JP2013209945A - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】部品の追加や演算負担の増加を伴うことなくリーン化運転に適した加速時燃料補正を実行できるようにした内燃機関の燃料噴射制御装置を提供する。
【解決手段】加速運転状態にあることが検知されると、予め設定された基本噴射量に対して加速時燃料補正量(TACC×KTH)を加算する噴射量補正手段52を備え、エンジンEの運転状態が所定のリーン化領域Lに突入すると、基本噴射量T0にリーン化係数KLEANを乗算して理論空燃比より希薄側のリーン化空燃比を適用したリーン化運転を実行するリーン化補正手段55とを備えた内燃機関の燃料噴射制御装置において、噴射量補正手段52には、リーン化運転中に加速運転状態にあることが検知されると、リーン化係数KLEANで除算したリーン化運転用加速時燃料補正量(TACC×KTH÷KLEAN)を求めるリーン化運転用加速時燃料補正手段53が含まれる。
【選択図】図21
【解決手段】加速運転状態にあることが検知されると、予め設定された基本噴射量に対して加速時燃料補正量(TACC×KTH)を加算する噴射量補正手段52を備え、エンジンEの運転状態が所定のリーン化領域Lに突入すると、基本噴射量T0にリーン化係数KLEANを乗算して理論空燃比より希薄側のリーン化空燃比を適用したリーン化運転を実行するリーン化補正手段55とを備えた内燃機関の燃料噴射制御装置において、噴射量補正手段52には、リーン化運転中に加速運転状態にあることが検知されると、リーン化係数KLEANで除算したリーン化運転用加速時燃料補正量(TACC×KTH÷KLEAN)を求めるリーン化運転用加速時燃料補正手段53が含まれる。
【選択図】図21
Description
本発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に係り、特に、O2センサ出力に基づく空燃比フィードバック制御およびリーン化制御を行うようにした内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
従来から、内燃機関を理論空燃比(ストイキ)に近い状態で燃焼させるため、排気管に設けられたO2センサの出力値に基づいて燃料噴射量をフィードバック制御するようにした内燃機関の燃料噴射制御装置が知られている。また、このような燃料噴射制御装置において、車両の加速時に燃料噴射量の増量補正をしたり、所定条件下で理論空燃比より薄いリーン空燃比を適用したリーン化運転を実行して燃費の向上を図ることも周知である。
特許文献1には、スロットル開度の変化率に基づいて加速状態を検知すると、基本噴射量に対して加速時燃料補正量を加算するようにした燃料噴射制御装置が開示されている。
また、特許文献2には、理論空燃比とのずれが生じていることをO2センサによって検知し、理論空燃比との差に応じた補正量を算出して学習した後に、リーン化運転を開始するようにした燃料噴射制御装置が開示されている。
さらに、特許文献3には、理論空燃比に対してリーンまたはリッチであるとの判断のみが可能なO2センサとは異なり、リーンからリッチまでの広い範囲で空燃比を直接計測することができるLAF(Linear Air by Fuel)センサを用いて燃料噴射量をフィードバック制御するようにした燃料噴射制御装置が開示されている。
ところで、特許文献2に記載されたようなリーン化運転中に加速操作があった場合には、リーン化運転中であっても運転者の加速意志を尊重して加速時の増量補正が行われることが望まれる。しかしながら、特許文献1に記載された加速時燃料補正の技術をそのまま適用したのでは、少ないリーン化運転中の少ない噴射量に対して通常の加速時燃料補正量が加わるのみとなり、運転者の期待する加速状態が得られない可能性があった。これに対処するには、特許文献3に記載されたLAFセンサを用いてフィードバック制御を常時行うことで、リーン化運転中の加速時燃料補正量が通常運転中の加速時燃料補正量より多くなるように制御することが考えられるが、LAFセンサを別個備える必要があるほか、メモリに保持するデータ量や演算負担が増えてしまうという課題が生じる。
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、部品の追加や演算負担の増加を伴うことなくリーン化運転に適した加速時燃料補正を実行できるようにした内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明は、内燃機関(E)のスロットル開度(TH)の変化率(ΔTH)を検出するスロットル開度変化率検知手段(50)と、前記変化率(ΔTH)に基づいて前記内燃機関(E)が加速運転状態にあることを検知する加速運転状態検知手段(51)と、前記加速運転状態にあることが検知されると、予め設定された基本噴射量(T0)に対して加速時燃料補正量(TACC×KTH)を加算する噴射量補正手段(52)とを備え、前記内燃機関(E)の運転状態が所定のリーン化領域(L)に突入すると、前記基本噴射量(T0)にリーン化係数(KLEAN)を乗算して理論空燃比より希薄側のリーン化空燃比を適用したリーン化運転を実行するリーン化補正手段(55)とを備えた内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記噴射量補正手段(52)には、前記リーン化運転中に前記加速運転状態にあることが検知されると、前記加速時燃料補正量(TACC×KTH)を前記リーン化係数(KLEAN)で除算したリーン化運転用加速時燃料補正量(TACC×KTH÷KLEAN)を求めるリーン化運転用加速時燃料補正手段(53)が含まれる点に第1の特徴がある。
また、前記内燃機関(E)の負荷は、スロットル開度(TH)およびエンジン回転数(NE)の増大に応じて大きくなり、前記リーン化係数(KLEAN)は、前記内燃機関(E)の負荷が大きくなるにつれて小さくなるように設定されており、前記リーン化領域(L)は、前記リーン化係数(KLEAN)に応じて複数の細分化領域(L1,L2,L3)に区分され、前記複数の複数の細分化領域(L1,L2,L3)は、前記内燃機関(E)の負荷が上がり高回転になるにつれ、リーン化傾向が小さくなる部分を有する点に第2の特徴がある。
