JP2014064572A - 肝細胞ベースの応用のための生物活性表面 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(i)ポリマー基材ならびに(ii)前記基材に連結された糖基およびRGDペプチド基を含み、かつ肝細胞を培養するにあたり、3D肝細胞単層の安定化を実現するために好適な表面を提供する。
【選択図】図1
Description
本願は、2006年5月24日出願の米国仮出願番号第60/802,768号の利益を主張する。この特許仮出願の開示は、参照によりその全体が本願明細書に引用されたものとする。
a)前記ポリマー基材を活性化して活性化されたポリマー基材を形成するステップと、
b)前記活性化されたポリマー基材を、前記糖基を含む第1の試薬および前記ペプチド基を含む第2の試薬と反応させて前記表面を形成するステップと
を含むことができる。
本願明細書全体を通して、文脈が別段の定義を必要としていないかぎり、「含む(comprise)」との用語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(compromising)」などの変化形は、述べられたステップもしくは要素もしくは整数またはステップもしくは要素もしくは整数の郡の包含を含み、いかなる1つのステップもしくは要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の排除を含まないと理解される。
本願明細書に記載されるとおり、本発明は、(i)少なくとも1つのポリマー基材(ポリエチレンテレフタレートフィルムなど)、ならびに(ii)このポリマー基材に結合される(連結される)糖基(ガラクトースなど)およびペプチド基(RGDペプチドなど)を含む表面を提供する。ポリマー基材上のRGDペプチドおよびガラクトースは、本願明細書に記載されるような、基材への細胞接着および肝臓特異的な活性を高める。
ポリマー基材は、それに糖基およびペプチド基を連結するのに先立って活性化することができる。この活性化は、基材が糖基(ガラクトースなど)およびペプチド基(RGDペプチドなど)と反応できるようにし上記表面を形成できるようにする前処理ステップを実行することにより行うことができる。基材は、活性化剤の付加である化学反応により活性化することができる。好適な活性化剤は、ポリマー基材に連結することができる官能基ならびにそれぞれ糖基およびペプチド基を含有する第1の試薬および第2の試薬と反応することができる別の官能基を有することができる。あるいは、その活性化剤は、第1の試薬および第2の試薬のポリマー基材との反応を活性化することができるものであってもよい。一実施形態では、第1の試薬および第2の試薬は少なくとも1つのアミン基を含み、ポリマー基材は表面カルボキシル基を有する。この実施形態において、好適な活性化剤はN−ヒドロキシスクシンイミドである。この試薬は、第1の試薬および第2の試薬をアミド基を介してポリマー基材に連結するために、ポリマー上の表面カルボキシル基と反応することができ、引き続いて第1の試薬および第2の試薬上のアミン基によって置換され得る。別の好適な試薬はジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)である。他の類似の活性化剤は当業者には明らかであろう。
本発明で準備されるポリマー基材は、熱可塑性ポリマーとして公知のポリマーの群に属するものであってよい。一実施形態では、熱可塑性ポリマーはポリエステルであってよい。別の実施形態では、ポリエステルはポリエチレンテレフタレートであってよい。ポリマー基材は、第2のポリマーがグラフトされた第1のポリマーを含んでいてよい。第2のポリマーは付加ポリマーであってよい。それはポリアクリル酸またはポリメタクリル酸などのポリ酸であってもよい。一実施形態では、第1のポリマー(PETなど)は、ポリアクリル酸またはポリメチルアクリル酸(必要に応じてメチル基上で置換されている)でグラフト化することにより官能化され、カルボン酸基が導入されてもよい。第2のポリマーは、グラフト重合により第1のポリマーに結合されていてもよい。しかしながら、結合するための他の好適な技法は、当業者が想起するとおり、使用することができる。グラフト化は、例えば、プラズマ処理(アルゴンプラズマ処理など)および/またはUV誘導共重合を使用して実施することができる。
