以下、本発明のタンデム型の光電変換素子について、添付した図面を参照しながら、具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載により定められるべきものであり、以下の形態のみに制限されない。なお、本発明の効果において、例示した図面のスケール比は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合があり、これに限定されるものではない。
<並列タンデム型の光電変換素子の構成>
図1、2は、本発明に係るタンデム型(多接合型とも呼ぶ)の光電変換素子であり、太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、通常用いられるシングル型の光電変換素子(サブセル)のうち、構成の異なるサブセルとして、シリコン半導体を用いた光電変換素子(サブセル)と、p型とn型の有機化合物半導体の混合物を用いたバルクヘテロジャンクション型の光電変換素子(サブセル)とを、それぞれ1セル以上積層スタックさせて、これらのサブセルを並列接続してなる、並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子の代表的な2つの実施形態の基本構成を模式的に表した断面概略図である。
本明細書中では、図1、2に示すように並列タンデム型の光電変換素子10、10’の反射電極側または電極を有する基板側に位置するサブセルを第1のサブセル11a、透明電極側または基板と反対側に位置するサブセルを第2のサブセル11bと呼ぶ。本形態の並列タンデム型の光電変換素子10、10’は、第1のサブセル11aと第2のサブセル11bとの間に、金属グリッド(金属細線パターン)14と透明電極層(導電性被覆層)15(図2の形態では、第2の正孔輸送層18bが透明電極層(導電性被覆層)15の機能を兼ね備える構成である)からなる中間電極14’を有し、第1のサブセル11aと第2のサブセル11bとを電気的に並列接続した構成である。
本発明の並列タンデム型の光電変換素子10、10’は、図1、2に示すように、第1のサブセル11a中の第1の光電変換層17aが少なくとも結晶シリコン半導体17a1を含み構成されており、好ましくは結晶シリコン半導体17a1と、この結晶シリコン半導体17a1とpn接合し得る半導体(特に好ましくは有機化合物半導体17b2)との積層構造(組み合わせ)により構成されており、第2のサブセル11b中の第2の光電変換層17bがp型有機化合物半導体17b2とn型有機化合物半導体17b1との混合物(組み合わせ)からなるバルクヘテロジャンクション(BHJ)型の層により構成されていることを特徴としている。
図1は、並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子の代表的な一実施形態の基本構成を模式的に表した断面概略図である。図1に示す並列タンデム型光電変換素子10は、第1の電極12上にn型結晶シリコンからなる無機半導体17a1とp型有機化合物半導体17a2と有する第1の光電変換層17aからなる第1のサブセル11aと、中間電極14’を構成する金属グリッド(金属細線パターン)14と透明電極層(導電性被覆層)15とを有し、更に、第2の正孔輸送層18b、p型有機化合物半導体17b2とn型有機化合物半導体17b1の混合物からなるBHJ型の第2の光電変換層17b、および第2の電子輸送層16bを有する第2のサブセル11bとを有し、電極下地層(含窒素有機化合物層)13b1と、金属層13b2とを有する第2の電極13を有する。この時、第2の電子輸送層16bと電極下地層13b1は同一の材料を用いることもでき、その場合は合わせて1層で構成していてもよい。また、中間電極14’を構成する金属グリッド(金属細線パターン)14および金属グリッド(金属細線パターン)14の存在しない開口部Pは、導電性材料により構成された透明電極層15で被覆されている。図1に示す形態において、導電性材料により構成された透明電極層15は、金属グリッド(金属細線パターン)14および金属グリッド(金属細線パターン)14の存在しない開口部Pを被覆しているため、導電性被覆層とも称し、金属グリッド(金属細線パターン)14と透明電極層(導電性被覆層)15とを、合わせて中間電極14’と称する。即ち、図1に例示した構成では、二つのサブセル11a、11b同士が中間層(金属グリッド14と透明電極層15)により並列接続された並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子10となり、この中間層は所謂中間電極14’として働く。透明電極層(導電性被覆層)15は、金属グリッド(金属細線パターン)14を被覆し第2のサブセル11bとのリーク発生を抑制すると共に、金属グリッド(金属細線パターン)14の開口部Pにおいて注入された正孔もしくは電子を金属グリッド(金属細線パターン)14まで集電させる役割を担っている。
上述した図1に示す形態では、第1の電極12および第2の電極13を陰極(アノード)とし、中間電極(中間層)14’である金属グリッド(金属細線パターン)14および導電性材料により構成された透明電極層(導電性被覆層)15を陽極(カソード)として記載しているが、積層の順序によって陰極と陽極が逆の働きをする構成、即ち、第1の電極12および第2の電極13を陽極とし、中間電極14’を陰極とする構成も本発明においては取ることができる。
図2は、並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子の他の実施形態の基本構成を模式的に表した断面概略図である。図2に示す並列タンデム型光電変換素子10’は、第1の電極12上にn型結晶シリコンからなる無機半導体17a1とp型有機化合物半導体17a2と有する第1の光電変換層17aからなる第1のサブセル11aと、中間電極14’を構成する金属グリッド(金属細線パターン)14と透明電極層(導電性被覆層)15の機能を兼ね備える第2の正孔輸送層18bとを有し、更に、第2の正孔輸送層18b、p型有機化合物半導体とn型有機化合物半導体の混合物からなるBHJ型の第2の光電変換層17b、および第2の電子輸送層16bを有する第2のサブセル11bとを有し、電極下地層(含窒素有機化合物層)13b1と、金属層13b2とを有する第2の電極13を有する。この時、第2の電子輸送層16bと電極下地層13b1は同一の材料を用いることもでき、その場合は合わせて1層で構成していてもよい。また、中間電極14’を構成する金属グリッド(金属細線パターン)14および金属グリッド(金属細線パターン)14の存在しない開口部Pは、透明電極層15の機能を兼ね備える第2の正孔輸送層18bで被覆されている。図2に示す形態において、金属グリッド(金属細線パターン)14(更には透明電極層15の機能を兼ね備える第2の正孔輸送層18を含めてもよい)を、中間電極14’と称する。即ち、図2に例示した構成では、二つのサブセル11a、11b同士が中間層の金属グリッド14(更には透明電極層15の機能を兼ね備える第2の正孔輸送層18を含めてもよい)により並列接続された並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子10’となり、この中間層は所謂中間電極14’として働く。透明電極層(導電性被覆層)15の機能を併せ持つ第2の正孔輸送層18は、金属グリッド(金属細線パターン)14を被覆し第2のサブセル11bとのリーク発生を抑制すると共に、金属グリッド(金属細線パターン)14の開口部Pにおいて注入された正孔もしくは電子を金属グリッド(金属細線パターン)14まで集電させる役割を担っている。換言すれば、導電性被覆層15が正孔輸送性を有し、第2の正孔輸送層18bの機能を兼ね備えるものであるともいえる。この場合、中間電極14’は、金属グリッド(金属細線パターン)14と導電性被覆層15とを有し、第2のサブセル11bは、第2の正孔輸送層18bの機能を兼ね備える導電性被覆層15と、BHJ型の第2の光電変換層17bと、第2の電子輸送層16bとを有する物といえる(図2参照)。
また、本発明の並列タンデム型の光電変換素子10、10’は、第1の光電変換層17aの吸収スペクトルと、第2の光電変換層17bの吸収スペクトルとを、異なるスペクトルを吸収する層とする。太陽光スペクトルの内、より広い波長域の光を効率よく電気に変化することが可能となる。本発明においては、第2の電極13が光入射側となる透明電極であることが好ましく、光入射側の第2の光電変換層17bが有機化合物半導体(の混合物からなるBHJ型の層)から構成され、短波側を吸収する層となることが好ましい。
図1、2において、第2の電極13から入射された光Lは、第2のサブセル11bの第2の電子輸送層16b(電極下地層13b1の場合もある)を透過し、第2の光電変換層17bにおける電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は第2の電子輸送層16bおよび第2の正孔輸送層18b、または陰極(第2の電極13)および陽極(中間電極14’)の電位差(エネルギー差)により作られる内部電界や、第2の光電変換層17b中の電荷密度の分布によって移動し、電子は電子受容体間を通り、また正孔は電子供与体間を通り、それぞれ異なる輸送層16a、18bを通じて陰極(第2の電極13)または陽極(中間電極14’)に運ばれる。なお、第2の電子輸送層16bは、電子の移動度が高い材料、若しくは正孔に対してブロック能として働く材料で形成されており、第2の光電変換層17bのpn接合界面で生成した電子を効率よく陰極(第2の電極13)へと輸送する機能を担っている。一方、第2の正孔輸送層18bは、正孔の移動度が高い材料、若しくは電子に対してブロック能として働く材料で形成されており、第2の光電変換層17bのpn接合界面で生成した正孔を効率よく陽極(中間電極14’)へと輸送する機能を担っている。また、図1、2において、第2のサブセル11bを透過した光(主に第2の光電変換層17bで吸収できない長波側の光)は、透明電極層(導電性被覆層)15(図1の形態)または第2の正孔輸送層18b(図2の形態)で覆われた金属グリッド(金属細線パターン)14の開口部Pを透過し、第1のサブセル11aに到達する。第1のサブセル11aの発電メカニズムは、第2のサブセル11bの発電メカニズムとはわずかに異なり、結晶シリコン半導体17a1が主に光を吸収し発生した正孔と電子が陰極(第1の電極12)および陽極(中間電極14’)の電位差(エネルギー差)により作られる内部電界や、第1の光電変換層17a中の電荷密度の分布によって移動し、陰極(第1の電極12)および陽極(中間電極14’)に運ばれる。第1のサブセル11aも第2のサブセル11bと同様に第1の光電変換層17aと第1の電極12の間に第1の電子輸送層(図示せず)を有していてもよいし、第1の光電変換層17aと中間電極14’の金属グリッド(金属細線パターン)14の間に第1の正孔輸送層(図示せず)を有していてもよい。
中間電極14’は第1の光電変換層17aにも光が届くようにより透過率の高い層または構造であることが好ましい。
図1、2に示すように、第1のサブセル11aで発生した正孔と、第2のサブセル11bで発生した正孔と各々が、金属グリッド(金属細線パターン)14および透明電極層(導電性被覆層)15(図1の形態)または第2の正孔輸送層18b(図2の形態)からなる中間電極14’から出力され、同時に、第1のサブセル11aで発生した電子と、第2のサブセル11bで発生した電子とが出力されることで、第1のサブセル11aと第2のサブセル11b間で電気的な並列接続が形成され、図面に示された様に接続することで、外部回路100が駆動される。この並列接続が効率よく行われたとき、出力される短絡電流密度(Jsc)は、第1のサブセル11aの電流密度と第2のサブセル11bの電流密度とを足し合わせた合算値になる。以下、本発明の並列タンデム型光電変換素子10、10’につき、各構成要件ごとに詳しく説明する。
〔1〕第1の光電変換層17a
図1、2に示す形態に関わる第1の光電変換層17aは、少なくとも結晶シリコン半導体を含み構成されており、好ましくはn型結晶シリコン半導体17a1とp型半導体(特に好ましくはp型有機化合物半導体)17a2の組み合わせ(積層構造)から構成されている。
(1a)p型半導体17a1
上記第1の光電変換層17aのp型半導体17a2は、光吸収に関係なく正孔輸送性の材料(p型半導体)であれば問題なく使用することができまる。つまり、これまでのp型半導体と正孔輸送材料の両方とも第1の光電変換層のp型半導体17a2に用いることができる。すなわち、上記第1の光電変換層17aを構成するp型半導体17a2に使用できる材料としては、ドナー性(電子供与性)の材料であれば特に制限はなく、p型結晶シリコン半導体、p型アモルファスシリコン半導体、MoO3、V2O5などの正孔輸送性無機酸化物等も用いることができるが、製膜の容易性から有機化合物半導体がより好ましい。さらにはn型結晶シリコン半導体17a1のHOMO準位は5.17eVであり、より効率的に正孔を輸送するためには5.17eVよりも浅いHOMO準位を有していることが必要であり、そのような観点からもエネルギー準位の調整が比較的容易なp型有機化合物半導体をp型半導体17a2として好ましく用いることができる。
また第1の光電変換層17aのn型結晶シリコン半導体17a1上にはp型半導体17a2に使用できる材料であれば有機無機問わず好ましく用いることができるが、結晶シリコン半導体17a1の光吸収を妨げないよう可視光の吸収を持たない材料が好ましいため、広いバンドギャップを有する低分子化合物や正孔輸送材料としても用いられる透明導電性高分子がより好ましく用いられる。こうした第1の光電変換層17a内の電子ブロック性の観点と正孔の輸送性の観点から、HOMO準位または仕事関数は4.5〜6.0eVが好ましく、4.8〜5.5eVがさらに好ましい。
このような第1の光電変換層17aのp型半導体17a2材料としては、以下に記載してあるp型半導体17a2に用いられるドナー性(電子供与性)の有機化合物ないし無機化合物または正孔輸送材料としても用いられる導電性高分子などが好ましく用いることができる。
このようなp型半導体17a2に用いられる上記した各種化合物のうち、ドナー性(電子供与性)の有機低分子化合物である縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、へプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン、アリールアミン、カルバゾール、チオフェン、フルオレン、ジスチリルベンゼン、スピロ化合物(例えば、下記化学式に示すspiro−MeOTADなど)等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンジチオテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、およびこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
上記スピロ化合物としては、J.Am.Chem.Soc.2011,133,18042−18045に記載された上記化学式に示すspiro−MeOTAD(2,20,7,70−Tetrakis−(N,N−di−4−methoxyphenylamino)−9,90−spirobifluorene;Luminescence Technology Corp.社製 CAS No:207739−72−8として購入可能である)などを好ましく用いることができる。
また上記の縮合多環を有する誘導体(縮合多環芳香族低分子化合物の誘導体)の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
上記p型半導体17a2に用いられる上記した各種化合物のうち、ドナー性(電子供与性)の有機高分子化合物である共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェンおよびそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、国際公開第2008/000664号パンフレット(WO2008/000664)に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、Adv.Mater.,vol.19,(2007)p2295に記載のポリチオフェン−カルバゾール−ベンゾチアジアゾール共重合体(PCDTBT)、Macromolecules 2009,42,p1610−1618に記載のビニル基置換ポリヘキシルチオフェン(P3HNT)、米国特許第8008421号明細書に記載のpoly(4,4’−bis(2−ethylhexyl)dithieno[3,2−b:2’,3’−d)silole)−2,6−diyl−alt−(2,1,3−benzothiadiazole)−4,7−diyl](PSBTBT;下記化学式参照)、ポリピロールおよびそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレンおよびそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー等のポリマー材料が挙げられる。
さらには上記p型半導体17a2に用いられる上記した各種化合物のうち、正孔輸送材料としても用いられる導電性高分子としては、π共役系高分子とポリアニオンとを有してなる導電性高分子などを(第1の光電変換層材料のp型半導体材料として)用いることができる。
本発明に用いることができる上記導電性高分子に含まれる上記π共役系高分子としては、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類、の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。本発明で好ましく用いられるポリアニオンは特に限定されないが、アニオン性基として、スルホ基を有することがより好ましい。ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
本発明で好ましく用いられる上記導電性高分子に含まれる上記ポリアニオンとしては、特に限定されないが、アニオン性基として、スルホ基を有することがより好ましい。ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
また、上記導電性高分子に含まれる上記ポリアニオンとしては、化合物内にフッ素(F)を有するポリアニオンであってもよい。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製、登録商標)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製、登録商標)等を挙げることができる。
こうした上記p型半導体17a2に用いられる上記した各種化合物のうち、正孔輸送材料としても用いられる導電性高分子としては公知の材料や市販の材料も好ましく利用できる。例えば、一例を挙げると、ヘレウス社製、商品名CLEVIOS−P等のPEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン) ポリスチレンスルホン酸)、欧州特許第1546237号、特開2009−132897号公報等に記載のフッ素系ポリアニオン類(ナフィオン等)含有、または特開2006−225658号公報のようなフッ素系ポリアニオン添加構成、欧州特許第1647566号等に記載のポリチエノチオフェン類、特開2010−206146号に記載のスルホン化ポリチオフェン類、ポリアニリンおよびそのドープ材料、国際公開第2006/019270号パンフレット等に記載のシアン化合物等、Aldrich社からPEDOT−PASS483095、560598として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。また、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等もまた、用いられうる。
