JP2014034642A - インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、インク小滴を普通紙などの記録媒体に付与して画像を形成する記録方法であり、その低価格化、記録速度の向上により、急速に普及が進んでいる。一方、インクジェット記録方法の問題点として、得られた記録物の画像保存性に劣ることが挙げられる。一般に、インクジェット記録方法で得られた記録物は、銀塩写真と比較してその画像保存性が低い。特に、記録物が、光、湿度、熱、空気中に存在するオゾンガスなどの環境ガスに長時間さらされた際に、記録物の色材が劣化し、画像の色調変化や褪色が発生しやすいといった問題がある。
カラーインデックス(C.I.)番号が付与されている従来公知の色材では、インクジェット用のインクに要求される画像の光学濃度(発色性)と画像保存性とを両立させることは困難であるため、新規の構造を有する色材について広く検討されている。例えば、光学濃度が良好であり、かつ、画像の耐光性に優れたビスアゾ化合物が提案されている(特許文献1及び2)。
また、インクジェット用のインクは、近年の長寿命化の要求に対応すべく、長期間使用しても吐出よれや不吐出などの発生が抑制される、いわゆる吐出安定性を満足する必要がある。インクの吐出安定性を向上させるために、グリコールエーテルやアセチレングリコール系の界面活性剤を使用することが提案されている(特許文献2及び3)。
本発明者らは、特許文献1及び2に記載のビスアゾ化合物を色材として用いてインクを調製したところ、所望の表面張力に調整するためには、アセチレングリコール系の界面活性剤の種類によっては非常に多く添加する必要があることを見出した。このように、多量のアセチレングリコール系の界面活性剤を添加して調製したインクは粘度が高く、記録ヘッドからの吐出性が不十分であった。一方、アセチレングリコール系の界面活性剤の種類によっては、インクの粘度を低く保ったまま、所望の表面張力に調整することが可能であった。しかし、このようにして得られたインクを用いてインクジェット記録装置を長期間使用すると、記録ヘッドの吐出口の近傍に析出物が発生し、画像に乱れが生ずることが判明した。さらに、このような吐出安定性の低下という技術課題は、上記のビスアゾ化合物を色材として用いた場合に特異的に発生することも判明した。
したがって、本発明の目的は、耐光性に優れた画像を記録可能であるとともに、吐出安定性に優れたインクジェット用のインクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、色材、界面活性剤、及び水溶性有機溶剤を含有するインクジェット用のインクであって、前記色材が、下記一般式(I)で表される化合物であり、前記界面活性剤が、下記一般式(II)で表される界面活性剤を含み、前記水溶性有機溶剤が、グリコールエーテルを含み、インク全質量を基準とした、下記一般式(I)で表される化合物の含有量A(質量%)、下記一般式(II)で表される界面活性剤の含有量B(質量%)、及び前記グリコールエーテルの含有量C(質量%)が、0.0<(A+B)/C≦3.0の関係を満たすことを特徴とするインクが提供される。
(前記一般式(I)中、R1は1価の基を表し、R2は−OR3又は−NHR4を表し(R3及びR4は水素原子又は1価の基を表す)、R5はアルキル基、アリール基、又は1価のトリアジン環基を表し、R6はアリーレン基又は2価のヘテロ環基を表し、R7は2価の連結基を表し、mは0又は1を表す)
本発明によれば、耐光性に優れた画像を記録可能であるとともに、吐出安定性に優れたインクジェット用のインクを提供することができる。また、本発明によれば、このインクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。
本発明者らは検討の結果、一般式(I)で表される化合物は、その構造に起因して、他の構造を有するアゾ色材と比較してアセチレングリコール系の界面活性剤の能力が発揮されにくく、インクの表面張力を制御しにくいという特性を有することを見出した。そこで、本発明者らは、アセチレングリコール系の界面活性剤の能力を十分に発揮させ、インクの表面張力を適度に制御するためのさらなる検討を行った。その結果、インクの表面張力をインクジェット用として適切な値とするには、エチレンオキサイド基の付加モル数x+yの平均値が0.0≦x+y≦8.0であるアセチレングリコール系の界面活性剤を用いる必要があることを見出した。x+y>8.0であるアセチレングリコール系の界面活性剤を用いた場合、適度な表面張力にするために必要なアセチレングリコール系の界面活性剤の添加量が増えてしまい、吐出安定性が顕著に低下してしまう。
しかし、検討を進めるにしたがい、0.0≦x+y≦8.0であるアセチレングリコール系の界面活性剤を用いたインクでは、インクジェット記録装置を長期間使用すると、記録ヘッドの吐出口の近傍に析出物が発生するといった課題が生ずることが判明した。そして、この課題は、一般式(I)で表される化合物と、一般式(II)で表される界面活性剤(0.0≦x+y≦8.0)とをインクに含有させた場合に初めて発生することが、本発明者らの検討により明らかになった。このような課題が発生する理由を本発明者らは以下のように考えている。
一般式(II)で表される界面活性剤は、エチレンオキサイド基の付加モル数の平均値が0.0≦x+y≦8.0の範囲にあり、従来多用されてきたアセチレングリコール系の界面活性剤と比べて、親水性基(エチレンオキサイド基)の付加モル数が少ない。すなわち、一般式(II)で表される界面活性剤は水への溶解度が相対的に低いため、記録ヘッドの吐出口から水分などが蒸発すると、吐出口の近傍では界面活性剤の濃度が相対的に上昇して、析出しやすくなる。同時に、一般式(I)で表される化合物も水分などの蒸発に伴って析出しやすい状態になるので、両者の溶解状態がいずれも不安定になる。その結果、一般式(I)で表される化合物と、一般式(II)で表される界面活性剤とが混合した状態で含まれる析出物が発生すると考えられる。このような現象は、インク中の一般式(I)で表される化合物の含有量が多いほど、適度な表面張力にするために要する一般式(II)で表される界面活性剤の含有量が多くなるため、より顕著に発生することになる。
本発明者らは、一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される界面活性剤に加えて、インクにさらに含有させる水溶性有機溶剤に着目してさらなる検討を行った。その結果、水溶性有機溶剤としてグリコールエーテルを用いることで、析出物の発生が抑制され、良好な記録物が得られることを見出した。本発明者らは、このように析出物の発生が抑制される理由を、グリコールエーテルが一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される界面活性剤の両方に対して良溶媒として作用するためであると考えている。グリコールエーテルは、一般式(I)で表される化合物に対する数少ない良溶媒のうちの一つである。また、グリコールエーテルは、親水性基の付加モル数の少ない一般式(II)で表される界面活性剤に対しても良溶媒として作用する。色材と界面活性剤のいずれか一方に対してのみ良溶媒として作用する水溶性有機溶剤では、析出物の発生を抑制することはない。例えば、色材に対してのみ良溶媒として作用するグリセリンをインクに添加しただけでは、析出物が発生しやすい。これに対して、色材と界面活性剤の両方に対して良溶媒として作用するグリコールエーテルを使用することで、水分など蒸発にともなう色材と界面活性剤の溶解状態を安定化し、析出物の発生をはじめて抑制することができる。なお、本発明における「良溶媒」とは、ある物質を溶解させやすい水溶性有機溶剤をいう。
さらに、一般式(I)で表される化合物と、グリコールエーテルとを併用すると、記録される画像の耐光性が向上することが明らかになった。本発明者らはこの理由を、グリコールエーテルを添加することで、色材が記録媒体に浸透しやすくなり、その深さ方向に浸透した位置に色材が存在するようになって、色材の劣化が抑制されるためであると考えている。
