JP2014033818A - 超音波診断用探触子の装着用スペーサー - Google Patents

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Abstract

【課題】超音波診断用探触子の形状が多少異なっていても、取付け部材を使用しないで簡単かつ確実に装着できる汎用性のある超音波診断用探触子の装着用スペーサーを提供する。
【解決手段】粘着性を有するゲル弾性体からなる装着用スペーサー10であって、超音波診断用探触子の先端を被覆する探触子先端被覆部1aと、探触子先端被覆部1aの両側に連設され且つ探触子の外面に粘着固定される粘着固定部1bを備え、粘着固定部1bの厚さD2が探触子先端被覆部1aの厚さD1よりも薄い構成とする。粘着固定部1bの厚さD2を探触子先端被覆部1aの厚さD1より薄くすることで粘着固定部1bの可撓性、柔軟性を向上させ、粘着固定部1bを探触子の外面の起伏形状に追従して可撓変形させながら、取付け部材を使用しないでゲル弾性体の粘着力で確実に粘着させて、スペーサーを装着する。
【選択図】図2

Description

本発明は、超音波診断用探触子の装着用スペーサーに関し、更に詳しくは、取付け部材を使用しないで超音波診断用探触子に簡単かつ確実に装着することができる装着用スペーサーに関する。
超音波診断法は、他の診断法に比べて、使用する装置が安価であり、患者に対する負担が少なく簡単に実施できることから、体内各部の組織の診断に多用されている。この超音波診断法は、プローブと呼ばれる超音波診断用の探触子を体表に押し当て、探触子から発振される超音波の反射波を探触子で受信して体内組織を診断するものであるが、探触子と体表との間に空気が存在すると超音波の伝搬が妨げられるため、従来より流動性がある不定形のジェルを体表に塗布することで探触子の密着性を高めている。けれども、ジェルを使用する場合は、探触子と体表との距離を一定に保つことが難しく、また、ジェル中に気泡が混入すると良好な超音波診断画像が得られないという欠点があった。
これに対し、超音波診断用探触子と体表との間に介在させるスペーサーとして、図11に示すようなゲル状弾性体101からなるスペーサーであって、取付け部材102の先端部102aをゲル状弾性体101に埋設し、この取付け部材102を超音波診断用探触子103に脱着自在に取付けることによって、ゲル状弾性体101が探触子103の先端に密接するように構成した超音波診断用探触子の装着用スペーサーが開示されている(特許文献1)。この装着用スペーサーは、ジェルを体表に塗布する場合の前記欠点を解消できるものである
特開平4−303433号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示された装着用スペーサーのように、取付け部材102によってゲル状弾性体101を超音波診断用探触子103に装着するものは、その超音波診断用探触子103の形状に合わせた取付け部材102とゲル状弾性体101が必要になるので、形状が異なる超音波診断用探触子ごとに専用の取付け部材とゲル状弾性体を準備しなければならず、汎用性に劣り、部品点数も増す、という問題があった。
また、上記特許文献1の装着用スペーサーは、超音波診断用探触子103を体表に押し当てたときに、ゲル状弾性体101に埋設された取付け部材102の下端部102aがシコリのようになって体表を圧迫する恐れがあり、この恐れを解消するためにゲル状弾性体101を厚肉化すると、良好な超音波診断画像が得難くなるという問題もあった。
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、超音波診断用探触子の形状が多少異なっていても、取付け部材を使用しないで簡単かつ確実に装着できる汎用性のある超音波診断用探触子の装着用スペーサーを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る装着用スペーサーは、超音波診断用探触子に装着され、体表との間に介在されて使用される装着用スペーサーであって、該スペーサーは粘着性を有するゲル弾性体からなり、探触子の先端を被覆する探触子先端被覆部と、この探触子先端被覆部の両側に連設され且つ探触子の外面に粘着固定される粘着固定部とを備えており、粘着固定部の厚さが探触子先端被覆部の厚さよりも薄くなっていることを特徴とするものである。
本発明の装着用スペーサーにおいては、探触子先端被覆部と粘着固定部との境界部の表面が凹曲面もしくは斜面となるように、境界部の厚さが探触子先端被覆部側から粘着固定部側にかけて減少していることが好ましい。
本発明の粘着性を有するゲル弾性体からなる装着用スペーサーは、その探触子先端被覆部を超音波診断用探触子の先端に粘着させて被覆すると共に、この探触子先端被覆部に連設された粘着固定部を超音波診断用探触子の外面に粘着固定することにより、取付け部材を使用しないで、簡単に超音波診断用探触子に装着することができる。しかも、本発明の装着用スペーサーは、その粘着固定部の厚さが探触子先端被覆部の厚さよりも薄く可撓性や柔軟性に富むため、超音波診断用探触子の外形が多少異なっていても、粘着固定部を超音波診断用探触子の外面に沿わせて変形、密着させながら容易に剥離しないように粘着固定して、確実に装着することができる。従って、本発明の装着用スペーサーは汎用性に優れ、前記特許文献1の装着用スペーサーのように取付け部材の下端部によって圧迫感を与える心配がなく、粘着固定部の厚さを薄くしたことで超音波診断用探触子が握り易くなって操作性も向上する。
また、本発明の装着用スペーサーにおいて、探触子先端被覆部と粘着固定部との境界部の表面が凹曲面もしくは斜面となるように、境界部の厚さが探触子先端被覆部側から粘着固定部側にかけて減少しているものは、超音波診断用探触子の操作時(超音波診断時)に、探触子先端被覆部と粘着固定部との境界部にストレスが集中し難くなるので、境界部に亀裂などが生じるのを防止することができる。
本発明の一実施形態に係る超音波診断用探触子の装着用スペーサーの平面図である。 同装着用スペーサーの縦断面図である。 同装着用スペーサーを装着した超音波診断用探触子の側面図である。 同装着用スペーサーを装着した超音波診断用探触子の正面図である。 本発明の他の実施形態に係る装着用スペーサーの縦断面図である。 本発明の更に他の実施形態に係る装着用スペーサーの縦断面図である。 (a)は本発明の更に他の実施形態に係る装着用スペーサーの部分拡大断面図、(b)は本発明の更に他の実施形態に係る装着用スペーサーの部分拡大断面図である。 本発明の更に他の実施形態に係る装着用スペーサーの部分拡大断面図である。 本発明の更に他の実施形態に係る装着用スペーサーの縦断面図である。 (a)は本発明の更に他の実施形態に係る装着用スペーサーの縦断面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。 同装着用スペーサーを装着した超音波診断用探触子の側面図である。 本発明に係る装着用スペーサーの製造方法の一例を示す説明図である。 従来の装着用スペーサーを装着した超音波診断用探触子の正面図であって、装着用スペーサーのみ中央で切断して示したものである。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る超音波診断用探触子の装着用スペーサーの平面図、図2は同装着用スペーサーの縦断面図、図3は同装着用スペーサーを装着した超音波診断用探触子の側面図、図4は同装着用スペーサーを装着した超音波診断用探触子の正面図である。
図1,図2に示す実施形態の装着用スペーサー10は、図3,図4に示すように超音波診断用探触子2に装着され、体表との間に介在されて使用されるスペーサーであって、粘着性を有するゲル弾性体からなるものである。この装着用スペーサー10は、図1〜図4に示すように、超音波診断用探触子2に装着されたときに該探触子2の先端2aを被覆する平面形状が長方形の探触子先端被覆部1aと、この探触子先端被覆部1aの両側に連設され且つ超音波診断用探触子2の前後の外面に粘着固定される粘着固定部1b,1bとを、同一のゲル組成のゲル弾性体で一体に形成したものであって、双方の粘着固定部1b,1bには、延出部1c,1cが探触子先端被覆部1aと反対方向に向かって延設されている。