また、前記噴射量補正手段(52)は、前記スロットル開度(TH)の変化率(ΔTH)が、加速運転状態か否かを判断するための第1の閾値(T1)より大きい第2の閾値(T2)を超えた場合には、前記リーン化運転から通常運転に切り替えると共に通常運転中に適用される加速時燃料補正量を用いて加速時燃料補正を実行する点に第3の特徴がある。
さらに、前記リーン化補正手段(55)は、前記リーン化領域(L)から外れる際に前記リーン化係数(KLEAN)を徐々に1に近づける点に第4の特徴がある。
第1の特徴によれば、噴射量補正手段には、リーン化運転中に加速運転状態にあることが検知されると、加速時燃料補正量をリーン化係数で除算したリーン化運転用加速時燃料補正量を求めるリーン化運転用加速時燃料補正手段が含まれるので、理論空燃比を含む幅広い範囲で空燃比を直接検知できるLAFセンサを設けたり、記憶データ量や演算負担を増大させたりすることなく、リーン化運転に対応した加速時燃料補正量を算出することが可能となる。
また、リーン化運転用加速時燃料補正量を、通常運転時に適用される加速時燃料補正量よりも大きな値に設定することにより、リーン化運転中に加速操作が行われた場合でも運転者は意志に沿った加速を得ることができる。さらに、リーン化運転中に加速状態となった場合に、リーン化運転から通常運転に制御態様を切り替えることなく運転者の期待する加速時燃料補正を提供できるので、演算負担を低減することが可能となる。
第2の特徴によれば、内燃機関の負荷は、スロットル開度およびエンジン回転数の増大に応じて大きくなり、リーン化係数は、内燃機関の負荷が大きくなるにつれて小さくなるように設定されており、リーン化領域は、リーン化係数に応じて複数の細分化領域に区分され、複数の複数の細分化領域は、内燃機関の負荷が上がり高回転になるにつれ、リーン化傾向が小さくなる部分を有するので、内燃機関の負荷を容易に求めることができ、内燃機関の燃費がよくなる傾向に合わせてリーン化係数が小さくなるように設定することができる。また、エンジンの加速が穏やかである場合、エンジンの燃費がよくなる燃調に合わせてリーン化係数も変化するように設けることができる。
さらに、リーン化係数が低くなるほど基本噴射量のリーン化補正値は下がるが、同時に、加速時燃料増量補正量はリーン化係数の逆数によって上がるため、より加速時燃料補正量をリーン化係数で高める効果を活かすことができる。そして、エンジンの加速が穏やかである場合、エンジンの燃調がよくなる燃調に併せてリーン化係数も変化するように設けることができるので、穏やかに加速するような場合、リーン化状態を維持しながら、運転者の期待する加速時燃料増量を提供することができる。
第3の特徴によれば、噴射量補正手段は、スロットル開度の変化率が、加速運転状態か否かを判断するための第1の閾値より大きい第2の閾値を超えた場合には、リーン化運転から通常運転に切り替えると共に通常運転中に適用される加速時燃料補正量を用いて加速時燃料補正を実行するので、スロットル開度の変化率が大きい場合には、通常の運転状態に基づく加速時燃料補正量を適用することで、リーン化係数の逆数等の演算を行うことなく運転者の期待する加速状態を早期に提供することが可能となる。
第4の特徴によれば、リーン化補正手段は、リーン化領域から外れる際にリーン化係数を徐々に1に近づけるので、空燃比の変化が穏やかに行われることとなり、リーン化運転から通常運転への移行に伴う内燃機関の駆動力の変化を乗員に気づかれにくくすることができる。
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る内燃機関の燃料噴射制御装置の構成を示すブロック図である。自動二輪車に搭載される水冷(または空冷)式の内燃機関(エンジン)Eのシリンダボア11には、ピストン12が摺動可能に嵌合されている。エンジンEのシリンダヘッド16には、燃焼室13に混合気を供給する吸気装置14と、燃焼室13からの排ガスを排出する排気装置15とが接続されている。吸気装置14には吸気通路17が形成されており、排気装置15には排気通路18が形成されている。排気装置15と排気通路18との間には触媒コンバータ25が取り付けられている。シリンダヘッド16には、その先端が燃焼室13に突出する点火プラグ20および動弁機構の吸排気バルブが取り付けられている。
吸気装置14には、吸気量を制御するスロットルバルブ21が開閉可能に配設されると共に、スロットルバルブ21より下流側には、燃料を噴射する燃料噴射弁22が設けられている。また、吸気通路17には、スロットルバルブ21を迂回するバイパス通路27が接続されており、このバイパス通路27を流通する空気量をアクチュエータ28で調整することでアイドリング(アイドル)回転数の調整が行われる。アイドル回転数は、アクチュエータ28によって自動調整されるが、ユーザの好みに合わせるため、この自動調整された回転数を基準としてアイドルスクリューねじによる任意の調整が可能とされている。
制御手段としての制御ユニットCは、点火プラグ20の点火タイミング、燃料噴射弁22からの燃料噴射量およびアクチュエータ28の作動を制御する。制御ユニットCには、スロットルバルブ21の開度を検出するスロットル開度センサ26の出力信号、ピストン12に連接されたクランク軸29の回転数を検出する回転数センサ30の出力信号、エンジン冷却水の水温を検出する水温センサ31の出力信号、排ガス中の残存酸素濃度を検出するために触媒コンバータ25より上流側の排気通路18に取り付けられるO2センサ(酸素センサ)32の出力信号がそれぞれ入力される。
