JP2014029151A - 建設機械の排気構造 - Google Patents

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善三 山口
Yasumasa Kimura
康正 木村
Kazuhiro Ueda
員弘 上田
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Abstract

【課題】騒音を十分に低減させることが可能な建設機械の排気構造を提供する。
【解決手段】建設機械のエンジンルーム内にダクト28を設け、エンジンから排出された排ガスが流通する排ガス管の先端部を前記ダクト内に挿入し、前記エンジンルーム内に導入した冷却用空気と、前記エンジンから排出された排ガスとを前記ダクト内で混合させて、前記ダクトから前記エンジンルーム外に排出する建設機械の排気構造において、多数の貫通孔を備えた金属製の多孔板2が、前記ダクトの内壁面との間に空気層3を形成するように前記ダクトの内壁面に沿って配置される。
【選択図】図4

Description

本発明は、油圧ショベル等の建設機械において、エンジンから排出される排ガス、および、エンジン等を冷却した冷却済み空気(排風)をエンジンルーム外に排出するための排気構造に関する。
従来、油圧ショベル等の建設機械において、エンジンから排出される高温(例えば500℃)の排ガスを排ガス管(尾管)によってエンジンルームから直接外部に上向きに排出すると、周囲の温度環境が悪化し、立木が枯れたりするという問題があった。特に、オペレータが排気熱と排気音とを身近に受けるため、オペレータの作業環境が悪くなるという問題があった。
そこで、特許文献1には、エンジンルーム内における排気口の下部に、グラスウール等の吸音材を内面側に備えた筒状のダクトを、上端が排気口に、下端がエンジンルーム内にそれぞれ開口するように上下方向に設けるとともに、排ガス管の先端部をダクト下方から上向きに折り曲げてダクト内に挿入したエンジン室内蔵エンジン吸排気装置が開示されている。このような構成であれば、排風および排ガスをダクト内に導いて両者を混合させることで、排ガス温度を低下させた上で外部に排出することができるとともに、ダクト内の吸音材で運転騒音を減音させることができる。
特開平3−229907号公報
ところで、音源近くに設置した吸音材が音源に近いほど、吸音効果は大きくなる。しかし、非常に高温で高速に流れる排ガスに吸音材が晒されるような環境においては、グラスウールのような通常の吸音材を排ガスの噴出口付近に設置することはできない。よって、騒音を十分に低減させることができなかった。なお、排ガスの噴出口付近に設置可能な吸音材はあるが、種類(吸音帯域)が限られており、吸音効果が小さく、ダクトを大きくする必要があり、コストが高いという問題がある。
本発明の目的は、騒音を十分に低減させることが可能な建設機械の排気構造を提供することである。
本発明における建設機械の排気構造は、建設機械のエンジンルーム内にダクトを設け、エンジンから排出された排ガスが流通する排ガス管の先端部を前記ダクト内に挿入し、前記エンジンルーム内に導入した冷却用空気と、前記エンジンから排出された排ガスとを前記ダクト内で混合させて、前記ダクトから前記エンジンルーム外に排出する建設機械の排気構造において、多数の貫通孔を備えた金属製の多孔板が、前記ダクトの内壁面との間に空気層を形成するように前記ダクトの内壁面に沿って配置されていることを特徴とする。
上記の構成によれば、多孔板は金属製なので、耐熱性・耐風性に優れており、排ガスの噴出口付近に設置可能である。そして、多孔板が備える多数の貫通孔を通過する空気には粘性減衰作用が生じて、空気振動(音)が熱エネルギーへと変換され、空気振動に減衰が生じるので、比較的広い周波数帯域で音波が吸音される。また、ダクトの内壁面と多孔板との間に設けた空気層により、ヘルムホルツ共鳴原理による消音作用が生じるので、この共鳴原理と前述の空気の粘性減衰作用とにより、ヘルムホルツの共鳴周波数を中心に幅広い帯域の音波が消音される。これにより、騒音を十分に低減させることができる。
また、本発明における建設機械の排気構造において、前記排ガス管の先端部近傍の前記空気層は、他の前記空気層よりも厚さが薄くされていてよい。上記の構成によれば、排ガス管の先端部近傍の空気層の厚さを、他の空気層の厚さよりも薄くすることで、排ガス管の先端部近傍における開口面積を広げることができるので、排ガス管の先端部近傍を流れる空気の流量を確保することができる。また、空気層の厚みを変化させることで吸音周波数帯域が変化するので、吸音したい周波数帯域が吸音周波数帯域となるように空気層の厚みを変化させることで、騒音を好適に低減させることができる。
