以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるわけではない。
本実施形態の光学フィルムの製造方法は、樹脂溶液(ドープ)を用い、溶液流延製膜法によって光学フィルムを製造する方法である。まず、本実施形態で用いるドープについて説明する。
〔ドープについて〕
本実施形態で使用するドープは、透明性樹脂を溶媒に溶解させたものである。透明性樹脂としては、セルロースアセテート樹脂を用いる。
<セルロースアセテート>
本実施形態で用いられるセルロースアセテートは、安価で製造可能であり、位相差発現性が高く、高い位相差を有する位相差フィルムとする場合であっても薄膜化可能であること、高い位相差を発現させても延伸倍率を低く抑えることができ、破断等の故障を回避できる観点から、アセチル基の置換度が2.0〜2.6であるセルロースアセテートであることが好ましい。
セルロースアセテートのアセチル基の置換度が2.0を下回る場合には、ドープ粘度の上昇によるフィルム面品質の劣化、延伸張力の上昇によるヘイズアップなどが発生することがある。また、アセチル基の置換度が2.6より大きい場合は、必要な位相差が得られ難い。アセチル基の置換度の測定方法は、ASTM(American Society for Testing and Materials;米国試験材料協会)が策定・発行する規格の一つであるD−817−91に準じて実施することができる。より好ましいアセチル基の置換度は、2.2〜2.45である。
セルロースアセテートの数平均分子量(Mn)は、30000〜300000の範囲であることが、得られるフィルムの機械的強度が強い観点から好ましく、更に50000〜200000のものが好ましく用いられる。
セルロースアセテートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnは、1.4〜3.0であることが好ましい。
セルロースアセテートの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
セルロースアセテートの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができ、それらから得られたセルロースアセテートをそれぞれ任意の割合で混合して使用することもできる。
本実施形態のセルロースアセテートは、公知の方法により製造することができる。具体的には、特開平10−45804号公報、特開2009−161701号公報などに記載の方法を参考にして合成することができる。また、市販品としては、ダイセル社L20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60S等を用いることができる。
本実施形態におけるドープは、上述したようなセルロースアセテート樹脂を主成分とするが、それに加えて以下の組成を含んでいてもよい。
<糖エステル化合物>
本実施形態における光学フィルム(ドープ)は、下記一般式(1)で表されるような化合物(以下、糖エステル化合物とも称す)を含んでいてもよい。
一般式(1)で表される化合物の平均置換度は3.0〜6.0であることが好ましい。ここで、一般式(1)で表される化合物の置換度とは、一般式(1)に含まれる8つの水酸基のうち、水素以外の置換基で置換されている数を表し、すなわち、一般式(1)のR1〜R8のうち、水素以外の基を含む数を表す。したがって、R1〜R8がすべて水素以外の置換基により置換された場合には、置換度は最大値の8.0となり、R1〜R8がすべて水素原子である場合には、置換度は0.0となる。
本実施形態においては、一般式(1)で表される化合物の平均置換度が、3.0〜6.0である必要がある。一般式(1)で表される構造を有する化合物は、水酸基の数、OR基の数が固定された単一種の化合物を合成することは困難であり、式中の水酸基の数、OR基の異なる成分が数種類混合された化合物となることが知られているため、一般式(1)の置換度としては、平均置換度を用いることが適当である。常法により高速液体クロマトグラフィによって置換度分布を示すチャートの面積比から平均置換度を測定することができる。
一般式(1)において、R1〜R8は、置換または無置換のアルキルカルボニル基、あるいは、置換または無置換のアリールカルボニル基を表し、R1〜R8は、同じであっても、異なっていてもよい。
本実施形態に係る糖エステル化合物の合成原料の糖の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストース挙げられる。この他、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
本実施形態に係る糖エステル化合物の合成時に用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし2種以上の混合であってもよい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環に1〜5個のアルキル基もしくはアルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
本実施形態に係る糖エステル化合物の具体例の一部を以下に示す。これらはR1〜R8をすべて同じ置換基Rとした場合であるが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
本実施形態に係る糖エステル化合物は、糖エステルにアシル化剤を反応させることによって製造することが可能である。アシル化剤は、エステル化剤とも呼ばれ、例えばアセチルクロライドの酸ハロゲン化物、無水酢酸等の無水物で構成される。置換度の分布は、アシル化剤の量、添加タイミング、エステル化反応時間の調節によって形成されるが、置換度違いの糖エステル化合物の混合、あるいは純粋に単離した置換度違いの化合物の混合により、目的の平均置換度を得たり、置換度4以下の成分を調整することができる。
(糖エステル化合物の合成例)
撹拌装置、還流冷却器、温度計および窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸180.8g(0.8モル)、ピリジン379.7g(4.8モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×102Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエン1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを添加し、50℃で30分間撹拌後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×102Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、化合物A−1、A−2、A−3、A−4およびA−5の混合物を得た。
得られた混合物をHPLCおよびLC−MASSで解析したところ、A−1が1.2質量%、A−2が13.2質量%、A−3が14.2質量%、A−4が35質量%、A−5が40.0質量%であった。平均置換度は5.2であった。
同様に、無水安息香酸158.2g(0.7モル)、146.9g(0.65モル)、135.6g(0.6モル)、124.3g(0.55モル)と当モルのピリジンとを反応させて、表1記載のような成分の糖エステルを得た。
ついで、得られた混合物の一部を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%のA−1、A−2、A−3、A−4およびA−5等を得た。
