実施の形態1.
図1、図2は実施の形態1を示す図で、図1は静電霧化装置100の概略構成図、図2は静電霧化装置100の側面図である。先ず、図1、図2を参照しながら、静電霧化装置100の構成を説明する。
本実施の形態の静電霧化装置100は、図1、図2に示すように、ナノメータ(10−9m)サイズの静電ミスト1を発生するために、放電極である水印加電極2と接地極である対向電極3とを備えている。
水印加電極2は、ともに板状の胴部28と先端霧化部29から成り、胴部28に供給された水を先端霧化部29に移動(搬送)する。先端霧化部29の先端29a(突端)が、対向電極3に向くように配置される。水印加電極2は材料に多孔質体が用いられる。
水印加電極2と対向電極3との間には、高電圧電源部4から供給される約4〜6kVの高電圧が、給電端子25(例えば、図6参照)を介して印加される。ここでは、対向電極3が接地極(グランド極とも言う)となって電位0Vであり、水印加電極2に、−4〜−6kVのマイナスの直流電圧が印加される。一定のミスト量を保つために、電圧を可変させて、定電流制御を行うと良い。
水印加電極2の胴部28の形状は略矩形であり、その胴部28の上方には、所定の距離L10の隙間を空けて水供給部の一部であるペルチェユニット6の冷却面に接する冷却部8の複数の冷却フィン8bが略水平方向に所定の間隔を空けて並列した状態で位置している。胴部28は、冷却フィン8bの並列する方向に長辺方向幅(長手方向の幅)を伸ばして形成されている。即ち、略矩形の胴部28の長辺方向(長手方向)が冷却部8の冷却フィン8bの積層方向に略一致している。
水印加電極2は、冷却フィン8bの下方に所定の距離L10の隙間を空けて位置し、冷却フィン8bの並列する方向に長手方向(長辺方向)の幅を伸ばす平板状の胴部28を有している。そして、胴部28の短辺方向が冷却フィン8bが突出する方向に略一致している。胴部28は、長辺方向の幅が短辺方向の幅の3倍以上ある細長い形状である。そして板状の水印加電極2は、その板厚が胴部28の短辺方向幅よりも小さいものである。尚、胴部28の形状は略矩形と説明しているが、長辺と短辺のなす角度が直角である完全なる長方形に限定されるものではなく、平行四辺形や台形も含まれるものである。
さらに水印加電極2は、図1に示すように、胴部28の一方の長辺(冷却フィン8bが突出する方向側)の側面の途中に、その側面から突出するように先端霧化部29が形成されている。先端霧化部29は胴部28に連続する同じ厚さの板状突起で、その形状は上面視で三角形状である。三角形状の先端霧化部29は、底辺の面が胴部28の一方の長辺の側面につながり、頂点である先端29a(突端)が、対向電極3に向いている。この先端29aが対向電極3に対する放電部となる。
また、胴部28の形状は、略矩形に限定されず、断面が円形の円柱でもよい。その場合、水印加電極は、円柱の胴部の先に先端部が尖った円錐形状の先端霧化部がつながった使用中の鉛筆のような形状であってもよい。先端霧化部は電界が集まりやすいように鋭角でもよいし、テーラーコーンを形成しやすいように曲面部であってもよい。尚、テーラーコーンについては、後で説明する。
図1、図2においては、先端霧化部29である突起が一つの場合を示したが、突起が複数であってもよいし、略鉛筆形状の水印加電極を3〜10本程度複数本を横に並べることで、水を受け取りやすくしても良い。その場合、各水印加電極に均一に電界がかかれば、ミスト霧化量も増加する。
水印加電極2の材料は、充分な吸水性能、搬送性能を持ちながら、低い電気抵抗率(体積抵抗率)、高い電気伝導性を有して、霧化する水に効率よく電気を伝えて帯電させることができる材料であることが望ましい。より具体的な例としては、チタン、ステンレス、ニッケルなどの金属多孔質体である発泡金属がよく、この実施の形態では、チタンを素材とする発泡金属で水印加電極2を形成している。
図3は実施の形態1を示す図で、水印加電極2に用いる発泡金属の説明用拡大概念図である。
図3は、平面(二次元)状で示しているため、各々の気孔が独立しているように見えるが、実際の発泡金属は、三次元的に気孔が連続している連続気孔構造体である。図3に示すように、本実施の形態の静電霧化装置にて水印加電極2として用いられる発泡金属は、焼き固まった金属部22と空隙部となる気孔21で構成される。ここで、気孔21の直径を孔径と定義する。孔径は、電子顕微鏡で撮影される画像により、その大きさを判断することができる。また、水銀圧入式ポロシメータやガス吸着測定装置を使って、孔径だけでなく、気孔の分布状態を測定することも可能である。
水印加電極2の発泡金属の孔径は10〜1000μmが妥当であるが、孔径が50〜600μmの発泡金属が、吸水性や目詰まり防止の観点から好適であり、さらに剛性や生産性(加工性)を考慮すると150〜300μmが最適である。
セラミックのように孔径が10μm未満であると、孔径が細かくなり過ぎて(小さ過ぎて)目詰まりする危険性が高いし、吸水量も小さい。また、気孔21の大きさを安定して小さく揃えることは発泡金属の製造上、困難なものである。逆に、孔径が1000μmを超えると、連続する気孔21を通して吸水した水が漏れ出しやすくなり、水を胴部28から先端霧化部29へと搬送しがたくなる。
その他にも、水の搬送と放電を兼ねる多孔質体材料として、気孔率が20〜50%程度で、孔径が数〜数十μm程度のチタニア、ムライト、シリカ、アルミナなどのセラミックが使用できる。セラミックは毛細管現象で水の搬送ができ、また加工性がよく、高電圧からの耐摩耗性にも優れるなどの利点を有しているが、目詰まりに注意する必要がある。また、有機材料としては、インクペン等で使用されているPE(ポリエチレン)などの吸水材料を使用することもできる。また、有機材料に導電材料を混ぜて構成してもよく、金属材料に比べて安価で、円形など様々な形状の水印加電極を得ることができる。
対向電極3は、導電性のある金属もしくは導電ポリマーやフィラを混ぜた抵抗の低い樹脂にて板状に成形されたもので、略中央に開口3aを有している。この開口3aが水印加電極2の先端霧化部29と対向するように、対向電極3は、先端霧化部29の先端29aと一定の距離を隔てて位置している。この距離によって電界強度が決定される。
次に水印加電極2よりも上方に位置する水供給部について説明する。図1、図2に示す静電霧化装置100は、ペルチェユニット6と、そのペルチェユニット6の放熱面に接する放熱部7と、放熱面の反対側に位置する冷却面に接する冷却部8で構成される水供給部を有する。そしてこの水供給部で生成した水を、水印加電極2の胴部28上面に重力により滴下させて供給する。
放熱部7は、ペルチェユニット6と接するベース板7aと、ベース板7aの反ペルチェユニット側の面に略垂直に立設する複数の放熱フィン7bとを有する。
