(第1実施形態)
以下、図1〜図4を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した第1実施形態について説明する。
この電子鍵盤楽器は、図1〜図3に示すように、楽器ケース1を備えている。この楽器ケース1は、前側上部(図1では左側上部)が開放された横長のほぼ箱形状に形成されている。
すなわち、この楽器ケース1は、図1〜図3に示すように、底板2と、この底板2の前端部(図1では左端部)に起立して設けられた前板3と、底板2の後端部(図1では右端部)に起立して設けられた後板4と、底板2の左右両側部(図1では紙面の表裏面の両側部)に起立して設けられた一対の側板5と、この一対の側板および後板4の上部に配置された天板6とを備えている。
この場合、前板3は、図1〜図3に示すように、後板4の高さのほぼ半分程度の高さで形成されている。また、一対の側板5は、その前端部が前板3よりも少し高く形成され、前後方向(図1では左右方向)におけるほぼ中間部から後部側が後板4と同じ高さで形成され、前端部から中間部に向けて後部上がりに傾斜する傾斜部5aに形成されている。
天板6は、図1〜図3に示すように、前天板7と後天板8とを備えている。この場合、前天板7は、一対の側板5の後部における前側上部に配置されている。後天板8は、一対の側板5の後部における後側上部と後板4の上部とに前天板7よりも一段低い位置に配置されている。これにより、楽器ケース1は、一対の側板5の各傾斜部5aに対応する前部側が上方に開放された横長のほぼ箱形状に形成されている。
この楽器ケース1内には、図1〜図3に示すように、鍵盤部10が設けられている。この鍵盤部10は、楽器ケース1の底板2上に配置された鍵盤シャーシ11と、この鍵盤シャーシ11上に上下方向に回転可能な状態で並列に配列された複数の鍵12とを備えている。この鍵盤部10は、複数の鍵12が楽器ケース1の前部側から上方に露呈した状態で、押鍵操作されるように構成されている。
また、この楽器ケース1内には、図1〜図3に示すように、コンソールパネル9が鍵盤部10の後部に位置する上側から天板6の前部の下側に向けて傾斜して設けられている。また、この楽器ケース1内には、鍵盤部10の上側を覆う鍵盤蓋13が蓋ガイド部14によって開閉可能に設けられている。この鍵盤蓋13は、前蓋15と後蓋16とを有し、この前蓋15と後蓋16とが蝶番17によって折り曲げ可能に連結された構成になっている。
この場合、前蓋15の前端部には、図1〜図3に示すように、ガイド軸15aが一対の側板5の内面に向けて突出して設けられている。また、後蓋16の前端部には、ガイド軸16aが一対の側板5の内面に向けて突出して設けられている。この後蓋16の後端部には、軸取付板16bが取り付けられており、この軸取付板16bには、ピニオンギア16cが回転可能に取り付けられている。
蓋ガイド部14は、図1〜図3に示すように、鍵盤蓋13が鍵盤部10の上側を覆った際に前蓋15と後蓋16とをほぼ平板状に配置し、かつ鍵盤蓋13が鍵盤部10を上側に開放した際に前蓋15と後蓋16とを蝶番17で折り曲げて鍵盤部10の後部に接近させた状態で配置させるように構成されている。この場合、蓋ガイド部14は、ガイドレール部18とガイド部材19とを有している。
ガイドレール部18は、図1〜図3に示すように、一対の側板5の内面に前板3の上側からコンソールパネル9の上側を経て後板4に向けて斜め上方に傾斜して設けられ、鍵盤蓋13の前蓋15のガイド軸15aと後蓋16のガイド軸16aとをそれぞれガイドするように構成されている。これにより、ガイドレール部18は、図1に示すように、前蓋15と後蓋16とが鍵盤部10の上側を覆った際に、前蓋15と後蓋16とを前下りに傾斜させた状態で平板状に配置するように構成されている。
ガイド部材19は、図1〜図3に示すように、鍵盤部10の後端部の上部付近に位置する箇所の側板5の内面に設けられた支持軸20と、この支持軸20に回転自在に取り付けられたアーム部21と、このアーム部21の先端と後蓋16のピニオンギア16cとを連結する連結軸22と、側板5に支持軸20を中心とする円弧状に設けられて連結軸22をガイドするガイド溝部23と、後蓋16のピニオンギア16cが噛み合って回転移動する半円形状のガイド歯車部24とを備えている。
これにより、蓋ガイド部14は、図1に示すように、鍵盤蓋13の前蓋15と後蓋16とが鍵盤部10の上側を覆って閉じた際に、前蓋15のガイド軸15aがガイドレール部18の前端部に位置し、後蓋16のガイド軸16aがガイドレール部18の中間部に位置し、後蓋16の後端部に位置する連結軸22がガイド溝部23の上端部に位置し、かつピニオンギア16cがガイド歯車部24の上端部に位置することにより、前蓋15と後蓋16とを前下がりに傾斜させた状態で平板状に配置するように構成されている。
また、この蓋ガイド部14は、図2および図3に示すように、鍵盤蓋13が開いて鍵盤部10を上側に開放した際に、前蓋15と後蓋16とが蝶番17で折れ曲がり、前蓋15のガイド軸15aが鍵盤部10の後部上方に位置するガイドレール部18の箇所に位置し、後蓋16のガイド軸16aがガイドレール部18の後端部に位置し、この後蓋16の後端部に位置する連結軸22がガイド溝部23の下端部に位置し、かつピニオンギア16cがガイド歯車部24の下端部に位置することにより、鍵盤蓋13が鍵盤部10の後部を覆い隠すように、後蓋16を前蓋15に対し折り曲げて鍵盤部10の後部に接近させた状態で、垂下させ、かつ後述の第2放音孔28を閉塞しない位置に配置するように構成されている。
ところで、楽器ケース1内には、図1〜図3に示すように、スピーカ26が鍵盤部10の後方に位置した状態で下向きに配置されている。すなわち、このスピーカ26は、鍵盤蓋13の後蓋16が前蓋15に対し折り曲げられて鍵盤部10の後部に接近した状態で垂下された際に、この後蓋16の後方に位置する箇所における鍵12の配列方向の両側に配置されている。この場合、楽器ケース1の底板2には、スピーカ26の音を楽器ケース1の下側に向けて放音する第1放音孔27が設けられている。
また、楽器ケース1の天板6における後天板8には、図1〜図3に示すように、スピーカ26の音を楽器ケース1の上側に向けて放音する第2放音孔28が設けられている。この場合、前天板7は、鍵盤部10の後部の上方に位置して後天板8よりも高い位置に配置され、鍵盤蓋13が鍵盤部10を上側に開放した際に、前蓋15の上面が接近するように構成されている。また、後天板8は、スピーカ26の上方に位置した状態で、その上面が前天板7の下面よりも少し低い高さで一対の側板5と後板4との各上部に亘って設けられている。
