以下、本発明の光電気混載基板および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光電気混載基板>
≪第1実施形態≫
まず、本発明の光電気混載基板の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の光電気混載基板の第1実施形態を示す(一部透過して示す)分解斜視図、図2は、図1に白抜き矢印で示すように光導波路を重ねた状態におけるX−X線断面図である。
図1に示す光モジュール100は、光導波路1と、その端部に設けられた光コネクター101と、光導波路1の下方に設けられた光電変換部4と、を有している。また、図1に示す光電気混載基板1000は、光モジュール100と、光電変換部4の下方に設けられたマザーボード(電気配線基板)5と、を有している。
このうち、光導波路1は、平面視で四角形をなすシート状の部材である。光導波路1は、図2に示すように、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12が下方からこの順で積層されてなるものであり、コア層13には光信号を伝搬するコア部14が所望のパターンで形成されている。なお、図1では、コア層13中に形成されているコア部14を、光導波路1の陰にある光コネクター101や光電変換部4とともに破線で示している。
また、光導波路1の4辺のうち、対向する2辺にはコア部14が露出しており、そこに光コネクター101が設けられている。光配線部品10は、この光コネクター101を介して光導波路1のコア部14と他の光学部品とを光学的に接続し得るよう構成されている。なお、図1では、光導波路1の対向する2辺に光コネクター101を設ける例を図示しているが、光コネクター101の配置はこれに限定されず、図1以外の辺に設けられていてもよく、外縁以外の部位に設けられていてもよい。
光導波路1の下面には、複数の光電変換部4が設けられている。光電変換部4では、電気信号を光信号に変換しコア部14に送出したり、コア部14を伝搬してきた光信号を受光し電気信号に変換する。なお、光導波路1には、光電変換部4の受発光部に対応してミラー(光路変換部)17が設けられており、このミラー17によってコア部14の光路が光導波路1の面方向からそれに垂直な方向へと変換され、コア部14と光電変換部4の受発光部とが光学的に接続されている。
一方、光電変換部4の下方に設けられたマザーボード5には、複数のLSI501やコンデンサー502、チップ抵抗器503といった複数の電気配線基板用電気素子50が実装されている。そして、光電変換部4とマザーボード5との間は、電気コネクターを介して電気的および機械的に接続されている。
このような光電気混載基板1000では、図1、2に示すように、マザーボード(電気配線基板)5を覆うようにシート状の光導波路1が重ねられている。このため、光電気混載基板1000を平面視したとき、同じ領域に電気配線基板用電気素子50とコア部14とを併存させることができるので、コア部14のパターンを自由に設定することができる。すなわち、電気回路と光配線とを異なる階層に構築することができるので、各階層において電気回路や光配線を自由に設計することができる。その結果、例えばコア部14の距離を最短化し、光信号の伝送効率の最適化を図ることができる。また、コア部14を形成する領域に余裕が生まれるため、複数のコア部14を形成したとき、隣り合うコア部14同士の間隔を広くしてクロストークを緩和することができ、かつ、より多くのコア部14を形成することができるのでコア部14の高密度化を図ることができる。さらに、マザーボード5に対して光導波路1を分離させ易くなるため、必要に応じて光導波路1や電気配線基板用電気素子50を交換し易い利点がある。
以下、光電気混載基板1000の各部について詳述する。
(光導波路)
まず、光導波路について説明する。
光導波路1は、コア部14とクラッド部とを有するシート状の部材であり、コア部14の一方の端部から他方の端部に光信号を伝送する光配線として用いられる。
図3は、図1に示す光導波路1の一部を拡大して示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図である。
((コア層))
図3に示す光導波路1は、下側からクラッド層11、コア層13およびクラッド層12の3層を有しており、このうちコア層13には、長尺状のコア部14と、このコア部14に隣接する側面クラッド部15と、が形成されている。これにより、コア部14はクラッド部(側面クラッド部15および各クラッド層11、12)で囲まれることとなり、光を伝搬することができる。
コア部14の屈折率は、クラッド部の屈折率より大きければよいが、その差は0.3%以上であるのが好ましく、0.5%以上であるのがより好ましい。一方、上限値は特に設定されないが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率差が前記下限値未満の場合、光を伝搬する効果が低下するおそれがあり、一方、屈折率差が前記上限値を上回る場合、光の伝送効率のそれ以上の向上は期待できない。
なお、前記屈折率差とは、コア部14の屈折率をA、クラッド部の屈折率をBとしたとき、次式で表される。
屈折率差(%)=|A/B−1|×100
また、コア部14の横断面における屈折率分布は、いかなる形状の分布であってもよい。
図4は、光導波路1のコア部14の横断面の幅方向における屈折率分布の一例を示す図である。
この屈折率分布は、図4(a)に示すように屈折率が不連続的に変化したいわゆるステップインデックス(SI)型の分布であってもよく、図4(b)に示すように屈折率が連続的に変化したいわゆるグレーデッドインデックス(GI)型の分布であってもよい。SI型の分布であれば屈折率分布の形成が容易であり、GI型の分布であれば屈折率の高い領域に信号光が集まる確率が高くなるため伝送効率が向上する。
また、上記屈折率分布は、図4(c)に示すように、屈折率が階段状に変化しているものの、全体的には屈折率が連続的に変化しているとみなすことができる形状の分布であってもよい。図4(c)に示す屈折率分布は、屈折率が階段状に変化してなる分布であり、階段状に変化している部分1段あたりの屈折率の変化量は屈折率分布全体の屈折率の変化量(屈折率差)に比べて十分に小さい(例えば5分の1以下)ため、図4(c)に示すような屈折率分布は、GI型の分布に近い光伝送特性を示す。このため、図4(c)に示す屈折率分布は、伝送効率が高くかつ形成が容易なものとなる。
なお、屈折率分布がGI型またはそれに準じる形状の場合、前記屈折率差はコア部14における屈折率の最大値をAとしクラッド部における屈折率の最小値をBとして求めることができる。
また、図4(b)および図4(c)に示す分布では、屈折率の変化率が0.001〜0.035[/10μm]程度であるのが好ましく、0.002〜0.030[/10μm]程度であるのがより好ましい。屈折率の変化率が前記範囲内であれば、各コア部14における伝送損失の低減、パルス信号の鈍りの低減、クロストークの抑制等の効果が確実に得られる。
以下、GI型の屈折率分布について特に詳しく説明する。
図5(a)は、図3に示す光導波路のコア部を横切るように切断した横断面図の一例であり、図5(b)は、図5(a)に示す横断面図のコア層13の厚さ方向の中心を通過する中心線C1上の屈折率分布Wの一例を模式的に示す図である。なお、図5(a)では、図3に示すコア層13に形成された長尺状の2本のコア部14について、左側のものをコア部141とし、右側のものをコア部142としている。同様に、図3に示す3本の側面クラッド部15について、左側のものを側面クラッド部151とし、中央のものを側面クラッド部152とし、右側のものを側面クラッド部153としている。
屈折率分布Wは、図5(b)に示すように、各コア部14の位置に対応して設けられ、極大値Wmとこの極大値Wmから両側に向かって屈折率が連続的に低下する2つの漸減部とを含み相対的に屈折率が高い高屈折率領域WHと、各側面クラッド部15の位置に対応して設けられ、相対的に屈折率が低い低屈折率領域WLと、を有している。高屈折率領域WHにおいて極大値Wmの両側では、隣接する低屈折率領域WLに向かって屈折率が連続的に低下するよう構成されている。すなわち、高屈折率領域WHでは、極大値Wmを頂点にしてその両側になだらかな裾を引いて低下するよう屈折率が分布している。一方、低屈折率領域WLでは、高屈折率領域WHの屈折率よりも低くかつほぼ一定の屈折率が分布している。
また、屈折率分布W中に存在する複数の極大値Wmは、互いに同じ値であることが好ましいが、多少ずれていてもよい。その場合、ずれ量は、複数の極大値Wmの平均値の10%以内であるのが好ましい。
なお、並列する2つのコア部14は、それぞれ細長い線状をなしており、上記のような屈折率分布Wは、これらのコア部14の長手方向全体においてほぼ同じ分布が維持されている。
一方、これらのコア部14と交差するコア部14にも、上記のような屈折率分布Wが形成されており、このコア部14の長手方向全体においてほぼ同じ分布が維持されている。
以上のような屈折率分布Wに伴い、図5に示すコア層13には、コア部14と、その側面に隣接する側面クラッド部15とが形成されることとなる。
より詳しくは、図5(a)に示すコア層13には、並列する2つのコア部141、142と、これらのコア部以外の領域に設けられた側面クラッド部151、152、153と、が設けられている。これにより、各コア部141、142は、それぞれ各側面クラッド部151、152、153および各クラッド層11、12で囲まれた状態となる。ここで、これらのコア部141、142の屈折率は、側面クラッド部151、152、153の屈折率より高くなっているので、各コア部141、142の幅方向において光を閉じ込めることができる。なお、図5(a)に示す各コア部14には密なドットを付し、各側面クラッド部15には疎なドットを付している。
また、光導波路1では、コア部14の一方の端部に入射された光を、各コア部14の厚さ方向においても閉じ込めつつ他方に伝搬させることにより、コア部14の他方の端部から取り出すことができる。
また、屈折率分布Wでは、全体的に屈折率が連続的に変化している。これにより、屈折率が階段状に変化したいわゆるステップインデックス型の屈折率分布を有する光導波路に比べ、コア部14に光を閉じ込める作用がより増強されるため、伝送損失のさらなる低減が図られる。
さらに、屈折率分布Wでは、極大値を有するとともに屈折率が連続的に変化しているため、光の速度が屈折率に反比例するという性質により、光の速度は中心から離れるにつれて速くなり、光路ごとの伝搬時間に差が生じ難くなる。このため、伝送波形が崩れ難くなり、例えば伝送光にパルス信号が含まれている場合でも、パルス信号の鈍り(パルス信号の広がり)を抑制することができる。それに加え、交差部における伝送光の混信が抑制される。その結果、光通信の品質をより高め得る光導波路1が得られる。
なお、屈折率分布Wにおいて屈折率が連続的に変化しているとは、屈折率分布Wの曲線が各部で丸みを帯びており、この曲線が微分可能なものであるという状態である。
また、屈折率分布Wのうち、極大値Wmは、図5(a)に示すようにコア部141、142に位置しているが、コア部141、142の中でもその幅の中心部に位置しているのが好ましい。これにより、各コア部141、142では、伝送光がコア部141、142の幅の中心部に集まる確率が高くなり、相対的に側面クラッド部151、152、153に漏れ出る確率が低くなる。その結果、コア部141、142の伝送損失をより低減することができる。
なお、コア部141の幅の中心部とは、高屈折率領域WHの中心から両側に、高屈折率領域WHの幅の30%の距離の領域である。
また、極大値Wmと低屈折率領域WLにおける平均屈折率との差は、できるだけ大きい方がよいが、0.005〜0.07程度であるのが好ましく、0.007〜0.05程度であるのがより好ましく、0.01〜0.03程度であるのがさらに好ましい。これにより、コア部141、142中に光を確実に閉じ込めることができる。すなわち、屈折率差が前記下限値を下回る場合、コア部141、142から光が漏れ出るおそれがある。一方、屈折率差が前記上限値を上回る場合、光を閉じ込める効果のそれ以上の向上は期待できないばかりか、光導波路1の製造が困難になる。
また、コア部141、142における屈折率分布Wは、図5(b)に示すように、横軸にコア層13の横断面の位置をとり、縦軸に屈折率をとったとき、極大値Wm近傍の形状が上に凸の略U字状であるのが好ましい。これにより、コア部141、142における光の閉じ込め作用がより顕著なものとなる。
一方、低屈折率領域WLにおける平均屈折率からのずれ量は、平均屈折率の5%以内であるのが好ましい。これにより、低屈折率領域WLは、側面クラッド部15として確実に機能する。
ここで、上述したような屈折率分布Wによれば、伝送損失の低減、パルス信号の鈍りの低減、クロストークの抑制、交差部における混信の抑制等の効果を得ることができるが、本発明者は、これらの効果が側面クラッド部の平均幅WCL、あるいは、コア部の平均幅WCOと側面クラッド部の平均幅WCLとの比に大きな影響を受けることを見出した。そして、これらの因子が所定の範囲内にあるとき、前述の効果がより顕著で確実なものになることを見出した。
すなわち本発明では、コア部14の平均幅WCOと側面クラッド部15の平均幅WCLとの比(WCO/WCL)は、0.1〜10の範囲とされるのが好ましい。コア部14と側面クラッド部15との間で幅の比を最適化することにより、前述した各効果をそれぞれ高度化することができる。したがって、例えばWCO/WCLが前記下限値未満である場合、コア部14の平均幅が狭くなり過ぎるので、クロストークの低減が図られるものの、伝送損失が大きくなり易く、また光導波路1の小型化が妨げられるおそれがある。また、WCO/WCLが前記上限値超である場合、側面クラッド部15の平均幅が狭くなり過ぎるので、クロストークが増加し、さらにはコア部14の平均幅が広くなり過ぎるため、パルス信号の鈍りが増大するおそれがある。
なお、WCO/WCLは、より好ましくは0.1〜5程度とされ、さらに好ましくは0.2〜4程度とされる。
一方、本発明では、WCO/WCLと独立して、あるいはそれに加え、側面クラッド部15の平均幅WCLが5〜250μmの範囲内にあることが好ましい。これにより、前述した各効果をそれぞれ高度化することができる。したがって、例えばWCLが前記下限値未満である場合、側面クラッド部15の平均幅が狭くなり過ぎるので、パルス信号の鈍りが増大したり、クロストークが増加したりするおそれがある。また、WCLが前記上限値超である場合、屈折率分布Wの形状を最適化することができず、伝送損失が大きくなるおそれがある。さらに、光導波路1の小型化が困難になるおそれがある。
なお、WCLは、より好ましくは10〜200μmの範囲内にあるとされ、さらに好ましくは10〜120μmの範囲内にあるとされる。
