JP2014053147A - 絶縁電線及びそれを用いたコイル - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、導体と絶縁層との密着性が高く、長時間にわたる熱によっても十分な密着性を保持することが可能で、かつ表面に粒等の発生のない絶縁層を有する絶縁電線、及びその絶縁電線を用いたコイルを提供する。
【解決手段】絶縁電線を、導体と、前記導体の外周に密着して形成された、ベース樹脂及び前記ベース樹脂に添加された下記式(1)で表されるウレトジオン結合を有するとともに、分子量Mnが7000以上である密着剤を含有した密着層と、前記密着層の外周に形成された絶縁層と、から構成する。
【化1】
Figure 2014053147

【選択図】なし

Description

本発明は、絶縁電線及びそれを用いたコイルに関する。さらに詳しくは、モータ等の電気機器に用いられる絶縁電線及びそれを用いたコイルに関する。
モータ等の電気機器に用いられる絶縁電線としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のベース樹脂を有機溶剤に溶解させた絶縁塗料を導体の外周に塗布して焼付けすることによって、単層又は複数層の絶縁層が設けられたものがある。
近年、モータ等の電気機器では、小型化、高効率化等の要求が年々高まってきている。この要求に応えるため、モータのコアに、より多くの絶縁電線を巻き付ける加工や、コアのスロット内に絶縁電線を直接挿入する加工がなされている。
しかし、多くの絶縁電線を巻き付けたり、直接挿入したりする程に、絶縁電線に加わる加工ストレスが大きくなる。このように、加工ストレスが大きくなると、導体の外周に形成された絶縁層に損傷が発生しやすくなり、結果として、絶縁層が導体から剥がれてしまう恐れがある。そのため、モータ等の電気機器に使用される絶縁電線には、加工工程の際に加わる絶縁層への加工ストレスが大きくなっても、絶縁層が導体から剥がれ難いことが求められている。
このような要求に対して、例えば、絶縁塗料中に密着性を向上させる密着剤を添加して、絶縁層を導体から剥がれ難くさせることで、加工ストレスに対する耐性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。なお、このような密着性を向上させる密着剤としては、例えば、メルカプタン類、チアゾール類、メラミン類、シアノ化合物類、フェニレンジアミン類等が知られている。
特開2001−11312号公報 特開2007−246595号公報 特開2007−106823号公報
モータ等の電気機器においては、小型化・高効率化のために、電圧を昇圧させて使用する傾向にある。このため、コイルを構成する絶縁電線には、従来よりも大きい電流が流れることになり、絶縁電線は、この大電流化によって多くの熱が発生する環境下で使用されることになる。また、絶縁電線の占積率を向上させるために、絶縁電線をより密に配線することが検討されているが、占積率を向上させると発生した熱が逃げ難い、つまり放熱性が悪くなってしまうことがある。特に、このような環境下においては、高温の熱が長時間にわたって絶縁層に加わることになる。そのため、絶縁層には、長時間の熱が加わった場合でも十分な密着性が必要となる。
しかしながら、絶縁塗料中に密着性を向上させる密着剤を添加して、絶縁層を導体から剥がれ難くさせる従来の方法では、熱が加わる前の密着性は向上するものの、上述したような使用環境下おいては、長時間にわたる熱の影響で、導体に対する絶縁層の密着性が極端に低下してしまい、導体から絶縁層が剥離してしまうことがあった。また、密着性を向上させる成分を添加した絶縁塗料を用いて絶縁層を形成した場合、絶縁層の表面に粒等が発生してしまうことがあった。このような層剥離や粒等が生じると、絶縁性能を十分に発揮することできず、絶縁破壊に至ってしまう。
そこで、本発明は、導体と絶縁層との密着性が高く、長時間にわたる熱によっても十分な密着性を保持することが可能で、かつ表面に粒等の発生のない絶縁層を有する絶縁電線、及びその絶縁電線を用いたコイルを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下の絶縁電線及びそれを用いたコイルが提供される。