これにより、第2放音孔28は、図1〜図3に示すように、スピーカ26の上方に位置する後天板8に設けられている。この後天板8の上面には、第2放音孔28を塞ぐための放音蓋30が開閉可能に設けられている。この放音蓋30は、その厚みが前天板7とほぼ同じ厚みで形成され、開放選択部31によって後天板8上に開閉可能に取り付けられている。
この開放選択部31は、図1〜図3に示すように、放音蓋30を開く際に楽器ケース1の前後方向のいずれか一方側に向けて選択的に放音蓋30を開くように構成されている。すなわち、この開放選択部31は、放音蓋30の前部を楽器ケース1の後天板8に対して着脱可能に取り付け、かつ放音蓋30の前部を回転可能に保持する前側保持部32と、放音蓋30の後部を楽器ケース1の後天板8に対して着脱可能に取り付け、かつ放音蓋30の後部を回転可能に保持する後側保持部33とを備えている。
前側保持部32は、図1〜図4に示すように、楽器ケースの後天板8における第2放音孔28の前部に設けられた前側装着部34と、放音蓋30の前部に設けられて前側装着部34に着脱可能に取り付けられる前側嵌合部35とを備えている。後側保持部33は、後天板8における第2放音孔28の後部に設けられた後側装着部36と、放音蓋30の後部に設けられて後側装着部36に着脱可能に取り付けられる後側嵌合部37とを備えている。
この場合、前側装着部34と後側装着部36とは、図4に示すように、それぞれゴムなどの弾力を有する合成樹脂からなり、その各上面に開放されたほぼ球形状の凹部34a、36aがそれぞれ形成されている。また、前側嵌合部35と後側嵌合部37とは、放音蓋30の下面にそれぞれ取り付けられた各取付脚部35a、37aと、これら各取付脚部35a、37aの下端部にそれぞれ取り付けられた球形状の各突起部35b、37bとを有している。
すなわち、前側装着部34は、図2および図3に示すように、その凹部34aに前側嵌合部35の突起部35bが上方から圧入されて嵌合し、この状態で前側嵌合部35を回転可能に保持するように構成されている。この場合、前側装着部34は、前側嵌合部35の突起部35bが凹部34aに嵌合した状態で前側嵌合部35が回転した際に、放音蓋30を後部上りに任意の角度で傾斜させた状態で保持するように構成されている。また、この前側装着部34は、その凹部34aに対する前側嵌合部35の突起部35bの圧入による嵌合力に抗して前側嵌合部35が引き上げられると、凹部34aから前側嵌合部35の突起部35bが抜け出すように構成されている。
同様に、後側装着部36は、図2および図3に示すように、その凹部36aに後側嵌合部37の突起部37bが上方から圧入されて嵌合し、この状態で後側嵌合部37を回転可能に保持するように構成されている。この場合にも、後側装着部36は、後側嵌合部37の突起部37bが凹部36aに嵌合した状態で後側嵌合部37が回転した際に、放音蓋30を前部上りに任意の角度で傾斜させた状態で保持するように構成されている。また、この後側装着部36は、その凹部36aに対する後側嵌合部37の突起部37bの圧入による嵌合力に抗して後側嵌合部37が引き上げられると、凹部36aから後側嵌合部37の突起部35bが抜け出すように構成されている。
次に、この電子鍵盤楽器の作用について説明する。
この電子鍵盤楽器で演奏をする場合には、まず、鍵盤蓋13を開いて鍵盤部10を上側に開放させる。このときには、前蓋15の前端部を持ち上げて後方に向けて移動させると、前蓋15のガイド軸15aと後蓋16のガイド軸16aがガイドレール部18に沿って移動し、後蓋16の連結軸22がガイド溝部23に沿って移動すると共に、ピニオンギア16cがガイド歯車部24に噛み合って移動しながら、前蓋15と後蓋16とが蝶番17で徐々に折れ曲がって楽器ケース1内の後側に向けて移動する。
そして、前蓋15のガイド軸15aが鍵盤部10の後部上方に位置するガイドレール部18の箇所に位置し、後蓋16のガイド軸16aがガイドレール部18の後端部に位置し、この後蓋16の後端部に位置する連結軸22がガイド溝部23の下端部に位置し、かつピニオンギア16cがガイド歯車部24の下端部に位置すると、後蓋16が前蓋15に対し折れ曲がって鍵盤部10の後部に接近した状態で楽器ケース1内に垂下される。
これにより、鍵盤蓋13が、図2および図3に示すように、鍵盤部10の後部を覆い隠す。このときには、後蓋16が鍵盤部10の後部とスピーカ26との間に配置されて、その両方の間を仕切る。この状態では、鍵盤部10が上方に開放されて複数の鍵12が上側に露呈するので、演奏が可能な状態になる。この状態で、演奏する前には、まず、天板6の放音蓋30を開いて第2放音孔28を開放する。
このとき、演奏者がスピーカ26から放音される演奏音を聞く場合には、図2に示すように、放音蓋30を開放選択部31によって前上りに傾斜させて開放させる。この場合には、放音蓋30の前端部を持ち上げて、前側嵌合部35の突起部35bを前側装着部34の凹部34aから引き上げる。このときには、前側装着部34の凹部34aに対する前側嵌合部35の圧入による嵌合力に抗して、前側嵌合部35を引き上げると、前側嵌合部35の突起部35bが前側装着部34の凹部34aから抜け出す。
また、このときには、図2に示すように、後側嵌合部37の突起部37bが後側装着部36の凹部36aに圧入されて嵌合し、この状態で後側嵌合部37が回転可能に保持されているので、後側嵌合部37の突起部37bが後側装着部36の凹部36aに嵌合した状態で回転すると共に、後側装着部36の凹部36aに対する後側嵌合部37の突起部37bの圧入による嵌合力によって、放音蓋30が前部上りに任意の角度で傾斜した状態で保持される。
これにより、放音蓋30が開放選択部31によって前上りに傾斜して開き、後天板8の第2放音孔28が開放されるので、演奏者が鍵盤部10を押鍵操作してスピーカ26から楽音を発生させると、そのスピーカ26からの音が第1放音孔27から下側に放音されると共に、第2放音孔28から楽器ケース1の上方に放音され、この上方に放音された音が放音蓋30によって楽器ケース1の前側に向けて放音される。このため、演奏者がスピーカ26から放音された演奏音を良好に聞くことができ、この放音された演奏音を聞きながら演奏することができる。
一方、演奏者がコンサートで演奏する際に、スピーカ26から放音された楽音を聴衆者に聞かせる場合には、図3に示すように、放音蓋30を開放選択部31によって後上りに傾斜させて開放させる。この場合には、放音蓋30の後端部を持ち上げて、後側嵌合部37の突起部37bを後側装着部36の凹部36aから引き上げる。このときには、後側装着部36の凹部36aに対する後側嵌合部37の突起部37bの圧入による嵌合力に抗して、後側嵌合部37を引き上げると、後側嵌合部37の突起部37bが後側装着部36の凹部36aから抜け出す。
