JP2014047758A - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】補正係数の学習領域の細分化を効率よく実行して燃料噴射制御の精度を向上させることができる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関Eの負荷に応じて予め区画された複数の学習領域A1〜A6を規定するKBUマップ54と、Oセンサ32の出力に基づいて算出されるフィードバック補正係数KO2の平均値KO2aveに対応して学習領域A1〜A6に適用される環境補正係数KBU1〜6を得るための学習を行う学習制御手段56と、環境補正係数KBU1〜6に応じて燃料噴射量を補正する噴射量補正手段52とを備える。A1〜A6の少なくとも1つを親学習領域A3とし、該親学習領域A3での学習完了をトリガとしてこれを2つの子学習領域A3−1,A3−2に分割処理する分割手段55を具備する。学習制御手段56は、子学習領域毎に再度学習を行って新たな環境補正係数A3−1,A3−2を得る。
【選択図】図8

Description

本発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に係り、特に、Oセンサ出力に基づく空燃比フィードバック制御およびリーン化制御を行うようにした内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
従来から、内燃機関を理論空燃比(ストイキ)に近い状態で燃焼させるため、排気管に設けられたOセンサの出力値に基づいて燃料噴射量をフィードバック制御すると共に、燃料噴射量の補正係数をOセンサの出力値に対するフィードバック補正係数KO2の平均値に応じて適宜更新する学習制御を適用したものが知られている。
特許文献1には、エンジン回転数およびスロットル開度で規定される学習領域(フィードバック制御領域)全体を予め6つに区分しておき、エンジンの運転状態が実際に各領域に突入したときに各学習領域での学習を実行するようにした燃料噴射制御装置が開示されている。かかる構成によれば、Oセンサのみで比較的精度の高い燃料噴射制御が可能となり、コストやエミッション性能、燃費性能等を両立することができる。
特開2001−157830号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、理論空燃比付近での燃料噴射制御において十分な性能を達成するものの、例えば、さらなる燃費低減のためにリーン化運転を行う等の要求がある場合には、燃料噴射制御の精度を高めることが望ましい場合がある。燃料噴射制御の精度を高めるには、さらに学習領域の区分を増やすことが考えられるが、単に学習領域を細分化したのでは、運転頻度の低い領域が増えるために学習領域全体の学習が完了するまでに時間がかかるという課題があった。
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、補正係数の学習領域の細分化を効率よく実行して燃料噴射制御の精度を向上させることができる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明は、内燃機関(E)の排気系(18)に設けられるOセンサ(32)と、前記内燃機関(E)の負荷に応じて予め区画された複数の学習領域(A1〜A6)を規定するKBUマップ(54)と、前記Oセンサ(32)の出力に基づいて算出されるフィードバック補正係数(KO2)の平均値(KO2ave)に対応して前記学習領域(A1〜A6)に適用される環境補正係数(KBU1〜6)を得るための学習を行う学習制御手段(56)と、前記環境補正係数(KBU1〜6)に応じて燃料噴射量を補正する噴射量補正手段(52)とを備える内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記学習領域(A1〜A6)のうちの少なくとも1つを親学習領域(A3)とし、該親学習領域(A3)での学習が完了したことをトリガとして前記親学習領域(A3)を少なくとも2つの子学習領域(A3−1,A3−2)に分割処理する分割手段(55)を具備し、前記学習制御手段(56)は、前記子学習領域(A3−1,A3−2)毎に再度学習を行って、新たな環境補正係数(A3−1,A3−2)を得るように構成されている点に第1の特徴がある。
