくなる。このため、主構成繊維の接着強度が不十分となり、繊維ボードの強度や寸法安定性を十分に高めることができないことがある。
麻系天然繊維の一例として、ジュートの繊維束を解繊して得られたジュート繊維を図2に示す。図2(a)は、ジュート繊維の断面構造を示している。図2(b)は、ジュート繊維をさらに解繊して得られた微細繊維の外観を示している。
図2(a)に示すように、ジュート繊維6は、平均繊維径が70μm以上400μm以下の範囲内であり、主構成繊維として利用できる。ジュート繊維6は、内部に空孔を有する約5〜10μm径の単繊維7の集合体として構成されている。この集合体は、隣接する単繊維7が外力によって界面で分離し易くなっている。このため、解繊条件を適宜設定してジュート繊維6を解繊することによって、図2(b)に示すように、単繊維が分離し、毛羽立った構造を有する平均繊維径20μm以上70μm未満の微細繊維を容易に得ることができる。毛羽立った構造を表面に有する微細繊維は、粒状接着剤を表面に付着させやすくするといった利点を有している。
ヤシ繊維についても、ジュート繊維と同様に、細胞壁からなる単繊維から構成されている。このため、解繊条件を適宜設定してヤシ繊維を解繊することによって、毛羽立った構造を繊維表面に有する平均繊維径20μm以上70μm未満の微細繊維を容易に得ることができる。
農産廃棄物繊維の一例としてバガス繊維を図3に示す。図3(a)は、バガス繊維の外観を示している。図3(b)は、バガス繊維をさらに解繊して得られた微細繊維の外観を示している。
図3(a)のバガス繊維は、繊維径がおおよそ200μmにまで解繊された繊維であり、主構成繊維として利用できる。図3(a)のバガス繊維をさらに解繊し、繊維径がおおよそ20〜70μmとなるまで微細化した繊維が、図3(b)の微細繊維である。図3(b)に示すように、この微細繊維も毛羽立った構造を繊維表面に有する。
バガス繊維についても、ジュート繊維やヤシ繊維と同様に、細胞壁からなる単繊維から構成されている。このため、解繊条件を適宜設定してバガス繊維を解繊することによって、毛羽立った構造を繊維表面に有する平均繊維径20μm以上70μm未満の微細繊維を容易に得ることができる。
本実施形態においては、主構成繊維と微細繊維との混合比が、重量比で50:50〜90:10とされている。主構成繊維と微細繊維との混合比が、この範囲内であれば、主構成繊維の絡み合いによる物性向上作用と、微細繊維による粒状接着剤保持やその保持される粒状接着剤の均一分散による繊維接着力の強固作用との双方が効果的に作用する。これによって、軽量化した場合でも、強度、寸法安定性及び透湿性が良好な繊維ボードを提供することができる。この観点から、主構成繊維と微細繊維との混合比が、重量比で、好ましくは60:40〜90:10であり、より好ましくは70:30〜85:15であることが望ましい。
主構成繊維と微細繊維との合計量中、微細繊維が重量比で10%未満であれば、微細繊維への粒状接着剤の付着が少なくなるため、十分な量の粒状接着剤を保持することが難しくなる。また、微細繊維が主構成繊維の集合体の空隙部分に均一に分散されにくくなり、主構成繊維による強度及び寸法安定化の作用が働きにくくなる。微細繊維が重量比で50%を超えると、粒状接着剤の保持は十分に出来るものの、繊維ボードにおいては主構成繊維の割合が減り、主構成繊維の絡み合いが少なくなる。このため、繊維ボードの強度面や寸法安定性の面で性能が損なわれるおそれがある。
本実施形態において、繊維同士の接着に用いられる粒状接着剤は固形状である。このような粒状接着剤としては、例えば、ユリア樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエスエテル樹脂等の熱硬化性樹脂を樹脂成分として含むものを挙げることができる。また、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、塩化ビニル(PVC)樹脂等の熱可塑性樹脂を樹脂成分として含むものも挙げることができる。