図2は、制御ユニットCの構成を示すブロック図である。制御ユニットCには、基本噴射量マップ33を参照しつつ目標空燃比を得るための基本噴射量を定める基本噴射量算出手段34と、O2センサ32の出力信号に基づいて空燃比を目標空燃比に近づけるためのフィードバック補正係数KO2を算出するフィードバック補正係数算出手段35と、フィードバック補正係数算出手段35で得られた補正量等に基づいて最終的な燃料噴射量を算出する燃料噴射量算出手段37とが含まれる。これにより、制御ユニットCは、吸気圧および大気圧に基づくことなく適切な燃料噴射量を得ることができる。
基本噴射量算出手段33は、エンジン回転数センサ30で得られるエンジン回転数NEならびにスロットル開度センサ26で得られるスロットル開度THに基づいて、基本噴射量マップ33から基本噴射量を導出する。
フィードバック補正係数算出手段35は、O2センサ32の出力信号に基づいて排ガスのリッチ・リーンの程度を判定するリッチ・リーン判定手段38と、このリッチ・リーン判定手段38の判定結果に基づいて空燃比のフィードバック補正係数KO2等を算出するパラメータ算出手段39とを有する。O2センサ32は、理論空燃比に対してリーンまたはリッチであるとの判断のみが可能なセンサとされる。また、パラメータ算出手段39は、EPROMやフラッシュメモリ等の不揮発性記憶部40に所定の周期でパラメータを記憶させておき、イグニッションスイッチをオンにしたとき(システム起動時)に不揮発性記憶部40からパラメータを読み込む。
パラメータ算出手段39は、不揮発性記憶部40に周期的に記憶されるフィードバック補正係数KO2および環境補正係数KBUによって、O2センサ32の出力信号に基づく空燃比制御のための統合補正係数KTを、KT=KO2×KBUの算出式によって算出する。環境補正係数KBUは、エンジンEの経時変化に応じて変化するように学習しつつエンジンEの負荷領域毎に定められている。環境補正係数KBUは、所定の周期で不揮発性記録部40に記録され、車両の電源をオフにしてシステムを停止した後にも値が保持されて次回のシステム起動時に読み込まれる。
フィードバック補正係数KO2は、空燃比のフィードバック制御を行う際に所定の周期毎に一時的に使用される変数であり、基本的には、このフィードバック補正係数KO2に基づくフィードバック制御を行って空燃比を目標空燃比に近づける。フィードバック補正係数KO2は、リッチ・リーン判定手段38での判定結果に基づいて定められる。
パラメータ算出手段39は、エンジン回転数NEおよびスロットル開度THに基づいて、複数のフィードバック領域毎の環境補正係数KBUを導出すると共に、この環境補正係数KBUを用いて統合補正係数KTを算出する。また、フィードバック領域以外の負荷領域では、この負荷領域に隣り合うフィードバック領域の学習値を用いて燃料噴射量を制御する。
燃料噴射量算出手段52には、スロットル開度センサ26の出力に基づいてスロットル開度の変化率ΔTHを検知するスロットル開度変化率検知手段50と、スロットル開度の変化率ΔTHの値に基づいて車両が加速運転状態にあるか否かを検知する加速運転状態検知手段51と、車両が加速状態運転状態であると検知されると加速時燃料補正量を算出して基本噴射量に付加する噴射量補正手段52と、所定の運転条件化で理論空燃比より薄いリーン空燃比を適用したリーン化運転を実行するためのリーン化補正手段55とが含まれる。
また、噴射量補正手段52には、リーン化運転が適用されない通常運転時の加速時燃料補正を実行する通常運転用加速時燃料補正手段56と、リーン化運転時の加速時燃料補正を実行するリーン化運転用加速時燃料補正手段53とが含まれる。リーン化補正手段55には、エンジン負荷に応じた複数のフィードバック領域と環境補正係数KBU(以下、単にKBUと示すこともある)との関係を示すKBUマップ54が含まれている。
図3は、エンジン負荷領域を検索するためのマップである。制御ユニットCは、エンジン回転数NEおよびスロットル開度THに基づいてエンジン負荷がどの領域にあるかを検索する。このマップでは、設定下限スロットル開度THO2Lおよび設定上限スロットル開度THO2Hと、この両スロットル開度間の複数の設定スロットル開度THFB0,THFB1,THFB2,THFB3とが、エンジン回転数NEの増大に応じて大きくなり、THO2L<THFB0<THFB1<THFB2<THFB3<THO2Hの関係が成立するように予め設定されている。
各設定スロットル開度THO2L,THFB0,THFB1,THFB2,THFB3,THO2Hを示す実線は、それぞれ、スロットル開度THを増大させる際に適用される境界値であり、この実線に隣接する破線は、境界を縮小側にまたぐ際にヒステリシスを与えるための値を示している。
図4は、空燃比のフィードバック領域を示すマップである。斜線部で示す空燃比のフィードバック領域(O2F/B)は、設定下限回転数NLOP、設定上限回転数NHOPおよびアイドル領域上限回転数NTHO2Lと、設定下限スロットル開度THO2Lおよび設定上限スロットル開度THO2Hとで定まる領域である。また、アイドル領域上限回転数NTHO2Lは、エンジン回転数NEの増大側での値が実線で示され、エンジン回転数NEの減少側での値が破線で示されることでヒステリシスが設定されている。さらに、設定下限スロットル開度THO2Lおよび設定上限スロットル開度THO2Hは、スロットル開度THの増大側での値が実線で示され、スロットル開度THの減少側での値が破線で示されることでヒステリシスが設定されている。
図5は、図3および図4で定まる領域を重ねることで、フィードバック領域と各フィードバック領域に設定されるKBUとの関係を示すKBUマップ54である。この図では、エンジン回転数NEおよびスロットル開度THに基づいて、複数のフィードバック領域を含む複数の負荷領域が設定されることとなり、本実施形態では、6つのフィードバック領域が「1」〜「6」の番号を付して示され、フィードバック領域以外の領域が「0」,「7」〜「11」の番号を付して示される。なお、以下の説明では、計11区分のフィードバック領域を、A1〜A11の記号で示すこともある。
