JP2014065058A - 鋳物の製造方法および鋳物製品 - Google Patents
鋳物の製造方法および鋳物製品 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2014065058A JP2014065058A JP2012211978A JP2012211978A JP2014065058A JP 2014065058 A JP2014065058 A JP 2014065058A JP 2012211978 A JP2012211978 A JP 2012211978A JP 2012211978 A JP2012211978 A JP 2012211978A JP 2014065058 A JP2014065058 A JP 2014065058A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- casting
- sand
- product
- radius
- sand mold
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Mold Materials And Core Materials (AREA)
Abstract
【課題】従前の差込み不良対策に比してコスト増加や作業環境の悪化を伴わず、且つ、種々の製品形状にも対応可能で汎用性に優れた鋳物の製造方法を提供すること。
【解決手段】砂型でできた製品キャビティ内に金属溶湯を注入して鋳物を製造する方法において、製品キャビティの内壁面を提供する砂型表面の少なくとも一部に複数の凸部11(又は凹部12)が付与された砂型を用いる。前記複数の凸部11(又は凹部12)は、砂型表面に沿った縦方向、横方向及び/又は斜め方向に等間隔配置されている。更に、前記複数の凸部11(又は凹部12)の各々は、砂型表面において半径rの円形状をなしている。その半径rは0.5mm〜8mmの範囲にあり、凸部11の高さh1又は凹部12の深さh2は0.5mm〜1.5mmの範囲にある。
【選択図】図2
【解決手段】砂型でできた製品キャビティ内に金属溶湯を注入して鋳物を製造する方法において、製品キャビティの内壁面を提供する砂型表面の少なくとも一部に複数の凸部11(又は凹部12)が付与された砂型を用いる。前記複数の凸部11(又は凹部12)は、砂型表面に沿った縦方向、横方向及び/又は斜め方向に等間隔配置されている。更に、前記複数の凸部11(又は凹部12)の各々は、砂型表面において半径rの円形状をなしている。その半径rは0.5mm〜8mmの範囲にあり、凸部11の高さh1又は凹部12の深さh2は0.5mm〜1.5mmの範囲にある。
【選択図】図2
Description
本発明は、砂型鋳造における差込み不良の改善を意図した、鋳物の製造方法および鋳物製品に関するものである。
例えば鋳鉄製の鋳物はそのほとんどが砂型を用いて鋳造されているが、砂型を用いることによる利点と引き替えに砂型ゆえの鋳造欠陥が発生し得る。それらの鋳造欠陥の一つに「差込み不良」(単に「差込み」ともいう)と呼ばれるものがある。この欠陥は、鋳型(砂型)を構成する砂粒間に、鋳型内に注がれた溶湯が入り込んでそのまま凝固し鋳物表面へ固着することにより発生する。一旦発生した差込み不良を鋳物表面より完全に除去するには多くの後処理工程を必要とする。
差込み不良の発生原因は多岐にわたり、実際の鋳造現場においても様々な要因が重なって差込み不良が発生する。特に、鋳鉄の中でも片状黒鉛鋳鉄(ねずみ鋳鉄)にあっては共晶凝固時の体積膨張が球状黒鉛鋳鉄よりも大きいため、凝固時に製品キャビティ内にいわゆる閉ループ(キャビティ内に、鋳造方案の他部分とつながることなく独立した凝固部分が生じる現象又はその凝固部位)が発生すると、凝固進行に伴い閉ループ内の圧力が著しく増加する。そして、その圧力増加が駆動力となって鋳型砂粒間に溶湯が侵入し、差込み不良が発生する。なお、片状黒鉛鋳鉄における共晶凝固時の圧力増加については、数MPa〜数GPa程度といった非常に大きな数値が報告されている。