また、これら以外にも、上記p型半導体17a2に用いられる上記した各種化合物のうち、正孔輸送材料としても用いられる材料として、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物、およびスチリルアミン化合物等が使用可能であり、これらのうちでは、芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。なお、場合によっては、上記p型半導体17a2に用いられる上記した各種化合物のうち、正孔輸送材料としても用いられる材料として、p型−Si、p型−SiC、酸化ニッケル、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン等の無機化合物を用いて第1の光電変換層17aのp型半導体17a2を形成してもよい。不純物をドープしたp性の高い正孔輸送材料を第1の光電変換層17aのp型半導体17a2材料に用いることもできる。一例を挙げると、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)、Appl.Phys.Let.,98,073311(2011)等に記載された材料、および構成が挙げられる。
本発明の上記p型半導体17a2に用いられる上記した各種化合物のうち、正孔輸送材料としても用いられる材料としては、所望の仕事関数や導電性を得るために、強いアクセプター性を有する有機化合物(例えば、以下に示す金属錯体やフッ素置換されたフラーレンなど)や無機化合物、無機金属および金属酸化物を、上記した正孔輸送材料としても用いられる材料中にドープした第1の光電変換層17aのp型半導体を好ましく用いることができる。
上記ドープ材料として好ましく用いられる具体的材料例として、例えば、国際公開第2007/146250号パンフレット、国際公開第2006/019270号パンフレット等に記載のシアノ置換分子、欧州特許第1950818号や、CHEM.COMMUN.,2002,2078−2079に記載のフッ素置換されたフラーレン(下記化学式参照)、
J.AM.CHEM.SOC.2009,131,12530−12531に記載されたモリブデン錯体(下記化学式参照)、
J.Am.Chem.Soc.2011,133,18042−18045に記載されたコバルト錯体(下記化学式参照)、
等をホストとなるマトリックス材料中にドープして用いることができる。即ち、少なくとも1つのサブセルの正孔輸送層につき、正孔輸送性の向上の観点から、上記したような、金属錯体またはフッ素置換フラーレンがドープされたポリマー層とするのが好ましい。更には、蒸着型の製造方法においては、米国公開特許2006/8740号、APPLIED PHYSICS LETTERS 98,073311 2011に記載の様に、正孔輸送材料と酸化モリブデンを共蒸着してドープする方法などを挙げることができる。
ドープされるホスト材料(上記ホストとなるマトリックス材料)としては、上述した各種の正孔輸送材料の内、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等を用いることができる。
また、これら以外にも、上記ホスト材料として、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物、およびスチリルアミン化合物等が使用可能であり、これらのうちでは、芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
また、上記ホスト材料として、J.Am.Chem.Soc.2011,133,18042−18045に記載されたspiro−MeOTAD(上記化学式参照)なども本願においては好ましく用いることができる。
本発明で好ましく用いられる上記ホスト材料として、例えば、Adv.Funct.Mater.2011,21,167-171に記載されるTFB(poly[(9,9’−dioctylfl uorenyl−2,7−diyl)−co−(4,4’−(N−(4−sec−butyl))diphenylamine)]や、poly−TPD(poly(N,N’−bis(4−butylphenyl)−N,N’−bis(phenyl)benzidine)等のポリマー型正孔輸送材料も挙げることができる。
本発明においては、上記p型半導体材料に用いられる上記した各種化合物のうち、正孔輸送材料としても用いられる無機材料を好ましく用いることができる。上記無機材料(上記した無機化合物、無機金属および金属酸化物など)の中でも金属酸化物を主成分とすることが好ましい。ここで、「主成分」とは正孔輸送材料としても用いられる上記無機材料100質量%に占める金属酸化物の割合が50質量%以上であることを意味する。ただし、正孔輸送材料としても用いられる上記無機材料100質量%に占める金属酸化物の割合は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。なお、正孔輸送材料としても用いられる無機材料は、上記した有機化合物(例えば、金属錯体やフッ素置換されたフラーレンなど)と共蒸着して製膜することもできるし、これらを混合して製膜することもできる。
正孔輸送材料としても用いられる上記無機材料として好適な上記金属酸化物(一部、非金属材料を含む)としては、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、タングステン(W)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、トリウム(Tr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)あるいは、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までのいわゆる希土類元素などの酸化物が挙げられる。なかでも、正孔輸送能に優れるという観点からは、三酸化モリブデン(MoO3)、酸化ニッケル(NiO)、三酸化タングステン(WO3)、五酸化二バナジウム(V2O5)等の金属酸化物等を好ましく用いることができ、三酸化モリブデン、三酸化タングクテン、五酸化二バナジウムが特に好ましい。これらの金属酸化物(一部、非金属材料を含む)は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
第1の光電変換層17aのp型半導体17a2の厚さは、透過率と電子の輸送性の観点から、好ましくは30〜500nm、より好ましくは30〜100nmの範囲である。
(1b)n型結晶シリコン半導体(基板)17a1
n型結晶シリコン半導体(基板)としては、特に制限されるものではなく、いずれのn型結晶シリコン半導体(基板)であっても使用可能である。例えば、既に市販されているn型結晶シリコン半導体(基板)をそのまま用いてもよいなど、従来公知のものを適宜利用することができる。シリコン基板のエッチングのしやすさの観点から、入射面は(100)面に切りだされていることが好ましい。
第1の光電変換層17aのn型結晶シリコン半導体17a1の厚さは十分に光吸収を行わせる観点と基板として十分な強度を持たせる観点から、50μmから1000μmが好ましく、100μmから800μmがより好ましい。
〔2〕第2の光電変換層17b
本発明の第2の光電変換層17bは、p型有機化合物半導体17b2とn型有機化合物半導体17b1から構成されてなるバルクヘテロジャンクション(BHJ)型の層である。かかるBHJ型の構成を有する第2の光電変換層17bでは、光起電力効果を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する。これらの光電変換材料(p型有機化合物半導体とn型有機化合物半導体の混合物をから構成されてなるBHJ型の構造)に光が吸収されると、励起子が発生し、これがpn接合界面において、正孔と電子とに電荷分離される。
(2a)p型有機化合物半導体17b2
BHJ型の第2の光電変換層17bのp型有機化合物半導体17b2は、光吸収の役割も担うので、ある程度バンドギャップが狭い共役ポリマー(ドナー性(電子供与性)の有機高分子化合物)が望ましい(通常、主体となり得る)が、一部光吸収するドナー性(電子供与性)の有機低分子化合物であってもよい。こうしたBHJ型の第2の光電変換層17b内のp型有機化合物半導体17b2のバンドギャップ(Bg)は、電荷分離効率の観点から、1.8eV以上、好ましくは1.8〜2.6eV、より好ましくは1.8〜2.3eVの範囲であるのが望ましい。
第2の光電変換層17bのp型有機化合物半導体17b2のバンドギャップ(Bg)は、光電子分光法(UPS法)により評価することとし、特に説明がなければ、それぞれの材料について単膜を作製し、ヴァキュームジェネレーターズ社製、ESCALab200R及びUPS−1ユニットを用いて光電子分光スペクトルを評価し、HOMO準位(仕事関数)を算出し、可視・紫外分光法から得られるスペクトルの吸収端からバンドギャップを算出する。
本形態のBHJ型の第2の光電変換層17bに使用されるp型有機化合物半導体17b2は、ドナー性(電子供与性)の有機化合物であれば特に制限はなく、本技術分野で使用されうる材料を適宜採用することができる。このようなドナー性(電子供与性)の有機化合物のうち縮合多環芳香族低分子化合物(有機低分子化合物)としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、へプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンジチオテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、およびこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
また上記の縮合多環を有する誘導体(縮合多環芳香族低分子化合物の誘導体)の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
上記ドナー性(電子供与性)の有機化合物のうち、共役系ポリマー(有機高分子化合物;ポリマー材料)としては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェンおよびそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、国際公開第2008/000664号パンフレット(WO2008/000664)に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、Adv.Mater.,vol.19,(2007)p2295に記載のポリチオフェン−カルバゾール−ベンゾチアジアゾール共重合体(PCDTBT)、Macromolecules 2009,42,p1610−1618に記載のビニル基置換ポリヘキシルチオフェン(P3HNT)、米国特許第8008421号明細書に記載のpoly(4,4’−bis(2−ethylhexyl)dithieno[3,2−b:2’,3’−d)silole)−2,6−diyl−alt−(2,1,3−benzothiadiazole)−4,7−diyl](PSBTBT)、ポリピロールおよびそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレンおよびそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー等のポリマー材料が挙げられる。
第2の光電変換層17bのp型有機化合物半導体として用いる場合、製膜性とPCBM等n型フラーレン材料とのモルフォロジー形成の観点から上記したポリマー材料の方が好ましい。
(2b)n型有機化合物半導体17b1
本形態のBHJ型の第2の光電変換層17bに使用されるn型有機化合物半導体17b1は、アクセプター性(電子受容性)の有機化合物であれば特に制限はなく、本技術分野で使用されうる材料を適宜採用することができる。このようなアクセプター性(電子受容性)の有機化合物としては、例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ、オクタアザポルフィリン等、上記p型有機半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(例えば、パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等が挙げられる。
上記n型有機化合物半導体17b1に使用されるアクセプター性(電子受容性)の有機化合物のうち、p型有機化合物半導体17b2と高速(〜50fs)かつ効率的に電荷分離を行うことができるという観点から、フラーレンもしくはカーボンナノチューブまたはこれらの誘導体を用いることが好ましい。より具体的には、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン(円錐型)等、およびこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、置換されたまたは非置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基等によって置換されたフラーレン誘導体が挙げられる。
上記n型有機化合物半導体17b1に使用されるアクセプター性(電子受容性)の有機化合物のうち、特に、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBMまたはPC60BM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、[6,6]−フェニルC71−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PC71BM)、J.Am.Chem.Soc.2011,133,14534-14537記載のビスインデン−C60(略称ICBA)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報に記載のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報に記載のメタロセン化フラーレン、米国特許第7,329,709号明細書に記載の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基により溶解性が向上されてなるフラーレン誘導体を用いることが好ましい。なお、本形態において、上記n型有機化合物半導体17b1は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
本形態のBHJ型の第2の光電変換層17bにおける、p型有機化合物半導体17b2およびn型有機化合物半導体17b1の接合形態は、バルクへテロ接合である(即ち、光電変換層は、バルクヘテロジャンクション型の光電変換層である)。ここで、「バルクヘテロジャンクション」とは、p型有機化合物半導体17b2およびn型有機化合物半導体17b1との混合物を塗布することにより形成され、この単一の層中において、p型有機化合物半導体17b2のドメインとn型有機化合物半導体17b1のドメインとがミクロ相分離構造をとっている。したがって、バルクヘテロジャンクションでは、平面へテロ接合と比較して、pn接合界面が層全体にわたって数多く存在することになる。よって、光吸収により生成した励起子の多くがpn接合界面に到達できることになり、電荷分離に至る効率を高めることができる。このような理由から、本形態のBHJ型の第2の光電変換層17bにおける、p型有機化合物半導体17b2およびn型有機化合物半導体17b1との接合は、バルクヘテロジャンクションであるといえる。
また、本形態のバルクヘテロジャンクション層であるBHJ型の第2の光電変換層17bは、通常の、p型有機化合物半導体17b2およびn型有機化合物半導体17b1が混合されてなる単一の層(i層)からなる場合の他に、当該i層がp型有機化合物半導体17b2からなるp層およびn型有機化合物半導体17b1からなるn層により挟持されてなる3層構造(p−i−n構造)を有する場合がある。このようなp−i−n構造は、正孔および電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることができる。
本形態において、BHJ型の第2の光電変換層17bに含まれるp型有機化合物半導体17b2とn型有機化合物半導体17b1との混合比は、質量比で2:8〜8:2の範囲が好ましく、より好ましくは4:6〜6:4の範囲である。これは、p型有機化合物半導体17b2のドメインとn型有機化合物半導体17b1のドメインとがミクロ相分離構造を好適に作ることができ、pn接合界面が層全体にわたって数多く存在させることができる点で上記範囲が好ましいものである。また、BHJ型の第2の光電変換層17bの厚さ(乾燥膜厚)は、特に制限はないが、好ましくは50〜400nmであり、より好ましくは80〜300nmの範囲である。これは、BHJ型の第2の光電変換層17bの厚さ(乾燥膜厚)は、厚いほど光吸収において好ましいことから50nm以上が好ましいものである。但し、BHJ型の第2の光電変換層17bの厚さ(乾燥膜厚)が厚すぎるとキャリアの取り出しができなくなるので(プラスのホールド電子が外に出る前に再結合してしまうことから、BHJ型の第2の光電変換層17bの厚さ(乾燥膜厚)が400nm以下であれば再結合する前に発生したキャリアの効率よく外に取り出せるので好ましい。また、BHJ型の第2の光電変換層17bに使用される光電変換材料の電子又は正孔の移動動が高ければ、BHJ型の第2の光電変換層17bの厚さ(乾燥膜厚)をより厚くできる(=光吸収において好ましい)ことから、上記光電変換材料(特にp型有機化合物半導体17b2材料とn型有機化合物半導体17b1材料)を適宜選択するのが望ましいといえる。
また、本発明においてはBHJ型の第2の光電変換17b中のp型有機化合物半導体17b2のLUMO準位とn型有機化合物半導体17b1のLUMO準位の差が0.9eV以上1.3eV以下が好ましい。p型有機化合物半導体17b2のLUMO準位とn型有機化合物半導体17b1のLUMO準位の差が大きい方がpn界面での電荷分離効率が向上し、より高い電流値を得ることができる。さらに、一般的には開放端電圧をより大きくするためにp型有機化合物半導体17b2のLUMO準位とn型有機化合物半導体17b1のLUMO準位の差をより小さくする方向にエネルギー準位を設計するが、本発明においては第1の光電変換層17aから得られる開放端電圧と同程度の開放端電圧であれば良いため、より高い電流値を得られるように、p型有機化合物半導体17b2のLUMO準位とn型有機化合物半導体17b1のLUMO準位の差を0.9eV以上大きくすることが好ましい。
第2の光電変換層17bのp型有機化合物半導体17b2のLUMO準位とn型有機化合物半導体17b1のLUMO準位は、p型有機化合物半導体17b2のところに記載した方法と同様にしてHOMO準位を求め、可視・紫外分光法から得られるスペクトルの吸収端からバンドギャップを算出することにより、LUMO準位を決定することができる。
〔3〕中間電極(中間層)14’
本発明におけるサブセル間を接続する中間層(中間電極14’)は、金属グリッド(以下、金属細線パターン、または細線、または細線パターンとも呼ぶ)14と、導電性材料を含んだ導電性被覆層(透明電極層)15(図1の形態)または導電性被覆層(透明電極層)15の機能を併せ持つ第2の正孔輸送層18b(図2の形態)を少なくとも有し構成される。図2の形態の導電性被覆層(透明電極層)15の機能を併せ持つ第2の正孔輸送層18bについては、「〔4〕正孔輸送層」で説明する。
(3a)金属グリッド(金属細線パターン)14
金属グリッド(金属細線パターン)14の材料としては、導電性の観点から金属が好ましく、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等が挙げられる。またこれらの合金でもよく、単層でも多層でもよい。細線パターンの形状に特に制限はないが、例えば、ストライプ状、あるいはメッシュ状等が挙げられ、電極の導電性及び透明性の観点から決めることができる。
