JP2014066883A - 液体現像剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】トナー粒子の転写性および定着性に優れた液体現像剤を提供すること。
【解決手段】液体現像剤は、樹脂と顔料とを少なくとも含むトナー粒子が絶縁性液体に分散されてなる。樹脂は、結晶性樹脂と非結晶性樹脂とを含む。トナー粒子は、結晶性樹脂と非結晶性樹脂とが相溶せずに海島構造を形成してなる。海島構造は、海部分が結晶性樹脂で構成され、島部分が非結晶性樹脂で構成されている。顔料は、海島構造における海部分と島部分との界面上に存在している。
【選択図】図1

Description

本発明は、液体現像剤に関する。
電子写真方式の画像形成装置に用いられる現像剤としては、従来より粉体状の現像剤(所謂トナー)が用いられてきた。粉体状の現像剤では、飛散防止などの観点から粒径を大きくする(たとえば5μm以上)ため、顔料の含有量を樹脂100質量部に対して10質量部以下としても高濃度の画像を得ることができる。
一方、液体現像剤では、トナー粒子が絶縁性液体に分散しているため、トナー粒子の粒径を小さくしても当該トナー粒子が大気中に飛散することを防止できる。このように、液体現像剤では、トナー粒子の粒径を小さくすることができるため、高画質の画像が得られる。しかし、トナー粒子の粒径を小さくすると高濃度の画像が得られ難くなるため、顔料の含有量を増やす必要がある。
顔料の含有量を増やすと、トナー粒子の表面に露出する顔料の量の増加、および、トナー粒子における顔料の分散性の悪化などを招く。そのため、トナー粒子に帯電している電荷が漏えいし、よって、トナー粒子の転写性の悪化を招くことがある。それだけでなく、顔料の含有量を増やすと、トナー粒子に含まれる樹脂の粘弾性が高くなるため(フィラー効果)、トナー粒子の定着性の悪化を招くことがある。
特許文献1には、感光体表面から被転写体への転写効率および繰り返し使用した際の耐性を向上させた液体現像剤が記載されている。具体的には、この文献には、顔料の分布をトナー粒子の表面に偏らせることにより樹脂がトナー粒子の表面に曝されることを抑制し、これによりトナー粒子同士が圧接されても接着されないということが記載されている。
特許文献2には、乾式現像用のトナーが結晶性ポリエステル樹脂を含むことによりトナーをより低温で定着させることができるということが記載されている。
特開2002−278170号公報 特開2008−139647号公報
特許文献1に記載の液体現像剤では、顔料がトナー粒子の表面に存在している。そのため、トナー粒子に帯電している電荷の漏えいを招き、よって、トナー粒子の帯電性を十分に安定させることができない場合がある。
また、特許文献2に記載のトナーでは、結晶性樹脂は、海島構造の島部分を構成する高分子の非結晶性樹脂に内包されており、海島構造の海部分は、低分子の非結晶性樹脂で構成されている。そのため、結晶性樹脂の含有率は、非結晶性樹脂の含有率よりも低いと考えられる。よって、顔料の含有量が増えると、フィラー効果によってトナー粒子の定着性が低下する場合がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、トナー粒子の転写性および定着性に優れた液体現像剤を提供することである。
本発明に係る液体現像剤は、樹脂と顔料とを少なくとも含むトナー粒子が絶縁性液体に分散されてなる。樹脂は、結晶性樹脂と非結晶性樹脂とを含む。トナー粒子は、結晶性樹脂と非結晶性樹脂とが相溶せずに海島構造を形成してなる。海島構造は、海部分が結晶性樹脂で構成され、島部分が非結晶性樹脂で構成されている。顔料は、海島構造における海部分と島部分との界面上に存在している。
本発明に係る液体現像剤では、トナー粒子の転写性および定着性に優れる。
本発明におけるトナー粒子の構成の一例を示す模式図である。 比較例3におけるトナー粒子の構成を示す模式図である。 比較例4におけるトナー粒子の構成を示す模式図である。 比較例5におけるトナー粒子の構成を示す模式図である。 比較例6におけるトナー粒子の構成を示す模式図である。 画像形成装置の構成の一例を示す断面図である。
以下、本発明にかかる液体現像剤について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
[液体現像剤の構成]
本実施の形態に係る液体現像剤は、複写機、プリンタ、デジタル印刷機、簡易印刷機などの電子写真方式の画像形成装置(後述)において用いられ、トナー粒子が絶縁性液体に分散されてなる。
[トナー粒子の構成]
図1は、本実施の形態におけるトナー粒子100の構成を示す模式図である。図1に示すトナー粒子100は、結晶性樹脂101と非結晶性樹脂102とが相溶せずに海島構造を形成してなる。海島構造における海部分は結晶性樹脂101で構成され、海島構造における島部分は非結晶性樹脂102で構成されている。よって、トナー粒子100では、結晶性樹脂101の含有率の方が非結晶性樹脂102の含有率よりも高くなる。ここで、結晶性樹脂は非結晶性樹脂に比べて少しの熱量で剛性が低下するということが知られている。そのため、本実施の形態におけるトナー粒子100では、顔料103の含有量が増えても当該トナー粒子100に含まれる樹脂の粘弾性が高くなることが防止されるので、定着性に優れたトナー粒子100を提供することができる。
また、本実施の形態におけるトナー粒子100では、結晶性樹脂101と非結晶性樹脂102とが相溶しない。よって、顔料103は、海島構造における海部分と島部分との界面上に存在することとなり、したがって、トナー粒子100の表面ではなくトナー粒子100の内部に存在する。これにより、顔料がトナー粒子の表面に露出することが防止されるので、転写性に優れたトナー粒子100を提供することができる。
[結晶性樹脂・非結晶性樹脂]
本明細書において、「結晶性」とは、樹脂の軟化点(以下「Tm」と略記する)と樹脂の融解熱の最大ピーク温度(以下「Ta」と略記する)との比(Tm/Ta)が0.8以上1.55以下であることを意味し、DSCにより得られた結果は階段状の吸熱量変化を示すのではなく明確な吸熱ピークを有することを意味する。また、本明細書において、「非結晶性」とは、TmとTaとの比(Tm/Ta)が1.55より大きいことを意味する。TmおよびTaは以下の方法で測定することができる。
高化式フローテスター(たとえば(株)島津製作所製の「CFT−500D」)を用いて、Tmを測定することができる。具体的には、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながらプランジャーにより上記測定試料に1.96MPaの荷重を与え、直径1mmおよび長さ1mmのノズルから上記測定試料を押し出す。そして、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」との関係をグラフに描く。プランジャーの降下量が当該降下量の最大値の1/2であるときの温度をグラフから読み取り、この値(測定試料の半分がノズルから押し出されたときの温度)をTmとする。
示差走査熱量計(たとえばセイコーインスツル(株)製の「DSC210」)を用いてTaを測定することができる。具体的には、まず、Taを測定するために用いる試料に対して前処理を行なう。試料を、130℃で溶融した後、130℃から70℃まで1.0℃/分の速度で降温させ、その後、70℃から10℃まで0.5℃/分の速度で降温させる。次に、DSC法により、試料を昇温速度20℃/分で昇温させて当該試料の吸発熱変化を測定し、「吸発熱量」と「温度」との関係をグラフに描く。このとき、20〜100℃に観測される吸熱ピークの温度をTa’とする。吸熱ピークが複数ある場合には最も吸熱量が大きいピークの温度をTa’とする。そして、試料を、(Ta’−10)℃で6時間保管した後、(Ta’−15)℃で6時間保管する。
次に、DSC法により、上記前処理が施された試料を降温速度10℃/分で0℃まで冷却してから昇温速度20℃/分で昇温させて吸発熱変化を測定し、「吸発熱量」と「温度」との関係をグラフに描く。そして、吸熱量が最大値をとったときの温度を融解熱の最大ピーク温度(Ta)とする。
<SP値>
