JP2014060006A - ナトリウム二次電池用電極およびナトリウム二次電池 - Google Patents

ナトリウム二次電池用電極およびナトリウム二次電池 Download PDF

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智 久世
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Abstract

【課題】従来と比べて、放電容量が大きいナトリウム二次電池用電極、および、該電極を使用したナトリウム二次電池を提供する。
【解決手段】リン単体を電極活物質として含有するナトリウム二次電池用電極。
【選択図】なし

Description

本発明は、ナトリウム二次電池用電極およびナトリウム二次電池に関するものである。
二次電池として、リチウム二次電池が携帯電話やノートパソコンなどの小型電源として既に実用化され、さらに、電気自動車、ハイブリッド自動車等の自動車用電源や分散型電力貯蔵用電源等の大型電源として使用可能であることから、その需要は増大しつつある。
しかしながら、リチウム二次電池において、それを構成する材料の製造には、リチウム等の高価な稀少金属元素を含有する原料を多く使用し、大型電源の需要の増大に対応するための前記原料の供給が懸念されている。
これに対し、上記の供給懸念を解決することのできる二次電池として、ナトリウム二次電池の検討がなされている。ナトリウム二次電池において、その構成材料には供給量が豊富でしかも安価な原料を用いることができ、これを実用化することにより、大型電源を大量に供給可能になるものと期待されている。
そして、従来のナトリウム二次電池としては、特許文献1に、正極活物質として式Na0.7MnO2+yで表されるナトリウム無機化合物を用い、負極活物質としてスズ(Sn)単体を、スパッタリング装置等を用いて集電体上に厚さ2μmの薄膜として堆積し負極として用いたナトリウム二次電池が具体的に記載されている。
特開2006−216508号公報
しかしながら、特許文献1で開示されたナトリウム二次電池は、二次電池としての性能、例えば放電容量は十分とはいえない。
また、負極活物質として用いるSnは、充電時における体積変化が約4.3倍と大きく、放電時には収縮する。そのため、充放電を繰り返す(体積の増加と収縮とを繰り返す)と、電極活物質であるSn薄膜が電極から脱離し、結果として放電容量が減少する傾向にある。
また、薄膜からなる電極は、真空設備などを必要とする大掛かりなスパッタリング装置等が必要であった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、従来に比し、放電容量が大きいナトリウム二次電池用電極、および、該電極を使用したナトリウム二次電池を提供することを目的の一つとする。
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、リン単体を電極活物質として含有するナトリウム二次電池用電極を提供する。
本発明の一態様においては、さらに、導電材を含有することが好ましい。
本発明の一態様においては、さらに、結着剤を含有することが好ましい。
本発明の一態様においては、前記結着剤が、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAANa)、カルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
また、本発明の一態様は、第1電極、第2電極および非水電解質を有するナトリウム二次電池であって、前記第1電極が、上述のナトリウム二次電池用電極であり、前記第2電極が、金属ナトリウム、ナトリウム合金、又はナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができるナトリウム化合物を電極活物質として含有する電極であるナトリウム二次電池を提供する。
本発明の一態様においては、前記第2電極における電極活物質が、ナトリウム無機化合物からなる電極活物質であることが好ましい。
本発明の一態様においては、前記ナトリウム無機化合物が、以下の式(A)で表される酸化物であることが好ましい。
NaMO …(A)
(ここで、Mは、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、V、Ti、B、Al、Mg、Siからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、xは0を超え1.2以下である。)
本発明の一態様においては、前記非水電解質が有機溶媒に溶解された非水電解液を含み、かつ、前記有機溶媒の一部には、フッ素置換基を有する有機溶媒が含まれることが好ましい。
本発明の一態様においては、前記フッ素置換基を有する有機溶媒が、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンであることが好ましい。
本発明によれば、従来に比し、放電容量が大きいナトリウム二次電池用電極、および、該電極を使用したナトリウム二次電池を提供することが可能である。
本実施形態の非水電解質二次電池の一例を示す模式図である。
(1)ナトリウム二次電池用電極
本実施形態のナトリウム二次電池用電極は、リン(P)単体を電極活物質として含有する。
本実施形態の電極は、Naの吸蔵放出量の多いリン単体を電極活物質として含有することにより、従来の炭素系電極活物質と比較して、電極活物質の単位質量当たりの放電容量を著しく高めることができる。
(1−1)リン単体
リン単体は白リン(黄リン)、赤リン、紫リン(α金属リン)および黒リン(β金属リン)といった同素体が存在するが、本実施形態の電極に用いられるリン単体は、いずれの同素体であってもよい。好ましくは赤リン、紫リンおよび黒リンである。電極に用いられるリン単体は、それを用いたナトリウム二次電池の充放電に伴って、リン単体からリン化ナトリウム(NaP)へ可逆的に変化する。リン単体からリン化ナトリウムへの反応による体積変化は、Snなどに比べて小さい。
本実施形態の電極に用いるリン単体として、例えば関東化学社製(純度98%以上)、アルドリッチ社製(純度99.99%以上)、和光純薬工業社製(純度98重量%以上)、高純度化学研究所社製(粒径600μm未満)などの市販品が挙げられる。
リン単体の形状としては、例えば薄片状、球状、繊維状、または微粒子の凝集体形状などが挙げられる。以下の説明において、このような形状を有するリン単体を「リン粒子」と称することがある。
リン粒子の平均粒径は好ましくは0.01μm以上30μm以下であり、より好ましくは0.05μm以上5μm以下である。
なお、リン粒子が球形以外の形状を有する場合は、リン粒子における最大長を示す方向の長さをその粒径とする。リン粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、100個ずつ粒子を任意に抽出して、それぞれにつき粒径(直径)を測定して、100個の粒径の算術平均値として算出された値を採用した。