鋳鉄の砂型鋳造における差込み不良の発生は、その製法及び材料特性に由来する宿命的なものであり、避け難いものではあるが、従前より様々な対策が講じられてきた。例えば、塗型剤よる対策(特許文献1,2参照)、砂種の変更(特許文献3参照)、鋳型の充填性向上などである。しかしながら、塗型剤としては、粉体を水又はアルコール等で溶かした液体が多くの場合用いられ、当該塗型剤を鋳型へ吹き付けて塗布する際の飛散によって作業環境が悪化するという致命的問題がある。また、砂種を変更する対策は、一般的にコスト増加につながり砂型鋳造の利点を損なうことになる。また、鋳型の充填性向上対策については、特殊な形状の製品には適用できても、あらゆる製品形状に対応できるほどの汎用性がない。つまり、従前の差込み不良対策は、実際上決め手に欠けるというのが実情である。
なお、論者(評者)によっては本願発明との関連性が疑われるかもしれない先行技術文献として、特許文献4(特開平9−10888号公報)がある。特許文献4は、差込みの発生をなくし、美麗な鋳肌を有する鋳物を鋳造可能な鋳型を開示する(同文献要約)。より具体的には、製品キャビティ(3)に連接して厚さ1mm以下の空隙部(6)を設け、この空隙に溶湯を呼び込み、溶湯圧の砂鋳型凹面への作用力を弱めている(同文献要約)。つまり、鋳型内キャビティの表面積を拡大し、注湯完了直後の最大溶湯圧(静水圧+動圧)を低減することで、差込みを防止しようとするものである。しなしながら、文献4の対策によれば、製品キャビティ外に空隙部を設置する必要があるが、鋳型枠内に十分なスペースがない場合はそもそも空隙部を設置することができない。また、仮に空隙部の設置を優先するならば、枠あたりの製品込め数を削減する必要があり、コスト増につながる。更に、文献4の対策は、注湯完了後の溶湯圧(の低減)に対しては有効であるとしても、共晶凝固での体積膨張に伴う圧力の増加に対しては減圧効果が得られない。なぜなら、文献4の鋳型構造にあっては、キャビティ(3)内よりも空隙部(6)の方が先に凝固してしまうからである。
本発明の目的は、砂型鋳造における差込み不良対策となる方法であって、従前の対策に比してコスト増加や作業環境の悪化を伴わず、且つ、種々の製品形状にも対応可能で汎用性に優れた鋳物の製造方法を提供することにある。また、共晶凝固での体積膨張に伴う圧力の増加に対しても、有効な差込み不良対策となり得る鋳物の製造方法を提供することにある。更に、差込み不良が無い又は低減された鋳物製品を提供することにある。
本発明は、砂型でできた製品キャビティ内に金属溶湯を注入して鋳物を製造する方法において、
前記製品キャビティの内壁面を提供する砂型表面の少なくとも一部に複数の凸部又は凹部が付与された砂型を用いることを特徴とする鋳物の製造方法である。
前記製品キャビティの内壁面を提供する砂型表面の少なくとも一部に複数の凸部又は凹部が付与された砂型を用いることを特徴とする鋳物の製造方法である。
また本発明は、砂型鋳造法によって鋳造される鋳鉄製の鋳物製品であって、
当該鋳物製品の表面の少なくとも一部には、その表面に沿った縦方向、横方向及び/又は斜め方向に等間隔配置された複数の凹部又は凸部が形成されており、
前記複数の凹部又は凸部の各々は、前記表面において半径rの円形状をなしており、
前記半径rは0.5mm〜8mmの範囲にあり、
前記凹部の深さ又は凸部の高さは0.5mm〜1.5mmの範囲にある、
ことを特徴とする鋳物製品である。
当該鋳物製品の表面の少なくとも一部には、その表面に沿った縦方向、横方向及び/又は斜め方向に等間隔配置された複数の凹部又は凸部が形成されており、
前記複数の凹部又は凸部の各々は、前記表面において半径rの円形状をなしており、
前記半径rは0.5mm〜8mmの範囲にあり、
前記凹部の深さ又は凸部の高さは0.5mm〜1.5mmの範囲にある、