本願明細書において、糖基は単糖であってよいことが想起される。単糖は、ヘキソースまたはその誘導体であってよい。このヘキソースはガラクトースであってよい。糖基は、ガラクトース部分を含む任意の糖(乳糖など)であってよい。
本発明ではペプチド基を準備する。これらのペプチド基は、インテグリンに結合できるものとすることができる。これらのペプチド基の例はトリペプチドまたはYIGSRペプチドである。トリペプチドは、RGDペプチドであってよい。(Tyr−Ile−Gly−Ser−Arg(YIGSR)[Carlisleら,Tissue Eng 2000]、Gly−Phe−Hyp−Gly−Glu−Arg(GFOGER)[Reyesら J Biomed Mater Res A 2003]。
本発明では、多孔性であってもよくまたは不透過性であってもよい表面を準備する。この表面は単層であってもよく、多層であってもよい。この表面は、膜、管、マイクロタイターウェル、カラム、中空糸、ローラーボトル、プレートおよびマイクキャリアの形態であってもよい。
本願明細書に記載される場合、結合は、糖基(ガラクトースなど)およびペプチド基(RGDペプチドなど)を結合するために使用される任意の化学であり得る。これらの基は本発明を実施するのに好適な表面を生成するために互いに、および/または基層へと結合することができる。本願明細書に記載されるとおり、連結(coupling)は結合(conjugation)であってもよい。
基層上のカルボン酸基は、アミン基を含有するガラクトースリガンドおよびRGDペプチド(またはその誘導体)に連結され、アミド基を形成することができる。
基層上のカルボン酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルは、アミン基を含有するガラクトースリガンドおよびRGDペプチド(またはその誘導体)に連結され、アミド基を形成することができる。
基層上のアミン基は、酸クロリドを有するガラクトースリガンドおよびRGDペプチド(またはその誘導体)に連結され、アミド基を形成することができる。
基層上のアジド基は、アセチレン基を有するガラクトースリガンドおよびRGDペプチド(またはその誘導体)に連結され、トリアゾール基を形成することができる。
基層上のマレイミド基は、Michael型の付加によってチオール基を有するガラクトースリガンドおよびRGDペプチド(またはその誘導体)に連結され、N−ヒドロキシスクシンイミドチオエーテル基を生成することができる。
3D組織様構造の形態形成を理解し制御することができることは、細胞生物学および発生生物学および組織工学研究の基本的な目的である。肝細胞スフェロイド形成には、組織形成のプロセスに似た細胞の移送(translocation)および細胞形状の変化が関与する。ハイブリッドポリマー基層中の生物活性リガンドによって肝細胞スフェロイド形成を調節することができれば、スフェロイド形成のメカニズム研究が可能になる。
バイオ人工肝臓装置のためのバイオリアクターは、膜、管、ミクロタイターウェル、カラム、中空糸、ローラーボトル(roller bottler)、プレート、およびマイクロキャリアなどの任意の好適な形態であってよい。バイオリアクターの「支持表面」は、細胞と物理的に接して細胞の付着を支持することが意図されている。好適な支持体材料は、剛直性、表面積、調製および使用の容易さ、ならびにコストなどの特性の最適の組合せを示す表面を提供する。
コラーゲンコーティングされた基層上で培養された従来の2D肝細胞単層と比べて、RGD/ガラクトースハイブリッド基層上で培養された3D肝細胞単層は、生体内での肝細胞と同様の細胞構造および細胞極性、細胞−細胞相互作用ならびに分化機能を呈した。
3D肝細胞単層は3Dスフェロイドよりも良好な付着性および物質移動を呈した。
3D肝細胞単層は、Primara皿上の肝細胞スフェロイドおよび肝細胞単層の混合物[Tzanakakis ESら Cell Transplant.2001;10:329−42.1]に比べて、より均一な単層モルホロジーを呈した。
3D肝細胞単層は、「コラーゲンを欠く」生物活性サンドイッチ培養物構成よりもより効果的な物質移動を呈した。
