JP2014059017A - 歯車装置 - Google Patents

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郁夫 武田
Seiji Suketomo
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Abstract

【課題】製造が容易で、変速比の設定自由度が高く、より高い変速比が得られる歯車装置を実現する。
【解決手段】歯車装置を、太陽軸10の軸心上に歯車中心が位置し、外歯車である第1太陽歯車1と、太陽軸の軸心上に歯車中心が位置し、外歯車である第2太陽歯車2と、第1太陽歯車と噛み合って自転して太陽軸の軸心を回転中心として公転し、外歯車である第1遊星歯車3と、第2太陽歯車と噛み合って自転して太陽軸の軸心を回転中心として公転し、外歯車である第2遊星歯車4と、第1遊星歯車及び第2遊星歯車の歯車中心が軸心上に位置するように第1遊星歯車及び第2遊星歯車が取り付けられている遊星歯車軸7とを備えるものとし、第1太陽歯車と第2太陽歯車の向きが同じで、かつ、第1遊星歯車と第2遊星歯車の向きが同じになっているか、又は、第1太陽歯車と第2太陽歯車の向きが逆で、かつ、第1遊星歯車と第2遊星歯車の向きが逆になっている。
【選択図】図1

Description

本発明は、歯車装置に関する。
従来、例えば変速機などに用いられる歯車装置として、例えば遊星歯車装置がある。
この遊星歯車装置は、一般に、例えば10以下の減速比のように低い変速比が得られれば良い場合には1段で用いられ、さらに高い変速比(減速比)を得たい場合には多段に組み合わせて用いられる。
このほか、高い変速比を得たい場合には、ハーモニックドライブ(登録商標)、サイクロ減速機、差動歯車装置などの歯車装置が用いられる。
これらの歯車装置は、いずれも内歯車を用いた歯車装置である。
このように、高い変速比を得たい場合には、内歯車を用いた歯車装置を用いるのが一般的である。
特公昭63−19366号公報
しかしながら、内歯車を用いた歯車装置は、内歯車の加工が難しいため、製造が難しい。
また、内歯車を用いた歯車装置は、歯数の制約があるため、変速比の設定自由度が低く、また、高い変速比が得られると言っても限界がある。例えば、ハーモニックドライブ(登録商標)では、100〜200程度の減速比しか得られず、この範囲よりも高い減速比や低い減速比を得ることができない。また、差動歯車装置では、300程度の減速比を得るのが限界である。また、10程度の減速比が限界である遊星歯車装置を多段に組み合わせることで、これらと同等又はそれ以上の高い減速比を実現することも考えられるが、高い減速比を得るために段数を増やすほど、装置が大型化し、伝達効率が下がり、コストが高くなるという課題がある。例えば、遊星歯車装置を2〜3段組み合わせて20〜30程度の減速比が得られるようにすることはありうるが、それ以上の減速比を得るために段数を増やすことは、装置の大きさ、伝達効率、コストの面でデメリットが大きい。
そこで、製造が容易で、変速比の設定自由度が高く、より高い変速比が得られる歯車装置を実現したい。
本歯車装置は、太陽軸の軸心上に歯車中心が位置し、外歯車である第1太陽歯車と、太陽軸の軸心上に歯車中心が位置し、外歯車である第2太陽歯車と、第1太陽歯車と噛み合って自転するとともに太陽軸の軸心を回転中心として公転し、外歯車である第1遊星歯車と、第2太陽歯車と噛み合って自転するとともに太陽軸の軸心を回転中心として公転し、外歯車である第2遊星歯車と、第1遊星歯車及び第2遊星歯車の歯車中心が軸心上に位置するように第1遊星歯車及び第2遊星歯車が取り付けられている遊星歯車軸とを備え、第1太陽歯車と第2太陽歯車の向きが同じで、かつ、第1遊星歯車と第2遊星歯車の向きが同じになっているか、又は、第1太陽歯車と第2太陽歯車の向きが逆で、かつ、第1遊星歯車と第2遊星歯車の向きが逆になっている。
したがって、本歯車装置によれば、製造が容易で、変速比の設定自由度が高く、より高い変速比が得られる歯車装置を実現できるという利点がある。
本実施形態にかかる歯車装置の構成を示すケースを破断した模式的斜視図である。 本実施形態にかかる歯車装置の構成を示す模式的断面図である。 本実施形態にかかる歯車装置の一部を示す模式的斜視図である。 本実施形態にかかる歯車装置の変形例の構成を示す模式的平面図である。 一般的な遊星歯車装置の構成を示す模式図である。 一般的なデファレンシャルギヤの構成を示す模式図である。 一の比較例の歯車装置の構成を示す模式図である。 他の比較例の歯車装置の構成を示す模式図である。 本実施形態にかかる歯車装置の第1変形例の構成を示す模式的斜視図である。 本実施形態にかかる歯車装置の第2変形例の構成を示すケースを破断した模式的斜視図である。 本実施形態にかかる歯車装置の第2変形例の構成を示す模式的断面図である。 本実施形態にかかる歯車装置の第2変形例の一構成例を示す模式図である。 本実施形態にかかる歯車装置の第3変形例の構成を示すケースを破断した模式的斜視図である。
以下、図面により、本発明の実施の形態にかかる歯車装置について、図1〜図8を参照しながら説明する。
本実施形態にかかる歯車装置は、減速機(変速機)として用いられる。
本歯車装置は、図1、図2に示すように、第1太陽歯車としての静止歯車1と、第2太陽歯車としての出力歯車2と、第1遊星歯車3と、第2遊星歯車4と、入力軸(第1回転軸)5と、出力軸(第2回転軸)6と、遊星歯車軸7とを備え、これらがケース8に収納されている。なお、歯車装置を歯車機構ともいう。また、図1ではケース8だけを半分に切断して内部を示している。
ここで、入力軸5と出力軸6は、ケース8の中央に同軸で配置されている。ここでは、ケース8の上面には、その中央に開口部が設けられており、この開口部に入力軸5が挿入され、ベアリング9Aを介して、入力軸5がケース8に回転可能に支持されている。また、ケース8の下面には、その中央に開口部が設けられており、この開口部に出力軸6が挿入され、ベアリング9Bを介して、出力軸6がケース8に回転可能に支持されている。また、同軸で配置されている入力軸5及び出力軸6の軸心を回転中心として第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4が公転するようになっている。このため、入力軸5及び出力軸6を、太陽軸10という。