なお、A−5等とは、置換度4以下のすべての成分、つまり置換度4、3、2、1の化合物の混合物であることを意味する。また、平均置換度は、A−5等を置換度4として計算した。
本実施形態では、所望の平均置換度に近い糖エステルおよび単離したA−1〜A−5等を組み合わせて添加することにより、平均置換度を調整した。
(HPLC−MSの測定条件)
1)LC部
装置:日本分光(株)製カラムオーブン(JASCO CO−965)、ディテクター(JASCO UV−970−240nm)、ポンプ(JASCO PU−980)、デガッサ−(JASCO DG−980−50)
カラム:Inertsil ODS−3 粒子径5μm 4.6×250mm(ジーエルサイエンス(株)製)
カラム温度:40℃
流速:1ml/min
移動相:THF(1%酢酸):H2O(50:50)
注入量:3μl
2)MS部
装置:LCQ DECA(Thermo Quest(株)製)
イオン化法:エレクトロスプレーイオン化(ESI)法
Spray Voltage:5kV
Capillary温度:180℃
Vaporizer温度:450℃
本実施形態の光学フィルムに添加される、一般式(1)で示される化合物の平均置換度は4.5〜6.0であることが好ましく、当該置換度の分布範囲は4.0〜8.0であることが好ましい。更に置換度が8.0である成分の含有質量比率が2%以下であることが好ましい。
置換度の分布は、エステル化反応時間の調節によって形成されるが、置換度違いの化合物を混合することにより目的の平均置換度に調整してもよい。
本実施形態の光学フィルムは、上記糖エステル化合物を、エステルフィルム中に1〜20質量%、特に3〜15質量%含むことが好ましい。この範囲内であれば、本実施形態の優れた効果を奏するとともに、原反保管中におけるブリードアウトなどもなく、好ましい。
<一般式(2)で表されるエステル化合物>
さらに、本実施形態に係る光学フィルムを形成するドープには、特に偏光板の環境変化でのリタデーション安定性の観点から、下記一般式(2)で表されるエステル化合物を含有させてもよい。
一般式(2) B−(G−A)n−G−B
ただし、式中、Bはヒドロキシ基またはカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表す。nは1以上の整数を表す。
一般式(2)において、炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースアセテートとの相溶性に優れているため、特に好ましい。
炭素数6〜12のアリールグリコール成分としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
また、炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種または2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等がある。
以下に、本実施形態に用いられる一般式(2)で表されるエステル化合物の具体的化合物を示すが、本発明はこれらに限定されない。
<その他の添加剤>
(可塑剤)
本実施形態において、光学フィルムは、本発明の効果を得る上で必要に応じて一般式(
2)で表される化合物以外に可塑剤を含有してもよい。
可塑剤は特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤および多価アルコールエステル系可塑剤、エステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。
そのうち、可塑剤を2種以上用いる場合は、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本実施形態で好ましく用いられる多価アルコールは、次の一般式(a)で表される。
一般式(a) R11−(OH)n
ただし、R11はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、および/またはフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。
特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると、透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させると、セルロースアセテートとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基あるいはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースアセテートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は3価〜20価であることが好ましい。
多価カルボン酸は次の一般式(b)で表される。
一般式(b) R12(COOH)m1(OH)n1
式中、R12は(m1+n1)価の有機基、m1は2以上の正の整数、n1は0以上の整数、COOH基はカルボキシル基、OH基はアルコール性またはフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価カルボン酸の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸またはその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などを好ましく用いることができる。特にオキシ多価カルボン酸を用いることが、保留性向上などの点で好ましい。
本実施形態に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては、特に制限はなく、公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。
例えば炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪族飽和アルコールまたは脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
また、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコールまたはその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールまたはその誘導体なども好ましく用いることができる。
多価カルボン酸としてオキシ多価カルボン酸を用いる場合は、オキシ多価カルボン酸のアルコール性またはフェノール性の水酸基を、モノカルボン酸を用いてエステル化してもよい。好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に酢酸、プロピオン酸、安息香酸であることが好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースアセテートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
本実施形態の多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。
本実施形態の多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることが更に好ましい。酸価を上記範囲にすることによって、リタデーションの環境変動も抑制されるため、好ましい。