3D肝細胞単層を生成するために必要とされる表面は、未同定の成分を有しバッチ毎に変動する天然の細胞外マトリックスに比べて、単純で定量的な制御可能な生物活性の手掛かりを含有する。
合成ポリマー表面は、長期保存および低温保存のために化学的にかつ力学的に安定である。
合成ポリマー表面で増殖した肝細胞は、高濃度のDEXにより維持されるPrimara皿で培養された光度に官能化された単層と比べて、高レベルのホルモンに曝露することなく通常の培養培地で培養することができる。
合成ポリマー表面は、生体適合性でありかつ光学的に透明である。このため、その表面はミクロプレートベースのADME/TOXスクリーニングプラットフォームまたは膜ベースのバイオリアクターに直ちに適合させることができる。
複数のリガンドをPETフィルム上へと結合するという同一の技術を使用して、肝細胞ベースの応用のための基底膜組成物をよりよく模倣するために、他の生物活性リガンドを結合することができる。
本願明細書に記載されるとおり、プレスフェロイド3D単層段階は、応用への大きな潜在能力を示す従来の2D単層よりも、相対的に強固な細胞−基層相互作用、高められた細胞−細胞相互作用、改善された極性および肝臓特異的な機能を特徴とした。ガラクトース/RGDハイブリッド基層を使用してこの構成を安定化することにより、本発明者らは、この3D単層段階を1週間まで維持することができた。その化学的かつ力学的安定性および定量的に制御可能な生物活性の手掛かりをもとに、透明なハイブリッドポリマー基層は、コラーゲンコーティングされた基層の代替物として、高スループット薬物代謝/肝毒性スクリーニングのための現在のミクロプレートベースの自動化プラットフォームに簡単にかつ直ちに組込まれる。例示的な薬物肝毒性研究が示すとおり、提供された3D肝細胞単層構成は、生体内での生物反応をよりよく要約する、生体異物の薬物動態/動態学データの生体外予測を改善した。このハイブリッド基層は、より良好な細胞付着性および機能を備えた3D肝細胞単層を得るためのバイオ人工肝臓装置用のバイオリアクターの細胞培養表面としても有用である可能性がある。
3D肝細胞単層は、例えば[AP.Li Drug Discovery Today 2005;2:179−185;White RE. Annu Rev Pharmacol Toxicol.2000;40:133−57;Battersby BJ Trends Biotechnol.2002;20:167−73]に記載されているような肝細胞ベースの高スループットの生体異物の代謝または肝毒性スクリーニングのために使用することができる。
ADME/TOX薬物特性、つまり吸収、体内動態、代謝、排泄および毒性、は臨床における成功に関連しかつそれにとって重大な、重要な薬物特性である。薬物ADME/Tの正確な予測は、製薬業界にとっては依然として主要な課題のままである。予想されなかった副作用に起因する市販されている薬物の毎年の使用中止または厳しい使用制限から明らかなように、臨床前および臨床時の薬物ADME/T評価の日常的な実施では、明らかに不十分である。肝臓は生物変換および生体異物(薬物を含む)の解毒の主たる臓器であるので、肝臓の実質細胞として、肝細胞ベースの薬物スクリーニングは、薬物候補の代謝および毒性を評価するために広く使用されてきた。生体異物の現在の肝細胞ベースの高スループット代謝/肝毒性スクリーニングのほとんどは、基材調製の容易さおよび一貫性に起因して、I型コラーゲンがコーティングされた96ウェルまたは384ウェルのミクロプレート上で培養された肝細胞を使用して行われている。いくつかの他の生体外培養物構成は、肝細胞ベースの系の機能性および生体模倣性を改善しようとしており、それらとしては、3Dミクロカプセル、サンドイッチ培養物、3Dスフェロイド培養物マイクロキャリア培養物、バイオリアクター内部での潅流培養物および非実質細胞との共培養が挙げられる。しかしながら、それらの複雑な系は、プレート取扱いロボット、色素ベースの分析のための高密度ミクロプレートおよびプレート走査型リーダーなどの平行プロセスを支持する自動化および機器分析をもたらしている標準的な高スループットスクリーニングプラットフォームに容易には適合できない技術的複雑さという問題を抱えている。
