JP2014040532A - 環状オレフィン付加重合体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、環状オレフィン付加重合体及びその製造方法に関し、詳細には、エチリデン基を側鎖として有する環状オレフィン付加重合体及びその製造方法に関する。
環状オレフィンの付加重合体は、熱安定性や光学透明性に優れる高分子材料である(非特許文献1:Cood.Chem.Rev.,2009,253,827.)。そして、これらのポリマーは、側鎖に置換基を導入することで、更なる優れた材料特性の発現が期待できる。例えば、側鎖にオリゴシロキサンを導入することで、優れた溶解性と気体透過性を併せ持つ材料となり(特許文献1:特許第4645858号公報)、また、アルコキシシリル基、エステル基、アルキル基などを導入することで、被着体への接着性や薄膜フィルムとした場合の力学特性の向上が期待できる(特許文献2〜4:特許第4045405号公報、特許第4242833号公報、特許第3476466号公報)。
しかしながら、これらのポリマーを得るためには、嵩高い置換基あるいは極性を有する置換基を持つ環状オレフィンを付加重合しなければならない。一般に、嵩高い置換基や極性を有する置換基を持つ環状オレフィンは、重合活性が低い(非特許文献2:J.Polym.Sci:Part A:Polym.Chem.,2009,47,3982.,非特許文献3:Polymer Journal,2009,41,643.)。このため、置換基を持たない環状オレフィンなどと共重合する必要があり、ポリマー組成中における置換基の割合が制限されてしまう。
これを解決する方法として、置換基としてビニル基やエチリデン基などのオレフィンを有する環状オレフィンの付加重合体を合成し、その側鎖オレフィンを更に化学修飾する方法が考えられる。しかしながら、側鎖にビニル基やエチリデン基を持つ環状オレフィン付加重合体の合成は難しく、多くの場合、取り扱いができない架橋構造を持つ不溶性ポリマーとなる。また、合成できたとしても、その反応条件は限定的であり、更に取り扱うに十分な分子量を有していない場合がほとんどである(非特許文献4:Polymer,2008,49,2839.,非特許文献5:J.Mol.Catal.A:Chem.,2010,330,1.,非特許文献6:J.Organomet.Chem.,2011,696,473.,非特許文献7:Organometallics,2001,20,2802.,非特許文献8:J.Mol.Catal.A:Chem.,2002,185,81.)。即ち、側鎖にビニル基やエチリデン基を高含有し、取り扱うに十分な分子量を持つ環状オレフィン付加重合体は、これまでに見出されていない。
最近になり、側鎖にビニル基を有する環状オレフィン付加重合体が報告された(非特許文献9:Polymer,2012,53,308.)。このポリマーは、優れた溶解性を有し、また取り扱うに十分な分子量を有している。しかしながら、後述するが、このモノマーは重合活性が低く、また得られたポリマーは熱処理や室温保存により簡単に不溶化してしまうなど、問題が多い。
なお、本発明に関連する従来技術として、上述した文献と共に下記文献が挙げられる。
なお、本発明に関連する従来技術として、上述した文献と共に下記文献が挙げられる。
Cood.Chem.Rev.,2009,253,827.
J.Polym.Sci:Part A:Polym.Chem.,2009,47,3982.
Polymer Journal,2009,41,643.
Polymer,2008,49,2839.
J.Mol.Catal.A:Chem.,2010,330,1.
J.Organomet.Chem.,2011,696,473.
Organometallics,2001,20,2802.
J.Mol.Catal.A:Chem.,2002,185,81.
Polymer,2012,53,308.
Macromol.Rapid Commun.,2005,26,1208.
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、工業的生産が容易であり、高い熱安定性と機械的強度、更には優れた溶解性を併せ持ち、側鎖に変性や化学変換が可能なエチリデン基を有する環状オレフィン付加重合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、下記化合物(A)、(B)、(C)を含む多成分系触媒を用いて、下記式(1)で表される環状オレフィン化合物、又はこの式(1)の環状オレフィン化合物と、下記式(2)で表される環状オレフィン化合物とを付加重合することにより得られ、下記式(1)で表される環状オレフィン化合物に由来する構造単位の割合が、付加重合体中30〜100モル%であり、テトラヒドロフラン(以下、THFと略す)を溶媒とするGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が200,000〜2,000,000である特定構造の環状オレフィン付加重合体が、優れた耐熱性、機械的強度、溶解性を併せ持つ材料になることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、下記に示す環状オレフィン付加重合体及びその製造方法を提供する。
〔1〕
下記式(1)で表される環状オレフィン化合物、又はこの式(1)の環状オレフィン化合物と、下記式(2)で表される環状オレフィン化合物とを付加重合することにより得られ、下記式(1)で表される環状オレフィン化合物に由来する構造単位の割合が、付加重合体中30〜100モル%であり、テトラヒドロフランを溶媒とするGPCで測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が200,000〜2,000,000である環状オレフィン付加重合体。
(式(1)中のiは0又は1を示す。)
(式(2)中のA1〜A4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基及びハロゲン化炭化水素基から選ばれる置換基、オキセタニル基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる極性を有する置換基、又はオリゴシロキサンを有する置換基である。また、A1とA2又はA1とA3とが、それぞれが結合する炭素原子と共に脂環構造、芳香環構造、カルボンイミド基又は酸無水物基を形成してもよい。jは0又は1を示す。)
〔2〕
式(1)中のiが0、式(2)中のjが0、A1〜A4が水素原子である〔1〕記載の環状オレフィン付加重合体。
〔3〕
式(1)中のiが0、式(2)中のjが0、A1〜A4のうち少なくとも1つがオリゴシロキサンを有する置換基である〔1〕記載の環状オレフィン付加重合体。
〔4〕
下記化合物(A)、(B)、(C)を含む多成分系触媒の存在下、下記式(1)で表される環状オレフィン化合物、又はこの式(1)の環状オレフィン化合物と、下記式(2)で表される環状オレフィン化合物とを付加重合し、下記式(1)で表される環状オレフィン化合物に由来する構造単位の割合が、付加重合体中30〜100モル%であり、テトラヒドロフランを溶媒とするGPCで測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が200,000〜2,000,000である環状オレフィン付加重合体を得ることを特徴とする環状オレフィン付加重合体の製造方法。