また、屈折率分布Wは、各極大値Wm近傍において、屈折率が実質的に変化していない平坦部を含んでいてもよい。この場合でも、本発明の光導波路は前述したような作用・効果を奏するものとなる。ここで、屈折率が実質的に変化していない平坦部とは、屈折率の変動が0.001未満である領域であって、その両側では屈折率が連続的に低下している領域のことをいう。
平坦部の長さは、特に限定されないが、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下とされる。
なお、コア部14の数は特に限定されず、3つ以上であってもよい。その場合も、屈折率分布Wは、各コア部14に対応して高屈折率領域WHを有し、高屈折率領域WH同士の間には低屈折率領域WLが存在する分布になる。
また、屈折率分布Wは、高屈折率領域WHと低屈折率領域WLとの間に極小値を有する分布であってもよい。このような分布によれば、光を屈折率の高い領域に閉じ込めて伝搬する機能が増強され、伝送損失およびパルス信号の鈍りを特に小さく抑えることができる。
また、この場合、低屈折率領域WLには、高屈折率領域WHに含まれる極大値(これを「第1の極大値」とする。)より小さい極大値(これを「第2の極大値」とする。)が含まれているのが好ましい。低屈折率領域WLにこのような第2の極大値が含まれていることにより、幅方向に隣接するコア部の間のクロストークが抑制される。その結果、コア層13中に複数のコア部を形成して多チャンネル化したり、コア部の間隔を狭めて高密度化したりしても、光導波路1であれば、高品質な光通信を維持することができる。そして、複数のコア部14が同一平面上で互いに交差している場合でも、光信号の混信が抑制されることとなる。
図6(a)は、図3に示す光導波路のコア部を横切るように切断した横断面図の他の例であり、図6(b)は、図6(a)に示す横断面図のコア層13の厚さ方向の中心を通過する中心線C1上の屈折率分布Wの他の例を模式的に示す図である。
図6(b)に示す屈折率分布Wは、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と、5つの極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5と、を有している。また、5つの極大値には、相対的に屈折率の大きい極大値(第1の極大値)Wm2、Wm4と、相対的に屈折率の小さい極大値(第2の極大値)Wm1、Wm3、Wm5とが存在している。
このうち、極小値Ws1と極小値Ws2との間および極小値Ws3と極小値Ws4との間には、極大値Wm2および極大値Wm4が存在している。
図6に示す光導波路1では、極小値Ws1と極小値Ws2との間に、相対的に屈折率の大きい極大値Wm2が位置していることから、この領域がコア部14となり、同様に、極小値Ws3と極小値Ws4との間にも極大値Wm4が位置していることからコア部14となる。なお、ここでは、極小値Ws1と極小値Ws2との間をコア部141とし、極小値Ws3と極小値Ws4との間をコア部142とする。
また、極小値Ws1の左側の領域、極小値Ws2と極小値Ws3との間、および極小値Ws4の右側の領域は、それぞれコア部14を両側面に隣接する領域であることから側面クラッド部15となる。なお、ここでは、極小値Ws1の左側の領域を側面クラッド部151とし、極小値Ws2と極小値Ws3との間を側面クラッド部152とし、極小値Ws4の右側の領域を側面クラッド部153とする。
すなわち、屈折率分布Wは、少なくとも、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値がこの順で並ぶ領域を有していればよい。なお、この領域は、コア部の数に応じて繰り返し設けられ、本実施形態のようにコア部14が2つである場合、屈折率分布Wは、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値のように、極大値と極小値が交互に並び、かつ極大値については第1の極大値と第2の極大値が交互に並ぶ領域を有していればよい。
また、これら複数の極小値、複数の第1の極大値、および複数の第2の極大値は、それぞれ互いにほぼ同じ値であることが好ましいが、極小値は第1の極大値や第2の極大値より小さく、第2の極大値は第1の極大値より小さいという関係が保持されれば、互いの値が多少ずれていても差し支えない。その場合、ずれ量は、複数の極小値の平均値の10%以内に抑えられているのが好ましい。
ここで、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4は、それぞれ、隣接する側面クラッド部15における平均屈折率WA未満である。これにより、各コア部14と各側面クラッド部15との境界には、側面クラッド部15よりもさらに屈折率の小さい領域が存在することとなる。その結果、各極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の近傍では、より急峻な屈折率の勾配が形成され、これにより、各コア部14からの光の漏れが抑制されるため、伝送損失の小さい光導波路1が得られる。
また、図6(b)に示す屈折率分布Wのうち、極大値Wm1、Wm3、Wm5は側面クラッド部151、152、153中に位置しているが、特に側面クラッド部151、152、153の縁部近傍(コア部141、142との界面近傍)以外に位置しているのが好ましい。これにより、コア部141、142中の極大値Wm2、Wm4と、側面クラッド部151、152、153中の極大値Wm1、Wm3、Wm5とが、互いに十分に離間したものとなるため、コア部141、142中の伝送光が、側面クラッド部151、152、153中に漏れ出る確率を十分に低くすることができる。その結果、コア部141、142の伝送損失を低減することができる。
なお、側面クラッド部151、152、153の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、側面クラッド部151、152、153の幅の5%の距離の領域である。
また、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、側面クラッド部151、152、153の幅の中央部に位置しており、しかも、極大値Wm1、Wm3、Wm5から隣接する極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4に向かっては、屈折率が連続的に低下しているのが好ましい。これにより、コア部141、142中の極大値Wm2、Wm4と、側面クラッド部151、152、153中の極大値Wm1、Wm3、Wm5との離間距離は、最大限確保され、しかも極大値Wm1、Wm3、Wm5近傍に光を確実に閉じ込めることができることになるため、前述したコア部141、142からの伝送光の漏出をより確実に抑制することができる。
さらに、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、前述したコア部141、142に位置する極大値Wm2、Wm4よりも屈折率の小さいものであるので、コア部141、142のような高い光伝送性は有しないものの、周囲よりも屈折率が高くなっているため、わずかな光伝送性を有することとなる。その結果、側面クラッド部151、152、153は、コア部141、142から漏出した伝送光を閉じ込めることで、他のコア部への波及を防止する作用を有するものとなる。すなわち、極大値Wm1、Wm3、Wm5が存在することで、クロストークを抑制することができる。
なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4は、前述したように、隣接する側面クラッド部15の平均屈折率WA未満であるが、その差は、所定の範囲内であることが望まれる。具体的には、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と側面クラッド部15の平均屈折率WAとの差は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4とコア部141、142中の極大値Wm2、Wm4との差の3〜80%程度であるのが好ましく、5〜50%程度であるのがより好ましく、7〜20%程度であるのがさらに好ましい。これにより、側面クラッド部15は、クロストークを抑制するのに必要かつ十分な光伝送性を有するものとなる。なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と側面クラッド部15の平均屈折率WAとの差が前記下限値を下回る場合は、側面クラッド部15における光伝送性が小さ過ぎて、クロストークを十分に抑制することができないおそれがあり、前記上限値を上回る場合には、側面クラッド部15における光伝送性が大き過ぎて、コア部141、142の光伝送性に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と極大値Wm1、Wm3、Wm5との差は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と極大値Wm2、Wm4との差の6〜90%程度であるのが好ましく、10〜70%程度であるのがより好ましく、14〜40%程度であるのがさらに好ましい。これにより、側面クラッド部15における屈折率の高さとコア部14における屈折率の高さとのバランスが最適化され、光導波路1は、特に優れた光伝送性を有するとともにクロストークをより確実に抑制し得るものとなる。
なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4とコア部141、142中の極大値Wm2、Wm4との屈折率差は、できるだけ大きい方がよいが、0.005〜0.07程度であるのが好ましく、0.007〜0.05程度であるのがより好ましく、0.01〜0.03程度であるのがさらに好ましい。これにより、上述した屈折率差が、コア部141、142中に光を閉じ込めるのに必要かつ十分なものとなる。
ここで、図7は、図6に示す屈折率分布を有する光導波路1のコア部141に光を入射したときの出射光の強度分布を示す図である。この強度分布は、光導波路1に形成された並列する2つのコア部141、142のうち、コア部141の端部に光を入射したときの他方の端部における出射光の強度分布である。
コア部141に光を入射すると、出射光の強度は、コア部141の出射端の中心部において最も大きくなる。そして、コア部141の中心部から離れるにつれて出射光の強度は小さくなるが、光導波路1では、コア部141に隣り合うコア部142において極小値をとるような強度分布が得られる。このようにコア部142の位置に出射光の強度分布の極小値が一致することで、コア部142におけるクロストークは極めて小さく抑えられることとなる。その結果、多チャンネル化および高密度化によってもクロストークの発生を確実に防止し得る光導波路1が得られる。
なお、従来の光導波路では、光を入射するコア部に隣り合うコア部において出射光の強度分布が極小値をとることはなく、むしろ極大値をとっていたので、クロストークの問題が発生していた。これに対し、上述したような本実施形態に係る光導波路1における出射光の強度分布は、クロストークを抑制する上で極めて有用なものである。
本実施形態に係る光導波路1においてこのような強度分布が得られる詳細な理由は明らかでないものの、理由の1つとしては、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4を有し、かつ、屈折率分布W全体で屈折率が連続的に変化している、という特徴的な屈折率分布Wが、従来であればコア部142において極大値を有していた出射光の強度分布を、コア部142に隣接する側面クラッド部153等にシフトさせていることが挙げられる。すなわち、この強度分布のシフトにより、クロストークが確実に抑制されているのである。
なお、出射光の強度分布が側面クラッド部15にシフトしたとしても、受光素子等はコア部14の位置に合わせて配置されているため、クロストークを招くおそれはほとんどなく、光通信の品質を劣化させることはない。
また、上記のような出射光の強度分布は、本発明の光導波路において少なくとも2つのコア部14が並列して形成されている場合には観測される確率は高いものの、必ず観測されるわけではなく、入射光のNA(numerical aperture)やコア部141の横断面積、コア部141、142のピッチ等によっては、明瞭な極小値が観測されなかったり、極小値の位置がコア部142から外れたりする場合もあるが、このような場合でもクロストークは十分に抑制される。
また、図6(b)に示す屈折率分布Wにおいて、側面クラッド部15における平均屈折率をWAとしたとき、極大値Wm2、Wm4近傍における屈折率が連続して平均屈折率WA以上である部分の幅をa[μm]とし、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4近傍における屈折率が連続して平均屈折率WA未満である部分の幅をb[μm]とする。このとき、bは、0.01a〜1.2a程度であるのが好ましく、0.03a〜1a程度であるのがより好ましく、0.1a〜0.8a程度であるのがさらに好ましい。これにより、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が、上述した作用・効果を奏するのに必要かつ十分なものとなる。すなわち、bが前記下限値を下回っている場合は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が狭過ぎるため、コア部141、142に光を閉じ込める作用が低下するおそれがある。一方、bが前記上限値を上回っている場合は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が広過ぎて、その分、コア部141、142の幅やピッチが制限され、伝送効率が低下したり多チャンネル化および高密度化が妨げられるおそれがある。
なお、側面クラッド部15における平均屈折率WAは、極大値Wm1と極小値Ws1との中点で近似することができる。
また、屈折率分布Wは、例えば、(1)干渉顕微鏡(dual−beam interference microscope)を用いて屈折率依存の干渉縞を観測し、その干渉縞から屈折率分布Nを特定する方法、(2)屈折ニアフィールド法(Refracted Near Field method;RNF)等により特定することができる。このうち、屈折ニアフィールド法は、例えば特開平5−332880号公報に記載の測定条件を採用することができる。一方、干渉顕微鏡は、屈折率分布Wの特定を簡便に行い得る点で有用である。
また、コア部14は、平面視で直線状または曲線状であってもよい。さらに、コア部14は途中で交差しているとともに、必要に応じて分岐していてもよい。図1に示すようにコア部14同士を途中で交差させることにより、同一平面内において光信号を交差させることが可能になるため、立体交差させたり迂回させたりすることなく最短距離のパターンのコア部14を形成することができる。その結果、光導波路1における伝送効率の低下やパルス信号の鈍り等を最小化することができる。なおこの場合、屈折率分布は図4(b)、図4(c)、図5(b)または図6(b)に示すような分布であるのが好ましい。これにより、交差部における光信号の混信を特に抑えることができる。
