JP2014051584A - 樹脂組成物及び樹脂成形体及び樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

樹脂組成物及び樹脂成形体及び樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリ乳酸樹脂と、ポリカーボネート樹脂と、硫黄分含有オイルと、を含むが、前記硫黄分含有オイルの含有量が、樹脂組成物の全量を100質量部としたときに、1質量部以上5質量部以下でない場合に比べ、成形体にしたとき、曲げ強度に優れた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂と、ポリカーボネート樹脂と、硫黄分含有オイルとを含み、前記硫黄分含有オイルが、前記樹脂組成物の全量を100質量部としたときに、1質量部以上5質量部以下で含有される。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物及び樹脂成形体に関する。
近年、環境保護の観点から、電気・電子機器用、家電製品用の樹脂成形体の樹脂材料として環境負荷の小さい生分解性樹脂を配合することが検討されている。なかでも、石油を一切使用せずに穀物などから製造できるポリ乳酸が注目されている。
ポリ乳酸の機械的強度及び耐熱性を向上させる手段として、ポリ乳酸に、例えば、ポリスチレン、ポリスチレン−ABS樹脂共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリアセタール等の石油系汎用樹脂とを混合させる方法がよく知られている。
ポリ乳酸と石油系汎用樹脂とを混合することで、機械的強度及び耐熱性が補われた混合樹脂組成物が得られる。一方で、ポリ乳酸と混合される石油系汎用樹脂の組合せに基づく樹脂同士の相溶性等を改善する検討がなされている。
例えば、引用文献1には、特定の繰り返し構成単位を有するポリカーボネート共重合体とポリエステル樹脂とを予め定められた割合で組み合わされた熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
また、例えば、引用文献2には、脂肪族ポリエステルと、該脂肪族ポリエステルのガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する第2の高分子化合物と、シリコーンオイルとを含む樹脂組成物が開示されている。
国際公開第2009/037974号パンフレット 特開2009−235193号公報
本発明の課題は、ポリ乳酸樹脂と、ポリカーボネート樹脂と、硫黄分含有オイルと、を含むが、前記硫黄分含有オイルの含有量が、樹脂組成物の全量を100質量部としたときに、1質量部以上5質量部以下でない場合に比べ、成形体にしたとき、曲げ強度に優れた樹脂組成物を提供することにある。
本発明の樹脂組成物及び樹脂成形体は、以下の特徴を有する。
(1)ポリ乳酸樹脂と、ポリカーボネート樹脂と、硫黄分含有オイルと、を含み、前記硫黄分含有オイルの含有量が、樹脂組成物の全量を100質量部としたときに、1質量部以上5質量部以下である樹脂組成物である。
(2)前記ポリカーボネート樹脂と前記硫黄分含有オイルの含有量比が、10:1から25:1である、上記(1)に記載の樹脂組成物である。
(3)前記硫黄分含有オイルの動粘度が、40℃温度条件下で50mm2/s以下である、上記(1)または(2)に記載の樹脂組成物である。
(4)上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体である。
(5)少なくともポリ乳酸樹脂とポリカーボネート樹脂と硫黄分含有オイルとを溶融混練する工程を有する樹脂組成物の製造方法である。
(6)少なくともポリ乳酸樹脂とポリカーボネート樹脂とを溶融混練してプレ樹脂組成物を生成する工程と、前記プレ樹脂組成物の表面から硫黄分含有オイルを浸透させる工程と、を有する樹脂組成物の製造方法である。
(7)前記ポリカーボネート樹脂と前記硫黄分含有オイルの含有量比が、10:1から25:1である、上記(5)または(6)に記載の樹脂組成物の製造方法である。
(8)前記硫黄分含有オイルの動粘度が、40℃温度条件下で50mm2/s以下である、上記(5)から(7)のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法である。
