JP2014026011A - 光学フィルム、偏光板、及び画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セルロースエステルフィルムと、その少なくとも一方の表面上に厚みが0.1〜6μmの光学異方性層を有し、前記セルロースエステルフィルムの搬送方向(MD)及び搬送方向と直交する方向(TD)の双方の平均の引張り弾性率が4.0GPa以上である光学補償フィルムである。
【選択図】なし
Description
特許文献1には、偏光膜の保護フィルムとして、ハードコート層を有する第1の保護フィルムとともに、硬度が所定の範囲である重合性液晶化合物層と、幅方向の弾性率が所定の範囲の透明フィルムとから構成される第2の保護フィルムを有する偏光板が開示されている。
また、特許文献2には、ハードコート層を設けた面の表面弾性率が所定の範囲である光学フィルターが開示されている。
しかし、これらの特許文献に開示の技術は、ハードコート層の薄層化を目的とするものではない。
例えば、特許文献3には、TD弾性率/MD弾性率がそれぞれ所定の範囲であるセルロースエステルフィルムの2枚で偏光子を挟持してなる偏光板が開示されている。また、2枚のセルロースアシレートフィルムのうち、TD弾性率/MD弾性率が1.4〜2.2であるセルロースアシレートフィルム上にハードコート層を形成することについて開示されている。
また、特許文献4にも、セルロースエステル等を含有する、TD弾性率/MD弾性率が所定の範囲の光学フィルム、及びそれを保護フィルムとして有する偏光板が開示されている。
セルロースエステルフィルムに耐擦傷性が付与されていない場合には、更にセルロースエステルフィルムにも傷が入り込み、液晶表示装置に組み込まれたときに光を照射されると非常に目立つ傷となる。
[1] セルロースエステルフィルムと、その少なくとも一方の表面上に厚みが0.1〜6μmの光学異方性層を有し、前記セルロースエステルフィルムの搬送方向(MD)及び搬送方向と直交する方向(TD)の平均の引張り弾性率が4.0GPa以上である光学フィルム。
[2] 前記セルロースエステルフィルムが、少なくとも1種の糖エステルを含有する[1]に記載の光学フィルム。
[3] 前記糖エステルが、置換基の種類が同一であり、かつ、エステル置換度が異なる複数の糖エステル化合物の混合物であり、該エステル置換度が異なる複数の糖エステル化合物の平均エステル置換率が62〜94%である[2]に記載の光学フィルム。
[4] 前記セルロースエステルフィルムが、少なくとも1種のエステルオリゴマーを含有する[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[5] 前記セルロースエステルフィルムが、少なくとも1種のリン酸エステルを含有する[1]乃至[4]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[6] [1]乃至[5]のいずれか1項に記載の光学フィルムを少なくとも一枚有し、偏光子を挟んで反対側に光拡散層を含むフィルムを有する偏光板。
[7] [6]に記載の偏光板を、少なくとも視認側に有する液晶表示装置。
[8] [6]に記載の偏光板において、光学フィルム及び光拡散層を有するフィルムは、その夫々が厚さが20〜60μmのセルロースエステルフィルムを含む偏光板である[7]に記載の液晶表示装置。
また、本明細書中、「MD」は、セルロースエステルフィルムの送り出し方向、及び「TD」はそれに直交する方向を意味し、長尺状のセルロースエステルフィルムでは、「MD」は長手方向と一致し、「TD」は幅方向と一致する。「MD」及び「TD」が特定困難な場合もあるが、その場合は矩形状のフィルムの長辺・短辺の一方をMD及び他方をTDとして任意に決定し、引張り弾性率を算出するものとする。
本発明は、セルロースエステルフィルムと、その少なくとも一方の表面上に厚みが0.1〜6μmの光学異方性層を有し、前記セルロースエステルフィルムの搬送方向(MD)及び搬送方向と直交する方向(TD)の双方の引張り弾性率が4.0GPa以上である光学フィルムに関する。本発明の光学フィルムは、光学異方性層の基材となるセルロースエステルフィルムの引張り弾性率が、MD及びTDの方向の平均値が4.0GPa以上であるという特徴がある。本発明者らが鋭意検討した結果、基材フィルムの引張り弾性率が小さいと、光学異方性層の硬度に影響を与え、引張り弾性率が小さいと硬度が顕著に低くなることがわかった。本発明では、MD及びTDの方向の平均値が高い引張り弾性率を有するセルロースエステルフィルムを用いることで、膜厚6μm以下の薄層の光学異方性層であっても、高い鉛筆硬度(即ち優れた耐擦傷性)を達成している。
なお、セルロースエステルフィルムの引張り弾性率は、東洋ボールドウィン(株)製万能引っ張り試験機“STM T50BP”を用い、23℃、相対湿度60%雰囲気中、引張り速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定し、求めることができる。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(III)よりRthを算出することもできる。
式(A):
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d・・・・・・・・式(III)
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
また、本明細書において、光学フィルム及び液晶層等の各部材の光学特性を示す数値、数値範囲、及び定性的な表現(例えば、「同等」、「等しい」等の表現)については、液晶表示装置やそれに用いられる部材について一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲及び性質を示していると解釈されるものとする。
また、本明細書において、各軸・方向間の配置や交差角の角度の説明で、範囲を示さずに単に「平行」「直交」「0°」「90°」「45°」等という場合には、「おおよそ平行」「おおよそ直交」「おおよそ0°」「おおよそ90°」「おおよそ45°」の意であり、厳密なものではない。それぞれの目的を達成する範囲内での、多少のズレは許容される。例えば「平行」「0°」とは、交差角がおおよそ0°ということであり、−10°〜10°、好ましくは−5°〜5°、より好ましくは−3°〜3°である。「直交」「90°」とは、交差角がおおよそ90°ということであり、80°〜100°、好ましくは85°〜95°、より好ましくは87°〜93°である。「45°」とは、交差角がおおよそ45°ということであり、35°〜55°、好ましくは40°〜50°、より好ましくは42°〜48°である。
(セルロースエステル)
本発明の光学フィルムが有するセルロースエステルフィルムは、セルロースアシレートを主成分として含有するのが好ましい。本発明で用いるセルロースアシレートは、特に制限はない。その中でも、アセチル置換度が2.70〜2.95のセルロースアシレートを用いることが好ましい。アセチル置換度が2.7以上であると、後述する条件を満たす糖エステル(例えば、特定の置換度のスクロースベンゾエートなど)との相溶性が良好であり、フィルムが白化しにくいため好ましい。さらに、透明性に加えて、透湿度や含水率が良好となるため好ましい。また、偏光板耐久性やフィルム自体の湿熱耐久性も良好となるため好ましい。一方、置換度が2.95以下であることが光学性能の観点で好ましい。
なお、総アシル置換度の好ましい範囲も、前記アセチル置換度の好ましい範囲と同様である。
なお、アシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することができる。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。
本発明に使用されるセルロースアシレートは、置換基がアセチル基であるものが好ましい。
前記セルロースアシレートを得るには、具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。エステル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理を行う等して、前記の特定のセルロースアシレートを得ることができる。
本発明において、セルロースアシレート等の平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出し、国際公開WO2008−126535号公報に記載の方法により、その比を計算することができる。
前記セルロースエステルフィルムは、主成分であるセルロースアシレートとともに、少なくとも1種の可塑剤を含有していてもよい。本発明に用いられる可塑剤としては、セルロースアシレートの可塑剤として知られる多くの化合物も有用に使用することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
本発明に使用可能な糖エステルは、単糖類のエステルであっても多糖類のエステルであってもよい。単糖類又は2〜4多糖類のエステルであるのが好ましく、単糖類又は2もしくは3多糖類のエステルであるのがより好ましく、2糖類のエステルであることが特に好ましい。糖類(単糖及び多糖のいずれも含む意味)には、一分子中に複数のOH基が存在するが、その全てがエステル基で置換されている必要はない。特に芳香環を含む基を有するエステル基で置換された糖エステルは、未置換のOH基が残存しているほうが、セルロースアシレートとの相溶性や弾性率の上昇効果の観点で好ましい。
前記糖エステルとしては、複数の化合物の混合物を用いることも好ましい。前記糖エステルとしては、置換基の種類が同一であり、かつ、エステル置換度が異なる複数の糖エステル化合物の混合物がより好ましい。前記エステル置換度が異なる複数の糖エステル化合物の平均エステル置換度は特に制限はなく、無置換体が含まれていてもよい。
なお、置換基の種類が同一であり、かつ、エステル置換度が異なる糖エステル化合物の混合物における「平均エステル置換率」は、下記式
平均エステル置換率=100%×(混合物中の各糖エステルの含有率)×(混合物中の各糖エステル一分子中のエステル化されたOHの数)/(無置換糖の一分子中のOHの総数)
によって算出でき、上記式中の「混合物中の各糖エステルの含有率」は、HPLC測定し、ピーク面積の比率から算出することができる。
一般式(1) (OH)p−G−(L1−R11)q(O−R12)r
一般式(1)中、Gは糖残基を表し、L1は−O−、−CO−、−NR13−のいずれか一つを表し、R11は水素原子または一価の置換基を表し、R12はエステル結合で結合した一価の置換基を表す。p、qおよびrはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、p+q+rは前記Gが環状アセタール構造の無置換の糖類であると仮定した場合のヒドロキシル基の数と等しい。