粒状接着剤の「粒状」には、粉末状の形状を含む。このような粒状接着剤の粒径としては、例えば平均粒径が100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。これによって、微細繊維の表面に粒状接着剤が付着し易くなる。また、主構成繊維が絡み合った集合体の空隙部分に、微細繊維と粒状接着剤がより均一に分散し易くなる。その結果、繊維と粒状接着剤との混合性が良好となり、繊維ボードを軽量化した場合でも、強度、寸法安定性及び透湿性が良好な繊維ボードを提供することができる。粒状接着剤の粒径の下限は特に制限されるものではないが、実際上は平均粒径10μmが下限となる。なお、平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって測定した値である。
主構成繊維と微細繊維との合計重量に対する粒状接着剤の混合(添加)量は、固形分換算で樹脂成分が好ましくは5〜30重量%、より好ましくは15〜25重量%の範囲内になるように設定する。粒状接着剤の添加量を5重量%以上とすることにより、繊維同士をより強固に接着することができる。これによって、高い強度特性や優れた寸法安定性を有する繊維ボードを得ることができる。粒状接着剤の添加量を30重量%以下とすることにより、染みの発生を抑えることができる。また、粒状接着剤の無駄な消費を抑えたり、粒状接着剤を効果的に硬化させることができ、コスト面で有利である。
本実施形態において、繊維ボードの密度としては、繊維ボードの軽量化を図りつつ、強度、寸法安定性及び透湿性のバランスがとれた繊維ボードとするために、500〜900kg/mの範囲内の密度とすることができる。強度特性及び寸法安定性をより高めるために、繊維ボードの密度は、600〜700kg/mの範囲内であることが好ましい。繊維ボードの密度は、繊維ボードの作製時において粒状接着剤の含有量を調整したり、繊維マットの面重量を調整したりすることなどによって行なうことができる。
次に、繊維ボードの製造方法について説明する。
まず、植物繊維で形成される平均繊維長5mm以上100mm以下及び平均繊維径70μm以上400μm以下の主構成繊維に微細繊維と粒状接着剤とを加えて混合する。微細繊維は、麻系天然繊維、ヤシ繊維及び農産廃棄物繊維から選ばれる一種以上の植物繊維を平均繊維径20μm以上70μm未満の範囲に解繊した繊維である。この微細繊維は、主構成繊維に、重量比で主構成繊維:微細繊維=50:50〜90:10の割合で加える。次いで、得られた混合物をマット状に形成して繊維マットとし、この繊維マットを板状に熱圧成形する。これによって、目的とする繊維ボードを得ることができる。
以下に、繊維ボードの製造フロー図を示した図4を参照して、繊維ボードの製造方法の一例を説明する。
図4(a)に示すように、まず、主構成繊維の原料となる植物から繊維束を採取して秤量する。次に、ロータリーカッター等の切断機に繊維束を投入し、おおよそ5〜10cmの長さとなるように切断する。次に、切断した繊維束を反毛機で解繊する。その際、平均繊維長が5mm以上100mm以下、平均繊維径が70μm以上400μm以下になるまで解繊する。こうして目的の主構成繊維を得る。微細繊維も同様にして、所定の平均繊維径に解繊された繊維を得る。
次に、主構成繊維と微細繊維とを混合し、さらに粒状接着剤を添加して混合し、混合物を得る。粒状接着剤は、主構成繊維と微細繊維との合計重量に対して、固形分換算で樹脂成分が例えば5〜30重量%の範囲内となるように添加することができる。
繊維の混合には、例えば、2種類の繊維(主構成繊維及び微細繊維)を定量供給する調合機構と、繊維を混ぜ合わせるためのピン付きシリンダーとを有する混綿機を用いることができる。また、接着剤の混合には、粒状接着剤を定量供給する機構を備えた機器を用いることができる。
ここで、図4(b)に示すように、微細繊維に粒状接着剤を加えて混合したものを、主構成繊維に加えて混合することにより混合物を得るようにしてもよい。微細繊維は、毛羽立った構造を表面に有するため、粒状接着剤が付着し易くなっている。このため、微細繊維と粒状接着剤とを予め混合することによって、粒状接着剤が付着した微細繊維を得る。粒状接着剤を微細繊維に付着させた状態で主構成繊維に加えて混合することにより、粒状接着剤を単独で加えた場合と比べて、粒状接着剤の脱落等によるロスを抑制することができる。また、粒状接着剤をより均一に分散させることもできる。
