JP2014028355A - 光触媒機能材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】光触媒層を形成した後にその光触媒層を活性化させるとともに、基材に対する密着性を向上させることができる光触媒機能材料の製造方法を提供する。
【解決手段】不織布基材、織布基材、表面に3次元構造を持つフィルム状基材、平坦面基材等の基材1を準備する工程と、その基材1の表面の全て又は一部に光触媒材料層を形成する工程と、その光触媒材料層をプラズマ処理して、光触媒能を有する光触媒層3を形成する工程とを有し、光触媒層形成工程において、プラズマ処理で用いる放電ガスを、アルゴンガス、二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、四フッ化炭素、六フッ化硫黄、又はそれらを含む混合ガスとする光触媒機能材料11の製造方法により上記課題を解決する。このとき、1対の電極を光触媒材料層の両面側又は片面側に配置してプラズマ処理することが好ましく、無機層を基材1の表面の全部又は一部に形成してもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、光触媒機能材料の製造方法に関し、さらに詳しくは、光触媒層を形成した後にその光触媒層を活性化させるとともに、基材に対する密着性を向上させることができる、光触媒機能材料の製造方法に関する。
光触媒は、光を照射することにより強い酸化力を有するラジカルを発生させ、有機物を酸化して分解できることが知られている。こうした光触媒を種々の基材に担持した光触媒材料が提案されている。例えば特許文献1,2には、不織布を基材とし、その基材上に無機化合物等が設けられ、その無機化合物等の上に光触媒が担時した光触媒材料が提案されている。
特許文献1には、不織布の繊維表面にシリカ薄膜又は無機系酸化物膜を形成し、その上に光触媒を設ける技術が提案されている。この技術は、不織布の繊維材料の表面に設けられたシリカ薄膜又は無機系酸化物膜を、光触媒反応による分解が起こり難い材料として設けた点に特徴があり、その結果、不織布の剛性、靱性、多孔性といった基材としての好ましい特性を損なうことなく、光触媒反応が原因となる強度劣化や有臭のガス成分の放出を防止することができるとしている。
また、特許文献2には、繊維の表面にその繊維中の金属酸化物成分の含有率が連続的に変化する成分傾斜構造を有した無機/有機成分傾斜性繊維の製造技術について提案されている。そして、その無機/有機成分傾斜性繊維を加工して不織布とし、その不織布の表面に、光触媒活性材料などの機能性無機材料の薄膜を設けた機能性繊維製品が提案されている。その無機/有機成分傾斜性繊維は、光触媒活性材料などの機能性無機材料などの担持が可能であると共に、実用的な強度を有し、軽量で安価であるとされている。
特開2000−107610号公報 特開2003−155622号公報
しかしながら、特許文献1で提案された技術は、シリカ薄膜や無機酸化物膜の形成工程が複雑且つ煩雑であり、基材上に均一で密着性のよい膜を形成することは必ずしも容易ではなかった。また、特許文献2で提案された技術も、製造工程が極めて煩雑で、コストが嵩むという難点があった。また、特許文献1,2を含む光触媒機能材料の分野では、光触媒機能を高めることが要請されている。
本発明は、上記課題を解決したものであって、その目的は、光触媒層を形成した後にその光触媒層を活性化させるとともに、基材に対する密着性を向上させることができる、光触媒機能材料の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明に係る光触媒機能材料の製造方法は、基材を準備する工程と、前記基材の表面の全て又は一部に光触媒材料層を形成する工程と、前記光触媒材料層をプラズマ処理して、光触媒能を有する光触媒層を形成する工程と、を有し、前記光触媒層形成工程において、前記プラズマ処理で用いる放電ガスを、アルゴンガス、二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、四フッ化炭素、六フッ化硫黄、又はそれらを含む混合ガスとする、ことを特徴とする。
本発明に係る光触媒機能材料の製造方法は、前記光触媒層形成工程において、前記光触媒材料層が設けられた前記基材の両面側にそれぞれ1つ以上の電極を配置してプラズマ処理してもよい。
本発明に係る光触媒機能材料の製造方法は、前記光触媒層形成工程において、前記光触媒材料層が設けられた前記基材の片面側に2以上の電極を配置してプラズマ処理してもよい。
本発明に係る光触媒機能材料の製造方法は、前記光触媒層形成工程において、前記プラズマ処理の放電を、13.56MHz±0.5MHzで行う、10Hz以上、300kHz以下の範囲内で行う、又は直流で行うことができる。
本発明に係る光触媒機能材料の製造方法において、前記光触媒材料層が、酸化チタン系光触媒材料層、酸化タングステン系光触媒材料層、酸化亜鉛系光触媒層、酸化鉄系光触媒層、チタン酸ストロンチウム系光触媒層、硫化カドミウム系光触媒層、ガリウム砒素系光触媒層、及びガリウムリン系光触媒材料層から選ばれるいずれかの層であることが好ましい。
本発明に係る光触媒機能材料の製造方法において、前記基材を準備する工程と前記光触媒材料層を形成する工程との間に、無機層を前記基材の表面の全部又は一部に形成する工程を有する。
本発明に係る光触媒機能材料の製造方法によれば、光触媒層を形成した後にその光触媒層を活性化させるとともに、基材に対する密着性を向上させることができる。
本発明に係る製造方法で製造された光触媒機能材料の一例を示す模式的な断面図であり、(A)は不織布基材等の例であり、(B)はフィルム状基材の例である。 不織布基材等を用いた場合の光触媒機能材料の一例を示す平面図(A)と、その光触媒機能材料を構成する光触媒機能繊維の一例を示す断面図である。 光触媒機能繊維上に光触媒層が設けられる製造工程を示す模式的な断面図である。 フィルム状基材の3次元構造上に光触媒層が設けられる製造工程を示す模式的な断面図である。 プラズマ処理装置の一例を示す模式的な構成図である。 プラズマ処理装置の他の一例を示す模式的な構成図である。 プラズマ処理装置のさらに他の一例を示す模式的な構成図である。 電極構造の一例を示す模式的な断面構成図である。 マグネトロン機構を有する電極構造の一例を示す模式的な断面図である。 電極構造の他の一例を示す模式的な断面構成図である。 マグネトロン機構を有する電極構造の他の一例を示す模式的な断面図である。
本発明に係る光触媒機能材料の製造方法について説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[光触媒機能材料の製造方法]
本発明に係る光触媒機能材料11の製造方法は、図1〜図4に示す光触媒機能材料を製造する方法である。すなわち、その製造方法は、図3〜図7に示すように、基材1を準備する工程(準備工程)と、基材1の表面の全て又は一部に光触媒材料層3’を形成する工程(光触媒材料層形成工程)と、光触媒材料層3’をプラズマ処理して、光触媒能を有する光触媒層3を形成する工程(初期化工程又は光触媒層形成工程)と、を有する。そして、光触媒層形成工程において、プラズマ処理で用いる放電ガスを、アルゴンガス、二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、四フッ化炭素、六フッ化硫黄、又はそれらを含む混合ガスとする。
こうした光触媒機能材料11の製造方法によれば、光触媒材料層3’をプラズマ処理して光触媒能を有する光触媒層3を形成する工程を有するので、表面が平面又は曲面の基材のみならず、3次元構造を持つ不織布基材や織布基材のように繊維材料1’等が複雑に入り組んだ基材1(図1(A))や、表面に3次元構造を持つ基材1(図1(B))であっても、その隅々にまでプラズマ処理を施すことができる。その結果、プラズマ処理によって光触媒材料層3’から光触媒層3にすることができるとともに、基材1上への光触媒層3の密着性も高めることができる。また、プラズマ処理で用いる放電ガスを上記した各種のガスとしたので、例えば酸素ガスのみを用いた場合に比べて、光触媒材料へのダメージが少なく高い光触媒性能が得られるとともに、光触媒材料が密着している基材1との密着部へのまわりこみによるエッチング(等方性エッチング)を避けることができる。その結果として、光触媒材料の基材への密着性低下を避けることができ、耐久性に優れた光触媒性基材が得られるという効果を奏する。
