以下、本発明の光導波路構造体および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づき詳細に説明する。
<第1実施形態:図1〜3>
図1は、本発明の光導波路構造体の第1実施形態を一部透過および切り欠いた状態で示す斜視図、図2は、図1に示す光導波路構造体に含まれるコア層の平面図である。なお、図1では、層の厚さ方向(各図の上下方向)が誇張して描かれている。
図1に示すように、本発明の光導波路構造体1は、下側からクラッド層(下側クラッド層)91、コア層93およびクラッド層(上側クラッド層)92をこの順に積層してなる帯状の光導波路9を備えるものであり、コア層93には、互いに交差する2つのコア部94(第1の線状部および第2の線状部)と、これらのコア部94に隣接するクラッド部95とが形成されている。コア部94は、伝送光の光路を形成する部分であり、クラッド部95は、コア層93に形成されているものの伝送光の光路を形成せず、クラッド層91、92と同様の機能を果たす部分である。
また、コア部94は、クラッド部95に比べて屈折率が高く、また、クラッド層91、92に対しても屈折率が高い。クラッド層91および92は、それぞれ、コア部94の下部および上部に位置するクラッド部を構成するものである。このような構成により、コア部94は、図1に示すように、その外周の全周をクラッド部に囲まれた導光路として機能する。
コア層93の構成材料としては、光(例えば紫外線)の照射により、あるいはさらに加熱することにより屈折率が変化する材料とされる。このような材料の好ましい例としては、ベンゾシクロブテン系ポリマー、ノルボルネン系ポリマー(樹脂)等の環状オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物を主材料とするものが挙げられ、ノルボルネン系ポリマーを含む(主材料とする)ものが特に好ましい。
このような材料で構成されたコア層93は、曲げ等の変形に対する耐性に優れ、特に繰り返し湾曲変形した場合でも、コア部94とクラッド部95との剥離や、コア層93と隣接する層(クラッド層91、92)との層間剥離が生じ難く、コア部94内やクラッド部95内にマイクロクラックが発生することも防止される。その結果、光導波路9の光伝送性能が維持され、耐久性に優れた光導波路9が得られる。
また、コア層93の構成材料には、例えば、酸化防止剤、屈折率調整剤、可塑剤、増粘剤、補強剤、増感剤、レベリング剤、消泡剤、密着助剤および難燃剤等の添加剤が含まれていてもよい。酸化防止剤の添加は、高温安定性の向上、耐候性の向上、光劣化の抑制という効果がある。このような酸化防止剤としては、例えば、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリフェノール系等のフェノール系や、芳香族アミン系のものが挙げられる。また、可塑剤、増粘剤、補強剤の添加により、曲げに対する耐性をさらに増大させることもできる。
前記酸化防止剤に代表される添加剤の含有率(2種以上の場合は合計)は、コア層93の構成材料全体に対し、0.5〜40重量%程度が好ましく、3〜30重量%程度がより好ましい。この量が少なすぎると、添加剤の機能を十分に発揮することができず、量が多すぎると、添加剤の種類や特性によっては、コア部94を伝送する光(伝送光)の透過率の低下、パターニング不良、屈折率不安定等を生じるおそれがある。
コア層93の形成方法としては、塗布法が挙げられる。塗布法としては、コア層形成用組成物(ワニス等)を塗布し硬化(固化)させる方法、硬化性を有するモノマー組成物を塗布し硬化(固化)させる方法が挙げられる。また、塗布法以外の方法、例えば、別途製造されたシート材を接合する方法を採用することもできる。
以上のようにして得られたコア層93に対し、マスクを用いて光(活性放射線)を選択的に照射し、所望の形状のコア部94をパターニングする。
露光に用いる光としては、可視光、紫外光、赤外光、レーザー光等の活性エネルギー光線が挙げられる。また、光を用いるのではなく、X線等の電磁波や、電子線等の粒子線を用いるようにしてもよい。
コア層93において、光が照射された部位は、その屈折率が低下し、光が照射されなかった部位との間で屈折率の差が生じる。例えば、コア層93の光が照射された部位がクラッド部95となり、照射されなかった部位がコア部94となる。クラッド部95の屈折率は、クラッド層91、92の屈折率とほぼ等しい。
また、コア層93に対し光を所定のパターンで照射した後、加熱することにより、コア部94を形成する場合もある。この加熱工程を付加することにより、コア部94とクラッド部95との屈折率の差がより大きくなるので好ましい。なお、この原理等については、後に詳述する。
形成されるコア部94のパターン形状は、図2に示すように、平面視にて、2つの直線状のコア部94(第1の線状部および第2の線状部)が互いに交差した形状をなしている。その結果、2つの直線状のコア部94が交差する箇所に十字状の交差部943が形成される。このような交差部943によれば、同一平面上に存在する2つのコア部94をそれぞれ伝搬する光信号が、互いに混信したり、著しい過剰損失を伴うことなく、比較的自由に交錯させることができる。その結果、コア部94のパターン形状の自由度が飛躍的に高まり、コア層93中に形成可能なコア部94の集積度を高めることができる。すなわち、一方のコア部94を横断するように他方のコア部94を形成することができるので、コア層93のスペースを有効利用することができる。
本発明では、コア層93に対して、光(活性放射線)を選択的に照射しさえすれば、所望の形状のコア部94を容易に形成可能であることから、同一平面上に存在する2つのコア部94が交差してなる交差部943の形状も正確に制御することが可能である。このため、寸法精度が高く、混信や過剰損失を確実に抑制することのできる光導波路構造体1が得られる。
また、交差部943は、前述したように、1層のコア層93内で2つのコア部94を互いに交差させるものであるため、立体交差等と異なり、複雑な製造プロセスを伴わなくとも簡単に製造可能である。
なお、交差部943における過剰損失は、2つのコア部94の交差角をできるだけ大きくすることにより低減させることができる。図2では、交差角が90°の場合を示しているが、交差角はそれ以外の角度であってもよく、具体的には10〜90°であるのが好ましく、30〜90°であるのがより好ましい。
また、交差部943において交差するコア部94の数は、2つに限らず、3つ以上であってもよい。
ところで、交差部943から放射状に延伸する各コア部94のうち、隣り合う2つのコア部94とクラッド部95との境界線945は、交差部943において互いに直交している。その結果、交差部943には、境界線945が直角に折れ曲がった角部(交点)944が4つ形成されることとなる。
図3は、本発明の光導波路構造体の第1実施形態に含まれるコア層の変形例を示す平面図である。なお、図3に示す光導波路構造体1は、下記の事項が異なる以外、図2に示す光導波路構造体1と同様である。
図3に示す光導波路構造体1(光導波路9)では、図2に示す4つの角部944にそれぞれ面取り加工が施され、面取り部946が形成されている。このような面取り部946を設けることにより、交差部943における過剰損失の低減が図られる。これは、交差部943に入射した伝送光が角部944に当たって意図しない方向に反射したり、クラッド部95に漏出したりすることが抑制されるためであると考えられる。したがって、面取り部946を設けることにより、光導波路構造体1における混信を抑制しつつ、光伝送効率を高めることができる。
なお、面取り部946の大きさは、コア部94の幅や比屈折率差等に応じて適宜設定されるが、角部944の先端と面取り部946との離間距離aは、各面取り部946に隣接するコア部94の平均幅の0.1〜0.8倍程度であるのが好ましく、0.2〜0.6倍程度であるのがより好ましい。角部944の先端と面取り部946との離間距離を前記範囲内とすることにより、面取り部946の長さがコア部94の幅に対して最適化されることとなり、伝送光が角部944に当たる確率やクラッド部95に漏出する確率を低下させつつ、交差部943における混信を確実に防止することができる。
また、面取り部946の形状は、図3に示すように、角部944を切り取るような直線状であってもよいが、交差部943の中心に向かって突出する、あるいは、中心とは反対側に向かって突出する湾曲形状であってもよく、また、この湾曲形状に類似した多角形の形状であってもよい。
コア部94のパターン形状は、上記の交差部943以外に、コア部94が湾曲した湾曲部を有する形状、コア部94が分岐した分岐部、複数のコア部94が1つのコア部94に合流した合流部を有する形状、あるいはこれらのうちの2以上を組み合わせた形状等、いかなる形状を有するものでもよい。なお、これらのパターンの形成においては、光の照射パターンの設定により、いかなるパターン形状をも容易に実現することができる点が、本発明の特徴である。
光導波路9の各部の構成材料およびコア部94の形成方法等については、後に詳述する。
<第2実施形態:図4、5>
図4、5には、本発明の光導波路構造体1の第2実施形態が示されている。以下、この光導波路構造体1について説明するが、前記第1実施形態と同様の事項についてはその説明を省略し、相違点を中心に説明する。
図4は、本発明の光導波路構造体の第2実施形態を示す平面図、図5は、図4のA−A線断面図である。
本実施形態の光導波路構造体1は、光導波路9に別の構成要素が追加されている点が前記と異なり、それ以外は同様である。
すなわち、図4に示す光導波路構造体1は、交差部943を有する光導波路9の入射端および出射端に設けられた発光素子3および受光素子4を備えている。さらに、光導波路構造体1は、図5に示すように、光導波路9の下面に設けられた基板2と、基板2の下面に設けられた導体層5とを備えている。また、導体層5には、所定のパターニングが施されることにより電気配線が形成されており、基板2と導体層5とで配線基板を構成している。
光導波路9には、平面視にて、並列する2つのコア部94a、94bが形成されている。この2つのコア部94a、94bは、それぞれ、途中で湾曲し、その延伸方向が180°変化している。光導波路9は、このような湾曲部947を2つ有しており、延伸方向が2回変化することにより、つづら折りの形状をなしている。
また、湾曲部947では、コア部94aとコア部94bとが互いに交差している。このように交差部943が設けられることにより、コア部94aとコア部94bは、それぞれ湾曲部947における曲率半径を等しくすることができる。これにより、両者の光伝送効率も等しくなり、光導波路9のチャンネル間における品質バラツキを抑制することができる。
一方、仮に交差部943が設けられていない場合、湾曲部の内側に位置するコア部は、外側に位置するコア部に比べて、より短い曲率半径での湾曲を強いられることとなる。このため、湾曲部における過剰損失が著しく増大し、光伝送効率の低下を招くこととなる。そればかりか、外側に位置するコア部と内側に位置するコア部との間で、光伝送効率の著しい差を生じるため、チャンネル間の光伝送効率のバラツキが大きくなる。さらには、内側に位置するコア部について、光伝送効率の低下を抑えるべく曲率半径を緩和した場合には、それに伴って湾曲部の面積も拡大せざるを得ず、結果的には光導波路の小型化を阻害することとなる。
以上のような理由から、交差部943を有する光導波路9は、光伝送効率の低下およびバラツキを抑えつつ、小型化することが可能である。なお、本実施形態に係る交差部943の構成は、前記第1実施形態に係る交差部943の構成と同様である。
また、コア部94a、94bの途中には、光回路の構成要素となり得る光部品948が設けられる。このため、本実施形態によれば、小さな面積の光導波路9であっても、複数の光部品948を高密度に搭載することができる。光部品948としては、例えば、光合分波器、光分岐結合器、光フィルター、回折格子、プリズム等が挙げられる。
基板2は、可撓性および絶縁性を有するフレキシブル基板である。
基板2の構成材料としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、トリアゾール樹脂、ポリシアヌレート樹脂、ポリイソシアヌレート樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンザオキサゾール樹脂、ノルボルネン樹脂等が挙げられる。また、これらの材料は、単独で使用してもよく、複数を混合して使用してもよい。