なお、酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS(Japanese Industrial Standards Committee;日本工業標準調査会)の規格の一つである、JIS K0070に準拠して測定したものである。
特に好ましい多価カルボン酸エステル化合物の例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が挙げられる。
(紫外線吸収剤)
本実施形態の光学フィルムは、紫外線吸収剤を含有することもできる。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
本実施形態に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等がある。また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類がある。これらはいずれもBASFジャパン社製の市販品であり、好ましく使用できる。
本実施形態で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、である。この他、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
本実施形態に係わる偏光板保護フィルムは紫外線吸収剤を2種以上含有することが好ましい。また、紫外線吸収剤としては、高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号公報に記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアセテート中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、偏光板保護フィルムの乾燥膜厚が30〜200μm程度の場合は、偏光板保護フィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれ、例えば、フィルム中の残留溶媒のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有する。このため、本実施形態の光学フィルムは酸化防止剤を含有することが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、セルロースアシレートに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
(微粒子〉
本実施形態の光学フィルムには、取扱性を向上させる為、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などの微粒子を含有させることが好ましい。中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さくできるので好ましい。
微粒子の1次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
これらの微粒子は0.1〜5μmの粒径の2次粒子を形成して光学フィルムに含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1〜2μmであり、更に好ましくは0.1〜0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることができる。
本実施形態に用いられる微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値をもって、1次平均粒子径とした。
微粒子の見掛比重としては、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましく、また、固形分濃度の高いドープを調製する際には、特に好ましく用いられる。
1次粒子の平均径が20nm以下、見掛比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることができる。また、例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上、日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されているものを上記の微粒子として使用することもできる。
上記記載の見掛比重は、二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、このときの重さを測定し、下記式で算出したものである。
見掛比重(g/リットル)=二酸化珪素質量(g)/二酸化珪素の容積(リットル)
本実施形態で用いられる微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば以下に示すような3種類が挙げられる。
《調製方法A》
溶剤と微粒子を攪拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて攪拌する。
《調製方法B》
溶剤と微粒子を攪拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶剤に少量のセルロースアシレートを加え、攪拌溶解する。これに前記微粒子分散液を加えて攪拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
《調製方法C》
溶剤に少量のセルロースアシレートを加え、攪拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
《分散方法》
二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5質量%〜30質量%が好ましく、10質量%〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
使用される溶剤は、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール類が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒は、特に限定されないが、セルロースアセテートの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
セルロースアセテートに対する二酸化珪素微粒子の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01質量部〜5.0質量部が好ましく、0.05質量部〜1.0質量部が更に好ましく、0.1質量部〜0.5質量部が最も好ましい。二酸化珪素微粒子の添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方が、凝集物が少なくなる。
分散機としては、通常の分散機を使用できる。分散機は、大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機とに分けられる。二酸化珪素微粒子の分散には、メディアレス分散機を用いることが、ヘイズが低く好ましい。メディア分散機としては、ボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。