粘着固定部1b,1bは、超音波診断用探触子2の少なくとも先端側幅広部分の前後の外面に粘着固定できるものであれば、特に平面形状が限定されるものではなく、超音波診断用探触子2の前後の外面の形状に応じて所望の形状となし得るものである。また、延出部1c,1cは、超音波診断用探触子2の基端側幅狭部分(ネック部分)の前後の外面に粘着固定できれば、どのような平面形状を有するものでもよく、場合によっては、省略してもよいものである。
一方、探触子先端被覆部1aの平面形状は、超音波診断用探触子2の先端2aの平面形状が細長い長方形であるので、この先端2aを確実に被覆できる大きさを備えた長方形とする必要がある。この探触子先端被覆部1aは、図8に示すように、超音波診断用探触子2の先端2aとの当接面1eを、超音波診断用探触子2の先端2aの凸曲面に対応した凹曲面に形成することが好ましく、このようにすると、超音波診断用探触子2の先端2aが探触子先端被覆部1aの当接面1eに隙間なく嵌まり込んで密着するため、鮮明な超音波診断画像が得られると共に、装着用スペーサー10の装着安定性も向上するようになる。
なお、探触子先端被覆部1aの当接面1eが平坦面であっても、ゲル弾性体からなる探触子先端被覆部1aは弾性変形しながら超音波診断用探触子2の先端2aに密接状態で粘着するので、鮮明な超音波診断画像が得られることは言うまでもない。
この装着用スペーサー10は、図2に示すように、延出部1c,1cも含めて粘着固定部1b,1bの厚さD2が探触子先端被覆部1aの厚さD1よりも薄くなっており、探触子先端被覆部1aの片面(図2では下面)と粘着固定部1b,1bの片面(図2では下面)が面一に連続して、探触子先端被覆部1aが反対面側(図2では上面側)に突き出した偏平な凸形の断面形状を有している。
探触子先端被覆部1aは、図9に示す装着用スペーサー11のように、上下両面から突き出すように形成しても勿論よいが、その場合は、装着用スペーサー11を超音波診断用探触子に装着したときに、探触子先端被覆部1aと粘着固定部1b,1bとの段差状の境界部1d、特に、超音波診断用探触子2の先端2aと反対側(体表側)に位置する境界部1dに亀裂等を生じる可能性がないとは言いにくい。これに対し、図2に示す装着用スペーサー10は、図3に示すように探触子先端被覆部1aの突き出した部分を内側にして超音波診断用探触子2の先端2aを被覆した状態で装着すると、探触子先端被覆部1aと粘着固定部1b,1bの片面同士が面一に連続した亀裂の生じ難い無段差の境界部10d,10dが外側(体表側)になり、且つ、探触子先端被覆部1aと粘着固定部1b,1bとの段差状の境界部1d,1dが内側になって、この内側の境界部1d,1dに引き裂き方向の力が作用しなくなるので、亀裂等の発生を防止できる利点がある。
探触子先端被覆部1aと粘着固定部1b,1bとの段差状の境界部1d,1dにおける亀裂等の防止効果を更に高めるためには、図7(a)に示すごとく、探触子先端被覆部1aと粘着固定部1b,1bとの段差状の境界部1d,1dの表面が凹曲面となるようにそれぞれの境界部1dの厚さを探触子先端被覆部1a側から粘着固定部1b側にかけて減少させるか、或いは、図7(b)に示すごとく、段差状の境界部1d,1dの表面が斜面(望ましくは45°の斜面)となるようにそれぞれの境界部1dの厚さを探触子先端被覆部1a側から粘着固定部1b側にかけて減少させることが好ましい。このようにすると、超音波診断用探触子2の操作時(超音波診断時)に、探触子先端被覆部1aと粘着固定部1b,1bとの段差状の境界部1d,1dにストレスが集中し難くなるので、段差状の境界部1d,1dにおける亀裂等の防止効果が顕著になり、探触子先端被覆部1aの突き出した部分を図3とは逆に外側にして超音波診断用探触子2の先端2aを被覆した状態で装着しても、段差状の境界部1d,1dに亀裂等が生じるのを防止できるようになる。
探触子先端被覆部1aの厚さD1は特に限定されないが、あまり厚過ぎると鮮明な超音波診断画像が得難くなり、スペーサー10の装着性も低下するので、後述の実施例のデータに示されるように2〜20mm程度の厚さに設定することが好ましい。探触子先端被覆部1aの更に好ましい厚さは3〜10mmである。
但し、周波数が1.5〜3.5MHzと低い超音波診断装置の探触子にスペーサー10を装着して体表付近を診断する場合は、上記よりも厚い探触子先端被覆部1aを有するスペーサー10が必要になることがあるので、その場合は探触子先端被覆部1aの厚さD1を30mm程度に設定するのがよい。
また、延出部1c,1cも含めて粘着固定部1b,1bの厚さD2は、探触子先端被覆部1aの厚さD1より薄ければ特に限定されないが、あまり薄過ぎると粘着固定部1b,1bの強度が不足して、超音波診断時に装着用スペーサーのズレが発生しそうになり、一方、15mmより厚くなると粘着固定部1b,1bの可撓性や柔軟性が低下して、超音波診断用探触子2の外面の起伏形状に追従して曲げ変形し難くなり,装着用スペーサー10の超音波診断用探触子2に対する装着性が低下するので、後述の実施例のデータに示されるように0.3mm以上、10mm未満の厚さに設定することが好ましい。粘着固定部1b,1bの更に好ましい厚さは0.5〜5mmである。
上記のように、延出部1c,1cも含めて粘着固定部1b,1bの厚さD2が探触子先端被覆部1aの厚さD1よりも薄くなっていると、粘着固定部1b,1b及び延出部1c,1cの可撓性や柔軟性が向上し、粘着固定部1b,1b及び延出部1c,1cを超音波診断用探触子2の前後の外面の起伏形状に沿わせて密接状態で粘着固定できるので、スペーサー10の装着性や固定強度が向上する。
尚、図9に示す装着用スペーサー11のように探触子先端被覆部1aが粘着固定部1b,1bの上下両面よりも上下に突き出している場合は、探触子先端被覆部1aの厚さD1及び粘着固定部1b,1bの厚さD2を上記範囲に設定すると共に、上側の段差寸法D3と下側の段差寸法D4を同一に設定することが好ましい。
この装着用スペーサー10を構成するゲル弾性体は、超音波診断用探触子2に確実に粘着固定できる適度な粘着性を有すること、超音波診断用探触子2の外面の起伏形状に追従し得る適度な柔軟性(可撓性)を有すること、超音波診断用探触子2への多数回の脱着に耐え得る機械的強度を有すること、人体に対する安全性や耐水性を有すること等が必要であるため、これらの条件を満たす下記のポリウレタンゲル弾性体が好ましく使用される。
即ち、この装着用スペーサー10を構成するゲル弾性体として好ましく使用されるポリウレタンゲル弾性体は、ポリオール成分としてアルキレンオキサイド鎖を有するポリオール又は/及びアルキレンオキサイド鎖を有するポリウレタンポリオールプレポリマーと、ポリイソシアネート成分としてアルキレンオキサイド鎖を有するポリウレタンポリイソシアネートプレポリマーとを反応させて得られる、アルキレンオキサイドのセグメントにより構造化された内部貫入型(Interpenetrated Network)のセグメント化ポリウレタンゲル弾性体であって、ポリオール成分とポリイソシアネート成分の配合比率(換言すればポリオール成分末端の官能基である水酸基OHとポリイソシアネート成分末端の官能基であるイソシアネート基NCOとの比率)、アルキレンオキサイドの種類、セグメント長などを調節することにより、装着用スペーサーに適した柔軟性及び粘着性を有するようにコントロールされたものである。このポリウレタンゲル弾性体は人体に無害であり、機械的強度や耐水性も十分満足できるものである。
上記ポリウレタンゲル弾性体は、下記構造式1〜4に示すポリオール成分の一種又は二種以上と、下記構造式5〜9に示すポリイソシアネート成分の一種又は二種以上を、触媒と共に混合して反応させることにより、容易に得ることができる。反応条件は特に制限されないが、例えば、60℃で24時間反応させることが好ましい。なお、触媒としてはジブチル錫ラウレートや、トリアルキルアミン、トリエチレンジアミン等の第3級アミンが好ましく使用される。
Figure 2014033818

