JP2014071156A - 位相差フィルムの製造方法、及び位相差フィルム用配向膜の評価方法 - Google Patents

位相差フィルムの製造方法、及び位相差フィルム用配向膜の評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】配向層の膨潤や欠陥がなく、配向不良のない位相差フィルムが得られる位相差フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】アクリル樹脂基材の一面側に、配向層と、位相差層とがこの順に設けられた位相差フィルムの製造方法であって、アクリル樹脂基材の一面側に、光配向性化合物を含む配向層用硬化性組成物を塗布し、乾燥し、光照射をすることにより、配向層を有する位相差フィルム用配向膜を形成する工程と、前記配向膜の前記配向層側表面に溶剤を滴下し、所定時間後に前記配向膜の前記アクリル樹脂基材側表面から検出される前記溶剤の量を測定することにより、前記配向膜における前記溶剤の浸透性度を算出する工程と、算出された前記配向膜における前記溶剤の浸透性度が許容されるか否かを判定する判定工程と、前記判定工程において、前記溶剤の浸透性度が許容されると判定された前記配向膜の前記配向層上に、重合性液晶化合物と前記溶剤を含む位相差層用硬化性組成物を塗布し、乾燥し、硬化して、位相差層を形成する工程とを有することを特徴とする、位相差フィルムの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、位相差フィルムの製造方法、及び位相差フィルム用配向膜の評価方法に関する。
従来より液晶表示装置においては、視角依存性の問題を改善するために、様々な技術が開発されており、その1つとして、複屈折性を示す位相差層を有する位相差フィルムが液晶セルと偏光板との間に配置された液晶表示装置が知られている(例えば、特許文献1〜2)。
上記位相差層を有する位相差フィルムとしては、樹脂基材上に、液晶材料を一定方向に配列させる配向規制力を有する配向膜と、当該配向膜上に形成され、一定方向に配列された液晶材料を含有する位相差層とを有するものが用いられている。
また、フラットパネルディスプレイとしては、従来、2次元表示のものが主流であったが、近年においては3次元表示可能なフラットパネルディスプレイが注目を集め始めている。そして、今後のフラットパネルディスプレイにおいては3次元表示可能であることが、その性能として当然に求められる傾向にあり、3次元表示可能なフラットパネルディスプレイの検討が幅広い分野において進められている。
フラットパネルディスプレイにおいて3次元表示をするには、通常、視聴者に対して何らかの方式で右目用の映像と、左目用の映像とを別個に表示することが必要とされる。右目用の映像と左目用の映像とを別個に表示する方法としては、例えば、パッシブ方式というものが知られている。このようなパッシブ方式の3次元表示方式について図を参照しながら説明する。図10はパッシブ方式で3次元映像を表示可能な液晶表示装置の一例を示す概略図である。図10に示すようにこの方式では、まず、フラットパネルディスプレイを構成する画素を、右目用映像表示画素と左目用映像表示画素の2種類の画素に分類し、ディスプレイ表示領域に右目用の画素と左目用の画素が隣接し合うようなパターン状に配列する。一方のグループの画素では右目用の映像を表示させ、他方のグループの画素では左目用の映像を表示させる。また、直線偏光板と当該画素の配列パターンに対応したパターン状の位相差層が形成されたパターン位相差フィルム(以下、単にパターン位相差フィルムということがある。)とを用い、右目用の映像と、左目用の映像とをそれぞれ円偏光に変換する。さらに、視聴者には右目用レンズと左目用レンズを採用した円偏光メガネを装着させ、右目用の映像が右目用レンズのみを通過し、かつ左目用の映像が左目用のレンズのみを通過するようにする。このようにして右目用の映像が右目のみに届き、左目用の映像が左目のみに届くようにすることによって3次元表示を可能となる。
このようなパッシブ方式では、上記パターン位相差フィルムと、対応する円偏光メガネとを用いることにより容易に3次元表示が可能なものにできるという利点がある。
上記パターン位相差フィルムとして、例えば、特許文献3には、ガラス基板上に配向規制力がパターン状に制御された光配向層と、当該光配向層上に形成され、液晶化合物の配列が上記光配向層のパターンに対応するようにパターニングされた位相差層(液晶層)とを有するパターン位相差板が開示されている。
位相差フィルムやパターン位相差フィルムは、いずれも液晶化合物が配向層によって一定方向に配列され、フィルム全体で、或いはフィルム中の各パターン内で、光軸が一定であることが求められる。
特開平3−67219号公報 特開平4−322223号公報 特開2005−49865号公報
従来、位相差フィルムに用いられる樹脂基材としては、トリアセチルセルロース(TAC)基材が主流であった。
本発明者らは、位相差フィルムの光学性能を更に向上させるために、上記TAC基材よりも膜厚方向の位相差が小さいアクリル樹脂基材を用いることを検討した。
しかしながら、アクリル樹脂基材の溶剤耐性を考慮すると、TAC基材を用いた場合と比較して、塗工液に使用可能な溶剤の種類が限定される。
