JP2014060037A - プラズマ処理装置及び方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、あるいは、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理するに際して、基材の所望の被処理領域全体を均一に処理することができるプラズマ処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【解決手段】誘導結合型プラズマトーチユニットTにおいて、第一石英筒4の周囲に配置されたソレノイドコイル3に高周波電力を供給することで、チャンバ7内にプラズマPを発生させ、スリット板8に設けた、2つの平行な円弧に囲まれた形状をもつ開口部12からプラズマを基材載置台1上の基材2に照射する。開口部12の長手方向に対して垂直な向きに、チャンバ7と基材載置台1とを相対的に移動させることで、基材2を処理する。
【選択図】図1
【解決手段】誘導結合型プラズマトーチユニットTにおいて、第一石英筒4の周囲に配置されたソレノイドコイル3に高周波電力を供給することで、チャンバ7内にプラズマPを発生させ、スリット板8に設けた、2つの平行な円弧に囲まれた形状をもつ開口部12からプラズマを基材載置台1上の基材2に照射する。開口部12の長手方向に対して垂直な向きに、チャンバ7と基材載置台1とを相対的に移動させることで、基材2を処理する。
【選択図】図1
Description
本発明は、熱プラズマを基材に照射して基材を処理する熱プラズマ処理や、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を処理する低温プラズマ処理などの、プラズマ処理装置及び方法に関するものである。
従来、多結晶シリコン(poly−Si)等の半導体薄膜は薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)や太陽電池に広く利用されている。とりわけ、poly−SiTFTは、キャリア移動度が高いうえ、ガラス基板のような透明の絶縁基板上に作製できるという特徴を活かして、例えば、液晶表示装置、液晶プロジェクタや有機EL表示装置などの画素回路を構成するスイッチング素子として、或いは液晶駆動用ドライバの回路素子として広く用いられている。
ガラス基板上に高性能なTFTを作製する方法としては、一般に「高温プロセス」と呼ばれる製造方法がある。TFTの製造プロセスの中でも、工程中の最高温度が1000℃程度の高温を用いるプロセスを一般的に「高温プロセス」と呼んでいる。高温プロセスの特徴は、シリコンの固相成長により比較的良質の多結晶シリコンを成膜することができる点、シリコンの熱酸化により良質のゲート絶縁層を得ることができる点、及び清浄な多結晶シリコンとゲート絶縁層との界面を形成できる点である。高温プロセスではこれらの特徴により、高移動度でしかも信頼性の高い高性能TFTを安定的に製造することができる。
他方、高温プロセスは固相成長によりシリコン膜の結晶化を行うプロセスであるために、600℃程度の温度で48時間程度の長時間の熱処理を必要とする。これは大変長時間の工程であり、工程のスループットを高めるためには必然的に熱処理炉を多数必要とし、低コスト化が難しいという点が課題である。加えて、耐熱性の高い絶縁性基板として石英ガラスを使わざるを得ないため基板のコストが高く、大面積化には向かないとされている。
一方、工程中の最高温度を下げ、安価な大面積のガラス基板上にpoly−SiTFTを作製するための技術が「低温プロセス」と呼ばれる技術である。TFTの製造プロセスの中でも、最高温度が概ね600℃以下の温度環境下において比較的安価な耐熱性のガラス基板上にpoly−SiTFTを製造するプロセスは、一般に「低温プロセス」と呼ばれている。低温プロセスでは、発振時間が極短時間のパルスレーザーを用いてシリコン膜の結晶化を行うレーザー結晶化技術が広く使われている。
レーザー結晶化とは、基板上のシリコン薄膜に高出力のパルスレーザー光を照射することによって瞬時に溶融させ、これが凝固する過程で結晶化する性質を利用する技術である。
しかしながら、このレーザー結晶化技術には幾つかの大きな課題がある。一つは、レーザー結晶化技術によって形成したポリシリコン膜の内部に局在する多量の捕獲準位である。この捕獲準位の存在により、電圧の印加によって本来能動層を移動するはずのキャリアが捕獲され、電気伝導に寄与できず、TFTの移動度の低下、閾値電圧の増大といった悪影響を及ぼす。