溶解度パラメーター(SP値)は物質の凝集エネルギーの大きさを表す数値で、Fedorsによって提案された方法「Polym.Eng.Sci.,Vol14,P147(1974)」にしたがって下記式(1)により算出される。ここで、下記式(1)において、σは樹脂の溶解度パラメータを表わし、Δerは原子または原子団の蒸発エネルギーを表わし、ΣΔerは樹脂を構成する原子または原子団の蒸発エネルギーの合計を表わす。Δviは原子または原子団のモル体積を表わし、ΣΔviは樹脂を構成する原子または原子団のモル体積の合計を表わす。
σ=(ΣΔer/ΣΔvi)1/2・・・・・式(1)。
結晶性樹脂または非結晶性樹脂がビニル系共重合体である場合には、その溶解度パラメーター値は、各成分の溶解度パラメーター値とモル比との積により算出される。たとえば、上記ビニル系共重合体が単量体Xと単量体Yとの2種類の単量体より構成される場合、当該ビニル系共重合体の溶解度パラメータSPは下記式(2)により算出される。ここで、下記式(2)において、xおよびyはそれぞれ単量体Xおよび単量体Yの質量組成比(質量%)を表わし、MxおよびMyはそれぞれ単量体Xおよび単量体Yの分子量を表わし、SPxおよびSPyはそれぞれ単量体Xおよび単量体Yの溶解度パラメータの値を表わす。また、下記式(2)中のCは、下記式(3)により算出される
SP=[(x×SPx/Mx)+(y×SPy/My)]×1/C・・・・・式(2)
C=x/Mx+y/My・・・・・式(3)。
また、高分子材料の溶解度パラメーターの概要については、独立行政法人「物質・材料研究機構」提供のデーターベースPolyInfo(http://polymer.nims.go.jp)に記載の溶解度パラメーターの項目(http://polymer.nims.go.jp/guide/guide/p5110.html)を参照することが出来る。
本実施の形態では、結晶性樹脂の溶解度パラメータと非結晶性樹脂の溶解度パラメータとの差(以下では単に「溶解度パラメータの差」と記すことがある)が0.5(cal/cm31/2以上であることが好ましく、0.5(cal/cm31/2以上1.5(cal/cm31/2以下であることがより好ましい。これにより、結晶性樹脂と非結晶性樹脂とが相溶しないため、海島構造がトナー粒子に形成されることとなる。よって、海島構造における海部分と島部分との界面上に顔料が存在することとなる。したがって、トナー粒子の転写性が向上する。
一方、溶解度パラメータの差が0.5(cal/cm31/2未満であれば、結晶性樹脂と非結晶性樹脂とが互いに混ざり合うこととなり、よって、海島構造がトナー粒子に形成されない場合がある。そのため、顔料がトナー粒子の表面に露出することがあり、トナー粒子の転写性の低下を招く。また、溶解度パラメータの差が1.5(cal/cm31/2を超えると、結晶性樹脂と非結晶性樹脂との相溶性が大きく低下するため、結晶性樹脂と非結晶性樹脂とによるトナー粒子の形成が阻害されることがある。
<含有率>
トナー粒子に含まれる樹脂のうち結晶性樹脂の含有率(以下では単に「結晶性樹脂の含有率」と記す)は、トナー粒子に含まれる樹脂のうち非結晶性樹脂の含有率(以下では単に「非結晶性樹脂の含有率」と記す)よりも高いことが好ましい。これにより、海部分が結晶性樹脂からなり、島部分が非結晶性樹脂からなる海島構造が形成されることとなる。よって、顔料の含有量が増加してもトナー粒子に含まれる樹脂の粘弾性の上昇が抑制されるので、トナー粒子の定着性が向上する。
具体的には、結晶性樹脂の含有率は、60質量%以上90質量%以下であることが好ましく、70質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。別の言い方をすると、非結晶性樹脂の含有率は、10質量%以上40質量%以下であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
結晶性樹脂の含有率が60質量%を下回ると、非結晶性樹脂の含有率が40質量%を超えるため、海部分が非結晶性樹脂からなる海島構造が形成されることがある。その結果、顔料の含有量の増加に伴いトナー粒子に含まれる樹脂の粘弾性の上昇を招くことがあり、トナー粒子の定着性の低下を招くことがある。また、結晶性樹脂の含有率が90質量%を超えると、非結晶性樹脂の含有率が10質量%を下回ることとなり、よって、結晶性樹脂と非結晶性樹脂との界面が少なくなる。場合によっては、海島構造が形成されないことがある。そのため、結晶性樹脂と非結晶性樹脂との界面以外の部分(たとえばトナー粒子の表面)に存在する顔料の増量を招くため、トナー粒子の帯電性の低下を引き起こす。その結果、トナー粒子の転写性の低下を招くことがある。
<材料>
本実施の形態における結晶性樹脂および非結晶性樹脂は、特に限定されず、実質的に絶縁性液体に溶解しないものであれば熱可塑性樹脂であっても良いし熱硬化性樹脂であっても良い。結晶性樹脂および非結晶性樹脂としては、たとえば、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂およびポリカーボネート樹脂などが挙げられ、これらの樹脂の2種以上を併用したものであっても良い。
本実施の形態に係る液体現像剤が得られやすいという観点では、結晶性樹脂および非結晶性樹脂として好ましくは、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、および、エポキシ樹脂の少なくとも1つであり、より好ましくは、ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂の少なくとも1つである。
<ビニル樹脂>
ビニル樹脂は、重合性二重結合を有する単量体が単独重合されて得られた重合体であっても良いし、重合性二重結合を有する二種以上単量体が共重合されて得られた共重合体であっても良い。重合性二重結合を有する単量体としては、たとえば、重合性二重結合を有する炭化水素が挙げられる。重合性二重結合を有する炭化水素以外には、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、ニトリル基、ニトロ基、エポキシ基およびハロゲン元素などの置換基と重合性二重結合とを有する単量体が挙げられる。
重合性二重結合を有する炭化水素としては、たとえば、重合性二重結合を有する鎖状炭化水素(たとえば、エチレンなどのアルケンまたはイソプレンなどのアルカジエンなど);重合性二重結合を有する環状炭化水素(たとえば、シクロヘキセンなどのモノもしくはジシクロアルケン、または、シクロペンタジエンなどのモノもしくはジシクロアルカジエンなど);重合性二重結合を有する芳香族炭化水素(たとえば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン置換体またはビニルナフタレンなど)などが挙げられる。
カルボキシル基と重合性二重結合とを有する単量体としては、たとえば、不飽和モノカルボン酸[たとえば(メタ)アクリル酸など];不飽和ジカルボン酸(無水物)[たとえば(無水)マレイン酸またはフマル酸など];不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル(たとえば、マレイン酸モノメチルエステルまたはマレイン酸モノデシルエステルなど)などが挙げられる。本明細書では、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
スルホ基と重合性二重結合とを有する単量体としては、たとえば、アルケンスルホン酸(たとえば、ビニルスルホン酸など);スチレンスルホン酸(たとえば、α−メチルスチレンスルホン酸など);スルホ(ヒドロキシ)アルキル−(メタ)アクリレート[たとえば、スルホプロピル(メタ)アクリレートなど];スルホ(ヒドロキシ)アルキル(メタ)アクリルアミド[たとえば、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸など];アルキルアリルスルホコハク酸(たとえば、プロピルアリルスルホコハク酸など);ポリオキシアルキレン(たとえば、オキシエチレンまたはオキシプロピレンなど。ポリオキシアルキレンは、オキシアルキレンの単独重合体であっても良いし、オキシアルキレンの共重合体であっても良い。ポリオキシアルキレンがオキシアルキレンの共重合体である場合には、ランダム重合体であっても良いしブロック重合体であっても良い。);モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル(たとえば、ポリオキシエチレンモノメタクリレート硫酸エステルなど)などが挙げられる。