なお、コア部14の横断面形状は特に限定されず、例えば、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形であってもよいが、四角形(矩形状)であることにより、安定した品質のコア部14を効率よく製造することができる。
また、コア部14の高さ(コア層13の厚さ)は、特に限定されないが、それぞれ、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜70μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1の伝送効率の低下を抑えつつコア部14の薄型化を図ることができる。
上述したようなコア層13の構成材料(主材料)は、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等を用いることができる。なお、樹脂材料は、異なる組成のものを組み合わせた複合材料であってもよい。
また、これらの中でも特に(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、(メタ)アクリル系樹脂またはエポキシ系樹脂がより好ましい。これらの樹脂材料は、光の透過性が高いことから、特に伝送損失の小さい光導波路1が得られる。
((クラッド層))
一方、クラッド層11、12は、コア層13の下部および上部に位置する。
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さの0.05〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.1〜1.25倍程度であるのがより好ましい。具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、それぞれ1〜200μm程度であるのが好ましく、3〜100μm程度であるのがより好ましく、5〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1が必要以上に厚膜化するのを防止しつつ、クラッド部としての機能が確保される。また、光導波路1に適度な剛性が付与され、例えば光導波路1とマザーボード5との間に空間がある場合でも、光導波路1が撓み難くなり、光結合部における光路ずれを抑制することができる。
また、クラッド層11、12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特に(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましく、(メタ)アクリル系樹脂またはエポキシ系樹脂がより好ましい。
また、光導波路1の横断面の厚さ方向の屈折率分布についても、SI型、GI型の分布であってもよく、図4(c)に示すような分布であってもよい。
なお、光導波路1は、後述するようにマザーボード5上に重ねて配置されるため、その平面視における大きさは、例えばマザーボード5の少なくとも一部を覆い得る大きさに設定されるのが好ましい。具体的には、長径が50mm〜3000mm程度に設定されるのが好ましい。
また、光導波路1の平面視形状は、特に限定されないが、四角形、六角形のような多角形の他、円形、楕円形等であってもよい。
((交差部))
図8は、図1に示す光導波路1の交差部近傍を示す平面図および交差部近傍の屈折率分布を示す図である。
コア部14同士の交差部147は、図8に示すように、中心部に極大値があり、そこから周辺(側面クラッド部15)に向かって裾を引くように屈折率が漸減するような屈折率分布を有しているのが好ましい。これにより、交差部147の中心部に信号光が集まり易くなるので、交差部147における混信が特に抑制される。
そして、交差部147の屈折率は、その周囲に比べて高いのが好ましい。この屈折率差に基づき、交差部147に進入した信号光は、その信号光が伝搬してきたコア部14と交差するコア部14には進入し難くなる。その結果、光導波路1では、交差部147において光信号の混信を抑制することができる。このようにして立体交差化することなく、同一平面上で光信号の交差が可能になる。その結果、光導波路1が実装されたデバイス(例えば光電気混載基板1000)の小型化、薄型化および高密度化を容易に図ることができる。
交差部147の最大の屈折率は、交差部147以外のコア部14における最大の屈折率より0.001〜0.05程度高いのが好ましく、0.002〜0.03程度高いのがより好ましい。
ここで、交差するコア部14の光軸の交差角は10〜90°であるのが好ましく、20〜90°であるのがより好ましい。交差角がこの範囲内であれば、混信の発生を十分に抑えることができる。なお、この交差角とは、交差する光軸同士がなす内角のうち、角度が小さい方の内角をいう。
なお、上述したような交差部147では混信が抑制されるとともに1つの交差部147を通過する際の光信号の伝送損失が0.02dB以下に抑えられる。このため、1つのコア部14に対して複数のコア部14が交差するようにコア部14のパターンを設定しても伝送損失が小さく抑えられることとなり、複雑なパターンの光配線を構築することができる。
図9は、交差部近傍の他の構成例を示す部分拡大図である。
図9(a)、(b)に示す光導波路は、それぞれ、交差部147の近傍において、コア部14の幅が交差部147に向かうにつれて漸増するよう構成されている。このうち、図9(a)に示す光導波路ではコア部14の幅が直線的に漸増している一方、図9(b)に示す光導波路ではコア部14の幅が曲線的に漸増している。このような構造になっていると、交差部147における混信が特に抑制されるとともに、交差部147における伝送効率の改善が図られる。
図9(c)に示す交差部148では、3つのコア部14が交差しており、その交差角は60°に設定されている。一方、図9(d)に示す交差部148では、4つのコア部14が交差しており、その交差角は45°に設定されている。
交差部148において交差するコア部14の数は5つ以上であってもよく、その場合、交差角が前記範囲内になるよう交差数が適宜設定される。また、各交差角は互いに等しくても異なっていてもよい。
((ミラー))
図2に示す光導波路1には、ミラー17が設けられている。
図10(a)は、図2に示す光導波路1のコア部14の途中にミラー(光路変換部)17が形成されている例を示す斜視図である。
図10(a)に示す光導波路1には、コア部14を厚さ方向に貫通するように、横断面がV字状をなす凹部(空孔)170がコア部14の途中に形成されている。そして、ミラー17は、この凹部170の内面の一部で構成されている。ミラー17は平面状であり、かつコア部14の軸線(光軸)に対して45°傾斜している。このミラー17にコア部14を伝搬してきた光が反射され、図10(a)の下方に光路が90°変換される。また、図10(a)の下方から伝搬してきた光は、ミラー17で反射されコア部14に入射される。すなわち、ミラー17は、コア部14を伝搬する光の光路を変換する光路変換機能を有する。
なお、必要に応じて、ミラー17を構成する加工面の表面に反射膜が成膜されていてもよい。この反射膜としては、例えば、Au、Ag、Al等の金属膜や、コア部14より低屈折率の材料の膜等が挙げられる。金属膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着のような物理蒸着法、CVDのような化学蒸着法、めっき法等が挙げられる。
また、ミラー17はコア部14の途中ではなく、図10(b)に示すように、側面クラッド部15内であってコア部14の延長線上に設けられてもよい。
なお、ミラー17は、例えば湾曲させた導波路等、その他の光路変換部で代替することもできる。
また、図3に示すように、光導波路1の下面には支持フィルム2が、上面にはカバーフィルム3が、それぞれ必要に応じて設けられていてもよい。
支持フィルム2およびカバーフィルム3の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料が挙げられる。
また、支持フィルム2およびカバーフィルム3の平均厚さは、特に限定されないが、5〜500μm程度であるのが好ましく、10〜400μm程度であるのがより好ましい。これにより、支持フィルム2およびカバーフィルム3は、適度な剛性を有するものとなるため、光導波路1を確実に支持するとともに、外力や外部環境から光導波路1を確実に保護することができる。
図2に示す光導波路1には、クラッド層11の下面にレンズ16が設けられている。レンズ16は、ミラー17と光素子6との間を通過する信号光を収束させ、光結合効率を高めることに寄与する。
レンズ16の構成材料は、例えば、アクリル系樹脂のような各種樹脂材料、石英ガラスのような各種ガラス材料等が挙げられる。
また、レンズ16は、クラッド層11の一部を変形させ、レンズとしての機能を付与したものであってもよい。この変形には、例えばナノインプリント技術等が用いられる。
なお、光導波路1の平面視における大きさおよび形状は、マザーボード5の大きさおよび形状等に応じて適宜設定され、特に限定されるものではないが、一例として一辺が20mm〜2000mm程度の四角形とされる。また、形状は円形、多角形等であってもよい。
(光コネクター)
光コネクター101は、光導波路1の端部に設けられ、コア部14を他の光学部品と光学的に接続し得るものである。この光コネクター101は、各種コネクター規格に準拠したものであってもよく、例えば小型(Mini)MTコネクター、JIS C 5981に規定されたMTコネクター、16MTコネクター、2次元配列型MTコネクター、MPOコネクター、MPXコネクター等が挙げられる。
図11(a)は、図1に示す光コネクター101の分解斜視図、図11(b)は、図1に示す光コネクター101の斜視図である。
図11に示す光コネクター101の場合、光コネクター101を装着するコア部14近傍には切り欠き1cが設けられる。具体的には、コア部14の両側部にそれぞれ、装着する光コネクター101と同程度の長さの切り欠き1cが形成されている。
図11に示す光コネクター101は、2つの脚部1012を備えたコネクター本体1011と、コネクター本体1011に装着可能なコネクター蓋体1013と、を有している。コネクター本体1011の2つの脚部1012は、図11(b)に示すように、切り欠き1cにそれぞれ嵌め込めるようになっており、その結果、コネクター本体1011の2つの脚部1012の間にコア部14が挿入されるようになっている。
また、コネクター蓋体1013もコア部14とともに2つの脚部1012の間に挿入されるようになっており、その結果、図11(b)に示すように、コネクター本体1011とコネクター蓋体1013とでコア部14を挟みこみ、固定し得るよう構成されている。
光導波路1に光コネクター101が装着されると、コア部14の端部は図11(b)に示すように光コネクター101の端面から露出した状態となる。この光コネクター101に対して他のコネクターを接続することによって、例えばコア部14と他の光導波路や光ファイバーといった光学部品を光学的に接続することができる。接続される光学部品としては、光導波路や光ファイバーの他に、例えば、波長変換素子、フィルター、回折格子、偏光子、プリズム、レンズ等が挙げられる。
また、光コネクター101の構成材料としては、例えば、樹脂材料、金属材料、セラミックス材料等が挙げられる。
また、光コネクター101の構造は、図11に示す構造に限定されない。例えば、光導波路1の端面から光コネクター101が突出するよう構成されていてもよく、その場合は、光導波路1に切り欠き1cを設ける必要はない。さらに、光導波路1を突出させたり切り欠き1cを設けたりすることなく、単に光導波路1の端部上にコネクター本体1011が接着されてなるような構造の光コネクター101であってもよい。
なお、光導波路1におけるコア部14のパターンは、図1に示すものに限定されず、いかなるパターンであってもよい。
(光電変換部)
光電変換部4は、光導波路1の下方に設けられた光電変換部基板41と、光電変換部基板41の下面に搭載された光素子6および光電変換部用電気素子7と、電気コネクター42と、を有している。この光電変換部4は、接着剤等の固定部材により光導波路1の下面に接着されている。以下、光電変換部4の各部について詳述する。
((光電変換部基板))
光電変換部基板41は、図2に示すように、絶縁性基板(第2基板)411と、その両面にそれぞれ設けられた電気配線412と、各面の電気配線412同士を接続する貫通配線413と、絶縁性基板411等を貫通するスルーホール414と、を有している。
絶縁性基板411を構成する材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、各種ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂等の各種樹脂材料が挙げられるが、中でもポリイミド系樹脂を主材料とするものが好ましく用いられる。ポリイミド系樹脂は、耐熱性が高く、優れた透光性および可撓性を有していることから、絶縁性基板411の構成材料として特に好適である。なお、絶縁性基板411の具体例としては、ポリエステル銅張フィルム基板、ポリイミド銅張フィルム基板、アラミド銅張フィルム基板等に使用されるフィルム基板が挙げられる。
ここで、図2に示す光モジュール100では、光素子6と光導波路1との間に絶縁性基板411が設けられており、信号光はこの絶縁性基板411に設けられたスルーホール414を通過する。なお、絶縁性基板411として透光性を有するものを用いた場合には、スルーホールは不要である。
また、絶縁性基板411の平均厚さは5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜150μm程度であるのがより好ましい。このような厚さの絶縁性基板411であれば、光モジュール100の薄型化が図られるとともに、絶縁性基板411の透過損失が抑制される。さらには、絶縁性基板411の厚さが前記範囲内であれば、ミラー17と光素子6との距離が十分に短くなるので信号光の発散によって伝送効率が低下するのを防止することができる。
なお、絶縁性基板411は、1枚の基板であってもよいが、複数層の基板を積層してなる多層基板(ビルドアップ基板)であってもよい。この場合、多層基板の層間には任意の電気回路が形成されていてもよい。これにより、絶縁性基板411中に高密度の電気回路を構築することができる。
なお、絶縁性基板411は、光導波路1の下面に成膜または積層された絶縁層で代替することもできる。
絶縁層は、酸化ケイ素、窒化ケイ素のようなケイ素化合物、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂のような樹脂材料等により構成される。また、成膜法としては、例えば真空蒸着、スパッタリングのような物理蒸着法、プラズマCVD、熱CVDのような化学蒸着法、塗布法、印刷法といった液相成膜法等が用いられる。