請求項1に記載の発明によれば、ポリ乳酸樹脂と、ポリカーボネート樹脂と、硫黄分含有オイルと、を含むが、前記硫黄分含有オイルの含有量が、樹脂組成物の全量を100質量部としたときに、1質量部以上5質量部以下でない場合に比べ、成形体にしたときに、曲げ強度に優れる。
請求項2に記載の発明によれば、前記ポリカーボネート樹脂と前記硫黄分含有オイルの含有量比が、10:1から25:1でない場合に比べ、成形体にしたときに、さらに耐オイル性が向上する。
請求項3に記載の発明によれば、前記硫黄分含有オイルの動粘度が、40℃温度条件下で50mm2/s以下でない場合に比べ、成形体にしたときに、より曲げ強度が向上する。
請求項4に記載の発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、曲げ強度に優れる。
請求項5に記載の発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、得られた樹脂組成物を成形体にしたときに、曲げ強度に優れた樹脂成形体が得られる。
請求項6に記載の発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、得られた樹脂組成物を成形体にしたときに、曲げ強度に優れた樹脂成形体が得られる。
請求項7に記載の発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、得られた樹脂組成物を成形体にしたときに、さらに耐オイル性が向上した樹脂成形体が得られる。
請求項8に記載の発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、得られた樹脂組成物を成形体にしたときに、曲げ強度がより向上した樹脂成形体が得られる。
以下、本発明における樹脂組成物および樹脂成形体の実施の形態を説明する。なお、本実施形態は本発明を実施するための一例であり、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
[樹脂組成物]
本実施の形態における樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂と、ポリカーボネート樹脂と、硫黄分含有オイルとを含み、前記硫黄分含有オイルが、該樹脂組成物の全量を100質量部としたときに、1質量部以上5質量部以下で含有されている。
ここで、本実施の形態の樹脂組成物において、高い曲げ強度が実現される理由は定かではないが、以下の通りに推察される。例えば、本実施の形態の樹脂組成物を成形体としたときに、得られた樹脂成形体の一方面を伸長するように樹脂成形体に曲げの外力を加えると、樹脂成形体の一方面の表層に存在するポリ乳酸樹脂及びポリカーボネート樹脂のそれぞれポリマー鎖が伸長することになる。このとき、樹脂成形体の少なくとも表層におけるポリ乳酸樹脂とポリカーボネート樹脂とのポリマーマトリクスの隙間に、硫黄分含有オイルが存在すると、ポリ乳酸樹脂及びポリカーボネート樹脂の各々のポリマー鎖の分子間凝集力が低下し(つまり、ポリマー鎖の伸長が潤滑になり)、さらに、硫黄分含有オイルに含まれる『硫黄分』が、樹脂成形物におけるポリ乳酸樹脂及びポリカーボネート樹脂のポリマー間に作用することで、樹脂成形体の曲げ応力が増大し、樹脂成形体に強度が付与されると考えられる。
また、少なくとも樹脂成形体の表層に、硫黄分含有オイルが特定の量で存在すると、樹脂成形体の表面の親油性が高められるので、外部から樹脂成形体に同種のオイルまたは他種のオイルが付着しても、硫黄分含有オイルが存在しない場合に比べ、樹脂成形体へのオイル浸透が抑制され(いわゆる、バリア効果)、オイル浸透に起因する樹脂成形体の割れの発生が抑制されると考えられる。
以下、本実施の形態における樹脂組成物の構成成分について、詳細に説明する。
<ポリ乳酸樹脂>