また、本発明における建設機械の排気構造において、前記ダクトは折れ曲がっており、前記多孔板における前記ダクトの折れ曲がり部に対向する部分は折れ曲がり方向に湾曲されていてよい。上記の構成によれば、多孔板におけるダクトの折れ曲がり部に対向する部分を折れ曲がり方向に湾曲させて、空気層の厚みをなめらかに変化させることで、冷却用空気に対する流体抵抗を低減させることができる。
また、本発明における建設機械の排気構造においては、前記空気層が仕切られていてよい。上記の構成によれば、空気層を仕切ることで、空気層内において音波が多孔板に平行して進行するのを防止することができる。これにより、貫通孔を通過する空気に生じる粘性減衰作用が増大するので、吸音率を高めることができる。
また、本発明における建設機械の排気構造においては、前記空気層内に多孔質吸音材が配置されていてよい。上記の構成によれば、空気層内に多孔質吸音材を配置することにより、排ガスの熱による多孔質吸音材への影響を多孔板によって遮断しつつ、高周波における吸音性能を向上させることができる。
また、本発明における建設機械の排気構造においては、前記排ガスを前記空気層に導く導入管が前記排ガス管から分岐されていてよい。上記の構成によれば、導入管で排ガスを空気層に導くことで、多孔板の貫通孔から定常的に排ガスが噴出するようになる。ここで、定常流の存在によって多孔板の減衰性能が大幅に増大することが知られている。そこで、多孔板の貫通孔から定常的に排ガスを噴出させることで、吸音率を高めることができる。
また、本発明における建設機械の排気構造において、前記導入管は、前記ダクトの内壁面に沿って延びており、前記導入管には、軸方向に複数の噴出口が設けられていてよい。上記の構成によれば、ダクトの内壁面に沿って延びる導入管に、軸方向に複数の噴出口を設けることで、噴出口から噴出して多孔板の貫通孔を通過する排ガスの流速をほぼ一定にすることができる。これにより、安定した高い吸音性能を得ることができる。
また、本発明における建設機械の排気構造においては、前記導入管の軸方向に前記空気層が仕切られていてよい。上記の構成によれば、導入管の軸方向に空気層を仕切ることで、噴出口から噴出して多孔板の貫通孔を通過する排ガスの流速をより一定にすることができる。これにより、より安定した高い吸音性能を得ることができる。また、空気層を仕切ることで、空気層内において音波が多孔板に平行して進行するのを防止することができる。これにより、音波が貫通孔を通過しやすくなるので、吸音性能を向上させることができる。
本発明の建設機械の排気構造によると、排ガスの噴出口付近に設置可能な金属製の多孔板により、騒音を十分に低減させることができる。
小型ショベルの側面図である。 エンジンルームの断面図である。 図2の要部Aの拡大図である。 図2をB方向から見た部分断面図である。 騒音の評価結果を示すグラフである。 図2をB方向から見た部分断面図である。 吸音周波数帯域の変化を示す図である。 図2をB方向から見た部分断面図である。 図2をB方向から見た部分断面図である。 図9をD方向から見た図である。 吸音性能の評価結果を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
[第1実施形態]
(油圧ショベルの構成)
本発明の第1実施形態による建設機械の排気構造(排気構造)1は、図1に示すように、建設機械である油圧ショベル10に設けられている。なお、建設機械は油圧ショベル10に限定されない。
油圧ショベル10は、下部走行体11上に上部旋回体12が旋回自在に搭載され、この上部旋回体12の前部に掘削装置13が装着されて構成されている。下部走行体11は、上部旋回体12が搭載されるカーボディ(図示せず)の左右両側にクローラ式走行装置14を備えている。上部旋回体12を構成するアッパーフレーム15の後部には、アッパーフレーム15、および、パネルやボンネット等のエンジンガード部材16で囲われたエンジンルーム17が設けられている。このエンジンルーム17内には、エンジン21とその関連機器が設置されている。また、エンジンガード部材16上に運転席18と操作レバー(図示せず)とが設けられ、オペレータが運転席18に着座した状態でレバー操作を行う。運転席18の上方はキャノピ19で覆われている。
エンジンルーム17を背面側から見たC−C断面図である図2に示すように、エンジンルーム17内にはエンジン21が設けられており、エンジン21の一端側(図中左側)には、エンジン21で駆動される冷却用のファン22と、ラジエータ等の熱交換器23とが設けられている。また、エンジン21の一端側の上面壁(エンジンガード部材16の上面壁)には、吸気口24が設けられている。