静止歯車1は、外歯車(ここでは傘歯車)であり、太陽軸10と同軸で、即ち、太陽軸10としての出力軸6の軸心上に歯車中心が位置するように、ケース8にネジ11で固定されており、回転不能になっている。ここでは、ケース8に固定された静止歯車1の中央に開口部が設けられており、この開口部に出力軸6が挿入され、ベアリング9Cを介して、出力軸6が静止歯車1に回転可能に支持されている。
出力歯車2は、外歯車(ここでは傘歯車)であり、太陽軸10と同軸で、即ち、太陽軸10としての出力軸6の軸心上に歯車中心が位置するように、出力軸6に固定されている。ここでは、出力歯車2は、出力軸6の端部に一体に形成されている。つまり、出力歯車2を出力軸6の端部に一体形成した場合も、出力歯車2が出力軸6の端部に固定されている場合に含まれるものとする。この場合、出力歯車2は、太陽軸10としての出力軸6に支持され、出力軸6と同期して回転することになる。そして、出力軸6は、ベアリング9B、9Cを介して、静止歯車1及びケース8に回転可能に支持されている。このため、出力歯車2は、出力軸6及びベアリング9B、9Cを介して、静止歯車1及びケース8に回転可能に支持されていることになる。ここでは、出力歯車2は、静止歯車1の内側に配置されている。つまり、静止歯車1と出力歯車2とは、積層された構造になっている。そして、内側に配置される出力歯車2は、外側に配置される静止歯車1よりも径が小さくなっている。また、出力歯車2の上面には、その中央に凹みが設けられており、この凹みに取り付けられたベアリング9Dを介して、入力軸5が回転可能に支持されている。このため、入力軸5は、ベアリング9A、9Dを介して、ケース8及び出力歯車2に回転可能に支持されていることになる。このようにして、入力軸5と出力軸6とが同軸で配置され、別々に回転するようになっている。
遊星歯車軸7は、入力軸5に直交して取り付けられ、入力軸5に支持されている。この場合、太陽軸10としての入力軸5の軸心と遊星歯車軸7の軸心とは交差(ここでは直交)することになる。ここでは、入力軸5は、交差(ここでは直交)する方向に貫通穴を備え、この貫通穴に遊星歯車軸7が挿入されて、入力軸5に遊星歯車軸7が固定されている。
そして、遊星歯車軸7と同軸で、即ち、遊星歯車軸7の軸心上に第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4の歯車中心が位置するように、遊星歯車軸7に第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4が取り付けられている。
第2遊星歯車4は、外歯車(ここでは傘歯車)であり、出力歯車2に噛み合うように、遊星歯車軸7にベアリング9E、9Fを介して回転可能に取り付けられている。つまり、第2遊星歯車4の中央に設けられた開口部に遊星歯車軸7が挿入され、ベアリング9E、9Fを介して、第2遊星歯車4が遊星歯車軸7に回転可能に支持されている。ここでは、遊星歯車軸7の両端のそれぞれに、ベアリング9E、9Fを介して、第2遊星歯車4が回転可能に取り付けられている。このように、複数の第2遊星歯車4を備えるものとしている。また、第2遊星歯車4は、第2太陽歯車としての出力歯車2と噛み合って自転するとともに太陽軸10としての入力軸5の軸心を回転中心(公転中心)として公転するようになっている。つまり、第2遊星歯車4は、遊星歯車軸7回りに自転するとともに、太陽軸10としての入力軸5回りに公転するようになっている。なお、第2遊星歯車4は、遊星歯車軸7回りに自転するため、遊星歯車軸7を自転軸ともいう。
第1遊星歯車3は、外歯車(ここでは傘歯車)であり、静止歯車1に噛み合うように、第2遊星歯車4の外側に取り付けられている。つまり、第1遊星歯車3と第2遊星歯車4とは、積層された構造になっている。ここでは、遊星歯車軸7の両端のそれぞれに第2遊星歯車4が取り付けられているため、これらの第2遊星歯車4のそれぞれの外側に第1遊星歯車3が取り付けられている。このように、複数の第1遊星歯車3を備えるものとしている。そして、内側に配置される第2遊星歯車4は、外側に配置される第1遊星歯車3よりも径が小さくなっている。ここでは、第2遊星歯車4は、遊星歯車軸7の軸方向に沿って外側へ延びる部分を備え、この部分の外周に第1遊星歯車3が嵌合(結合)されて、第2遊星歯車4に第1遊星歯車3が固定されている。このため、第1遊星歯車3は、第2遊星歯車4及びベアリング9E、9Fを介して、遊星歯車軸7に取り付けられていることになる。また、第1遊星歯車3は、第2遊星歯車4と同期して同方向に回転することになる。また、第1遊星歯車3は、第1太陽歯車としての静止歯車1と噛み合って自転するとともに太陽軸10としての入力軸5の軸心を回転中心(公転中心)として公転するようになっている。つまり、第1遊星歯車3は、遊星歯車軸7回りに自転するとともに、太陽軸10としての入力軸5回りに公転するようになっている。なお、第1遊星歯車3は、遊星歯車軸7回りに自転するため、遊星歯車軸7を自転軸ともいう。
なお、ここでは、入力軸5に遊星歯車軸7が固定されており、遊星歯車軸7にベアリング9E、9Fを介して第2遊星歯車4が回転可能に取り付けられ、第2遊星歯車4に第1遊星歯車3が固定されているが、これに限られるものではなく、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4が、入力軸5の軸心を回転中心として公転し、かつ、遊星歯車軸7の回りを自転するように取り付けられていれば良い。例えば、入力軸5にベアリングを介して遊星歯車軸7を回転可能に取り付け、遊星歯車軸7に第2遊星歯車4を固定し、第2遊星歯車4に第1遊星歯車3を固定しても良い。