また、基板2は、複数の層の積層体であってもよい。例えば、組成(種類)が同じ樹脂材料からなる第1の層と第2の層とを積層したもの、それぞれ組成(種類)が異なる樹脂材料からなる第1の層と第2の層とを積層したものが挙げられる。なお、積層体における層構成は、これに限定されないことは言うまでもない。
基板2の厚さは、特に限定されないが、通常、5〜50μm程度であるのが好ましく、10〜40μm程度であるのがより好ましい。基板2の厚さが前記範囲内であれば、光導波路構造体1は十分な可撓性を有するものとなる。
基板2が有する可撓性は、例えば人の手で容易に屈曲させることができる程度のものである。具体的には、基板2のヤング率(引張弾性率)は、一般的な室温環境下(20〜25℃前後)で1〜20GPa程度であるのが好ましく、2〜12GPa程度であるのがより好ましい。
基板2の下面に接合された導体層5は、それぞれ、所定の形状にパターニングされて、所望の電気配線および回路を構成している。導体層5の構成材料としては、例えば、銅、銅系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金等の各種金属材料が挙げられる。導体層5の厚さは、特に限定されないが、通常、3〜120μm程度が好ましく、5〜70μm程度がより好ましい。
導体層5は、例えば、金属箔の接合(接着)、金属メッキ、蒸着、スパッタリング等の方法により形成されたものである。導体層5へのパターニングは、例えばエッチング、印刷、マスキング等の方法を用いることができる。
なお、基板2と導体層5とで構成される配線基板としては、例えば、ポリエステル銅張フィルム基板、ポリイミド銅張フィルム基板、アラミド銅張フィルム基板のような銅張フィルム基板、ガラス布・エポキシ銅張積層板のようなガラス基材銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板のようなコンポジット銅張積層板等が挙げられる。
一方、基板2には、貫通孔21が形成されており、貫通孔21内には導電材料(例えば、銅、銅系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金等の各種金属材料)が充填され、導体ポスト22が設けられている。この導体ポスト22は、導体層5と基板2の上面側とを電気的に接続している。
なお、導体ポスト22は、貫通孔21の内面に形成された導体層で構成されたものでもよい。この場合、導体ポスト22は、貫通孔21の内面にメッキ法等の各種成膜法により形成され、貫通孔21内を充填するものでなくてもよい。
発光素子3は、基台30と、基台30の表面に固定された発光部31と、発光部31の電極パッドと基台30の電極パッドとを接続する金属ワイヤ32と、基台30の下面に設けられ、発光部31を外部回路と接続するための外部電極33とを有している。また、発光部31および金属ワイヤ32は、基台30の表面に半球状に盛られた樹脂モールド34で覆われている。
外部電極33に通電がなされると、発光部31が発光する。
発光素子3は、外部電極33が導体ポスト22に接合(電気的に接続)されるようにして基板2上に搭載されている。
一方、受光素子4は、基台40と、基台40の表面に固定された受光部41と、受光部41の電極パッドと基台40の電極パッドとを接続する金属ワイヤ42と、基台40の下面に設けられ、受光部41を外部回路と接続するための外部電極43とを有している。また、受光部41および金属ワイヤ42は、基台40の表面に半球状に盛られた樹脂モールド44で覆われている。
受光部41が光信号を受光すると、電気信号に変換され、外部電極43から出力される。
受光素子4は、外部電極43が導体ポスト22に接合(電気的に接続)されるようにして基板2上に搭載されている。
なお、発光素子3における発光部31および受光素子4における受光部41は、それぞれ1つの発光点または1つの受光点で構成されているものの他、発光点または受光点が複数個集合したものでもよい。発光点または受光点が複数個集合したものとしては、例えば、発光点または受光点が列状(例えば発光点または受光点が1×4個、1×12個)または行列状(例えば発光点または受光点がn×m個:n、mは2以上の整数)に配置されたものや、複数の発光点または受光点がランダム(不規則)に配置されたもの等が挙げられる。
樹脂モールド34は、発光素子3の基台30の右側において、発光部31等を封止している。これにより、発光部31が外部に露出することなく封止された構造となるため、汚れ、損傷、酸化等から発光部31が保護される。その結果、発光素子3の信頼性が向上する。
また、樹脂モールド44は、受光素子4の基台40の左側において、受光部41等を封止している。これにより、受光部41が外部に露出することなく封止された構造となるため、汚れ、損傷、酸化等から受光部41が保護される。その結果、受光素子4の信頼性が向上する。
また、樹脂モールド34、44の構成材料としては、絶縁性を有する樹脂材料が好ましく、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノルボルネン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
光導波路9は、発光部31の発光点と、受光部41の受光点とを結ぶように、発光素子3と受光素子4との間に設けられている。これにより、発光点と受光点とが光導波路9により光学的に接続されている。
光導波路9のコア部94は、平面視で(図4において)各発光点や各受光点と重なるようなパターン形状で形成されている。
光導波路9の両端部(発光素子3および受光素子4との接続部)は、発光素子3に設けられた樹脂モールド34および受光素子4に設けられた樹脂モールド44で覆われており、発光素子3および受光素子4に固定されている。これにより、光導波路9、発光素子3および受光素子4は、一体化され、1つの部品(光配線)として取り扱うことが可能になる。
なお、図4に示す光導波路9は、2つのコア部94を有するものであるが、1つの光導波路9に形成されるコア部94の数は、例えば、1つの発光部31に設けられる発光点の個数や、1つの受光部41に設けられる受光点の数に応じて設定され、特に限定されるものではない。
本実施形態の光導波路構造体1では、導体層5および導体ポスト22を介して発光素子3の外部電極33へ通電がなされると、発光部31の発光点が発光し、図4および図5中右方へ向かって発せられた光は、光導波路9のコア部94に入る。光導波路9では、コア部94とクラッド部(クラッド層91、92および側方のクラッド部95)との界面で反射を繰り返しながら、コア部94内をその長手方向に沿って進む。そして、受光部41の受光点に光が到達すると、受光部41において光信号が電気信号へと変換され、外部電極43から出力される。
このような光導波路構造体1は、後に詳述するが、光導波路9が高分子材料で構成されているため可撓性を有し、かつ、コア部94とクラッド部95との屈折率差が大きいので、光導波路9が折り曲げられたときでも、十分な伝送効率を有するものとなる。
<第3実施形態:図6>
図6には、本発明の光導波路構造体1の第3実施形態が示されている。以下、この光導波路構造体1について説明するが、前記第2実施形態と同様の事項についてはその説明を省略し、相違点を中心に説明する。
図6は、第3実施形態を示す断面図である。
本実施形態の光導波路構造体1は、基板2と導体層5とで構成される配線基板の構成が前記と異なり、それ以外は同様である。
すなわち、図6に示す配線基板は、光導波路9の長手方向の両端部の上面にそれぞれ積層された基板2と、各基板2の上面に設けられた導体層5とを有している。
図6の左側の基板2には、表面実装型の発光素子3と、発光素子3の発光を駆動する発光用IC(発光用電気素子)35とが搭載されている。発光素子3と発光用IC35との間は、導体層5に形成された電気配線を介して電気的に接続されている。これにより、発光素子3の発光を発光用IC35により制御することができる。すなわち、左側の基板2には、発光素子3と発光用IC35とを有する発光回路300が構築されている。
一方、図6の右側の基板2には、表面実装型の受光素子4と、受光素子4により受光した信号を増幅する受光用IC(受光用電気素子)45とが搭載されている。受光素子4と受光用IC45との間は、導体層5に形成された電気配線を介して電気的に接続されている。これにより、受光素子4で受光し、電気信号に変換した後、この電気信号が受光用IC45に入力されて増幅される。すなわち、右側の基板2には、受光素子4と受光用IC45とを有する受光回路400が構築されている。
また、光導波路9のうち、発光素子3の発光部31の直下に対応する位置には、光路変換部971が形成されている。一方、光導波路9のうち、受光素子4の受光部41の直下に対応する位置には、光路変換部972が形成されている。
各光路変換部971、972は、光導波路9の一部を除去することにより、除去した部分の内面の一部が光導波路9のコア部94の軸線に対してほぼ45°傾斜する傾斜面を有するように形成される。この傾斜面は、発光部31からの光をコア部94に導くよう90°の角度で反射したり、コア部94を伝搬してきた光を受光部41に導くように90°の角度で反射したりする反射面として機能する。
そして、発光部31と受光部41との間を、光路変換部971、コア部94および光路変換部972により光学的に接続することができる。このようにして、発光回路300と受光回路400との間で光を授受することで、光通信を行うことができる。
なお、基板2の厚さが薄い場合または基板2が透光性を有している場合には、図6のように基板2を透過するようにして発光素子3や受光素子4と光導波路9とを光学的に接続することができるが、必要に応じて、基板2を透過する光の光路に沿って貫通孔を形成するようにしてもよい。
また、反射面には、必要に応じて金属膜等からなる反射膜を設けるようにしてもよい。さらには、除去した部分にコア部94よりも低屈折率の材料を充填するようにしてもよい。
なお、図6では、光導波路9の両端部にそれぞれ基板2を積層しているが、この基板2の大きさは、光導波路9の全体にわたって積層される程度の大きさであってもよい。この場合、基板2の長手方向の全体にわたって導体層5を設け、この導体層5中に電気配線を形成することで、上述した光通信と並行して電気通信も行うことができる。これにより、光導波路構造体1の回路設計の自由度が飛躍的に高まり、回路の集積度も高めることができる。併せて、電気通信用の構造体を別途用意する必要がなくなるという利点もある。
<第4実施形態:図7>
図7には、本発明の光導波路構造体1の第4実施形態が示されている。以下、この光導波路構造体1について説明するが、前記第1実施形態と同様の事項についてはその説明を省略し、相違点を中心に説明する。
図7は、第4実施形態が有する光導波路のコア層の一部を示す平面図である。
本実施形態の光導波路構造体1は、光導波路9の構成が前記と異なり、それ以外は同様である。
すなわち、図7に示す光導波路構造体1は、図示しない交差部943に加え、コア部94の途中に設けられ、コア部94を2つに分岐する分岐部949を備えている。このような分岐部949を備えることにより、光導波路構造体1は、コア部94を伝搬する伝送光を複数のチャンネルに分岐させ、複数の接続先との間で光通信を行うことを可能にする。
分岐部949は、平面視にて、Y字状をなしている。図7において分岐部949より左側には、1つのコア部94cが伸びており、一方、分岐部949より右側には、2つのコア部94dがそれぞれ異なる方向に伸びている。コア部94cを右側に向かって伝搬してきた伝送光は、分岐部949において、その形状に応じた分岐割合で分割され、それぞれ2つのコア部94dを伝搬することとなる。
分岐部949における分岐割合を決定するのは、2つのコア部94dの間に位置するクラッド部95の左側端部951の位置や形状である。図7に示すように、左側端部951の位置が2つのコア部94dの中間に位置していれば、分岐割合はそれぞれ半分になる。一方、左側端部951が一方のコア部94d側に寄っている場合は、その分、一方のコア部94d側に分岐する伝送光の光量が減少し、分岐割合が変化する。
クラッド部95の左側端部951は、2つのコア部94dとクラッド部95との境界線の交点であるが、この交点において各境界線がなす角度をαとしたとき、角度αは0.05〜10°程度であるのが好ましく、0.1〜5°程度であるのがより好ましい。角度αを前記範囲内とすることにより、分岐部949における過剰損失の増大を防止しつつ、伝送光を確実に分岐させることができる。