また、このときには、図3に示すように、前側嵌合部35の突起部35bが前側装着部34の凹部34aに圧入されて嵌合し、この状態で前側嵌合部35が回転可能に保持されているので、前側嵌合部35の突起部35bが前側装着部34の凹部34aに嵌合した状態で回転すると共に、前側装着部34の凹部34aに対する前側嵌合部35の突起部35bの圧入による嵌合力によって、放音蓋30が後部上りに任意の角度で傾斜した状態で保持される。
これにより、放音蓋30が開放選択部31によって後上りに傾斜して開き、後天板8の第2放音孔28が開放されるので、演奏者が鍵盤部10を押鍵操作してスピーカ26から楽音を発生させると、そのスピーカ26からの音が第1放音孔27から下側に放音されると共に、第2放音孔28から楽器ケース1の上方に放音され、この上方に放音された音が放音蓋30によって楽器ケース1の後側に向けて放音される。このため、聴衆者がスピーカ26から放音された演奏音を良好に聞くことができる。
このように、この電子鍵盤楽器によれば、前部側が上方に開放された楽器ケース1と、この楽器ケース1内に配置されて楽器ケース1の前部上側に露呈された鍵盤部10と、楽器ケース1内における鍵盤部10の後方に配置されたスピーカ26と、楽器ケース1の上部である後天板8に設けられ、スピーカ26で発生した音を放音するための第2放音孔28と、この第2放音孔28を開閉可能に塞ぐ放音蓋30と、この放音蓋30を楽器ケース1の後天板8上に保持した状態で楽器ケース1の前後方向における少なくとも一方側に向けて選択的に開放する開放選択部31と、を備えていることにより、スピーカ26の音を効率良く、かつ良好に放音させることができる。
すなわち、この電子鍵盤楽器では、楽器ケース1の後天板8に設けられた第2放音孔28を通して楽器ケース1内に設けられたスピーカ26の音を楽器ケース1の外部に良好に放音することができると共に、第2放音孔28を塞ぐ放音蓋30を開放選択部31によって楽器ケース1の前後方向における少なくとも一方側に向けて開放することができるので、スピーカ26の音を楽器ケース1の前側と後側との少なくともいずれかの方向に選択して放音することができ、これによりスピーカ26の音を効率良く、かつ良好に放音させることができる。
この場合、開放選択部31は、放音蓋30の前部を楽器ケース1の上部である後天板8に対して着脱可能に取り付け、かつ放音蓋30の前部を回転可能に保持する前側保持部32と、放音蓋30の後部を楽器ケース1の後天板8に対して着脱可能に取り付け、かつ放音蓋30の後部を回転可能に保持する後側保持部33とを備えていることにより、後天板8に対する放音蓋30の前部の取り付けを前側保持部32で解除して、後側保持部33で放音蓋30の後部を保持することができ、これにより放音蓋30を前上がりに開くことができ、また後天板8に対する放音蓋30の後部の取り付けを後側保持部33で解除して、前側保持部32で放音蓋30の前部を保持することができ、これにより放音蓋30を後上がりに開くことができる。
すなわち、前側保持部32は、楽器ケース1の後天板8における第2放音孔28の前部に設けられた前側装着部34と、放音蓋30の前部に設けられて前側装着部34に着脱可能に取り付けられ、かつ前側装着部34に対して回転して放音蓋30を任意の傾斜角度で保持する前側嵌合部35とを備えており、後側保持部33は、楽器ケース1の後天板8における第2放音孔28の後部に設けられた後側装着部36と、放音蓋30の後部に設けられて後側装着部36に着脱可能に取り付けられ、かつ後側装着部36に対して回転して放音蓋30を任意の傾斜角度で保持する後側嵌合部37とを備えていることにより、放音蓋30を簡単に楽器ケース1の前後方向のいずれかに向けて開くことができる。
従って、この開放選択部31では、放音蓋30の前端部を持ち上げて、前側装着部34の凹部34aに対する前側嵌合部35の突起部35bの圧入による嵌合力に抗して、前側嵌合部35を引き上げることにより、前側嵌合部35の突起部35bを前側装着部34の凹部34aから抜き出することができ、この状態で後側装着部36の凹部36aに圧入されて嵌合した後側嵌合部37の突起部37bを回転させることにより、後側装着部36の凹部36aに対する後側嵌合部37の突起部37bの圧入による嵌合力によって、放音蓋30を前部上りに任意の角度で傾斜させた状態で保持することができる。
これにより、放音蓋30を開放選択部31によって前上りに傾斜させて開くことができ、後天板8の第2放音孔28を開放することができるので、演奏者が鍵盤部10を押鍵操作してスピーカ26から楽音を発生させると、そのスピーカ26から放音された音を放音蓋30によって楽器ケース1の前側に向けて放音させることができる。このため、演奏者がスピーカ26から放音された演奏音を良好に聞くことができ、この放音された演奏音を聞きながら演奏することができる。
また、この開放選択部31では、放音蓋30の後端部を持ち上げて、後側装着部36の凹部36aに対する後側嵌合部37の突起部37bの圧入による嵌合力に抗して、後側嵌合部37を引き上げることにより、後側嵌合部37の突起部37bを後側装着部36の凹部36aから抜く出することができ、この状態で前側装着部34の凹部34aに圧入されて嵌合した前側嵌合部35の突起部35bを回転させることにより、前側装着部34の凹部34aに対する前側嵌合部35の突起部35bの圧入による嵌合力によって、放音蓋30を後部上りに任意の角度で傾斜させた状態で保持することができる。
これにより、放音蓋30を開放選択部31によって後上りに傾斜させて開くことができ、後天板8の第2放音孔28を開放することができるので、演奏者が鍵盤部10を押鍵操作してスピーカ26から楽音を発生させると、そのスピーカ26からの音が第2放音孔28から楽器ケース1の上方に放音された際に、その放音された音を放音蓋30によって楽器ケース1の後側に向けて放音させることができる。このため、聴衆者がスピーカ26から放音された演奏音を良好に聞くことができる。
また、この電子鍵盤楽器では、前蓋15と後蓋16とが蝶番17によって折り曲げ可能に連結されて鍵盤部10を開閉可能に覆う鍵盤蓋13と、鍵盤部10を上側に開放した際に、鍵盤蓋13を折り曲げた状態で、鍵盤部10の後部とスピーカ26との間で、かつ第2放音孔28を閉塞しない位置に配置させる蓋ガイド部14と、を備えているので、鍵盤蓋13が鍵盤部10を開放させて上側に露呈させた状態で、この鍵盤部10を押鍵操作してスピーカ26から楽音を発生させた際に、その楽音を楽器ケース1に設けられた第2放音孔28から確実に、かつ良好に楽器ケース1の外部に放音させることができるので、スピーカ26の音を効率良く、かつ良好に放音させることができる。
