[第1の実施形態]
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、本発明の建物を、鉄骨ラーメン構造を有する2階建てのユニット式建物として具体化しており、この建物においては、太陽熱を自然エネルギとして利用する太陽熱集熱システムが構築されている。まず、ユニット式建物の構成について、図3、図4を参照しつつ説明する。図3は建物10の概要を示す斜視図、図4は建物ユニット20の構成を示す斜視図である。
図3に示すように、住宅等の建物10は、基礎11の上に設けられた建物本体12と、建物本体12の上に設けられた屋根13とを備えている。建物10は、上階部としての一階部分14と下階部としての二階部分15とを有しており、一階部分14と二階部分15とは上下に重ねられている。建物本体12は、複数の建物ユニット20が互いに連結されることにより構成されている。一階部分14及び二階部分15には、建物内空間として、リビングや寝室等の居室空間が複数設けられているとともに、廊下や玄関等の非居室空間が設けられている。
屋根13は、切妻式の屋根とされており、棟を挟んで配置された一対の傾斜屋根部を有し、各傾斜屋根部の上面(屋根面)は軒先に向けて斜め下方に傾斜している。
図4に示すように、建物ユニット20は、四隅に配置された柱21と、柱21の上端部(上仕口)に連結された天井大梁22と、柱21の下端部(下仕口)に連結された床大梁23とを有しており、これら柱21、天井大梁22、床大梁23により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、溝部開放側を互いに向き合わせるようにユニット内側に向けて配置されている。
建物ユニット20において長辺部(桁面)に沿って延び且つ相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されている。同じく長辺部に沿って延び且つ相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されている。天井小梁25及び床小梁26は、それぞれ同一の間隔で且つ短辺側(妻側)の天井大梁22及び床大梁23と平行に延びている。天井小梁25及び床小梁26はそれぞれリップ溝形鋼よりなる。天井小梁25によって天井面材28が支持され、床小梁26によって床面材29が支持されている。
なお、各建物ユニット20のそれぞれにおいて鉄骨で形成された骨格(柱21、大梁22,23、小梁25,26)がユニット躯体に相当し、各建物ユニット20のユニット躯体が組み合わされることで建物躯体が形成されている。また、柱21、大梁22,23、小梁25,26が長尺状部材に相当する。さらに、各建物ユニット20は、金属製の連結部材により互いに連結されている。
次に、太陽熱集熱システムの構成について、図1、図2を参照しつつ説明する。図1は建物10及び太陽熱集熱システムの構成を示す概略図、図2は建物10における建物ユニット20周辺の平面図である。
なお、図1においては、建物ユニット20の存在が分かりやすくなるように、建物ユニット20の周辺に隙間を図示しているが、実際は、基礎11の上に一階部分14の建物ユニット20が載置され、一階部分14の建物ユニット20の上に二階部分15の建物ユニット20が載置されている。また、図2においては、二階部分15の建物ユニット20の床大梁23を上から見た図になっており、各柱21については横断面を図示している。
まず、建物10の構成について説明する。建物10は、外断熱式の建物とされており、図1に示すように、各建物ユニット20よりも屋外側に配置された外断熱部としての屋外側断熱部31を有している。屋外側断熱部31は、グラスウール等の繊維系断熱材やポリウレタンフォーム等の発泡系断熱材などにより形成されており、建物外周面に沿って延びるように設けられている。ここで、鉄骨により形成された建物躯体は十分に大きな熱容量を有しており、屋外側断熱部31により屋外側から覆われた建物躯体においては、熱が付与された場合の蓄熱量が十分に大きくなっている。
屋外側断熱部31は、外壁面に沿って延びている壁断熱部31aと、屋根面に沿って延びている屋根断熱部31bと、基礎11の側面に沿って延びている基礎断熱部31cとを有している。各断熱部31a,31b,31cは、互いに連続した状態で設けられており、全体として各建物ユニット20を屋外側から覆っている。
建物10の外壁は壁断熱部31aを含んで構成されている。外壁においては、建物ユニット20と壁断熱部31aとの間に、建物ユニット20に固定された外壁下地材が設けられており、壁断熱部31aは外壁下地材に固定されている。壁断熱部31aの屋外側には、外壁面を形成する窯業系サイディングボード等の外壁面材が設けられており、その外壁面材は壁断熱部31aを介して外壁下地材に固定されている。この場合、壁断熱部31aは、外張り断熱における断熱部に相当する。
屋根13は屋根断熱部31bを含んで構成されている。屋根13においては、建物ユニット20と屋根断熱部31bとの間に、建物ユニット20に対して固定された屋根下地材が設けられており、屋根断熱部31bは屋根下地材に固定されている。屋根断熱部31bの屋外側には、屋根面を形成する瓦材等の屋根面材が設けられており、その屋根面材は屋根断熱部31bを介して屋根下地材に固定されている。
なお、屋根断熱部31bは、二階部分15の建物ユニット20の上面に沿って延びるように設けられていてもよく、建物ユニット20の上面に沿って延びるのではなく、傾斜屋根の屋根面に沿って延びるように設けられていてもよい。
基礎11は、地表面から上方に向けて立ち上がっている立ち上がり部を有しており、基礎断熱部31cは、立ち上がり部の屋外側面に対して取り付けられている。基礎断熱部31cは、基礎11の周縁部に沿って延びており、基礎11の全体を側方から囲んだ状態になっている。
建物10には、自然エネルギとしての太陽熱を対象として集熱を行う太陽熱集熱部としての集熱部35が、屋根13の上に設けられている。集熱部35は、太陽光が照射されることで太陽熱を集める集熱板36を有している。集熱板36は、銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い材料により形成されており、傾斜屋根部の屋根面に沿って延びるように傾斜して設けられている。集熱板36は屋根から上方に離間しており、その離間部分が集熱空間37とされている。集熱空間37は、集熱板36と同様に、傾斜屋根部の屋根面に沿って延びており、集熱空間37においては、棟側の端部が上端になり、軒先側の端部が下端になっている。集熱部35においては、集熱板36が太陽熱により加熱されると、集熱板36の熱により集熱空間37内の空気が加熱されることになる。
集熱部35は、集熱空間37を挟んで集熱板36に対向する対向板38と、それら集熱板36と対向板38とを連結する連結板39とを有している。連結板39は、集熱板36及び対向板38の周縁部に沿って延びており、それら集熱板36及び対向板38の周縁部同士を連結している。この場合、集熱部35は、屋根面に沿って延びる扁平形状の箱体になっており、集熱空間37は箱体の閉鎖された内部空間になっている。また、対向板38は、合成樹脂材料等の熱伝導率が低い材料により形成されており、集熱板36を介して集熱空間37に加えられた熱が屋根面材や屋根断熱部31bに伝わりにくくなっている。
本実施形態では、集熱部35にて集められた太陽熱が、水等の液体を熱媒体として建物躯体に付与されるようになっている。太陽熱集熱システムは、集熱部35に加えて、熱媒体が流れる媒体経路41と、媒体経路41において熱媒体を強制的に通す電動式ポンプ等の媒体駆動部42と、媒体経路41を流れる熱媒体と建物躯体との間で熱交換を行わせる躯体熱交換部43とを有している。なお、媒体経路41が輸送経路に相当する。