この方法では、粒状接着剤の一部を微細繊維に予め混合するようにしてもよい。すなわち、粒状接着剤の一部を微細繊維に加えて混合したものを、主構成繊維に加えて混合し、次いで粒状接着剤の残りを主構成繊維に加えて混合することにより混合物を得るようにしてもよい。これによって、粒状接着剤の添加量を増やすことができる。また、粒状接着剤の脱落等によるロスを抑制したり、粒状接着剤をより均一に分散させることもできる。微細繊維と予め混合する粒状接着剤の割合としては、所期の効果をより効果的に実現する観点から、粒状接着剤全体量のうち50重量%以上であることが好ましい。
次に、図4(a)に示すように、得られた混合物をマット状に形成して繊維マットとする。混合物の繊維マット化には、例えば、マットフォーマーと呼ばれる連続的に繊維マットを製造する装置を用いることができる。また、型枠に混合物を散布するなどの方法によって繊維マットを形成することもできる。
次に、必要に応じて、繊維マットを加熱するマット加熱処理を行い、繊維マット中の粒状接着剤を溶融させる。これによって、主構成繊維が絡み合った集合体の空隙部分に溶融した粒状接着剤を均一に分散させたまま保持する作用が働く。この作用により、繊維マットを搬送するなど、繊維マットを取り扱う際に、粒状接着剤の脱落や偏析を抑制することができる。また、液状接着剤に繊維を含浸させた場合の液状接着剤の繊維内への浸透性と比べて、溶融した粒状接着剤の繊維内への浸透性は低く、溶融した粒状接着剤は主として繊維の表面に付着する。このため、繊維を脆くすることなく繊維自体の粘り強さを活かすことが可能となる。この結果、比較的低密度であっても、高い透湿性を有しながら主構成繊維による強度及び寸法安定化の作用が効果的に働き、より一層強度及び寸法安定性に優れた繊維ボードを提供できるようになる。
繊維マットの加熱には、例えば、加熱ヒータや熱風送風器等の熱源を備え、コンベアベルト等で繊維マットを搬送する機構を有した加熱装置を用いることができる。また、後述する熱圧成形で用いる装置を利用することもできる。加熱条件は、粒状接着剤の種類や、繊維マットの面重量によって適宜設定されるものであるが、60〜150℃の加熱温度で1〜10分間加熱することが好ましい。
次に、繊維マットを板状に熱圧成形して繊維ボードを得る。繊維マットの熱圧成形には、例えば、加熱した一対のスチールベルトの隙間に、圧力を加えながら繊維マットを搬送させる連続プレス装置や、加熱した複数の熱板間に繊維マットを挟んで加圧する多段プレス装置等を用いることができる。成形条件は、特に限定されるものではないが、成形温度120〜190℃、成形圧力1〜4MPaの範囲が好ましい。成形時間は繊維ボードの板厚や成形温度に応じて適宜設定すればよい。
次に、成形後に得られた繊維ボードについて、必要に応じて、含水率調整(養生)を行ったり、所定サイズに切断したりするなどの後加工を行う。
このようにして製造された繊維ボードは、繊維同士が接着剤で効果的に接着されており、主構成繊維の絡み合いが強固になっている。このため、繊維ボードを軽量化した場合でも、強度、寸法安定性及び透湿性が良好である。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
ジュートの靭皮繊維束(幅:1〜2cm、長さ:2〜4m)を切断機により長さ方向にカットした後、反毛機を用いて機械的に解繊処理した。これによって、平均繊維長が約55mm及び平均繊維径が約150μmであるジュート繊維を主構成繊維として得た。
また、前記方法と同様にして、反毛機にかける回数を増やし解繊度を高めることにより、平均繊維長が約20mm及び平均繊維径が約30μmであるジュートの微細繊維を得た。
次に、主構成繊維と微細繊維の重量比率が75:25となるように混合したものに粒状接着剤を所定量添加した。その際、主構成繊維と微細繊維との合計重量に対する接着剤の添加量が、固形分換算で樹脂成分が22重量%となるように調整した。粒状接着剤として、ノボラック型フェノール樹脂を樹脂成分とする粉末フェノール樹脂(平均粒径:約20μm)を用いた。