ことを特徴とする鋳物製品である。
本発明において採用する手段が有効な差込み不良対策となり得る理由については「発明を実施するための形態」の欄で説明する。
本発明の鋳物の製造方法および鋳物製品によれば、砂型表面の少なくとも一部に複数の凸部又は凹部が付与された砂型を用いることで、差込み不良がほとんど無い又は低減された鋳物を得ることができる。特に本発明の方法によれば、従前の対策に比して、コスト増加や作業環境の悪化を伴わず、且つ、種々の製品形状にも対応可能で汎用性に優れるという利点がある。また、使用する砂型として、砂型表面に複数の凸部又は凹部が付与された砂型を用いる点を除いて、従来の鋳造工程を基本的に変更する必要が無いため、容易に実施できるという利点がある。
本発明の好ましい実施態様、追加的構成要件などについて以下に説明する。
本発明は、砂型でできた製品キャビティ内に金属溶湯を注入して鋳物を製造する方法(砂型鋳造法)に関する。特に本発明は、製品キャビティの内壁面を提供(又は構築)する砂型表面の少なくとも一部に複数の凸部又は凹部が付与された砂型を用いることを特徴とするものである。
本発明を適用可能な砂型鋳造法は特に制限されるものではなく、適用対象は、生砂型鋳造法、乾燥型鋳造法、消失模型鋳造法など何でもよい。砂型の造型に用いる砂(鋳型砂)についても特に制限はなく、ケイ砂、オリビン砂、ジルコン砂などの鋳型砂のいずれでもよい。なお、使用する砂の大きさ(平均粒径)は0.2mm程度が好ましい。
製品キャビティの内壁面を提供する砂型表面において、複数の凸部又は凹部は、当該砂型表面に沿った縦方向、横方向及び/又は斜め方向に等間隔配置されることが好ましい。例えば、図1(A)に示すように正方格子の格子点位置に凸部又は凹部10を配置するような配列態様や、図1(B)に示すように千鳥掛けの交点位置に凸部又は凹部10を配置するような配列態様を例示することができる。図1(A)及び(B)の配列によれば、縦方向(図面の上下方向)、横方向(図面の左右方向)及び斜め方向(図面の45度傾斜方向)に沿って複数の凸部又は凹部10が等間隔配置されている。
複数の凸部又は凹部10の各々は、砂型表面において半径rの円形状をなすと共に(図1参照)、その半径rは0.5mm〜8mmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは半径r=1mm〜6mmである。仮に半径rが0.5mmを下回ると、砂粒の大きさとの関係で凸部又は凹部を形成することが難しくなる。他方、半径rが8mmを超えると、凹凸の付与による差込み不良の低減効果が得られ難くなる。
砂型表面に形成されるものが凸部11である場合、その凸部11の高さh1は0.5mm〜1.5mmの範囲にあることが好ましい(図2参照)。また、砂型表面に形成されるものが凹部12である場合、その凹部12の深さh2は0.5mm〜1.5mmの範囲にあることが好ましい(図3参照)。凸部の高さh1又は凹部の深さh2が0.5mmを下回ると、砂粒の大きさとの関係で凸部又は凹部を形成することが難しくなる。他方、凸部の高さh1又は凹部の深さh2が1.5mmを超えると、砂粒による凸又は凹形状の形状保持が困難になり(つまり形崩れし易くなり)、砂型表面に複数の凸部又は凹部が付与された砂型を造型することが難しくなる。
図1(A)の正方格子状配列の場合には、例えば横方向に延びるX−X線に沿った並びにおいて、又、図1(B)の千鳥掛け状配列の場合には、斜め方向に延びるX−X線に沿った並びにおいて、隣り合う二つの凸部又は凹部10の外周縁間の距離が最短距離dとなる(図2及び図3参照)。そして本発明においては、隣り合う二つの凸部又は凹部10の外周縁間の最短距離dが凸部又は凹部10の半径rにほぼ等しくなるように、凸部又は凹部10が等間隔配置されることが好ましい。dとrのこのような寸法設定により、砂型表面に複数の凸部又は凹部10を形成可能としつつ、凸部又は凹部10の配列密度を最大化して差込み不良の低減効果を高めることが可能になる。即ち、最短距離d<半径rの場合には、隣り合う二つの凸部又は凹部10が近すぎて形崩れのおそれがあり、凸形状又は凹形状の維持が困難になる。他方、最短距離d>半径rの場合には、凸部又は凹部10の配列密度が低くなり、差込み不良の低減効果が減殺されるおそれがある。
