JP2014035043A - 断熱材 - Google Patents
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Abstract
【課題】凸部を複数有する繊維を含有したエアロゲル粒子を作製し、強度が高く断熱性に優れた断熱材を提供する。
【解決手段】エアロゲル粒子Aと、前記エアロゲル粒子Aに結合する凸部2を有する繊維1とを含有して形成される。凸部の長さはエアロゲル粒子の平均粒子径よりも短く、太さはエアロゲル粒子の平均空孔径よりも細くする。また、凸部間の間隔は前記エアロゲル粒子の平均空孔径よりも広くし、エアロゲル粒子の平均粒子径よりも狭くする。
【選択図】図1
【解決手段】エアロゲル粒子Aと、前記エアロゲル粒子Aに結合する凸部2を有する繊維1とを含有して形成される。凸部の長さはエアロゲル粒子の平均粒子径よりも短く、太さはエアロゲル粒子の平均空孔径よりも細くする。また、凸部間の間隔は前記エアロゲル粒子の平均空孔径よりも広くし、エアロゲル粒子の平均粒子径よりも狭くする。
【選択図】図1
Description
本発明は、エアロゲル粒子を用いた断熱材に関するものである。
従来、断熱材として、ウレタンフォームやフェノールフォームなどのフォーム材(発泡性の断熱材)が知られている。フォーム材は、発泡により生じた気泡によって断熱性を発揮するものである。このようなウレタンフォームやフェノールフォームは、一般的に、熱伝導率が空気の熱伝導率よりも高い。したがって、断熱性をより高めるためには、熱伝導率を空気よりも低くすることが有利である。空気よりも低い熱伝導率を達成させる方法として、ウレタンフォームやフェノールフォームなどの発泡させた材料の空隙内にフロンガスなどの熱伝導率の低いガスを充填させる方法などが知られている。しかしながら、空隙内にガスを充填する方法では、経時的に空隙内からガスが漏れ出ていき、熱伝導率が上昇してしまう可能性がある。
近年、ケイ酸カルシウムの多孔体やガラス繊維を10Pa程度の真空状態にしたものなど、真空を利用して断熱性を高める手法が提案されている。しかし、真空による断熱は、真空状態を保つ必要があり、経時的な劣化や製造コストにおいて問題がある。さらに真空を利用して断熱材を形成するにしても、真空を維持するために形状の制約を受け、用途が著しく限定されてしまい、充分に実用化がなされていない。
ところで、常圧でも空気の熱伝導率よりも低い断熱材の材料として、微細多孔質シリカの集合体(いわゆるエアロゲル)が知られている。この材料は、例えば、米国特許第4402927号、米国特許第4432956号、米国特許第4610863号に開示されているような方法で得ることができる。これらの方法によれば、原料としてアルコキシシラン(別にシリコンアルコキシド又はアルキルシリケートとも称する)を用い、シリカエアロゲルを作製することができる。具体的には、シリカエアロゲルは、アルコキシシランを溶媒の存在下で加水分解させて縮重合して得られるシリカ骨格からなる湿潤状態のゲル状化合物を、溶媒の臨界点以上の超臨界条件で乾燥することによって得ることができる。溶媒としては、例えば、アルコールまたは液化二酸化炭素等が用いられる。そして、エアロゲルが粒子状になったエアロゲル粒子は、熱伝導率が空気よりも低く、断熱材の原料として有用である。
しかしながら、エアロゲル粒子は、非常に軽量であると共に、強度が小さく脆いため、取扱いが難しい。また、エアロゲル粒子を成形して断熱材を作製したとしても、粒子自体が脆いものであるため、成形物の強度は低くなり、割れたり壊れたりしやすいものとなってしまう。強度を高めるために、補強材などを混合したり接着材料を増加したりすることが考えられるが、その場合、補強材や接着材料によってかえって断熱性が低下するおそれがある。そのため、断熱性が低下することを抑制しつつ、エアロゲル粒子やその成形物の強度を高めて、強度と断熱性能とを両立させることが求められている。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、強度が高く断熱性に優れた断熱材を提供することを目的とするものである。
本発明に係る断熱材は、エアロゲル粒子と、前記エアロゲル粒子に結合する凸部を有する繊維とを含有して形成されていることを特徴とするものである。
前記断熱材において、前記凸部の長さが前記エアロゲル粒子の平均粒子径よりも短いことが好ましい。