また、エンジン21の他端側(図中右側)には、消音器(マフラー)25が設けられており、この消音器25には、排ガス管26が接続されている。また、エンジン21の他端側の下面壁(アッパーフレーム15)には、排気口27が設けられており、この排気口27の上方には、筒状のダクト28が設けられている。
ダクト28は、下端の出口側が排気口27に、上端の入口側がエンジンルーム17内にそれぞれ開口する状態で上下方向に設けられている。また、排ガス管26は、中間部がダクト28に向かって折り曲げられ、その先端側部分(先端部)26aが、ダクト28の側壁を貫いてダクト28内に挿入されている。即ち、排ガス管26の先端側部分26aは、ダクト28と交差(望ましくは図示のように直交)してダクト28内をほぼ横断する状態で挿入されている。そして、排ガス管26の先端開口は閉塞され、または、小開口面積に絞られている。
図2の要部Aの拡大図である図3に示すように、排ガス管26の先端側部分26aには、ダクト28内を通る排風の風下側の半周部分(排風と直交する線より下側の半周部分)に、排ガスをダクト28内に噴射する複数の排出穴26bが設けられている。この排出穴26bは、先端側部分26aの半周部分における周方向の複数箇所に、かつ、先端側部分26aの長さ方向の複数箇所にそれぞれ間隔をおいて設けられている。
また、排出穴26bは、ここから排出される排ガス量が先端側部分26aの長さ方向に略均等となるように、その開口面積が先端側部分26aの先端に向かって漸減する状態で設けられている。具体的には、先端側部分26aの長さ方向における排出穴26bの間隔(密度)が先端側部分26aの先端に向かって漸次大きくなる(密度が疎になる)状態で設けられている。あるいは、排出穴26bの大きさを先端に向かって漸次小さくしてもよい。
なお、排出穴26bは、丸穴でもよいし、角穴でもよい。あるいは、先端側部分26aの長さ方向に長い溝穴としてもよい。溝穴とする場合は、その幅寸法を先端に向かって漸次小さくすればよい。
上記の構成において、図2に示すように、ファン22の回転により吸気口24からエンジンルーム17内に導入された外気は、熱交換器23を通って熱交換を行った後に、エンジン21を冷却し、冷却済み空気(排風)としてダクト28を通って排気口27から排出される。
また、エンジン21から排出された高温(例えば500℃)の排ガスは、消音器25を通って消音された後に、排ガス管26を通ってダクト28内に排出され、排風と混合されて排気口27から排出される。
ここで、排ガスと排風との混合気がエンジンルーム17内から下向きに、即ち、運転席18と上下反対側に排出されるため、オペレータが受ける熱と騒音による悪影響を著しく低減させることができる。
また、排ガスが、排ガス管26の先端側部分26aの風下側半周部分であって略全長部分からダクト28内に、先端側部分26aの中心に対して放射状に噴射される。即ち、排ガスが、ダクト28の排風方向と異なる方向に、先端側部分26aの周方向及び長さ方向に分散して噴射される。この異方向噴射作用により、圧力および流速が排風よりも高い排ガスがダクト28の断面の広い面積範囲に長くとどまるため、低圧で低速の排風と混ざりやすくなる。また、排ガスの周方向及び長さ方向への拡散作用により、排ガスがダクト28内のさらに広い範囲で排風と混ざり合う。これにより、排ガスと排風との混合効率を高め、排ガス温度を好ましい温度(例えば500℃から100℃)まで確実に低下させた上で、ダクト28および排気口27から外部に排出することができる。
また、上記の排ガス噴射作用によって、排ガスの排出音(排気音)がダクト28の内面に接触し易くなるとともに、エンジン21および消音器25から発生して排風に乗って外部に排出される音が排ガスとともにダクト28内で拡散・反射し易くなるので、外部に排出される運転騒音を低減させることができる。
(排気構造の構成)
排気構造1は、図2をB方向から見た部分断面図である図4に示すように、ダクト28内に配置されたアルミニウム製の多孔板2を有している。多孔板2はアルミニウム製なので、耐熱性・耐風性に優れており、排ガス管26の先端側部分26aの排出穴26b(図3参照)付近に設置可能である。なお、多孔板2は鉄等の金属からなっていてもよい。
多孔板2は、多数の貫通孔を備えており、ダクト28の図中右側の内壁面および図中左側の内壁面に沿ってそれぞれ配置されている。ここで、ダクト28は「く」の字に少なくとも1回折れ曲がっているが、多孔板2は、ダクト28のどの内壁面に対しても平行となるように折り曲げられている。ダクト28の図中右側の内壁面と、これに対向する多孔板2との間には、厚みaの空気層3が形成されている。同様に、ダクト28の図中左側の内壁面と、これに対向する多孔板2との間には、厚みaの空気層3が形成されている。本実施形態において、多孔板2は、板厚が0.3mm、貫通孔の孔径が0.5mmである。なお、多孔板2は、貫通孔の孔径が3mm以下で開口率が3%以下であることが好ましい。また、本実施形態において、空気層3の厚みaは25mmである。