本発明者らは、アクリル樹脂基材上に配向層を形成し、当該配向層上に、重合性化合物を均一に溶解乃至分散可能な後述する特定の溶剤を用いた位相差層形成用硬化性組成物を塗布した後に、溶剤が配向層に浸透して配向層が膨潤したり、更に、溶剤がアクリル樹脂基材に浸透して、当該基材が変形するとともにクラック状の欠陥を生じる場合があるとの知見を得た。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、配向層の膨潤や欠陥がなく、配向不良のない位相差フィルムが得られる位相差フィルムの製造方法、及び、配向層の耐溶剤性を簡易に評価することができる位相差フィルム用配向膜の評価方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アクリル樹脂基材上に配向層を有する位相差フィルム用配向膜において、当該配向膜の配向層側表面に溶剤を滴下し、所定時間後にアクリル樹脂基材側表面から検出される前記溶剤の量と、配向層の耐溶剤性との間に相関があるとの知見を得た。
本発明は、係る知見に基づいて完成したものである。
本発明に係る位相差フィルムの製造方法は、
アクリル樹脂基材の一面側に、配向層と、位相差層とがこの順に設けられた位相差フィルムの製造方法であって、
アクリル樹脂基材の一面側に、光配向性化合物を含む配向層用硬化性組成物を塗布し、乾燥し、光照射をすることにより、配向層を有する位相差フィルム用配向膜を形成する工程と、
前記配向膜の前記配向層側表面に溶剤を滴下し、所定時間後に前記配向膜の前記アクリル樹脂基材側表面から検出される前記溶剤の量を測定することにより、前記配向膜における前記溶剤の浸透性度を算出する工程と、
算出された前記配向膜における前記溶剤の浸透性度が許容されるか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程において、前記溶剤の浸透性度が許容されると判定された前記配向膜の前記配向層上に、重合性液晶化合物と前記溶剤を含む位相差層用硬化性組成物を塗布し、乾燥し、硬化して、位相差層を形成する工程とを有することを特徴とする。
本発明に係る位相差フィルム用配向膜の評価方法は、
アクリル樹脂基材の一面側に、配向層と、位相差層とがこの順に設けられた位相差フィルムに用いられる位相差フィルム用配向膜の評価方法であって、
アクリル樹脂基材の一面側に、光配向性化合物を含む配向層用硬化性組成物を塗布し、乾燥し、光照射をすることにより、配向層を有する位相差フィルム用配向膜を形成する工程と、
前記配向膜の前記配向層側表面に溶剤を滴下し、所定時間後に前記配向膜の前記アクリル樹脂基材側表面から検出される前記溶剤の量を測定することにより、前記配向膜における前記溶剤の浸透性度を算出する工程と、
算出された前記配向膜における前記溶剤の浸透性度が許容されるか否かを評価する工程とを有することを特徴とする。
本発明の位相差フィルムの製造方法、及び、本発明の位相差フィルム用配向膜の評価方法において前記溶剤の浸透性度は、前記溶剤の量がフーリエ変換型赤外分光法により測定することにより算出されることが好ましい。
配向層の膨潤や欠陥がなく、配向不良のない位相差フィルムが得られる位相差フィルムの製造方法、及び、配向層の耐溶剤性を簡易に評価することができる位相差フィルム用配向膜の評価方法を提供することができる。
図1は、本発明に用いられる配向膜の一例を示す概略図である。 図2は、本発明に係る位相差フィルム用配向膜の評価方法における配向膜形成工程の一例を示す概略図である。 図3は、本発明に係る位相差フィルム用配向膜の評価方法の一例を示す工程図である。 図4は、本発明に用いられる位相差フィルム用配向膜の他の一例を示す概略図である。 図5は、本発明に係る位相差フィルム製造方法により得られる位相差フィルムの一例を示す概略図である。 図6は、本発明に係る位相差フィルム製造方法により得られる位相差フィルムの別の一例を示す概略図である。 図7は、試験例1で得られた位相差フィルム1の位相差層側表面の光学顕微鏡写真である。 図8は、試験例3で得られた位相差フィルム3の位相差層側表面の光学顕微鏡写真である。 図9は、試験例4で得られた位相差フィルム4の位相差層側表面の光学顕微鏡写真である。 図10は、パッシブ方式で3次元映像を表示可能な液晶表示装置の一例を示す概略図である。
以下、本発明に係る位相差フィルム用配向膜の評価方法、及び位相差フィルムの製造方法を順に説明する。
なお、本発明において光軸とは、遅相軸を意味する。
本発明において、配向規制力とは、液晶材料を特定方向に配列させる相互作用を意味する。
本発明において、位相差フィルムとは、特に断りがない限りパターン位相差フィルムをも含むものである。
また、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを表す。
[位相差フィルム用配向膜の評価方法]
本発明に係る位相差フィルム用配向膜の評価方法は、
アクリル樹脂基材の一面側に、配向層と、位相差層とがこの順に設けられた位相差フィルムに用いられる位相差フィルム用配向膜の評価方法であって、
アクリル樹脂基材の一面側に、光配向性化合物を含む配向層用硬化性組成物を塗布し、乾燥し、光照射をすることにより、配向層を有する位相差フィルム用配向膜を形成する工程(以下、単に配向膜形成工程ということがある。)と、
前記配向膜の前記配向層側表面に溶剤を滴下し、所定時間後に前記配向膜の前記アクリル樹脂基材側表面から検出される前記溶剤の量を測定することにより、前記配向膜における前記溶剤の浸透性度を算出する工程(以下、単に算出工程ということがある。)と、
算出された前記配向膜における前記溶剤の浸透性度が許容されるか否かを評価する工程(以下、単に評価工程ということがある。)とを有することを特徴とする。
このような本発明の位相差フィルム用配向膜の評価方法について図を参照しながら説明する。
