以下、図面を参照して、本発明を車両用のヘッドレスト装置に適用した場合の各実施の形態を詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
まず、第1の実施の形態について説明する。図1に示すように第1の実施の形態のヘッドレスト装置10は、ヘッドレスト本体12と、シートバック14の角度を検出するためのシートバック角度センサ17と、ヘッドレスト前部12bの位置(より具体的には全閉位置11Aを基準としたヘッドレスト前部12bの相対位置)を検出するためのヘッドレスト位置検知センサ18と、ヘッドレスト制御ECU(Electronic Control Unit)20とを備えている。なお、ヘッドレスト制御ECU20には、車両の位置を検出する検出手段として、車両の位置を検出するGPS(Global Positioning System)受信機16(図3参照)が接続されている。なお、このGPS受信機16は、ヘッドレスト本体12の内部に設けるようにしてもよい。
ヘッドレスト本体12は、車両の乗員Aが着座するシート(図示せず)に対する角度が可変に設けられたシートバック14に対して支持されたヘッドレスト後部12a、及びヘッドレスト後部12aに対して最も近い位置である全閉位置11Aからヘッドレスト後部12aに対して最も離れた位置である全開位置11Bまでの所定範囲内で移動可能なヘッドレスト前部12bを備えている。なお、図1の例では、波線によって示されるヘッドレスト前部12bの位置が全閉位置11Aであり、実線によって示されるヘッドレスト前部12bの位置が全開位置11Bである。
ここで、ヘッドレスト本体12についてより詳細に説明する。ヘッドレスト本体12は、上述したように、車両の前方側のヘッドレスト前部12bと、後方側のヘッドレスト後部12aを備えており、内部にヘッドレスト前部12bを前後方向に駆動させるための駆動機構2を備えている。駆動機構2が駆動することにより、ヘッドレスト前部12bをヘッドレスト後部12aに対して車両の前後方向へ往復移動させ、乗員Aの頭部とヘッドレスト前部12bとの間の距離を制御する。より具体的には、乗員Aの頭部とヘッドレスト前部12bとの水平方向の距離であるバックセット(バックセットの大きさ)を制御する。
図2は駆動機構2の構造図の一例を示す。前後一対のベース21、22が左右一対のX状のリンク24で連結されている。一方のベース21が前面側のヘッドレスト前部12b内に結合され、他方のベース22が背面側のヘッドレスト後部12aに結合される。また、一対のリンク24は、それぞれ二つのリンク部材24a,24bからなり、リンク部材24a,24bの略中央部がピン29により回動可能に連結されている。リンク部材24a,24bの両端部は、両ベース21,22の両側に一体に設けられた側部21a,22aにそれぞれ連結されている。
一対のリンク部材24aは、前端部が軸26cにより相互に結合されている。軸26cの両端部は、ベース21の側部21aに形成された縦長のガイド孔21bにスライド可能に連結され、リンク部材24aの後端部はベース22の側部22aにピン25bによって回動可能に連結されている。
一方、一対のリンク24bは、前端部が軸26a、後端部が軸26bにより相互に結合されている。リンク24bの前端部は、ベース21の側部21aにピン25aによって回動可能に連結され、軸26bの両端部は、ベース22の側部22aに形成された縦長のガイド孔22bにスライド可能に連結されている。
背面側のベース22は、駆動機構2の駆動源である電動ユニット28を備えている。電動ユニット28のモータ28aはベース22の内側に取り付けられている。また、モータ28aの駆動軸は、ボールネジ部28bを介して軸26cに連結されている。このボールネジ部28bの機能により、モータ28aの正逆回転が軸26cの昇降動作に変換される。したがって、電動ユニット28の駆動制御に基づき、X状の両リンク24がパンタグラフのように作動し、ベース21がベース22に対して相対的に移動する。
なお、図2に示す駆動機構2は、ヘッドレスト前部12bを移動させるための機構の一例であり、ヘッドレスト前部12bをヘッドレスト後部12aに対して移動させる機構であればどのようなものを用いてもよい。
GPS受信機16は、GPS衛星からの信号を受信してGPS受信機16自身の位置を検出して、この検出した位置を示す信号をヘッドレスト制御ECU20に出力する。なお、ヘッドレスト制御ECU20は、この信号が示す位置を車両の位置として認識する。
シートバック角度センサ17は、鉛直方向に対するシートバック14の角度を検出するためのものであり、検出した角度を示す検出信号をヘッドレスト制御ECU20に出力する。なお、シートバック角度センサ17として、例えば、加速度センサ等を用いることができる。