〔化合物(A)〕
0価のパラジウム化合物。
〔化合物(B)〕
イオン性ホウ素化合物。
〔化合物(C)〕
炭素数3〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基から選ばれる置換基を有するホスフィン化合物。
(式(1)中のiは0又は1を示す。)
(式(2)中のA1〜A4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基及びハロゲン化炭化水素基から選ばれる置換基、オキセタニル基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる極性を有する置換基、又はオリゴシロキサンを有する置換基である。また、A1とA2又はA1とA3とが、それぞれが結合する炭素原子と共に脂環構造、芳香環構造、カルボンイミド基又は酸無水物基を形成してもよい。jは0又は1を示す。)
〔5〕
化合物(A)が0価のパラジウム1個にジベンジリデンアセトン2個が配位した錯体であるビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムであり、化合物(B)がトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート又はリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−エチルエーテルコンプレックスであり、化合物(C)がトリシクロヘキシルホスフィンである〔4〕記載の環状オレフィン付加重合体の製造方法。
〔1〕
下記式(1)で表される環状オレフィン化合物、又はこの式(1)の環状オレフィン化合物と、下記式(2)で表される環状オレフィン化合物とを付加重合することにより得られ、下記式(1)で表される環状オレフィン化合物に由来する構造単位の割合が、付加重合体中30〜100モル%であり、テトラヒドロフランを溶媒とするGPCで測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が200,000〜2,000,000である環状オレフィン付加重合体。
〔2〕
式(1)中のiが0、式(2)中のjが0、A1〜A4が水素原子である〔1〕記載の環状オレフィン付加重合体。
〔3〕
式(1)中のiが0、式(2)中のjが0、A1〜A4のうち少なくとも1つがオリゴシロキサンを有する置換基である〔1〕記載の環状オレフィン付加重合体。
〔4〕
下記化合物(A)、(B)、(C)を含む多成分系触媒の存在下、下記式(1)で表される環状オレフィン化合物、又はこの式(1)の環状オレフィン化合物と、下記式(2)で表される環状オレフィン化合物とを付加重合し、下記式(1)で表される環状オレフィン化合物に由来する構造単位の割合が、付加重合体中30〜100モル%であり、テトラヒドロフランを溶媒とするGPCで測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が200,000〜2,000,000である環状オレフィン付加重合体を得ることを特徴とする環状オレフィン付加重合体の製造方法。
〔化合物(A)〕
0価のパラジウム化合物。
〔化合物(B)〕
イオン性ホウ素化合物。
〔化合物(C)〕
炭素数3〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基から選ばれる置換基を有するホスフィン化合物。
〔5〕
化合物(A)が0価のパラジウム1個にジベンジリデンアセトン2個が配位した錯体であるビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムであり、化合物(B)がトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート又はリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−エチルエーテルコンプレックスであり、化合物(C)がトリシクロヘキシルホスフィンである〔4〕記載の環状オレフィン付加重合体の製造方法。
本発明によれば、高い熱安定性(耐熱性)、膜強度(機械的強度)、優れた有機溶媒への溶解性を併せ持ち、変性や化学変換に有用なエチリデン基を側鎖に有する環状オレフィン付加重合体を、特定の多成分系触媒を用い、環状オレフィンのビニル付加重合により容易に製造することができる。
本発明の環状オレフィン付加重合体は、下記化合物(A)、(B)、(C)を含む多成分系触媒を用いて、下記式(1)で表される環状オレフィン化合物、又はこの式(1)の環状オレフィン化合物と下記式(2)で表される環状オレフィン化合物とを付加重合することで得られる。
〔化合物(A)〕
0価のパラジウム化合物。
〔化合物(B)〕
イオン性ホウ素化合物。
〔化合物(C)〕
炭素数3〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基から選ばれる置換基を有するホスフィン化合物。
(式(1)中のiは0又は1を示す。)
(式(2)中のA1〜A4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基及びハロゲン化炭化水素基から選ばれる置換基、オキセタニル基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる極性を有する置換基、又はオリゴシロキサンを有する置換基である。また、A1とA2又はA1とA3とが、それぞれが結合する炭素原子と共に脂環構造、芳香環構造、カルボンイミド基又は酸無水物基を形成してもよい。jは0又は1を示す。)
〔化合物(A)〕
0価のパラジウム化合物。
〔化合物(B)〕
イオン性ホウ素化合物。
〔化合物(C)〕
炭素数3〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基から選ばれる置換基を有するホスフィン化合物。
従来の環状オレフィン化合物の付加重合触媒としては、周期律表第8族元素、第9族元素及び第10族元素より選択された、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)などを中心金属とする遷移金属錯体が挙げられる。しかしながら、優れた物性を併せ持つ本発明の環状オレフィン付加重合体を得るためには、式(1)で表される環状オレフィン化合物の環内オレフィンに対し反応性が高く、一方で、環外オレフィンへの反応性が低いという高度な位置選択性能が必要である。更に、得られる重合体が高分子量体であることが必須であり、この点から、パラジウムを中心金属とし特定の配位子を有する化合物(A)、イオン性ホウ素化合物(B)、ホスフィン化合物(C)を併せて使用する必要がある。