更に、レーザー出力の制限によって、ガラス基板のサイズが制限されるといった課題もある。レーザー結晶化工程のスループットを向上させるためには、一回で結晶化できる面積を増やす必要がある。しかしながら、現状のレーザー出力には制限があるため、第7世代(1800mm×2100mm)といった大型基板にこの結晶化技術を採用する場合には、基板一枚を結晶化するために長時間を要する。
また、レーザー結晶化技術は一般的にライン状に成形されたレーザーが用いられ、これを走査させることによって結晶化を行なう。このラインビームは、レーザー出力に制限があるため基板の幅よりも短く、基板全面を結晶化するためには、レーザーを数回に分けて走査する必要がある。これによって基板内にはラインビームの継ぎ目の領域が発生し、二回走査されてしまう領域ができる。この領域は一回の走査で結晶化した領域とは結晶性が大きく異なる。そのため両者の素子特性は大きく異なり、デバイスのバラツキの大きな要因となる。
最後に、レーザー結晶化装置は装置構成が複雑であり且つ、消耗部品のコストが高いため、装置コストおよびランニングコストが高いという課題がある。これによって、レーザー結晶化装置によって結晶化したポリシリコン膜を使用したTFTは製造コストが高い素子になってしまう。
このような基板サイズの制限、装置コストが高いといった課題を克服するため、「熱プラズマジェット結晶化法」と呼ばれる結晶化技術が研究されている(例えば、非特許文献1を参照)。本技術を以下に簡単に説明する。タングステン(W)陰極と水冷した銅(Cu)陽極を対向させ、DC電圧を印加すると両極間にアーク放電が発生する。この電極間に大気圧下でアルゴンガスを流すことによって、銅陽極に空いた噴出孔から熱プラズマが噴出する。
熱プラズマとは、熱平衡プラズマであり、イオン、電子、中性原子などの温度がほぼ等しく、それらの温度が10000K程度を有する超高温の熱源である。このことから、熱プラズマは被熱物体を容易に高温に加熱することが可能であり、a−Si膜を堆積した基板が超高温の熱プラズマ前面を高速走査することによってa−Si膜を結晶化することができる。
このように装置構成が極めて単純であり、且つ大気圧下での結晶化プロセスであるため、装置を密閉チャンバ等の高価な部材で覆う必要が無く、装置コストが極めて安くなることが期待できる。また結晶化に必要なユーティリティは、アルゴンガスと電力と冷却水であるため、ランニングコストも安い結晶化技術である。
図10は、この熱プラズマを用いた半導体膜の結晶化方法を説明するための模式図である。
同図において、熱プラズマ発生装置31は、陰極32と、この陰極32と所定距離だけ離間して対向配置される陽極33とを備え構成される。陰極32は、例えばタングステン等の導電体からなる。陽極33は、例えば銅などの導電体からなる。また、陽極33は、中空に形成され、この中空部分に水を通して冷却可能に構成されている。また、陽極33には噴出孔(ノズル)34が設けられている。陰極32と陽極33の間に直流(DC)電圧を印加すると両極間にアーク放電が発生する。
この状態において、陰極32と陽極33の間に大気圧下でアルゴンガス等のガスを流すことによって、上記の噴出孔34から熱プラズマ35を噴出させることができる。ここで「熱プラズマ」とは、熱平衡プラズマであり、イオン、電子、中性原子などの温度がほぼ等しく、それらの温度が10000K程度を有する超高温の熱源である。
このような熱プラズマを半導体膜の結晶化のための熱処理に利用することができる。具体的には、基板36上に半導体膜37(例えば、アモルファスシリコン膜)を形成しておき、当該半導体膜37に熱プラズマ(熱プラズマジェット)35を当てる。このとき、熱プラズマ35は、半導体膜37の表面と平行な第1軸(図示の例では左右方向)に沿って相対的に移動させながら半導体膜37に当てられる。すなわち、熱プラズマ35は第1軸方向に走査しながら半導体膜37に当てられる。ここで「相対的に移動させる」とは、半導体膜37(及びこれを支持する基板36)と熱プラズマ35とを相対的に移動させることを言い、一方のみを移動させる場合と両者をともに移動させる場合のいずれも含まれる。
このような熱プラズマ35の走査により、半導体膜37が熱プラズマ35の有する高温によって加熱され、結晶化された半導体膜38(本例ではポリシリコン膜)が得られる(例えば、特許文献1を参照)。
図11は、最表面からの深さと温度の関係を示す概念図である。同図に示すように、熱プラズマ35を高速で移動させることにより、表面近傍のみを高温で処理することができる。熱プラズマ35が通り過ぎた後、加熱された領域は速やかに冷却されるので、表面近傍はごく短時間だけ高温になる。
このような熱プラズマは、点状領域に発生させるのが一般的である。熱プラズマは、陰極32からの熱電子放出によって維持されており、プラズマ密度の高い位置では熱電子放出がより盛んになるため、正のフィードバックがかかり、ますますプラズマ密度が高くなる。つまり、アーク放電は陰極の1点に集中して生じることとなり、熱プラズマは点状領域に発生する。