また、前記分割手段(55)は、前記親学習領域(A3)を2つに分割し、前記子学習領域(A3−1,A3−2)では、前記新たな環境補正係数(KBU3−1,KBU3−2)が得られるまでの間、前記親学習領域(A3)の環境補正係数(KBU3)が適用される点に第2の特徴がある。
また、前記親学習領域(A3)を分割する分割線(C)が、前記内燃機関(E)の負荷が低い側に偏って設定される点に第3の特徴がある。
また、前記分割線(C)は、前記子学習領域(A3−1,A3−2)の一方(A3−1)が前記親学習領域(A3)の略3分の1の大きさとなるように設定される点に第4の特徴がある。
さらに、前記内燃機関(E)の負荷が、スロットル開度(TH)とエンジン回転数(NE)との関数によって規定されており、前記分割線(C)が、前記スロットル開度(TH)が一定となる線に沿った直線である点に第5の特徴がある。
第1の特徴によれば、学習領域のうちの少なくとも1つを親学習領域とし、該親学習領域での学習が完了したことをトリガとして親学習領域を少なくとも2つの子学習領域に分割処理する分割手段を具備し、学習制御手段は、子学習領域毎に再度学習を行って、新たな環境補正係数を得るように構成されているので、学習制御を行うに当たり、まず、親学習領域の学習を行って必要な精度を確保し、その後に分割された子学習領域の学習を行うことで、親学習領域の学習完了までの時間を増大させることなく、学習の精度向上を両立することができる。また、すでに学習された親学習領域を分割する手法のため、特別な演算手段等を必要とせず、廉価なシステムで使用できる。
第2の特徴によれば、分割手段は、親学習領域を2つに分割し、子学習領域では、新たな環境補正係数が得られるまでの間、親学習領域の環境補正係数が適用されるので、分割処理の直後から各子学習領域で学習が完了するまでの間でも、親学習領域での学習精度を生かした燃料噴射処理を継続できる。
第3の特徴によれば、親学習領域を分割する分割線が、内燃機関の負荷が低い側に偏って設定されるので、低スロットル開度寄りの位置で学習領域が細分化されることとなり、環境補正係数に影響を与える外乱の代表として、特に、アイドリング運転時の空気量を変更するアイドル調整ねじが操作された際に低スロットル開度側の環境補正係数に与える影響が大きくなるという現象に対応した分割処理を実行できる。
第4の特徴によれば、分割線は、子学習領域の一方が親学習領域の略3分の1の大きさとなるように設定されるので、例えば、子学習領域の分割線を低負荷側に偏らせすぎると、低負荷側の子学習領域での学習頻度が下がってしまう可能性があるが、略3分の1で分割することにより、実際の学習値変化に対応した細分化および学習頻度の両立を実現できる。
第5の特徴によれば、内燃機関の負荷が、スロットル開度とエンジン回転数との関数によって規定されており、分割線が、スロットル開度が一定となる線に沿った直線であるので、学習領域の分割処理が簡単な方法で行われることとなり、演算処理の迅速化を図り、また、環境補正係数を記憶するメモリの容量を抑えることができる。
内燃機関の全体構成を示す図である。 制御ユニットの構成を示すブロック図である。 機関の負荷領域を検索するためのマップである。 空燃比フィードバック領域を示すマップである。 フィードバック領域と各フィードバック領域に設定されるKBUとの関係を示すKBUマップである。 KO2とKBUとの関係を示す説明図である。 図5に示したKBUマップを簡略化した模式図である。 KBUマップの分割方法を示す説明図である。 スロットル開度THとKBUとの関係を示すグラフである。 本実施形態に係る学習領域分割処理の手順を示したフローチャートである。
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る内燃機関の燃料噴射制御装置の構成を示すブロック図である。自動二輪車に搭載される水冷(または空冷)式の内燃機関(エンジン)Eのシリンダボア11には、ピストン12が摺動可能に嵌合されている。エンジンEのシリンダヘッド16には、燃焼室13に混合気を供給する吸気装置14と、燃焼室13からの排ガスを排出する排気装置15とが接続されている。吸気装置14には吸気通路17が形成されており、排気装置15には排気通路18が形成されている。排気装置15と排気通路18との間には触媒コンバータ25が取り付けられている。シリンダヘッド16には、その先端が燃焼室13に突出する点火プラグ20および動弁機構の吸排気バルブが取り付けられている。
