JP2014070669A - 玉軸受用保持器及び玉軸受 - Google Patents

玉軸受用保持器及び玉軸受 Download PDF

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Abstract

【課題】自転公転する環境下で使用される玉軸受において、公転時の遠心力によって保持器に玉から作用する保持器ポケットを拡開しようとする力を抑制することが出来る玉軸受用保持器及び玉軸受を提供する。
【解決手段】略円弧状に膨出させた保持部と略平坦状に延出させた結合部とを周方向に沿って交互に連続させ、前記保持部の膨出方向が逆になるような向きで対向させて配置された一対の波状環と、当該一対の波状環の結合部に形成されたリベット孔を貫通しているリベットとを備え、当該リベットに加締め処理を施すことにより、転動体を保持可能な複数のポケットが周方向に沿って所定間隔で配列された保持器において、前記保持器の保持器外径をDo、保持器内径をDi、保持器ポケットPCDをDcとした場合、(Do−Dc)>(Dc−Di)なる関係とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば遊星歯車機構やスクロール圧縮機に用いられる玉軸受のように、軸受が自転しつつ公転する運動条件下で使用される玉軸受用保持器、及び当該保持器を組み込んだ玉軸受に関する。
従来、各種装置の回転機構を支持する軸受には、その使用目的や使用環境に応じた種々の保持器が用いられている。その一例として図3に示された深溝玉軸受1は、相対回転可能に対向配置された内輪2及び外輪4と、内外輪2、4間に転動自在に組み込まれた複数の転動体(玉)6とを備えており、内外輪2、4間には、各転動体6を1つずつ回転可能に保持する複数のポケット8pを有する円環状の波形保持器8が配置されている。
この波型保持器(以下単に「保持器」ともいう)8は、安価に製造でき耐熱性に優れているとの利点を有していることより、玉軸受用に汎用されているものであり、鋼板(例えば、SPCC材などの低炭素鋼)にプレス加工を施して、略円弧状に膨出させた保持部8sと略平坦状に延出させた結合部8jとを周方向に沿って交互に連続させた一対の波状環C1、C2(以下、第1及び第2波状環という)と、これら第1及び第2波状環C1、C2を相互に結合させるための複数のリベット10とを備えている。この場合、各保持部8s相互でポケット8pを形成するように、第1及び第2波状環C1、C2を保持部8sの膨出方向が逆になるような向きで対向配置させた状態で、その結合部8j同士をリベット10で結合することにより、複数のポケット8pが周方向に沿って所定間隔(図面では等間隔)で配列された1つの波形保持器8を構成している。
ところで、玉軸受が遊星歯車機構やスクロール圧縮機に用いられる場合、軸受が自転しつつ公転運動するため、単に自転する場合とは別に、公転時に保持器に作用する遠心力をも考慮する必要がある。即ち、保持器全体に公転中心から外方に向かう遠心力が作用し、保持器外径部において玉と保持器が定常的に接触する。この接触により、保持器のポケットを開く方向の力が繰り返し作用することを考慮する必要がある。
この保持器8に作用する力により保持器8が変形し、リベット10もそれに従い繰り返し変形するため、保持器8に作用する力が過大になるとリベット10が疲労破壊する場合も考えられる。
この保持器8の繰り返し変形に与える影響が大きいのは、図4に示すように、玉6と保持器8の接触力F(玉から保持器に作用する力)のうち、保持器を押し広げる分力(以下、「保持器拡開分力」という)Fxである。図4から明らかなように、玉6から保持器8に作用する接触力Fは、保持器拡開分力Fxと、Fxに直交するポケット軸線方向(図3、4におけるY−Y方向)分力Fyとに分解される。保持器拡開分力Fxを小さく抑えることにより、リベット10の繰り返し変形も小さく抑えることが可能となる。
この保持器拡開分力Fxは保持器8の玉6との接触部の形状により決まる値であり、玉6と保持器8とは、保持器8の外径側の内端8outで接触するため、当該内端8outの形状が重要になる。保持器8の内径側の内端8inとは玉は接触しないため、保持器拡開に関しては、内径側の内端8inは関与しない。従って、接触力Fの向きが、ポケット軸線方向Y−Yに近付くように延びているのが好ましい。
保持器の損傷を防ぐために、特許文献1、2に記載された軸受が提案されている。特許文献1に示された軸受は、個々の玉の進み遅れに起因しての保持器の損傷を防ぐために、ポケット内面の輪郭を中央の略直線状部と、この直線状部の両側に連なる湾曲部を有する形状とする事により、保持器にかかる荷重を緩和しようとするものである。
また、特許文献2に示された軸受は、「リベット加締前体積≦リベット加締必要体積」なる関係とすることにより、残留応力を小さくしようとするものである。
特開2007−270989号公報 特開2009−8164号公報
しかしながら、特許文献1に記載された軸受は、前述の保持器拡開分力を低減する構成については、なんら考慮されていない。ポケット形状は、ポケット軸線方向において内径側、外径側とも特に異なるところは無く、外径側のポケット形状は従来技術のものと同一であり、保持器拡開分力を低減する効果は得られない。
また、特許文献2に記載された軸受は、疲労破壊に影響がある平均応力を減少させ長寿命化に寄与するが、保持器拡開分力を低減するという技術的思想とは異なるアプローチを採るものである。
本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、保持器拡開分力を低減させることが出来る保持器を提供する事により、保持器の変形を抑制することが出来る玉軸受用保持器及び玉軸受を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の請求項1の発明は、