図1は、本発明に用いられる配向膜の一例を示す概略図である。本発明の位相差フィルム用配向膜20は、図1に示されるように、アクリル樹脂基材1上に、配向層2が設けられたものである。
図2は、本発明に係る位相差フィルム用配向膜の評価方法における配向層形成工程の一例を示す工程図である。
まず、図2(A)に示すように、アクリル樹脂基材1の一面側に光配向性化合物を含む配向層用硬化性組成物を塗布し、塗膜3を形成する。次いで、図2(B)に示すように、塗膜3を乾燥させ、乾燥した塗膜4とする。次いで、図2(C)に示すように、配向層4が設けられた側から光照射5をすることで、乾燥した塗膜4が、光配向すると同時に硬化して配向層2が形成され、位相差フィルム用配向膜20が得られる。
図3は、本発明の位相差フィルム用配向膜の評価方法の一例を示す工程図である。
図2のように形成された位相差フィルム用配向膜20の配向層2側表面に溶剤6を公知の滴下手段7により滴下8する(図3(A))。次いで、所定時間経過後の位相差フィルム用配向膜30の前記アクリル樹脂基材1側表面9から検出される溶剤の量を測定することにより、前記配向膜における前記溶剤の浸透性度を算出する(図3(B))。算出された溶剤の浸透性度により位相差フィルム用配向膜を評価する。
上記本発明に係る位相差フィルム用配向膜の評価方法により、配向膜が溶剤耐性に優れ、配向層の膨潤や欠陥が生じにくいことを簡易に評価することができる原理としては、未解明の部分もあるが次の通りである。
溶剤が浸透しやすい配向層は、溶剤が浸透しにくい配向層と比較して、位相差層用硬化性組成物を塗布した際に、当該位相差層用硬化性組成物から移行してくる溶剤の量が相対的に多く、また、溶剤が配向層中に拡散しやすいものと推定される。配向層内に移行した溶剤は、配向層を膨潤させることがある。また、配向層と位相差層との界面においては、当該溶剤により配向層に含まれる光配向性化合物等と、位相差層に含まれる重合性液晶化合物等とが混合しやすくなる。そのため、配向層に溶剤が浸透しやすい場合には、当該配向層は膨潤やクラック状の欠陥を生じやすいものと推測される。また、膨潤やクラック状の欠陥が生じた配向層は、所望の配向性を生じないため、得られた位相差フィルムは配向不良を有するものと推測される。
これらのことから、配向膜における溶剤の浸透性度と、配向層の膨潤やクラック状の欠陥、及び得られる位相差フィルムの配向不良との間には相関があると推定される。従って、本発明においては、位相差フィルム用配向膜における溶剤の浸透性度を測定することにより、位相差層を形成することなく、溶剤浸透性度に基づいて、配向層の膨潤、クラック状の欠陥、及び位相差フィルムの配向不良を簡易に評価することができる。
本発明の評価方法は、少なくとも配向層形成工程と、算出工程と、評価工程とを有するものであり、必要に応じて他の工程を有していてもよいものである。
以下、このような本発明の評価方法の各工程について順に説明する。
<配向層形成工程>
配向層形成工程は、アクリル樹脂基材の一面側に、光配向性化合物を含む配向層用硬化性組成物を塗布し、乾燥し、光照射をすることにより、配向層を有する位相差フィルム用配向膜を形成する工程である。以下順に説明する。
(アクリル樹脂基材)
本発明におけるアクリル樹脂基材は、光学フィルムの用途で用いられる従来公知のアクリル樹脂基材の中から適宜選択すればよい。例えば、(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸又はその誘導体等の単量体を重合して得られるアクリル樹脂から形成される基材が挙げられる。これらの中で、透明性及び耐候性の点で、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル単位を主構成成分とする共重合体、又はスチレン−メタクリル酸メチル共重合体の基材が好ましい。
アクリル樹脂基材の厚みは、位相差フィルムの用途等に応じて、必要な自己支持性を付与できる範囲内で適宜設定すればよく、通常、0.02〜10mm程度の範囲内である。
(配向層)
配向層は、配向規制力を有し、位相差層用硬化性組成物に含まれる液晶材料を一定方向に配列させるための層である。
本発明において、配向層は、光配向性化合物を含む配向層用硬化性組成物を用いて形成する。当該配向層用硬化性組成物の組成は、光配向性化合物を含めば、特に限定されず、配向規制力を付与する手段との組み合わせにより適宜選択される。本発明において、硬化性とは、化学反応を経て硬くなる性質をいう。硬化性組成物には、通常、反応性基を有する化合物が含まれる。反応性基としては、光二量化反応性基、重合性官能基、熱硬化性官能基などが挙げられる。
本発明の配向層は、光配向性化合物を含むため、光配向法により配向規制力が付与される。
光配向性化合物としては、例えば、シンナメート、クマリン、ベンジリデンフタルイミジン、ベンジリデンアセトフェノン、ジフェニルアセチレン、スチルバゾール、ウラシル、キノリノン、マレインイミド、または、シンナミリデン酢酸誘導体を有するポリマーを例示することができる。なかでも、シンナメート、または、クマリンの少なくとも一方を有するポリマー、シンナメートおよびクマリンを有するポリマーが好ましく用いられる。また、例えば、特開平9−118717号公報、特表平10−506420号公報、特表2003−505561号公報、および、WO2010/150748号公報に記載された化合物を挙げることができる。
配向層用硬化性組成物は、必要に応じて光配向材料以外の化合物を含むものであっても良い。このような化合物としては、配向層の配向規制力を損なわないものであれば特に限定されない。例えば、重合性官能基を有するモノマー又はオリゴマー(以下単に、重合性モノマー、重合性オリゴマーという場合がある。)が好適に用いられる。
