JP2014040531A - 酸化セルロース及びセルロースナノファイバーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セルロース結晶II型を有しているセルロース原料を、(a1)N−オキシル化合物0.001〜0.1mmol/g、および(a2)臭化物、ヨウ化物もしくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で、(a3)酸化剤2.5〜5.5mmol/gを用いて酸化することを特徴とする酸化セルロースの製造方法。
【選択図】なし
Description
[1] セルロース結晶II型を有しているセルロース原料を、(a1)N−オキシル化合物0.001〜0.1mmol/g、および(a2)臭化物、ヨウ化物もしくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で、(a3)酸化剤2.5〜5.5mmol/gを用いて酸化することを特徴とする酸化セルロースの製造方法。
[2] 前記セルロース原料のセルロース結晶II型含有率が75%以上であることを特徴とする[1]に記載の酸化セルロースの製造方法。
[3] [1]〜[2]の酸化セルロースを解繊・分散処理することを特徴とするセルロースナノファイバーの製造方法。
本発明の酸化パルプの製造方法は、酸化セルロースの製造方法であって、セルロース原料を、(a1)N−オキシル化合物0.001〜0.1mmol/g、および(a2)臭化物、ヨウ化物もしくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で、(a3)酸化剤2.5〜5.5mmol/gを用いて酸化する。
セルロース系原料とは、木材由来のクラフトパルプまたはサルファイトパルプ、それらを高圧ホモジナイザーやミル等で粉砕した粉末セルロース、あるいはそれらを酸加水分解などの化学処理により精製した微結晶セルロース粉末、ビスコース法あるいは銅アンモニア法により製造された再生セルロース等である。またこの他に、ケナフ、麻、イネ、バカス、竹等の植物由来のセルロース系原料もできる。しかしながら、セルロース系原料中に広葉樹由来のリグニンが多く残留してしまうと当該原料の酸化反応を阻害する恐れがあるので、本発明においては、化学パルプの製造方法により得られたセルロース系原料が好ましい。リグニンをさらに除去するために、このようにして得られたセルロース系原料に公知の漂白処理を施すことがより好ましい。
水酸化物イオン濃度が上記範囲を下回るとアルカリ濃度が低く、十分なセルロースII型結晶を有するセルロース原料を得ることができない。
本発明において、セルロース結晶II型の含有率は、広角X線回折法による測定で得られたグラフの回折角2θのピークの面積比により算出した。手順は次の通りである。
まずセルロースを液体窒素で凍結させ、これを圧縮し、錠剤ペレットを作成する。その後、このサンプルをX線回折測定装置(LabX XRD−6000、島津製作所製)により得られた測定結果(グラフ)を、グラフ解析ソフトPeakFit(Hulinks製)によりピーク分離し、その面積比から結晶I型とII型の比率を算出した。この時、ピーク分離のために、下記の回折角度を基準として結晶I型とII型を判別した。
結晶I型:2θ=14.7°、16.5°、22.5°
結晶II型:2θ=12.3°、20.2°、21.9°
1−2.酸化工程
酸化工程では、前記したセルロース系原料を、(a1)N−オキシル化合物、および(a2)臭化物、ヨウ化物もしくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で、(a3)酸化剤を用いて酸化する。
N−オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物である。本発明で用いるN−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。例えば、本発明で使用されるN−オキシル化合物としては、下記一般式(式1)で示される化合物が挙げられる。
式1で表される物質のうち、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−オキシラジカル(以下、TEMPOと称する)が好ましい。また、下記式2〜5のいずれかで表されるN−オキシル化合物、すなわち、4−ヒドロキシTEMPOの水酸基をアルコールでエーテル化、またはカルボン酸若しくはスルホン酸でエステル化し、適度な疎水性を付与した4−ヒドロキシTEMPO誘導体、もしくは4−アミノTEMPOのアミノ基をアセチル化し、適度な疎水性を付与した4−アセトアミドTEMPOは安価であり、かつ均一な酸化セルロースを得ることができるため、とりわけ好ましい。
さらに、下記式6で表されるN−オキシル化合物、すなわち、アザアダマンタン型ニトロキシラジカルは、短時間で効率よくセルロース系原料を酸化でき、また、セルロース鎖の切断も起こりにくいため、好ましい。
本発明において、N−オキシル化合物の使用量は、セルロース系原料絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.001〜0.1mmolとすることが重要であり、より好ましくは0.001〜0.01mmolである。N−オキシル化合物の添加量が少ないと、酸化反応にかかる時間が長くなるとともに、導入されるカルボキシル基量が不十分になる。一方、添加量が多いと、収率が低下する可能性がある。