高含有量スクリーニングは、自動化された画像ベースの技術を使用する細胞検定の解析を指す、細胞ベースの系に適用できる高スループットアプローチである。これによって、複数の検定パラメータをモニタリングすること、および細胞情報(細胞形状および生存能力、標的の動きおよびその化合物と他の生体分子との相互作用を含む)をワンステップで捕捉することが可能になる。差は、2D撮像装置を使用すると1ウェルあたり数1000であるのに対して、通常の観察時間測定を使用して1ウェルあたり数データポイントである。このように、高含有量アプローチは、多くの細胞の特徴が一度に追跡できるため、細胞ベースのスクリーニングのコストを下げることができる。
ハイブリッド基層上で培養された肝細胞3D単層のスフェロイドを模倣する特性、単層構造、および効果的な付着のために、本願明細書に記載されるハイブリッド基層は、肝細胞ベースの応用(ミクロプレートベースの代謝および肝毒性試験ならびに平坦プレートバイオ人工補助装置など)のための従来のコラーゲンコーティングされた2D基層についての優れた代替物となる。APAPの例示的な肝毒性研究に示されるように、ハイブリッド基層上で培養された肝細胞は、APAPに対して、コラーゲン上で培養された肝細胞よりもより高い感度を示した。
厚みが約100μmの二軸配向させたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを英国、ケンブリッジのGoodfellow Inc.から購入した。ガラクトースリガンド、1−O−(6’−アミノへキシル)−D−ガラクトピラノシド(AHG、M.W.279)を以前に開発された方法[Yingら,Biomacromolecules 2003,Jan−Feb;4(1):157−165;Findeis MA、Int J Pept Protein Res,1994,May;43(5):477−485;Weigelら,Carbohydr Res,1979;70:83−91]に従って合成し、NMRスペクトルにより確認した。RGDペプチド(GRGDS)をPeptides Internationalから購入した。別段の記載がないかぎり、すべての他の化学物質をSigma−Aldrich Singaporeから購入した。
pAA−g−PET(すなわちpAAをグラフトしたPET)ストリップを、96ウェルのミクロプレートにフィットさせるために直径6.4mmの円形のディスクに切った。RGDペプチドおよびガラクトースリガンド(AHG)を、「2ステップ」EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)化学を使用して、別々にまたは同時にアミド結合を介してpAAc−g−PET基層に結合した(図1)。手短に言えば、第1のステップで、1.5mg EDCおよび0.3mgスルホ−NHSを含有する100μlのMES緩衝液(50mM、pH5.5)をpAA−g−PETディスクを含む各96ウェルに加え、NHSエステルを形成することにより表面カルボキシル基を活性化した。室温での2時間の活性化後、MES溶液を完全に除去し、リガンドを含む100μl リン酸緩衝液(0.1M、pH7.4)で再び満たし、サーモミキサー(Eppendorf)中で4℃で48時間、300rpmで振盪することにより活性化された基層と反応させた。
ガラクトシル化された基層上での肝細胞自己集合のプロセスを、以下の方法を使用して調べた。
細胞骨格は細胞の広がり、移行および組織形成を媒介する主要な動力源(force apparatus)であるため、ガラクトシル化された基層上での肝細胞3Dスフェロイド自己集合の間、および比較としてのコラーゲンコーティングされた基層の上での従来の2D単層形成の間、主要な骨格タンパク質の1つであるアクチンフィラメントの動的再組織化を調べた。