また、冷却部8は、ペルチェユニット6と接するベース板8aと、そのベース板8aの反ペルチェユニット側の面に略垂直に立設する複数の冷却フィン8bを有する。
放熱部7の複数の放熱フィン7bと冷却部8の複数の冷却フィン8bは、各々の放熱フィン7b、冷却フィン8bが通過する空気流と略平行となるように通過する空気流と略直交する方向に互いに所定の間隔を空けて並列している。ここでは、空気流が概ね重力方向であるため、放熱部7の複数の放熱フィン7bと冷却部8の複数の冷却フィン8bは、重力方向とほぼ直交する方向となる略水平方向に並列している。尚、冷却部8を効率よく冷却するために、放熱部7の放熱フィン7bの方が冷却部8の冷却フィン8bよりもフィン表面積が大きく構成されている。
ペルチェユニット6内部には、複数のP型N型半導体が交互に直列に接続されている。低電圧電源部5から1〜5V程度の直流電圧がペルチェユニット6に印加されると、一方向に電流が流れ、ペルチェ効果によって放熱面の熱量が増え、冷却面では吸熱がなされる。これにより、放熱部7は暖められ、冷却部8は冷却される。
ペルチェユニット6によって、冷却部8の温度が、通過する空気の露点以下まで冷やされると、冷却部8の冷却フィン8bの表面には、その空気中の水分が結露した結露水10が生成される。
ここで冷却部8の重力方向下方には、この冷却フィン8bの下端とは、所定の距離L10の空間を介して水印加電極2が配置されている。冷却部8と水印加電極2は、互いが直接的に接触する部分を有していない。冷却フィン8bの下端から重力により滴下された結露水10は、水印加電極2の胴部28上面に落下する。即ち、水印加電極2の略矩形の胴部28が、冷却フィン8bが並列する方向に長辺方向を伸ばし、且つ冷却フィン8bの真下(直下)に距離L10の空間を隔てて配置されているのである。
胴部28の上面に重力落下した結露水10は、金属多孔質体の水印加電極2内部に吸水され、内部の互いが三次元的につながる空隙(気孔21)内を表面拡散により移動する。結露水10は、このような表面拡散現象により、水印加電極2の内部にて胴部28から先端霧化部29へと搬送される。
水印加電極2の先端霧化部29の先端29a近傍まで水(結露水10)が搬送されると、グランド極である対向電極3に対して水印加電極2には、−4〜−6kVのマイナス高電圧が印加されているので、先端29a近傍の水にその高電圧がかかり、水(結露水10)は水印加電極2と同電位、即ちマイナスの高電圧に帯電している。そのため、帯電している水は、静電界中のクーロン力の作用によって、先端29aから局所的に水印加電極2の外部へ引っ張られテーラーコーンと呼ばれる盛り上がりを形成する。このときテーラーコーンを形成している水は、水印加電極2に付いているので、引き続き帯電している。そして、作用するクーロン力が水の表面張力を超えることで、テーラーコーンを形成していた水が飛び出し、はじけるように分裂(この分裂はレイリー分裂と呼ばれている)を繰り返し、ナノメータサイズの帯電した静電ミスト1が生成される。静電ミスト1は対向電極3に向かって移動し、対向電極3の開口3aから外部へと放出される。
このように生成された静電ミスト1は、単にミストや微粒子水と呼ばれたり、帯電していることから、帯電ミストや帯電微粒子水と呼ばれたりすることがある。また、大きさがナノメータサイズであることから、ナノミストと呼ばれることもある。いずれであっても、水に高電圧をかけ、レイリー分裂により微細化されて生成される帯電したナノメータサイズのミスト(微粒子水)であり、ここでは、このようにして生成されたミストのことを静電ミスト1と呼ぶこととする。また、このように静電ミスト1を生成することを静電霧化と呼び、霧化するとは水をミスト化することである。そして、霧化量とは、静電ミスト1の生成量(発生量)のことである。
上方に位置する複数の冷却フィン8bと、その下方に隙間L10を介して冷却部8とは非接触に位置する水印加電極2の胴部28とは、このような位置関係にあるので、重力により複数の冷却フィン8bの下端から冷却フィン8bの並列方向であり略水平方向に幅広く滴下される多くの結露水10を、胴部28の上面が水受け取り面となって、無駄なく確実に受け取ることができ、それらを先端霧化部29に搬送できるので、安定して多くの量の静電ミスト1を発生させることができる。
先端霧化部29が胴部28の一方の長辺(冷却フィン8bが突出する方向側)の側面の途中に形成されていれば、短辺の側面に設けるのに比べて、胴部28で受け取った結露水10を素早く先端霧化部29に搬送できる。このため、結露水10が水印加電極2へ至るまでの経路が、重力による胴部28への直接的な滴下であることと相まって、この静電霧化装置100の運転開始から短時間で静電ミスト1を発生させることができる。各冷却フィン8bから同量の結露水10が滴下されるものとして、先端霧化部29が一つだけの場合には、先端霧化部29は、胴部28の一方の長辺の側面にあって、冷却フィン8bの積層方向幅の中央に相当する位置に配置されるのが、水の搬送の安定度から最も好ましい。
尚、対向電極3は、水印加電極2との電位差を一定に保つために設置しているが、対向電極3を設置しないで気中との放電(気中の浮遊電位との放電)で静電ミスト1を発生させるようにしてもよい。また、この静電霧化装置100を搭載する機器のあらかじめ電位が0V近辺にある部材(例えば、空気調和機の室内機に搭載するとして、室内機内部に設置される金属製の室内熱交換器がある。室内熱交換器はアースされている)を対向電極3の代替として用いて、水印加電極2との電位差を保つようにして静電ミスト1を生成するようにしてもよい。
以下、本実施の形態の静電霧化装置100を、空気調和機50の内部に搭載した場合について説明する。さらに空気調和機50に搭載するのに適した形状の静電霧化装置150を変形例1として詳細に説明する。
図4は実施の形態1を示す図で、静電霧化装置100,150を備えた空気調和機50の縦断面図である。図4に示す空気調和機50は、一般的な壁掛け型のものであるが、天井に埋め込まれた空気調和機であって、吸い込み口41の後流且つ熱交換器51の上流に静電霧化装置が配置される空気調和機でもよい。
空気調和機50は、室内空気を吸い込む吸い込み口41と、調和空気を室内へ吹き出す吹き出し口42と、室内空気から調和空気(冷却、加熱もしくは除湿された空気)を生成する逆V字型の熱交換器51(前面上部熱交換器51a、前面下部熱交換器51b、背面熱交換器51cからなる)と、熱交換器51で結露した水を受けるドレンパン40(前面上部熱交換器51a、背面熱交換器51cの下方の二箇所)と、送風ファン43とを備えている。空気調和機50本体の上方に位置する吸い込み口41から送風ファン43の回転によって流入した室内空気は、熱交換器51を通過する際に冷凍サイクルの冷媒と熱交換されて温度湿度が調節されて、送風ファン43を通過して、下方に位置する吹き出し口42から調和空気となって室内に吹き出される。