次に、主構成繊維、微細繊維及び粒状接着剤の混合物を、ピン付きシリンダーを有する小型の混綿機に投入し、繊維と接着剤が均一になるよう混合した。次に、この混合物を散布する機構を有した簡易フォーミング装置(型枠内寸:30cm角)を用いて、混合物を型枠に散布してマット状に形成し、繊維マットを得た。ここで、得られた繊維マットの重量が約263gとなるように混合物の散布量を調整した。
次に、繊維マットを上蓋で軽く圧締めした後、型枠から取り出し、小型熱圧プレス機で繊維マットを軽く圧締しながら140℃で約1分間加熱して粉末フェノール樹脂を溶融させた。これによって、ハンドリングが可能な厚さ約40mmの繊維マットを得た。
次に、この繊維マットを前記小型熱圧プレス機を用いて、180℃、3MPa、3分間の条件で加熱加圧成形し、30cm角サイズで、厚さ4.5mmの繊維ボードを得た。この繊維ボードの密度は約650kg/mであった。
尚、繊維ボードの一部をアセトン抽出前後の重量を計測して繊維ボード内部に含有する接着剤の割合を算出した所、実際の接着剤含有率は20重量%であった。また、接着剤添加量に対する実際の接着剤含有率の割合である接着剤定着割合(定着率)は91%であった。定着率は下記の式で算出した
定着率= (実際の接着剤含有率 / 接着剤添加量) ×100
(実施例2)
主構成繊維と微細繊維の重量比率を85:15とする以外は、実施例1と同様にして、繊維ボードを作製した。
尚、繊維ボード内部の実際の接着剤含有率は、実施例1と同様に、20重量%であり、接着剤の定着割合は91%であった。
(実施例3)
主構成繊維と微細繊維の重量比率を55:45とする以外は、実施例1と同様にして、繊維ボードを作製した。
尚、繊維ボード内部の実際の接着剤含有率は21重量%であり、接着剤の定着割合は95%であった。
(比較例1)
ジュートの靭皮繊維束(幅:1〜2cm、長さ:2〜4m)を切断機により長さ方向にカットした後、反毛機を用いて機械的に解繊処理した。これによって、平均繊維長が約55mm及び平均繊維径が約150μmであるジュート繊維を主構成繊維として得た。
次に、主構成繊維を集合させて繊維マットを作製した。次に、フェノール樹脂を樹脂成分とする液状接着剤に繊維マットを10秒間浸漬した。その後、絞りローラに繊維マットを通すことによって、液状接着剤の含有率(接着剤添加量)が固形分換算で樹脂成分が22重量%となるよう調整し、繊維マットに液状接着剤を付着させた。
次に、液状接着剤を付着させた繊維マットに50℃の乾燥空気を送風することによって、繊維マット中の水分量が10重量%以下になるように乾燥を行なった。
次に、上記の乾燥した繊維マットを3層重ねた後、この繊維マットを実施例1と同様に、小型熱圧プレス機を用いて、180℃、3MPa、3分間の条件で加熱加圧成形し、厚さ4.5mm、ボード密度650kg/mの繊維ボードを得た。
尚、繊維ボードの一部をアセトン抽出前後の重量を計測して繊維ボード内部に含有する接着剤の割合を算出した所、実際の接着剤含有率は20重量%であり、接着剤の定着割合は91%であった。
(比較例2)
主構成繊維と微細繊維の重量比率を100:0とする以外は、実施例1と同様にして、繊維ボードを作製した。
尚、繊維ボード内部の実際の接着剤含有率は14重量%であった。接着剤の定着割合は64%と低い結果となった。
(比較例3)
粒状接着剤の添加量を35重量%とする以外は、比較例2と同様にして、繊維ボードを作製した。
尚、繊維ボード内部の実際の接着剤含有率は20重量%であった。接着剤の定着割合は57%と低い結果となった。
(比較例4)
主構成繊維と微細繊維の重量比率を40:60とする以外は、実施例1と同様にして、繊維ボードを作製した。
尚、繊維ボード内部の実際の接着剤含有率は20重量%であり、接着剤の定着割合は91%であった。
(比較例5)
主構成繊維と微細繊維の重量比率を0:100とする以外は、実施例1と同様にして、繊維ボードを作製した。
尚、繊維ボード内部の実際の接着剤含有率は21重量%であり、接着剤の定着割合は95%であった。