上記の構成において、ダクト28を通過する排風のうち、多孔板2が備える多数の貫通孔を通過する空気には、粘性減衰作用が生じる。これにより、空気振動(音)が熱エネルギーへと変換され、空気振動に減衰が生じるので、比較的広い周波数帯域で音波が吸音される。また、ダクト28の壁面と多孔板2との間に設けた空気層3により、ヘルムホルツ共鳴原理による消音作用が生じる。この共鳴原理と前述の空気の粘性減衰作用とにより、ヘルムホルツの共鳴周波数を中心に幅広い帯域の音波が消音される。よって、エンジン21やファン22からの騒音、および、排ガス管26の先端側部分26aからの騒音が低減される。
(騒音評価)
次に、ダクト28内に多孔板2を設けた場合と設けない場合とで、排気口27付近における騒音を評価した。その結果を図5に示す。ここで、多孔板2は、板厚が0.3mm、貫通孔の孔径が0.5mmであり、空気層3の厚みaは25mmである。ダクト28内に多孔板2を設けた場合、400〜6300Hzの周波数帯において騒音の低下がみられた。
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る排気構造1によると、多孔板2は金属製なので、耐熱性・耐風性に優れており、排ガス管26の先端側部分26aの排出穴26b付近に設置可能である。そして、多孔板2が備える多数の貫通孔を通過する空気には粘性減衰作用が生じて、空気振動(音)が熱エネルギーへと変換され、空気振動に減衰が生じるので、比較的広い周波数帯域で音波が吸音される。また、ダクト28の内壁面と多孔板2との間に設けた空気層3により、ヘルムホルツ共鳴原理による消音作用が生じるので、この共鳴原理と前述の空気の粘性減衰作用とにより、ヘルムホルツの共鳴周波数を中心に幅広い帯域の音波が消音される。これにより、騒音を十分に低減させることができる。
[第2実施形態]
(排気構造の構成)
次に、本発明の第2実施形態に係る排気構造201について説明する。なお、上述した構成要素と同じ構成要素については、同じ参照番号を付してその説明を省略する。本実施形態の排気構造201が第1実施形態の排気構造1と異なる点は、図2をB方向から見た部分断面図である図6に示すように、排ガス管26の先端側部分26aの近傍の空気層3’は、他の空気層3よりも厚さが薄くされている点である。
多孔板202は、多数の貫通孔を備えており、ダクト28の図中右側の内壁面および図中左側の内壁面に沿ってそれぞれ配置されている。また、多孔板202は、排ガス管26の先端側部分26aの近傍の空気層3’の厚みbが、他の空気層3の厚みaよりも薄くなるように、先端側部分26aの近傍においてコ字状に折り曲げられている。これにより、排ガス管26の先端側部分26aの近傍における開口面積が広がるので、先端側部分26aの近傍を流れる空気の流量が確保される。
また、図7に示すように、空気層3,3’の厚みa,bや多孔板202の開口率を変化させることで、吸音周波数帯域が変化する。よって、吸音したい周波数帯域が吸音周波数帯域となるように空気層3,3’の厚みa,bや開口率を変化させることで、騒音を好適に低減させることができる。なお、空気層3,3’の厚みa,bを変化させると同時に多孔板202の開口率を変化させることで、吸音周波数帯域を変化させないなど任意の設計が可能である。
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る排気構造201によると、排ガス管26の先端側部分26a近傍の空気層3’の厚さを、他の空気層3の厚さよりも薄くすることで、排ガス管26の先端側部分26a近傍における開口面積を広げることができるので、排ガス管26の先端側部分26a近傍を流れる空気の流量を確保することができる。また、空気層3,3’の厚みを変化させることで吸音周波数帯域が変化するので、吸音したい周波数帯域が吸音周波数帯域となるように空気層3,3’の厚みを変化させることで、騒音を好適に低減させることができる。
[第3実施形態]
(排気構造の構成)
次に、本発明の第3実施形態に係る排気構造301について説明する。なお、上述した構成要素と同じ構成要素については、同じ参照番号を付してその説明を省略する。本実施形態の排気構造301が第1実施形態の排気構造1と異なる点は、図2をB方向から見た部分断面図である図8に示すように、多孔板302におけるダクト28の折れ曲がり部28aに対向する部分302aは折れ曲がり方向に湾曲されている点と、空気層3が仕切られている点と、空気層3内に多孔質吸音材5が配置されている点である。