前記断熱材において、前記凸部の太さが前記エアロゲル粒子の平均空孔径よりも細いことが好ましい。
前記断熱材において、前記凸部の長さが前記エアロゲル粒子を構成するシリカ微粒子の平均粒子径よりも長いことが好ましい。
前記断熱材において、前記繊維が前記凸部を複数有し、前記凸部間の間隔が前記エアロゲル粒子の平均空孔径よりも広いことが好ましい。
前記断熱材において、前記繊維が前記凸部を複数有し、前記凸部間の間隔が前記エアロゲル粒子の平均粒子径よりも狭いことが好ましい。
前記断熱材において、さらに接着剤を含有して形成されていることが好ましい。
本発明によれば、強度が高く断熱性に優れた断熱材を得ることができるものである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
エアロゲル(aerogel)は、ゲル中に含まれる溶媒を乾燥により気体に置換した多孔性の物質(多孔質体)である。粒子状のエアロゲルをエアロゲル粒子という。エアロゲルとしては、シリカエアロゲル、カーボンエアロゲル、アルミナエアロゲルなどが知られているが、このうちシリカエアロゲルを好ましく用いることができる。シリカエアロゲルは、断熱性に優れ、製造が容易であり、コストも安く、他のエアロゲルよりも容易に得ることができる。なお、ゲル中の溶媒が蒸発などにより失われて、空隙を持つ網目構造となったものをキセロゲル(xerogel)ということもあるが、本明細書におけるエアロゲルは、キセロゲルを含むものであってよい。
図5に、エアロゲル粒子Aの一例の模式図を示す。図5(a)及び(b)に示すように、このエアロゲル粒子Aはシリカエアロゲル粒子であり、数10ナノオーダー(例えば20〜40nm)の空孔を有するシリカ(SiO2)構造体である。このようなエアロゲル粒子Aは超臨界乾燥などによって得ることができる。エアロゲル粒子Aは、エアロゲル粒子Aを構成する微粒子P(シリカ微粒子P)が三次元の網目状に連結することにより形成されている。シリカ微粒子Pの1個の大きさは例えば1〜2nm程度である。図5(c)に示すように、エアロゲル粒子Aの数10ナノオーダーの空孔には気体Gが入り込むことができる。そして、この空孔が空気の成分である窒素や酸素の移動を阻害することにより、熱伝導率を空気よりも低いレベルに低下させることができる。例えば、従来の断熱材における空気が熱伝導率WLFλ 35〜45mW/m・Kであったところ、エアロゲル粒子Aにより熱伝導率WLFλ 9〜12mW/m・Kのレベルまで熱伝導率を低下させることができる。なお、エアロゲル粒子Aは、一般的に、疎水性の性質を有する。例えば、図5(b)に示すシリカエアロゲル粒子では、アルキル基(メチル基:CH3)がケイ素(Si)に結合しており、ケイ素に結合した水酸基(OH)は少ない。したがって、表面の極性は低い。
図6は、シリカエアロゲル粒子の電子顕微鏡写真である。このシリカエアロゲル粒子は超臨界乾燥法によって得たものである。シリカエアロゲル粒子が三次元の立体網目構造をとることはこの写真からも理解される。なお、エアロゲル粒子Aは、一般的に10nm未満の大きさのシリカ微粒子Pが線状に連結して網目構造が形成されるものであるが、微粒子Pの境目が曖昧になったり、シリカ構造(−O−Si−O−)が線状に延びたりして網目構造が形成されていてもよい。
エアロゲル粒子Aとしては、特に限定されるものではなく、一般的な製造方法によって得られたものを用いることができる。代表的なものとして、超臨界乾燥法によって得られるエアロゲル粒子Aと、水ガラスを利用して得られるエアロゲル粒子Aとがある。
超臨界乾燥法によって得られるシリカエアロゲル粒子は、液相反応であるゾル−ゲル法によって重合させてシリカ粒子を作製し、溶媒を超臨界乾燥によって除去することにより得ることができる。原料としては、例えば、アルコキシシラン(シリコンアルコキシド又はアルキルシリケートともいう)を用いる。そして、このアルコキシシランを溶媒の存在下で加水分解させて縮重合して得られるシリカ骨格からなる湿潤状態のゲル状化合物を、溶媒の臨界点以上の超臨界条件で乾燥する。溶媒としては、例えば、アルコールまたは液化二酸化炭素などを用いることができる。このように超臨界条件によって乾燥されることにより、ゲルの網目構造を保持したまま溶媒が除去されて、エアロゲルを得ることができる。エアロゲルが粒子状となったエアロゲル粒子Aは、溶媒を含むゲルを粉砕して粒子化し、この溶媒を含んだ粒子状のゲルを超臨界乾燥することにより得ることができる。あるいは、エアロゲル粒子Aは、超臨界乾燥によって得られたエアロゲルのバルク体を粉砕することにより得ることができる。