メディアレス分散機としては、超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本実施形態においては、高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。
高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が10MPa以上であることが好ましく、更に好ましくは20MPa以上である。また、その際に、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
上記のような高圧分散装置には、Microfluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)あるいはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えば、イズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)製UHN−01等が挙げられる。
また、微粒子を含むドープを流延支持体に直接接するように流延することが、滑り性が高く、ヘイズが低いフィルムが得られるので好ましい。
また、流延後に剥離して乾燥されロール状に巻き取られた光学フィルムに対しては、ハードコート層や反射防止層等の機能性薄膜が設けられる。また、上記の光学フィルムが加工若しくは出荷されるまでの間、汚れや静電気によるゴミ付着等から製品を保護するために、通常、光学フィルムに対して包装加工がなされる。
この包装材料については、上記目的が果たせれば特に限定されないが、フィルムからの残留溶媒の揮発を妨げないものが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、紙、各種不織布等が挙げられる。繊維がメッシュクロス状になったものは、より好ましく用いられる。
<ドープの調製>
ドープ中のセルロースアセテートの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースアセテートの濃度が濃過ぎると、濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
ドープで用いられる溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースアセテートの良溶媒と貧溶媒を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶媒が多い方がセルロースアセテートの溶解性の点で好ましい。なお、良溶媒とは、使用するセルロースアセテートを単独で溶解する溶媒を指し、貧溶媒とは、使用するセルロースアセテートを単独で溶解しない溶媒または膨潤する溶媒を指す。良溶媒と貧溶媒の混合比率の好ましい範囲は、良溶媒が70〜98質量%であり、貧溶媒が2〜30質量%である。なお、セルロースアセテートの平均酢化度(アセチル基置換度)によって、良溶媒、貧溶媒は変わる。
本実施形態で用いられる良溶媒は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
また、本実施形態で用いられる貧溶媒は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
また、フィルム製膜工程での乾燥によってフィルムから除去された溶媒を回収し、これをセルロースアセテートの溶解に用いられる溶媒に再利用することが好ましい。なお、回収溶剤中に、セルロースアセテートに添加されている添加剤(例えば可塑剤、紫外線吸収剤、ポリマー、モノマー成分など)が微量含有されていることもあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースアセテートの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。
溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。
また、セルロースアセテートを貧溶剤(貧溶媒)と混合して湿潤あるいは膨潤させた後、更に良溶剤(良溶媒)を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は高い方が、セルロースアセテートの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
また、冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースアセテートを溶解させることができる。
次に、このセルロースアセテート溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると、濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。このため、絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
濾過により、原料のセルロースアセテートに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に光学フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。
より好ましくは、輝点数が100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/cm2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。また、濾圧は小さい方が好ましい。より具体的には、濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
〔光学フィルムの製造方法〕
次に、上述したドープを用い、溶液流延製膜法によって光学フィルムを製造する方法について説明する。図1は、本実施形態の光学フィルムの製造方法を実施する製造装置の概略の構成を示す説明図である。この製造装置は、流延ダイ1と、支持体2と、剥離ロール3と、搬送部4と、引取ロール5と、延伸部6と、乾燥部7と、巻取部8とを有して構成されている。
流延ダイ1は、透明性樹脂を溶解したドープ11を支持体2の表面上に流延する。本実施形態では、ドープ11は、上述したように低置換度(アセチル基の置換度が2.0〜2.6)のセルロースアセテート樹脂と溶媒とを含んで構成されている。
支持体2は、例えばステンレス鋼(SUS)からなる金属製の無端ベルトで構成されており、一対の駆動ロールおよび従動ロールからなるロール2a・2aによって張架され、走行可能に支持されている。なお、支持体2は、表面が鏡面の、回転する金属製のドラム(無端ドラム)で構成されてもよい。支持体2は、流延ダイ1から流延されたドープ11を支持し、搬送しながら乾燥させて、流延膜(ウェブ)12を形成する。
流延ダイ1によって流延するドープ11または流延膜12の幅は、支持体2の幅を有効活用する観点から、支持体2の幅に対して、80〜99%とすることが好ましい。そして、最終的に1000〜2500mmの幅の光学フィルムを得るためには、支持体2の幅は、1200〜3200mmであることが好ましい。
剥離ロール3は、支持体2上で乾燥された流延膜12を、幅方向の中央部12aと両側の端部12b・12b(図2参照)とで同時に支持体2から剥離するためのロールであり、回転軸方向に径が一定で流延膜12よりも幅方向に長いロール形状となっている。ここで、流延膜12において、端部12b・12bは、将来的にカットされて製品(光学フィルム)として使用されない領域であり、両側の端部12b・12bで挟まれた残りの領域が、製品として使用可能な中央部12aとなっている。
