JP2014043856A - 水力発電機および水力発電システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 設置場所を選ばず、エネルギ変換効率の高い水車に基づいた水力発電装置を提供する。
【解決手段】 水力発電装置50は、回転軸2を有する回転体1と、回転体1の回転面の幅方向中心から端部まで上流側から下流側に向かって傾斜を有するブレード3L,3Rを水流の強さに応じて回転体1が回動しながら水面に沈み込むように位相差を設けて交互に複数対配置した羽根車10と、羽根車10を取り囲むように立設する支持フレーム21を連結部材24で水流に対して垂直方向に連結してなる支持フレーム本体と、支持フレーム21を所定の高さで連結し、前記羽根車を支持する支持・連結部22と、羽根車10が水流の強さに応じて回動しながら水面に沈み込むように一方が回転軸2を回動自在に軸支し、他方が支持連結部材22に回動自在に設けられた懸架部23と、から構成した羽根車の懸架・支持装置20と、を備えた水車と、水車の回転軸からの出力を電力に変換する発電機30と、を備えている。
【選択図】図1
【解決手段】 水力発電装置50は、回転軸2を有する回転体1と、回転体1の回転面の幅方向中心から端部まで上流側から下流側に向かって傾斜を有するブレード3L,3Rを水流の強さに応じて回転体1が回動しながら水面に沈み込むように位相差を設けて交互に複数対配置した羽根車10と、羽根車10を取り囲むように立設する支持フレーム21を連結部材24で水流に対して垂直方向に連結してなる支持フレーム本体と、支持フレーム21を所定の高さで連結し、前記羽根車を支持する支持・連結部22と、羽根車10が水流の強さに応じて回動しながら水面に沈み込むように一方が回転軸2を回動自在に軸支し、他方が支持連結部材22に回動自在に設けられた懸架部23と、から構成した羽根車の懸架・支持装置20と、を備えた水車と、水車の回転軸からの出力を電力に変換する発電機30と、を備えている。
【選択図】図1
Description
本発明は、水力発電装置および水力発電システムに関する。より詳しく述べると、羽根車を水面に浮かべ水流により回転するタイプの水車およびこれを用いた発電装置および発電システムに関する。
近年、自然エネルギが注目されており、特に、昼夜、年間を通じて安定した発電が可能であり、設備利用率が50〜90%と高く、太陽光発電と比較して5〜8倍の電力量を発電可能であり、出力変動が少なく、系統安定、電力品質に影響を与えない、太陽光発電と比較して設置面積が小さい等の観点から、環境配慮型の発電として小水力発電が注目されている。
小水力発電の規模は。世界的には各国統一されていないが、概ね「10,000kW以下」であるといわれている。さらに別の区分では1000kw以下の発電をミニ水力発電とよび100kw以下の発電をマイクロ水力発電と呼ぶこともある。
発電方式の分類では、小水力発電は、「流れ込み式」、または「水路式」となり、大規模ダム(貯水池式)、中規模ダム(調整池式)ではなく、河川の水を貯めること無く、そのまま利用する発電方式であり、一般河川、農業用水、砂防ダム、上下水道など、現在無駄に捨てられているエネルギを有効利用する発電である。
このような水力発電として、特許文献1および特許文献2には、下掛け水車を用いた発電形式が採用されている。
すなわち、特許文献1では、流量の少ない水路における発電効率を高めることを目的とした従来の下掛け水車装置として、図19に示すように、用水路を流れる水101に下方の一部が浸るように立てて配置され、同一の方向に回転可能に配置された1対の水車110、120と、水車110、120に連接されて無端軌道をなし、水車110、120を一体として同一の方向に回転可能にする動力伝達部材130と、動力伝達部材130に固定され、用水路を流れる水101の動力を受けて無端軌道の周りに回転する複数の水流受部140と、上方に位置する動力伝達部材130及び水流受部140を支持する支持部材と、を備えた構成を有する下掛け水車装置が開示されている。
また、特許文献2では、流量の少ない水流の水力エネルギを有効活用することができるとともに、水流の淀みの発生を低減することができるようにすることを目的として、図20および図21に示す通り水路の横断方向かつ水平方向に延びる軸周りに回転自在に支持される回転体11と、互いに間隔をおいて回転体211の軸方向の両側にそれぞれ設けられた一対のブレード212とを備えている下掛け水車用の羽根車202が開示されている。特許文献2において、各ブレード212は、互いに間隔をおいて回転体11の周方向へ列設されるとともに、該回転体211の略半径方向に突設された複数の羽根13を備えており、各羽根213は、回転体211の略最下位に位置した状態で、水路210の上流側の面が、回転体211の軸方向中央側になるほど、下流側に位置するように配設されている。
特許文献3には小川等の流量・流速が比較的少ない場所に設置する水車として、図22に示すような円筒型の回転体301の周面に山形紋様のブレード302を設け、両回転軸304をハーネス313で回動自在に保持するとともにハーネス313の他端をフレーム315に固定されたピボット314により回動自在に支持し、フレームを設置支柱316により設置する水車が開示されている。
しかしながら、特許文献1および特許文献2の発電方式では、10kwの発電を目的としたものであり(小水力発電)、これらの装置を数10kwから数100kwの出力を行う装置とすることは非常に困難である。
さらに、特許文献2に記載の水車は、受水能力が低く、同一の水量・流速で十分な受水量を確保することができない。また、特許文献2に記載の水車をスケールアップしても従来の下掛け水車の製造コストよりも高くなり、また、現場で搬送するのも困難である。そのため数10kwから数100kw規模の発電効率の高い、安価な発電可能な小水力発電システムに対する要望がある。
しかしながら、特許文献1から特許文献3の発電方式では、10kw程度まで発電を目的としたものであり(小水力発電)、これらの装置を数10kwから数100kwまたはそれ以上の電力を出力する装置を構成することは非常に困難である。
さらに、特許文献2および特許文献3に記載の水車は、受水能力が低く、同一の水量・流速で十分な受水量を確保することができない。また、特許文献2に記載の水車をスケールアップしても従来の下掛け水車の製造コストよりも高くなり、また、現場で搬送するのも困難である。また、特許文献2に記載の水車は、流路上に構成するため、設置場所に制限がある。
また、特許文献3に記載の水車は、河川や水路等に設置するタイプの水力発電装置であり、効率的に水流を受けることができず、流速が増加した場合には空回りする恐れがある。したがって、比較的流れが穏やかな河川や水路に設置場所が限定される。
そのため設置場所を選ばず、数10kwから数100kw規模またはそれ以上の電力を安価で効率よく発電可能な発電装置に対する要望がある。