この場合、蓋ガイド部14は、鍵盤部10の上側を鍵盤蓋13で覆った際に前蓋15と後蓋16とをほぼ平板状に配置し、かつ鍵盤部10を鍵盤蓋13が上側に開放した際に、前蓋15と後蓋16とを折り曲げて鍵盤蓋13を、鍵盤部10の後部に接近させた状態で、鍵盤部10の後部とスピーカ26との間に配置させる構成であるから、鍵盤蓋13を開いて楽器ケース1内に収納した際に、前蓋15と後蓋16とによって鍵盤部10の後部を覆うことができると共に、後蓋16によって鍵盤部10の後部とスピーカ26との間を仕切ることができ、これにより鍵盤部10の後方に位置する楽器ケース1内に音響空間を形成することができる。
(第2実施形態)
次に、図5〜図7を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した第2実施形態について説明する。なお、図1〜図4に示された第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
この電子鍵盤楽器は、図5〜図7に示すように、開放選択部31の前側装着部34を支持する前側支持部材40と、後側装着部36を支持する後側支持部材41とを備えた構成であり、これ以外は第1実施形態とほぼ同じ構成になっている。
この場合、前側支持部材40と後側支持部材41とは、図6および図7に示すように、それぞれ上下方向に伸縮するロッドアンテナとほぼ同じ構成になっている。すなわち、前側支持部材40と後側支持部材41とは、それぞれ大径のパイプ43内に小径のパイプ44をスライド可能に挿入し、この小径のパイプ44内に軸部45をスライド可能に挿入し、この軸部45の上端部で前側装着部34と後側装着部36との一方をそれぞれ支持するように構成されている。
また、前側支持部材40と後側支持部材41とは、図6に示すように、大径のパイプ43と小径のパイプ44との間、および小径のパイプ44と軸部45との間に、その両方に摩擦抵抗を付与する筒部材46がそれぞれ設けられた構成になっている。この筒部材46は、それぞれ弾性を有する合成樹脂によって形成されている。
これにより、前側支持部材40と後側支持部材41とは、図6に示すように、大径のパイプ43に対して小径のパイプ44をスライドさせた際に、筒部材46の摩擦抵抗によって小径のパイプ44を大径のパイプ43に対する任意の位置に保持すると共に、小径のパイプ44に対して軸部45をスライドさせた際にも、筒部材46の摩擦抵抗によって軸部45を小径のパイプ44に対する任意の位置に保持するように構成されている。
この場合、大径のパイプ43の上端部には、図6に示すように、小径のパイプ44の外周面に向けて突出した抜止め部43aが設けられており、小径のパイプ44の下端部には、大径のパイプ43の内周面に向けて突出した鍔部44aが設けられている。これにより、小径のパイプ44は、その鍔部44aが大径のパイプ43の抜止め部43aに当接することにより、大径のパイプ43から上方に抜け出さないように構成されている。
また、小径のパイプ44の上端部には、図6に示すように、軸部45の外周面に向けて突出した抜止め部44bが設けられており、軸部45の下端部には、小径のパイプ44の内周面に向けて突出した鍔部45aが設けられている。これにより、軸部45は、その鍔部45aが小径のパイプ44の抜止め部44bに当接することにより、小径のパイプ44から上方に抜け出さないように構成されている。
ところで、前側支持部材40は、図5および図6に示すように、楽器ケースの後天板8における第2放音孔28の前部(図5では左側部)に位置する箇所に上下方向に伸縮自在に埋設され、この状態で軸部45の上端部に前側装着部34の取付部34bがビス47によって取り付けられるように構成されている。この場合、後天板8における第2放音孔28の前部に位置する箇所には、前側支持部材40が挿入する貫通孔8aが設けられている。また、この後天板8の下面には、前側支持部材40が挿入して取り付けられる取付筒部48が貫通孔8aに対応してビス48aによって取り付けられている。
これにより、前側支持部材40は、図5および図6に示すように、大径のパイプ43が取付筒部48内に取り付けられ、この大径のパイプ43内に小径のパイプ44が収納され、この小径のパイプ44内に軸部45が収納され、この軸部45の上端部が後天板8の貫通孔8a内に配置され、この軸部45の上端部に取り付けられた前側装着部34が後天板8の上側に突出した状態で支持されるように構成されている。また、この前側支持部材40は、小径のパイプ44および軸部45が後天板8の貫通孔8aを通して後天板8の上方に伸縮自在に伸びるように構成されている。
同様に、後側支持部材41は、図5に示すように、楽器ケースの後天板8における第2放音孔28の後部(図5では右側部)に位置する箇所に上下方向に伸縮自在に埋設され、この状態で軸部45の上端部に後側装着部36の取付部36bがビス47によって取り付けられるように構成されている。この場合にも、後天板8における第2放音孔28の後部に位置する箇所には、後側支持部材41が挿入する貫通孔8aが設けられている。また、この後天板8の下面には、後側支持部材41が挿入して取り付けられる取付筒部48が貫通孔8aに対応してビス48aによって取り付けられている。
これにより、後側支持部材41は、図5および図6に示すように、大径のパイプ43が取付筒部48内に取り付けられ、この大径のパイプ43内に小径のパイプ44が収納され、この小径のパイプ44内に軸部45が収納され、この軸部45の上端部が後天板8の貫通孔8a内に配置され、この軸部45の上端部に取り付けられた後側装着部36が後天板8の上側に突出した状態で支持されるように構成されている。また、この後側支持部材41も、小径のパイプ44および軸部45が後天板8の貫通孔8aを通して後天板8の上方に伸縮自在に伸びるように構成されている。
次に、この電子鍵盤楽器の作用について説明する。
まず、鍵盤蓋13を開いて鍵盤部10を上側に開放させ、この状態で演奏する前に放音蓋30を開いて第2放音孔28を開放する場合について説明する。このときに、演奏者がコンサートで演奏する際に、スピーカ26から放音される楽音を聴衆者に聞かせる際には、図5に示すように、放音蓋30を開放選択部31によって後上りに傾斜させて開放させる。
この場合には、放音蓋30の後端部を持ち上げて、後側嵌合部37の突起部37bを後側装着部36の凹部36aに嵌合させた状態で、後側支持部材41を後天板8の上方に伸縮自在に引き伸ばす。このときには、図6に示すように、取付筒部48内に取り付けられた大径のパイプ43内から小径のパイプ44が引き出されると共に、この小径のパイプ44内から軸部45が引き出される。
すると、図5に示すように、軸部45が後天板8の貫通孔8bを通して後天板8の上方に突出し、この突出した軸部45の上端部に取り付けられた後側装着部36が後天板8の上方に押し上げられ、この状態で後側装着部36が後側支持部材41によって後天板8の上方に支持される。これにより、放音蓋30の後部が後天板8の上方に押し上げられて支持される。この状態では、後側支持部材41の小径のパイプ44および軸部45が筒部材46の摩擦力によって任意の位置に保持されているので、後側支持部材41が放音蓋30をその重量に抗して支持する。