本発明に用いられる上記重合性モノマー又は重合性オリゴマーとしては、例えば、アクリレート系の重合性官能基を有する単官能モノマー(例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン)及び多官能モノマー(例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリエチレン(ポリプロピレン)グリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ポリ(メタ)アクリレート(例えば、イソシアヌル酸EOジアクリレート等))や、ビスフェノールフルオレン誘導体(例えば、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレンジエポキシ(メタ)アクリレート)等を単体もしくは混合したものとして用いることができる。
配向層用硬化性組成物に用いられる溶剤は、配向層用硬化性組成物中の各成分を均一に溶解乃至分散することができ、前記アクリル樹脂基材を溶解しない溶剤の中から適宜選択して用いることができる。
このような溶剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル系溶剤;アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン等のケトン系溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の塩素系脂肪族炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の非塩素系芳香族炭化水素系溶剤;アセトニトリル等のニトリル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶剤;クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素含有溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。当該溶剤は、さらに水を含んでいてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等、アクリル樹脂基材への浸透性を有する溶剤を用いることにより、アクリル樹脂基材の配向層側の領域に、光配向性化合物が浸透した浸透層を形成してもよい。
溶剤は、1種類であっても2種類以上を組み合わせてもよい。配向層用硬化性組成物中の溶剤の含有量は、適宜調整すればよい。塗工性の点から、溶剤の含有量は、配向層用硬化性組成物全体に対して、2〜10質量%であることが好ましい。
(塗布)
塗布方法は、アクリル樹脂基材表面に配向層用硬化性組成物を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法、マイクログラビアコート法、スプレーコート法、スピンコート法等の公知の方法が用いられる。
また、アクリル樹脂基材上への配向層用硬化性組成物の塗工量は、得られる配向層が所望の配向規制力を発現するものであればよく、適宜調整すればよい。中でも、得られる配向層の厚さが1〜1000nmとなることが好ましく、50〜300nmとなることがより好ましい。配向層の厚さが上記下限値以上であれば、配向層にクラックが生じにくい。
(乾燥)
前記塗布方法のいずれかで塗布した後、配向層用硬化性組成物中に含まれる溶剤を乾燥する。ここで固形分濃度、塗布液温度、乾燥温度、乾燥風の風速、乾燥時間、乾燥ゾーンの溶剤雰囲気濃度等を選定することにより、浸透層の厚みを調整できる。特に、乾燥条件の選定によって浸透層の厚みを調整する方法が好ましい。
具体的には、塗布直後に、ブロアー等で空気を吹き付けながら乾燥してもよい。具体的な乾燥温度としては、例えば、30℃〜120℃が挙げられ、40〜110℃が好ましい。また、乾燥風速としては0.2m/s〜50m/sであることが好ましく、乾燥時間としては20秒〜3分、好ましくは30秒〜2分程度の範囲内で適宜調整することが好ましい。また、浸透層の形成や、浸透層の厚みを厚くするために、空気を吹き付けず20〜30℃で自然乾燥してもよい。
(光照射)
光照射は、従来公知の方法の中から適宜選択すればよい。照射光としては、例えば、紫外線、可視光、電子線、電離放射線等が使用される。紫外線を照射する場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等を使用することができる。
配向層用硬化性組成物が塗布された側から光照射をしてもよく、配向層用硬化性組成物が塗布された面とは反対のアクリル樹脂基材側から光照射をしてもよい。
照射量は、配向層用硬化性組成物中に含まれる光配向性化合物が配向し、硬化できる露光量となるように適宜調整すればよい。
(浸透層)
本発明においては、光照射をすることで、乾燥した塗膜が、光配向すると同時に硬化させられることにより、配向層が形成されると共に、アクリル樹脂基材に前記光配向性化合物が浸透した浸透層を形成してもよい。ここで浸透層とは、少なくとも、アクリル樹脂基材の成分と、光配向性化合物とが混合した層をいう。図4は、本発明に用いられる位相差フィルム用配向膜の他の一例を示す概略図である。図4の例では、アクリル樹脂基材1上に、浸透層10を介して、配向層2が設けられている。
本発明においては、アクリル樹脂基材と配向層との密着性を向上することができる点から、浸透層を有することが好ましい。