電気配線412および貫通配線413はそれぞれ導電性材料で構成されている。導電性材料としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、亜鉛、錫、金、銀等の金属単体、またはこれらの金属元素を含む合金といった金属材料が挙げられる。
また、電気配線412の平均厚さは、配線に要求される導電率等に応じて適宜設定されるものの、例えば1〜30μm程度とされる。
なお、光電変換部基板41に対する光素子6や光電変換部用電気素子7の搭載方法は、特に限定されず、ダイボンディング法、ワイヤーボンディング法等が用いられる。
((光素子))
図2に示す光素子6は、素子本体60と、素子本体60の上面に設けられた受発光部61および端子62と、を備えている。なお、受発光部とは、受光部または発光部、あるいはその双方の機能を有するものを指す。そして、光素子6の受発光部61と光導波路1のミラー17との間が光学的に接続されている。
光素子6としては、例えば、面発光レーザー(VCSEL)、発光ダイオード(LED)等の発光素子、フォトダイオード(PD、APD)等の受光素子が挙げられる。
また、光素子6の端子62と光電変換部4の電気配線412とがバンプを介して電気的に接続されている。このバンプは各種金属材料で構成される。
((光電変換部用電気素子))
図2に示す光電変換部用電気素子7は、素子本体70と、素子本体70の上面に設けられた端子72と、を備えている。
光電変換部用電気素子7としては、例えば、ドライバーIC、トランスインピーダンスアンプ(TIA)、リミッティングアンプ(LA)、またはこれらの素子を複合したコンビネーションIC、LSI、RAM、ROM、コンデンサー、コイル、抵抗、ダイオード等が挙げられる。
また、光電変換部用電気素子7の端子72と光電変換部4の電気配線412とがバンプを介して電気的に接続されている。このような光素子6や光電変換部用電気素子7を備えた光電変換部4を光導波路1のコア部14の両端部に設けることにより、光モジュール100のコア部14において光通信を行うことができる。
なお、光素子6や光電変換部用電気素子7と電気配線412との電気的接続は、上述したような接続方法の他、ワイヤーボンディング、異方性導電フィルム(ADF)、異方性導電ペースト(ACP)等を用いた接続方法で行われてもよい。
また、図2に示す光素子6や光電変換部用電気素子7と光電変換部基板41との間には封止材45が設けられている。封止材45としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
((電気コネクター))
光電変換部4は、電気コネクター42を介してマザーボード5に電気的に接続されている。
電気コネクター42は、各種コネクター規格に準拠したものあるいは汎用品であってもよく、例えばボード・ツー・ボードコネクター、FPC/FFCコネクター、ZIFコネクター、NON−ZIFコネクター等が挙げられる。
なお、光導波路1は、機械的にも、この電気コネクター42を介してマザーボード5に接続されていてもよい。このような固定方法であれば、マザーボード5に対して光導波路1を着脱可能にすることができる。これにより、マザーボード5と光導波路1とを分離させ易くなるため、例えば光導波路1を交換し易い利点がある。
(マザーボード)
マザーボード(電気配線基板)5は、絶縁性基板(第1基板)51と、その上面に設けられた電気配線52と、絶縁性基板51上に搭載された複数のLSI501、コンデンサー502およびチップ抵抗器503といった複数の電気配線基板用電気素子50と、電気コネクター53と、を有している。
電気コネクター53は、光電変換部4の電気コネクター42と嵌合するものであり、この嵌合により、マザーボード5側の電気配線52と光電変換部4側の電気配線412とが電気的および機械的に接続され、光電変換部4の光素子6や光電変換部用電気素子7の動作をマザーボード5側から制御することが可能になる。また、信号の送受信も可能になる。
絶縁性基板51を構成する材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、各種ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂等の各種樹脂材料が挙げられる。この他、紙、ガラス布、樹脂フィルム等を基材とし、この基材に、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂材料を含浸させたもの、具体的には、ガラス布・エポキシ銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板等のコンポジット銅張積層板に使用される絶縁性基板の他、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板等の耐熱・熱可塑性の有機系リジッド基板や、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板等のセラミックス系リジッド基板等であってもよい。
電気配線52は導電性材料で構成されている。導電性材料としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、亜鉛、錫、金、銀等の金属単体、またはこれらの金属元素を含む合金といった金属材料が挙げられる。
また、電気配線52の平均厚さは、配線に要求される導電率等に応じて適宜設定されるものの、例えば1〜30μm程度とされる。
マザーボード5がこのような電気配線52、すなわち金属層を備えていることにより、マザーボード5は絶縁性基板51だけで構成される場合に比べてその剛性が向上する。これにより、光導波路1をマザーボード5上に重ねたとき、光導波路1のみならずマザーボード5も撓み難くなり、その結果、マザーボード5と接続されている光導波路1の配置がより高精度に維持されることとなる。これにより、光導波路1とマザーボード5との間の信号の送受信効率をより高く維持することができる。
ここで、図2に示す光電気混載基板1000では、電気配線基板用電気素子50が光導波路1の下に収まっている。このため、光電気混載基板1000を平面視したとき、前述したように同じ領域に電気配線基板用電気素子50とコア部14とを併存させることができるので、コア部14のパターンを自由に設定することができる。その結果、例えばコア部14の距離を最短化することができるので、光信号の伝送効率の最適化を図ることができる。
また、マザーボード5から光導波路1を容易に分離させることができるので、光導波路1やマザーボード5を個別に交換する等の補修を容易に行うことができる。
なお、マザーボード5に実装される電気配線基板用電気素子50は、上述したものに限定されず、例えばIC、CPU、RAM、ROM、トランジスター、コイル、ダイオード、コンデンサー、振動子、圧電素子、リレー、光素子等であってもよい。
ここで、光導波路1とマザーボード5との距離は、例えば光電変換部4側の電気コネクター42やマザーボード5側の電気コネクター53の高さを変えることで容易に調整することができるが、一例として1〜100mm程度に設定されるのが好ましく、2〜80mm程度に設定されるのがより好ましい。
なお、本実施形態に係る光電気混載基板1000では、光電変換部4側の電気コネクター42とマザーボード5側の電気コネクター53とを接続することにより、両者間が固定されている。このような方法で固定することにより、光モジュール100とマザーボード5との間は一部分のみで固定されるため、光導波路1とマザーボード5との間に多くの空間が存在する状態となる。この状態では、例えばマザーボード5の熱変形の影響が光モジュール100側に及び難くなり、光電気混載基板1000の信頼性が向上する。
また、マザーボード5に対して光モジュール100の固定する際には、電気コネクター42、53以外の機構、例えば接着剤による固定等を追加するようにしてもよい。
図12は、本実施形態に係る光モジュール100の他の構成例を示す断面図である。
図12に示す光電変換部4は、図1に示す光電変換部4にヒートスプレッダー44を付加したものである。図12に示すヒートスプレッダー44は、光電変換部基板41の下面に搭載された光素子6や光電変換部用電気素子7を覆う箱状をなしている。そして、ヒートスプレッダー44内部の底面と光電変換部用電気素子7の下面とが当接するよう構成されている。これにより、光電変換部用電気素子7からの熱がヒートスプレッダー44に効率よく伝達され、拡散する。その結果、光電変換部用電気素子7の放熱が特に促進されることとなる。
ヒートスプレッダー44の構成材料としては、熱伝導性の高いもの、例えば金属材料、炭素材料、セラミックス材料等が用いられる。また特に、銅、アルミニウム、鉄、銀、金、クロム、ニッケル、亜鉛、錫の単体または合金が好ましく用いられる。
なお、光電変換部用電気素子7とヒートスプレッダー44との間は、単に接しているのみであってもよいが、熱伝導材を介して接していてもよい。熱伝導材としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂のような樹脂系材料、グラファイトのような炭素系材料、シリカ、アルミナ、窒化ケイ素のようなセラミックス系材料、アルミニウム、銅のような金属系材料等のシートまたはペースト等が用いられる。また、これらの材料の2種以上を混合した複合材料のシートまたはペーストも用いられる。
また、ヒートスプレッダー44には、表面積を大きくする凹凸形状が設けられていてもよい。この凹凸形状としては、例えば図12に示すヒートスプレッダー44の下面に設けられるフィン形状等が挙げられる。
≪第2実施形態≫
次に、本発明の光電気混載基板の第2実施形態に係る光モジュールについて説明する。
図13は、本発明の光電気混載基板の第2実施形態の一部を示す断面図である。
以下、第2実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図13において第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第2実施形態は、光電変換部4の構成が異なる以外、第1実施形態と同様である。
図13に示す光電変換部4は、光導波路1のクラッド層11の下面に設けられた絶縁性基板411aと、クラッド層12の上面に設けられた絶縁性基板411bと、絶縁性基板411aの下面に設けられた電気配線412aと、絶縁性基板411bの上面に設けられた電気配線412bと、光導波路1を貫通し電気配線412aと電気配線412bとを接続する貫通配線413と、封止材45と、電気コネクター42と、光素子6と、光電変換部用電気素子7と、を有している。また、ミラー17は、電気配線412bから、絶縁性基板411b、光導波路1、および絶縁性基板411aにわたって形成された凹部170の内面の一部で構成されている。
図13に示す光電変換部4の構造は、光導波路1を2枚の絶縁性基板411a、411bで挟み込む構造になっている。このため、絶縁性基板411aとしてより薄いものを用いたとしても光電変換部4の剛性を維持することができ、光素子6とミラー17との離間距離をより短くすることができる。その結果、光素子6とミラー17との光結合効率をより高めることができる。
絶縁性基板411a、411bの平均厚さは、5〜50μm程度であるのが好ましく、10〜40μm程度であるのがより好ましい。
なお、本実施形態に係る光電変換部4では、絶縁性基板411bの上面側にも光電変換部用電気素子7等を実装可能であり、これにより光電変換部用電気素子7のさらなる高密度実装が可能になる。
また、凹部170は、電気配線412bの上面に開口している凹部であるので、光導波路1に対して光電変換部4を接着した後に形成可能である。このため、光素子6の受発光部の位置に合わせて凹部170を形成することが可能になり、受発光部とミラー17との光軸合わせを極めて厳密に行うことができる。
≪第3実施形態≫
次に、本発明の光電気混載基板の第3実施形態について説明する。
図14は、本発明の光電気混載基板の第3実施形態の一部を示す断面図である。
以下、第3実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図14において前記各実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第3実施形態は、光電変換部4とマザーボード5との間に電気インターポーザー(電気配線基板)55が介挿されているとともに、LSI501が電気インターポーザー55に搭載されている以外、第1実施形態と同様である。なお、本実施形態では、第1、第2実施形態と異なり、電気インターポーザー55が「電気配線基板」に相当する。
図14に示す電気インターポーザー55は、コア基板551とその両面に積層されたビルドアップ層552とを備えた多層基板550と、多層基板550の下面に設けられたバンプ553と、を有している。そして、電気インターポーザー55には前述したようにLSI501が搭載されているとともに、電気インターポーザー55の表面および内部に敷設された電気配線と光電変換部4とが電気コネクター53を介して電気的に接続されている。このような電気インターポーザー55を用いることにより、電気配線の高密度化を容易に図ることができ、信号伝送速度を高めることができる。その結果、LSI501と光電変換部4との間の情報伝送の高速化および大容量化を図ることができ、光通信による高速化の恩恵を最大限に活かすことができる。すなわち、高速かつ大容量の情報処理を可能にする光電気混載基板1000が得られる。
また、電気インターポーザー55は、バンプ553を介してマザーボード5の電気配線52と電気的に接続されている。これにより、マザーボード5上に複数の電気インターポーザー55が搭載されている場合も、これらを相互に連携させることができる。
なお、多層基板550は、図14に示すようなコア基板を含む多層基板であってもよいが、コア基板を含まないコアレスの多層基板であってもよい。
また、ビルドアップ層552は、アディティブ法、セミアディティブ法、サブトラクティブ法のようなビルドアップ工法により形成される。
また、電気インターポーザー55には、例えば前述したようなその他の電気素子が搭載されていてもよい。
ここで、図14に示す電気インターポーザー55は、多層基板550の上面のうち、LSI501のような電気配線基板用電気素子50等が搭載された領域以外の領域に接合された補強部材(スティフナー)554を有している。具体的には、図14に示す電気インターポーザー55では、LSI501および電気コネクター53以外の領域に補強部材554が設けられている。