多孔板302におけるダクト28の折れ曲がり部28aに対向する部分302aを折れ曲がり方向に湾曲させて、空気層3の厚みaをなめらかに変化させることで、排風に対する流体抵抗が低減する。なお、排ガス管26の先端側部分26aの近傍の空気層3の厚みが、他の空気層3の厚みよりも薄くなるように、ダクト28の折れ曲がり部28aに対向する部分302aを湾曲させてもよい。これによると、排ガス管26の先端側部分26aの近傍における開口面積が広がるので、先端側部分26aの近傍を流れる空気の流量が確保される。
また、ダクト28の内壁面と多孔板302との間に設けた仕切り壁4で、空気層3を仕切ることで、空気層3内において音波が多孔板302に平行して進行するのが防止される。これにより、貫通孔を通過する空気に生じる粘性減衰作用が増大し、吸音率が高まる。なお、多孔板302をダクト28の壁面に向かって折り曲げることで、仕切り壁4’としてもよい。この場合、部品点数が増加しないので、コストを抑えることができる。
また、空気層3内にグラスウール、ウレタンといった多孔質吸音材5を配置することで、高周波における吸音性能が向上する。なお、排ガスの熱による多孔質吸音材5への影響は、多孔板302によって遮断される。
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る排気構造301によると、多孔板302におけるダクト28の折れ曲がり部28aに対向する部分302aを折れ曲がり方向に湾曲させて、空気層3の厚みをなめらかに変化させることで、排風に対する流体抵抗を低減させることができる。
また、空気層3を仕切ることで、空気層3内において音波が多孔板302に平行して進行するのを防止することができる。これにより、貫通孔を通過する空気に生じる粘性減衰作用が増大するので、吸音率を高めることができる。
また、空気層3内に多孔質吸音材5を配置することにより、排ガスの熱による多孔質吸音材5への影響を多孔板302によって遮断しつつ、高周波における吸音性能を向上させることができる。
[第4実施形態]
(排気構造の構成)
次に、本発明の第4実施形態に係る排気構造401について説明する。なお、上述した構成要素と同じ構成要素については、同じ参照番号を付してその説明を省略する。本実施形態の排気構造401が第1実施形態の排気構造1と異なる点は、図2をB方向から見た部分断面図である図9に示すように、排ガスを空気層3に導く導入管26cが排ガス管26から分岐されている点である。
図9をD方向から見た図である図10に示すように、導入管26cは、排ガス管26の先端側部分26aから分岐されて空気層3内に挿入されている。そして、導入管26cは、空気層3内において、ダクト28の内壁面に沿って延びている。また、導入管26cには、軸方向に複数の噴出口26dが設けられており、これらの一部は多孔板2に対向している。また、空気層3は、仕切り壁6によって、導入管26cの軸方向に複数に仕切られている。
導入管26cで排ガスを空気層3に導くことで、多孔板2の貫通孔から定常的に排ガスが噴出するようになる。ここで、定常流の存在によって多孔板2の減衰性能が大幅に増大することが知られている。そこで、多孔板2の貫通孔から定常的に排ガスを噴出させることで、吸音率を高めることができる。
また、ダクト28の内壁面に沿って延びる導入管26cに、軸方向に複数の噴出口26dを設けることで、噴出口26dから噴出して多孔板2の貫通孔を通過する排ガスの流速をほぼ一定にすることができる。さらに、仕切り壁6で導入管26cの軸方向に空気層3を仕切ることで、噴出口26dから噴出して多孔板2の貫通孔を通過する排ガスの流速をより一定にすることができる。これにより、安定した高い吸音性能を得ることができる。
また、仕切り壁6で空気層3を仕切ることで、空気層3内において音波が多孔板2に平行して進行するのを防止することができる。これにより、音波が貫通孔を通過しやすくなるので、吸音性能を向上させることができる。
なお、図9では、図中左側の空気層3に導入管26cが挿入されているが、図中右側の空気層3に導入管26cが挿入されていてもよく、排ガス管26からそれぞれ分岐した導入管26cが図中左側の空気層3と図中右側の空気層3とにそれぞれ挿入されていてもよい。
(吸音性能評価)
次に、空気層3内に導入管26cを設けた場合と設けない場合とで、吸音性能を評価した。その結果を図11に示す。ここで、多孔板2は、板厚が0.3mm、貫通孔の孔径が0.5mmであり、空気層3の厚みaは25mmである。空気層3内に導入管26cを設けて、多孔板2の貫通孔から定常的に噴出する排ガスの流れ(定常流)を発生させた場合、500〜1500Hzの周波数帯において吸音率の向上がみられた。