本発明者らのさらなる検討の結果、一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表される界面活性剤、及びグリコールエーテルの比率も、前述の課題を解決するために重要であることが判明した。具体的には、インク全質量を基準とした、一般式(I)で表される化合物の含有量をA(質量%)、一般式(II)で表される界面活性剤の含有量をB(質量%)、及びグリコールエーテルの含有量をC(質量%)とする。この場合、0.0<(A+B)/C≦3.0の関係を満たすことが必要である。なお、本発明のインクは、一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表される界面活性剤、及びグリコールエーテルを含有する必要があるため、(A+B)/Cの値が0.0となることはない。また、(A+B)/Cの値が3.0を超えると、色材及び界面活性剤に対して良溶媒となるグリコールエーテルの含有量が相対的に少ないため、析出物の発生を抑制する効果が得られない。
<インク>
以下、本発明のインクを構成する成分やインクの物性について詳細に説明する。
以下、本発明のインクを構成する成分やインクの物性について詳細に説明する。
(色材:一般式(I)で表される化合物)
本発明のインクは、下記一般式(I)で表される化合物を色材として含有する。インク中の一般式(I)で表される化合物(色材)の含有量A(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上であることがさらに好ましく、2.5質量%以上であることが特に好ましい。
本発明のインクは、下記一般式(I)で表される化合物を色材として含有する。インク中の一般式(I)で表される化合物(色材)の含有量A(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上であることがさらに好ましく、2.5質量%以上であることが特に好ましい。
一般式(I)中のR1は、1価の基を表す。1価の基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基(塩型でもよい)、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホン酸基(塩型でもよい)、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基を挙げることができる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを挙げることができる。
アルキル基には、置換又は無置換のアルキル基が含まれる。置換又は無置換のアルキル基としては、炭素数1乃至30のアルキル基が好ましい。置換基としては、前述の1価の基の具体例として挙げたものと同様のものを挙げることができる。それらの中でも、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、スルホン酸基(塩型でもよい)、カルボキシ基(塩型でもよい)が好ましい。アルキル基としては、メチル、エチル、ブチル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、ヒドロキシエチル、シアノエチル、4−スルホブチル、4−カルボキシブチルなどを挙げることができる。
シクロアルキル基には、置換又は無置換のシクロアルキル基が含まれる。置換又は無置換のシクロアルキル基としては、炭素数5乃至30のシクロアルキル基が好ましい。シクロアルキル基としては、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシルなどを挙げることができる。
アラルキル基には、置換又は無置換のアラルキル基が含まれる。置換又は無置換のアラルキル基としては、炭素数7乃至30のアラルキル基が好ましい。アラルキル基としては、ベンジル、2−フェネチルなどを挙げることができる。
アルケニル基には、直鎖、分岐、又は環状の、置換又は無置換のアルケニル基が含まれる。置換又は無置換のアルケニル基としては、炭素数2乃至30のアルケニル基が好ましい。アルケニル基としては、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルなどを挙げることができる。
アルキニル基には、置換又は無置換のアルキニル基が含まれる。置換又は無置換のアルキニル基としては、炭素数2乃至30のアルキニル基が好ましい。アルキニル基としては、エチニル、プロパルギルなどを挙げることができる。
アリール基には、置換又は無置換のアリール基が含まれる。置換又は無置換のアリール基としては、炭素数6乃至30のアリール基が好ましい。アリール基としては、フェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニルなどを挙げることができる。
ヘテロ環基には、置換又は無置換の、芳香族又は非芳香族のヘテロ環化合物から1個の水素原子を取り除いた1価の基が含まれる。置換又は無置換のヘテロ環基としては、炭素数3乃至30の、5員又は6員の芳香族ヘテロ環基が好ましい。このような芳香族ヘテロ環基としては、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリルなどを挙げることができる。
アルコキシ基には、置換又は無置換のアルコキシ基が含まれる。置換又は無置換のアルコキシ基としては、炭素数1乃至30のアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n−オクチルオキシ、メトキシエトキシ、ヒドロキシエトキシ、3−カルボキシプロポキシなどを挙げることができる。
アリールオキシ基には、置換又は無置換のアリールオキシ基が含まれる。置換又は無置換のアリールオキシ基としては、炭素数6乃至30のアリールオキシ基が好ましい。アリールオキシ基としては、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシなどを挙げることができる。
シリルオキシ基としては、炭素数3乃至20のシリルオキシ基が好ましい。シリルオキシ基としては、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシなどを挙げることができる。
ヘテロ環オキシ基には、置換又は無置換のヘテロ環オキシ基が含まれる。置換又は無置換のヘテロ環オキシ基としては、炭素数2乃至30のヘテロ環オキシ基が好ましい。ヘテロ環オキシ基としては、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシなどを挙げることができる。
アシルオキシ基としては、ホルミルオキシ基、炭素数2乃至30の置換又は無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6乃至30の置換又は無置換のアリールカルボニルオキシ基が好ましい。アシルオキシ基としては、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシなどを挙げることができる。
カルバモイルオキシ基には、置換又は無置換のカルバモイルオキシ基が含まれる。置換又は無置換のカルバモイルオキシ基としては、炭素数1乃至30のカルバモイルオキシ基が好ましい。カルバモイルオキシ基としては、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシなどを挙げることができる。
アルコキシカルボニルオキシ基には、置換又は無置換のアルコキシカルボニルオキシ基が含まれる。置換又は無置換のアルコキシカルボニルオキシ基としては、炭素数2乃至30のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましい。アルコキシカルボニルオキシ基としては、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシなどを挙げることができる。
アリールオキシカルボニルオキシ基には、置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が含まれる。置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基としては、炭素数7乃至30のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましい。アリールオキシカルボニルオキシ基としては、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−(n−ヘキサデシルオキシ)フェノキシカルボニルオキシなどを挙げることができる。