以下、光触媒機能材料の製造方法について順次説明するとともに、各構成要素についても併せて説明する。
なお、以下では、基材1の表面が平面又は曲面の場合(図示しない)や、基材1の表面に3次元構造を持つ場合(図1(B))には、「基材1の表面」は文字どおりであるが、不織布基材又は織布基材の場合(図1(A)、図2)には、その構造上、「繊維材料1’」を「基材1」と読み替える。すなわち、「基材1の表面」とは、基材の種類により、基材1の表裏両面の場合もあるし、基材1が持つ3次元構造部分の表面の場合もあるし、基材1が不織布基材等である場合は、その不織布基材等を構成する繊維材料1’の表面の場合もある。そして、「全部又は一部」とは、そうした表面の全部又は一部のことである。
(準備工程)
準備工程は、図3(A)及び図4(A)に示すように、基材1を準備する工程である。基材1は、表面が平面又は曲面の基材(図示しない)であってもよいし、表面に3次元構造を持つ基材(図1(B))であってもよいし、不織布基材又は織布基材のような繊維材料1’(図1(A)、図2)であってもよい。これらのうち、3次元構造を持つ基材は、その一部又は全部が3次元構造であるものを含む。例えば、繊維材料1’で構成された不織布基材や織布基材、又は多孔質基材のように、その全部が3次元構造を持つ基材であってもよいし、表面に凹凸形状が設けられた基材のように、その一部である表面が3次元構造を持つ基材であってもよい。なお、少なくとも3次元構造を持つ部分があれば、3次元構造を持たない箇所や領域が一部存在している基材であってもよい。
こうした基材1としては、表面が平面又は曲面の基材(図示しない)も好ましく挙げることができるが、(A)不織布基材又は織布基材等のように繊維材料で構成された基材や、(B)表面に3次元構造を持つフィルム状基材等をより好ましく挙げることができる。
(A)繊維材料で構成された基材としては、3次元立体構造の不織布基材や織布基材が好ましい。特に不織布基材は、低コストで入手が容易であり、光触媒層3の比表面積を向上させることができるので、好ましく適用できる。なお、以下では、不織布基材又は織布基材と、その不織布基材又は織布基材を構成する繊維材料1’とを同義(同じ意味合い)で用いることがあり、また、不織布基材と織布基材とをまとめて「不織布基材等」ということがある。
繊維材料1’としては、有機繊維であっても無機繊維であってもよく、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、ポリアミド樹脂、ビニロン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ビニリデン樹脂、ポリウレタン樹脂、アラミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリパラフェニレンオキサゾール(PBO)樹脂、エチレンビニルグリコール樹脂、及びポリ乳酸樹脂等で形成される合成繊維;レーヨン、ポリノジック、キュブラ、及びリヨセル等の再生繊維;アセテート、トリアセテート、及びプロミックス等の半合成繊維;ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、パラ系アラミド繊維、ポリパラフェニレンオキサゾール(PBO)繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、高強度ポリビニルアルコール(PVA)繊維、及び高強度ポリプロピレン(PP)繊維等の高強度、高弾性繊維;ポリイミド(PI)繊維、ポリフェニルサルファイド(PPS)繊維、メタ型アラミド繊維、PAN系炭素繊維、及びポリエーテルエーテルケトン繊維等の高耐熱性、難燃性繊維;ポリ乳酸繊維、ポリカプトラクトン繊維、及びポリブチレンサクシネート繊維等の生分解性繊維;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)繊維等のフッ素系繊維;ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維;セルロース繊維;ガラス、金属、炭素等の無機繊維;等を挙げることができる。これらの繊維材料1’は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、無機繊維を用いる場合は、そのまま用いてもよいし、上記した無機繊維以外の有機繊維と組み合わせて用いてもよいし、無機繊維の表面を有機質でコーティングして用いてもよいし、ガラス、金属、炭素等の無機繊維中に炭素成分や炭化水素成分等の有機質を混合して用いてもよい。
不織布基材の製造方法としては、従来公知の製造方法が適用できる。具体的には、精紡工程で繊維を形成した後、フリース形成工程で繊維の集積層を形成し、その後、繊維間結合工程で繊維同士を結合させて製造できる。精紡工程における精紡方法としては、例えば、エレクトロスピニング法、溶剤湿式冷却ゲル紡糸、エレクトレット法、フラッシュ紡糸等の従来公知の方法を適用でき、フリース形成工程におけるフリース形成法としては、例えば、湿式フリース形成法、乾式フリース形成法、スパンボンド法、エアレイド法等の従来公知の方法を適用でき、繊維間結合工程における繊維同士を結合させる方法としては、例えば、サーマルボンド法、スパンレース法、ニードルパンチ法、ケミカルボンド法等の従来公知の方法を適用できる。また、こうした方法以外にも、一工程で不織布基材を製造する方法として、例えば、積層延伸法、メルトブローン法等を適用できる。また、織布基材は、繊維材料1’を用い、従来公知の織機を用いて製造できる。
不織布基材等(不織布基材又は織布基材。以下同じ。)の空隙率は、光触媒機能材料11の用途によって任意に設計される。例えば、光触媒機能材料11を空気浄化用のフィルターとして用いる場合、不織布基材等の空隙率は、40%以上、90%以下の範囲内であることが好ましい。また、例えば、光触媒機能材料11を水浄化用のフィルターとして用いる場合、不織布基材等の空隙率は、30%以上、70%以下の範囲内であることが好ましい。なお、空隙率は、不織布基材等を構成する繊維材料の総体積と不織布基材等の嵩体積とを測定し、(1−不織布基材等を構成する繊維材料の総体積/不織布基材等の嵩体積)×100、によって計算された値で評価することができる。繊維材料の総体積は、例えば所定量の水中に繊維材料を沈めたときの水面の増量で算出でき、不織布基材等の嵩高さは、例えば不織布基材等の縦×横×高さで算出できる。
不織布基材等を構成する繊維材料の繊維径は、光触媒機能材料11の用途によって任意に設計されるが、例えば0.01μm以上、100μm以下の範囲内であり、より好ましくは0.05μm以上、30μm以下の範囲内である。
(B)表面に3次元構造を持つフィルム状基材としては、表面の3次元構造が凹凸形状等であるものを挙げることができ、例えば、角型、山型、台形型、曲面型、半円型、円筒型等の構造形態を表面に持つフィルム状の基材を含む。その他の形態例としては、プリズムのような三角形、又は、四角形、五角形、六角形又は八角形等の多角形状;半円筒形状(かまぼこ形状)、多面筒形状、半球レンズ形状(蠅の目形状又はモスアイ形状)、多面体レンズ形状、フレネルレンズ形状等の各種レンズ形状;等であってもよい。3次元構造を持つこれらのフィルム状基材は、光学特性を向上させたり、濡れ性を制御したり、接触性やすべり性を改善させたりするために利用されている。
こうしたフィルム状基材は、樹脂材料又はガラス材料で形成されたフィルム状の基材であり、その表面に凹凸形状等の3次元構造を有している。フィルム状基材の構成材料は特に限定されず、従来公知の各種の樹脂材料やガラス材料を挙げることができる。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、これらの共重合体、及びポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)等のポリエステル系樹脂を挙げることができる。これらのうちでも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びこれらの共重合体が好ましく、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。また、ノルボルネン系ポリマー、シクロペンテン系ポリマー、シクロブテン系ポリマー等のシクロオレフィン系ポリマーであってもよい。ガラス基材としては、石英ガラス、ソーダガラス、無アルカリガラス等の各種のガラス材料を挙げることができる。