媒体経路41は、屋外側断熱部31の屋外側である集熱空間37から、屋外側断熱部31の屋内側である建物内空間に、熱媒体を輸送する輸送経路になっている。また、媒体経路41は、集熱空間37から媒体経路41に流れ出した熱媒体をその媒体経路41から再び集熱空間37に流れ込ませることが可能な循環経路にもなっている。
媒体経路41は、水配管やその水配管の接続部材などの媒体経路形成体45(図2参照)により形成されており、熱媒体は媒体経路形成体45の内部空間を流れる。媒体経路形成体45は、合成樹脂材料などの断熱性(保温性)が比較的高い材料により形成されており、躯体熱交換部43は、銅やアルミニウム等の熱伝導率(外部への放熱性)の高い材料により形成されている。躯体熱交換部43の内部には、熱媒体が流れる通路が内部空間として形成されており、躯体熱交換部43と媒体経路形成体45とは、それぞれの内部空間を熱媒体が流れるように連通させた状態で接続されている。
また、躯体熱交換部43は、建物躯体に当接した状態で設けられており、熱媒体の温度が建物躯体よりも高い場合、熱媒体が躯体熱交換部43の通路(内部空間)を流れる際にその熱媒体の熱が躯体熱交換部43に付与され、躯体熱交換部43と建物躯体との間で熱交換が行われることで躯体熱交換部43から建物躯体に伝わる。ちなみに、躯体熱交換部43は、その外周面の少なくとも一部が建物躯体の表面に当接した状態で、その建物躯体に対してビス等により固定されており、躯体熱交換部43及び建物躯体の互いの当接面を通じて熱の授受(熱交換)が行われる。
なお、媒体経路形成体45は、銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い材料により形成されていてもよい。この場合、媒体経路形成体45は、躯体熱交換部43の内部空間に敷設されていれば、媒体経路形成体45の外周面を覆うように躯体熱交換部43を取り付けるだけで済み、媒体経路形成体45と躯体熱交換部43との内部空間同士を連通させるという必要がない。また、媒体経路形成体45における躯体熱交換部43が取り付けられていない部分については、媒体経路形成体45の外周面を覆うように保温材又は断熱材が取り付けられていることが好ましい。これにより、熱媒体が媒体経路形成体45の内部を流れる際の熱損失が低減される。
ちなみに、媒体経路形成体45、媒体駆動部42及び躯体熱交換部43が、熱媒体を輸送する熱媒体輸送手段を構成している。また、媒体経路形成体45、媒体駆動部42、躯体熱交換部43及び熱媒体が、集熱部35の熱を建物躯体に付与する熱付与手段を構成している。
太陽熱集熱システムは躯体熱交換部43を複数有しており、各躯体熱交換部43は、建物躯体に対して個別に取り付けられている。例えば、図2において、躯体熱交換部43aは、1つの床小梁26に当接した状態でその床小梁26に対して取り付けられている。この場合、躯体熱交換部43aによる熱交換の対象は1つの床小梁26ということになる。
躯体熱交換部43b,43cは、隣り合う建物ユニット20の柱21同士が集合した柱集合部の各柱21に対して取り付けられている。この場合、躯体熱交換部43b,43cによる熱交換の対象は複数の建物ユニット20の各柱21ということになる。
ここで、躯体熱交換部43bの設置対象になって柱集合部は、左右に隣り合う2つの建物ユニット20の2つの柱21が集合したものである。この柱集合部においては、躯体熱交換部43bが2つの柱21の間の隙間に側方から挿し入れられており、その隙間において躯体熱交換部43bの外周面が2つの柱21の外周面のそれぞれに当接している。このため、躯体熱交換部43bにより2つの柱21との熱交換がまとめて行われることになる。
一方、躯体熱交換部43cの設置対象になっている柱集合部は、水平方向に隣り合う4つの建物ユニット20の4つの柱21が集合したものである。この柱集合部においては、躯体熱交換部43cが4つの柱21の間の隙間に側方から挿し入れられており、その隙間において躯体熱交換部43cの外周面が4つの柱21の外周面のそれぞれに当接している。このため、躯体熱交換部43cにより4つの柱21との熱交換がまとめて行われることになる。
なお、4つの柱21が集合した柱集合部においては、柱21同士の隙間の形状が十字状になるが、躯体熱交換部43cは、4つの柱21の外周面のそれぞれに当接していれば、一文字状、十字状、T字状のいずれの形状になっていてもよい。
また、躯体熱交換部43dは、隣り合う建物ユニット20の床大梁23同士が集合した梁集合に対して取り付けられている。この梁集合部は、左右に隣り合う2つの建物ユニット20の2つの床大梁23が集合したものである。この梁集合部においては、躯体熱交換部43dが2つの床大梁23の間に上下方向から挿し入れられており、その隙間において躯体熱交換部43dの外周面が2つの床大梁23の外周面のそれぞれに当接している。このため、躯体熱交換部43dにより2つの床大梁23との熱交換がまとめて行われることになる。
ちなみに、躯体熱交換部43dは、躯体熱交換部43cと同様に、4つの大梁22,23が集合した梁集合部に対して設置されていてもよい。この梁集合部は、上下左右に隣り合う4つの建物ユニット20の天井大梁22及び床大梁23が2つずつ合計4つ集合したものでる。この梁集合部においては、躯体熱交換部43dが4つの大梁22,23の間の隙間に側方又は上下方向から挿し入れられており、その隙間において躯体熱交換部43dの外周面が4つの大梁22,23の外周面のそれぞれに当接している。このため、躯体熱交換部43dにより4つの大梁22,23との熱交換がまとめて行われることになる。
なお、4つの大梁22,23が集合した梁集合部においては、4つの柱21が集合した柱集合部と同様に、大梁22,23同士の隙間の形状が十字状になるが、躯体熱交換部43dは、4つの大梁22,23の外周面のそれぞれに当接していれば、一文字状、十字状、T字状のいずれの形状になっていてもよい。
また、上述したように、隣り合う建物ユニット20は、金属製の連結部材により互いに連結されているため、その連結部材を介して相互に熱が伝わるようになっている。したがって、隣り合う建物ユニット20について、柱21同士や大梁22,23同士が躯体熱交換部43により接続されていなくても、躯体熱交換部43を介して一方の建物ユニット20に熱が付与されれば、その熱が徐々に他方の建物ユニット20に伝わっていく。
図1の説明に戻り、媒体経路41は、互いに異なる複数の媒体経路41a〜41dを有している。媒体経路41aは、集熱空間37から熱媒体が流れ込む上流側の経路であり、媒体経路41dは、集熱空間37に熱媒体を戻す下流側の経路である。また、媒体経路41b,41cはいずれも媒体経路41a,41dを接続する経路であり、媒体経路41aとの接続部分(上流端部)にて互いに分岐し、媒体経路41dとの接続部分(下流端部)にて互いに合流している。
媒体経路形成体45における媒体経路41a,41dを形成している各部分は、屋外側断熱部31と集熱部35の対向板38とを貫通した状態で、それぞれの屋外側の端部が集熱部35に固定されている。これにより、媒体経路形成体45の内部空間(媒体経路41)が、熱媒体を流すことが可能な状態で集熱空間37に接続されている。
集熱部35においては、集熱空間37の上端(棟側)寄りの部分に、媒体経路41における上流側の媒体経路41aが接続され、集熱空間37の下端(軒先側)寄りの部分に、媒体経路41における下流側の媒体経路41dが接続されている。ここで、集熱空間37においては、集熱板36を介して太陽熱により熱媒体が加熱されると、熱媒体が上昇することにより、温度の高い熱媒体は集熱空間37の上端寄りの部分に集まりやすくなる。したがって、集熱空間37内の熱媒体のうち温度の高い熱媒体が媒体経路41に供給されることになる。