また、このときには、図5に示すように、前側支持部材40が収縮して後天板8の貫通孔8a内および取付筒部48内に収納された状態で、前側装着部34を貫通孔8aの上部に支持している。この状態で、前側装着部34の凹部34aに嵌合した前側嵌合部35の突起部35bが、後側支持部材41の引き出し動作に応じて回転する。これにより、後側支持部材41で押し上げられた後側装着部36によって放音蓋30が後部上りに任意の角度で傾斜した状態で保持される。
これにより、第1実施形態と同様、放音蓋30が開放選択部31によって後上りに傾斜して開き、後天板8の第2放音孔28が開放されるので、演奏者が鍵盤部10を押鍵操作してスピーカ26から楽音を発生させると、そのスピーカ26からの音が第2放音孔28から楽器ケース1の上方に放音され、この放音された音が放音蓋30によって楽器ケース1の後側に向けて放音される。このため、聴衆者がスピーカ26から放音された演奏音を良好に聞くことができる。
一方、演奏者がスピーカ26から放音された演奏音を聞く場合には、放音蓋30を開放選択部31によって前上りに傾斜させて開放させる。この場合には、放音蓋30の前端部を持ち上げて、前側嵌合部35の突起部35bを前側装着部34の凹部34aに嵌合させた状態で、前側支持部材40を後天板8の上方に伸縮自在に引き伸ばす。このときにも、図6に示すように、取付筒部48内に取り付けられた大径のパイプ43内から小径のパイプ44が引き出されると共に、この小径のパイプ44内から軸部45が引き出される。
すると、軸部45が後天板8の貫通孔8aを通して後天板8の上方に突出し、この突出した軸部45の上端部に取り付けられた前側装着部34が後天板8の上方に押し上げられ、この状態で前側装着部34が前側支持部材40によって後天板8の上方に支持される。これにより、放音蓋30の前部が後天板8の上方に押し上げられて支持される。この状態では、前側支持部材40の小径のパイプ44および軸部45が筒部材46の摩擦力によって任意の位置に保持されているので、前側支持部材40が放音蓋30をその重量に抗して支持する。
また、このときには、後側支持部材41が収縮して後天板8の貫通孔8b内および取付筒部48内に収納された状態で、後側装着部36を貫通孔8bの上部に支持している。この状態で、後側装着部36の凹部36aに嵌合した後側嵌合部37の突起部37bが、前側支持部材40の引き出し動作に応じて回転する。これにより、前側支持部材40で押し上げられた前側装着部34によって放音蓋30が前部上りに任意の角度で傾斜した状態で保持される。
これにより、第1実施形態と同様、放音蓋30が開放選択部31によって前上りに傾斜して開き、後天板8の第2放音孔28が開放されるので、演奏者が鍵盤部10を押鍵操作してスピーカ26から楽音を発生させると、そのスピーカ26からの音が第2放音孔28から楽器ケース1の上方に放音され、この放音された音が放音蓋30によって楽器ケース1の前側に向けて放音される。このため、演奏者がスピーカ26から放音された演奏音を良好に聞くことができ、この放音された演奏音を聞きながら演奏することができる。
このように、この第2実施形態の電子鍵盤楽器においても、第1実施形態と同様の作用効果があるほか、前側装着部34が楽器ケース1の後天板8における第2放音孔28の前部に位置する箇所に上下方向に伸縮自在に設けられた前側支持部材40に取り付けられており、後側装着部36が楽器ケース1の後天板8における第2放音孔28の後部に位置する箇所に上下方向に伸縮自在に設けられた後側支持部材41に取り付けられているので、放音蓋30を前後方向のいずれかの方向に傾けて開いた際に、第1実施形態よりも、安定した状態で確実に放音蓋30を支持することができる。
すなわち、前側支持部材40と後側支持部材41とは、それぞれ大径のパイプ43内に小径のパイプ44をスライド可能に挿入し、この小径のパイプ44内に軸部45をスライド可能に挿入し、この軸部45の上端部で前側装着部34と後側装着部36との一方をそれぞれ支持し、かつ大径のパイプ43と小径のパイプ44との間、および小径のパイプ44と軸部45との間に、その両方に摩擦抵抗を付与する筒部材46をそれぞれ設けた構成であるから、筒部材46の摩擦抵抗によって小径のパイプ44および軸部45を任意の引き出し位置に保持することができ、これにより放音蓋30を安定した状態で確実に支持することができる。
(第3実施形態)
次に、図8を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した第3実施形態について説明する。この場合にも、図1〜図4に示された第1実施形態と同一部分に同一符号を付して説明する。
この電子鍵盤楽器は、図8に示すように、放音蓋30を前側放音蓋部50と後側放音蓋部51とに分割し、この前側放音蓋部50と後側放音蓋部51とを連結部52によって回転可能に連結した構成であり、これ以外は第1実施形態とほぼ同じ構成になっている。
この場合、連結部52は、図8に示すように、前側放音蓋部50の後端面(図8では右端面)における両側(図8では紙面の表裏方向の両側)に設けられた連結嵌合部53と、後側放音蓋部51の前端面(図8では左端面)における両側(図8では紙面の表裏方向の両側)に設けられて連結嵌合部53が回転可能に装着する連結装着部54とを備えている。
この連結装着部54は、図8に示すように、左面に開放されたほぼ球形状の凹部54aが形成された構成になっている。また、連結嵌合部53は、前側放音蓋部50の後端面に取り付けられた取付脚部53aと、この取付脚部53aの先端部に取り付けられた球形状の突起部53bとを有している。
すなわち、連結装着部54は、図8に示すように、その凹部54aに連結嵌合部53の突起部53bが側方から圧入されて嵌合し、この状態で連結嵌合部53の突起部53bを回転可能に保持するように構成されている。この場合、連結装着部54は、連結嵌合部53の突起部53bが凹部54aに嵌合した状態で連結嵌合部53が回転した際に、前側放音蓋部50と後側放音蓋部51とのいずれか一方を任意の角度に折り曲げた状態で保持するように構成されている。
次に、この電子鍵盤楽器の作用について説明する。
まず、鍵盤蓋13を開いて鍵盤部10を上側に開放させ、この状態で演奏する前に放音蓋30を開いて第2放音孔28を開放する場合について説明する。このときに、演奏者がスピーカ26から放音される演奏音を聞く際には、図8に示すように、放音蓋30を開放選択部31によって前上りに傾斜させて開放させる。