特に、本実施形態では、図3に示すように、第1太陽歯車としての静止歯車1と第2太陽歯車としての出力歯車2の向きが同じで、かつ、第1遊星歯車3と第2遊星歯車4の向きが同じになっている。つまり、本実施形態では、向きを揃えて積層された構造になっている第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4は、それぞれ、同じ側で、向きを揃えて積層された構造になっている静止歯車1及び出力歯車2に噛み合っている。ここでは、静止歯車1、出力歯車2、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4は、いずれも、外歯車であるため、外歯車同士が噛み合うことになる。本実施形態のように、外歯車として傘歯車を用いる場合、傘歯車は、伝達交軸の交点(ここでは遊星歯車軸7の軸心Xと太陽軸10の軸心Yの交点)に円すい母線Zが向くように加工すれば良いため、異なる歯数の組み合わせでも、伝達可能である。そして、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4の歯車中心は、遊星歯車軸7の軸心X上に位置するようになっており、また、静止歯車1及び出力歯車2の歯車中心は、太陽軸10の軸心Y上に位置するようになっている。また、太陽軸10の軸心Yと遊星歯車軸7の軸心Xとは交差(ここでは直交)している。つまり、一般的な遊星歯車装置のような遊星歯車軸の軸心と太陽軸の軸心が平行になっているものと異なり、遊星歯車軸7の軸心Xと太陽軸10の軸心Yとが交差するようになっており、交差軸伝達である。このため、本歯車装置を、交差伝達歯車機構又は交差伝達遊星歯車機構ともいう。このように、本歯車装置では、遊星歯車軸7を太陽軸10に交差(ここでは直交)させ、各歯車1〜4に外歯車を用いている。
ここでは、上述のように、静止歯車1、出力歯車2、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4に、外歯車としての傘歯車を用いているが、傘歯車としては、例えば、スグバカサ歯車、ハスバカサ歯車、マガリバカサ歯車などがある。このほか、外歯車としては、ゼロールベベルギヤ、フェースギヤ、クラウンギヤなどを用いることもできる。これらは、傘歯車と同様に、軸が交差するものである。なお、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4が、静止歯車1及び出力歯車2に対して、公転することができれば良く、これらの歯車の軸が交差していることは必須ではない。例えば、静かで強いという優れた特性を持ち、軸(伝達軸)が交差せずにずれている、即ち、食い違い軸であるハイポイドギヤを用いることもできる。つまり、静止歯車1と第1遊星歯車3によってハイポイドギヤを構成し、出力歯車2と第2遊星歯車4によってハイポイドギヤを構成することもできる。このハイポイドギヤを用いる場合、図4に示すように、遊星歯車軸7が太陽軸10に対してオフセットされたものとなる。つまり、遊星歯車軸7の軸心Xが太陽軸10の軸心Yに対してオフセットされたものとなる。このようにオフセットされていても、オフセットは一定に保たれて、図4中、破線で示すように、第1遊星歯車及び第2遊星歯車は太陽軸10を回転中心として公転することになる。このように、伝達軸である遊星歯車軸7と太陽軸10とが交差していることは必須ではなく、太陽軸10の軸心Yと遊星歯車軸7の軸心Xとが食い違っていても良い。つまり、伝達軸が平行でないもの、即ち、伝達軸が交差しているもの及び伝達軸が食い違っているものであれば良い。要するに、太陽軸10の軸心Yと遊星歯車軸7の軸心Xとが平行でないもの、即ち、太陽軸10の軸心Yと遊星歯車軸7の軸心Xとが交差しているもの、及び、太陽軸10の軸心Yと遊星歯車軸7の軸心Xとが食い違っているものであれば良い。
また、ここでは、上述のように、遊星歯車軸7を太陽軸10に直交させ、交差伝達の軸角を90°にしているが(例えば図3参照)、これに限られるものではなく、例えば約45°〜120°程度の軸角を有する交差伝達であれば良い。
また、ここでは、図1、図2に示すように、遊星歯車軸7の両端のそれぞれに第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4が取り付けられているため、一方の側で、一方の第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4が、それぞれ、静止歯車1及び出力歯車2に噛み合っており、これの反対側の他方の側で、他方の第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4が、それぞれ、静止歯車1及び出力歯車2に噛み合っている。このように、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4を、一方の側だけでなくこれと反対側の他方の側にも設けることで、カウンタバランスの役割と伝達能力を向上させる役割とを果たすようにしている。なお、ここでは、公転円周上の2箇所に第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4を設けているが、これに限られるものではなく、複数個所に第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4を設けても良い。つまり、積層された構造になっている1つの第1遊星歯車3と1つの第2遊星歯車4を1組として、複数組設けても良い。但し、伝達能力を考慮すれば第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4を設ける箇所を増やすのが良いが、これらを設ける箇所が増えるとフライホイール効果が大きくなり、コストも上がってしまうことになる。