補強部材554の構成材料としては、ビルドアップ層552の絶縁層よりも熱膨張係数が小さいものが用いられる。このような補強部材554を用いることにより、ビルドアップ層552の熱膨張を抑えることができ、多層基板550の変形を抑えることができる。補強部材554の構成材料としては、具体的には、例えば金属材料、セラミックス材料等が挙げられるが、金属材料を用いるのが好ましい。これにより、補強部材554の放熱性を高めることができ、電気配線基板用電気素子50の信頼性を高めることができる。
特に、補強部材554の熱膨張係数は、0.5ppm/℃以上10ppm/℃以下であるのが好ましく、1ppm/℃以上7ppm/℃以下であるのがより好ましく、1ppm/℃以上5ppm/℃以下であるのがさらに好ましい。これにより、多層基板550の変形をより効果的に防止することができる。
かかる金属材料としては、特に限定されず、各種金属材料を用いることができるが、放熱性および低熱膨張を実現する観点から、Feを含む合金を用いるのが好ましい。
かかるFeを含む合金としては、例えば、Fe−Ni系合金、Fe−Co−Cr系合金、Fe−Co系合金、Fe−Pt系合金、Fe−Pd合金等が挙げられ、特に、Fe−Ni系合金を用いるのが好ましい。
このような金属材料は、放熱性に優れるだけでなく、熱膨張係数が低いため、補強部材554の構成材料として有用である。
Fe−Ni系合金としては、FeおよびNiを含むものであれば、特に限定されず、FeおよびNiの他に、残部(M)として、Co、Ti、Mo、Cr、Pd、Pt等の金属のうちの1種または2種以上の金属を含んでいてもよい。
より具体的には、Fe−Ni系合金としては、例えば、Fe−36Ni合金(インバー)等のFe−Ni合金、Fe−32Ni−5Co合金(スーパーインバー)、Fe−29Ni−17Co合金(コバール)、Fe−36Ni−12Co合金(エリンバー)等のFe−Ni−Co合金、Fe−Ni−Cr−Ti合金、Ni−28Mo−2Fe合金等のNi−Mo−Fe合金等が挙げられる。また、Fe−Ni−Co合金は、例えば、KV−2、KV−4、KV−6、KV−15、KV−25等のKVシリーズ(NEOMAXマテリアル社製)、Nivarox等の商品名で市販されている。また、Fe−Ni合金は、例えば、NS−5、D−1(NEOMAXマテリアル社製)等の商品名で市販されている。また、Fe−Ni−Cr−Ti合金は、例えば、Ni−Span C−902(大同スペシャルメタル社製)、EL−3(NEOMAXマテリアル社製)等の商品名で市販されている。
また、Fe−Co−Cr系合金としては、Fe、CoおよびCrを含むものであれば、特に限定されないが、例えば、Fe−54Co−9.5Cr(ステンレスインバー)等のFe−Co−Cr合金が挙げられる。なお、Fe−Co−Cr系合金は、Fe、CoおよびCrの他に、Ni、Ti、Mo、Pd、Pt等の金属のうちの1種または2種以上の金属を含んでいてもよい。
また、Fe−Co系合金としては、FeおよびCoを含むものであれば、特に限定されず、FeおよびCoの他に、Ni、Ti、Mo、Cr、Pd、Pt等の金属のうちの1種または2種以上の金属を含んでいてもよい。
また、Fe−Pt系合金としては、FeおよびPtを含むものであれば、特に限定されず、FeおよびPtの他に、Co、Ni、Ti、Mo、Cr、Pd等の金属のうちの1種または2種以上の金属を含んでいてもよい。
また、Fe−Pd系合金としては、FeおよびPdを含むものであれば、特に限定されず、FeおよびPdの他に、Co、Ni、Ti、Mo、Cr、Pt等の金属のうちの1種または2種以上の金属を含んでいてもよい。
この補強部材554は、多層基板550の上面に接合されているが、その接合方法としては、例えば接着剤、粘着剤、圧接等が挙げられる。このうち接着剤を用いることにより、補強部材554と多層基板550とを簡単に接合することができる。かかる接着剤としては、接着機能を有するものであれば、特に限定されず、各種接着剤を用いることができるが、熱伝導性に優れたものが好ましい。
熱伝導性に優れた接着剤としては、例えば無機フィラーを含むものが挙げられる。無機フィラーとしては、例えば、Au、Ag、Pt等の金属、シリカ、アルミナ、ケイ藻土、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、金属フェライト等の酸化物、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化チタン等の窒化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム(軽質、重質)、炭酸マグネシウム、ドロマイト、ドーソナイト等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、タルク、マイカ、クレー、ガラス繊維、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト等のケイ酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維等の炭素、その他鉄粉、銅粉、アルミニウム粉、亜鉛華、硫化モリブデン、ボロン繊維、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上が用いられる。なお、無機フィラーとして導電性を有するものを用いた場合、必要に応じて、接着剤の接する部位に絶縁処理を施す。
また、電気インターポーザー55には、多層基板550の下面のうち、バンプ553以外の領域にも補強部材554と同様の構成を有する補強部材555が設けられている。このような補強部材555を設けることにより、電気インターポーザー55の変形をさらに抑えることができる。
また、多層基板550には、その厚さ方向に貫通するビアホールが形成されており、そのビアホールに伝熱ポスト556が設けられている。
この伝熱ポスト556は、多層基板550全体をその厚さ方向に貫通しており、上端が多層基板550の上面に露出するとともに、下端が多層基板550の下面に露出している。そして、伝熱ポスト556は、上端が補強部材554に接触し、下端が補強部材555に接触している。これにより、伝熱ポスト556は、補強部材554と補強部材555とを接続している。
この伝熱ポスト556は、前述した多層基板550よりも高い伝熱性を有する。これにより、補強部材554から伝熱ポスト556を介して補強部材555へ熱を効率的に伝達することができる。その結果、補強部材554、555はヒートスプレッダーとしての性能を向上させることができる。
また、この伝熱ポスト556は、多層基板550をその厚さ方向に貫通するものであるため、公知の導体ポストと同様に、簡単かつ高精度に形成することができる。
また、伝熱ポスト556は、中空であってもよいし、中実であってもよい。また、伝熱ポスト556の横断面形状としては、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形等が挙げられる。また、伝熱ポスト556の数は、特に限定されず、任意であるが、多層基板550の機械的強度を損ねない程度に、できるだけ多くするのが好ましい。
伝熱ポスト556は、電気信号の伝送に寄与しないものである。これにより、補強部材554から伝熱ポスト556を介して補強部材555へ熱をより効率的に伝達することができる。
なお、本実施形態では、伝熱ポスト556が、多層基板550を平面視したときの外周部に設けられている。これにより、多層基板550の温度分布を均一化し易い。
また、伝熱ポスト556は、多層基板550の表面や内部に形成された電気配線と接触しないよう設けられている。これにより、伝熱ポスト556と電気配線との短絡を防止することができる。
このような伝熱ポスト556の構成材料としては、多層基板550よりも高い伝熱性を有するものであれば、特に限定されないが、金属材料を用いるのが好ましい。
かかる金属材料としては、例えば、銅、銅系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金等の各種金属および各種合金が挙げられる。中でも、伝熱性に優れるので、銅、銅系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金を用いるのが好ましい。銅および銅系合金は熱伝導性に優れるので、電気配線基板用電気素子50の放熱性をより向上させることができる。
≪第4実施形態≫
次に、本発明の光電気混載基板の第4実施形態について説明する。
図15(a)は、本発明の光電気混載基板の第4実施形態の一部を示す断面図、図15(b)は、図15(a)の上面図である。
以下、第4実施形態について説明するが、第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図15において前記各実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第4実施形態は、光導波路1が、マザーボード5の一部を覆うように広がるシート状の部分1aと、シート状の部分1aから伸びる帯状の部分1bと、を備えた形状をなしており、シート状の部分1aと帯状の部分1bとの接続部1dにおいて帯状の部分1bが90°捻られている以外、第3実施形態と同様である。
すなわち、図15に示す光導波路1は、第3実施形態と同様にマザーボード5や電気インターポーザー55を覆うシート状の部分1aを有している。
また、図15に示す光導波路1は、帯状の部分1bを有しており、この帯状の部分1bには光電変換部4が設けられている。ここで、帯状の部分1bは前記接続部1dにおいて90°捻られているため、それに伴って光電変換部4の配置も第3実施形態の配置に対して90°回転された配置になっている。これにより、平板状をなす光電変換部4は、その面方向が電気インターポーザー55の上面に対して直交するよう配置されることとなる。
光電変換部4の絶縁性基板411の端部には、電気配線412に接続された接点4120が複数並べられている。上記のように光電変換部4が配置されることにより、この接点4120を電気インターポーザー55の電気コネクター(ソケット)53に直接差し込むことが可能になる。このような接続構造であれば、光電変換部4に電気コネクター42を設ける必要がなく、代わりに接点4120を形成しただけのいわゆるエッジ・コネクターを採用することができる。これにより、光電変換部4の低コスト化および簡素化を図ることができる。また、帯状の部分1bが90°捻られることにより、光導波路1の上方から電気コネクター53を直接視認することができるようになるため、接点4120と電気コネクター53との接続作業を容易に行うことができるという利点もある。
なお、この場合、電気コネクター53は、上述したものの他にカードソケットタイプのコネクターであってもよい。
また、図15では、光導波路1の端部に帯状の部分1bが設けられ、その端部には光コネクター101が装着されているが、帯状の部分1bの配置はこれに限定されない。例えば、シート状の部分1aに囲まれる位置に帯状の部分1bが配置されていてもよい。
さらに、接続部1dにおける捻り角度は、90°に限定されず、電気コネクター53の受け入れ角に応じて10〜90°程度の範囲内で適宜設定される。
≪第5実施形態≫
次に、本発明の光電気混載基板の第5実施形態について説明する。
図16は、本発明の光電気混載基板の第5実施形態を示す(一部透過して示す)分解斜視図、図17は、図16に白抜き矢印で示すように光導波路を重ねた状態におけるX−X線断面図である。
以下、第5実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図16において前記各実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第5実施形態は、光導波路1がさらに金属層18を備えている以外、第1実施形態と同様である。
図16、17に示す光導波路1は、クラッド層12の上面およびクラッド層11の下面にそれぞれ設けられた金属層18を有している。金属層18を設けることにより、光導波路1の剛性を高めることができる。これにより、光導波路1をマザーボード5上に重ねたとき、光導波路1が撓み難くなり、その形状が維持され易いため、光導波路1とマザーボード5との配置がより高精度に維持される。これにより、光導波路1とマザーボード5との間の信号の送受信効率をより高く維持することができる。その結果、内部の信号伝送効率(信頼性)が特に高い光電気混載基板1000が得られる。
(光導波路)
図18は、図16に示す光導波路1の一部を拡大して示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図である。
図17、18に示す光導波路1は、クラッド層12の上面およびクラッド層11の下面にそれぞれ設けられた金属層18を有している。そして、LSI501の上面は、クラッド層11の下面に設けられた金属層18に当接(直接接触)している。これにより、LSI501からの熱は金属層18に容易に伝達され、拡散する。その結果、LSI501の放熱が特に促進されることとなる。すなわち、金属層18は、LSI501からの熱を放熱させるヒートスプレッダーとして機能する。
また、金属層18には図示しない他の放熱部材が接続されていてもよい。金属層18を介してLSI501からの熱をこの放熱部材に伝導させ、放熱することができる。放熱部材としては、例えば、放熱フィン、熱交換機等が挙げられる。
なお、LSI501の上面は、熱伝導材を介して金属層18と接していてもよい。熱伝導材としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂のような樹脂系材料、グラファイトのような炭素系材料、シリカ、アルミナ、窒化ケイ素のようなセラミックス系材料、アルミニウム、銅のような金属系材料等のシートまたはペースト等が用いられる。また、これらの材料の2種以上を混合した複合材料のシートまたはペーストも用いられる。
また、金属層18を設けることにより、光導波路1の剛性を高めることができる。これにより、光導波路1をマザーボード5上に重ねたとき、光導波路1が撓み難くなり、その形状が維持され易いため、光導波路1とマザーボード5との配置がより高精度に維持される。これにより、光導波路1とマザーボード5との間の信号の送受信効率をより高く維持することができる。その結果、内部の信号伝送効率(信頼性)が特に高い光電気混載基板1000が得られる。
金属層18の平均厚さは、特に限定されないが、1〜1000μm程度であるのが好ましく、3〜800μm程度であるのがより好ましい。これにより、放熱性を高めつつ、光導波路1に十分な剛性が付与され、かつ自重で撓むのを防止することができる。すなわち、金属層18の平均厚さが前記下限値を下回る場合、十分な放熱性が得られないおそれや、また光導波路1に十分な剛性が付与されないおそれがある。一方、金属層18の平均厚さが前記上限値を上回る場合、金属層18の質量が大きくなり、光導波路1が自重で撓んでしまい、信号伝送効率が低下するおそれがある。
また、金属層18の合計の平均厚さは、光導波路1の平均厚さの0.01〜20倍程度であるのが好ましく、0.05〜15倍程度であるのがより好ましい。これにより、十分な放熱性と剛性とを確保しつつ、光導波路1の質量が必要以上に重くなるのを防止することができる。