媒体経路41においては、媒体経路41a〜41dのそれぞれに対して設けられた躯体熱交換部43の取り付け位置が個別に設定されている。例えば、媒体経路41aについては躯体熱交換部43が設けられていない。媒体経路41bについては、二階部分15の柱集合部に対して取り付けられた躯体熱交換部43eと、天井大梁22と床大梁23とを有する梁集合部に対して取り付けられた躯体熱交換部43fとが設けられている。ここで、一階部分14の天井大梁22と二階部分15の床大梁23とを有する梁集合部は、一階部分14の天井面材28(図示略)と二階部分15の床面材29(図示略)との間に形成された階間空間に設けられており、躯体熱交換部43fは、この梁集合部の天井大梁22及び床大梁23の両方に当接している。なお、躯体熱交換部43eは、柱集合部の各柱21に当接している。
媒体経路41cについては、二階部分15の床大梁23に対して取り付けられた躯体熱交換部43gが設けられている。躯体熱交換部43gは、躯体熱交換部43fと同様に、階間空間の梁集合部に対して取り付けられているが、天井大梁22及び床大梁23の両方に当接しているのではなく、二階部分15の床大梁23にだけ当接しており、一階部分14の天井大梁22には当接していない。この場合、躯体熱交換部43gは、梁集合部の各梁22,23の間の隙間ではなく、梁集合部の外側に配置されている。
なお、躯体熱交換部43gが梁集合部の一部の床大梁23にだけ当接した状態で設けられているのと同様に、躯体熱交換部43eは、柱集合部の全ての柱21に当接しているのではなく、一部の柱21に当接した状態で設けられていてもよい。
媒体経路41dについては、一階部分14の柱21に対して取り付けられた躯体熱交換部43hが設けられている。躯体熱交換部43hは、柱集合部を形成する柱21ではなく、単独で設置されている1つの柱21に当接している。
また、建物10には、建物ユニット20a〜20dが含まれており、建物ユニット20a,20c,20dには躯体熱交換部43e〜43hのいずれかが取り付けられているが、建物ユニット20bには躯体熱交換部43e〜43hのいずれも取り付けられていない。
媒体経路41においては、媒体経路41a,41b,41dの組み合わせにより1つの循環経路を形成することが可能になっているとともに、媒体経路41a,41c,41dの組み合わせにより別の循環経路を形成することが可能になっている。媒体経路41には、熱媒体の流れを遮断することが可能な遮断バルブ46が設けられており、遮断バルブ46の遮断状態が切り替えられることで、熱媒体の循環経路が変更される。遮断バルブ46は、媒体経路41における熱媒体の輸送及び停止を切り替える輸送切替手段に相当する。
遮断バルブ46は、電動式の開閉弁とされており、媒体経路41b,41cにそれぞれ設けられている。各遮断バルブ46が両方とも非遮断状態になっている場合、熱媒体は媒体経路41b,41cを含む両方の循環経路に流れる。また、各遮断バルブ46のうち一方が遮断状態であり他方が非遮断状態になっている場合、熱媒体は、非遮断状態になっている遮断バルブ46を含む循環経路に流れる。
媒体経路41においては、複数の循環経路においても共通で熱媒体が流れる上流側の媒体経路41aに対して媒体駆動部42が設けられている。したがって、媒体経路41b,41cのいずれを含む循環経路であっても、媒体駆動部42が駆動することで熱媒体が循環することになる。
例えば、媒体経路41a,41b,41dを有する循環経路にて熱媒体が循環される場合、熱媒体から躯体熱交換部43e,43f,43hを介して建物ユニット20a,20c,20dに熱が付与され、それら建物ユニット20a,20c,20dのユニット空間(ユニット空間により形成された居室空間)が暖められやすくなる。
また、媒体経路41a,41c,41dを有する循環経路にて熱媒体が循環される場合、熱媒体から躯体熱交換部43g,43hを介して建物ユニット20a,20dに熱が付与され、それら建物ユニット20a,20dのユニット空間が暖められやすくなる。
さらに、上記各循環経路の両方にて熱媒体が循環される場合、熱媒体から躯体熱交換部43e〜43hを介して建物ユニット20a,20c,20dに熱が付与され、それら建物ユニット20a,20c,20dのユニット空間が暖められやすくなる。
ここで、建物ユニット20bの柱21や大梁22,23といったユニット躯体には、躯体熱交換部43が取り付けられていないため、熱媒体が媒体経路41a〜41dのいずれに流れても建物ユニット20bのユニット空間には熱が付与されにくくなっている。
次に、太陽熱集熱システムの電気的な構成について説明する。
太陽熱集熱システムは、制御手段としてのホームサーバ51を有している。ホームサーバ51は、CPUや各種メモリ等からなるマイクロコンピュータを含んで構成されており、例えば居室の内壁面に取り付けられている。また、ホームサーバ51は、図示しない操作部を有しており、操作部に対して入力操作が行われることで、太陽熱集熱システムの各種設定が行われる。
ホームサーバ51には、媒体駆動部42と、各遮断バルブ46と、遮断バルブ46居室空間の空調を行うエアコン等の空調装置55とが接続されており、ホームサーバ51は、指令信号を出力することでこれら媒体駆動部42、各遮断バルブ46及び空調装置55の動作制御を行う。空調装置55は複数の居室空間に設けられている。
また、ホームサーバ51には、建物10内に人がいることを検出する人感センサ56と、集熱板36の温度を検出する集熱温度センサ57とが接続されており、これらセンサ56,57は各検出信号をホームサーバ51に対して出力する。集熱温度センサ57は、集熱空間37内に設けられており、集熱板36に対して取り付けられている。これにより、集熱温度センサ57が、太陽光の温度を検出するのではなく、太陽光により加熱された集熱板36の温度を検出することができるようになっている。
ホームサーバ51は、空調装置55の暖房運転が行われている居室空間を対象として、集熱温度センサ57の検出信号に基づいて、集熱板36の温度が暖房運転の設定温度よりも高いか否かを判定する。集熱板36の温度が暖房運転の設定温度よりも高い場合、媒体経路41のうち、暖房対象の居室空間に対応する躯体熱交換部43に熱が付与されるように循環経路を選択する。そして、選択した循環経路に熱媒体が流れるように、媒体駆動部42及び各遮断バルブ46を駆動させる。これにより、空調装置55の暖房運転が行われている居室空間の建物躯体が暖められ、その居室空間について暖房効率を高めることができる。
また、ホームサーバ51は、人感センサ56の検出信号に基づいて各居室空間について人の有無を判定し、人が居る居室空間を対象として、その居室空間の温度が所定温度(例えば18℃)よりも低く且つ集熱板36の温度が前記居室空間の温度よりも高いか否かを判定する。居室温度が所定温度よりも低く且つ集熱板36の温度が居室空間の温度よりも高い場合、媒体経路41のうち、暖房対象の居室空間に対応する躯体熱交換部43に熱が付与されるように循環経路を選択する。そして、暖房されている居室空間に対する制御と同様に、媒体駆動部42及び各遮断バルブ46を駆動させる。これにより、人が居る居室空間の建物躯体が暖められ、その居室空間について温度が低下しにくくなる。
特に、建物10全体の鉄骨が有する熱容量が大きいことに加えて、建物躯体の熱容量が柱集合部や梁集合部によりさらに大きくされているため、建物躯体に蓄えられた熱により居室空間の温度低下を長時間に亘って抑制することができる。したがって、空調装置による暖房運転が停止された後、深夜時間帯などにおいて寝室等の居室空間での温度低下が緩やかになる。ここで、深夜時間帯においては、住人等が寝室からトイレなどに移動する場合などにヒートショックが発生することが懸念されるが、建物躯体に熱が蓄えられていることでトイレ等の非居室空間についての温度低下が抑制されていることで、ヒートショックの発生を抑えることができる。