支持体2と剥離ロール3との距離は、1〜100mmであることが好ましい。剥離ロール3を支点として、乾燥された流延膜12に張力をかけて引っ張ることにより、支持体2から流延膜12を剥離することができる。支持体2から流延膜12を剥離する際の剥離張力(搬送張力)は、例えば50〜200N/m程度である。搬送部4の後述する張力付与ロール21でのニップロール圧や回転速度、サクション付フィードロールの吸引力や回転速度、また引取ロール5での引取張力を調節することにより、上記剥離張力を調節することができる。
流延膜12を剥離する際の残留溶媒量(残留溶媒率)は、剥離後の搬送性や、搬送・乾燥後にできあがる光学フィルムの物理特性等を考慮して、80〜200質量%であることが好ましく、本実施形態では80質量%に設定されている。なお、残留溶媒量は、以下の式で表される。
残留溶媒量(質量%)={(M1−M2)/M2}×100
ただし、M1は、流延膜の任意時点での質量を示し、M2は、M1を測定した流延膜を115℃で1時間乾燥させた後の質量を示す。また、流延膜12の残留溶媒量は、膜表面と膜中とで若干異なるため、以下で残留溶媒量と言えば、膜厚方向における残留溶媒量の平均値を指すものとする。
また、剥離ロール3の近傍には、流延膜12の支持体12からの剥離位置を検知する剥離位置検知センサ3aが設けられている。本実施形態では、剥離位置検知センサ3aにて検知された剥離位置に基づいて、後述する各張力付与ロール21の駆動が制御される。
搬送部4は、剥離ロール3によって剥離された流延膜12を複数のロールによって引取ロール5まで搬送する。上記複数のロールは、張力付与ロール21(例えばニップロールやサクションロール)を含んでいるが、その詳細については後述する。
引取ロール5は、搬送部4によって搬送された流延膜12を、所定の張力で引き取るためのロールであり、対向配置される一対のニップロール5a・5bで構成されている。本実施形態では、引取ロール5は、流延膜12の端部12b・12bを含む領域に搬送方向(Machine Direction:MD方向)の張力を付与しながら流延膜12を引き取るように構成されている。つまり、引取ロール5は、搬送部4の張力付与ロール21によって張力が付与される領域を含んでこれよりも幅方向に広い領域に、搬送方向の張力を付与して流延膜12を引き取る。なお、引取ロール5は、流延膜12の幅方向全体に搬送方向の張力を付与して流延膜12を引き取る構成であってもよい。
引取ロール5は、流延膜12の残留溶媒量が15質量%以下の搬送域に設けられている。すなわち、流延膜12の残留溶媒量は、剥離ロール3による剥離位置から引取ロール5に向かうにつれて、乾燥により徐々に低下する。
このように、流延膜12の残留溶媒量が低い搬送域に引取ロール5が設けられていることにより、引取ロール5にて、流延膜12の端部12b・12bを含んでこれよりも広い領域に張力を付与して流延膜12を搬送しても、引取ロール5と接触する表面を荒らすことなく流延膜12を搬送できる。したがって、流延膜12の端部12b・12bのみをニップして引き取る場合に比べて、引取ロール5と流延膜12との接触面積を増大させて、流延膜12を安定して搬送することが可能となる。
延伸部6は、引取ロール5によって引き取られた流延膜12を、流延膜12の搬送方向と直交する方向(Transverse Direction:TD方向)に延伸するテンターである。流延膜12の両端部をクリップやピン等で固定することにより、流延膜12をTD方向に延伸することができる。
乾燥部7は、延伸部6にて延伸された流延膜12を乾燥させて光学フィルムとして排出するものである。流延膜12の乾燥方法としては、加熱空気または赤外線を単独で用いて行ってもよいし、これらを併用して行ってもよいが、簡便さの点から、加熱空気を用いることが好ましい。乾燥部7での乾燥後の光学フィルムの残留溶媒量は、乾燥工程の負荷、保存時の寸法安定性、伸縮率等を考慮し、0.001〜5質量%であることが好ましい。
巻取部8は、乾燥部7で、所定の残留溶媒量となった光学フィルムを巻き芯に巻き取るものであり、例えば、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等を使用して光学フィルムを巻き取る巻き取り機で構成することができる。
上記の構成において、流延ダイ1からドープ11が支持体2に流延されると、ドープ11は支持体2上で乾燥されて流延膜12となる(流延工程)。支持体2上での乾燥は、支持体2を加熱したり、加熱風の吹き付けによって行うことができる。その際、流延膜12の温度は、ドープ11の溶液によっても異なるが、溶媒の蒸発時間に伴う搬送速度、微粒子の分散度合、生産性等を考慮して、−5℃〜70℃の範囲が好ましく、0℃〜60℃の範囲がより好ましい。流延膜12の温度は、高いほど溶媒の乾燥速度を早くできるので好ましいが、高すぎると、発泡したり、平面性が劣化する傾向がある。
続いて、剥離ロール3および搬送部4により、流延膜12を、幅方向の中央部12aと端部12b・12bとで同時に支持体2から剥離して、引取ロール5まで搬送する(剥離搬送工程)。支持体2上にドープ11を流延してから流延膜12を剥離するまでの時間は、作製する光学フィルムの膜厚、使用する溶媒によっても異なるが、支持体2からの剥離性を考慮して、0.5〜5分間の範囲であることが好ましい。
搬送部4によって引取ロール5まで搬送された流延膜12は、その引取ロール5によって引き取られ(引取工程)、その後、延伸部6にてTD方向に延伸され、乾燥部7にて乾燥されて光学フィルムとされる(延伸乾燥工程)。乾燥後の光学フィルムは、巻取部8にて巻き取られる。
なお、流延膜12が支持体2から剥離された後、光学フィルムとして巻取部8にて巻き取られるまでに、少なくとも1回、幅方向の両端部はカットされる。つまり、光学フィルムは、幅方向の両端部がカットされた後、製品として使用される。このとき、光学フィルムの両端部をカットする位置は、引取ロール5と延伸部6との間、延伸部6と乾燥部7との間、乾燥部7と巻取部8との間の少なくともいずれかの位置であればよい。流延膜12の端部12b・12bは、光学フィルムとして巻き取られる前にカットされる領域に含まれており、製品として使用されない。
〔搬送部について〕
次に、上記した搬送部4の詳細について説明する。搬送部4は、高残留溶媒量搬送域Sに張力付与ロール21を有している。ここで、まず、高残留溶媒量搬送域Sについて説明する。
高残留溶媒量搬送域Sとは、支持体2から流延膜12が剥離される剥離位置から引取ロール5までの搬送域のうち、流延膜12の残留溶媒量が45質量%以上の搬送域のことである。本実施形態では、高残留溶媒量搬送域Sは、さらに、高張力搬送域S1(第1の搬送域)と、低張力搬送域S2(第2の搬送域)とに分離される。なお、高残留溶媒量搬送域Sは、高張力搬送域S1のみで構成されてもよい。
高張力搬送域S1は、張力付与ロール21によって搬送方向の張力を付与しながら流延膜12を搬送する領域である。一方、低張力搬送域S2は、高張力搬送域S1よりも搬送方向下流側に位置して、搬送ロール31によって流延膜12をさらに下流側に搬送する領域である。
搬送ロール31は、流延膜12を挟持するニップロール(一対のロール)ではなく、周面との接触のみで流延膜12を搬送する単一のロールで構成されている。これにより、搬送ロール31によって流延膜12に付与される搬送張力は、高張力搬送域S1において最も下流側に位置する張力付与ロール21によって流延膜12に付与される張力よりも低くなっている。なお、ここでの張力とは、高張力搬送域S1に張力付与ロール21を設ける関係上、流延膜12の幅方向の両端部(端部12b・12b)に付与される張力を指すものとする。図1では、低張力搬送域S2において、2つの搬送ロール31が設けられているが、搬送ロール31は少なくとも1個設けられればよい。