3次元構造の構成材料は、ベースとなるフィルム状基材の構成材料と同じであってもよいし、異なる材料であってもよい。例えば、ガラス板の上に上記した樹脂材料で3次元構造を設けたものであってもよい。
上記(A)(B)で説明した3次元構造を持つ各種の基材1や、表面が平面又は曲面の基材1は、任意の前処理が施されていてもよい。前処理としては、例えば、洗浄処理、表面改質等を挙げることができる。洗浄処理としては、基材1に洗浄液を噴霧する処理や、基材1を洗浄液中に浸漬する処理を挙げることができる。洗浄液としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ハイドロフルオロエーテル等の親水性エーテル類、水、弱酸性水溶液、弱アルカリ性水溶液、炭素数1〜4のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチルや酢酸エチル等を挙げることができる。表面改質としては、基材1上に形成する無機層2等との密着性を向上させる目的で行われる処理であり、基材1の表面をあらす物理的処理や、基材1の表面に密着性に寄与する官能基を形成させる化学的処理を適宜行うことができる。例えば、プラズマ処理、グラフト重合処理、コーティング処理等を挙げることができる。
(無機層形成工程)
無機層形成工程は、必ずしも必要ではなく、任意に設けられる工程である。例えば、図3(B)及び図4(B)に示すように、上記した基材1の表面の全て又は一部に無機層2を形成する工程である。無機層2は、後述する光触媒層3の下地として機能する層であり、光触媒層3の光触媒活性により、基材1が酸化されて劣化するのを防ぐように作用するものであり、保護層と言い換えてもよい。さらに、無機層2は、光触媒層3と基材1とを高い密着性で密着させるように作用するものである。なお、図3(B)及び図4(B)では、無機層2は基材1の表面の全体を均一に覆うように設けられているが、必ずしも無機層2は基材1の表面の全体を覆う必要はなく、上記した酸化劣化を防止する作用と密着性の向上作用とが必要十分である場合にはその程度に応じて、基材1の表面の一部分に設けられていてもよい。
無機層2の形成材料は、上記した目的が達成できるものであれば特に限定されないが、例えば、炭化ケイ素(SiC)、酸化炭化ケイ素(SiO)、酸化炭化窒化ケイ素(SiO)、酸化ケイ素(SiO,x=0〜2)、窒化ケイ素(SiN,x=0〜1.3)、酸化窒化ケイ素(SiO)等のケイ素化合物;酸化亜鉛(ZnO)、アルミドープ酸化亜鉛(ZnO:Al)、ボロンドープ酸化亜鉛(ZnO:B)、酸化炭化亜鉛(ZnO)、酸化窒化亜鉛(ZnO)、窒化亜鉛(ZnN)、酸化炭化窒化亜鉛(ZnO)、IZO等の亜鉛化合物;酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化炭化ジルコニウム(ZrO)、酸化窒化ジルコニウム(ZrO)、窒化ジルコニウム(ZrN)、酸化炭化窒化ジルコニウム(ZrO)等のジルコニウム化合物;ITO、酸化インジウム等のインジウム化合物;酸化錫(SnO)、酸化炭化錫(SnO)、酸化炭化窒化錫(SnO)等の錫化合物;酸化クロム(CrO)、酸化炭化クロム(CrO)、酸化窒化クロム(CrO)、窒化クロム(CrN)、酸化炭化窒化クロム(CrO)等のクロム化合物;酸化アルミニウム(AlO,x=0〜1.5)、炭化アルミニウム(AlC)、酸化炭化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)、酸化炭化窒化アルミニウム(AlO)等のアルムニウム化合物;酸化チタン(TiO,x=0〜2)、炭化チタン(TiC)、酸化炭化チタン(TiO)、窒化チタン(TiN)、酸化炭化窒化チタン(TiO)等のチタン化合物等を挙げることができる。ここで、x、y、zは、それぞれの化学量論数を表す場合もあるし、化学量論数に満たない数値を表す場合もある。化学量論数に満たない場合は、それぞれが欠損状態(酸素欠損、炭素欠損、窒素欠損等)であることを意味している。例えば、x=0〜2と記載のもの以外でも同様である。
無機層2の形成材料の中でも、絶縁性化合物は光触媒層3の光触媒性能低下を招くことがないので、好ましく用いられる。こうした絶縁性化合物としては、例えば、炭化ケイ素(SiC)、酸化炭化ケイ素(SiO)、酸化炭化窒化ケイ素(SiO)、酸化ケイ素(SiO,x=0〜2)、窒化ケイ素(SiN,x=0〜1.3)、酸化窒化ケイ素(SiO)等のケイ素化合物;酸化炭化亜鉛(ZnO)、酸化窒化亜鉛(ZnO)、窒化亜鉛(ZnN)、酸化炭化窒化亜鉛(ZnO)等の亜鉛化合物;酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化炭化ジルコニウム(ZrO)、酸化窒化ジルコニウム(ZrO)、窒化ジルコニウム(ZrN)、酸化炭化窒化ジルコニウム(ZrO)等のジルコニウム化合物;ITO、酸化インジウム等のインジウム化合物;酸化錫(SnO)、酸化炭化錫(SnO)、酸化炭化窒化錫(SnO)等の錫化合物;酸化クロム(CrO)、酸化炭化クロム(CrO)、酸化窒化クロム(CrO)、窒化クロム(CrN)、酸化炭化窒化クロム(CrO)等のクロム化合物;酸化アルミニウム(AlO,x=0〜1.5)、炭化アルミニウム(AlC)、酸化炭化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)、酸化炭化窒化アルミニウム(AlO)等のアルムニウム化合物;酸化チタン(TiO,x=0〜2)、炭化チタン(TiC)、酸化炭化チタン(TiO)、窒化チタン(TiN)、酸化炭化窒化チタン(TiO)等のチタン化合物等を挙げることができる。
無機層2の形成材料の中でも、炭化ケイ素(SiC)、酸化炭化ケイ素(SiO)、酸化炭化窒化ケイ素(SiO)、酸化ケイ素(SiO,x=0〜2)、窒化ケイ素(SiN,x=0〜1.3)、酸化窒化ケイ素(SiO)等のケイ素化合物は、低コストで入手が容易であり、安全性、安定性、耐久性、及び、基材1と光触媒層3との密着性の観点から好ましく挙げることができる。さらにこの中でも、炭化ケイ素(SiC)、酸化炭化ケイ素(SiO)、酸化炭化窒化ケイ素(SiO)等の炭素元素を含有するケイ素化合物は、基材1と光触媒層3との密着性をより向上できるため、特に好ましい。
さらにこの中でも、基材1が有機材料である場合や有機質を含む場合においては、無機層2が、炭素を含有する無機化合物、酸素欠損を含有する無機化合物、及び窒素を含有する無機化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。(1)無機層2が炭素を含有する無機化合物である場合には、無機層2は基材1を構成する有機質と同種の元素を有するので、その炭素成分同士の相互作用によって無機層2と基材1との密着性を高めることができる。また、無機層2の上には光触媒層3が設けられるが、その光触媒層3も無機層2と同じ無機化合物層であるので、無機層2と光触媒層3との密着性を高めることができる。(2)また、無機層2が酸素欠損を含有する酸化物等の無機化合物である場合は、酸素欠損の存在に基づいて、無機層2と光触媒層3との間に強固な結合を形成でき、密着性を高めることができる。(3)また、無機層2が窒素を含有する無機化合物である場合には、その窒素の存在に基づいて、無機層2と光触媒層3との間の強固な結合を形成でき、密着性を高めることができる。(4)こうした無機層2を基材1の表面に設けることにより、無機層2と基材1との密着性や、無機層2と光触媒層3との密着性を高めることができ、結果として基材1と光触媒層3との密着性を高めることができる。また、無機層2は、湿度と熱の負荷に対する寸法変動(伸び、縮み)の緩和層としても機能し、特に窒素を含有する無機層2は湿度負荷下での耐久性が極めて優れた光触媒機能材料11を製造できる。