上述したような砂型を用いて定法に則り砂型鋳造を行なうことで、差込み不良を効果的に抑制又は低減することができる。仮に注湯及び冷却直後の段階で鋳物の表面に差込み不良が生じていたとしても、砂粒を抱き込んだ差込み部分と製品部分との連結強度は本発明を適用しない場合に比べて非常に弱くなる(図6,7のSEM写真参照)。このため、型割り後の一般的な砂落とし処理(例えばショットブラスト)で当該差込み部分を容易に除去することができる。
なお、本発明の方法によれば、使用する砂型の形状を反映して、次のイ)からホ)のような構造的特徴を持つ鋳物製品が得られる。
イ)当該鋳物製品の表面の少なくとも一部には、その表面に沿った縦方向、横方向及び/又は斜め方向に等間隔配置された複数の凹部又は凸部が形成されている。
ロ)前記複数の凹部又は凸部の各々は、前記表面において半径rの円形状をなす。
ハ)前記半径rは0.5mm〜8mmの範囲にある。
ニ)前記凹部の深さ又は凸部の高さは0.5mm〜1.5mmの範囲にある。
ホ)隣り合う二つの凸部又は凹部の外周縁間の最短距離dが前記半径rにほぼ等しい。
イ)当該鋳物製品の表面の少なくとも一部には、その表面に沿った縦方向、横方向及び/又は斜め方向に等間隔配置された複数の凹部又は凸部が形成されている。
ロ)前記複数の凹部又は凸部の各々は、前記表面において半径rの円形状をなす。
ハ)前記半径rは0.5mm〜8mmの範囲にある。
ニ)前記凹部の深さ又は凸部の高さは0.5mm〜1.5mmの範囲にある。
ホ)隣り合う二つの凸部又は凹部の外周縁間の最短距離dが前記半径rにほぼ等しい。
[本発明の作用に関する考察]
砂型鋳造の際に砂型表面に凹凸形状(シボ形状)を付与することによる差込み不良低減のメカニズムについては、学術的に解明されているわけではないが、以下に述べるようなメカニズムにより差込み不良が抑制されるものと推定される。
例えば、鋳鉄での差込み不良は、鋳型に用いる鋳型砂の耐火度が十分に高い場合においては、溶湯が鋳型砂粒の間隙へ物理的に侵入することで発生する。特に片状黒鉛鋳鉄(ねずみ鋳鉄)においては、凝固時の黒鉛晶出に伴う膨張による溶湯圧力増加が大きく、鋳型の砂詰まりが良好でない部分、また健全に充填されている部分においても溶湯が砂粒間へ侵入することが避けられない。かかる事情を念頭に置きつつ実施例の実験結果(後述)を勘案すると、凹凸形状(シボ形状)の付与により、以下に列挙する(1)〜(3)の要因が複雑にからみあって、差込み不良が抑制又は低減されたと推定できる。
砂型鋳造の際に砂型表面に凹凸形状(シボ形状)を付与することによる差込み不良低減のメカニズムについては、学術的に解明されているわけではないが、以下に述べるようなメカニズムにより差込み不良が抑制されるものと推定される。
例えば、鋳鉄での差込み不良は、鋳型に用いる鋳型砂の耐火度が十分に高い場合においては、溶湯が鋳型砂粒の間隙へ物理的に侵入することで発生する。特に片状黒鉛鋳鉄(ねずみ鋳鉄)においては、凝固時の黒鉛晶出に伴う膨張による溶湯圧力増加が大きく、鋳型の砂詰まりが良好でない部分、また健全に充填されている部分においても溶湯が砂粒間へ侵入することが避けられない。かかる事情を念頭に置きつつ実施例の実験結果(後述)を勘案すると、凹凸形状(シボ形状)の付与により、以下に列挙する(1)〜(3)の要因が複雑にからみあって、差込み不良が抑制又は低減されたと推定できる。
(1)表面冷却状態の変化
製品表面に凹凸形状を付与したことで、製品の表面積が拡大し、溶湯と鋳型の接触面積が増加し、溶湯の熱を鋳型が奪いやすくなった。その結果、製品表面の凝固を促し、溶湯が砂粒間へ侵入する前に表面凝固が完了するようになった。