[1]導体と、前記導体の外周に密着して形成された、ベース樹脂及び前記ベース樹脂に添加された下記式(1)で表されるウレトジオン結合を有するとともに、分子量Mnが7000以上である密着剤を含有した密着層と、前記密着層の外周に形成された絶縁層と、を備えた絶縁電線。
Figure 2014053147
[2]前記密着剤は、前記ベース樹脂100質量部に対し、3〜50質量部の割合で添加されている前記[1]に記載の絶縁電線。
[3]前記ベース樹脂は、ポリアミドイミド、ポリイミド又はポリエステルイミドである前記[1]又は[2]に記載の絶縁電線。
[4]前記密着層は、前記導体に、前記ベース樹脂及び前記密着剤を含有した絶縁塗料を塗布、焼付することによって得られた前記[1]〜[3]のいずれかに記載の絶縁電線。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の絶縁電線を用いたコイル。
本発明によれば、導体と絶縁層との密着性が高く、長時間にわたる熱によっても十分な密着性を保持することが可能で、かつ表面に粒等の発生のない絶縁層を有する絶縁電線、及びその絶縁電線を用いたコイルを提供するが提供される。
[実施の形態の要約]
本実施の形態の絶縁電線は、導体と、絶縁層とを備えた絶縁電線において、前記導体の外周に密着して形成された、ベース樹脂及び前記ベース樹脂に添加された上記式(1)で表されるウレトジオン結合を有するとともに、分子量Mnが7000以上である密着剤を含有した密着層をさらに備えたことにより、熱が加わる前の密着性が向上するとともに、長時間にわたって熱(例えば、150℃以上の熱)が加わった場合でも、導体に対する密着性が低下し難いため、導体から絶縁層が剥離してしまうことを防止することができる。
[実施の形態]
以下、本発明の絶縁電線及びそれを用いたコイルの実施の形態について、具体的に説明する。
[絶縁電線]
本実施の形態に係る絶縁電線は、導体と、導体の外周に密着して形成された、ベース樹脂及びベース樹脂に添加された上記式(1)で表されるウレトジオン結合を有するとともに、分子量Mnが7000以上である密着剤を含有した密着層と、密着層の外周に形成された絶縁層と、を備えて構成されている。
(密着層)
本実施の形態において密着層は、ベース樹脂及びベース樹脂に添加された上記式(1)で表されるウレトジオン結合を有するとともに、分子量Mnが7000以上である密着剤を含有する。
密着層を構成するベース樹脂としては、例えば、ポリアミドイミド、ポリイミド又はポリエステルイミドを好適に用いることができる。密着層は、これらのベース樹脂に後述する密着剤を添加したものを有機溶剤に溶解させることによって調製した絶縁塗料を、導体に塗布し、焼き付けすることによって得ることができる。
ベース樹脂に用いるポリイミドとしては、芳香族テトラカルボン酸二無水物からなる酸成分と芳香族ジアミンからなるジアミン成分とで得られるポリイミドを挙げることができる。また、ベース樹脂に用いるポリアミドイミドとしては、芳香族ジイソシアネート等のイソシアネート成分とトリカルボン酸無水物等の酸成分とで得られるポリアミドイミド、又は芳香族ジアミン等のジアミン成分とトリカルボン酸無水物等の酸成分と芳香族ジイソシアネート等のイソシアネート成分とで得られるポリアミドイミド等を挙げることができる。また、ベース樹脂に用いるポリエステルイミドとしては、ジアミン成分とトリカルボン酸無水物等の酸成分とアルコール成分とで得られるポリエステルイミドを挙げることができる。
ジアミン成分としては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DAM)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−DPE)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS−M)、2,5−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル(P−TPE−Q)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)等の芳香族ジアミンを挙げることができる。
イソシアネート成分としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートを挙げることができる。
アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール(EG)、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,6−シクロヘキサンジメタノール等の2価アルコール、グリセリン(G)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコール、イソシアヌレート環を有するアルコール等が挙げられる。イソシアヌレート環を有するアルコールとしては、トリス(ヒドロキシメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)、トリス(3−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
酸成分としては、例えば、トリメリット酸無水物(TMA)、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物等のトリカルボン酸無水物、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(BPDA)等の芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
密着層を構成する密着剤としては、上記式(1)で表されるウレトジオン結合を有するとともに、分子量Mnが7000以上であるものからなる(ポリスチレン換算)。分子量Mnが7000未満であると、絶縁層が形成され難くなり、絶縁層が形成されない部分が粒等の原因となる恐れが高くなる。なお、本発明における分子量Mnは、ゲル浸透クロマトグラフ分析(GPC)装置によって求められる。ウレトジオン結合を有する密着剤としては、例えば、イソシアネートとトリメリット酸無水物とを、トリメリット酸無水物の配合モル量よりも過剰な配合モル量でイソシアネートを合成反応させて得られるもの等が挙げられるが、ウレトジオン結合を有するものであれば特に制限はない。なお、イソシアネートとトリメリット酸無水物とを反応させて得られるポリアミドイミド系の密着剤に関して、分子量を調整する際には、イソシアネートとトリメリット酸無水物とを反応させる時間を調整することで所望の分子量とすることができる。
この密着剤は、ベース樹脂100質量部に対し、3〜50質量部の割合で添加されていることが好ましい。なお、添加量が上述の範囲を外れる場合(3質量部未満又は50質量部を超える場合)、3〜50質量部の範囲内の場合よりも密着性が低くなることがある。
ウレトジオン結合は、熱によって容易にイソシアネートに分解される。本実施の形態では、ウレトジオン結合を有する密着剤を添加することによって、絶縁塗料を塗布、焼付する際の熱でウレトジオン結合をイソシアネート基に分解させる。イソシアネート基は極性が高いため、導体との密着性が発現すると考えられる。
ベース樹脂を溶解させる有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)やγ−ブチロラクトン、N、N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンを挙げることができる。ベース樹脂を溶解させるものであれば特に制限はない。また、希釈用途として、芳香族アルキルベンゼン類等を併用してもよい。ただし、ベース樹脂の溶解性を低下させる恐れがある場合は考慮する必要がある。
特に、導体と絶縁層との接着力(密着力)や、密着層及び絶縁層の機械的強度等の低下を防止することを考慮すると、この密着層の厚さは、3μm以上であることが好ましい。特性に弊害を生じることがなければ、ウレトジオン結合を有するとともに、分子量Mnが7000以上である密着剤をベース樹脂に添加した塗料のみで絶縁層を形成してもよい。
本実施の形態における密着層は、後述する導体に、上述の絶縁塗料を塗布、焼付することによって得ることができる。
(導体)
本実施の形態に用いられる導体としては、例えば、低酸素銅や無酸素銅等からなる銅線、銅合金線の他、アルミニウム、銀等の他の金属線等を挙げることができる。また、導体の断面形状は、特に制限はないが、円形状、四角形状(4隅が湾曲したものも含む)からなる断面形状を有するものを用いることができる。
(絶縁層)
本実施の形態に用いられる絶縁層としては、例えば、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステルイミド、H種ポリエステル樹脂等の樹脂からなるものを挙げることができる。この絶縁層は、シリカやアルミナ等の無機材料を分散させた耐部分放電性の皮膜であってもよく、また、低誘電率化によって部分放電開始電圧を向上させた層であってもよい。さらに、絶縁層の上に、表面の潤滑性の改善等を目的とした潤滑層を形成してもよい。