上記の実施例1〜3、及び比較例1〜5で作製した繊維ボードについて、ボード物性評価を行った。
尚、ボード物性評価に先立って、透湿抵抗を測定したところ、実施例、比較例いずれの繊維ボードも、0.4〜0.6m・h・mmhg/gという値が得られた。同等厚みの合板が5〜10m・h・mmhg/gであることから、繊維ボードは極めて高い透湿性を有していることが分かった。
透湿抵抗の測定は、JIS A 1324(建築材料の透湿性測定方法)に示すカップ法に基づいて行った。すなわち、透湿カップ内に塩化カルシウムを入れた後に、このカップを試料で密閉することによって、試料の取付けを行った。次に、試料を取り付けたカップを温度23℃、相対湿度50%に設定した恒温恒湿槽内に置き、所定の時間間隔でカップを取り出して、カップの質量増加を測定し、試料の透湿量を求めた。そして、次の式から透湿抵抗を算出した。
Zp=(P1−P2)×A/G
Zp:透湿抵抗[(m・s・Pa)/ng]{(m・h・mmHg)/g}
G:透湿量(ng/s){g/h}
A:透湿面積(m
P1:恒温恒湿槽内の空気の水蒸気圧(Pa){mmHg}
P2:透湿カップ内の空気の水蒸気圧(0Pa){0mmHg}
透湿抵抗以外のボード物性として、釘逆引き抜き抵抗、曲げ強度、剥離強度を計測し、強度特性を評価した。また、吸水長さ変化率、吸水厚さ膨潤率を計測し、寸法安定性を評価した。いずれの試験もJIS A 5905(繊維板)で規定された方法に準拠して行なった。
ボード物性評価の結果と、添加量に対する実際の接着剤含有率の割合である接着剤定着割合の結果を表1に示す。
表1では、前記計測数値に加えて、釘逆引き抜き抵抗が、800N以上であれば◎、650N以上800N未満であれば○、500N以上650N未満であれば△、500N未満であれば×と表記した。曲げ強度に関しては、45MPa以上であれば◎、35MPa以上45MPa未満であれば○、25MPa以上35MPa未満であれば△、25MPa未満であれば×と表記した。剥離強度に関しては、0.70MPa以上であれば◎、0.50MPa以上0.70MPa未満であれば○、0.20MPa以上0.50MPa未満であれば△、0.20MPa未満であれば×と表記した。また、寸法安定性の評価に関しても、吸水長さ変化率が、0.05%未満であれば◎、0.05%以上0.10%未満であれば○、0.10%以上0.20%未満であれば△、0.20%以上であれば×と表記した。吸水厚さ膨潤率に関しては、12%未満であれば◎、12%以上18%未満であれば○、18%以上25%未満であれば△、25%以上であれば×と表記した。
表1にみられるように、実施例1〜3の繊維ボードは、比較例1〜5の繊維ボードに比べ、釘逆引き抜き抵抗、曲げ強度、剥離強度、吸水長さ変化率、吸水厚さ膨潤率のいずれの特性もバランス良く優れていることが分かる。
実施例1〜3の繊維ボードは、液状接着剤を用いた低密度繊維ボード(比較例1)の欠点であった、釘引き抜き抵抗や剥離強度等が改善されている。
比較例1の繊維ボードは、液状接着剤を使用しており、この液状接着剤は繊維内部に浸透する作用が働く。このため、650kg/mと比較的低密度の繊維ボードでは、繊維同士の接着性が低下し、結果として剥離強度等が低下する。また、繊維内部に浸透した接着剤が硬化することで繊維自体の寸法変化を抑制できる利点があるものの、繊維が脆くなり、繊維自体のもつ粘り強さを活かすことができなくなるため、釘逆引き抜き抵抗が大幅に低下していることが分かる。
比較例2の繊維ボードは、粒状接着剤添加量を実施例1の繊維ボードと同様にしているにもかかわらず、微細繊維を含んでいないために、粒状接着剤の定着割合が極めて低くなっている。そのため、繊維同士の接着強度が損なわれ、結果としてボード物性の低下が顕著である。
比較例3の繊維ボードは、接着剤添加量を高めることによって、実際の接着剤含有率を実施例1〜3の繊維ボードと同等レベルとしているものの、ボード物性としては、実施例
1〜3の繊維ボードに比べて劣っている。このことはすなわち、過剰に粒状接着剤を添加して含有させたとしても、粒状接着剤が均一に分散せず、結果として十分なボード物性を得ることができないことを示している。