アルキルアミノ基には、置換又は無置換のアルキルアミノ基が含まれる。置換又は無置換のアルキルアミノ基としては、炭素数1乃至30のアルキルアミノ基が好ましい。アルキルアミノ基としては、メチルアミノ、ジメチルアミノなどを挙げることができる。
アニリノ基には、置換又は無置換のアニリノ基が含まれる。置換又は無置換のアニリノ基としては、炭素数6乃至30のアニリノ基が好ましい。アニリノ基としては、アニリノ、N−メチルアニリノ、ジフェニルアミノなどを挙げることができる。
アシルアミノ基としては、ホルミルアミノ基、炭素数1乃至30の置換又は無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6乃至30の置換又は無置換のアリールカルボニルアミノ基が好ましい。アシルアミノ基としては、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノなどを挙げることができる。
アミノカルボニルアミノ基には、置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基が含まれる。置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基としては、炭素数1乃至30のアミノカルボニルアミノ基が好ましい。アミノカルボニルアミノ基としては、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノなどを挙げることができる。
アルコキシカルボニルアミノ基には、置換又は無置換のアルコキシカルボニルアミノ基が含まれる。置換又は無置換のアルコキシカルボニルアミノ基としては、炭素数2乃至30のアルコキシカルボニルアミノ基が好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基としては、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノなどを挙げることができる。
アリールオキシカルボニルアミノ基には、置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が含まれる。置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基としては、炭素数7乃至30のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。アリールオキシカルボニルアミノ基としては、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−(n−オクチルオキシ)フェノキシカルボニルアミノなどを挙げることができる。
スルファモイルアミノ基には、置換又は無置換のスルファモイルアミノ基が含まれる。置換又は無置換のスルファモイルアミノ基としては、炭素数0乃至30のスルファモイルアミノ基が好ましい。スルファモイルアミノ基としては、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N,N−オクチルアミノスルホニルアミノなどを挙げることができる。
アルキルスルホニルアミノ基には、置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基が含まれる。置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基としては、炭素数1乃至30のアルキルスルホニルアミノ基が好ましい。アルキルスルホニルアミノ基としては、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノなどを挙げることができる。
アリールスルホニルアミノ基には、炭素数6乃至30の置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基が含まれる。置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基としては、炭素数6乃至30のアリールスルホニルアミノ基が好ましい。アリールスルホニルアミノ基としては、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノなどを挙げることができる。
アルキルチオ基には、置換又は無置換のアルキルチオ基が含まれる。置換又は無置換のアルキルチオ基としては、炭素数1乃至30のアルキルチオ基が好ましい。アルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオなどを挙げることができる。
アリールチオ基には、置換又は無置換のアリールチオ基が含まれる。置換又は無置換のアリールチオ基としては、炭素数6乃至30のアリールチオ基が好ましい。アリールチオ基としては、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオなどを挙げることができる。
ヘテロ環チオ基には、置換又は無置換のヘテロ環チオ基が含まれる。置換又は無置換のヘテロ環チオ基としては、炭素数2乃至30のヘテロ環チオ基が好ましい。ヘテロ環チオ基としては、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオなどを挙げることができる。
スルファモイル基には、置換又は無置換のスルファモイル基が含まれる。置換又は無置換のスルファモイル基としては、炭素数0乃至30のスルファモイル基が好ましい。スルファモイル基としては、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)などを挙げることができる。
アルキルスルフィニル基には、置換又は無置換のアルキルスルフィニル基が含まれる。置換又は無置換のアルキルスルフィニル基としては、炭素数1乃至30のアルキルスルフィニル基が好ましい。アルキルスルフィニル基としては、メチルスルフィニル、エチルスルフィニルなどを挙げることができる。
アリールスルフィニル基には、置換又は無置換のアリールスルフィニル基が含まれる。置換又は無置換のアリールスルフィニル基としては、炭素数6乃至30のアリールスルフィニル基が好ましい。アリールスルフィニル基としては、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニルなどを挙げることができる。
アルキルスルホニル基には、置換又は無置換のアルキルスルホニル基が含まれる。置換又は無置換のアルキルスルホニル基としては、炭素数1乃至30のアルキルスルホニル基が好ましい。アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル、エチルスルホニルなどを挙げることができる。
アリールスルホニル基には、置換又は無置換のアリールスルホニル基が含まれる。置換又は無置換のアリールスルホニル基としては、炭素数6乃至30のアリールスルホニル基が好ましい。アリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニルなどを挙げることができる。
アシル基としては、ホルミル基、炭素数2乃至30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7乃至30の置換又は無置換のアリールカルボニル基、炭素数4乃至30の置換又は無置換の、炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基が好ましい。アシル基としては、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−(n−オクチルオキシ)フェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニルなどを挙げることができる。
アリールオキシカルボニル基には、置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基が含まれる。置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基としては、炭素数7乃至30のアリールオキシカルボニル基が好ましい。アリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−(t−ブチル)フェノキシカルボニルなどを挙げることができる。