アクチン細胞骨格はアダプタータンパク質(α−アクチニン、タリン、フィラミン)を介して細胞−基層相互作用を媒介するための接着斑(focal adhesion complex)およびカテニンを介して細胞−細胞相互作用を媒介するためのカドヘリンの両方に連結されているため、様々なアクチン構成の存在は、細胞−細胞相互作用によりもたらされる力と細胞−基層相互作用によりもたらされる力との間の競合を示す。この競合を、肝細胞3D単層および従来の2D単層の形成の間のリン酸化された接着斑キナーゼ(p−FAK)およびE−カドヘリン(ELISAによる)の発現レベルの変化を(ELISAにより)定量することにより調べた(図6A)。接着斑キナーゼ(FAK)は、インテグリンを介した基層への付着の際に細胞骨格によってもたらされる力に反応して接着斑の集合を調節することに関与する、鍵となるタンパク質である。細胞外マトリックス(ECM)への細胞のインテグリン媒介性接着は、FAKのTyr−397残基での自己リン酸化を開始させる。p−FAKの発現を、細胞−基層相互作用のインジケータとして定量した。細胞−細胞相互作用を媒介するための主要な細胞接着タンパク質として、E−カドヘリンを細胞−細胞相互作用のインジケータとして選択した。
様々な培養構成の間の機能的構造の特徴を、極性および密着結合形成によって評価した。これらは、それらが生体内での状況を予想するものであれば、生体外構成についての貴重な基準である。細胞極性の形成の研究は、多剤耐性関連タンパク質(Mrp2)および側底CD147をそれぞれ頂端(apical)マーカーおよび側底(basolateral)マーカーとして、毛細胆管トランスポーターを調べることにより行った。共焦点画像を、これらの2マーカーの共局在化を定量するために加工した。一次抗CD147モノクローナル抗体をSerotec(ノースカロライナ州、ローリー)から購入した。一次ウサギ抗ZO−1抗体をZymed laboratories(米国、サンフランシスコ)から購入した。
プレスフェロイド3D単層構成の潜在的な応用の可能性を評価するために、2日目で培養されたこの一過性の段階における肝細胞の肝臓特異的な機能(合成、解毒および代謝活性など)を2日目の従来の2D単層、および3日目の3Dスフェロイドと比較した。
一般に使用される鎮痛剤であるアセトアミノフェン(APAP)は、動物およびヒトにおいて大量に摂取した場合、特に慢性的なエタノール消費後に投与した場合に、肝毒性を引き起こすことが知られている。肝毒性は、組織高分子に結合し、それにより細胞壊死を開始することができる毒性のある中間体へと、アセトアミノフェンがシトクロムP450(P450)酵素によって生物変換されることに由来する。CYP1A、CYP2EおよびCYP3Aは、アセトアミノフェンを代謝することができることが示されているもっとも活性なアイソフォームである。CYP活性の誘発は、APAP毒性の高まりをもたらすことが示された。アフラトキシンB1は、ヒトおよび実験動物において急性肝毒性および肝臓癌を引き起こす。アフラトキシンは、通常、CYP2C11および3A2によって酸化され、中間体の反応性エポキシドを生成し、このエポキシドは、細胞高分子に結合し肝臓の門脈周辺領域に損傷を与える。プレスフェロイド単層および2D単層に対してアセトアミノフェンまたはアフラトキシンB1が引き起こす肝毒性に対する反応を調べた。
実施例1で同定したプレスフェロイド3D単層は肝細胞自己集合の動的プロセスの間の一過性の段階にすぎないため、本発明者らは、それらが長期の応用で使用できるように、GRGDSペプチドおよびガラクトースリガンドをPET基層上へ結合すること(RGD/ガラクトースPET−ハイブリッド)によるプレスフェロイド3D単層の安定化の実行可能性を調べた。様々な生物活性基層(PET−Gal、PET−RGD、PET−ハイブリッド)を製作するための方法は実施例1Bで説明した。
様々な生物活性基層(PET−Gal、PET−RGD、PET−ハイブリッド)上の肝細胞付着性を調べた。
肝細胞モルホロジーに対する基層特徴(結合される生物活性リガンドの存在など)の重大な影響が観察された。
いかなる提案された作用メカニズムにも拘束されることはないが、PET−ハイブリッド上で培養された肝細胞は、2D単層より強固な細胞−細胞相互作用およびより弱い細胞−基層相互作用を経験し、このためにPET−ハイブリッド上で培養された肝細胞は3D細胞モルホロジーを維持することができると考えられる。PET−ハイブリッド上で培養された3D単層は、上で観察したように、培養基層により良好に接着するので、PET−Gal上の3Dスフェロイドよりも強固な細胞−基層相互作用をも有するはずである。コラーゲン基層上で培養された肝細胞の2D単層は、細胞全体にわたって強いアクチンストレスファイバーを示し、これは強固な細胞−基層相互作用を示す(図12)。