略円弧状に膨出させた保持部と略平坦状に延出させた結合部とを周方向に沿って交互に連続させ、前記保持部の膨出方向が逆になるような向きで対向させて配置された一対の波状環と、当該一対の波状環の結合部に形成されたリベット孔を貫通しているリベットとを備え、当該リベットに加締め処理を施すことにより、転動体を保持可能な複数のポケットが周方向に沿って所定間隔で配列された保持器において、
前記保持器の保持器外径をDo、保持器内径をDi、保持器ポケットPCDをDcとした場合、
(Do−Dc)>(Dc−Di)
なる関係がある玉軸受用保持器を特徴とする。
また、本発明の請求項2の発明は、
略円弧状に膨出させた保持部と略平坦状に延出させた結合部とを周方向に沿って交互に連続させ、前記保持部の膨出方向が逆になるような向きで対向させて配置された一対の波状環と、当該一対の波状環の結合部に形成されたリベット孔を貫通しているリベットとを備え、当該リベットに加締め処理を施すことにより、転動体を保持可能な複数のポケットが周方向に沿って所定間隔で配列された保持器において、
前記ポケットの曲率半径が外径側と内径側で異なり、外径側の曲率半径が内径側の曲率半径よりも小さい玉軸受用保持器を特徴とする。
また、本発明の請求項3の発明は、
略円弧状に膨出させた保持部と略平坦状に延出させた結合部とを周方向に沿って交互に連続させ、前記保持部の膨出方向が逆になるような向きで対向させて配置された一対の波状環と、当該一対の波状環の結合部に形成されたリベット孔を貫通しているリベットとを備え、当該リベットに加締め処理を施すことにより、転動体を保持可能な複数のポケットが周方向に沿って所定間隔で配列された保持器において、
当該保持器外径側のポケット溝深さが内径側のポケット溝深さよりも深い玉軸受用保持器を特徴とする。
また、本発明の請求項4の発明は、
相対回転可能に対向配置された内輪及び外輪と、当該内外輪間に転動自在に組み込まれた複数の転動体と、前記内外輪間に配置された当該各転動体を1つずつ回転可能に保持する複数のポケットを有する円環状の保持器とを有する玉軸受において、
当該保持器は請求項1〜3のいずれかに記載の保持器を用いる玉軸受を特徴とする。
本発明に係る玉軸受用保持器によれば、保持器拡開分力を低減することができるため、保持器変形が抑制できる。その結果、リベット変形も小さくなり、リベット損傷を抑制することができる。
また、本発明に係る玉軸受によれば、リベット変形が抑制された保持器を有する玉軸受を得ることが出来る。
本発明の第一実施形態の保持器及び玉軸受の部分断面図、 本発明の第二実施形態の保持器の一部を示す断面斜視図、 従来の保持器及び玉軸受を示す斜視図、 従来の保持器の一部を示す断面斜視図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基き説明する。なお、以下の実施形態の説明においては、前述した従来技術の改良であるため、改良部分を中心に図示し説明を進め、従来技術と同一部分については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一の実施形態の玉軸受用保持器18及び玉軸受11を示す斜視図である。当該保持器18に形成されたポケット18pのポケット面は所定の曲率を有する球面状を成しており、その径寸法は保持される玉16の直径寸法よりも大きな寸法に設定されている。
そして、ポケット軸線Y−Y方向において、保持器のポケットPCD(ピッチ円直径(Pitch Circle Diameter):各ポケットの中心点を相互に結んだ仮想円の直径)から保持器外径までの長さが、保持器のポケットPCDから保持器内径までの長さよりも長くなっている。即ち、保持器外径をDo、保持器内径をDi、保持器ポケットPCDをDcとした場合、
(Do−Dc)>(Dc−Di)
なる関係となっている。
また、保持器ポケットPCDの位置を溝底としたときの保持器外径側内端18out及び保持器内径側内端18inまでの距離である溝深さも、外径側の溝深さをHo、内径側の溝深さをHiとすると、
Ho>Hi
なる関係となっている。
従って、玉16と保持器18の接触点18outは、保持器ポケットPCDから保持器外径側内端18out及び内径側内端18inまでの距離が均等とされている場合に比べ保持器外径側にずれ、接触力Fの向きは均等の場合のfに比べポケット軸線Y−Y方向に近付く側に移動する。結果的に、この接触力Fの保持器拡開分力Fx(図4参照)は減少する。このため、保持器変形が抑制できる。その結果、リベット変形も小さくなりリベット損傷を抑制することができる。
[第二実施形態]
図2は、第二の実施形態の玉軸受用保持器28を示す斜視図である。当該保持器28に形成されたポケット28pは、ポケット軸線Y−Y方向において保持器28のポケットの曲率半径が変化している。即ち、保持器外径側の曲率半径をR1、保持器内径側の曲率半径をR2としたときに、
R1<R2
なる関係となっていて、保持器外径側がポケット中心方向に、より湾曲したような形状となっている。
従って、玉と保持器の接触点における接触力Fの向きは、単一の曲率半径を有する場合のfに比べ、ポケット軸線方向に近付く側に移動する。結果的に、この接触力Fの保持器拡開分力Fx(図4参照)は減少する。このため、保持器変形が抑制できる。その結果、リベット変形も小さくなりリベット損傷を抑制することができる。
なお、R1とR2の境界部は滑らかにつながっているのが好ましい。又、R1とR2の間に直線部等が介在していてもよい。
なお、第二の実施形態及びその変形例においては、ポケット面は所定の曲率とされていないため、保持器ポケットPCDは存在しない。従って、これらの場合には、最も膨出した部分を溝底とし、この位置を基準にしてポケット内端までの距離を測った値が溝深さとなる。
1、11 玉軸受
6、16 転動体(玉)
8、18、28 保持器
8p、18p、28p ポケット
10 リベット