ヘッドレスト位置検知センサ18は、上述したように、ヘッドレスト前部12bの位置を検出するためのものであり、検出した位置を示す検出信号をヘッドレスト制御ECU20に出力する。ヘッドレスト位置検知センサ18として、例えば、ポテンションメータ、リニアセンサ、ロータリエンコーダなどを用いることができる。
図3に示すように、ヘッドレスト制御ECU20には、GPS受信機16、シートバック角度センサ17、ヘッドレスト位置検知センサ18、イグニッションスイッチ5、及び駆動機構2(より詳細には駆動機構2のモータ28a)が接続されている。ヘッドレスト制御ECU20は、ROM(Read Only Memory)、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びI/O(入出力)ポートを備えている。これらROM、CPU、RAM、及びI/Oポートは互いにバスで接続されている。
記憶媒体(記憶手段)としてのROMには、OS等の基本プログラム、詳細を以下で説明する第1のヘッドレスト移動制御処理の処理ルーチンを実行するためのプログラムが記憶されている。また、ヘッドレスト制御ECU20のROMには、詳細を以下で説明する「バックセットが所定値となるように予め定められた各角度に対応するヘッドレスト前部12bの全閉位置11Aを基準とした位置」の情報、及び「車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性がある領域」を示す情報が記憶されている。
まず、「バックセットが所定値となるように予め定められた各角度に対応するヘッドレスト前部12bの全閉位置11Aを基準とした位置」の情報について説明する。図4(A)、図4(B)にシートバック14の角度(いわゆるリクライニング角度であり、本実施の形態では鉛直方向に対するシートバック14の角度)と、バックセットの大きさとの関係の一例を示す。図4に示すように、シートバック14の角度が変化すると、バックセットの大きさも変化することが分かる。そこで、シートバック14の角度が変化してもバックセットの大きさが適切な大きさ(所定値、目標値)のまま変わらないように、シートバック14の角度に応じて移動させるヘッドレスト前部12bの移動量(作動量)をROMに記憶している。すなわち、ROMには、バックセットが所定値となるように予め定められた各角度に対応するヘッドレスト前部12bの移動量が記憶されている。なお、この移動量は、全閉位置11Aを基準(0)としたときのヘッドレスト前部12bの位置を示す情報でもある。ここで、図5(A)、図5(B)にその移動量の一例を示す。なお、図5(A)、図5(B)には、適切なセットバックの大きさ(所定値、目標値)を35mmとした場合におけるシートバック14の各角度に対応する移動量の一例が示されている。ここで、この移動量は、全閉位置11Aからのヘッドレスト前部12bの全開位置11Bの方向への移動量(全閉位置11Aを基準とした位置を示す情報)を示している。また、本実施の形態では、シートバック14が立ちすぎている場合(図6の例では、シートバック14の角度が20度未満の場合)や、シートバック14が寝すぎている場合(図6の例では、シートバック14の角度が28度より大きい場合)には、ヘッドレスト前部12bを所定値に保つ制御を行わないため、それらの各場合における移動量についてはROMには記憶していない。これにより、記憶手段としてのROMの資源を有効活用できる。
次に、「車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性がある領域」を示す情報について説明する。図7に示すように、ROMには、道路や駐車場などの車両が走行する場所のうち、頻繁に後突事故が発生する場所(例えば、単位時間(例えば1年)あたり所定数(例えば20件)の後突事故が発生する場所)の情報が予め記憶されている。なお、頻繁に後突事故が発生する場所を「車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性がある領域」と称する。また、図7の例では、このような領域を示す情報として、その領域の端点を示す三次元座標が各領域毎にROMに記憶されている。なお、このような情報は予め統計的に求めることができる。
また、このような領域として、例えば、道路上の一時停止線から所定範囲内の領域、道路上に設けられた信号の位置から所定範囲内の領域、踏切が存在する位置から所定範囲内の領域、及び予め定められたブラインドコーナーを含む所定範囲内の領域が考えられる。これらの領域では頻繁に後突事故が発生するからである。よって、これらの領域の少なくとも1つがROMに記憶されていることが好ましい。
CPUは、プログラムをROMから読み出して実行する。RAMには、各種データが一時的に記憶される。