3D単層としてPET−ハイブリッド上で培養された肝細胞は、コラーゲン基層上の2D単層よりも少ないアクチンストレスファイバーを有したが、3Dスフェロイドより多くのストレスファイバーを有しており、これは細胞−基層相互作用の中間の強さを示す。PET−ハイブリッド上の3D単層は、PET−Gal上で培養された3Dスフェロイドと同様の皮質F−アクチン分布を呈し、これは、生体内の肝細胞の強固な細胞−細胞相互作用の特徴を示す。細胞内のクラスターとしてのp−FAK分布は、細胞−基層相互作用の特異的なインジケータである。点状のp−FAKクラスターのシグナルは、2D単層および3D単層では強く、3Dスフェロイドでは非常に弱い(図12)。これは、3D単層は3Dスフェロイドより強固な細胞−基層相互作用を経験し、基層により良好に接着することができたことを確認させる。細胞−細胞相互作用の特異的インジケータとしてのE−カドヘリン発現を調べた。E−カドヘリンは、3D単層およびスフェロイドでは細胞−細胞境界に局在化するが、2D単層では肝細胞の細胞質全体にわたって細胞内に存在することが見出された。これは、3D単層およびスフェロイドにおける2D単層よりも強固な細胞−細胞相互作用を確認する。
いかなる提案された作用メカニズムに拘束されることはないが、このハイブリッド基層におけるGRGDSペプチドの役割は、インテグリン膜受容体と結合することを通して「単層」段階を安定化すること、および「単層」が3Dスフェロイドへと開くのを防ぐことと考えられる。
PET−ハイブリッド上の安定化した3D肝細胞単層の肝臓特異的な機能を調べた。
PET−Gal上で培養された3Dスフェロイドおよびコラーゲン基層上の2D肝細胞単層と比較した、PET−ハイブリッド上で培養された3D肝細胞単層に対する、APAPのみおよび3MCと同時投与により引き起こされる肝毒性の効果を調べた。CYP1Aの誘導物質である3−MCとの同時投与を、より高い毒性につながる薬物−薬物相互作用の評価として実施した。アセトアミノフェンの肝毒性試験を、実施例1Hに記載した方法に従って実施した。
Claims (35)
- (i)ポリマー基材ならびに(ii)前記基材に連結された糖基およびRGDペプチド基を含み、前記糖基が3D肝細胞単層を形成するのに十分な密度でガラクトース、ガラクトース部分またはこれらの組合せを含み、前記ガラクトース、ガラクトース部分またはこれらの組合せと共結合されている前記RGDペプチド基は前記3D肝細胞単層を安定化する、表面。
- 前記ポリマー基材が熱可塑性ポリマーを含む、請求項1に記載の表面。
- 前記熱可塑性ポリマーがポリエステルを含む、請求項2に記載の表面。
- 前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレート(PET)を含む、請求項3に記載の表面。
- 前記ポリマー基材が第1のポリマー、および前記第1のポリマーにグラフト化された第2のポリマーを含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の表面。
- 前記糖基およびペプチド基が前記第2のポリマーに連結されている、請求項5に記載の表面。
- 前記第2のポリマーがポリアクリル酸を含む、請求項6に記載の表面。
- 前記ガラクトース部分が乳糖である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の表面。
- さらに、YIGSRペプチド、GFOGERペプチドまたはこれらの組合せを含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の表面。
- 前記RGDペプチドがアミノ酸配列GRGDSを含む、請求項9に記載の表面。
- 前記RGDペプチド基がアミノ酸配列GRGDSからなる、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の表面。
- 前記表面が多孔性である、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の表面。
- 前記表面が非多孔性である、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の表面。
- 請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の表面を含む、装置。