高張力搬送域S1には、流延膜12の高張力での搬送を実現するため、張力付与ロール21が設けられている。また、それに加えて、剥離ロール3にて剥離された流延膜12を張力付与ロール21に導くための搬送ロール22が少なくとも1本設けられている。
張力付与ロール21は、流延膜12の端部12b・12bに対して搬送方向の張力を付与しながら、流延膜12を搬送するものである。図2は、張力付与ロール21の一例を示す斜視図である。なお、流延膜12は図1のように張力付与ロール21によって折り曲げられながら(搬送方向を変化させながら)搬送されるが、図2では、便宜上、流延膜12を一方向に(直線状に)延ばして示している。勿論、図2のように、張力付与ロール21によって流延膜12を折り曲げずに搬送する形態であっても構わない。
図2に示すように、張力付与ロール21は、流延膜12の両端部を押圧するニップロール21a・21bで構成されている。ニップロール21a・21bは、例えばNBR(Nitrile butadiene rubber (アクリロニトリル・ブタジエンゴム))のような樹脂で構成されている。一方のニップロール21bの軸方向の長さは、流延膜12の幅方向の長さよりも長い。他方のニップロール21aは、流延膜12の端部12b・12bのそれぞれに対応するように2個設けられている。したがって、流延膜12が張力付与ロール21に搬送されると、流延膜12の端部12b・12bのみがニップロール21a・21bで押圧し、搬送方向に駆動することで端部12b・12bに対してのみ搬送方向に張力が付与されることになる。
本実施形態では、図1に示すように、張力付与ロール21は、流延膜12の搬送方向の7か所に設けられており、各張力付与ロール21によって流延膜12の両端部に搬送方向の張力が付与される。なお、図1では、張力付与ロール21を構成するニップロール21a・21bを図面上で明確に区別する目的で、ニップロール21aにのみハッチングを付している(ハッチングが付されていないロールがニップロール21bである)。張力付与ロール21は、流延膜12の搬送方向において少なくとも1か所に設けられればよい。
張力付与ロール21によって流延膜12に付与される張力は、後述する駆動部10(図3参照)により、ニップロール21a・21bのニップ圧を調整することによって調整することができる。本実施形態では、搬送方向の7か所に設けられた各張力付与ロール21によって付与される張力を、流延膜12の搬送方向上流側から順にa1(N/m)、a2(N/m)、・・・a7(N/m)としたときに、a1≦a2≦・・・≦a7となっている。つまり、流延膜12の搬送方向の異なる2か所に設けられた張力付与ロール21・21のうち、搬送方向上流側に位置する張力付与ロール21によって流延膜12の両端部に付与される張力をA1(N/m)とし、搬送方向下流側に位置する張力付与ロール21によって流延膜12の両端部に付与される張力をA2(N/m)としたときに、どの2つの張力付与ロール21・21についても、A1≦A2となっている。
搬送部4の上記構成により、支持体2から流延膜12を剥離して引取ロール5まで搬送する際に、高残留溶媒量搬送域S(特に高張力搬送域S1)に設けられた張力付与ロール21によって、流延膜12の両端部に対して搬送方向に張力が付与される。付与される張力は、剥離ロール3を支点とした流延膜12の剥離を補助する張力として働くため、流延膜12の剥離が容易となる。しかも、流延膜12に対して幅方向の全体ではなく、両端部という局所的な位置に張力が付与されるので、剥離を補助する張力として余分な張力を流延膜12に付与しなくても済み、流延膜12の剥離時の搬送方向の伸びを抑えることができる。
このように、流延膜12の剥離が容易になり、流延膜12の伸びも抑えられるので、剥離された流延膜12を延伸部6で低い延伸倍率で延伸しても、その後乾燥させて光学フィルムとしたときに、所望の光学特性を得ることが可能となる。例えば、膜厚が15〜60μmの光学フィルムにおいて、ヘイズが0.005〜0.015で、長手方向および幅方向の両方向における膜厚偏差(膜厚のバラツキ)が0.05〜0.7μmの光学フィルムを実現することができる。また、光学フィルムの面内方向のリタデーションをRo(nm)とし、膜厚方向のリタデーションをRth(nm)としたときに、
25nm≦Ro≦100nm
であり、かつ、
50nm≦Rth≦300nm
の光学フィルムを実現することもできる。その結果、製造した光学フィルムを液晶表示装置の偏光板に適用して黒表示を行ったときに、光漏れを低減してコントラストを向上させることができる。
特に、製造する光学フィルムの膜厚が薄いほど、製造時に張力付与ロール21によって張力を付与したときに、流延膜12が搬送方向に伸びやすくなるので、流延膜12の搬送方向の伸びを抑える本実施形態の製造方法がより有効となる。したがって、本実施形態の製造方法は、膜厚が15〜60μmの光学フィルムを製造する際に非常に有効となる。
また、張力付与ロール21を設けることによって流延膜12の剥離が容易になるので、特許文献1のように、剥離を容易にすべく、支持体の両端部に活性化処理を行って流延膜との密着性を向上させる必要がなくなる。このため、流延膜を高速で搬送するにあたって、活性化処理を行うための装置の配置を一切考慮する必要がなくなり、剥離位置よりも前段のレイアウト(支持体の長さ、ドープの流延位置、剥離位置など)を変更しなくても済む。これにより、流延膜の高速搬送にも容易に対応することが可能となる。
また、張力付与ロール21を設けることによって流延膜12の剥離が容易になるので、特許文献2のように、流延膜の剥離にあたって、幅方向の中央部と両端部とで時間的にずらして剥離を行う必要がなく、本実施形態のように、流延膜の中央部と両端部とを同時に支持体から剥離することが可能となる。これにより、流延膜の中央部と両端部とで残留溶媒量および膜厚に差が生じることがなく、中央部と両端部との境界で流延膜が破断するのを抑制することができる。
さらに、特許文献2のように、流延膜の両端部を中央部よりも先に支持体から剥離し、その後、両端部をピンで搬送方向に引っ張って中央部を剥離する構成では、両端部を剥離した後の幅方向の収縮によって、両端部がピンにかからないようになり、中央部を剥離できなくなる可能性がある。しかし、本実施形態では、流延膜の両端部と中央部とを同時に剥離するので、両端部の幅方向の収縮に起因して中央部のみが剥離できないといったことはない。
また、本実施形態では、高残留溶媒量搬送域Sにおける、流延膜12の搬送方向の複数箇所に設けられた各張力付与ロール21により、流延膜12の両端部に搬送方向の張力を付与している。搬送方向の複数箇所に張力付与ロール21を設けることにより、流延膜12の両端部に付与する張力を、搬送方向の複数箇所で分散させることができる。これにより、流延膜12の搬送方向の伸びを極力抑えることができる。
しかも、搬送方向上流側に位置する張力付与ロール21の張力A1(N/m)と、搬送方向下流側に位置する張力付与ロール21の張力A2(N/m)との関係が、どの2つの張力付与ロール21・21を選択しても、A1≦A2となっている。つまり、高残留溶媒量搬送域Sにおいて、残留溶媒量がより高い状態にある流延膜12に付与される張力が、残留溶媒量がより低い状態にある流延膜12に付与される張力と同じか、それよりも小さくなっている。流延膜12の残留溶媒量が高い状態では、残留溶媒量が低い状態に比べて、搬送方向に引っ張ったときに流延膜12が伸びやすくなるので、A1≦A2とすることで、残留溶媒量が高い状態で流延膜12が搬送方向に伸びるのをさらに抑えることができる。