また、比較例4、5に示すように、微細繊維の比率が60重量%を超えると、粒状接着剤の定着割合は高いレベルであるものの、主構成繊維であるジュート繊維の比率が低下するため、強度、寸法安定性に関して、物性が低下していることが分かる。
以上より、主構成繊維と微細繊維が所定の割合で混合され、粒状接着剤を用いて作製されている実施例1〜3の繊維ボードは、軽量でありながら、高い透湿性を有し、強度、寸法安定性に優れていることが確認できた。
(実施例4)
ジュート繊維からなるドンゴロス袋を切断し、反毛して得られた平均繊維長20mm、平均繊維径30μmのジュート繊維を得た。このジュート繊維を微細繊維として用い、成形後のボード密度を550kg/mとする以外は、実施例1と同様にして、繊維ボードを作製した。
(実施例5)
反毛機にかけて副次的に生成した、平均繊維長が約26mm及び平均繊維径が約40μmのカディス繊維を微細繊維として用い、成形後のボード密度を600kg/mとする以外は、実施例1と同様にして、繊維ボードを作製した。
(実施例6)
機械的に解繊処理して得られた平均繊維長が約40mm及び平均繊維径が約180μmであるケナフ繊維を主構成繊維として用い、平均繊維長が約26mm及び平均繊維径が約40μmのカディス繊維を微細繊維として用いた。また、粒状接着剤として平均粒径が40μmの粉末エポキシ樹脂を用い、主構成繊維と微細繊維の重量比率を60:40とした。それ以外は、実施例1と同様にして、繊維ボードを作製した。
(実施例7)
機械的に解繊処理して得られた平均繊維長が約70mm及び平均繊維径が約200μmであるココヤシ繊維を主構成繊維として用いた。また、ドンゴロス袋を切断し、反毛して得られた平均繊維長20mm、繊維径30μmのジュート繊維を微細繊維として用いた。また、粒状接着剤として平均粒径が40μmの粉末エポキシ樹脂を用い、主構成繊維と微細繊維の重量比率を60:40とし、成形後のボード密度を600kg/mとした。それ以外は、実施例1と同様にして、繊維ボードを作製した。
(比較例6)
主構成繊維と微細繊維の重量比率を100:0とし、粒状接着剤の添加量を40重量%とする以外は、実施例4と同様にして、繊維ボードを作製した。
上記の実施例4〜7、及び比較例6で作製した繊維ボードについて、ボード物性評価の結果を表2に示す。また、繊維ボード内部の実際の接着剤含有率、及び接着剤定着割合も表2に示す。
尚、ボード物性評価に先立って、透湿抵抗を測定したところ、実施例、比較例いずれの繊維ボードも、0.4〜0.6m・h・mmhg/gという値が得られ、極めて高い透湿性を有していることが分かった。
表2にみられるように、実施例4〜7の繊維ボードは、釘逆引き抜き抵抗、曲げ強度、剥離強度、吸水長さ変化率、吸水厚さ膨潤率いずれの特性もバランス良く優れていることが分かる。
比較例6の繊維ボードは、微細繊維を含まないことにより、粒状接着剤の定着割合が極めて低くなっている。また、比較例6の繊維ボードは、粒状接着剤添加量を実施例4と同様にしているにもかかわらず、ボード物性の低下が顕著である。つまり、比較例6に示すような、繊維ボードを構成する繊維として主構成繊維のみからなり、ボード密度が550kg/m程度まで低減された繊維ボードは、十分な接着強度が得られないため、強度特性や寸法安定性は大きく損なわれるものであった。
以上より、主構成繊維としてケナフ繊維やココヤシ繊維を用いた繊維ボード、微細繊維としてドンゴロス袋を解繊して得られた繊維やカディス繊維を用いた繊維ボードでも、軽量でありながら、高い透湿性を有し、強度、寸法安定性に優れていることが確認できた。また、粒状接着剤として粉末エポキシ樹脂を用いた繊維ボードにおいても、軽量でありながら、高い透湿性を有し、強度、寸法安定性に優れていることが確認できた。
ドンゴロス袋を解繊して得られた繊維やカディス繊維は、原料繊維の安定調達が可能であるという利点がある。また、使用済みのドンゴロス袋を廉価に購入可能であるため、より低コストで繊維ボードを製造することができる。
(実施例8)