ホスホノ基と重合性二重結合とを有する単量体としては、たとえば、(メタ)アクリロイルオキシアルキルリン酸モノエステル[たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェートなど];(メタ)アクリロイルオキシアルキルホスホン酸(たとえば、2−アクリロイルオキシエチルホスホン酸など)などが挙げられる。
ヒドロキシル基と重合性二重結合とを有する単量体としては、たとえば、ヒドロキシスチレン、N−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
アミノ基と重合性二重結合とを有する単量体としては、たとえば、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アミド基と重合性二重結合とを有する単量体としては、たとえば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミドおよびN−ブチルアクリルアミドなどが挙げられる。ニトリル基と重合性二重結合とを有する単量体としては、たとえば、(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレンおよびシアノアクリレートなどが挙げられる。ニトロ基と重合性二重結合とを有する単量体としては、たとえば、ニトロスチレンなどが挙げられる。
エポキシ基と重合性二重結合とを有する単量体としては、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ハロゲン元素と重合性二重結合とを有する単量体としては、たとえば、塩化ビニル、臭化ビニルおよび塩化ビニリデンなどが挙げられる。
<ポリエステル樹脂>
ポリエステル樹脂としては、たとえば、ポリオールとポリカルボン酸などとの重縮合物などが挙げられる。水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]との当量比([OH]/[COOH])が好ましくは2/1〜1/5となるように、より好ましくは1.5/1〜1/4となるように、さらに好ましくは1.3/1〜1/3となるように、ポリオールとポリカルボン酸との比率を設定すれば良い。
ポリオールとしては、たとえば、ジオールおよび3価以上の価数を有するポリオールなどが挙げられる。ジオールとしては、たとえば、アルキレングリコール(たとえば、エチレングリコールまたは1,2−プロピレングリコールなど);アルキレンエーテルグリコール(たとえばジエチレングリコールまたはトリエチレングリコールなど);脂環式ジオール(たとえば1,4−シクロヘキサンジメタノールなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(以下「アルキレンオキサイド」を「AO」と略記する)付加物;ビスフェノール類のAO付加物[たとえば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下「エチレンオキサイド」を「EO」と略記する)など];ポリ−ε−カプロラクトンジオールなどが挙げられる。
3価以上の価数を有するポリオールとしては、たとえば、脂肪族多価アルコール(たとえばグリセリンまたはトリメチロールエタンなど);トリスフェノールのAO付加物(たとえば、トリスフェノールEO2〜4モル付加物など);ノボラック樹脂のAO付加物[たとえば、フェノールノボラックプロピレンオキサイド(以下「PO」と略記する)2モル付加物など];ポリフェノールのAO付加物(たとえば、ピロガロールEO4モル付加物など);アクリルポリオール[たとえば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとスチレンなどの他の重合性二重結合を有する単量体との共重合物など]などが挙げられる。
ポリカルボン酸としては、たとえば、ジカルボン酸および3価以上の価数を有するポリカルボン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、たとえば、アルカンジカルボン酸(たとえば、コハク酸またはアジピン酸など);アルケンジカルボン酸(たとえば、マレイン酸またはフマール酸など);分岐アルケンジカルボン酸(たとえば、ダイマー酸など);分岐アルカンジカルボン酸(たとえば、デシルコハク酸などのアルキルコハク酸など);芳香族ジカルボン酸(たとえば、フタル酸またはイソフタル酸など)などが挙げられる。
3価以上の価数を有するポリカルボン酸としては、たとえば、トリメリット酸またはピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸などが挙げられる。
<ポリウレタン樹脂>
ポリウレタン樹脂としては、たとえば、ポリイソシアネートと活性水素含有化合物{たとえば、水;ポリオール;ポリカルボン酸;ポリオールとポリカルボン酸との重縮合により得られるポリエステルポリオール;炭素数が6〜12のラクトンの開環重合体;ポリアミン;ポリチオール;これらの併用など}との重付加物であっても良いし、アミノ基含有ポリウレタン樹脂であっても良い。ポリオールおよびポリカルボン酸としては、それぞれ、上記<ポリエステル樹脂>で列挙したポリオールおよびポリカルボン酸が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、たとえば、芳香族ポリイソシアネート[たとえば、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(以下「TDI」と略記する)、または、2,4’−もしくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」と略記する)など];鎖状脂肪族ポリイソシアネート[たとえば、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下「HDI」と略記する)またはドデカメチレンジイソシアネートなど];環状脂肪族ポリイソシアネート[たとえば、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」と略記する)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、または、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)など];これらのポリイソシアネートの変性物(たとえば、ウレタン基またはカルボジイミド基などを含有する変性物)などが挙げられる。
ポリアミンとしては、たとえば、鎖状脂肪族ポリアミン(たとえば、エチレンジアミンなどのアルキレンジアミン、または、ジエチレントリアミンなどのポリアルキレンポリアミンなど);環状脂肪族ポリアミン(たとえば、1,3−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン、または、ピペラジンなどの複素環式ポリアミンなど);芳香族ポリアミン{たとえば、非置換芳香族ポリアミン(たとえば、1,2−フェニレンジアミンまたは2,4’−ジフェニルメタンジアミンなど);アルキル基を有する芳香族ポリアミン(たとえば、2,4−もしくは2,6−トリレンジアミン、または、クルードトリレンジアミンなど);ハロゲン原子、アルコキシ基およびニトロ基などの電子吸引基を有する芳香族ポリアミン(たとえば、メチレンビス−o−クロロアニリン、3−ジメトキシ−4−アミノアニリン、または、5−ニトロ−1,3−フェニレンジアミンなど);2級アミノ基を有する芳香族ポリアミン[たとえば、4,4’−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン]}などが挙げられる。
ポリチオールとしては、たとえば、アルカンジチオール(たとえば、エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールおよび1,6−ヘキサンジチオールなど)などが挙げられる。