図5で示される複数の負荷領域同士の境界は、ヒステリシスを有して定められることとなり、「1」〜「6」で示されるフィードバック領域は、スロットル開度THが小さくなるほど狭くなるように設定されている。そして、エンジンの運転状態がフィードバック領域にあるときには、各フィードバック領域「1」〜「6」のどの領域にあるのかを検知して、それぞれに対応したKBU1〜KBU6が選択され、フィードバック領域以外の機関の負荷領域「0」,「7」〜「11」では、当該負荷領域に隣り合うフィードバック領域のKBU1〜KBU6を用いて燃料噴射量を制御する。
基本噴射量算出手段34は、基本噴射量マップ33に基づいて基本噴射量T0を導出し、補正手段36では、補正噴射量T1を(T0×KT)として求める。燃料噴射量算出手段37は、この補正噴射量T1に対応した燃料噴射時間を求め、制御ユニットCは、O2センサ32で検出される空燃比を目標空燃比とするための補正が行われた後の燃料噴射時間に基づいて、燃料噴射弁22からの燃料噴射量を制御する。
KBUは、KO2の値が一定の状態で所定時間経過すると、図5に示すマップからKBU1〜6を選択し、選択したKBUxは、その時のKO2の値を乗じて新しいKBUx'に更新(学習)される(KBUx'=KO2×KBUx)。KO2の値は、KBUxがKBUx'へ更新されると、基準値(1.0)に戻される。すなわち、KBUxは、KO2の値が一定の状態で所定時間経過毎に、KBUx'、KBUx''(=KO2×KBUx')…と更新される。
KBUx'、 KBUx''…は、それぞれの更新時における統合補正係数KTと同値となるが、前記したように、KT=KO2×KBUであるので、次にKBUが更新されるまで、KTの値は、KO2の変動に応じて変動することとなる。
ここで、図6のグラフを参照して、上記したKO2とKBUとの関係を具体的に説明する。本実施形態に係るフィードバック制御では、理論空燃比とするための補正量が大きくなると、これに伴ってフィードバック補正係数KO2(以下、単にKO2と示すこともある)を大きな値とするが、演算処理上、KO2は1.0に近い値としておきたい。そこで、KO2の値が一定の状態で所定時間経過すると、KO2の値を1.0に戻すためにKBUの値を更新する(学習して記憶する)ように構成されている。
図6に示した例では、時刻t1において、O2センサ出力の低下に応じてKO2が1.0から増加を開始する。なお、このような短時間でのKO2増加の要因例としては、アイドルスクリューねじを空ける方向に回すことや、高地から下ってくることによる大気圧の上昇による外乱が挙げられる。次に、時刻t2では、空燃比がストイキ状態となるV1に近づくに伴ってKO2の増加が1.2で止まる。この場合、時刻t1〜t2の間が外乱発生区間となる。そして、時刻t3では、KO2が一定の状態が所定時間Taの間継続したことに伴って、KBUxをKBUx'(1.2=1.2×1.0)に更新して、KO2を1.0に切り下げる。
さらに、時刻t4では、O2センサ出力の低下に応じてKO2が1.0から再び増加を開始する。ここでのKO2の増加要因例も前述と同じである。次に、時刻t5では、空燃比がストイキ状態に収束するに伴ってKO2の増加が1.2で止まる。この場合、時刻t4〜t5の間が外乱発生区間となる。そして、時刻t6では、KO2が一定の状態が所定時間Tbの間継続したことに伴って、KBUx'をKBUx''(1.44=1.2×1.2)に更新して、KO2を再び1.0に切り下げる。このKBUxの更新値(学習値)が保持されることにより、KO2の値を適切な範囲に収める環境補正係数KBUとして機能することとなる。なお、所定時間Ta,Tbは任意の値に設定することができる。
制御ユニットCは、スロットル開度THおよびエンジン回転数NEに基づいて基本噴射量を定めると共に、O2センサ32の検出値に応じて定めるフィードバック補正係数KO2と、エンジンEの経時変化に応じて変化するように学習しつつエンジン負荷毎に定められる環境補正係数KBUとを基本噴射量T0に乗算することで、空燃比のフィードバック制御を可能とする。このフィードバック制御によれば、吸気圧センサおよび大気圧センサが不要となり、システムのコストダウンおよび部品点数の低減が可能となる。特に、低スロットル開度の運転領域において、エンジンEのフリクション変化やスロットルバルブ21への煤の付着による吸入量変化等を考慮したフィードバック制御が可能となる。また、高スロットル開度域でスロットル開度センサ26の出力ずれが大きくなる場合でも適切な空燃比の設定が可能となる。
制御ユニットCは、空燃比のフィードバック領域において、フィードバック補正係数KO2および環境補正係数KBUを用いた燃料噴射制御を実行する。また、空燃比のフィードバック領域が、スロットル開度が小さくなるほど狭くなるように設定されるので、バイパスバルブ等の劣化の影響を受けやすい低スロットル開度領域で細かな学習制御を行うようにして、より適切な空燃比制御を行うことができる。
図7は、図5に示したKBUマップを簡略化した模式図である。前記したように、KBUマップは、フィードバック領域と各フィードバック領域に設定されるKBUとの関係を示すものである。この図では、エンジン回転数NEおよびスロットル開度THに基づいてO2F/B領域内の6区分のフィードバック領域が「A1」〜「A6」の記号を付して示され、それぞれに対応する環境補正係数KBUが、「KBU1」〜「KBU6」の記号を付して示されている。A1〜A6の外側は、O2F/B領域外とされる。本実施形態では、低THかつ低NEのフィードバック領域A1を、アイドル領域A1と呼称する。
図8は、リーン化領域Lの分布を示したKBUマップである。本実施形態では、フィードバック領域のうちの一部をリーン化領域Lに設定されている。例えば、リーン化領域Lは、フィードバック領域A3,A4をまたぐ一部の領域(図示点描部)に設定される。本実施形態では、このリーン化領域Lにおいて、理論空燃比より薄いリーン空燃比を適用したリーン化運転を実行して燃費の向上を図るように構成されている。