エアロゲル粒子Aの原料となるアルコキシシランとしては、特に限定されるものではないが、2官能、3官能又は4官能のアルコキシシランを単独で又は複数種を混合して用いることができる。2官能アルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン等が挙げられる。3官能アルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。4官能アルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。また、アルコシシシランとして、ビストリメチルシリルメタン、ビストリメチルシリルエタン、ビストリメチルシリルヘキサン、ビニルトリメトキシシランなどを用いることもできる。また、アルコキシシランの部分加水分解物を原料に用いてもよい。
アルコキシシランの加水分解と縮重合は、水の存在下で行うことが好ましく、さらに水との相溶性を有し、且つアルコキシシランを溶解する有機溶媒と、水との混合液を用いて行うことが好ましい。このような混合液を溶媒として用いた場合、加水分解工程と縮重合工程を連続して行うことができ、効率よくゲルを得ることができる。その際、生成するポリマーは、上記溶媒を分散媒とするゲル化物(湿潤ゲル)として得られる。水との相溶性を有し、且つアルコキシシランを溶解する溶媒としては、特に限定はされないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコールや、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
また、アルコキシシランの加水分解と縮重合は、アルコキシシランのアルコキシ基を脱離させて縮合反応を起こさせることが可能な触媒の存在下で行うことが好ましい。このような触媒としては、酸性触媒、塩基性触媒等が挙げられる。具体的には、酸性触媒としては、例えば、塩酸、クエン酸、硝酸、硫酸、フッ化アンモニウム等が挙げられる。また、塩基性触媒としては、例えば、アンモニア、ピペリジン等が挙げられる。
また、アルコキシシランの反応液中には、適宜の成分を添加してもよい。例えば、界面活性剤、官能基導入剤、などが挙げられる。このような添加成分により、エアロゲル粒子Aに適宜の機能性を付与することができる。
そして、得られた湿潤ゲルを超臨界乾燥することにより、エアロゲルを得ることができる。その際、湿潤ゲルを切断や粉砕などによってあらかじめ粒子化して、溶媒を含んだ粒子状のゲルを作製し、この粒子状のゲルを超臨界乾燥することが好ましい。それにより、エアロゲル構造を破壊することなく粒子化及び乾燥を行うことができ、エアロゲル粒子Aを容易に得ることができる。この場合、粒子状のゲルの大きさを揃えておくことにより、エアロゲル粒子Aの大きさを整えることができる。また、エアロゲルをバルクで得た後に、エアロゲルのバルク体を粉砕機により粉砕することにより、エアロゲル粒子Aを得るようにしてもよい。なお、得られたエアロゲル粒子Aはふるいや分級などによって、粒子の大きさをさらに揃えることができる。エアロゲル粒子Aの大きさが整うと、取扱い性を高めることができるとともに、安定な成形物を得やすくすることができる。
水ガラスを利用して得られるエアロゲル粒子Aは、例えば、シリカゾルの作製、シリカゾルのゲル化、熟成、ゲルの粉砕、溶媒置換、疎水化処理、乾燥という工程を順番に行う常圧乾燥法により製造することができる。水ガラスは、一般的にケイ酸ナトリウムなどのケイ酸金属塩の高濃度の水溶液である。例えば、ケイ酸金属塩を水に溶かして加熱することで得られる。
シリカゾル作製の原料としては、ケイ酸アルコキシド、ケイ酸アルカリ金属塩等を使用することができる。ケイ酸アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。また、ケイ酸アルコキシドとして、上記超臨界乾燥法で説明した各種のアルコキシシランを用いてもよい。また、ケイ酸アルカリ金属塩としては、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム等が挙げられる。このうち、安価な点でケイ酸アルカリ金属塩を好適に用いることができ、更には入手が容易であるケイ酸ナトリウムをより好適に用いることができる。