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂としては、たとえば、ポリエポキシドの開環重合物;ポリエポキシドと活性水素含有化合物[たとえば、水、ジオール、ジカルボン酸、ポリアミンまたはポリチオールなど]との重付加物;ポリエポキシドとジカルボン酸の酸無水物との硬化物などが挙げられる。ジオールおよびジカルボン酸としては、それぞれ、上記<ポリエステル樹脂>で列挙したジオールおよびジカルボン酸が挙げられる。ポリアミンおよびポリチオールとしては、それぞれ、上記<ポリウレタン樹脂>で列挙したポリアミンおよびポリチオールが挙げられる。
ポリエポキシドとしては、たとえば、芳香族ポリエポキシ化合物[たとえば、多価フェノールのグリシジルエーテル体(たとえばビスフェノールFジグリシジルエーテルなど);芳香族多価カルボン酸のグリシジルエステル体(たとえばフタル酸ジグリシジルエステルなど);グリシジル芳香族ポリアミン(たとえばN,N−ジグリシジルアニリンなど)など]が挙げられる。ポリエポキシドの別の例としては、鎖状脂肪族ポリエポキシ化合物[たとえば、多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル体(たとえばエチレングリコールジグリシジルエーテルなど);多価脂肪酸のポリグリシジルエステル体(たとえばジグリシジルオキサレートなど);グリシジル脂肪族アミン(たとえばN,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミンなど)など]が挙げられる。ポリエポキシドのまた別の例としては、環状脂肪族ポリエポキシ化合物(たとえば、トリスグリシジルメラミン、または、ビニルシクロヘキセンジオキサイドなど)が挙げられる。
<ポリアミド樹脂>
ポリアミド樹脂としては、たとえば、ラクタムの開環重合体、アミノカルボン酸の重縮合体およびポリカルボン酸とポリアミンとの重縮合体などが挙げられる。
<ポリイミド樹脂>
ポリイミド樹脂としては、たとえば、脂肪族ポリイミド樹脂(たとえば、脂肪族カルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとから得られる縮合重合体など)、および、芳香族ポリイミド樹脂(たとえば、芳香族カルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンまたは芳香族ジアミンとから得られる縮合重合体など)などが挙げられる。
<ケイ素樹脂>
ケイ素樹脂としては、たとえば、分子鎖中に、ケイ素−ケイ素結合、ケイ素−炭素結合、シロキサン結合およびケイ素−窒素結合などの少なくとも1つを有する化合物(たとえば、ポリシロキサン、ポリカルボシランまたはポリシラザンなど)などが挙げられる。
<フェノール樹脂>
フェノール樹脂としては、たとえば、フェノール類(たとえば、フェノール、クレゾール、ノニルフェノール、リグニン、レゾルシンまたはカテコールなど)とアルデヒド類(たとえば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドまたはフルフラールなど)とから得られる縮合重合体などが挙げられる。
<メラミン樹脂>
メラミン樹脂としては、たとえば、メラミンとホルムアルデヒドとから得られる重縮合体などが挙げられる。
<ユリア樹脂>
ユリア樹脂としては、たとえば、尿素とホルムアルデヒドとから得られる重縮合体などが挙げられる。
<アニリン樹脂>
アニリン樹脂としては、たとえば、アニリンとアルデヒド類とを酸性下で反応して得られたものなどが挙げられる。
<アイオノマー樹脂>
アイオノマー樹脂としては、たとえば、重合性二重結合を有する単量体(たとえば、α−オレフィン系単量体またはスチレン系単量体など)とα,β−不飽和カルボン酸(たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、無水マレイン酸またはマレイン酸モノエチルエステルなど)との共重合体で当該共重合体中のカルボン酸の一部または全部がカルボン酸塩(たとえば、カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩またはカルシウム塩など)であるものなどが挙げられる。
<ポリカーボネート樹脂>
ポリカーボネート樹脂としては、たとえば、ビスフェノール類(たとえば、ビスフェノールA、ビスフェノールFまたはビスフェノールSなど)と、ホスゲンまたは炭酸ジエステルなどとの縮合重合体などが挙げられる。
<Mnなど>
結晶性樹脂としては、上記列挙した樹脂のいずれを用いても良い。しかし、本実施の形態にかかる液体現像剤を電子写真、静電記録または静電印刷などに使用される液体現像剤として用いる場合には、結晶性樹脂のMnは、好ましくは1000〜5000000であり、より好ましくは2000〜500000である。また、結晶性樹脂のの融点は、好ましくは20〜300℃であり、より好ましくは80〜250℃である。さらに、結晶性樹脂のガラス転移温度(以下では「Tg」と略記する)は、好ましくは20〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃である。これらを考慮して、結晶性樹脂の材料を選択することが好ましい。
非結晶性樹脂としては、上記列挙した樹脂のいずれを用いても良い。しかし、結晶性樹脂のMnは、好ましくは100〜5000000であり、好ましくは200〜500000であり、より好ましくは500〜500000である。
また、トナー粒子の粒度分布、ならびに、液体現像剤の粉体流動性、耐熱保管安定性および耐ストレス性などの観点から、非結晶性樹脂の融点は、液体現像剤を製造するときの温度以上であることが好ましい。非晶質性樹脂の融点が液体現像剤を製造するときの温度よりも低いと、トナー粒子同士が合一することを防止し難くなることがあり、トナー粒子が分裂することを防止し難くなることがある。それだけでなく、トナー粒子の粒度分布における分布幅が狭くなり難い、別の言い方をすると、トナー粒子の粒径のバラツキが大きくなるおそれがある。非結晶性樹脂の融点は、好ましくは0〜220℃であり、より好ましくは30〜200℃であり、さらに好ましくは40〜80℃である。以上を考慮して結晶性樹脂の材料を選択することが好ましい。
本明細書において、樹脂(ポリウレタン樹脂を除く)のMnは、テトラヒドロフラン(以下「THF」と略記する)の可溶分について、GPCを用いて、以下の条件で測定されたものである
測定装置:東ソー(株)製の「HLC−8120」
カラム:東ソー(株)製の「TSKgelGMHXL」(2本)と東ソー(株)製の「TSKgelMultiporeHXL−M」(1本)
試料溶液:0.25質量%のTHF溶液
カラムへの試料溶液の注入量:100μl
流速:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:東ソー(株)製の標準ポリスチレン(TSK standard PОLYSTYRENE)12点(分子量:500、1050、2800、5970、9100、18100、37900、96400、190000、355000、1090000、2890000)。
本明細書において、ポリウレタン樹脂のMnは、GPCを用いて、以下の条件で測定されたものである
測定装置:東ソー(株)製の「HLC−8220GPC」
カラム:「Guardcоlumn α」(1本)と「TSKgel α―M」(1本)
試料溶液:0.125質量%のジメチルホルムアミド溶液
カラムへの試料溶液の注入量:100μl
流速:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:東ソー(株)製の標準ポリスチレン(TSK standard PОLYSTYRENE)12点(分子量:500、1050、2800、5970、9100、18100、37900、96400、190000、355000、1090000、2890000)。
本明細書において、融点は、示差走査熱量測定装置(セイコーインスツル(株)製の「DSC20」または「SSC/580」など)を用いてASTM D3418−82に規定の方法に準拠して測定されたものである。
Tgは、DSC法により測定されても良いし、フローテスターを用いて測定されても良い。DSC法によりTgを測定する場合には、たとえば、示差走査熱量測定装置(セイコーインスツル(株)製の「DSC20」、「SSC/580」または「DSC6200」など)を用いてASTM D3418−82に規定の方法に準拠してTgを測定することが好ましい。