金属グリッド(金属細線パターン)14の形成方法としては、まず支持体上に、金属からなる細線パターンを形成する。細線パターンは、シャドウマスクを通した蒸着法などのドライプロセスにより形成する方法、金属粒子を含むインキを印刷により直接パターニングする方法や、蒸着膜や金属とバインダーとからなる分散液を塗布、乾燥して膜形成した膜を、エッチング等によりパターニングする方法などを用いることができる。また、銀塩写真法を活用し、ハロゲン化銀分散液を塗布、乾燥して膜形成した後、露光、現像処理を行いパターン形成してもよい。更に、これらのパターンを元に、各種のメッキ処理などと組み合わせて金属細線パターン14を形成することも好ましい。これらの膜形成方法として特に制限はないが、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、インクジェット法等の塗布法を用いることができる。さらに、金属または金属酸化物ナノ粒子の分散液を用い、スプレーコート法やインクジェット法、グラビア、フレキソ印刷法、あるいはスクリーンマスクを用いたスクリーン印刷法などにより、直接パターン形成してもよい。
金属細線パターン14の形状としては、高さHが0.4μm〜1.0μm、線幅Wが20〜200μmであり、金属細線パターン14で形成される開口部(金属細線の存在しない領域)の開口率が80%〜97%であることが好ましい。金属細線パターン14の高さHが0.4μm以上であれば十分な導電性を得ることができ、1.0μm以下であれば、金属細線パターン14および導電性被覆層15上に形成される第2のサブセル11bに対しリークが抑制でき変換効率の点で好ましい。更に好ましくは、0.6μm以上、1.0μm以下の高さである。
金属細線パターン14の好ましい線幅Wは、20〜200μmであるが、40〜120μmが好ましく、40〜80μmがより好ましい。金属細線パターン14の線幅Wが20μm以上あれば所望の導電性が得られ、また200μm以下であれば十分な透過率が得られるため好ましい。
金属細線パターン14で形成される開口部の開口率は、80%以上あれば十分な透過率を得ることができ、97%以下であれば中間層(中間電極14’)のシート抵抗を低く抑えられるため好ましい。より好ましくは83%以上〜95%以下であり、更に好ましくは85%以上〜93%以下である。
金属細線パターン14の更に好ましい形状としては、図1、2に例示する様に、金属細線(の軸線方向)に直交する方向の断面の断面積をSとしたとき、断面積Sと高さH、線幅Wの関係が、0.5〜S/(H×W)〜0.9の範囲であることが好ましい。より好ましくは0.55〜0.8であり、最も好ましくは0.6〜0.7の範囲である。S/(H×W)が0.5以上であれば、十分な導電性が得られ、0.9以下であればリーク発生を抑制することができ変換効率の点で好ましい。すなわち、金属細線パターン14が、第1のサブセル11a上で、図1に示すような断面形状が山(凸型)の形状、好ましくはなだらかな山の形状(凸型のエッジ部分が削られて丸みを有する形状)を有するのが好ましい。この様な設計により、金属細線パターン14のエッジ部が丸みを有するため、導電性被覆層15がエッジ部においても十分な被覆性が得られるものと推定している。より好ましくは、断面形状が下層基板のp型半導体17a2との界面においてもなだらかなカーブを有している構造がより好ましい。
金属細線パターン14の形状に特に制限はないが、例えば、ストライプ状、あるいは四角形や六角形のメッシュ状、格子状等が挙げられ、電極14’の導電性および透明性の観点から決めることができる。金属細線パターン14の細線の平行方向の間隔(開口部Pの間隔)は、特に制限されないが、好ましくは0.5mm〜10mm、より好ましくは0.7mm〜5mm、さらに好ましくは0.9mm〜2mmである。金属細線パターン14の形状が格子状の場合、交差する細線の間隔は、特に制限されないが、好ましくは0.5mm〜10mm、より好ましくは0.7mm〜5mm、さらに好ましくは0.9mm〜2mmである。この線間隔は後述する導電性被覆層15のシート抵抗により制限され、本発明においては上述した線間隔において好ましい。また、交差する角度としては、特に制限されないが、90°であるのが好ましい。なお、線間隔とは、細線の線エッジから、隣接する細線の線エッジまでの距離を意味し、等間隔の場合は細線と開口部Pのくり返し単位であり、線ピッチとも言う。また、金属細線パターン14が交差する場合の線幅W、高さH、断面形状としては、細線が交差していない部分の各値を採用する。
金属細線パターン14の形状の計測方法としては特に限定されず、一般的に用いられる表面プロファイル測定装置を用いることができる。例えば、Veeco社製WYKO−オプティカルプロファイラNT9300を用い、細線の線幅W、高さHといった情報を計測し、数値計算により断面積Sや上述したS/(H×W)を求めることができる。
本発明の金属細線パターン14は、高導電性であることが好ましく、金属細線パターン(細線部)14の体積抵抗は、3.0〜10μΩcmであることが好ましく、3.0〜8μΩcmであることがより好ましく、3.5〜6.0μΩcmであることがさらに好ましい。また、金属細線パターン(細線部)14のシート抵抗(表面比抵抗)は、10Ω/□以下であることが好ましく、5Ω/□以下であることがより好ましく、0.5〜5.0Ω/□であることがさらに好ましい。
体積抵抗およびシート抵抗(表面比抵抗)は、例えば、JIS−K7194等に準拠し
て測定することができる。例えば、三菱化学アナリテック社製、ロレスタMCP−T36
0等を用いて簡便に測定することができる。
(3b)導電性被覆層(透明電極層)15
上記金属細線パターン14は、第2のサブセル11bとの対向面が、導電性材料で被覆されることが好ましい(図1の形態)。以下、導電性材料で形成される金属細線パターン14を被覆する層を導電性被覆層(または透明電極層)15と称する。
図1に示す形態においては、金属細線パターン14の第2のサブセル11bとの対向面が導電性材料で被覆されるひとつの形態は、第1のサブセル11aと第2のサブセル11bとの間に形成される導電性被覆層15である形態である。すなわち、導電性材料が、第1のサブセル11aと第2のサブセル11bとの間に導電性被覆層15を形成する。このような形態の場合、金属細線パターン14と導電性被覆層15とで、第1のサブセル11aと第2のサブセル11bとの中間層(中間電極14’)を形成する。
尚、図2に示す形態においては、金属細線パターン14の第2のサブセル11bとの対向面が導電性材料で被覆される他の形態は、導電性材料が、第2のサブセル11bの最下層に形成されてなる第2の正孔輸送層18bを兼ねる形態である。すなわち、図2に示す本形態の並列タンデム型の光電変換素子10’では、第2のサブセル11bの最下層は第2の正孔輸送層18bとなるが、この第2の正孔輸送層18bが、金属細線パターン14を被覆することで、導電性被覆層15となってもよい(導電性被覆層15の役割を果たしてもよい)のである(図2参照)。この場合、第2の正孔輸送層18b兼導電性被覆層15と金属細線パターン14とから、第1のサブセル11aと第2のサブセル11bとの中間層(中間電極14’)が形成されているものといえる。また、第2のサブセル11bは、最下層は第2の正孔輸送層18b兼導電性被覆層15と、第2の光電変換層17bと、第2の電子輸送層16bとから形成されているものといえる。
本発明では、金属細線パターン14と導電性被覆層15(兼第2の正孔輸送層18b)とが、図1、2に示すような積層構造を形成することで、金属または金属酸化物から形成される金属細線パターン14)、あるいは導電性被覆層15(兼第2の正孔輸送層18b)単独では得ることのできない高い導電性を、電極面内において均一に得ることができる。
本発明において、導電性被覆層15は、金属細線パターン14より比較的低導電性かつ高透明性であることが好ましい。導電性被覆層15のシート抵抗(表面比抵抗)は、105Ω/□以下であることが好ましく、104Ω/□以下であることがより好ましく、103Ω/□以下であることがさらに好ましく、300〜1000Ω/□であることが特に好ましく、500〜800Ω/□であることが最も好ましい。
シート抵抗(表面比抵抗)は、上述した金属細線パターン(金属グリッド)14と同様にして市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
導電性被覆層15の乾燥膜厚は30〜2000nmであることが好ましい。導電性の点から、100〜1800nmであることがより好ましく、電極の表面平滑性の点から、200〜1500nmであることがさらに好ましい。また、透明性の点から、200〜1000nmであることがより好ましい。なお、導電性被覆層15の乾燥膜厚は、金属細線パターン14の開口部Pで測定した値を意味する。
導電性被覆層15に用いられる導電性材料は、導電性ポリマーを必須に含む。また、導電性被覆層15は、水酸基含有非導電性ポリマー、水溶性有機化合物、水分散性自己分散型ポリマーをさらに含んでいてもよい。なお、水酸基含有非導電性ポリマーは、「水分散性ポリマー」とも称する。また、本発明において、上記導電性材料が、導電性ポリマーと、水分散性ポリマー(水酸基含有非導電性ポリマー)または水分散性自己分散型ポリマーと、を含むのが好ましい。
(3b−1)導電性ポリマー
本発明の導電性被覆層15に用いられる導電性材料に必須に含まれる導電性ポリマーは、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーである。こうした導電性ポリマーは、後述するπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマー(π共役系導電性高分子前駆体モノマー)を、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリアニオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
(3b−2)π共役系導電性高分子
上記導電性被覆層(透明電極層)15に使用される導電性ポリマー(導電性高分子)の構成材料の1種であるπ共役系導電性高分子としては、特に限定されず、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。中でも、導電性、透明性、安定性等の観点からポリチオフェン類やポリアニリン類が好ましい。ポリエチレンジオキシチオフェンであることが最も好ましい。
(3b−3)π共役系導電性高分子前駆体モノマー
上記π共役系導電性高分子の重合に用いられるπ共役系導電性高分子前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
(3b−4)ポリアニオン
上記導電性被覆層(透明電極層)15に使用される導電性ポリマー(導電性高分子)の構成材料の1種であるポリアニオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
このポリアニオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。また、ポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
上記ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
上記ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。また、化合物内にフッ素を有するポリアニオンであっても良い。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)などをあげることができる。これらのうち、スルホ基を有する化合物であると、導電性ポリマー含有層である導電性被覆層(透明電極層)15を塗布、乾燥することによって形成した後に、100℃以上200℃以下の温度で加熱処理を施した場合、この塗布膜の洗浄耐性や溶媒耐性が著しく向上することから、より好ましい。さらに、これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、π共役系導電性高分子との相溶性が高く、また、得られる導電性ポリマーの導電性をより高くできる。
上記ポリアニオンの重合度は、導電性の観点から、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
上記ポリアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
上記アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。得られたポリマーがポリアニオン塩である場合には、ポリアニオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
本発明の導電性被覆層(透明電極層)15において、π共役系導電性高分子前駆体モノマーとポリアニオンとの混合比(質量比)としては、導電性と製膜性のの観点から、好ましくは2:1〜1:10、より好ましくは1.5:1〜1:6、さらに好ましくは1:1〜1:3である。
こうした導電性被覆層(透明電極層)15に使用される導電性ポリマーは、市販の材料も好ましく利用できる。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT:PSSと略す)が、H.C.Starck社からCleviosシリーズとして、Aldrich社からPEDOT:PSSの483095、560596として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。本発明において、こうした剤も好ましく用いることが出来る。
本発明の導電性被覆層(透明電極層)15において、上記導電性ポリマーは、塗布性の観点から、導電性被覆層(透明電極層)15の固形分100質量%に対して、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは1〜25質量%、さらに好ましくは1.2〜20質量%である。
本発明の導電性被覆層(透明電極層)15において、上記導電性ポリマーに加えて、2nd.ドーパントとして水溶性有機化合物をさらに含有してもよい。本発明で用いることができる水溶性有機化合物には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。前記酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、水酸基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物などが挙げられる。前記水酸基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリンなどが挙げられ、これらの中でも、導電性の観点から、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。前記カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。前記エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、などが挙げられる。前記スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが導電性の観点から、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
導電性被覆層(透明電極層)15に含まれる上記導電性ポリマーと上記水溶性有機化合物との比率は、分散性と導電性の観点から、導電性ポリマーを100質量部とした場合、水溶性有機化合物が30〜900質量部であることが好ましく、100〜900質量部であることがより好ましい。
(3b−5)水酸基含有非導電性ポリマー
導電性被覆層(透明電極層)15は、上記導電性ポリマーに加えて、さらに水酸基含有非導電性ポリマー(水分散性ポリマー)を含むことが好ましく、これにより、高い導電性、高い透明性、耐水性、グリッド被覆性、平滑性を同時に満たすことができる。
本発明における上記水酸基含有非導電性ポリマーとは、主たる共重合成分が下記モノマーM1、M2、M3からなり、共重合成分の50mol%以上の成分が該モノマーのいずれか、あるいは、合計が50mol%以上ある共重合ポリマーである。該モノマー成分の合計が80mol%以上であることが、分散性と導電性の観点から、より好ましく、さらに、いずれか単独のモノマーから形成されたホモポリマーであっても良く、また、好ましい実施形態である。共重合成分として、以下に示すポリマー(A)を含むことがさらに好ましい。
上記式中、R1、R2、およびR3は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基を表し、X1、X2、およびX3は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、n、m、およびlは、それぞれ独立して、重合度を表す。なお、n、m、およびlは、水酸基含有非導電性ポリマーが、後述の数平均分子量を満たすような整数である。
上記水酸基含有非導電性ポリマー(好ましくは上記ポリマー(A))においては、水系溶媒に可溶である範囲において、他のモノマー成分が共重合されていてもかまわないが、親水性の高いモノマー成分であることがより好ましい。また、水酸基含有非導電性ポリマー(好ましくは上記ポリマー(A))は、数平均分子量1000以下の含有量が0〜5質量%であることが好ましい。低分子成分が少ないことで、並列タンデム型の光電変換素子10、10’の保存性や、導電層(導電性被覆層(透明電極層)15)に対して垂直方向の導電性に障壁があるような挙動をより低下させることができる。
この水酸基含有非導電性ポリマー(好ましくは上記ポリマー(A))の数平均分子量1000以下の含有量を0〜5質量%とする方法としては、再沈殿法、分取GPCに、リビング重合による単分散のポリマーを合成等により、低分子量成分を除去する、または低分子量成分の生成を抑制する方法を用いることができる。再沈殿法は、ポリマーが溶解可能な溶媒へ溶解し、ポリマーを溶解した溶媒より溶解性の低い溶媒中へ滴下することにより、ポリマーを析出させ、モノマー、触媒、オリゴマー等の低分子量成分を除去する方法である。また、分取GPCは例えばリサイクル分取GPCLC−9100(日本分析工業社製)、ポリスチレンゲルカラムで、ポリマーを溶解した溶液をカラムに通すことにより分子量で分けることができ、所望の低分子量をカットすることができる方法である。リビング重合は、開始種の生成が経時で変化せず、また停止反応等の副反応が少なく、分子量の揃ったポリマーが得られる。分子量はモノマーの添加量により調整できるため、例えば分子量を2万のポリマーを合成すれば、低分子量体の生成を抑制することができる。生産適正から、再沈殿法、リビング重合が好ましい。
本発明の上記水酸基含有非導電性ポリマー(好ましくは上記ポリマー(A))の数平均分子量は、水溶液への分散性と製膜性の観点から、3,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは4,000〜500,000、更に好ましくは5000〜100000の範囲内である。本発明の水酸基含有非導電性ポリマー(好ましくは上記ポリマー(A))の分子量分布は、1.01〜1.30が好ましく、より好ましくは1.01〜1.25である。なお、分子量分布とは、重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで除した値である。数平均分子量1000以下の含有量はGPCにより得られた分布において、数平均分子量1000以下の面積を積算し、分布全体の面積で割ることで割合を換算した。リビングラジカル重合溶剤は、反応条件化で不活性であり、モノマー、生成するポリマーを溶解できれば特に制限はないが、アルコール系溶媒と水の混合溶媒が好ましい。リビングラジカル重合温度は、使用する開始剤によって異なるが、一般に−10〜250℃、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃で実施される。
導電性被覆層(透明電極層)15に含まれる上記水酸基含有非導電性ポリマーとしては、例えば、下記構造のポリマーが好ましく用いられる。
導電性被覆層(透明電極層)15に含まれる上記導電性ポリマーと上記水酸基含有非導電性ポリマーとの比率は、導電性ポリマーを100質量部とした場合、水酸基含有非導電性ポリマーが30〜900質量部であることが好ましく、電流リーク防止、水酸基含有非導電性ポリマーの導電性増強効果、透明性の観点から、水酸基含有非導電性ポリマーが100〜900質量部であることがより好ましい。