なお、本実施形態のナトリウム二次電池用電極において、電極活物質、導電材および結着剤等からなる電極合剤に対する、電極活物質としてのリン単体の含有量は、30質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、本実施形態のナトリウム二次電池用電極は酸化リンや金属等の他の成分を含んでいてもよい。酸化リンと金属とは、いずれか一方が本実施形態のナトリウム二次電池用電極含まれることとしてもよく、両方が含まれることとしてもよい。また、これら酸化リンと金属とは、上述したリン単体の形状と同様の形状を採用することができる。
本実施形態のナトリウム二次電池用電極が含んでいてもよい金属としては、Na、Ti、Fe、Mn、Co、Ni、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。これらの金属が粒子状である場合、粒子の表面や内部の一部が酸化されていてもよい。粒子の表面と内部とは、いずれか一方が酸化されていることとしてもよく、両方が酸化されていることとしてもよい。これらの金属は互いに合金化していてもよい。
(1−2)導電材
より電極性能を高めるため、本実施形態のナトリウム二次電池用電極は、さらに導電材を含有していることが好ましい。導電材を含有することにより、電極性能をさらに向上させることができる。
導電材としては、例えば電気伝導性を有する金属や炭素材などが挙げられる。金属および炭素材は、いずれか一方のみを用いることとしてもよく、両方用いることとしてもよい。
導電材として用いることができる金属は、例えば、Na、Li、K、Mg、Ca、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。Ge、Sn等は、Naを電気化学的に吸蔵放出可能であることから導電材であると同時に電極活物質としての機能も有する。
導電材として用いることができる炭素材は、例えば、黒鉛粉末、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等)、繊維状炭素材料(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、気相成長炭素繊維等)、熱分解炭素類、有機材料焼成体といった難黒鉛化炭素材料(「ハードカーボン」ともいう)などが挙げられる。カーボンブラックは、微粒で表面積が大きく、電極合剤中に少量添加されることにより、得られる電極内部の導電性を高め、充放電効率および大電流放電特性を向上させることも可能である。一方、難黒鉛化炭素材料は、Naを電気化学的に吸蔵放出可能であることから導電材であると同時に電極活物質としての機能も有する。
導電材の形状としては、例えば薄片状、球状、繊維状、または微粒子の凝集体形状などが挙げられる。以下の説明において、このような形状を有する導電材を「導電材粒子」と称することがある。導電材粒子の形状の平均粒径は、好ましくは0.01μm以上30μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上20μm以下である。
なお、導電体粒子が球形以外の形状を有する場合は、導電体粒子における最大長を示す方向の長さをその粒径とする。導電材粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、100個ずつ粒子を任意に抽出して、それぞれにつき粒径(直径)を測定して、100個の粒径の算術平均値として算出された値を採用した。
導電材の配合量は、電極活物質としてのリン単体100質量部に対し、好ましくは5質量部以上600質量部以下、より好ましくは30質量部以上120質量部以下である。
(1−3)結着剤
本実施形態のナトリウム二次電池用電極は、電極活物質としてのリン単体と、導電材との他に、さらに結着剤(バインダー)を含有することが好ましい。
結着剤としては、例えば有機高分子化合物からなる結着剤が挙げられる。結着剤としての有機高分子化合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などのフッ素化合物の重合体が挙げられる。
フッ素化合物としては、例えば、パーフルオロドデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロn−オクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリレートなどの、フッ素化アルキル(炭素数1〜18)(メタ)アクリレート及びパーフルオロアルキル(炭素数1〜18)(メタ)アクリレート;
パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなどの、パーフルオロアルキル置換アルキル(炭素数1〜18)(メタ)アクリレート;
パーフルオロドデシルオキシエチル(メタ)アクリレート及びパーフルオロデシルオキシエチル(メタ)アクリレートなどの、パーフルオロオキシアルキル(炭素数1〜18)(メタ)アクリレート;
フッ素化アルキル(炭素数1〜18)クロトネート;
フッ素化アルキル(炭素数1〜18)マレート及びフマレート;
フッ素化アルキル(炭素数1〜18)イタコネート;
パーフロオロヘキシルエチレンなどの、分子が有する炭素数2〜10及びフッ素原子数1〜17のフッ素化アルキル置換オレフィン;
テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンなどの、分子が有する炭素数2〜10及びフッ素原子数1〜20であって、二重結合炭素にフッ素原子が結合したフッ素化オレフィン;が挙げられる。
その他の結着剤としては、フッ素原子を含まずエチレン性二重結合を含む単量体の付加重合体が挙げられる。
かかる単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等の(シクロ)アルキル(炭素数1〜22)(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールもしくはジアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2〜4)のモノ(メタ)アクリレート;
(ポリ)グリセリン(重合度1〜4)モノ(メタ)アクリレート;
(ポリ)エチレングリコール(重合度1〜100)ジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(重合度1〜100)ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシエチルフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸エステル系単量体;
(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系誘導体のような(メタ)アクリルアミド系単量体;
(メタ)アクリロニトリル、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチルアクリルアミド等のシアノ基含有単量体;