上述したように、本発明では、コア層93に対して、光(活性放射線)を選択的に照射しさえすれば、所望の形状のコア部94を容易に形成可能であることから、分岐部949の形状も正確に制御することが可能である。このため、目的とする分岐割合を有する寸法精度の高い光導波路構造体1が得られる。
図8は、本発明の光導波路構造体の第4実施形態に含まれるコア層の変形例を示す平面図である。なお、図8に示す光導波路構造体1は、下記の事項が異なる以外、図7に示す光導波路構造体1と同様である。
図8に示す光導波路構造体1(光導波路9)は、分岐部949のコア部94中に島状に設けられた島状体950を1つ備えている。コア部94cを右側に向かって伝搬してきた伝送光は、島状体950により分岐され、さらに、島状体950により分岐されなかった伝送光は、クラッド部95の左側端部951により分岐される。これにより、図7に示す光導波路構造体1に比べて、分岐割合のバラツキが抑制されるとともに、目的とする分岐割合をより確実に実現することができる。
島状体950は、コア部94cの屈折率とは異なる屈折率の材料で構成される。分岐部949に設けられる島状体950に対しては、比較的大きな角度で伝送光が入射することになるため、伝送光は島状体950内に入射するとともに屈折する。その結果、島状体950により出射方向が変更されることとなる。この現象を利用することで、分岐部949における伝送光の分岐を、より確実に行うことができる。
なお、島状体950の屈折率がコア部94cの屈折率より低い場合と高い場合とで、島状体950における光の屈折方向が異なるため、島状体950の屈折率に応じて、島状体950の形状や配置等を適宜設定すればよい。
図8に示す島状体950の平面視形状は三角形であるが、この形状は特に限定されず、真円、楕円、長円を含む円形、菱形、平行四辺形を含む四角形、五角形以上の多角形、その他の任意の形状であってもよい。これらの形状であれば、伝送光の進行方向が比較的単純化されるので、島状体950の設計が容易になる。
図9は、本発明の光導波路構造体の第4実施形態に含まれるコア層の変形例を示す平面図である。なお、図9に示す光導波路構造体1は、下記の事項が異なる以外、図8に示す光導波路構造体1と同様である。
図9に示す光導波路構造体1(光導波路9)は、島状体950を複数個備えている。複数個の島状体950は、コア部94cの光軸(伝送光の進行方向)の延長線上に一列に整列するよう配置されている。このような構成であれば、図8に示す光導波路構造体1に比べて、分岐割合のバラツキがさらに抑制されることとなる。
なお、複数個の島状体950は、互いに連結していても、互いに分離していてもよい。
また、複数個の島状体950は、同じ形状であってもよく、互いに異なる形状であってもよい。さらに、島状体950の大きさについても、同じであっても、互いに異なっていてもよい。
以上、第1〜第4実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない限り、他の構成のものでもよい。また、本発明は、第1〜第4実施形態のうちの任意の2以上の実施形態が備える構成を組み合わせたものでもよい。
上述したような本発明の光導波路構造体では、同一平面上に存在する2つのコア部94を、互いに混信させたり、著しい過剰損失を生じさせることなく、交錯させることができるので、コア部94のパターン形状の自由度が飛躍的に高まる。その結果、コア層93に形成可能なコア部94の集積度を高めることができ、光導波路構造体1の高集積化を図ることができる。
また、本発明の光導波路構造体を備えることにより、複数の地点間で高品質の光通信を行うことができるため、信頼性の高い電子機器(本発明の電子機器)が得られる。
なお、本発明の光導波路構造体を備える電子機器としては、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類が挙げられる。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光導波路構造体を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消されるため、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
また、光導波路構造体の高集積化に伴い、電子機器の小型化を図ることもできる。
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、基板内の集積度をさらに高めて小型化が図られるとともに、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
<光導波路の製造方法>
次に、前記各実施形態における、光導波路9の製造方法および各部の構成材料等について説明するが、特にコア部94の形成方法について詳細に説明する。
まず、コア部94の形成方法の説明に先立って、コア部94の形成に用いられる感光性樹脂組成物について説明する。
(感光性樹脂組成物)
本実施形態において用いる感光性樹脂組成物は、
(A)環状オレフィン樹脂と、
(B)(A)とは屈折率が異なり、かつ、環状エーテル基を有するモノマーおよび環状エーテル基を有するオリゴマーのうち少なくともいずれか一方と、
(C)光酸発生剤と、
を備える。
なかでも、光の伝搬損失の発生を確実に抑制するという観点から、
側鎖に(C)光酸発生剤から発生する酸により脱離する脱離性基を有する環状オレフィン樹脂(A)と、
下記式(100)のモノマーとを含むことが好ましい。
このような感光性樹脂組成物は、フィルム状に成形されて光導波路形成用フィルムとされ、さらに、屈折率が異なる領域を含むフィルム、例えば、光導波路フィルムとして使用される。
すなわち、このような感光性樹脂組成物を使用することで、光の伝搬損失の発生が抑制された光導波路フィルム等を提供することができる。なかでも、湾曲した光導波路を形成した場合において、光の伝搬損失の発生を顕著に抑制することができる。
さらに、このような光導波路フィルムを使用した光配線、前記光配線と、電気回路とを備える光電気混載基板を提供することができる。このような光配線および光電気混載基板によれば、従来の電気配線で問題となっていたEMI(電磁波障害)の改善が可能となり、従来よりも信号伝達速度を大幅に向上することができる。
また、光導波路フィルムを使用した電子機器も提供できる。光導波路フィルムを用いることにより、省スペース化が図られるため、電子機器の小型化に寄与する。
このような電子機器としては、具体的には、コンピューター、サーバー、携帯電話、ゲーム機器、メモリーテスター、外観検査ロボット等を挙げることができる。
以下、感光性樹脂組成物の成分について順次詳述する。
((A)環状オレフィン樹脂)
成分(A)の環状オレフィン樹脂は、感光性樹脂組成物のフィルム成形性を確保するために添加されるものであり、ベースポリマーとなるものである。
ここで、環状オレフィン樹脂は、無置換のものであってもよいし、水素が他の基により置換されたものであってもよい。
環状オレフィン樹脂としては、例えばノルボルネン系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂等が挙げられる。
なかでも、耐熱性、透明性等の観点からノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。
ノルボルネン系樹脂としては、例えば、
(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、
(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、
(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、
(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、
(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、
(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
これらのノルボルネン系樹脂は、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
これらの中でも、ノルボルネン系樹脂としては、付加(共)重合体が好ましい。付加(共)重合体は、透明性、耐熱性および可撓性に富むことからも好ましい。たとえば、感光性樹脂組成物によりフィルムを形成した後、電気部品等を、半田を介して実装することがある。このような場合において、高い耐熱性、すなわち、耐リフロー性を有することが必要となるため、付加(共)重合体が好ましい。また、感光性樹脂組成物によりフィルムを形成し、製品に組み込んだ際に、たとえば、80℃程度の環境下にて使用される場合がある。このような場合においても、耐熱性を確保するという観点から、付加(共)重合体が好ましい。
なかでも、ノルボルネン系樹脂は、重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位や、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。
重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位としては、エポキシ基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、(メタ)アクリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、および、アルコキシシリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位がのうちの少なくとも1種が好適である。これらの重合性基は、各種重合性基の中でも、反応性が高いことから好ましい。
また、このような重合性基を含むノルボルネンの繰り返し単位を、2種以上含むものを用いれば、可撓性と耐熱性の両立を図ることができる。
一方、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、アリール基に由来する極めて高い疎水性によって、吸水による寸法変化等をより確実に防止することができる。
さらに、ノルボルネン系ポリマーは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。なお、アルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系ポリマーは、柔軟性が高くなるため、高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
また、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、特定の波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることからも好ましい。
このようなことから、ノルボルネン系樹脂としては、以下の式(1)〜(4)、(8)〜(10)で表されるものが好適である。
(式(1)中、R
1は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、aは、0〜3の整数を表し、bは、1〜3の整数を表し、p
1/q
1が20以下である。)
式(1)のノルボルネン系樹脂は、以下のようにして製造することができる。
R1を有するノルボルネンと、側鎖にエポキシ基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物(A)を触媒として用いて溶液重合させることで(1)を得る。
なお、側鎖にエポキシ基を有するノルボルネンの製造方法は、たとえば、(i)(ii)の通りである。
(i)ノルボルネンメタノール(NB−CH2−OH)の合成
DCPD(ジシクロペンタジエン)のクラッキングにより生成したCPD(シクロペンタジエン)とαオレフィン(CH2=CH-CH2-OH)を高温高圧下で反応させる。
(ii)エポキシノルボルネンの合成
ノルボルネンメタノールとエピクロルヒドリンとの反応により生成する。
なお、式(1)において、bが2もしくは3の場合には、エピクロルヒドリンのメチレン基がエチレン基、プロピレン基等になったものを使用する。
式(1)で表されるノルボルネン系樹脂の中でも、可撓性と耐熱性の両立を図ることが可能との観点から、特に、R1が炭素数4〜10のアルキル基であり、aおよびbがそれぞれ1である化合物、例えば、ブチルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