したがって、本発明の課題は、設置場所を選ばず、エネルギ変換効率の高い水車に基づいた水力発電装置を提供することである。
本発明の他の課題は、このような小水力発電装置に基づく水力発電システムを提供することである。
1 水流を受けて回転する左右両側面に回転軸を有する回転体と、
前記回転体の回転面の幅方向中心から端部まで上流側から下流側に向かって傾斜を有するブレードを水流の強さに応じて前記回転体が回動しながら水面に沈み込むように左右両側に位相差を設けて交互に複数対配置した羽根車と、
水流の方向に平行して前記羽根車を取り囲むように立設する一対の支持フレームを連結部材で水流に対して垂直方向に連結してなる支持フレーム本体と、
前記一対の支持フレームを所定の高さで連結し、前記羽根車を支持する支持・連結部と、前記羽根車が水流の強さに応じて回動しながら水面に沈み込むように一方が前記回転体の両回転軸を回動自在に軸支し、他方が前記支持連結部材に回動自在に設けられた懸架部と、から構成した羽根車の懸架・支持装置と、
を備えた水車と、
前記水車の回転軸からの出力を電力に変換する発電機と、を備えた水力発電装置。
前記回転体の回転面の幅方向中心から端部まで上流側から下流側に向かって傾斜を有するブレードを水流の強さに応じて前記回転体が回動しながら水面に沈み込むように左右両側に位相差を設けて交互に複数対配置した羽根車と、
水流の方向に平行して前記羽根車を取り囲むように立設する一対の支持フレームを連結部材で水流に対して垂直方向に連結してなる支持フレーム本体と、
前記一対の支持フレームを所定の高さで連結し、前記羽根車を支持する支持・連結部と、前記羽根車が水流の強さに応じて回動しながら水面に沈み込むように一方が前記回転体の両回転軸を回動自在に軸支し、他方が前記支持連結部材に回動自在に設けられた懸架部と、から構成した羽根車の懸架・支持装置と、
を備えた水車と、
前記水車の回転軸からの出力を電力に変換する発電機と、を備えた水力発電装置。
2 前記羽根車全体の比重が0.05から0.3であることを特徴とする項目1に記載の水力発電装置。
3 前記各ブレードが前記回転体の幅方向に対して5から35度の傾斜で配置されている特徴とする項目1または項目2に記載の水力発電装置。
4 前記ブレードの端面にアール部が設けられていることを特徴とする項目1から項目3のいずれか1項に記載の水力発電装置。
5 前記回転体の回転軸を有する両側面には、前記ブレードを覆うように受水案内用の案内板が設けられていることを特徴とする項目1から項目4のいずれか1項に記載の水力発電装置。
6 前記受水案内板の少なくとも下流側には受水した水を逃がすような逃水部を有することを特徴とする項目5に記載の水力発電装置。
7 記羽根車は、前記回転体と、前記水流の流れ方向に複数に分割されたブレード部と、前記回転体の両外側面に設けられ、前記回転体の軸側から前記複数に分割されたブレード部側に延び前記回転体と前記複数のブレード部を挟持する挟持部材と、
前記複数に分割された各ブレード部を貫通させて前記両側の挟持部材を固定する固定手段と、
から構成されることを特徴とする項目1から項目6のいずれか1項に記載の水力発電装置。
前記複数に分割された各ブレード部を貫通させて前記両側の挟持部材を固定する固定手段と、
から構成されることを特徴とする項目1から項目6のいずれか1項に記載の水力発電装置。
8 前記水流の流れ方向に複数に分割されたブレード部は、さらに前記水流の流れに対する鉛直方向の中心で2分割されていることを特徴とする項目7に記載の水力発電装置。
9 前記懸架・支持部は、前記左右のフレームに対して直角方向に設けた前記水車を設置箇所に固定するための一対の固定部に上に固定されていることを特徴とする項目1から項目8のいずれか1項に記載の水力発電装置。
10 前記固定部の端部には前記水車を設置箇所に接続・固定するための固定手段を有していることを特徴とする項目1から項目9のいずれか1項に記載の水力発電装置。
11 前記懸架部は、前記羽根車の沈み込みを規制する沈み込み調整部を備えていることを特徴とする項目から項目10のいずれか1項に記載の水力発電装置。
12 前記左右の支持フレームの頂部は第2の連結部材により連結され、前記第2の連結部材上に各種情報を表示する情報表示部を備えることを特徴とする項目1から項目11のいずれか1項に記載の水力発電装置。
13 前記懸架部の質量は、前記羽根車を水流のない状態で水面に浮かべた際に、沈み込みを起こさないような質量であることを特徴とする項目1から項目12のいずれか1項に記載の水力発電装置。
14 前記懸架部は、前記連結部に接続された前記羽根車を水中から引き上げるリフタを備えたことを特徴とする項目1から項目13のいずれか1項に記載の水力発電装置。
15 前記発電機が前記回転体の内部に内蔵されていることを特徴とする項目1から項目14のいずれか1項に記載の水力発電装置。
16 項目1から項目15のいずれか1項に記載の水力発電装置を設置箇所に設置してなる水力発電システム。
17 前記設置箇所が河川または用水路であることを特徴とする項目16に記載の水力発電システム。
18 前記設置箇所が水路であり、前記水路の水底に高低差を調整する高低差調整装置を備えることを特徴とする項目17に記載の水力発電システム。
19 前記水路に、2以上の発電装置を設けたことを特徴とする項目18に記載の水力発電システム。
20 前記発電システムは、水量、流量、水位、羽根車の沈み込み量、および発電量からなる群から選択された少なくとも1つを測定するセンサを備えていることを特徴とする項目16から項目19のいずれか1項に記載の水力発電システム。
21 前記発電システムは、水上に浮遊する浮遊式設置部により水路を形成し、前記水路に対して水力方向に前記水力発電装置を設置してなり、前記水路内の水流により前記水力発電装置の羽根車が回転して出力することを特徴とする項目16から項目20のいずれか1項に記載の水力発電システム。
22 前記水上に浮遊する浮遊式設置部の水路内の水流に応じて前記水力発電装置の羽根車に水流を与える向きを変更可能な移動手段を有していることを特徴とする項目21に記載の水力発電システム。
23 前記変更可能な移動手段を有する浮遊式設置部が船舶または筏であることを特徴とする項目22に記載の水力発電システム。
24 前記発電装置は、ネットワークを介してサーバと接続されており、
前記センサで測定した測定値をネットワークを介して接続されたサーバに送信され、そして
前記サーバは、送信された測定値情報を管理することを特徴とする項目16から項目23のいずれか1項に記載の水力発電システム。
前記センサで測定した測定値をネットワークを介して接続されたサーバに送信され、そして
前記サーバは、送信された測定値情報を管理することを特徴とする項目16から項目23のいずれか1項に記載の水力発電システム。