ケイ酸アルカリ金属塩を用いる場合には、塩酸、硫酸等の無機酸により中和する方法か、あるいは対イオンがH+とされている陽イオン交換樹脂を用いる方法により、シリカゾルを作製することができる。これらの方法のうちでも、陽イオン交換樹脂を用いることが好ましい。
酸型の陽イオン交換樹脂を用いてシリカゾルを作製するには、陽イオン交換樹脂を充填した充填層に適切な濃度のケイ酸アルカリ金属塩の溶液を通過させることにより行うことができる。あるいは、シリカゾルの作製は、ケイ酸アルカリ金属塩の溶液に、陽イオン交換樹脂を添加、混合し、アルカリ金属を除去した後に濾別するなどして陽イオン交換樹脂を分離することにより行うことができる。その際、陽イオン交換樹脂の量は、溶液に含まれるアルカリ金属を交換可能な量以上であることが好ましい。陽イオン交換樹脂により溶液の脱アルカリ(脱金属)が行われる。
酸型の陽イオン交換樹脂としては、例えば、スチレン系、アクリル系、メタクリル系等で、イオン交換性基としてスルフォン酸基やカルボキシル基が置換されたものを用いることができる。このうち、スルフォン酸基を有する、いわゆる強酸型の陽イオン交換樹脂を好適に用いることができる。なお、陽イオン交換樹脂は、アルカリ金属の交換に使用した後に、硫酸や塩酸を通過させることで、再生処理を行うことができる。
シリカゾルの作製後、シリカゾルをゲル化させ、次いでその熟成を行う。ゲル化及び熟成においては、pHを調整することが好ましい。すなわち、通常、陽イオン交換樹脂によりイオン交換されたシリカゾルのpHは低く、例えば3以下である。このようなシリカゾルを中和して弱酸性から中性のpH領域とすることによりシリカゾルがゲル化する。例えば、シリカゾルのpHを5.0〜5.8、好ましくは5.3〜5.7とすることによってゲル化させることができる。pHの調整は塩基及び酸の添加により行うことができる。塩基としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸アルカリ金属塩などを用いることができる。酸としては、塩酸、クエン酸、硝酸、硫酸などを用いることができる。pH調整後、ゲルを静置して熟成を行う。熟成は、例えば、40〜80℃の温度条件で、4〜24時間程度であってもよい。
熟成工程に引き続き、ゲルを粉砕することが好ましい。このゲルの粉砕により、目的とするエアロゲル粒子Aを容易に得ることが可能になる。ゲルの粉砕は、例えばヘンシャル型のミキサーにゲルを入れるか、あるいはミキサー内でゲル化させ、ミキサーを適度な回転数と時間で運転することにより行うことができる。
粉砕工程に引き続き、好ましくは、溶媒置換が行われる。この溶媒置換はゲルを乾燥するに際し、乾燥収縮を起こさないよう、ゲルの作製に用いた水などの溶媒を、表面張力の小さな溶媒に置き換えるものである。直接水を表面張力の小さな溶媒に置き換えることは困難なため、通常はこの溶媒置換は、複数の段階、好ましくは2段階で行なわれる。1段目に用いる溶媒の選定基準としては、水、及び2段目の溶媒置換に用いられる溶媒に対して馴染みが良いことが挙げられる。1段目は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等を用いることができ、好適には、エタノールを用いることができる。また2段目に用いる溶媒の選定基準としては、引き続き行われる疎水化処理に用いられる処理剤と反応しないこと、乾燥収縮を起こさないために表面張力が小さいことが挙げられる。2段目に用いる溶媒としては、ヘキサン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン等を用いることができ、好適にはヘキサンを用いることができる。もちろん、必要に応じて、上記1段目の溶媒置換と2段目の溶媒置換との間に、更なる溶媒置換を行っても構わない。
溶媒置換の後に、疎水化処理を行うことが好ましい。疎水化処理に用いる処理剤としては、アルキルアルコキシシランやハロゲン化アルキルシランなどを用いることができる。例えば、ジアルキルジクロロシラン、モノアルキルトリクロロシランを好ましく用いることができ、原料コストや反応性を考慮するとジメチルジクロロシランを特に好適に用いることができる。なお、疎水化処理は、溶媒置換の前に行ってもよい。