吹き出し口42には、吹き出される調和空気の風向を変更できる左右風向板44と上下風向板45が設置されていて、吹き出し流の吹き出し方向が調整されている。吹き出し流の左右方向の風向を変更可能な左右風向板44が、吹き出し流の上下方向の風向を変更可能な上下風向板45の上流側に位置している。また、ドレンパン40で回収した熱交換器51の結露水は、図示しないドレンホースを通って、屋外に排出される。
ここで、この空気調和機50では、静電霧化装置100,150を、前面下部熱交換器51bの風上側(上流側)、もしくは背面熱交換器51cの風上側(上流側)のいずれかであって、ドレンパン40の上方に設置している。ドレンパン40の上方に静電霧化装置100,150を設置すれば、冷却部8の結露水10が多量であって余剰水分が生じた場合であっても、ドレンパン40がそのような余剰水分を受け取って、熱交換器51の結露水と共に屋外へ排出するので、設置した静電霧化装置100,150の余剰水分が室内へ漏れ出す恐れがない。
空気調和機50に、静電霧化装置100,150のいずれかを設置することにより、静電霧化装置100,150から放出された多量の静電ミスト1を、吸い込み口41から吸い込まれた室内空気と共に熱交換器51を通過させ、吹き出し口42から調和空気ととともに、室内へ放出させることができる。送風ファン43の回転によって生成される調和空気の吹き出し流に乗って、調和空気とともに静電ミスト1も室内へと放出されるのである。
空気調和機50の吹き出し口42には、自動で方向を変更できる左右風向板44と上下風向板45が備えられている。上下風向板45は、中央で2枚に分割されており、手前と奥など室内の任意の奥行き方向2箇所に風を届けることができる。また、左右風向板44も中央を境に左部分と右部分でそれぞれ独立したモータ(例えば、ステッピングモータ)により駆動されて、室内の任意の左右方向二箇所に風を届けることができる。また、これらを同時に組み合わせることで、複数の風を作りだすことができる。
静電霧化装置100,150を備えた空気調和機50について、更に詳細に述べる。
ペルチェユニット6の両面には、放熱部7と冷却部8を備えるが、冷却部8は放熱部7よりも容量が充分に小さい。放熱部7は放熱量が増えるのでスペースが許す限り大きくするのがよいが、冷却部8は小さくしすぎると表面温度は下がるものの、通過する風量が少なくなるために除湿量(結露量)が低下する。逆に、大きすぎると通過風量が多くなり除湿量(結露量)が増えるものの、通過する空気に吸熱能力を持っていかれてしまうため、表面の温度が充分に下がらない。必要な除湿量に応じて、冷却部8の容量を決めればよいが、冬場(暖房時)の絶対湿度は非常に低く、露点温度は概ね10℃以下であり、相対湿度30%〜35%RHの悪条件では2〜5℃程度である。従って、冷却フィン8bの温度を0℃近傍まで下げないと静電ミスト1の原料となる結露水10を得ることはできないため、冷却フィン8bの容量は放熱部7に比べて充分に小さくするのが好ましい。また、ペルチェユニット6の吸熱性能を最大限発揮するために放熱部7はできるだけ容積を大きくとった方がよい。
尚、熱交換器51の風上側に静電霧化装置100,150を設置するにあたって、冷却フィン8bや放熱フィン7bの積層方向が空気調和機50本体の左右方向となるように配置するのがよい。これにより吸い込み口41からの吸い込み空気流が、フィン(冷却フィン8bや放熱フィン7b)に沿って流れるようになって放熱部7の放熱が促進され、冷却部8へスムーズに風が流れて冷却フィン8b上で結露量が増加する。
また、フィン容積を増加する場合には、幅方向(図5)に伸ばせばよく、製造が容易な短いフィン高さのまま実現することができ、全体の奥行きを増やすことなく少ないスペースに設置できる。
放熱部7は、熱交換器51に対向した位置に略平行に配置される。この時、所定の隙間を空けることで、放熱部7に対する熱交換器51の暖房時に起こる熱影響を少なくすることができる。熱影響を受けると放熱部7での放熱がされにくくなり、冷却部8での冷却能力が下がってしまう。
また、所定の隙間を空けることで、対向電極3から熱交換器51に対して、異常な放電が起こることも無い。熱交換器51に略平行に配置することで、局所的な影響を受けにくくなる。所定の距離は、少なくとも4mm以上として好適であり距離が大きいほど影響は少ないが、スペース性を考慮して決定する。
吸い込み口41からの吸い込み空気流は、熱交換器51に近いほど風速が早い。前面下部熱交換器51bの風上側に、厚み10〜30mm前後の静電霧化装置100,150を前面下部熱交換器51bと4〜10mm程度の距離をおいて設置した場合、前面下部熱交換器51bの近傍の風速は、前面パネル46に近い側に比べて2〜3倍程度早い。
また、背面熱交換器51cの風上側に設置した場合も同様に、背面熱交換器51cの近傍の風速は、背面カバー47に近い側に比べて2〜3倍程度早い。
放熱部7が熱交換器51と向き合うように配置した方が、放熱部7を通過する空気(室内吸い込み空気)流の流量が多くなり、放熱がより促進されてよい。
また、冷却部8が熱交換器51から遠く、前面パネル46または背面カバー47に近い側に配置された方が、冷却部8を通過する空気(室内吸い込み空気)流の流量を放熱部7に比べて抑制することができ、吸熱能力を冷却部8の通過風が奪うことなく、冷却フィン8bの温度を露点以下まで下げることができる。
更に、放熱部7は風がよく通るように空気中に露出していて、冷却部8は過度の空気流入を防止するために水供給部保持枠60で覆われ、冷却フィン8bの風上にあって幅方向に一つまたは複数個設けられた空気量調整穴61によって通過風速および通過風量を制御している。
このように構成することで、放熱部7の容積を抑えて省スペース性を損なわずに、充分に放熱することができ、冷却部8の温度を充分に低下させて暖房時のような乾燥条件でも結露水を得ることができる。
この効果は、前面上部熱交換器51aの風上側に静電霧化装置100,150を設置した場合にも得ることができるが、前面上部熱交換器51aの風上側では冷却部8を通過する風が速いため、より空気量調整穴61の開口を小さくする必要がある。空気量の調整は、風速を低下させて風量を低下させることが目的であるので、空気量調整穴61である必要はなく、邪魔となるリブなどを設けて空気量を調整しても良い。