吸気装置14には、吸気量を制御するスロットルバルブ21が開閉可能に配設されると共に、スロットルバルブ21より下流側には、燃料を噴射する燃料噴射弁22が設けられている。また、吸気通路17には、スロットルバルブ21を迂回するバイパス通路27が接続されており、このバイパス通路27を流通する空気量をアクチュエータ28で調整することでアイドリング(アイドル)回転数の調整が行われる。アイドル回転数は、アクチュエータ28によって自動調整されるが、ユーザの好みに合わせるため、この自動調整された回転数を基準としてアイドル調整ねじ(A/S)による任意の調整が可能とされる。
制御手段としての制御ユニットCは、点火プラグ20の点火タイミング、燃料噴射弁22からの燃料噴射量およびアクチュエータ28の作動を制御する。制御ユニットCには、スロットルバルブ21の開度を検出するスロットル開度センサ26の出力信号、ピストン12に連接されたクランク軸29の回転数を検出する回転数センサ30の出力信号、エンジン冷却水の水温を検出する水温センサ31の出力信号、排ガス中の残存酸素濃度を検出するために触媒コンバータ25より上流側の排気通路18に取り付けられるOセンサ(酸素センサ)32の出力信号がそれぞれ入力される。
図2は、制御ユニットCの構成を示すブロック図である。制御ユニットCには、基本噴射量マップ33を参照しつつ目標空燃比を得るための基本噴射量を定める基本噴射量算出手段34と、Oセンサ32の出力信号に基づいて空燃比を目標空燃比に近づけるためのフィードバック補正係数KO2を算出するフィードバック補正係数算出手段35と、フィードバック補正係数算出手段35で得られた補正量等に基づいて最終的な燃料噴射量を算出する燃料噴射量算出手段37とが含まれる。これにより、制御ユニットCは、吸気圧および大気圧に基づくことなく適切な燃料噴射量を得ることができる。
基本噴射量算出手段33は、エンジン回転数センサ30で得られるエンジン回転数NEおよびスロットル開度センサ26で得られるスロットル開度THに基づいて、基本噴射量マップ33から基本噴射量を導出する。
フィードバック補正係数算出手段35は、Oセンサ32の出力信号に基づいて排ガスのリッチ・リーンの程度を判定するリッチ・リーン判定手段38と、このリッチ・リーン判定手段38の判定結果に基づいて空燃比のフィードバック補正係数KO2等を算出するパラメータ算出手段39とを有する。Oセンサ32は、理論空燃比に対してリーンまたはリッチであるとの判断のみが可能なセンサとされる。また、パラメータ算出手段39は、EPROMやフラッシュメモリ等の不揮発性記憶部40に所定の周期でパラメータを記憶させておき、イグニッションスイッチをオンにしたとき(システム起動時)に不揮発性記憶部40からパラメータを読み込む。
パラメータ算出手段39は、不揮発性記憶部40に周期的に記憶されるフィードバック補正係数KO2および環境補正係数KBUによって、Oセンサ32の出力信号に基づく空燃比制御のための統合補正係数KTを、KT=KO2×KBUの算出式によって算出する。環境補正係数KBUは、エンジンEの経時変化に応じて変化するように学習しつつエンジンEの負荷領域毎に定められている。環境補正係数KBUは、所定の周期で不揮発性記録部40に記録され、車両の電源をオフにしてシステムを停止した後にも値が保持されて次回のシステム起動時に読み込まれる。
フィードバック補正係数KO2は、空燃比のフィードバック制御を行う際に所定の周期毎に一時的に使用される変数であり、基本的には、このフィードバック補正係数KO2に基づくフィードバック制御を行って空燃比を目標空燃比に近づける。フィードバック補正係数KO2は、リッチ・リーン判定手段38での判定結果に基づいて定められる。
パラメータ算出手段39は、エンジン回転数NEおよびスロットル開度THに基づいて、複数のフィードバック領域毎の環境補正係数KBUを導出すると共に、この環境補正係数KBUを用いて統合補正係数KTを算出する。また、フィードバック領域以外の負荷領域では、この負荷領域に隣り合うフィードバック領域の学習値を用いて燃料噴射量を制御する。
燃料噴射量算出手段37には、スロットル開度センサ26の出力に基づいてスロットル開度の変化率ΔTHを検知するスロットル開度変化率検知手段50と、スロットル開度の変化率ΔTHの値に基づいて車両が加速運転状態にあるか否かを検知する加速運転状態検知手段51と、車両の加速状態等の運転状態に応じて基本噴射量を補正する噴射量補正手段52とが含まれる。