スチレン及びα−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−ヒドロキシスチレン並びにジビニルベンゼン等の炭素数7〜18のスチレン誘導体のようなスチレン系単量体;
ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の炭素数4〜12のアルカジエンのようなジエン系単量体;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等のカルボン酸(炭素数2〜12)ビニルエステル、酢酸(メタ)アリル、プロピオン酸(メタ)アリル及びオクタン酸(メタ)アリル等のカルボン酸(炭素数2〜12)(メタ)アリルエステルのようなアルケニルエステル系単量体;
グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体;
エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン及び1−ドデセン等の炭素数2〜12のモノオレフィン類;
塩素、臭素又はヨウ素原子含有単量体、塩化ビニル及び塩化ビニリデンなどのフッ素以外のハロゲン原子含有単量体;
アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸などが挙げられる。
また、結着剤として用いる付加重合体は、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体又はエチレン・プロピレン共重合体など、上述の単量体を2種以上用いた共重合体でもよい。また、カルボン酸ビニルエステル重合体は、ポリビニルアルコールなどのように、部分的又は完全にケン化されていてもよい。結着剤はフッ素化合物とフッ素原子を含まないエチレン性二重結合を含む単量体との共重合体であってもよい。
その他の結着剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロースなどの多糖類及びその誘導体;フェノール樹脂;メラミン樹脂;ポリウレタン樹脂;尿素樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;石油ピッチ;石炭ピッチなどが挙げられる。
結着剤は、複数種を混ぜて使用してもよい。
結着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、単量体として例示したアクリル酸の重合体であるポリアクリル酸(PAA)、例えばPAAを水酸化ナトリウムで中和して得られるポリアクリル酸ナトリウム(PAANa)、カルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群より選ばれる1種以上を含有するものが好ましい。
これらの物質を含有することで、充放電を繰り返しても放電容量の低下が起こりづらい傾向にある。
この中でも、PAAやPAANaがより好ましい。
上記結着剤の配合量は、電極活物質としてのリン単体100質量部に対し、好ましくは0.5質量部以上200質量部以下、より好ましくは1質量部以上120質量部以下である。
(1−4)その他の構成材料
本実施形態のナトリウム二次電池用電極は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の構成材料以外に、必要に応じて他の構成材料を含有していてもよい。他の構成材料として、例えば、集電体が挙げられる。
本実施形態のナトリウム二次電池用電極は、集電体を有することとしてもよい。
集電体の材料としては、例えば、ニッケル、アルミニウム、チタン、銅、金、銀、白金、アルミニウム合金またはステンレス等の金属、例えば、炭素素材、活性炭繊維、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、銅、スズ、鉛またはこれらの合金をプラズマ溶射、アーク溶射することによって形成されたもの、例えば、ゴムまたはスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)などの樹脂に導電材を分散させた導電性フィルムなどが挙げられる。
集電体の形状としては、例えば、箔状、平板状、メッシュ状、ネット状、ラス状およびパンチング状であるもの並びにこれらを組み合わせたもの(例えば、メッシュ状平板など)等が挙げられる。集電体の表面にエッチング処理やエンボス加工により凹凸を形成したものでもよい。
(1−5)製造方法
以下、本実施形態のナトリウム二次電池用電極の製造方法を説明する。
本実施形態のナトリウム二次電池用電極は、例えば、リン単体、導電材および結着剤等を含む混合物である電極合剤が、集電体に担持されているものであり、シート状に成形することができる。電極がシート状である場合、その厚みは、好ましくは5μm以上500μm以下である。
この場合、ナトリウム二次電池用電極の製造方法としては、例えば、
(1)リン単体、必要に応じて上述の導電材および結着剤等からなる混合物に溶剤を添加して電極合剤ペーストを調整し、得られる電極合剤ペーストを、集電体に、ドクターブレード法などで塗工、又は浸漬し、乾燥する方法
(2)リン単体、必要に応じて上述の導電材および結着剤等からなる電極合剤に溶剤を添加して混練、成形し、乾燥して得たシートを集電体表面に導電性接着剤等を介して接合した後にプレス及び熱処理乾燥する方法
(3)リン単体、必要に応じて上述の導電材、結着剤および液状潤滑剤等からなる電極合剤を集電体上に成形した後、液状潤滑剤を除去し、次いで、得られたシート状の成形物を一軸又は多軸方向に延伸処理する方法
などが挙げられる。
電極合剤ペーストの調製に用いる溶剤としては、例えば、水のほか、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒;イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコールなどのアルコール類;プロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。結着剤が増粘する場合には、集電体への塗布を容易にするために、可塑剤を使用してもよい。
電極合剤ペーストを、集電体へ塗布する方法としては特に制限されない。例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等の方法が挙げられる。また、塗布後に行う乾燥としては、熱処理によって行ってもよいし、送風乾燥、真空乾燥などにより行ってもよい。熱処理により乾燥を行う場合には、その温度は、好ましくは50℃以上150℃以下である。また、乾燥後にプレスを行ってもよい。プレス方法は、金型プレスやロールプレスなどの方法を挙げることができる。
以上に挙げた方法により、本実施形態のナトリウム二次電池用電極を製造することができる。