また、低張力搬送域S2では、搬送ロール31により、高張力搬送域S1の最も下流側の張力付与ロール21によって付与される張力よりも小さい張力で、流延膜12を搬送するので、高張力搬送域S1での張力付与によって流延膜12が一旦搬送方向に伸びることがあっても、低張力搬送域S2にて流延膜12を低張力で搬送することで、流延膜12を搬送方向に収縮させることができ、これによって高残留溶媒量搬送域S全体における流延膜12の伸びを最小限に抑えることができる。例えば、高残留溶媒量搬送域Sにおける流延膜12の搬送長さ(高残留溶媒量搬送域Sで流延膜12が実際に搬送される長さ)に対して、流延膜12の搬送方向の伸びを+1.0%以下に抑えることができる。このように、流延膜12の搬送方向の伸びを最小限に抑えられる結果、剥離された流延膜12に対して、延伸部6にて低い延伸倍率で延伸して、所望の光学特性を確実に得ることが可能となる。
また、本実施形態では、張力付与ロール21としてニップロール21a・21bを用いている。ニップロール21a・21bのニップ圧は、各ロールの軸間距離を縮めることで容易に調整でき、また搬送方向への駆動力(回転速度)を変化させることで流延膜12の両端部に付与する張力を容易に調整することができる。
〔張力付与ロールの駆動制御について〕
次に、剥離位置の検知に基づく張力付与ロール21の駆動制御について説明する。図3は、上述した光学フィルムの製造装置において、張力付与ロール21の駆動に関係する構成を示すブロック図である。上記製造装置は、上述した剥離位置検知センサ3aおよび張力付与ロール21に加えて、制御部9と、駆動部10とをさらに有している。
駆動部10は、張力付与ロール21を駆動するためのものであり、モータやギアなどを有して構成されており、複数の張力付与ロール21の各々に対応して設けられている。また、駆動部10は、張力付与ロール21を構成するニップロール21a・21bのニップ圧、ニップロール回転速度を調整し、ニップロール21a・21bの軸間距離を調整する機能も有している。
制御部9は、剥離位置検知センサ3aによる流延膜12の剥離位置の検知結果に基づいて駆動部10を制御して、張力付与ロール21のニップ圧、ニップロール回転速度を調整し、流延膜12に付与される張力を制御する。
例えば、支持体2に対する流延膜12の密着性が高い場合には、図4の破線の経路で示すように、流延膜12が正規の剥離位置を超えてから支持体2から剥離される場合がある。このように流延膜12が剥離されると、流延膜12が折れ曲がるために、幅方向にスジが入って製品不良となるおそれがある。
そこで、このような場合には、制御部9は、駆動部10を制御して、張力付与ロール21のニップ圧、ニップロール回転速度を高め、張力付与ロール21によって流延膜12に付与される搬送方向の張力を増大させる。これにより、流延膜12の剥離位置を剥離ロール3に近い正規の位置に戻すことが可能となり、製品不良の発生を抑えることができる。
逆に、張力付与ロール21による張力が大きすぎて、流延膜12の剥離位置が正規の位置よりも上流側に変動している場合には、駆動部10によって張力付与ロール21のニップ圧を低くし、張力付与ロール21による張力を減少させることにより、流延膜12の剥離位置を正規の位置に戻すことができる。
なお、流延膜12の正規の剥離位置に幅を持たせて、剥離位置が所定の範囲内に収まるように、張力付与ロール21の張力を制御してもよい。
このように、剥離位置検知センサ3aによって流延膜12の剥離位置をモニタリングし、その結果に基づいて、張力付与ロール21の張力を制御することにより、流延膜12の剥離位置の変動を抑えることができる。特に、流延膜12の剥離位置が一定の範囲に収まるように、張力付与ロール21の張力を制御することにより、製品不良が発生するのを抑えることができる。
ところで、図5は、張力付与ロール21の他の構成例を示す斜視図である。張力付与ロール21は、サクションロール23で構成されていてもよい。サクションロール23は、流延膜12の幅方向の両端部(12b・12b)を吸引しながら流延膜12を搬送するロールである。サクションロール23の外周面には、複数の吸引孔23aが並んで形成されている。外周面における少なくとも流延膜12の端部12b・12bと接触する領域において、吸引孔23aを介して空気を吸引しながらサクションロール23を回転させることにより、端部12b・12bに対して搬送方向に張力を付与することができる。したがって、このようなサクションロール23で張力付与ロール21を構成しても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、吸引孔23aは、サクションロール23の外周面において、軸方向全域に形成されていてもよいし、流延膜12の端部12b・12bと接触する領域にのみ形成されていてもよい。ただし、吸引孔23aをサクションロール23の軸方向全域に形成しておくほうが、吸引領域の軸方向の幅を調整することによって端部12b・12bの幅の様々な設定に容易に対応することができるので、好ましい。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、本発明の実施例との比較のため、比較例についても併せて説明する。
<実施例1>
以下に示す方法により、光学フィルムを製造した。
(ドープの調製)
以下の材料を密閉容器に投入し、80℃で加熱し、撹拌しながら完全に溶解し、ろ過してドープを調整した。
セルロースジアセテート(アセチル置換度2.40) 100質量部
糖エステル化合物(平均置換度5.5のベンジルサッカロース) 10質量部
可塑剤(エチルフタリルエチルグリコレート) 3質量部
紫外線吸収剤(チヌビン326、BASFジャパン社製) 1質量部
無機微粒子(アエロジル200V、日本エアロジル(株)製) 0.5質量部
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
(セルロースアセテートフィルムの製造)
まず、SUS316製のエンドレスベルト支持体を用いて、上記のようにして得られたドープを、ドープ温度35℃で、温度25℃のエンドレスベルト支持体上にコートハンガーダイよりなる流延ダイにより、流延速度(支持体の走行速度)100m/分で流延し、流延膜を形成した。そして、流延膜を剥離ロールで剥離し、流延膜の幅方向両端部に対して、張力付与ロールによって搬送方向に張力を付与しながら搬送した。このとき、流延膜のエンドレスベルト支持体からの剥離時の残留溶媒量は、85質量%であった。
張力付与ロールによって搬送される流延膜を、搬送ロールによってさらに下流側に搬送して引取ロールにて引き取った。このとき、引取ロールでの引取張力は120N/mとした。そして、引き取った流延膜を延伸部にてTD方向に所定の延伸倍率(表2参照)で延伸し、乾燥させた後、得られた光学フィルムを巻取部にて巻き取った。このようにして、光学フィルムとして、膜厚が30μm、面内方向のリタデーションRoが50nm、膜厚方向のリタデーションRthが120nmの位相差フィルムを作製した。
流延膜の剥離を補助するための上記の張力付与ロールとしては、ニップロール(材質;NBR、加貫ローラ製作所製、EC200シリーズ)を1本使用した。そして、高残留溶媒量搬送域において残留溶媒量が65質量%となる位置にニップロールを配置して、流延膜の両端部に張力を付与し、この張力を剥離張力(引取張力と同じ120N/m)に付加した。また、ニップロールのニップ圧、ロール回転速度は、剥離位置検知センサにて検知される剥離位置の変化に合わせて任意に追従させ、剥離位置が一定の範囲に収まるようにした。