また、噴射量補正手段52には、所定の運転条件化で理論空燃比より薄いリーン空燃比を適用したリーン化運転を実行するためのリーン化補正手段53と、エンジン負荷に応じた複数のフィードバック領域と環境補正係数KBU(以下、単にKBUと示すこともある)との関係を示すKBUマップ54と、所定条件下でKBUマップ54の細分化を実行する分割手段としてのKBUマップ分割手段55と、KBUの更新(学習)を実行する学習制御手段56とが含まれる。
図3は、エンジン負荷領域を検索するためのマップである。制御ユニットCは、エンジン回転数NEおよびスロットル開度THに基づいてエンジン負荷がどの領域にあるかを検索する。このマップでは、設定下限スロットル開度THO2Lおよび設定上限スロットル開度THO2Hと、この両スロットル開度間の複数の設定スロットル開度THFB0,THFB1,THFB2,THFB3とが、エンジン回転数NEの増大に応じて大きくなり、THO2L<THFB0<THFB1<THFB2<THFB3<THO2Hの関係が成立するように予め設定されている。
各設定スロットル開度THO2L,THFB0,THFB1,THFB2,THFB3,THO2Hを示す実線は、それぞれ、スロットル開度THを増大させる際に適用される境界値であり、この実線に隣接する破線は、境界を縮小側にまたぐ際にヒステリシスを与えるための値を示している。
図4は、空燃比のフィードバック領域を示すマップである。斜線部で示す空燃比のフィードバック領域(O2F/B)は、設定下限回転数NLOP、設定上限回転数NHOPおよびアイドル領域上限回転数NTHO2Lと、設定下限スロットル開度THO2Lおよび設定上限スロットル開度THO2Hとで定まる領域である。また、アイドル領域上限回転数NTHO2Lは、エンジン回転数NEの増大側での値が実線で示され、エンジン回転数NEの減少側での値が破線で示されることでヒステリシスが設定されている。さらに、設定下限スロットル開度THO2Lおよび設定上限スロットル開度THO2Hは、スロットル開度THの増大側での値が実線で示され、スロットル開度THの減少側での値が破線で示されることでヒステリシスが設定されている。
図5は、図3および図4で定まる領域を重ねることで、フィードバック領域と各フィードバック領域に設定されるKBUとの関係を示すKBUマップ54である。この図では、エンジン回転数NEおよびスロットル開度THに基づいて、複数のフィードバック領域を含む複数の負荷領域が設定されることとなり、本実施形態では、6つのフィードバック領域が「1」〜「6」の番号を付して示され、フィードバック領域以外の領域が「0」,「7」〜「11」の番号を付して示される。なお、以下の説明では、6つのフィードバック領域「1」〜「6」を「学習領域A1〜6」と示すこともある。
図5で示される複数の負荷領域同士の境界は、ヒステリシスを有して定められることとなり、「1」〜「6」で示されるフィードバック領域は、スロットル開度THが小さくなるほど狭くなるように設定されている。そして、エンジンの運転状態がフィードバック領域にあるときには、各フィードバック領域「1」〜「6」のどの領域にあるのかを検知して、それぞれに対応したKBU1〜KBU6が選択される。また、フィードバック領域以外の機関の負荷領域「0」,「7」〜「11」では、当該負荷領域に隣り合うフィードバック領域のKBU1〜KBU6を用いて燃料噴射量を制御する。
基本噴射量算出手段34は、基本噴射量マップ33に基づいて基本噴射量T0を導出し、補正噴射量T1を(T0×KT)として求める。燃料噴射量算出手段37は、この補正噴射量T1に対応した燃料噴射時間を求め、制御ユニットCは、Oセンサ32で検出される空燃比を目標空燃比とするための補正が行われた後の燃料噴射時間に基づいて、燃料噴射弁22からの燃料噴射量を制御する。
KBUは、KO2の値が一定の状態で所定時間経過すると、その平均値KO2aveをとり、図5に示すマップからKBU1〜6を選択する。選択したKBUxは、その時のKO2の値を乗じて新しいKBUx'に更新(学習)される(KBUx'=KO2×KBUx)。KO2の値は、KBUxがKBUx'へ更新されると、基準値(1.0)に戻される。すなわち、KBUxは、KO2の値が一定の状態で所定時間経過毎に、KBUx'、KBUx''(=KO2×KBUx')…と更新される。