しかしながら、本実施形態に係るO2センサ32は、図15のO2センサの出力値と空燃比との関係を示すグラフに示すように、理論空燃比(ストイキ)状態を境にステップ状の電圧出力を示し、理論空燃比λsに対してリーンまたはリッチであるとの判断のみが可能なセンサである。このため、理論空燃比λsより希薄側のリーン化空燃比を適用するリーン化運転中には、O2センサ32の出力値は理論空燃比λsに対応する電圧Vsから大きく離れたゼロに近い値に張り付いてしまい、O2センサ32の出力値に基づくフィードバック制御が不可能となる。したがって、環境補正係数KBUの再学習が必要となるような環境変化のうち、O2センサ32の出力値に基づいて検知できる環境変化がリーン化運転中に生じたとしても、制御ユニットCは、リーン化運転中にこれを検知することができない。本実施形態では、このような状況に対処するために、アイドル領域A1におけるフィードバック補正係数KO2の変化を監視することで適切なタイミングで環境補正係数KBU3,KBU4の再学習を実行するように構成されている。
なお、リーン化運転の開始条件には、フィードバック領域A3,A4の環境補正係数KBU3,KBU4の学習が完了することが含まれる。また、リーン化運転を終了した後にリーン化運転を再開する場合には、KBU3,KBU4のうちの学習が終了した方から順次リーン化運転を開始するように設定することができる。
また、O2センサ32の出力値に基づいて理論空燃比λsにあることを検知する手法は、以下のようになる。理論空燃比時に所定電圧Vsを出力するO2センサ32の出力値は、エンジンを始動後に燃焼状態が理論空燃比λsに近づいてくると、その振れ幅を小さくしながら所定電圧Vsに収束しようとする。このとき、O2センサ32の出力値の変化率の正から負または負から正へ変化したことを「出力値が反転」したものとし、その反転回数をカウントすることができるので、例えば、O2センサ32の出力値の反転が3回行われたことによって、安定したストイキ状態にあることを検知できる。なお、リーン化領域Lは、破線Laで示すようにフィードバック領域A5に及ぶ範囲に設定したり、または、一点鎖線Lbで示すようにフィードバック領域A5〜A6に及ぶ範囲に設定されてもよい。
図9は、リーン化領域Lに突入してもリーン化運転が開始されない運転状態の例を示す図である。通常運転状態からリーン化運転への切り替えは、以下に示す複数の条件が満たされた場合に実行される。その条件としては、(a)エンジン水温(または油温)が所定値(例えば、80度)以上であること、(b)KBU3,4の学習が終了している(KBUOKフラグが立っている)こと、(c)リーン化領域に突入していること、(d)加速時燃料補正のかかった状態でリーン化領域Lに突入していない(加速時燃料補正実行フラグが立っていない)こと、(e)スロットル全閉による燃料カット状態(全閉時燃料噴射カットフラグが立っている)ではないこと、(f)変速機がニュートラル状態ではないこと等が設定されている。
図9では、リーン化領域に突入してもリーン化運転が開始されないケースとして、急加速または急減速でリーン化領域Lに突入する場合(NG1)と、変速機がニュートラル状態でのスナップ(空ぶかし)によってリーン化領域Lに突入する場合(NG2)とを示している。
図10は、リーン化領域Lに突入しないためにリーン化運転が開始されない運転状態の例を示す図である。スロットル全閉状態でエンジンブレーキがかかった減速時における全閉時燃料噴射カット領域(THFC領域NG3)では、スロットル開度が全閉であってリーン化領域Lに突入することがないため、リーン化運転は開始されることがない。
図11は、徐加速、すなわち、緩やかな加速によってリーン化領域Lの外側からリーン化領域Lに突入した場合を示す図である。この図に示す徐加速は、緩やかな加速ではあっても燃料噴射量に加速時燃料補正が付加されているものとする。本実施形態では、たとえ緩やかな加速でリーン化領域Lに突入したとしても加速時燃料補正が付加されている間はリーン化運転を開始しないように設定されている。
図12は、リーン化領域L内で徐加速が行われた運転状態の例を示す図である。この場合は、リーン化領域Lとリーン化領域L以外のフィードバック領域である通常運転領域との境界を跨がないため、リーン化運転を継続したままリーン化運転用加速時燃料補正手段53(図2参照)によってリーン化運転用の加速時燃料補正が実行される。このリーン化運転用の加速時燃料補正の詳細は後述する。
図13は、リーン化領域Lがさらに細分化される状態を示す図である。この図では、リーン化領域Lが、さらに細分化領域L1,L2,L3に区分されており、この細分化領域L1,L2,L3毎に異なるリーン化空燃比が設定されることで、リーン化運転による燃費向上効果をさらに高めるように設定されている。細分化領域L1,L2,L3には、それぞれ、L1:燃費ベスト燃調19.0、L2:燃費ベスト燃調18.0、L3:燃費ベスト燃調17.0等の空燃比を設定して、リーン化運転のさらなる最適化を図ることが可能となる。なお、L1,L2,L3は、L1<L2<L3の関係を有する。L2はL3の中に含まれ、L1はL2の中に含まれる。ENG低負荷(低NE,低TH)から見たとき、NEおよびTHが上がるにつれ、L3→L2→L1→L2→L3と、リーン化領域Lが図示実線Sに沿って移り変わる。
図14は、リーン化運転中に生じた環境変化とアイドル領域A1での環境補正係数KBUとの関係を示すグラフである。ここで、要求燃調に影響を与える要因には、(1)車両の個体差によるばらつき、(2)O2センサ等のセンサ個体差によるばらつき、(3)アイドル回転数調整による吸入空気量の変化、(4)エンジン負荷の変化、(5)気圧の変化の5つが存在する。ここで、リーン化運転は、KBUマップの学習後に開始するため、上記(1)および(2)は学習によって吸収されることとなり、リーン化運転中に発生し得る要因は、上記(3),(4),(5)となる。
このグラフでは、リーン化運転中にアイドル回転数を調整するアイドルスクリューが閉方向、すなわちアイドル回転数を下げる方向に調整された場合F、または、リーン化運転中に車両が高地へ移動して気圧が減少した場合Gが発生した場合に、アイドル領域では、KBUの値がベース値Eから大きく離れてしまう状態を示している。特に、アイドルスクリューが閉方向に調整された場合Fにおいては、スロットル開度THが大きい場合にはベース値との差があまり生じないものの、スロットル開度が小さい運転領域、すなわち、代表的にはアイドル運転においてはベース値との差が大きくなってしまう状態を示している。これにより、アイドル領域における環境補正係数KBUの状態を監視することで、スロットル開度THが大きい領域におけるKBUのずれを推測検知することが可能であることが明らかとなる。