金属層18の構成材料としては、例えば各種金属材料が挙げられ、特に銅、アルミニウム、鉄、銀、金、クロム、ニッケル、亜鉛、錫の単体またはこれらの金属元素を含む合金が好ましく用いられ、アルミニウム、鉄および銅の単体またはこれらの基合金を主材料とするものがより好ましく用いられる。これらの材料は特に放熱性が高く、かつ、光導波路1に特に十分な剛性を付与するものであるため、光導波路1とマザーボード5との配置をさらに高精度に維持することができる。
また、後に詳述するが、光導波路1を貫通するビアホールを設け、そこに伝熱ポストを設けるようにしてもよい。この伝熱ポストを介してクラッド層12の上面に設けられた金属層18とクラッド層11の下面に設けられた金属層18とを接続することにより、ヒートスプレッダーとしての機能がより強化されることとなる。この伝熱ポストの構成材料には、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、亜鉛、錫、金、銀等の金属単体、またはこれらの金属元素を含む合金といった各種金属材料が挙げられる。
なお、クラッド層11の下面に設けられた金属層18には、光路と重なる部分に貫通孔が形成されている。これにより、金属層18によって信号光の伝搬が妨げられるのを防止することができる。
また、金属層18には、必要に応じてパターニングが施され、電気配線として用いられる部分が含まれていてもよい。
図19は、本実施形態に係る光モジュール100の他の構成例を示す断面図である。
図19に示す光電変換部4は、図16に示す光電変換部4にヒートスプレッダー(放熱体)44を付加したものである。図19に示すヒートスプレッダー44は、光電変換部基板41の下面に搭載された光素子6や光電変換部用電気素子7を覆う箱状をなしている。そして、ヒートスプレッダー44内部の底面と光電変換部用電気素子7の下面とが当接するよう構成されている。これにより、光電変換部用電気素子7からの熱がヒートスプレッダー44に効率よく伝達され、拡散する。その結果、光電変換部用電気素子7の放熱が特に促進されることとなる。
ヒートスプレッダー44の構成材料としては、前述したものと同様のものが用いられる。
なお、光電変換部用電気素子7とヒートスプレッダー44との間は、単に接しているのみであってもよいが、熱伝導材を介して接していてもよい。熱伝導材としては前述したものが用いられる。
また、ヒートスプレッダー44には、表面積を大きくする凹凸形状が設けられていてもよい。この凹凸形状としては、例えば図19に示すヒートスプレッダー44の下面に設けられるフィン形状等が挙げられる。
≪第6実施形態≫
次に、本発明の光電気混載基板の第6実施形態に係る光モジュールについて説明する。
図20は、本発明の光電気混載基板の第6実施形態の一部を示す断面図である。
以下、第6実施形態について説明するが、第5実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図20において前記各実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第6実施形態は、光電変換部4の構成が異なる以外、第5実施形態と同様である。
図20に示す光電変換部4は、光導波路1のクラッド層11の下面に設けられた絶縁性基板411aと、クラッド層12の上面に設けられた絶縁性基板411bと、絶縁性基板411aの下面に設けられた電気配線412aと、絶縁性基板411bの上面に設けられた電気配線412bと、光導波路1を貫通し電気配線412aと電気配線412bとを接続する貫通配線413と、封止材45と、電気コネクター42と、光素子6と、光電変換部用電気素子7と、を有している。また、ミラー17は、電気配線412bから、絶縁性基板411b、光導波路1、および絶縁性基板411aにわたって形成された凹部170の内面の一部で構成されている。
図20に示す光電変換部4の構造は、光導波路1を2枚の絶縁性基板411a、411bで挟み込む構造になっている。このため、絶縁性基板411aとしてより薄いものを用いたとしても光電変換部4の剛性を維持することができ、光素子6とミラー17との離間距離をより短くすることができる。その結果、光素子6とミラー17との光結合効率をより高めることができる。
絶縁性基板411a、411bの平均厚さは、5〜50μm程度であるのが好ましく、10〜40μm程度であるのがより好ましい。
なお、本実施形態に係る光電変換部4では、絶縁性基板411bの上面側にも光電変換部用電気素子7等を実装可能であり、これにより光電変換部用電気素子7のさらなる高密度実装が可能になる。
また、凹部170は、電気配線412bの上面に開口している凹部であるので、光導波路1に対して光電変換部4を接着した後に形成可能である。このため、光素子6の受発光部の位置に合わせて凹部170を形成することが可能になり、受発光部とミラー17との光軸合わせを極めて厳密に行うことができる。
図21は、本実施形態に係る光モジュール100の他の構成例を示す断面図である。
図21に示す光電変換部4では、図20に示す光電変換部4の各絶縁性基板411a、411bおよび電気配線412a、412bがそれぞれ光導波路1の全体にわたって延伸されている。ここで、電気配線412a、412bは、それぞれ金属材料で構成されたものであり、前記第1実施形態に係る金属層18と同様の機能を有するものである。このため、図21に示す光モジュール100では、光導波路1の剛性が全体にわたって強化されるとともに、光導波路1が外力や外光、外部環境から保護されることとなる。
≪第7実施形態≫
次に、本発明の光電気混載基板の第7実施形態に係る光モジュールについて説明する。
図22は、本発明の光電気混載基板の第7実施形態の一部を示す断面図である。
以下、第7実施形態について説明するが、第5実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図22において前記各実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第7実施形態に係る光モジュール100は、光電変換部4の絶縁性基板411およびその上面に設けられた電気配線412と、その上に位置する金属層18と、が省略され、一方、光導波路1を貫通し金属層18と電気配線412とを接続する貫通配線18cが形成されている以外、第5実施形態に係る光モジュール100と同様である。すなわち、図22に示す光電変換部4は、光導波路1と電気配線412とが接するよう構成されている。このような構造であれば、絶縁性基板411等が省略された分、光素子6とミラー17との離間距離をさらに短くすることができる。その結果、光素子6とミラー17との光結合効率をさらに高めることができる。また、前記離間距離を短くすることができるので、図22に示すようにレンズ16を省略することもできる。
また、金属層18をパターニングして電気配線を作り込み、貫通配線18cを介して電気配線412と接続することにより、より広い範囲に電気回路を構築することができる。さらには、貫通配線18cを介して、光素子6や光電変換部用電気素子7からの熱を金属層18にも拡散させ、放熱することができる。
≪第8実施形態≫
次に、本発明の光電気混載基板の第8実施形態について説明する。
図23は、本発明の光電気混載基板の第8実施形態の一部を示す断面図である。
以下、第8実施形態について説明するが、第5実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図23において前記各実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第8実施形態は、光電変換部4とマザーボード5との間に電気インターポーザー(電気配線基板)55が介挿されているとともに、LSI501が電気インターポーザー55に搭載されている以外、第5実施形態と同様である。なお、本実施形態では、第5実施形態等と異なり、電気インターポーザー55が電気配線基板に相当する。
図23に示す電気インターポーザー55は、コア基板551とその両面に積層されたビルドアップ層552とを備えた多層基板550と、多層基板550の下面に設けられたバンプ553と、を有している。そして、電気インターポーザー55には前述したようにLSI501が搭載されているとともに、電気インターポーザー55の表面および内部に敷設された電気配線と光電変換部4とが電気コネクター53を介して電気的に接続されている。このような電気インターポーザー55を用いることにより、電気配線の高密度化を容易に図ることができ、信号伝送速度を高めることができる。その結果、LSI501と光電変換部4との間の情報伝送の高速化および大容量化を図ることができ、光通信による高速化の恩恵を最大限に活かすことができる。すなわち、高速かつ大容量の情報処理を可能にする光電気混載基板1000が得られる。
また、電気インターポーザー55は、バンプ553を介してマザーボード5の電気配線52と電気的に接続されている。これにより、マザーボード5上に複数の電気インターポーザー55が搭載されている場合も、これらを相互に連携させることができる。
なお、多層基板550は、図23に示すようなコア基板を含む多層基板であってもよいが、コア基板を含まないコアレスの多層基板であってもよい。
また、ビルドアップ層552は、アディティブ法、セミアディティブ法、サブトラクティブ法のようなビルドアップ工法により形成される。
また、電気インターポーザー55には、例えば前述したようなその他の電気素子が搭載されていてもよい。
ここで、図23に示す電気インターポーザー55は、多層基板550の上面のうち、LSI501のような電気配線基板用電気素子50等が搭載された領域以外の領域に接合された補強部材(スティフナー)554を有している。具体的には、図23に示す電気インターポーザー55では、LSI501および電気コネクター53以外の領域に補強部材554が設けられている。
以上のように、電気インターポーザー55がこのような補強部材554、555、すなわち金属層を備え、かつこれらが伝熱ポスト556を介して接続されていることにより、電気インターポーザー55は金属層を備えない場合に比べてその剛性が向上する。これにより、光導波路1を電気インターポーザー55上に重ねたとき、光導波路1のみならず電気インターポーザー55も撓み難くなり、その結果、電気インターポーザー55と接続されている光導波路1の配置がより高精度に維持されることとなる。これにより、光導波路1と電気インターポーザー55との間の信号の送受信効率をより高く維持することができる。
≪第9実施形態≫
次に、本発明の光電気混載基板の第9実施形態について説明する。
図24(a)は、本発明の光電気混載基板の第9実施形態の一部を示す断面図、図24(b)は、図24(a)の上面図である。
以下、第9実施形態について説明するが、第8実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図24において前記各実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第9実施形態は、光導波路1が、マザーボード5の一部を覆うように広がるシート状の部分1aと、シート状の部分1aから伸びる帯状の部分1bと、を備えた形状をなしており、シート状の部分1aと帯状の部分1bとの接続部1dにおいて帯状の部分1bが90°捻られている以外、第8実施形態と同様である。
すなわち、図24に示す光導波路1は、第8実施形態と同様にマザーボード5や電気インターポーザー55を覆うシート状の部分1aを有している。
また、図24に示す光導波路1は、帯状の部分1bを有しており、この帯状の部分1bには光電変換部4が設けられている。ここで、帯状の部分1bは前記接続部1dにおいて90°捻られているため、それに伴って光電変換部4の配置も第4実施形態の配置に対して90°回転された配置になっている。これにより、平板状をなす光電変換部4は、その面方向が電気インターポーザー55の上面に対して直交するよう配置されることとなる。
光電変換部4の絶縁性基板411の端部には、電気配線412に接続された接点4120が複数並べられている。上記のように光電変換部4が配置されることにより、この接点4120を電気インターポーザー55の電気コネクター(ソケット)53に直接差し込むことが可能になる。このような接続構造であれば、光電変換部4に電気コネクター42を設ける必要がなく、代わりに接点4120を形成しただけのいわゆるエッジ・コネクターを採用することができる。これにより、光電変換部4の低コスト化および簡素化を図ることができる。また、帯状の部分1bが90°捻られることにより、光導波路1の上方から電気コネクター53を直接視認することができるようになるため、接点4120と電気コネクター53との接続作業を容易に行うことができるという利点もある。
なお、この場合、電気コネクター53は、上述したものの他にカードソケットタイプのコネクターであってもよい。
また、図24では、光導波路1の端部に帯状の部分1bが設けられ、その端部には光コネクター101が装着されているが、帯状の部分1bの配置はこれに限定されない。例えば、シート状の部分1aに囲まれる位置に帯状の部分1bが配置されていてもよい。
さらに、接続部1dにおける捻り角度は、90°に限定されず、電気コネクター53の受け入れ角に応じて10〜90°程度の範囲内で適宜設定される。
<光電気混載基板の製造方法>
次に、本発明の光電気混載基板を製造する方法について説明する。
まず、光導波路1を製造する。光導波路1は、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12をこの順に積層することによって製造されるが、このうちコア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを形成するのには、例えばナノインプリント法、直接描画法、直接露光自己形成法等が用いられる。また、直接描画法では、光等の放射線の照射により照射領域と非照射領域との間に屈折率差を形成し得る屈折率変調能を有する被膜に向けて局所的に放射線を照射し、屈折率差を形成することによりコア部14と側面クラッド部15とを形成する。
屈折率変調の原理には、例えばモノマーディフュージョン、フォトブリーチング、光異性化、光二量化等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせたものが用いられる。このうち、屈折率変調の原理としては、特にモノマーディフュージョンが好ましく採用される。モノマーディフュージョンでは、ポリマー中にこのポリマーと屈折率の異なる光重合性モノマーが分散してなる材料で構成された層に対して部分的に光を照射し、光重合性モノマーの重合を生起させるとともに、それに伴って光重合性モノマーを移動、偏在させることにより、層内に屈折率の偏りを生じさせてコア部14および側面クラッド部15を形成する。このような原理の屈折率変調においては、光を照射する領域を選択するのみで、いかなる形状のコア部14をも簡単に形成することができるので、光導波路1を極めて効率よく製造することができる。また、このような原理で形成される屈折率分布は、光重合性モノマーの濃度分布に対応して形成されるため、形成されたコア部14の横断面における屈折率分布は滑らかな屈折率変化を伴うものとなる。その結果、製造される光導波路1は、GI型の屈折率分布を有するものとなり、伝送特性が高く、交差部における混信を確実に抑制し得るものとなる。