(式中、R、Rはアルキル化合物、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、(AO)はアルキレンオキサイド鎖である。)
Figure 2014033818

(式中、(AO)はアルキレンオキサイド鎖であり、lは1又は4の整数である。)
Figure 2014033818

(式中、(AO)はアルキレンオキサイド鎖である。)
Figure 2014033818

(式中、(AO)はアルキレンオキサイド鎖であり、RはHである。)
Figure 2014033818

(式中、(AO)はアルキレンオキサイド鎖であり、Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかである。)
Figure 2014033818

(式中、(AO)はアルキレンオキサイド鎖であり、Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかである。)
Figure 2014033818

(式中、(AO)はアルキレンオキサイド鎖であり、Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、lは1又は4の整数である。)
Figure 2014033818

(式中、(AO)はアルキレンオキサイド鎖であり、Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかである。)
Figure 2014033818

(式中、(AO)はアルキレンオキサイド鎖であり、Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかである。)
上記構造式1〜4のポリオール成分について説明すると、構造式1はポリエーテルポリオールとジイソシアネートの反応物であるポリウレタンポリオールプレポリマーであって、両末端成分がポリエーテルポリオール、両末端の官能基が−OH基である。ここに使用されるジイソシアネート化合物は、後述するポリウレタンポリイソシアネートプレポリマーの中のそれと同じものであり、例えばフェニレンジイソシアネート、2,2,4−トルイレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタリン1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、テトラメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添加TDI、水添加MDI、ジシクロヘキシルジメチルメタンp,p′−ジイソシアネート、ジエチルフマレートジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が任意に使用できる。
また、構造式2はグリセロール(l=1)又はソルビトール(l=4)にポリエーテルポリオールを付加したものである。
構造式3は、トリメチロールプロパンにポリエーテルを付加したものであり、同様に下記構造式10,11で示される1,2,6−ヘキサントリオールやトリメチロールエタン、或いは、ペンタエリスリットC(CHOH)、或いは、下記構造式12で示されるポリグリセリンやその部分エステルなどの多価アルコールとポリエーテルポリオールの付加物も使用できる。この場合、(AO)はホモポリマーであっても、ブロックコポリマー或いはランダムコポリマーであってもよい。
Figure 2014033818

Figure 2014033818

Figure 2014033818

(式中、nは2〜30の整数である。)
構造式4はアルキレンオキサイド鎖を有するポリエーテルポリオールであり、両末端が−OH基で2官能のポリオールであり、市販品として容易に入手できる。
次に、構造式5〜9のポリイソシアネートプレポリマーについて説明すると、構造式5はトリメチロールプロパンにジイソシアネートを反応させて得られるトリイソシアネートの2分子を(AO)の1分子で2量化した4官能のテトライソシアネートであり、このトリメチロールプロパンの代わりにグリセロールを用いたものが構造式6のポリイソシアネートプレポリマーである。この種のテトライソシアネートは、(AO)の2分子又は3分子とトリイソシアネートの2分子との反応では得られないので、(AO)の量を化学当量より少なくして反応を微妙に調節する必要がある。そのため未反応のトリイソシアネートが混在するが、これがポリオールと反応するとセグメント化ポリウレタン分子の大きさにバラツキが生じ、ゲルの硬度をコントロールするのに都合の良い方へ作用することもある。
構造式7は構造式2のポリオールにジイソシアネートを反応させたもので、3官能か6官能であり、また、構造式8は同様に構造式3のポリオールにジイソシアネートを反応させたもので、3官能である。構造式9はポリエーテルポリオールとジイソシアネートの反応物で、2官能である。
上記構造式1〜9の(AO)で表記されるアルキレンオキサイド鎖は、適度な弾力性と柔軟性(もしくは硬さ)を有するポリウレタンゲル弾性体を形成するためには、アルキレンオキサイド鎖の殆どないし全てが常温で液状であり、十分な屈曲性を有することが望ましい。もし、アルキレンオキサイド鎖の殆どが固体であると、分子運動が少なくて屈曲性が殆どなくなり、系の構造化(ゲル化)の分散媒として働かないため、弾力性と柔軟性を有するポリウレタンゲル弾性体を得ることが困難になる。
アルキレンオキサイド鎖(AO)を構成する化合物としては、例えば、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコールなどが挙げられるが、このうち常温で液状物質として入手し易いものは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、低分子量のポリテトラメチレングリコールである。また、これらの共重合体、例えば下記構造式13,14で表されるブロックコポリマーや、ランダムコポリマーも使用できる。尚、一つのプレポリマーの中のセグメントは、異なった種類のアルキレンオキサイド鎖で構成されていてもよい。
Figure 2014033818