太陽熱集熱システムにおいては、集熱部35にて取得された太陽熱を建物躯体に付与するだけでなく、建物躯体が有する熱を集熱部35から屋外に放出することが可能になっている。例えば、夏期の昼間時間帯においては、外張り断熱式の建物10であっても、太陽熱や屋外の熱気により建物躯体を含んだ建物全体の温度が上昇し、夜間時間帯になって外気温度が低下しても、外張り断熱式であるがために建物躯体に熱がこもることが懸念される。
そこで、夜間時間帯に建物躯体の温度の方が外気温度よりも高い場合に、媒体経路41の循環経路において熱媒体を循環させると、熱媒体は、躯体熱交換部43を介して建物躯体から熱を取得し、その取得した熱を集熱部35にて集熱板36を介して屋外に放出する。このようにして、建物躯体の熱を屋外に放出することができ、その結果、空調装置55により冷房運転が行われている場合にはその冷房効率を高めることができる。また、空調装置55による冷房運転が行われていない場合でも、居室空間や建物躯体の熱が屋外に放出されることで冷房効果を得ることができる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
鉄骨製の建物躯体は熱容量が十分に大きいため、自然エネルギとしての太陽熱が集熱部35から建物躯体に付与された場合に、建物内空間を暖めるために必要な大きさの熱を建物躯体に蓄え、その熱によって建物内空間を暖めることができる。ここで、熱媒体は媒体経路41により屋外側断熱部31の屋外側から屋内側に輸送されるため、太陽熱を集熱部35から建物躯体に積極的に取り込むことができる。そして、建物躯体に熱が付与された後は、建物躯体の熱が屋外側に逃げることが屋外側断熱部31により規制されるため、建物内空間及び建物躯体の温度が低下しにくくなっている。
しかも、各建物ユニット20における鉄骨の熱伝導率は十分に大きいため、建物躯体の全体が太陽熱によって温まりやすくなっている。ここで、建物躯体を構成する鉄骨は建物10全体に存在しており、鉄骨に太陽熱を付与することは、建物内空間の全体を暖める上で好適である。また、建物躯体における所望とする部位に熱を付与することで、建物内空間での各空間について暖まりやすさに差異を確保することもできる。
以上により、自然エネルギである太陽熱を利用して建物内空間を好適に暖めることができる。
ユニット式建物においては、建物躯体が鉄骨により形成されているため、建物躯体がコンクリート層により形成されている建物に比べて建物躯体の熱伝導率が高い。この場合、躯体熱交換部43を通じて建物躯体に熱が付与された部分から他の部分への熱の伝達が短時間で行われるため、建物躯体の全体について温度を均一化することができ、ひいては、建物内空間の全体について温度を均一化することができる。
躯体熱交換部43が建物躯体に当接した状態で設けられているため、熱媒体から建物躯体に熱が伝わる場合の伝熱効率を躯体熱交換部43により高めることができる。しかも、熱媒体が建物躯体に接触することがないため、熱媒体との接触により建物躯体に劣化や腐食が生じるということを回避できる。
建物ユニット20においては、柱21や大梁22,23、小梁25,26が相互に熱が伝わる状態で連結されているため、躯体熱交換部43を介して建物ユニット20の一部に熱が加えられた場合でも、建物ユニット20の全体に熱が拡がることになる。このため、取り付けられていても、建物ユニット20の一部が熱媒体との熱交換の対象部分とされていても、一部に加えられた熱を建物ユニット20という広範囲に付与することができる。
柱集合部を形成している柱21や、梁集合部を形成している大梁22,23に躯体熱交換部43が取り付けられているため、集熱部35からの熱を柱21や大梁22,23に加えて、柱21同士の隙間や大梁22,23同士の隙間に蓄えることができる。この場合、柱集合部においては、柱21及びその柱21の周辺での蓄熱量が大きくなり、梁集合部においては、大梁22,23及びその大梁22,23の周辺での蓄熱量が大きくなる。このため、柱集合部や梁集合部からユニット内空間に伝わる伝熱量が大きくなり、太陽熱によりユニット内空間を長い期間に亘って暖めることができる。
また、柱集合部や梁集合部においては、躯体熱交換部43が柱21同士の間や大梁22,23同士の間に設けられているため、躯体熱交換部43や柱21、大梁22,23から放出された熱が柱21同士の間の隙間や大梁22,23同士の間の隙間にこもりやすくなる。したがって、躯体熱交換部43が柱集合部や梁集合部の外周側に設けられている構成に比べて、柱集合部や梁集合部での蓄熱量を大きくすることができる。
建物10を構成する複数の建物ユニット20には、躯体熱交換部43が取り付けられた建物ユニット20と、躯体熱交換部43が取り付けられていない建物ユニット20とが含まれているため、集熱部35にて集められた太陽熱を、躯体熱交換部43が取り付けられた建物ユニット20に集中して付与することができる。この場合、太陽熱が集中して付与された建物ユニット20については、ユニット躯体の温度が上昇しやすくなるため、ユニット空間の暖房効率を高めることができる。
媒体経路41により熱媒体の循環経路が形成されるため、少なくとも建物躯体と同じ温度を有する熱媒体が集熱空間37に戻されることになる。この場合、例えば集熱空間37から媒体経路41に流れ出した熱媒体が集熱空間37に戻されず、集熱空間37には新規の熱媒体が都度供給されるという構成とは異なり、集熱空間37に建物躯体よりも温度の低い熱媒体が供給されることが抑制されるため、集熱部35にて集められた熱を建物躯体に伝える伝熱効率を高めることができる。
媒体経路41は複数の媒体経路41a〜41dを有しており、建物躯体に対する躯体熱交換部43の取り付け位置が媒体経路41a〜41dごとに異なるため、各媒体経路41a〜41dのそれぞれについて、熱媒体の熱を付与する部分を個別に設定することができる。したがって、建物躯体における任意の部分に熱を付与することができる。
しかも、媒体経路41a〜41dのそれぞれにおいて熱媒体の輸送及び停止が個別に切り替えられるため、熱媒体の熱を建物躯体におけるどの部分に付与するのかを容易に設定することができる。したがって、住人等が建物10内を移動する頻度が高い時間帯には、集熱部35の熱が廊下やトイレなどの建物躯体に付与されるように熱媒体の流れる経路を設定することで、住人等の移動経路となる空間を暖めることができる。また、住人等が居室で長時間過ごしている時間帯には、集熱部35の熱がリビングや寝室などの建物躯体に付与されるように熱媒体の流れる経路を設定することで、住人等の居場所になる空間を暖めることができる。つまり、集熱部35からの熱の移動先を適宜設定することができる。さらに、暖房機器が設置されていない非居住空間であっても、建物躯体から熱が放出されることで暖房効果を得ることができる。
熱媒体と建物躯体との熱交換が躯体熱交換部43を介して行われるため、媒体経路形成体45を柱21や大梁22,23と平行に且つ離間させて設置しておき、建物躯体における熱交換を行わせたい部分にだけ躯体熱交換部43を設置すれば、熱媒体から建物躯体の一部に熱を付与することができる。これに対して、例えば躯体熱交換部43が設けられていない場合、媒体経路形成体45を柱21や大梁22,23と平行に且つそれら柱21や大梁22,23に当接した状態で設置すると、柱21や大梁22,23における媒体経路形成体45に当接している全ての部分に対して熱媒体から熱が付与されてしまう。かといって、媒体経路形成体45を柱21や大梁22,23の一部にだけ当接するように設置するには、媒体経路形成体45の設置自由度が低下してしまい、その設置作業が煩雑化することが懸念される。
ユニット式建物においては、鉄骨が数トン〜十数トン使用されているため、鉄骨により形成された建物躯体の熱容量が十分に大きくなっている(例えば数千kJ/K)。したがって、暖房効果を得ることができるほどの熱量を建物躯体に蓄えることができる。