本発明に係る燃料噴射制御装置においては、アイドル領域A1の環境補正係数KBU1の変化を監視しておき、環境補正係数KBU1が前回の学習値から所定閾値を超えて変化した場合には、リーン化領域Lを含むフィードバック領域A3,A4のKBU3,4も変化してしまっているものと推測し、その後にアイドル領域A1でフィードバック制御が行われた際にKBU3,4の再学習を実行するように構成されている。換言すれば、オープン制御によるリーン化運転中にアイドル調整や気圧変動があった場合は、次にアイドル領域A1に突入した際にKBU3,4の再学習を行うので、定期的な学習タイミングが訪れる前の早いタイミングで空燃比の最適化を図ることが可能となる。
図16は、リーン化運転制御の流れを示すフローチャートである。ステップS10では、空燃比のフィードバック制御が開始される。ステップS11では、環境補正係数KBUの学習が行われる。ステップS12では、リーン化領域を含むフィードバック(F/B)領域のKBU学習済みであるか否かが判定され、肯定判定されるとステップS13に進む。一方、否定判定されると、ステップS11に戻ってKBU学習が継続される。
ステップS13では、リーン化運転開始(突入)条件が成立したか否かが判定される。ここで、リーン化運転の開始(突入)条件の確認制御の流れを示す図19のフローチャートを参照する。
図19のリーン化運転突入条件の確認制御の流れを示すフローチャートにおいて、ステップS40では、エンジン水温が所定値(例えば、80度)以上であるか否かが判定され、ステップS41ではニュートラルスイッチがオフであるか否かが判定される。また、ステップS42ではKBU1,3,4の学習済であるか否かが判定され、ステップS43では加速運転状態に伴う加速時燃料補正がないか否かが判定される。さらに、ステップS44では運転状態がリーン化領域Lにあるか否かが判定され、ステップS45ではエンジンEのクランクシャフトの回転回数を計測するサイクルカウンタ計測値が所定値に到達したか否かが判定される。なお、ステップS45の判定は、ステップS40〜44がすべて肯定判定された状態が所定期間(例えば、クランクシャフト5回転の期間)を超えて継続されたか否かを判定するものである。
そして、ステップS45で肯定判定される、すなわち、ステップS40〜S45においてすべて肯定判定された場合に、ステップS46に進んでリーン化運転突入条件が成立し、リーン化運転の開始準備が整うこととなる。一方、ステップS40〜S45において1つでも否定判定されると、そのまま一連の制御を終了することとなる。
図16のフローチャートに戻って、ステップS13で肯定判定される、すなわち、リーン化運転開始(突入)条件が成立したと判定されると、ステップS14に進んでリーン化運転が開始される。続くステップS15では、リーン化運転に伴って点火時期を調整するIGアドバンス制御が開始される。
そして、ステップS16では、リーン化運転終了条件が成立したか否かが判定される。リーン化運転終了条件には、(h)スロットル開度THの変化率ΔTHが第2の所定値を超えた場合、(i)スロットル全閉状態でエンジンブレーキがかかった減速時における全閉時燃料噴射カット領域(THFC領域NG3)に入った場合、(j)エンジン水温(または油温)が所定値を下回った場合、(k)エンジンの運転状態がフィードバック領域から外れた場合、(l)アイドル領域A1におけるフィードバック補正係数KO2に所定値を超える偏差が生じた場合、(m)変速機がニュートラル状態とされた場合、(o)センサ故障等の不具合によりフェール制御に入った場合が挙げられる。
上記条件(h)における第2の所定値は、リーン化運転中に加速時燃料補正を実行する条件としての第1の所定値より大きい値に設定されており、ΔTHが第2の所定値を超える場合はスロットルグリップを短時間に大きく開くことで急加速の要求があったものとして処理が行われる。
上記(k)が発生した場合は、リーン化運転から該リーン化運転を適用しない通常運転へ移行する場合に、空燃比を徐々に変化させることで駆動力の変化を穏やかにして、運転者に違和感を与えないようにする。一方、上記(h),(i),(j),(o)が発生した場合は、運転状態の迅速な切り替えが必要な状態であるため、リーン化運転中であっても直ちに空燃比を変化させる。すなわち、上記(h),(i),(j),(o)は、リーン化運転を強制終了させる際の強制終了条件として扱われる。
そして、本発明では、上記(l)が発生した場合をリーン化運転終了の条件とし、この(l)が発生した場合には、次回のアイドル領域の突入時にKBUの再学習を実行するように構成されている。なお、上記(l)は、リーン化運転中に検知することはできず、他の条件でリーン化運転を終了した後にアイドル領域に突入してはじめて検知される。
フローチャートに戻って、ステップS16で肯定判定される、すなわち、リーン化運転終了条件が成立したと判定されると、ステップS17に進んでリーン化運転から通常運転に移行し、一連の制御を終了する。なお、ステップS16で否定判定されるとステップS16の判定に戻る。
図17は、リーン化運転と通常運転との間の移行制御の流れを示すフローチャートであある。ステップS20では、リーン化運転開始条件が成立したか否かが判定され、肯定判定されると、ステップS21に進む。ステップS21では、通常運転からリーン化運転への移行が開始される。通常運転からリーン化運転に移行する際には、空燃比およびIGアドバンスを徐々に変更するように設定されている。
ステップS22ではリーン化運転が実行され、続くステップS23では、リーン化運転終了条件が成立したか否かが判定される。ステップS23で肯定判定されると、ステップS24でリーン化運転の強制終了条件が成立したか否かが判定される。一方、ステップS23で否定判定されると、ステップS23の判定に戻る。