炭素を含有する無機化合物としては、上記した各無機化合物のうち、炭化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素等のような炭素を構成成分として含む無機化合物を挙げることができる。炭素を含有する無機化合物は、炭化物や酸化炭化物の構成成分として炭素が含まれている無機化合物、炭化物等の構成成分としては含まれていないが、炭素原子、炭化水素基等として無機化合物中に微量又は任意量含まれる無機化合物であってもよい。なお、微量又は任意量の炭素は、例えばプラズマCVDで無機化合物を成膜する場合のように、炭素や炭素基を含有する成膜原料に含まれているものを挙げることができる。炭素を含有する無機化合物は、基材1が有機質を含む場合にはその基材1と炭素成分が共通し、基材1との密着性をより向上できるため好ましい。また、例えば炭素を含有するケイ素化合物の無機層2は、基材1と光触媒層3との密着性をより向上できるが、その理由としては、炭素を含有するケイ素化合物が有機物と無機物との中間的な性質を有するためであると考えられる。そのため、基材1が有機質を含む場合はその基材1に含まれる有機質と無機物である光触媒層3との中間層として機能し、両者の密着性を高めることができる。
酸素欠損を含有する無機化合物としては、上記した酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛等の各種の酸化物のうち、酸化物を構成する酸素が化学量論数に満たない酸化物を意味している。酸素欠損無機化合物又は酸素欠損物ということもできる。酸素が化学量論数に満たない酸素欠損酸化物としては、例えばxが2に満たないSiO等を挙げることができる。また、酸化窒化物や酸化炭化物のように、酸素を含む他の化合物であっても、酸素欠損状態を構成できるので、酸素欠損を含有する酸化炭化物でも酸化窒化物等でもよい。その酸素欠損は、無機層2と光触媒層3との間に強固な結合を形成でき、密着性を高めることができる。
窒素を含有する無機化合物としては、上記した各無機化合物のうち、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素等のような窒素を構成成分として含む無機化合物を挙げることができる。窒素を含有する無機化合物は、窒化物や酸化窒化物の構成成分として窒素が含まれている無機化合物、窒化物等の構成成分としては含まれていないが、窒素原子等として無機化合物中に微量又は任意量含まれる無機化合物であってもよい。窒素を含有する無機化合物は、その窒素の存在によって無機層2と光触媒層3との間の強固な結合を形成でき、密着性を高めることができる。特に窒素を含有する無機層2は湿度負荷下での耐久性が極めて優れた光触媒機能材料を製造できる。
無機層2は、基材1の表面の全て又は一部に蒸着により形成される。無機層2を蒸着で形成することにより、気相中で無機層2を形成できるので、例えば水溶媒等の液相中で無機層2を形成する場合に比べて、容易に無機層2を形成することができる。また、気相中で無機層2を形成することにより、無機層2を基材1の全て又は一部に、好ましくは全てに均一に形成することができる。
本発明では、例えば基材1が微細な網目構造を有する繊維材料で構成された不織布基材等である場合は、奥の方の繊維材料にまで無機層2を均一に形成できるとともに、微細な網目を閉塞させることなく繊維材料の表面に無機層2を形成できるので、微細な網目を有し、良好な耐久性を持つ光触媒機能材料を効率的に製造することができる。また、例えば基材1が表面に3次元構造の凹凸形状を持つフィルム状基材である場合も、その凹凸表面に無機層2を均一に形成できるので、良好な耐久性を持つ光触媒機能材料を効率的に製造することができる。
蒸着方法としては、上記した無機層2を、基材1上に形成できれば、特に限定されない。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法又はプラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)、原子層堆積法(ALD法)等の化学気相成長法を好ましく挙げることができる。こうした各種の形成方法での成膜条件は、得ようとする無機層2の物性及び厚さ等を考慮し、従来公知の成膜条件を適宜調整して行えばよい。
より具体的には、(1)無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、又は金属等の原料を基材1上に加熱蒸着させる真空蒸着法、(2)原料に酸素ガスを導入して酸化させ、基材1に蒸着させる反応性蒸着法、(3)ターゲット原料にアルゴンガス、酸素ガスを導入してスパッタリングすることにより、基材1に堆積させる反応性スパッタリング法、(4)原料をホロカソードプラズマガンで発生させたプラズマビームで加熱させ、基材1に堆積させるイオンプレーティング法、(5)有機珪素化合物等を原料とし、酸化珪素膜を基材1に堆積させるプラズマ化学気相成長法、(6)成膜チャンバー内で原料ガスの導入と排気を繰り返して、原料ガスの吸着により1原子層ずつ成膜を進める原子層堆積法等を利用することができる。また、上記した真空蒸着法、反応性蒸着法、スパッタリング法等には、成膜反応を促進し、無機層2の密着性、緻密性を向上するためにプラズマアシストを用いてもよい。
上記した蒸着方法の中でも、有機物と無機物との中間的な性質を有する無機層2を任意に形成でき、成膜速度が速い点で、プラズマ化学気相成長法を好ましく挙げることができる。
無機層2の厚さは、特に限定されないが、上記した各蒸着手段で形成されるので、例えば5nm以上、300nm以下の範囲内で薄膜状に形成でき、より好ましくは5nm以上、100nm以下の範囲内、更に好ましくは5nm以上、50nm以下の範囲内である。本発明では、こうした薄い無機層2を蒸着手段によって基材1の全面に好ましく設けることができる。特に繊維材料で構成される不織布基材等の場合には、基材1の奥の方にも薄い無機層2を均一に形成できるので好ましい。無機層2の厚さが5nm未満では、基材1の全面を均一に被覆することができないことがある。一方、無機層の厚さが厚くなって例えば300nmを超える場合は、膜応力が強くなり、無機層にクラックが入りやすくなり、結果として無機層が剥離しやすくなるという難点がある。そのため、無機層2の上限の厚さは、基材1の材料特性も考慮して任意に設定される。
無機膜2を形成した後においては、次工程である光触媒層形成工程での光触媒層3のコーティング適性や、光触媒層3の密着性を高めるため、無機層2の形成後に後処理をしてもよい。後処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン照射、光照射、電子線照射等、従来公知の方法を適用できる。プラズマ処理としては、減圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理等を挙げることができる。また、光照射としては、可視光、紫外光等の任意の波長の光を照射できる光源を用いることができる。また、これらの処理は、化学的に表面物性を変化させたり官能基を導入させたりすることで濡れ性を向上させたり、物理的に表面形状に変化を与え、表面積を増加させることで密着性を高めることが可能となる。こうした各種の後処理は、組みあわて用いてもよい。また、無機層2を減圧下で形成することから、そのまま大気開放することなく、連続して後処理してもよい。
(光触媒材料層形成工程)
光触媒材料層形成工程は、図3(C)及び図4(C)に示すように、光触媒材料層3’を基材1の表面の全部又は一部に形成する工程である。また、基材1上に無機層2が設けられている場合には、その無機層2上に光触媒材料層3’を形成する工程である。なお、この光触媒材料層3’は、後述するプラズマ処理によって良好な光触媒能を有する光触媒層3に変化する層である。なお、プラズマ処理を施さない場合も光触媒能を奏することもあるが、その場合の光触媒能は十分ではないことから、本発明では、光触媒材料層3’を形成した後に、後述のプラズマ処理を施すことにより光触媒層3を形成している。
光触媒材料層3’には、プラズマ処理によって光触媒となる光触媒材料で形成された層である。そうした光触媒材料は、光触媒活性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、酸化チタン(TiO)系、酸化タングステン(WO)系、酸化亜鉛(ZnO)系、酸化鉄(Fe)系、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)系、硫化カドミウム(CdS)系、ガリウム砒素(GaAs)系、ガリウムリン(GaP)系の材料等を挙げることができる。これらの光触媒材料は、さらに活性効率や可視光応答性を付与するために、白金(Pt)、鉛(Pd)、銅(Cu)等の金属、及び酸化銅(CuO)等の金属酸化物が担持されていてもよい。なお、酸化チタン(TiO)、酸化タングステン(WO)及び酸化亜鉛(ZnO)は、可視光応答型の光触媒としての活性を示す。