このような構成を備える歯車装置において、入力軸5が回転すると、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4がそれぞれ静止歯車1及び出力歯車2に噛み合って公転及び自転し、出力歯車2が回転して、出力歯車2に固定されている出力軸6が回転する。これにより、入力軸5に入力された回転速度が、変速(減速)されて、出力軸6から出力されることになる。
ここで、上述のように、内側に配置する出力歯車2及び第2遊星歯車4を、外側に配置する静止歯車1及び第1遊星歯車3よりも径を小さくしている。この場合、高い減速比を得ようとするほど、これらの4つの歯車1〜4の歯数差を小さくすることが必要になるが、そうすると、内側に配置する出力歯車2及び第2遊星歯車4の歯タケが小さくなってしまい、伝達能力が下がってしまうことになる。このため、内側に配置する出力歯車2及び第2遊星歯車4の歯数を少なくするのが好ましく、配置できる空間等を考慮して、内側に配置する出力歯車2及び第2遊星歯車4の歯数を、外側に配置する静止歯車1及び第1遊星歯車3の歯数に比べて半分程度にするのが好ましい。
ここで、静止歯車1の歯数をZcとし、出力歯車2の歯数をZbとし、第1遊星歯車3の歯数をZdとし、第2遊星歯車4の歯数をZaとする場合、減速比は、次式によって表すことができる。
減速比=1/[1−(Za/Zb)・(Zc/Zd)]
=1/[1−(Za・Zc)/(Zb・Zd)]
例えば、以下の表1に示すように、静止歯車1の歯数Zcを37とし、出力歯車2の歯数Zbを25とし、第1遊星歯車3の歯数Zdを40とし、第2遊星歯車4の歯数Zaを27とすることで、減速比1000という高い減速比を実現することが可能である。なお、歯数の組み合わせは数万通り考えられるが、以下の表1ではその一例を示している。
また、例えば、静止歯車1の歯数Zcを30とし、出力歯車2の歯数Zbを27とし、第1遊星歯車3の歯数Zdを40とし、第2遊星歯車4の歯数Zaを18とすることで、減速比2という低い減速比を実現することも可能である。
また、例えば、静止歯車1の歯数Zcを33とし、出力歯車2の歯数Zbを20とし、第1遊星歯車3の歯数Zdを40とし、第2遊星歯車4の歯数Zaを24とすることで、減速比100という中間の減速比を実現することも可能である。
また、静止歯車1の歯数Zcを41とし、出力歯車2の歯数Zbを40とし、第1遊星歯車3の歯数Zdを40とし、第2遊星歯車4の歯数Zaを39とすることで、減速比1600という、より高い減速比を実現することも可能である。
また、静止歯車1の歯数Zcを40とし、出力歯車2の歯数Zbを39とし、第1遊星歯車3の歯数Zdを41とし、第2遊星歯車4の歯数Zaを40とすることで、減速比−1599という、回転方向が逆方向の高い減速比を実現することも可能である。
Figure 2014059017
例えば、2つの太陽歯車及び2つの遊星歯車を用いる場合、歯数の組み合わせをN−1、N、N、N+1とすると、次式のように、1−N(負の最大;回転方向が逆方向の場合の最大)からN(正の最大)までの減速比を実現することが可能である。
Figure 2014059017
このように、本歯車装置によれば、高い減速比(変速比)が得られ、また、低い減速比から高い減速比まで幅広い減速比の設定が可能となる。特に、上述のように、静止歯車1、出力歯車2、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4は、いずれも、外歯車であり、加工が容易である。このように、内歯車を用いないため、内歯車を用いた歯車装置と比較して、歯車装置の製造が容易である。この結果、小ロットの短納期生産が可能となる。また、ハーモニックドライブ(登録商標)のように特殊な歯車を用いることもないため、コストを低く抑えることが可能である。また、各歯車1〜4の歯数に制約が少ないため、即ち、全ての歯車1〜4の歯数が全て同じにならない限り、減速機として機能させることができるため、歯数の組み合わせを自由に選択して幅広い減速比を設定でき、減速比(変速比)の設定自由度が高い。このように、低い減速比から高い減速比までの所望の減速比を同一の構成を有する歯車装置によって実現することができるため、従来のように減速比によって異なる構成の歯車装置を使い分け、それぞれを設計する必要がなくなる。また、静止歯車1と第1遊星歯車3との間の伝達と、出力歯車2と第2遊星歯車4との間の伝達の2回の歯車伝達だけで高い減速比を実現することが可能である。このため、一般的な遊星歯車装置を多段に組み合わせて高い減速比を実現する場合と比較して、少ない歯車で高い減速比まで対応でき、伝達効率が向上し、装置を小型化することができ、コストを低く抑えることが可能である。
ところで、上述のように構成される歯車装置では、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4を公転させないで自転させると、第1太陽歯車としての静止歯車1と第2太陽歯車としての出力歯車2とは同方向へ回転することになる。このように、遊星歯車を公転させないで自転させた場合に、2つの太陽歯車の回転方向が同方向になるのが差動減速機の特徴である。つまり、遊星歯車が公転しないようにしながら一方の太陽歯車を回転させた場合に、他方の太陽歯車の回転方向が同方向であれば、差動減速機である。これに対し、図5に示すような一般的な遊星歯車装置では、遊星歯車を公転させないで自転させると、太陽歯車と内歯車とは逆方向へ回転することになる。また、図6に示すような一般的なデファレンシャルギヤでは、2つの歯車100、101に噛み合って公転する歯車102を公転させないで自転されると、2つの歯車100、101は逆方向へ回転することになる。