ポリ乳酸樹脂は、植物由来であり、環境負荷の低減、具体的にはCO2の排出量削減、石油使用量の削減効果がある。ポリ乳酸樹脂としては、乳酸の縮合体であれば、特に限定されるものではなく、ポリ−L−乳酸樹脂(以下「PLLA」ともいう)であっても、ポリ−D−乳酸樹脂(以下「PDLA」ともいう)であっても、それらが共重合やブレンドにより交じり合ったものでもよく、さらに、ポリ−L−乳酸樹脂とポリ−D−乳酸樹脂とを混合したものであり、これらのらせん構造がうまく噛み合った耐熱性の高い、ステレオコンプレックス型ポリ乳酸樹脂(以下「SC−PLA」ともいう)であってもよい。また、ポリ乳酸樹脂は、合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ユニチカ(株)製の「テラマックTE4000」、「テラマックTE2000」、「テラマックTE7000」、三井化学(株)製の「レイシアH100」、ネイチャーワークス社製の「Ingeo3001D」等が挙げられる。また、ポリ乳酸樹脂は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。なお、本実施形態において、ポリ乳酸樹脂は樹脂組成物の主成分として含まれてもよい。ここで「主成分」とは、樹脂組成物全量に対して50質量%を超えることを意味する。
また、ポリ乳酸樹脂の分子量は、特に限定されるものではないが、本実施の形態では、ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量は、例えば、8,000以上、200,000以下であり、15,000以上、120,000以下が好ましい。ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量が8,000以上、200,000以下の場合、難燃性の低下が抑制される。
樹脂組成物中におけるポリ乳酸樹脂の重量平均分子量は、樹脂組成物を重水素化クロロホルムに0.1質量%の濃度で溶解させ、ゲルパーミッションクロマトグラフにて、分離されたポリ乳酸について測定する。また、測定には、ゲルパーミッションクロマトグラフィー装置(島津製作所製Prominence GPC型)を用い、測定カラムにはShim−pack GPC−80Mが用いられる。また、本明細書に記載のものは該方法によって測定された数値である。
なお、樹脂成形体におけるポリ乳酸樹脂の重量平均分子量は、表面から測定用試料を削り取り、測定用試料を重水素化クロロホルムに0.1質量%の濃度で溶解させ、上記同様に測定する。
本実施の形態におけるポリ乳酸樹脂の含有量は、樹脂組成物全量に対して5質量%以上95質量%以下であることが好ましく、また、樹脂組成物全量に対して25質量%以上75質量%以下であることがより好ましい。ポリ乳酸樹脂が、樹脂組成物全量に対して5質量%以上95質量%以下であると、成型品の外観を損なう不具合が抑制される。
<ポリカーボネート樹脂>
本実施の形態に用いるポリカーボネート樹脂としては、1つまたは複数のモノマーの重縮合で得られ、少なくとも一つのカーボネート基を有するポリマーであればよく、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネート、ビスフェノールS型ポリカーボネート、ビフェニル型ポリカーボネート等の芳香族ポリカーボネートが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、特に制限されないが、本実施形態では、好ましくは5,000以上100,000以下、より好ましくは10,000以上50,000以下である。ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量が5,000以上100,000以下であると、機械的強度の低下が抑制され、また、流動性が良く成形性に優れる。
なお、樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、樹脂組成物を重水素化クロロホルムに0.1質量%の濃度で溶解させ、ゲルパーミッションクロマトグラフにて、溶液から分離されたポリカーボネートについて測定する。また、測定には、ゲルパーミッションクロマトグラフィー装置(島津製作所製Prominence GPC型)を用い、測定カラムにはShim−pack GPC−80Mが用いられる。また、本明細書に記載のものは該方法によって測定された数値である。
なお、樹脂成形体におけるポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、表面から測定用試料を削り取り、測定用試料を重水素化クロロホルムに0.1質量%の濃度で溶解させ、上記同様に測定する。
ポリカーボネート樹脂の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは10質量%以上90質量%以下、より好ましくは50質量%以上80質量%以下である。ポリカーボネート樹脂の含有量が10質量%以上90質量%以下であると樹脂組成物を成形体としたときに耐熱性の低下が抑制され、また、樹脂成形体の耐オイル性の低下が抑制される。