また、前記L1が複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、前記R11、R12およびR13がそれぞれ複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
前記rは前記Gに含まれるピラノース構造単位またはフラノース構造単位の数よりも大きい数を表すことが好ましい。
前記qは0であることが好ましい。
また、p+q+rは前記Gが環状アセタール構造の無置換の糖類であると仮定した場合のヒドロキシル基の数と等しいため、前記p、qおよびrの上限値は前記Gの構造に応じて一意に決定される。
なお、前記糖エステル化合物が2糖類である場合、エステル化された置換基の数の平均値は5〜7.5個であることが好ましく、エステル化された置換基が6〜8個の高置換体の含有率が80%以下であり、エステル化された置換基が3〜4個の置換体の含有率が5〜30%であることがより好ましいこととなる。
また、他の好ましい態様は、芳香環を含む基(好ましくはベンゾイル基、以下同じ)を有するエステル基で置換された糖エステルと、脂肪族アシル基(アセチル基、ブチリル基、又はプロピオニル基等)を有するエステル基で置換された糖エステルとの混合物を用いるのが好ましい。このときの芳香環を含む基を有するエステル基で置換された糖エステルの平均エステル置換率が62%〜94%であることが好ましい。また、脂肪族アシル基を有するエステル基で置換された糖エステルは、エステル置換度が単一の糖エステルであっても、同一の脂肪族アシル基であってエステル置換度が異なる糖エステル化合物を複数含む混合物であってもよい。芳香環を含む基を有するエステル基で置換された糖エステルと、脂肪族アシル基を有するエステル基で置換された糖エステルとの混合比は、1:0〜1:3であることが好ましく、1:0〜1:1であることがより好ましい。
本発明に係る重縮合エステルは、少なくとも一種の芳香環を有するジカルボン酸(芳香族ジカルボン酸とも呼ぶ)と少なくとも一種の脂肪族ジカルボン酸との混合物、例えば、炭素数の平均が5.5以上10.0以下のジカルボン酸と、少なくとも一種の平均炭素数が2.5以上7.0以下の脂肪族ジオールとから得られる。
ジカルボン酸残基の組成比(モル分率)を構成炭素数に乗じて算出した値を平均炭素数とする。例えば、アジピン酸残基とフタル酸残基が50モル%ずつから構成される場合は、平均炭素数7.0となる。
また、ジオール残基の場合も同様で、脂肪族ジオール残基の平均炭素数は、脂肪族ジオール残基の組成比(モル分率)を構成炭素数に乗じて算出した値とする。例えばエチレングリコール残基50モル%と1,2−プロパンジオール残基50モル%から構成される場合は平均炭素数2.5となる。
本発明の重縮合エステルの数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、評価することができる。また、末端が封止のないポリエステルポリオールの場合、重量あたりの水酸基の量(以下、水酸基価)により算出することもできる。水酸基価は、ポリエステルポリオールをアセチル化した後、過剰の酢酸の中和に必要な水酸化カリウムの量(mg)を測定する。
炭素数の平均が5.5以上であれば耐久性に優れた偏光板を得ることができる。炭素数の平均が10以下であればセルロースエステルへの相溶性が優れ、セルロースエステルフィルムの製膜過程でブリードアウトの発生を抑制することができる。
本発明に係る重縮合エステルは、可塑剤として用いることができる。
芳香族ジカルボン酸残基は、ジオールと芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルに含まれる。
本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−COーである。
本発明に用いる重縮合エステルの芳香族ジカルボン酸残基比率は40mol%以上であり、40mol%〜95mol%であることが好ましい。45mol%〜70mol%であることがより好ましく、50mol%〜70mol%であることが更に好ましい。
芳香族ジカルボン酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示すセルロースエステルフィルムが得られ、耐久性に優れた偏光板を得ることができる。また、95mol%以下であればセルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくくすることができる。
重縮合エステルには混合に用いた芳香族ジカルボン酸により芳香族ジカルボン酸残基が形成される。
具体的には、芳香族ジカルボン酸残基は、フタル酸残基、テレフタル酸残基、イソフタル酸残基の少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくはフタル酸残基、テレフタル酸残基の少なくとも1種を含み、さらに好ましくはテレフタル酸残基を含む。
すなわち、重縮合エステルの形成における混合に、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸を用いることで、よりセルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいセルロースエステルフィルムとすることができる。また、芳香族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよい。2種用いる場合は、フタル酸とテレフタル酸を用いることが好ましい。
フタル酸とテレフタル酸の2種の芳香族ジカルボン酸を併用することにより、常温での重縮合エステルを軟化することができ、ハンドリングが容易になる点で好ましい。
重縮合エステルのジカルボン酸残基中のテレフタル酸残基の含有量は40mol%〜95mol%であることが好ましく、45mol%〜70mol%であることが好ましく、50mol%〜70mol%であることが好ましい。
テレフタル酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示すセルロースエステルフィルムが得られる。また、95mol%以下であればセルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくくすることができる。
脂肪族ジカルボン酸残基は、ジオールと脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルに含まれる。
本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−COーである。
本発明で好ましく用いられる脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
重縮合エステルには混合に用いた脂肪族ジカルボン酸より脂肪族ジカルボン酸残基が形成される。
ジカルボン酸残基は、平均炭素数が5.5以上10.0以下であることが好ましく、5.5〜8.0であることがより好ましく、5.5〜7.0であることがさらに好ましい。脂肪族ジオールの平均炭素数が7.0以下であれば化合物の加熱減量が低減でき、セルロースアシレートウェブ乾燥時のブリードアウトによる工程汚染が原因と考えられる面状故障の発生を防ぐことができる。また、脂肪族ジオールの平均炭素数が2.5以上であれば相溶性に優れ、重縮合エステルの析出が起き難く好ましい。
具体的には、コハク酸残基を含むことが好ましく、2種用いる場合は、コハク酸残基とアジピン酸残基を含むことが好ましい。
すなわち、重縮合エステルの形成における混合に、脂肪族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよく、2種用いる場合は、コハク酸とアジピン酸を用いることが好ましい。1種用いる場合は、コハク酸を用いることが好ましい。ジオール残基の平均炭素数を所望の値に調整することができ、セルロースエステルとの相溶性の点で好ましい。
脂肪族ジオール残基は、脂肪族ジオールとジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルに含まれる。
本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジオールHO−R−OHより形成されるジオール残基は−O−R−O−である。
重縮合エステルを形成するジオールとしては芳香族ジオール及び脂肪族ジオールが挙げられ、少なくとも脂肪族ジオールを含む。
重縮合エステルには平均炭素数が2.5以上7.0以下の脂肪族ジオール残基を含む。好ましくは平均炭素数が2.5以上4.0以下の脂肪族ジオール残基である。脂肪族ジオール残基の平均炭素数が3.0より大きいとセルロースエステルとの相溶性が低く、ブリードアウトが生じやすくなり、また、化合物の加熱減量が増大し、セルロースアシレートウェブ乾燥時の工程汚染が原因と考えられる面状故障が発生する。また、脂肪族ジオール残基の平均炭素数が2.0未満では合成が困難となるため、使用できない。
本発明に用いられる脂肪族ジオールとしては、アルキルジオール又は脂環式ジオール類を挙げることができ、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等があり、これらはエチレングリコールとともに1種又は2種以上の混合物として使用されることが好ましい。
重縮合エステルには混合に用いたジオールによりジオール残基が形成される。
ジオール残基はエチレングリコール残基、1,2−プロパンジオール残基、及び1,3−プロパンジオール残基の少なくとも1種を含むことが好ましく、エチレングリコール残基又は1,2−プロパンジオール残基であることがより好ましい。
脂肪族ジオール残基のうち、エチレングリコール残基が20mol%〜100mol%であることが好ましく、50mol%〜100mol%であることがより好ましい。
本発明の重縮合エステルの末端は封止がなくジオールあるいはカルボン酸のままであるか、さらにモノカルボン酸類又はモノアルコール類を反応させて、所謂末端の封止を実施してもよい。
封止に用いるモノカルボン酸類としては酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。封止に用いるモノアルコール類としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等が好ましく、メタノールが最も好ましい。重縮合エステルの末端に使用するモノカルボン酸類の炭素数が3以下であると、化合物の加熱減量が大きくならず、面状故障が発生しない。
本発明の重縮合エステルの末端はより好ましくは封止がなくジオール残基のままか、酢酸又はプロピオン酸による封止がさらに好ましい。
本発明にかかる重縮合エステルの両末端は封止、未封止を問わない。