そして、疎水化処理の後に、濾別して溶媒とゲルとを分離する。次いで、未反応の処理剤を取り除くためにゲルを溶媒で洗浄する。その後、ゲルを乾燥する。乾燥は常圧であってよい。また、加温したり温風を吹き込んだりしてもよい。乾燥は、不活性ガス(例えば窒素)の雰囲気下で行うことが好ましい。これにより、ゲル中の溶媒がゲルからとり除かれ、エアロゲル粒子Aを得ることできる。
臨界乾燥法によって得たエアロゲル粒子Aと、水ガラスを利用して得たエアロゲル粒子Aとは、基本的に同じ構造を有するものである。すなわち、シリカ微粒子Pが連結し、三次元の網目状となった粒子構造となる。
エアロゲル粒子Aの形状は、特に限定されるものではなく、種々の形状であってよい。上記で説明した方法でエアロゲル粒子Aを得た場合、粒子化するために粉砕等を行っているため、通常、エアロゲル粒子Aの形状は不定形の形状となる。いわば表面がごつごつした岩状の粒子となる。もちろん、球状やラグビーボール状などの粒子でもよい。また、パネル状、フレーク状、繊維状であってもよい。また、エアロゲル粒子Aは、成形に用いる原料としては、粒子の大きさが種々のものが混合したものであってよい。成形物においては、エアロゲル粒子Aが接着して一体化されるため、粒子の大きさが揃っていなくてもよい。エアロゲル粒子Aの大きさは、例えば、粒子の最長の長さが50nm以上10mm以下の範囲であってよい。ただし、取扱い性や成形容易性の観点からは、大きすぎる粒子や小さすぎる粒子が混在していない方が好ましい。そのため、エアロゲル粒子Aは、適度の大きさにそろえることができる。例えば、エアロゲル粒子Aの最長の長さが1μm以上1mm未満の範囲のミクロンオーダーの粒子であってもよい。あるいは、エアロゲル粒子Aの最長の長さが100μm以上5mm未満の範囲の1ミリ前後のサイズの粒子であってもよい。あるいは、エアロゲル粒子Aの最長の長さが1mm以上10mm未満の範囲のミリオーダーの粒子であってもよい。
そして、本発明に係る断熱材は、上記のエアロゲル粒子Aと、繊維1とを含有して形成されている。繊維1としては、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維等の無機繊維や、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の有機繊維を用いることができる。繊維1の平均繊維長は1〜100mm、平均繊維径は0.1〜100μmであることが好ましい。ここでいう平均繊維長とは、使用する繊維材料から無作為に選んだ25本の繊維1の長さをノギス等で測定し、その平均値として得られたものを意味する。また平均繊維径とは、使用する繊維材料の断面を顕微鏡で観察し、無作為に選んだ25本の繊維1の断面の直径を観察画面上で測定し、その平均値として得られたものを意味する。図1は断熱材の内部を拡大して示す模式図であるが、繊維1は、エアロゲル粒子Aに結合する凸部2を複数有している。このように、繊維1の凸部2が、エアロゲル粒子Aの内部に突き刺さったり、エアロゲル粒子Aの外部に絡み付いたりして結合することによって、エアロゲル粒子Aと繊維1との結合力が増加し、断熱材の強度を高めることができるものである。またエアロゲル粒子Aと繊維1との結合力が増加するので、凸部2を有しない繊維1を用いる場合に比べて、断熱材における繊維1の含有量を減少させることができる。繊維1は通常、エアロゲル粒子Aに比べて熱伝導率が高いので、上記のように繊維1の含有量を減少させることができる断熱材は、断熱性にも優れているものである。
ここで、繊維1の凸部2は、次のような除去加工、塑性加工、付加加工等により形成することができる。
除去加工としては、例えば、レーザー処理、プラズマ処理、エッチング処理、ブラスト処理等を挙げることができる。レーザー処理では、図2(a)に示すようにレーザーLを繊維1に照射して繊維1の一部を除去することによって、繊維1に凸部2を形成することができる。レーザーLの種類や照射条件等は繊維1に応じて適宜に選択すればよく、このような条件を調整することによって、凸部2の長さや太さを調整することができる。例えば、レーザーLとしては、CO2レーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー等を挙げることができる。なお、図2(a)において13は集光レンズである。またプラズマ処理では、図2(b)に示すようにプラズマ粒子6を繊維1に照射して繊維1の一部を除去することによって、繊維1に凸部2を形成することができる。