アルコキシカルボニル基には、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基が含まれる。置換又は無置換のアルコキシカルボニル基としては、炭素数2乃至30のアルコキシカルボニル基が好ましい。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニルなどを挙げることができる。
カルバモイル基には、置換又は無置換のカルバモイル基が含まれる。置換又は無置換のカルバモイル基としては、炭素数1乃至30のカルバモイル基が好ましい。カルバモイル基としては、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイルなどを挙げることができる。
イミド基には、置換又は無置換のイミド基が含まれる。置換又は無置換のイミド基としては、炭素数4乃至30のイミド基が好ましい。イミド基としては、スクシンイミド、フタルイミド、グルタルイミド、ヘキサンイミドなどを挙げることができる。
ホスフィノ基には、置換又は無置換のホスフィノ基が含まれる。置換又は無置換のホスフィノ基としては、炭素数2乃至30のホスフィノ基が好ましい。ホスフィノ基としては、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノなどを挙げることができる。
ホスフィニル基には、置換又は無置換のホスフィニル基が含まれる。置換又は無置換のホスフィニル基としては、炭素数2乃至30のホスフィニル基が好ましい。ホスフィニル基としては、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニルなどを挙げることができる。
ホスフィニルオキシ基には、置換又は無置換のホスフィニルオキシ基が含まれる。置換又は無置換のホスフィニルオキシ基としては、炭素数2乃至30のホスフィニルオキシ基が好ましい。ホスフィニルオキシ基としては、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシなどを挙げることができる。
ホスフィニルアミノ基には、置換又は無置換のホスフィニルアミノ基が含まれる。置換又は無置換のホスフィニルアミノ基としては、炭素数2乃至30のホスフィニルアミノ基が好ましい。ホスフィニルアミノ基としては、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノなどを挙げることができる。
シリル基には、置換又は無置換のシリル基が含まれる。置換又は無置換のシリル基としては、炭素数3乃至30のシリル基の好ましい。シリル基としては、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリルなどを挙げることができる。
上述の1価の基の中で水素原子を有するものは、この水素原子が前述の1価の基で置換されていてもよい。そのような置換基としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基などが挙げられる。その具体例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基などを挙げることができる。
一般式(I)中のR2は、−OR3又は−NHR4を表す。また、R3及びR4は水素原子又は1価の基を表す。この1価の基としては、前述のR1で表される1価の基について例示したものと、好ましいものを含めて同様のものを挙げることができる。R2としては、−OH又は−NH2が好ましく、−NH2がさらに好ましい。
一般式(I)中のR5は、アルキル基、アリール基、又は1価のトリアジン環基を表す。R5で表されるアルキル基には、置換又は無置換のアルキル基が含まれる。R5で表されるアルキル基としては、前述のR1で表される1価の基のうちのアルキル基について例示したものと、好ましいものを含めて同様のものを挙げることができる。R5で表されるアリール基には、置換又は無置換のアリール基が含まれる。R5で表されるアリール基としては、前述のR1で表される1価の基のうちのアリール基について例示したものと、好ましいものを含めて同様のものを挙げることができる。R5で表される1価のトリアジン環基には、置換又は無置換のトリアジン環基が含まれる。なお、R5の各基が置換基を有する場合、置換基としては、前述のR1で表される1価の基について例示したものと、好ましいものを含めて同様のものを挙げることができる。
一般式(I)中のR6は、アリーレン基又は2価のヘテロ環基を表す。R6で表されるアリーレン基には、置換又は無置換のアリーレン基が含まれる。置換若しくは無置換のアリーレン基としては、炭素数6乃至30のアリーレン基が好ましい。置換基の例としては、前述のR1で表される1価の基について例示したものと同様のものを挙げることができる。前記アリーレン基としては、フェニレン、ナフチレンなどを挙げることができる。
R6で表される2価のヘテロ環基は5員環又は6員環であることが好ましい。これらの2価のヘテロ環はさらに縮環していてもよく、芳香族ヘテロ環であっても、非芳香族ヘテロ環であってもよい。一般的に、ヘテロ環基はI型とII型に分類することができる。I型のヘテロ環基は、酸性核として知られている。I型のヘテロ環基としては、5−ピラゾロン環、5−アミノピラゾール環、オキサゾロン環、バルビツール酸環、ピリドン環、ローダニン環、ピラゾリジンジオン環、ピラゾロピリドン環、メルドラム酸環などを挙げることができる。なかでも、5−ピラゾロン環、及び5−アミノピラゾール環が好ましい。II型のヘテロ環基は、塩基性核として知られている。II型のヘテロ環基としては、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどを挙げることができる。なかでも、芳香族ヘテロ環基が好ましく、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾールがさらに好ましく、耐光性の観点からチアジアゾールが特に好ましい。2価のヘテロ環基は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述のR1で表される1価の基について例示したものと同様のものを挙げることができる。
一般式(I)中のR7は、2価の連結基を表し、mは0又は1を表す。mが0である場合、2つのR6が互いに結合した構造であることを意味する。
R7で表される2価の連結基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンなどのアルキレン基;エテニレン、プロぺニレンなどのアルケニレン基;エチニレン、プロピニレンなどのアルキニレン基;フェニレン、ナフチレンなどのアリーレン基;6−クロロ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル基、ピリミジン−2,4−ジイル基、キノキサリン−2,3−ジイル基などの2価のヘテロ環基;−O−;−CO−;−NR9−(R9は水素原子、アルキル基又はアリール基);−S−;−SO2−;−SO−;及びこれらの組み合わせなどを挙げることができる。
アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、2価のヘテロ環基、R9で表されるアルキル基及びアリール基は、いずれも置換基を有していてもよい。置換基としては、前述のR1で表される1価の基について例示したものと同様のものを挙げることができる。R9で表されるアルキル基及びアリール基としては、前述のR1で表される1価の基のうちのアルキル基及びアリール基について例示したものと、好ましいものを含めて同様のものを挙げることができる。
一般式(I)中のR7は、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のアルケニレン基、炭素数10以下のアルキニレン基、炭素数6以上10以下のアリーレン基、2価のヘテロ環基、−O−、−S−、又はこれらの組み合わせであることがさらに好ましい。これらのなかでも、−S−とアルキレン基との組み合わせであることが、一般式(I)で表される化合物の安定性の観点から特に好ましい。
R7で表される2価の連結基の総炭素数は、0乃至50であることが好ましく、0乃至30であることがさらに好ましく、0乃至10であることが特に好ましい。
一般式(I)で表される化合物のなかでも、下記一般式(III)で表される化合物が好ましい。