25 前記サーバは、前記水力発電システムをメンテナンスする端末とネットワークを介して接続されており、前記端末は前記サーバに入力された測定情報に基づいて前記水力発電システムを監視することを特徴とする項目24に記載の水力発電システム。
26 前記サーバは、端末とネットワークを介して接続されており、前記端末は前記水力発電システムの水量、流量、水位、羽根車の沈み込み量に基づいて水路の水の状態を把握可能であることを特徴とする項目24または項目25に記載の水力発電システム。
本発明の水車は、水流の強さに応じて沈み込みする羽根車と、前記羽根車を沈み込み自在に懸架する懸架部を有する羽根車の懸架・支持装置とから構成されている。
そのため、水流の強さに応じて羽根車が沈み込んで回転することとなる。羽根車が沈み込むと羽根車に備えられたブレードがより大量の水を受水することとなる。これにより、同じ水流の強さ(流量・流速)で同一サイズの羽根車と比較して高いエネルギを受けこれを出力することが可能となる。また、本発明の水車は、水面に浮遊させて回転させるタイプの水車であるので河川、用水路等の水路に設置しあるいは洋上に船舶、筏、ブイ等により固定して潮流・海流、船舶の走行による水流等の水流により高出力で回転させることが可能である。したがって、本発明の水車の設置の自由度はきわめて高い。そのため、このような水車に基づく本発明の水力発電装置は、高出力、設置自由度の高が高く、水力発電装置および水力発電システムは、同一の条件でより高出力で発電可能である。
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
(定義)
なお、本明細書で使用する用語は下記の意義を有する。
「水流」とは、水車の羽根車を回転させる水の流れであり、河川や用水路に代表される水路等の高低差を有する水の流れによって発生する水の流れや潮流・海流等の水の流れや船舶の走行によって生じる水の流れを含むことを意味し、「水流の強さ」とは、流速の速さおよび流量の大きさを意味する。また、「水流」とは、潮流や海流に代表される潮の流れや海水の流れを含むことを意味する。
(定義)
なお、本明細書で使用する用語は下記の意義を有する。
「水流」とは、水車の羽根車を回転させる水の流れであり、河川や用水路に代表される水路等の高低差を有する水の流れによって発生する水の流れや潮流・海流等の水の流れや船舶の走行によって生じる水の流れを含むことを意味し、「水流の強さ」とは、流速の速さおよび流量の大きさを意味する。また、「水流」とは、潮流や海流に代表される潮の流れや海水の流れを含むことを意味する。
「水路」とは、用水路等に加えて、例えば双胴船やアウトリーガ等に代表される船体間に本発明の水車を設置する場合に両方の船体で構成される水の流れる流路を含むことを意味する。
「沈み込み」とは、水流のない水面に羽根車を浮かべた際の羽根車の水に沈む部分(羽根車の埋没量)と比較して、羽根車が水流を受けて回転した際の羽根車の水に沈む割合(すなわち、羽根車の水中埋没量)が増加することを意味し、沈み込みの割合が増加した割合を「沈み込み量」という。
「位相差」とは、水流を受ける左右のブレードが左右同時に水流を受けるのではなく左右交互に受水することを意味する。
また、本発明の羽根車(水車)は、水流方向を「縦方向」と呼び、水流に対して垂直方向を幅方向と呼ぶ。また、羽根車の入水側(上流側)を「前方」と呼び、出水側(下流側)を「後方」と呼ぶ。
(水車:概要)
図1および図2に示す通り、本発明の水車は、水流に浮かべて回転させるための羽根車10と羽根車10を懸架・支持するための懸架・支持装置20とから主として構成され、懸架・支持部装置20は、羽根車10を沈み込み量に応じて鉛直方向(すなわち羽根車の沈み込み方向およびその逆方向)に移動可能に懸架・支持している。
図1および図2に示す通り、本発明の水車は、水流に浮かべて回転させるための羽根車10と羽根車10を懸架・支持するための懸架・支持装置20とから主として構成され、懸架・支持部装置20は、羽根車10を沈み込み量に応じて鉛直方向(すなわち羽根車の沈み込み方向およびその逆方向)に移動可能に懸架・支持している。
羽根車10は、水流を受けて回転する左右両側面に回転軸2を有する回転体1と、回転体1の回転面の幅方向中心から上流側から下流側に向かって傾斜を有するブレード3L,3Rを水流の強さに応じて回転体1が回動しながら水面に沈み込むように左右両側に位相が生じるように交互に備えている。
一方、懸架・支持装置20は、水流の方向に平行して前記羽根車を取り囲むように立設する一対の支持フレーム21と、一対の支持フレーム21の所定の高さで連結し、羽根車10を支持するための支持・連結部材22に設けられ、羽根車10を懸架するための懸架部23とから主として構成されている。
このように本発明の水車は、鉛直方向にのみに羽根車10を移動可能にした懸架部23を備えた懸架・支持装置20に懸架・支持された羽根車10から構成され、水流を有する水面に設置した際に水流の強さに応じて羽根車10が沈み込みを行いながら回転する新規タイプの水車である。水流が強い場合(例えば、流量が多くなる場合・流速が速くなる場合)、懸架部23により鉛直下向に羽根車10は移動し、水中に沈みこむ体積(すなわち、羽根車10の水中埋没量)が増えた状態で回転する(高速回転)。一方、水流が弱くなると、羽根車10の水中埋没量が減少し、懸架部23により鉛直上方に移動する。このように、本発明の水車は、水流の強さに応じて懸架部23により自動的に羽根車10の沈み込み量を変化させて羽根車10が回転する新規タイプの水車である。
このような羽根車10を鉛直(重力方向)に移動可能に水流がある面に設置すると、水流の強さ(流速)に応じて羽根車10が鉛直方向に沈み込むことを見出した。同一の水流の強さの水流で沈み込みを起こした場合と、沈み込まない場合とを比較すると沈み込み量が増加するにしたがって羽根車10の回転数が増加することを見出した。なお、沈み込み量の上限は、羽根車10が完全に陥没して、水車として機能しない量(すなわち、羽根車10が回転しない量)であり、羽根車全体の容積の40%程度である。
そのため、同一の水流で沈み込みを行う羽根車10を採用した場合、回転軸を固定した従来の水車と比較して、回転軸2からの出力が増加する。このような回転軸2に発電機を設けると沈み込みをしない固定回転軸の従来の羽根車と比較した場合、高い発電量で発電可能となる。発電量については、羽根車の受ける水流(流速・流量)、ブレードの設置の仕方により相違があるが、沈み込みにより受水量の増加と鉛直方向への揚力を励起した水車の場合、沈み込みがない固定軸水車と比較して凡そ5〜11倍の電力を出力することが可能である。
本明細書において「沈み込み量」とは、羽根車を水面に浮かべた際の羽根車の水に沈む部分に対する羽根車が水流を受けて回転した際の羽根車の水に沈む部分の増加量を意味する。この沈み込み量が増加するのにしたがって、羽根車10の水の捕捉量、すなわち受水量が大きくなる。すなわち、沈み込み量が増加するのにしたがって流水のエネルギ捕捉量が増加する。