臭化物とは臭素を含む化合物であり、その例には、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、その例には、ヨウ化アルカリ金属が含まれる。臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物およびヨウ化物の合計量は、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.1〜100mmolが好ましく、0.1〜10mmolがより好ましく、0.5〜5mmolがさらに好ましい。
セルロース系原料の酸化の際に用いる酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などを使用できる。中でも、コストの観点から、現在工業プロセスにおいて最も汎用されている安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが特に好ましい。
本工程は、比較的温和な条件であっても反応を効率よく進行させられる。よって、反応温度は15〜30℃程度の室温であってもよい。反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHの低下が認められる。酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを9〜12、好ましくは10〜11程度に維持することが好ましい。反応媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じにくいこと等から、水が好ましい。
1−3.解繊・分散
上記酸化セルロース系原料を含む分散液を調製し、当該酸化セルロース系原料を解繊して前記分散媒中に分散し、ナノファイバー化する。「ナノファイバー化する」とは、セルロース系原料を、幅2〜5nm、長さ0.1〜5μm程度のセルロースのシングルミクロフィブリルであるセルロースナノファイバーへと加工することを意味する。分散液とは前記酸化セルロース系原料が分散媒に分散している液である。取扱い容易性から、分散媒は水であることが好ましい。
本発明では、セルロースナノファイバー分散液としたときの粘度を低下させて取扱い性を高めるために、工程Cの前に、工程Bで得た酸化されたセルロース系原料(以下単に「セルロース原料」ともいう)を低粘度化処理することが好ましい。低粘度化処理とは、酸化されたセルロース系原料のセルロース鎖を適度に切断(セルロース鎖を短繊維化)することである。このように処理された原料は分散液としたときの粘度が低くなるので、低粘度化処理とは、低粘度の分散液を与えるセルロース系原料を得る処理ともいえる。低粘度化処理は、セルロース系原料の粘度が低下するような処理であればよく、例えば、酸化されたセルロース系原料に紫外線を照射する処理、酸化されたセルロース系原料を過酸化水素およびオゾンで酸化分解する処理、酸化されたセルロース系原料を酸で加水分解する処理、ならびにこれらの組み合わせなどが挙げられる。
本発明により製造されるセルロースナノファイバーは、幅2〜5nm、長さ0.1〜5μm程度のセルロースのシングルミクロフィブリルである。本発明により得られたセルロースナノファイバーの分散液は優れた透明度を有する。分散液における分散媒は、好ましくは水である。本発明において、透明度は660nmの光線透過率で評価され、具体的には、紫外・可視分光光度計を用いて、石英セル(光路10mm)に0.1%分散液を入れた試験体を透過する光の量を測定することで求められる。
本発明により得られたセルロースナノファイバーの水分散液は、濃度0.1%(w/v)において、660nmの光線透過率が、好ましくは94%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上である。前記透明度が95%以上であると、一般的なフィルム用途に問題なく使用することができ、透明度が99%以上である場合はディスプレイやタッチパネルのような高い光学特性(透明性)が要求されるフィルム用途等に問題なく使用できる。本発明により得られたセルロースナノファイバーは、繊維表面のカルボキシル基の量が多いため、繊維同士が凝集しにくく分散媒への分散が良好であるので、前記のとおり透明度の高い水分散液を与える。
(工程A) 針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)20g(絶乾)を水酸化物イオン濃度が3.75mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に装入し、パルプ濃度が5質量%となるように調整した。当該混合物を室温(25℃)にて2時間撹拌した後、酸で中和し、水洗した。
(工程B) アルカリ処理したパルプ5g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)3.9mgと臭化ナトリウム755mgを溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を5.0mmol/gになるようを添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHは低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプを得た。この時の酸化反応に要した時間は100分であった。
(工程C) 前記酸化パルプを1%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、140Mpa)で10回処理して、透明なゲル状分散液を得た。
水酸化ナトリウム水溶液の水酸化物イオン濃度を5.0mol/Lとした以外、実施例1と同様に工程AおよびBを実施した。酸化反応に要した時間は80分であった。得られた酸化パルプを1%(w/v)の水分散液に調製し、当該水分散液を超高圧ホモジナイザー(20℃、140Mpa)で10回処理して、透明なセルロースナノファイバー水分散液を得た。