I/Oポートには、GPS受信機16、ヘッドレスト位置検知センサ18、イグニッションスイッチ5、及び駆動機構2(より詳細には駆動機構2のモータ28a)が接続されている。なお、イグニッションスイッチ5は、ON(オン)の場合にはオンを示す信号を出力し、OFF(オフ)の場合にはオフを示す信号を出力する。
次にヘッドレスト制御ECU20のCPUが実行する第1のヘッドレスト移動制御処理の処理ルーチンについて、図8を参照して説明する。ここで、この第1のヘッドレスト移動制御処理は、図示しない電源からヘッドレスト制御ECU20に電力が供給され、イグニッションスイッチ5からの信号がオンを示す場合に所定時間間隔毎に実行される。なお、本第1のヘッドレスト移動制御処理の開始時では、ヘッドレスト前部12bの位置は、全閉位置11Aと全開位置11Bとの中間の位置に存在するものとする。
まず、ステップS100では、シートバック角度センサ17から検出信号を取り込み、シートバック14の角度を検出する。
次のステップS102では、ROMに記憶された「バックセットが所定値となるように予め定められた各角度に対応するヘッドレスト前部12bの全閉位置11Aを基準とした位置」の情報から、上記ステップS100で検出された角度に対応するヘッドレスト前部12bの位置を取得することにより、ヘッドレスト前部12bの位置を推定する。
次のステップS104では、GPS受信機16から検出信号を取り込み、車両(自車両)の位置を検出する。
次のステップS106では、ヘッドレスト前部12bの位置の移動を制御してバックセットの大きさが最適な値となるように制御を行うための条件が満たされているか否かを判定する。このような判定として、例えば、ステップS106では、シートバック角度センサ17からの検出信号を取り込んでシートバック14の角度を検出し、シートバック14の角度が第1の所定値(例えば20度)未満である場合には、シートバック14が立ちすぎており、上記制御を行う必要がないため、上記条件が満たされていないと判定し、また、シートバック14の角度が第1の所定値より大きい第2の所定値(例えば28度)より大きい場合についても、シートバック14が寝すぎており、上記制御を行う必要がないため、上記条件が満たされていないと判定するとともに、シートバック14の角度が上記第1の所定値以上かつ上記第2の所定値未満の場合には、上記条件が満たされていると判定する。
なお、この判定方法以外にもステップS106では様々な判定方法がある。例えば、ステップS106では、検出されたシートバック14の角度の時系列データに基づいて、単位時間あたりのシートバック14の角度の変化が第3の所定値β以上であることが検出できた場合には、シートバック14の角度が上記第1の所定値以上かつ上記第2の所定値未満の場合であっても、上記条件が満たされていないと判定するようにしてもよい。これは、乗員Aがシートバック14に勢いよく接触したり、あるいは後部座席の乗員が車両に乗り込もうとしてシートバック14を掴んだりすることによって、シートバック14の角度が上記第1の所定値以上かつ上記第2の所定値未満となってしまった場合には、本来は上記制御を行う必要がないからである。また、ステップS106で、検出されたシートバック14の角度の時系列データに基づいて、単位時間あたりのシートバック14の角度の変化が第3の所定値β未満であることが検出でき、かつシートバック14の角度が上記第1の所定値以上かつ上記第2の所定値未満の場合には、上記条件が満たされていると判定するようにしてもよい。
ステップS106で、上記条件を満たしていると判定された場合には、次のステップS108へ進む。一方、ステップS106で、上記条件を満たしていないと判定された場合には、本第1のヘッドレスト移動制御処理を終了する。
ステップS108では、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があるか否かを予測する。より具体的には、ステップS108では、上記ステップS104で検出された車両の位置が、ROMに記憶された「車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性がある領域」を示す情報によって示される領域内であるか否かを判定し、車両の位置が当該領域内である場合に、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があると予測し、車両の位置が当該領域外である場合に、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性がないと予測する。