Figure 2014033818

(これらの式中、l,m,nは1以上の整数である。)
装着用スペーサー10に適した柔軟性(可撓性)を有するポリウレタンゲル弾性体を得るためには、アルキレンオキサイド鎖を構成する上記化合物の分子量を規制する必要がある。化合物が液状であっても分子量が低すぎる場合は、架橋密度が高くなるため、ポリウレタンゲル弾性体の硬度が大きくなりすぎて、超音波診断用探触子の形状に追従し得る柔軟性を得ることが難しくなり、粘着性も低下する。また、化合物が液状でも分子量が大きすぎる長鎖の場合は、反応確率が低くなるため、理論量以上に配合しても、ポリウレタンゲル弾性体の硬度が小さくなりすぎて、充分な保形性や機械的強度を得ることが困難になり、適度な粘着性も得難くなる。適当な分子量の範囲は、ポリエチレングリコールの場合150〜1000程度であり、より好ましくは300〜800程度である。また、分子量が数万でも液状のポリプロピレングリコールやポリブチレングリコールの場合は使用範囲が広いが、上記の理由から200〜3000程度の分子量のものが好ましく使用される。また、ポリテトラメチレングリコールの場合は、重合度が大きいと固体となるので、200〜1000程度、好ましくは400〜800程度の分子量のものが使用される。更に、これらの共重合体の場合は、数百ないし数千の分子量のものが使用される。
次に、ポリオール成分とポリイソシアネート成分の反応比について説明する。経験的に言えば、本発明の装着用スペーサーを構成するポリウレタンゲル弾性体は、比較的嵩高い構造の分子が適当な分子量を有し、且つ、自由に運動可能なセグメント長、又は直鎖(linear)の末端が自由に動ける分子を適当に有することが必要である。従って、ポリオール成分とポリイソシアネート成分は、一方が2官能で、他方が3官能以上の化合物の組合わせである必要がある。どちらか一方が1官能であれば連鎖しないし、2官能同士では直鎖分子となるからである。つまり、どちらか一方が2官能で他方が3官能以上の多官能であるか、互いに3官能以上の組み合わせがよい。但し、双方の官能数があまり多すぎる組合わせにすると、得られる反応物は網目鎖濃度が高くなりすぎるので、ゲル化には長い液状のセグメントが必要になる。しかし、セグメントの長さには、反応の確率の問題から限度がある。ポリウレタンゲル弾性体を得やすい官能基数は2〜4の組み合わせであり、殊に2官能と3官能の組合わせが配合上、調節し易い。その場合、ゲル弾性体の硬度その他の物性を微調節するために官能基数が一つのものを内部分散媒として混合して使用できる。また、ポリオール、ポリイソシアネートプレポリマーの(AO)鎖がかなり長いものばかりの場合は、多官能の多価アルコール、又は多価イソシアネート(いずれも(AO)鎖をもたないもの)を混用して網目鎖形態を調節することにより、ゲル弾性体を得るように工夫してもよい。
ポリオール成分とポリイソシアネート成分の配合比率(反応比)は、双方の成分の官能基の比率、即ち、ポリオール成分の末端の官能基である水酸基とポリイソシアネート成分の末端の官能基であるイソシアネート基との比率(OH/NCO)によって規制される。このOH/NCOの比率が1より小さい場合は、未反応のNCO基がゲル中に残り、この未反応のNCO基が水分と後反応するので、OH/NCOの比率は1以上でなければならない。但し、装着用スペーサーを構成するポリウレタンゲル弾性体は、同一ポリマーの分子中で共有結合した状態にある一成分系のものであるから、基本的にはOH/NCOが1であるか、それに近い値のものである。しかし、プレポリマー同士の反応であるため、実際に反応の確率を考慮すれば、1よりやや大きいものも含まれる。経験的にはOH/NCOが1.0〜2.5の範囲内で装着用スペーサーに適合するポリウレタンゲル弾性体を得ることができ、OH/NCOが小さくなるほどポリウレタンゲル弾性体の硬さが増して粘着性が低下し、OH/NCOが大きくなるほどポリウレタンゲル弾性体の硬さが減少(柔軟性が増加)して粘着性が増大することになる。またOH/NCOが1.2〜2.5であると、超音波診断用探触子への追従性及び着脱性に優れるため好ましい。
ポリオール成分とポリイソシアネート成分の重量平均分子量の範囲は、アルキレンオキサイド鎖、イソシアネートの種類、分子形状、及び、アルキレンオキサイド鎖がホモポリマーかコポリマーであるかによって広い範囲で変わるが、ポリオールで大略150〜6000、ポリウレタンポリオールプレポリマーで大略1400〜10000、ポリウレタンポリイソシアネートプレポリマーで大略500〜10000であり、好ましくは各々大略200〜3000、1000〜6000、800〜5000の範囲で選択できる。
このセグメント化ポリウレタンゲル弾性体は、上述したように、ポリオール成分とポリイソシアネート成分の配合比率(換言すればOH/NCOの比率)、アルキレンオキサイドの種類やセグメント長(分子量)などを調節することによって、柔軟性や粘着性をコントロールできるものであるが、柔軟性を装着用スペーサーに適合するようにコントロールすると、粘着性が必要以上に大きくなる傾向があり、粘着性を装着用スペーサーに適合するようにコントロールすると、柔軟性が低下して硬さが増す傾向があるため、柔軟性と粘着性を共に装着用スペーサーに適合するようにコントロールすることは容易でない。それゆえ、OH/NCOの比率、アルキレンオキサイドの種類やセグメント長(分子量)などを調節すると共に、更に、添加剤としてウレタン反応に関与しない下記構造式15に示すグライム化合物をセグメント化ポリウレタンゲル弾性体に含有させることによって、粘着性を抑制しながら柔軟性を向上させ、柔軟性と粘着性を共に装着用スペーサーに適合するようにコントロールすることが好ましい。
Figure 2014033818