プラズマの種類や照射条件等は繊維に応じて適宜に選択すればよく、このような条件を調整することによって、凸部2の長さや太さを調整することができる。例えば、プラズマとしては、マイクロ波プラズマ、高周波プラズマ、大気圧プラズマ等を挙げることができる。なお、図2(b)において14はプラズマ粒子発生源である。またエッチング処理では、図2(c)に示すように繊維1の凸部2を形成する箇所をマスク7で被覆し、マスク7で被覆されていない箇所をエッチング液8で溶解除去することによって、繊維1に凸部2を形成することができる。マスク7やエッチング液8の種類等は繊維1に応じて適宜に選択すればよく、このような条件を調整することによって、凸部2の長さや太さを調整することができる。またブラスト処理では、図2(d)に示すようにブラスト粒子9を繊維1に照射して繊維1の一部を除去することによって、繊維1に凸部2を形成することができる。ブラストの種類や照射条件等は繊維に応じて適宜に選択すればよく、このような条件を調整することによって、凸部2の長さや太さを調整することができる。なお、図2(d)において15はブラスト粒子発生源である。
塑性加工としては、例えば、転写等を挙げることができる。転写では、図3に示すように原版10の凹凸が形成された面を繊維1に押し当てると、この原版10の凹凸形成面の凹部11によって、繊維1に凸部2を形成することができる。原版10を押し当てる圧力等の条件は繊維1に応じて適宜に選択すればよく、このような条件を調整することによって、凸部2の長さや太さを調整することができる。
付加加工としては、例えば、微粒子付加等を挙げることができる。微粒子付加では、図4に示すようにナノ粒子等の微粒子12を繊維1に照射して付加することによって、繊維1に凸部2を形成することができる。この場合の凸部2は微粒子12で形成されている。微粒子12の種類や照射条件等は繊維1に応じて適宜に選択すればよく、このような条件を調整することによって、凸部2の長さや太さを調整することができる。なお、図4において16は微粒子発生源である。
上記のように、色々な方法で繊維1の凸部2を形成することができるが、繊維1の凸部2の長さは、エアロゲル粒子Aの平均粒子径(例えば0.1〜5mm)よりも短いことが好ましい。ここでいう平均粒子径とは、エアロゲル粒子Aのメディアン径のことであり、レーザー回折式の粒度分布測定装置によって得ることができる。各繊維1の全部の凸部2の長さがエアロゲル粒子Aの平均粒子径よりも短いことが好ましいが、各繊維1の一部の凸部2の長さがエアロゲル粒子Aの平均粒子径よりも短ければよい。このように、各繊維1の全部又は一部の凸部2の長さがエアロゲル粒子Aの平均粒子径よりも短いと、ある繊維1の凸部2と別の繊維1の凸部2とがエアロゲル粒子Aにおいて接触しにくくなるので、熱伝導する経路が発生しにくくなることによって、断熱材の断熱性の低下を抑制することができるものである。
さらに繊維1の凸部2の長さは、エアロゲル粒子Aを構成するシリカ微粒子Pの平均粒子径(例えば0.1〜10nm)よりも長いことが好ましい。ここでいう平均粒子径とは、エアロゲル粒子Aの表面を電子顕微鏡を用いて観察し、無作為に選んだ25個のシリカ微粒子Pの直径を測定し、その平均値として得られたものを意味する。このようなシリカ微粒子Pの平均粒子径は、画像解析法によって測定することができる。各繊維1の全部の凸部2の長さがシリカ微粒子Pの平均粒子径よりも長いことが好ましいが、各繊維1の一部の凸部2の長さがシリカ微粒子Pの平均粒子径よりも長ければよい。このように、各繊維1の全部又は一部の凸部2の長さがシリカ微粒子Pの平均粒子径よりも長いと、このような凸部2はシリカ微粒子Pに絡みやすくなるので、断熱材の強度をさらに高めることができるものである。
また繊維1の凸部2の太さは、エアロゲル粒子Aの空孔3の平均空孔径(例えば10〜100nm)よりも細いことが好ましい。ここでいう平均空孔径とは、エアロゲル粒子Aの細孔分布曲線において、最も細孔容積が大きくなるときの細孔径のことを意味する。この細孔分布曲線は窒素吸着式測定法によって得ることができる。各繊維1の全部の凸部2の太さがエアロゲル粒子Aの平均空孔径よりも細いことが好ましいが、各繊維1の一部の凸部2の太さがエアロゲル粒子Aの平均空孔径よりも細ければよい。このように、各繊維1の全部又は一部の凸部2の太さがエアロゲル粒子Aの平均空孔径よりも細いと、このような凸部2はエアロゲル粒子Aの空孔3に挿入されやすくなるので、断熱材の強度をさらに高めることができるものである。