[コイル]
本実施の形態のコイルは、上述の絶縁電線を用いて構成される。上述の絶縁電線を用いたコイルとしては、特に制限はなく、汎用の方法によって製造することができる。
以下に、本発明の絶縁電線を、実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって、いかなる制限を受けるものではない。
(実施例1)
ベース樹脂として、ポリアミドイミドを用いた塗料(日立化成工業社製、商品名:HI−406、不揮発分:30%)1000gに、イソシアネートとトリメリット酸無水物とを、イソシアネートの配合モル量を過剰にして合成反応させることで得られたウレトジオン結合を含む密着剤(不揮発分:30%、分子量Mn:15000)を30g(ベース樹脂100質量部に対して、3質量部の割合)添加し、攪拌することで絶縁塗料を得た。
次いで、外径が0.8mmの銅の導体上に、上記絶縁塗料を塗布、焼付し、厚さが3μmの密着層を形成した。その後、密着層上に、上述のポリアミドイミドをベース樹脂とした塗料(HI−406)の塗布、焼付を繰返し、厚さが32μmの絶縁層を形成し、密着層及び絶縁層の合計皮膜厚(合計層厚)35μmの絶縁電線を得た。
(実施例2)
ベース樹脂として、ポリアミドイミドを用いた塗料(日立化成工業社製、商品名:HI−406、不揮発分:30%)1000gに、イソシアネートとトリメリット酸無水物とを、イソシアネートの配合モル量を過剰にして合成反応させることで得られたウレトジオン結合を含む密着剤(不揮発分:30%、分子量Mn:7000)を100g(ベース樹脂100質量部に対して、10質量部の割合)添加し、攪拌することで絶縁塗料を得た。
次いで、外径が0.8mmの銅の導体上に、上記絶縁塗料を塗布、焼付し、厚さが3μmの密着層を形成した。その後、密着層上に、上述のポリアミドイミドをベース樹脂とした塗料(HI−406)の塗布、焼付を繰返し、厚さが32μmの絶縁層を形成し、密着層及び絶縁層の合計皮膜厚35μmの絶縁電線を得た。
(実施例3)
ベース樹脂として、ポリアミドイミドを用いた塗料(日立化成工業社製、商品名:HI−406、不揮発分:30%)1000gに、イソシアネートとトリメリット酸無水物とを、イソシアネートの配合モル量を過剰にして合成反応させることで得られたウレトジオン結合を含む密着剤(不揮発分:30%、分子量Mn:40000)を500g(ベース樹脂100質量部に対して、50質量部の割合)添加し、攪拌することで絶縁塗料を得た。
次いで、外径が0.8mmの銅の導体上に、上記絶縁塗料を塗布、焼付し、厚さが3μmの密着層を形成した。その後、密着層上に、上述のポリアミドイミドをベース樹脂とした塗料(HI−406)の塗布、焼付を繰返し、厚さが32μmの絶縁層を形成し、密着層及び絶縁層の合計皮膜厚35μmの絶縁電線を得た。
(実施例4)
ベース樹脂として、ポリイミドを用いた塗料(東レ社製、商品名:トレニース#3000、不揮発分:18%)1000gに、イソシアネートとトリメリット酸無水物とを、イソシアネートの配合モル量を過剰にして合成反応させることで得られたウレトジオン結合を含む密着剤(不揮発分:30%、分子量Mn:9000)を、200g(ベース樹脂100質量部に対して、20質量部の割合)添加し、攪拌することで絶縁塗料を得た。
次いで、外径が0.8mmの上述の導体上に、上記絶縁塗料を塗布、焼付し、厚さが3μmの密着層を形成した。その後、上述のポリイミド塗料(トレニース#3000)を塗布、焼付を繰返し、厚さが32μmの絶縁層を形成し、密着層及び絶縁層の合計皮膜厚35μmの絶縁電線を得た。
(実施例5)
実施例5において、ポリイミドを用いた塗料に変えて、ポリエステルイミドを用いた塗料(大日精化工業社製、商品名:EH−402、不揮発分:40%)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、密着層及び絶縁層の合計皮膜厚35μmの絶縁電線を得た。
(実施例6〜8)
実施例1において、ウレトジオン結合を有するとともに、分子量Mnが7000以上である(実施例1においては分子量Mn:15000)密着剤の添加量を、10、550及び700g(ベース樹脂100gに対して、1、55及び70質量部の割合)で添加したこと以外は、実施例1と同様にして、密着層及び絶縁層の合計皮膜厚35μmの絶縁電線を得た。