更に、パラジウムを中心金属とする化合物(A)は、0価のパラジウム化合物である必要がある。後述するが、本発明の環状オレフィン付加重合体は、0価のパラジウム化合物を用いることで、優れた重合活性と分子量調節機能のもと製造されることを特徴とする。
〔化合物(A)〕
化合物(A)は、周期律表第10族元素であるパラジウムを中心金属とし、特に0価のパラジウム化合物である。この具体例としては、0価のパラジウム1個にジベンジリデンアセトン(あるいは、1,5−ジフェニル−1,4−ペンタジエン−3−オン、またabaと略記することもある)2個が配位した錯体であるビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、0価のパラジウム2個にジベンジリデンアセトン3個が配位した錯体であるトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、0価のパラジウム1個にエチレンが1個、トリシクロヘキシルホスフィンが2個配位した錯体である(エテン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、0価のパラジウム1個に一酸化炭素が1個、トリフェニルホスフィンが3個配位した錯体であるカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、0価のパラジウム1個に、t−ブチルイソシアニドが2個配位した錯体であるビス(t−ブチルイソシアニド)パラジウムなどが挙げられる。これらのなかで、取り扱い性の面や、入手し易い点及び錯体の安定性を考慮すると、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムが好ましい。
化合物(A)は、周期律表第10族元素であるパラジウムを中心金属とし、特に0価のパラジウム化合物である。この具体例としては、0価のパラジウム1個にジベンジリデンアセトン(あるいは、1,5−ジフェニル−1,4−ペンタジエン−3−オン、またabaと略記することもある)2個が配位した錯体であるビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、0価のパラジウム2個にジベンジリデンアセトン3個が配位した錯体であるトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、0価のパラジウム1個にエチレンが1個、トリシクロヘキシルホスフィンが2個配位した錯体である(エテン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、0価のパラジウム1個に一酸化炭素が1個、トリフェニルホスフィンが3個配位した錯体であるカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、0価のパラジウム1個に、t−ブチルイソシアニドが2個配位した錯体であるビス(t−ブチルイソシアニド)パラジウムなどが挙げられる。これらのなかで、取り扱い性の面や、入手し易い点及び錯体の安定性を考慮すると、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムが好ましい。
〔化合物(B)〕
化合物(B)は、イオン性ホウ素化合物である。この具体例としては、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、あるいはリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−エチルエーテルコンプレックスなどが挙げられる。これらのなかで、有機溶媒への溶解性、入手し易い点を考慮すると、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−エチルエーテルコンプレックスが好ましい。
化合物(B)は、イオン性ホウ素化合物である。この具体例としては、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、あるいはリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−エチルエーテルコンプレックスなどが挙げられる。これらのなかで、有機溶媒への溶解性、入手し易い点を考慮すると、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−エチルエーテルコンプレックスが好ましい。
〔化合物(C)〕
化合物(C)は、炭素数3〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基から選ばれる置換基を有するホスフィン化合物である。この具体例としては、トリイソプロピルホスフィン、トリt−ブチルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジt−ブチルフェニルホスフィンなどが挙げられる。これらのなかで、触媒の活性と安定性の両立の面から、トリシクロヘキシルホスフィンが好ましい。
化合物(C)は、炭素数3〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基から選ばれる置換基を有するホスフィン化合物である。この具体例としては、トリイソプロピルホスフィン、トリt−ブチルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジt−ブチルフェニルホスフィンなどが挙げられる。これらのなかで、触媒の活性と安定性の両立の面から、トリシクロヘキシルホスフィンが好ましい。
本発明では、化合物(A)として0価のパラジウム1個にジベンジリデンアセトン2個が配位した錯体であるビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、化合物(B)としてトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートあるいはリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−エチルエーテルコンプレックス、化合物(C)としてトリシクロヘキシルホスフィンを用いて、環状オレフィン付加重合体を製造することが好ましい態様の一つである。
より好ましい態様は以下の通りである。
化合物(A)がビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、化合物(B)がトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、化合物(C)がトリシクロヘキシルホスフィンである。
化合物(A)がビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、化合物(B)がトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、化合物(C)がトリシクロヘキシルホスフィンである。
本発明の環状オレフィン付加重合体は、下記式(1)で表される環状オレフィン化合物、又はこの式(1)で表される環状オレフィン化合物と、下記式(2)で表される環状オレフィン化合物とを、上述した化合物(A)、(B)、(C)からなる多成分系触媒を用いて付加重合することにより製造される。