KBUx'、 KBUx''…は、それぞれの更新時における統合補正係数KTと同値となるが、前記したように、KT=KO2×KBUであるので、次にKBUが更新されるまで、KTの値は、KO2の変動に応じて変動することとなる。
ここで、図6のグラフを参照して、上記したKO2とKBUとの関係を具体的に説明する。本実施形態に係るフィードバック制御では、理論空燃比とするための補正量が増大すると、これに応じてフィードバック補正係数KO2(以下、単にKO2と示すこともある)が大きな値となるが、演算処理上、KO2は1.0に近い値としておきたい。そこで、KO2の値が一定の状態で所定時間経過すると、KO2の値を1.0に戻すためにKBUの値を更新する(学習して記憶する)ように構成されている。
図6に示した例では、時刻t1において、Oセンサ出力の低下に応じてKO2が1.0から増加を開始する。なお、このような短時間でのKO2増加の要因例としては、アイドル調整ねじ(A/S)を空ける方向に回すことや、走行中に高地から低地に下りてくることによる大気圧の上昇等の外乱が挙げられる。
次に、時刻t2では、空燃比がストイキ状態となるV1に近づくに伴ってKO2の増加が1.2で止まる。この場合、時刻t1〜t2の間が外乱発生区間となる。そして、時刻t3では、KO2が一定の状態が所定時間Taの間継続したことに伴って、KO2の平均値KO2aveを用いてKBUxをKBUx'(1.2=1.2×1.0)に更新し、KO2を1.0に切り下げる。
さらに、時刻t4では、Oセンサ出力の低下に応じてKO2が1.0から再び増加を開始する。ここでのKO2の増加要因例も前述と同じである。次に、時刻t5では、空燃比がストイキ状態に収束するに伴ってKO2の増加が1.2で止まる。この場合、時刻t4〜t5の間が外乱発生区間となる。そして、時刻t6では、KO2が一定の状態が所定時間Tbの間継続したことに伴って、平均値KO2aveを用いてKBUx'をKBUx''(1.44=1.2×1.2)に更新し、KO2を再び1.0に切り下げる。このKBUxの更新値(学習値)が保持されることにより、KO2の値を適切な範囲に収める環境補正係数KBUとして機能することとなる。なお、所定時間Ta,Tbは任意の値に設定することができる。また、KO2aveの算出に用いられる所定時間は、エンジンが所定サイクル経過するまでの時間としてもよい。
制御ユニットCは、スロットル開度THおよびエンジン回転数NEに基づいて基本噴射量を定めると共に、Oセンサ32の検出値に応じて定めるフィードバック補正係数KO2と、エンジンEの経時変化に応じて変化するように学習しつつエンジン負荷毎に定められる環境補正係数KBUとを基本噴射量T0に乗算することで、空燃比のフィードバック制御を可能とする。
このフィードバック制御によれば、吸気圧センサおよび大気圧センサが不要となり、システムのコストダウンおよび部品点数の低減が可能となる。特に、低スロットル開度の運転領域において、エンジンEのフリクション変化やスロットルバルブ21への煤の付着による吸入量変化等をも考慮したフィードバック制御が可能となる。また、高スロットル開度域でスロットル開度センサ26の出力ずれが大きくなる場合でも適切な空燃比の設定が可能となる。
制御ユニットCは、空燃比のフィードバック領域において、フィードバック補正係数KO2および環境補正係数KBUを用いた燃料噴射制御を実行する。また、空燃比のフィードバック領域は、スロットル開度が小さくなるほど狭くなるように設定されるので、バイパスバルブ等の劣化の影響を受けやすい低スロットル開度領域で細かな学習制御を行うようにして、より適切な空燃比制御を行うことができる。
図7は、図5に示したKBUマップを簡略化した模式図である。前記したように、KBUマップ54は、フィードバック領域(学習領域)と各フィードバック領域に設定されるKBUとの関係を示すものである。この図では、エンジン回転数NEおよびスロットル開度THに基づいてO2F/B領域内の6区分のフィードバック領域を、「学習領域A1」〜「学習領域A6」と示し、それぞれに対応する環境補正係数KBUを「KBU1」〜「KBU6」と示している。学習領域A1〜A6の外側は、O2F/B領域外とされる。