半導体膜の結晶化など、平板状の基材を一様に処理したい場合には、点状の熱プラズマを基材全体に渡って走査する必要があるが、走査回数を減らしてより短時間で処理できるプロセスを構築するには、熱プラズマの照射領域を広くすることが有効である。円形の領域に熱プラズマを生成する方法として、誘導結合型の高周波プラズマトーチがある(例えば、特許文献2を参照)。誘導結合型の高周波プラズマトーチにおいては、無電極放電であることから、熱プラズマの安定性に優れ(時間変化が小さい)、電極材料の基材への混入(コンタミネーション)が少ないという利点もある。
また、円形の誘導結合型の高周波プラズマトーチの下流に線状スリットを設けることで、線状の熱プラズマ照射を図ったものが開示されている(例えば、特許文献3を参照)。
S.Higashi, H.Kaku,T.Okada,H.Murakami and S.Miyazaki,Jpn.J.Appl.Phys.45,5B(2006)pp.4313−4320
しかしながら、半導体の結晶化など、ごく短時間だけ基材の表面近傍を高温処理する用途に対して、従来例に示した特許文献2に記載の技術では、基材とプラズマトーチを相対的に移動させた際、基材上のプラズマトーチの中央部が通過する領域で、プラズマトーチの端部が通過する領域よりも、通過に要する時間が長くなるので、均一な処理が困難であるという問題点があった。
また、従来例に示した特許文献3に記載の技術では、線状スリットの線方向に均一なプラズマを得るのが困難なため、均一な処理が困難であるという問題点があった。これは、誘電体筒の内部には、基材がなす面とほぼ平行なドーナツ状の高密度プラズマが発生し、誘電体筒の中心と壁面近くの双方にプラズマ密度が低い領域が生じるからである。
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、あるいは、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理するに際して、基材の所望の被処理領域全体を均一に処理することができるプラズマ処理装置及び方法を提供することを目的としている。
本願の第1発明のプラズマ処理装置は、以下の構成を特徴とするものである。
1)第一の誘電体筒。
2)第一の誘電体筒の内側に配置され、かつ、第一の誘電体筒との間に空間を有して設けられた第二の誘電体筒。
3)第一及び第二の誘電体筒の一端を保持し、2つの平行な円弧に囲まれた形状をもつ開口部を備えるスリット板。
4)第二の誘電体筒の内側にガスを供給するガス供給配管。
5)第一及び第二の誘電体筒と同軸配置されたコイル。
6)コイルに接続された高周波電源。
7)基材をスリット板に近接して配置する基材載置台。
1)第一の誘電体筒。
2)第一の誘電体筒の内側に配置され、かつ、第一の誘電体筒との間に空間を有して設けられた第二の誘電体筒。
3)第一及び第二の誘電体筒の一端を保持し、2つの平行な円弧に囲まれた形状をもつ開口部を備えるスリット板。
4)第二の誘電体筒の内側にガスを供給するガス供給配管。
5)第一及び第二の誘電体筒と同軸配置されたコイル。
6)コイルに接続された高周波電源。
7)基材をスリット板に近接して配置する基材載置台。
このような構成により、基材の所望の被処理領域全体を均一に処理することができる。
本願の第1発明のプラズマ処理装置において、好適には、前記円弧の内角が、180°未満であることが好ましい。
このような構成により、基材の所望の被処理領域全体をより均一に処理することができる。
また、好適には、前記第二の誘電体筒の内側に配置された第三の誘電体筒を備え、前記第三の誘電体筒の内側に冷媒を供給するための冷媒供給配管を備えることが好ましい。
このような構成により、より効率的な処理が可能となる。
この場合、前記第三の誘電体筒の外周に凹部を備える構成としてもよいし、前記第二の誘電体筒の内周に凹部を備える構成としてもよい。
また、好適には、前記開口部の長手方向に対して垂直な向きに、前記スリット板と前記基材載置台とを相対的に移動可能とする移動機構を備えることが好ましい。
このような構成により、基材の所望の被処理領域全体をより均一に処理することができる。
本願の第2発明のプラズマ処理方法は、以下のプロセスを特徴とするものである。
1)第一の誘電体筒と、第一の誘電体筒の内側に配置された第二の誘電体筒との間に冷媒を流す工程。
2)第二の誘電体筒の内側にガスを供給し、第一の誘電体筒の外周に設けられたコイルに高周波電力を供給することで、第二の誘電体筒の内側にプラズマを発生させる工程。