これまで、多孔質体からなる水印加電極2は、水を受け取るための胴部28と、胴部28に接続される先端霧化部29とで構成されることを説明してきたが、胴部28と先端霧化部29を一体に同じ材質で形成した方が水の移動が円滑であるが、一体である必要はなく、胴部28を水を受けるための保水部として、保水部に複数の先端霧化部29を差し込むなど接続して使用しても、先端霧化部29が水搬送能を有していれば問題はなく、本実施の形態で説明してきた種々の効果を得ることができる。保水部は、セラミックの他に吸水性のある有機材による不織布を用いて好適である。
また、静電霧化装置100,150の天面方向にブラシやパッドを設けた自動フィルター清掃装置(図示せず)、もしくは自動フィルター清掃装置によって掻き取られたホコリを収納するダストボックス(図示せず)がある場合には、静電霧化装置100,150にホコリが重力落下してしまう可能性があるため、静電霧化装置100,150の天面に水供給部(放熱部7、ペルチェユニット6、冷却部8)を覆うようにホコリ受けを設けると良い。
また、放熱部7を熱交換器51と向き合わせて配置する場合、先端霧化部29を胴部28の放熱部7側の長辺方向側面上に、冷却フィン8bの突出方向とは反対方向に突出するように設ければ、放熱部7を通過する流量の多い空気流にのせて静電ミスト1を吹き出し口42まで素早く確実に導くことができる。
それにより、吹き出し口42からの多くの静電ミスト1の放出を、空気調和機50の運転開始から短時間で実施できる。尚、この場合静電ミスト1の生成部分の上方には、図5に示すように庇30aを設置して、静電ミスト1の生成部分への放熱部7を通った空気流の通過を抑制した方がよい。また、壁30bを設置して、静電ミスト1の生成部分への冷却部8を通った空気流の通過を抑制した方がよい。
また、静電霧化装置100,150により生成される静電ミスト1は、この静電霧化装置100,150が搭載される空気調和機50が設置される室内の空気中の水分を原料としているので、即ち、室内空気中の水分を結露させ、それを霧化して室内に放出しているものであるので、室内の絶対湿度が上昇することがない。そのため、室内の壁や窓に放出された静電ミスト1に起因した結露が生じることがない。よって、結露による室内の壁等のカビの発生を回避しながら、人の肌水分の蒸発を抑制し、肌表皮水分量を増加させることが可能となる。
また、空気調和機50の送風ファン43を用いて、水供給部のペルチェユニット6に室内空気を供給し、そこで静電ミスト1となる結露水を得るとともに、且つ吹き出し口42からの調和空気の吹き出し流に搬送させて、室内に静電ミスト1を提供(放出)するので、静電霧化装置専用のファンを別途に設ける必要がなく、静電霧化装置の構造をシンプル化し、少スペースにも設置できる静電霧化装置とすることができる。
次に空気調和機に搭載するのに適した形状の静電霧化装置150を変形例1として詳細に説明する。図5乃至図10は実施の形態1を示す図で、図5は変形例1の静電霧化装置150の縦断面図、図6は静電霧化装置150の分解斜視図、図7は水供給部保持枠60の斜視図、図8は保持枠70の斜視図、図9は風防止壁30の斜視図、図10は変形例1の静電霧化装置150の背面図である。
図5に示す静電霧化装置150では、水印加電極2の先端霧化部29を、冷却フィン8bの突出方向の面とは反対側の長辺方向側面上に、即ち放熱部7のフィン突出方向に突出するように設けている。対向電極3もその時の先端霧化部29に対向するように放熱部7側に設けられる。このような配置にすると、冷却部8に比べて流量が大きい放熱部7を通過する空気流にのせて対向電極3の開口から放出された静電ミスト1を広く拡散させることができる効果が追加される。
静電霧化装置150を構成する主要な要素は、以下に示す通りである。夫々の要素は、既に詳しく説明したものもあるし、未だ説明されていないものについては追って詳細を説明するので、ここでは簡単に述べる(主に、図6の分解斜視図を参照のこと)。
(1)水供給部:水供給部は、既に説明したペルチェユニット6と、そのペルチェユニット6の放熱面に接する放熱部7と、放熱面の反対側に位置する冷却面に接する冷却部8で構成される。ペルチェユニット6は、低電圧電源部5(図1のものと同じ)に電気的に接続するリード線6aを有する。
(2)冷却部保持枠63:冷却部保持枠63は、樹脂製であり、水供給部の冷却部8を放熱部7に係合により固定する。詳細は後述する。
(3)水供給部保持枠60:水供給部保持枠60は、冷却部8が冷却部保持枠63で放熱部7に固定された水供給部を、冷却部8側から保持する。冷却部8が冷却部収納部60a(図7参照)に収納される。また、放熱部7が放熱部収納部60b(図7参照)に収納される。冷却部8は、空気流の上流側が水供給部保持枠60で覆われ、幅方向に複数設けられた空気量調整穴61(空気量調整部)によって通過風速および通過風量が制御される。さらに、水供給部保持枠60は、ペルチェユニット6のリード線6a及び水印加電極2に給電端子25を介して接続するリード線25aを口出しするリード線口出し部60cを備える。また、水供給部保持枠60は、冷却部8を収納する冷却部収納部60aの左右に遮断壁62を備える。放熱部7のフィンを有しない面であって、ペルチェユニット6を有する面のペルチェユニット6から露出している部分である放熱露出部(図示せず)を通過した風が冷却部8に来ないようにするために、遮断壁62を設ける。放熱部収納部60bの左右の遮断壁62により、放熱露出部を通過した空気は冷却部8に触れることなく下方に流れていく。
(4)水供給部抑え枠90:水供給部抑え枠90は、冷却部保持枠63と同様樹脂製であり、冷却部保持枠63との間に水供給部を挟持する。水供給部抑え枠90と冷却部保持枠63との係合は、爪と孔とで行う。また、水供給部抑え枠90は、水供給部保持枠60と同様にペルチェユニット6のリード線6a及び水印加電極2のリード線25aを口出しするリード線口出し部90aを備える。水供給部保持枠60のリード線口出し部60cと水供給部抑え枠90のリード線口出し部90aとで、ペルチェユニット6のリード線6a及び水印加電極2のリード線25aを挟持する。
(5)水印加電極2:既に説明済みの図1の静電霧化装置100の水印加電極2と同じものである。但し、静電霧化装置150では、水印加電極2の先端霧化部29が、冷却フィン8bの突出方向の面とは反対側の長辺方向側面上に、即ち放熱部7のフィン突出方向に突出するように配置されている。水印加電極2には、給電端子25を介してリード線25aが接続される。