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る排気構造401によると、導入管26cで排ガスを空気層3に導くことで、多孔板2の貫通孔から定常的に排ガスが噴出するようになる。ここで、定常流の存在によって多孔板2の減衰性能が大幅に増大することが知られている。そこで、多孔板2の貫通孔から定常的に排ガスを噴出させることで、吸音率を高めることができる。
また、ダクト28の内壁面に沿って延びる導入管26cに、軸方向に複数の噴出口26dを設けることで、噴出口26dから噴出して多孔板2の貫通孔を通過する排ガスの流速をほぼ一定にすることができる。これにより、安定した高い吸音性能を得ることができる。
また、導入管26cの軸方向に空気層3を仕切ることで、噴出口26dから噴出して多孔板2の貫通孔を通過する排ガスの流速をより一定にすることができる。これにより、より安定した高い吸音性能を得ることができる。また、空気層3を仕切ることで、空気層3内において音波が多孔板2に平行して進行するのを防止することができる。これにより、音波が貫通孔を通過しやすくなるので、吸音性能を向上させることができる。
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
例えば、図2において、アッパーフレーム15に設けられた排気口27の上方にダクト28が設けられた構成としたが、吸気口24と同様にエンジンガード部材16の上面壁に排気口27が設けられ、その下方にダクト28が設けられた構成であってもよい。即ち、排ガスと排風との混合気がエンジンルーム17内から上向きに排出される構成であってもよい。
1,201,301,401 排気構造
2,202,302 多孔板
3,3’ 空気層
4,4’ 仕切り壁
5 多孔質吸音材
6 仕切り壁
10 油圧ショベル
11 下部走行体
12 上部旋回体
13 掘削装置
14 クローラ式走行装置
15 アッパーフレーム
16 エンジンガード部材
17 エンジンルーム
18 運転席
19 キャノピ
21 エンジン
22 ファン
23 熱交換器
24 吸気口
25 消音器
26 排ガス管
26a 先端側部分(先端部)
26b 排出穴
26c 導入管
26d 噴出口
27 排気口
28 ダクト
28a 折れ曲がり部

Claims (8)

  1. 建設機械のエンジンルーム内にダクトを設け、エンジンから排出された排ガスが流通する排ガス管の先端部を前記ダクト内に挿入し、前記エンジンルーム内に導入した冷却用空気と、前記エンジンから排出された排ガスとを前記ダクト内で混合させて、前記ダクトから前記エンジンルーム外に排出する建設機械の排気構造において、
    多数の貫通孔を備えた金属製の多孔板が、前記ダクトの内壁面との間に空気層を形成するように前記ダクトの内壁面に沿って配置されていることを特徴とする建設機械の排気構造。
  2. 前記排ガス管の先端部近傍の前記空気層は、他の前記空気層よりも厚さが薄くされていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械の排気構造。
  3. 前記ダクトは折れ曲がっており、
    前記多孔板における前記ダクトの折れ曲がり部に対向する部分は折れ曲がり方向に湾曲されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建設機械の排気構造。
  4. 前記空気層が仕切られていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の建設機械の排気構造。
  5. 前記空気層内に多孔質吸音材が配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の建設機械の排気構造。
  6. 前記排ガスを前記空気層に導く導入管が前記排ガス管から分岐されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の建設機械の排気構造。
  7. 前記導入管は、前記ダクトの内壁面に沿って延びており、
    前記導入管には、軸方向に複数の噴出口が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の建設機械の排気構造。
  8. 前記導入管の軸方向に前記空気層が仕切られていることを特徴とする請求項7に記載の建設機械の排気構造。
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