当該浸透層の存在は、例えば、位相差フィルム用配向膜や位相差フィルムの断面の電子顕微鏡写真、断面の顕微IRによるマッピングやTOF−SIMS法によって、確認することができる。
また、パターン位相差フィルムを製造することが可能な、パターン位相差フィルム用配向膜の製造方法は、例えば、特開2012−14064号公報に記載の方法を用いることができる。
<算出工程>
算出工程は、前記配向膜の前記配向層側表面に溶剤を滴下し、所定時間後に前記配向膜の前記アクリル樹脂基材側表面から検出される前記溶剤の量を測定することにより、前記配向膜における前記溶剤の浸透性度を算出する工程である。
溶剤を滴下する方法は、所定量の溶剤を滴下できる方法であればよく、適宜選択すればよい。例えば、滴下手段としてマイクロシリンジ等を用いて所定量を滴下する方法などが挙げられる。滴下量は評価される位相差フィルム用配向膜のアクリル樹脂基材の厚み等を考慮し、所定時間後に基材側表面から溶剤が検出できる程度の量であればよい。滴下量としては、前記配向膜1cmあたり1〜10μlとすることが好ましい。
配向膜に対して、位相差層用硬化性樹脂組成物に適用可能な溶剤を評価する場合には、位相差層用硬化性組成物に用いることが可能な溶剤の中から適宜選択して用いればよい。具体的には、例えば、メチルイソブチルケトン(MIBK)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、シクロペンタノン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサン、ベンゼン、トルエンよりなる群から選択される1種以上が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、配向膜の耐溶剤性を評価する場合には、浸透性の高い溶剤を代表的に選択して用いてもよい。浸透性の高い溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)やプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等が挙げられる。
溶剤を滴下してから所定時間後に、前記配向膜の前記アクリル樹脂基材側表面から前記溶剤の量を測定する。なお、本発明において、「溶剤の量」とは、溶剤の質量のような絶対量に限られず、対比可能な相対量であってもよい。対比可能な相対量とは、例えば、同一の測定方法及び同一の測定条件で測定することにより得られた、溶剤の絶対量と相関のある測定値等が挙げられる。
アクリル樹脂基材側表面における溶剤の量の測定方法は、公知の方法から適宜選択すればよい。例えば、所定時間後にアクリル樹脂基材側表面をフーリエ変換型赤外分光法(FT−IR法)の全反射測定法(ATR法)により、溶剤に由来するピークのピーク強度を測定する方法等が挙げられる。
前記所定時間は、アクリル樹脂基材の厚み等に応じて、適宜設定すればよいものであるが、通常、100〜600秒の範囲内で、好ましくは、150〜450秒の範囲内で設定することができる。
測定された上記溶剤の量から、前記配向膜における前記溶剤の浸透性度を算出する。本発明において浸透性度とは、前記配向膜における溶剤の浸透しやすさを表すものであり、浸透性度と溶剤の浸透しやすさとの間に相関関係を有するものであれば、どのように算出されたものであってもよい。
算出工程の具体例としては、例えば、以下の方法とすることができる。
まず、評価する位相差フィルム用配向膜の基材側表面を、フーリエ変換型赤外分光法の全反射測定法(ATR法)により、溶剤に特徴的な吸収帯の吸光度A、とアクリル基材に特徴的な、例えばC=C結合由来の吸収帯の吸光度Bを測定する。
次に、当該位相差フィルム用配向膜の配向膜側表面に、マイクロシリンジ等を用いて、溶剤を所定量滴下し、滴下から所定時間経過後に、当該位相差フィルム用配向膜の基材側表面を再度ATR法により、前記溶剤に特徴的な吸収帯の吸光度A、とアクリル基材に特徴的な吸収帯の吸光度Bを測定する。
得られた測定値から、下記式(1)により算出される値を、位相差フィルム用配向膜における溶剤の浸透性度とすることができる。
式(1): 浸透性度 = (A/B) − (A/B
<評価工程>
評価工程は、前記算出工程により算出された配向膜における溶剤の浸透性度により、当該配向膜の溶剤浸透性が、許容されるか否かを評価する工程である。
前記算出された配向膜における溶剤の浸透性度の値を、予め設定された所定値と対比することにより、位相差フィルム用配向膜の膨潤や欠陥の生じにくさを評価することができる。膨潤や欠陥が生じにくいと評価された配向膜は、配向不良のない位相差フィルムの製造に適している。
所定値は、位相差フィルム用配向膜が膨潤や欠陥を生じにくいと判定できる値を適宜設定すればよい。例えば、事前に配向膜の膨潤や欠陥と、上記算出工程により算出された浸透性度との相関関係を調べておき、膨潤や欠陥が許容できると判断される浸透性度の最大値を所定値として設定することができる。
[位相差フィルムの製造方法]
本発明に係る位相差フィルムの製造方法は、
アクリル樹脂基材の一面側に、配向層と、位相差層とがこの順に設けられた位相差フィルムの製造方法であって、
アクリル樹脂基材の一面側に、光配向性化合物を含む配向層用硬化性組成物を塗布し、乾燥し、光照射をすることにより、配向層を有する位相差フィルム用配向膜を形成する工程と、
前記配向膜の前記配向層側表面に溶剤を滴下し、所定時間後に前記配向膜の前記アクリル樹脂基材側表面から検出される前記溶剤の量を測定することにより、前記配向膜における前記溶剤の浸透性度を算出する工程と、