(式(2)中、R
2は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
3は、水素原子またはメチル基を表し、cは、0〜3の整数を表し、p
2/q
2が20以下である。)
式(2)のノルボルネン系樹脂は、R2を有するノルボルネンと、側鎖にアクリルおよびメタクリル基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、上述したNi化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
なお、式(2)で表されるノルボルネン系ポリマーの中でも、可撓性と耐熱性との両立の観点から、特に、R2が炭素数4〜10のアルキル基であり、cが1である化合物、例えば、ブチルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、デシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー等が好ましい。
(式(3)中、R
4は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、各X
3は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、dは、0〜3の整数を表し、p
3/q
3が20以下である。)
式(3)の樹脂は、R4を有するノルボルネンと、側鎖にアルコキシシリル基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、上述したNi化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
なお、式(3)で表されるノルボルネン系ポリマーの中でも、特に、R4が炭素数4〜10のアルキル基であり、dが1または2、X3がメチル基またはエチル基である化合物、例えば、ブチルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ブチルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ブチルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
(式中、R
5は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、A
1およびA
2は、それぞれ独立して、下記式(5)〜(7)で表される置換基を表すが、同時に同一の置換基であることはない。また、p
4/q
4+rが20以下である。)
R5を有するノルボルネンと、側鎖にA1およびA2を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで(4)を得る。
(式(5)中、eは、0〜3の整数を表し、fは、1〜3の整数を表す。)
(式(6)中、R
6は、水素原子またはメチル基を表し、gは、0〜3の整数を表す。)
(式(7)中、X
4は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、hは、0〜3の整数を表す。)
なお、式(4)で表されるノルボルネン系ポリマーとしては、例えば、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー、ブチルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、メチルグリシジルエーテルノルボルネンとのターポリマー、ブチルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、メチルグリシジルエーテルノルボルネン、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー等が挙げられる。
(式(8)中、R
7は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
8は、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、Arは、アリール基を表し、X
1は、酸素原子またはメチレン基を表し、X
2は、炭素原子またはシリコン原子を表し、iは、0〜3の整数を表し、jは、1〜3の整数を表し、p
5/q
5が20以下である。)
R7を有するノルボルネンと、側鎖に-(CH2)-X1-X2(R8)3-j(Ar)jを含むノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物を触媒に用いて溶液重合させることで(8)を得る。
なお、式(8)で表されるノルボルネン系ポリマーの中でも、X1が酸素原子、X2がシリコン原子、Arがフェニル基であるものが好ましい。
さらには、可撓性、耐熱性および屈折率制御の観点から特に、R7が炭素数4〜10のアルキル基であり、X1が酸素原子、X2がシリコン原子、Arがフェニル基、R8がメチル基、iが1、jが2である化合物、例えば、ブチルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー等が好ましい。
具体的には、以下のようなノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。
(式(9)におけるR
7、p
5、q
5、iは、式(8)と同じである。)
また、可撓性と耐熱性および屈折率制御の観点から、式(8)において、R7が炭素数4〜10のアルキル基であり、X1がメチレン基、X2が炭素原子、Arがフェニル基、R8が水素原子、iが0、jが1である化合物、例えば、ブチルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー等であってもよい。
さらに、ノルボルネン系樹脂として、次のようなものを使用してもよい。
(式(10)において、R
10は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
11は、アリール基を示し、kは0以上、4以下である。p
6/q
6は20以下である。)
また、p1/q1〜p3/q3、p5/q5、p6/q6またはp4/q4+rは、20以下であればよいが、15以下であるのが好ましく、0.1〜10程度がより好ましい。これにより、複数種のノルボルネンの繰り返し単位を含む効果が如何なく発揮される。
以上のようなノルボルネン系樹脂は、脱離性基を有するものであることが好ましい。ここで、脱離性基とは、酸の作用により離脱するものである。
具体的には、分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが好ましい。かかる酸離脱性基は、カチオンの作用により比較的容易に離脱する。
このうち、離脱により樹脂の屈折率に低下を生じさせる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
例えば、式(8)で表されるノルボルネン系ポリマーの中で、X1が酸素原子、X2がシリコン原子、Arがフェニル基であるものが脱離性基を有するものとなる。
また、式(3)においては、アルコキシシリル基のSi−O−X3の部分で脱離する場合がある。
例えば、式(9)のノルボルネン系樹脂を使用した場合、光酸発生剤(PAGと表記)から発生した酸により、以下のように反応が進むと推測される。なお、ここでは、脱離性基の部分のみを示し、また、i=1の場合で説明している。
さらに、式(9)の構造に加えて、側鎖にエポキシ基を有するものであってもよい。このようなものを使用することで密着性に優れたフィルムが形成可能という効果がある。
具体例として以下のようなものとなる。
(式(31)において、p
7/q
7+r
2は、20以下である。)
式(31)で示される化合物は、たとえば、ヘキシルノルボルネンと、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(側鎖に-CH2-O-Si(CH3)(Ph)2を含むノルボルネン)およびエポキシノルボルネンをトルエンに溶かし、Ni化合物を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
((B)環状エーテル基を有するモノマー、環状エーテル基を有するオリゴマー)
次に、(B)の成分について説明する。
成分(B)は、環状エーテル基を有するモノマーおよび環状エーテル基を有するオリゴマーのうちの少なくとも一方である。この成分(B)は、成分(A)の樹脂と屈折率が異なり、かつ、成分(A)の樹脂と相溶性のあるものであればよい。成分(B)と、成分(A)の樹脂との屈折率差は、0.01以上であることが好ましい。
なお、成分(B)の屈折率は、成分(A)の樹脂よりも高いものであってもよいが、成分(B)は、成分(A)の樹脂よりも屈折率が低いことが好ましい。
成分(B)の環状エーテル基を有するモノマー、環状エーテル基を有するオリゴマーは、酸の存在下において開環により重合するものである。モノマー、オリゴマーの拡散性を考慮すると、このモノマーの分子量(重量平均分子量)、オリゴマーの分子量(重量平均分子量)は、それぞれ100以上、400以下であることが好ましい。
成分(B)は、たとえば、オキセタニル基あるいは、エポキシ基を有する。このような環状エーテル基は、酸により開環しやすいため、好ましい。
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーとしては、下記式(11)〜(20)の群から選ばれるものが好ましい。これらを使用することで波長850nm近傍での透明性に優れ、可撓性と耐熱性の両立が可能という利点がある。また、これらを単独でも混合して用いても差し支えない。
以上のようなモノマーおよびオリゴマーのなかでも、成分(A)の樹脂との屈折率差を確保する観点から式(13)、(15)、(16)、(17)、(20)で表される化合物を使用することが好ましい。
さらには、成分(A)の樹脂との屈折率差がある点、分子量が小さく、モノマーの運動性が高い点、モノマーが容易に揮発しない点を考慮すると、式(20)、式(15)で表される化合物を使用することが特に好ましい。
また、オキセタニル基を有する化合物としては、以下の式(32)、式(33)で表される化合物を使用することができる。式(32)で表される化合物としては、東亞合成製の商品名TESOX等、式(33)で表される化合物としては、東亞合成製の商品名OX−SQ等を使用することができる。
また、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとしては、たとえば、以下のようなものがあげられる。このエポキシ基を有するモノマー、オリゴマーは、酸の存在下において開環により重合するものである。
エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとしては、以下の式(34)〜(39)で表されるものを使用することができる。なかでも、エポキシ環のひずみエネルギーが大きく反応性に優れるという観点から式(36)〜(39)で表される脂環式エポキシモノマーを使用することが好ましい。
なお、式(34)で表される化合物は、エポキシノルボルネンであり、このような化合物としては、たとえば、プロメラス社製 EpNBを使用することができる。式(35)で表される化合物は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり、この化合物としては、たとえば、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製 Z−6040を使用することができる。また、式(36)で表される化合物は、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランであり、この化合物としては、たとえば、東京化成製 E0327を使用することができる。
さらに、式(37)で表される化合物は、3、4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3、’4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートであり、この化合物としては、たとえば、ダイセル化学社製 セロキサイド2021Pを使用することができる。また、式(38)で表される化合物は、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサンであり、この化合物としては、たとえば、ダイセル化学社製 セロキサイド2000を使用することができる。