本実施形態のナトリウム二次電池用電極において、リン単体、導電材および結着剤を用いる場合の構成比(質量比)は、好ましくはリン単体:導電材:結着剤が100:10〜500:2〜150であり、より好ましくはリン単体:導電材:結着剤が100:50〜200:10〜120であり、さらに好ましくはリン単体:導電材:結着剤が100:100:100である。
(2)ナトリウム二次電池
次に、本実施形態のナトリウム二次電池について説明する。
本実施形態のナトリウム二次電池は、第1電極、第2電極および非水電解質を有するナトリウム二次電池であって、第1電極が、上述した本実施形態のナトリウム二次電池用電極であり、第2電極が、金属ナトリウム、ナトリウム合金、またはナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができるナトリウム化合物を電極活物質として含有する電極である。
以下、本実施形態のナトリウム二次電池の各構成部位について説明する。
(2−1)第1電極
第1電極は、上述の本実施形態のナトリウム二次電池用電極が用いられるため、説明を省略する。
(2−2)第2電極
第2電極は、集電体と、集電体の上に担持された電極活物質を含む電極合剤とから構成される。電極合剤は、上記電極活物質以外にも必要に応じて導電材や結着剤を含む。
(2−2−1)電極活物質
第2電極の電極活物質としては、金属ナトリウム、ナトリウム合金、又はナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができるナトリウム化合物が挙げられる。
ここで、第2電極がナトリウム金属またはナトリウム合金である場合には、第1電極が正極、第2電極が負極として作用する。一方で、第2電極がナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできるナトリウム化合物である場合には、第1電極が負極、第2電極が正極として作用する。なお、ナトリウム化合物は、ナトリウム無機化合物、ナトリウム有機化合物のいずれも使用できるが、安定性が高いことから、後述のナトリウム無機化合物が好ましく使用される。
(ナトリウム無機化合物)
ここで、得られるナトリウム二次電池の充放電サイクル特性が良好となるため、第2電極の電極活物質として、ナトリウム無機化合物を用いることが好ましい。ナトリウム無機化合物としては、次の化合物を挙げることができる。
すなわち、NaFeO、NaMnO、NaNiOおよびNaCoO等のNaM a1で表される酸化物、Na0.44Mn1−a2 a2で表される酸化物、Na0.7Mn1−a2 a22.05で表される酸化物(Mは1種以上の遷移金属元素、0<a1<1、0≦a2<1);
NaFeSi1230およびNaFeSi1230等のNa Si1230で表される酸化物(Mは1種以上の遷移金属元素、2≦b≦6、2≦c≦5);
NaFeSi18およびNaMnFeSi18等のNa Si18で表される酸化物(Mは1種以上の遷移金属元素、2≦d≦6、1≦e≦2);
NaFeSiO等のNa Siで表される酸化物(Mは遷移金属元素、MgおよびAlからなる群より選ばれる1種以上の元素、1≦f≦2、1≦g≦2)
NaFePO、NaMnPO、NaFe(PO等のリン酸塩;
NaFePOF、NaVPOF、NaMnPOF、NaCoPOF、NaNiPOF等のフッ化リン酸塩;
NaFeSOF、NaMnSOF、NaCoSOF、NaFeSOF等のフッ化硫酸塩;
NaFeBONa3Fe(BO等のホウ酸塩;
NaFeF、NaMnF等のNaで表されるフッ化物(Mは1種以上の遷移金属元素、2≦h≦3);等が挙げられる。
本実施形態において、前記ナトリウム含有化合物の中では、以下の式(A)で表される酸化物を好ましく用いることができる。以下の式(A)で表される酸化物を電極活物質、特に正極活物質として用いることで、電池の充放電容量を向上させることができる。
NaMO …(A)
(ここで、Mは、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、V、Ti、B、Al、Mg、Siからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、xは0を超え1.2以下である。)
上記ナトリウム無機化合物は、焼成により本実施形態に用いられるナトリウム無機化合物となり得る組成を有する金属含有化合物の混合物を焼成することによって製造できる。
具体的には、対応する金属元素を含有する金属含有化合物を所定の組成となるように秤量し混合した後に、得られた混合物を焼成することによって製造できる。例えば、好ましい金属元素比の一つであるNa:Mn:Fe:Ni=1:0.3:0.4:0.3で表される金属元素比を有する複合金属酸化物は、NaCO、MnO、Fe、Niの各原料を、Na:Mn:Fe:Niのモル比が1:0.3:0.4:0.3となるように秤量し、それらを混合し、得られた混合物を焼成することによって製造できる。
本実施形態に用いられるナトリウム無機化合物を製造するために用いることができる金属含有化合物としては、酸化物、ならびに高温で分解や酸化したときに酸化物になり得る化合物、例えば水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物またはシュウ酸塩を用いることができる。なお、高温での分解および酸化は、いずれか一方のみ起こってもよく、両方起こってもよい。
ナトリウム化合物としては、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、蓚酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムからなる群より選ばれる1種以上の化合物を挙げることができ、これらの水和物を挙げることもできる。取り扱いが容易であることから、上記ナトリウム無機化合物を製造するために用いることができる金属含有化合物としては、炭酸ナトリウムがより好ましい。
また、マンガン化合物としてはMnOが好ましく、鉄化合物としてはFeが好ましく、ニッケル化合物としてはNiが好ましい。
これらの金属含有化合物は、水和物であってもよい。
金属含有化合物の混合物は、例えば以下の共沈法により金属含有化合物の前駆体を得、得られた金属含有化合物の前駆体と前記ナトリウム化合物とを混合して得ることができる。具体的には、M(ここで、Mは前記と同義)の原料として、塩化物、硝酸塩、酢酸塩、蟻酸塩、蓚酸塩等の化合物を用いて、これらを水に溶解し、アルカリと接触させることで金属含有化合物の前駆体が含有した沈殿物を得ることができる。これらの原料の中でも、塩化物が好ましい。また、水に溶解し難い原料、例えば、酸化物、水酸化物、金属材料を用いる場合には、これらの原料を、塩酸、硫酸、硝酸等の酸またはこれらの水溶液に溶解させて、Mを含有する水溶液(以下、「原料水溶液」と称することがある)を得ることもできる。
さらに、前記アルカリとしては、LiOH(水酸化リチウム)、NaOH(水酸化ナトリウム)、KOH(水酸化カリウム)、LiCO(炭酸リチウム)、NaCO(炭酸ナトリウム)、KCO(炭酸カリウム)、(NHCO(炭酸アンモニウム)および(NHCO(尿素)からなる群より選ばれる化合物を1種以上用いることができ、該化合物の水和物を1種以上用いてもよく、化合物と水和物とを併用してもよい。また、これらのアルカリを水に溶かして、水溶液状(以下、水溶液状のアルカリを「アルカリ水溶液」と称することがある)で用いることが好ましい。また、アルカリ水溶液として、アンモニア水を挙げることもできる。