図3に示す通り、沈み込みは、羽根車全体の浮力と羽根車10を回転させるための水流(例えば、流速および流量)と位相を有するブレード3L,3Rの関係により生じるものと推測できる。
すなわち、水流を受けない状態で水面に所定の浮力を有する本発明の羽根車を浮かべた際の喫水線(沈み込み前)とし、このような状態で、所定の入水角を有する左右交互に設けられた位相差を有するブレード3L,3Rが水流1を受けると羽根車10が回転する。水流1による回転により、水流を受けたブレードにより下方側へ向かう水流2と変換される。なお、下向きに変換された水流は、再び水平方向の流れとなって羽根車を通過することとなる(水流3)。
そのため、羽根車10は流速に応じて水流内部の圧力低下現象が励起され、水車後部の減圧現象から水車後部の水面低下として水流内に於ける落差に相当する現象が生じ、下向きの揚力により沈み込みが生じるものと考えられる(沈み込み後喫水線)。羽根車10の回転軸2が鉛直方向に移動可能に支持した懸架部23により、羽根車10は水流に応じて下方に沈み込みを行うこととなる。この沈み込み前後の水流の落差により、羽根車10は沈み込んだ量だけ位置エネルギをうけるものと推察される
なお、特許文献2に記載のような羽根車は、羽根車の中心部分に空間が設けられているので左右の両ブレードに十分に水が受水できずに拡散してしまうのでブレードに十分な力が加わらず、一方特許文献3に記載のような羽根車は、左右両側に受水した水が拡散してしまうので十分な力が加わらない。これに対して、本発明においては左右交互にブレード3L,3Rを設けたので、水流を受けると例えば左側ブレード3Lと次の左側ブレード3L間に受水しこれを保持した後に外側に流れ、右側ブレード3Rと次の右側ブレード3R間に受水しこれを保持した後に外側に流れ、左右交互のブレード3L,3Rに水流の力を受けることとなる。そのため、例えば自転車のペダルを交互に踏むのと同様に羽根車に非常に強い回転力が生じるものと推察できる。
さらに、本発明のようにこのような羽根車を鉛直方向に移動可能に(すなわち水流の強さに応じて自由に羽根車を移動可能に)軸支することによって初めて沈み込みによる位置エネルギを出力可能となる。また、羽根車が沈み込むほど各ブレードの受水量が増加する。そのため、運動エネルギ(質量m)の増加に伴い、下向きの揚力の励起、並びに水流内部の減圧による位置エネルギの創出が可能となり、高い出力能力を有する水車が提供される。また、後述の実施例によると、沈み込みにより羽根車10の単位時間当たりの回転数(rpm)が増加することがわかった。
(羽根車)
このように水流の強さに応じた沈み込みを発生させる本発明の羽根車10は、前述の通り、水流を受けて回転する左右両側面に回転軸2を有する回転体1と、回転体1の回転面の幅方向中心から上流側から下流側に向かって傾斜を有するブレード3L,3Rを水流の強さに応じて回転体1が回動しながら水面に沈み込むように左右両側に位相が生じるように交互に備えている。すなわち、左右両側に沈み込むように交互にブレード3L,3Rを配置して水流を受けた際に左右両側のブレード3L,3Rに位相が生じるように幅方向中心から左右交互にブレードを回転体1の周方向に所定間隔で設けている。
このように水流の強さに応じた沈み込みを発生させる本発明の羽根車10は、前述の通り、水流を受けて回転する左右両側面に回転軸2を有する回転体1と、回転体1の回転面の幅方向中心から上流側から下流側に向かって傾斜を有するブレード3L,3Rを水流の強さに応じて回転体1が回動しながら水面に沈み込むように左右両側に位相が生じるように交互に備えている。すなわち、左右両側に沈み込むように交互にブレード3L,3Rを配置して水流を受けた際に左右両側のブレード3L,3Rに位相が生じるように幅方向中心から左右交互にブレードを回転体1の周方向に所定間隔で設けている。
すなわち、左右両側に沈み込むように交互にブレード3L,3Rを配置して水流を受けた際に左右両側のブレード3L,3Rに位相が生じるように幅方向中心から左右交互にブレードを回転体1の周方向に所定間隔で設けている。
本発明の好ましい実施形態において、本発明の羽根車10におけるブレード3L,3Rの数は、回転体1のサイズにもよるが4から15対(8から30枚)、好ましくは6から10対(12から20枚)である。また、羽根車10全体の高さに対するブレード3L,3Rの高さの比率は0.1から0.3、好ましくは0.3から0.2である。
このようにブレード3L,3Rを交互に配置した羽根車10が水流を受けると水流の抵抗を抑え効率的に羽根車10を回転させ、懸架部23により水面に対して鉛直方向に羽根車10の移動方向を規制することにより、羽根車10は水流の強さに応じた回転速度で回転し、水流の強さに応じて沈み込み量で沈み込む。
このように本発明の羽根車10を効率的に沈み込みを行わせるために、羽根車10の浮力が重要な要素である。浮力(水に対する)は、一般的に羽根車全体の比重と関連し、比重が小さいほどより大きな浮力が発生する。本発明においては、羽根車の水に対する比重は、0.05から0.3、好ましくは0.1から0.2である。このような比重を実現するために、本発明では、回転体1およびブレード3L,3Rを各々発泡樹脂で構成し、必要に応じて当該樹脂をコーティングすることが好ましい。特に、好ましい発泡樹脂として日本合成化学工業株式会社からからエフレタンの商品名で販売されているエフレタンが好ましい。
なお、本発明の羽根車10の回転効率を増加させるために、図4(a)に示すよう、ブレード3L,3Rの回転軸2側(出水側)にアール部3’を設けることが好ましい。このようにアール部3’を設けることによりレード3L,3Rへ流入した水の抵抗値が少なくなり(水抜けがよくなり)、効率的に羽根車10が回転する。このアール部3’は、ブレード3L,3Rと同一の素材で一体成形することも可能であるが、金属製、例えば鋼板やステンレス鋼板やなどの素材を用いることもでき、このような素材でアール部3’を形成することによりブレードを保護する作用も有している。
さらに、本発明の好ましい実施形態では、図4(b)に示す通り、羽根車の両側面、すなわち出力側の両側面にブレードを覆うように受水案内板4を設けることが好ましい。このように受水案内板4を設けることにより、水流を効率的に羽根車内で捕捉することが可能である。なお、受水板案内板4のブレード3L,3Rの後方部分に受水した水を逃がすような逃水部(図示せず)を設けることが好ましい。このような逃水部を設けることによりブレード3L,3Rで受水した水流をブレード3L,3Rの後方に効率的に逃がすことが可能となる。
また、本発明の羽根車10において、ブレード3L,3Rは、特に限定されないが、回転体1の幅方向(水流に対して直角方向)に対して、5から35度の角度範囲内であることが羽根車10の効率的回転のために好ましい。