なお、面積の小さい学習領域A1は、低スロットル開度THかつ低エンジン回転数NEのアイドリング運転領域に対応するものである。また、学習領域A2〜A6の面積は、特に低スロットル開度TH領域での精度向上を重視して、スロットル開度THが小さくなるにつれて小さくなるように設定されている。
本実施形態では、エンジン回転数NEおよびスロットル開度THによって規定される負荷領域のうち、リーン化領域Lにおいて、理論空燃比より薄いリーン空燃比を適用したリーン化運転を実行して燃費の向上を図るように構成されている。リーン化領域Lは、学習領域A2,3,4をまたぐ一部の領域(図示点描部)に設定されている。
ここで、Oセンサ32は、理論空燃比(ストイキ)状態を境にステップ状の電圧出力を示し、理論空燃比に対してリーンまたはリッチであるとの判断のみが可能なセンサである。このため、理論空燃比より希薄側のリーン化空燃比を適用するリーン化運転中には、Oセンサ32の出力値は理論空燃比に対応する電圧から大きく離れたゼロに近い値となり、Oセンサ32の出力値に基づくフィードバック制御は不可能となる。
また、Oセンサ32の出力値に基づいて理論空燃比にあることを検知する手法は、以下のようになる。理論空燃比時に所定電圧を出力するOセンサ32の出力値は、エンジンの燃焼状態が理論空燃比に近づいてくると、その振れ幅を小さくしながら所定電圧に収束しようとする。このとき、Oセンサ32の出力値の変化率の正から負または負から正へ変化したことを「出力値が反転」したものとし、その反転回数をカウントすることができるので、例えば、Oセンサ32の出力値の反転が3回行われたことによって、安定したストイキ状態にあることを検知できる。
本実施形態では、リーン化運転の開始条件を、(1)エンジン水温が所定値以上であること、(2)変速機がニュートラル状態でないこと、(3)KBU1,2,3,4が学習済であること、(4)加速運転状態に伴う加速時燃料補正がないこと、(5)運転状態がリーン化領域にある状態で所定時間経過したこと等がすべて満たされた場合とされる。
また、通常運転からリーン化運転に移行する際は、空燃比および点火装置の点火時期をリーン化運転用の値に徐々に切り替えるように設定されているが、この点火時期の移行は、最初の数サイクルの移行量を大きくし、その後、緩やかに目標値(リーン化運転時の点火時期)へ移行するように設定することができる。
さらに、上記(4)に示したように、加速時燃料補正がある場合には、リーン化領域に突入したとしてもリーン化運転は開始されないが、加速補正量が一定以下になることを条件にリーン化運転を開始するように設定することもできる。
また、リーン化運転を終了した後にリーン化運転を再開する場合には、KBU2,3,4のうちの学習が終了した方から順次リーン化運転を開始するように設定することができる。なお、リーン化領域Lは、エンジン特性に応じて、学習領域A5〜A6に及ぶ範囲に設定してもよい。
一方、リーン化運転の終了条件には、(a)スロットル開度の変化率が所定値を超えた場合、(b)運転状態がスロットル全閉による燃料噴射カット領域に入った場合、(c)エンジン水温が所定値を下回った場合、(d)運転状態がリーン化領域から外れた場合、(e)アイドル領域におけるフィードバック補正係数に所定値を超える偏差が生じた場合、(f)変速機がニュートラル状態とされた場合、(g)センサ故障等の不具合によりフェール制御に入った場合、(h)Oセンサ出力がリッチ側に振れた場合等が設定される。
本実施形態では、上記したリーン化運転の終了条件のうち、(d)が発生した場合は、リーン化運転から通常運転に移行する際に、空燃比を徐々に変化させることで駆動力の変化を穏やかにして運転者に違和感を与えないように設定されている。
また、上記(a),(b),(c),(h)が発生した場合は、運転状態の迅速な切り替えが必要であるため、直ちに空燃比を変化させるように設定されている。さらに、上記(e)が発生した場合は、次回のアイドル領域突入時にKBUの再学習を実行するように設定することができる。
図8は、KBUマップ54の分割方法を示す説明図である。本実施形態に係る燃料噴射制御装置では、燃料噴射制御の精度を高めるため、KBUマップ分割手段55(図2参照)によって、KBUマップ54の6つの学習領域A1〜A6をさらに分割する手法が適用される。具体的には、アイドル領域A1を除く学習領域A2〜A6をそれぞれ2分割して、学習領域を全11区分に細分化するものである。