さらに、式(39)で表される化合物は、1,2:8,9ジエポキシリモネンであり、この化合物としては、たとえば、(ダイセル化学社製 セロキサイド3000)を使用することができる。
さらに、(B)の成分として、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとが併用されていてもよい。
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーは重合を開始する開始反応が遅いが、生長反応が速い。これに対し、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーは、重合を開始する開始反応が速いが、生長反応が遅い。そのため、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとを併用することで、光を照射した際に、光照射部分と、未照射部分との屈折率差を確実に生じさせることができる。
この(B)成分の添加量は、(A)成分100重量部に対し、1重量部以上、50重量部以下であることが好ましく、2重量部以上、20重量部以下であることがより好ましい。これにより、コア/クラッド間の屈折率変調を可能にし、可撓性と耐熱性との両立が図れるという効果がある。
((C)光酸発生剤)
光酸発生剤としては、光のエネルギーを吸収してブレンステッド酸あるいはルイス酸を生成するものであればよく、例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム−トリフルオロメタンスルホネートなどのスルホニウム塩類、p−ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアゾニウム塩類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(トリキュミル)ヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのヨードニウム塩類、キノンジアジド類、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン類、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンサルホネートなどのスルホン酸エステル類、ジフェニルジスルホンなどのジスルホン類、トリス(2,4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3.4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのトリアジン類などの化合物を挙げることができる。これらの光酸発生剤は、単独、または複数を組み合わせて使用することができる。
光酸発生剤の含有量は、(A)成分100重量部に対し0.01重量部以上、0.3重量部以下であることが好ましく、0.02重量部以上、0.2重量部以下であることがより好ましい。これにより、反応性の向上という効果がある。
感光性樹脂組成物は、以上の(A)、(B)、(C)の成分に加えて、増感剤等の添加剤を含有していてもよい。
増感剤は、光に対する光酸発生剤の感度を増大して、光酸発生剤の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、光酸発生剤の活性化に適する波長に光の波長を変化させる機能を有するものである。
このような増感剤としては、光酸発生剤の感度や増感剤の吸収のピーク波長に応じて適宜選択され、特に限定されないが、たとえば、9,10−ジブトキシアントラセン(CAS番号第76275−14−4番)のようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類(fluoranthenes)、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類(thioxanthen-9-ones)等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
増感剤の具体例としては、例えば、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジン(phenothiazine)またはこれらの混合物が挙げられる。
増感剤の含有量は、感光性樹脂組成物中で、0.01重量%以上であるのが好ましく、0.5重量%以上であるのがより好ましく、1重量%以上であるのがさらに好ましい。なお、上限値は、5重量%以下であるのが好ましい。
以上の感光性樹脂組成物のうち、成分(A)として側鎖に脱離性基を有する環状オレフィン樹脂と、成分(C)の光酸発生剤と、成分(B)として下記式(100)に記載の第1モノマーと、を含む感光性樹脂組成物が特に好ましい。
以下、特に好ましいこの感光性樹脂組成物について説明する。
前記側鎖に脱離性基を有する環状オレフィン樹脂を構成する環状オレフィン樹脂(A)としては、前述したようなものを使用できるが、例えばシクロヘキセン、シクロオクテン等の単環体モノマーの重合体、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、ジヒドロテトラシクロペンタジエン等の多環体モノマーの重合体等が挙げられる。これらの中でも多環体モノマーの重合体の中から選ばれる1種以上の環状オレフィン樹脂が好ましく用いられる。これにより、樹脂の耐熱性を向上することができる。
なお、重合形態としては、ランダム重合、ブロック重合等の公知の形態を適用することができる。例えばノルボルネン型モノマーの重合の具体例としては、ノルボルネン型モノマ−の(共)重合体、ノルボルネン型モノマ−とα−オレフィン類などの共重合可能な他のモノマ−との共重合体、およびこれらの共重合体の水素添加物などが具体例に該当する。これら環状オレフィン樹脂は、公知の重合法により製造することが可能であり、その重合方法には付加重合法と開環重合法とがあり、前述の中でも付加重合法で得られる環状オレフィン樹脂(特にノルボルネン系樹脂)が好ましい(すなわち、ノルボルネン系化合物の付加重合体)。これにより、透明性、耐熱性および可撓性に優れる。
前記脱離性基としては、光酸発生剤から発生する酸(H+)の作用により分子の一部が切断されて離脱するものである。具体的には、分子構造中(側鎖)に、前述したような−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが好ましい。上述したような離脱性基は、酸(H+)の作用により比較的容易に離脱する。
上述した脱離性基の中でも離脱により樹脂の屈折率に低下を生じさせる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
前記脱離性基の含有量は、特に限定されないが、前記側鎖に脱離性基を有する環状オレフィン樹脂中の10〜80重量%であるのが好ましく、特に20〜60重量%であるのがより好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に可撓性と屈折率変調機能(屈折率差を大きくする効果)との両立に優れる。
このような側鎖に脱離性基を有する環状オレフィン樹脂としては、下記式(101)および/または下記式(102)で示される繰り返し単位を有するものが好ましい。これにより、樹脂の屈折率を高くすることができる。
(式101においてnは0以上、9以下の整数である。)
前記感光性樹脂組成物は、上記式(100)に記載のモノマー(以下、第1モノマーという)を含む。これにより、さらに左右のコア/クラッド間の屈折率差を拡大することができる。
第1モノマーの含有量は、特に限定されないが、前記側鎖に脱離性基を有する環状オレフィン樹脂100重量部に対して1重量部以上、50重量部以下であることが好ましく、特に2重量部以上、20重量部以下であることが好ましい。これにより、コア/クラッド間の屈折率変調を可能にし、可撓性と耐熱性との両立が図られる。
このように、上述した第1モノマーを側鎖に脱離性基を有する環状オレフィン樹脂と併用した場合に、コア/クラッド間の屈折率変調と、可撓性とのバランスに優れることの理由は、以下の通りと考えられる。
まず、以上のような感光性樹脂組成物を用いた場合に、コア/クラッド間の屈折率変調に優れるのは、光照射等によって発生した酸により、第1モノマーが重合反応を開始するとき、第1モノマーがその反応性に優れているからである。第1モノマーの反応性が優れていると、第1モノマーの硬化性が高くなり、第1モノマーの濃度勾配によって生じる第1モノマーの拡散性が向上する。それによって、光照射領域と、未照射領域との屈折率差を大きくすることができる。
また、第1モノマーは一官能であるために、重合反応が進行して感光性樹脂組成物としての架橋密度はそれほど高くはならない。そのため、可撓性にも優れている。
前記感光性樹脂組成物は、特に限定されないが、前記第1モノマーと異なる第2モノマーを含んでいてもよい。なお、前記第1モノマーと異なる第2モノマーとは、構造が異なるモノマーでもよく、分子量が異なるモノマーでもよい。
なかでも、第2モノマーは、成分(B)として含まれており、例えばエポキシ化合物、式(100)で示されるものと異なる他のオキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。これらの中でもエポキシ化合物(特に脂環式エポキシ化合物)および2官能のオキセタン化合物(オキセタニル基を2つ有するモノマー)の少なくとも1種が好ましい。これにより、前記第1モノマーと前記環状オレフィン樹脂との反応性を向上させることができ、それによって透明性を保持しつつ、導波路の耐熱性を向上させることができる。
第2モノマーとしては、具体的には、上記式(15)の化合物、上記式(12)の化合物、上記式(11)の化合物、上記式(18)の化合物、上記式(19)の化合物、上記式(34)〜(39)の化合物が挙げられる。
前記第2モノマーの含有量は、特に限定されないが、前記環状オレフィン樹脂100重量部に対して1重量部以上、50重量部以下であることが好ましく、特に2重量部以上、20重量部以下であることがより好ましい。これにより、前記第1モノマーとの反応性を向上させることができる。
また、前記第2モノマーと前記第1モノマーとの併用割合も特に限定されないが、重量比(前記第2モノマーの重量/前記第1モノマーの重量)で、0.1〜1が好ましく、特に0.1〜0.6が好ましい。併用割合が前記範囲内であると、反応性の速さと導波路の耐熱性とのバランスに優れる。
光酸発生剤の含有量は、特に限定されないが、前記側鎖に脱離性基を有する環状オレフィン系樹脂100重量部に対して0.01重量部以上、0.3重量部以下であることが好ましく、特に0.02重量部以上、0.2重量部以下であることがより好ましい。含有量が下限値未満であると反応性が低下する場合があり、前記上限値を超えると光導波路に着色が生じて光損失が低下する場合がある。
前記感光性樹脂組成物は、上述した環状オレフィン系樹脂、光酸発生剤、第1モノマーおよび第2モノマー以外に、硬化触媒、酸化防止剤等を含んでいてもよい。
また、上述した感光性樹脂組成物は、コア部94の形成用の組成物として用いることができる。
(光導波路の製造方法)
図10〜12は、それぞれ、光導波路の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
ここでは、成分(B)が成分(A)の環状オレフィン樹脂よりも屈折率が低いものである場合の感光性樹脂組成物を用いて光導波路を製造する方法を例にして説明する。
まず、図10(A)に示すように、感光性樹脂組成物を溶媒に溶かしてワニス900を調製し、このワニス900をクラッド層91上に塗布する。
感光性樹脂組成物をワニス状に調製する溶媒としては、たとえば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)などのエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドンなどの芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)などのアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチルなどのエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホランなどの硫黄化合物系溶媒の各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒が挙げられる。