ステップS108で、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性がないと予測された場合には、次のステップS110に進む。ステップS110では、ヘッドレスト前部12bの位置が、上記ステップS102で推定された位置となるように、ヘッドレスト前部12bの位置の移動を開始する。より具体的には、モータ28aを制御することにより、ヘッドレスト前部12bの位置が、上記ステップS102で推定された位置へくるように、ヘッドレスト前部12bの移動を開始させる。このときヘッドレスト前部12bの移動速度が第1の速度F(mm/s)となるようにモータ28aを制御する。そして、ステップS116へ進む。
一方、ステップS108で、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があると予測された場合には、次のステップS112に進む。ステップS112では、上記ステップ102で推定された位置よりもバックセットが小さくなる位置を推定する。次のステップS114では、ヘッドレスト前部12bの位置が、上記ステップS112で推定された位置となるように、ヘッドレスト前部12bの移動を開始する。より具体的には、モータ28aを制御することにより、ヘッドレスト前部12bの位置が、上記ステップS112で推定された位置へくるように、ヘッドレスト前部12bの移動を開始させる。このときヘッドレスト前部12bの移動速度が上記第1の速度F(mm/s)よりも速い速度である第2の速度F´(mm/s)となるようにモータ28aを制御する。そして、ステップS116へ進む。
ステップS116では、ヘッドレスト位置検知センサ18からの検出信号を取り込み、取り込んだ検出信号が示す位置が、上記ステップS102またはS112で推定したヘッドレスト前部12bの位置と一致したか否かを判定する。
ステップS116で、取り込んだ検出信号が示す位置が、上記ステップS102またはS112で推定したヘッドレスト前部12bの位置と一致したと判定された場合には次のステップS118へ進む。一方、ステップS116で、取り込んだ検出信号が示す位置が、上記ステップS102またはS112で推定したヘッドレスト前部12bの位置と一致していないと判定された場合には、一致していると判定されるまで繰り返し当該判定の処理を行う。
ステップS118では、ヘッドレスト前部12bの移動が停止されるようにモータ28aを制御する。これにより、ヘッドレスト前部12bの移動が停止し、バックセットの大きさが適切な大きさとなる。そして、本第1のヘッドレスト移動制御処理を終了する。
以上、本実施の形態のヘッドレスト装置10について説明した。本実施の形態のヘッドレスト装置10によれば、検出された車両の位置が、ROMに記憶された情報が示す領域内である場合には、車両の位置が当該領域外である場合におけるバックセットに比べてバックセットが小さくなるように、ヘッドレスト前部12bの位置の移動が制御される。また、ヘッドレスト装置10によれば、ステップS108で後続車両が後方から衝突する可能性がないと予測された場合には、ステップS100で検出された角度に基づいて、バックセットが所定値となるようにヘッドレスト前部12bの位置が制御され、また、ステップS108で後続車両が後方から衝突する可能性があると予測された場合には、バックセットが当該所定値より小さくなるように、かつヘッドレスト前部12bの移動が、ステップS108で後続車両が後方から衝突する可能性がないと予測された場合に移動される速度F(mm/s)に比べて速い速度F´(mm/s)で行われるように制御される。このように本実施の形態によれば、レーダーなどの後続車両を検出するための検出手段を用いずに、後突される可能性があるか否かを予測し、予測結果に応じてバックセットの大きさを適切にすることができる。
なお、ステップS108で、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があると予測された場合に、上記ステップS112で、上記ステップ102で推定された位置よりもバックセットが小さくなる位置として全開位置11Bを推定してもよい。また、ヘッドレスト前部12b内に圧力センサを設けておき、ステップS108で肯定判定された場合には、上記ステップS112での処理を省略して、上記ステップS114で全開位置11Bの方向へヘッドレスト前部12bの移動を開始して、S116でこの圧力センサが乗員Aの頭部に接触して、圧力センサから出力される信号が示す圧力が所定値以上となったか否かを判定し、肯定判定の場合(圧力が所定値以上となったと判定された場合)には、乗員の頭部に接触していると判定してステップS118へ進み、否定判定の場合は、肯定判定されるまで当該判定の処理を繰り返し行うようにしてもよい。
[第2の実施の形態]