<実施例2>
実施例2では、流延膜の剥離後、残留溶媒量が55質量%となる位置にニップロールを配置して、流延膜の両端部に張力を付与した以外は、実施例1と同様である。
<実施例3>
実施例3では、流延膜の剥離後、残留溶媒量が45質量%となる位置にニップロールを配置して、流延膜の両端部に張力を付与した以外は、実施例1と同様である。
<実施例4>
実施例4では、ニップロールを2本使用し、流延膜の剥離後、残留溶媒量が65質量%および62質量%となる位置に各ニップロールを配置して、それぞれの位置で、流延膜の両端部に張力を付与した以外は、実施例1と同様である。ただし、各ニップロールのニップ圧を上流側からP1(Pa)、P2(Pa)としたときに、P1≦P2となるように制御した。
<実施例5>
実施例5では、ニップロールを3本使用し、流延膜の剥離後、残留溶媒量が65質量%、62質量%、60質量%となる位置に各ニップロールを配置して、それぞれの位置で、流延膜の両端部に張力を付与した以外は、実施例1と同様である。ただし、各ニップロールのニップ圧を上流側からP1(Pa)、P2(Pa)、P3(Pa)としたときに、P1≦P2≦P3となるように制御した。
<比較例1>
比較例1では、流延膜の剥離位置と引取ロールとの間にニップロールを設けなかった。それ以外については実施例1と同様である。
<比較例2>
比較例2では、流延膜の剥離後、残留溶媒量が40質量%となる位置にニップロールを配置して、流延膜の両端部に張力を付与した以外は、実施例1と同様である。
<比較例3>
比較例3では、流延膜の剥離後、残留溶媒量が80質量%となる位置にニップロールを配置して、流延膜の幅方向全体に対して搬送方向に張力を付与した以外は、実施例1と同様である。
<比較例4>
比較例4では、流延膜の剥離後、残留溶媒量が45質量%となる位置にニップロールを配置して、流延膜の幅方向全体に対して搬送方向に張力を付与した以外は、実施例1と同様である。
<比較例5>
比較例5では、ニップロールを2本使用し、流延膜の剥離後、残留溶媒量が65質量%および62質量%となる位置に各ニップロールを配置した。そして、上流側のニップロールによって、流延膜の幅方向両端部に対して搬送方向に張力を付与し、下流側のニップロールによって、流延膜の幅方向全体に対して搬送方向に張力を付与した。それ以外は、実施例1と同様である。
<比較例6>
比較例6では、ニップロールを2本使用し、流延膜の剥離後、残留溶媒量が65質量%および62質量%となる位置に各ニップロールを配置した。そして、上流側のニップロールによって、流延膜の幅方向全体に対して搬送方向に張力を付与し、下流側のニップロールによって、流延膜の幅方向両端部に対して搬送方向に張力を付与した。それ以外は、実施例1と同様である。
<評価方法>
各実施例および各比較例において、製造された光学フィルムの内部ヘイズ(Hz)、平面性(MD方向のシワ/押され故障)についての評価と、これらの評価に基づく総合評価とを行った。
(内部ヘイズ)
内部ヘイズについては、得られたフィルムの両面にグリセリン(関東化学製 鹿特級(純度>99.0%) 屈折率1.47)数滴を滴下し厚さ1.3mmのガラス板(MICRO SLIDE GLASS品番S9213、MATSUNAMI製)2枚で両側から挟んだ状態で測定したヘイズ値から、ガラス2枚の間にグリセリンを数滴滴下した状態で測定したヘイズを引いた値を測定した。ヘイズメーターは型式:NDH 2000、日本電色工業(株)製、光源は5V9Wハロゲン球、受光部はシリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)を使用して、JIS K−7136に準じて測定し、以下の基準に基づいて評価した。なお、光学フィルムは23℃55%RHにて5時間以上調湿された後に測定試料の作成がなされ、また上記ヘイズの測定はすべて23℃55%RHにて行われた。
◎:ヘイズが0.01以下である。
○:ヘイズが0.01〜0.015である。
×:ヘイズが0.015よりも大きい。
(平面性)
光学フィルムのMD方向のシワおよび押され故障については、製品として巻き取った直後の光学フィルムを広げて、室内照明下で斜めから観察し、MD方向のシワおよび押され故障の有無を目視で観察した。そして、以下の基準に基づいて光学フィルムの平面性を評価した。
○:MD方向のシワ/押され故障が全くない。
×:MD方向のシワ/押され故障が発生している。
なお、MD方向のシワとは、フィルム搬送方向のスジ状のムラのことを指す。このようなシワがあると、フィルムを室内照明下で斜めからの反射で見たときに、ギラギラして見える。また、2枚の偏光板をクロスニコル状態にしてその間に光学フィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察したときに、光がスジ状に抜けるため、白いスジが見える。また、押され故障とは、フィルムが局所的にへこんでいる故障を指す。フィルムに押され故障があると、クロスニコル下では、光が局所的に抜けるため、局所的に白く見える。
(総合評価)
上記の内部ヘイズおよび平面性(MD方向のシワ/押され故障)の評価に基づいて、得られた光学フィルムの総合評価を以下の基準に基づいて行った。
○:製品として問題なし。
×:製品として問題あり。
上記の各評価の結果を表2に示す。
比較例1のように、流延膜の剥離位置と引取ロールとの間にニップロールを配置しなかった場合、および比較例2のように、ニップロールを配置したとしても、流延膜の剥離後、残留溶媒量が40質量%となる位置にニップロールを配置した場合には、光学フィルムの内部ヘイズが0.015よりも大きく、透明性が良好であるとは言えない。また、光学フィルムの平面性についても、MD方向のシワが発生しており、良好であるとは言えない。その結果、総合評価が×となっている。
また、残留溶媒量が45質量%以上の位置にニップロールを配置するとしても、比較例3〜6のように、少なくとも1本のニップロールが流延膜の幅方向全域をニップして、幅方向全域に対して搬送方向の張力を付与した場合は、光学フィルムの内部ヘイズやMDシワについては改善されるものの、光学フィルムに押され故障が発生するため、平面性が良好な光学フィルムを得ることができない。
これに対して、実施例1〜5のように、残留溶媒量が45質量%以上の位置にニップロールを少なくとも1本配置し、かつ、ニップロールが流延膜の幅方向両端部のみをニップして、両端部のみに搬送方向の張力を付与することにより、内部ヘイズ、平面性(MDシワ/押され故障)のいずれについても良好な結果が得られていることがわかる。これにより、製造した光学フィルムを液晶表示装置の偏光板に適用して黒表示を行ったときに、光漏れを低減してコントラストを向上させることができる。
特に、実施例1、4、5のように、残留溶媒量が65質量%と比較的高い位置で流延膜の両端部をニップして、両端部に搬送方向の張力を付与することにより、内部ヘイズの低減効果をより高めることができる。これにより、製造した光学フィルムを液晶表示装置の偏光板に適用したときに、コントラストをさらに向上させることができる。
なお、以上では、液晶表示装置の偏光板用保護フィルムとしての光学フィルムの製造方法について説明したが、上述した製造方法は、液晶表示装置に用いられる位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能フィルムの製造にも適用することができる。