また、上述のように構成される本実施形態の歯車装置では、出力軸6から出力される回転速度(回転数)は、1−(Za・Zc)/(Zb・Zd)であり、「遊星歯車・差動歯車装置の設計」日刊工業新聞社に記載されている式と同じ式であり、差動となっている。この点は、例えば図7に示すような歯車装置や例えば図8に示すような歯車装置であっても同様である。つまり、例えば図7に示すような歯車装置では、腕を回して内歯車の静止歯車(歯数Za)の内周を外歯車の第1遊星歯車(歯数Zb)を内転させると、腕によって連結されている外歯車の第2遊星歯車(歯数Zc)が内歯車の出力歯車(歯数Zd)の内周を内転し、出力歯車が回転することになる。このような歯車装置の場合も、出力歯車から出力される回転速度は、1−(Za・Zc)/(Zb・Zd)であり、差動となっている。また、例えば図8に示すような歯車装置では、腕を回して外歯車の静止歯車(歯数Za)の外周を外歯車の第1遊星歯車(歯数Zb)を外転させると、腕によって連結されている外歯車の第2遊星歯車(歯数Zc)が外歯車の出力歯車(歯数Zd)の外周を外転し、出力歯車が回転することになる。このような歯車装置の場合も、出力歯車から出力される回転速度は、1−(Za・Zc)/(Zb・Zd)であり、差動となっている。このため、図7に示すような歯車装置や図8に示すような歯車装置を用いた減速機も公転差動減速機である。しかしながら、図7に示すような歯車装置では、内歯車を用いているため、製造が難しく、また、歯数の制約があるため、変速比の設定自由度が低い。また、図8に示すような歯車装置では、装置が大型化する。そこで、上述のように構成される本実施形態の歯車装置では、回転伝達方法として、これらの内転、外転を用いずに、太陽歯車や遊星歯車に外歯車のみを用い、さらに、例えば傘歯車を用いた交差軸伝達又は例えばハイポイドギヤを用いた食い違い軸伝達を用いている。このように、交差軸伝達又は食い違い軸伝達を用いることで、図8に示すように静止歯車や出力歯車の外側を第1遊星歯車及び第2遊星歯車が公転(外転)する歯車装置の場合と比較して、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4の公転半径が小さくなり、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4自体の回転数も少なくすることができる。これにより、装置が小型化され、また、フライホイール効果が小さい歯車装置を実現することが可能となる。なお、デファレンシャルギヤのように単に傘歯車を公転させても変速機(減速機)として用いることができない。このため、上述したように、第1太陽歯車としての静止歯車1と第2太陽歯車としての出力歯車2の向きを同じにし、かつ、第1遊星歯車3と第2遊星歯車4の向きを同じにし、第1遊星歯車3と第2遊星歯車4とを、それぞれ、同じ側で、静止歯車1と出力歯車2とに噛み合わせるようにしている。この場合、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4を公転させないで自転させると、第1太陽歯車としての静止歯車1と第2太陽歯車としての出力歯車2とは同方向へ回転することになる。
したがって、本実施形態にかかる歯車装置によれば、製造が容易で、変速比の設定自由度が高く、より高い変速比が得られる歯車装置を実現できるという利点がある。
なお、本発明は、上述した実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、上述の実施形態では、入力軸5に遊星歯車軸7を取り付け、入力軸5を回転駆動することで遊星歯車軸7が回転するようになっているが、これに限られるものではなく、例えば図9に示すように、太陽軸10としての出力軸6を回転中心とする腕20によって遊星歯車軸7を支持するようにし、この腕20を回転駆動することで遊星歯車軸7を回転させるようにし、出力歯車2に腕20に設けられた開口部を貫通する出力軸6を取り付けるようにしても良い。これを第1変形例という。
また、例えば、上述の実施形態では、第1太陽歯車としての静止歯車1と第2太陽歯車としての出力歯車2の向きが同じで、かつ、第1遊星歯車3と第2遊星歯車4の向きが同じになっているが、これに限られるものではない。
例えば、図10、図11に示すように、第1太陽歯車しての静止歯車1と第2太陽歯車としての出力歯車2の向きが逆で、かつ、第1遊星歯車3と第2遊星歯車4の向きが逆になっていても良い。つまり、静止歯車1と出力歯車2とを逆向きにして、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4を挟んで両側に(ここでは上下に)配置する。また、第1遊星歯車3と第2遊星歯車4とを逆向きにして、静止歯車1及び出力歯車2を挟んで両側に(ここでは左右に)配置する。そして、一方の側で静止歯車1に第1遊星歯車3のみが噛み合い、他方の側で出力歯車2に第2遊星歯車4のみが噛み合うようにする。つまり、第1遊星歯車3は、静止歯車1には噛み合うが、出力歯車2には噛み合わず、第2遊星歯車4は、出力歯車2に噛み合うが、静止歯車1には噛み合わないようにする。これを第2変形例という。
この第2変形例の歯車装置は、上述の実施形態の場合と同様に、第1太陽歯車としての静止歯車1と、第2太陽歯車としての出力歯車2と、第1遊星歯車3と、第2遊星歯車4と、入力軸(第1回転軸)5と、出力軸(第2回転軸)6と、遊星歯車軸7とを備え、これらがケース8に収納されている。なお、図10ではケース8だけを半分に切断して内部を示している。
ここで、入力軸5と出力軸6は、ケース8の中央に同軸で配置されている。ここでは、ケース8の上面には、その中央に開口部が設けられており、この開口部に入力軸5が挿入され、ベアリング9Gを介して、入力軸5がケース8に回転可能に支持されている。また、ケース8の下面には、その中央に開口部が設けられており、この開口部に出力軸6が挿入され、ベアリング9H、9Iを介して、出力軸6がケース8に回転可能に支持されている。また、同軸で配置されている入力軸5及び出力軸6の軸心を回転中心として第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4が公転するようになっている。このため、入力軸5及び出力軸6を、太陽軸10という。
静止歯車1は、外歯車(ここでは傘歯車)であり、太陽軸10と同軸で、即ち、太陽軸10としての入力軸5の軸心上に歯車中心が位置するように、ケース8にネジ11で固定されており、回転不能になっている。ここでは、ケース8に固定された静止歯車1の中央に開口部が設けられており、この開口部に入力軸5が挿入され、ベアリング9Jを介して、入力軸5が静止歯車1に回転可能に支持されている。