Claims (4)

  1. 略円弧状に膨出させた保持部と略平坦状に延出させた結合部とを周方向に沿って交互に連続させ、前記保持部の膨出方向が逆になるような向きで対向させて配置された一対の波状環と、当該一対の波状環の結合部に形成されたリベット孔を貫通しているリベットとを備え、当該リベットに加締め処理を施すことにより、転動体を保持可能な複数のポケットが周方向に沿って所定間隔で配列された保持器において、
    前記保持器の保持器外径をDo、保持器内径をDi、保持器ポケットPCDをDcとした場合、
    (Do−Dc)>(Dc−Di)
    なる関係があることを特徴とする玉軸受用保持器。
  2. 略円弧状に膨出させた保持部と略平坦状に延出させた結合部とを周方向に沿って交互に連続させ、前記保持部の膨出方向が逆になるような向きで対向させて配置された一対の波状環と、当該一対の波状環の結合部に形成されたリベット孔を貫通しているリベットとを備え、当該リベットに加締め処理を施すことにより、転動体を保持可能な複数のポケットが周方向に沿って所定間隔で配列された保持器において、
    前記ポケットの曲率半径が外径側と内径側で異なり、外径側の曲率半径が内径側の曲率半径よりも小さいことを特徴とする玉軸受用保持器。
  3. 略円弧状に膨出させた保持部と略平坦状に延出させた結合部とを周方向に沿って交互に連続させ、前記保持部の膨出方向が逆になるような向きで対向させて配置された一対の波状環と、当該一対の波状環の結合部に形成されたリベット孔を貫通しているリベットとを備え、当該リベットに加締め処理を施すことにより、転動体を保持可能な複数のポケットが周方向に沿って所定間隔で配列された保持器において、
    当該保持器外径側のポケット溝深さが内径側のポケット溝深さよりも深いことを特徴とする玉軸受用保持器。
  4. 相対回転可能に対向配置された内輪及び外輪と、当該内外輪間に転動自在に組み込まれた複数の転動体と、前記内外輪間に配置された当該各転動体を1つずつ回転可能に保持する複数のポケットを有する円環状の保持器とを有する玉軸受において、
    当該保持器は請求項1〜3のいずれかに記載の保持器を用いることを特徴とする玉軸受。
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