アルカリ水溶液におけるアルカリの濃度は、好ましくは0.5モル/L以上10モル/L以下、より好ましくは1モル/L以上8モル/L以下である。また、アルカリとしてはKOHを用いることが好ましく、より好ましくは、これを水に溶かしたKOH水溶液である。これらのアルカリは2種以上を併用することとしてもよい。
原料水溶液とアルカリとを接触させる方法としては、(i)原料水溶液に、アルカリ(アルカリ水溶液を含む。)を添加する方法、(ii)アルカリ水溶液に、原料水溶液を添加する方法、(iii)水に、原料水溶液およびアルカリ(アルカリ水溶液を含む。)を添加する方法を挙げることができる。これらの添加時には、攪拌を伴うことが好ましい。
また、上記の接触する方法の中では、(ii)アルカリ水溶液に、原料水溶液を添加する方法が、pHの変化を制御しやすく、また生じる沈殿物の粒径を制御しやすいため好ましい。この場合、アルカリ水溶液に、原料水溶液を添加していくに従い、混合液全体のpHが低下していく傾向にあるが、このpHが9以上、好ましくは10以上となるように調節しながら、原料水溶液を添加するのがよい。この調節は、アルカリ水溶液をさらに添加することによって行うことができる。
上記の接触により、沈殿物を得ることができる。この沈殿物は、金属含有化合物の前駆体を含有する。
また、原料水溶液とアルカリとの接触後は、沈殿を生じスラリーが得られ、得られるスラリーを固液分離して、沈殿物を回収する。固液分離はいかなる方法によってもよいが、操作が容易であることから、ろ過などの固体成分を得る分離操作による方法が好ましい。また、スラリーを噴霧乾燥するなど、加熱によりスラリーに含まれる液体分を揮発させる方法を用いてもよい。
また、回収された沈殿物について、洗浄、乾燥などを行ってもよい。固液分離後に得られる沈殿物には、過剰なアルカリの成分が付着していることもあり、洗浄により当該成分を減らすことができる。洗浄のときに用いる洗浄液としては、水を用いることが好ましく、アルコール、アセトンなどの水溶性有機溶媒を用いてもよい。
乾燥は、加熱乾燥によって行えばよく、送風乾燥、真空乾燥等によってもよい。また、これらの乾燥方法を2以上組み合わせてもよい。加熱乾燥によって行う場合には、好ましくは50℃以上300℃以下で行い、より好ましくは100℃以上200℃以下である。
洗浄操作と乾燥操作とは、洗浄と乾燥とを一組として2回以上行ってもよい。
混合方法としては、乾式混合、湿式混合のいずれによってもよいが、簡便であるため、乾式混合が好ましい。混合装置としては、攪拌混合、V型混合機、W型混合機、リボン混合機、ドラムミキサーおよびボールミルを挙げることができる。
また、焼成は、用いるナトリウム化合物の種類にもよるが、好ましくは400℃以上1200℃以下の温度で保持して行えばよく、より好ましくは500℃以上1000℃以下である。
上述の焼成温度で保持する時間は、好ましくは0.1時間以上20時間以下であり、より好ましくは0.5時間以上10時間以下である。
上述の焼成温度までの昇温速度は、好ましくは50℃/時間以上400℃/時間以下であり、前記保持温度から室温までの降温速度は、好ましくは10℃/時間以上400℃/時間以下である。
焼成の雰囲気としては、大気、酸素、窒素、アルゴンまたはそれらの混合ガスを用いることができるが、大気が好ましい。
金属含有化合物として、フッ化物、塩化物等のハロゲン化物を適量用いることによって、生成する複合金属酸化物の結晶性、複合金属酸化物を構成する粒子の平均粒径を制御することができる。この場合、ハロゲン化物は、反応促進剤(フラックス)としての役割を果たす場合もある。フラックスとしては、例えばNaF、MnF、FeF、NiF、CoF、NaCl、MnCl、FeCl、FeCl、NiCl、CoCl、NHClおよびNHIを挙げることができ、これらを混合物の原料(金属含有化合物)として、または、混合物に適量添加して用いることができる。また、これらのフラックスは、水和物であってもよい。
その他の金属含有化合物として、NaCOやNaHCO等を挙げることができる。
また、金属含有化合物以外のフラックスを使用することもでき、例えば、BやHBO等を挙げることができる。
上記ナトリウム無機化合物をナトリウム二次電池用電極(正極)活物質として用いる場合、上記のようにして得られるナトリウム無機化合物に、任意にボールミル、ジェットミル、振動ミル等の公知の装置を用いた粉砕を行い、洗浄、分級等を行って、粒度を調節することが好ましいことがある。また、必要に応じて焼成を2回以上行ってもよい。また、ナトリウム無機化合物の粒子表面をSi、Al、Ti、Y等を含有する無機物質で被覆する等の表面処理をしてもよい。
なお、上記の表面処理後、熱処理する場合においては、その熱処理の温度にもよるが、熱処理後の粉末のBET比表面積が、上記の本実施形態に用いられるナトリウム無機化合物におけるBET比表面積の範囲より小さくなる場合がある。
(2−2−2)結着剤
第2電極の結着剤としては、上述の本実施形態のナトリウム二次電池用電極(第1電極)で例示した結着剤が挙げられる。
電極合剤中の結着剤の割合は、電極活物質100質量部に対して、好ましくは5質量部以上20質量部以下である。
(2−2−3)導電材
第2電極の導電材としては、上述の本実施形態のナトリウム二次電池用電極(第1電極)と同様に、炭素材料を挙げることができ、より具体的には、黒鉛粉末、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等)、繊維状炭素材料(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、気相成長炭素繊維等)などを挙げることができる。カーボンブラックは、微粒で表面積が大きく、電極合剤中に少量添加されることにより、得られる電極内部の導電性を高め、充放電効率および大電流放電特性を向上させることも可能である。電極合剤中の導電材の割合は、電極活物質100質量部に対して、好ましくは5質量部以上20質量部以下である。導電材として上述のような、微粒の炭素材料、繊維状炭素材料を用いる場合には、この割合を下げることも可能である。
(2−2−4)電極合剤ペーストの製造方法
第2電極における電極合剤ペーストの製造方法について説明する。第2電極における電極合剤ペーストは、電極活物質、導電材、結着剤および有機溶媒を混練することで得られる。混練方法は特に限定されないが、混練に用いられる混合機としては、高い剪断力を有するものが好ましい。具体的にはプラネタリーミキサー、ニーダー、押し出し式混練機、薄膜旋回式高速攪拌機などを挙げることができる。
混合順序においては、電極活物質粉末と導電材と結着剤と溶媒とを一括混合してもよいし、溶媒に結着剤、電極活物質粉末、導電材を順に混合してもよい。この順は特に限定されないし、電極活物質粉末および導電材の混合物を、徐々に加えるなどしてもよい。また、溶媒と結着剤をあらかじめ混合、溶解させておいてもよい。