光触媒材料層3’の形成方法は、気相中で光触媒材料層3’を形成する方法と、液相中で光触媒材料層3’を形成する方法とを挙げることができる。気相中で光触媒材料層3’を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、プラズマCVD法、熱CVD法、蒸着法等を挙げることができる。液相中で光触媒材料層3’を形成する方法としては、基材1上又は無機層2上に、光触媒材料層形成用塗布液を塗布する方法を挙げることができる。こうした塗布方法としては、例えば、基材1に光触媒材料層形成用塗布液を塗工する方法や、基材1を光触媒材料層形成用塗布液中に浸漬する方法を挙げることができる。上記した塗工方法としては、従来公知の塗工方法を適用することができ、例えば、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスロールコート法、リバースロールコート法、ミヤバーコート法、グラビアコート法、スピンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ミスト塗布法、エアロゾルデポジション法等を挙げることができる。
光触媒材料層形成用塗布液は、液体媒体中に光触媒粒子を分散させたものである。液状媒体としては、例えば、水、メチルアルコール及びエチルアルコール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類等が挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、2種以上を混合させて用いてもよい。中でも、環境調和の観点から、水を用いることがより好ましい。
光触媒材料層形成用塗布液には、光触媒粒子の分散性を向上させるために、最終的に得られる光触媒層3の特性を阻害しない範囲内で、分散安定剤を配合してもよい。分散安定剤としては、例えば、イオン性界面活性剤、湿潤剤、増粘剤、酸、及び塩基等を挙げることができる。これらの分散安定剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。界面活性剤としては、分散性の観点から、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、アルキルアミン塩及び4級アンモニウム塩等のイオン性界面活性剤であることがより好ましい。
また、光触媒材料層形成用塗布液には、最終的に得られる光触媒層3の特性を阻害しない範囲内で、バインダー(結着剤)が含まれていてもよい。その場合、バインダーとしては、一般的なバインダー樹脂として用いられる有機系のバインダー材料であってもよいし、無機系のバインダー材料であってもよいし、有機系のバインダー材料と無機系のバインダー材料との混合材料であってもよい。光触媒層3の特性安定性の面からは、無機系のバインダー材料を用いることが好ましい。そうした無機系のバインダー材料としては、酸化アルミニウム(AlO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)等から選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。
光触媒材料層形成用塗布液に含まれる光触媒材料の濃度は特に限定されないが、例えば、5質量%以上、40質量%以下の範囲内である。また、光触媒層形成用塗布液に含まれる分散安定剤の量としては、特に限定されないが、例えば10質量%以上、50質量%以下の範囲内である。
光触媒粒子の粒子径としては、特に限定されないが、例えば5nm以上、500nm以下の範囲内である。光触媒粒子の平均粒子径をこの範囲にすることで、光触媒粒子の安定的な生産性を維持しつつ、光触媒粒子の比表面積を大きくすることができるので、光触媒活性の効率性及び経済性の点で有利になる。また、光線透過率やヘイズ等、透明性が必要とされる用途で用いる場合には、平均粒子径をより細かい5nm以上、100nm以下の範囲内とすることが好ましい。また、光触媒粒子の粒子形状は、特に限定されないが、例えば、球状、回転楕円体状、多角形状、又は鱗片状等が挙げられる。また粒子は表面積を大きくする目的で多孔質体であったり、凹凸形状を有していたりしてもよい。また、光触媒粒子は、光触媒の多孔質体粒子であってもよいし、多孔質体に光触媒を担持させたものであってもよい。なお、この平均粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡による測長や散乱式粒子計分布測定装置によって測定された値で評価することができる。
光触媒材料層3’の厚さは特に限定されないが、光触媒材料層3’の形成を気相中で行う場合は、例えば50nm以上、300nm以下の範囲内である。また、光触媒材料層3’の形成を液相中で行う場合は、例えば200nm以上、3μm以下の範囲内である。
(光触媒層形成工程)
光触媒層形成工程は、図3(D)及び図4(D)に示すように、上記した光触媒材料層3’にプラズマ処理する工程である。プラズマ処理された光触媒材料層3’は、そこに含まれる有機物や不純物等のような、光触媒能を低下させる物質又は光触媒能を向上させるのを妨げる物質を除去することができ、さらに光触媒能を低下させるダメージを光触媒材料層3’や基材1に与え難いことから、良好な光触媒能を奏するものとなる。この工程は、「活性化工程」又は「初期化工程」ということもできる。また、このプラズマ処理により、基材1が不織布基材等や3次元構造を持つ基材である場合にその隅々にまでプラズマ処理を施すことができ、その結果、プラズマ処理によって光触媒材料層3’から光触媒層3にすることができるとともに、基材1上又は無機層2上への光触媒層3の密着性も高めることができる。
本願でいう光触媒能を有する光触媒層3とは、後述する実施例のアセトアルデヒド消臭性能評価で示すように、光触媒機能材料に白色蛍光灯6000ルクスの照度で6時間光照射を行い、ガスバック法によりアセトアルデヒド濃度を測定したときに、光を照射していない場合と比べて、後述するアセトアルデヒド除去率が10%以上の低下が確認されたときに「光触媒能を有する光触媒層」であるといえる。
光触媒層3の厚さは光触媒材料層3’の厚さと差異はなく、例えば光触媒材料層3’を気相中で成膜した場合は50nm以上、300nm以下の範囲内であり、例えば液相中で成膜した場合は200nm以上、3μm以下の範囲内である。
プラズマ処理は、光触媒材料層3’を活性化させて良好な光触媒能を持つ光触媒層3にするとともに、基材1に対する密着性(特に耐久密着性)を向上させるための処理であり、基材1に光触媒材料層3’が設けられた後に施されてなるものである。プラズマ処理による活性化は、通常の光照射による活性化と比較して、極めて短時間で実施できるという利点がある。例えば、光触媒材料の標準的な評価規格として、JIS R 1701の1から3に規定されているとおり、適切な評価を行うための試料片の前処理として、『紫外線蛍光ランプを用い、試料片表面での放射照度が15W/m以上となる条件下で、16時間以上照射』することが適切であると規定されており、少なくとも数時間オーダーでの活性化が必要とされている。一方、本発明では、後述するとおり、プラズマ処理での活性化により、10分程度の処理で実施可能であり、極めて短時間での処理が可能となるという利点がある。
プラズマ処理で用いる放電ガスとしては、アルゴンガス、二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、四フッ化炭素、六フッ化硫黄、又はそれらを含む混合ガスを好ましく用いることができる。
特にアルゴンガスを用いた場合には、Arイオンが比較的重く、イオン打ち込み効果が高いために、光触媒能を低下させる物質又は光触媒能を向上させるのを妨げる物質を基材1の3次元構造内まで効果的に除去することができ、良好な活性化処理を行うことができると考えられる。なお、アルゴンガスを用いた場合には前記の効果が優位であるため、アルゴンガスが主体(50%以上)であれば、他のガスが含まれていてもよい。他のガスとしては、例えば酸素ガスや、酸素原子を含む二酸化炭素又は一酸化炭素、窒素ガス、アンモニアガス、四フッ化炭素、六フッ化硫黄等を挙げることができる。