(2)凝固膨張時の圧力増加緩和
製品表面に凹凸形状を付与したことで、製品の表面積が拡大し、共晶凝固時の膨張による圧力増加を緩和することができた(表面積拡大による面圧低下)。
(3)砂落とし処理での除去効率向上
仮に注湯及び冷却直後の段階で鋳物の表面に差込み不良が生じていたとしても、上記(1),(2)の事情により、砂粒を抱き込んだ差込み部分と製品部分との連結強度が、本発明を適用しない場合に比べて非常に弱くなっている(図6,7のSEM写真参照)。このため、型割り後の一般的な砂落とし処理(例えばショットブラスト)で当該差込み部分を容易に除去可能になった。
製品表面に凹凸形状を付与したことで、製品の表面積が拡大し、溶湯と鋳型の接触面積が増加し、溶湯の熱を鋳型が奪いやすくなった。その結果、製品表面の凝固を促し、溶湯が砂粒間へ侵入する前に表面凝固が完了するようになった。
(2)凝固膨張時の圧力増加緩和
製品表面に凹凸形状を付与したことで、製品の表面積が拡大し、共晶凝固時の膨張による圧力増加を緩和することができた(表面積拡大による面圧低下)。
(3)砂落とし処理での除去効率向上
仮に注湯及び冷却直後の段階で鋳物の表面に差込み不良が生じていたとしても、上記(1),(2)の事情により、砂粒を抱き込んだ差込み部分と製品部分との連結強度が、本発明を適用しない場合に比べて非常に弱くなっている(図6,7のSEM写真参照)。このため、型割り後の一般的な砂落とし処理(例えばショットブラスト)で当該差込み部分を容易に除去可能になった。
なお、前述のように片状黒鉛鋳鉄は共晶凝固時の膨張圧力がたいへん大きく、その程度は(同じ鋳鉄でも)球状黒鉛鋳鉄よりも大きい。それ故、鋳鉄、中でも片状黒鉛鋳鉄(ねずみ鋳鉄)を鋳造材料として用いる場合の砂型鋳造に本発明を適用するとき、本発明の利点(差込み不良の抑制又は低減効果)が最大限に発揮されることになる。
以下、本発明の実施例1及び2、並びに比較例について説明する。
最初に各例に共通の条件を説明する。砂型鋳造に使用する溶湯としては、添加成分の実測値(単位:質量%)が、C:3.63%、Si:2.24%、Mn:0.56%、P:0.03%、S:0.08%であるFC150相当の片状黒鉛鋳鉄を用いた。原材料の溶解には100kg高周波誘導炉を使用し、ねずみ鋳鉄の戻り材、鋼屑、加炭材、Fe−Si合金等で所定の成分へと調整した後、出湯時に接種剤(Fe−75Si合金)を添加した。鋳型として、生砂で造型された主型とシェル砂で成形された中子を準備すると共に、主型及び中子で形成された製品キャビティ内に上記溶湯を注湯して、オイルポンプボディの供試材(試作製品)を鋳造した。なお、オイルポンプボディの最終形態は図4(A)及び図5(A)に示すとおりであるが、その直径は約180mm、その厚みは薄い箇所で約4mm、厚い箇所で約20mmである。
最初に各例に共通の条件を説明する。砂型鋳造に使用する溶湯としては、添加成分の実測値(単位:質量%)が、C:3.63%、Si:2.24%、Mn:0.56%、P:0.03%、S:0.08%であるFC150相当の片状黒鉛鋳鉄を用いた。原材料の溶解には100kg高周波誘導炉を使用し、ねずみ鋳鉄の戻り材、鋼屑、加炭材、Fe−Si合金等で所定の成分へと調整した後、出湯時に接種剤(Fe−75Si合金)を添加した。鋳型として、生砂で造型された主型とシェル砂で成形された中子を準備すると共に、主型及び中子で形成された製品キャビティ内に上記溶湯を注湯して、オイルポンプボディの供試材(試作製品)を鋳造した。なお、オイルポンプボディの最終形態は図4(A)及び図5(A)に示すとおりであるが、その直径は約180mm、その厚みは薄い箇所で約4mm、厚い箇所で約20mmである。
(実施例1)
実施例1は、図2に示すような砂型表面に多数の凸部11を付与した砂型を主型として採用した事例である。各凸部11は平面視円形状をなし、その半径r=3mm、高さh1=1.5mmである。隣り合う凸部11間の最短距離d=3mmである。