(3b−6)水分散性自己分散型ポリマー
上述の水酸基含有非導電性ポリマー(水分散性ポリマー)に替わり、水系溶媒に分散可能な自己分散型ポリマーも本発明において好ましく用いることができる。自己分散型ポリマーとは、ミセル形成を補助する界面活性剤や乳化剤等を含まず、ポリマー単体で水系溶剤に分散可能なものを表わす。一般には自己分散型ポリマー、自己乳化型ポリマー、ソープフリーポリマー、とも呼ばれることがある。
本発明において、「水系溶媒に分散可能」とは、水系溶媒中に凝集せずにπ共役系導電性高分子からなるコロイド粒子が分散している状況であることをいう。コロイド粒子の大きさは一般的に0.001〜1μm(1〜1000nm)程度である。粒子の大きさとしては3〜500nmが好ましく、より好ましくは5〜300nmで、さらに好ましくは10〜100nmである。上記のコロイド粒子については、光散乱光度計により測定することができる。
このような上記水分散性自己分散型ポリマーは、大別してイオン性とノニオン性のポリマーがある。つまり水系溶媒中で解離性基(カルボン酸基等)が解離して電荷を帯びことで自己分散可能となるタイプのポリマーと、ポリエチレンオキシドのような親水性基によって自己分散するポリマーがあるが、本発明においては解離性基を有するタイプのポリマーであることが好ましい。このようなタイプの方が得られる中間電極14’の導電性、密着性を高いものとすることができる。より好ましくはアニオンタイプの解離性基を有するタイプのポリマーである。
また、上記水系溶媒とは、50質量%以上が水である溶媒を表す。もちろん、他の溶媒を含有しない純水であっても良い。即ち、上記水系溶媒としては、純水(蒸留水、脱イオン水を含む)のみならず、酸、アルカリ、塩等を含む水溶液、含水の有機溶媒、さらには親水性の有機溶媒であることを意味し、純水、アルコール系の溶媒、水とアルコールの混合溶媒等が挙げられる。水系溶媒の水(純水)以外の成分は、水に相溶する溶媒であれば特に制限はないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系の溶媒を好ましく用いることができ、中でも、沸点が比較的水に近いイソプロピルアルコールを用いることが形成する膜の平滑性などには有利である。
本発明に係る解離性基含有自己分散型ポリマーは無色透明であることが好ましい。
上記解離性基含有自己分散型ポリマーとしては、フィルムを形成する媒体であれば、特に限定はない。また、透明電極(中間電極14’)表面へのブリードアウト、第2サブセル11b(第2の正孔輸送層18b、第2の光電変換層17b、第2の電子輸送層16b)などを積層した場合の並列タンデム型の光電変換素子10’の素子性能に問題がなければ特に限定はないが、上記(解離性基含有自己分散型)ポリマー分散液中に界面活性剤(乳化剤)や造膜温度をコントロールする可塑剤等は含まないことが好ましい。
本発明に係る上記解離性基含有自己分散型ポリマーの粒径は、5〜100nmが好ましく、より好ましくは8〜80nmで、更に好ましくは10〜50nmである。なおここでいう粒径とは、1次粒子の粒径を指す。上記解離性基含有自己分散型ポリマーの粒径が、5nm以上であれば、導電性高分子(上記導電性ポリマー)との相溶性が高くなりすること0もなく良好な相溶性を有し、導電性高分子(上記導電性ポリマー)のドメインを良好に形成することができるものである。上記解離性基含有自己分散型ポリマーの粒径が100nm以下であれば、導電性高分子(上記導電性ポリマー)との相溶性の低下を招くことなく、優れた透明性および導電性が発揮することができる点で優れている。
本発明に係る上記解離性基含有自己分散型ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、25℃以上80℃以下である。好ましくは30〜75℃で、より好ましくは50〜70℃である。上記解離性基含有自己分散型ポリマーのガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であれば中間電極14’の耐熱性に優れ、透明電極(第2の電極13や中間電極14’)、並列タンデム型の光電変換素子10の環境試験後も優れた性能を維持することができる。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めることができる。
中間電極14’(導電性被覆層(透明電極層)15)の製造に用いる上記解離性基含有自己分散型ポリマーの分散液のpHは、別途相溶させる導電性ポリマー溶液と分離しない範囲であることが望ましく、0.1〜11.0が好ましく、より好ましくは3.0〜9.0で、さらに好ましくは4.0〜7.0である。
上記解離性基含有自己分散型ポリマーに使用される解離性基としては、アニオン性基(スルホン酸、およびその塩、カルボン酸およびその塩、リン酸およびその塩等)、カチオン性基(アンモニウム塩等)等が挙げられる。特に限定はないが、導電性高分子(上記導電性ポリマー)溶液との相溶性の観点から、アニオン性基が好ましい。解離性基の量は、上記自己分散型ポリマーが水系溶媒に分散可能であれば良く、可能な限り少ない方が工程適性的に乾燥負荷が低減されるため好ましい。また、アニオン性基、カチオン性基に使用されるカウンター種に特に限定はないが、導電性被覆層(透明電極層)15、並列タンデム型光電変換素子10を積層した場合の性能の観点から、疎水性で少量が好ましい。
上記解離性基含有自己分散型ポリマーの主骨格としては、ポリエチレン、ポリエチレン−ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレン−ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン−ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリブタジエン−ポリスチレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリアクリレート−ポリエステル、ポリアクリレート−ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン−ポリカーボネート、ポリウレタン−ポリエーテル、ポリウレタン−ポリエステル、ポリウレタン−ポリアクリレート、シリコーン、シリコーン−ポリウレタン、シリコーン−ポリアクリレート、ポリフッ化ビニリデン−ポリアクリレート、ポリフルオロオレフィン−ポリビニルエーテル等が挙げられる。また、これらの骨格をベースに、さらに他のモノマーを使用した共重合でもよい。これらの中でエステル骨格を有するポリエステル樹脂エマルジョン、ポリエステル−アクリル樹脂エマルジョン、エチレン骨格を有するポリエチレン樹脂エマルジョンが好ましい。
市販品としては、例えば解離性基の中でもアニオン性の解離性基を有する自己分散型ポリマーとしては、ポリゾールFP3000(ポリエステル樹脂、アニオン、コア:アクリル、シェル:ポリエステル、昭和電工社製)、バイロナールMD1480(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、バイロナールMD1245(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、バイロナールMD1500(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、バイロナールMD2000(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、バイロナールMD1930(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、プラスコートRZ105(ポリエステル樹脂、アニオン、互応化学社製)、プラスコートRZ570(ポリエステル樹脂、アニオン、互応化学社製)、プラスコートRZ571(ポリエステル樹脂、アニオン、互応化学社製)、ハイテックS−9242(ポリエチレン樹脂、アニオン、東邦化学社製)等、を挙げることができる。
上記解離性基の中でもカチオン性の解離性基を有する自己分散型ポリマーとしては、UW−319SX、UW−223SX、UW−550CS(アクリル樹脂、大成ファインケミカル社製)、リカボンドAW71−L,アクアテックスEC−1200,EC−1700,AC−3100,FK−854,ES−330(ポリオレフィン系、中央理化工業社製),NS−600X,NS−620X,NS−650X(アクリル樹脂、高松油脂社製)、等を挙げることができる。
他方で解離性基を有さないノニオン系(非解離性)の自己分散型ポリマーとしては、モビニール7720(アクリル樹脂、ノニオン、日本合成化学社製)、モビニール7820(アクリル樹脂、ノニオン、日本合成化学社製)、リカボンドBA−10L、BA−20,AW−18LK,AW−919,BE−812H,BE−814,BC−331(ポリオレフィン系、中央理化工業社製)等を挙げることができる。
これらの中でも、解離性基を有するタイプの自己分散型ポリマーであることが好ましい。解離性基を有することで、より最適なドメインサイズとすることができる。特に導電性高分子層に使用されているPSSがアニオン性であるため、同様にアニオン性の解離性基を有する自己分散ポリマーであると、最適かつ経時安定性に優れた中間層を得ることができる。
〔4〕正孔輸送層
本形態の並列タンデム型の光電変換素子10、10’は、第1のサブセル11a、第2のサブセル11bにおいて正孔輸送層を含んでいても良い。特に第2のサブセル11bにおいては第2の光電変換層17bがp型有機化合物半導体17b2とn型有機化合物半導体17b1がランダムに混合された構成(BHJ型の層構造)をしていることから、第2の光電変換層17bと中間電極14’の間に第2の正孔輸送層18bを有していることが好ましい。こうした正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有し、かつ電子を輸送する能力が著しく小さいという性質を有する。正孔輸送層は、光電変換層(17a、17b)と陽極(中間電極14’)との間に設けられ、正孔を陽極(中間電極14’)へと輸送しつつ、電子の移動を阻止することで、電子と正孔とが再結合するのを防ぐことができる。よって、本明細書では、正孔注入層、電子ブロック層等も正孔輸送層の概念に含む。
本発明においては正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料は、特に制限はなく、本技術分野で使用されうる材料を適宜採用することができる。なお本発明に関しては、以下に示す正孔輸送材料を正孔輸送層または第1の光電変換層17aのp型半導17a2材料として用いることができる。
正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料としては導電性高分子を好ましく用いることができる。本発明で正孔輸送材料として好ましく用いられる導電性高分子は、特に限定されないが、π共役系高分子とポリアニオンとを有してなることが好ましい。こうした導電性高分子は、π共役系高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリアニオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
本発明に用いることができる上記導電性高分子に含まれる上記π共役系高分子としては、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類、の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。中でも、導電性、透明性、安定性等の観点からポリチオフェン類やポリアニリン類が好ましい。更にはポリエチレンジオキシチオフェン類であることが好ましい。
本発明で好ましく用いられる上記導電性高分子に含まれる上記ポリアニオンとしては、特に限定されないが、アニオン性基として、スルホ基を有することがより好ましい。ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
また、上記導電性高分子に含まれる上記ポリアニオンとしては、化合物内にフッ素(F)を有するポリアニオンであってもよい。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製、登録商標)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製、登録商標)等を挙げることができる。
こうした正孔輸送材料として用いられる導電性高分子としては公知の材料や市販の材料も好ましく利用できる。例えば、一例を挙げると、ヘレウス社製、商品名CLEVIOS−P等のPEDOT:PSS、欧州特許第1546237号、特開2009−132897号公報等に記載のフッ素系ポリアニオン類(ナフィオン等)含有、または特開2006−225658号公報のようなフッ素系ポリアニオン添加構成、欧州特許第1647566号等に記載のポリチエノチオフェン類、特開2010−206146号に記載のスルホン化ポリチオフェン類、ポリアニリンおよびそのドープ材料、国際公開第2006/019270号パンフレット等に記載のシアン化合物等、Aldrich社からPEDOT−PASS483095、560598として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。本発明において、こうした剤も好ましく用いることができる。
また、正孔輸送材料として、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等もまた、用いられうる。
また、これら以外にも、正孔輸送材料として、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物、およびスチリルアミン化合物等が使用可能であり、これらのうちでは、芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。なお、場合によっては、正孔輸送材料として、p型−Si、p型−SiC、酸化ニッケル、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン等の無機化合物を用いて正孔輸送層を形成してもよい。
さらに上記正孔輸送材料に用いられる上記した各種化合物に含まれる構造単位を高分子鎖に導入した、あるいは、上記した各種化合物を高分子の主鎖とした高分子材料を正孔輸送材料として用いることもできる。また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.,Applied Physics Letters,80(2002),p.139に記載されているような、p型正孔輸送材料を用いることもできる。さらに、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送材料を用いることもできる。一例を挙げると、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)、Appl.Phys.Let.,98,073311(2011)等に記載された材料、および構成が挙げられる。
なお、これらの正孔輸送材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、各材料からなる層を2種以上積層させて正孔輸送層を構成することも可能である。
正孔輸送層の厚さは、特に制限はないが、光電変換効率と耐久性の観点から、1〜1000nmであり、より好ましくは10〜500nm、50〜200nm程度が最も好ましい。リーク防止効果をより高める観点からは、厚さは1nm以上であることが好ましく、また、高い透過率と低い抵抗を維持する観点からは、厚さは1000nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層は、一般的な製膜方法を用いて形成でき、例えば、真空蒸着法、加熱真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、レーザービーム蒸着法、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法などのドライプロセス、塗布法、メッキ法、電界形成法などのウェットプロセスなどを用いることができる。中でも製膜の容易性から塗布法が好ましく用いることができる。
正孔輸送層の導電率は、一般的に高い方が好ましいが、高くなりすぎると電子が移動するのを阻止する能力が低下し、整流性が低くなりうる。したがって、正孔輸送層の導電率は、10−5〜1S/cmであることが好ましく、10−4〜10−2S/cmであることがより好ましい。
〔5〕電子輸送層
本形態の並列タンデム型の光電変換素子10、10’は、第1のサブセル11a、第2のサブセル11bにおいて電子輸送層を含んでいても良い。特に第2のサブセル11bにおいては第2の光電変換層17bがp型有機化合物半導体17b2とn型有機化合物半導体17b1がランダムに混合された構成(BHJ型の層構造)をしていることから、第2の光電変換層17bと第2の電極13(電極下地層13b1)の間に第2の電子輸送層16bを有していることが好ましい。こうした電子輸送層は、電子を輸送する機能を有し、かつ正孔を輸送する能力が著しく小さいという性質を有する。電子輸送層は、光電変換層(17a、17b)と陰極(第1の電極12、第2の電極13)との間に設けられ、電子を陰極へと輸送しつつ、正孔の移動を阻止することで、電子と正孔とが再結合するのを防ぐことができる。よって、本明細書では、電子注入層、正孔ブロック層、励起子ブロック層等も電子輸送層の概念に含む。
電子輸送層に用いられる電子輸送材料は、特に制限はなく、本技術分野で使用されうる材料を適宜採用することができる。例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。また、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、およびこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。上述の正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体や、n型の伝導性を有する無機酸化物(酸化チタン、酸化亜鉛等)も電子輸送材料として用いることができる。
更には電極(14’)に双極子材料を結合させることで界面双極子を形成し、電荷の取り出しを向上させる材料種、例えば国際公開第2008/134492号パンフレット(WO2008/134492)に記載の3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAP−TMOS)などを電子輸送材料として挙げることができる。
また、不純物をドープしたn性の高い電子輸送層(電子輸送材料)を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが電子輸送材料として挙げられる。
具体例としては、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物やその誘導体、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体等を用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体等を上記したn性の高い電子輸送層の電子輸送材料として好ましく用いることができる。
電子輸送層の厚さは、特に制限はないが、通常1〜2000nmである。リーク防止効果をより高める観点からは、厚さは5nm以上であることが好ましい。また、高い透過率と低い抵抗を維持する観点からは、厚さは1000nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。
〔6〕第2の電極13
本発明において、第2の電極13は透明電極(透明導電膜)であり、陽極および陰極のうち陰極としてのとして使用が一般的である。