バガス原料を解繊することにより、平均繊維長が約25mmで平均繊維径が約350μmであるバガス繊維を主構成繊維として得た。また、前記方法と同様にして、解繊度を高めることにより、平均繊維長が約10mm及び平均繊維径が約60μmであるバガス繊維を微細繊維として得た。この主構成繊維と微細繊維を用いる以外は、実施例1と同様にして、繊維ボードを作製した。
(実施例9)
機械的に解繊処理して得られた平均繊維長が約20mm及び平均繊維径が約30μmであるジュート繊維を微細繊維として用いる以外は、実施例8と同様にして、繊維ボードを作製した。
(実施例10)
機械的に解繊処理して得られた平均繊維長が約55mm及び平均繊維径が約150μmであるジュート繊維を主構成繊維として用いる以外は、実施例8と同様にして、繊維ボードを作製した。
(比較例7)
主構成繊維と微細繊維の重量比率を100:0とする以外は、実施例8と同様にして、繊維ボードを作製した。
上記の実施例8〜10、及び比較例7で作製した繊維ボードについて、ボード物性評価の結果を表3に示す。また、繊維ボード内部の実際の接着剤含有率、及び接着剤定着割合も表3に示す。
尚、ボード物性評価に先立って、透湿抵抗を測定したところ、実施例、比較例いずれの繊維ボードも、0.4〜0.6m・h・mmhg/gという値が得られ、極めて高い透湿性を有していることが分かった。
表3にみられるように、実施例8〜10の繊維ボードは、釘逆引き抜き抵抗、曲げ強度、剥離強度、吸水長さ変化率、吸水厚さ膨潤率いずれの特性もバランス良く優れていることが分かる。なかでも実施例10に示すように、主構成繊維であるジュート繊維と、微細繊維であるバガス繊維とを複合した構造とすることで、微細繊維と粒状接着剤が均一に分散され、主構成繊維の絡み合いが強固となり、特に釘逆引き抜き抵抗が優れたものとなる。
一方、比較例7の繊維ボードは、微細繊維を含まないことにより、粒状接着剤の定着割合が極めて低くなっている。また、比較例7の繊維ボードは、粒状接着剤添加量を実施例8と同様にしているにもかかわらず、ボード物性の低下が顕著である。つまり、比較例7に示すような、繊維ボードを構成する繊維として主構成繊維のみからなる繊維ボードは、十分な接着強度が得られないため、強度特性や寸法安定性は大きく損なわれるものであった。
以上より、主構成繊維や微細繊維としてバガス繊維を用いた繊維ボードにおいても、軽量でありながら、高い透湿性を有し、強度、寸法安定性に優れていることが確認できた。
バガス繊維のような、従来は廃棄されていた農産廃棄物を原料として利用可能とすることで、廃棄物を削減することができる。また、低コストで繊維ボードを製造することができる。
1 繊維ボード
2 主構成繊維
3 微細繊維

Claims (6)

  1. 繊維を粒状接着剤で接着して得られる繊維ボードであって、前記繊維は、植物繊維で形成される平均繊維長5mm以上100mm以下及び平均繊維径70μm以上400μm以下の主構成繊維と、麻系天然繊維、ヤシ繊維及び農産廃棄物繊維から選ばれる一種以上の植物繊維を平均繊維径20μm以上70μm未満の範囲に解繊した微細繊維との混合物であり、前記主構成繊維と前記微細繊維との混合比が、重量比で50:50〜90:10であることを特徴とする繊維ボード。
  2. 前記主構成繊維を形成する植物繊維が、麻系天然繊維、ヤシ繊維及び農産廃棄物繊維から選ばれる一種以上の植物繊維であることを特徴とする請求項1に記載の繊維ボード。
  3. 前記微細繊維が、前記主構成繊維の解繊度を高めて製造した繊維であることを特徴とする請求項2に記載の繊維ボード。
  4. 前記微細繊維が、前記主構成繊維の原料繊維を解繊して前記主構成繊維を製造した際に副次的に生成される繊維であることを特徴とする請求項2に記載の繊維ボード。
  5. 前記繊維が、ドンゴロス袋を解繊して得られる繊維であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の繊維ボード。
  6. 繊維ボードの密度が、500〜900kg/mの範囲であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の繊維ボード。
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