上記式(2)中、A1〜A4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、炭素数1〜10のメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリーロキシ基、3,3,3−トリフロロプロピル基、2−(パーフロロブチル)エチル基、2−(パーフロロオクチル)エチル基、p−クロロフェニル基等のハロゲン化炭化水素基から選ばれる置換基、オキセタニル基、メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等の好ましくはアルコキシ基の炭素数が1〜10、特に1〜6のアルコキシカルボニル基から選ばれる極性を有する置換基、又は下記式(a)
−(CH2)k−SiR1 s(OSiR1 3)3-s (a)
(式中、R1は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価の有機基であり、sは0,1又は2であり、kは0又は1〜4の整数を示す。)
等で表されるオリゴシロキサンを有する置換基である。また、A1とA2又はA1とA3とが、それぞれが結合する炭素原子と共に脂環構造、芳香環構造、カルボンイミド基又は酸無水物基を形成してもよい。A1〜A4としては、水素原子、オリゴシロキサンを有する置換基が好ましい。
−(CH2)k−SiR1 s(OSiR1 3)3-s (a)
(式中、R1は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価の有機基であり、sは0,1又は2であり、kは0又は1〜4の整数を示す。)
等で表されるオリゴシロキサンを有する置換基である。また、A1とA2又はA1とA3とが、それぞれが結合する炭素原子と共に脂環構造、芳香環構造、カルボンイミド基又は酸無水物基を形成してもよい。A1〜A4としては、水素原子、オリゴシロキサンを有する置換基が好ましい。
ここで、上記式(a)中、R1は、互いに同一又は異なってもよい脂肪族不飽和結合を有さない一価の有機基であり、好ましくは炭素数1〜10、特に1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基などや、これらの基の水素原子の1個又は2個以上がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換された基などが挙げられる。
また、この場合、式(2)中の脂環構造としては炭素数4〜10のものが挙げられ、芳香環構造としては、炭素数6〜12のものが挙げられる。これら脂環構造、芳香環構造、カルボンイミド基又は酸無水物基の構造を例示すると下記の通りである。
なお、これらがノルボルネン環と結合した状態を例示すると下記の通りである。式(2)において、i=0の場合を示す。
式(2)で表される環状オレフィン化合物としては、上述した化合物以外に、以下の化合物が例示できるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−プロピル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−デシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−クロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸エチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸ブチル、2−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチル、2−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸エチル、2−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸プロピル、2−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸トリフロロエチル、2−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エニル酢酸エチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸ジメチル、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどを例示することができる。
これら式(2)で表される環状オレフィン化合物は、一種単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これら式(2)で表される環状オレフィン化合物は、一種単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、式(2)で表される環状オレフィン化合物において、エステル基などの極性基やオリゴシロキサンなどの嵩高い置換基を含んでいると、得られる重合体の被着体への接着性や有機溶媒への溶解性を高める反面、重合活性や分子量が低下する傾向があるので、目的に応じ、適宜選択することが好ましい。
上記式(1)で表される環状オレフィン化合物と、上記式(2)で表される環状オレフィン化合物との仕込み比率は、得られる本発明の環状オレフィン付加重合体を考慮し、得られた重合体中の式(1)由来の構造単位が合計で30〜100モル%、好ましくは50〜100モル%となるように使用することが望ましい。
上記多成分系触媒を構成する化合物(A)、(B)、(C)は、以下の範囲の使用量で用いられる。
化合物(A)は、式(1)及び(2)で示される単量体の合計1モルに対して0価のパラジウム量として100万分の1〜1,000分の1モルが好ましく、より好ましくは10万分の1〜5,000分の1モルである。化合物(A)の使用量が多すぎると目的とする分子量の重合体が得られない場合があり、少なすぎると重合活性が低下する場合がある。
化合物(A)は、式(1)及び(2)で示される単量体の合計1モルに対して0価のパラジウム量として100万分の1〜1,000分の1モルが好ましく、より好ましくは10万分の1〜5,000分の1モルである。化合物(A)の使用量が多すぎると目的とする分子量の重合体が得られない場合があり、少なすぎると重合活性が低下する場合がある。
また、化合物(B)は、化合物(A)1モルに対して1.0〜2.0モルが好ましく、より好ましくは1.0〜1.5モルである。化合物(B)の使用量が多すぎると重合体中に残存し、着色する場合があり、少なすぎると重合活性が低下する場合がある。
化合物(C)は、化合物(A)1モルに対して、0.25〜2.0モルが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5モルである。化合物(C)の使用量が多すぎると重合活性が低下する場合があり、少なすぎると触媒の安定性が低下する場合がある。