本発明における第2の電極13は、電極下地層13b1と金属層13b2とが積層されてなる透明電極(透明導電膜)である。本発明は、図1、2に示すように、第2の電極(透明導電膜)13が、含窒素化合物を含む電極下地層13b1と、前記電極下地層13b1上に形成され、周期表第11族の遷移金属元素(銅、銀、金)を含み、厚さが2〜15nm程度である、金属層13b2と、を有する点に特徴を有する。
(6a)電極下地層(13b1)
上記第2の電極(透明導電膜)13の構成部材(要件)である上記電極下地層13b1は、含窒素有機化合物を含んで構成されることから含窒素有機化合物層とも称する。電極下地層13b1は、金属層13b2を形成する際の下地として機能し、電極材としての金属原子の拡散距離を減少させ、金属の凝集を抑える効果を有する。そのため、本発明では、第2の電極13が、含窒素有機化合物層(電極下地層)13b1と、連続した金属層13b2が隣接して積層されたものであるのが望ましい。かように、含窒素有機化合物層(電極下地層)13b1上に連続した金属層13b2を隣接して積層形成することにより、金属層13b2を薄くかつ連続的に製膜することができ、その結果、薄い膜厚でも光透過率を保ちつつ、導電性が確保された透明導電膜(透明電極)としての第2の電極13が得られる。さらに、含窒素化合物を含んで構成された電極下地層13b1は、第2の光電変換層17bと導電性を担う金属層13b2との間に存在していても、高い発電効率および耐久性を達成することができる。
上記電極下地層13b1を構成する上記含窒素有機化合物は、分子内に窒素原子含有基を有する有機化合物であれば特に制限されない。窒素原子含有基は、金属原子との相互作用が強いため、金属層13b2の形成の際(特に連続した金属層13b2を含窒素有機化合物層13b1と隣接して積層形成する場合)に金属原子を拘束し、単層成長型(FW型)の膜成長を可能とする。
さらに、上記電極下地層13b1を構成する、かような含窒素有機化合物は電子輸送性に優れる。このため、含窒素有機化合物を含む電極下地層(含窒素有機化合物層)13b1が陰極(第2の電極13)と第2の光電変換層17bとの間に位置する場合に第2の電子輸送層16bとして機能でき、係る場合には、第2の電子輸送層16bを設けない場合であっても、優れた光電変換効率を発揮しうる。
上記電極下地層13b1を構成する上記含窒素有機化合物は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよいが、金属層13b2の形成時(特に連続した金属層13b2を含窒素有機化合物層13b1と隣接して積層形成する場合)に金属原子と相互作用しやすい構造であることが好ましい。
上記電極下地層13b1を構成する上記含窒素有機化合物の中で1価の窒素原子含有基は窒素原子を含む有機基であれば特に制限されない。例えば、アミノ基、ジチオカルバメート基、チオアミド基、シアノ基(−CN)、イソニトリル基(−N+≡C−)、イソシアナート基(−N=C=O)、チオイソシアナート基(−N=C=S)、または、置換もしくは無置換の含窒素芳香族環を含む基が挙げられる。
上記含窒素芳香族環としては、例えば、アジリジン環、アジリン環、アゼチジン環、アゼト環、アゾリジン環、アゾール(ピロール)環、アジナン環、ピリジン環、アゼパン環、アゼピン環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、イミダゾリン環、ピラジン環、モルホリン環、チアジン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、プリン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、シンノリン環、プテリジン環、アクリジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(モノアザカルボリンともいい、カルボリンを構成する炭素原子のひとつが窒素原子で置き換わった構成の環構成を示す)、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、ベンゾ−C−シンノリン環、ポルフィリン環、クロリン環、コリン環等が挙げられる。含窒素芳香族環を含む基はこれらの含窒素芳香族環を複数組み合わせて用いても良い。この際、複数の含窒素芳香族環は直接結合してもよいし、2価の連結基を介して結合してもよい。また、複数の含窒素芳香族環が縮環していてもよい。
上記電極下地層13b1を構成する上記含窒素有機化合物として好ましくは、電子輸送性の高いフルオレン母核、カルバゾール母核またはアザカルバゾール母核を有するものである。このような電子輸送性の高い材料を電極下地層13b1として使用する場合は、一つの層で第2の電子輸送層16bとしての機能と電極下地層13b1としての機能を兼ねることができ、生産性の観点から好ましい。この場合には、電極下地層13b1兼第2の電子輸送層16bは、第2のサブセル11bの構成部材(要件)の1つとみなすことができると共に、第2の電極13の構成部材(要件)の1つとみなすことができる。
上記電極下地層13b1を構成する上記含窒素有機化合物の中でも、1価の窒素原子含有基としては、11族金属元素への配位性が高い、塩基性の基を含むことが好ましい。具体的には、(1)ピリジン環やピリミジン環を含有する基;(2)アミノ基;(3)ジチオカルバメート基またはチオアミド基等である。
(6a−1)ピリジン環やピリミジン環を含有する基
上記ピリジン環やピリミジン環は、不対電子がπ共役系に取り込まれていないπ電子欠乏系の複素芳香族環であり、これらを含有する基は11族金属元素への配位性が高い。具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、またはこれらを含む縮合環から導かれるものである。この際、ピリジン環、ピリミジン環、またはこれらを含む縮合環から水素原子が1つ除かれてなる1価の基であってもよい。
あるいは、ピリジン環、ピリミジン環、またはこれらを含む縮合環の2つ以上が直接または上述した2価の連結基を介して結合されてなる1価の基であってもよいし、ピリジン環、ピリミジン環、またはこれらを含む縮合環の1以上とこれら以外の含窒素芳香族環の1以上とが直接または上述した2価の連結基を介して結合されてなる1価の基であってもよい。好ましくは、ピリジン環を含む環(ピリジン環含有環)から導かれる基(ピリジン環含有基)を含む。
上記ピリジン環やピリミジン環を含有する基の好ましい一実施形態において、電子輸送性の高いカルバゾール母核またはアザカルバゾール母核のような縮環構造を有する含窒素芳香族環の末端部に上記1価のピリジン環含有基を有する構造である。このような縮環構造は、キャリア輸送性が高いため、電極下地層13が光電変換素子10の第2の光電変換層(発電層)17bや第2の電子輸送層16b等に接触した場合であっても、十分にキャリアを輸送することができ、その結果、発電効率の低下が防止されうる。以下に、電子輸送性の高いカルバゾール母核またはアザカルバゾール母核のような縮環構造を有する含窒素芳香族環由来の2価または3価の連結基(下記化学式N−1〜N−27で表される連結基の構造)を示す。
上記式中において、RNは特に制限されず、水素原子または含窒素芳香族環における置換基として例示した基が挙げられる。
上記ピリジン環やピリミジン環を含有する基の中でも好ましくは、11族金属元素への配位性を向上させる面から、化合物の周辺部(化合物の末端部)にピリジル基を有する。ピリジル基には、窒素原子の位置によって2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基の3つの異性体があり、どの異性体であっても好ましく用いることができるが、2−ピリジル基は特に周期表11族元素の配向性が高い。したがって、より好ましくは、化合物末端部に2−ピリジル基を有する。かかる場合には、良好な透明導電膜を与える傾向がある。特に好ましくは、電子輸送性の高いカルバゾール母核またはアザカルバゾール母核のような縮環構造を有する含窒素芳香族環の末端部にピリジル基を有する基である。とりわけ、下記化学式N−28〜N−34で表される構造を有することが特に好ましい。
(6a−2)アミノ基
上記アミノ基としては、隣接部位に電子吸引性基を有さないものが好ましい。かかるアミノ基は11族金属元素への配位性が高い。アミノ基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アミノ基(アンモニウム基)のいずれであってもよい。ただし、中性である1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基の方が金属原子の配位性が良好であるため好ましい。さらに、溶解性、塗布性の観点から3級アミノ基が好ましい。これに加えて、3級アミノ基は極性の高いNH基を有さないため、水分等の極性溶媒が膜中に残りにくく、得られる透明導電膜である第2電極13、ひいては光電変換素子10の耐久性が改善される傾向がある。なお、アミノ基が4級アミノ基(アンモニウム基)であるとは、アミノ基が塩の形態であることを意味する。すなわち、本発明に係る上記電極下地層13b1を構成する含窒素有機化合物は、窒素原子含有基としてのアミノ基が塩の形態である場合も含む。ここで、4級アミノ基(アンモニウム基)と塩を形成するアニオンの例は、特に制限されないが、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、硫酸イオン、硝酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸などが挙げられる。これらの中でもハロゲン原子が好ましく、中でも臭素原子であることが好ましい。
(6a−3)ジチオカルバメート基またはチオアミド基
上記ジチオカルバメート基またはチオアミド基は、ジチオカルバメートまたはチオアミド由来の1価の基であり、周期表第11族元素に対して特異的に配位性の高い硫黄原子を有する。ジチオカルバメート基またはチオアミド基はそれぞれ、置換位置によって2つの異性体が存在する。ジチオカルバメート基の場合、一方は窒素原子が他の基と連結する形態で、−N(RA)−C(=S)−S−RB、といった形態をとり、他方は硫黄原子が他の基と連結する形態で、−S−C(=S)−NRCRD、といった形態をとる。また、チオアミド基の場合、一方は、窒素原子が他の基と連結する形態で、−N(RE)−C(=S)−RF、といった形態をとり、他方は炭素原子が他の基と連結する形態で、−C(=S)−NRGRH、といった形態をとる。本発明においてはどちらの形態であっても好ましく用いることができる。好ましくは、複数の硫黄原子を有するジチオカルバメート基であり、より好ましくは、硫黄原子が他の基と連結する形態のジチオカルバメート基である。かかる形態の方が水分等の極性溶媒が膜中に残りにくく、耐久性が良好な傾向がある。
上記RA〜RHは、相互に独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数6〜30のアリール基または置換もしくは無置換の炭素原子数1〜30のヘテロアリール基を表す。
電極下地層13b1の膜厚(乾燥時の厚さ)は、特に制限はないが、通常1〜2000nmである。均一な金属層13b2を得る(特に連続した金属層13b2を隣接して積層形成する)観点からは、厚さは3nm以上であることが好ましい。また、高い透過率と低い抵抗を維持する観点からは、厚さは1000nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。より好ましくは、5〜30nmの範囲であり、さらに好ましくは5〜25nmであり、特に好ましくは5〜20nmである。
電極下地層13b1は、本発明に係る含窒素有機化合物による効果を損なわない範囲内で他の材料を含みうる。例えば、第2の光電変換層17bと陰極(第2の電極13)の構成部材としての金属層13b2との間に電極下地層13b1が配置される場合(第2の電子輸送層16bとしての機能を兼ね備える場合)、電極下地層13b1は、他の電子輸送材料を含みうる。この他、フッ化リチウム、炭酸セシウム等を含んでもよい。
(6b)金属層13b2
上記第2の電極(透明導電膜)13の構成部材(要件)である上記金属層13b2は、周期表第11族の金属元素を含んで構成され、電極材としての高い導電性と高い透明性とを有する。透明導電膜が第2の電極13として使用される場合、金属層13b2が実際に導電材としての役割を担うこととなる。
上記周期表第11族の金属元素としては、具体的には、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)が挙げられる。これらの金属元素は仕事関数が深く安定な材料であり、透明導電膜(透明電極)である第2の電極13の耐久性を向上させることができる。これらは、単体として用いてもよいし、合金として用いてもよい。合金としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)の少なくとも2種を組み合わせたものや、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)の少なくとも1種に、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ネオジウム(Nd)、ビスマス(Bi)などの金属を1種類以上添加したものがある。好ましくは、導電性の観点から銀、銅、またはこれらの合金が好ましく、より好ましくは銀または銀合金(例えば、Ag−Au、Ag−Au−Cu、Ag−Au−Nd、Ag−Biなど)であり、特に好ましくは銀である。
上記金属層13b2に使用される金属材料は、通常不透明であるため、透明性を得るためには薄膜とする必要がある。しかし、一般に、金属は非常に薄い領域では核成長型(Volumer−Weber:VW型)での膜成長により島状に孤立し易く、通常の基板上に周期表第11族金属(たとえば銀)を蒸着すると、15nm以下(特に10nm以下)では通常島状の構成となり、島同士の連続性がないために絶縁性の薄膜となる。このように、従来の方法で製膜された金属膜は、透明性と導電性とがトレードオフの関係にあり、その両立は困難であった。
これに対して本発明では周期表第11族の金属元素との相互作用の大きい含窒素有機化合物を有する電極下地層(含窒素有機化合物層)13b1上に金属層13b2を形成するため、単層成長型(Frank−van der Merwe:FW型)の膜成長が可能となり、その結果、含窒素有機化合物層13b1上に連続した金属層13b2を隣接して積層することができ、透明かつ高導電性の連続した金属薄膜(金属層13b2)が得られる。したがって、薄い膜厚として光透過率を保ちつつ導電性が確保された、電極下地層13b1と薄膜状の金属層13b2とが積層されてなる透明導電膜(透明電極)の第2の電極13とすることができる。
具体的には、第2の電極13を構成する金属層13b2の厚さ(膜厚)は、15nm以下、好ましくは2〜15nm、より好ましくは2〜10nmの範囲である。金属層13b2の厚さ(膜厚)が15nmを超える場合には、可視光透過率が低下し、透明性を確保することができない。金属層13b2の厚さ(膜厚)の下限値は特に制限されるものではないが、2nm以上であれば、シート抵抗の増大を抑制でき、導電膜としての機能を十分に果たすことができる点で優れている。金属層13b2の厚さ(膜厚)は、透明性および導電性の両立を図る観点から、5〜8nmの範囲が特に好ましいものである。
上記金属層13b2は、透明性および導電性を損なわない範囲で、上記金属元素以外に、他の材料を含んでいてもよい。具体的には、膜の硬度を調整する目的で、炭酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の金属塩やキレート剤;膜の表面張力を調整する目的で、アニオン系、カチオン系及びノニオン系等の界面活性剤;バルクヘテロジャンクション型の有機半導体層である第2の光電変換層17bとの電気的抵抗低減の目的で、フッ化リチウムなどのアルカリ金属化合物のような共蒸着可能な電子輸送性材料を添加しうる。さらには、後述するダイコート法、インクジェット法等により上記金属層13b2を形成する場合には、製膜に使用した溶媒や添加剤が金属層13b2内に含まれうる。
(6c)保護層
なお、上記透明導電膜である第2の電極13の構成部材の1つとして使用される金属層13b2は、屈折率として虚数部を持っており、これらの項に起因する長波長部の透過率低下を抑制するためには、屈折率が1.9よりも高い高屈折率層(図示せず)が金属層13b2の近傍(〜10nm以下の距離)にあると、長波長部まで透明度の高い透明電極とすることができる。屈折率の上限としては特にないが、一般に透明高屈折率材料の上限は、2.5である。このような材料としては、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物等を挙げることができる。
なお、このような第2の電極13の構成部材として使用される高屈折率層の位置は、金属層13b2の上でも下でも良く、屈折率2.0〜2.5であることが好ましく、より好ましくは2.1〜2.3である。このような化合物としては、酸化チタン等を挙げることができる。
また、第2の電極13の構成部材として使用される保護層(図示せず)として、上記した高屈折率層が形成され、最外層(上記金属層13b2の外層側)となると、空気の界面で反射が起こりやすくなり、光電変換効率が低下するため、さらに、保護層として屈折率1.5以下の低屈折率層(図示せず)を最外層となるように高屈折率層上に積層して形成することにより、反射率を低下させて光電変換効率を高めることができる。
上記保護層を構成する低屈折率層は、好ましくは屈折率1.30〜1.50の化合物であり、より好ましくは1.30〜1.40の化合物である。具体的にはフッ化マグネシウム(屈折率1.38)等を用いることが好ましい。
また、第2の電極13の構成部材として使用される保護層(図示せず)として、上記金属層13b2の上に、透過率と屈折率低減の観点から、上記した含窒素有機化合物層(電極下地層)13b1と同様の含窒素有機化合物を用いた含窒素有機化合物層を形成してもよい(後述する実施例1〜9参照のこと)。
上記保護層の膜厚は、特に制限されないが、光学干渉による透過率の低下を抑制する点で、150nm以下であることが好ましく、ガスバリア性の点で、10nm以上であることがより好ましい。より好ましくは20〜50nmの範囲である。
〔7〕第1の電極12
本形態の第1の電極12に使用される電極材料は、並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子10として駆動する限りにおいては特に制限はなく、本技術分野で使用されうる電極材料を適宜採用することができる。本発明においては第1の電極12と第2の電極13が陰極となり、中間電極14’が陽極となることが好ましい。陽極は陰極と比較して相対的に仕事関数が大きい材料から構成されることが好ましく、逆に陰極は陽極と比較して相対的に仕事関数が小さい材料から構成されることが好ましい。なお、電荷輸送層(正孔輸送層または電子輸送層)が存在する場合は、上記以外の形態であっても十分に並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子10として機能する。また、本発明においては第1の電極12は透明である必要はなく、n型シリコン基板(n型結晶シリコン半導体)17a1上に設けられるものであれば好ましく用いることができる。
第1の電極12に使用される電極材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム、スズ、亜鉛等の金属、金属化合物、および合金(具体的には、インジウムスズ酸化物(ITO)、SnO2、ZnO、IDIXO(In2O3−ZnO));カーボンナノ粒子、カーボンナノワイヤー、カーボンナノ構造体等の炭素材料;が挙げられる。これらの電極材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上の材料を混合して使用してもよい。また、これらの電極材料の形状も特に制限はなく、ナノ粒子、ナノワイヤー、極薄膜等の形状で使用されうる。さらに、各材料からなる層を2種以上積層させて第1の電極12を構成することも可能である。