図4(A),(B)及び(C)は、実施例1の鋳物製品の外観写真(ショットブラスト処理後)を示す。図2からわかるように、製品表面の一部には、砂型(主型)の凸部11に対応する凹部が多数形成されている。ショットブラスト処理後の外観において差込み不良箇所はほとんど見当たらない。なお、図6にショットブラスト前における実施例1の鋳物製品の一部の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(50倍)を掲載する。
実施例1は、図2に示すような砂型表面に多数の凸部11を付与した砂型を主型として採用した事例である。各凸部11は平面視円形状をなし、その半径r=3mm、高さh1=1.5mmである。隣り合う凸部11間の最短距離d=3mmである。
図4(A),(B)及び(C)は、実施例1の鋳物製品の外観写真(ショットブラスト処理後)を示す。図2からわかるように、製品表面の一部には、砂型(主型)の凸部11に対応する凹部が多数形成されている。ショットブラスト処理後の外観において差込み不良箇所はほとんど見当たらない。なお、図6にショットブラスト前における実施例1の鋳物製品の一部の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(50倍)を掲載する。
(実施例2)
実施例2は、図3に示すような砂型表面に多数の凹部12を付与した砂型(主型)を採用した事例である。各凹部12は平面視円形状をなし、その半径r=3mm、深さh2=1.5mmである。隣り合う凹部12間の最短距離d=3mmである。
実施例2の外観写真は掲載していないが、製品表面の一部には、砂型(主型)の凹部12に対応する凸部が多数形成されている。ショットブラスト処理後の外観において差込み不良箇所はほとんど見当たらなかった。
実施例2は、図3に示すような砂型表面に多数の凹部12を付与した砂型(主型)を採用した事例である。各凹部12は平面視円形状をなし、その半径r=3mm、深さh2=1.5mmである。隣り合う凹部12間の最短距離d=3mmである。
実施例2の外観写真は掲載していないが、製品表面の一部には、砂型(主型)の凹部12に対応する凸部が多数形成されている。ショットブラスト処理後の外観において差込み不良箇所はほとんど見当たらなかった。
(比較例)
比較例は、従前の砂型(つまり砂型表面に多数の凹凸を持たない砂型)を採用した事例である。
図5(A)及び(B)は、比較例の鋳物製品の外観写真(ショットブラスト処理後)を示す。比較例の鋳物製品では、ショットブラスト処理後においてもその外観に差込み不良箇所が、特に厚肉部や肉厚変化部において散見された。なお、図7にショットブラスト前における比較例の鋳物製品の一部のSEM写真(50倍)を掲載する。
比較例は、従前の砂型(つまり砂型表面に多数の凹凸を持たない砂型)を採用した事例である。
図5(A)及び(B)は、比較例の鋳物製品の外観写真(ショットブラスト処理後)を示す。比較例の鋳物製品では、ショットブラスト処理後においてもその外観に差込み不良箇所が、特に厚肉部や肉厚変化部において散見された。なお、図7にショットブラスト前における比較例の鋳物製品の一部のSEM写真(50倍)を掲載する。
[実施例及び比較例についての考察]
図6及び図7はそれぞれ、ショットブラスト前の実施例1製品および比較例製品における同一部位(R形状部位)での残砂状態のSEM画像を示す。比較例製品においては、R形状部位の全体にわたり、砂粒と鋳鉄とが複雑に入り組んで両者が強固に一体化した差込み部分が観察される。また、当該差込み部分での残砂量も多めである。これに対し、実施例1製品においては、R形状部位の一部においてのみ差込み部分が観察されたが、その差込み部分での砂粒と鋳鉄とのからみ合いは単純で相互に複雑に入り組んではおらず、全体的に残砂量も少なくなっている。つまり、比較例では差込み不良の程度が過大であるのに対し、実施例1では差込み不良の程度が過小となっている。かかる両者の違いが、ショットブラスト処理後の外観(鋳肌の滑らかさ)の違いに結びついたものと考えられる。