本発明の環状オレフィン付加重合体は、上記化合物(A)、(B)、(C)からなる多成分系触媒を用い、シクロヘキサン、シクロペンタンなどの脂環式炭化水素溶媒、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素溶媒、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどの環状ポリシロキサン溶媒などから選ばれる一種又は二種以上の溶媒中で重合を行うことにより製造することができる。
溶媒の使用量は、溶媒(S)と上記環状オレフィン単量体(上記式(1)、(2)で表される化合物の合計量)(M)の質量比(S/M)が0.1〜30の範囲、特に1〜20の範囲とすることが好ましい。溶媒の使用量が、上記質量比より少ないと溶液粘度が高く、取り扱い性が困難になる場合があり、上記質量比より多いと重合活性の点で劣る場合がある。
上記化合物(A)、(B)、(C)からなる多成分系触媒を上記環状オレフィン単量体と接触混合させる場合、(操作態様1)化合物(B)、(C)、環状オレフィン単量体及び上記溶媒からなる溶液に、化合物(A)を上記溶媒に溶解した溶液を投入混合してもよく、(操作態様2)化合物(B)、環状オレフィン単量体及び溶媒からなる溶液に、化合物(A)、(C)を上記溶媒に溶解した溶液を投入混合してもよく、(操作態様3)環状オレフィン単量体及び溶媒からなる溶液に、化合物(A)、(B)、(C)を上記溶媒に溶解した溶液を投入混合してもよい。このなかでも、触媒活性種の効率的な発生の点から、操作態様3がより好ましい。
本発明の環状オレフィン付加重合体の製造において反応温度は重要である。後述するが、上記化合物(A)、(B)、(C)からなる多成分系触媒を用いた場合、その反応温度により本発明の環状オレフィン付加重合体の分子量を調節できるからである。
重合方法としては、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、上述した操作態様により反応容器中に仕込み、20〜100℃、特に30〜60℃の範囲の温度で1〜72時間、特に2〜24時間重合することが好ましい。但し、反応温度が低すぎると重合活性の点で劣る場合があり、高すぎるとゲル化を引き起こしたり、分子量の調節が困難になり目的とする分子量の環状オレフィン付加重合体が得られない場合がある。
上述した溶媒と単量体の比率、重合温度、重合時間などは一概に限定することが難しい。上記特定構造の重合体を得るべく、目的に応じて使い分ける必要がある。
重合の停止は、水、アルコール、ケトン、有機酸などから選ばれた化合物によって行われる。重合体溶液に、乳酸、リンゴ酸、シュウ酸などの酸の水とアルコール混合物を添加することで、触媒残渣を重合体溶液から分離・除去することができる。また、触媒残渣の除去には、活性炭、珪藻土、アルミナ、シリカなどを用いての吸着除去や、フィルターなどによる濾過分離除去などが適用できる。
重合体は、重合体溶液をメタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類中に入れて、凝固し、60〜120℃で6〜48時間減圧乾燥することにより得ることができる。この工程で、重合体溶液中に残存する触媒残渣や未反応モノマーも除去される。
このようにして得られる本発明の環状オレフィン付加重合体は、上記式(1)で表される環状オレフィン化合物を単量体として付加重合することにより形成される、下記式(3)で示される繰り返し単位を含む。
(式(3)中のiは式(1)と同じである。)
また、本発明の環状オレフィン付加重合体は、式(2)で表される環状オレフィン化合物を用いた場合、式(2)で表される環状オレフィン化合物を単量体として付加重合することにより形成される、下記式(4)で示される繰り返し単位を含む。
(式(4)中のA1〜A4及びjは式(2)と同じである。)
ここで、式(3)で示される繰り返し単位は、例えばiが0の場合、2,3付加構造単位を示すものであるが、上記式(1)で表される環状オレフィン化合物を単量体として付加重合することによる2,7付加構造単位となっているものが含まれていてもよい。また、この構造単位については、式(4)で示される繰り返し単位においても、同様である。
本発明の環状オレフィン付加重合体中の式(3)で表される構造単位の割合は、通常30〜100モル%、好ましくは50〜100モル%である。式(3)で表される構造単位の割合が、30モル%未満では側鎖エチリデン基の変性や化学変換による特性の発現が期待できない場合がある。また特に、有機溶媒への溶解性、機械的強度の点から、環状オレフィン化合物中、式(1)由来の構造単位が30〜100モル%であり、式(2)由来の構造単位が0〜70モル%の割合で含まれることが好ましい。
本発明の環状オレフィン付加重合体中の式(3)及び式(4)で表される構造単位は、ランダムに存在してもよく、またブロック状に偏在してもよい。
本発明の環状オレフィン付加重合体の分子量は、優れた物性の発現に関与する重要な因子である。THFを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が200,000〜2,000,000であり、好ましくは230,000〜1,500,000である。数平均分子量が200,000未満では、薄膜、フィルム及びシートとした際、脆く割れ易くなり、実使用に耐える膜強度が得られない。一方、数平均分子量が2,000,000を超えると、成形加工性及び溶媒類への溶解性が低下したり、溶液粘度が高くなり、取り扱い性が困難となる。本発明においては、上記化合物(A)、(B)、(C)からなる多成分系触媒を用いた場合、数平均分子量(Mn)が200,000〜2,000,000の環状オレフィン付加重合体が容易に得られる。このため、コーティング被膜、フィルムあるいはシートなどの薄膜にしたとき、割れや脆さの点で優れたものとなる。
本発明の環状オレフィン付加重合体のガラス転移温度は、DMA(Dynamic Mechanical Analysis)を用いて測定される。こうして評価される本発明の環状オレフィン付加重合体のガラス転移温度は、170〜360℃であることが好ましく、より好ましくは190〜340℃である。ガラス転移温度が低すぎると耐熱性の点で劣る場合がある。また、ガラス転移温度が高すぎると加熱成形が困難となる場合がある。
本発明の環状オレフィン付加重合体は、核磁気共鳴スペクトル(NMR)を用いて、その構造を確認することができる。例えば、1H−NMR(重クロロホルム中)においては、4.8〜5.6ppmに側鎖エチリデン基に由来する吸収があり、その積分比から構造を確認することができる。
式(1)及び式(3)中のエチリデン基には、構造異性体が存在する。式(1)及び式(3)中においてはいずれも、エチリデン基は、E体で示されているが、Z体を用いてもよい。1H−NMR(重クロロホルム中)においては、式(1)においてiが0の場合、E体のエチリデン基に由来するピークは5.3〜5.5ppmに吸収があり、Z体のエチリデン基に由来するピークは5.1〜5.3ppmに吸収がある。また、式(3)においてiが0の場合、E体のエチリデン基に由来するピークは5.2〜5.6ppmに吸収があり、Z体のエチリデン基に由来するピークは4.8〜5.2ppmに吸収がある。これらの吸収の積分比から、エチリデン基の異性体構造を確認することができる。