縮合体の両末端が未封止の場合、重縮合エステルはポリエステルポリオールであることが好ましい。
本発明にかかる重縮合エステルの態様の一つとして脂肪族ジオール残基の炭素数が2.5以上7.0以下であり、縮合体の両末端は未封止である重縮合エステルを挙げることができる。
縮合体の両末端が封止されている場合、モノカルボン酸と反応させて封止することが好ましい。このとき、該重縮合エステルの両末端はモノカルボン酸残基となっている。本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばモノカルボン酸R−COOHより形成されるモノカルボン酸残基はR−CO−である。好ましくは脂肪族モノカルボン酸残基であり、モノカルボン酸残基が炭素数22以下の脂肪族モノカルボン酸残基であることがより好ましく、炭素数3以下の脂肪族モノカルボン酸残基であることがさらに好ましい。また、炭素数2以上の脂肪族モノカルボン酸残基であることが好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
本発明にかかる重縮合エステルの態様の一つとして脂肪族ジオール残基の炭素数が2.5より大きく7.0以下であり、縮合体の両末端はモノカルボン酸残基である重縮合エステルを挙げることができる。
重縮合エステルの両末端のモノカルボン酸残基の炭素数が3以下であると、揮発性が低下し、重縮合エステルの加熱による減量が大きくならず、工程汚染の発生や面状故障の発生を低減することが可能である。
即ち封止に用いるモノカルボン酸類としては脂肪族モノカルボン酸が好ましい。モノカルボン酸が炭素数2から22の脂肪族モノカルボン酸であることがより好ましく、炭素数2〜3の脂肪族モノカルボン酸であることがさらに好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸及びその誘導体等が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。
封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。
本発明の重縮合エステルの両末端は酢酸又はプロピオン酸による封止が好ましく、酢酸封止により両末端がアセチルエステル残基(アセチル残基と称する場合がある)となることが最も好ましい。
両末端を封止した場合は常温での状態が固体形状となりにくく、ハンドリングが良好となり、また湿度安定性、偏光板耐久性に優れたセルロースエステルフィルムを得ることができる。
本発明で使用される重縮合エステルに含まれるジカルボン酸残基、ジオール残基、モノカルボン酸残基の各残基の種類及び比率はH−NMRを用いて通常の方法で測定することができる。通常、重クロロホルムを溶媒として用いることができる。
重縮合エステルの数平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて通常の方法で測定することができ、通常、ポリスチレンを標準資料として用いることができる。
重縮合エステルの水酸基価の測定は、日本工業規格 JIS K3342(廃止)に記載の無水酢酸法当を適用できる。重縮合体がポリエステルポリオールである場合は、水酸基価が50以上190以下であることが好ましく、50以上130以下であることがさらに好ましい。
本発明に係わるセルロースエステルフィルムは、主成分セルロースアシレートとともに、UV吸収剤を含有しているのが好ましい。UV吸収剤は、フィルムの耐久性の改善に寄与する。特に、本発明の光学フィルムを画像表示装置の表面保護フィルムとして利用する態様において、UV吸収剤の添加は有効である。
例としてUV−1〜3を挙げるが、添加する紫外線吸収剤はこれらに限定されない。
前記セルロースエステルフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤の少なくとも1種をさらに含有していてもよい。他の添加剤の例には、糖エステル以外の可塑剤(例えば、リン酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、重縮合オリゴマー系可塑剤等)等が含まれる。上記した通り、芳香族基を有する重縮合オリゴマー系可塑剤は、糖エステルと同様、添加により引張り弾性率を上昇できるので好ましい。使用可能な芳香族基を有する重縮合オリゴマー系可塑剤については、特開2010−242050、特開2006−64803号公報等に記載があり、本発明において用いることができる。
前記セルロースエステルフィルムを製造する方法は、特に制限はなく、公知の方法を用いて製膜することができる。例えば、溶液流延製膜法及び溶融製膜法のいずれを利用して製膜してもよい。フィルムの面状を改善する観点から、前記セルロースエステルフィルムは、溶液流涎製膜法を利用して製造するのが好ましい。以下、溶液流延製膜法を用いる場合を例に説明するが、本発明は溶液流延製膜法に限定されるものではない。なお、溶融製膜法を用いる場合については、公知の方法を用いることができる。
溶液流延製膜方法では、前記セルロースアシレート、糖エステル、及び必要に応じて各種添加剤を含有するポリマー溶液(セルロースアシレート溶液)を用いてウェブを形成する。以下において、溶液流延製膜方法に用いることができるポリマー溶液(以下、適宜セルロースアシレート溶液と称する場合もある)について説明する。
本発明で用いられるセルロースアシレートは溶媒に溶解させてドープを形成し、これを基材上に流延しフィルムを形成させる。この際に押し出しあるいは流延後に溶媒を蒸発させる必要性があるため、揮発性の溶媒を用いることが好ましい。
更に、反応性金属化合物や触媒等と反応せず、かつ流延用基材を溶解しないものである。又、2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。
また、セルロースアシレートと加水分解重縮合可能な反応性金属化合物を各々別の溶媒に溶解し後に混合してもよい。
ここで、上記セルロースアシレートに対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
これらは、ドープを金属支持体に流延した後、溶媒が蒸発し始めてアルコールの比率が多くなることでウェブ(支持体上にセルロースアシレートのドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)をゲル化させ、金属支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースアシレートの溶解を促進したりする役割もあり、反応性金属化合物のゲル化、析出、粘度上昇を抑える役割もある。
これらのうち、ドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、且つ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。これらの有機溶媒は、単独ではセルロースアシレートに対して溶解性を有しておらず、貧溶媒という。
また、本発明においては、水を少量含有させることも溶液粘度や乾燥時のウェットフィルム状態の膜強度を高めたり、ドラム法流延時のドープ強度を高めたりするのに有効であり、例えば溶液全体に対して0.1〜5質量%含有させてもよく、より好ましくは0.1〜3質量%含有させてもよく、特には0.2〜2質量%含有させてもよい。
前記セルロースアシレート濃度は、セルロースアシレートを溶媒に溶解する段階で所定の濃度になるように調整することができる。また予め低濃度(例えば4〜14質量%)の溶液を調製した後に、溶媒を蒸発させる等によって濃縮してもよい。さらに、予め高濃度の溶液を調製後に、希釈してもよい。また、添加剤を添加することで、セルロースアシレートの濃度を低下させることもできる。
セルロースアシレートに対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で該セルロースアシレート、添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程、あるいはセルロースアシレート溶液に添加剤溶液を混合してドープを形成する工程である。
セルロースアシレートの溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、または特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
ドープ中のセルロースアシレートの濃度は10〜35質量%が好ましい。溶解中または後のドープに添加剤を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属ベルト、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
ダイの口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、何れも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
ウェブ(セルロースエステルフィルム)の完成品となる前の状態であって、まだ溶媒を多く含むものをこう呼ぶ)を金属支持体上で加熱し、金属支持体からウェブが剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または金属支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が、乾燥効率がよく好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。裏面液体伝熱の場合は、ドープ使用有機溶媒の主溶媒または最も低い沸点を有する有機溶媒の沸点以下で加熱するのが好ましい。
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。なお、剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に金属支持体上で充分に乾燥させ過ぎてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
ここで、製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離することで製膜速度を上げることができる)としてゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。例えば、ドープ中にセルロースアシレートに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、金属支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。金属支持体上でゲル化させ剥離時の膜の強度を上げておくことによって、剥離を早め製膜速度を上げることができる。