(6)保持枠70:保持枠70は、水印加電極2を下方から保持する部材である。詳細は後述するが、図8に示すように、保持枠70は外周と胴部28の短辺方向の格子70aを有して、大きな四角形状の開口26(図8参照)を持った箱型形状をしている。短辺方向に伸びた格子70aは水印加電極2の胴部28を支えるが、胴部28の幅(長辺方向)より充分に短い幅をしている。また、保持枠70の下部には、対向電極3を保持する対向電極保持部70bが形成されている。また、胴部28から滴下した水滴が、保持枠70を伝って落ちる場合、対向電極3の中央に面した部分から滴下される、または風で飛散した場合に、対向電極3に付着する可能性があり危険である。そこで、保持枠70の下端部(水印加電極2の先端霧化部29を支持する部分)は、対向電極3の中心部分に対向する位置を頂点凸部として左右方向に向かって半円を描くように円弧70c(図8)状に伸びるとともに、円弧70c端部を角部として更に左右方向に伸ばして形成した(図8の左右延伸部70d)。このように構成することで、胴部28から滴下した水滴は、対向電極3の中心部分に対向する位置から滴下されることがなく、樹脂(保持枠70)を伝って左右方向に誘導されて円弧70c端部から滴下されるので、例えブリッジした水滴が飛散しても対向電極3に付着しにくい。円弧70c端部幅はなるべく左右方向に広げる方がよく、水印加電極2の先端霧化部29から見た対向電極3の露出部の左右方向の幅と同等以上とするのが好ましい。
(7)対向電極3:既に説明済みの図1の静電霧化装置100の対向電極3と同じものである。対向電極3は、保持枠70の対向電極保持部70bにネジ3cにより固定される。また、対向電極3には接地用のリード線3bが接続される。
(8)風防止壁30:風防止壁30は、保持枠70の上部に係合して、水印加電極2を保持枠70とで挟持する。風防止壁30は、水印加電極2の先端霧化部29及び対向電極3を覆う庇30aと、先端霧化部29の胴部28に対する付け根部分および胴部28の長辺を上方から抑えながら天面方向に向かって伸びて形成されている壁30b(第一の壁)とを備える(図9も参照)。
以下、静電霧化装置150について、さらに詳しく説明する。図5に示すように、風防止壁30の庇30aは、水印加電極2の先端霧化部29の先端29aの上方に位置し、水供給部の放熱部7の放熱フィン7bが突出する方向に伸びて設けられる。それにより、水供給部の放熱部7を通過してくる風が水印加電極2の先端霧化部29の先端29aに流入してくるのを防止する。
水印加電極2の先端霧化部29の先端29aは、長期信頼性から汚れ付着を防止するのが好ましい。先端29aに汚れが付着すると、放電力が低下して静電ミスト1の発生量が低下したり、発生が不安定になったりする。そのために先端29aにはなるべく風を通さず、移動してきた空気に触れさせないようにするとよい。
このように構成することで、水印加電極2の先端霧化部29の先端29aは、汚れが通過しないため汚れにくくなり、放電力が低下することなく、長期に渡って静電ミスト1を安定して発生することができる。また、通過する流量の大なる空気流が過度に水印加電極2の先端霧化部29の先端29aに触れることによって、水のテーラーコーン形成やレイリー分裂が阻害され、正確で安定した静電ミスト1の発生が損なわれる懸念もなくなる。
水印加電極2は、先端霧化部29の根元部分(胴部28に接続する部分)を保持枠70と、風防止壁30の壁30bとで挟持されて位置決めされている。保持枠70は、外周と水印加電極2の胴部28の短辺方向の複数の格子70aを有する、大きな四角形状の開口を備える箱型形状をしている。水印加電極2の胴部28の短辺方向に伸びる格子70aは、水印加電極2の胴部28を支える。保持枠70は、格子70a以外の水印加電極2の周囲が大きな開口26となっており、水を溜めることなく過度な水を排出できるようになっている。
また、胴部28から滴下した水滴が、保持枠70を伝って落ちる場合、対向電極3の中央に面した部分から滴下されて水滴が対向電極3とブリッジする、または風で飛散した場合に、対向電極3に付着する可能性があり危険である。
そこで、保持枠70の下端部(水印加電極2の先端霧化部29を支持する部分)は、対向電極3の中心部分に対向する位置を樹脂で埋める閉塞部77を設け、そこから左右に外部に開口した空洞部78を設けている(図10参照)。このように構成することで、胴部28から滴下した水滴は、対向電極3の中心部分に対向する位置から滴下されることがなく、樹脂(保持枠70)を伝って左右方向に誘導されて滴下される余剰水排水経路を通るので、水滴が飛散しても対向電極3に付着することがない。また、対向電極3に対向する位置を水滴が移動することが無いので、気中で対向電極3と放電を起こすことも無い。空洞部78を通った水滴はなるべく左右方向に広げる方がよく、更に左右方向にリブで誘導して好適である。
この時、前述の閉塞部77の位置は、対向電極3の中心部分に対向する位置であるともに、先端霧化部29の先端29aの対向する位置でもある。樹脂で開口部を埋める閉塞部77を設けることで、空気量調整穴61を通った空気が、胴部28の近傍を通り抜けた後に、直下方向に抜けることが無く左右に誘導されるので、送風ファン43にひかれて回流した空気が先端霧化部29の先端29aに向かうことも無い。
従って、閉塞部77を設けて左右に空洞部78を設けることで、余剰水滴を左右に誘導して気中放電を防止する効果に加えて、回流した空気流によって、先端霧化部29の先端29aの汚れを防止する効果を有する。
この静電霧化装置150では、放熱部7および冷却部8に重力方向、即ち上方から下方への空気流が通過するが、冷却部8における吸熱量低下を防止して効率よく冷却フィン8bの温度を下げるために、冷却部8への通風量(通過する空気流の量)は、放熱部7に比べて少なくしている。その実現手段としては、放熱部7はその上流側を開放状態にして放熱部7を通過する空気流に通風抵抗を与えないが、冷却部8側では、上流側に囲いやリブなどを設けて流入口の開口を制限して通風量を下げる。このように通風量を下げて冷却部8を通過する空気流の流速を0.1m/s程度の微風状態まで小さくし、空気流が冷却熱を奪って流出してしまうことを避けている。この結果、冷却フィン8bを効率よく冷却できる。
そして流速はたいへん小さいが、冷却部8には空気流が存在するので、水分を含んだ新しい空気が入れ替わるように流入することになり、冷却部8周囲の空気が乾燥してしまうことがなく、効率よく冷却された冷却フィン8bの表面には、結露水10が安定して生成される。
水印加電極2は金属多孔質体または吸水体から成るものなので、胴部28の上面のどこに結露水10が滴下されても、受け取った水を先端霧化部29に搬送する性質を持っている。水印加電極2自身が、水受け取り部であり、水搬送手段であり、且つ霧化部(静電ミスト1の発生部)である、というように、三つの機能を備えているのである。このため、素早く水を先端霧化部29に集めて、効率よく正確に安定して静電霧化させることができる、という効果を有するのである。