なお、以上本発明の羽根車10について説明したが本発明の羽根車は、上記の説明に限定されるもではない。例えば、図5に示す通り、本発明の羽根車を分割して構成して現場で組み立て可能な構成にすることも可能である。
図5(a)に示す実施形態では、下掛け用水車の羽根車10は、回転体1と、水路の縦断方向に複数に分割されたブレード部3”(図5(b)参照)と、回転体1の両外側面に設けられ、回転体1の回転軸2側から複数に分割されたブレード部3”側に延び回転体1と複数のブレード部3”を挟持する挟持部材4(図5(c)参照)と、複数に分割された各ブレード部3”を貫通させて前記両側の挟持部材4を固定する図示しない固定部材、例えば貫通ボルトとから構成されている。
このように構成することによって、現地の据付のための輸送時は分割し、現地で組み立てることが可能となる。また、メンテナンス時である一対のブレードが破損した場合、当該破損したブレードを含むブレード部を交換することにより対応可能である。なお、図5(a)、(b)に示す実施形態では、縦断方向に羽根車を分割したが、さらに、図5(d)、(e)に示す通りブレード部を横断方向に2分割することも可能である。
また、本発明の別の好ましい実施形態において、本発明の羽根車10は、回転体1の幅方向周面に複数対のブレード3L,3Rを装着するための切り込み凹部を設け、切り込み部に合わせた凸部を下端に有するブレード3L,3Rを切り込み凹部嵌合し、螺子等により固定することにより形成することも可能である。このような場合も、図5に示した羽根車10と同様に分割収納が可能となる。
(懸架・支持装置)
次に、本発明の懸架・支持装置20について説明する。図1に示す通り、本発明の懸架・支持装置20は、羽根車10を沈み込み量に応じて鉛直方向(すなわち羽根車の沈み込み方向およびその逆方向)に移動可能に懸架・支持する装置である。
次に、本発明の懸架・支持装置20について説明する。図1に示す通り、本発明の懸架・支持装置20は、羽根車10を沈み込み量に応じて鉛直方向(すなわち羽根車の沈み込み方向およびその逆方向)に移動可能に懸架・支持する装置である。
このような懸架・支持装置20は、図1に示す通り、各々側面視、一対の三角形状の支持フレーム21を、羽根車10を取り囲むような幅で立設し、連結部材24で連結して構成される支持フレーム本体と、一対の支持フレーム21の所定位置で連結し、羽根車10を支持する支持・連結部22と、羽根車10が水流の強さに応じて回動しながら水面に沈み込むように一方が前記回転体の両回転軸を回動自在に軸支し、他方が前記支持連結部材に回動自在に設けられた懸架部23とから主として構成されている。
支持フレーム21、連結部材24、支持・連結部22は、本発明の水車を使用する環境で変形・破壊しないような強度を有する、金属、木材、強化プラスチックおよびこれらを組み合わせた材料製の棒状体または板状体である。また、支持フレーム21は、羽根車10を支持・懸架した際に羽根車10の機能を十分発揮させるために三角形状が好ましいが、本発明の作用・効果が発揮できれば形状は特に限定されるものではない。なお、連結部材24は、一般に図1に示す通り頂部で支持ブレーム21を連結するが、羽根車10を懸架した状態で設置箇所に暗転して懸架・支持装置を設置するために羽根車10の回動を阻害しない範囲で支持フレーム20の底部、特に前側底部を連結することが好ましい。
このように構成された支持フレーム21本体の幅方向所定位置、すなわち、水中に浮かべた際に羽根車10が沈み込みを行いながら回転できるような位置に懸架部23を回動自在に支持する支持・連結部材20を固定する。一般的には、上流側の支持フレーム21の幅方向の所定の位置、好ましくは下方側(低い位置)に支持・連結部材21を取り付け、上流側から下流側に羽根車10を浮かべた上体で羽根車10を支持することが好ましい。
このようにして取り付けられた支持・連結部材21に懸架部23を回動自在に設けるが、懸架部23は、図1に示す通り、支持・連結部財21側に回動自在に取り付けられた1本の懸架部が羽根車10の回転を阻害しないように途中で分岐して両側の回転軸2を回動可能に軸支するいわゆるアーム形状であってもよく、あるいは、図6に示す通り、二本の平行な支柱を各々一端を支持・連結部材21に他端を回転軸2に回動自在に軸支するような長方形状であってもよい。
なお、支持・連結部材21側の回動範囲は、定常状態(水流を受けないで羽根車10が浮かぶ状態)から想定する最大沈み込み状態(羽根車10が水没しないで機能を有するような沈み込み状態あるいは後述する発電機の定格動作可能条件まで沈み込む状態)の範囲とすることが好ましく、より好ましくは図6に示す通り、沈み込み量を規制する沈み込み量調整部25を設ける。
沈み込み量調整部25は、図6に示す通り例えば懸架部23と支持フレーム21の頂部に設けた連結部材とを想定する最大沈み込み量に見合った長さの紐状体(チェーン、ゴムベルト、ワイヤ等)により接続することによって達成でき、あるいは、支持・連結部材側に回動を規制するストッパを設けることにより達成できる。
また、本発明の別の好ましい実施形態において、例えば予期せぬ増水時に羽根車10を水面から引き上げる引き上げ機構を設けることができる。このような引き上げ機構として、例えば懸架部23と支持フレーム21の頂部に設けた連結部材とを想定する最大沈み込み量に見合った長さの紐状体(チェーン、ゴムベルト、ワイヤ等)により接続し、このような紐状態を巻き上げる巻上げ機構により達成できる。
なお、例えば図6に示す通り上部の接続部24は、広告、案内情報等の各種情報を表示する情報表示部を備えていてもよい。
なお、本発明の好ましい実施形態において、懸架部23の質量は、羽根車10を水面に浮かべた際に沈み込みが起こらないような質量であることが好ましい。このような質量は、水車の体積、比重、特に浮力に応じて適宜設定され、水車の体積の半分に相当する浮力以下であることが好ましい。このように、構成することによって、羽根車10に過負荷がかからず、安定した動作が見込める。また、このように構成すると、水流を受けない際の沈み込みがなくなり、水流の強さに応じて自動的に羽根車の沈み込みが生じるので、特別な制御なしで、水流の強さに応じた羽根車の出力が可能となる。
また、本発明の別の好ましい実施形態において、本発明の水車は、懸架・支持装置20を、本発明の水車の設置箇所に設置するための設置手段を設けている。すなわち、図6に示す通り、本発明の水車は、支持フレーム21の前側と後ろ側に支持フレーム21に対して垂直方向に固定する固定部材26を支持フレーム21底部に直接あるいは桁材27を介して取り付けた構成を有する。
また、図7に示す通り、固定部26の先端部分には設置箇所と固定するための固定手段26aを備えていることが好ましい。