一方で、樹脂組成物中の前記ポリカーボネート樹脂の含有量と、前記硫黄分含有オイルの含有量の比は、10:1から25:1の範囲にあることが好ましく、10:1から20:1の範囲にあることがより好ましい。ポリカーボネート樹脂と硫黄分含有オイルの含有量比が上述の範囲の間にあることで、樹脂組成物を成形体としたときに、樹脂成形体の耐オイル性が向上する。
本実施の形態の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂と、ポリカーボネート樹脂以外に、その他高分子化合物の樹脂が含まれていてもよい。前記高分子化合物としては、例えば、芳香族ポリエステル系高分子化合物、ポリアリレート系高分子化合物、アクリル系高分子化合物、ABS系高分子化合物、ポリスチレン系高分子化合物、ポリウレタン系高分子化合物などがあげられる。
芳香族ポリエステル系高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びそれらの共重合体が挙げられる。ポリアリレート系高分子化合物としては、例えば、ビスフェノールA/テレフタル酸型ポリアリレート、ビスフェノールS/テレフタル酸型ポリアリレート、ビフェニル/テレフタル酸型ポリアリレート、ビスフェノールA/ナフタレンジカルボン酸型ポリアリレート及びそれらの共重合体などが挙げられる。アクリル系高分子化合物としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート及びそれらの共重合体などが挙げられる。ABS系高分子化合物としては、例えば、アクリロニトリル(A),ブタジエン(B),スチレン(S)の各成分比が様々なABS樹脂が挙げられる。ポリアミド系高分子化合物としては、6−ナイロン、6,6−ナイロン及びそれらの共重合体などが挙げられる。ポリスチレン系高分子化合物としては、例えば、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂などが挙げられる。また、ポリウレタン系高分子化合物としては、例えば、トリイソシアネートポリウレタン、テトライソシアネートポリウレタンなどが挙げられる。
前記高分子化合物は1種、または、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記高分子化合物の重量平均分子量は、流動性の観点から5,000以上100,000以下が好ましい。
<硫黄分含有オイル>
本発明に用いる硫黄分含有オイルとしては、硫黄を含むオイルであればよく、特に制限はないが、例えば、リンと硫黄を含むリン・硫黄系オイル、塩素と硫黄を含む塩素・硫黄系オイル等が挙げられる。硫黄分含有オイルの市販品としては、具体的には、スギムラ工業化学社製の「サンプレスS−274」、同「サンプレスS−283」、同「サンプレスS−284」、同「サンプレスS−304」、同「サンプレスS−384」、同「サンプレスS−474」、同「サンプレスS−478」、同「サンプレスS−575」、昭和シェル社製「シェルアレキシヤオイル50」、同「シェルアーギヤSオイル」等が挙げられる。硫黄分含有オイルにおける硫黄分の含有量は、例えば、0.1質量%以上10質量%以下程度である。
硫黄分含有オイルの含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは1質量%以上5質量%以下、より好ましくは2質量%以上4質量%以下である。
硫黄分含有オイルの含有量が1質量%より小さいと、機械強度及び弾性率の向上、耐オイル性の向上効果が得られない場合があり、一方、硫黄分含有オイルの含有量が5質量%より大きいと、樹脂組成物の機械強度が低下する傾向にある。
また、前記硫黄分含有オイルの動粘度は、40℃温度条件下で50mm2/s以下である方が好ましく、40℃温度条件下で20mm2/s以下である方がより好ましい。硫黄分含有オイルの粘度が50mm2/sより大きいと、イオン分含有オイルの流動性が低下することで、樹脂組成物の成形性が低下するため、樹脂組成物を成形体としたときに、樹脂成形体の機械強度及び弾性率が低下する場合がある。
ここで、硫黄分含有オイルの動粘度は、ISO 3104、ASTM D445、JIS K−2283およびJIS Z−8803に則り測定され、40℃の恒温槽中で、毛細管動粘度計を用いて測定する。