フローテスターを用いてTgを測定する場合には、高化式フローテスター(たとえば、(株)島津製作所製の「CFT500型」など)を用いることが好ましい。この場合のTgの測定条件の一例を以下に示す
荷重:3MPa
昇温速度:3.0℃/分
ダイ口径:0.50mm
ダイ長さ:10.0mm。
[顔料]
顔料としては、公知の顔料を特に限定することなく使用することができるが、コスト、耐光性および着色性などの観点から、以下に示す顔料を使用することが好ましい。
なお、ブラック以外の色彩(カラー画像)は基本的にマゼンタまたはレッド用の顔料、オレンジまたはイエロー用の顔料、および、グリーンまたはシアン用の顔料の減法混色により調色されることが好ましい。また、本実施の形態では、顔料は、以下に示す顔料の少なくとも2つを含んでいても良い。また、顔料として、以下に示す顔料に対して酸または塩基などによる表面処理を行ったものを使用しても良く、たとえば以下に示す顔料に酸性または塩基性のシナジストを併用しても良い。
黒色の顔料としては、たとえば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックおよびランプブラックなどのカーボンブラックが挙げられ、マグネタイトおよびフェライトなどの磁性粉を用いることも可能である。
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、たとえば、C.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同6、同7、同15、同16、同48:1、同53:1、同57:1、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同149、同150、同163、同166、同170、同177、同178、同184、同202、同206、同207、同209、同222、同238および同269などが挙げられる。
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、たとえば、C.I.ピグメントオレンジ31および同43などが挙げられ、C.I.ピグメントイエロー12、同14、同15、同17、同74、同83、同93、同94、同138、同155、同162、同180および同185なども挙げられる。
グリーンまたはシアン用の顔料としては、たとえば、C.I.ピグメントブルー2、同3、同15、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同60、同62および同66などが挙げられ、C.I.ピグメントグリーン7なども挙げられる。
本実施の形態におけるトナー粒子は、上記いずれかの顔料とともに以下に示す染料も含んでいても良い。染料としては、たとえば、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、および同122などが挙げられ、C.I.ソルベントイエロー2、同6、同14、同15、同16、同19、同21、同33、同44、同56、同61、同77、同79、同80、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、および同162などが挙げられ、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、および同95などが挙げられる。
本実施の形態におけるトナー粒子は、添加剤(たとえば、顔料用分散剤、充填剤、帯電防止剤、離型剤、荷電制御剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤および難燃剤など)をさらに含んでいても良い。以下では、顔料用分散剤について具体的に示す。
顔料用分散剤は、トナー粒子中に顔料を均一に分散させる作用を有するものであり、塩基性分散剤であることが好ましい。ここで、塩基性分散剤とは、以下に定義されるものをいう。すなわち、顔料用分散剤0.5gと蒸留水20mlとをガラス製スクリュー管に入れ、そのスクリュー管をペイントシェーカーを用いて30分間振り混ぜた後、ろ過する。ろ過により得られたろ液のpHをpHメータ(商品名:「D−51」、堀場製作所社製)を用いて測定し、そのpHが7より大きい場合を塩基性分散剤とする。なお、ろ過により得られたろ液のpHが7より小さい場合は、酸性分散剤と呼ぶものとする。
このような塩基性分散剤の種類は特に限定されない。たとえば、分散剤の分子内にアミノ基、アミド基、ピロリドン基、イミン基、または、ウレタン基などの官能基を有する化合物(分散剤)を挙げることができる。なお、分散剤とは、通常、分子中に親水性の部分と疎水性の部分とを有するいわゆる界面活性剤が該当する。しかし、顔料を分散させる作用を有するのであれば、本実施の形態における分散剤としては界面活性剤だけでなく種々の化合物が用いられる。
このような塩基性分散剤の市販品としては、たとえば、味の素ファインテクノ社製の「アジスパーPB−821」(商品名)、「アジスパーPB−822」(商品名)および「アジスパーPB−881」(商品名)など;日本ルーブリゾール社製の「ソルスパーズ28000」(商品名)、「ソルスパーズ32000」(商品名)、「ソルスパーズ32500」(商品名)、「ソルスパーズ35100」(商品名)および「ソルスパーズ37500」(商品名)などが挙げられる。
このような顔料用分散剤の添加量は、顔料に対して、好ましくは1〜100質量%であり、より好ましくは1〜40質量%である。顔料用分散剤の添加量が顔料に対して1質量%未満であれば、顔料の分散性が不十分となる場合がある。そのため、必要な画像濃度が達成できない場合があり、また定着強度が低下する場合がある。また、顔料用分散剤の添加量が顔料に対して100質量%を超えると、顔料を分散させるために必要な量を超える量の顔料用分散剤が添加されることとなる。そのため、余剰の顔料用分散剤が絶縁性液体中へ溶解する場合があり、トナー粒子の荷電性および定着強度などに悪影響を及ぼす場合がある。
このような顔料用分散剤としては、1種類を単独用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
[トナー粒子の物性]
トナー粒子は、0.5μm以上5μm以下の体積平均粒径を有することが好ましい。トナー粒子の体積平均粒径が0.5μm未満であれば、記録材へのトナー粒子の現像性が低下することがあり、画像劣化を招くことがある。また、画像濃度の向上を図ることが難しいことがある。一方、トナー粒子の体積平均粒径が5μmを超えると、高画質な画像が得られ難くなることがある。
本明細書では、体積平均粒径は、レーザー式粒度分布測定装置(たとえば(株)堀場製作所製の「LA−920」またはコールター社製の「マルチサイザーIII」);光学系としてレーザードップラー法を用いる「ELS−800」(大塚電子(株)製);フロー式粒子像分析装置(たとえばシスメックス社製の「FPIA−3000S」など)などを用いて測定可能である。異なる測定装置で体積平均粒径を測定したときにその測定値に差が生じた場合には、「ELS−800」での測定値を採用する。
トナー粒子の定着性と液体現像剤の耐熱保管安定性との観点から、液体現像剤におけるトナー粒子の含有率は、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは15〜45質量%であり、さらに好ましくは20〜40質量%である。
[絶縁性液体]
絶縁性液体は、絶縁性、臭気、無害性、およびコストなどの点から、直鎖状または分岐状の脂肪族飽和炭化水素(たとえばノルマルパラフィン系溶剤またはイソパラフィン系溶剤など)であることが好ましい。その中でも、定着時における揮発特性の観点から、炭素数が11〜16を主成分とする直鎖状または分岐状の脂肪族飽和炭化水素を単独または混合して使用することが好ましい。炭素数が11〜炭素数16を主成分とする直鎖状または分岐状の脂肪族飽和炭化水素としては、たとえば、エクソンモービル社製のアイソパーH、アイソパーL、およびアイソパーMなど;出光興産製のIP1620、IP2028、IPクリーンLX、およびIPクリーンHXなど;昭和シェル石油製のシェルゾールTK、およびシェルゾールTMなど;丸善製のマルカゾールなどが挙げられる。