(式中、Rはアルキル基、nは1以上の整数である。)
グライム化合物の好ましい具体例としては、上記構造式15において、Rがメチル基でnが4であるメチルテトラグライム、Rがメチル基でnが3であるメチルトリグライム、Rがメチル基でnが2であるメチルジグライム、Rがメチル基でnが1であるメチルモノグライム、Rがブチル基でnが2であるブチルジグライム、Rがエチル基でnが2であるエチルジグライムなどが挙げられる。
ポリウレタンゲル弾性体におけるグライム化合物の含有量は特に限定されないが、含有量が70質量%を越えるとポリウレタンゲル弾性体の粘着性が低下し過ぎるので、70質量%以下の範囲内で、装着用スペーサーに適合する粘着性と柔軟性が得られるように含有量を決定することが好ましい。
上記のグライム化合物を含有させたセグメント化ポリウレタンゲル弾性体は、グライム化合物の含有量が多くなるほど、柔軟性が増して、粘着性が減少し、OH/NCOの比率が高くなるほど、柔軟性と粘着性が増すので、後述の試験データに示すように、OH/NCOの比率を1.2〜2.4の範囲内で調節すると共に、グライム化合物の含有量を70質量%以下の範囲内で調節することにより、アスカーF型硬度計による硬度が16以上、かつ、アスカーC2型硬度計による硬度が15以下となるようにポリウレタンゲル弾性体の柔軟性(硬度)をコントロールすると同時に、レオメーターにおけるトルク値が7.0〜520gとなるようにポリウレタンゲル弾性体の粘着性をコントロールして、柔軟性と粘着性を共に装着用スペーサーに適合させることができる。しかも、グライム化合物は不揮発性であるから、揮発によりポリウレタンゲル弾性体の粘着性や柔軟性が変化する心配がなく、また、グライム化合物によってポリウレタンゲル弾性体内での超音波の伝搬減衰を軽減することもできる。更に、グライム化合物を含んだポリウレタンゲル弾性体には雑菌が繁殖しないので、皮膚のカブレなどを生じることがなく、長時間使用しても人体に無害であり、体表の水分によって劣化することもない。
なお、装着用スペーサーを構成するゲル弾性体としては、上記のポリウレタンゲル弾性体の他に、アクリル系含水ゲル、シリコーン系やゴム系等の弾性体なども使用可能である。
図1,図2に示す装着用スペーサー10は、探触子先端被覆部1aが突き出していない下面、つまり、装着用スペーサー10を図3に示すように超音波診断用探触子2に装着したときに体表側となる外面を、そのまま露出させているが、図5に示す装着用スペーサー12のように、体表側となる外面全体に厚さ50μm以下、好ましくは5〜25μm程度の合成樹脂フィルム1fをポリウレタンゲル弾性体の粘着力で一体的に積層してもよい。これまでは、合成樹脂フィルムは超音波の反射や減衰を生じるため、積層するのは良くないと考えられていたが、厚さが50μm以下の薄い合成樹脂フィルムは、積層しても超音波診断に悪影響を実質的に与えないことが本発明者らの研究によって確認された。
上記のように合成樹脂フィルム1fを装着用スペーサー12の体表側となる外面全体に積層すると、装着用スペーサー12を構成するポリウレタンゲル弾性体が粘着性の高いものであっても、装着用スペーサー12の外面の粘着性が合成樹脂フィルム1fによって消失するため、超音波診断時に探触子先端被覆部1aの外面が体表に粘着したり、延出部1cを含む粘着固定部1b,1bの外面が手に粘着するようなことがなくなって、超音波診断時の操作性が大幅に向上するという利点があり、しかも、探触子2側となる内面の粘着力によって装着用スペーサー12を超音波診断用探触子2の外面に確実に粘着固定できるという利点がある。なお、合成樹脂フィルム1fは、装着用スペーサー12の体表側となる外面全体に積層しなくてもよく、少なくとも超音波診断時に体表に接触する探触子先端被覆部1aの外面に積層すればよい。
合成樹脂フィルム1fとしては公知の各種合成樹脂フィルムを使用できるが、その中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが好ましく使用される。
また、図5に示す装着用スペーサー12のように、突出部1cを含めた粘着固定部1b,1bに形状保持材1g,1gを埋設し、これらの形状保持材1g,1gによって粘着固定部1b,1bの伸縮を抑制すると共に、粘着固定部1b,1bの腰の強さを適度に調整してもよい。形状保持材1g,1gは、延出部1cを含む粘着固定部1b,1bの内面(探触子2側となる内面)に露出させて設けてもよいが、その場合は粘着固定部1b,1bの内面の粘着力が低下したり、形状保持材1g,1gが粘着固定部1bから離脱する恐れがあるので、粘着固定部1b,1bの内面近くに埋設するか、又は、粘着固定部1b,1bの厚み方向中間部に埋設することが望ましい。なお、形状保持材1gは超音波診断に悪影響を与える恐れがあるので、探触子先端被覆部1aを避けて埋設することが肝要である。
形状保持材1gとしては、合成樹脂繊維や植物繊維の不織布、ネット、織布などが使用されるが、その中でも目付量が10〜75g/m程度の合成樹脂繊維の不織布が好ましく使用される。
ところで、探触子先端被覆部1aが片面から突き出した前記の装着用スペーサー10は、図3に示すように、探触子先端被覆部1aの突き出した部分を内側にして超音波診断用探触子2に装着すると、探触子先端被覆部1aの両側において装着用スペーサー10と超音波診断用探触子2との間に断面形状が略三角形の空隙部G,Gが生じるため、超音波診断時に体表に塗られたジェルが該空隙部G,Gに侵入し、この侵入したジェルによって、超音波診断用探触子2に対する装着用スペーサー10の粘着が妨げられる恐れがある。また、外面(体表側の面)を合成樹脂フィルム1fで被覆した前記の装着用スぺーサー12は、スペーサー外面と合成樹脂フィルム1fとの間にジェルが侵入する恐れもある。これらの恐れを解消できるように工夫したものが、図10(a),(b)に示す装着用スペーサー14である。
即ち、この図10(a),(b)に示す装着用スペーサー14は、厚さが大きい中央の探触子先端被覆部1aと、その両側の厚さが小さい粘着固定部1b,1b(延出部1c,1cを含む粘着固定部)を、同一組成のポリウレタンゲル弾性体で一体に形成したものであって、装着用スペーサー14の探触子先端被覆部1aが突き出していない外面(体表側となる下面)から両側面にかけて、前記の合成樹脂フィルム1fを積層して被覆し、この合成樹脂フィルム1fの両側の立上り縁の中央に、探触子先端被覆部1aの両側面を覆い隠す逆台形状のフィン10f,10fを一体に形成したものである。