一般式(III)中、R1は1価の基を表し、R2は−OR3又は−NHR4を表す(R3及びR4は水素原子又は1価の基を表す)。R6はアリーレン基又は2価のヘテロ環基を表し、R7は2価の連結基を表し、mは0又は1を表す。R8はイオン性基を表し、nは1又は2を表す。
一般式(III)中のR1乃至R4、R6、及びR7は、前記一般式(I)中のR1乃至R4、R6、及びR7と同義であり、好ましい基及びその組み合わせも、前記一般式(I)中のR1乃至R4、R6、及びR7と同様である。一般式(III)中、R8で表されるイオン性基は塩型であってもよい。イオン性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基などを挙げることができる。塩を形成する場合のカウンターイオンとしては、アルカリ金属;アンモニア(NH3);有機アンモニウムなどのカチオンを挙げることができる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどを挙げることができる。有機アンモニウムとしては、メチルアミン、エチルアミンなどの炭素数1以上3以下のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの炭素数1以上4以下のモノ、ジ又はトリアルカノールアミン類などの有機アンモニウムなどを挙げることができる。なお、一般式(I)で表される化合物が、1価の基や置換基としてイオン性基を有する場合にも、R8と同様に塩型であってもよく、この場合のカウンターイオンとしては、上述のカチオンと同様のものを挙げることができる。
本発明においては、一般式(I)で表される化合物が、以下の構造を有するものであることが特に好ましい。R2はアミノ基であることが好ましい。R6はヘテロ環基であることが好ましく、チアジアゾールであることがさらに好ましい。また、R7はアルキレン基又はヘテロ原子を含むアルキレン基であることが好ましく、ヘテロ原子を含むアルキレン基であることがさらに好ましい。
一般式(I)で表される化合物の好適例を遊離酸型で表すと、以下に示す例示化合物1乃至41を挙げることができる。勿論、本発明においては、一般式(I)の構造及びその定義に包含されるものであれば、以下に示す例示化合物に限定されない。本発明においては、以下に示す例示化合物のなかでも、例示化合物10〜22、27〜31、33、34、41が好ましく、例示化合物11がさらに好ましい。
(色材の検証方法)
本発明で用いる色材が各インク中に含まれているか否かを検証するには、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた下記(1)〜(3)の検証方法を適用することができる。
(1)ピークの保持時間
(2)(1)のピークについての極大吸収波長
(3)(1)のピークについてのマススペクトルのM/Z(posi)、M/Z(nega)
本発明で用いる色材が各インク中に含まれているか否かを検証するには、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた下記(1)〜(3)の検証方法を適用することができる。
(1)ピークの保持時間
(2)(1)のピークについての極大吸収波長
(3)(1)のピークについてのマススペクトルのM/Z(posi)、M/Z(nega)
高速液体クロマトグラフィーの分析条件は、以下に示す通りである。純水で約1,000倍に希釈した液体(インク)を測定用サンプルとする。そして、下記の条件で高速液体クロマトグラフィーでの分析を行い、ピークの保持時間(retention time)、及びピークの極大吸収波長を測定する。
・カラム:SunFire C18(日本ウォーターズ製)2.1mm×150mm
・カラム温度:40℃
・流速:0.2mL/min
・PDA:200nm〜700nm
・移動相及びグラジエント条件:表1
・カラム:SunFire C18(日本ウォーターズ製)2.1mm×150mm
・カラム温度:40℃
・流速:0.2mL/min
・PDA:200nm〜700nm
・移動相及びグラジエント条件:表1
また、マススペクトルの分析条件は以下に示す通りである。得られたピークについて、下記の条件でマススペクトルを測定し、最も強く検出されたM/Zをposi及びnegaのそれぞれに対して測定する。
・イオン化法:ESI
・キャピラリ電圧:3.5kV
・脱溶媒ガス:300℃
・イオン源温度:120℃
・検出器:
posi;40V 200〜1500amu/0.9sec
nega;40V 200〜1500amu/0.9sec
・イオン化法:ESI
・キャピラリ電圧:3.5kV
・脱溶媒ガス:300℃
・イオン源温度:120℃
・検出器:
posi;40V 200〜1500amu/0.9sec
nega;40V 200〜1500amu/0.9sec
上記した方法及び条件下で、一般式(I)で表される化合物の具体例である例示化合物11について測定を行った。その結果、得られた保持時間、極大吸収波長、M/Z(posi)、及びM/Z(nega)の値を表2に示す。未知のインクについて、上記と同様の方法及び条件下で測定を行って、得られた測定値が表2に示す値に該当する場合、本発明のインクに用いる化合物を含有すると判断することができる。
(一般式(II)で表される界面活性剤)
本発明のインクには界面活性剤が含有される。そして、この界面活性剤には下記一般式(II)で表される界面活性剤が含まれる。
(一般式(II)中、0.0≦x+y≦8.0である。)
本発明のインクには界面活性剤が含有される。そして、この界面活性剤には下記一般式(II)で表される界面活性剤が含まれる。
(一般式(II)中、0.0≦x+y≦8.0である。)
エチレンオキサイド基の付加モル数の平均値が0.0≦x+y≦8.0である一般式(II)で表される界面活性剤をインクに添加することにより、インクジェット用のインクとしての適度な表面張力と吐出安定性を両立させることができる。x+yの値が8.0を超えると、適度な表面張力にするためには、一般式(II)で表される界面活性剤の含有量が増加するので、インクの吐出安定性が低下する。なお、x+y=0.0である場合、エチレンオキサイド基が存在しないことを意味する。
一般式(II)で表される界面活性剤の好適例としては、以下商品名で、アセチレノールE70(x+y=7.0)、アセチレノールE60(x+y=6.0)、アセチレノールE40(x+y=4.0)など(以上、川研ファインケミカル製);サーフィノール440(x+y=3.4、日信化学工業製)などを挙げることができる。
一般式(II)で表される界面活性剤のエチレンオキサイド基の付加モル数の平均値とは、一般式(II)で表される界面活性剤1モル当たりに付加した、エチレンオキサイド基の繰り返し単位(−CH2−CH2−O−)のモル数の平均値を意味する。エチレンオキサイド基の付加モル数は、液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS)、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)などの一般的な分析手法により知ることができる。
一般式(II)で表される界面活性剤における、エチレンオキサイド基の付加モル数の平均値x+yは4.0≦x+y≦7.0であることが好ましい。x+yの値が4.0未満であると、界面活性剤の水に対する溶解度が低くなって析出しやすくなる。このため、析出物の発生を十分に抑制することができない場合がある。一方、x+yの値が7.0を超えると、所望の表面張力にするために要する界面活性剤の添加量が増加する。このため、析出物の発生を十分に抑制することができない場合がある。
本発明においては、一般式(II)で表される界面活性剤における、3.0≦x+y≦8.0の範囲にあるエチレンオキサイド基の付加モル数の、全てのエチレンオキサイド基の付加モル数に対して占める割合が、55%以上であることが好ましい。上記の割合が55%未満であると、x+y<3.0又は8.0<x+yの領域の界面活性剤が多く含まれることになる。すなわち、水への溶解度の低い界面活性剤の含有量が多い、或いは所望の表面張力にするために添加する界面活性剤の量が多くなる。このため、吐出口付近の析出物の発生を十分に抑制できない場合がある。
3.0≦x+y≦8.0の範囲にあるエチレンオキサイド基の付加モル数の、全てのエチレンオキサイド基の付加モル数に対して占める割合は、高速液体クロマトグラフィーにより得られるピーク面積から算出する。具体的には、前記割合は、(3.0≦x+y≦8.0である界面活性剤のピーク面積)/(全てのx+yの界面活性剤のピーク面積)×100(%)の式に基づいて算出する。