また、上記第1の電極12および第2の電極13のシート抵抗は、特に制限はないが、数百Ω/□以下が好ましく、50Ω/□以下がより好ましく、15Ω/□以下がさらに好ましい。なお、第1の電極12および第2の電極13のシート抵抗の下限は、特に制限されないが、通常、第2の電極13では380〜800nmの波長の可視光に対して80%以上の透過率を示す範囲でなるべく低いほど好ましい。通常は0.01Ω/□以上、好ましくは0.1Ω/□以上であれば本発明の効果を得ることができる。ここで、第1の電極12および第2の電極13のシート抵抗は、同じであってもあるいは異なってもよい。
また、第1の電極12および第2の電極13の膜厚も特に制限はなく、材料によって異なるが、通常、10〜1000nmであり、好ましくは100〜200nmであり、光の透過率または抵抗の観点から当業者により適宜設定されうる。ここで、第1の電極12および第2の電極13の膜厚は、同じであってもあるいは異なってもよい。
また、中間電極14’のシート抵抗は、10Ω/□以下であることが好ましく、0.01〜8Ω/□であることがより好ましい。この場合、シート抵抗は中間電極14’の形状(線幅、高さ、ピッチ、形状)によって決まり、特にピッチが狭ければ(例えば、ピッチが1〜2mm程度であれば)、中間電極14’よりも抵抗の高い材料を使用する場合であっても窓部の抵抗影響はほとんど受けない。
〔8〕基板
本発明に関わる並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子10(さらには該光電変換素子10を用いてなる太陽電池)においては、透明電極は頂部電極(第2の電極13)であるため、基板(n型シリコン基板;n型結晶シリコン半導体17a1)は透明である必要はない。
また、第1の光電変換層17a内のn型シリコン(n型結晶シリコン半導体17a1)自体を基板として用いても良い。また、第1の光電変換層17a内のn型シリコン基板(n型結晶シリコン半導体17a1)と第1の電極12の下に支持体として基板を有していても良いが、図1、2に示すように、第1の光電変換層17a内のn型シリコン(n型結晶シリコン半導体17a1)自体を基板として用いるのが望ましい。
なお、第1の電極12の下に支持体として用いることのできる基板としては、特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から樹脂フィルム等の樹脂基板を用いることが望ましい。樹脂基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、なかでも耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることが好ましい。
上記支持体として用いることのできる基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層(図示せず)を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
また、酸素および水蒸気の透過を抑制する目的で、支持体として用いることのできる基板にはバリアコート層(図示せず)やハードコート層(図示せず)が予め形成されていてもよい。
〔9〕その他の層
本形態の光電変換素子10、10’は、上記の各部材(各層)の他に、光電変換効率の向上や、素子の寿命の向上のために、他の部材(他の層)をさらに設けてもよい。その他の部材としては、例えば、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層、平滑化層等が挙げられる。
また、本発明の光電変換素子10、10’は、太陽光Lのより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてもよい。光学機能層としては、例えば、反射防止層(膜)、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極(第1の電極12)やで反射した光を散乱させて再度発電層(光電変換層17a、17b)に入射させることができるような光拡散層等が挙げられる。
本発明の並列タンデム型の光電変換素子の厚さとしては、太陽光の吸収効率と軽量性の観点から、150μm〜1500μm、好ましくは200〜1000μm、より好ましくは200〜800μmの範囲である。
以下、本形態の光電変換素子10(10’)の製造方法の各工程について、詳細に説明する。
(工程1)
本形態の製造方法では、第1のサブセル11aの積層構造を形成する工程1として、まず、n型結晶シリコン半導体(n型結晶Si基板)17a1を準備するものである。該n型結晶シリコン半導体(n型結晶Si基板)17a1は、市販のものを入手して用いてもよいし、あるいおはSiウエハー(半導体)の製造メーカーに特注で、所望の厚さ、ドーパントの種類やドープ量等の仕様に応じて作製された製品(特注品)を購入して用いてもよいなど、特に制限されるものではない。
次にn型結晶シリコン半導体(n型結晶Si基板)17a1上にp型有機化合物半導体17a2を形成(成膜)して第1の光電変換層17a(第1のサブセル11a)を作製する。p型有機化合物半導体17a2を形成するための具体的な手法について特に制限はないが、好ましくは、蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。溶液塗布法を用いてp型有機化合物半導体17a2を形成する場合には、適当な溶剤に溶解・分散させた溶液を、適当な塗布法を用いてn型結晶シリコン半導体(n型結晶Si基板)17a1上に塗布し、乾燥させればよい。溶液塗布法に用いられる塗布法としては、キャスト法、ダイコーティング法、スピンコート法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、グラビアコート法、スプレーコーティング法、ディッピング(浸漬)コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法、Langmuir−Blodgett(LB)法等の通常の方法を用いることができる。なお、塗布法に使用する溶液の固形分濃度は、塗布方法や膜厚によっても変動しうるが、0.5〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。また、塗布の際の塗布液および/または塗布面の温度は、特に制限はないが、塗布・乾燥時の温度変動による析出、ムラを防ぐといった観点から、好ましくは30〜180℃であり、より好ましくは50〜160℃である。さらに、乾燥の具体的な形態についても特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。乾燥(加熱処理)条件の一例を挙げると90〜180℃程度の温度で、5〜90分間程度といった条件が例示される。乾燥に使用する装置としては、ホットプレート、温風乾燥、赤外線ヒーター、マイクロウエーブ、真空乾燥機等が挙げられるが、これ以外の乾燥装置を用いることも勿論可能である。
尚、必要に応じて、第1の光電変換層17a上に第1の電子輸送層を形成する方法としては、特に制限されるものではなく、後述する第2の光電変換層17b上に第2の電子輸送層16bを形成する方法をそのまま適用することができる。
(工程2)
次に、本形態の製造方法では、上記工程1で得られた第1のサブセル11a上に中間電極(陽極)14’を形成する工程2において、まず、有機化合物半導体17a2上に金属グリッド(金属細線パターン)14を形成する。金属細線パターン14の形成方法としては、前述のごとく、各種塗布方法を選択することができるが、金属ナノ粒子または金属酸化物ナノ粒子の分散液を用いた液相製膜法で形成されることが好ましく、生産性と、細線形状の制御の観点から、スクリーン印刷、グラビア、フレキソ等のダイレクトパターニングが好ましい。細線形状は、使用する金属ナノ粒子または金属酸化物ナノ粒子の分散液濃度および粘度と、それに応じて版の断面形状を変えることで、調整することができる。
また、金属細線パターン14の形成方法として、金属ナノ粒子の原料となる金属錯体を溶解または分散させたインク組成物を用いることが好ましい。これは金属錯体を含むインク組成物をパターン塗布し、続く熱処理によって金属ナノ粒子核を形成させることで、ナノ粒子間が好ましく融着し高い導電性を得るものである。これにより比較的低温プロセスで、表面形状が制御された金属細線パターン14を形成することができる。
更には、金属細線パターン14を印刷直後に経る乾燥工程、熱処理温度などによっても断面形状や所望の表面粗さを制御することができる。乾燥処理の条件として特に制限はないが、本願の好ましい金属細線パターン(表面粗さ、形状)14が得られ、且つ、n型結晶シリコン半導体(n型結晶Si基板)17a1やp型有機化合物半導体17a2や金属細線パターン14自身が損傷しない範囲の温度で乾燥処理することが好ましい。例えば、80℃から200℃で数秒〜数十分の乾燥処理をすることができる。一般的にはナノ粒子の分散液から分散媒成分を乾燥させた後、さらに熱処理を行う事で、導電性を向上することができ、素子性能が向上する。熱処理は、金属細線パターン14を形成した後、オンラインで行ってもよく、オフラインで行ってもよいが、塗布、乾燥後、直ちに行うことが導電性向上の点から好ましい。
次に、金属グリッド14上に透明電極層(導電性被覆層)15を形成して中間電極(陽極)14’を作製する。金属グリッド14上に透明電極層(導電性被覆層)15を形成する方法としては特に制限されるものではなく従来公知の方法を用いることができる。例えば、透明電極層(導電性被覆層)15は、パターン形成された金属グリッド14を被覆するように、導電性ポリマーと、必要に応じて、上述の水酸基含有非導電性ポリマー(水分散性ポリマー)または水分散性自己分散型ポリマーとを含む分散液(以下、「導電性ポリマーを含む分散液」とも称する。)を、塗布、乾燥して膜形成する。透明電極層(導電性被覆層)15の塗布は、透明電極層(導電性被覆層)15が第2のサブセル11bの第2の正孔輸送層18bを兼ねる場合(図2の形態)であっても、第2のサブセル11bの第2の正孔輸送層18bとは別に形成する場合(図1の形態)であっても、前述の液相成膜法を用いることができる。
透明電極層(導電性被覆層)15を塗布した後、適宜乾燥処理を施すことができる。乾燥処理の条件として特に制限はないが、第1のサブセル11aを構成するn型結晶シリコン半導体(n型結晶Si基板)17a1やp型有機化合物半導体17a2が損傷しない範囲の温度で乾燥処理することが好ましい。例えば、80〜150℃で10秒〜10分の乾燥処理をすることができる。本発明において、乾燥終了後、さらに熱処理を行うことで、水酸基含有非導電性ポリマーの架橋反応を促進、完了させることができる。これにより電極の洗浄耐性、溶媒耐性が著しく向上し、さらに素子性能が向上する。特に、並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子10、10’においては、光電変換効率の向上、寿命の向上といった効果が得られる。
熱処理は、50〜200℃の温度で(好ましくは60〜150℃)、30分以上(好ましくは30〜120分)行うことが好ましい。50℃未満では、反応促進効果が小さく、200℃を超える場合、素材への熱的ダメージが増えるためか、効果が小さくなる。処理温度としては80〜150℃であることがより好ましく、処理時間としては1時間以上であることがより好ましい。処理時間の上限は特にないが、生産性の観点から24時間以下であることが好ましい。熱処理は、透明電極層(導電性被覆層)15を塗布、乾燥した後、オンラインで行ってもよく、オフラインで行ってもよい。オフラインで行う場合、さらに減圧下で行うことが、水分の乾燥促進にもつながり、好ましい。
本発明において、酸触媒を用いて水酸基含有非導電性ポリマーの架橋反応を促進、完了させることができる。酸触媒としては、塩酸、硫酸や硫酸アンモニウムを用いることができる。また導電性ポリマーにドーパントとして用いるポリアニオンにおいて、スルホ基含有ポリアニオンを使用することで、ドーパントと触媒を兼用することができる。また、酸触媒の使用と合わせて、前述の熱処理を行うことができ、処理時間の短縮にもつながり、好ましい。
本発明において、金属細線パターン14と透明電極層(導電性被覆層)15との密着性をさらに向上させる手段として、シランカップリング剤などを、透明電極層(導電性被覆層)15を形成するための塗布液に補助的に添加し用いてもよいし、透明電極層(導電性被覆層)15を形成する前の金属細線パターン14に、シランカップリング剤を塗布してもよい。好ましいシランカップリング剤としては、金属細線パターン14の表面の金属(例えば、ナノ金属粒子)となんらかの相互作用、もしくは共有結合を形成する剤が好ましい。具体的には、カルボキシル基、メルカプト基(スルフィド基)、アミノ基等を有するシランカップリング剤が好ましい。カルボキシル基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらの付与方法としては、特に制限されず、公知の方法で、シランカップリング剤を、金属細線パターン14に含まれる金属と、透明電極層(導電性被覆層)15に含まれる導電性ポリマーと、反応させることができる。例えば、メルカプト基、スルフィド基を有するシランカップリング剤の場合は、透明電極層(導電性被覆層)15を形成するための塗布液に添加することで付与される。好ましい添加量は0.01〜1vol%であり、さらに好ましくは0.02〜0.5vol%、最も好ましくは0.03〜0.4vol%である。さらに、アミノ基を有するシランカップリング剤の場合は、金属細線パターン14を形成後、適当な溶媒に溶解したシランカップリング剤を処理し、余剰な剤を洗浄した後、透明電極層(導電性被覆層)15を形成させる方法が好ましい。
(工程3)
次に、本形態の製造方法では、上記工程2で得られた中間電極(陽極)14’を形成した側とは反対側に第1の電極(陰極)12を形成する工程3において、まず、n型結晶シリコン半導体(n型結晶Si基板)17a1の面上に第1の電極(陰極)12を形成する。n型結晶シリコン半導体(n型結晶Si基板)17a1の面上に第1の電極(陰極)12を形成する方法は、特に制限はないが、好ましくは、蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、より好ましくは蒸着法である。かかる蒸着法を用いる場合には、上記p型有機化合物半導体17a2を製膜したn型Siウェハー基板17a1を真空蒸着装置チャンバー内に移動させ、5〜0.1×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.1〜10nm/秒でp型有機化合物半導体17a2とは逆の面(n型Siウェハー基板17aの面)上に第1の電極(陰極)12の電極材料(Alメタル等)を所望の厚さに蒸着して積層するのが望ましい。
なお、上記で第1の電極(陰極)12を形成する前に、必要に応じて、n型結晶シリコン半導体(n型結晶Si基板)17a1と第1の電極(陰極)12との間に、第1のサブセル11aの積層構造の1つ(任意の構造)として、第1の正孔輸送層を形成してもよい。第1の正孔輸送層を形成する手段としては、蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。溶液塗布法を用いて第1の正孔輸送層を形成する場合には、上述した正孔輸送材料を適当な溶剤に溶解・分散させた溶液を、適当な塗布法を用いてn型結晶シリコン半導体(n型結晶Si基板)17a1の面上に塗布し、乾燥させればよい。溶液塗布法に用いられる塗布法としては、キャスト法、ダイコーティング法、スピンコート法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、グラビアコート法、スプレーコーティング法、ディッピング(浸漬)コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法、Langmuir−Blodgett(LB)法等の通常の方法を用いることができる。なお、塗布法に使用する溶液の固形分濃度は、塗布方法や膜厚によっても変動しうるが、0.5〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。また、塗布の際の塗布液および/または塗布面の温度は、特に制限はないが、塗布・乾燥時の温度変動による析出、ムラを防ぐといった観点から、好ましくは30〜180℃であり、より好ましくは50〜160℃である。さらに、乾燥の具体的な形態についても特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。乾燥(加熱処理)条件の一例を挙げると90〜180℃程度の温度で、5〜90分間程度といった条件が例示される。乾燥に使用する装置としては、ホットプレート、温風乾燥、赤外線ヒーター、マイクロウエーブ、真空乾燥機等が挙げられるが、これ以外の乾燥装置を用いることも勿論可能である。
(工程4)
工程4については、一連の機能層を製膜した基板をグローブボックス(酸素濃度<10ppm、露点温度−80度)に入れ、窒素雰囲気下で作業を行うのが望ましい。
本形態の製造方法では、中間電極(陽極)14’の上に第2のサブセル11bの積層構造を形成する工程4において、まず、中間電極(陽極)14’上に、第2のサブセル11baの積層構造の1つとして、第2の正孔輸送層18bを形成する。第2の正孔輸送層18bを形成する手段としては、一般的な製膜方法を用いて形成でき、例えば、真空蒸着法、加熱真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、レーザービーム蒸着法、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法などのドライプロセス、溶液塗布法、メッキ法、電界形成法などのウェットプロセスなどを用いることができる。即ち、蒸着法等のドライプロセス、溶液塗布法等のウェットプロセスのいずれであってもよいが、好ましくはウェットプロセス、中でも溶液塗布法である。溶液塗布法を用いて第2の正孔輸送層18bを形成する場合には、上述した正孔輸送材料を適当な溶剤に溶解・分散させた溶液を、適当な塗布法を用いて中間電極(陽極)14’の透明電極層(導電性被覆層)15上に塗布し、乾燥させればよい。溶液塗布法に用いられる塗布法としては、キャスト法、ダイコーティング法、スピンコート法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、グラビアコート法、スプレーコーティング法、ディッピング(浸漬)コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法、Langmuir−Blodgett(LB)法等の通常の方法を用いることができる。また、溶液塗布法の中でも、印刷技術を用いた直接パターニング法、例えば、インクジェット印刷法などを好ましく用いることができる。なお、塗布法に使用する溶液の固形分濃度は、塗布方法や膜厚によっても変動しうるが、0.5〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。また、塗布の際の塗布液および/または塗布面の温度は、特に制限はないが、塗布・乾燥時の温度変動による析出、ムラを防ぐといった観点から、好ましくは30〜180℃であり、より好ましくは50〜160℃である。さらに、乾燥の具体的な形態についても特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。乾燥(加熱処理)条件の一例を挙げると90〜180℃程度の温度で、5〜90分間程度といった条件が例示される。乾燥に使用する装置としては、ホットプレート、温風乾燥、赤外線ヒーター、マイクロウエーブ、真空乾燥機等が挙げられるが、これ以外の乾燥装置を用いることも勿論可能である。