次に第2の実施の形態のヘッドレスト装置11について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成及び処理については同一の符号を付して説明を省略する。
第1の実施の形態のヘッドレスト装置10と、第2の実施の形態のヘッドレスト装置11とで異なる点は、図9に示すように、第2の実施の形態のヘッドレス装置11は、路車間通信によって路側に設けられた路側機から情報を取得する路車間通信ユニット50を備えた点、及びヘッドレスト制御ECU20のROMには、詳細を以下で説明する第2のヘッドレスト移動制御処理の処理ルーチンを実行するためのプログラムが記憶されている点である。
路車間通信ユニット50は、路車間通信によって路側機から送信された情報を受信することにより、当該情報を取得し、取得した情報をヘッドレスト制御ECU20に出力する。なお、路側機が送信する情報が、「車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があることを示す情報」である場合がある。例えば、路側機が位置する周辺(所定範囲内)の車両の進行方向前方に存在する信号機が車両を停止させるための停止信号(日本では赤信号と称される)を示している場合には、路側機は、「車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があることを示す情報」として、車両の進行方向前方に存在する信号機が車両を停止させるための停止信号を示していることを示す情報を送信する。また、路側機が位置する周辺の車両の進行方向前方で渋滞が発生している場合には、路側機は、「車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があることを示す情報」として、車両の進行方向前方で渋滞が発生していることを示す情報を送信する。なお、路側機は、これら2つの情報のうち、少なくとも1つの情報を送信してもよい。
次にヘッドレスト制御ECU20のCPUが実行する第2のヘッドレスト移動制御処理の処理ルーチンについて、図10を参照して説明する。ここで、この第2のヘッドレスト移動制御処理は、図示しない電源からヘッドレスト制御ECU20に電力が供給され、イグニッションスイッチ5からの信号がオンを示す場合に所定時間間隔毎に実行される。なお、本第2のヘッドレスト移動制御処理の開始時では、ヘッドレスト前部12bの位置は、全閉位置11Aと全開位置11Bとの中間の位置に存在するものとする。
まず、ステップS100では、第1の実施の形態と同様に、シートバック角度センサ17から検出信号を取り込み、シートバック14の角度を検出する。次のステップS102では、第1の実施の形態と同様に、ROMに記憶された「バックセットが所定値となるように予め定められた各角度に対応するヘッドレスト前部12bの全閉位置11Aを基準とした位置」の情報から、上記ステップS100で検出された角度に対応するヘッドレスト前部12bの位置を取得することにより、ヘッドレスト前部12bの位置を推定する。
次のステップS200では、路車間通信ユニット50の状態を監視して、路車間通信ユニット50が路側機から情報を取得したか否かを判定する。ステップS200で路車間通信ユニット50が路側機から情報を取得したと判定された場合には、次のステップS202へ進む。一方、ステップS200で路車間通信ユニット50が路側機から情報を取得していないと判定された場合には、次のステップS106へ進む。
ステップS202では、路車間通信ユニット50によって取得された情報を、路車間通信ユニット50から取得する。なお、ステップS202は、取得手段の一部分を構成する。
次のステップS106では、第1の実施の形態と同様に、ヘッドレスト前部12bの位置の移動を制御してバックセットの大きさが最適な値となるように制御を行うための条件が満たされているか否かを判定する。
ステップS106で、上記条件を満たしていると判定された場合には、次のステップS204へ進む。一方、ステップS106で、上記条件を満たしていないと判定された場合には、本第2のヘッドレスト移動制御処理を終了する。
ステップS204では、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があるか否かを予測する。より具体的には、ステップS204では、上記ステップS202で取得された情報が、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があることを示す情報である場合に、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があると予測し、上記ステップS200で否定判定された場合、及び上記ステップS202で取得された情報が、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があることを示す情報でない場合に、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性がないと予測する。