この場合には、第1実施形態と同様、放音蓋30の前端部を持ち上げて、前側装着部34の凹部34aに対する前側嵌合部35の突起部35bの圧入による嵌合力に抗して、前側嵌合部35を引き上げることにより、前側嵌合部35の突起部35bを前側装着部34の凹部34aから抜き出す。また、このときには、後側嵌合部37の突起部37bが後側装着部36の凹部36aに圧入されて嵌合し、この状態で後側嵌合部37が回転可能に保持されているので、後側嵌合部37の突起部37bが後側装着部36の凹部36aに嵌合した状態で回転する。
このため、第1実施形態と同様、後側装着部36の凹部36aに対する後側嵌合部37の突起部37bの圧入による嵌合力によって、放音蓋30が前部上りに任意の角度で傾斜した状態で保持される。この状態で、図8に示すように、前側放音蓋部50を連結部52で回転させて任意の角度に折り曲げる。すなわち、前側放音蓋部50の連結嵌合部53の突起部53bが後側放音蓋部51の連結装着部54の凹部54aに圧入されて嵌合し、この状態で連結嵌合部53が回転可能に保持されているので、連結嵌合部53の突起部53bが連結装着部54の凹部54aに嵌合した状態で回転する。
このときには、図8に示すように、前側放音蓋部50が後側放音蓋部51に対して任意の角度に折り曲げられ、この折り曲げられた状態で、連結装着部54の凹部54aに対する連結嵌合部53の突起部53bの圧入による嵌合力によって、前側放音蓋部50が保持される。これにより、放音蓋30が前側に向けて開き、後天板8の第2放音孔28が開放される。
このため、演奏者が鍵盤部10を押鍵操作してスピーカ26から楽音を発生させると、そのスピーカ26からの音が第2放音孔28から楽器ケース1の上方に放音され、この放音された音が放音蓋30によって楽器ケース1の前側に向けて放音される。このときに、連結部52を中心に前側放音蓋部50を前下がりに回転させて後天板8とほぼ平行な状態にすると、スピーカ26からの音を演奏者に向けて集音するような指向性をもって放音させることができる。
また、このときに、連結部52を中心に前側放音蓋部50を前上がりに回転させて後天板8に対して前上がりに傾斜させた状態にすると、スピーカ26からの音を演奏者に向けて拡散するような指向性をもって放音させることができる。これにより、演奏者がスピーカ26から放音された演奏音を良好に聞くことができ、この放音された演奏音を聞きながら演奏することができる。
一方、演奏者がコンサートで演奏する際に、スピーカ26から放音される楽音を聴衆者に聞かせる際には、第1実施形態と同様、放音蓋30の後端部を持ち上げて、後側装着部36の凹部36aに対する後側嵌合部37の突起部37bの圧入による嵌合力に抗して、後側嵌合部37を引き上げることにより、後側嵌合部37の突起部37bを後側装着部36の凹部36aから抜き出す。また、このときには、前側嵌合部35の突起部35bが前側装着部34の凹部34aに圧入されて嵌合し、この状態で前側嵌合部35が回転可能に保持されているので、前側嵌合部35の突起部35bが前側装着部34の凹部34aに嵌合した状態で回転する。
このため、第1実施形態と同様、前側装着部34の凹部34aに対する前嵌合部35の突起部35bの圧入による嵌合力によって、放音蓋30が後部上りに任意の角度で傾斜した状態で保持される。この状態で、放音蓋30の後側放音蓋部51を連結部52で回転させて任意の角度に折り曲げる。すなわち、前側放音蓋部50の連結嵌合部53の突起部53bが後側放音蓋部51の連結装着部54の凹部54aに圧入されて嵌合し、この状態で連結嵌合部53が回転可能に保持されているので、連結嵌合部53の突起部53bが連結装着部54の凹部54aに嵌合した状態で回転する。
このときには、放音蓋30の後側放音蓋部51が前側放音蓋部50に対して任意の角度に折り曲げられ、この折り曲げられた状態で、連結装着部54の凹部54aに対する連結嵌合部53の突起部53bの圧入による嵌合力によって、後側放音蓋部51が保持される。これにより、放音蓋30が後側に向けて開き、後天板8の第2放音孔28が開放される。このため、演奏者が鍵盤部10を押鍵操作してスピーカ26から楽音を発生させると、そのスピーカ26からの音が第2放音孔28から楽器ケース1の上方に放音され、この放音された音が放音蓋30によって楽器ケース1の後側に向けて放音される。
このときに、連結部52を中心に後側放音蓋部51を後下がりに回転させて後天板8とほぼ平行な状態にすると、スピーカ26からの音を聴衆側に向けて集音するような指向性をもって放音させることができる。また、このときに、連結部52を中心に後側放音蓋部51を後上がりに回転させて後天板8に対して後上がりに傾斜させた状態にすると、スピーカ26からの音を聴衆側に向けて拡散するような指向性をもって放音させることができる。このため、聴衆者がスピーカ26から放音された演奏音を良好に聞くことができる。
このように、この第3実施形態の電子鍵盤楽器によれば、第1実施形態と同様の効果があるほか、放音蓋30を前側放音蓋部50と後側放音蓋部51とに分割し、前側放音蓋部50と後側放音蓋部51とを連結部52によって回転可能に連結し、かつこの連結部52によって前側放音蓋部50と後側放音蓋部51とを互いに任意の角度で傾斜させて保持するように構成したので、スピーカ26からの音を楽器ケース1の前後方向のいずれかの方向に向けて集音または拡散するような指向性をもたせて良好に放音させることができる。
すなわち、連結部52は、前側放音蓋部50の後端面における両側に設けられた連結嵌合部53と、後側放音蓋部51の前端面における両側に設けられて連結嵌合部53が回転可能に装着する連結装着部54とを備え、連結装着部54に連結嵌合部53が嵌合した状態で回転し、放音蓋30の前側放音蓋部50と後側放音蓋部51とを任意の角度に折り曲げた状態で保持するように構成されていることにより、スピーカ26からの音を楽器ケース1の前後方向のいずれかの方向に向けて集音または拡散するような指向性をもたせて良好に放音させることができる。
(第4実施形態)
次に、図9を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した第4実施形態について説明する。この場合には、図8に示された第3実施形態と同一部分に同一符号を付して説明する。
この電子鍵盤楽器は、図9に示すように、連結部52によって連結された箇所における前側放音蓋部50を楽器ケース1の後天板8に着脱可能に取り付け、かつ前側放音蓋部50を回転可能に保持する中間保持部60を備えた構成であり、これ以外は第3実施形態とほぼ同じ構成になっている。
すなわち、この中間保持部60は、図9に示すように、楽器ケース1の後天板8における第2放音孔28の前後方向の中間部に対応する箇所に設けられた中間装着部61と、放音蓋30の前側放音蓋部50に設けられて中間装着部61に回転可能に取り付けられた中間嵌合部62とを備えている。