続いて、上記で形成した第2の正孔輸送層18b上に、第2のサブセル11bの積層構造の1つとして、p型有機化合物半導体17b2およびn型有機化合物半導体17b1を含む第2の光電変換層(BHI型の層)17bを形成する。第2の光電変換層(BHI型の層)17bを形成するための具体的な手法について特に制限はないが、好ましくは、p型有機化合物半導体17b2およびn型有機化合物半導体17b1をそれぞれ、または一括して、適当な溶剤に溶解・分散させた溶液を、適当な溶液塗布法(具体的な形態については、例えば、p型有機化合物半導体17a2の形成方法や第1の正孔輸送層の形成方法や透明電極層(導電性被覆層)15の形成方法として上述した通りである)を用いて第2の正孔輸送層18b上に塗布し、乾燥させればよい。その後、残留溶媒および水分、ガスの除去、および半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、光電変換層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、第2の光電変換層17bの正孔と電子(キャリア)の移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。このようにして、p型有機化合物半導体17b2およびn型有機化合物半導体17b1が一様に混合され、バルクヘテロジャンクション(BHJ)型の光電変換層17bを有する並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子10とすることができる。
一方、p型有機化合物半導体17b2およびn型有機化合物半導体17b1の混合比の異なる複数層からなる第2の光電変換層(例えば、p−i−n構造)17bを形成する場合には、一の層を塗布後に、当該層を不溶化(顔料化)し、その後、他の層を塗布することにより形成することが可能である。
なお、ポリアルキレンイミンを含む第2の光電変換層17bを形成する場合、例えば、p型有機化合物半導体17b2および/またはn型有機化合物半導体17b1とポリアルキレンイミンと適当な溶媒に溶解・分散させた溶液を調製し、これを塗布、乾燥すればよい。
当該第2の光電変換層17bを形成する工程は、酸素や水分に曝さないようにするために窒素雰囲気下のグローブボックス内で行うことが好ましい。このように、窒素雰囲気下で行うことにより、大気中の酸素または水分によりp型有機化合物半導体17b2およびn型有機化合物半導体17b1が劣化するのを防ぎ、並列タンデム型の光電変換素子10の耐久性を高めることができる。なお、第2の光電変換層17b内のp型有機化合物半導体17b2のLUMO準位とn型有機化合物半導体17b1のLUMO準位の差が0.9eV以上1.3eV以下とするには、基本はp型有機化合物半導体17b2および/またはn型有機化合物半導体17b1材料を変えればよく、これらの材料の特性を考慮して第2の光電変換層17bの設計を行えばよい(実施例の表1参照)。また、第2の光電変換層内の前記p型有機化合物半導体のバンドギャップを1.8eV以上とするには、基本は、p型有機化合物半導体17b2材料を変えればよい(実施例の表1参照)。
続いて、上記で第2の光電変換層17b上を形成した後、この第2の光電変換層17b上に、第2のサブセル11bの積層構造の1つとして、第2の電子輸送層16bを形成する。これにより第2のサブセル11bの積層構造を形成することができる。第2の電子輸送層16bを形成する手段としては、蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。溶液塗布法を用いて第2の電子輸送層16bを形成する場合には、上述した電子輸送材料を適当な溶剤に溶解・分散させた溶液を、適当な塗布法を用いて第2の光電変換層17b上上に塗布し、乾燥させればよい。溶液塗布法に用いられる塗布法としては、キャスト法、ダイコーティング法、スピンコート法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、グラビアコート法、スプレーコーティング法、ディッピング(浸漬)コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法、Langmuir−Blodgett(LB)法等の通常の方法を用いることができる。なお、塗布法に使用する溶液の固形分濃度は、塗布方法や膜厚によっても変動しうるが、0.5〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。また、塗布の際の塗布液および/または塗布面の温度は、特に制限はないが、塗布・乾燥時の温度変動による析出、ムラを防ぐといった観点から、好ましくは30〜180℃であり、より好ましくは50〜160℃である。さらに、乾燥の具体的な形態についても特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。乾燥(加熱処理)条件の一例を挙げると90〜180℃程度の温度で、5〜90分間程度といった条件が例示される。乾燥に使用する装置としては、ホットプレート、温風乾燥、赤外線ヒーター、マイクロウエーブ、真空乾燥機等が挙げられるが、これ以外の乾燥装置を用いることも勿論可能である。なお、第2の電子輸送層16bに代えて、工程5で形成する電極下地層13b1を用いてもよい。
(工程5)
次に、本形態の製造方法では、第2のサブセル11b(第2の電子輸送層16b)の上に第2の電極(陰極)13の層構造を形成する工程5において、まず、第2のサブセル11b(第2の電子輸送層16b)の上に、電極下地層(含窒素有機化合物層)13b1を形成する。電極下地層(含窒素有機化合物層)13b1を形成する方法としては、特に制限はないが、一般的な製膜方法を用いて形成でき、例えば、真空蒸着法、加熱真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、レーザービーム蒸着法、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法などのドライプロセス、溶液塗布法、メッキ法、電界形成法などのウェットプロセスなどを用いることができる。即ち、蒸着法等のドライプロセス、溶液塗布法等のウェットプロセスのいずれであってもよいが、より好ましくは蒸着法である。かかる蒸着法を用いる場合には、上記一連の機能層を製膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動させ、1〜5×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.2〜10nm/秒で第2のサブセル11bの第2の電子輸送層16b上に電極下地材料(含窒素有機化合物など)を所望の厚さに蒸着して積層するのが望ましい。
続いて、上記で電極下地層(含窒素有機化合物層)13b1上を形成した後、この含窒素有機化合物層13b1上に、第2の電極13の層構造の1つとして、金属層13b2を形成する。好ましくは、含窒素有機化合物層13b1と、連続した金属層13b2が隣接して積層されたもの(連続膜)として金属層13b2を形成するのが望ましい(実施例2、4〜9参照)。この場合には含窒素有機化合物層13b1上に、膜厚15nm以下の金属層13b2を製膜すればよい。こうした金属層13b2を形成する手段としては、特に制限はないが、上記した蒸着法および溶液塗布法のいずれであってもよいが、より好ましくは蒸着法である。かかる蒸着法を用いる場合には、かかる蒸着法を用いて金属層13b2(好ましくは膜厚15nm以下の金属層13b2)を形成する場合には、上記した蒸着法による電極下地層(含窒素有機化合物層)13b1の形成に引き続いて、真空蒸着装置チャンバー内を1〜5×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧したまま、蒸着速度0.2〜10nm/秒で電極下地層(含窒素有機化合物層)13b1上に金属材料(Agメタル等)を所望の厚さに蒸着して積層するのが望ましい。
また、金属層13b2として金属グリッドを形成してもよい(実施例1参照)。金属層13b2として金属グリッドを形成する手段としては、特に制限はないが、上記した蒸着法および溶液塗布法のいずれであってもよいが、より好ましくは蒸着法である。かかる蒸着法を用いて金属グリッドの金属層13b2を形成する場合にも、上記した蒸着法による電極下地層(含窒素有機化合物層)13b1の形成に引き続いて(または電極下地層(含窒素有機化合物層)13b1を形成することなく、一連の機能層を製膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動させ)、所望の線幅、線間隔(開口率)のメタルマスクを用い、真空蒸着装置チャンバー内を1〜5×10−4Paに真空蒸着装置内を減圧し、蒸着速度0.2〜10nm/秒で電極材料(Agメタル等)を蒸着して、所望の線幅、線間隔(開口率)の格子状金属細線グリッド電極(金属層)13b2を形成してもよい。
最後に、含窒素有機化合物層13b1と、金属層13b2が隣接して積層された金属層(連続膜)13b2上に含窒素有機化合物層(保護層)を形成するのが望ましい(実施例2、4〜9参照)。含窒素有機化合物層(保護層)を形成するする手段としては、特に制限はないが、上記した蒸着法および溶液塗布法のいずれであってもよいが、より好ましくは蒸着法である。かかる蒸着法を用いる場合には、かかる蒸着法を用いて、含窒素有機化合物層を形成する場合には、上記した蒸着法により電極下地層(含窒素有機化合物層)13b1、金属層13b2の蒸着形成に引き続いて、真空蒸着装置チャンバー内を1〜5×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧したまま、蒸着速度0.2〜10nm/秒で金属層13b2上に含窒素有機化合物材料を所望の厚さに蒸着して積層するのが望ましい。これにより、第2の電極を形成することができる。
さらに、上述した各種の層以外の層が含まれる場合には、これらの層を形成するための工程を、溶液塗布法や蒸着法等を用いることで適宜追加して行うことができる。
上記電極(陰極・陽極)、光電変換層、正孔輸送層、電子輸送層等は、必要に応じてパターニングされうる。パターニングの方法は特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。例えば、バルクへテロジャンクション型の第2の光電変換層17bや正孔輸送層・電子輸送層等で使用される可溶性の材料をパターニングする場合には、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、製膜後に炭酸レーザー等を用いてアブレーションする方法、スクライバで直接削り取る方法等でパターニングしてもよいし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしてもよい。一方、電極等で使用される不溶性の材料の場合は、真空蒸着法や真空スパッタ法、プラズマCVD法、電極材料の微粒子を分散させたインキを用いたスクリーン印刷法やグラビア印刷法、インクジェット法等の各種印刷方法、蒸着膜に対しエッチングまたはリフトオフする等の公知の方法を用いることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成してもよい。
また、本形態の並列タンデム型の光電変換素子10、10’は、環境中の酸素、水分等による劣化を防止するために、必要に応じて封止されうる。封止の方法は特に制限はなく、光電変換素子や有機エレクトロルミネッセンス素子等で用いられる公知の手法によって行われうる。例えば、(1)アルミニウムまたはガラス等でできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法;(2)アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと光電変換素子上を接着剤で貼合する手法;(3)ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法;(4)ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)または有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法;ならびに(5)これらを複合的に用いて積層する方法等が挙げられる。
さらに、本形態の並列タンデム型の光電変換素子10、10’は、エネルギー変換効率と素子寿命向上の観点から、並列タンデム型の光電変換素子10、10’全体を2枚のバリア付き基板で封止した構成でもよく、好ましくは、水分ゲッター、酸素ゲッター等を同封した構成であることがより好ましい。
<光電変換素子の用途>
本発明の他の形態によれば、上述した並列タンデム型の光電変換素子10、10’や、上記製造方法により得られる並列タンデム型の光電変換素子10、10’を有する並列タンデム型の太陽電池が提供される。本形態の光電変換素子10、10’は、優れた光電変換効率、耐久性を有するため、これを発電素子とする太陽電池に好適に使用されうる。
また、本発明のさらに他の形態によれば、上述した並列タンデム型の光電変換素子10、10’がアレイ状に配列されてなる光センサアレイが提供される。すなわち、本形態の並列タンデム型の光電変換素子10、10’は、その光電変換機能を利用して、光センサアレイ上に投影された画像を電気的な信号に変換する光センサアレイとして利用することもできる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔光電変換素子SC−101:比較例1〕
白板ガラス基板(50mm×50mm)上に、インジウムスズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積させたもの(シート抵抗:10Ω/□)を、フォトリソグラフィおよび塩酸を用いた湿式エッチングを用いて20mm幅にパターニングし、第1の電極(透明電極;陽極)を形成した。パターン形成した第1の電極を、界面活性剤と超純水の混合液を用いて超音波洗浄した後、さらに超純水を用いて超音波洗浄し、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
導電性高分子およびポリアニオンからなるPEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン) ポリスチレンスルホン酸)(Clevios(登録商標)P4083、ヘレウス社製)分散液(固形分約3質量%)に対し、イソプロパノール20質量%を含む溶液Aを調製した。得られた溶液Aをポアサイズが0.45μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルタでろ過し、上記第1の電極上に、乾燥膜厚が約40nmになるようにブレードコーターを用いて塗布し乾燥させた。さらに120℃で10分間加熱処理し、第2の正孔輸送層を製膜した。
続けて、o−ジクロロベンゼンに、p型有機化合物半導体材料であるP3HT(BASF社製:レジオレギュラー ポリ−3−ヘキシルチオフェン)を1.0質量部、n型有機化合物半導体材料であるPCBM(フロンティアカーボン社製、E100H:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を0.8質量部で混合したものを3.0質量%の割合で溶解させた溶液Bを調製したものを、ポアサイズが0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタでろ過しながら、乾燥膜厚が約150nmになるよう、ブレードコーターを用いて上記第2の正孔輸送層上に製膜し、第2の光電変換層(BHJ型の単層)を形成した。
上記第2の光電変換層まで作製した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動させ、1×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.2nm/秒で電極下地層(第2の弟子輸送層16bの機能を兼ね備えるもの)として下記化学式に示す含窒素有機化合物(L980)20nmを積層し、続いて蒸着速度1.0nm/秒でAgメタルを10nm積層し、さらに下記化学式に示す含窒素有機化合物(L980)を50nm積層することにより第2の電極(透明電極;陰極)を形成し、シングル型の光電変換素子SC−101を作製した。
〔光電変換素子SC−102の作製:比較例2〕
150μm厚のn型Si(100)ウェハー基板(n型結晶シリコン半導体)上に、p型有機化合物半導体材料であるヘレウス社から入手したPEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン) ポリスチレンスルホン酸)分散液であるClevios(登録商標) PH500(登録商標;固形分約5質量%、DMSO5質量%添加溶液)を乾燥膜厚が120nmになるようにブレードコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で110℃10分間加熱し、p型有機化合物半導体を形成し、上記n型Siウェハー基板とp型有機化合物半導体の積層構造からなる第1の光電変換層を作製した。
上記p型有機化合物半導体を製膜したn型Siウェハー基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動させ、1×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度2.0nm/秒でp型有機化合物半導体とは逆の面(n型Siウェハー基板の面)にAlメタルを250nm積層することで第1の電極を形成した。
上記一連の機能層を製膜したSiウェハー基板を真空蒸着装置チャンバー内において、線幅50μm、線間隔1000μm(開口率90%)のメタルマスクを用い、3.0×10−4Paの真空条件で、上記p型有機化合物半導体の上にAg(純度99.999%)を蒸着し、膜厚1μmの格子状金属細線グリッド電極からなる第2の電極(透明電極)を形成し、シングル型の光電変換素子SC−102を作製した。
〔光電変換素子SC−103の作製:比較例3〕
150μm厚のn型Si(100)ウェハー基板(n型結晶シリコン半導体)上に、p型有機化合物半導体材料であるヘレウス社から入手したPEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン) ポリスチレンスルホン酸)分散液であるClevios(登録商標) PH500(固形分約5質量%、DMSO5質量%添加溶液)を乾燥膜厚が120nmになるようにブレードコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で110℃10分間加熱し、p型有機化合物半導体を形成し、上記n型Siウェハー基板とp型有機化合物半導体の積層構造からなる第1の光電変換層を作製した。
次に、第1の光電変換層上に上記Clevios(登録商標) PH500(固形分約5質量%)にイソプロパノール20質量%と、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(sodium polystyrene sulfonate;アルドリッチ(Aldrich)社製)3質量%とを含む溶液Cを調製した。得られた溶液Cを乾燥膜厚が90nmになるようにブレードコーターを用いて塗布を行い、ホットプレート上で150℃10分間加熱を行い第1の正孔輸送層を形成し、第1のサブセルを形成した。
上記一連の機能層を製膜したSiウェハー基板(n型結晶シリコン半導体)を真空蒸着装置チャンバー内に移動させ、1×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度2.0nm/秒で上記第1の正孔輸送層とは逆の面にAlメタルを250nm積層することで第1の電極を形成した。
これ以降は、上記一連の機能層を製膜した基板をグローブボックス(酸素濃度<10ppm、露点温度−80度)に入れ、窒素雰囲気下で作業を行った。
次に、第1の正孔輸送層上に酸化亜鉛(ZnO)ナノ粒子のクロロフォルム溶液(American Chemical Society Published on Web 11/25/2005に記載の方法により得られたものを用いた。)を乾燥膜厚が30nmになるようにブレードコーターを用いて塗布を行い、ホットプレート上で150℃10分間加熱を行い第2の電子輸送層を形成した。
続いて比較例1と同様にして調製した溶液Bを、ポアサイズが0.45μmのPTFEフィルタでろ過しながら、乾燥膜厚が約150nmになるよう、ブレードコーターを用いて上記第2の電子輸送層上に製膜し、第2の光電変換層(BHJ型の単層)を形成し、第2のサブセルを形成した。