[液体現像剤の製造方法]
本実施の形態の液体現像剤の製造方法は特に限定されないが、たとえば、結晶性樹脂と非結晶性樹脂とが有機溶剤に溶解されてなる溶液(以下では「トナー樹脂の溶液」と記す)を調製する工程と、顔料が分散されてなる分散液(以下では「顔料の分散液」と記す)を調製する工程と、トナー樹脂の溶液を絶縁性液体に分散させる工程とを備えることが好ましい。本実施の形態にかかる液体現像剤の製造方法では、必要に応じて、トナー樹脂の溶液を絶縁性液体に分散させる工程の後で、トナー樹脂の溶液に含まれていた有機溶剤を留去させることが好ましい。
トナー樹脂の溶液を調製する工程では、結晶性樹脂または結晶性樹脂の前駆体を有機溶剤に溶解させた後に、その溶液中に非結晶性樹脂を溶解させることが好ましい。結晶性樹脂または結晶性樹脂の前駆体を有機溶剤に溶解させる方法としては、いかなる方法でも良く、公知の方法を用いることができる。たとえば、有機溶剤に結晶性樹脂または結晶性樹脂の前駆体を入れてから撹拌する方法、および、有機溶剤に結晶性樹脂または結晶性樹脂の前駆体を入れてから加熱する方法などが挙げられる。
結晶性樹脂または結晶性樹脂の前駆体を溶解させる有機溶剤は、結晶性樹脂の材料または結晶性樹脂の前駆体の材料に応じて適宜選択されることが好ましく、より好ましくは、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、および、N−メチルピロリドンの少なくとも2種を含むことである。
なお、結晶性樹脂の前駆体とは、化学反応により結晶性樹脂になり得るものであれば特に限定されない。また、結晶性樹脂および非結晶性樹脂としては、上記<材料>で列挙した材料からなる結晶性樹脂および非結晶性樹脂を用いることができる。結晶性樹脂および非結晶性樹脂の含有率としては、それぞれ、上記<含有率>で記載の含有率の範囲を満たすように当該含有率を設定することができる。
顔料の分散液を調製する工程では、絶縁性液体およびトナー樹脂の溶液の少なくとも一方に顔料を分散させても良いし、所定の有機溶剤に顔料を分散させてから当該分散液を絶縁性液体およびトナー樹脂の溶液の少なくとも一方に分散させても良い。
トナー樹脂の溶液を絶縁性液体に分散させる工程では、絶縁性液体中において結晶性樹脂と非結晶性樹脂とを含むトナー樹脂の溶液からなる液滴が形成される。ここで、トナー樹脂の溶液には、上記<含有率>で記載した含有率となるように上記<材料>で列挙した材料からなる結晶性樹脂および非結晶性樹脂が含まれている。そのため、トナー樹脂の溶液を絶縁性液体に分散させると、海島構造が形成される。
トナー樹脂の溶液を絶縁性液体に分散させる方法は特に限定されないが、分散装置を用いてトナー樹脂の溶液を絶縁性液体に分散させることが好ましい。分散装置としては、一般に、乳化機または分散機などとして市販されているものであれば特に限定されずに使用することができる。
また、トナー樹脂の溶液からなる液滴の分散安定性を高めるために、絶縁性液体中に他の物質を加えてもよく、たとえば絶縁性液体中にトナー粒子用分散剤をあらかじめ添加しておいてもよい。
また、本実施の形態に係る液体現像剤の製造方法では、顔料以外の添加剤(たとえば、顔料用分散剤、充填剤、帯電防止剤、離型剤、荷電制御剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤および難燃剤など)を添加して、絶縁性液体、結晶性樹脂の溶液および顔料の分散液の少なくとも一つを調製しても良い。この場合も、顔料以外の添加剤が溶解または分散された溶液を絶縁性液体などに添加することにより当該添加剤を絶縁性液体などに添加することができる。これにより、顔料以外の添加剤も海部分および島部分の少なくとも一方の層に含まれたトナー粒子を得ることができる。
以上、本発明に係る液体現像剤について示したが、顔料が海島構造における海部分と島部分との界面上に実質的に存在している構造であれば、海部分または島部分に若干量存在している場合であっても本発明の液体現像剤に含まれる。
[画像形成装置]
本実施の形態の液体現像剤は、複写機、プリンタ、デジタル印刷機、簡易印刷機などの電子写真方式の画像形成装置において用いられる。これらの画像形成装置としては、一般的に電子写真方式の画像形成プロセスが共通して用いられている。以下、図6を参照して、本実施の形態の液体現像剤が用いられる画像形成装置を説明する。
図6は、画像形成装置の全体構成例を示す。なお、図6には、主として画像形成プロセスに関わる構成要素のみを示し、記録材の給紙、搬送、排紙に関わる構成要素を簡略的に示す。
図6に示す画像形成装置10は、像担持体としての感光体ドラム1、帯電装置2、露光装置3、湿式現像装置4およびクリーニング装置6を備える。さらに、画像形成装置10は、中間転写体としての中間転写ローラ5と、二次転写ローラ7をも備えている。
なお、図6においては、湿式現像装置4が一台のみ配置されているが、カラー画像形成のために複数台配置されていてもよい。カラー現像の方式および中間転写の有無などは任意に設定すればよく、それに合わせて画像形成装置の構成を任意に設定すればよい。また、図6においては、中間転写ローラ5を用いているが、中間転写ベルトの形態であってもよい。
感光体ドラム1は、表面に感光体層(不図示)が形成された円筒形状であって、図6における矢印A方向に回転する。感光体ドラム1の外周には、クリーニング装置6、帯電装置2、露光装置3、湿式現像装置4、および中間転写ローラ5が、その感光体ドラム1の回転方向に沿って順次配置されている。なお、このようなシステムは通常100〜1000mm/secで作動することができる。
帯電装置2は、感光体ドラム1の表面を所定電位に帯電させる。露光装置3は、感光体ドラム1の表面に光を照射し照射領域内の帯電レベルを低下させて静電潜像を形成する。
湿式現像装置4は、感光体ドラム1上に形成された潜像を現像する。すなわち、感光体ドラム1の現像領域へ液体現像剤を搬送し、その液体現像剤に含まれるトナー粒子を感光体ドラム1の表面の静電潜像に供給してトナー画像を形成する。
湿式現像装置4は、一般的には、表面に液体現像剤の薄層を担持し、像担持体である感光体ドラム1上の潜像を現像する現像ローラ41、現像ローラ41に当接して、その表面に液量調整された液体現像剤を転移させる搬送ローラ42、そしてその搬送ローラ42に当接して、その表面に現像剤槽44内の液体現像剤8を供給する供給ローラ43、および液体現像剤8の供給量を調整する規制ブレード45,46を備える。
現像のプロセスにおいては、湿式現像装置4の現像ローラ41に電源(不図示)からトナー粒子と同極性の現像バイアス電圧が印加される。同じくトナー粒子と同極性の感光体ドラム1上の潜像の電位とのバランスで電界の大小差が形成され、潜像に従って現像剤中のトナー粒子が感光体ドラム1に静電吸着され、感光体ドラム1上の潜像が現像される。
中間転写ローラ5は、感光体ドラム1と対向するように配置されており、感光体ドラム1と接触しながら矢印B方向に回転する。これら中間転写ローラ5と感光体ドラム1とのニップ部で、感光体ドラム1から中間転写ローラ5への一次転写が行なわれる。
一次転写プロセスにおいては、中間転写ローラ5に、電源(不図示)からトナー粒子と逆極性の転写バイアス電圧が印加される。これにより、一次転写位置における中間転写ローラ5と感光体ドラム1との間に電界が形成され、感光体ドラム1上のトナー像が、中間転写ローラ5に静電吸着され、中間転写ローラ5上に転写される。
トナー画像が中間転写ローラ5に転写されると、クリーニング装置6が感光体ドラム1上の残存トナー粒子を除去し、次の画像形成が行なわれる。中間転写ローラ5と二次転写ローラ7とは、記録材11を挟んで対向するように配置されており、記録材11を介して接触回転する。これら中間転写ローラ5と二次転写ローラ7とのニップ部で、中間転写ローラ5から記録材11への二次転写が行なわれる。
記録材11は、二次転写のタイミングに合わせて二次転写位置へ矢印C方向に搬送される。二次転写プロセスにおいては、二次転写ローラ7に、電源(不図示)からトナー粒子と逆極性の転写バイアス電圧が印加される。これにより、中間転写ローラ5と二次転写ローラ7との間に電界が形成され、中間転写ローラ5と二次転写ローラ7との間を通過させた記録材11上へ中間転写ローラ5上のトナー画像が静電吸着され、記録材11上に転写される。トナー画像が記録材11上に転写されると、クリーニング装置6が中間転写ローラ5上の残存トナー粒子を除去し、次の画像形成が行なわれる。