出力歯車2は、外歯車(ここでは傘歯車)であり、太陽軸10と同軸で、即ち、太陽軸10としての出力軸6の軸心上に歯車中心が位置するように、出力軸6に固定されている。ここでは、出力歯車2は、静止歯車1の反対側に逆向きにして配置されている。そして、出力歯車2と静止歯車1とは、同程度の径になっている。また、ここでは、出力歯車2は、出力軸6の端部に一体に形成されている。つまり、出力歯車2を出力軸6の端部に一体形成した場合も、出力歯車2が出力軸6の端部に固定されている場合に含まれるものとする。この場合、出力歯車2は、太陽軸10としての出力軸6に支持され、出力軸6と同期して回転することになる。そして、出力軸6は、ベアリング9H、9Iを介して、ケース8に回転可能に支持されている。このため、出力歯車2は、出力軸6及びベアリング9H、9Iを介して、ケース8に回転可能に支持されていることになる。また、出力歯車2の上面には、その中央に凹みが設けられており、この凹みに取り付けられたベアリング9Kを介して、入力軸5が回転可能に支持されている。このため、入力軸5は、ベアリング9G、9J、9Kを介して、ケース8、静止歯車1及び出力歯車2に回転可能に支持されていることになる。このようにして、入力軸5と出力軸6とが同軸で配置され、別々に回転するようになっている。
遊星歯車軸7は、入力軸5に交差して取り付けられ、入力軸5に支持されている。この場合、太陽軸10としての入力軸5の軸心と遊星歯車軸7の軸心とは交差することになる。ここでは、入力軸5は、交差する方向に貫通穴を備え、この貫通穴に遊星歯車軸7が挿入されて、ベアリング9L、9Mを介して、入力軸5に遊星歯車軸7が回転可能に支持されている。
そして、遊星歯車軸7と同軸で、即ち、遊星歯車軸7の軸心上に第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4の歯車中心が位置するように、遊星歯車軸7に第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4が取り付けられている。ここでは、遊星歯車軸7の一方の端部に第1遊星歯車3が固定されており、他方の端部に第2遊星歯車4が固定されている。つまり、第1遊星歯車3と第2遊星歯車4は、遊星歯車軸7の両端のそれぞれに逆向きにして配置されている。このため、第1遊星歯車3と第2遊星歯車4とは、同期して同方向に回転することになる。そして、第1遊星歯車3と第2遊星歯車4とは、同程度の径になっている。
第2遊星歯車4は、外歯車(ここでは傘歯車)であり、出力歯車2に噛み合うように、遊星歯車軸7に固定されている。つまり、第2遊星歯車4の中央に設けられた開口部に遊星歯車軸7が挿入され、第2遊星歯車4が遊星歯車軸7に固定されている。また、第2遊星歯車4は、第2太陽歯車としての出力歯車2と噛み合って自転するとともに太陽軸10としての入力軸5の軸心を回転中心(公転中心)として公転するようになっている。つまり、第2遊星歯車4は、遊星歯車軸7回りに自転するとともに、太陽軸10としての入力軸5回りに公転するようになっている。なお、第2遊星歯車4は、遊星歯車軸7回りに自転するため、遊星歯車軸7を自転軸ともいう。
第1遊星歯車3は、外歯車(ここでは傘歯車)であり、静止歯車1に噛み合うように、遊星歯車軸7に固定されている。つまり、第1遊星歯車3の中央に設けられた開口部に遊星歯車軸7が挿入され、第1遊星歯車3が遊星歯車軸7に固定されている。また、第1遊星歯車3は、第1太陽歯車としての静止歯車1と噛み合って自転するとともに太陽軸としての入力軸5の軸心を回転中心(公転中心)として公転するようになっている。つまり、第1遊星歯車3は、遊星歯車軸7回りに自転するとともに、太陽軸10としての入力軸5回りに公転するようになっている。なお、第1遊星歯車3は、遊星歯車軸7回りに自転するため、遊星歯車軸7を自転軸ともいう。
なお、ここでは、入力軸5に遊星歯車軸7がベアリング9L、9Mを介して回転可能に支持されており、遊星歯車軸7に第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4が固定されているが、これに限られるものではなく、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4が、入力軸5の軸心を回転中心として公転し、かつ、遊星歯車軸7の回りを自転するように取り付けられていれば良い。例えば、入力軸5に遊星歯車軸7を固定し、遊星歯車軸7の一方の端部にベアリングを介して第1遊星歯車3を回転可能に取り付けるとともに、遊星歯車軸7の他方の端部にベアリングを介して第2遊星歯車4を回転可能に取り付けるようにしても良い。
このような構成を備える第2変形例の歯車装置では、入力軸5が回転すると、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4がそれぞれ静止歯車1及び出力歯車2に噛み合って公転及び自転し、出力歯車2が回転して、出力歯車2に固定されている出力軸6が回転する。つまり、入力軸5が回転すると、遊星歯車軸7が太陽軸10を中心に回転し、第1遊星歯車3が静止歯車1に噛み合って回転し、遊星歯車軸7が自転し、第2遊星歯車4が回転し、出力歯車2が回転して、出力歯車2に固定されている出力軸6が回転する。これにより、入力軸5に入力された回転速度が、変速(減速)されて、出力軸6から出力されることになる。