前記電極合剤ペーストにおける電極成分の割合、すなわち、電極合剤ペースト全体に対する電極活物質、導電材および結着剤の割合は、塗布しやすく所望の厚みの電極が得られやすいことから、好ましくは30質量%以上90質量%以下、より好ましくは30質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上70質量%以下である。
第2電極は、上記電極合剤ペーストを、集電体に塗布し、得られたものを乾燥して得られる。乾燥により、電極合剤ペーストにおける溶媒は除去され、集電体には、電極合剤が結着され、電極が得られる。
(2−2−5)集電体
第2電極において、集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどの導電体を挙げることができ、薄膜に加工しやすく、安価であるという点でAlが好ましい。集電体の形状としては、例えば、箔状、平板状、メッシュ状、ネット状、ラス状およびパンチングメタル状であるもの、ならびに、これらを組み合わせたもの(例えば、メッシュ状平板など)が挙げられる。また、集電体の表面にエッチング処理やエンボス加工による凹凸を形成させたものであってもよい。
第2電極を製造するに当たり、電極合剤ペーストを、集電体へ塗布する方法としては特に制限されない。例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等の方法が挙げられる。また、塗布後に行う乾燥としては、熱処理によって行ってもよいし、送風乾燥、真空乾燥などにより行ってもよい。熱処理により乾燥を行う場合には、その温度は、好ましくは50℃以上150℃以下である。また、乾燥後にプレスを行ってもよい。プレス方法は、金型プレスやロールプレスなどの方法を挙げることができる。
以上に挙げた方法により、第2電極を製造することができる。なお、電極の厚みは、好ましくは5μm以上500μm以下である。
(3)電解質
本実施形態のナトリウム二次電池で用いることができる電解質としては、NaClO、NaPF、NaAsF、NaSbF、NaBF、NaCFSO、NaN(SOCF、低級脂肪族カルボン酸ナトリウム塩およびNaAlClが挙げられ、これらの2種以上の混合物を使用してもよい。これらの中でもフッ素を含むNaPF、NaAsF、NaSbF、NaBF、NaCFSOおよびNaN(SOCFからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。
上記電解質は、有機溶媒に溶解し非水電解液として使用することができる。有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、イソプロピルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;
1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テト ラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;
ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;
アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;
3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカーバメート類;
スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物;
または上記の有機溶媒にさらにフッ素置換基を導入した、フッ素置換基を有する有機溶媒を用いることができる。
有機溶媒として、これらのうちの2種以上を混合して用いてもよい。
フッ素置換基を有する有機溶媒としては、例えば4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(以下、FECまたはフルオロエチレンカーボネートということがある。)、トランスまたはシス−4,5−ジフルオロ−1、3−ジオキソラン−2−オン(以下、DFECまたはジフルオロエチレンカーボネートということがある。)等が挙げられる。
フッ素置換基を有する有機溶媒として、好ましくは4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンである。
これらのフッ素置換基を有する有機溶媒は1種類で使用してもよいが、フッ素置換基を有さない有機溶媒と組み合わせて使用することが好ましい。
前記非水電解液中の有機溶媒の一部に、フッ素置換基を有する有機溶媒が含まれる場合、非水電解液全体に対するフッ素置換基を有する有機溶媒の割合は0.01体積%以上10体積%以下の範囲であり、好ましくは0.1体積%以上8体積%以下であり、より好ましくは0.5体積%以上5体積%以下である。
また、本実施形態のナトリウム二次電池において、電解質は、高分子化合物に前記非水電解液を保持させた状態、すなわち、ゲル状電解質として用いることもできるし、固体状、すなわち、固体電解質として用いることもできる。
固体電解質としては、例えばポリエチレンオキサイド系の高分子化合物、ポリオルガノシロキサン鎖もしくはポリオキシアルキレン鎖の少なくとも1種以上を含む高分子化合物などの高分子電解質を用いることができる。また、高分子に非水電解質溶液を保持させた、いわゆるゲルタイプのものを用いることもできる。またNaS−SiS、NaS−GeS、NaS−P、NaS−Bなどの硫化物電解質、またはNaS−SiS−NaPO、NaS−SiS−NaSOなどの硫化物を含む無機化合物電解質、NaZr(POなどのNASICON型電解質を用いると、安全性をより高めることができることがある。
また、本実施形態のナトリウム二次電池において、固体電解質を用いる場合には、固体電解質がセパレータの役割を果たす場合もあり、その場合には、セパレータを必要としないこともある。
(4)セパレータ
本実施形態のナトリウム二次電池は、第1電極と第2電極との間に配置されるセパレータを有していてもよい。セパレータの形態としては、例えば、多孔質フィルム、不織布、織布などが挙げられる。
セパレータの形成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質が挙げられる。セパレータは、これらの材質を2種以上用いた単層または積層セパレータとしてもよい。
セパレータとしては、例えば特開2000−30686号公報、特開平10−324758号公報等に記載のセパレータを挙げることができる。
セパレータの厚みは、電池の体積エネルギー密度が上がり、内部抵抗が小さくなるという点で、機械的強度が保たれる限り薄いほど好ましい。セパレータの厚みは一般に、5μm以上200μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上40μm以下である。