3)2つの平行な円弧に囲まれた形状をもつ開口部から噴出させたプラズマを、開口部に近接して配置した基材に照射することにより、基材の表面を処理する工程。
このようなプロセスにより、基材の所望の被処理領域全体を均一に処理することができる。
1)第一の誘電体筒と、第一の誘電体筒の内側に配置された第二の誘電体筒との間に冷媒を流す工程。
2)第二の誘電体筒の内側にガスを供給し、第一の誘電体筒の外周に設けられたコイルに高周波電力を供給することで、第二の誘電体筒の内側にプラズマを発生させる工程。
3)2つの平行な円弧に囲まれた形状をもつ開口部から噴出させたプラズマを、開口部に近接して配置した基材に照射することにより、基材の表面を処理する工程。
このようなプロセスにより、基材の所望の被処理領域全体を均一に処理することができる。
本発明によれば、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、あるいは、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理するに際して、基材の所望の被処理領域全体を均一に処理することができる。
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマ処理装置について図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図1及び図2を参照して説明する。
以下、本発明の実施の形態1について、図1及び図2を参照して説明する。
図1(a)は、本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットがなす円筒形状の中心軸を通る面で切った断面図である。
図1(b)及び(c)は、誘導結合型プラズマトーチユニットがなす円筒形状の軸方向に垂直な面で切った断面図である。図1(a)は図1(b)の破線で切った断面図、図1(b)は図1(a)の破線B−B‘で切った断面図、図1(c)は図1(a)の破線C−C‘で切った断面図、図1(d)はスリット板8の開口部12の拡大図、また、図2は、図1に示した誘導結合型プラズマトーチユニットの組立構成図であり、各部品(一部)の斜視図を並べたものである。
図1及び図2において、基材載置台1上に基材2が載置されている。誘導結合型プラズマトーチユニットTにおいて、導体製のソレノイドコイル3が第一の誘電体筒としての第一石英筒4及び第二の誘電体筒としての第二石英筒5の近傍に配置される。チャンバ7は、第二石英筒5の内部である。また、ソレノイドコイル3の中心軸は、基材載置台1に垂直である。また、ソレノイドコイル3は、第一石英筒4の外側に配置される。
誘導結合型プラズマトーチユニットTは、全体が接地された導体製のシールド部材(図示しない)で囲われ、高周波の漏洩(ノイズ)が効果的に防止できるとともに、好ましくない異常放電などを効果的に防止できる。
チャンバ7は、第二石英筒5の内壁と、蓋6及びスリット板8に囲まれている。蓋6及びスリット板8は誘電体であっても導体であってもよい。誘電体で構成した場合は、アーク放電が起きにくく、安定したプラズマが容易に得られるという利点がある。導体で構成した場合は、冷媒流路15を比較的自由に配置でき、効果的な冷却が可能となるという利点がある。あるいは、金属などの導体にセラミックスなどの絶縁体を溶射などによりコーティングしたものも利用可能である。このような構成によれば、アーク放電が起きにくく、安定したプラズマが容易に得られ、かつ、効果的な冷却が可能となる。
蓋6に設けられた貫通穴にガス供給管9が挿入されている。ガス供給管9には中心ガス供給配管10及び旋回ガス供給配管11が設けられ、これらの配管を介してチャンバ7にガスが導入される。中心ガス供給配管10及び旋回ガス供給配管11へ導入するガスの流量は、その上流にマスフローコントローラなどの流量制御装置を備えることにより制御される。中心ガス供給配管10からチャンバ7内に供給されたガスは、第二石英筒5の中心軸に沿って流れ、また、旋回ガス供給配管11からチャンバ7内に供給されたガスは、第二石英筒5の内壁面に沿って旋回流を構成する。
ソレノイドコイル3は中空の銅管からなり、内部が冷媒流路となっている。
スリット板8に開口部12が設けられ、基材載置台1(或いは、基材載置台1上の基材2)は、開口部12と対向して配置されている。この状態で、チャンバ7内にガスを供給しつつ、開口部12から基材2に向けてガスを噴出させながら、図示していない高周波電源よりソレノイドコイル3に高周波電力を供給することにより、チャンバ7にプラズマPを発生させ、開口部12からプラズマを基材2に照射することにより、基材2上の薄膜22をプラズマ処理することができる。