このような装着用スペーサー14は、図11に示すように、合成樹脂フィルム1fを外側にして、超音波診断用探触子2の先端2aを探触子先端被覆部1aで被覆し、粘着固定部1b,1bと延出部1c,1cを超音波診断用探触子2の前後の外面の起伏形状に追従させて曲げながら粘着固定すると共に、フィン10f,10fによって、探触子先端被覆部1aの両側面と、空隙部G,Gの両側開口と、超音波診断用探触子2の先端部両側面を被覆した状態で、超音波診断用探触子2に装着される。従って、超音波診断時に体表に塗られたジェルの空隙部G,Gへの侵入はフィン10f,10fによって阻止されるので、ジェルの侵入により装着用スペーサー14の超音波診断用探触子2に対する粘着が妨げられる恐れを解消することができ、かつ、合成樹脂フィルム1fの両側の立上り縁によって、スペーサー外面と合成樹脂フィルムとの間にジェルが侵入する恐れを解消することができる。なお、フィン10f,10fの内面を粘着面とし、フィン10f,10fを超音波診断用探触子2の先端部両側面に粘着固定すると、フィン10f,10fが捲れなくなり、ジェルの侵入をより確実に阻止できるので好ましい。
また、上記の合成樹脂フィルム1fに代えて、ポリウレタンゲル弾性体の粘着性を低減又は消失させる樹脂コーティング層を、装着用スペーサーの外面(体表側となる下面)や両側面に形成してもよく、特に、装着用スペーサーの両側面に撥ジェル性の樹脂コーティング層を形成する場合は、ジェルが樹脂コーティング層ではじかれて空隙部G,Gに侵入し難くなるため、装着用スペーサー15の超音波診断用探触子2に対する粘着がジェルで妨げられる恐れを解消することができる。
尚、この装着用スペーサー14は、形状保持材を粘着固定部1b,1b(延出部1c,1cを含む粘着固定部)に埋設していないが、必要に応じて形状保持材を埋設してもよいことは言うまでもない。
図1〜図4に示す装着用スペーサー10、図5に示す装着用スペーサー12、図9に示す装着用スペーサー11、図10に示す装着用スペーサー14はいずれも、探触子先端被覆部1aと、延出部1cを含めた粘着固定部1b,1bを、同一の組成のポリウレタンゲル弾性体で形成しているが、図6に示す装着用スペーサー13のように、探触子先端被覆部1aと、延出部1c,1cを含めた粘着固定部1b,1bを、異なる組成のポリウレタンゲル弾性体で形成してもよい。その場合は、探触子先端被覆部1aを、OH/NCOの比率が小さいグライム化合物を含んだ組成のポリウレタンゲル弾性体で形成し、延出部1c,1cを含めた粘着固定部1b,1bを、OH/NCOの比率が大きいグライム化合物を含まない組成のポリウレタンゲル弾性体で形成することによって、比較的硬くて粘着性が小さい探触子先端被覆部1aと、柔軟で粘着性が大きい粘着固定部1b,1b(延出部1c,1cを含む)とを備えた装着用スペーサー13とすることが好ましい。
次に、図12を参照しながら、図1,図2に示す装着用スペーサーを製造する場合を例にとって、装着用スペーサーの製造方法を説明する。
まず、前記構造式1〜4のアルキレンオキサイド鎖を有するポリオール又は/及びアルキレンオキサイド鎖を有するポリウレタンポリオールプレポリマーに、前記触媒と、前記構造式15のグライム化合物を混合する。そして、この混合物と、前記構造式5〜9のアルキレンオキサイド鎖を有するポリウレタンポリイソシアネートプレポリマーを混合し、脱泡処理して、OH/NCOの比率が1.2〜2.4、グライム化合物の含有量が70質量%以下に調節された組成の液状混合材料を得る。なお、グライム化合物は省略してもよい。
次いで、図12(a)に示すように、探触子先端被覆部成形用の展開可能な直方体形状の箱型容器3に上記の液状混合材料を所定の厚さとなるように注入し、例えば60℃で24時間程度反応させることによって、ポリウレタンゲル弾性体からなる探触子先端被覆部1aを成形し、箱型容器3を展開して探触子先端被覆部1aを取り出す。
次いで、図12(b)に示すように、展開可能な方形の皿型容器4の内底面に剥離フィルム(離型フィルム)1iを敷き、その中央部に上記の探触子先端被覆部1aを設置して、上記の液状混合材料を皿型容器4に所定の厚さ(探触子先端被覆部1aよりも小さい厚さ)となるように注入し、同様に60℃で24時間程度反応させることによって、探触子先端被覆部1aよりも薄い方形のポリウレタンゲル弾性体シート1hを探触子先端被覆部1aと一体に成形する。そして、皿型容器4を展開し、探触子先端被覆部1aの周囲のポリウレタンゲル弾性体シート1hの上面に剥離フィルム1jを重ねた後、このポリウレタンゲル弾性体の成形物を皿型容器4から取り出す。
最後に、このポリウレタンゲル弾性体の成形物を、図12(c)に示すように装着用スペーサーの平面形状に打抜き、その探触子先端被覆部1aの表面に仮想線で示すように長方形の剥離フィルム1kを重ねることによって、体表側となる外面(下面)全体が剥離フィルム1iで覆われ、且つ、延出部1cを含めた粘着固定部1b,1bの内面(上面)と探触子先端被覆部1aの内面(上面)がそれぞれ剥離フィルム1j,1kで覆われた装着用スペーサー10を得る。それぞれの剥離フィルム1i,1j,1kは、装着用スペーサー10を超音波診断用探触子2に装着する際に剥離除去される。
なお、剥離フィルム1i,1j,1kは省略してもよい。
また、図9に示す装着用スペーサー11は、前記の製造方法において、内底面の中央に凹部が形成された皿型容器を使用し、該凹部の底面と皿型容器の内底面に剥離フィルムを敷き、探触子先端被覆部1aの下部を該凹部に嵌め込んで、液状混合材料を皿型容器に注入、反応させ、以後、前記と同様にして製造すればよい。
また、図5に示す装着用スペーサー12は、前記の製造方法において、剥離フィルム1iに代えて合成樹脂フィルム1fを皿型容器4の内底面に敷き、その中央部に探触子先端被覆部1aを設置して液状混合材料を注入し、注入の途中で形状保持材1gを探触子先端被覆部1aの周囲に埋入し、液状混合材料を反応させて、以後、前記と同様にして製造すればよい。
また、図6に示す装着用スペーサー13は、組成が異なる二種類の液状混合材料を調製し、前記の製造方法において、一方の液状混合材料で成形した探触子先端被覆部1aを、剥離フィルムが敷かれた皿型容器4の内底面の中央部に設置し、他方の液状混合材料を皿型容器4に注入、反応させて、以後、前記と同様に製造すればよい。
また、図10に示す装着用スペーサー14は、浅いスペーサー成形型の内底面に、両側にフィン10f,10fを有する若干幅広の合成樹脂フィルム1fを敷いて、その両側縁を成形型の両側内面に沿って折り上げ、合成樹脂フィルムの中央部に、予め成形した探触子先端被覆部1aを設置して、上記液状混合材料を所定の厚さ(探触子先端被覆部1aよりも小さい厚さ)に注入、反応させ、成形型から取り出せばよい。