この分割処理は、特に、リーン化運転を行う場合に有用となる。具体的には、リーン化運転の実行時には、理論空燃比(ストイキ)よりリーン化させた燃費ベスト空燃比に合わせるため、通常運転時よりドライバビリティ(アクセル操作に対するエンジンの応答性)を確保しにくい領域の外ではあるもののその近くの空燃比領域で運転されることとなる。このとき、リーン化運転時の補正係数にばらつきが存在するとドライバビリティが低下する可能性が生じるため、KBUマップ54の細分化により燃料噴射制御の精度向上が望まれることとなる。
学習領域A2〜A6の分割処理は、学習領域A2〜A6の学習がそれぞれ完了したことをトリガとして実行される。そして、分割処理された2つの領域は、分割処理後にそれぞれ独立して学習が実行されて、これにより、燃料噴射制御の精度が高められる。以下では、分割前の学習領域を「親学習領域」、分割後の学習領域を「子学習領域」と示すこともある。
図8では、親学習領域A3を分割して子学習領域A3−1および子学習領域A3−2を形成する処理を示している。前記したように、この分割処理は、学習領域A3の学習が完了したことをトリガとして実行される。すなわち、当初から11区分の学習領域を規定しておくのではなく、規定された6区分のそれぞれの学習が完了してから、次のステップとして細分化を実行するので、学習領域全体の学習完了までにかかる時間を増やすことなく、学習精度の向上を段階的に行うことが可能となる。
分割処理の際には、その分割線Cが低スロットル開度TH寄りに設定される。本実施形態では、低スロットル開度TH側の3分の1の位置に分割線Cが設けられる。これは、図9に示すように、KBUに対する外乱の影響が低スロットル開度TH側で大きくなるという特性に対応したものである。図9では、スロットル開度THとKBUとの関係において、通常設定で1.0を保つようにされているKBUが、A/S(アイドリング調整ねじ)を調整した際には2次曲線的に変化し、低スロットル開度TH域において減少度合が大きくなるため、境界同士の間におけるKBUの偏差、特に、学習領域A2とA3とを区分する境界2−3と、学習領域A3とA4とを区分する境界3−4との間でKBUの偏差Dが大きくなることから、分割処理において分割線Cを低スロットル開度TH寄りに設定することが学習領域の精度向上に有効となる。
なお、図8では、親分割領域A3を子分割領域A3−1および子学習領域A3−2に分割する方法のみを示したが、学習領域A2,4,5,6もそれぞれ親学習領域となり、順次分割処理が行われることで子分割領域(A2−1,A2−2)、(A4−1,A4−2)、(A5−1,A5−2)、(A6−1,A6−2)が作成され、最終的には全11の学習領域が構成されることとなる。
図10は、本実施形態に係る学習領域分割処理の手順を示したフローチャートである。まず、ステップS1では、空燃比フィードバック制御が実行される。ステップS2では、所定の学習領域(フィードバック領域)で走行しているか否かが判定され、肯定判定されるとステップS3に進み、一方、否定判定されるとステップS1に戻る。
ステップS3は、所定の学習領域(例えば、A3)のKBU学習が実行される。続くステップS4では、所定の学習領域のKBU(例えば、KBU3)が学習済であるか否かが判定され、肯定判定されるとステップS5に進み、否定判定されるとステップS3に戻る。そして、ステップS5では、KBUマップ分割手段55によって所定の学習領域の分割処理が実行される(親学習領域A3であれば、子学習領域A3−1および子学習領域A3−2に分割される)。
続くステップS6では、分割後の学習領域(子学習領域A3−1およびA3−2)で走行しているか否かが判定され、肯定判定される、すなわち、分割処理後に子学習領域においてKBUの更新条件が満たされた場合には、ステップS7に進んで、子学習領域におけるKBUの更新(KBU3−1およびKBU3−2)が実行され、一連の制御を終了する。一方、ステップS6で否定判定される、すなわち、分割処理はしたものの、まだ子学習領域においてKBUの更新条件が満たされていない場合には、ステップS8に進んで、KBUは親学習領域のデフォルト値(KBU3)が維持されてステップS6の判定に戻る。