本発明の環状オレフィン付加重合体は、側鎖エチリデン基の変性や化学変換の有無にかかわらず、薄膜、シートあるいはフィルム形状として用いることもできる。薄膜、シートあるいはフィルム厚さとしては、特に制限されないが、通常10nm〜3mmの範囲で目的に応じて調整される。薄膜、シートあるいはフィルム形状とする方法は、特に限定されることなく、任意の方法で成形することができるが、熱履歴による重合体の劣化を抑制できる点で、本発明の重合体を溶媒に溶解させて支持体に塗工し、しかる後に溶媒を乾燥させる溶液流延法(キャスト法)や、本発明の重合体溶液を水面に滴下後、支持体等で掬い取る水面展開薄膜法、本発明の重合体を溶媒に溶解させて支持体に塗工し、しかる後に貧溶媒中に浸漬する乾湿式相転換法により成形するのが好ましい。
溶液流延法、水面展開薄膜法、乾湿式相転換法に用いられる溶媒は、本発明の付加重合体を溶解させる溶媒である必要がある。本発明にかかる付加重合体の多くは、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、デカン、イソドデカン等の脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒、ヘキサメチルジシロキサン、メチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のポリシロキサン溶媒に溶解し、これらの溶媒を一種単独あるいは二種以上の混合溶媒として使用することができる。
本発明の環状オレフィン付加重合体は、上記式(1)の単量体由来の構造単位である上記式(3)で表される構造単位を高い割合で含有するため、側鎖エチリデン基を変性あるいは化学変換することで、更なる特性発現が期待できる。
側鎖エチリデン基の変性及び化学変換は、公知の方法をすべて用いることができ、例えば、変性方法としてはヒドロシリル化反応やラジカル反応が挙げられ、また、化学変換方法としてはオゾン酸化によるエステル化、酸を利用したエポキシ化などが挙げられる(非特許文献4、10)。
本発明の環状オレフィン付加重合体を含む溶液には、公知の酸化防止剤を配合して、酸化安定性を向上させることができる。
酸化防止剤としては、
2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、
4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、
1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、
ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネートなどのフェノール系あるいはヒドロキノン系、
トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、
トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、
トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、
ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系、更にはチオエーテル系、ラクトン系化合物などが挙げられる。これらの化合物の中でも、その分解温度(5%の質量減少温度)が250℃以上のものが好ましい。また、これら酸化防止剤の配合量は、本発明の環状オレフィン付加重合体100質量部に対し、0.05〜5.0質量部の範囲である。
2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、
4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、
1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、
ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネートなどのフェノール系あるいはヒドロキノン系、
トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、
トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、
トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、
ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系、更にはチオエーテル系、ラクトン系化合物などが挙げられる。これらの化合物の中でも、その分解温度(5%の質量減少温度)が250℃以上のものが好ましい。また、これら酸化防止剤の配合量は、本発明の環状オレフィン付加重合体100質量部に対し、0.05〜5.0質量部の範囲である。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記例中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Cyはシクロヘキシル基をそれぞれ表す。
重合体の分子量、分子量分布、ガラス転移温度、破壊強度、破壊伸び、熱安定性は下記の方法で評価した。
1)実施例中で得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、THFを溶媒とするGPCによりポリスチレンを標準物質として用いて求めた。
2)ガラス転移温度は、DMA装置を用い、膜厚100μm、幅1cm、長さ4cmの試料をプローブに固定し、30℃から10℃/minで昇温して測定した。
3)破壊強度及び破壊伸びは、膜厚100μmのフィルムを2号ダンベル形状に打ち抜き、それを試験機のプローブに固定して、50mm/minの速度で引っ張り測定した。
4)熱安定性は、膜厚100μmのフィルム試料を150℃の真空乾燥機中で3時間熱処理し、その後トルエン溶液に溶解させ評価した。
1)実施例中で得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、THFを溶媒とするGPCによりポリスチレンを標準物質として用いて求めた。
2)ガラス転移温度は、DMA装置を用い、膜厚100μm、幅1cm、長さ4cmの試料をプローブに固定し、30℃から10℃/minで昇温して測定した。
3)破壊強度及び破壊伸びは、膜厚100μmのフィルムを2号ダンベル形状に打ち抜き、それを試験機のプローブに固定して、50mm/minの速度で引っ張り測定した。
4)熱安定性は、膜厚100μmのフィルム試料を150℃の真空乾燥機中で3時間熱処理し、その後トルエン溶液に溶解させ評価した。
[実施例1]