高速液体クロマトグラフィーの分析条件は、以下に示す通りである。
・カラム:LiChrosorb DIOL 5μm (メルク製)4.6mm×250mm
・カラム温度:40℃
・流速:1.0mL/min
・検出器:RI−8020
・濃度:0.3g/20mL
・注入量:20μL
・圧力:3.4MPa
・溶離液:n−ヘキサン/イソプロピルアルコール=80/20
高速液体クロマトグラフィーの分析条件は、以下に示す通りである。
・カラム:LiChrosorb DIOL 5μm (メルク製)4.6mm×250mm
・カラム温度:40℃
・流速:1.0mL/min
・検出器:RI−8020
・濃度:0.3g/20mL
・注入量:20μL
・圧力:3.4MPa
・溶離液:n−ヘキサン/イソプロピルアルコール=80/20
一般式(II)で表される界面活性剤として、エチレンオキサイド基の付加モル数の平均値(x+y)が互いに異なる複数の化合物を用いる場合、エチレンオキサイド基の付加モル数の平均値(x+y)は、それらの化合物の含有量に応じて決定される。そして、エチレンオキサイド基の付加モル数の平均値が判明している化合物を組み合わせることで、形式上、所定の付加モル数の平均値の範囲を満たすことは可能である。しかし、付加モル数が小さい界面活性剤をあまり多くインクに含有させると、析出物の発生という課題に対して、本発明の効果が十分には得られない場合があるために好ましくない。
インク中の一般式(II)で表される界面活性剤の含有量B(質量%)は、インクの表面張力を所望の値にするのに必要な含有量にすることが好ましい。また、一般式(II)で表される界面活性剤におけるエチレンオキサイド基の付加モル数の平均値(x+y)によって、含有量の好ましい範囲を決めればよい。具体的には、インク中の一般式(II)で表される界面活性剤の含有量B(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、この範囲に入るようにx+yの値を選択することが好ましい。特には、0.5質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、この範囲に入るようにx+yの値を選択することがより好ましい。
一般式(II)で表される界面活性剤の含有量B(質量%)と、一般式(I)で表される化合物の含有量A(質量%)の比率などは、グリコールエーテルやその他の水性媒体に応じて適宜変更し、所望の表面張力となるように決定することが好ましい。
(グリコールエーテル)
本発明のインクには水溶性有機溶剤が含有される。そして、この水溶性有機溶剤にはグリコールエーテルが含まれる。インク中のグリコールエーテルの含有量C(質量%)は、インク全質量を基準として、2.0質量%以上12.0質量%以下であることが好ましい。インク中のグリコールエーテルの含有量C(質量%)が2.0質量%未満であると、インクジェット記録装置を長期間使用した場合に、一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される界面活性剤が十分に溶解されず、析出物が生ずる場合がある。一方、インク中のグリコールエーテルの含有量C(質量%)が12.0質量%を超えると、インクの粘度が上昇してインクの吐出速度の低下につながり、良好な吐出安定性が得られない場合がある。
本発明のインクには水溶性有機溶剤が含有される。そして、この水溶性有機溶剤にはグリコールエーテルが含まれる。インク中のグリコールエーテルの含有量C(質量%)は、インク全質量を基準として、2.0質量%以上12.0質量%以下であることが好ましい。インク中のグリコールエーテルの含有量C(質量%)が2.0質量%未満であると、インクジェット記録装置を長期間使用した場合に、一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される界面活性剤が十分に溶解されず、析出物が生ずる場合がある。一方、インク中のグリコールエーテルの含有量C(質量%)が12.0質量%を超えると、インクの粘度が上昇してインクの吐出速度の低下につながり、良好な吐出安定性が得られない場合がある。
好適に使用することができるグリコールエーテルの具体例としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリプロピレングリコールモノメチル(又はプロピル)エーテルなどを挙げることができる。なかでも、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが特に好ましい。
(水性媒体)
本発明のインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。本発明においては、水性媒体として少なくとも水を含有する、水性のインクとすることが好ましい。水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。本発明においては、水性媒体として少なくとも水を含有する、水性のインクとすることが好ましい。水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限はなく、アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶媒、含硫黄極性溶媒などを用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、5.0質量%以上90.0質量%以下、さらには10.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。なお、この含有量は、グリコールエーテルの含有量を含む値である。水溶性有機溶剤の含有量が上記した範囲より少ないと、インクをインクジェット記録装置に用いる場合に吐出安定性などの信頼性が得られない場合がある。また、水溶性有機溶剤の含有量が上記した範囲より多いと、インクの粘度が上昇して、インクの供給不良が起きる場合がある。
(その他の添加剤)
本発明のインクは、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、本発明のインクは、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び水溶性樹脂など、種々の添加剤を含有してもよい。
本発明のインクは、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、本発明のインクは、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び水溶性樹脂など、種々の添加剤を含有してもよい。
(その他のインク)
また、フルカラーの画像などを形成するために、本発明のインクと、本発明のインクとは別の色相を有するその他のインクとを組み合わせて用いることができる。その他のインクとしては、例えば、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、レッドインク、グリーンインク、及びブルーインクからなる群より選択される少なくとも一種のインクを挙げることができる。また、これらのインクと実質的に同一の色相を有する、いわゆる淡インクをさらに組み合わせて用いることもできる。その他のインクや淡インクに用いられる色材は、公知の染料であっても、新規に合成された染料であってもよい。
また、フルカラーの画像などを形成するために、本発明のインクと、本発明のインクとは別の色相を有するその他のインクとを組み合わせて用いることができる。その他のインクとしては、例えば、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、レッドインク、グリーンインク、及びブルーインクからなる群より選択される少なくとも一種のインクを挙げることができる。また、これらのインクと実質的に同一の色相を有する、いわゆる淡インクをさらに組み合わせて用いることもできる。その他のインクや淡インクに用いられる色材は、公知の染料であっても、新規に合成された染料であってもよい。
(インクの物性)