以上の装着用スペーサー10,11,12,13,14はいずれもポリウレタンゲル弾性体からなるものであり、延出部1c,1cも含めて粘着固定部1b,1bの厚さD2を探触子先端被覆部1aの厚さD1よりも薄くすることによって、粘着固定部1b,1b及び延出部1c,1cの可撓性が高められている。しかも、ポリウレタンゲル弾性体は、OH/NCOの比率、アルキレンオキサイドの種類や長さ(分子量)を調節すると共に、グライム化合物を適宜含有させることによって、アスカーF型硬度計による硬度が16以上、かつ、アスカーC2型硬度計による硬度が15以下となるように柔軟性がコントロールされると同時、レオメーターにおけるトルク値が7.0〜520gとなるように粘着性がコントロールされて、装着用スペーサーに極めて適した柔軟性と粘着性を備えている。それ故、これらの装着用スペーサー10,11,12,13,14は、超音波診断用探触子2の外形が多少異なっていても、探触子先端被覆部1aを超音波診断用探触子2の先端に粘着させて被覆すると共に、粘着固定部1b,1bと延出部1c,1cを超音波診断用探触子2の前後の外面の起伏形状に追従させて可撓変形させながら密接状態で粘着固定することにより、取付け部材を使用しないで、簡単且つ確実に超音波診断用探触子2に装着することができる。従って、これらの装着用スペーサー10,11,12,13,14はいずれも汎用性に優れており、前記特許文献1の装着用スペーサーのように取付け部材の下端部によって圧迫感を与える心配がなく、また、延出部1c,1cも含めて粘着固定部1b,1bの厚さD2を探触子先端被覆部1aの厚さD1より薄くしたことで超音波診断用探触子2が握り易くなり、操作性も向上する。しかも、ポリウレタンゲル弾性体は、グライム化合物を含んでいてもいなくても雑菌が繁殖しないので、皮膚のカブレを生じることがなく、長時間使用しても安全であり、また、耐水性に優れるので体表の水分によって劣化することもないなど、多くの効果が得られる。
次に、本発明に係る装着用スペーサーの更に具体的な実施例と比較例について説明する。
[実施例1〜11]
ポリオール成分であるエチレングリコールプロピレングリコールランダム共重合体(モル比1:1、Mw=2000)100部(質量部、以下同様)に対し、ポリイソシアネート成分として、グリセリンにエチレングリコールプロピレングリコールランダム共重合体(モル比1:1)を付加してこれにヘキサメチレンジイソシアネートを反応させて得たポリエーテルポリオールをセグメントに有するトリイソシアネート(Mw=3100)を50部混合すると共に、触媒としてジブチル錫ジラウレートを0.1部混合してよく攪拌し、OH/NCOの比率が2.1である液状混合材料を調製した。
この液状混合材料を使用し、前述の製造方法によって図1,図2に示す形状の装着用スペーサー10を製造する際に、探触子先端被覆部1aの厚さD1を、下記表1に示すように2〜20mmの範囲内で変更すると共に、延出部1c,1cを含む粘着固定部1b,1bの厚さD2を、下記表1に示すように0.3〜8mmの範囲内で変更して、D1,D2の厚さが種々異なる実施例1〜11の装着用スペーサーを試作した。
更に、上記の液状混合材料を用いて、前述の製造方法により、図9に示す形状の装着用スペーサーであって、D1,D2,D3,D4が下記表1に示す寸法とされた実施例12の装着用スペーサーを試作した。
実施例2〜12の装着用スペーサーの探触子先端被覆部の突き出した部分を内側にして、探触子先端被覆部を超音波診断用探触子(東芝メディカルシステムズ(株)製、品番PLT−805AT)の先端に密着させて被覆すると共に、装着用スペーサーの粘着固定部と延出部を超音波診断用探触子の前後の表面に粘着固定することによって、それぞれの装着用スペーサーを超音波診断用探触子に装着し、(1)装着用スペーサーの粘着固定部と延出部が超音波診断用探触子の前後表面の起伏形状通りに追従して曲げ変形するかどうか、(2)装着用スペーサーが超音波診断用探触子から自然に剥がれないかどうか、(3)探触子先端被覆部を体表に押し当てながら10cm程度の距離を30往復させて装着用スペーサーのずれが生じるかどうか、(4)装着用スペーサーの装着作業と剥脱作業を50回繰り返して問題なく行えるかどうか、を調べることにより、それぞれの装着用スペーサーの装着性の良否を総合的に判定した。その結果を下記表1に示す。表1において、「〇」は装着性が良いことを、「△」は装着性があまり良くないことを示している。
なお、実施例1の装着用スペーサーについては、探触子先端被覆部の厚さD1が20mmとかなり厚いため、探触子先端被覆部の突き出した部分を外側にして超音波診断用探触子に装着し、上記と同様に装着性の良否を総合的に判定して、その結果を表1に示した。
[比較例1]
実施例1〜12で調製した液状混合材料を皿型容器に注入、反応させた後、打ち抜いて、探触子先端被覆部の厚さD1も、延出部を含む粘着固定部の厚さD2も10mmである比較例1の装着用スペーサーを試作し、実施例1〜12と同様にして装着性の良否を総合的に判定した。その結果を下記表1に併記する。
Figure 2014033818
延出部を含む粘着固定部の厚さD2が探触子先端被覆部の厚さD1より薄く、0.3〜8mmの範囲にある実施例1〜12の装着用スペーサーは、表1に示すように装着性が良く、粘着固定部と延出部を超音波診断用探触子の前後表面の起伏形状に追従して曲げ変形させながら確実に粘着固定でき、自然に剥がれることがなく、装着作業と剥脱作業を問題なく繰り返すことができた。また、探触子先端被覆部を体表に押し当てながら10cm程度の距離を30往復させても装着用スペーサーのずれは生じなかったが、延出部を含む粘着固定部の厚さD2が0.3mmと最も薄い実施例7の装着用スペーサーは、表1の備考欄に記載したように、ずれが生じそうになる傾向が見られた。このことから、延出部を含む粘着固定部の厚さD2の下限は0.3mm程度であると判断できる。
一方、探触子先端被覆部の厚さD1と、延出部を含む粘着固定部の厚さD2が共に10mmである比較例1の装着用スペーサーは、表1に示すように装着性が良くなく、備考欄に記載したように超音波診断用探触子の前後表面の起伏形状に追従しにくいものであった。これに対し、延出部を含む粘着固定部の厚さD2が8mmである実施例11の装着用スペーサーは装着性が良く、粘着固定部と延出部を超音波診断用探触子の前後表面の起伏形状に追従させて粘着固定することが可能であった。このことから、前記組成のポリウレタンゲル弾性体からなる装着用スペーサーでは、延出部を含む粘着固定部の厚さD2の上限が9mm程度であると推定できる。
[ポリウレタンゲル弾性体の柔軟性試験]
次に、装着用スペーサーを構成するポリウレタンゲル弾性体の柔軟性と、OH/NCOの比率及びグライム化合物の添加量との関係を調べた試験について説明する。
ポリオール成分であるエチレングリコールプロピレングリコールランダム共重合体(モル比1:1、Mw=2000)と、ポリイソシアネート成分である、グリセリンにエチレングリコールプロピレングリコールランダム共重合体(モル比1:1)を付加してこれにヘキサメチレンジイソシアネートを反応させて得たポリエーテルポリオールをセグメントに有するトリイソシアネート(Mw=3100)と、グライム化合物であるテトラグライム(テトラエチレングリコールジメチルエーテル)との配合比を種々変えた液状混合材料を容器に注入し、60℃で24時間反応させて、下記表2に示すOH/NCOの比率とグライム添加量を有する23種のポリウレタンゲル弾性体の試料(No.1〜No.23)を作製した。