定着部9は、対向配置され接触回転する少なくとも一対のローラを備え、記録材11が高温下で加圧される。これにより、記録材11上でトナー画像を形成するトナー粒子が記録材11に融着し定着する。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<製造例1>[結晶性ポリエステル樹脂(1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計および窒素導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール746質量部と、セバシン酸288質量部と、縮合触媒としてのテトラブトキシチタネート3質量部とを入れた。
常圧下で230℃で6時間重縮合させ、重縮合体を得た。反応容器内を減圧し、重縮合体の酸価が1.0になった時点で反応容器の内圧を常圧に戻して180℃に冷却した。180℃下で反応容器に無水トリメリット酸28質量部を入れ、180℃下で1時間反応させた。これにより、ポリエステル樹脂を得た。
高化式フローテスター((株)島津製作所製の「CFT−500D」)を用いて、得られたポリエステル樹脂のTmを測定した。Tmは、104℃であった。また、示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製の「DSC210」)を用いて、得られたポリエステル樹脂のTaを測定した。Taは、80℃であった。以上より、Tm/Taは1.30と算出され、よって、得られたポリエステル樹脂は結晶性樹脂であることを確認した。
また、得られた結晶性ポリエステル樹脂(1)は、Tgが72℃であり、Mnが2400であり、水酸基価が40であり、酸価が15であり、SP値が10.3(cal/cm31/2であった。
ここで、Tgは、示差走査熱量測定装置(セイコーインスツル(株)製の「DSC20」)を用いてASTM D3418−82に規定の方法に準拠して測定された。SP値は、上記式(1)を用いて算出された。Mnは、上記<Mnなど>で記載の方法にしたがって測定した。水酸基価は、1gの結晶性ポリエステル樹脂(1)中のOH基を無水酢酸でアセチル化し、使用されなかった酢酸を水酸化カリウム溶液で滴定することにより、得られた。酸価は、1gの結晶性ポリエステル樹脂(1)を水酸化カリウムにより中和し、中和に使用された水酸化カリウムの質量(mg)を求めることにより、得られた。
<製造例2>[非結晶性ポリエステル樹脂(2a)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計および窒素導入管を備えた反応容器に、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下「PO」と略記する)2モル付加物419質量部、ビスフェノールAの(以下「エチレンオキサイド」を「EO」と略記する)2モル付加物322質量部、テレフタル酸273質量部および縮合触媒としてのテトラブトキシチタネート3質量部を入れた。
常圧下で230℃で6時間重縮合させ、重縮合体を得た。反応容器内を減圧し、重縮合体の酸価が1.0になった時点で反応容器の内圧を常圧に戻して180℃に冷却した。180℃下で反応容器に無水トリメリット酸41質量部を入れ、180℃下で1時間反応させた。これにより、ポリエステル樹脂を得た。
上記製造例1に記載した方法にしたがって、得られたポリエステル樹脂のTmを測定した。Tmは、120℃であった。また、上記製造例1に記載した方法にしたがって、得られたポリエステル樹脂のTaを測定した。Taは、75℃であった。以上より、Tm/Taは1.60と算出され、よって、得られたポリエステル樹脂は非結晶性樹脂であることを確認した。
得られた非結晶性ポリエステル樹脂(2a)は、Tgが64℃であり、Mnが5300であり、水酸基価が46であり、酸価が22であり、SP値が11.1(cal/cm31/2であった。Tg、Mn、水酸基価、酸価およびSP値の各測定方法は上記製造例1に示した通りであった。
<製造例3>[非結晶性ポリエステル樹脂(2b)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計および窒素導入管を備えた反応容器に、ビスフェノールAのPO2モル付加物816質量部、テレフタル酸193質量部および縮合触媒としてのテトラブトキシチタネート3質量部を入れた。
常圧下で230℃で6時間重縮合させ、重縮合体を得た。反応容器内を減圧し、重縮合体の酸価が1.0になった時点で反応容器の内圧を常圧に戻して180℃に冷却した。180℃下で反応容器に無水トリメリット酸30質量部を入れ、180℃下で1時間反応させた。これにより、ポリエステル樹脂を得た。
上記製造例1に記載した方法にしたがって、得られたポリエステル樹脂のTmを測定した。Tmは、112℃であった。また、上記製造例1に記載した方法にしたがって、得られたポリエステル樹脂のTaを測定した。Taは、70℃であった。以上より、Tm/Taは1.60と算出され、よって、得られたポリエステル樹脂は非結晶性樹脂であることを確認した。
得られた非結晶性ポリエステル樹脂(2b)は、Tgが60℃であり、Mnが1200であり、水酸基価が50であり、酸価が17であり、SP値が10.7(cal/cm31/2であった。Tg、Mn、水酸基価、酸価およびSP値の各測定方法は上記製造例1に示した通りであった。
<製造例4>[樹脂溶液(11)の製造]
得られた結晶性ポリエステル樹脂(1)600質量部とアセトン1200質量部とを容器に入れて撹拌し、結晶性ポリエステル樹脂(1)をアセトンに均一に溶解させた。これにより、樹脂溶液(11)を得た。
<製造例5>[樹脂溶液(12a)の製造]
得られた非結晶性ポリエステル樹脂(2a)600質量部とアセトン1200質量部とを容器に入れて撹拌し、非結晶性ポリエステル樹脂(2a)をアセトンに均一に溶解させた。これにより、樹脂溶液(12a)を得た。
<製造例6>[樹脂溶液(12b)の製造]
得られた非結晶性ポリエステル樹脂(2b)600質量部とアセトン1200質量部とを容器に入れて撹拌し、非結晶性ポリエステル樹脂(2b)をアセトンに均一に溶解させた。これにより、樹脂溶液(12b)を得た。
<製造例7>[顔料の分散液の製造]
ビーカーに、カーボンブラック16質量部、顔料用分散剤「アジスパーPB−821」(味の素ファインテクノ(株)製)4質量部およびアセトン80質量部を入れて撹拌し、カーボンブラックを均一に分散させた。その後、ビーズミルによってカーボンブラックを微分散させて、顔料の分散液を得た。顔料の分散液におけるカーボンブラックの体積平均粒径は0.2μmであった。カーボンブラックの体積平均粒径は、レーザー式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製の「LA−920」)を用いて測定された。
<実施例1>
ビーカーに、樹脂溶液(11)29質量部、樹脂溶液(12a)3質量部および製造例7で得られた顔料の分散液16質量部を入れて、25℃でTKオートホモミキサー[特殊機化工業(株)製]を用いて8000rpmで撹拌させた。これにより、顔料(カーボンブラック)が均一に分散された樹脂溶液(1A)を得た。
別のビーカーに、流動パラフィン74質量部とトナー用分散剤「ソルスパーズS11200」(ルーブリゾーブ(株)製)8質量部とを入れて、均一に分散させた。次いで、25℃でTKオートホモミキサーを用いて10000rpmで撹拌しながら、樹脂溶液(1A)67質量部を入れて2分間撹拌させた。
このようにして得られた混合液を、撹拌装置、加熱冷却装置、温度計および脱溶剤装置を備えた反応容器に入れ、35℃に昇温した。35℃で0.039MPaの減圧下で、上記混合溶液におけるアセトン濃度が0.5質量%以下になるまでアセトンを留去した。これにより、液体現像剤を得た。
<実施例2、比較例1〜5>
固形分換算における樹脂溶液(11)と樹脂溶液(12a)との混合比率、つまり結晶性ポリエステル樹脂(1)の含有率と非結晶性ポリエステル樹脂(2a)の含有率とを表1に示すように変更したことを除いては上記実施例1と同様の方法にしたがって、実施例2および比較例1〜5に係る液体現像剤を得た。
<比較例6>