セパレータは、好ましくは、熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムを有する。ナトリウム二次電池においては、第1電極−第2電極間の短絡等が原因で電池内に異常電流が流れた際に、電流を遮断して、過大電流が流れることを阻止する(シャットダウンする)ことが好ましい。
セパレータが、熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムを有する場合、シャットダウンは、短絡により短絡箇所のセパレータが過熱され、予め想定された(通常の)使用温度を越えた場合に、セパレータにおける多孔質フィルムが軟化または融解して微細孔を閉塞することによりなされる。そして、セパレータはシャットダウンした後、ある程度の高温まで電池内の温度が上昇しても、その温度により破膜することなく、シャットダウンした状態を維持する程度に耐熱性が高いことが好ましい。
セパレータとして、耐熱樹脂を含有する耐熱多孔層と熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムとが積層された積層多孔質フィルムからなるセパレータを用いることにより、熱破膜をより防ぐことが可能となる。ここで、耐熱多孔層は、多孔質フィルムの両面に積層されていてもよい。
(5)ナトリウム二次電池の製造方法
図1は、本実施形態のナトリウム二次電池の一例を示す模式図である。本実施形態の円筒型のナトリウム二次電池10は、次のようにして製造する。
まず、図1(a)に示すように、帯状を呈する一対のセパレータ1、一端にリード21を有する帯状の第1電極2、および一端にリード31を有する帯状の第2電極3を、セパレータ1、第1電極2、セパレータ1、第2電極3の順に積層し、巻回することにより電極群4とする。
次いで、図1(b)に示すように、電池缶5に電極群4および不図示のインシュレーターを収容した後、缶底を封止し、電極群4に電解液6を含浸させ、正極2と負極3との間に電解質を配置する。さらに、電池缶5の上部をトップインシュレーター7および封口体8で封止することで、ナトリウム二次電池10を製造することができる。
電極群4の形状としては、例えば、電極群4を巻回の軸に対して垂直方向に切断したときの断面形状が、円、楕円、長方形、角を丸めた長方形となるような柱状の形状を挙げることができる。
また、このような電極群4を有するナトリウム二次電池の形状としては、国際電気標準会議(IEC)が定めた電池に対する規格であるIEC60086、またはJIS C 8500で定められる形状を採用することができる。例えば、円筒型、角型などの形状を挙げることができる。
さらに、ナトリウム二次電池は、上記巻回型の構成に限らず、正極、セパレータ、負極、セパレータの積層構造を繰り返し重ねた積層型の構成であってもよい。積層型のナトリウム二次電池としては、いわゆるコイン型電池、ボタン型電池、ペーパー型(またはシート型)電池を例示することができる。
本実施形態のナトリウム二次電池用電極およびナトリウム二次電池を製造する際は、充電によって生成するリン化ナトリウム(NaP)が水(HO)と反応し、ホスフィン(HP)が生じることを避けるため、できるだけ電極および電池内へ水分を持ち込むことのない環境下で製造することが好ましい。すなわち製造時の雰囲気としては露点が−5℃(体積あたりの水分率が0.4%)以下であることが好ましく、より好ましくは露点が−20℃(体積あたりの水分率が0.1%)以下、さらにより好ましくは露点が−40℃(体積あたりの水分率が130ppm)以下である。
(6)用途
本実施形態のナトリウム二次電池は、高い放電容量を有することから、携帯電話、携帯オーディオ、ノートパソコン等の小型電源のみならず、自動車、自動二輪車、電動椅子、フォークリフト、電車、飛行機、船舶、宇宙船、潜水艦等の輸送機器用電源、耕運機等のロボット用電源、キャンプ用途などの移動式電源、屋外/屋内自動販売機用電源などの移動用中型電池としての用途に好適に使用することができる。
また、本実施形態のナトリウム二次電池の電極材料として、供給量が豊富で安価な原料を用いることができるため、工場、家屋、その他屋外装置用の定置型電源、太陽電池用充電装置、風力発電用充電装置、その他各種発電装置用の負荷平準化電源、冷蔵・冷凍倉庫内や極冷地、砂漠、宇宙等の低温・高温環境下での電源、自動開閉扉用電源等の定置型電池、大型電池としての用途に好適に使用することができる。
以上、本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(ナトリウム二次電池用電極Eの製造)
電極活物質として赤リン(アルドリッチ社製(純度99.99%以上))を粉砕して得たリン単体粉末、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)、および結着剤としてポリアクリル酸(PAA:シグマ・アルドリッチ社製、分子量750,000)を、電極活物質:導電材:結着剤=1:1:1(質量比)の組成となるようにそれぞれ秤量した。なお、赤リンは、ジルコニアボールを媒体としたボールミルを用い、600rpmの運転条件で9時間処理することにより粉砕した。
結着剤をメノウ乳鉢に加え、そこへ溶剤としてのイオン交換水を適量加えて充分に混合して結着剤が溶解させた後、さらに電極活物質および導電材を加えて充分に混合することにより電極合剤ペーストを得た。
得られた電極合剤ペーストを、銅箔にアプリケータを用いて100μmの厚さで塗布し、これを80℃に設定された乾燥機に入れ、溶剤を除去させながら、十分に乾燥することによって電極シートを得た。この電極シートをロールプレスにて十分に圧着した後、電極打ち抜き機で直径1.0cmに打ち抜いくことにより、ナトリウム二次電池用電極Eを得た。
<実施例2>
(ナトリウム二次電池用電極Eの製造)
電極活物質として赤リン(アルドリッチ社製(純度99.99%以上))を実施例1と同様に粉砕して得たリン単体粉末、結着剤としてポリアクリル酸の代わりにポリアクリル酸ナトリウム(PAANa:和光純薬製、重合度22,000〜70,000)を用い、かつ電極活物質:導電材:結着剤=1:1:1(質量比)の組成となるようにそれぞれ秤量した以外は、実施例1と同様の操作にて、ナトリウム二次電池用電極Eを得た。
<比較例1>
(ナトリウム二次電池用電極Cの製造)
電極活物質としてSn粉末(アルドリッチ社製(粒径150nm、純度99.7%)を用い、かつ電極活物質:導電材:結着剤=8:1:1(質量比)の組成となるようにそれぞれ秤量した以外は、実施例1と同様の操作にて、ナトリウム二次電池用電極Cを得た。
<比較例2>
(ナトリウム二次電池用電極Cの製造)
電極活物質としてハードカーボン(株式会社クレハ製、カーボトロンP)、結着剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC、第一工業製薬株式会社製、セロゲン4H)を用い、かつ電極活物質:導電材:結着剤=9:0:1(質量比)の組成となるようにそれぞれ秤量した以外は、実施例1と同様の操作にて、ナトリウム二次電池用電極Cを得た。
(電池の作製)