ステップS204で、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性がないと予測された場合には、次のステップS110に進み、以降の処理については第1の実施の形態と同様に行う。一方、ステップS204で、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があると予測された場合には、次のステップS112に進み、以降の処理については第1の実施の形態と同様に行う。
以上、本実施の形態のヘッドレスト装置11について説明した。本実施の形態のヘッドレスト装置11によれば、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があることを示す情報を取得した場合(上記ステップS202で取得された情報が、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があることを示す情報である場合)には、後突される可能性があると予測し、当該情報が取得されない場合における乗員Aの頭部とヘッドレスト前部との水平方向の距離であるバックセットに比べてバックセットが小さくなるようにヘッドレスト前部の位置の移動が制御される。また、本実施の形態のヘッドレスト装置11によれば、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があることを示す情報が取得されない場合(上記ステップS202で取得された情報が、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があることを示す情報でない場合、及び上記ステップS200で否定判定された場合)には、後突される可能性がないと予測して、検出された角度に基づいてバックセットが所定値となるようにヘッドレスト前部12bの位置が制御される。また、本実施の形態のヘッドレスト装置11によれば、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があることを示す情報が取得された場合(上記ステップS202で取得された情報が、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があることを示す情報である場合)には、後突される可能性があると予測して、バックセットが当該所定値より小さくなるように、かつヘッドレスト前部の移動が、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があることを示す情報が取得されない場合に移動される速度F(mm/s)に比べて早い速度F´(mm/s)で行われるようにヘッドレスト前部12bの位置の移動が制御される。
このように本実施の形態によれば、レーダーなどの後続車両を検出するための検出手段を用いずに、後突される可能性があるかを予測し、予測結果に応じてバックセットの大きさを適切にすることができる。
なお、ステップS204で、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があると予測された場合に、上記ステップS112で、上記ステップ102で推定された位置よりもバックセットが小さくなる位置として全開位置11Bを推定してもよい。また、ヘッドレスト前部12b内に圧力センサを設けておき、ステップS204で肯定判定された場合には、上記ステップS112での処理を省略して、上記ステップS114で全開位置11Bの方向へヘッドレスト前部12bの移動を開始して、S116でこの圧力センサが乗員Aの頭部に接触して、圧力センサから出力される信号が示す圧力が所定値以上となったか否かを判定し、肯定判定の場合(圧力が所定値以上となったと判定された場合)には、乗員の頭部に接触していると判定してステップS118へ進み、否定判定の場合は、肯定判定されるまで当該判定の処理を繰り返し行うようにしてもよい。
[第3の実施の形態]
次に第3の実施の形態のヘッドレスト装置15について説明する。なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様の構成及び処理については同一の符号を付して説明を省略する。
第1の実施の形態のヘッドレスト装置10と、第3の実施の形態のヘッドレスト装置15で異なる点は、図11に示すように、第3の実施の形態のヘッドレス装置15は、車車間通信によって周辺車両から情報を取得する車車間通信ユニット51を備えた点、車両の速度を検出する車速検出手段としての車速センサ52を備えた点、及びヘッドレスト制御ECU20のROMには、詳細を以下で説明する第3のヘッドレスト移動制御処理の処理ルーチンを実行するためのプログラムが記憶されている点である。