開口部12は、図1(c)及び(d)に示すように、2つの平行な円弧に囲まれた形状をもつ。すなわち、第一の円弧13及び第二の円弧14と、これらの円弧の端部どうしを繋ぐ直線部16で囲まれた形状である。第二の円弧14は、第一の円弧13を、その中点における接線に垂直な向き(図の左右方向)に平行移動した形状である。第一の円弧13は、平面図上、第二石英筒5の内壁面と一致する位置に配置される。また、開口部12の長手方向に対して垂直な向きに、チャンバ7と基材載置台1とを相対的に移動させることで、基材2を処理する。つまり、図1(a)の左右方向へ、図1(c)の左右方向へ、誘導結合型プラズマトーチユニットTまたは基材載置台1を動かす。したがって、この相対移動の向きは、第一の円弧を第二の円弧に向けて平行移動した向きと一致する。結局、図1(d)に示す開口部12の幅w(開口部12の、相対移動する向きにおける長さ)は、開口部12の任意の位置において一定である。このような構成により、基材2にプラズマが照射される時間が、開口部12の長手方向の任意の位置において等しくなるので、基材2を大面積に渡って均一に処理することが可能となる。
なお、円筒状のチャンバ内に発生するプラズマは、円筒の内壁に沿って円環状に形成されるため、特許文献3に示した従来例のように開口部が直線状であると、開口部の長手方向に均一なプラズマ処理が行えない。一方、本実施の形態においては、円環状のプラズマに沿う形状の開口部12を設けているので、基材2をより均一に処理することができる。
また、蓋6内に冷媒流路15a、スリット板8内に冷媒流路15b、第一石英筒4と第二石英筒5の間の空間に冷媒流路15cが設けられており、各部品を効果的に冷却することができる。各冷媒流路は連通しており、全体としてひとつの冷媒流路系を構成する。給水配管18aより冷媒流路系へ冷媒が供給され、冷媒流路15a、15c、15bを順に通過した冷媒は、排水配管18bより排出される。つまり、給水配管18a及び冷媒流路15aは、第一石英筒4及び第二石英筒5の間の冷媒流路15cに冷媒を供給するための冷媒供給配管を構成し、また、冷媒流路15b及び排水配管18bは、第一石英筒4及び第二石英筒5の間の冷媒流路15cから冷媒を排出するための冷媒排出配管を構成している。なお、図2には、冷媒流路15c及び15bを連通するための連通穴17の配置を示している。
チャンバ7内に供給するガスとして種々のものが使用可能だが、プラズマの安定性、着火性、プラズマに暴露される部材の寿命などを考えると、不活性ガス主体であることが望ましい。なかでも、Arガスが典型的に用いられる。Arのみでプラズマを生成させた場合、プラズマは相当高温となる(10,000K以上)。
このようなプラズマ処理装置において、チャンバ7内にガス供給管9よりArまたはAr+H2ガスを供給しつつ、開口部12から基材2に向けてガスを噴出させながら、図示していない高周波電源より13.56MHzの高周波電力を、ソレノイドコイル3に供給することにより、チャンバ7内に高周波電磁界を発生させることでプラズマPを発生させ、開口部12付近のプラズマを基材2に曝露するとともに走査することで、半導体膜の結晶化などの熱処理を行うことができる。
プラズマ発生の条件としては、走査速度=50〜3000mm/s、プラズマガス総流量=1〜1000SLM、Ar+H2ガス中のH2濃度=0〜10%、高周波電力=2〜100kW程度の値が適切である。ただし、ガス流量や電力などのパラメータは、チャンバ7の体積に応じて調整することが好ましい。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、図3を参照して説明する。
以下、本発明の実施の形態2について、図3を参照して説明する。
図3は本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットがなす円筒形状の中心軸を通る面で切った断面図であり、図1(a)に相当する。
実施の形態1においては、第一の円弧13は、平面図上、第二石英筒5の内壁面と一致する位置に配置されていたが、本実施の形態においては、第一の円弧13は、平面図上、第二石英筒5の内壁面よりも内側に配置される。
チャンバ7内に発生するプラズマは、円筒の内壁に沿って円環状に形成されるとはいえ、内壁よりも少し内側に温度やイオン密度のピークが位置する。図3には、円環状のプラズマPの形状を、より詳細に示している(温度やイオン密度がある値以上となる領域を網掛けで示している)。この円環状のプラズマに沿うように、すなわち、平面図上、プラズマPと開口部12が一致するように、開口部12を第二石英筒の内壁面より内側に配置することにより、より効率的なプラズマ処理を行うことができる。