算出された前記配向膜における前記溶剤の浸透性度が許容されるか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程において、前記溶剤の浸透性度が許容されると判定された前記配向膜の前記配向層上に、重合性液晶化合物と前記溶剤を含む位相差層用硬化性組成物を塗布し、乾燥し、硬化して、位相差層を形成する工程(以下、単に位相差層形成工程とういうことがある。)とを有することを特徴とする。
上記位相差フィルムの製造方法により得られる位相差フィルムを、図を参照して説明する。図5は、本発明に係る位相差フィルム製造方法により得られる位相差フィルムの一例を示す概略図である。図6は、本発明に係る位相差フィルム製造方法により得られる位相差フィルムの別の一例を示す概略図である。
本発明の位相差フィルム30は、図5に例示されるように、アクリル樹脂基材1の少なくとも一面側に、配向層2と位相差層11とがこの順に設けられたものである。
本発明の位相差フィルムは、図6に例示されるように、アクリル樹脂基材1の一面側に、配向層2として、第一配向領域12Aと、第一配向領域12Aとは異なる配向性を有する第二配向領域12Bを有するパターン配向層12を有し、位相差層11として、第一位相差領域13Aと第一位相差領域13Aとは異なる方向に液晶化合物が配列された第二位相差領域13Bを有するパターン位相差層13を有するパターン位相差フィルム40であってもよい。
本発明の製造方法においては、溶剤の浸透性度が許容されると判定された配向膜の配向層上に位相差層を形成することにより、配向層の膨潤や欠陥がなく、配向不良のない位相差フィルムを得ることができる。
本発明の製造方法は、少なくとも前記配向層形成工程と、算出工程と、判定工程と、位相差層形成工程を有するものであり、必要に応じて他の工程を有していてもよいものである。
以下、このような本発明の製造方法を説明するが、前記配向層形成工程と、算出工程は、上記本発明に係る位相差フィルム用配向膜の評価方法と共通する工程であり、上述と同様であるため、ここでの説明は省略する。
<判定工程>
判定工程は、算出された前記配向膜における前記溶剤の浸透性度が許容されるか否かを判定する工程である。
算出された配向膜における溶剤の浸透性度の値を、予め設定された所定値と対比することにより、位相差フィルム用配向膜の膨潤や欠陥の生じにくさを判定することができる。
前記所定値は、位相差フィルムに求められる性能等により適宜設定すればよい。例えば、前記位相差フィルム用配向膜の評価方法における前記評価工程において記載ものと同様にして所定値を設定することができる。
上記算出された浸透性度に基づいて、予め設定された所定値と対比した結果、当該浸透性度が所定値以下であれば、溶剤の浸透性度が許容されると判定され、次の位相差層を形成する工程に用いられる。一方、溶剤の浸透性度が許容できないと判定された場合には、位相差層形成工程に用いない。
<位相差層形成工程>
位相差層形成工程は、前記溶剤の浸透性度が許容されると判定された前記配向膜の前記配向層上に、浸透性度が許容されると判定された前記溶剤と重合性液晶化合物と前記溶剤を含む位相差層用硬化性組成物を塗布し、乾燥し、硬化して、位相差層を形成する工程である。
位相差層は、重合性液晶化合物を含む位相差層用硬化性組成物の硬化物からなる層であり、前記配向層によって、液晶材料が一定方向に配列されたものである。
位相差層用硬化性組成物は、少なくとも、重合性液晶化合物と溶剤を含有するものであり、必要に応じて他の成分を含むものであってもよい。
重合性液晶化合物は、液晶分子内に重合性官能基を有し、光の照射によって光重合開始剤から発生したラジカル、または電子線等の作用により、液晶分子間で架橋することができるため位相差フィルムの安定性が向上する。例えば、重合性基を有する、ネマチック液晶性分子材料、コレステリック液晶性分子材料、カイラルネマチック液晶性分子材料、スメクチック液晶性分子材料、ディスコチック液晶性分子材料を挙げることができる。
位相差層の形成方法としては、所望の厚みの位相差層を精度良く塗工できる方法であれば特に限定されるものではない。塗布、乾燥、硬化の方法については、上記配向層形成工程で説明したのと同様の方法を用いることができる。
位相差層の厚みは、特に限定されないが、例えば1nm〜2000nmの範囲内で設定することができ、好ましくは、500nm〜1500nmである。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
[評価基準の作成]
評価、及び判定基準となる所定値を以下のように設定した。
(試験例1)
(1)位相差フィルム用配向膜1の製造
厚さが40μmで、塗工面の面積が25cmのアクリル樹脂基材の一面側に、光配向材料として光二量化反応型の光配向材料を含有する配向層用硬化性組成物を塗布し、100℃で乾燥させて乾燥後の膜厚が300nmの塗膜とした。当該塗膜に、第一の偏光紫外線を幅500μmのストライプパターンを有するマスクを介して照射した。次いで、第一の偏光紫外線の偏光軸とのなす角が90°の偏光軸を有する第二の偏光紫外線をマスクを介さずに照射して、ストライプパターンを有する膜厚が300nmの配向層を形成し、位相差フィルム用配向膜1を得た。なお、位相差フィルム用配向膜1は同一の方法で2つ作成し、後述する溶剤の量の測定と、位相差層の形成評価には、それぞれ別の位相差フィルム用配向膜1を用いた。
(2)溶剤の量の測定