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(C17H14O)2]0.0115g(2.0×10-5mol)、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート{[Ph3C][B(C6F5)4]}0.0184g(2.0×10-5mol)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)0.0056g(2.0×10-5mol)をトルエン20mlに溶解させ、触媒溶液を調製した。次に、窒素置換したガラス容器中に、下記式(5)で表される単量体A96.2g(0.8mol)のトルエン溶液780mlを調製した。そこへ触媒溶液20mlを添加し、30℃で5時間反応を行った。
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、85℃で12時間減圧乾燥し、87.5g(収率91%)のポリマーP(1)が得られた。
得られたポリマーP(1)のGPC測定による分子量はMn=422,000、分子量分布Mw/Mn=2.12であった。
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(C17H14O)2]0.0115g(2.0×10-5mol)、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート{[Ph3C][B(C6F5)4]}0.0184g(2.0×10-5mol)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)0.0056g(2.0×10-5mol)をトルエン20mlに溶解させ、触媒溶液を調製した。次に、窒素置換したガラス容器中に、下記式(5)で表される単量体A96.2g(0.8mol)のトルエン溶液780mlを調製した。そこへ触媒溶液20mlを添加し、30℃で5時間反応を行った。
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、85℃で12時間減圧乾燥し、87.5g(収率91%)のポリマーP(1)が得られた。
得られたポリマーP(1)のGPC測定による分子量はMn=422,000、分子量分布Mw/Mn=2.12であった。
[実施例2]
反応温度を40℃にする以外は実施例1と同様にして重合反応を行った。
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、85℃で12時間減圧乾燥し、90.4g(収率94%)のポリマーP(2)が得られた。
得られたポリマーP(2)のGPC測定による分子量はMn=302,000、分子量分布Mw/Mn=2.19であった。
反応温度を40℃にする以外は実施例1と同様にして重合反応を行った。
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、85℃で12時間減圧乾燥し、90.4g(収率94%)のポリマーP(2)が得られた。
得られたポリマーP(2)のGPC測定による分子量はMn=302,000、分子量分布Mw/Mn=2.19であった。
[実施例3]
反応温度を50℃にする以外は実施例1と同様にして重合反応を行った。
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、85℃で12時間減圧乾燥し、89.5g(収率93%)のポリマーP(3)が得られた。
得られたポリマーP(3)のGPC測定による分子量はMn=241,000、分子量分布Mw/Mn=2.01であった。
反応温度を50℃にする以外は実施例1と同様にして重合反応を行った。
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、85℃で12時間減圧乾燥し、89.5g(収率93%)のポリマーP(3)が得られた。
得られたポリマーP(3)のGPC測定による分子量はMn=241,000、分子量分布Mw/Mn=2.01であった。
[比較例1]
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(C17H14O)2]0.0115g(2.0×10-5mol)、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート{[Ph3C][B(C6F5)4]}0.0184g(2.0×10-5mol)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)0.0056g(2.0×10-5mol)をトルエン20mlに溶解させ、触媒溶液を調製した。次に、窒素置換したガラス容器中に、下記式(6)で表される単量体B96.2g(0.8mol)のトルエン溶液780mlを調製した。そこへ触媒溶液20mlを添加し、30℃で30時間反応を行った。
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、85℃で12時間減圧乾燥し、41.4g(収率43%)のポリマーP(4)が得られた。
得られたポリマーP(4)のGPC測定による分子量はMn=484,000、分子量分布Mw/Mn=2.14であった。
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(C17H14O)2]0.0115g(2.0×10-5mol)、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート{[Ph3C][B(C6F5)4]}0.0184g(2.0×10-5mol)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)0.0056g(2.0×10-5mol)をトルエン20mlに溶解させ、触媒溶液を調製した。次に、窒素置換したガラス容器中に、下記式(6)で表される単量体B96.2g(0.8mol)のトルエン溶液780mlを調製した。そこへ触媒溶液20mlを添加し、30℃で30時間反応を行った。
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、85℃で12時間減圧乾燥し、41.4g(収率43%)のポリマーP(4)が得られた。
得られたポリマーP(4)のGPC測定による分子量はMn=484,000、分子量分布Mw/Mn=2.14であった。
[比較例2]
反応温度を40℃にする以外は比較例1と同様にして重合反応を行った。
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、85℃で12時間減圧乾燥し、54.8g(収率57%)のポリマーP(5)が得られた。
得られたポリマーP(5)のGPC測定による分子量はMn=429,000、分子量分布Mw/Mn=2.21であった。
反応温度を40℃にする以外は比較例1と同様にして重合反応を行った。
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、85℃で12時間減圧乾燥し、54.8g(収率57%)のポリマーP(5)が得られた。
得られたポリマーP(5)のGPC測定による分子量はMn=429,000、分子量分布Mw/Mn=2.21であった。
[比較例3]
反応温度を50℃にする以外は比較例1と同様にして重合反応を行った。