次に、光導波路9のクラッド層91上にワニス900を塗布した後、乾燥させて、溶媒を蒸発(脱溶媒)させる。これにより、図10(B)に示すように、ワニス900は、光導波路形成用のフィルム910となる。このフィルム910は、後述する光の照射により、コア部94とクラッド部95とが形成されたコア層93となる。
ここで、ワニス900を塗布する方法としては、たとえば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法の方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。クラッド層91としては、たとえば、後述するコア部94よりも屈折率が低いシートが使用され、たとえば、ノルボルネン系樹脂と、エポキシ樹脂とを含むシートが使用される。
次に、フィルム910に対し、選択的に光(たとえば、紫外線)を照射する。
この際、図11(A)に示すように、フィルム910の上方に開口が形成されたマスクMを配置する。このマスクMの開口を介して、フィルム910に対し、光を照射する。
用いられる光としては、例えば、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものが挙げられる。これにより、光酸発生剤の組成にもよるが、光酸発生剤を比較的容易に活性化させることができる。
また、光の照射量は、特に限定されないが、0.1〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.2〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.2〜3J/cm2程度であるのがさらに好ましい。
なお、レーザー光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスクMの使用を省略することもできる。
フィルム910のうち、光が照射された領域では、光酸発生剤から酸が発生することとなる。発生した酸により、成分(B)が重合する。
光が照射されていない領域では、光酸発生剤から酸が発生しないため、成分(B)は重合しない。照射部分では、成分(B)が重合しポリマーとなるため、成分(B)量が少なくなる。これに応じて、未照射部分の成分(B)が照射部分に拡散し、これにより、照射部分と未照射部分とで屈折率差が生じる。
ここで、成分(B)が、環状オレフィン樹脂よりも屈折率が低い場合には、未照射部分の成分(B)が照射部分に拡散することで、未照射部分の屈折率が高くなるとともに、照射部分の屈折率は低くなる。
なお、成分(B)が重合したポリマーと、環状エーテル基を有するモノマーとの屈折率差は、0以上、0.001以下程度であり、屈折率は略同じであると考えられる。
このように上述した感光性樹脂組成物を使用した場合には、光酸発生剤から発生する酸により、成分(B)の重合を開始させることが可能である。
さらに、本発明に用いられる環状オレフィン樹脂は必ずしも脱離性基を有していなくてもよいが、成分(A)として、脱離性基を有する環状オレフィン樹脂を使用している場合には、以下の作用が生じる。
光を照射した部分では、光酸発生剤から発生した酸により、環状オレフィン樹脂の脱離性基が脱離することとなる。−Si−アリール構造、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造等の脱離性基の場合、離脱により樹脂の屈折率が低下することとなる。そのため、照射部分の屈折率は脱離性基の脱離前に比べてさらに低下することとなる。
次に、フィルム910を加熱する。この加熱工程において、光を照射した照射部分の成分(B)がさらに重合する。一方で、この加熱工程において、未照射部分の成分(B)は揮発することとなる。これにより、未照射部分では、成分(B)が少なくなり、環状オレフィン樹脂に近い屈折率となる。
このフィルム910においては、図11(B)に示すように、光が照射された領域がクラッド部95となり、未照射領域がコア部94となる。コア部94における前記成分(B)由来の構造体濃度と、クラッド部95における前記成分(B)由来の構造体濃度とが異なる。具体的には、コア部94における成分(B)由来の構造体濃度は、クラッド部95における成分(B)由来の構造体濃度より低い。
また、クラッド部95は、コア部94よりも屈折率が低くなり、クラッド部95とコア部94との屈折率差は、0.01以上となる。以上のようにして、フィルム910には、コア部94とクラッド部95とが形成され、コア層93が得られる。
この加熱工程における加熱温度は、特に限定されないが、30〜180℃程度であるのが好ましく、40〜160℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、光を照射した照射部分の成分(B)の重合反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
その後、このコア層93上に、クラッド層91と同様のフィルムを貼り付ける。このフィルムがクラッド層92となる。一対のクラッド層91、92は、クラッド部95とは異なる方向から、コア部94を挟むように配置されることとなる。
なお、クラッド層92は、フィルム状のものを貼り付けるのではなく、コア層93上に液状材料を塗布し硬化(固化)させる方法によっても形成することができる。
以上の工程により、図12に示す光導波路9が得られる。
また、本発明において用いる感光性樹脂組成物により光導波路9を得た場合には、特に半田耐リフロー性に優れる。さらに、光導波路9を曲げた場合であっても光損失を少なくすることができる。
なお、上記の説明では、クラッド層91上に直接、感光性樹脂組成物を供給し、フィルム910(コア層93)を形成する場合について説明したが、別の基材上にフィルム910(コア層93)を形成した後、得られたコア層93をクラッド層91またはクラッド層92上に転写し、その後、コア層93を介してクラッド層91とクラッド層92とを重ね合わせるようにしてもよい。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態において用いる感光性樹脂組成物に光を当てると、光酸発生剤から酸が発生し、照射部分のみにおいて、成分(B)が重合されることとなる。そうすると、照射部分における成分(B)の量が少なくなるため、未照射部分の成分(B)が照射部分に拡散し、これにより、照射部分と未照射部分とで屈折率差が生じる。具体的には、本実施形態では、ベースポリマーとして、成分(B)よりも屈折率が高い置換または無置換の環状オレフィン樹脂を使用しているため、未照射部分の成分(B)が照射部分に拡散することで、未照射部分の屈折率が、照射部分の屈折率よりも高くなる。
これに加え、光照射後、感光性樹脂組成物の加熱を行うと、未照射部分から成分(B)が揮発する。これにより、照射部分と未照射部分とでさらに屈折率差が生じる。
このように感光性樹脂組成物を使用することで、照射部分と未照射部分とで確実に屈折率差を形成することができる。また、本発明によれば、単に光を照射するという簡単な方法でコア部をパターニングすることができる。例えば、フォトマスク等の露光パターンを適宜選択することにより、どのような形状や配置の光路(コア部)でも形成することができ、また、細い光路でもシャープに形成することができるので、回路の集積化に寄与し、デバイスの小型化が図られる。すなわち、本発明によれば、コア部のパターン形状の設計の自由度が広く、しかも寸法精度の高いコア部が得られる。
なお、従来、オキセタニル基等を有するノルボルネン系樹脂を、熱酸発生剤により架橋させる技術が知られている。しかしながら、このような技術に用いられる組成物は、ベースポリマーとして、オキセタニル基等を有するノルボルネン系樹脂を含有する。そして、組成物全体を加熱させ、組成物全体において架橋構造を生じさせるものである。そのため、従来用いられていたこの組成物には、選択的に光を照射し、酸を発生させることで、選択的に重合を生じさせ、モノマー濃度が少なくなった領域にモノマーが拡散して、濃度差ができるという技術的思想は全くない。
これに対し、本実施形態において用いる感光性樹脂組成物は、選択的に光を照射すると、酸の発生により照射部分における成分(B)の量が少なくなるため、未照射部分の成分(B)が照射部分に拡散し、これにより、照射部分と未照射部分とで屈折率差が生じることを見出したものである。
また、環状オレフィン樹脂を、光酸発生剤から発生する酸により脱離し、脱離により、成分(A)の環状オレフィン樹脂の屈折率を低下させる脱離性基を有するものとした場合には、光を照射した領域の屈折率を、未照射領域に比べ確実に低下させることができる。
一方で、環状オレフィン樹脂を脱離性基を有しないものとした場合には、側鎖が化学的に安定となるため、光照射や、加熱等の条件により、コア部、クラッド部の屈折率が変動してしまうことを抑制できる。
さらに、本実施形態では、成分(A)としてノルボルネン系樹脂を使用している。これにより、特定波長における光透過性を確実に高めることができ、伝搬損失の低減を確実に図ることができる。
また、クラッド部95は、コア部94よりも屈折率が低く、クラッド部95とコア部94との屈折率差を0.01以上とすることで、確実に光をコア部94に閉じ込めることができ、光の伝搬損失の発生を抑制できる。
一方、従来、光導波路形成用の組成物として、ポリマー、モノマー、助触媒および触媒前駆体を含むものが知られている。
このうち、モノマーは、光の照射により反応物を形成し、光を照射した領域の屈折率を、未照射領域の屈折率と異ならせ得るものである。
また、触媒前駆体は、モノマーの反応(重合反応、架橋反応等)を開始させ得る物質であり、光の照射により活性化した助触媒の作用により、活性化温度が変化する物質である。この活性化温度の変化により、光の照射領域と未照射領域との間で、モノマーの反応を開始させる温度が異なり、その結果、照射領域のみにおいて反応物を形成させることができる。
これに対し、本実施形態において用いる感光性樹脂組成物は、このような多量の金属元素を含む物質を必要としない。このため、上述したような伝搬損失の増加が防止され、伝搬効率に優れかつ耐熱性に優れた光導波路9が得られる。
このような従来の組成物を用いた場合でも光照射によりコア部とクラッド部とを作り分けることができるが、本実施形態に用いられる感光性樹脂組成物によれば、コア部94とクラッド部95との屈折率差をより拡大するとともに、耐熱性が向上するため、より信頼性の高い光導波路9が得られる。これは主に、成分(A)および成分(B)の組成を最適化したことによるものである。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
また、前記実施形態では、感光性樹脂組成物を使用して、光導波路フィルムを形成したが、これに限らず、ホログラム等に使用してもよい。前述の感光性樹脂組成物は、屈折率が高い領域と、屈折率が低い領域とが混在するフィルムを形成するのに適している。
次に、本発明の実施例について説明する。
A.光導波路の製造
(実施例1)
(1)脱離性基を有するノルボルネン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で充満されたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
次に、100mLバイアルビン中に下記化学式(B)で表わされるNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
この下記化学式(B)で表わされるNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#1を得た。ポリマー#1の分子量分布は、GPC測定により、Mw=10万、Mn=4万であった。また、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。また屈折率はメトリコンにより1.55(測定波長;633nm)であった。
(2)感光性樹脂組成物の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式20(式100)で示した第1モノマー、東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な感光性樹脂組成物ワニスV1を得た。
(3)光導波路フィルムの製造
(下側クラッド層の作製)