図6及び図7はそれぞれ、ショットブラスト前の実施例1製品および比較例製品における同一部位(R形状部位)での残砂状態のSEM画像を示す。比較例製品においては、R形状部位の全体にわたり、砂粒と鋳鉄とが複雑に入り組んで両者が強固に一体化した差込み部分が観察される。また、当該差込み部分での残砂量も多めである。これに対し、実施例1製品においては、R形状部位の一部においてのみ差込み部分が観察されたが、その差込み部分での砂粒と鋳鉄とのからみ合いは単純で相互に複雑に入り組んではおらず、全体的に残砂量も少なくなっている。つまり、比較例では差込み不良の程度が過大であるのに対し、実施例1では差込み不良の程度が過小となっている。かかる両者の違いが、ショットブラスト処理後の外観(鋳肌の滑らかさ)の違いに結びついたものと考えられる。
10…砂型表面の凸部又は凹部、11…砂型表面の凸部、12…砂型表面の凹部、
d…最短距離、r…半径、h1…凸部の高さ、h2…凹部の深さ。
d…最短距離、r…半径、h1…凸部の高さ、h2…凹部の深さ。
Claims (6)
- 砂型でできた製品キャビティ内に金属溶湯を注入して鋳物を製造する方法において、
前記製品キャビティの内壁面を提供する砂型表面の少なくとも一部に複数の凸部又は凹部が付与された砂型を用いることを特徴とする鋳物の製造方法。 - 前記複数の凸部又は凹部は、前記砂型表面に沿った縦方向、横方向及び/又は斜め方向に等間隔配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の鋳物の製造方法。
- 前記複数の凸部又は凹部の各々は、前記砂型表面において半径rの円形状をなしており、前記半径rは0.5mm〜8mmの範囲にあり、前記凸部の高さ又は凹部の深さは0.5mm〜1.5mmの範囲にある、ことを特徴とする請求項2に記載の鋳物の製造方法。
- 隣り合う二つの凸部又は凹部の外周縁間の最短距離dが前記半径rにほぼ等しい、ことを特徴とする請求項3に記載の鋳物の製造方法。
- 前記金属溶湯は片状黒鉛鋳鉄である、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の鋳物の製造方法。
- 砂型鋳造法によって鋳造される鋳鉄製の鋳物製品であって、
当該鋳物製品の表面の少なくとも一部には、その表面に沿った縦方向、横方向及び/又は斜め方向に等間隔配置された複数の凹部又は凸部が形成されており、
前記複数の凹部又は凸部の各々は、前記表面において半径rの円形状をなしており、
前記半径rは0.5mm〜8mmの範囲にあり、
前記凹部の深さ又は凸部の高さは0.5mm〜1.5mmの範囲にある、
ことを特徴とする鋳物製品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012211978A JP2014065058A (ja) | 2012-09-26 | 2012-09-26 | 鋳物の製造方法および鋳物製品 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012211978A JP2014065058A (ja) | 2012-09-26 | 2012-09-26 | 鋳物の製造方法および鋳物製品 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2014065058A true JP2014065058A (ja) | 2014-04-17 |
Family
ID=50741962