- 肝細胞を増殖させるための装置であって、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の表面を含む、装置。
- 前記装置がBLADである、請求項14または請求項15に記載の装置。
- 前記BLADがバイオリアクターである、請求項16に記載の装置。
- 安定化された3D肝細胞単層を提供するためのプロセスであって、
(i)糖基およびペプチド基が連結されたポリマー基材を含む表面を準備するステップと、
(ii)前記肝細胞が前記表面に接着するのに好適な時間および条件の下で、肝細胞の存在下で生体外で前記表面をインキュベーションするステップと、
(iii)前記表面に接着している前記肝細胞を培養して安定化された3D肝細胞単層を生成するステップと、
を含むプロセス。 - 糖基およびRGDペプチド基をポリマー基材に連結するステップを含む、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のポリマー表面を作製するためのプロセス。
- さらに、第2のポリマーを第1のポリマー上にグラフト化して、前記連結するステップに先立って前記ポリマー基材を形成するステップを含む、請求項18または請求項19に記載のプロセス。
- 前記第2のポリマーを前記第1のポリマー上にグラフト化するステップが、プラズマ処理および/またはUV誘導グラフト重合を含む、請求項20に記載のプロセス。
- 前記第1のポリマーがプラズマ処理またはUV方法によってグラフト化できる、請求項21に記載のプロセス。
- 前記プラズマ処理がアルゴンプラズマ処理である、請求項22に記載のプロセス。
- 前記連結するステップが、
a)前記ポリマー基材を活性化して活性化されたポリマー基材を形成するステップと、
b)前記活性化されたポリマー基材を、前記糖基を含む第1の試薬および前記ペプチド基を含む第2の試薬と反応させて前記表面を形成するステップと
を含む、請求項19から請求項23のいずれか1項に記載のプロセス。 - 前記活性化するステップが、前記ポリマー基材を活性化剤と反応させて、活性化する基を前記ポリマー基材の前記表面に結合するステップを含む、請求項24に記載のプロセス。
- 前記連結するステップが、さらに、前記ポリマー基材をクエンチ剤でクエンチし、これにより未反応の活性化する基をクエンチするステップを含む、請求項25に記載のプロセス。
- 前記活性化剤がN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基を含み、前記第1の試薬および前記第2の試薬がともに少なくとも1つのアミン基を含む、請求項26に記載のプロセス。
- 前記クエンチ剤がアミン基を含む、請求項27に記載のプロセス。
- 前記糖基がガラクトースおよび/もしくは乳糖またはこれらの組合せを含む、請求項18から請求項28のいずれか1項に記載のプロセス。
- さらに、YIGSRペプチド、GFOGERペプチドまたはこれらの組合せを含む、請求項18から請求項29のいずれか1項に記載のプロセス。
- 肝細胞を培養するためのバイオリアクターであって、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の表面を備えるバイオリアクター。
- 前記バイオリアクターが、膜、管、マイクロタイターウェル、カラム、中空糸、ローラーボトル、組織培養プレートまたはマイクロキャリアの形態である、請求項31に記載のバイオリアクター。
- バイオ人工肝臓補助装置(BLAD)における、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の表面の使用。
- 前記BLADがバイオリアクターである、請求項33に記載の使用。
- 請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の表面の使用であって、前記使用が、ミクロプレートベースのプラットフォームでの高スループット薬物試験、高含有量スクリーニング、肝毒性試験、代謝試験、平板バイオ人工補助装置、および/または膜ベースのバイオリアクターからなる群から選択される、表面の使用。
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