本発明のインクの25℃における表面張力は、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上60mN/m以下であることがさらに好ましく、30mN/m以上40mN/m以下であることが特に好ましい。インクの表面張力を上記した範囲内とすることで、インクジェット方式に適用した際に吐出口近傍の濡れによる吐出よれ(インクの着弾点のズレ)などの発生を有効に抑制することが可能となる。インクの表面張力は、インク中の界面活性剤や水溶性有機溶剤などの含有量を適宜設定することで調整することができる。また、インクジェット方式の記録ヘッドの吐出口から吐出する際に良好な吐出特性が得られるように、インクの粘度を調整することが好ましい。本発明のインクの25℃における粘度は、1.0mPa・s以上5.0mPa・sであることが好ましく、1.0mPa・s以上3.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。
本発明のインクの25℃における表面張力は、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上60mN/m以下であることがさらに好ましく、30mN/m以上40mN/m以下であることが特に好ましい。インクの表面張力を上記した範囲内とすることで、インクジェット方式に適用した際に吐出口近傍の濡れによる吐出よれ(インクの着弾点のズレ)などの発生を有効に抑制することが可能となる。インクの表面張力は、インク中の界面活性剤や水溶性有機溶剤などの含有量を適宜設定することで調整することができる。また、インクジェット方式の記録ヘッドの吐出口から吐出する際に良好な吐出特性が得られるように、インクの粘度を調整することが好ましい。本発明のインクの25℃における粘度は、1.0mPa・s以上5.0mPa・sであることが好ましく、1.0mPa・s以上3.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22,24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22,24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
図2は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<色材の合成>
(化合物A)
(a)
下記式(1)で表される化合物13.3gをメタノール100mLに溶解させて得た溶液に、水酸化カリウム4.5gを水に溶解させて得た水溶液20mLと、1,2−ジブロムエタン10.0gとを加えた。2時間還流した後、析出した結晶をろ過して下記式(2)で表される化合物13.0gを得た。
(化合物A)
(a)
下記式(1)で表される化合物13.3gをメタノール100mLに溶解させて得た溶液に、水酸化カリウム4.5gを水に溶解させて得た水溶液20mLと、1,2−ジブロムエタン10.0gとを加えた。2時間還流した後、析出した結晶をろ過して下記式(2)で表される化合物13.0gを得た。
(b)
下記式(3)で表される化合物59.8g、ピバロイルアセトニトリル32.0g、炭酸水素ナトリウム65.0g、水340mL、及びエタノール340mLの混合液を2時間加熱した後、塩酸60mLを加えた。さらに2時間加温した後、析出した結晶をろ過して下記式(4)で表される化合物61.0gを得た。
下記式(3)で表される化合物59.8g、ピバロイルアセトニトリル32.0g、炭酸水素ナトリウム65.0g、水340mL、及びエタノール340mLの混合液を2時間加熱した後、塩酸60mLを加えた。さらに2時間加温した後、析出した結晶をろ過して下記式(4)で表される化合物61.0gを得た。
(c)
前記手順(b)で得た式(4)で表される化合物6.0g、メタノール80mL、及び酢酸ソーダ30gの混合液を10℃以下に冷却した。また、前記手順(a)で得た式(2)で表される化合物3.0g及び亜硝酸ナトリウムを混合してジアゾ液を得た。このジアゾ液を10℃以下で混合液に加え、室温で2時間撹拌した。析出した結晶をろ過した後、セファデックス(商品名)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに塩酸を添加してpHを1.0以下に調整して、遊離酸型として下記式(5)で表される化合物A 4.3gを得た。
前記手順(b)で得た式(4)で表される化合物6.0g、メタノール80mL、及び酢酸ソーダ30gの混合液を10℃以下に冷却した。また、前記手順(a)で得た式(2)で表される化合物3.0g及び亜硝酸ナトリウムを混合してジアゾ液を得た。このジアゾ液を10℃以下で混合液に加え、室温で2時間撹拌した。析出した結晶をろ過した後、セファデックス(商品名)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに塩酸を添加してpHを1.0以下に調整して、遊離酸型として下記式(5)で表される化合物A 4.3gを得た。
(d)
前記手順(c)で得た遊離酸型の化合物Aに水酸化カリウム水溶液を添加してpHを8.0に調整し、カリウム塩型の化合物Aを得た。
前記手順(c)で得た遊離酸型の化合物Aに水酸化カリウム水溶液を添加してpHを8.0に調整し、カリウム塩型の化合物Aを得た。
<インクの調製>
表3−1〜3−3の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズ0.20μmのフィルターで加圧ろ過して各インクを調製した。なお、表3−1〜3−3中の「アセチレノールE100」、「アセチレノールE70」、「アセチレノールE60」、「アセチレノールE40」、及び「アセチレノールE00」は、いずれも一般式(II)で表される構造を有する界面活性剤である。これらはいずれも川研ファインケミカル製の界面活性剤の商品名である。また、「サーフィノール440」(日信化学工業製、商品名)も、一般式(II)で表される構造を有する界面活性剤である。なお、括弧内にx+yの値を示した。さらに、表3−1〜3−3の下段には、各インクの「(A+B)/Cの値」、及び「x+yの平均値」を示した。
表3−1〜3−3の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズ0.20μmのフィルターで加圧ろ過して各インクを調製した。なお、表3−1〜3−3中の「アセチレノールE100」、「アセチレノールE70」、「アセチレノールE60」、「アセチレノールE40」、及び「アセチレノールE00」は、いずれも一般式(II)で表される構造を有する界面活性剤である。これらはいずれも川研ファインケミカル製の界面活性剤の商品名である。また、「サーフィノール440」(日信化学工業製、商品名)も、一般式(II)で表される構造を有する界面活性剤である。なお、括弧内にx+yの値を示した。さらに、表3−1〜3−3の下段には、各インクの「(A+B)/Cの値」、及び「x+yの平均値」を示した。
<評価>
(耐光性)
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「PIXUS iP8600」、キヤノン製)に搭載した。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に22ngのインクを付与して記録したベタ画像を「記録デューティが100%である」と定義する。このインクジェット記録装置を用いて、温度23℃、相対湿度55%の環境で、記録媒体に、記録デューティが100%及び50%であるベタ画像をそれぞれ記録した記録物を作製した。なお、記録媒体としては、商品名「キヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]PT101」(キヤノン製)を使用した。得られた記録物を、温度23℃、相対湿度55%の環境で24時間乾燥させた。得られた記録物の2種類のベタ画像の光学濃度を測定した(耐光性試験前の光学濃度)。この記録物をスーパーキセノン試験機(商品名「SX−75」、スガ試験機製)中に載置し、槽内温度24℃、相対湿度60%、照射強度100キロルクスで168時間、キセノン光の照射を行った。その後、記録物の2種類のベタ画像の光学濃度を測定した(耐光性試験後の光学濃度)。光学濃度は、分光光度計(商品名「Spectrolino」、Gretag Macbeth製)を用いて、光源:D50、視野:2°の条件で測定した。得られた耐光性試験前の光学濃度及び耐光性試験後の光学濃度の値から、光学濃度の残存率=耐光性試験後の光学濃度/耐光性試験前の光学濃度×100%を算出し、以下に示す評価基準にしたがって耐光性を評価した。本発明においては、下記の評価基準で、B及びCを許容できないレベル、Aを許容できるレベルとした。評価結果を表4に示す。