この場合、中間装着部61は、図9に示すように、楽器ケース1の後天板8における第2放音孔28の左右両側(図9では紙面の表裏面方向の両側)において、第2放音孔28の前後方向の中間部に対応する箇所にそれぞれ設けられている。この中間装着部61は、それぞれゴムなどの弾力を有する合成樹脂からなり、その各上面に開放されたほぼ球形状の凹部61aが形成された構成になっている。
また、中間嵌合部62は、図9に示すように、放音蓋30の前側放音蓋部50の後部下面における両側(図9では紙面の表裏面方向の両側)に位置する箇所に取り付けられた取付脚部62aと、この取付脚部62aの下端部に取り付けられた球形状の突起部62bとを有している。これにより、中間装着部61は、その凹部61aに中間嵌合部62の突起部62bが上方から圧入されて嵌合し、この状態で中間嵌合部62を回転可能に保持するように構成されている。
この場合、中間装着部61は、図9に示すように、中間嵌合部62の突起部62bが凹部61aに嵌合した状態で中間嵌合部62が回転した際に、放音蓋30の前側放音蓋部50を前上りに任意の角度で傾斜させた状態で保持するように構成されている。また、この中間装着部61は、その凹部61aに対する中間嵌合部62の突起部62bの圧入による嵌合力に抗して中間嵌合部62が引き上げられると、凹部61aから中間嵌合部62の突起部62bが抜け出すように構成されている。
次に、この電子鍵盤楽器の作用について説明する。
まず、鍵盤蓋13を開いて鍵盤部10を上側に開放させ、この状態で演奏する前に放音蓋30を開いて第2放音孔28を開放する場合について説明する。このときに、演奏者がコンサートで演奏する際に、スピーカ26から放音された楽音を聴衆者と演奏者とに向けて放音させる場合には、図9に示すように、放音蓋30の前側放音蓋部50と後側放音蓋部51とをそれぞれ前側と後側とに向けて開放させる。
このときには、中間装着部61に中間嵌合部62を嵌合させた状態で、まず、放音蓋30の後側放音蓋部51の後端部を持ち上げて、後側装着部36の凹部36aに対する後側嵌合部37の突起部37bの圧入による嵌合力に抗して、後側嵌合部37の突起部37bを後側装着部36の凹部36aから抜き出す。このときには、連結部52の連結嵌合部53の突起部53bが連結装着部54の凹部54aに圧入されて嵌合し、この状態で連結嵌合部53が回転可能に保持されている。
このため、連結嵌合部53の突起部53bが連結装着部54の凹部54aに嵌合した状態で回転すると共に、連結装着部54の凹部54aに対する連結嵌合部53の突起部53bの圧入による嵌合力によって、放音蓋30の後側放音蓋部51が後部上りに傾斜した状態で保持される。これにより、放音蓋30の後側放音蓋部51が後上りに傾斜して開き、後天板8の第2放音孔28の後部側の半分が開放される。
この状態で、放音蓋30の前側放音蓋部50の前端部を持ち上げて、前側装着部34の凹部34aに対する前側嵌合部35の突起部35bの圧入による嵌合力に抗して、前側嵌合部35の突起部35bを前側装着部34の凹部34aから抜き出す。このときには、中間嵌合部62の突起部62bが中間装着部61の凹部61aに圧入されて嵌合し、この状態で中間嵌合部62が回転可能に保持されている。
このため、中間嵌合部62の突起部62bが中間装着部61の凹部61aに嵌合した状態で回転すると共に、中間装着部61の凹部61aに対する中間嵌合部62の突起部62bの圧入による嵌合力によって、放音蓋30の前側放音蓋部50が前部上りに傾斜した状態で保持される。これにより、放音蓋30の前側放音蓋部50が前部上りに傾斜して開き、後天板8の第2放音孔28の前部側の半分が開放される。
この状態で、演奏者が鍵盤部10を押鍵操作してスピーカ26から楽音を発生させると、そのスピーカ26からの音が第2放音孔28から楽器ケース1の上方に放音され、この放音された音が放音蓋30の前側放音蓋部50と後側放音蓋部51とによって楽器ケース1の前側と後側との両方に放音される。これにより、スピーカ26から放音された楽音を聴衆者と演奏者との両方が良好に聞くことができる。
また、スピーカ26から放音された楽音を演奏者のみに向けて放音させる場合には、放音蓋30の中間部を持ち上げて、中間装着部61の凹部61aに対する中間嵌合部62の突起部62bの圧入による嵌合力に抗して、中間嵌合部62の突起部62bを中間装着部61の凹部61aから抜き出す。この状態で、第1実施形態と同様、放音蓋30の前側放音蓋部50の前端部を持ち上げて、前側嵌合部35の突起部35bを前側装着部34の凹部34aから抜き出す。
すると、前側嵌合部35の突起部35bが前側装着部34の凹部34aに嵌合した状態で回転すると共に、前側装着部34の凹部34aに対する前側嵌合部35の突起部35bの圧入による嵌合力によって、放音蓋30が前部上りに傾斜した状態で保持される。これにより、放音蓋30が前部上りに傾斜して開き、後天板8の第2放音孔28が開放される。この場合にも、第3実施形態と同様、前側放音蓋部50を連結部52で折り曲げることにより、スピーカ26からの音を演奏者に向けて集音または拡散するような指向性をもたせて放音させることができる。
同様に、スピーカ26から放音される楽音を聴衆側のみに向けて放音させる場合には、放音蓋30の中間部を持ち上げて、中間装着部61の凹部61aに対する中間嵌合部62の突起部62bの圧入による嵌合力に抗して、中間嵌合部62の突起部62bを中間装着部61の凹部61aから抜き出す。この状態で、放音蓋30の後側放音蓋部51の後端部を持ち上げて、後側嵌合部37の突起部37bを後側装着部36の凹部36aから抜き出す。
すると、後側嵌合部37の突起部37bが後側装着部36の凹部36aに嵌合した状態で回転すると共に、後側装着部36の凹部36aに対する後側嵌合部37の突起部37bの圧入による嵌合力によって、放音蓋30が後部上りに傾斜した状態で保持される。これにより、放音蓋30が後部上りに傾斜して開き、後天板8の第2放音孔28が開放される。この場合にも、第3実施形態と同様、後側放音蓋部50を連結部52で折り曲げることにより、スピーカ26からの音を聴衆者に向けて集音または拡散するような指向性をもたせて放音させることができる。
このように、この第4実施形態の電子鍵盤楽器によれば、第1、第3の各実施形態と同様の作用効果があるほか、連結部52によって連結された箇所における前側放音蓋部50を楽器ケース1の後天板8に着脱可能に取り付け、かつ前側放音蓋部50を回転可能に保持する中間保持部60を備えているので、前側放音蓋部50と後側放音蓋部51とを楽器ケース1の前後方向に向けて開放させて、演奏者と聴衆者との両方に向けて放音させることができる。