この場合、上述の実施形態の各歯車1〜4をそのまま用いて、例えば図12に示すように構成しても良いが、この第2変形例では、上述の実施形態のような内側に配置する歯車2、4を小さくする(即ち、内側に配置する歯車2、4の歯数を少なくする)という制約はない。そこで、図10、図11に示すように、第1太陽歯車としての静止歯車1、第2太陽歯車としての出力歯車2、第1遊星歯車及び第2遊星歯車の大きさ(直径)を同程度にし、遊星歯車軸7を傾斜させることで、一方の側で静止歯車1に第1遊星歯車3のみが噛み合い、他方の側で出力歯車2に第2遊星歯車4のみが噛み合うようにしている。ここでは、太陽軸10の軸心に対して軸心が直交する位置に対して遊星歯車軸7を傾斜させている。なお、通常、歯車は軸同士が90度に直交するように構成されているが、必ずしも90度に直交している必要はないため、このように遊星歯車軸7を傾けることは可能である。これにより、上述の実施形態のものよりも小型化を図りながら、上述の実施形態の場合と同程度の高い減速比を実現することができる。例えば、静止歯車1の歯数を33とし、第1遊星歯車3の歯数を32とし、第2遊星歯車4の歯数を31とし、出力歯車3の歯数を32とすることで、減速比1024という高い減速比を実現することができる。この場合、4つの歯車1〜4の中の最も多い歯数は33であり、上述の実施形態において減速比1000を得る場合の最も多い歯数である40よりも少ないため、各歯車1〜4の大きさを小さくすることができ、装置の小型化を図ることができる。また、上述の表1中、減速比−1599や1600といった、より高い減速比を実現するのも容易である。なお、上述の実施形態の場合、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4を2組以上配置できるのに対し、この第2変形例ではそれが難しいため、伝達能力を考慮すると、上述の第1実施形態の方が有利である。
この場合も、上述の実施形態の場合と同様に、静止歯車1、出力歯車2、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4は、いずれも、外歯車であるため、外歯車同士が噛み合うことになる。そして、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4の歯車中心は、遊星歯車軸7の軸心上に位置するようになっており、また、静止歯車1及び出力歯車2の歯車中心は、太陽軸10の軸心上に位置するようになっている。また、太陽軸10の軸心と遊星歯車軸7の軸心とは交差している。
但し、上述のように、遊星歯車軸7を傾斜させて、一方の側で静止歯車1に第1遊星歯車3のみが噛み合い、他方の側で出力歯車2に第2遊星歯車4のみが噛み合うようにすると、非対称な構造になるため、高速回転させた場合に振動が生じてしまうおそれがある。そこで、回転バランスを取るべく、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4のうち、歯数の多い方(ここでは第1遊星歯車3)に穴32を開けて、その重量を軽くし、歯数の少ない方と重量のバランスを取っている。つまり、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4に同じモジュールを使うと、歯数が多い方が直径が大きくなって重くなるため、歯数の多い方(ここでは第1遊星歯車3)に穴32を開けて軽くし、歯数の少ない方とバランスを取っている。さらに、動的なバランスを考慮して、入力軸5にバランサ30、31も取り付けている。ここでは、遊星歯車軸7は右下がりになっているため、バランサ30を右上に、バランサ31を左下に配置している。
なお、このように構成される第2変形例の歯車装置でも、上述の実施形態の歯車装置と同様に、第1遊星歯車3及び第2遊星歯車4を公転させないで自転させると、第1太陽歯車としての静止歯車1と第2太陽歯車としての出力歯車2とは同方向へ回転することになる。このため、これを減速機に用いたものを公転差動減速機という。また、このように構成される第2変形例の歯車装置でも、上述の実施形態の歯車装置と同様に、出力軸6から出力される回転速度(回転数)は、1−(Za・Zc)/(Zb・Zd)となり、差動となる。
また、上述の実施形態及び第1、第2変形例では、歯車装置を減速機(変速機)に用いる場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。例えば、入力と出力を入れ換えて増速機(変速機)として用いること、あるいは、例えば、ケース8を回転させることで太陽軸10を回転中心として静止歯車1を回転させるように構成し、別途トルク配分等の手段を付加することで、動力アシスト(電動アシスト;加速補助手段)として用いることも可能である。
例えば、図13に示すように、上述の実施形態の歯車装置のケース8にタイミングプーリ40を取り付け、このタイミングプーリ40、タイミングベルト41及び他の回転軸42に取り付けられたタイミングプーリ43を介して、他の回転軸42の回転駆動力を伝達してケース8を回転可能に構成することができる。これを第3変形例という。この場合、静止歯車1はケース8に回転不能に固定されているが、ケースが回転可能になっており、いるため、静止歯車1も回転可能になっていることになる。そして、タイミングプーリ40、タイミングベルト41、タイミングプーリ43及び他の回転軸42を、ケース8を回転させる駆動機構(回転駆動機構)という。また、この場合、上述の実施形態の歯車装置の入力軸5、出力軸6、他の回転軸42のいずれかの軸が、入力、出力、固定(入力で、かつ、回転数ゼロ)のいずれかになっていれば良い。このため、以下、上述の実施形態の歯車装置の入力軸5を第1回転軸といい、出力軸6を第2回転軸といい、他の回転軸42を第3回転軸という。そして、第1回転軸5の回転数をω1とし、第2回転軸6の回転数をω2とし、第3回転軸42の回転数をω3とすると、これらの回転軸5、6、42の回転数の関係は、次式で示すことができる。ここで、Zeはタイミングプーリ43の歯数であり、Zfはタイミングプーリ40の歯数である。
ω2=ω1・{1−(Za・Zc)/(Zb・Zd)}+ω3・Ze/Zf
例えば、第1回転軸5と第3回転軸42を駆動(入力)とし、第2回転軸6を出力とした場合、ω2は、ω1とω3のそれぞれが減速された回転数の合計となる。つまり、ケース8を回転させない場合と比較して、ω3・Ze/Zfだけ増速されることになる。