まず、上記(1)で得られた位相差フィルム用配向膜1の基材側表面を、島津製作所製FTS6000を用いて、フーリエ変換型赤外分光法の全反射測定法(ATR法)により、C=O結合由来の吸収帯(1721cm−1)の吸光度A、及びC=C結合由来の吸収帯(1138cm−1)の吸光度Bを測定した。
次に、位相差フィルム用配向膜1の配向膜側表面に、マイクロシリンジを用いて、メチルイソブチルケトンを50μL滴下した。滴下から300秒経過後に、当該位相差フィルム用配向膜1の基材側表面を再度ATR法により、C=O結合由来の吸収帯(1721cm−1)の吸光度A、及びC=C結合由来の吸収帯(1138cm−1)の吸光度Bを測定したところ、A=0.162、B=0.218、A=0.218、B=0.282であった。
(3)浸透性度の算出
上記の測定値から、下記式(1)により算出される値を、位相差フィルム用配向膜1における溶剤の浸透性度とした。
式(1): 浸透性度 = (A/B) − (A/B
位相差フィルム用配向膜1における溶剤の浸透性度は0.0299であった。
(4)位相差層の形成評価
位相差フィルム用配向膜1の配向層上に、重合性液晶化合物とメチルイソブチルケトンを含む位相差層用硬化性組成物を塗布し、紫外線を照射することにより硬化させて、膜厚が1μmの位相差層を形成し、位相差フィルム1を得た。
得られた位相差フィルム1について、下記の方法により評価したところ、配向層に膨潤やクラック状の欠陥が見られず、位相差フィルム1には配向不良が認められなかった。図7に位相差フィルム1の位相差層側表面の光学顕微鏡写真(倍率:100倍)を示す。
<配向層の膨潤及び欠陥の評価>
得られた位相差フィルム1における配向層の膨潤は、目視により確認した。また、配向層の欠陥は、目視及び光学顕微鏡により、位相差フィルム1の位相差層側から確認した。
<位相差フィルムの配向不良の評価>
2枚の偏光板をクロスニコルに配置し、上記位相差フィルム1を、2枚の偏光板の間に入れて回転させ、黒輝度の濃淡ムラを目視で観察した。黒輝度に濃淡ムラがなければ、光軸ずれやリターデーションの変化がなく、配向層に部分的な配向不良が生じていないものと評価される。
(試験例2)
(1)位相差フィルム用配向膜2の製造
試験例1の(1)において、配向層の膜厚を1300nmに変更した以外は、試験例1の(1)と同様にして、位相差フィルム用配向膜2を得た。
(2)溶液の量、及び浸透性度の算出
試験例1の(2)及び(3)において、位相差フィルム用配向膜1の代わりに、位相差フィルム用配向膜2を用いた以外は、試験例1の(2)及び(3)と同様にして、溶剤の量を測定したところ、A=0.250、B=0.318、A=0.227、B=0.297であった。
上記測定値から浸透性度を算出した結果、位相差フィルム用配向膜2における溶剤の浸透性度は0.0167であった。
(3)位相差層の形成評価
試験例1の(4)において、位相差フィルム用配向膜1の代わりに、位相差フィルム用配向膜2を用いた以外は、試験例1の(4)と同様にして、位相差フィルム2を得た。得られた位相差フィルム2について前記試験例1の(4)と同様にして評価したところ、配向層に膨潤やクラック状の欠陥が見られず、位相差フィルム2には配向不良が認められなかった。
(試験例3)
(1)位相差フィルム用配向膜3の製造
試験例1の(1)において、塗工後に室温(25℃)の空気を送風して乾燥した以外は、試験例1の(1)と同様にして、位相差フィルム用配向膜3を得た。
(2)溶液の量、及び浸透性度の算出
試験例1の(2)及び(3)において、位相差フィルム用配向膜1の代わりに、位相差フィルム用配向膜3を用いた以外は、試験例1の(2)及び(3)と同様にして、溶剤の量を測定したところ、A=0.171、B=0.234、A=0.223、B=0.289であった。
上記測定値から浸透性度を算出した結果、位相差フィルム用配向膜3における溶剤の浸透性度は0.0409であった。
(3)位相差層の形成評価
試験例1の(4)において、位相差フィルム用配向膜1の代わりに、位相差フィルム用配向膜3を用いた以外は、試験例1の(4)と同様にして、位相差フィルム3を得た。得られた位相差フィルム3について前記試験例1の(4)と同様にして評価したところ、配向層に膨潤やクラック状の欠陥が見られ、位相差フィルム3には配向不良が認められた。図8に位相差フィルム3の位相差層側表面の光学顕微鏡写真(倍率:100倍)を示す。
(試験例4)
(1)位相差フィルム用配向膜2の製造
試験例1の(1)において、100℃で2分間乾燥させる代わりに、100℃で1分間乾燥した以外は、試験例1の(1)と同様にして、位相差フィルム用配向膜4を得た。
(2)溶液の量、及び浸透性度の算出
試験例1の(2)及び(3)において、位相差フィルム用配向膜1の代わりに、位相差フィルム用配向膜4を用いた以外は、試験例1の(2)及び(3)と同様にして、溶剤の量を測定したところ、A=0.166、B=0.226、A=0.227、B=0.296であった。
上記測定値から浸透性度を算出した結果、位相差フィルム用配向膜4における溶剤の浸透性度は0.0324であった。
(3)位相差層の形成評価
試験例1の(4)において、位相差フィルム用配向膜1の代わりに、位相差フィルム用配向膜4を用いた以外は、試験例1の(4)と同様にして、位相差フィルム4を得た。得られた位相差フィルム4について前記試験例1の(4)と同様にして評価したところ、配向層に膨潤やクラック状の欠陥が見られ、位相差フィルム4には配向不良が認められた。図9に位相差フィルム4の位相差層側表面の光学顕微鏡写真(倍率:100倍)を示す。
試験例1〜4の結果から、配向層の膨潤やクラック状の欠陥、及び位相差フィルムの配向不良と、浸透性度との間に相関がみられることが確認された。また、試験例1〜4の結果から、評価、及び判定基準となる所定値は0.0300と設定した。