この静電霧化装置150では、冷却部8と、冷却部8に向かって露出している胴部28の上面との間には、空間以外に、冷却部8から滴下する水を集める集水部材や滴下する水を胴部28に案内するガイド部材、また、滴下する水を胴部28に至る前に一時的に溜めておく保水部材などを介在させず、直接的に重力により結露水10を胴部28上面に滴下する。冷却部8から胴部28への水の移動を妨げる要素は何もない。これにより、冷却部8にて生成された結露水10を、短時間で素早く確実に水印加電極2へと供給することができる。
図11乃至図14は実施の形態1を示す図で、図11は変形例2の静電霧化装置200を示す縦断面図、図12は変形例3の静電霧化装置300を示す縦断面図、図13は変形例4の静電霧化装置400を示す縦断面図、図14は変形例5の静電霧化装置500を示す縦断面図である。
先ず、変形例2の静電霧化装置200の主な特徴について、図11を参照しながら説明する。
即ち、変形例2の静電霧化装置200は、静電霧化装置200を熱交換器51の上流側に設けるとともに、水供給部保持枠60等に熱交換器51に向かって突出する凸部65を設けたものである。
熱交換器51の上流に静電霧化装置200を設置した場合は、熱交換器51が接地されているため、熱交換器51が静電霧化装置200に近接する場合に、熱交換器51の影響を受けてミストの発生が安定的でない、という課題があった。
また、製造時の組み付け誤差によって、静電霧化装置200の対向電極3と熱交換器51が接触または近接してしまうと、気中で静電霧化装置200から熱交換器51へと向かう不要な放電を起こしてしまい、ノイズや異音が発生したり、ミスト発生が阻害したりする、という課題があった。
高電圧が印加される静電霧化装置200が、空気調和機の吸い込み口41の下流側且つ熱交換器51の上流側に備えられる場合には、熱交換器51が一定の距離以上に対向電極3に近づくのを防止する必要がある。
そこで、本実施の形態においては、対向電極3の近傍に備えられた枠に熱交換器51に向かって突出する凸部65を設けた。対向電極3の近傍に備えられた枠とは、熱交換器51に対向する凸部65を形成できればよいため、風防止壁30、水供給部保持枠60、保持枠70のいずれであってもよい。材質は、電気を伝えない絶縁物であることが好ましく、風防止壁30、水供給部保持枠60、保持枠70と一体成形して凸部65を形成するのがよい。これに限らず、凸部65の先端65aが対向電極3と熱交換器51の間にあり、対向電極3と熱交換器51の距離を規制できる凸部65が設けられれば、凸部65はいずれの樹脂と一体化していてもよい。
対向電極3と熱交換器51の最短長さをL1と定義する。L1と平行な長さであって、凸部65の先端65aと熱交換器51の最短長さをL2と定義する。この場合に、L1>L2≧0となる位置に、凸部65の先端65aを配置した(図11参照)。
即ち、通常は対向電極3と熱交換器51の距離は一義的に図面で決定されるが、仮に製造時の組み付け誤差があって、静電霧化装置200の対向電極3と熱交換器51が近接しそうになっても、凸部65が存在することで、凸部65が熱交換器51に当たって止まるので、L2=0となるが、(L1−L2)より小さい距離まで対向電極3と熱交換器51が近接したり接触したりすることがない。
従って、対向電極3と熱交換器51の間に、(L1−L2)以上の空間距離を確保することができる。(L1−L2)は大きいほど好ましく、30mm以上取れれば申し分ないが、少なくとも印加電圧1kVあたり1mm程度の距離をとると良い。これによって、熱交換器51がミストの発生量に影響を与えることは無くなり安定するとともに、対向電極3から熱交換器51への不要な気中放電が起きることも無くなるという複数の効果が得られる。気中放電を防止することで、これに伴う、異音やノイズの発生も防止できる。
次に、変形例3の静電霧化装置300の主な特徴について、図12を参照しながら説明する。
即ち、変形例3の静電霧化装置300は、以下に示すように構成したものである。
(1)静電霧化装置300を熱交換器51の上流側に設けた。
(2)水供給部保持枠60等に熱交換器51に向かって突出する凸65部を設けた。
(3)構成要件として対向電極3を削除して、水印加電極2から気中もしくは熱交換器51に向けて静電ミスト1を放出する。
特別な電界を設けずに、気中に向かってミストを放出する場合、対向する熱交換器51が接地されているため、熱交換器51が静電霧化装置300に近接する場合に、熱交換器51の影響を受けてミストの発生が安定的でない、という課題があった。
また、特別な対向電極3を設けずに、熱交換器51を接地電極として活用する場合には、熱交換器51と静電霧化装置300の水印加電極2との距離(極間距離)が、組み付け誤差によって変動すると、ミストの発生が安定的でない、という課題があった。
高電圧が印加される静電霧化装置300が、空気調和機の吸い込み口41の下流側且つ熱交換器51の上流側に備えられる場合には、熱交換器51が一定の距離以上に水印加電極2に近づくのを防止する必要がある。
そこで、本実施の形態においては、水印加電極2の近傍に備えられた枠に熱交換器51に向かって突出する凸部65を設けた。水印加電極2の近傍に備えられた枠とは、熱交換器51に対向する凸部65を形成できればよいため、風防止壁30、水供給部保持枠60、保持枠70のいずれであってもよい。材質は、電気を伝えない絶縁物であることが好ましく、風防止壁30、水供給部保持枠60、保持枠70と一体成形して凸部65を形成するのがよい。これに限らず、凸部65の先端65aが水印加電極2と熱交換器51の間にあり、水印加電極2と熱交換器51の距離を規制できる凸部65が設けられれば、凸部65はいずれの樹脂と一体化していてもよい。
水印加電極2と熱交換器51の最短長さをL3と定義する。L3と平行な長さであって、凸部65の先端65aと熱交換器51の最短長さをL2と定義する。この場合に、L3>L2≧0となる位置に、凸部65の先端65aを配置した(図12参照)。
即ち、通常は水印加電極2と熱交換器51の距離は一義的に図面で決定されるが、仮に製造時の組み付け誤差があって、静電霧化装置300の水印加電極2と熱交換器51が近接しそうになっても、凸部65が存在することで、凸部65が熱交換器51に当たって止まるので、L2=0となるが、(L3−L2)より小さい距離まで水印加電極2と熱交換器51が近接したり接触したりすることがない。
従って、水印加電極2と熱交換器51の間に、(L3−L2)以上の空間距離を確保することができる。(L3−L2)は大きいほど好ましく、30mm以上取れれば申し分ないが、少なくとも印加電圧1kVあたり1mm程度の空間距離をとると良い。4〜6kVを印加していれば6mm以上で好適である。これによって、熱交換器51がミストの発生量に影響を与えることは無くなり、発生量が安定する。