また繊維1が凸部2を複数有する場合、凸部2間の間隔は、エアロゲル粒子Aの平均空孔径よりも広いことが好ましい。もし凸部2間の間隔が、エアロゲル粒子Aの平均空孔径よりも狭いと、隣り合う一方の凸部2がエアロゲル粒子Aの空孔3に挿入されていても、他方の凸部2が、空孔3を形成するシリカ微粒子Pに突き当たってこのシリカ微粒子Pを押し上げてしまい、一方の凸部2がエアロゲル粒子Aの空孔3から抜けるおそれがある。しかし、凸部2間の間隔が、エアロゲル粒子Aの平均空孔径よりも広いと、隣り合う一方の凸部2がエアロゲル粒子Aの空孔3に挿入されているとき、他方の凸部2はシリカ微粒子Pを押し上げにくくなり、一方の凸部2がエアロゲル粒子Aの空孔3から抜けることを抑制することができるものである。
また繊維1が凸部2を複数有する場合、凸部2間の間隔は、エアロゲル粒子Aの平均粒子径よりも狭いことが好ましい。この場合、凸部2がエアロゲル粒子Aの空孔3に挿入されていなくても、隣り合う凸部2でエアロゲル粒子Aを挟み込むことができるものである。隣り合う一方の凸部2がエアロゲル粒子Aの空孔3に挿入されている場合には、他方の凸部2がエアロゲル粒子Aの外周面にまとわりついて、これらの凸部2でエアロゲル粒子Aをより強固に挟み込むことができるものである。
そして、本発明に係る断熱材は、次のようにして製造することができる。まず繊維1を水に加えて分散させ、これにさらにエアロゲル粒子Aを加え混合して分散させることによって水分散液を調製する。接着剤4(後述)を用いる場合には、この水分散液に接着剤4も加え混合して分散させておく。次にこの水分散液を加熱して水分をある程度蒸発させることによって中間生成物を得る。その後、この中間生成物を所定の金型にセットし、プレス成型により、残留する水分を蒸発させて成形することによって、断熱材を得ることができる。この断熱材は、ボードとして形成してもよいし、ボード以外の形状に形成してもよい。
上記のようにして得られた断熱材において、繊維1の含有量は、断熱材の全質量の0.1〜40質量%であることが好ましい。
さらに断熱材は、接着剤4を含有して形成されていることが好ましい。接着剤4としては、熱伝導率の低いものを用いることが好ましく、例えば、有機結合剤又は無機結合剤等を用いることができる。このような接着剤4は、図1に示すようにエアロゲル粒子Aと繊維1との間に介在してこれらの結合力をさらに増加させるので、断熱材の強度をさらに高めることができるものである。ただし、接着剤4の含有量は、少なすぎると上記のような効果が得られにくく、逆に多すぎると断熱材の断熱性が低下しやすくなるので、断熱材の全質量の5〜40質量%であることが好ましい。
A エアロゲル粒子
P シリカ微粒子
1 繊維
2 凸部
3 空孔
4 接着剤
P シリカ微粒子
1 繊維
2 凸部
3 空孔
4 接着剤
Claims (7)
- エアロゲル粒子と、前記エアロゲル粒子に結合する凸部を有する繊維とを含有して形成されていることを特徴とする断熱材。
- 前記凸部の長さが前記エアロゲル粒子の平均粒子径よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の断熱材。
- 前記凸部の太さが前記エアロゲル粒子の平均空孔径よりも細いことを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱材。
- 前記凸部の長さが前記エアロゲル粒子を構成するシリカ微粒子の平均粒子径よりも長いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の断熱材。
- 前記繊維が前記凸部を複数有し、前記凸部間の間隔が前記エアロゲル粒子の平均空孔径よりも広いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の断熱材。
- 前記繊維が前記凸部を複数有し、前記凸部間の間隔が前記エアロゲル粒子の平均粒子径よりも狭いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の断熱材。
- さらに接着剤を含有して形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の断熱材。
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