ここで、建物躯体の熱容量が大きいと、外断熱式の建物10では、建物躯体を温めるための熱が大きくなり、ひいては、建物内空間を暖めるのに必要なエネルギが大きくなってしまう。この場合、電力やガスなどを利用した暖房だけでは、電力やガスの消費量が大きくなってしまい、暖房に要する光熱費の負担が増加してしまう。これに対して、集熱部35にて集められた太陽熱が建物躯体に付与される構成では、建物躯体を太陽熱によりあらかじめ温めておき、建物躯体を温めるために足りない分のエネルギを電力やガスにより補うことができるため、暖房に要する光熱費の負担を低減でき、しかも、省エネルギ効果を得ることができる。
例えば、木造建物と鉄骨建物とを比較すると、それた建物の断熱構造が同じであれば、木造建物の方が鉄骨建物よりも断熱性能が高く、室内環境も安定すると考えられる。一方で、躯体重量と材料比熱により定められる熱容量は鉄骨建物の方が木造建物よりも大きい。これらを踏まえ、集熱部35の熱が建物躯体に付与される鉄骨建物においては、外断熱構造だけでは木造建物以上の断熱性能は期待できなかったが、鉄骨の大きな熱容量を積極的に利用できるため、建物躯体に太陽熱を付与することで暖房効果を得るという、木造建物の外張り断熱構造では得られない効果を奏することができる。
集熱部35から建物躯体への熱媒体の輸送経路を可変設定することができるため、集熱部35からの熱を所定の空間に集中させること、及びその熱を建物全体に分散させることを選択することができる。これにより、住人等の生活パターンや季節、居住人数などに応じて集熱部35の熱を使い分けることができる。
例えば季節について、秋から冬、冬から春への移り変わり時期は、居室空間は暖房が必要ない程度に暖かくても、非居室空間は暖房が必要なほどに冷えることがある。この場合は、集熱部35の熱が非居室空間の躯体に集中的に付与されるように熱媒体の輸送経路を設定することで、非居室空間が極端に冷えることを抑制できる。これにより、非居室空間に余分な暖房器具を設置する必要がない。一方、厳冬期は、集熱部35の熱を建物全体の建物躯体に付与することで、建物全体が極端に冷えることを抑制でき、ひいては、室温低下勾配を緩くすることができる。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。第1の実施形態では、集熱部35の熱が熱媒体により輸送される構成としたが、第2の実施形態では、熱媒体を輸送するのではなく、集熱部35の熱が伝熱部材61を通じて建物躯体に伝わる構成としている。
図5は本実施形態における建物10及び太陽熱集熱システムの構成を示す概略図、図6は階間空間83周辺の縦断面図、図7は建物10における建物ユニット20周辺の平面図である。なお、図6においては、熱交換遮断部89の図示を省略している。また、図7においては、二階部分15の建物ユニット20の天井大梁22を上から見た図になっている。
図5に示すように、集熱部35は、扁平形状の箱体ではなく板状に形成されている。つまり、集熱板36を有する一方で、集熱空間37、対向板38及び連結板39を有していない。集熱板36は、傾斜屋根部の屋根面に沿って延びる状態で設置されている。なお、集熱温度センサ57は、集熱板36の上側面に対して取り付けられている。
本実施形態では、集熱板36と建物躯体とが伝熱性を有する伝熱部材61により接続されており、集熱板36の熱が伝熱部材61を通じて建物躯体に伝わるようになっている。伝熱部材61は、銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い材料により長尺状に形成されており、例えば、建物躯体における二階部分15の建物ユニット20の天井大梁22に接続されている。この場合、集熱板36の熱は、伝熱部材61を通じて天井大梁22の接続部分に伝わり、その後、天井大梁22の全体に拡がり、やがて、柱21や他の大梁22,23、小梁25,26など建物ユニット20の全体に伝わる。
ちなみに、伝熱部材61には、その外周面の全体を覆うように保温材又は断熱材が取り付けられている。この場合、集熱部35から伝熱部材61に伝わった熱が伝熱部材61の外周面から放出されるということが規制され、伝熱部材61を伝わる熱の伝熱効率が高められている。なお、伝熱部材61が、建物躯体に熱を付与する熱付与手段に相当する。
上記第1の実施形態と同様に、建物ユニット20同士を連結する連結部材を通じて、隣り合う建物ユニット20同士は相互に熱が伝わるようになっているため、熱は、伝熱部材61が接続されている建物ユニット20から他の建物ユニット20に伝わり、やがて、全ての建物ユニット20に伝わる。
連結部材について具体的に説明すると、連結部材は、隣り合う建物ユニット20の柱21同士を連結するドッキングプレート63とされている。ドッキングプレート63は、金属製の板材とされており、熱を伝えることが可能になっている。ドッキングプレート63は、左右に隣り合う建物ユニット20の各柱21の上端面同士や下端面同士に跨った状態で重ねられ、その状態で各柱21の上端部や下端部に対してボルト等により固定されている。これにより、隣り合う建物ユニット20の柱21同士が集まった柱集合部において、それら柱21同士がドッキングプレート63を介して連結されている。
また、上下に重ねて配置された建物ユニット20については、一階部分14の建物ユニット20の柱21の上に二階部分15の建物ユニット20の柱21が載置されており、ドッキングプレート63は、それら柱21の間に設けられ、下階の柱21の上端面及び上階の柱21の下端面に対してボルト等により固定されている。これにより、上下に重ねられた建物ユニット20の柱21同士がドッキングプレート63を介して連結されている。
ちなみに、柱集合部の各柱21の上に別の柱集合部の各柱21が設置されている部分においては、ドッキングプレート63が、左右の柱21同士を連結し、且つ上下の柱21同士を連結している。
建物10においては、伝熱部材61やドッキングプレート63により集熱部35と全ての建物ユニット20とが伝熱可能に接続されているため、それら伝熱部材61、ドッキングプレート63はもちろんのこと、建物ユニット20を構成する柱21、大梁22,23、小梁25,26により、熱が伝わる伝熱経路が形成されている。
伝熱部材61には、熱の伝達を遮断する集熱遮断部65が設けられている。集熱遮断部65は、伝熱部材61を遮断及び接続することが可能な電動式の開閉装置であり、開状態で集熱部35から伝熱部材61を通じた建物躯体への熱の伝達を遮断し、閉状態で集熱部35から伝熱部材61を通じた建物躯体への熱の伝達を可能とする。
建物10においては、建物躯体の全ての部分から建物内空間に放熱が行われるのではなく、建物躯体には建物内空間への放熱が規制されている部分がある。具体的には、建物躯体の一部には、建物躯体からの放熱を規制する放熱規制部材71が取り付けられており、建物躯体においては、放熱規制部材71の取り付けられた部分が放熱部分72とされ、放熱規制部材71の取り付けられていない部分が非放熱部分73とされている。この場合、建物内空間のうち建物躯体が放熱部分72を有する空間が、放熱部分72からの放熱により暖房効果を得ることができる暖房対象空間に相当する。
放熱規制部材71は、グラスウール等の繊維系断熱材やポリウレタンフォーム等の発泡系断熱材、シート状の断熱材などにより形成された断熱部であり、柱21や大梁22,23、小梁25,26の外周面に取り付けられている。放熱規制部材71は、柱21や大梁22,23、小梁25,26等の長尺状部材に対して、それぞれの長尺状部材の長手方向における所定長さの範囲で各長尺状部材の外周面の全体を覆った状態になっている。
例えば、図に示すように、放熱規制部材71aは柱21に取り付けられている。放熱規制部材71aが取り付けられている柱21は、二階部分15の建物ユニット20cの柱21であり、放熱規制部材71aは、その柱21の長手方向のほぼ全体に沿って延びるように設けられている。