また、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、四フッ化炭素、六フッ化硫黄のように反応性ガスに炭素、窒素、フッ素が含まれる場合は、有機物や不純物等、光触媒能を低下させる物質又は光触媒能を向上させるのを妨げる物質を効果的に除去することができ、かつ光触媒材料へのダメージも少ないため、好ましい。
一方、酸素ガスのみを用いた場合には十分な効果が得られなかった。その理由は現時点では明らかではないが、光触媒材料へのダメージが大きく、高い光触媒性能が得られない。また、光触媒材料が密着している基材1との密着部へのまわりこみによるエッチング(等方性エッチング)が起こり、その結果として、光触媒材料の基材1への密着性低下が起こるという難点がある。
プラズマ処理方法としては、イオン打ち込み効果が得られる電力印加方式が用いられる。そうした電力印加方式としては、(A)プラズマ処理時のイオン衝撃(打ち込み効果)を利用する電力印加方式と、(B)少なくとも2つの電極を基材1に対して同じ側に設置し、その電極間に電力を投入してプラズマ放電を形成する電力印加方式とを好ましく挙げることができる。
(A)プラズマ処理時のイオン衝撃(打ち込み効果)を利用する電力印加方式は、図5及び図6に示すように、2つ1組の電極(第1電極31と第2電極32)が光触媒機能材料11に対して、両側に少なくとも1個ずつ配置される場合のことである。両側とは、基材1を有する光触媒機能材料11の一方の面側と他方の面側ということであり、図5及び図6の例で言えば、光触媒機能材料11の下側と、光触媒機能材料11の上側のことである。この方式を用いることで、基材1が不織布基材等や3次元構造を持つ基材である場合にその細部にまで効率よく、均一にプラズマ処理を施すことができ、活性化処理の効率が高くなる。
具体的には、図5に示す電源41がRF放電(周波数13.56MHz±0.5MHzでの放電)電源である場合は、その電力投入側の第1電極31上に光触媒機能材料11を載置して行うプラズマ処理方法を挙げることができる。この方法により、シース電位(自己バイアス電位)の大きな電位勾配が生じ、基材1が不織布基材等や3次元構造を持つ基材である場合にその隅々にまでプラズマ処理を施すことができる。
また、図5に示す電源41が放電周波数10Hz以上、300kHz以下の範囲内の電力電源である場合は、その電力投入側の第1電極31上に光触媒機能材料11を載置して行うプラズマ処理方法を挙げることができる。10Hz以上、300kHz以下の範囲内でのプラズマ処理は、その周波数にイオンが追従できるので、基材1へのイオンの打ち込み効果が高くなり、基材1が不織布基材等や3次元構造を持つ基材である場合にその隅々にまでプラズマ処理を施すことができる。なお、10Hz未満の周波数では、プラズマ放電出力の周波数安定性が得られず、安定した放電ができないこと、また、300kHzを超える周波数では、質量の重いイオンがその周波数に追従できず、効果が得られない。
また、基材1を載置する第1電極31にマイナス(負)電位のバイアスを印加することにより、第1電極31側に例えばArイオンが引き込まれることにより、そのArイオンプラズマが、基材1が不織布基材等や3次元構造を持つ基材である場合にその中にまで入り込む。その結果、Arイオンプラズマの打ち込み効果が強くなるという利点がある。
また、図6に示す電源41が直流電源である場合は、陰極(マイナス)を第2電極32側として、光触媒材料層3’が設けられた基材1をその第2電極32の近傍に設置することが好ましい。プラズマ放電で電離状態になった正電荷を帯びたイオン(例えばAr)は、陰極として作用する第2電極32に引き込まれ、結果として基材1へのイオン打ち込み効果、すなわち活性化処理効果が高くなるという利点が得られる。このように、直流電源を用いてのプラズマ処理では、基材1に対して、陰極側に正電荷を帯びたイオン打ち込み効果が高くなるよう配した電極を用いての放電を形成して処理することによって、基材1が不織布基材等や3次元構造を持つ基材である場合にその隅々までプラズマ処理を施すことができる。
(B)少なくとも2つの電極(第1電極33と第2電極34)を基材1に対して同じ側に設置し、その電極間に電力を投入してプラズマ放電を形成する電力印加方式は、図7に示すように、少なくとも光触媒材料層3’が設けられた基材1の片面側に2以上の電極(第1電極33と第2電極34)を配置してプラズマ処理する場合のことである。片側とは、光触媒機能材料11の一方の面側のみで、図7の例で言えば、光触媒機能材料11の下側のことである。この方式を用いることで、プラズマ処理条件によって起こる可能性のある異常放電を防ぐことができ、プラズマ放電が安定する。その結果、基材1が不織布基材等や3次元構造を持つ基材である場合にその細部にまで効率よく均一にプラズマ処理を施すことができる。その理由は、例えば不織布基材等は網目の空間があるため、不織布基材等の両側に電極を設置して処理する場合は、処理圧力等の条件によっては、電極間をある程度さえぎるものがない状態となり、局所的に放電が形成されたり、インピーダンス(電圧と電流とのバランス)が一定とならず、異常放電を引き起こし、安定して処理できなくなるためである。
(A)(B)で説明したような各種の電力印加方式により、効率的なプラズマ処理を行って、光触媒材料層3’から光触媒層3に変化させることができる。電極の配置構造は、平板型電極、筒形のホロカソード型電極、ホロアノード型電極、又はそれらの組み合わせのいずれを用いることもできる。電極構造としては、種々の形態のものを用いることができ、特に限定されない。
一例として、例えば図8に示す電極構造は、支持台61に絶縁シールド62が設けられ、この絶縁シールド62に第1電極33又は第2電極34が設けられる。これらの間には熱伝導を防ぐために、オーリングやスペーサを用いて空間を設け、直接的な接触を防ぐ構造としてもよい。電極33,34は支持台61とは電気的に絶縁されている。こうした電極33,34には、外部が絶縁材料で被覆された電力供給配線27(図7参照)が設けられ、電源41(図7参照)に接続される。電極33,34の内部には、冷媒を循環させるための温度調節媒体用配管63が設けられている。こうした電極33,34は、光触媒機能材料11の下面に相対しており、光触媒機能材料11の下面に向けてプラズマを発生させて、プラズマ処理を行う。
また、他の一例として、例えば図10に示す電極構造は、円筒状の電極33,34で構成され、電極33,34の内部には電極全体を支持するための固定軸67が設けられている形態であってもよい。電極33,34と固定軸67との間には、電極33,34を冷却するための電極冷却水を流すための温度調節媒体用配管63が設けられている。こうした電極33,34は、光触媒機能材料11の下面に相対しており、光触媒機能材料11の下面に向けてプラズマを発生させて、プラズマ処理を行う。
また、(C)上記した(B)の方法において、光触媒機能材料11の近傍にプラズマ密度の高い領域を形成するため、マグネトロン機構を設置することが好ましい。マグネトロン機構は、形成したプラズマ放電による処理を効果的に行うため、基材1の近傍にプラズマを集中させるために好ましく設置される。ドライプロセスにおけるマグネトロン機構は、通常、マグネット(磁石)を用いて形成されており、スパッタリング成膜プロセス等で汎用的に用いられている機構であるが、その表面材料を成膜材料ではなく、スパッタリング率の低いチタンやステンレス材料とすることにより、プラズマ密度をその表面近傍に形成する目的で適用することができる。
マグネトロン機構は、プラズマ放電を形成するために、少なくとも一つ以上のマグネトロンを電極として用いることもできる。マグネトロン機構を有する電極を用いた場合は、同じ電力を電極に印加した場合に、放電インピーダンスを低減でき、放電電流を大きくでき、放電電圧を低くすることができる。その結果、プラズマ放電のイオンと電子の電離度を大きくすることができ、最終的に多くのイオンを基材1に打ち込む効果が高くなるという利点がある。
また、マグネトロン機構の表面は、図9に示すような平面形状であってもよいし、図11に示すような円筒型形状であってもよい。そして、その内部にマグネット66を配してマグネトロン機構とすることも可能である。特に、図11に示す円筒型電極33,34の場合は、プラズマと接する表面部を回転式として、かつプラズマ放電と接する表面部やマグネット66を冷却可能とする構造とすることで、大電力を連続して安定的に印加することが可能となる利点がある。