金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により5〜150質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。本発明においては、該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
残留溶媒量は下記の式で表すことができる。
残留溶媒量(質量%)=[(M−N)/N]×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、Nは質量Mのものを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
前記剥離工程後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置、および/またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いて、ウェブを乾燥することが好ましい。
また、熱処理温度は、30分以下であることが好ましく、20分以下であることがより好ましく、10分程度であることが特に好ましい。
前記セルロースエステルフィルムは、MD及びTDの引張り弾性率が、4.0GPa以上という特徴がある。MD及びTDの引張り弾性率は、上記製造方法において、流延時及び流延によって形成された膜を搬送する際に、MDに負荷をかけることで、及び/又は延伸処理を施すことによって、上記範囲に調整することができる。延伸処理は、MD及びTDのいずれか一方向に行ってもよいし、双方の方向に2軸延伸してもよい。2軸延伸が好ましい。延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。また、引張り弾性率は、使用するセルロースアシレートの種類やアシル置換度を調整したり、添加剤、例えば糖エステルの種類を選択することで、又はその割合を調整したりすることで、上記範囲に調整することができる。
なお、ここでいう「延伸倍率(%)」とは、以下の式により求められるものを意味する。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
なお、本発明においては、フィルム搬送方向に直交する方向TDに延伸する方法として、テンター装置を用いて延伸することが好ましい。
以上のようにして得られた、フィルムの長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。フィルムの幅は、0.5〜5.0mが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0mであり、さらに好ましくは1.0〜2.5mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
本発明で使用するセルロースエステルフィルムは単層フィルムであっても、2層以上の積層構造を有していてもよい。例えば、コア層と表層の2層からなる積層構造であって、共流延によって製膜された態様であることも好ましい。
前記セルロースエステルフィルムの厚みについては特に制限はない。光学異方性層の基材フィルムとしての機能を達成できればよい。一般的には、30〜80μmである。
本発明の光学フィルムは、厚みが0.1〜6μm(好ましくは3〜6μm)の光学異方性層を有する。光学異方性層また、基材フィルムがTD及びMD方向に大きな弾性率を有するセルロースエステルであると、前記範囲の薄い光学異方性層とした場合に従来MDまたはTDのうち弾性率が少ない方向で損なわれていた鉛筆硬度をTD方向もMD方向も顕著に高めることができ、さらに前記特定の弾性率の範囲以上とすることで、顕著に鉛筆硬度を高めることができる。
また、本発明の光学フィルムのより好ましい態様では、基材フィルムがTD及びMD方向に大きな弾性率により、硬化性組成物をそのフィルム上で硬化させることにより、光学異方性層と基材フィルムとの密着性にも優れた光学フィルムとなる。
本発明に係る光学異方性層はフィルムに硬度や耐傷性を付与するための層である。例えば、塗布組成物を基材フィルム(セルロースエステルフィルム)上に塗布し、硬化させることによって形成することができる。また、他の機能を付加することを目的として、光学異方性層上に、他の機能層を積層してもよい。また光学異方性層にフィラーや添加剤を加えることで、機械的、電気的、光学的な物理的な性能や撥水・撥油性などの化学的な性能を光学異方性層自体に付与することもできる。
円盤状(ディスコティック)液晶性化合物の例には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett、A、78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.、1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
上記の液晶性化合物と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することができる。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。具体的には、特開2002−296423号、特開2001−330725号、特開2000−155216号等に記載されたものが好ましい。
光学異方性層は、少なくとも一種の液晶性化合物及び必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む組成物を、例えば塗布液として調製し、該塗布液を配向膜の表面(例えば、ラビング処理面)に塗布することで形成できる。
配向膜等の表面上で配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定するのが好ましい。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、組成物(塗布液である場合は固形分)の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
光学異方性層がハイブリッド配向していれば、面内遅相軸に直交する面内において、法線方向から40度傾いた方向から測定したレターデーションR[+40°]と、該法線に対して逆に40度傾いた方向から測定したレターデーションR[−40°]の比が、下記式(I)または(II)を満たす。
R[+40°]>R[−40°]の場合
1.1≦R[+40°]/R[−40°]≦40・・・(I)
R[+40°]<R[−40°]の場合
1.1≦R[−40°]/R[+40°]≦40・・・(II)
本発明で用いられる第1、第2の光学異方性層の光学特性としては、波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が5〜65nmであることが好ましく、Re(550)が7〜60nmであることがより好ましく、Re(550)が10〜55nmであることが最も好ましい。
本発明では、光学異方性層中の液晶性化合物は配向軸によって配向制御され、その状態に固定されているのが好ましい。前記液晶性化合物を配向制御する配向軸としては、光学異方性層と前記ポリマーフィルム(支持体)との間に形成された配向膜のラビング軸が挙げられる。但し、本発明において配向軸はラビング軸に限定されるものではなく、ラビング軸と同様に液晶性化合物を配向制御し得るものであれば、いかなるものであってもよい。
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報明細書中段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。
配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
本発明は、ポリマー組成物からなる第1ドメインと、該第1ドメイン内部に配置された第2ドメインとを含む拡散層であって、前記第2ドメインが形状異方性を有する気泡であり、前記第1ドメイン中のポリマーの分子主鎖の平均配向方向が前記第2ドメインの長軸の平均方向とは異なることを特徴とする光学フィルムである。
本発明において、フィルムのX線回折測定は、フィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、自動X線回折装置(RINT 2000:(株)リガク製)、および汎用型イメージングプレート読み取り装置(R−AXIS DS3C/3CL)を用いて、フィルムを透過したビームの回折写真から求めることができる(Cu Kα線 50kV 200mA 10分)。
通常は延伸方向、つまり、ポリマー主鎖の方向とほぼ平行に前記第2ドメインの長軸の平均方向が向くが、本願では全く異なる方向を向く。
いかなる理論に拘泥するものでもないが、これはある一定の温度範囲で延伸することにより、製膜過程でポリマー中に生成した結晶部と非結晶部とが引き裂かれることに起因すると考えられる。すなわち、適切な延伸温度で延伸が実施されると、非結晶部のみが引き裂かれたようになり、さらに延伸倍率が一定以上になると、ポリマー間に空隙が亀裂状にできるため延伸方向とは異なる方向に長軸をもつためと推定される。
本発明において、前記第2ドメインは第1ドメイン内部に配置されているが、その他の気泡の配置は本発明の趣旨に反しない限り特に制限はなく、例えばフィルム表面近傍に存在する気泡がフィルム表面まで貫通している気孔の形状を有していてもよい。また、前記第2ドメインは、本発明の趣旨に反しない限り、前記第2ドメインの一部に気体以外の他の成分を含んでいてもよく、例えば第1ドメインに用いられるポリマーと異なる組成のポリマーが含まれていたり、水や有機溶媒などが充填されていてもよい。前記第2ドメインは、気泡中に気体が充填されていることが屈折率を本発明の好ましい範囲に調節する観点から好ましく、空気が充填されていることがより好ましい。なお、特に固体成分が前記第2ドメインに含まれている場合は、第2ドメイン中に、製膜時の揮散物やその他の粉末等が微量に固着している態様も含む。
本発明における形状異方性とは、外形形態が異方性を有していることをいう。このような異方性を持つ気泡は、楕円体や棒状体のように、外形に長い方向を持ち、その方向の長さを本願では第2ドメインの長軸という。その外形には多少の凹凸を有していてもよい。
本明細書中、前記第2ドメインの長軸は、その平均方向に特に制限はないが、フィルム面に対して水平方向に前記第2ドメインの長軸平均方向が存在することが好ましい。