<その他成分>
本実施の形態における樹脂組成物は、その他、加水分解防止剤、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、充填剤やその他添加剤を含有してもよい。
加水分解防止剤としては、例えば、カルボジイミド化合物、オキソゾリン系化合物が挙げられる。カルボジイミド化合物としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ナフチルカルボジイミド等が挙げられる。オキサゾリン系化合物としては、例えば、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、または2,2’−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等が挙げられる。これらの加水分解防止剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、アミン系、リン系、イオウ系、ヒドロキノン系、キノリン系酸化防止剤等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、ポリアミド、ポリ−β−アラニン共重合体、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、メラミン、シアノグアニジン、メラミン−ホルムアルデヒド縮合体等の塩基性窒素含有化合物等の窒素含有化合物;有機カルボン酸金属塩(ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム等)、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム等)、金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等)、金属炭酸塩等のアルカリまたはアルカリ土類金属含有化合物;ゼオライト;ハイドロタルサイト等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリチレート系、シュウ酸アニリド系等が挙げられる。
難燃剤としては、シリコーン系難燃剤、窒素系難燃剤、無機水酸化物系難燃剤等が挙げられる。その他難燃剤は1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。難燃剤としては、合成したものを用いてもよいし市販品を用いてもよい。リン系難燃剤の市販品としては、大八化学製の「PX−200」、「X−202」、ブーテンハイム製の「TERRAJU C80」、クラリアント製の「EXOLIT AP422」、「EXOLIT OP930」等が挙げられる。シリコーン系難燃剤の市販品としては、東レダウシリコーン製の「DC4−7081」等が挙げられる。窒素系難燃剤の市販品としては、三和ケミカル製の「アピノン901」、下関三井化学製の「ピロリンサンメラミン」、ADEKA製の「FP2100」等が挙げられる。無機水酸化物系難燃剤の市販品としては、堺化学工業製「MGZ300」、日本軽金属製「B103ST」等が挙げられる。
また、充填剤としては、例えば、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土などのクレイ、タルク、マイカ、モンモリナイト等、メラミン含有粒子、フォスフェート粒子、酸化チタン等が挙げられる。その他充填剤は1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
<樹脂組成物の製法>
本実施の形態における樹脂組成物の製造方法は、例えば、少なくともポリ乳酸樹脂とポリカーボネート樹脂と硫黄分含有オイルとを溶融混練する工程を有する。さらに、必要に応じて、上記難燃剤、上記加水分解防止剤、及びその他の添加剤をそれぞれ予め定められた量にて添加して溶融混練してもよい。
前記溶融混練は、例えば、2軸混練装置(東芝機械製、TEM58SS)、簡易ニーダー(東洋精機製、ラボプラストミル)等の公知の混練装置を用いて行う。ここで、溶融混練の温度条件(シリンダ温度条件)としては、ポリ乳酸樹脂の分解温度未満であることが好ましく、180℃以上、260℃以下が好ましく、190℃以上、230℃以下がより好ましい。