放熱規制部材71b,71cは、天井大梁22に取り付けられている。ここで、放熱規制部材71bが取り付けられている天井大梁22は、二階部分15の建物ユニット20cの天井大梁22であり、放熱規制部材71bは、その天井大梁22の長手方向のほぼ全体に沿って延びるように設けられている。ちなみに、この天井大梁22は、伝熱部材61を介して集熱部35に接続されている天井大梁22であり、伝熱部材61は、放熱規制部材71bを貫通して天井大梁22に接続されている。
なお、建物ユニット20cにおいては、放熱規制部材71aが取り付けられた柱21に、放熱規制部材71bが取り付けられた天井大梁22が連結されており、その連結部分がそれら放熱規制部材71a,71bの少なくとも一方により覆われている。
一方、放熱規制部材71cが取り付けられている天井大梁22は、一階部分14の建物ユニット20bの天井大梁22であり、放熱規制部材71cは、その天井大梁22の長手方向の一部に沿って延びるように設けられている。また、この天井大梁22は、上下に隣り合う建物ユニット20の大梁22,23同士が集まった梁集合部に含まれており、放熱規制部材71cは、梁集合部を形成する各大梁22,23のうち一部の天井大梁22に取り付けられていることになる。
放熱規制部材71dは、床大梁23に取り付けられている。放熱規制部材71dが取り付けられている床大梁23は、一階部分14の建物ユニット20bの床大梁23であり、放熱規制部材71dは、その床大梁23の長手方向のほぼ全体に沿って延びるように設けられている。
上述したように、建物10においては、各建物ユニット20のユニット躯体の全てが伝熱経路とされている。このため、各建物ユニット20のユニット躯体のうち、放熱規制部材71が取り付けられていない放熱部分72おいては、熱の伝達と放出の両方が行われ、放熱規制部材71が取り付けられた非放熱部分73においては、熱の伝達と放出のうち熱の伝達が行われる。
本実施形態では、放熱部分72に、建物内空間のうち居室空間との間で熱交換を行うことが可能な空間熱交換部75が取り付けられており、その空間熱交換部75を通じて建物躯体の熱が居室空間に放出されやすくなっている。空間熱交換部75は、銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い材料により形成されており、建物躯体からの熱伝導が可能な状態で溶接やボルト締め等によりその建物躯体に接続されている。ここで、居室空間は、天井面材28や床面材29、壁面材などの区画部により建物躯体に対して区画されており、空間熱交換部75の少なくとも一部が、区画部を貫通した状態で居室空間に設けられている。
例えば、図に示すように、空間熱交換部75aは二階部分15の床部に対して設けられており、空間熱交換部75aは一階部分14の壁部に対して取り付けられている。
ここでは、空間熱交換部75aの設置構成について詳しく説明する。
図6に示すように、一階部分14及び二階部分15には、一階居室81及び二階居室82が居室空間としてそれぞれ設けられており、それら一階居室81と二階居室82との間には階間空間83が設けられている。
一階部分14の建物ユニット20においては、天井面材28が、天井下地材としての野縁85を介して天井大梁22又は天井小梁25に対してビス等により固定されている。天井面材28は、2枚重ねの石膏ボードにより形成された天井仕上材であり、野縁85を挟んで天井大梁22及び天井小梁25の下側に配置されている。
二階部分15の建物ユニット20においては、床面材29が、床下地材としての根太86を介して床大梁23又は床小梁26に対してビス等により固定されている。床面材29は、パーティクルボード等により形成された床仕上材であり、根太86を挟んで床大梁23及び床小梁26の上側に配置されている。
空間熱交換部75aは、長尺状に形成されており、床面材29を貫通した状態で上下方向に延びている。空間熱交換部75aの下端は階間空間83に設けられており、その下端寄りの部分が床小梁26に当接した状態で、その床小梁26に対して取り付け金具等により固定されている。一方、空間熱交換部75aの上端は二階居室82に設けられている。この場合、建物ユニット20の熱は、階間空間83において床小梁26から空間熱交換部75aに伝わり、その空間熱交換部75aから二階居室82内に向けて放出される。
空間熱交換部75aにおける二階居室82に設けられた部分は、その外周面が凹凸部を有する凹凸形状にされている。この場合、空間熱交換部75aの外周面が平坦面にされている構成に比べて、空間熱交換部75aから二階居室82に向けて放熱が行われる部分の表面積が大きくなっているため、空間熱交換部75aからの放熱効率を高めることができる。換言すれば、空間熱交換部75aと二階居室82との間で熱交換が行われる場合の熱交換効率を高めることができる。
なお、二階居室82には、空間熱交換部75aを上方から覆うカバー部88が設けられている。カバー部88は、合成樹脂材料等の熱伝導率の低い材料により網目状に形成されており、空間熱交換部75aから放出された熱をカバー部88の外側に通す一方で、住人等が空間熱交換部75aに直接触れることができないようにしている。ちなみに、カバー部88は設けられていなくてもよい。
また、空間熱交換部75bの設置構成について簡単に説明すると、空間熱交換部75bは、図5に示すように、一階部分14の建物ユニット20の柱21に接続された状態で、少なくとも一部が一階部分14に設けられている。一階部分14の居室空間と柱21との間には、一階居室81を区画する区画部として壁面材が設けられており、空間熱交換部75bは、その壁面材を貫通した状態で一端側が柱21に当接した状態でその柱21に接続され、他端が一階部分14の居室空間に露出した状態で設けられている。これにより、一階部分14の居室空間を形成する建物ユニット20が有する熱は、その柱21から空間熱交換部75bに伝わり、さらに、空間熱交換部75bから一階部分14の居室空間内に放出される。
建物躯体と空間熱交換部75a,75bとの間には、建物躯体から空間熱交換部75a,75bへの伝熱を遮断する熱交換遮断部89がそれぞれ設けられおり、空間熱交換部75a,75bは、熱交換遮断部89を介して建物躯体に接続されていることになる。熱交換遮断部89は、建物躯体と空間熱交換部75a,75bとを遮断及び接続することが可能な電動式の開閉装置であり、開状態で建物躯体から空間熱交換部75a,75bへの熱の伝達を遮断し、閉状態で建物躯体から空間熱交換部75a,75bへの熱の伝達を可能とする。したがって、空間熱交換部75a、75bのうち、熱交換遮断部89が遮断状態にあるものにおいては、居室空間への放熱が行われない。
なお、熱交換遮断部89が熱交換遮断手段に相当し、集熱遮断部65が部材遮断手段に相当する。
ここで、空間熱交換部75が設けられている居室空間の温度が建物躯体の温度よりも低い場合、集熱部35から建物躯体の伝熱経路を通じて伝わってきた熱は、建物躯体における空間熱交換部75よりも先の伝熱経路に比べて、空間熱交換部75に伝わりやすいと考えられる。これは、熱が温度の低い方へ伝わる性質を有しているためである。
本実施形態では、この熱の性質を利用して、図7に示すように、建物躯体における特定部分Sに熱が伝わりにくくなるように複数の空間熱交換部75cが設置されている。ここでは、特定部分S(図においてドットハッチングで示した部分)が、二階部分15の建物ユニット20における天井大梁22の一部と全ての天井小梁25とを含む部分とされている。この特定部分Sには、建物躯体における他の部分から伝熱経路L1〜L4から熱が伝わることが可能になっており、それら伝熱経路L1〜L4を形成する部分のそれぞれに空間熱交換部75cが接続されている。この場合、各空間熱交換部75cにより、各天井大梁22のそれぞれについて各天井小梁25が連結されている部分が挟まれた状態になっている。