A:2種の記録デューティのベタ画像において、光学濃度の残存率がいずれも80%以上であった。
B:2種の記録デューティのベタ画像のいずれか一方のみにおいて、光学濃度の残存率が80%以上であった。
C:2種の記録デューティのベタ画像において、光学濃度の残存率がいずれも80%未満であった。
(耐光性)
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「PIXUS iP8600」、キヤノン製)に搭載した。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に22ngのインクを付与して記録したベタ画像を「記録デューティが100%である」と定義する。このインクジェット記録装置を用いて、温度23℃、相対湿度55%の環境で、記録媒体に、記録デューティが100%及び50%であるベタ画像をそれぞれ記録した記録物を作製した。なお、記録媒体としては、商品名「キヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]PT101」(キヤノン製)を使用した。得られた記録物を、温度23℃、相対湿度55%の環境で24時間乾燥させた。得られた記録物の2種類のベタ画像の光学濃度を測定した(耐光性試験前の光学濃度)。この記録物をスーパーキセノン試験機(商品名「SX−75」、スガ試験機製)中に載置し、槽内温度24℃、相対湿度60%、照射強度100キロルクスで168時間、キセノン光の照射を行った。その後、記録物の2種類のベタ画像の光学濃度を測定した(耐光性試験後の光学濃度)。光学濃度は、分光光度計(商品名「Spectrolino」、Gretag Macbeth製)を用いて、光源:D50、視野:2°の条件で測定した。得られた耐光性試験前の光学濃度及び耐光性試験後の光学濃度の値から、光学濃度の残存率=耐光性試験後の光学濃度/耐光性試験前の光学濃度×100%を算出し、以下に示す評価基準にしたがって耐光性を評価した。本発明においては、下記の評価基準で、B及びCを許容できないレベル、Aを許容できるレベルとした。評価結果を表4に示す。
A:2種の記録デューティのベタ画像において、光学濃度の残存率がいずれも80%以上であった。
B:2種の記録デューティのベタ画像のいずれか一方のみにおいて、光学濃度の残存率が80%以上であった。
C:2種の記録デューティのベタ画像において、光学濃度の残存率がいずれも80%未満であった。
(吐出安定性)
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「BJF890」、キヤノン製)に搭載した。このインクジェット記録装置を、温度15℃、相対湿度10%の環境に載置して、記録ヘッドの吐出口近傍に存在するインクの温度が上昇しないようにしたまま、5時間以上吐出を行わずに放置した。次いで、記録ヘッドの吸引回復操作を行った後、3.0×108回の電気パルスを付与してインクを吐出させた。さらに、記録媒体(商品名「高品位専用紙 HR−101」、キヤノン製)にノズルチェックパターンを記録した。得られたノズルチェックパターンを目視で確認し、また、記録ヘッドの吐出口を光学顕微鏡で観察することにより、吐出口近傍に析出物が発生したか否か確認して、以下に示す評価基準にしたがって吐出安定性を評価した。本発明においては、下記の評価基準で、Cを許容できないレベル、A及びBを許容できるレベルとした。評価結果を表4に示す。
A:ノズルチェックパターンに乱れがなく、吐出口近傍における析出物も発生していなかった。
B:ノズルチェックパターンの乱れ、及び、吐出口近傍における析出物、のいずれか一方のみが発生していた。
C:ノズルチェックパターンの乱れと、吐出口近傍における析出物と、の両方が発生していた。
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「BJF890」、キヤノン製)に搭載した。このインクジェット記録装置を、温度15℃、相対湿度10%の環境に載置して、記録ヘッドの吐出口近傍に存在するインクの温度が上昇しないようにしたまま、5時間以上吐出を行わずに放置した。次いで、記録ヘッドの吸引回復操作を行った後、3.0×108回の電気パルスを付与してインクを吐出させた。さらに、記録媒体(商品名「高品位専用紙 HR−101」、キヤノン製)にノズルチェックパターンを記録した。得られたノズルチェックパターンを目視で確認し、また、記録ヘッドの吐出口を光学顕微鏡で観察することにより、吐出口近傍に析出物が発生したか否か確認して、以下に示す評価基準にしたがって吐出安定性を評価した。本発明においては、下記の評価基準で、Cを許容できないレベル、A及びBを許容できるレベルとした。評価結果を表4に示す。
A:ノズルチェックパターンに乱れがなく、吐出口近傍における析出物も発生していなかった。
B:ノズルチェックパターンの乱れ、及び、吐出口近傍における析出物、のいずれか一方のみが発生していた。
C:ノズルチェックパターンの乱れと、吐出口近傍における析出物と、の両方が発生していた。
比較例1のインクを密閉容器に入れて温度60℃の環境で12時間放置したところ、インクの表面に油状の成分が分離していた。比較例1のインク中の染料と界面活性剤との親和性が低いため、界面活性剤が分離したと考えられる。このように、x+yの平均値が0.0≦x+y≦8.0の範囲にある界面活性剤は疎水性が高いため、一般式(I)で表される化合物ではない一般的な染料と組み合わせると、界面活性剤が分離してしまうことが多い。
Claims (8)
- 色材、界面活性剤、及び水溶性有機溶剤を含有するインクジェット用のインクであって、
前記色材が、下記一般式(I)で表される化合物であり、前記界面活性剤が、下記一般式(II)で表される界面活性剤を含み、前記水溶性有機溶剤が、グリコールエーテルを含み、
インク全質量を基準とした、下記一般式(I)で表される化合物の含有量A(質量%)、下記一般式(II)で表される界面活性剤の含有量B(質量%)、及び前記グリコールエーテルの含有量C(質量%)が、0.0<(A+B)/C≦3.0の関係を満たすことを特徴とするインク。
(前記一般式(I)中、R1は1価の基を表し、R2は−OR3又は−NHR4を表し(R3及びR4は水素原子又は1価の基を表す)、R5はアルキル基、アリール基、又は1価のトリアジン環基を表し、R6はアリーレン基又は2価のヘテロ環基を表し、R7は2価の連結基を表し、mは0又は1を表す)
(前記一般式(II)中、0.0≦x+y≦8.0である) - 前記グリコールエーテルの含有量C(質量%)が、インク全質量を基準として、2.0質量%以上12.0質量%以下である請求項1又は2に記載のインク。
- 前記一般式(II)において、4.0≦x+y≦7.0である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインク。
- 前記一般式(II)で表される界面活性剤における、3.0≦x+y≦8.0の範囲にあるエチレンオキサイド基の付加モル数の、全てのエチレンオキサイド基の付加モル数に対して占める割合が、55%以上である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインク。
- 前記グリコールエーテルが、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルの少なくとも一方である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインク。
- インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
前記インクが、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクカートリッジ。 - インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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---|---|---|---|
JP2012176880A JP2014034642A (ja) | 2012-08-09 | 2012-08-09 | インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 |
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