上記したように、本発明に係る内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、KBUマップで予め定められた学習領域を親学習領域とし、該親学習領域でのKBU学習が完了したことをトリガとして親学習領域を2つの子学習領域に分割して、2つの子学習領域毎に再度KBU学習を実行するので、学習制御を行うに当たり、まず、親学習領域の学習を行って必要な精度を確保し、その後に分割された子学習領域の学習を行うことで、親学習領域の学習完了までの時間を増大させることなく、学習の精度向上を両立することが可能となる。
なお、燃料噴射制御装置の構成、学習領域の区分範囲、学習領域を分割する際の比率、リーン化領域の範囲、最終噴射量を算出するためのパラメータの種類等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。本発明に係る内燃機関の燃料噴射制御装置は、鞍乗型の二/三/四輪車等の各種車両の動力源としての内燃機関のほか、農業機械やスノーモビル等の種々の内燃機関に適用することが可能である。
22…燃料噴射弁、26…スロットル開度センサ、30…エンジン回転数センサ、31…水温センサ、32…Oセンサ、37…燃料噴射量算出手段、50…スロットル開度変化率検知手段、51…加速運転状態検知手段、52…噴射量補正手段、53…リーン化補正手段、43…KBUマップ、55…KBUマップ分割手段(分割手段)、56…学習制御手段、A1〜A6…学習領域(フィードバック領域)、A3…親学習領域、A3−1,A3−2…子学習領域、C…制御ユニット、E…エンジン(内燃機関)、KBU1〜KBU6…環境補正係数、KO2…フィードバック補正係数、KO2ave…平均値

Claims (5)

  1. 内燃機関(E)の排気系(18)に設けられるOセンサ(32)と、前記内燃機関(E)の負荷に応じて予め区画された複数の学習領域(A1〜A6)を規定するKBUマップ(54)と、前記Oセンサ(32)の出力に基づいて算出されるフィードバック補正係数(KO2)の平均値(KO2ave)に対応して前記学習領域(A1〜A6)に適用される環境補正係数(KBU1〜6)を得るための学習を行う学習制御手段(56)と、前記環境補正係数(KBU1〜6)に応じて燃料噴射量を補正する噴射量補正手段(52)とを備える内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    前記学習領域(A1〜A6)のうちの少なくとも1つを親学習領域(A3)とし、該親学習領域(A3)での学習が完了したことをトリガとして前記親学習領域(A3)を少なくとも2つの子学習領域(A3−1,A3−2)に分割処理する分割手段(55)を具備し、
    前記学習制御手段(56)は、前記子学習領域(A3−1,A3−2)毎に再度学習を行って、新たな環境補正係数(A3−1,A3−2)を得るように構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  2. 前記分割手段(55)は、前記親学習領域(A3)を2つに分割し、
    前記子学習領域(A3−1,A3−2)では、前記新たな環境補正係数(KBU3−1,KBU3−2)が得られるまでの間、前記親学習領域(A3)の環境補正係数(KBU3)が適用されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  3. 前記親学習領域(A3)を分割する分割線(C)が、前記内燃機関(E)の負荷が低い側に偏って設定されることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  4. 前記分割線(C)は、前記子学習領域(A3−1,A3−2)の一方(A3−1)が前記親学習領域(A3)の略3分の1の大きさとなるように設定されることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  5. 前記内燃機関(E)の負荷が、スロットル開度(TH)とエンジン回転数(NE)との関数によって規定されており、
    前記分割線(C)が、前記スロットル開度(TH)が一定となる線に沿った直線であることを特徴とする請求項3または4に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2016009501A1 (ja) * 2014-07-15 2017-04-27 本田技研工業株式会社 内燃機関の燃料供給装置

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