また、本実施の形態における他の樹脂組成物の製造方法は、例えば、少なくともポリ乳酸樹脂とポリカーボネート樹脂とを溶融混練してプレ樹脂組成物を生成する工程と、前記プレ樹脂組成物の表面から硫黄分含有オイルを浸透させる工程と、を有する。さらに、必要に応じて、上記難燃剤、上記加水分解防止剤、及びその他の添加剤をそれぞれ予め定められた量にて添加して溶融混練してもよい。
前記溶融混練は、上述同様、例えば、2軸混練装置(東芝機械製、TEM58SS)、簡易ニーダー(東洋精機製、ラボプラストミル)等の公知の混練装置を用いて行う。ここで、溶融混練の温度条件(シリンダ温度条件)としては、ポリ乳酸樹脂の分解温度未満であることが好ましく、180℃以上、260℃以下が好ましく、190℃以上、230℃以下がより好ましい。
また、硫黄分含有オイルを浸透させる工程では、前記プレ樹脂組成物の表面に硫黄分含有オイルを塗布することで浸透させてもよく、また、前記プレ樹脂組成物の板状体やペレット等の小片を予め定められた時間で硫黄分含有オイルに浸漬してもよい。
例えば、本実施の形態における他の樹脂組成物の製造方法において、プレ樹脂組成物の表面から硫黄分含有オイルを浸透させることで、得られた樹脂組成部物の表層部分に、相対的に多くの硫黄分含有オイルが存在することになり、この樹脂組成物をそのまま成形して樹脂成形体を製造した場合、曲げ応力が相対的に大きくかかる樹脂成形体の表層部分に硫黄分含有オイルが相対的に多く存在することになり、その結果、樹脂成形体の表層部分のポリ乳酸樹脂及びポリカーボネート樹脂の各々のポリマー鎖の分子間凝集力が低下し(つまり、ポリマー鎖の伸長が潤滑になり)、樹脂成形体の弾性率が向上すると考えられる。また、硫黄分含有オイルに含まれる『硫黄分』が、樹脂成形物におけるポリ乳酸樹脂及びポリカーボネート樹脂のポリマー間に作用することで、樹脂成形体に弾性率が付与されると考えられる。
また、上記いずれの樹脂組成物の製造方法においても、上述同様、前記ポリカーボネート樹脂と前記硫黄分含有オイルの含有量比が、10:1から25:1であることが好ましく、10:1から20:1の範囲にあることがより好ましい。ポリカーボネート樹脂と硫黄分含有オイルの含有量比が上述の範囲の間にあることで、得られた樹脂組成物を成形体としたときに、樹脂成形体の耐オイル性が向上する。
また、前記硫黄分含有オイルの動粘度が、40℃温度条件下で50mm2/s以下であることが好ましく、40℃温度条件下で20mm2/s以下である方がより好ましい。硫黄分含有オイルの粘度が50mm2/s以下であると、イオン分含有オイルの流動性の低下が抑制されることで、得られる樹脂組成物の成形性の低下が抑制されるため、樹脂組成物を成形体としたときに、樹脂成形体の機械強度及び弾性率の低下が抑制される。
[成形体]
本実施の形態における成形体は、上述した本実施の形態における樹脂組成物を成形することにより得られる。例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形などの成形方法により成形して、本実施形態に係る成形体が得られる。本実施形態においては、成形体における成分の分散性の理由から、本実施形態の樹脂組成物を射出成形して得られたものであることが好ましい。
前記射出成形は、例えば、日精樹脂工業製「NEX150」、日精樹脂工業製「NEX70000」、東芝機械製「SE50D」等の市販の装置を用いて行う。この際、シリンダ温度(すなわち、射出温度)としては、ポリ乳酸樹脂の分解抑制などの観点から、180℃以上、280℃以下とすることが好ましく、190℃以上、230℃以下とすることがより好ましい。また、金型温度としては、生産性の観点から、30℃以上、120℃以下とすることが好ましく、30℃以上、80℃以下とすることがより好ましい。
<樹脂成形体の製法>
本実施の形態の樹脂成形体の製法は、少なくともポリ乳酸樹脂と、ポリカーボネート樹脂と、硫黄分含有オイルと、を含む樹脂組成物であって、前記硫黄分含有オイルの含有量が、前記樹脂組成物の全量を100質量部としたときに、1質量部以上5質量部以下である樹脂組成物を、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形などの成形方法により成形して、本実施形態における樹脂成形体を得る方法である。