前記第2ドメインの長軸平均方向および長軸平均長は、任意の方向におけるフィルム断面を、例えば電子顕微鏡で観察することにより決定することができる。また、前記第2ドメインの長軸がフィルム面に水平方向に存在する場合は、第2ドメインの長軸の平均方向および長軸平均長は以下の方法によって決めることができ、本発明ではこの方法を用いる。前記測定により決定したフィルムのポリマー分子主鎖の平均方向を0°とし、フィルム面内において0°方向から180°方向まで5°おきに、フィルム面に対して垂直に切断した。例えば、ある長方形の形状のフィルムを観測する場合において、ポリマー分子主鎖の平均方向を表す0°方向がフィルム長手方向であれば、90°方向はフィルム幅方向となり、180°方向はポリマー分子主鎖の平均方向に再度一致するフィルム長手方向となる。その各断面(本発明では37枚のフィルム断面)を、例えば電子顕微鏡で観察し、それぞれの断面において任意に第2ドメイン100個を選択し、それらの第2ドメイン100個の長軸の長さを測定し、平均値をそれぞれ求めた。前記37枚のフィルム断面において、最も前述の第2ドメイン100個の長軸の長さ(該断面における第2ドメインの横幅)の平均が長かった断面を決定し、その断面を切断した角度を、本明細書中における第2ドメインの長軸の平均方向とした。また、そのときの角度における第2ドメイン100個の長軸の長さの平均を、本明細書中における第2ドメインの長軸平均長とした。以下、本明細書中において、前記第2ドメインの長軸平均長を「第2ドメインの長軸の平均長a」とも言う。
次に、第2ドメインのフィルム面内方向の短軸平均長を以下の方法で求めることができる。前記37枚のフィルム断面を切断した角度のうちの長軸の平均方向を決めた角度から、フィルム面内方向に90°ずらした角度のフィルム断面中から任意に第2ドメイン100個を選択し、それら第2ドメイン100個の該断面におけるフィルム面内方向に平行な軸の長さ(該断面における第2ドメインの横幅)を測定し、平均値を求めた。これを、前記第2ドメインのフィルム面内方向の短軸平均長とした。以下、本明細書中において、前記第2ドメインのフィルム面内方向の短軸平均長を「第2ドメインのフィルム面内方向の短軸平均長b」とも言う。
一方、第2ドメインのフィルム膜厚方向の短軸平均長は以下の方法で求めることができる。膜厚方向の短軸平均長は、前記第2ドメインの長軸の平均方向を決めた角度におけるフィルム断面において、任意の第2ドメイン100個を選択し、それら第2ドメイン100個の該断面における膜厚方向に平行な軸の長さ(該断面における第2ドメインの縦方向の長さ)を測定し、平均値を求めた。これを、前記第2ドメインのフィルム膜厚方向の短軸平均長とした。以下、本明細書中において、前記第2ドメインのフィルム膜厚方向の短軸平均長を「第2ドメインのフィルム膜厚方向の短軸平均長c」とも言う。
なお、各ドメインの屈折率は、例えばエリプソメーター(M220;日本分光(株)製)によって測定することができる。
なお、ドメインのサイズとは、球相当直径をいうものとする。ドメインのサイズを球相当径として半径rを決定して体積を求めた。球相当直径は、異方性形状である第2ドメイン(気泡)の体積をVとしたとき、以下の式1で求められる。また、ドメインのサイズは、電子顕微鏡によって測定することができる。
式1
球相当直径 = 2×(3×V/(4×π))(1/3)
ここで、第2ドメイン(気泡)の体積Vは、前記で求めた前記第2ドメインの長軸平均長a、前記第2ドメインの面内方向の短軸平均長b、前記第2ドメインの膜厚方向の短軸平均長cを用い、前記第2ドメインを楕円体と仮定して、V=4/3×π×(a/2×b/2×c/2)より求めた。
なお、体積分率とは、全体積に対する第2ドメインが占める体積であり、例えば、上記通りに測定した各ドメインのサイズに基づいて算出することができる。
前記体積分率は、フィルム断面の電子顕微鏡写真における第2ドメイン面積とフィルム断面積から求めることができる。本発明においては、前記体積分率を前記第2ドメインの長軸の平均方向を決定した角度における膜厚方向のフィルム断面(フィルム面に垂直方向に切断した断面)における、前記第2ドメインの面積分率100点の平均値として求めた。
本発明のフィルムは、前記第2ドメインが膜厚方向に密度分布を有することが好ましい。前記第2ドメインを膜厚方向に密度分布をもたすことで、散乱から次の散乱までの距離を短くすることが可能であり、また、散乱量を徐々に変化させることが可能であるため、散乱指向性がより前方方向を向くこととなる。そのため均一な分布での散乱よりも、同一ヘイズ時の全光透過率を高くすることが可能となる。また、第2ドメインの膜厚方向の高密度部を設ける事で、フィルム全体としての脆性抑制にもより効果がある。
上記を考慮すると、膜厚の半分の厚さ中に全気泡の70%以上が含まれるような第2ドメインの膜厚方向の密度が高い部分が形成されていることが好ましい。第2ドメインの膜厚方向の高密度部は膜厚中の中心にあってもよいし、表面にあってもよい。第2ドメインの膜厚方向の高密度部が表面にある場合は、表面散乱フィルムとしてしようした場合の文字ボケを軽減するため、偏光板貼合面側に該第2ドメインの膜厚方向の高密度部を配置する方がよい。第2ドメインの密度分布値は、70%以上であることが好ましく、75%以上あることがより好ましく、80%以上あることが特に好ましい。上記の第2ドメインの密度分布値は、以下の方法により測定することができる。
密度分布値とは、第2ドメインの密度が最も高くなるような膜厚の半分の厚さの部分を選んだとき、該膜厚の半分の厚さの部分に占める第2ドメインの体積割合のことである。これは前記同様に、例えば、前記第2ドメインの長軸の平均方向を決定した角度における膜厚方向のフィルム断面(フィルム面に垂直方向に切断した断面)の電子顕微鏡写真から判断できる。
前記第1ドメインは、ポリマー組成物からなる。利用するポリマーについて制限はないが、可視光に対して光透過性の高いポリマーから選択するのが好ましい。また気泡からなる第2のドメインの屈折率が1.00程度であることと、好ましい体積分率とを考慮すると、前記好ましい範囲の屈折率差とするためには、第1のドメインの屈折率n1は、1.1以上であるのが好ましく、1.2以上であるのが好ましく、1.3以上であるのがより好ましい。これらの特性を満足するポリマーの例には、セルロースアシレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエステル、ポリスチレン、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート系共重合体、ポリ塩化ビニリデン等が含まれる。但し、これらに限定されるものではない。貼り合せる偏光膜が、通常、ポリビニルアルコール膜であることを考慮すると、これと親和性があり、接着性が良好な、セルロースアシレート、ポリビニルアルコールを主成分のポリマーとして含有することが好ましく、経時安定性の観点からセルロースアシレートが好ましい。ここで、「主成分としてのポリマー」とは、フィルムが単一のポリマーからなる場合には、そのポリマーのことを意味し、複数のポリマーからなる場合には、構成するポリマーのうち最も質量分率の高いポリマーのことを意味する。
セルロースアシレートフィルムの原料のセルロースとしては、綿花リンター、ケナフ、木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)等があり、何れの原料セルロースから得られるセルロースエステルでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
セルロースアシレートは、セルロースと複数のカルボン酸とのエステルであってもよい。すなわち、セルロースアシレートは、複数のアシル基で置換されていてもよい。
本発明のフィルムである、本発明の製造方法により製造されるセルロースアシレートフィルムに求めるヘイズにより、適宜、SA+SBを調整することとなるが、好ましくは2.70<SA+SB≦3.00、より好ましくは2.80≦SA+SB≦3.00であり、さらに好ましくは2.85≦SA+SB≦2.98である。SA+SBを大きくすることによりヘイズを高くしやすい傾向がある。
また、SBを調整することによっても、本発明の製造方法により製造されるセルロースアシレートフィルムのヘイズを調整することができる。SBを大きくすることにより、ヘイズを高くしやすい傾向があると同時に、フィルムの弾性率や融点が下がる。フィルムのヘイズとその他の物性とのバランスを考慮すると、SBの範囲は、好ましくは0≦SB≦2.9、より好ましくは0.5≦SB≦2.5であり、さらに好ましくは1≦SB≦2.0である。なお、セルロースの水酸基がすべて置換されているとき、上記の置換度は3となる。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、微量の有機材料、無機材料及びそれらの混合物からなる粒子を分散含有していてもよい。これらの粒子は、製膜時におけるフィルムの搬送性向上を目的として添加される。この目的を達成し、本発明の効果を損なわないためには、粒子の粒径は5〜3000nmであるのが好ましく、屈折率は本発明のポリマーフィルムの屈折率との差が0〜0.5であるのが好ましく、添加量は1質量%以下であるのが好ましい。例えば、無機材料の粒子の例には、酸化珪素、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粒子が含まれる。有機材料の粒子の例には、アクリル系樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、スチレン系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が含まれる。
(延伸工程)
本発明の拡散層の一実施形態は、気泡を分散含有するポリマーフィルムである。この実施形態の光学フィルムの製造方法の一例は、以下の通りである。以下の方法によれば、煩雑な操作や特別な装置等が不要であり、簡易に本発明の光学フィルムを製造することができる。すなわち本発明の光学フィルムの製造方法は、ポリマー組成物からなり、ヘイズが1%以下のフィルムを、延伸温度(Tg−20)〜Tc℃(Tgはフィルムのガラス転移温度、Tcはフィルムの結晶化温度)、且つ延伸倍率1〜300%で延伸する工程を含む。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
[式中、Mは、延伸ゾーンに挿入される直前のポリマーフィルムの質量、Nは、延伸ゾーンに挿入される直前のポリマーフィルムを110℃で3時間乾燥させたときの質量を表す]
延伸温度が好ましい温度範囲であっても、ヘイズを十分に上昇させる程度に延伸すると、フィルムの脆性が低下する傾向にある。さらに一方で、前記温度よりも高温で延伸するとヘイズが上昇しないが、フィルムの脆性は改良される傾向にある。したがって、延伸時のフィルム温度に表裏差をつけることにより、前記第2ドメインの膜厚方向の密度分布を調整することが出来、ヘイズと脆性改善とを両立することが可能となる。具体的には、例えば、膜厚方向の前記第2ドメインの膜厚方向の高密度部をフィルム表面側に形成したい場合、フィルム表面温度をフィルム裏面温度よりも0.1℃以上低くすることで達成できる。膜厚方向の前記第2ドメインの膜厚方向の高密度部をフィルム裏面側に形成したい場合、フィルム裏面温度をフィルム表面温度よりも0.1℃以上低くすることで達成できる。