このようなモノマーディフュージョンを生じる材料としては、例えば、特開2010−090328号公報に記載された感光性樹脂組成物等が挙げられる。
一方、フォトブリーチング、光異性化および光二量化といった原理による屈折率変調の場合、照射する光の照射量(放射線の照射量)に応じて屈折率の変化量を調整することができる。フォトブリーチングでは、光の照射によって材料中の分子構造が切断され、離脱性基が主鎖から離脱する。これにより材料の屈折率を変化させ、コア部14を形成する。また、光異性化および光二量化では、光の照射によって材料の光異性化または光二量化を生じ、材料の屈折率が変化する。これによりコア部14を形成する。
フォトブリーチングを生じる材料としては、例えば、特開2009−145867号公報に記載されたコアフィルム材料等が挙げられる。
また、光異性化を生じる材料としては、例えば、特開2005−164650号公報に記載されたノルボルネン系樹脂等が挙げられる。
また、光二量化を生じる材料としては、例えば、特開2011−105791号公報に記載された感光性樹脂組成物等が挙げられる。
なお、照射する光の照射量を徐々に変化させることにより、形成される屈折率分布も滑らかな屈折率変化を伴うものとなる。照射する光の照射量を徐々に変化させる方法としては、例えば、グレイトーンマスクやハーフトーンマスクといった多階調マスクを用いる方法、光強度に分布がある光ビームを走査する方法、領域ごとの照射時間を変化させつつ照射する方法等が挙げられる。
また、ポリマー中に屈折率調整剤を拡散させ、その際、屈折率調整剤の濃度を連続的に変化させることによって屈折率差を形成するようにしてもよい。ポリマー中に屈折率調整剤を供給する方法としては、例えば、塗布、噴霧、付着、浸漬、堆積等の方法が挙げられる。このような供給方法で屈折率調整剤を供給する際、領域ごとの供給量を調整することによって、任意の屈折率分布を形成することができる。なお、屈折率調整剤としては、例えば、特開2006−276735号公報に記載されたものが挙げられる。
また、得られた光導波路1にミラー17を形成するとともにレンズ16を設ける。ミラー17の形成には、例えばダイシング加工、成形型の転写といった機械加工、レーザー加工、電子線加工等が用いられる。
次いで、必要に応じて、クラッド層11の下面およびクラッド層12の上面にそれぞれ金属層18を成膜する。金属層18の成膜方法は、特に限定されないが、例えば、真空蒸着のような物理蒸着法、CVDのような化学蒸着法、めっき法、印刷法等が挙げられる。
また、クラッド層11の下面およびクラッド層12の上面にそれぞれ金属層18を貼り付けるようにしてもよい。この貼り付けには、接着剤や粘着剤、接着シート等を用いることができる。また、クラッド層11の下面およびクラッド層12の上面にそれぞれ金属材料を成膜することにより金属層18を形成するようにしてもよい。
次いで、光導波路1の端部に光コネクター101を取り付ける。これにより、光配線部品10が得られる。
次いで、光導波路1の下面に光電変換部4を接着する。これにより、光モジュール100が得られる。
一方、絶縁性基板51上にLSI501等の電気配線基板用電気素子50を搭載し、マザーボード5を製造する。そして、マザーボード5を覆うように光導波路1を重ねるとともに、光電変換部4の電気コネクター42とマザーボード5の電気コネクター53とを接続する。
以上のようにして光電気混載基板1000が得られる。
<電子機器>
上述したような本発明の光電気混載基板1000は、前述したように、光導波路1のコア部14の最短化および高密度化が図られるとともに、内部の光結合効率の向上が図られるため、光信号の伝送効率が高いものとなる。したがって、本発明の光電気混載基板を備えることにより、高品質の光通信を行い得る信頼性の高い電子機器(本発明の電子機器)が得られる。
本発明の光電気混載基板を備える電子機器としては、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類が挙げられる。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光電気混載基板を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消され、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
また、本発明の光電気混載基板は、コネクター等を介してマザーボード5に実装可能になっているため、必要に応じてマザーボード5から取り外すことが容易に行える。このため、光導波路1やマザーボード5を個別に取り出し、交換や修理を行うことができる。
以上、本発明の光電気混載基板および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、光導波路1は、マザーボード5の全面ではなく、一部分を覆うように重ねられたものであってもよく、さらにはマザーボード5の縁部からはみ出るように重ねられたものであってもよい。
また、光電変換部4が備える光電変換部基板41は、ビルドアップ層を含む多層基板であってもよい。
次に、本発明の実施例について説明する。しかしながら本発明はこれら例のみに限定されない。特に問題の無い限り、位置、数、量、種類などの、変更、追加および省略等を行ってもよい。
1.図5に示す屈折率分布を有する光導波路の製造
まず、図5に示す屈折率分布を有する直線状のコア部を有する光導波路をそれぞれ条件を変えて製造し(実施例1〜18)、また比較のための比較例1、参考例1〜4の光導波路も製造した。また下記に示す3.ではこれら光導波路の評価を行った。
(実施例1)
(1)クラッド層形成用樹脂組成物の製造
ダイセル化学工業(株)製の脂環式エポキシ樹脂:セロキサイド2081 20g、(株)ADEKA製のカチオン重合開始剤:アデカオプトマーSP−170 0.6g、およびメチルイソブチルケトン80gを撹拌混合して、溶液を調製した。
次いで、得られた溶液を、0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して、清浄で無色透明なクラッド層形成用樹脂組成物E1を得た。
(2)感光性樹脂組成物の製造
エポキシ系ポリマーとして新日鐵化学(株)製のフェノキシ樹脂:YP−50S 20g、モノマーとしてダイセル化学工業(株)製のセロキサイド2021P 5g、および重合開始剤として(株)ADEKA製のアデカオプトマーSP−170 0.2gを、メチルイソブチルケトン80g中に投入し、撹拌溶解して、溶液を調製した。
次いで、得られた溶液を、0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明な感光性樹脂組成物F1を得た。
(3)下側クラッド層の作製
クラッド層形成用樹脂組成物E1を、ドクターブレードにより、厚さ25μmのポリイミドフィルム上に均一に塗布した。この後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去した後、UV露光機で全面に紫外線を照射し、塗布した樹脂組成物E1を硬化させた。これにより、厚さ10μmの無色透明な下側クラッド層を得た。なお、紫外線の積算光量は500mJ/cm2とした。
(4)コア層の作製
作製した下側クラッド層上に、感光性樹脂組成物F1を、ドクターブレードにより均一に塗布した。この後、40℃の乾燥機に5分間投入した。溶媒を完全に除去して被膜とした後、得られた被膜上に、ライン、スペースの直線パターンが全面に描かれたフォトマスクを圧着した。そして、フォトマスク上から平行露光機により紫外線を照射した。なお、紫外線の積算光量は1000mJ/cm2とした。
次いで、フォトマスクを取り去り、150℃のオーブンに30分間投入した。オーブンから取り出すと、被膜には鮮明な導波路パターンが現れていることが確認された。コア部の平均幅WCOと、側面クラッド部の平均幅WCLとをそれぞれ表1に示す。また、得られたコア層の厚さは50μm、コア部の本数は8本とした。
(5)上側クラッド層の作製
作製したコア層上に、(3)と同様にしてクラッド層形成用樹脂組成物E1を塗布し、厚さ10μmの無色透明な上側クラッド層を得た。このようにして光導波路を得た。
(6)屈折率分布の評価
そして、得られた光導波路のコア層の横断面について、干渉顕微鏡により、幅方向の屈折率分布Wを取得した。その結果、屈折率分布Wは、複数の低屈折率領域および高屈折率領域を有し、屈折率が連続的に変化したものであった。
(実施例2〜8)
ポリマーの組成、モノマーの組成と含有率、および紫外線の積算光量を、表1に示すように設定するとともに、コア部の平均幅WCOおよび側面クラッド部の平均幅WCLがそれぞれ表1に示す値になるようにフォトマスクのパターンを設定した以外は、それぞれ実施例1と同様にして、実施例2〜8の光導波路を得た。
(実施例9)
(1)(メタ)アクリル系ポリマーの合成
メタクリル酸メチル(MMA)20.0g、ベンジルメタクリレート(BzMA)30.0g、およびメチルイソブチルケトン450gを、セパラブルフラスコに投入した。これらを撹拌混合したのち、窒素ガスで置換して、モノマー溶液を調製した。
一方、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.25gをメチルイソブチルケトン10gに溶解したのち、窒素ガスで置換して、開始剤溶液を調製した。
そして、前記モノマー溶液を80℃に加熱した状態で撹拌しつつ、シリンジを用いて前記開始剤溶液を前記モノマー溶液に添加した。そのまま80℃で1時間撹拌したのちに冷却し、重合体溶液を調製した。その後、5Lのイソプロパノールをビーカー中に準備し、攪拌機により常温下で撹拌しつつ、ビーカー内に前記重合体溶液を滴下した。滴下が完了してからも引き続き30分間撹拌し、その後沈殿したポリマーを取り出し、真空乾燥機にて減圧下60℃で8時間乾燥させた。これにより、アクリル系ポリマーA1を得た。
(2)クラッド層形成用樹脂組成物の製造
互応化学工業(株)製の水性アクリレート樹脂溶液:RD−180 20g、イソプロパノール20g、および重合開始剤として日清紡ケミカル(株)製のカルボジライトV−02−L2 0.4gを、撹拌混合して溶液を調製した。
次いで、得られた溶液を0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して、清浄で無色透明なクラッド層形成用樹脂組成物B1を得た。
(3)感光性樹脂組成物の製造
合成したアクリル系ポリマーA1 20gと、モノマーとしてメタクリル酸シクロヘキシル5gと、重合開始剤としてBASFジャパン(株)製イルガキュア651 0.2gを、メチルイソブチルケトン80g中に投入し、撹拌溶解し、溶液を調製した。
次いで、得られた溶液を0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して、清浄で無色透明な感光性樹脂組成物C1を得た。
(4)下側クラッド層の作製
クラッド層形成用樹脂組成物B1をドクターブレードにより厚さ25μmのポリイミドフィルム上に均一に塗布した後、80℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去した後、さらに150℃のオーブンに10分間投入し、硬化させて、厚さ10μmの無色透明な下側クラッド層を得た。
(5)コア層の作製
作製した下側クラッド層上に、感光性樹脂組成物C1をドクターブレードにより均一に塗布した。この後、40℃の乾燥機に5分間投入した。溶媒を完全に除去して被膜とした後、得られた被膜上に、ライン、スペースの直線パターンが全面に描かれたフォトマスクを圧着した。そして、フォトマスク上から平行露光機により紫外線を照射した。なお、紫外線の積算光量は800mJ/cm2とした。
次いで、フォトマスクを取り去り、150℃のオーブンに30分間投入した。オーブンから取り出すと、被膜には断面が矩形状をなす鮮明な導波路パターンが現れていることが確認された。コア部の平均幅WCOと側面クラッド部の平均幅WCLとをそれぞれ表2に示す。また、得られたコア層の厚さは50μm、コア部の本数は8本とした。
(6)上側クラッド層の作製
作製したコア層上に、(4)と同様にしてクラッド層形成用樹脂組成物B1を塗布し、厚さ10μmの無色透明な上側クラッド層を得た。上記と同様にして光導波路を得た。
(7)屈折率分布の評価
そして、得られた光導波路のコア層の横断面について、干渉顕微鏡により、幅方向の屈折率分布Wを取得した。その結果、屈折率分布Wは、複数の低屈折率領域および高屈折率領域を有し、屈折率が連続的に変化したものであった。
(実施例10〜12)
モノマーの組成と含有率、および紫外線の積算光量を、表2に示すように設定するとともに、コア部の平均幅WCOおよび側面クラッド部の平均幅WCLがそれぞれ表2に示す値になるようにフォトマスクのパターンを設定した以外は、それぞれ実施例9と同様にして、実施例10〜12の光導波路を得た。
(実施例13)
(1)離脱性基を有するポリオレフィン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で満たされたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、及びジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を、500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加えた。このグローブボックスにシリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
次に、100mLバイアルビン中にNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量した。スターラーチップを入れてビンを密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
このNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し、室温で1時間撹拌した。その結果、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに、無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、及びイオン交換水30gを加えて撹拌し、その場で、過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌して、Niの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した。この後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で、水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した。この後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過により、ろ液と分別した。この後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#1を得た。ポリマー#1の分子量分布は、GPC測定により、Mw=10万、Mn=4万であった。また、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
(2)コア層形成用組成物の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これに、メシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2g、及び重合開始剤(光酸発生剤) RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(0.0125g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた。この後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層形成用組成物を得た。なお、この組成物には、モノマーが含まれていない点で、各実施例に記載の感光性樹脂組成物と異なっている。一方、ポリマー#1は、活性放射線の照射により離脱性基が離脱する機能を有しており、いわゆるフォトブリーチング現象が生じるものである。また、前記重合開始剤は、表3中においてPI 2074と表記する。
(3)クラッド層形成用組成物の製造
精製した上記ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位80mol%、及びジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位20mol%にそれぞれ変更したものを、前記ポリマー#1に代えて用いるようにした以外は、コア層形成用組成物と同様にして、クラッド層形成用組成物を得た。
(4)下側クラッド層の作製
クラッド層形成用組成物をドクターブレードにより厚さ25μmのポリイミドフィルム上に均一に塗布した。この後、50℃の乾燥機に10分間投入した。溶媒を完全に除去した後、UV露光機で全面に紫外線を照射し、塗布した組成物を硬化させた。これにより、厚さ10μmの無色透明な下側クラッド層を得た。なお、紫外線の積算光量は500mJ/cm2とした。
(5)コア層の作製
作製した下側クラッド層上に、コア層樹脂組成物をドクターブレードにより均一に塗布した。この後、40℃の乾燥機に5分間投入した。溶媒を完全に除去して被膜とした後、得られた被膜上に、ライン、スペースの直線パターンが全面に描かれたフォトマスクを圧着した。そして、フォトマスク上から平行露光機により紫外線を照射した。なお、紫外線の積算光量は1300mJ/cm2とした。
次いで、フォトマスクを取り去り、150℃のオーブンに30分間投入した。オーブンから取り出すと、被膜には断面が矩形状をなす鮮明な導波路パターンが現れていることが確認された。得られたコア層の厚さは50μmであった。また、コア部の本数は8本とした。
(6)上側クラッド層の作製
作製したコア層上に、(3)と同様にしてクラッド層形成用樹脂組成物E1を塗布し、厚さ10μmの無色透明な上側クラッド層を得た。以上のようにして光導波路を得た。
(7)屈折率分布の評価
そして、得られた光導波路のコア層の横断面について、干渉顕微鏡により幅方向の屈折率分布Wを取得した。その結果、屈折率分布Wは、複数の低屈折率領域および高屈折率領域を有し、屈折率が連続的に変化したものであった。
(実施例14、15)
モノマーの組成と含有率、および紫外線の積算光量を、表3に示すように設定するとともに、コア部の平均幅WCOおよび側面クラッド部の平均幅WCLがそれぞれ表3に示す値になるようにフォトマスクのパターンを設定した以外は、それぞれ実施例13と同様にして光導波路を得た。
(実施例16)
(1)光導波路の製造
実施例13に用いた光導波路形成用組成物を用い、ダイコーターにより、ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上に、多色押出成形(共押出成形)を行った。これにより、コア層形成用組成物を中間層とし、クラッド層形成用組成物を下層および上層とする、3層が押出された、多色成形体を得た。これを55℃の乾燥器に10分間投入し、溶剤を完全に除去した。この後、フォトマスクを圧着して紫外線を1300mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中で150℃、1.5時間の加熱を行った。加熱後、鮮明な導波路パターンが現れており、コア部および側面クラッド部が形成されていることが確認された。その後、得られた光導波路から、長さ10cm分を切り出した。なお、形成された光導波路は、コア部が8本並列に形成されたものである。また、光導波路の全体の厚さを100μmとした。
(2)屈折率分布の評価
そして、得られた光導波路のコア層の横断面について、干渉顕微鏡により幅方向の屈折率分布Wを取得した。その結果、屈折率分布Wは、複数の低屈折率領域および高屈折率領域を有し、屈折率が連続的に変化したものであった。
一方、光導波路の横断面について、そのコア部の幅の中心を上下方向に通過する中心線に沿って干渉顕微鏡により厚さ方向の屈折率分布Tを取得した。その結果、屈折率分布Tは、その中央部に屈折率が連続的に変化している領域と、その両側に、前記領域より屈折率が低く、かつほぼ一定の値の領域を有していた。すなわち、得られた光導波路の厚さ方向の屈折率分布Tは、いわゆるグレーデッドインデックス型になっていた。
(実施例17、18)
モノマーの組成と含有率、および紫外線の積算光量を表3に示すように設定するとともに、コア部の平均幅WCOおよび側面クラッド部の平均幅WCLがそれぞれ表3に示す値になるようにフォトマスクのパターンを設定するようにした以外は、それぞれ実施例16と同様にして、実施例17、18の光導波路を得た。
(比較例1)
コア形成用組成物およびクラッド形成用組成物について、CHOXを添加せず、PI2074の添加量を0.01gとした以外は、実施例13と同様にして、比較例1の光導波路を得た。
なお、得られた光導波路では、コア部の屈折率は一定であり、側面クラッド部の屈折率も一定であり、コア部とクラッド部との屈折率は不連続であった。すなわち、得られた光導波路のコア層の屈折率分布は、いわゆるステップインデックス(SI)型の分布になっていた。
(参考例1、2)
コア部の平均幅WCOおよび側面クラッド部の平均幅WCLがそれぞれ表1に示す値になるようにフォトマスクのパターンを変更するようにした以外は、それぞれ実施例1、2と同様にして、参考例1、2の光導波路を得た。
(参考例3、4)
コア部の平均幅WCOおよび側面クラッド部の平均幅WCLがそれぞれ表2に示す値になるようにフォトマスクのパターンを変更するようにした以外は、それぞれ実施例9、10と同様にして、参考例3、4の光導波路を得た。
以上の各実施例、各比較例および各参考例で得られた光導波路について、それらの製造条件を、表1、2、3に示す。
2.図6に示す屈折率分布を有する光導波路の製造
まず、図6に示す屈折率分布を有する直線状のコア部を有する光導波路を製造し、3.ではその評価を行った。
(実施例19〜37、比較例2および参考例5〜10)
製造条件を表4、5、6に示すように変更するとともに、実施例19〜31および参考例5〜8におけるコア層形成時の乾燥条件を50℃×10分間に、実施例32〜37、比較例2および参考例9、10におけるコア層形成時の乾燥条件を60℃×15分間に変更した以外は、それぞれ実施例1と同様にして光導波路を得た。また、実施例35〜37では、実施例16と同様の共押出成形により多色成形体を得た後、紫外線を照射するようにした。
3.光導波路の評価
3.1 光導波路の屈折率分布
得られた光導波路のコア層の横断面について、その厚さ方向の中心線に沿って干渉顕微鏡により屈折率分布を測定し、コア層の横断面の幅方向の屈折率分布を得た。なお、得られた屈折率分布は、コア部ごとに同様の屈折率分布パターンが繰り返されているので、得られた屈折率分布から一部を切り出し、これを屈折率分布Wとした。また、同様にして屈折率分布Tを得た。
屈折率分布Wのうち、表1、表2および表3において「GI型」とした分布の形状は、図5に示すような、極大値Wmを含む高屈折率領域WHと低屈折率領域WLとが交互に並んだ形状であった。
また、屈折率分布Wのうち、表4、表5および表6において「W型」とした分布の形状は、図6に示すような、4つの極小値と5つの極大値とが交互に並んだ形状であった。このW型の屈折率分布Wから、各極小値Ws1、Ws2、Ws3およびWs4および各極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4およびWm5を求めるとともに、クラッド部における平均屈折率WAを求めた。なお、各実施例および各参考例で得られた光導波路の幅方向の屈折率分布Wは、それぞれ、その全体において屈折率の変化が連続的であった。
また、このW型の屈折率分布Wにおいて、コア部に形成された極大値Wm2、Wm4近傍における屈折率が、平均屈折率WA以上の値を有している部分の幅a[μm]、および、各極小値Ws1、Ws2、Ws3およびWs4近傍における屈折率が、平均屈折率WA未満の値を有している部分の幅b[μm]をそれぞれ測定した。
また、各光導波路において、漸減部における屈折率の最大の変化率は0.008〜0.025の範囲内であった。また、交差部の屈折率の極大値は、いずれも極大値Wmよりも高く、その差は0.003〜0.015の範囲内であった。
以上の測定結果を表7〜13に示す。
なお、比較例1、2で得られた光導波路の幅方向の屈折率分布Wは、ステップインデックス型であった。
3.2 光導波路の伝送損失
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由して、各実施例および各比較例で得られた光導波路に導入し、出射光を200μmφの光ファイバーで受光し、光の強度を測定した。なお、伝送損失の測定にはカットバック法を採用した。そして、光導波路の長手方向を横軸にとり、挿入損失を縦軸にとって測定値をプロットしたところ、測定値は直線上に並んだ。そこで、その直線の傾きから伝送損失を算出した。結果を、下記表14〜19に示す。
3.3 パルス信号の波形の保持性
得られた光導波路に対して、レーザーパルス光源からパルス幅1nsのパルス信号を入射し、出射光のパルス幅を測定した。
そして、測定した出射光のパルス幅について、表14〜16では比較例1で得られた光導波路の測定値を1とし、表17〜19では比較例2で得られた光導波路の測定値を1としたときの相対値をそれぞれ算出し、これを以下の評価基準にしたがって評価した。結果を、下記表14〜19に示す。
<パルス幅の評価基準>
◎:パルス幅の相対値が0.5未満である
○:パルス幅の相対値が0.5以上0.8未満である
△:パルス幅の相対値が0.8以上1未満である
×:パルス幅の相対値が1以上である
表14〜19から明らかなように、各実施例で得られた光導波路では、各比較例で得られた光導波路に比べ、伝送損失およびパルス信号の鈍りがそれぞれ抑えられていることが認められた。
なお、比較例1で使用したフォトブリーチング現象が生じるコア層形成用組成物について、照射光量に応じて屈折率の変調量を調整することができるので、それを利用し、積算光量が徐々に変化するよう設定したフォトマスクを使用して屈折率分布Wを形成することを試みた。得られた光導波路に対して上述したように屈折率分布を評価したところ、高屈折率領域と低屈折率領域とが確認されたが、屈折率の変化は各実施例ほど連続的ではなかった。また、得られた光導波路については、各実施例に比べて伝送損失が大きく、パルス信号の波形の保持性も低かった。
4.交差部を有する光導波路の製造
次いで、上記の各実施例、各比較例および各参考例と同様の条件で、以下のように交差部を有する光導波路を製造した。
(実施例A)
コア層を作製する際に使用するフォトマスクとして交差部を有する光導波路のパターンに対応したものを使用した以外、実施例1と同様にして光導波路を製造することにより、交差部を有する光導波路を製造した。なお、光導波路の製造にあたっては、各交差部における交差角が30°、60°および90°である3種の光導波路をそれぞれ製造した。
(実施例B〜Z、a〜k、比較例A、Bおよび参考例A〜J)
コア層を作製する際に使用するフォトマスクとして交差部を有するコア部のパターンに対応したものを使用した以外、実施例2〜37、比較例1、2および参考例1〜10と同様にして光導波路を製造することにより、それぞれ交差部を有する光導波路を製造した。なお、光導波路の製造にあたっては、各交差部における交差角が30°、60°および90°である3種の光導波路をそれぞれ製造した。
5.交差部を有する光導波路の評価
次いで、得られた交差部を有する光導波路について、両端部間の挿入損失を測定した。算出された交差部における伝送損失を表14〜19に示す。その結果、挿入損失の値は、前述した伝送損失と同様の傾向を示した。すなわち、各実施例で得られた交差部を有する光導波路は、挿入損失が十分に小さかった一方、各比較例で得られた交差部を有する光導波路は、挿入損失が比較的大きかった。そして、3.で測定された伝送損失が小さいものほど、混信する信号光の光量も少ないことが認められた。
また、交差部における伝送損失を算出したところ、各実施例で得られた交差部を有する光導波路は、各比較例で得られた交差部を有する光導波路よりも交差部における伝送損失が小さいことが明らかとなった。なお、交差角度が90°の場合、伝送損失はいずれも0.02dB以下であった。
また、交差部における伝送損失の算出方法は、交差数の異なる試料を複数用意し、それらの挿入損失の比較から交差部1つ当たりの伝送損失を算出する方法とした。
また、測定対象のコア部と交差しているコア部に混信している信号光の光量(以下、「混信光量」という。)を測定した。そして、測定した混信光量について、表14〜16では比較例1で得られた光導波路の測定値を1とし、表17〜19では比較例2で得られた光導波路の測定値を1としたときの相対値をそれぞれ算出し、表14〜19に示した。
その結果、屈折率分布Wを最適化することにより、混信する信号光の光量が低下することが認められた。
以上のことから、屈折率分布が特定の条件を満たす連続的な分布になっているコア部を有する光導波路では、損失や混信を抑制し得ることが明らかとなった。