本実施の形態の他の樹脂成形体の製法は、少なくともポリ乳酸樹脂とポリカーボネート樹脂とを溶融混練して得られたプレ樹脂成形体を、上述同様、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形などの成形方法により成形し、得られたプレ樹脂成形体の表面から、上記硫黄分含有オイルを浸透させて、本実施の形態における他の樹脂成形体を得る方法である。
例えば、本実施の形態の他の樹脂成形体の製法において、プレ樹脂成形体の表面から硫黄分含有オイルを浸透させることで、得られた樹脂成形体の表層部分に、相対的に多くの硫黄分含有オイルが存在することになり、樹脂成形体の表面の曲げ応力が相対的に大きくかかる樹脂成形体の表層部分に硫黄分含有オイルが相対的に多く存在し、上述したように、樹脂成形体の弾性率が向上すると考えられる。
<電子・電気機器の部品>
前述の本実施の形態における成形体は、例えば、機械的強度(耐衝撃性)、耐湿熱性及び難燃性などに優れたものになり得るため、電子・電気機器、家電製品、容器、自動車内装材などの用途に好適に用いられる。より具体的には、家電製品や電子・電気機器などの筐体、各種部品など、ラッピングフィルム、CD−ROMやDVDなどの収納ケース、食器類、食品トレイ、飲料ボトル、薬品ラップ材などであり、中でも、電子・電気機器の部品に好適である。電子・電気機器の部品は、複雑な形状を有しているものが多く、また重量物であるので高い耐衝撃強度及び面衝撃強度が要求されるが、本実施形態の樹脂成形体によれば、このような要求特性が十分満足される。
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。なお、特に断りのない限り、「部」はすべて「質量部」を意味する。
<樹脂組成物の作製>
表1に示す組成に従って、ポリ乳酸樹脂「テラマックTE−4000」(ユニチカ社製、重量平均分子量60,000)と、ポリカーボネート樹脂「カリバーS−200」(住友化学社製、重量平均分子量22,000)と、表1に示すオイルと、難燃剤「PX−200」(大八化学工業株式会社製、縮合リン酸エステル)と、加水分解防止剤「カルボジライトLA−1」(日清紡ケミカル株式会社製、カルボジイミド化合物)をミキサーにてドライブレンドを行った。次いで、2軸混練装置(東芝機械社株式会社製:TEM58SS)を使用してトップフィーダからブレンド樹脂を供給し、加工温度220℃で混練して実施例1から実施例14及び比較例1から比較例7の樹脂組成物を得た。
<実施例15の樹脂組成物の作製>
表1に示す実施例1の組成から「オイル」を除き、ドライブレンドを行い、上記樹脂組成物の作製に準じて、ブレンド樹脂を溶融混練して、プレ樹脂組成物を得た。得られたプレ樹脂組成物の表面に、表1の実施例1に示すオイルを表1に示す組成に従って塗布して、実施例15の樹脂組成物を得た。
<樹脂成形体の作製>
上記実施例1から実施例15及び比較例1から比較例7の樹脂組成物をそれぞれ、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、製品名「NEX150」)を用いてシリンダ温度220℃、金型温度40℃で射出成形し、ISO多目的ダンベル試験片(ISO178曲げ試験に対応した試験片であり、試験片の試験部厚さ4mm、幅10mm)を、それぞれ作製した。
Figure 2014051584
なお、表1に示される各オイルの詳細は、以下の通りである。
硫黄分含有オイル:「S−304」(スギムラ化学工業社製、商品名サンプレス、リン・硫黄系オイル)。
硫黄分含有オイル:「S−284」(スギムラ化学工業社製、商品名サンプレス、硫黄系オイル)。
硫黄分含有オイル:「S−384」(スギムラ化学工業社製、商品名サンプレス、硫黄系オイル)。
硫黄分含有オイル:「S−474」(スギムラ化学工業社製、商品名サンプレス、リン・硫黄系オイル)。
硫黄分含有オイル:「S−478」(スギムラ化学工業社製、商品名サンプレス、リン・硫黄系オイル)。
硫黄分含有オイル:「S−575」(スギムラ化学工業社製、商品名サンプレス、リン・硫黄系オイル)。
アミノ変性シリコーンオイル:「KF−8009」(信越化学工業社製)。
リン系オイル:「テラス68」(昭和シェル社製、商品名シェルテラスS2V68)。
<測定・評価>
得られた試験片を用いて、下記各測定・評価を行った。表2に結果を示す。
(曲げ強度及び曲げ弾性率評価)