集熱部35から各建物ユニット20のユニット躯体に熱が伝わった場合、その熱の伝達経路には伝熱経路L1〜L4も含まれているが、それら伝熱経路L1〜L4を形成する天井大梁22に伝わった熱は、そのまま天井大梁22を伝わるのではなく各空間熱交換部75cに伝わり、それら空間熱交換部75cか居室空間に向けて放出される。この場合、特定部分Sに含まれる天井大梁22や天井小梁25には熱が伝わりにくく、この建物ユニット20のユニット空間においては天井面が温かくなりにくい。これにより、ユニット空間において天井面付近の空間が暖かいことにより住人等に不快感を与えるということを抑制できる。なお、この場合は、ユニット空間における空間熱交換部75cの露出部分が床付近に配置されていることが好ましい。
ちなみに、集熱部35の熱が特定部分Sに伝わりにくい状態になっている場合に限っては、特定部分Sからは熱が放出されにくい状態になり、特定部分Sに含まれる天井大梁22等は放熱部分に含まれないことにもなる。
次に、太陽熱集熱システムの電気的な構成について説明する。
太陽熱集熱システムにおいて、ホームサーバ51には、集熱遮断部65と、各熱交換遮断部89とが接続されており、ホームサーバ51は、指令信号を出力することでこれら集熱遮断部65及び熱交換遮断部89の動作制御を行う。
ホームサーバ51は、空調装置55の暖房運転が行われている居室空間を対象として、その居室空間が空間熱交換部75の設置空間であるか否かを判定する。空間熱交換部75の設置空間である場合、集熱板36の温度が暖房運転の設定温度よりも高いか否かを判定し、高い場合、集熱遮断部65を閉状態にするとともに、暖房対象の居室空間の空間熱交換部75に対応する熱交換遮断部89を閉状態にする。
この場合、暖房対象の居室空間の空間熱交換部75からの放熱が行われるため、空間熱交換部75からの放熱が行われない場合に比べて、集熱部35にて集められた太陽熱が暖房対象の居室空間に供給されやすくなる。したがって、空調装置55による暖房運転の負担が軽減され、暖房運転の実行に際して省エネルギ効果を得ることができる。なお、空間熱交換部75からの放熱が行われない場合でも、暖房対象の居室空間に対しては、その居室空間の建物躯体から壁面材や天井面材、床面材を通じて放熱が行われるため、空調装置55による暖房運転の負荷が軽減されることに変わりはない。
また、ホームサーバ51は、人が居る居室空間を対象として、その居室空間の温度が所定温度(例えば18℃)よりも低く且つ集熱板36の温度が前記居室空間の温度よりも高いか否かを判定する。そして、居室温度が所定温度よりも低く且つ集熱板36の温度が居室空間の温度よりも高い場合、集熱遮断部65を閉状態にする。この場合、人が居る居室空間の建物躯体に熱が伝わるため、その居室空間を暖めることができる。
さらに、空間熱交換部75が設けられている居室空間に人が居る場合には、その空間熱交換部75に対応する熱交換遮断部89を閉状態にする。これにより、人が居る居室空間に対して、建物躯体の熱が熱交換遮断部89を介して放出されやすくなるため、集熱部35の熱により居室空間を暖める暖房効率を高めることができる。
なお、空間熱交換部75は建物躯体の熱を居室空間に放出するだけでなく、居室空間の熱を建物躯体に伝えることが可能であるため、第1の実施形態と同様に、居室空間の熱を、空間熱交換部75、建物躯体及び集熱部35により屋外に放出することができる。これにより、空調装置55による冷房運転が行われている場合には、その冷房効率を高めることができる。また、空調装置55による冷房運転が行われていない場合でも、居室空間や建物躯体の熱が屋外に放出されることで冷房効果を得ることができる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
建物躯体の放熱部分72から居室81,82等の暖房対象空間に熱が放出されるため、暖房対象空間の温度が上昇しやすくなる。これにより、集熱部35にて集められた太陽熱により暖房対象空間での暖房効率を高めることができる。
建物躯体は、放熱部分72に加えて、放熱規制部材71が取り付けられた非放熱部分73を有しているため、建物躯体においては、非放熱部分73から放出されなかった分の熱が放熱部分72からまとめて放出される。この場合、放熱規制部材71が取り付けられずに建物躯体の全てが放熱部分72になっている場合に比べて、放熱部分72からの放熱量が大きくなるため、暖房対象空間での暖房効果をより一層高めることができる。しかも、建物内空間において、暖房する必要のない空間や暖めると不都合が生じる空間については、その空間の建物躯体を非放熱部分とすることで暖まりにくい空間にすることができる。これにより、集熱部35の熱が倉庫などに無駄に放出されるということを抑制できる。
非放熱部分73においては、鉄骨の長手方向における所定長さの範囲でその鉄骨の外周面が放熱規制部材71により覆われているため、非放熱部分73においては、熱の放出及び伝達のうち伝達だけが行われることになる。これにより、集熱部35の熱が非放熱部分73を経由して放熱部分72まで伝わる際に、非放熱部分73にて放出されることによる熱の損失を低減できる。したがって、建物躯体における熱の伝達効率を高めることができる。
床部に対して取り付けられた空間熱交換部75は、床面材29を貫通した状態で床小梁26の放熱部分72に接続されているため、空間熱交換部75から居室81,82等の暖房対象空間に熱が直接放出される。これにより、空間熱交換部75が取り付けられておらずに放熱部分72から放出された熱が床面材29を通じて暖房対象空間に伝わる構成とは異なり、熱が床面材29を通過する際に熱損失が発生することを回避できる。
建物躯体から空間熱交換部75への熱の伝達を熱交換遮断部89により遮断することが可能であるため、建物躯体から空間熱交換部75に伝わる熱が過剰に多くなるということを抑制できる。つまり、空間熱交換部75から暖房対象空間に放出される熱が過剰に多くなって暖房対象空間の温度が上昇し過ぎるということを抑制できる。
建物躯体においては、集熱部35から特定部分Sへの伝熱経路L1〜L4のそれぞれに対して空間熱交換部75が設けられているため、伝熱経路L1〜L4から空間熱交換部75に熱が伝わることで、特定部分Sを熱が伝わりにくい領域とすることができる。したがって、特定部分Sを、暖める必要のない空間や暖めると不都合が生じる空間に対応させて配置しておくことにより、それら空間に集熱部35の熱が放出されることを抑制できる。
集熱部35と建物躯体とが伝熱部材61により接続されているため、集熱部35の熱を屋外側断熱部31の屋外側から屋内側に取り込む構成を実現できる。しかも、伝熱部材61における熱の伝達は集熱遮断部65により遮断されるため、夏期などにおいて暖房対象空間を暖める必要がない場合に、集熱部35の熱が伝熱部材61を通じて建物躯体に伝わるということを回避できる。これにより、暖房対象空間が意図せずに暖められるということを抑制できる。
建物10を構築している複数の建物ユニット20には、放熱規制部材71が取り付けられた建物ユニット20と、放熱規制部材71が取り付けられていない建物ユニット20とが含まれているため、放熱規制部材71の取り付け作業を建物ユニット20単位で行うことができる。これにより、全ての建物ユニット20のそれぞれについて放熱規制部材71が取り付けられている構成に比べて、放熱規制部材71を取り付ける際の作業効率を高めることができる。
[他の実施形態]
本発明は上記各実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