車速センサ52は、車両の速度を検出し、検出した速度を示す検出信号をヘッドレスト制御ECU20に出力する。
車車間通信ユニット51は、車車間通信によって周辺車両へ情報を送信することができる。また、車車間通信ユニット51は、車車間通信によって周辺車両から送信された情報を受信することにより、当該情報を取得し、取得した情報をヘッドレスト制御ECU20に出力する。なお、車車間通信ユニット51は、取得した情報を送信した周辺車両が存在する方向を特定することができ、例えば、取得した情報が自車両に対する後続の車両である後続車両から送信されたものである場合には、当該情報が後続車両から送信されたことを特定することができる。また、本実施の形態では、車車間通信によって送信される情報には、当該情報を送信する車両の位置を示す情報及び当該車両の速度を示す情報が含まれる。
次にヘッドレスト制御ECU20のCPUが実行する第3のヘッドレスト移動制御処理の処理ルーチンについて、図12を参照して説明する。ここで、この第3のヘッドレスト移動制御処理は、図示しない電源からヘッドレスト制御ECU20に電力が供給され、イグニッションスイッチ5からの信号がオンを示す場合に所定時間間隔毎に実行される。なお、本第3のヘッドレスト移動制御処理の開始時では、ヘッドレスト前部12bの位置は、全閉位置11Aと全開位置11Bとの中間の位置に存在するものとする。
まず、ステップS100では、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様に、シートバック角度センサ17から検出信号を取り込み、シートバック14の角度を検出する。次のステップS102では、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様に、ROMに記憶された「バックセットが所定値となるように予め定められた各角度に対応するヘッドレスト前部12bの全閉位置11Aを基準とした位置」の情報から、上記ステップS100で検出された角度に対応するヘッドレスト前部12bの位置を取得することにより、ヘッドレスト前部12bの位置を推定する。
次のステップS104では、第1の実施の形態と同様に、GPS受信機16から検出信号を取り込み、車両(自車両)の位置を検出する。
次のステップS300では、車速センサ50からの検出信号を取り込むことにより、当該検出信号が示す車両の速度を検出する。これにより、ステップS300では、車両の速度が検出される。
次のステップS302では、車車間通信ユニット51の状態を監視して、車車間通信ユニット51が後続車両から情報を取得したか否かを判定する。ステップS302で車車間通信ユニット51が後続車両から情報を取得したと判定された場合には、次のステップS304へ進む。一方、ステップS302で車車間通信ユニット51が後続車両から情報を取得していないと判定された場合には、次のステップS106へ進む。
ステップS304では、車車間通信ユニット51によって取得された後続車両からの情報を、車車間通信ユニット51から取得する。なお、ステップS304は、取得手段の一部分を構成する。
次のステップS106では、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様に、ヘッドレスト前部12bの位置の移動を制御してバックセットの大きさが最適な値となるように制御を行うための条件が満たされているか否かを判定する。
ステップS106で、上記条件を満たしていると判定された場合には、次のステップS306へ進む。一方、ステップS106で、上記条件を満たしていないと判定された場合には、本第3のヘッドレスト移動制御処理を終了する。
ステップS306では、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があるか否かを予測する。
ステップS306での具体的な処理について以下説明する。上記ステップS302で否定判定された場合(ステップS302でN)には、車両に対して後続車両から後方から衝突する可能性がないと予測する。また、上記ステップS302で肯定判定された場合(ステップS302でY)には、以下の処理を行って、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があるか否かを予測する。まず、上記ステップS104で検出された車両の位置及び上記ステップS304で取得された情報が示す後続車両の位置に基づいて車両(自車両)と後続車両との距離を定める。そして、定められた距離が所定距離(例えば20m)以下であり、かつ上記ステップ300で検出された車両の速度が、上記ステップ304で取得された情報が示す後続車両の速度より遅い場合には、車両に対して後続車両から後方から衝突する可能性があると予測する。一方、定められた距離が上記所定距離より大きいか、または、上記ステップ300で検出された車両の速度が、上記ステップ304で取得された情報が示す後続車両の速度以上である場合には、車両に対して後続車両から後方から衝突する可能性がないと予測する。