ステップS24で否定判定される、すなわち、リーン化運転終了条件が強制条件を除くもので成立したと判定されると、ステップS25に進んで、空燃比およびIGアドバンスをそれぞれ徐々に変更して通常運転への移行が開始される。一方、ステップS25で肯定判定される、すわなち、リーン化運転終了条件のうちの強制運転終了条件が成立したと判定されると、ステップS26に進んで、空燃比およびIGアドバンスをそれぞれ即時切り替えることで通常運転への移行が開始される。
そして、ステップS27では、リーン化運転から通常運転への移行が完了し、一連の制御を終了する。
図18は、アイドル領域監視制御の流れを示すフローチャートである。ステップS30では、アイドル領域A1であるか否かが判定され、肯定判定されるとステップS31に進む。ステップS30で否定判定されると、ステップS30の判定に戻る。
ステップS31では、リーン化運転後であるか否かが判定され、肯定判定されるとステップS32に進み、リーン化運転開始時のKBU1と、現在のアイドル領域A1で学習された新たなKBU1との比較が行われる。この新たなKBU1は、リーン化運転へ移行した後のアイドル領域A1におけるフィードバック補正係数KO2の平均値KO2aveから算出されるものである。この平均値KO2aveは、エンジンEの3〜10サイクル分の平均値に設定されている。
続くステップS34では、リーン化運転開始時のKBU1と新たなKBU1との差が所定閾値Z(例えば、±3〜5%)を超え、リーン化領域のKBUの再学習が必要か否か、具体的には、リーン化領域A3,A4のKBU3,KBU4の再学習が必要であるか否かが判定される。所定閾値Zを適切な範囲に設定することにより、リーン化運転に影響を与える程度のずれが生じた時にのみ環境補正係数の再学習を実行することが可能となり、演算負担を低減することができる。
ステップS34で肯定判定されると、ステップS35に進んでリーン化運転が中止される。そして、ステップS36では、KBU1の学習が行われる。一方、ステップS31で否定判定されると、ステップS33に進んで所定のKBU再学習タイミングであるか否かが判定される。ステップS33で肯定判定されるとステップS35に進み、一方、否定判定されるとそのまま一連の制御を終了する。また、ステップS34で否定判定された場合もそのまま一連の制御を終了する。
ステップS37では、KBU3,KBU4の再学習が可能な運転状態であるか否かが判定される。ステップS37で肯定判定される、すなわち、フィードバック領域A3またはA4で通常運転が行われている状態である場合には、ステップS38に進んで、KBU3,KBU4の再学習が行われる。そして、ステップS39では、再学習された新しいKBU3,KBU4を用いてのリーン化運転が可能な状態となり、一連の制御を終了する。ステップS38の状態において、図19に示したリーン化運転突入条件が成立すると、リーン化運転が開始されることとなる。
図20は、リーン化運転中の加速時燃料補正制御の流れを示すフローチャートである。ステップS50では、リーン化運転中であるか否かが判定され、肯定判定されるとステップS51に進む。ステップS50で否定判定されると、ステップS50の判定に戻る。
ステップS51では、スロットル開度変化率ΔTHが第1の閾値T1(例えば、30度/1s)を超えたか否かが判定され、肯定判定されるとステップS52に進む。ステップS51で否定判定されると、ステップS51の判定に戻る。
続くステップS52では、スロットル開度変化率ΔTHが第1の閾値T1より大きい第2の閾値T2(例えば、60度/1s)を超えたか否かが判定され、肯定判定されるとステップS52に進む。そして、ステップS52で肯定判定される、すなわち、リーン化運転中に急加速要求があった場合には、ステップS53に進んで、リーン化運転停止および通常加速時燃料補正制御が実行されて、一連の制御を終了する。
一方、ステップS52で否定判定される、すなわち、リーン化運転中に急加速要求より緩やかな徐加速要求があった場合には、ステップS54に進んで、リーン化運転を継続しつつリーン化運転用加速時燃料補正制御が実行され、一連の制御を終了する。
図21は、通常運転中の加速時燃料補正とリーン化運転中の加速時燃料補正との差異を示す説明図である。リーン化運転は、基本噴射量に対して1未満のリーン化係数(例えば、0.9)を乗算したリーン化噴射量にて実行される。このリーン化運転中に加速要求があった場合にも、運転者の加速意志を尊重して加速時の増量補正が行われることが望まれるが、リーン化運転中の少ない噴射量に対して通常の加速時燃料補正量を加えるのみでは、運転者の期待する加速状態が得られない可能性がある一方、徐加速である場合にもその都度リーン化運転を停止する方法とすると、リーン化運転と通常運転との間の切り替えが頻繁となり制御が複雑化し、リーン化運転による燃費向上効果が薄れる可能性も生じる。
そこで、本発明では、リーン化運転中に加速要求があった場合には、通常運転中の加速時補正量(TACC×KTH)をリーン化係数KLEANで除算したリーン化運転用加速時燃料補正量(TACC×KTH÷KLEAN)を、リーン化運転中の通常噴射量に加算することにより最終的な補正後の燃料噴射量を算出して、これにより、リーン化運転を解除することなく十分な加速を得ることを可能している。
図に示した各項目は、TOUTは加速時燃料補正後の最終的な燃料噴射量を示し、TIMBは基本マップにより導かれる基本噴射量を示し、KTAは大気圧補正値を示し、KO2はフィードバック補正係数を示し、KTWは油温または水温補正値を示し、KBUは環境補正係数(学習値)を示し、KLEANはリーン化係数を示し、TIVBはINJ(インジェクタ)の電圧補正値を示し、TACCはスロットル開度THの変化率ΔTHに応じて算出される加速時基本燃料噴射量を示し、KTHは加速時燃料補正TH方向補正係数をそれぞれ示している。