(a1)第1の実施形態では、集熱空間37から流れ出した熱媒体が建物躯体との熱交換を行った後に再び集熱空間37に戻される(循環する)構成としたが、熱媒体が建物躯体との熱交換を行った後に集熱空間37に戻されない構成としてもよい。この構成では、集熱空間37に新規の熱媒体が都度供給されることが好ましい。これにより、集熱部35にて集められた太陽熱を熱媒体により継続して建物躯体に付与することができる。
また、媒体経路41は、複数の媒体に分岐していたが、分岐せずに1つの経路だけを有していてもよい。
(a2)媒体経路41において熱媒体の流れる経路を変更する遮断バルブ46は、手動操作が可能な開閉弁とされていてもよい。
また、遮断バルブ46は、媒体経路41b,41cごとに設けられていたが、躯体熱交換部43ごとに設けられていてもよい。例えば、媒体経路41には、各躯体熱交換部43のそれぞれについて、躯体熱交換部43が設けられている主経路と、躯体熱交換部43が設けられていない迂回経路とを有し、主経路及び迂回経路のそれぞれに遮断バルブ46が設けられている構成とする。この場合、各遮断バルブ46が個別に遮断されることにより、各躯体熱交換部43のそれぞれについて熱媒体による熱交換を個別に行わせることができる。
さらに、遮断バルブ46は媒体経路41に設けられていなくてもよい。この場合、媒体駆動部42が駆動することで媒体経路41の全体に熱媒体が流れることになる。
(a3)第1の実施形態では、媒体経路形成体45に躯体熱交換部43が取り付けられている構成としたが、媒体経路形成体45の一部により躯体熱交換部43が形成されているという構成としてもよい。例えば、媒体経路形成体45の外周面の一部が径方向外側に向けて突出しており、その突出部分が建物躯体に当接している構成とする。この構成では、媒体経路形成体45の突出部分により躯体熱交換部43が形成されていることになる。また、この構成では、媒体経路形成体45の突出部分の突出先端側が開放され、その開放部分が建物躯体の外周面により塞がれていてもよい。この場合、熱媒体が建物躯体に接触することになるが、熱媒体と建物躯体との間で躯体熱交換部43を介した熱交換が行われることに変わりはない。
(a4)第1の実施形態では、熱媒体が液体とされていたが、熱媒体は気体とされていてもよい。要は、熱媒体は熱の授受が可能な流体であればよい。熱媒体が流体とされた場合、媒体駆動部42はポンプではなく電動式ファンであることが好ましい。
(a5)第1の実施形態では、柱集合部や梁集合部に対して取り付けられた躯体熱交換部43b〜43dは、柱21同士の間の隙間や床大梁23同士の間の隙間に設けられていたが、躯体熱交換部43b〜43dは、柱集合部や梁集合部の外側に設けられていてもよい。例えば、躯体熱交換部43cが、柱集合部における各柱21の外周側の面に巻き付けるようにして取り付けられていてもよい。この場合でも、躯体熱交換部43cを介して熱媒体と各柱21との熱交換を行うことができる。
(a6)第1の実施形態では、建物10が有する複数の建物ユニット20に、躯体熱交換部43が取り付けられていない建物ユニット20が含まれている構成としたが、全ての建物ユニット20のそれぞれに躯体熱交換部43が取り付けられていてもよい。
(a7)第1の実施形態では、隣り合う建物ユニット20の境界部を挟んで柱21同士や大梁22,23同士が集合しているが、1つの建物ユニット20において柱21や大梁22,23、小梁26,27が集合して配置されていてもよい。例えば、全ての床小梁26が所定間隔で配置されているのではなく、一部(例えば2〜3個)の床小梁26が集合して配置されている構成とする。この場合、床小梁26が集合した梁集合部において蓄熱量を大きくすることができる。
(b1)第2の実施形態では、伝熱部材61を長尺状部材としたが、伝熱部材61は、集熱部35と建物躯体とを接続していれば長尺状でなくてもよい。
また、集熱部35と建物躯体とを接続する伝熱部材61自体を熱が伝わる構成としたが、集熱部35の熱が熱付与手段により建物躯体に付与される構成は、この構成に限られない。例えば、集熱部35と建物躯体とが長尺筒状の接続部材により接続され、接続部材の両開放端の一方が集熱部35により塞がれ、他方が建物躯体により塞がれている構成とする。この構成では、接続部材が熱伝導率の低い材料により形成されていても、集熱部35の熱が接続部材の内部空間を通じて建物躯体に伝わることになる。また、熱付与手段は、第1の実施形態のように、熱媒体輸送手段(媒体経路形成体45及び媒体駆動部42)及び熱媒体により構成されていてもよい。
(b2)集熱部35と建物躯体とは複数の伝熱部材61により複数箇所で接続されていてもよい。これにより、集熱部35の熱が複数の経路を通じて建物躯体に伝わることになる。
(b3)第2の実施形態では、建物躯体に放熱規制部材71が取り付けられることで非放熱部分が形成されていたが、非放熱部分は、建物躯体において集熱部35の熱が伝わらないようにすることで形成されていてもよい。例えば、ドッキングプレート63が熱伝導率の低い材料により形成され、建物ユニット20同士で熱が伝わりにくい状態にした構成とする。この場合、伝熱部材61により集熱部35に接続されていない建物ユニット20は、その全体が非放熱部分になる。
(b4)第2の実施形態では、放熱規制部材71が、柱21等の長尺状部材に対して、長尺状部材の長手方向における所定長さの範囲でその長尺状部材の外周面の全体を覆った状態で取り付けられていたが、放熱規制部材71は、柱21等の長尺状部材の外周面における一部に取り付けられていてもよい。
(b5)放熱規制部材71は、熱伝導率の低い塗料が建物躯体の外周面に塗布されることで形成されていてもよい。
(b6)暖房対象空間については、外断熱部としての屋外側断熱部31に加えて、暖房対象空間の断熱性を高めるための補強断熱部が設けられていてもよい。例えば、補強断熱部が屋外側断熱部31の屋内側面に沿って延びるように設けられている構成とする。この構成によれば、建物躯体から熱が放出されることで暖房対象空間が暖められた場合に、その暖房対象空間から屋外側に熱が逃げにくくなるため、暖房対象空間の温度低下を抑制できる。
(c1)集熱部35は、屋根13ではなく、外壁に対して取り付けられていてもよい。要は、建物10の外周側に設置されていればよい。例えば、第1の実施形態では、集熱部35が、集熱板36が集熱空間37を挟んで外壁面材の屋外側に配置されるように設置されていることが好ましい。また、第2の実施形態では、集熱板36が外壁面材に沿って延びるように設けられていることが好ましい。いずれの場合でも、集熱板36に太陽光が照射されることにより集熱部35にて集熱が行われる。
(c2)集熱部35は、太陽光により集熱を行うのではなく、他の自然エネルギにより集熱を行ってもよい。例えば、集熱部35が建物10の下方において地中に埋設され、集熱部35により自然エネルギとしての地熱が集められる構成とする。この場合、建物躯体の方が地中(集熱部35)よりも温度が低くなっている冬期等においては、地中の熱を自然エネルギの地熱として建物躯体に付与することができ、その結果、建物内空間の暖房効率を高めることができる。また、建物躯体の方が地中よりも温度が高くなっている夏期等においては、建物躯体の熱を集熱部35から地中に放出することができ、その結果、建物内空間の冷房効率を高めることができる。
(c3)上記各実施形態では、集熱部35から建物躯体に付与された熱により建物内空間が暖められる構成としたが、建物躯体に付与された熱が給湯装置や貯湯タンクに供給される構成としてもよい。例えば、建物躯体の熱を貯湯タンクに輸送する装置が設けられている構成とする。この場合、集熱部35から建物躯体に付与された熱により貯湯タンクでの湯の温度低下を抑制できる。
(c4)建物10は、ユニット式建物とされていたが、建物躯体が鉄骨を含んで構成されている建物であればよい。例えば、鉄骨軸組工法により構築された建物や、スチール枠組壁工法により構築された建物(スチールハウス)とされていてもよい。