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について、図4を参照して説明する。
以下、本発明の実施の形態3について、図4を参照して説明する。
図4(a)は本発明の実施の形態3におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットがなす円筒形状の中心軸を通る面で切った断面図であり、図1(a)に相当する。また、図4(b)及び(c)は、誘導結合型プラズマトーチユニットがなす円筒形状の軸方向に垂直な面で切った断面図であり、それぞれ、図1(b)及び(c)に相当する。図4(a)は図4(b)の破線で切った断面図、図4(b)は図4(a)の破線B−B‘で切った断面図、図4(c)は図4(a)の破線C−C‘で切った断面図である。
本実施の形態においては、第二石英筒5のさらに内側に、第三石英筒19を、第一石英筒4及び第二石英筒5と同軸配置している。つまり、チャンバ7は円環状である。また、第三石英筒19の内部は冷媒流路15dとなっている。また、開口部12は、第二石英筒5の内壁面より内側で、かつ、第三石英筒19の外壁面より外側に配置される。
本実施の形態においては、円環状チャンバを構成しているため、その形状に沿って円環状のプラズマPが発生する。したがって、プラズマ発生条件を種々に変化させても、円環状プラズマの位置が変化しにくく、安定して効率的なプラズマ処理を行うことが可能である。また、チャンバの体積が比較的小さいので、単位体積当たりに作用する高周波電力が増し、プラズマ発生効率がよくなるという利点もある。
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4について、図5を参照して説明する。
以下、本発明の実施の形態4について、図5を参照して説明する。
図5は本発明の実施の形態4におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットがなす円筒形状の中心軸を通る面で切った断面図であり、図1(a)に相当する。
本実施の形態においては、実施の形態3と同様、第二石英筒5の内側に、第三の誘電体筒としての第三石英筒19を、第一石英筒4及び第二石英筒5と同軸配置している。さらに、第三石英筒19の外周に凹部を備え、その凹部と第二石英筒5との間に円環状のチャンバ7を形成している。また、凹部は、開口部12の直上において、その上面が低い位置に配置されており、円環状のプラズマPを基材に曝露させる構成となっている。つまり、プラズマPにおいて電子密度や活性粒子密度の高い部分を基材2の表面に曝露させるので、高速な処理、あるいは、高温処理が可能となる。
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5について、図6を参照して説明する。
以下、本発明の実施の形態5について、図6を参照して説明する。
図6は本発明の実施の形態5におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットがなす円筒形状の中心軸を通る面で切った断面図であり、図1(a)に相当する。
本実施の形態においては、実施の形態3と同様、第二石英筒5の内側に、第三の誘電体筒としての第三石英筒19を、第一石英筒4及び第二石英筒5と同軸配置している。さらに、第二石英筒の内周に凹部を備え、その凹部と第三石英筒19との間に円環状のチャンバ7を形成している。また、凹部は、開口部12の直上において、その上面が低い位置に配置されており、円環状のプラズマPを基材に曝露させる構成となっている。つまり、プラズマPにおいて電子密度や活性粒子密度の高い部分を基材2の表面に曝露させるので、高速な処理、あるいは、高温処理が可能となる。
(実施の形態6)
以下、本発明の実施の形態6について、図7を参照して説明する。
以下、本発明の実施の形態6について、図7を参照して説明する。
図7(a)は本発明の実施の形態6におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットがなす円筒形状の軸方向に垂直な面で切った断面図であり、図1(b)に相当する。また、図7(b)はスリット板8の開口部12の拡大図であり、図1(d)に相当する。
実施の形態1では、開口部12を構成する円弧の内角θをほぼ180°としていたが、本実施の形態においては、内角θを180°未満としている。実施の形態1では、開口部12の長手方向の端部において、相対移動の方向と円弧の接線の方向のなす角が小さすぎる(浅すぎる)ため、処理条件によっては均一性が悪化する。一方、本実施の形態においては、内角θを180°未満としたため、効率は低下するものの、より均一な処理を実現することができる。