特に、特別な対向電極3を設けずに、熱交換器51を接地電極として活用する場合には、熱交換器51と静電霧化装置300の水印加電極2との距離(極間距離)は変動してはミスト発生が不安定になるため、L2=0とする位置に凸部65の先端65aを設ける必要がある。この場合、水印加電極2と熱交換器51との最短長さ(極間距離)L3は、クーロン力によって静電霧化現象が起きるだけの電界を与える距離に設定すればよく、L3=4〜10mm程度として好適である。これによって、安定したミスト量を得ることができる。
次に、変形例4の静電霧化装置400の主な特徴について、図13を参照しながら説明する。
即ち、変形例4の静電霧化装置400は、以下に示すように構成したものである。
(1)静電霧化装置400を熱交換器51の上流側に設けた。
(2)水供給部保持枠60等に熱交換器51に向かって突出する凸65部を設けた。
(3)更に、凸部65の先端65aを、熱交換器51のパイプ52(冷媒配管)に係止した。
(4)構成要件として対向電極3を削除して、水印加電極2から気中もしくは熱交換器51に向けて静電ミスト1を放出する。
静電霧化装置400においても、解決しようとする課題は、静電霧化装置300と同様である。静電霧化装置400は、凸部65の先端65aが熱交換器51のパイプ52(冷媒配管)に係止されているので、凸部65の先端65aと熱交換器51の最短長さをL2と定義すると、L2=0である。また、水印加電極2と熱交換器51の最短長さをL3と定義する(図13参照)。
更に、凸部65の先端65aをパイプ52に係止することで、組み付け誤差等の影響を受けることなく、水印加電極2と熱交換器51との最短長さ(極間距離)L3を確実に固定することができる。L3より小さい距離まで水印加電極2と熱交換器51が近接したり接触したりすることがない。水印加電極2と熱交換器51との最短長さ(極間距離)L3はクーロン力によって静電霧化現象が起きるだけの電界を与える距離に設定すればよく、L3=4〜10mm程度として好適である。これによって、L3が変化しないので、安定したミスト量を得ることができる。
凸部65の数は1つでも水印加電極2と熱交換器51の距離を確保することは可能であるが、好ましくは水印加電極2の左右に少なくとも1つずつ設けるとよい。そうすれば、左右に偏った応力がかかることがなくなる。また、好ましくは水印加電極2の上下にも少なくとも1つずつ設けるとよい。そうすれば、上下に偏った応力がかかることがなくなる。したがって、凸部65の数は複数あるほうがよい。
凸部65の先端65aの樹脂厚みは、フィン53とフィン53の幅L6(図15参照)よりも小さいことで、フィン53とフィン53との間にスムーズに挿入されて、パイプ52に係止することができる。また、凸部65の先端65aの形状はパイプ52に係止しやすいように、パイプ52に沿う形の円弧形状にして好適である。円弧形状の空隙部はパイプ52からはずれないよう、パイプ52の径と同等かやや小さくして好適である。更に円弧形状の根元に切れ目をいれておけば、凸部65の先端65aをパイプ52に挿入する際やパイプ52に係止されている際の応力を緩和して、樹脂が割れる等の不具合から守ることができる。
凸部65の先端65aの形状は円弧形状のみではなく他の形状でも良い。凸部65の先端65aがパイプ52に止まればよいので、凸部65の先端65aを2つに割ってパイプ52と略平行に伸ばして、その内側に微小な突起を設けてパイプ52から外れにくくしたものや、単に押し当てる形にしたもの等でもよい。
また、凸部65の先端65aの全部ではなく、一部をフィン53とフィン53の間に挿入してもよく、フィン53とフィン53の間隔L6と先端65aの樹脂厚みをほぼ同等として、アルミフィンをつぶしながら先端65aを挿入してフィン53とフィン53の間に固定しても水印加電極2は熱交換器51に近づかないので、同等の効果が得られる。パイプ52に係止したほうが、水印加電極2と熱交換器51の距離を一定に保つ効果は高い。
図13の変形例4の静電霧化装置400では、対向電極3が無い場合を図示したが、対向電極3がある場合でも、凸部65の先端65aをパイプ52に係止することで、組み付け誤差等の影響を受けることなく、対向電極3と熱交換器51との最短長さ(極間距離)L1を確実に固定することができるので、安定したミスト発生量を得ることができる。
図11〜13の静電霧化装置200〜400では、水印加電極2および対向電極3は、熱交換器51に対向して設置されているが、水印加電極2および対向電極3が熱交換器51の幅方向に平行な場合にも、同様に凸部65を適用することで、上述の効果を得ることができる。
また、水印加電極2および対向電極3が複数ある場合にも、対向電極3と熱交換器51との最短長さをL1、凸部65の先端65aと熱交換器51の最短長さをL2、水印加電極2と熱交換器51との最短長さをL3と定義し、
L1>L2≧0
L3>L2≧0
とすることで、凸部65によって、安定した静電ミスト1を生成することができる。
次に、変形例5の静電霧化装置500の主な特徴について、図14を参照しながら説明する。
即ち、変形例5の静電霧化装置500は、以下の示すように構成したものである。
(1)静電霧化装置500を熱交換器51の上流側に設けた。
(2)水供給部保持枠60等に熱交換器51に向かって突出する凸部65を設けた。
(3)放熱部7または冷却部8の端部を水印加電極2または対向電極3より熱交換器51に近い位置に配置した。
(4)構成要件として対向電極3を削除して、水印加電極2から気中もしくは熱交換器51に向けて静電ミスト1を放出する。
従来、製造時の組み付け誤差によって、熱交換器51とペルチェユニット6に備えられた放熱部7または冷却部8(以下、ヒートシンクと呼ぶ)が接触してしまうと、異常時(例えば、室内機の電気回路の故障(短絡等)により、熱交換器の電位が商用電源の電圧レベルになる状態)に商用電源の電圧(100Vまたは200V)がペルチェユニットに流れこんでしまい、ペルチェユニットが破損してしまう懸念がある、という課題があった。
また、製造時の組み付け誤差によって、熱交換器とペルチェユニットに備えられたヒートシンクが接触してしまうと、暖房運転時に熱交換器からの熱影響を直接受けて、放熱することができず、ペルチェユニットが正常に働かず、冷却部を冷やせない、結露水が得られない、という課題があった。
そこで、静電霧化装置500が備えるヒートシンクが、空気調和機50の吸い込み口41の下流側且つ熱交換器51の上流側に備えられる場合には、熱交換器51が一定の距離以上にヒートシンクに近づくのを防止する必要がある。