TEMPOの添加量を0.78mgとした以外、実施例2と同様に工程AおよびBを実施した。酸化反応に要した時間は115分であった。得られた酸化パルプを1%(w/v)の水分散液に調製し、当該水分散液を超高圧ホモジナイザー(20℃、140Mpa)で10回処理して、透明なセルロースナノファイバー水分散液を得た。
TEMPOの添加量を7.8mgとし、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を5.0mmol/gとした以外、実施例1と同様に工程AおよびBを実施した。酸化反応に要した時間は105分であった。得られた酸化パルプを1%(w/v)の水分散液に調製し、当該水分散液を超高圧ホモジナイザー(20℃、140Mpa)で10回処理して工程Cを行い、透明なセルロースナノファイバー水分散液を得た。
TEMPOの添加量を7.8mgとし、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を5.0mmol/gとした以外、実施例2と同様に工程AおよびBを実施した。酸化反応に要した時間は105分であった。得られた酸化パルプを1%(w/v)の水分散液に調製し、当該水分散液を超高圧ホモジナイザー(20℃、140Mpa)で10回処理して、透明なセルロースナノファイバー水分散液を得た。
TEMPOの添加量を78mgとし、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を5.0mmol/gとした以外、実施例1と同様に工程AおよびBを実施した。酸化反応に要した時間は25分であった。得られた酸化パルプを1%(w/v)の水分散液に調製し、当該水分散液を超高圧ホモジナイザー(20℃、140Mpa)で10回処理して、透明なセルロースナノファイバー水分散液を得た。
TEMPOの添加量を78mgとし、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を5.5mmol/gとした以外、実施例2と同様に工程AおよびBを実施した。酸化反応に要した時間は25分であった。得られた酸化パルプを1%(w/v)の水分散液に調製し、当該水分散液を超高圧ホモジナイザー(20℃、140Mpa)で10回処理して、透明なセルロースナノファイバー水分散液を得た。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を3.0mmol/gとした以外、実施例7と同様に工程AおよびBを実施した。酸化反応に要した時間は20分であった。得られた酸化パルプを1%(w/v)の水分散液に調製し、当該水分散液を超高圧ホモジナイザー(20℃、140Mpa)で10回処理して、透明なセルロースナノファイバー水分散液を得た。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を2.5mmol/gとした以外、実施例7と同様に工程AおよびBを実施した。酸化反応に要した時間は20分であった。得られた酸化パルプを1%(w/v)の水分散液に調製し、当該水分散液を超高圧ホモジナイザー(20℃、140Mpa)で10回処理して、透明なセルロースナノファイバー水分散液を得た。
原料を広葉樹クラフトパルプとした以外、実施例7と同様に工程AおよびBを実施した。酸化反応に要した時間は30分であった。得られた酸化パルプを1%(w/v)の水分散液に調製し、当該水分散液を超高圧ホモジナイザー(20℃、140Mpa)で10回処理して、透明なセルロースナノファイバー水分散液を得た。
原料を針葉樹サルファイトパルプとした以外、実施例7と同様に工程AおよびBを実施した。酸化反応に要した時間は25分であった。得られた酸化パルプを1%(w/v)の水分散液に調製し、当該水分散液を超高圧ホモジナイザー(20℃、140Mpa)で10回処理して、透明なセルロースナノファイバー水分散液を得た。
原料を針葉樹溶解クラフトパルプとした以外、実施例7と同様に工程AおよびBを実施した。酸化反応に要した時間は25分であった。得られた酸化パルプを1%(w/v)の水分散液に調製し、当該水分散液を超高圧ホモジナイザー(20℃、140Mpa)で10回処理して、透明なセルロースナノファイバー水分散液を得た。
工程Aのアルカリ処理を行わなかった以外、実施例1と同様にして工程Bを実施した。酸化反応が120分を超えても反応が終了しなかったため、反応を止めた。
工程Aのアルカリ処理を行わなかった以外、実施例1と同様にして工程Bを実施した。酸化反応時間は130分、収率は93%であった。得られた酸化パルプを1%(w/v)の水分散液に調製し、当該水分散液を超高圧ホモジナイザー(20℃、140Mpa)で10回処理して、透明なセルロースナノファイバー水分散液が得られた。なお、得られたセルロースナノファイバーのカルボキシル基量は1.55mmol/gであった。
Claims (3)
- セルロース結晶II型を有しているセルロース原料を、(a1)N−オキシル化合物0.001〜0.1mmol/g、および(a2)臭化物、ヨウ化物もしくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で、(a3)酸化剤2.5〜5.5mmol/gを用いて酸化することを特徴とする酸化セルロースの製造方法。
- 前記セルロース原料のセルロース結晶II型含有率が75%以上であることを特徴とする請求項1に記載の酸化セルロースの製造方法。
- 請求項1〜2の酸化セルロースを解繊・分散処理することを特徴とするセルロースナノファイバーの製造方法。
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