ステップS306で、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性がないと予測された場合には、次のステップS110に進み、以降の処理については第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様に行う。一方、ステップS306で、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があると予測された場合には、次のステップS112に進み、以降の処理については第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様に行う。
以上、本実施の形態のヘッドレスト装置15について説明した。本実施の形態のヘッドレスト装置15によれば、車両と後続車両との距離が所定距離以下であり、かつ上記ステップS300で検出された車両の速度が後続車両の速度より遅い場合には、後突される可能性があると予測し、当該距離が所定距離より大きいか、または上記ステップS300で検出された車両の速度が後続車両の速度以上である場合における乗員の頭部とヘッドレスト前部12bとの水平方向の距離であるバックセットに比べてバックセットが小さくなるようにヘッドレスト前部12bの位置の移動が制御される。また、本実施の形態のヘッドレスト装置15によれば、車両と後続車両との距離が所定距離より大きいか、または上記ステップS300で検出された車両の速度が後続車両の速度以上である場合には、後突される可能性がないと予測して、上記ステップS100で検出された角度に基づいてバックセットが所定値となるようにヘッドレスト前部12bの位置が制御される。また、本実施の形態のヘッドレスト装置15によれば、車両と後続車両との距離が当該所定距離以下であり、かつ上記ステップS300で検出された車両の速度が後続車両の速度より遅い場合には、後突される可能性があると予測して、バックセットが当該所定値より小さくなるように、かつヘッドレスト前部12bの移動が、車両と後続車両との距離が所定距離より大きいかまたは車両の速度が後続車両の速度以上である場合に移動される速度F(mm/s)に比べて早い速度F´(mm/s)で行われるようにヘッドレスト前部12bの位置の移動が制御される。
このように本実施の形態によれば、レーダーなどの後続車両を検出するための検出手段を用いずに、後突される可能性があるかを予測し、予測結果に応じてバックセットの大きさを適切にすることができる。
なお、ステップS306で、車両に対して後続車両が後方から衝突する可能性があると予測された場合に、上記ステップS112で、上記ステップ102で推定された位置よりもバックセットが小さくなる位置として全開位置11Bを推定してもよい。また、ヘッドレスト前部12b内に圧力センサを設けておき、ステップS306で肯定判定された場合には、上記ステップS112での処理を省略して、上記ステップS114で全開位置11Bの方向へヘッドレスト前部12bの移動を開始して、S116でこの圧力センサが乗員Aの頭部に接触して、圧力センサから出力される信号が示す圧力が所定値以上となったか否かを判定し、肯定判定の場合(圧力が所定値以上となったと判定された場合)には、乗員の頭部に接触していると判定してステップS118へ進み、否定判定の場合は、肯定判定されるまで当該判定の処理を繰り返し行うようにしてもよい。
また、各実施の形態では、適切なバックセットの大きさ(所定値)として35mmの例を挙げて説明したが、適切なバックセットの大きさはこれに限られない。例えば、32mm、37mmなど様々な値が考えられる。
また、各実施の形態では、鉛直方向に対するシートバック14の角度や鉛直方向に対する車両の床面の角度を検出する例について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば所定方向(例えば水平方向)に対するシートバック14の角度や車両の床面の角度を検出するようにしてもよい。
また、GPS受信機16、シートバック角度センサ17、ヘッドレスト位置検知センサ18、ヘッドレスト制御ECU20、路車間通信ユニット50、車車間通信ユニット51、車速センサ52の各々の配置位置は図示した位置に限られない。