このように、本発明の水車に固定部を設けることにより、特別な設置工事を施さずに本発明の水車を配置固定することが可能となる。図8に示すように水路の幅後方に延びる固定部26と用いて水路に橋渡しして極めて容易に設置することが可能である。
また、固定部26を設けることにより、例えば、従来水路などに水車10を設置する場合には工事が必要であったのに対して、本発明の水車10では、水路に固定装置20を幅方向に亘って配置し、設置箇所28に固定部26aで固定するだけで水車10を設置することが可能となる。
以上、説明した本発明の水車は、水流の強さに応じて羽根車10が自動的に沈み込む構成としたので、羽根車10の沈み込みにより生じる力(浮力相当)が生じ、トルクが増加するのと同時に、沈み込みにより高い効率で受水するために生じる回転数の増加により、同一サイズの固定軸型の水車に比較して、格段に高いエネルギを出力可能となる。しかも、本発明の水車は、水面に浮遊させて回転させるタイプの水車であるので河川、用水路等の水路に設置しあるいは洋上に船舶、筏、ブイ等により固定して潮流・海流により高出力で回転させることが可能である。したがって、本発明の水車の設置の自由度はきわめて高い。
(水力発電装置)
次に、本発明の水力発電装置50について、説明する。
本発明の水力発電装置50は、上述した羽根車10が沈み込み可能に支持された水車における羽根車10の回転軸2からの出力を電力に変換する周知の発電機30を備えた構成を有している。
次に、本発明の水力発電装置50について、説明する。
本発明の水力発電装置50は、上述した羽根車10が沈み込み可能に支持された水車における羽根車10の回転軸2からの出力を電力に変換する周知の発電機30を備えた構成を有している。
例えば、図9(a)に示す通り、発電機30は、懸架部23に設けてもよく、あるいは図9(b)に示す通り一方の側の支持フレーム21上に設けてもよい。また、図9(a)、図9(b)に示す通り、発電機30は、回転軸21の回転を増速するために増速用のギア31、32およびプーリ33を介して回転軸2と接続することが好ましい。
あるいは、本発明の好ましい実施形態においては、図10に示す通り羽根車10の回転体1の内部に内蔵することも可能である。
このような発電機30は、水力発電分野に周知の発電機から、本発明の水車の適用形態(河川、水路へ浮かべて発電装置として使用、洋上に浮遊させて潮力等により発電する発電機として使用等)、発電規模、価格等を考慮して適宜選択できるが、本発明の好ましい実施形態において、多極コアレス発電機が好ましい。あるいは、図11に示す通り、回転軸2をシャフトドライブ34を介して高圧エアポンプまたは油圧ポンプ等のポンプ35に圧送・循環し(エアの場合は端末解放)、エアタービン型発電機、フライホイール型相反回転発電機、油圧発電装置等の発電機(図示せず)により発電することも可能である。
そして、発電機30により変換された電力は、従来周知の方法によりキャパシタを介してあるいは集電装置を介して取り出される。
このようにして、本発明の水車の回転軸からの出力を電力に変換する本発明の水力発電装置50は、前述の通り、水流の強さに応じて羽根車が自動的に沈み込む構成としたので、羽根車の沈み込みにより生じる力(浮力相当)が生じ、トルクが増加するのと同時に、沈み込みにより高い効率で受水するために生じる回転数の増加により、同一サイズの固定軸型の水車に比較して、格段に高い電力を出力可能となる。そして、本発明の水力発電装置は、水面に浮遊させて回転させるタイプの水車に基づく水力発電装置であるので河川、用水路等の水路に設置しあるいは洋上に船舶、筏、ブイ等により固定して潮流・海流により高出力で回転させることが可能である。したがって、本発明の水力発電装置は、種々の形態で適用可能となる。
(水力発電システム)
次に、このような水力発電装置50を備えた水力発電システムについて説明する。
本発明の水力発電システムの第1の実施形態において、本発明の水力発電装置50を河川、水路等の設置箇所に設置して上流側から下流側に高低差によって生じる水流に基づく発電システムを構築することができる(例えば、図8参照)。
次に、このような水力発電装置50を備えた水力発電システムについて説明する。
本発明の水力発電システムの第1の実施形態において、本発明の水力発電装置50を河川、水路等の設置箇所に設置して上流側から下流側に高低差によって生じる水流に基づく発電システムを構築することができる(例えば、図8参照)。
本発明の好ましい実施形態においては、例えば図12に示す通り、例えば用水路等の水路に直列に本発明の水力発電装置50を1台または複数台設置して水力発電システムを構築可能である。
また、本発明の発電システムは、例えば図13に示す通り、水路の上流側からの水の流速を調整する調整機構を設けることが可能である。図13に示す調整機構40は、図13(a)に示す通りエアジャッキ41により羽根車搭載部42aを有する補助流路42を押し上げ、水路WPに高低差を設ける機構であり、図13(b)に示す通り水路WPに設置することにより水路内に高低差を設ける調整機構である。
このような調整機構40を設けることにより、本発明の発電システムは、一定の水量で水路内を流れる水に対して流速を調整することが可能であり、より高出力で発現可能となる。
本発明の水力発電装置50を河川に設けて水力発電システムを構築するに当たって、例えば河川の両岸に支柱を設け、当該支柱に本発明の水力発電装置、好ましくは例えば図8に示すような固定部を有する水力発電装置を設置したり、図14に示す通り、橋に設置したりすることが可能である。また、図15に示す通り、メンテナンス時や増水時等の退避の目的で羽根車10を懸架・支持装置側に水面から引き上げる引き上げ機構を設けることができる。このような引き上げ機構として、前述の通り例えば懸架部23と支持フレーム21の頂部に設けた連結部材とを想定する最大沈み込み量に見合った長さの紐状体(チェーン、ゴムベルト、ワイヤ等)により接続し、このような紐状態を巻き上げる巻上げ機構により達成できる。
また、本発明の特定の実施形態において、河川等にバイパスの用水路を設け、このような用水路に本発明の発電装置50を1台または並列および/または直列方式で複数台設置して発電システムを構築する。この際に、例えば図6および図7に示す固定部26および固定手段26aを有する本発明の発電装置50を用いて、用水路の壁面に固定手段26aに対応する固定手段を設けると発電システムを容易に構築可能である。したがって、このように用水路を用いた発電システムの構築方法も本発明の範囲内である。
更に、図16および図17に示す通り、高低差による水流を有する河川等に船舶(図16)や筏(図17)やブイ(図示せず)等の水中浮遊し本発明の発電装置50を設置可能な設置箇所28に設置することも可能である。
このように、水面に浮遊可能な設置物に設置可能であることから、本発明の発電システムは、洋上に設置して潮流により発電する発電システムとして適用可能である。