シリコンウエハ上に感光性ノルボルネン樹脂組成物(プロメラス社製 Avatrel2000Pワニス)をドクターブレードにより均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、塗布された全面に紫外線を100mJ照射し、乾燥機中120℃で1時間加熱して、塗膜を硬化させて、下側クラッド層を形成させた。形成された下側クラッド層は、厚みが20μmであり、無色透明であり、屈折率は1.52(測定波長;633nm)であった。
(コア層の形成)
上記下側クラッド層上に感光性樹脂組成物ワニスV1をドクターブレードによって均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を500mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中45℃で30分、85℃で30分、150℃で1時間と三段階で加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部およびクラッド部の形成が確認された。
(上側クラッド層の形成)
ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上に、予め乾燥厚み20μmになるようにAvatrel2000Pを積層させたドライフィルムを、上記コア層に貼り合わせ、140℃に設定された真空ラミネーターに投入して熱圧着を行った。その後、紫外線を100mJ全面照射し乾燥機中120℃で1時間加熱して、Avatrel2000Pを硬化させて、上側クラッド層を形成させ、光導波路を得た。このとき、上側クラッド層は、無色透明であり、その屈折率は1.52であった。
(4)評価
(光導波路の損失評価)
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由して上記光導波路に導入し、200μmφの光ファイバーで受光を行って光の強度を測定した。なお、測定にはカットバック法を採用した。光導波路の長手方向を横軸にとり、挿入損失を縦軸にプロットしていったところ、測定値はきれいに直線上に並び、その傾きから伝搬損失は0.03dB/cmと算出することができた。
(コア部とクラッド部との屈折率差)
上記(コア層の形成)で形成した、水平方向に隣接する左右のコア部−クラッド部間の屈折率差は、次のように求めた。
カナダ国 EXFO社製 Optical waveguide analyzer OWA-9500により波長656nmのレーザー光を光導波路に照射し、コア領域およびクラッド領域の屈折率をそれぞれ実測して、それらの差を算出した。その結果、屈折率差は0.02であった。
(実施例2)
(1)脱離性基を有しないノルボルネン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で充満されたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)9.4g(53.1mmol)、フェニルエチルノルボルネン10.5g(53.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
次に、100mLバイアルビン中に上記化学式(B)で表わされるNi触媒2.06g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
上記化学式(B)で表わされるNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#2を得た。ポリマー#2の分子量分布は、GPC測定により、Mw=9万、Mn=4万であった。また、ポリマー#2中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルルボルネン構造単位が50mol%、フェニルエチルノルボルネン構造単位が50mol%であった。また屈折率はメトリコンにより1.54(測定波長;633nm)であった。
(2)感光性樹脂組成物の製造
精製した上記ポリマー#2 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式20で示したもの、東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な感光性樹脂組成物ワニスV2を得た。
(3)光導波路フィルムの製造
(下側クラッド層の作製)
実施例1と同様の下側クラッド層を作製した。
(コア層の形成)
上記下側クラッド層上に感光性樹脂組成物ワニスV2をドクターブレードによって均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を500mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中45℃で30分、85℃で30分、150℃で1時間と三段階で加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部およびクラッド部の形成が確認された。
(上側クラッド層の形成)
実施例1と同様の上側クラッド層を作製した
(4)評価
実施例1と同じ方法により、評価を行った。伝搬損失は0.04dB/cmと算出することができた。コア部とクラッド部の屈折率差は0.01であった。
(実施例3)
(1)脱離性基を有するノルボルネン系樹脂の合成
実施例1と同様の方法でノルボルネン系樹脂を作製した。
(2)感光性樹脂組成物の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、2官能オキセタンモノマー(式(15)で示したもの、東亜合成製、DOX、CAS#18934−00−4、分子量214、沸点119℃/0.67kPa)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な感光性樹脂組成物ワニスV3を得た。
(3)光導波路フィルムの製造
(下側クラッド層の作製)
実施例1と同様の下側クラッド層を作製した。
(コア層の形成)
上記下側クラッド層上に感光性樹脂組成物ワニスV3をドクターブレードによって均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を500mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中45℃で30分、85℃で30分、150℃で1時間と三段階で加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部およびクラッド部の形成が確認された。
(上側クラッド層の形成)
実施例1と同様の上側クラッド層を作製した。
(4)評価
実施例1と同じ方法により、評価を行った。伝搬損失は0.04dB/cmと算出することができた。コア部とクラッド部の屈折率差は0.01であった。
(実施例4)
(1)脱離性基を有するノルボルネン系樹脂の合成
実施例1と同様の方法でノルボルネン系樹脂を作製した。
(2)感光性樹脂組成物の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、脂環式エポキシモノマー(式(37)で示したもの、ダイセル化学製、セロキサイド2021P、CAS#2386−87−0、分子量252、沸点188℃/4hPa)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な感光性樹脂組成物ワニスV4を得た。
(3)光導波路フィルムの製造
(下側クラッド層の作製)
実施例1と同様の下側クラッド層を作製した。
(コア層の形成)
上記下側クラッド層上に感光性樹脂組成物ワニスV4をドクターブレードによって均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を500mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中45℃で30分、85℃で30分、150℃で1時間と三段階で加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部およびクラッド部の形成が確認された。
(上側クラッド層の形成)
実施例1と同様の上側クラッド層を作製した。
(4)評価
実施例1と同じ方法により、評価を行った。伝搬損失は0.04dB/cmと算出することができた。コア部とクラッド部の屈折率差は0.01であった。
(実施例5)
(1)脱離性基を有するノルボルネン系樹脂の合成
実施例1と同様の方法でノルボルネン系樹脂を作製した。
(2)感光性樹脂組成物の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式20で示したもの、東亜合成製 CHOX)1g、脂環式エポキシモノマー(ダイセル化学製、セロキサイド2021P) 1g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な感光性樹脂組成物ワニスV5を得た。
(3)光導波路フィルムの製造
(下側クラッド層の作製)
実施例1と同様の下側クラッド層を作製した。
(コア層の形成)
上記下側クラッド層上に感光性樹脂組成物ワニスV5をドクターブレードによって均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を500mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中45℃で30分、85℃で30分、150℃で1時間と三段階で加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部およびクラッド部の形成が確認された。
(上側クラッド層の形成)
実施例1と同様の上側クラッド層を作製した。
(4)評価
実施例1と同じ方法により、評価を行った。伝搬損失は0.03dB/cmと算出することができた。コア部とクラッド部の屈折率差は0.01であった。
(実施例6)
(1)脱離性基を有するノルボルネン系樹脂の合成
実施例1と同様の方法でノルボルネン系樹脂を作製した。
(2)感光性樹脂組成物の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式20で示したもの、東亜合成製 CHOX)1.5g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な感光性樹脂組成物ワニスV6を得た。
(3)光導波路フィルムの製造
(下側クラッド層の作製)
実施例1と同様の下側クラッド層を作製した。
(コア層の形成)
上記下側クラッド層上に感光性樹脂組成物ワニスV6をドクターブレードによって均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を500mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中45℃で30分、85℃で30分、150℃で1時間と三段階で加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部およびクラッド部の形成が確認された。
(上側クラッド層の形成)
実施例1と同様の上側クラッド層を作製した。
(4)評価
実施例1と同じ方法により、評価を行った。伝搬損失は0.03dB/cmと算出することができた。コア部とクラッド部の屈折率差は0.01であった。
(実施例7)
(1)脱離性基を有するノルボルネン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で充満されたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)6.4g(36.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(diPhNB)8.7g(27.1mmol)、エポキシノルボルネン(EpNB)4.9g(27.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
次に、100mLバイアルビン中に上記化学式(B)で表わされるNi触媒1.75g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