これらのポリウレタンゲル弾性体の試料(No.1〜No.23)について、アスカーF型硬度計とアスカーC2型硬度計を用いて硬度を測定し、その結果を下記表2に示した。
Figure 2014033818
この表2から、OH/NCOの比率が大きくなるほど(例えば試料No.6〜試料No.14を参照)、また、グライム添加量が多くなるほど(例えば、試料No.1,No.9,No.15,No.21を参照)、ポリウレタンゲル弾性体の硬度が低下して柔軟性が増すことが判る。そして、OH/NCOの比率を1.2〜2.4の範囲に調製すると共に、グライム添加量を70質量%以下の範囲に調節すると、ポリウレタンゲル弾性体のアスカーF硬度計による硬度を16以上、かつ、アスカーC2型硬度計による硬度を15以下とすることができ、ポリウレタンゲル弾性体の柔軟性(硬度)を装着用スペーサーに適合するようにコントロールできることが判る。
また、アスカーF硬度計による硬度が16以上、かつ、アスカーC2型硬度計による硬度が15以下である上記各試料(No.1,No.14,No.22,No.23以外の試料)と同一組成の装着用スペーサー(探触子先端被覆部も粘着固定部も厚さが5mmのもの)は、いずれも、粘着固定部を超音波診断用探触子の前後表面の起伏形状に追従して曲げ変形させながら確実に粘着固定でき、自然に剥がれることがなく、装着作業と剥脱作業を問題なく繰り返すことができ、探触子先端被覆部を体表に押し当てながら10cm程度の距離を30往復させても装着用スペーサーのずれは生じなかった。これに対し、アスカーF硬度計による硬度が10未満である試料No.14,試料No.22,試料No.23と同一組成の装着用スペーサー(探触子先端被覆部も粘着固定部も厚さが5mmのもの)は、柔らか過ぎるため、探触子先端被覆部を体表に押し当てながら10cm程度の距離を往復させるとスペーサーがずれやすくなり、また、アスカーC2型硬度計による硬度が20である試料No.1と同一組成の装着用スペーサー(探触子先端被覆部も粘着固定部も厚さが5mmのもの)は、固すぎるため、粘着固定部を超音波診断用探触子の前後表面の起伏形状に追従して曲げ変形させながら粘着固定することが困難であった。
[ポリウレタンゲル弾性体の粘着性試験]
次に、装着用スペーサーを構成するポリウレタンゲル弾性体の粘着性と、OH/NCOの比率及びグライム化合物の添加量との関係を調べた試験について説明する。
ポリオール成分であるエチレングリコールプロピレングリコールランダム共重合体(モル比1:1、Mw=2000)と、ポリイソシアネート成分である、グリセリンにエチレングリコールプロピレングリコールランダム共重合体(モル比1:1)を付加してこれにヘキサメチレンジイソシアネートを反応させて得たポリエーテルポリオールをセグメントに有するトリイソシアネート(Mw=3100)と、グライム化合物であるテトラグライム(テトラエチレングリコールジメチルエーテル)との配合比を種々変えた液状混合材料を、金属製の平板と、PETフィルムを貼ったガラス板との間に挟んで、60℃で24時間反応させ、下記表3に示すOH/NCOの比率とグライム添加量を有する厚さ50μmの9種類のポリウレタンゲル弾性体の試料(No.24〜No.32)を、上記平板の上に作製した。
レオメーター(レオテック社製のNRM−3002D)の上部チャックに、SUS304製の直径12mmの円柱形治具(重量:10g)を取り付け、上記試料が作製された平板を下部チャックに固定して、下部チャックを上昇させることにより、試料上面に円柱形治具の下面を静かに接触させて該治具の自重をかけ、接触10秒後に下部チャックを50mm/分の速度で下降させて試料上面から該治具を引き剥がすときの最大荷重(トルク値)を粘着力として測定した。No.24〜No.32のそれぞれの試料の粘着力を下記表3に示す。
Figure 2014033818
この表3のNo.24〜No.27、No.31の試料を比較すれば明らかなように、OH/NCOの比率が大きくなるほどポリウレタンゲル弾性体の粘着力が増大し、また、No.28〜No.32の試料を比較すれば明らかなように、グライム添加量が多くなるほどポリウレタンゲル弾性体の粘着力が減少して粘着性の抑制効果が顕著に発揮されることが判る。そして、この表3に示すように、OH/NCOの比率を1.2〜2.1の範囲に調製すると共に、グライム添加量を70質量%以下の範囲に調節すると、引き剥がすときのポリウレタンゲル弾性体の最大荷重(トルク値)を7.0〜520gとすることができ、ポリウレタンゲル弾性体の粘着性を装着用スペーサーに適合するようにコントロールできることが判る。
また、最大荷重(トルク値)が7.0〜520gである上記各試料(No.24〜No.32)と同一組成の装着用スペーサー(探触子先端被覆部も粘着固定部も厚さが5mmのもの)は、いずれも、粘着固定部を超音波診断用探触子の前後表面の起伏形状に追従して曲げ変形させながら確実に粘着固定でき、自然に剥がれることがなく、装着作業と剥脱作業を問題なく繰り返すことができた。
10,11,12,13 装着用スペーサー
1a 探触子先端被覆部
1b 粘着固定部
1c 延出部
1d 境界部
1e 当接面
1f 合成樹脂フィルム
1g 形状保持材
1i,1j,1k 剥離フィルム
2 超音波診断用探触子
2a 探触子の先端
D1 探触子先端被覆部の厚さ
D2 粘着固定部の厚さ
D3,D4 段差寸法

Claims (2)

  1. 超音波診断用探触子に装着され、体表との間に介在されて使用される装着用スペーサーであって、該スペーサーは粘着性を有するゲル弾性体からなり、探触子の先端を被覆する探触子先端被覆部と、この探触子先端被覆部の両側に連設され且つ探触子の外面に粘着固定される粘着固定部とを備えており、粘着固定部の厚さが探触子先端被覆部の厚さよりも薄くなっていることを特徴とする超音波診断用探触子の装着用スペーサー。
  2. 探触子先端被覆部と粘着固定部との境界部の表面が凹曲面もしくは斜面となるように、境界部の厚さが探触子先端被覆部側から粘着固定部側にかけて減少していることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断用探触子の装着用スペーサー。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110824019A (zh) * 2019-11-11 2020-02-21 长沙理工大学 一种粘附式声发射探头夹具

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