このように洋上の発電システムを本発明の発電装置50の羽根車10が水流(海流や潮流)を垂直方向から受けるように発電装置50の向きを変えられることあるいは強い潮流が発生可能な場所に移動可能であることが好ましい。そのため、この種の洋上発電システムに本発明を適用する場合、船舶や筏等の移動手段を有する設置箇所に固定することが好ましい。
また、この際に、双胴船(三胴船、および多胴船)やアウトリーガ等に代表される船体間に流路WPを設け流路WPに本発明の水力発電装置50を設けることが好ましい。すなわち、水路WPを構成する2つの船体の水流の流入側は幅が徐々に狭まっているので水流を流路WP内に効率的に補足できる。
また、図18に示す通り、本発明の発電システムは、発電装置50に入力される水に関する情報(水路情報)、例えば水位情報、水量情報、流速情報、前処理装置(除塵装置)の映像情報や発電装置の運転情報、例えば発電量、羽根車の沈み込み量、調整装置の現在の高低差などの情報を取得し、取得した情報を端末Tpによりネットワーク回線を通じて管理サーバSにリアルタイム送信する構成を有することもできる。
管理サーバSは、このようにして発電システム側端末からの情報に基づいて発電システムが正常に運転されているか?および発電装置に入力される水に対して異常がないか?を常に把握することができる。
また、前記管理サーバSは、メンテナンス側の端末(例えば、ポータブルコンピュータ、スマートフォン)は、発電システムのメンテナンス情報を送る。メンテナンス情報としては、水路の異常(前処理装置の正常でない動作)や、水路情報や沈み込み量情報に基づいて理論発電量よりも少ない発電量(ブレードの損傷、水量に対して少ない流速など)に基づいてメンテナンスを的確に実施することができる。
また、例えば降雨などによって水路に異常がきたした場合、管理サーバSは、地方端末Tl(例えば、市町村役場、町内会、農業組合、商店街等の端末)に災害情報等を流すことも可能である。
このように、本発明の発電システムの水路情報や運転情報を管理サーバでネットワーク回線を介して管理することにより、メンテナンスが容易となるだけでなく、水路での以上を地域情報として知らせることが可能となる。
このように本発明の水力発電装置は、水面に浮遊させて回転させるタイプの水車に基づく水力発電装置であるので河川、用水路等の水路に設置しあるいは洋上に船舶、筏、ブイ等により固定して潮流・海流により高出力で回転させることが可能である。したがって、本発明の水力発電装置を用いて種々の水力発電システムを構築可能である。
以上、本発明の実施の形態を説明したが本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、船体間に流路WPを構成したが、中洲のに船体形状の浮遊体を設置し中洲と浮遊体の間に流路を作り当該流路に本発明の水力発電装置を設けることも可能である。
また、本発明の水力発電システムで、発電情報をネットワークを介して端末に送信したが、本発明の水力発電装置の設置予定箇所に想定発電量を設け、当該水力発電装置を販売するネットワークを介したマッチングシステムも本発明の範囲内である。このようなマッチングシステムで販売した水力発電装置の運転状況は、端末を介してユーザの端末で確認可能となる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
図4(b)に示すようなサイズの12対のブレードを有する本発明の水車をPR樹脂を用いて製作し(質量1.6kg、700mm水車幅:500mm胴直径:500mm羽高さ:100mm)、実際に河川により流速と沈み込み量を測定した。
軸の両端をロープで結び成人男性2名により羽根車をささえ流速0.34m/s、0.76m/sおよび1.9m/sで着水させたところ、流速1.9m/sでは、成人男性2名でも羽根車を保持できなかった。
流速0.34m/sでは、羽根車は25%程度の沈み込みが起こり、1.9m/sでは40%程度の沈み込みが生じた。
流速0.76m/s、の軸トルクを微調整デジタル式 トルクレンチアダプターSJ7583Aを用いて測定したところ初期駆動トルク59−68、駆動トルク(着水後)9.2N/m−9.4であった。
このことから、数式
Pi=Mαl=Qvl[J]
Pw=Pi/t=Qvl/t=Qv2[kw]
Pa=Qv2=Fv=Frω=τω=2πnτ/60
τ=60Pa/2πn[N/m]
に基づいて計算したところ26Wに相当する電力を発生可能と計算できる。
Pi=Mαl=Qvl[J]
Pw=Pi/t=Qvl/t=Qv2[kw]
Pa=Qv2=Fv=Frω=τω=2πnτ/60
τ=60Pa/2πn[N/m]
に基づいて計算したところ26Wに相当する電力を発生可能と計算できる。
実施例1に記載の羽根車を図1に示す懸架・支持装置に設置し、沈み込み量と回転数の計測を行った。なお、本実施例では、沈み込み量と回転数の関係を計測するため羽根車10が水没するように懸架部23の質量を30kgとして、手動により沈み込み量を調整した。
川幅:2m水深:0.6m流速:1.5m/s流量:1.8m3/sの用水路に本発明の水車を設置し、羽根車を浮かべて、沈み込み量と回転数の関係を目視した。その結果、沈み込みなしの状態での回転数は10rpmであり、沈み込み量が増加するのとともに回転数が増加沈み込み量約25%の時に回転数が25rpmとなり、その後回転数が徐々に減少し沈み込み量が約40%の時には回転数は20rpmとなった。
実施例1とあわせて考えると、沈み込み量が40%の際に羽根車に対する受水量が最大となり、なおかつ良好な回転数で羽根車が回転していることが判る。
本発明の水車は、水流の強さに応じて羽根車が自動的に沈み込む構成としたので、羽根車の沈み込みにより生じる力(浮力相当)が生じ、トルクが増加するのと同時に、沈み込みにより高い効率で受水するために生じる回転数の増加により、同一サイズの固定軸型の水車に比較して、格段に高いエネルギを出力可能となる。しかも、本発明の水車は、水面に浮遊させて回転させるタイプの水車であるので河川、用水路等の水路に設置しあるいは洋上に船舶、筏、ブイ等により固定して潮流・海流により高出力で回転させることが可能である。したがって、本発明の水車の設置の自由度はきわめて高い。
そして、本発明の水力発電装置は、水面に浮遊させて回転させるタイプの水車に基づく水力発電装置であるので河川、用水路等の水路に設置しあるいは洋上に船舶、筏、ブイ等により固定して潮流・海流により高出力で回転させることが可能である。したがって、本発明の水力発電装置は、種々の形態で適用可能となる。そのため本発明の水力発電装置を用いて種々の水力発電システムを構築可能である。
WF 水流
WP 水路
1 回転体
2 回転軸
3L,3R ブレード
10 羽根車
20 懸架・支持装置
21 支持フレーム
22 支持・連結部材
23 懸架部
24 連結部材
25 沈み込み調整部
26 固定部
26a 固定手段
30 発電機
50 水力発電装置