この上記化学式(B)で表わされるNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記3種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールイソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#3を得た。ポリマー#3の分子量分布は、GPC測定により、Mw=8万、Mn=4万であった。また、ポリマー#3中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルルボルネン構造単位が40mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が30mol%、エポキシノルボルネン構造単位が30mol%であった。また屈折率はメトリコンにより1.53(測定波長;633nm)であった。
(2)感光性樹脂組成物の製造
精製した上記ポリマー#3 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式20で示したもの、東亜合成製 CHOX)1.0g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な感光性樹脂組成物ワニスV7を得た。
(3)光導波路フィルムの製造
(下側クラッド層の作製)
実施例1と同様の下側クラッド層を作製した。
(コア層の形成)
上記下側クラッド層上に感光性樹脂組成物ワニスV7をドクターブレードによって均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を500mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中45℃で30分、85℃で30分、150℃で1時間と三段階で加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部およびクラッド部の形成が確認された。
(上側クラッド層の形成)
実施例1と同様の上層クラッドを作製した。
(4)評価
実施例1と同じ方法により、評価を行った。伝搬損失は0.04dB/cmと算出することができた。コア部とクラッド部の屈折率差は0.02であった。
以上、実施例1〜7で得られた光導波路フィルムの評価結果を表1に示す。
実施例1〜7では、感光性樹脂組成物に光を当てると、光酸発生剤から、酸が発生し、照射部分のみにおいて、環状エーテル基を有するモノマーが重合する。そして、照射部分における未反応モノマー量が少なくなるため、照射部分/未照射部分間で生じた濃度勾配を解消するために未照射部分のモノマーが照射部分に拡散する。
また、光照射後、加熱を行うと、未照射部分からモノマーが揮発する。
以上より、コア部とクラッド部との間でモノマー由来の構造体濃度が異なり、クラッド部では、環状エーテル基を有するモノマー由来の構造体が多くなり、コア部では、環状エーテル基を有するモノマー由来の構造体が少なくなる。このことは、コア部とクラッド部との間で0.01以上の比較的大きな屈折率差が生じることから認められる。
なお、実施例1〜7では、直線状の光導波路を形成したが、曲線状(曲率半径10mm程度)の光導波路を形成した場合には、光損失が少ないことが顕著になる。
さらには、実施例1〜7で得られた光導波路フィルムは、耐熱性が高く、260℃の耐リフロー性を有している。
(実施例8)
(1)脱離性基を有するノルボルネン樹脂の合成
脱離性基を有するノルボルネン系樹脂の合成において、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)に代えて、フェニルジメチルノルボルネンメトキシシラン10.4g(40.1mmol)を用いた以外は実施例1と同様にした。得られた側鎖に脱離性基を有するノルボルネン系樹脂B(式103)の分子量は、GPC測定により、Mw=11万、Mn=5万であった。また、各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、フェニルジメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。また屈折率はメトリコンにより1.53(測定波長;633nm)であった。
(2)感光性樹脂組成物の製造
ポリマー#1に変えて、ノルボルネン系樹脂Bを使用した点以外は、実施例1と同様に感光性樹脂組成物を得た。
(3)光導波路フィルムの製造
ノルボルネン系樹脂Bを含む上記感光性樹脂組成物を使用した点以外は、実施例1と同様にして、光導波路フィルムを得た。
実施例1と同様に、光導波路の損失評価を行ったところ、得られた光導波路フィルムの伝搬損失は0.03dB/cmであった。
(実施例9)
(1)感光性樹脂組成物として以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
実施例1で得られたノルボルネン系樹脂10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式(100)で示した第1モノマー、東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)1g、2官能オキセタンモノマー(式(104)で示した第2モノマー、東亜合成製、DOX、CAS#18934−00−4、分子量214、沸点119℃/0.67kPa)1g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E−2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄なコア層用の感光性樹脂組成物ワニスを調製した。
(2)光導波路フィルムの製造
上記(1)の感光性樹脂組成物を使用した点以外は、実施例1と同様にして、光導波路フィルムを得た。
実施例1と同様に、光導波路の損失評価を行ったところ、得られた光導波路フィルムの伝搬損失は0.04dB/cmであった。
(実施例10)
環状オレフィンとして以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
(1)ノルボルネン系樹脂Cの合成
公知の手法(例えば特開2003−252963号公報)を用いてフェニルエチルノルボルネン(PENB)モノマーの開環メタセシス重合を行い、下記式(105)で表されるノルボルネン系樹脂Cを得た。
(2)感光性樹脂組成物製造
ポリマー#1に変えて、ノルボルネン系樹脂Cを使用した点以外は、実施例1と同様に感光性樹脂組成物を得た。
(3)光導波路フィルムの製造
ノルボルネン系樹脂Cを含む上記感光性樹脂組成物を使用した点以外は、実施例1と同様にして、光導波路フィルムを得た。
実施例1と同様に、光導波路の損失評価を行ったところ、得られた光導波路フィルムの伝搬損失は0.05dB/cmであった。
(実施例11)
第1モノマーの配合量を0.5gにした以外は、実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
なお、得られた光導波路フィルムの伝搬損失は、0.1dB/cmであった。
(実施例12)
第1モノマーの配合量を4.0gに以外は、実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
なお、得られた光導波路フィルムの伝搬損失は、0.1dB/cmであった。
(比較例1)
第1モノマーを用いなかった以外は、実施例1と同様にして、光導波路フィルムを作製した。
なお、得られた光導波路フィルムの伝搬損失は、0.90dB/cmであった。
(比較例2)
(1)各成分の合成
<触媒前駆体:Pd(OAc)2(P(Cy)3)2の合成>
漏斗を装備した2口丸底フラスコで、Pd(OAc)2(5.00g、22.3mmol)とCH2Cl2(30mL)からなる赤茶色懸濁液を−78℃で攪拌した。
漏斗に、P(Cy)3(13.12mL(44.6mmol))のCH2Cl2溶液(30mL)を入れ、そして、15分かけて上記攪拌懸濁液に滴下した。その結果、徐々に赤褐色から黄色に変化した。
−78℃で1時間攪拌した後、懸濁液を室温に温め、さらに2時間攪拌して、ヘキサン(20mL)で希釈した。
次に、この黄色の固体を空気中でろ過し、ペンタンで洗浄し(5×10mL)、真空乾燥させた。
2次収集物は、ろ液を0℃に冷却して分離し、上記と同様に洗浄して乾燥させた。これにより、触媒前駆体を得た。
(2)感光性樹脂組成物の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、ジメチルビス(ノルボルネンメトキシ)シラン(SiX)2.4g、上記触媒前駆体(2.6E-2g)、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(1.36E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な感光性樹脂組成物ワニスを得た。
(3)光導波路フィルムの製造
(下側クラッド層の作製)
実施例1と同様の下側クラッド層を作製した。
(コア層の形成)
上記下側クラッド層上に調製したワニスをドクターブレードによって均一に塗布した後、45℃の乾燥機に15分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を500mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中45℃で30分、85℃で30分、150℃で1時間と三段階で加熱を行った。加熱後、導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部およびクラッド部の形成が確認された。
(上側クラッド層の形成)
実施例1と同様の上側クラッド層を作製した
(4)評価
実施例1と同じ方法により、評価を行った。伝搬損失は0.05dB/cmと算出することができた。コア部とクラッド部の屈折率差は0.005であった。
B.光導波路の評価
各実施例および比較例で得られた光導波路について、以下の評価を行った。評価項目を内容とともに示す。得られた結果を表2に示す。
1.光損失
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由して上記光導波路に導入し、200μmφの光ファイバーで受光を行って光の強度を測定した。なお、測定にはカットバック法を採用し、導波路長を横軸、挿入損失を縦軸にプロットしていったところ、測定値はきれいに直線上に並び、その傾きから伝搬損失を算出した。
2.耐熱性
上記光導波路を高温高湿槽(85℃、85%RH)に投入し、湿熱処理500時間後の伝搬損失を評価した。また、リフロー処理(N2雰囲気下、最大温度260℃/60秒)による伝搬損失の劣化の有無も並行して確認した。
なお、ここでの伝搬損失の測定は、1の光損失の測定方法と同じである。
3.光導波路の曲げ損失
10mmの曲率半径を有する光導波路フィルムの光強度の曲げ損失を評価した。850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由して上記光導波路フィルムの端面に導入し、200μmφの光ファイバーで他端から受光を行って光の強度を測定した(下記式参照)。長さの等しい光導波路フィルムを曲げたときに生じる損失の増分を「曲げ損失」と定義し、図13に示すように、光導波路フィルムを曲線状にした場合の挿入損失と光導波路フィルムを直線状にした場合の挿入損失との差で「曲げ損失」を表した。
挿入損失[dB]= −10log(出射光強度/入射光強度)
曲げ損失=(曲線での挿入損失)−(直線での挿入損失)
表2から明らかなように実施例1,8−12は、光損失が低く、光導波路の性能が優れていることが示された。
また、実施例1,8−12は、高温高湿処理後およびリフロー処理後の光損失も小さく、耐熱性にも優れていることが示された。
また、特に実施例1,8,9,10は、曲げ損失も小さく、光導波路を屈曲させて用いても十分な性能を発揮することが示唆された。
さらに、各実施例および比較例で得られた光導波路フィルムを用いて、前記第1実施形態にかかる光導波路構造体を作製したところ、各実施例で得られた光導波路フィルムを用いた光導波路構造体は、それぞれ、各比較例で得られた光導波路フィルムを用いた光導波路構造体に比べて、伝送損失の低いものが得られた。また、交差部における混信の発生もほとんど認められなかった。
また、各実施例および比較例で得られた光導波路フィルムを用いて、前記第4実施形態にかかる光導波路構造体を作製したところ、分岐部における分岐割合はそれぞれ半分となり、目的とする分岐割合とほぼ一致した。これに対し、比較例で得られた光導波路フィルムを用いた光導波路構造体では、その分岐割合が、目的とする分岐割合から外れていることが認められた。