(比較例1)
ベース樹脂として、ポリアミドイミドを用いた塗料(日立化成工業社製、商品名:HI−406、不揮発分:30%)1000gに、イソシアネートとトリメリット酸無水物とを、イソシアネートの配合モル量を過剰にして合成反応させることで得られたウレトジオン結合を含む密着剤(不揮発分:30%、分子量Mn:6000)を100g(ベース樹脂100質量部に対して、10質量部の割合)添加し、攪拌することで絶縁塗料を得た。
次いで、外径が0.8mmの銅の導体上に、上記絶縁塗料を塗布、焼付し、厚さが3μmの密着層を形成した。その後、密着層上に、上述のポリアミドイミドをベース樹脂とした塗料(HI−406)の塗布、焼付を繰返し、厚さが32μmの絶縁層を形成し、密着層及び絶縁層の合計皮膜厚35μmの絶縁電線を得た。
表1に、実施例1〜8及び比較例1で用いたベース樹脂の種類、密着剤の添加量及び分子量Mn、並びに合計皮膜厚を示すとともに、実施例1〜8及び比較例1で得られた絶縁電線について、以下の評価試験を行った結果をまとめて示す。
Figure 2014053147
(ピール試験)
初期のピール試験は、以下のように行った。すなわち、各絶縁電線から得た直線状のサンプルを同軸上の250mm離れた2つのクランプに固定し、サンプルの長さ方向に平行な2辺の皮膜を導体に達するまで取り除いた。その後、一方のクランプを回転させ、導体から皮膜が浮いた時点の回転回数(回数:360°を1回とする)を測定した。熱劣化後のピール試験は、PAI、PI系のベース樹脂からなる密着層を有する絶縁電線が180℃、EI系のベース樹脂からなる密着層を有する絶縁電線が160℃の温度で、96hr熱劣化させた後、初期のピール試験と同様の方法によって試験を行った。
(一方向摩耗試験)
初期の一方向摩耗試験は、JIS C 3216−3 摩耗性に準拠して試験を行った。熱劣化後の一方向摩耗試験は、熱劣化後のピール試験と同様の方法によって熱劣化させた後、初期の一方向摩耗試験と同様の方法によって試験を行った。
(粒の有無)
粒の有無は、絶縁電線を製造する工程中において、導体の周囲に絶縁層を形成した後、外径凹凸検出器(タキカワエンジニアリング社製)によって絶縁電線の表面の状態を観察することにより、300m当たりの個数として測定した。
表1に示す通り、本発明の上記式(1)で表されるウレトジオン結合を有するとともに、分子量Mnが7000以上である密着剤を添加した絶縁塗料を、導体に塗布、焼付して形成した密着層を備えた実施例1〜8では、導体との密着性が高く、長時間の熱によっても十分な密着性を有する絶縁電線を得られることが分かる。特に、密着剤の添加量が3〜50phrである実施例1〜5では、実施例6〜8と比較してピール残率が高く、長時間にわたる熱によっても密着性が低下し難い(すなわち、十分な密着性を保持することができる)絶縁電線であることが分かる。
一方、比較例1では、長時間の熱に対して十分な密着性を有する絶縁電線が得られなかったことが分かる。

Claims (5)

  1. 導体と、
    前記導体の外周に密着して形成された、ベース樹脂及び前記ベース樹脂に添加された下記式(1)で表されるウレトジオン結合を有するとともに、分子量Mnが7000以上である密着剤を含有した密着層と、
    Figure 2014053147
    前記密着層の外周に形成された絶縁層と、を備えた絶縁電線。
  2. 前記密着剤は、前記ベース樹脂100質量部に対し、3〜50質量部の割合で添加されている請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記ベース樹脂は、ポリアミドイミド、ポリイミド又はポリエステルイミドである請求項1又は2に記載の絶縁電線。
  4. 前記密着層は、前記導体に、前記ベース樹脂及び前記密着剤を含有した絶縁塗料を塗布、焼付することによって得られた請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁電線。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁電線を用いたコイル。
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