WP 水路
1 回転体
2 回転軸
3L,3R ブレード
10 羽根車
20 懸架・支持装置
21 支持フレーム
22 支持・連結部材
23 懸架部
24 連結部材
25 沈み込み調整部
26 固定部
26a 固定手段
30 発電機
50 水力発電装置
Claims (26)
- 水流を受けて回転する左右両側面に回転軸を有する回転体と、
前記回転体の回転面の幅方向中心から端部まで上流側から下流側に向かって傾斜を有するブレードを水流の強さに応じて前記回転体が回動しながら水面に沈み込むように左右両側に位相差を設けて交互に複数対配置した羽根車と、
水流の方向に平行して前記羽根車を取り囲むように立設する一対の支持フレームを連結部材で水流に対して垂直方向に連結してなる支持フレーム本体と、
前記一対の支持フレームを所定の高さで連結し、前記羽根車を支持する支持・連結部と、前記羽根車が水流の強さに応じて回動しながら水面に沈み込むように一方が前記回転体の両回転軸を回動自在に軸支し、他方が前記支持連結部材に回動自在に設けられた懸架部と、から構成した羽根車の懸架・支持装置と、
を備えた水車と、
前記水車の回転軸からの出力を電力に変換する発電機と、を備えた水力発電装置。 - 前記羽根車全体の比重が0.05から0.3であることを特徴とする請求項1に記載の水力発電装置。
- 前記各ブレードが前記回転体の幅方向に対して5から35度の傾斜で配置されている特徴とする請求項1または請求項2に記載の水力発電装置。
- 前記ブレードの端面にアール部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の水力発電装置。
- 前記回転体の回転軸を有する両側面には、前記ブレードを覆うように受水案内用の案内板が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水力発電装置。
- 前記受水案内板の少なくとも下流側には受水した水を逃がすような逃水部を有することを特徴とする請求項5に記載の水力発電装置。
- 記羽根車は、前記回転体と、前記水流の流れ方向に複数に分割されたブレード部と、前記回転体の両外側面に設けられ、前記回転体の軸側から前記複数に分割されたブレード部側に延び前記回転体と前記複数のブレード部を挟持する挟持部材と、
前記複数に分割された各ブレード部を貫通させて前記両側の挟持部材を固定する固定手段と、
から構成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の水力発電装置。 - 前記水流の流れ方向に複数に分割されたブレード部は、さらに前記水流の流れに対する鉛直方向の中心で2分割されていることを特徴とする請求項7に記載の水力発電装置。
- 前記懸架・支持部は、前記左右のフレームに対して直角方向に設けた前記水車を設置箇所に固定するための一対の固定部に上に固定されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の水力発電装置。
- 前記固定部の端部には前記水車を設置箇所に接続・固定するための固定手段を有していることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の水力発電装置。
- 前記懸架部は、前記羽根車の沈み込みを規制する沈み込み調整部を備えていることを特徴とする請求項から請求項10のいずれか1項に記載の水力発電装置。
- 前記左右の支持フレームの頂部は第2の連結部材により連結され、前記第2の連結部材上に各種情報を表示する情報表示部を備えることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の水力発電装置。
- 前記懸架部の質量は、前記羽根車を水流のない状態で水面に浮かべた際に、沈み込みを起こさないような質量であることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の水力発電装置。
- 前記懸架部は、前記連結部に接続された前記羽根車を水中から引き上げるリフタを備えたことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の水力発電装置。
- 前記発電機が前記回転体の内部に内蔵されていることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の水力発電装置。
- 請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の水力発電装置を設置箇所に設置してなる水力発電システム。
- 前記設置箇所が河川または用水路であることを特徴とする請求項16に記載の水力発電システム。
- 前記設置箇所が水路であり、前記水路の水底に高低差を調整する高低差調整装置を備えることを特徴とする請求項17に記載の水力発電システム。
- 前記水路に、2以上の発電装置を設けたことを特徴とする請求項18に記載の水力発電システム。
- 前記発電システムは、水量、流量、水位、羽根車の沈み込み量、および発電量からなる群から選択された少なくとも1つを測定するセンサを備えていることを特徴とする請求項16から請求項19のいずれか1項に記載の水力発電システム。
- 前記発電システムは、水上に浮遊する浮遊式設置部により水路を形成し、前記水路に対して水力方向に前記水力発電装置を設置してなり、前記水路内の水流により前記水力発電装置の羽根車が回転して出力することを特徴とする請求項16から請求項20のいずれか1項に記載の水力発電システム。
- 前記水上に浮遊する浮遊式設置部の水路内の水流に応じて前記水力発電装置の羽根車に水流を与える向きを変更可能な移動手段を有していることを特徴とする請求項21に記載の水力発電システム。
- 前記変更可能な移動手段を有する浮遊式設置部が船舶または筏であることを特徴とする請求項22に記載の水力発電システム。
- 前記発電装置は、ネットワークを介してサーバと接続されており、
前記センサで測定した測定値をネットワークを介して接続されたサーバに送信され、そして
前記サーバは、送信された測定値情報を管理することを特徴とする請求項16から請求項23のいずれか1項に記載の水力発電システム。 - 前記サーバは、前記水力発電システムをメンテナンスする端末とネットワークを介して接続されており、前記端末は前記サーバに入力された測定情報に基づいて前記水力発電システムを監視することを特徴とする請求項24に記載の水力発電システム。
- 前記サーバは、端末とネットワークを介して接続されており、前記端末は前記水力発電システムの水量、流量、水位、羽根車の沈み込み量に基づいて水路の水の状態を把握可能であることを特徴とする請求項24または請求項25に記載の水力発電システム。
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