一例として、例えば図9に示すマグネトロン機構を備えた電極構造は、支持台61内に絶縁シールド64とベースプレート65が設けられ、このベースプレート65にマグネット66が設けられている。支持台61には絶縁シールド62が設けられ、この絶縁シールド62に電極33,34が取り付けられている。支持台61と電極33,34は電気的に絶縁されており、支持台61をチャンバー21(図7参照)内に設置、固定しても、電極33,34は電気的にフローティングレベルとすることが可能になる。電極33,34の内部には、電極33,34及びマグネット66を冷却するための温度調節媒体配管68が設けられている。こうした電極33,34も、光触媒機能材料11の下面に相対しており、光触媒機能材料11の下面に向けてプラズマを発生させて、プラズマ処理を行う。
また、他の一例として、例えば図11に示すマグネトロン機構を備えた電極構造は、図10と同様の円筒状の電極33,34で構成され、電極33,34の内部には電極全体を支持するための台座69を備えると共に、その台座69上にマグネット66を備えた構造であってもよい。マグネット66は、電極33,34からのプラズマ70が被処理基材である光触媒機能材料11の表面に集中して形成するために好ましく設置される。台座69内には、マグネット66を冷却するための電極冷却水を流すための温度調節媒体用配管66が設けられていてもよい。また、電極33,34と台座69との間には、電極33,34を冷却するための電極冷却水を流すための温度調節媒体用配管が設けられていてもよい。こうした電極33,34は、光触媒機能材料11の下面に相対しており、光触媒機能材料11の下面に向けてプラズマを発生させて、プラズマ処理を行う。
マグネット66は、第1電極33と第2電極34の法線方向の磁束密度を考慮して、その種類と大きさが選択されて設けられている。マグネット66としては、サマリウムコバルト磁石又はネオジム磁石(Nd−Fe−B)等の強磁場を発生させることができる永久磁石が好ましく用いられる。
[光触媒性基材]
上記した各工程により、光触媒機能材料11を形成することができる。特に、光触媒性基材として好ましく適用できる。製造された光触媒性基材11は、図1及び図2に示すように、基材1と、その基材1の表面の全て又は一部に形成され、光触媒能が付与された光触媒層3とを有している。そして、その光触媒層3は、光触媒能を阻害する有機質を含まない。また、無機層2が基材1と光触媒材料層3’との間に設けられていてもよいし、必要に応じて、親水性表面又は疎水性表面を備えている。
光触媒性基材は、プラズマ処理により光触媒能が付与された光触媒層3が、光触媒能を阻害する有機質を含まないので、効果的な光触媒能を有する光触媒性基材として好ましい。特にプラズマ処理がされているので、有機物や不純物等のような、光触媒能を低下させる物質又は光触媒能を向上させるのを妨げる物質を除去することができ、さらに光触媒能を低下させるダメージを光触媒層や基材1に与えないことから、良好な光触媒能を奏するものとなる。
この光触媒性基材を構成する基材1、無機層2、光触媒層3等の各構成要素は、既述した「光触媒機能材料の製造方法」の説明欄で詳しく説明したとおりであるので、ここでは同じ符号を用いてその説明を省略する。
特に、無機層2が、炭素を含有する無機化合物、酸素欠損を含有する無機化合物、及び窒素を含有する無機化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含む層であることが好ましい。こうした無機層2を基材1の表面に設けることにより、「光触媒機能材料の製造方法」の説明欄で詳しく説明したとおり、無機層2と基材1との密着性や、無機層2と光触媒層3との密着性を高めることができ、結果として基材1と光触媒層3との密着性を高めることができる。
また、光触媒層の構成材料により、又はプラズマ処理条件やプラズマ放電ガス種により、親水性表面又は疎水性表面を有したものとなる。こうした親水性表面又は疎水性表面を持つ光触媒性基材は、各種の用途に好ましく適用できる。
こうした光触媒性基材は、各種の用途に利用でき、例えば光触媒機能を有するフィルター(光触媒フィルター)等に好ましく適用できる。光触媒フィルターの用途としては、例えば、空気中の悪臭物質であるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アンモニア、酢酸等を分解するための消臭用フィルター、空気中からアレルゲンであるダニや花粉を除去するための消臭用フィルター、ウィルスや菌を除去したり殺傷したりするためのフィルター等に用いることができる。また、空気清浄機用等のエアーフィルター、イオン交換膜等の液体フィルター、ガス分離膜、吸音材、外装材、内装材等の構成基材等としても用いることができる。
[物品]
物品は、上記の方法で製造された光触媒性基材11を備えている。この物品は、良好な耐久性を持つ光触媒性基材を備えるので、各種の物品に適用できる。物品の種類としては、フィルターとしての機能を利用した物品、例えば空気清浄機、エアコン、換気扇、脱臭フィルター、浮遊菌除去装置(空気中の細菌汚染除去装置)、細菌フィルター、ガスフィルター、排ガスフィルター、等の物品の構成部材として利用できる。また、液体フィルターとしての機能を利用した物品、例えばイオン交換膜、脱塩機、ろ過機、透析膜、浄水機、逆浸透膜、ガス分離膜、吸音材、床材、カーペット、家具等の表面材、自動車、電車、航空機等の内装材、壁材、窓材(窓貼フィルム)等の物品の構成部材として利用できる。
本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[実施例1]
不織布基材として表層がポリエチレン樹脂の繊維材料1’で形成された不織布基材(ユニチカ株式会社製、商品名:エルベス T0403WDO、空隙率60%)を準備した。この不織布基材上に、酸化チタン系光触媒材料(石原産業株式会社社製、商品名:LPC−572)を塗布し、乾燥させて光触媒材料層3’を繊維材料1’の周りに形成した。具体的には、乾燥後の光触媒材料が0.7g/m量になるようにバーコートで塗布し、100℃で5分間保持して硬化を行い、光触媒材料層3’を形成した。
その後、この光触媒材料層3’を活性化させるため、図5に示す平行平板型プラズマCVD装置でプラズマ処理を実施した。プラズマ放電に用いた電源の周波数は13.56MHzのRF放電を用いた。第1電極31と第2電極32との間の距離は25mmとした。不織布基材を下部電極である第1電極31上にセットし、チャンバー21内を減圧ポンプ22を作動させて真空排気を開始し、真空度を1×10−2Pa以下まで排気した。ガス導入配管52の先端に設けられたガス供給管52からアルゴンガスを100sccm導入し、コンダクタンスバルブ24の開度調整により、チャンバー21内圧力を10Paとした。その後300W のRF電力を電源41から投入し、プラズマ放電処理を10分間行った。こうして実施例1の光触媒機能材料11を作製した。
[実施例2]
実施例1の活性化処理において、プラズマ処理ガスをアルゴン80sccm、酸素20sccmの混合ガスとする以外は実施例1と同様に処理し、実施例2の光触媒機能材料11を作製した。
[実施例3]
実施例1の活性化処理において、プラズマ処理ガスをアルゴン80sccm、二酸化炭素20sccmの混合ガスとする以外は実施例1と同様に処理し、実施例3の光触媒機能材料11を作製した。
[実施例4]
実施例1の活性化処理において、プラズマ処理ガスを二酸化炭素100sccmとする以外は実施例1と同様に処理し、実施例4の光触媒機能材料11を作製した。
[実施例5]
実施例1の活性化処理において、プラズマ処理ガスを窒素とする以外は実施例1と同様に処理し、実施例5の光触媒機能材料11を作製した。
[実施例6]
実施例1の活性化処理において、プラズマ処理ガスを窒素80sccm、酸素20sccmの混合ガスとする以外は実施例1と同様に処理し、実施例6の光触媒機能材料11を作製した。
[実施例7]
実施例1の活性化処理において、プラズマ処理ガスをアンモニアとする以外は実施例1と同様に処理し、実施例7の光触媒機能材料11を作製した。
[実施例8]