以上述べたプラズマ処理装置及び方法は、本発明の適用範囲のうちの典型例を例示したに過ぎない。
例えば、誘導結合型プラズマトーチユニットTを、固定された基材載置台1に対して走査してもよいが、固定された誘導結合型プラズマトーチユニットTに対して、基材載置台1を走査してもよい。
また、ソレノイドコイル3を第一石英筒4の外側に配置した場合を例示したが、ソレノイドコイル3はプラズマを発生させる空間たるチャンバ7よりも外側であればよく、例えば、図8に示すように、第一石英筒4と第二石英筒5の間に配置してもよい。あるいは、ソレノイドコイル3を図9に示すように、第三石英筒の内側に配置してもよい。つまり、ソレノイドコイル3は、第一石英筒4及び第二石英筒5と同軸配置すればよい。これらの例のように、コイルを冷媒流路内に配置する場合にあっては、コイルを中空にして冷媒を流し冷却する必要はなく、棒状の材料を曲げ加工して構成すればよい。
また、本発明の種々の構成によって、基材2の表面近傍を高温処理することが可能となる。具体的には、従来例で詳しく述べたTFT用半導体膜の結晶化や太陽電池用半導体膜の改質に適用可能であることは勿論、プラズマディスプレイパネルの保護層の清浄化や脱ガス低減、シリカ微粒子の集合体からなる誘電体層の表面平坦化や脱ガス低減、種々の電子デバイスのリフロー、固体不純物源を用いたプラズマドーピングなど、様々な表面処理に適用できる。また、太陽電池の製造方法としては、シリコンインゴットを粉砕して得られる粉末を基材上に塗布し、これにプラズマを照射して溶融させ多結晶シリコン膜を得る方法にも適用可能である。
また、プラズマの着火を容易にするために、着火源を用いることも可能である。着火源としては、ガス給湯器などに用いられる点火用スパーク装置などを利用できる。
なお、絶縁体の基材2を用いる場合は、本発明の適用は比較的容易であるが、基材2が導体や半導体である場合、あるいは、薄膜22が導体や半導体である場合は、基材2の表面でアーク放電が発生しやすい。これを防ぐため、基材2の表面に絶縁膜を形成した後に、基材2の表面を処理する方法を用いることができる。
また、説明においては簡単のため「熱プラズマ」という言葉を用いているが、熱プラズマと低温プラズマの区分けは厳密には難しく、また、例えば、田中康規「熱プラズマにおける非平衡性」プラズマ核融合学会誌、Vol.82、No.8(2006)pp.479−483において解説されているように、熱的平衡性のみでプラズマの種類を区分することも困難である。本発明は、基材を熱処理することを一つの目的としており、熱プラズマ、熱平衡プラズマ、高温プラズマなどの用語にとらわれず、高温のプラズマを照射する技術に関するものに適用可能である。
また、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理する場合について詳しく例示したが、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理する場合においても、本発明は適用できる。プラズマガスに反応ガスを混ぜることにより、反応ガスによるプラズマを基材へ照射し、エッチングやCVDが実現できる。あるいは、プラズマガスとしては希ガスまたは希ガスに少量のH2ガスを加えたガスを用いつつ、シールドガスとして反応ガスを含むガスをプラズマガスの周辺に供給することによって、プラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射し、エッチング、CVD、ドーピングなどのプラズマ処理を実現することもできる。プラズマガスとしてアルゴンを主成分とするガスを用いると、実施例で詳しく例示したように、熱プラズマが発生する。一方、プラズマガスとしてヘリウムを主成分とするガスを用いると、比較的低温のプラズマを発生させることができる。このような方法で、基材をあまり加熱することなく、エッチングや成膜などの処理が可能となる。エッチングに用いる反応ガスとしては、ハロゲン含有ガス、例えば、CxFy(x、yは自然数)、SF6などがあり、シリコンやシリコン化合物などをエッチングすることができる。反応ガスとしてO2を用いれば、有機物の除去、レジストアッシングなどが可能となる。CVDに用いる反応ガスとしては、モノシラン、ジシランなどがあり、シリコンやシリコン化合物の成膜が可能となる。あるいは、TEOS(Tetraethoxysilane)に代表されるシリコンを含有した有機ガスとO2の混合ガスを用いれば、シリコン酸化膜を成膜することができる。その他、撥水性・親水性を改質する表面処理など、種々の低温プラズマ処理が可能である。本発明の構成は誘導結合型であるため、単位体積あたり高いパワー密度を投入してもアーク放電に移行しにくいため、より高密度なプラズマが発生可能であり、その結果、速い反応速度が得られ、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理することが可能となる。