フィルムの表面温度と裏面温度との温度差を0.1℃以上に制御することが好ましく、0.5〜30℃に制御することがより好ましく、1〜10℃に制御することがさらに好ましく、温度差は、前記延伸温度よりも高い温度で与えられることが好ましい。フィルムの表面温度と裏面温度との温度差は、例えば、加熱のためにフィルムに吹き付ける熱風温度を表裏で変化させたり、表裏の熱風の風量を変化させたり、冷却もしくは加熱ロールにフィルムを接触させたりして実施してもよい。
また本発明の製造方法では延伸前に気泡などを発生させる必要がないため、気泡を含むフィルムを製造する際に特に工程数を増やす必要がなく、製造コストも低下させることができる。
本発明において、前記延伸工程でヘイズを発現させたフィルムには、さらにヘイズを後調整する工程を適用させることもできる。例えば、得られたフィルムに熱や圧力を加えることで、ヘイズを低下させる方向にさらに調整することができ、延伸を繰り返したりフィルムにせん断をかけたりすることで、ヘイズを上昇させる方向にさらに調整することができる。ヘイズを低下させる具体的な方法としては、例えば、熱風や赤外線ヒーター等の加熱装置を用いて、フィルムに前記延伸温度以上の熱を加えることや、ニップロール等の加圧装置を用いて、フィルムに圧力を加えることや、それらを組み合わせることが挙げられる。また、ヘイズを上昇させる具体的な方法としては、例えば、前述の延伸工程を繰り返し実施することや、周速の異なるニップロール間にフィルムを挟んでせん断を加えることが挙げられる。
本発明の光学フィルムの製造方法では、前記延伸時の延伸速度が、1〜300%/分であることが均一なドメインサイズを形成する観点から好ましく、3〜100%/分であることがより好ましく、5〜50%/分であることが特に好ましい。
本発明の光学フィルムは、液晶セルと偏光子の間に配置される光学補償フィルムとして有用である。
本発明は、本発明の光学フィルムと偏光子とを有する偏光板にも関する。
本発明の偏光板は、一般的な方法で作製することができる。例えば、本発明の光学フィルムのセルロースエステルフィルムの裏面(光学異方性層が形成されていない側の面)と、偏光子とを貼り合わせることで作製することができる。前記セルロースエステルの貼合面は、アルカリ鹸化処理を行うことが好ましい。また、貼合には、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いることができる。
また、偏光板の作製時には、本発明の光学フィルムが有するセルロースエステルフィルムが面内遅相軸を有する場合は、該面内遅相軸と偏光子との透過軸が平行もしくは直交するように貼合することが好ましい。
本発明の液晶表示装置は、本発明の偏光板を有することを特徴とする。本発明の偏光板は、表示面側に配置される偏光板であるのが好ましく、本発明の光学フィルムを表示面側外側にして配置されるのが好ましい。その他の構成については、公知の液晶表示装置のいずれの構成も採用することができる。そのモードについても特に制限はないが、TN(Twisted Nematic)、表示モードの液晶表示装置として使用すると、視野角拡大効果が高く最も好ましい。
1.光学補償フィルム1の作製
(セルロースエステル溶液Aの調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースエステル溶液1−Aを調製した。アセチル置換度はASTM D−817−91に準じて測定した。粘度平均重合度は宇田らの極限粘度法{宇田和夫、斉藤秀夫、「繊維学会誌」、第18巻第1号、105〜120頁(1962年)}により測定した。
セルロースエステル溶液Aの組成
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以下のHPLC条件下での測定により保持時間が31.5min付近にあるピークを8置換体、27〜29min付近にあるピーク群を7置換体、22〜25min付近にあるピーク群を6置換体、15〜20min付近にあるピーク群を5置換体、8.5〜13min付近にあるピーク群を4置換体、3〜6min付近にあるピーク群を3置換体としてそれぞれの面積比を合計した値に対する平均置換度を算出した。
《HPLC測定条件》
カラム:TSK−gel ODS−100Z(東ソー)、4.6*150mm、ロット番号(P0014)
溶離液A:H2O=100、 溶離液B:AR=100。A,BともにAcOH、NEt3各0.1%入り
流量:1ml/min、カラム温度:40℃、波長:254nm、感度:AUX2、注入量:10μl、リンス液:THF/ H2O=9/1(vol比)
サンプル濃度:5mg/10ml(THF)
なお、別の実施例で使用する糖エステル2についても同様にして平均エステル置換度を測定することができるが、下記糖エステル2はエステル置換度がほぼ100%の単一の化合物であった。
また全ての実施例で使用したスクロースベンゾエートは、全て反応溶媒であるトルエンの減圧乾燥(10mmHg以下)を行い100ppm未満であるものを使用した。
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤分散液1−Bを調製した。
下記の組成物を別のミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、紫外線吸収剤溶液C−1を調製した。
下記の組成物を別のミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、紫外線吸収剤溶液C−2を調製した。
セルロースエステル溶液Aに、マット剤分散液Bを、セルロースエステル100質量部当たり、前記糖エステル1が表12に記載の添加量になるように加えた。得られた溶液にさらに紫外線吸収剤(UV−1)及び紫外線吸収剤(UV−2)がそれぞれ表12に記載の添加量となるように紫外線吸収剤溶液C−1、あるいは、C−2を加え、加熱しながら充分に攪拌して各成分を溶解し、ドープを調製した。得られたドープを30℃に加温し、流延ギーサーを通して直径3mのドラムである鏡面ステンレス支持体上に流延した。支持体の表面温度は−5℃に設定し、塗布幅は1470mmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。そして、流延部の終点部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースエステルフィルムをドラムから剥ぎ取った後、両端をピンテンターでクリップした。剥ぎ取り直後のセルロースエステルウェブの残留溶媒量は70%およびセルロースエステルウェブの膜面温度は5℃であった。
出来上がったセルロースエステルフィルムの膜厚は40μmであった。
このセルロースアセテートフィルム上に、下記の組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28mL/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。形成された膜表面に、ラビングロールで搬送方向に対し+45°方向(反時計回り)に500回転/分で回転させてラビング処理を行い、配向膜を作製した。同様に、形成された膜表面に、ラビングロールで搬送方向に対し−45°方向(時計回り)に500回転/分で回転させてラビング処理を行い、配向膜を作製した。
下記塗布液を、#3.2のワイヤーバーを用いて、フィルムの配向膜面に連続的に塗布した。室温から100℃に連続的に加温する工程で、溶媒を乾燥させ、その後、135℃の乾燥ゾーンで約90秒間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置により、照度600mWの紫外線を10秒間照射し、架橋反応を進行させ、ディスコティック液晶化合物を重合した。その後、室温まで放冷し、光学異方性層を形成し、光学補償フィルム1を作製した。
セルロースエステルフィルムの変わりにガラス板上に配向膜、光学異方性層を同様に作製し、KOBRA−WR(王子計測器(株)製)を用いて、光学異方性層の波長550nmの面内レターデーションRe(550)を測定した。また、光学異方性層の遅相軸に直交する面内において、法線方向から±40度に傾斜した方向から波長550nmの光を入射させてレターデーションR[+40°]及びR[−40°]を測定し、R[−40°]/R[+40°]を算出した。
その結果、Re(550)は55nm、R[−40°]/R[+40°]は4.2であった。
実施例1における各溶液の組成を表12の記載に変更した以外は、実施例1と同じ組成、製法で光学補償フィルム2〜5を作成した。糖エステル2は、以下の化11に記載の化合物を用いた。
実施例3は、ドラムから剥離した後、 残留溶媒70%、延伸温度フィルムのガラス転移点Tg−30〜Tg−5℃の条件で、テンターを用いて幅方向に40%延伸を行った。
(光学補償フィルム6の作製)
(1)中間層用ドープ1の調製
下記組成の中間層用ドープ1を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ドープ1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
・セルロースアセテート(アセチル化度2.86) 100質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 320質量部
・メタノール(第2溶媒) 83質量部
・1−ブタノール(第3溶媒) 3質量部
・トリフェニルフォスフェート 7.6質量部
・ビフェニルジフェニルフォスフェート 3.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
攪拌羽根を有する4000Lのステンレス性溶解タンクに、上記混合溶媒をよく攪拌・分散しつつ、セルロースアセテート粉体(フレーク)、トリフェニルフォスフェート及びビフェニルジフェニルフォスフェートを徐々に添加し、全体が2000kgになるように調製した。なお、溶媒は、すべてその含水率が0.5質量%以下のものを使用した。まず、セルロースアセテートの粉末は、分散タンクに粉体を投入して、攪拌剪断速度を最初は5m/sec(剪断応力5×104kgf/m/sec2)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸および、中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×104kgf/m/sec2)で攪拌する条件下で30分間分散した。分散の開始温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。分散終了後、高速攪拌は停止し、アンカー翼の周速を0.5m/secとしてさらに100分間攪拌し、セルロースアセテートフレークを膨潤させた。膨潤終了までは窒素ガスでタンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際のタンク内の酸素濃度は2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。またドープ中の水分量は0.5質量%以下であることを確認し、具体的には0.3質量%であった。