また、例えば、ω3=0(固定)で、第2回転軸6を入力とした場合、出力となる第1回転軸5は、ω1=ω2/{1−(Za・Zc)/(Zb・Zd)}となり、ω1はω2に対して増速となる。
また、第3回転軸42を、例えば発電ブレーキ、回生ブレーキ等に接続することも考えられる。この場合、ブレーキを緩めると、第3回転軸42を固定する場合と比較して、ω1が入力回転数であれば出力回転数であるω2が下がり、ω2が入力回転数であれば出力回転数であるω1が下がる。つまり、ブレーキを緩めてω3の回転数が上がるほど、伝達ロスが増えて、出力が減速する。上記式中、ω3・Ze/Zfが負となる。これにより、出力回転数を所望の回転数に調整することも可能となる。
このように、ω3を駆動(入力)、固定、ブレーキ等に接続などとし、その回転数を調整することで、上記式により、ω1とω2の回転数の比率が変わって、増速や減速が可能となる。
なお、この第3変形例は、上述の実施形態の歯車装置を用いる場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、歯車装置としては、上述の第1、第2変形例の歯車装置を用いても良い。
以下、上述の実施形態及び各変形例に関し、更に、付記を開示する。
(付記1)
太陽軸の軸心上に歯車中心が位置し、外歯車である第1太陽歯車と、
前記太陽軸の軸心上に歯車中心が位置し、外歯車である第2太陽歯車と、
前記第1太陽歯車と噛み合って自転するとともに前記太陽軸の軸心を回転中心として公転し、外歯車である第1遊星歯車と、
前記第2太陽歯車と噛み合って自転するとともに前記太陽軸の軸心を回転中心として公転し、外歯車である第2遊星歯車と、
前記第1遊星歯車及び前記第2遊星歯車の歯車中心が軸心上に位置するように前記第1遊星歯車及び前記第2遊星歯車が取り付けられている遊星歯車軸とを備え、
前記第1太陽歯車と前記第2太陽歯車の向きが同じで、かつ、前記第1遊星歯車と前記第2遊星歯車の向きが同じになっているか、又は、前記第1太陽歯車と前記第2太陽歯車の向きが逆で、かつ、前記第1遊星歯車と前記第2遊星歯車の向きが逆になっていることを特徴とする歯車装置。
(付記2)
前記太陽軸の軸心と前記遊星歯車軸の軸心とが交差しているか、又は、前記太陽軸の軸心と前記遊星歯車軸の軸心とが食い違っていることを特徴とする、付記1に記載の歯車装置。
(付記3)
前記太陽軸として、前記遊星歯車軸を支持する第1回転軸と、前記第1太陽歯車及び前記第2太陽歯車の一方が固定されている第2回転軸とを備え、
前記第1太陽歯車及び前記第2太陽歯車の他方は、回転不能になっていることを特徴とする、付記1又は2に記載の歯車装置。
(付記4)
前記太陽軸として、前記遊星歯車軸を支持する第1回転軸と、前記第1太陽歯車及び前記第2太陽歯車の一方が固定されている第2回転軸とを備え、
前記第1太陽歯車及び前記第2太陽歯車の他方が回転不能に固定されたケースと、
前記ケースを回転させる駆動機構とを備えることを特徴とする、付記1又は2に記載の歯車装置。
(付記5)
前記遊星歯車軸は、前記太陽軸の軸心に対して軸心が直交する位置に対して傾斜していることを特徴とする、付記1〜4のいずれか1項に記載の歯車装置。
(付記6)
前記第1遊星歯車を複数備え、
前記第2遊星歯車を複数備えることを特徴とする、付記1〜4のいずれか1項に記載の歯車装置。
1 静止歯車(第1太陽歯車)
2 出力歯車(第2太陽歯車)
3 第1遊星歯車
4 第2遊星歯車
5 入力軸(第1回転軸)
6 出力軸(第2回転軸)
7 遊星歯車軸
8 ケース
9A〜9M ベアリング
10 太陽軸
11 ネジ
20 腕
30、31 バランサ
32 穴
40、43 タイミングプーリ
41 タイミングベルト
42 他の回転軸(第3回転軸)

Claims (5)

  1. 太陽軸の軸心上に歯車中心が位置し、外歯車である第1太陽歯車と、
    前記太陽軸の軸心上に歯車中心が位置し、外歯車である第2太陽歯車と、
    前記第1太陽歯車と噛み合って自転するとともに前記太陽軸の軸心を回転中心として公転し、外歯車である第1遊星歯車と、
    前記第2太陽歯車と噛み合って自転するとともに前記太陽軸の軸心を回転中心として公転し、外歯車である第2遊星歯車と、
    前記第1遊星歯車及び前記第2遊星歯車の歯車中心が軸心上に位置するように前記第1遊星歯車及び前記第2遊星歯車が取り付けられている遊星歯車軸とを備え、
    前記第1太陽歯車と前記第2太陽歯車の向きが同じで、かつ、前記第1遊星歯車と前記第2遊星歯車の向きが同じになっているか、又は、前記第1太陽歯車と前記第2太陽歯車の向きが逆で、かつ、前記第1遊星歯車と前記第2遊星歯車の向きが逆になっていることを特徴とする歯車装置。
  2. 前記太陽軸の軸心と前記遊星歯車軸の軸心とが交差しているか、又は、前記太陽軸の軸心と前記遊星歯車軸の軸心とが食い違っていることを特徴とする、請求項1に記載の歯車装置。
  3. 前記太陽軸として、前記遊星歯車軸を支持する第1回転軸と、前記第1太陽歯車及び前記第2太陽歯車の一方が固定されている第2回転軸とを備え、
    前記第1太陽歯車及び前記第2太陽歯車の他方は、回転不能になっていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の歯車装置。
  4. 前記太陽軸として、前記遊星歯車軸を支持する第1回転軸と、前記第1太陽歯車及び前記第2太陽歯車の一方が固定されている第2回転軸とを備え、
    前記第1太陽歯車及び前記第2太陽歯車の他方が回転不能に固定されたケースと、
    前記ケースを回転させる駆動機構とを備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の歯車装置。
  5. 前記遊星歯車軸は、前記太陽軸の軸心に対して軸心が直交する位置に対して傾斜していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯車装置。
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