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、85℃で12時間減圧乾燥し、55.8g(収率58%)のポリマーP(6)が得られた。
得られたポリマーP(6)のGPC測定による分子量はMn=375,000、分子量分布Mw/Mn=2.14であった。
反応温度を50℃にする以外は比較例1と同様にして重合反応を行った。
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、85℃で12時間減圧乾燥し、55.8g(収率58%)のポリマーP(6)が得られた。
得られたポリマーP(6)のGPC測定による分子量はMn=375,000、分子量分布Mw/Mn=2.14であった。
[比較例4]
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(C17H14O)2]0.0115g(2.0×10-5mol)、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート{[Ph3C][B(C6F5)4]}0.0184g(2.0×10-5mol)をトルエン20mlに溶解させ、触媒溶液を調製した。次に、窒素置換したガラス容器中に、上記式(5)で表される単量体A96.2g(0.8mol)のトルエン溶液780mlを調製した。そこへ触媒溶液20mlを添加し、50℃で24時間反応を行った。
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、85℃で12時間減圧乾燥し、45.2g(収率47%)のポリマーP(7)が得られた。
得られたポリマーP(7)のGPC測定による分子量はMn=6,800、分子量分布Mw/Mn=2.59であった。
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(C17H14O)2]0.0115g(2.0×10-5mol)、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート{[Ph3C][B(C6F5)4]}0.0184g(2.0×10-5mol)をトルエン20mlに溶解させ、触媒溶液を調製した。次に、窒素置換したガラス容器中に、上記式(5)で表される単量体A96.2g(0.8mol)のトルエン溶液780mlを調製した。そこへ触媒溶液20mlを添加し、50℃で24時間反応を行った。
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、85℃で12時間減圧乾燥し、45.2g(収率47%)のポリマーP(7)が得られた。
得られたポリマーP(7)のGPC測定による分子量はMn=6,800、分子量分布Mw/Mn=2.59であった。
実施例1〜3、比較例1〜4の調製条件、及び得られたポリマーの収率、分子量、分子量分布の結果を表1に示す。
実施例1、比較例2及び比較例4で得られたポリマーP(1)、P(5)、P(7)の物性(ガラス転移温度、破壊強度、破壊伸び、熱安定性)を表2に示す。
以上の結果から、本発明の環状オレフィン付加重合体が、優れた溶解性、耐熱性、機械的強度を併せ持ち、更に、優れた重合活性、選択性、分子量調節機能を有する特定構造の多成分系触媒を用いることで容易に製造できることがわかる。
本発明の環状オレフィン付加重合体は、成膜性に優れ、優れた耐熱性、機械的強度を有する。また、側鎖にエチリデン基を高含有するため、変性や化学変換が可能であり、材料設計におけるベースポリマーとして有用である。
本発明の環状オレフィン付加重合体は、成膜性に優れ、優れた耐熱性、機械的強度を有する。また、側鎖にエチリデン基を高含有するため、変性や化学変換が可能であり、材料設計におけるベースポリマーとして有用である。
本発明の重合体は、気体の透過性や溶解性を付与することができるオリゴシロキサンなどを変性することにより、酸素富化膜、コンタクトレンズ等への応用が期待される。また、ポリエーテルなどの親水性ポリマーで変性することで、化粧品や医薬品への応用も期待できる。
更に、本発明の重合体は、エステル基やエポキシ基などの極性基に化学変換することで、基材への優れた接着性の発現が期待でき、光学フィルムやコーティングフィルム等への応用も期待できる。
更に、本発明の重合体は、エステル基やエポキシ基などの極性基に化学変換することで、基材への優れた接着性の発現が期待でき、光学フィルムやコーティングフィルム等への応用も期待できる。
Claims (5)
- 下記式(1)で表される環状オレフィン化合物、又はこの式(1)の環状オレフィン化合物と、下記式(2)で表される環状オレフィン化合物とを付加重合することにより得られ、下記式(1)で表される環状オレフィン化合物に由来する構造単位の割合が、付加重合体中30〜100モル%であり、テトラヒドロフランを溶媒とするGPCで測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が200,000〜2,000,000である環状オレフィン付加重合体。
- 式(1)中のiが0、式(2)中のjが0、A1〜A4が水素原子である請求項1記載の環状オレフィン付加重合体。
- 式(1)中のiが0、式(2)中のjが0、A1〜A4のうち少なくとも1つがオリゴシロキサンを有する置換基である請求項1記載の環状オレフィン付加重合体。
- 下記化合物(A)、(B)、(C)を含む多成分系触媒の存在下、下記式(1)で表される環状オレフィン化合物、又はこの式(1)の環状オレフィン化合物と、下記式(2)で表される環状オレフィン化合物とを付加重合し、下記式(1)で表される環状オレフィン化合物に由来する構造単位の割合が、付加重合体中30〜100モル%であり、テトラヒドロフランを溶媒とするGPCで測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が200,000〜2,000,000である環状オレフィン付加重合体を得ることを特徴とする環状オレフィン付加重合体の製造方法。
〔化合物(A)〕
0価のパラジウム化合物。
〔化合物(B)〕
イオン性ホウ素化合物。
〔化合物(C)〕
炭素数3〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基から選ばれる置換基を有するホスフィン化合物。
- 化合物(A)が0価のパラジウム1個にジベンジリデンアセトン2個が配位した錯体であるビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムであり、化合物(B)がトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート又はリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−エチルエーテルコンプレックスであり、化合物(C)がトリシクロヘキシルホスフィンである請求項4記載の環状オレフィン付加重合体の製造方法。
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