第2の光電変換層まで作製した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動させ、1×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.2nm/秒で電極下地層として比較例1と同様の含窒素有機化合物(A)20nmを積層し、続いて蒸着速度1.0nm/秒でAgメタルを10nm積層し、さらに比較例1と同様の含窒素有機化合物(A)を50nm積層することにより第2の電極(透明電極)を形成し、直列(接続型の)タンデム型の光電変換素子SC−103を作製した。
〔光電変換素子SC−104の作製:実施例1〕(以下の実施例1〜9のカッコ内の符号は図1を参照のこと)
150μm厚のn型Si(100)ウェハー基板(n型結晶シリコン半導体;17a1)上に、p型有機化合物半導体(17a2)材料として、ヘレウス社から入手したPEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン) ポリスチレンスルホン酸)分散液であるClevios PH500(登録商標;固形分約5wt%、DMSO5質量%添加溶液)を乾燥膜厚が120nmになるようにブレードコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で110℃10分間加熱し、p型有機化合物半導体(17a2)を形成し、上記n型Siウェハー基板(17a1)とp型有機化合物半導体(17a2)の積層構造からなる第1の光電変換層(17a;第1のサブセル11a)を作製した。
次に、大気下で上記n型Siウェハー基板(17a1)のp型有機化合物半導体(17a2)上に、銀(Ag)ナノ粒子ペースト1(M−Dot SLP 三ツ星ベルト製)をグラビア印刷試験機(K303MULTICOATER;RK Print Coat Instruments Ltd製)を用いて、線幅W50μm、高さH0.8μm、間隔(開口部P)1.0mmの細線格子(金属グリッド14)を印刷した後、110℃、5分の乾燥処理を行い、金属細線パターン(補助電極;金属グリッド14)を作製した。金属細線パターン(補助電極;金属グリッド14)を設けた基板上に、下記組成の透明電極層塗布液をウェット膜厚10μmになるように塗布し、90℃、1分間乾燥した。その後、電気炉を用いて120℃で30分の加熱処理を行い、透明電極層(導電性被覆層15)を形成し、金属細線パターン(金属グリッド14)と透明電極層(導電性被覆層15)とからなる中間電極(14’)を作製した。
・透明電極層塗布液の組成
導電性ポリマー分散液 17.6g
水溶性バインダー水溶液 3.5g
ジメチルスルホキシド 1.0g
上記導電性ポリマー分散液には、Clevios(登録商標) TH510;H.C.Starck社製、固形分1.7質量%のものを用いた。また、水酸基含有非導電性ポリマーの1種である上記水溶性バインダー水溶液には、WP−1(分子構造は下記式の通り)水溶液;数平均分子量33700、分子量分布2.4、固形分20質量%のものを用いた。
上記一連の機能層を製膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動させ、1×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度2.0nm/秒で上記中間電極(14’)とは逆の面(Siウェハー基板の面)にAlメタルを250nm積層することで第1の電極(12)を形成した。
これ以降は上記一連の機能層を製膜した基板をグローブボックス(酸素濃度<10ppm、露点温度−80度)に入れ、窒素雰囲気下で作業を行った。
中間電極(14’)上に、導電性高分子およびポリアニオンからなるPEDOT:PSS(Clevios(登録商標)P4083、ヘレウス社製)分散液(固形分約3質量%)に対し、花王ケミカル株式会社製のエマルゲン0.1質量%、イソプロパノール20質量%を含む溶液Dを調製した。得られた溶液Dをポアサイズが0.45μmのPVDFフィルタでろ過しながら、上記中間電極(14’)上に、乾燥膜厚が約100nmになるようにブレードコーターを用いて塗布し乾燥させた。さらに120℃で10分間加熱処理し、第2の正孔輸送層(18b)を製膜した。
次に、o−ジクロロベンゼンに、p型有機化合物半導体(17b2)材料であるP3HT(BASF社製:レジオレギュラー ポリ−3−ヘキシルチオフェン)と、n型有機化合物半導体(17b1)材料であるPCBM(フロンティアカーボン社製、E100H:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)とを1:1(質量比)で混合したものを3.0質量%の割合で溶解させて調製した溶液Eを、ポアサイズが0.45μmのPTFEフィルタでろ過しながら、乾燥膜厚が約100nmになるよう、ブレードコーターを用いて上記第1の正孔輸送層(18b)上に製膜し、第2の光電変換層(BHJ型の単層;17b)を形成し、第2のサブセル11bを作製した。
次に、ヘレウス社から入手したPEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン) ポリスチレンスルホン酸)分散液であるClevios(登録商標) PH500(固形分約5質量%、DMSO5質量%添加溶液)に花王ケミカル株式会社製のエマルゲン0.1質量%、イソプロパノール20質量%を含む溶液Fを調製し、ブレードコーターで乾燥膜厚が200nmになるように塗布し、透明導電膜(電極下地層13b1)を作製した。
次に、上記一連の機能層を製膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動させ、線幅50μm、線間隔1000μm(開口率90%)のメタルマスクを用い、3.0×10−4Paの真空条件で、Ag(純度99.999%)を蒸着し、膜厚1μmの格子状金属細線グリッド電極(金属層13b2)を形成し、透明導電膜(電極下地層13b1)と格子状金属細線グリッド電極(金属層13b2)からなる第2の電極(透明電極13)を形成し、並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子SC−104を作製した。
〔光電変換素子SC−105の作製:実施例2〕
実施例1の光電変換素子SC−104の作製において、第2の光電変換層(BHJ型の単層;17b)まで作製した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動させ、1×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.2nm/秒で電極下地層(13b1)として比較例1と同様の含窒素有機化合物(A)20nmを積層し、続いて蒸着速度1.0nm/秒でAgメタル(金属層13b2)を20nm積層し、さらに蒸着速度0.2nm/秒で比較例1と同様の含窒素有機化合物(A)(含窒素有機化合物層)を50nm積層することにより第2の電極(透明電極13)を作製した以外は実施例1の光電変換素子SC−104と同様にして並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子SC−105を作製した。
〔光電変換素子SC−106の作製:実施例3〕
実施例1の光電変換素子SC−104の作製において、第2の光電変換層(BHJ型の単層;17b)まで作製した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動させ、1×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度1.0nm/秒でAgメタル(金属層13b2)を20nm積層し、第2の電極(透明電極13)を作製した以外は実施例1の光電変換素子SC−104と同様にして並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子SC−106を作製した。
〔光電変換素子SC−107の作製:実施例4〕
実施例1の光電変換素子SC−104の作製において、第2の光電変換層(BHJ型の単層;17b)まで作製した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動させ、1×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.2nm/秒で電極下地層(13b1)として比較例1と同様の含窒素有機化合物(A)20nmを積層し、続いて蒸着速度1.0nm/秒でAgメタル(金属層13b2)を10nm積層し、さらに蒸着速度0.2nm/秒で比較例1と同様の含窒素有機化合物(A)(含窒素有機化合物層)を50nm積層することにより第2の電極(透明電極13)を作製した以外は実施例1の光電変換素子SC−104と同様にして並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子SC−107を作製した。
〔光電変換素子SC−108の作製:実施例5〕
実施例4の光電変換素子SC−107の作製において、o−ジクロロベンゼンに、p型有機化合物半導体(17b2)材料であるP3HT(BASF社製:レジオレギュラー ポリ−3−ヘキシルチオフェン)と、n型有機化合物半導体(17b1)材料であるICBA(フロンティアカーボン社製、Q400:C60ビスインデン付加体)を1:1(質量比)で混合したものを3.0質量%の割合で溶解させて調製した溶液Gを、ポアサイズが0.45μmのPTFEフィルタでろ過しながら、乾燥膜厚が約100nmになるよう、ブレードコーターを用いて実施例4と同様にして得られた第2の正孔輸送層(18b)上に製膜し、第2の光電変換層(BHJ型の単層;17b)を形成した以外は実施例4の光電変換素子SC−107と同様にして並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子SC−108を作製した。
〔光電変換素子SC−109の作製:実施例6〕
実施例4の光電変換素子SC−107の作製において、o−ジクロロベンゼンに、p型有機化合物半導体(17b2)材料であるポリマーA(文献;2011,Journal of the American Chemical Society,Fluorine Substituted Conjugated Polymer of Medium Band Gap Yields 7% Efficiency in Polymer−Fullerene Solar Cell.に従って得られた下記化学式に示すPBnDT−FTAZ)と、n型有機化合物半導体(17b1)材料であるPCBM(フロンティアカーボン社製、E100H:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を1:1(質量比)で混合したものを3.0質量%の割合で溶解させて調製した溶液Hを、ポアサイズが0.45μmのPTFEフィルタでろ過しながら、乾燥膜厚が約100nmになるよう、ブレードコーターを用いて実施例4と同様にして得られ第2の正孔輸送層(18b)上に製膜し、第2の光電変換層(BHJ型の単層;17b)を形成した以外は実施例4の光電変換素子SC−107と同様にして並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子SC−109を作製した。
上記ポリマーA(PBnDT−FTAZ)の合成例
文献(2011,Journal of the American Chemical Society,Fluorine Substituted Conjugated Polymer of Medium Band Gap Yields 7% Efficiency in Polymer−Fullerene Solar Cell)に従って得られたポリマーA(上記化学式に示すPBnDT−FTAZ)を合成した。詳しくは、ベンゾトリアゾール(HTAZ)をレポート20,21(Balan,A.;Gunbas,G,;Durmus,A.;Toppare,L.Chem.Mater.2008,20,7510及びTanimoto,A.;Yamamoto,T.Macromolecules 2006,39,3546)に従って合成しつつ、フッ素化モノマーFTAZの合成を下記反応式Aに示す。反応式A中の化合物1を標準的にアルキル化することによって、合成を開始した。所望の2位に対する位置選択性が低いため、収率が低いが、これは、このような反応では一般的である(Charushin,V.N.;Kotovskaya,S.K.;Pomanova,S.A.;Chupakhin,O.N.;Tomilov,Y.V.;Nefedov,O.M.;Mendeleev Commun.2005,15,45)。第2段階で、まず、ベンゾトリアゾール環をリチウムジイソプロピルアミド(LDA)で脱プロトン化することによって、ベンゾトリアゾールの4位及び7位を活性化した後、すぐに得られたアニオンをクロロトリメチルシランでクエンチした。次に、得られた炭素−珪素結合を、室温でクロロホルム中で過剰の臭素で修飾することによって、2段階で53%収率で、化合物3が得られる。次に、ネギシカップリング、さらにはN−ブロモスクシンイミド(NBS)による臭素化を行って、フッ素化モノマーFTAZの合成を終了した。
ジスタニルモノマー 2,6−ビス(トリメチルスズ)−4,8−ジ(3−ブチルノニル)[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンによる標準的なマイクロ波Stille重縮合条件(Coffin,R.C,;Peet,J.;Bazan,G.C.Nat.Chem.2009,1,657)を用いたFTAZモノマーの重合によって、共重合体(PBnDT−FTAZ)を95%超の収率で製造した。得られた共重合体を、メタノール、酢酸エチル、ヘキサン、及びクロロホルムによるソックスレー抽出によって精製した。クロロホルム画分から得られた紫色の固体は、高いかつほぼ同一の分子量分布を示した。
〔光電変換素子SC−110の作製:実施例7〕
実施例4の光電変換素子SC−107の作製において、o−ジクロロベンゼンに、p型有機化合物半導体(17b2)材料であるポリマーB(1−material社製 PCDTBT(ポリ[[9−(1−オクチルノニル)−9H−カルバゾール−2,7−ジイル]−2,5−チオフェンジイル−2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル−2,5−チオフェンジイル];下記化学式参照)、Mn=35000、PDI=1.76)と、n型有機化合物半導体(17b1)材料であるPCBM(フロンティアカーボン社製、E100H:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を1:1(質量比)で混合したものを3.0質量%の割合で溶解させて調製した溶液Iを、ポアサイズが0.45μmのPTFEフィルタでろ過しながら、乾燥膜厚が約100nmになるよう、ブレードコーターを用いて実施例4と同様にして得られ第2の正孔輸送層(18b)上に製膜し、第2の光電変換層(BHJ型の単層;17b)を形成した以外は実施例4の光電変換素子SC−107と同様にして並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子SC−110を作製した。
〔光電変換素子SC−111の作製:実施例8〕
実施例4の光電変換素子SC−107の作製において、o−ジクロロベンゼンに、p型有機化合物半導体(17b2)材料であるPBDTDPT2(N含有ポリマー)(文献;Chem.Commun.,2010,46,4997−4999に記載の方法に従って得られる化合物)とn型有機化合物半導体(17b1)材料であるフラーレンA(国際公開第2011/033973号パンフレット(WO2011/033973)に記載の化合物例26に記載のもの;深LUMOC60)を1:1(質量比)で混合したものを3.0質量%の割合で溶解させて調製した溶液Jを、ポアサイズが0.45μmのPTFEフィルタでろ過しながら、乾燥膜厚が約100nmになるよう、ブレードコーターを用いて実施例4と同様にして得られ第2の正孔輸送層(18b)上に製膜し、第2の光電変換層(BHJ型の単層;17b)を形成した以外は実施例4の光電変換素子SC−107と同様にして並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子SC−111を作製した。
〔光電変換素子SC−112の作製:実施例9〕
実施例4の光電変換素子SC−107の作製において、150μm厚のn型Si(100)ウェハー基板(n型結晶シリコン半導体;17a1)上に、p型有機化合物半導体(17a2)材料として、o−ジクロロベンゼンにP3HT(BASF社製:レジオレギュラー ポリ−3−ヘキシルチオフェン)を5.0質量%の割合で溶解させて調製した溶液Kを、ポアサイズが0.45μmのPTFEフィルタでろ過しながら、乾燥膜厚が50nmになるようにブレードコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で110℃10分間加熱し、p型有機化合物半導体(17a2)を形成し、上記n型Siウェハー基板(17a1)とp型有機化合物半導体(17a2)の積層構造からなる第1の光電変換層(17a;第1のサブセル11a)を作製した以外は実施例4の光電変換素子SC−107と同様にして並列(接続型の)タンデム型の光電変換素子SC−112を作製した。
上記で作製した光電変換素子SC−101〜SC−112について、主要な構成、その構成成分等(第1の電極/基板材料、第1の光電変換層のp型有機化合物半導体材料、第2の光電変換層のp型/n型有機化合物半導体材料、第2の電極(透明電極)の構成およそ構成成分、金属層(Ag)の厚さ、金属層(Ag)の形態(膜、グリット等)、透過率)、光電変換素子の構成(シングル型、直列タンデム型、並列タンデム型)などにつき、下記表1のまとめた。
なお、上記第2の電極(透明電極)の透過率の測定は以下により行った。即ち、光透過率の測定は、ガラス基板上に電極下地層と電極層のみからなる単膜を作製し、分光光度計(オーシャンオプティクス社製 Maya2000Pro、同社製光源DT−MINI−2)(λ=550nmの波長)を用い、試料(作製した単膜サンプル)と同じ基材(ガラス基板)をベースラインとして行った。
<第2の光電変換層の特性評価>
上記上記で作製した光電変換素子SC−101、SC−103〜SC−112について、第2の光電変換層のp型有機化合物半導体のLUMO準位とn型有機化合物半導体のLUMO準位の差、および第2の光電変換層のp型有機化合物半導体のバンドギャップを測定した。得られた結果を下記表1に示す。
なお、第2の光電変換層のp型有機化合物半導体のLUMO準位とn型有機化合物半導体のLUMO準位と、第2の光電変換層のp型有機化合物半導体のバンドギャップ(Bg)は、上記したように、それぞれの材料について単膜を作製し、ヴァキュームジェネレーターズ社製、ESCALab200R及びUPS−1ユニットを用いて光電子分光スペクトルを評価し、HOMO準位(仕事関数)を算出し、可視・紫外分光法から得られるスペクトルの吸収端からバンドギャップを算出することにより、LUMO準位を決定した。
<光電変換素子の光電変換率の評価>
上記で作製した光電変換素子SC−101〜SC−112について、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cm2の強度の光を照射し、I−V特性を評価することで、短絡電流密度JSC[mA/cm2]、開放電圧VOC[V]およびフィルファクターFFを測定した。得られた結果を下記表1に示す。
<太陽光の照射角を変更した光電変換率の評価>
上記で作製した光電変換素子SC−101〜SC−112について、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cm2の強度の光を照射し、サンプルフォルダを光に対し60°傾けて固定し、I−V特性を評価することで、短絡電流密度JSC[mA/cm2]、開放電圧VOC[V]およびフィルファクターFFを測定した。
上記で作製した光電変換素子SC−101〜SC−112に対するソーラーシミュレーターの光の入射角度が90°の時の短絡電流密度をJsc(a)、60°傾けた時の短絡電流密度をJsc(b)として、下記[数式1]から光の入射角度に対するJscの保持率を算出した。得られた結果を下記表1に示す。Jscの保持率が高いほど、光の入射角度に対するJscの低下が少なく好ましい。