以上のように本発明は、TFT用半導体膜の結晶化や太陽電池用半導体膜の改質に適用可能である。更に、プラズマディスプレイパネルの保護層の清浄化や脱ガス低減、シリカ微粒子の集合体からなる誘電体層の表面平坦化や脱ガス低減、種々の電子デバイスのリフロー、固体不純物源を用いたプラズマドーピングなど、様々な表面処理において、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、プラズマを安定的かつ効率的に発生させ、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理する上で有用な発明である。また、種々の電子デバイスなどの製造における、エッチング・成膜・ドーピング・表面改質などの低温プラズマ処理において、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理する上で有用な発明である。
1 基材載置台
2 基材
T 誘導結合型プラズマトーチユニット
3 ソレノイドコイル
4 第一石英筒
5 第二石英筒
6 蓋
7 チャンバ
8 スリット板
9 ガス供給管
10 中心ガス供給配管
11 旋回ガス供給配管
12 開口部
15,15a,15b,15c,15d 冷媒流路
P プラズマ
22 薄膜
2 基材
T 誘導結合型プラズマトーチユニット
3 ソレノイドコイル
4 第一石英筒
5 第二石英筒
6 蓋
7 チャンバ
8 スリット板
9 ガス供給管
10 中心ガス供給配管
11 旋回ガス供給配管
12 開口部
15,15a,15b,15c,15d 冷媒流路
P プラズマ
22 薄膜
Claims (7)
- 第一の誘電体筒と、
前記第一の誘電体筒の内側に配置され、かつ、前記第一の誘電体筒との間に空間を有して設けられた第二の誘電体筒と、
前記第一の誘電体筒及び前記第二の誘電体筒の一端を保持するスリット板と、
前記第二の誘電体筒の内側にガスを供給するために配置されたガス供給配管と、
前記第一の誘電体筒及び第二の誘電体筒と同軸配置されたコイルと、
前記コイルに接続された高周波電源と、
基材を前記スリット板に近接して配置するための基材載置台と、を備えたプラズマ処理装置であって、
前記スリット板は、2つの平行な円弧に囲まれた形状をもつ開口部を備えたこと、
を特徴とするプラズマ処理装置。 - 前記円弧の内角が、180°未満であることを特徴とする、請求項1記載のプラズマ処理装置。
- 前記第二の誘電体筒の内側に配置された第三の誘電体筒を備え、前記第三の誘電体筒の内側に冷媒を供給するための冷媒供給配管を備えたことを特徴とする、請求項1記載のプラズマ処理装置。
- 前記第三の誘電体筒の外周に凹部を備えたことを特徴とする、請求項3記載のプラズマ処理装置。
- 前記第二の誘電体筒の内周に凹部を備えたことを特徴とする、請求項3記載のプラズマ処理装置。
- 前記開口部の長手方向に対して垂直な向きに、前記スリット板と前記基材載置台とを相対的に移動可能とする移動機構を備えたことを特徴とする、請求項1記載のプラズマ処理装置。
- 第一の誘電体筒と、前記第一の誘電体筒の内側に配置された第二の誘電体筒との間に冷媒を流し、前記第二の誘電体筒の内側にガスを供給し、前記第一の誘電体筒の外周に設けられたコイルに高周波電力を供給することで、前記第二の誘電体筒の内側にプラズマを発生させ、2つの平行な円弧に囲まれた形状をもつ開口部から噴出させたプラズマを、前記開口部に近接して配置した基材に照射することにより、前記基材の表面を処理すること、
を特徴とするプラズマ処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012204068A JP2014060037A (ja) | 2012-09-18 | 2012-09-18 | プラズマ処理装置及び方法 |
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ID=50616329
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JP (1) | JP2014060037A (ja) |
-
2012
- 2012-09-18 JP JP2012204068A patent/JP2014060037A/ja active Pending
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