次に36℃まで温度を下げ、公称孔径8μmの濾材を通過させドープを得た。この際、濾過1次圧は1.5MPa、2次圧は1.2MPaとした。高温にさらされるフィルター、ハウジング、及び配管はハステロイ合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の熱媒を流通させるジャケットを有する物を使用した。
マット剤(二酸化ケイ素(粒径20nm))と剥離促進剤(クエン酸エチルエステル(クエン酸、モノエチルエステル、ジエチルエステル、トリエチルエステル混合物))と前記中間層用ドープ1を、静止型混合器を介して混合させて支持体層用ドープ2を調製した。添加量は、全固形分濃度が20.5質量%,マット剤濃度が0.05質量%,剥離促進剤濃度が0.03質量%となるように行った。
マット剤(二酸化ケイ素(粒径20nm))を静止型混合器を介して前記中間層用ドープ1に混合させて、エアー層用ドープ3を調製した。添加量は、全固形分濃度が20.5質量%,マット剤濃度が0.1質量%となるように行った。
流延ダイとして、共流延用に調整したフィードブロックを装備して、主流のほかに両面にそれぞれ積層して3層構造のフィルムを成形できるようにした装置を用いた。以下の説明において、主流から形成される層を中間層と称し、支持体面側の層を支持体層と称し、反対側の面をエアー層と称する。なお、ドープの送液流路は、中間層用、支持体層用、エアー層用の3流路を用いた。
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、30℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
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セルロースアセテート溶液組成(質量部) 内層 外層
───────────────────────────────────
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100 100
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8 7.8
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9 3.9
メチレンクロライド(第1溶媒) 293 314
メタノール(第2溶媒) 71 76
1−ブタノール(第3溶媒) 1.5 1.6
シリカ微粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
0 0.8
下記レターデーション上昇剤 1.7 0
───────────────────────────────────
比較例として、実施例1〜7の透明支持体であるセルロースエステルフィルムに代えて、富士フイルム(株)製T40UZフィルム(厚み40μm)を使用して光学補償フィルム11を作成した。
(1)光学異方性層の鉛筆硬度
各光学フィルムを、25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K5400が規定する鉛筆硬度評価法に従い、各フィルムが有する光学異方性層のMD及びTDの双方の方向の鉛筆硬度を、評価した。具体的には、500gのおもりを用いて各硬度の鉛筆でハードコート層表面を5回繰り返し引っ掻き、傷が1本までの硬度を測定した。なお、JIS−K5400で定義される傷は塗膜の破れ、塗膜のすり傷であり、塗膜のへこみは対象としないと記載されているが、本評価では、塗膜のへこみも含めて傷と判断した。実用上は、HB以上が好ましく、数値が高いほど、高硬度なため好ましい。
作成後の各光学補償フィルムについて擦り傷故障の個数を確認し、1m当りの擦り傷の個数で評価した。1mあたり0.75個未満が好ましく、数字が少ないほど傷がつきにくいため好ましい。下記のようにA、B、Cで評価した。
A:0.55個/m未満
B:0.75個/m未満
C:0.75個/m以上
(偏光板の作製)
上記で作製した光学補償フィルム1〜7と光学補償フィルム11とを、偏光膜の表面にそれぞれ貼合して偏光板1〜7と11とを作製した。また、上記で作製した光学補償フィルム2と光学補償フィルム4とを、偏光膜の表面にそれぞれ貼合して偏光板8を作製した。なお、フィルムの貼合面には、アルカリ鹸化処理を施した。また、偏光膜は、厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して作製した、厚さ20μmの直線偏光膜を用い、また接着剤としては、ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を用いた。
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(S23A350H、サムスン電子(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに、上記で作製した偏光板の2枚を選択して、粘着剤を介して、光学補償フィルムが液晶セル側になるよう、観察者側及びバックライト側に一枚ずつ貼り付け、TNモード液晶表示装置1〜6と11とをそれぞれ作製した。バックライトの輝度半値幅角度は100度であった。測定機には「EZ−Contrast XL88」(ELDIM社製)を用い、その測定結果から、正面輝度の半分の値になる角度を算出した。
表示装置の表面側に用いられる偏光板保護フィルム用に光拡散層を形成した。
[光拡散フィルムA(高内部散乱フィルム)]
(光拡散層用塗布液の調製)
下記塗布液1を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して光拡散層用塗布液を調製した。
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
・PET−30:ペンタエリスリトールトリアクリレート[日本化薬(株)製]
・イルガキュア127:重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]
・イルガキュア184:重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]
・ゾル液の調製
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液を得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
中空シリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31、特開2002−79616号公報の調製例4に準じサイズを変更して作成)500gに、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)30g、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.5g加え混合した後に、イオン交換水の9gを加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8gを添加した。この分散液500gにほぼシリカの含量一定となるようにシクロヘキサノンを添加しながら、減圧蒸留による溶媒置換を行った。分散液に異物の発生はなく、固形分濃度をシクロヘキサノンで調整し20質量%にしたときの粘度は25℃で5mPa・sであった。得られた分散液Aのイソプロピルアルコールの残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1.5%であった。
エチレン性不飽和基含有含フッ素ポリマー(特開2005−89536号公報製造例3に記載のフッ素ポリマー(A−1))固形分として41.0gをメチルイソブチルケトン500gに溶解し、更に、分散液Aを260質量部(シリカ+表面処理剤固形分として52.0質量部)、DPHA 5.0質量部、イルガキュア127(光重合開始剤、チバスペシャルティーケミカルス製)2.0質量部を添加した。塗布液全体の固形分濃度が6質量%になるようにメチルエチルケトンで希釈して低屈折率層用塗布液を調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.36であった。
トリアセチルセルロースフィルム(T40UZフィルム(厚み40μm)、富士フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して、スロットルダイを有するコーターを用いて、光拡散層用塗布液を直接押し出して塗布した。搬送速度30m/分の条件で塗布し、30℃で15秒間、90℃で20秒間乾燥の後、さらに窒素パージ下酸素濃度0.2%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量90mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させて、光拡散層を形成し、その後、巻き取った。得られた光拡散層の厚さは8.0μmであった。
上記の様にして形成した光拡散層の上に、スロットルダイを有するコーターを用いて、低屈折率層用塗布液をバックアップロール上のハードコート層を塗布してある面上に直接押し出して塗布し、厚さ100nmの低屈折率層を形成し、その後巻き取った。この様にして、光拡散フィルムAを作製した。乾燥・硬化条件を以下に示す。
乾燥:90℃で60秒間乾燥した。
硬化:窒素パージにより酸素濃度0.1%の雰囲気下で空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量400mJ/cm2の紫外線を照射した。この時のヘイズは58%であった。
また、これらの光学補償フィルムを、先に記載した実装評価におけるTNモード液晶表示装置と同様に作製し、TNモード液晶表示装置1A〜5Aと11Aを作成した。
[光拡散フィルム(セルロースアシレートフィルム)]
まず、以下光拡散フィルムにおいて測定した種々の特性の測定法及び評価法を以下に示す。