ISO178曲げ試験に従って、曲げ試験機(島津製作所社製;万能試験機オートグラフAG−IS)に試験片を置き、荷重速度2mm/minの条件で曲げ強度及び曲げ弾性率の測定を実施した。なお、曲げ弾性率は、単位断面積当りの曲げ応力と応力方向に生じるひずみとの比で表され、数値が大きいほど、応力歪みが小さい樹脂成形体であることを意味する。
(耐オイル性評価)
ASTM規格D790に準拠した曲げ試験法(ベントストリップ法)を適用した。一定歪み量を与えた状態で固定可能な試験治具を用い、前記ダンベル試験片に曲げ歪み1.5%(曲率半径131.3mm)となるよう歪みストレスを与えて固定した状態の試験片中央部に耐オイル性評価用試験オイル「S−304」(スギムラ化学工業社製、商品名サンプレス)1gをできるだけ均一に広がるよう塗布した。
試験条件は、以下の通りである。
・試験片:ISO多目的ダンベル試験片(厚さ4mm)
・オイル塗布範囲:試験片中央部 長さ40mm×幅10mm
・サンプル数:4個
試験オイル塗布後、25℃/55%温湿度環境下で放置し、オイル塗布からの経過時間と表面観察による割れの発生状態から、耐オイル性を以下の評価指標に基づいて判断した。但し、割れ発生有無が判別し難い場合は拡大鏡等で観察を行なった。
−耐オイル性評価指標−
G0:オイル付着から500時間経過後も試験片表面に割れの発生なし。
G1:オイル付着から200時間経過までに表面に割れの発生した試験片はないが、200〜500時間経過までに表面に割れの発生した試験片が1本または2本あり。
G2:オイル付着から12時間経過までに表面に割れの発生した試験片はないが、200時間経過までに表面に割れの発生した試験片が1本以上あり。
G3:オイル付着から12時間経過までに4本すべて試験片表面に割れの発生あり。
Figure 2014051584
上記結果から、実施例では、比較例に比べ、成形体にしたときに曲げ強度に優れることがわかる。
また、ポリカーボネート樹脂と硫黄分含有オイルの含有量比が10:1から25:1の範囲内である実施例2、3、6、8〜15は、範囲外である実施例1、4、5,7に比べて、耐オイル性に優れていることがわかる。
また、硫黄分含有オイルの動粘度が、40℃温度条件下で50mm2/s以下である実施例1〜12、15は、黄分含有オイルの動粘度が、40℃温度条件下で50mm2/s以下ではない実施例13、14に比べて、より曲げ強度に優れており、曲げ弾性率もより優れていることがわかる。
本発明の活用例として、電子・電気機器、家電製品、容器、自動車内装材などの樹脂成形体への適用がある。

Claims (8)

  1. ポリ乳酸樹脂と、ポリカーボネート樹脂と、硫黄分含有オイルと、を含み、
    前記硫黄分含有オイルの含有量が、樹脂組成物の全量を100質量部としたときに、1質量部以上5質量部以下であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記ポリカーボネート樹脂と前記硫黄分含有オイルの含有量比が、10:1から25:1であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記硫黄分含有オイルの動粘度が、40℃温度条件下で50mm2/s以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体。
  5. 少なくともポリ乳酸樹脂とポリカーボネート樹脂と硫黄分含有オイルとを溶融混練する工程を有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
  6. 少なくともポリ乳酸樹脂とポリカーボネート樹脂とを溶融混練してプレ樹脂組成物を生成する工程と、
    前記プレ樹脂組成物の表面から硫黄分含有オイルを浸透させる工程と、
    を有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
  7. 前記ポリカーボネート樹脂と前記硫黄分含有オイルの含有量比が、10:1から25:1であることを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の樹脂組成物の製造方法。
  8. 前記硫黄分含有オイルの動粘度が、40℃温度条件下で50mm2/s以下であることを特徴とする、請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
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