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012211978A Pending JP2014065058A (ja) | 2012-09-26 | 2012-09-26 | 鋳物の製造方法および鋳物製品 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2014065058A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018070140A1 (ja) | 2016-10-11 | 2018-04-19 | 株式会社ティクスIks | ゲートバルブの構造とその製造方法 |
CN113579169A (zh) * | 2021-07-08 | 2021-11-02 | 上柴动力海安有限公司 | 一种减轻铸件夹砂的方法 |
-
2012
- 2012-09-26 JP JP2012211978A patent/JP2014065058A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018070140A1 (ja) | 2016-10-11 | 2018-04-19 | 株式会社ティクスIks | ゲートバルブの構造とその製造方法 |
CN113579169A (zh) * | 2021-07-08 | 2021-11-02 | 上柴动力海安有限公司 | 一种减轻铸件夹砂的方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CN106077507B (zh) | 一种汽车水冷电机壳铸件的铸造模及铸造工艺 | |
JP2007016738A (ja) | 鋳ぐるみ用部品、シリンダブロック及びシリンダライナ製造方法 | |
JP2008093727A5 (ja) | ||
JP2009274098A (ja) | 低圧鋳造用砂型及びそれを利用した低圧鋳造装置 | |
CN104827000B (zh) | 一种齿圈的铸造方法 | |
JP2017509791A (ja) | 金属マトリクス複合材料の製造方法 | |
CN107962151A (zh) | 一种用高钒铬铁生产双螺杆挤塑机筒体衬套的铸造工艺 | |
JP2014065058A (ja) | 鋳物の製造方法および鋳物製品 | |
CN104619441A (zh) | 铸造模型 | |
CN209238981U (zh) | 斗齿覆膜砂砂芯 | |
JP5675696B2 (ja) | 鋳造における溶融金属の冷却方法及び金属組織の制御方法 | |
JP5776790B2 (ja) | 鋳造用部材、及びその製造方法 | |
CN102151776A (zh) | 铁路电气化接触网用旋转平双耳的制作方法 | |
JP5737016B2 (ja) | 崩壊性中子、及びその製造方法 | |
JP5352786B2 (ja) | 鋳鉄用鋳造方法、押湯部、鋳型及び鋳型の造型方法 | |
JPH0399767A (ja) | 鋳造金型内鋳包み配管製作方法 | |
JP2008138280A (ja) | 鉄系を基材とし、その内部に複合材を3次元組織が生成できる様、3次元形状格子体を用いた複合強化鉄系製品。 | |
JP5352785B2 (ja) | 鋳鉄用鋳造方法、押湯部、鋳型及び鋳型の造型方法 | |
CN116786765B (zh) | 一种坭芯结构及其制备方法 | |
WO2012086382A1 (ja) | 鋳型及び鋳型を用いた鋳造方法、並びに鋳型の設計方法 | |
CN108311654A (zh) | 采用离心方法制备厚壁金属模具的生产方法 | |
JP5726985B2 (ja) | 鋳造用金型 | |
JP2010227965A (ja) | 鋳物の凝固制御方法 | |
JP2005271006A (ja) | 鋳造用金型およびその製造方法 | |
KR102297170B1 (ko) | 수축결합용 주철재 인써트 및 이를 이용한 이종금속 부품의 주조방법 |