この場合、中間保持部60は、楽器ケース1の後天板8における第2放音孔28の前後方向の中間部に対応する箇所に設けられた中間装着部61と、連結部52によって連結された箇所における前側放音蓋部50に設けられて中間装着部61に着脱可能に取り付けられ、かつ中間装着部61に対して回転して前側放音蓋部50と後側放音蓋部51とを任意の傾斜角度で保持する中間嵌合部62と、を備えているので、中間装着部61に中間嵌合部62を嵌合させた状態で、中間嵌合部62を中心に前側放音蓋部50と後側放音蓋部51とを回転させることができ、これにより前側放音蓋部50と後側放音蓋部51とを楽器ケース1の前後方向に向けて開放させて、演奏者と聴衆者との両方に向けて放音させることができる。
すなわち、この電子鍵盤楽器では、中間装着部61に中間嵌合部62を嵌合させた状態で、放音蓋30の後側放音蓋部51の後端部を持ち上げて、放音蓋30の後側放音蓋部51を後部上りに傾斜させた状態で保持することができると共に、放音蓋30の前側放音蓋部50の前端部を持ち上げて、放音蓋30の前側放音蓋部50を前部上りに傾斜させた状態で保持することができる。これにより、後側放音蓋部51によって後天板8の第2放音孔28の後部側の半分を聴衆側に向けて開放することができると共に、放音蓋30の前側放音蓋部50によって後天板8の第2放音孔28の前部側の半分を演奏者側に向けて開放することができる。
なお、上述した第4実施形態では、中間嵌合部62を連結部52の近傍に位置する前側放音蓋部50の下面に設けた場合について述べたが、これに限らず、中間嵌合部62を連結部52の近傍に位置する後側放音蓋部51の下面に設けた構成であっても良い。
また、上述した第3、第4の各実施形態では、前側装着部34と後側装着部36とを楽器ケース1の後天板8上に設けた場合について述べたが、これに限らず、例えば第2実施形態のように、前側装着部34を上下方向に伸縮する前側支持部材40に取り付けると共に、後側装着部36を上下方向に伸縮する後側支持部材41に取り付けるように構成しても良い。
また、上述した第1〜第4の各実施形態では、前側装着部34、後側装着部36、連結装着54、および中間装着部61にほぼ球状の凹部34a、36a、54a、61aを形成し、前側嵌合部35、後側嵌合部37、連結嵌合部53、および中間嵌合部62に球状の突起部35b、37b、53b、62bを設けた場合について述べたが、これに限らず、例えば凹部34a、36a、54a、61aを円弧状に形成し、突起部35b、37b、53b、62bを丸棒状に形成しても良い。
さらに、上述した第1〜第4の各実施形態では、楽器ケース1内における鍵盤部10の後方にスピーカ26を下向きに配置した場合について述べたが、これに限らず、楽器ケース1内における鍵盤部10の後方にスピーカ26を上向きに配置しても良く、またスピーカ26を前向きに配置しても良い。
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
請求項1に記載の発明は、内部に鍵盤部が配置される楽器ケースと、前記楽器ケース内における前記鍵盤部の後方に配置されたスピーカと、前記楽器ケース上に開閉可能に保持され、かつ閉状態において前記スピーカで発生した音を放音するための放音孔を塞ぐ放音蓋と、この放音蓋を前記楽器ケースの前方向および後方向のいずれかに向けて選択的に開放する開放選択部と、を備えていることを特徴とする鍵盤楽器である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器において、前記開放選択部は、前記放音蓋の前部を前記楽器ケースの上部に対して着脱可能に取り付け、かつ前記放音蓋の前部を回転可能に保持する前側保持部と、前記放音蓋の後部を前記楽器ケースの上部に対して着脱可能に取り付け、かつ前記放音蓋の後部を回転可能に保持する後側保持部とを備えていることを特徴とする鍵盤楽器である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の鍵盤楽器において、前記前側保持部は、前記楽器ケースの上部における前記放音孔の前部に設けられた前側装着部と、前記放音蓋の前部に設けられて前記前側装着部に着脱可能に取り付けられ、かつ前記前側装着部に対して回転して前記放音蓋を任意の傾斜角度で保持する前側嵌合部とを備え、
前記後側保持部は、前記楽器ケースの上部における前記放音孔の後部に設けられた後側装着部と、前記放音蓋の後部に設けられて前記後側装着部に着脱可能に取り付けられ、かつ前記前側装着部に対して回転して前記放音蓋を任意の傾斜角度で保持する後側嵌合部とを備えていることを特徴とする鍵盤楽器である。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の鍵盤楽器において、前記前側装着部は前記楽器ケースの上部における前記放音孔の前部に上下方向に伸縮自在に設けられた前側支持部材に取り付けられており、前記後側装着部は前記楽器ケースの上部における前記放音孔の後部に上下方向に伸縮自在に設けられた後側支持部材に取り付けられていることを特徴とする鍵盤楽器である。
請求項5に記載の発明は、内部に鍵盤部が配置される楽器ケースと、前記楽器ケース内における前記鍵盤部の後方に配置されたスピーカと、前記楽器ケース上に開閉可能に保持され、かつ閉状態において前記スピーカで発生した音を放音するための放音孔を塞ぐ放音蓋と、この放音蓋を前記楽器ケースの前方向および後方向に開放する開放選択部と、を備えていることを特徴とする鍵盤楽器である。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の鍵盤楽器において、前記放音蓋は、前側放音蓋部と後側放音蓋部とに分割され、前記前側放音蓋部と前記後側放音蓋部とが連結部によって回転可能に連結され、かつこの連結部によって前記前側放音蓋部と前記後側放音蓋部とが互いに任意の角度で傾斜して保持されることを特徴とする鍵盤楽器である。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の鍵盤楽器において、前記連結部によって連結された箇所における前記前側放音蓋部と前記後側放音蓋部との一方を前記楽器ケースの上部に対して着脱可能に取り付け、かつ前記前側放音蓋部と前記後側放音蓋部との前記一方を回転可能に保持する中間保持部とを備えていることを特徴とする鍵盤楽器である。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の鍵盤楽器において、前記中間保持部は、前記楽器ケースの上部における前記放音孔の前後方向の中間部に対応する箇所に設けられた中間装着部と、前記連結部によって連結された箇所における前記前側放音蓋部と前記後側放音蓋部との一方に設けられて前記中間装着部に着脱可能に取り付けられ、かつ前記前側装着部に対して回転して前記前側放音蓋部と前記後側放音蓋部とを任意の傾斜角度で保持する中間嵌合部と、を備えていることを特徴とする鍵盤楽器である。