実施例1の活性化処理において、プラズマ処理ガスをCFとする以外は実施例1と同様に処理し、実施例8の光触媒機能材料11を作製した。
[実施例9]
実施例1の活性化処理において、プラズマ処理ガスをSFとする以外は実施例1と同様に処理し、実施例9の光触媒機能材料11を作製した。
[実施例10]
実施例1の活性化処理において、プラズマ放電周波数を40kHzとする以外は実施例1と同様に処理し、実施例10の光触媒機能材料11を作製した。
[実施例11]
実施例8の活性化処理において、不織布基材の配置を電力印加側電極である第1電極31とは反対側の第2電極32側に配置した以外は実施例1と同様に処理し、実施例11の光触媒機能材料11を作製した。
[実施例12]
ロール状ポリエステルの不織布基材に対してTiO系光触媒材料(石原産業株式会社社製、商品名:ST−K211)をグラビアロールコートで、乾燥後0.7g/mとなる量で塗工した。その後、図6に示す巻取連続プラズマ処理装置において、不織布基材に対して同じ側に2個の電極(第1電極33と第2電極34)を配置してプラズマ放電周波数40kHzにてプラズマを形成し、アルゴンガスを500sccm、チャンバー内圧力10Paにて光触媒材料層3’を活性化処理して光触媒層3に変換した。
[実施例13]
実施例1において、光触媒層形成前に、以下の無機層2を形成した以外は実施例1と同様に実施した。
無機層2として、図5に示す平行平板型プラズマCVD装置20Aを用いたプラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)により、厚さ100nmの酸化窒化ケイ素(SiO)の無機層2を形成した。ここでのプラズマ化学気相成長法は、平行平板型プラズマCVD装置20Aを用い、第1電極31と第2電極32との間の距離を25mmとした。上記した不織布基材を下部電極である第1電極31上にセットし、チャンバー21内を減圧ポンプ22で真空度を1×10−2Pa以下まで排気した。その後、成膜用のモノマーガスのとしてヘキサメチルジシロキサン2sccm、酸素ガス30sccm、アルゴンガス10sccmを電極間に導入し、チャンバーのコンダクタンスバルブ24の開度調整により、チャンバー内圧力を7Paに設定した。その後、周波数が13.56MHzのRf放電を実施し、上記した無機層2としてのSiO膜を厚さ100nmで形成した
[実施例14]
実施例1の活性化処理において、放電電源を直流(C)電源とした以外は、実施例1と同様に処理し、実施例14の光機能性材料11を作製した。
[実施例15]
実施例2の活性化処理において、電極32の下部にマグネトロン機構を設けて
基材表面上にプラズマが集中するようにして処理した以外は、実施例2と同様に処理し、実施例15の光機能性材料11を作製した。
[実施例16]
実施例1において、基材としてPETフィルム(東洋紡績株式会社製、ポリエステルフィルムA4100、厚さ:100μm、易接着性の平滑面)を用い、その平滑面を成膜面とした以外は、実施例1と同様に処理し、実施例16の光機能性材料11を作製した。
[実施例17]
実施例1において、基材としてPETフィルム(東洋紡績株式会社製、ポリエステルフィルムA4100、厚さ:100μm)を用い、その非易接着面である平滑面上に、アクリル樹脂で山形レンズ形状(ピッチ:50nm、高さ:100nm)を形成した。その山形のレンズ面を成膜面として、実施例1と同様に処理し、実施例17の光機能性材料11を作製した。
[実施例18]
実施例1において、基材として、表層に複数の山形レンズ形状(ピッチ:100μm、高さ:50μm)が形成されたアクリル樹脂板基板(厚さ:1mm)を用いた。その山形のレンズ面を成膜面として、実施例1と同様に処理し、実施例18の光機能性材料11を作製した。
[実施例19]
実施例1において、基材として、表層に山形レンズ形状(ピッチ:50nm、高さ:100nm)がアクリル樹脂で形成されたソーダライムガラス(厚さ:1.1μm)を用いた。その山形のレンズ面を成膜面として、実施例1と同様に処理し、実施例19の光機能性材料11を作製した。
[比較例1]
実施例1の活性化処理を、383nm付近にピーク強度有するブラックライト15W/mの照度で10分間照射した以外は、実施例1と同様に処理し、比較例1の光機能性材料を作製した。
して実施した。
[比較例2]
実施例1の活性化処理を酸素で行った以外は、実施例1と同様に処理し、比較例2の光機能性材料を作製した。
[比較例3]
実施例1の活性化処理を、RF電力を印加する側と反対で処理した以外は、実施例1と同様に処理し、比較例3の光機能性材料を作製した。
[光触媒性評価]
実施例1〜19及び比較例1〜3で得られた各光触媒機能材料11に白色蛍光灯6000ルクスの照度で6時間光照射を行い、ガスバック法により、アセトアルデヒド分解性を評価した。この結果、初期濃度50ppmアセトアルデヒドを6時間以内にすべて分解できることが判明した。その結果を表1に示した。
[耐久性評価]
実施例、比較例の各光触媒機能材料11を環境負荷試験のため、85℃、85%Rhの環境下に1000時間保存した後、前記光触媒性評価と、顕微鏡を用いた密着性確認を実施した。
以上の結果から、プラズマ処理による活性化は短時間で性能高く光触媒機能を発現できること、また環境負荷後の耐久性の評価の結果でも、膜剥離や光触媒機能の劣化はなく、良好な性能を示すことがわかる。
Figure 2014028355
1 基材
1’ 繊維材料
2 無機層
3 光触媒層
3’ 光触媒材料層
10 光触媒機能繊維
11 光触媒機能材料(光触媒性基材)
20(20A,20B) プラズマ処理装置
21 チャンバー
22 減圧ポンプ
23 排気管
24 バルブ
26 絶縁体
27 電源ケーブル
31 下部電極(第1電極)
32 上部電極(第2電極)
33 並列第1電極
34 並列第2電極
35 マグネトロン機能付き第1電極
36 マグネトロン機能付き第2電極
41 電源
43 繰出部
44 巻取部
51 ガス供給口
52 ガス導入配管
61 支持台
62 絶縁シールド
63 温度調節媒体用配管
64 絶縁シールド
65 ベースプレート
66 マグネット
67 固定軸
68 温度調節媒体用配管
69 台座
70 プラズマ



Claims (6)

  1. 基材を準備する工程と、前記基材の表面の全て又は一部に光触媒材料層を形成する工程と、前記光触媒材料層をプラズマ処理して、光触媒能を有する光触媒層を形成する工程と、を有し、
    前記光触媒層形成工程において、前記プラズマ処理で用いる放電ガスを、アルゴンガス、二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、四フッ化炭素、六フッ化硫黄、又はそれらを含む混合ガスとする、ことを特徴とする光触媒機能材料の製造方法。
  2. 前記光触媒層形成工程において、前記光触媒材料層が設けられた前記基材の両面側にそれぞれ1以上の電極を配置してプラズマ処理する、請求項1に記載の光触媒機能材料の製造方法。
  3. 前記光触媒層形成工程において、前記光触媒材料層が設けられた前記基材の片面側に2以上の電極を配置してプラズマ処理する、請求項1に記載の光触媒機能材料の製造方法。
  4. 前記光触媒層形成工程において、前記プラズマ処理の放電を、13.56MHz±0.5MHzで行う、10Hz以上、300kHz以下の範囲内で行う、又は直流で行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光触媒機能材料の製造方法。
  5. 前記光触媒材料層が、酸化チタン系光触媒材料層、酸化タングステン系光触媒材料層、酸化亜鉛系光触媒層、酸化鉄系光触媒層、チタン酸ストロンチウム系光触媒層、硫化カドミウム系光触媒層、ガリウム砒素系光触媒層、及びガリウムリン系光触媒材料層から選ばれるいずれかの層である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光触媒機能材料の製造方法。
  6. 前記基材を準備する工程と前記光触媒材料層を形成する工程との間に、無機層を前記基材の表面の全部又は一部に形成する工程を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光触媒機能材料の製造方法。



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