1.ガラス転移温度(Tg)
DSC測定装置(DSC8230:(株)リガク製)を用い、DSCのアルミニウム製測定パン(Cat.No.8578:(株)リガク製)に、熱処理前のポリマーフィルムのサンプルを5〜6mg入れる。これを50mL/分の窒素気流中で、25℃から120℃まで、20℃/分の昇温速度で昇温して15分保持した後、30℃まで−20℃/分で冷却する。その後、再度、30℃から250℃まで20℃/分の昇温速度で昇温し、その際に測定されるサンプルのサーモグラムと2本のベースラインの中線との交点の温度を、フィルムのガラス転移温度とした。
DSC測定装置(DSC8230:(株)リガク製)を用い、DSCのアルミニウム製測定パン(Cat.No.8578:(株)リガク製)に、熱処理前のポリマーフィルムのサンプルを5〜6mg入れる。これを50mL/分の窒素気流中で、25℃から120℃まで20℃/分の昇温速度で昇温して15分保持した後、30℃まで−20℃/分で冷却する。さらに、再度、30℃から320℃まで20℃/分の昇温速度で昇温し、この際に現れた発熱ピークの開始温度をフィルムの結晶化温度とした。
セルロースアシレートのアシル置換度は、Carbohydr.Res.273(1995)83−91(手塚他)に記載の方法で13C−NMRにより求めた。
ヘイズは、ヘイズメーター(NDH 2000:日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
全光透過率及び平行透過率についても、同様に測定した。
下記表14に示す通り、以下のセルロースアシレートBを表中に記載の割合で添加し、溶媒に溶解し、セルロースアシレートのドープをそれぞれ調製した。調製法の詳細も、以下に示す。
なお、セルロースアシレートは120℃に加熱して乾燥し、含水率を0.5質量%以下とした後、表14記載の量[質量部]を使用した。
・セルロースアシレートB(セルロースアセテート):
置換度が2.86のセルロースアセテートの粉体を用いた。セルロースアシレートBの粘度平均重合度は300、6位のアセチル基置換度は0.89、アセトン抽出分は7質量%、質量平均分子量/数平均分子量比は2.3、含水率は0.2質量%、6質量%ジクロロメタン溶液中の粘度は305mPa・s、残存酢酸量は0.1質量%以下、Ca含有量は65ppm、Mg含有量は26ppm、鉄含有量は0.8ppm、硫酸イオン含有量は18ppm、イエローインデックスは1.9、遊離酢酸量は47ppmであった。粉体の平均粒子サイズは1.5mm、標準偏差は0.5mmであった。
下記の溶媒Aを使用した。これらの溶媒の含水率は0.2質量%以下であった。
・溶媒A:
ジクロロメタン/メタノール=87/13(質量比)
攪拌羽根を有し外周を冷却水が循環する400リットルのステンレス製溶解タンクに、前記溶媒及び添加剤を投入して撹拌、分散させながら、セルロースアシレートを徐々に添加した。投入完了後、室温にて2時間撹拌し、3時間膨潤させた後に再度撹拌を実施し、セルロースアシレート溶液を得た。
なお、攪拌には、15m/sec(剪断応力5×104kgf/m/sec2〔4.9×105N/m/sec2〕)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸及び中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×104kgf/m/sec2〔9.8×104N/m/sec2〕)で攪拌する攪拌軸を用いた。膨潤は、高速攪拌軸を停止し、アンカー翼を有する攪拌軸の周速を0.5m/secとして実施した。
膨潤した溶液をタンクから、ジャケット付配管で50℃まで加熱し、さらに2MPaの加圧化で90℃まで加熱し、完全溶解した。加熱時間は15分であった。この際、高温にさらされるフィルター、ハウジング、及び配管はハステロイ合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の熱媒を流通させるジャケットを有する物を使用した。
次に36℃まで温度を下げ、セルロースアシレート溶液を得た。
得られたセルロースアシレート溶液を、絶対濾過精度10μmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの金属焼結フィルター(FH025、ポール社製)にて濾過してポリマー溶液を得た。
セルロースアシレート溶液を30℃に加温し、流延ギーサー(特開平11−314233号公報に記載)を通して15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。流延スピードは50m/分、塗布幅は200cmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。そして、流延部の終点部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルムをバンドから剥ぎ取り、45℃の乾燥風を送風した。次に110℃で5分、さらに140℃で10分乾燥して、セルロースアシレートフィルムを得た。得られたセルロースアシレートフィルムのヘイズを前述の方法により測定し、その結果を下記表14に記載した。
得られたセルロースアシレートを、表14に示す延伸条件で、以下の記載の通り延伸した。なお、フィルムの延伸倍率は、フィルムの搬送方向と直交する方向に一定間隔の標線を入れ、その間隔を延伸工程前後で計測し、下記式から求めた。
フィルムの延伸倍率(%)=100×(延伸後の標線の間隔−延伸前の標線の間隔)/延伸前の標線の間隔
このようにして、光拡散フィルムBを作成した。
得られた各セルロースアシレートフィルムのヘイズ、全光線透過率、平行透過率、各ドメインの屈折率の評価を行った。結果を下記表14に示す。
まず、作製した光学フィルムについて、ポリマー主鎖の分子配向方向を前述の方法に基づきX線回折測定により、測定して決定した。
次に、作製した光学フィルムをフィルム面に対して垂直に膜厚方向に切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(S−4300、(株)日立製作所製)で撮影した。前述の方法に基づき前記第2ドメインの長軸の平均方向を決定し、第2ドメインの長軸平均長aを測定した。その後、同様に前述の方法に基づき第2ドメインのフィルム面内方向の短軸平均長bおよび第2ドメインのフィルム膜厚方向の短軸平均長cを測定により求めた。
第2ドメインの長軸平均長/第2ドメインのフィルム面内方向の短軸平均長、第2ドメインの長軸平均長/第2ドメインのフィルム膜厚方向の短軸平均長、球相当直径を上述の方法で計算により求めた。また、体積分率、気泡の膜厚方向の密度分布を前述の方法により測定した。得られた結果を下記表14に記載した。なお、作製した光学フィルムにおいて、ポリマー主鎖の分子配向方向は、延伸方向とほぼ平行な方向であり、面内方向であることがわかった。また、前記第2ドメインの長軸の平均方向はポリマー主鎖の分子配向方向とほぼ垂直な方向(フィルム面内において約90°の方向)、すなわち、延伸方向とほぼ垂直な方向であることがわかった。
膜厚方向の密度分布値はフィルム面に垂直な方向のフィルム断面を走査型電子顕微鏡で撮影した際に、第2ドメインとして密度が最も高くなるような膜厚の半分の厚さの部分を選んだとき、該膜厚の半分の膜厚に占める第2ドメインの割合とした。作製した光学フィルムでは、フィルムの表面側の膜厚半分の範囲(すなわち、フィルムの上側の半分であり、延伸時に付けた裏表温度さが低温である側)が第2ドメインの密度が最も高くなるような膜厚の半分の厚さの部分であったため、該部分における密度分布値を測定した。
上記で作製したフィルムを80℃中に48時間置き、その後フィルムの断面を走査型電子顕微鏡で撮影した。それと常温においていたものとのフィルム断面を比較した。
その結果、上記のフィルムは、ポリマー主鎖と長軸の平均方向の角度、長軸の平均長さと面内方向の短軸の平均長さの比、密度分布、サイズ、ヘイズはほぼ同等だった。
また、これらの光学補償フィルムを、先に記載した実装評価におけるTNモード液晶表示装置と同様に作製し、TNモード液晶表示装置1B〜5Bと11Bを作成した。
作成後の液晶表示装置について擦り傷故障の個数を確認し、1m当りの擦り傷の個数で評価した。
上記で作製した各液晶表示装置に、ISO 12640−1:1997、規格番号 JIX 9201:1995、画像名 ポートレイトを表示し、暗室にて目視で下方向(極角30°)から観察して、表示画像の階調反転を評価した。
5:下方向での階調反転はほとんど観察されず、実用上問題ない。
4:下方向での階調反転は概ね観察されず、実用上問題ない。
3:下方向での階調反転が小さく、実用上問題ない。
2:下方向での階調反転が発生するが、実用上問題ない。
1:下方向での階調反転が悪いため、実用上問題ある。
偏光板1枚の膜厚が120μmを超えるものをB、120μm未満のものをAとして評価した。
また、TNモード液晶表示装置1B〜5Bでは、擦り傷は視認できなかったが、11Bでは擦り傷があることがわかり、擦り傷の程度が大きいことがわかった。
一方、比較例は、透明支持体として利用したセルロースエステルフィルムの引張り弾性率が小さいため、実施例と同じの光学異方性層を有していても、耐擦傷性は顕著に劣っていることが理解できる。
Claims (8)
- セルロースエステルフィルムと、その少なくとも一方の表面上に厚みが0.1〜6μmの光学異方性層を有し、前記セルロースエステルフィルムの搬送方向(MD)及び搬送方向と直交する方向(TD)の平均の引張り弾性率が4.0GPa以上である光学フィルム。
- 前記セルロースエステルフィルムが、少なくとも1種の糖エステルを含有する請求項1に記載の光学フィルム。
- 前記糖エステルが、置換基の種類が同一であり、かつ、エステル置換度が異なる複数の糖エステル化合物の混合物であり、該エステル置換度が異なる複数の糖エステル化合物の平均エステル置換率が62〜94%である請求項2に記載の光学フィルム。
- 前記セルロースエステルフィルムが、少なくとも1種のエステルオリゴマーを含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 前記セルロースエステルフィルムが、少なくとも1種のリン酸エステルを含有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学フィルムを少なくとも一枚有し、偏光子を挟んで反対側に光拡散層を含むフィルムを有する偏光板。
- 請求項6に記載の偏光板を、少なくとも視認側に有する液晶表示装置。
- 請求項6に記載の偏光板において、光学フィルム及び光拡散層を有するフィルムは、その夫々が厚さが20〜60μmのセルロースエステルフィルムを含む偏光板である請求項7に記載の液晶表示装置。
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