樹脂溶液(12a)の代わりに樹脂溶液(12b)を用いたことを除いては上記実施例1と同様の方法にしたがって、比較例6に係る液体現像剤を得た。
<評価方法>
実施例1〜2および比較例1〜6の各液体現像剤に含まれるトナー粒子の定着性および転写性について評価した。
<定着性1>
実施例1〜2および比較例1〜6の各液体現像剤を紙面上に垂らし、バーコーター(♯10、間隙22.9μm)を用いて均一に塗布した(なお、液体現像剤を均一に塗布できる方法であれば、他の方法を用いてもよい)。この紙を加圧ローラーに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/秒且つ定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cm2の条件で通した時のコールドオフセットの発生温度を測定した。なお、コールドオフセットの発生温度が低いほど、トナー粒子が定着性に優れていることを示す。
<定着性2>
実施例1〜2および比較例1〜6の各液体現像剤を紙面上に垂らし、バーコーター(♯10、間隙22.9μm)を用いて均一に塗布した(なお、液体現像剤を均一に塗布できる方法であれば、他の方法を用いてもよい)。この紙を加圧ローラーに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/秒且つ定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cm2の条件で通した時のホットオフセットの発生温度を測定した。なお、ホットオフセットの発生温度が高いほど、トナー粒子が定着性および耐ホットオフセット性に優れていることを示す。
結果を表1に示す。表1では、コールドオフセットの発生温度が120℃以下であり且つホットオフセットの発生温度が180℃以上であった場合には、「A1」と記す。コールドオフセットの発生温度が120℃よりも高かった場合またはホットオフセットの発生温度が180℃未満であった場合には、「B1」と記す。コールドオフセットの発生温度が120℃よりも高く且つホットオフセットの発生温度が180℃未満であった場合には、「C1」と記す。つまり、表1において、「A1」は、定着性1での評価結果および定着性2での評価結果のどちらも良好であった場合を示し、「B1」は、定着性1での評価結果または定着性2での評価結果が良好であった場合を示し、「C1」は、定着性1での評価結果および定着性2での評価結果のどちらも不良であった場合を示す。
<転写性>
図6に示す画像形成装置を用いて、実施例1〜2および比較例1〜6の各液体現像剤を上質紙(三菱製紙社製、金菱81g/m2)に印刷し、トナー付着量が約1.2g/m2である単色のソリッド画像を形成した。このとき、上質紙への転写前のトナー量[上質紙への転写前に、図6における中間転写ローラ5上に存在しているトナー量]X(g/m2)と上質紙へ転写されたトナー量Y(g/m2)とを測定し、Y/X(%)を算出した。
結果を表1に示す。表1では、Y/Xが90%以上であった場合には「A2」と記し、Y/Xが80%以上90%未満であった場合には「B2」と記し、Y/Xが80%未満であった場合には「C2」と記す。Y/Xが大きいほど、トナー粒子が転写性に優れることを示している。
Figure 2014066883
表1に示すように、実施例1〜2におけるトナー粒子は定着性および転写性に優れたが、比較例1および4〜6におけるトナー粒子は転写性に優れず、比較例2〜3におけるトナー粒子は定着性に優れなかった。その理由として、以下に示すことが考えられる。
実施例1〜2では、結晶性ポリエステル樹脂(1)の含有率が70質量%以上90質量%以下であるため、結晶性ポリエステル樹脂(1)が海島構造の海部分を構成していると考えられる。実際、本発明者らは、実施例1〜2の各トナー粒子の断面を顕微鏡で観察し当該トナー粒子を熱分析することにより、トナー粒子が図1に示す構成を有していることを確認している。そのため、実施例1〜2では、顔料の含有量が多くなっても、トナー粒子に含まれる樹脂の粘弾性が高くなることが防止される。したがって、トナー粒子の定着性が向上したと考えられる。
また、実施例1〜2では、結晶性ポリエステル樹脂(1)と非結晶性ポリエステル樹脂(2a)とのSP値の差が0.5(cal/cm31/2以上であるので、結晶性ポリエステル樹脂(1)と非結晶性ポリエステル樹脂(2a)とは相溶しない。そのため、顔料は、海島構造における海部分と島部分との界面上に存在し、よって、トナー粒子の内部に存在していると考えられる。したがって、トナー粒子の転写性が向上したと考えられる。
一方、比較例1では、結晶性ポリエステル樹脂(1)の含有率が90質量%を超えているため、トナー粒子における結晶性ポリエステル樹脂(1)と非結晶性ポリエステル樹脂(2a)との界面が少なくなる。そのため、結晶性ポリエステル樹脂(1)と非結晶性ポリエステル樹脂(2a)との界面以外の部分(たとえばトナー粒子の表面)に存在する顔料の増量を招くため、トナー粒子の帯電性の低下を引き起こす。その結果、トナー粒子の転写性が低下したと考えられる。
また、比較例2〜3では、結晶性ポリエステル樹脂(1)の含有率が70質量%を下回っている。特に比較例3では、結晶性ポリエステル樹脂(1)の含有率が20質量%であるため、結晶性ポリエステル樹脂(1)ではなく非結晶性ポリエステル樹脂(2a)が海島構造の海部分を構成していると考えられる。実際、本発明者らは、比較例3におけるトナー粒子が図2に示す構造を有していること、つまり非結晶性ポリエステル樹脂102が海島構造の海部分を構成し且つ結晶性ポリエステル樹脂101が海島構造の島部分を構成していることを確認している。非結晶性ポリエステル樹脂(2a)が海島構造の海部分を構成していれば、顔料の含有量の増加に起因してトナー粒子に含まれる樹脂の粘弾性が高くなるおそれがある。よって、トナー粒子の定着性が低下したと考えられる。
また、比較例4〜5では、トナー粒子に含まれる樹脂は結晶性ポリエステル樹脂(1)または非結晶性ポリエステル樹脂(2a)のいずれか一方であるため、海島構造はトナー粒子に形成されない。そのため、顔料は、トナー粒子の表面に存在することとなる。実際、本発明者らは、比較例4〜5におけるトナー粒子がそれぞれ図3〜4に示す構造を有していること、つまり顔料103がトナー粒子の表面に存在していることを確認している。顔料がトナー粒子の表面に存在すると、トナー粒子の帯電性の低下を招く。よって、トナー粒子の転写性が低下したと考えられる。
また、比較例6では、結晶性ポリエステル樹脂(1)と非結晶性ポリエステル樹脂(2b)とのSP値の差が0.5(cal/cm31/2未満であるので、結晶性ポリエステル樹脂(1)と非結晶性ポリエステル樹脂(2b)とが相溶する。実際、本発明者らは、比較例6におけるトナー粒子がそれぞれ図5に示す構造を有していること、つまり結晶性ポリエステル樹脂(1)と非結晶性ポリエステル樹脂(2b)とが相溶した領域105が形成されていることを確認している。そのため、海島構造は比較例6のトナー粒子にも形成されない。よって、顔料はトナー粒子の表面に存在する。その結果、トナー粒子の帯電性の低下を招き、トナー粒子の転写性の低下を招くと考えられる。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 感光体ドラム、2 帯電装置、3 露光装置、4 湿式現像装置、5 中間転写ローラ、6 クリーニング装置、7 二次転写ローラ、8 液体現像剤、9 定着部、10 画像形成装置、11 記録材、41 現像ローラ、42 搬送ローラ、43 供給ローラ、45,46 規制ブレード、101 結晶性樹脂、102 非結晶性樹脂、103 顔料、105 領域。

Claims (1)

  1. 樹脂と顔料とを少なくとも含むトナー粒子が絶縁性液体に分散されてなる液体現像剤であって、
    前記樹脂は、結晶性樹脂と非結晶性樹脂とを含み、
    前記トナー粒子は、前記結晶性樹脂と前記非結晶性樹脂とが相溶せずに海島構造を形成してなり、
    前記海島構造は、海部分が前記結晶性樹脂で構成され、島部分が前記非結晶性樹脂で構成されており、
    前記顔料は、前記海島構造における前記海部分と前記島部分との界面上に存在している、液体現像剤。
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