このとき、(a)に示す通常運転中の加速時燃料補正後の燃料噴射量TOUTは、{TIMB×(KTA×KTW×KO2×KBU)+TIMB}+(TACC×KTH)の数式で表される。これに対し、(b)に示すリーン化運転中の加速時燃料補正後の燃料噴射量TOUTは、{TIMB×(KTA×KTW×KO2×KBU×KLEAN)+TIMB}+(TACC×KTH÷KLEAN)の数式で表される。すなわち、リーン化運転中の加速時燃料補正の場合には、通常噴射量においてKLEANが乗算されて小さい値となっている分だけ、加速時燃料補正量にKLEANの逆数を乗算することで加速時燃料補正量を増やすように構成されるものである。
これにより、加速時燃料補正に伴ってリーン化運転を解除する必要がないため、制御ユニットのデータ量を削減しつつ、ドライバビリティの維持を可能としている。さらに詳しくは、理論空燃比を含む幅広い範囲で空燃比を直接検知できるLAFセンサを設けたり、記憶データ量や演算負担を増大させたりすることなく、リーン化運転に対応した加速時燃料補正量を算出することが可能となる。また、リーン化運転用加速時燃料補正量を、通常運転時に適用される加速時燃料補正量よりも大きな値に設定することにより、リーン化運転中に加速操作が行われた場合でも運転者の意志に沿った加速を得ることができる。さらに、リーン化運転中に加速状態となった場合に、リーン化運転から通常運転に制御態様を切り替えることなく運転者の期待する加速時燃料補正を提供できるので、演算負担を低減することが可能となる。
なお、前記したように、このリーン化運転中の加速時燃料補正制御は、スロットル開度THの変化率ΔTHが第1の閾値T1より大きいと共に第2の閾値T2より小さい場合に実行されるものであり、変化率ΔTHが第2の閾値T2より大きい場合には、リーン化運転を強制終了して通常運転に移行すると共に通常運転中の加速時燃料補正量を適用した加速時燃料補正が実行される。これにより、通常の運転状態に基づく加速時燃料補正量を適用することで、リーン化係数の逆数等の演算を行うことなく運転者の期待する加速状態を早期に提供することが可能となる。
なお、燃料噴射制御装置の構成、フィードバック領域の区分方法、リーン化領域、リーン化係数の設定値、最終噴射量を算出するためのパラメータの種類等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。本発明に係る内燃機関の燃料噴射制御装置は、鞍乗型の二/三/四輪車等の各種車両の動力源としての内燃機関のほか、農業機械やスノーモビル等の種々の内燃機関に適用することが可能である。
26…スロットル開度センサ、32…O2センサ、50…スロットル開度変化率検知手段、51…加速運転状態検知手段、52…噴射量補正手段、53…リーン化運転用加速時燃料補正手段、55…リーン化補正手段、A1〜A6…フィードバック領域、A3,A4…所定領域、C…制御ユニット(制御部)、E…エンジン(内燃機関)、KBU1〜KBU6…環境補正係数、KLEAN…リーン化係数、KO2…フィードバック補正係数、KO2ave…平均値、L…リーン化領域、L1,L2,L3…細分化領域T1…第1の閾値、T2…第2の閾値、ΔTH…スロットル開度THの変化率、Z…所定閾値、TACC×KTH…加速時補正量、TACC×KTH÷KLEAN:リーン化運転用加速時燃料補正量
Claims (4)
- 内燃機関(E)のスロットル開度(TH)の変化率(ΔTH)を検出するスロットル開度変化率検知手段(50)と、
前記変化率(ΔTH)に基づいて前記内燃機関(E)が加速運転状態にあることを検知する加速運転状態検知手段(51)と、
前記加速運転状態にあることが検知されると、予め設定された基本噴射量(T0)に対して加速時燃料補正量(TACC×KTH)を加算する噴射量補正手段(52)とを備え、
前記内燃機関(E)の運転状態が所定のリーン化領域(L)に突入すると、前記基本噴射量(T0)にリーン化係数(KLEAN)を乗算して理論空燃比より希薄側のリーン化空燃比を適用したリーン化運転を実行するリーン化補正手段(55)とを備えた内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記噴射量補正手段(52)には、前記リーン化運転中に前記加速運転状態にあることが検知されると、前記加速時燃料補正量(TACC×KTH)を前記リーン化係数(KLEAN)で除算したリーン化運転用加速時燃料補正量(TACC×KTH÷KLEAN)を求めるリーン化運転用加速時燃料補正手段(53)が含まれることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記内燃機関(E)の負荷は、スロットル開度(TH)およびエンジン回転数(NE)の増大に応じて大きくなり、
前記リーン化係数(KLEAN)は、前記内燃機関(E)の負荷が大きくなるにつれて小さくなるように設定されており、
前記リーン化領域(L)は、前記リーン化係数(KLEAN)に応じて複数の細分化領域(L1,L2,L3)に区分され、
前記複数の複数の細分化領域(L1,L2,L3)は、前記内燃機関(E)の負荷が上がり高回転になるにつれ、リーン化傾向が小さくなる部分を有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記噴射量補正手段(52)は、前記スロットル開度(TH)の変化率(ΔTH)が、加速運転状態か否かを判断するための第1の閾値(T1)より大きい第2の閾値(T2)を超えた場合には、前記リーン化運転から通常運転に切り替えると共に通常運転中に適用される加速時燃料補正量を用いて加速時燃料補正を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記リーン化補正手段(55)は、前記リーン化領域(L)から外れる際に前記リーン化係数(KLEAN)を徐々に1に近づけることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
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