そこで、本実施の形態においては、静電霧化装置500に備えられた枠に熱交換器51に向かって突出する凸部65を設けた。静電霧化装置500に備えられた枠とは、熱交換器51に対向する凸部65を形成できればよいため、風防止壁30、水供給部保持枠60、保持枠70のいずれであってもよい。材質は、電気を伝えない絶縁物であることが好ましく、風防止壁30、水供給部保持枠60、保持枠70と一体成形して凸部を形成するのがよい。これに限らず、凸部の先端65aがヒートシンクと熱交換器51の間にあり、ヒートシンクと熱交換器51の距離を規制できる凸部65が設けられれば、凸部65はいずれの樹脂と一体化していてもよい。
ヒートシンクと熱交換器51の最短長さをL4と定義する。L4と平行な長さであって、凸部65の先端65aと熱交換器51の最短長さをL2と定義する。この場合に、L4>L2≧0となる位置に、凸部65の先端65aを配置した(図14参照)。
即ち、通常はヒートシンクと熱交換器51の距離は一義的に図面で決定されるが、仮に製造時の組み付け誤差があって、静電霧化装置の対向電極3と熱交換器51が近接しそうになっても、凸部65が存在することで、凸部65が熱交換器51に当たって止まるので、L2=0となるが、(L4−L2)より小さい距離まで対向電極3と熱交換器51が近接したり接触したりすることがない。
従って、ヒートシンクと熱交換器51の間に(L4−L2)以上の空間距離を確保することができる。(L4−L2)は大きいほど好ましく、10mm以上取れれば申し分ないが、少なくとも4mm以上の距離をとると良い。これによって、ヒートシンクが熱影響を受けることは無くなり安定した冷却部8の吸熱性能が得られるとともに、ヒートシンクに1次側の電圧が流れ込むことも無くなる、という複数の効果が得られる。
図15乃至図22は実施の形態1を示す図で、図15は変形例1の静電霧化装置150を空気調和機50に搭載した場合の平面図、図16は変形例1の静電霧化装置150を空気調和機50に搭載した場合の部分断面図、図17は静電霧化装置保持枠68に静電霧化装置150を取り付けた状態を示す断面図、図18は静電霧化装置保持枠68に取り付ける静電霧化装置150の斜視図、図19はミスト発生部の平面図、図20はミスト発生部の正面図、図21は別のミスト発生部の平面図、図22は別のミスト発生部の正面図である。
図15、図16に示すように、凸部65の先端65aの熱交換器51に対向する面の形状を平面とし、ここを平面部66と定義する。また、この平面部66の幅L5は熱交換器51のフィン53の間隔L6よりも大きくした。通常、熱交換器51のフィン53の間隔L6は、1.0mm〜1.5mm程度である。平面部66の幅L5をフィン53の間隔L6より大きくすることで、静電霧化装置150が熱交換器51に近接した時には、平面部66を熱交換器51に確実に押し当てることができる。従って、熱交換器51が過度に対向電極3、水印加電極2、ヒートシンクに近づくのを防止することができる、という効果を有する。平面部66の幅L5は、3.0mmより大きくして好適である。尚、凸部65は複数あってもよい。
図17では、凸部65の別の設置場所として、静電霧化装置保持枠68に凸部65を設置した。静電霧化装置150の水供給部保持枠60には爪部67が備えられ(図18参照)、静電霧化装置150は、水供給部保持枠60の爪部67により、静電霧化装置保持枠68に固定されている。これまでの凸部65は静電霧化装置に設けられたが、凸部65を静電霧化装置保持枠68に設けるようにしても良い。この場合でも、熱交換器51が過度に対向電極3、水印加電極2、ヒートシンクに近づくのを防止することができる、という効果を有する。
図19、図20に示すように、ミスト発生部は凸部65を水印加電極2または対向電極3の幅方向の左右両側に少なくとも一つずつ備える。凸部65が一つのみの場合は、凸部65の近傍は熱交換器51に近接しないが、凸部65から遠い部分が熱交換器51に近づく恐れがある。従って、凸部65を水印加電極2または対向電極3の幅方向の左右両側に少なくとも1つずつ備えることで、水印加電極2または対向電極3の両側で熱交換器51との距離を規制することができ、いずれか片側面だけが熱交換器51に近づくのを防止することができる。つまり、水印加電極2または対向電極3が熱交換器51に近づくのを防止することができる、という効果を有する。水印加電極2または対向電極3ではなく、ヒートシンクであっても同様である。
水印加電極2または対向電極3の幅方向の左右両側に設けられる凸部65は、水印加電極2または対向電極3の真横が好ましいが、左右両側に少なくとも1つ以上設けられていれば、凸部65は上下方向のどの位置にあっても良い。
図21、図22に別の凸部65を示す。ここでは、凸部65の形状を幅方向に伸ばし、格子形状とした。凸部65を、水印加電極2または対向電極3の上流側において、水印加電極2の先端部または対向電極3の全幅方向を覆った、格子形状に形成した。全幅方向を覆うことで、上流側から人間が手を伸ばした場合に、水印加電極2や対向電極3に触れることができないので、感電を防止することができる。また、凸部65を格子形状にすることで、吸い込み口41から吸い込んだ空気流が上流から格子を通って対向電極3の近傍を流れ、ミストが効率よく搬送される、という効果を有する。
これによって、水印加電極2または対向電極3と熱交換器51との距離を規制することができ、水印加電極2または対向電極3が熱交換器51に近づくのを防止することができる、という効果を有する。水印加電極2または対向電極3ではなく、ヒートシンクであっても同様である。凸部65の格子は、ヒートシンクおよび熱交換器51のフィン53と平行に開口部を設けることで風の流入をスムーズにすることができ、ミストが効率よく搬送される。
この発明に係る空気調和機は、熱交換器51と静電霧化装置の距離が変動することによる、不要な気中放電や異音を防止でき、安全でミスト発生量が安定した静電霧化装置を提供するという効果を有する。
以上のように、この発明に係る空気調和機は、吸い込み口と、熱交換器と、送風ファンと、吹き出し口を備えた空気調和機であって、水を供給する水供給部と、水供給部から供給された水を受け取り、高電圧が印加されることで水を先端霧化部で霧化させる水印加電極と、水印加電極の先端霧化部の周囲に配置された対向電極と、を備えた静電霧化装置が、空気調和機の前記吸い込み口の下流側且つ熱交換器の上流側に備えられるとともに、静電霧化装置または静電霧化装置を保持する保持枠には、熱交換器に向かって突出する凸部が備えられ、対向電極と熱交換器の最短長さをL1、L1と平行な長さであって、凸部の端部と熱交換器の最短長さをL2とした場合に、L1>L2≧0となる位置に、凸部の端部が配置されるものであるので、熱交換器と静電霧化装置の距離が変動することによる、不要な気中放電や異音を防止でき、安全でミスト発生量が安定した静電霧化装置を提供できる、という効果を有する。