上記電極の電池評価にはコインセルを用いた。コインセル(宝泉株式会社製)の下側パーツの窪みに、第1電極としての上記電極を、活物質面を上に向けて置き、電解液として1MのNaClO/プロピレンカーボネート(キシダ化学株式会社製)と4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(キシダ化学株式会社製)を98:2(体積比)で混合した溶液を用い、セパレータとしてガラスフィルター(アドバンテック社製、厚み38μm)、および第2電極として金属ナトリウム(関東化学社製)を組み合わせて、電池を作製した。なお、電池の組み立てはアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
(ナトリウム二次電池の評価)
ナトリウム二次電池の充放電条件として、充電はレストポテンシャルから所定電圧まで50mA/gでCC(コンスタントカレント:定電流)充電を行った。放電は50mA/gでCC(コンスタントカレント:定電流)放電を行い、所定電圧でカットオフした。充放電における各「所定電圧」について(すなわち充放電を行う電圧範囲について)は、下記表1に示す。上記充放電を10サイクル繰り返した。ここで充電とは第1電極の活物質にナトリウムイオンをドープ(還元)する過程をさし、放電とは第1電極の活物質からナトリウムイオンを脱ドープ(酸化)する過程をさす。
なお、充放電試験は、充放電試験機(北斗電工株式会社製、HJ1001SM8A型)を用いて行った。
下記表1に、実施例1,2、比較例1におけるナトリウム二次電池用電極E、EおよびCの電極を用いて作製したナトリウム二次電池それぞれの、1サイクル目、5サイクル目および10サイクル目の放電容量を示す。
Figure 2014060006
表1に示すように、実施例1,2のナトリウム二次電池は、比較例1,2のナトリウム二次電池と比べて、放電容量が大きい(特に1サイクル目の放電容量が非常に大きい)ことが分かった。
<実施例3>
(電池の作製)
上記実施例2において作製したナトリウム二次電池用電極Eを、コインセル(宝泉株式会社製)の下側パーツの窪みに、活物質面を上に向けて置き、電解液として1MのNaClO/プロピレンカーボネート(キシダ化学株式会社製)と4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(キシダ化学株式会社製)を98:2(体積比)で混合した溶液を用い、セパレータとしてガラスフィルター(アドバンテック社製、厚み38μm)、および第2電極として金属ナトリウム(関東化学社製)を組み合わせて、電池Bを作製した。なお、電池の組み立てはアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
(ナトリウム二次電池の評価)
ナトリウム二次電池の充放電条件として、充電はレストポテンシャルから0Vまで50mA/gでCC(コンスタントカレント:定電流)充電を行った。放電は50mA/gでCC(コンスタントカレント:定電流)放電を行い、電圧0.8Vでカットオフした。上記充放電を1サイクルとし、30サイクル繰り返した。ここで充電とは第1電極の活物質にナトリウムイオンをドープ(還元)する過程をさし、放電とは第1電極の活物質からナトリウムイオンを脱ドープ(酸化)する過程をさす。
なお、充放電試験は、充放電試験機(北斗電工株式会社製、HJ1001SM8A型)を用いて行った。
表2にナトリウム二次電池Bの1サイクル目、5サイクル目、10サイクル目、20サイクル目および30サイクル目の放電容量を示す。
Figure 2014060006
表2に示すように、実施例3のナトリウム二次電池は、上記比較例1のナトリウム二次電池と比べて、電圧範囲の上限が比較例1よりも小さいにもかかわらず、大きい放電容量を示すことが分かった。また、実施例3のナトリウム二次電池は、充放電サイクルを重ねても大きい放電容量を維持していることが分かった。
これらの結果から、本発明の有用性が確かめられた。
本発明のナトリウム二次電池用電極は、充分な厚みの活物質層を形成することができるため集電体の体積に対する活物質量の比率を大きくでき、体積あたりの放電容量が大きい電池を作製することが可能となる。
さらに、高価な稀少金属元素であるリチウムを使用することなく、安価な材料を用いて構成することができ、本発明は工業的に極めて有用である。
また、大掛かりな真空設備などを必要とするスパッタリング装置等を用いることなしに、大気雰囲気中などで容易に電極を作製ができるため、本発明は工業的に極めて有用である。
1…セパレータ、2…第1電極、3…第2電極、4…電極群、5…電池缶、6…電解液、7…トップインシュレーター、8…封口体、10…ナトリウム二次電池、21…リード、31…リード

Claims (9)

  1. リン単体を電極活物質として含有するナトリウム二次電池用電極。
  2. さらに、導電材を含有する請求項1に記載のナトリウム二次電池用電極。
  3. さらに、結着剤を含有する請求項1または2に記載のナトリウム二次電池用電極。
  4. 前記結着剤が、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAANa)、カルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群より選ばれる1種以上である請求項3に記載のナトリウム二次電池用電極。
  5. 第1電極、第2電極および非水電解質を有するナトリウム二次電池であって、
    前記第1電極が、請求項1から4のいずれか1項に記載のナトリウム二次電池用電極であり、
    前記第2電極が、金属ナトリウム、ナトリウム合金、又はナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができるナトリウム化合物を電極活物質として含有する電極であるナトリウム二次電池。
  6. 前記第2電極における電極活物質が、ナトリウム無機化合物からなる電極活物質である請求項5に記載のナトリウム二次電池。
  7. 前記ナトリウム無機化合物が、以下の式(A)で表される酸化物である請求項6に記載のナトリウム二次電池。
    NaMO …(A)
    (ここで、Mは、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、V、Ti、B、Al、Mg、Siからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、xは0を超え1.2以下である。)
  8. 前記非水電解質が有機溶媒に溶解された非水電解液を含み、かつ、前記有機溶媒の一部には、フッ素置換基を有する有機溶媒が含まれる請求項5から7のいずれか1項に記載のナトリウム二次電池。
  9. 前記フッ素置換基を有する有機溶媒が、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンである請求項8に記載のナトリウム二次電池。
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