(実施例1:位相差フィルム用配向膜の評価)
厚さが40μmで、塗工面の面積が25cmのアクリル樹脂基材の一面側に、光配向材料として、試験例1で用いた光配向材料とは別の光配向材料を含有する配向層用硬化性組成物を塗布し、100℃で乾燥させて乾燥後の膜厚が300nmの塗膜とした。当該塗膜に、第一の偏光紫外線を幅500μmのストライプパターンを有するマスクを介して照射した。次いで、第一の偏光紫外線の偏光軸とのなす角が90°の偏光軸を有する第二の偏光紫外線をマスクを介さずに照射して、ストライプパターンを有する膜厚が300nmの配向層を形成し、位相差フィルム用配向膜5を得た。
得られた位相差フィルム用配向膜5の基材側表面を、島津製作所製FTS6000を用いて、フーリエ変換型赤外分光法の全反射測定法(ATR法)により、C=O結合由来の吸収帯(1721cm−1)の吸光度A、及びC=C結合由来の吸収帯(1138cm−1)の吸光度Bを測定した。
次に、位相差フィルム用配向膜5の配向膜側表面に、マイクロシリンジを用いて、メチルイソブチルケトンを50μL滴下した。滴下から300秒経過後に、当該位相差フィルム用配向膜1の基材側表面を再度ATR法により、C=O結合由来の吸収帯(1721cm−1)の吸光度A、及びC=C結合由来の吸収帯(1138cm−1)の吸光度Bを測定したところ、A=0.190、B=0.259、A=0.220、B=0.289であった。
得られた測定値から、前記式(1)により、位相差フィルム用配向膜5における溶剤の浸透性度が0.219と算出された。
位相差フィルム用配向膜5における溶剤の浸透性度は0.0300以下であったので、位相差フィルム用配向膜5における溶剤の浸透性度が許容されるものと評価された。
(実施例2:位相差フィルムの製造)
実施例1において、溶剤の浸透性度が許容されると判定された位相差フィルム用配向膜5の配向層上に、試験例1で用いたものと同じ重合性液晶化合物とメチルイソブチルケトンを含む位相差層用硬化性組成物を塗布し、紫外線を照射することにより硬化させて、膜厚が1μmの位相差層を形成し、位相差フィルム5を得た。
実施例2で得られた位相差フィルム5について、前記試験法1の(4)と同様の方法により評価したところ、配向層に膨潤やクラック状の欠陥が見られず、位相差フィルム5には配向不良が認められなかった。
以上の結果から、本発明の位相差フィルム用配向膜の評価方法により、溶剤の浸透性度が許容されると評価された位相差フィルム用配向膜は、配向層が膨潤やクラック状の欠陥を生じにくいことが明らかとなった。
まて、上記の結果から、本発明の位相差フィルム製造方法は、溶剤の浸透性度が許容されると判定された配向膜を用いるため、配向不良のない位相差フィルムが得られることが明らかとなった。
1 アクリル樹脂基材
2 配向層
3 塗膜
4 乾燥した塗膜
5 光照射
6 溶剤
7 滴下手段
8 滴下
9 アクリル樹脂基材側表面
10 浸透層
11 位相差層
12 パターン配向層
12A 第一配向領域
12B 第二配向領域
13 パターン位相差層
13A 第一位相差領域
13B 第二位相差領域
20 配向膜
30 位相差フィルム
40 パターン位相差フィルム

Claims (4)

  1. アクリル樹脂基材の一面側に、配向層と、位相差層とがこの順に設けられた位相差フィルムの製造方法であって、
    アクリル樹脂基材の一面側に、光配向性化合物を含む配向層用硬化性組成物を塗布し、乾燥し、光照射をすることにより、配向層を有する位相差フィルム用配向膜を形成する工程と、
    前記配向膜の前記配向層側表面に溶剤を滴下し、所定時間後に前記配向膜の前記アクリル樹脂基材側表面から検出される前記溶剤の量を測定することにより、前記配向膜における前記溶剤の浸透性度を算出する工程と、
    算出された前記配向膜における前記溶剤の浸透性度が許容されるか否かを判定する判定工程と、
    前記判定工程において、前記溶剤の浸透性度が許容されると判定された前記配向膜の前記配向層上に、重合性液晶化合物と前記溶剤を含む位相差層用硬化性組成物を塗布し、乾燥し、硬化して、位相差層を形成する工程とを有することを特徴とする、位相差フィルムの製造方法。
  2. 前記溶剤の浸透性度は、前記溶剤の量がフーリエ変換型赤外分光法により測定することにより算出される、請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法。
  3. アクリル樹脂基材の一面側に、配向層と、位相差層とがこの順に設けられた位相差フィルムに用いられる位相差フィルム用配向膜の評価方法であって、
    アクリル樹脂基材の一面側に、光配向性化合物を含む配向層用硬化性組成物を塗布し、乾燥し、光照射をすることにより、配向層を有する位相差フィルム用配向膜を形成する工程と、
    前記配向膜の前記配向層側表面に溶剤を滴下し、所定時間後に前記配向膜の前記アクリル樹脂基材側表面から検出される前記溶剤の量を測定することにより、前記配向膜における前記溶剤の浸透性度を算出する工程と、
    算出された前記配向膜における前記溶剤の浸透性度が許容されるか否かを評価する工程とを有することを特徴とする、位相差フィルム用配向膜の評価方法。
  4. 前記溶剤の浸透性度は、前記溶剤の量がフーリエ変換型赤外分光法により測定することにより算出される、請求項3に記載の位相差フィルム用配向膜の評価方法。
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