JP2014015679A - 銅合金板材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Tiを1.0〜5.0質量%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、銅合金母相の平均結晶粒径が、5.0〜50.0μmであり、EBSD測定における結晶方位解析において、S方位{231}<346>からの方位のずれ角度が20°以内である結晶粒の面積率が、5.0〜40.0%であること特徴とする銅合金板材。
【選択図】 なし
Description
リードフレーム、コネクタなどの車載部品用や電気・電子機器用部品の金属材料には、部品の動作、外部からの振動、あるいは部品の着脱に際し、弾性限内での曲げ応力が繰り返し与えられる。この場合の疲労クラックは曲げ加工部外周表面より発生し、このクラックが成長して部材の破壊へと至る。金属素材の表面に圧縮残留応力を付与すると、クラックの発生が抑制され、疲労寿命が増大する。
特許文献1では、Cu−Ni−Sn−P系銅合金において、結晶中の{220}面、{311}面、{420}面を高めると、異方性の高い結晶方位の配向性が高くなり、交差すべりを起こし易く、転位の蓄積が緩和され、これにより局所的な加工硬化が抑制されて、疲労破壊が遅延し、疲労特性が改善することを見出している。
特許文献6では、(311)面を発達させ、I(311)/I(111)≧0.5とすることでプレス打抜き性を向上させている。
特許文献1は、Cu−Ni−Sn−P系銅合金板材の圧延面における粉末X線回折法による測定から、{220}、{311}、{420}の各面を満たす場合、異方性が高まり、これが疲労特性に寄与していると記載されているが、一般的に異方性が高い場合、コネクタ設計が困難であり、また、TD(Transverse Direction)方向の強度が750MPa以下と低い。
また、特許文献9では、X線回折測定を用いて{111}正極点上の極大値の範囲を規定しているが、組織の結晶粒径については記載されていない。
結晶方位の解析にEBSD測定を用いることにより、従来のX線回折法による板面方向(ND)に対する特定原子面の集積の測定とは大きく異なり、三次元方向のより完全に近い結晶方位情報がより高い分解能で得られるため、曲げ加工性を支配する結晶方位について全く新しい知見を獲得することができる。
(1)Tiを1.0〜5.0質量%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、銅合金母相の平均結晶粒径が、5.0〜50.0μmであり、EBSD測定における結晶方位解析において、S方位{231}<346>からの方位のずれ角度が20°以内である結晶粒の面積率が5.0〜40.0%であること特徴とする銅合金材料。
(2)Tiを1.0〜5.0質量%含有し、さらにSi、Fe、Sn、Co、Zn、Ni、Ag、Mn、B、P、Mg、Cr、Zrからなる群から選ばれる1または2以上の元素を合計で0.005〜1.0質量%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、銅合金母相の平均結晶粒径が、5.0〜50.0μmであり、EBSD測定における結晶方位解析において、S方位{231}<346>からの方位のずれ角度が20°以内である結晶粒の面積率が5.0〜40.0%であることを特徴とする銅合金板材。
(3)(1)または(2)に記載の銅合金板材を製造する方法であって、前記銅合金板材を与える組成から成る銅合金に、0.1〜100℃/秒の冷却速度での鋳造(工程1)、800〜1020℃で3分から10時間の均質化熱処理(工程2)、700〜1020℃での熱間圧延(工程3)、水冷(工程4)、加工率80〜99.8%の冷間圧延(工程6)、昇温速度1〜30℃/秒で加熱し、100〜400℃まで到達後、張力を100〜300MPaとするテンションレベラーによる矯正(工程7)、加工率2〜50%の冷間圧延(工程8)、600〜1000℃で5秒〜1時間の中間溶体化熱処理(工程9)、400〜700℃で5分〜1時間の時効析出熱処理(工程10)、圧延率3〜25%の仕上げ冷間圧延(工程11)をこの順に施すことを特徴とする銅合金板材の製造方法。
(4)前記仕上げ冷間圧延の後、200〜600℃で5秒〜10時間の調質焼鈍(工程12)を施すことを特徴とする(3)に記載の銅合金板材の製造方法。
(5)前記(1)または(2)に記載の銅合金板材からなるコネクタ。
これに対して、結晶中にS方位{231}<346>の面積率を5〜40%に高めることで、疲労寿命が向上する効果が得られる。これは、S方位{231}<346>のテイラー因子に起因するもので、圧延平行方向、垂直方向のいずれも、他の方位と比べてテイラー因子が高い傾向であるため、個々の結晶粒でのすべり変形が生じにくく、多結晶における微視的な原子の非弾性的な挙動の発生頻度が減少し、き裂の発生が抑制されるためであると考えられる。
本明細書における結晶方位の表示方法は、銅合金板材の長手方向(LD:Longitudinal Direction){板材の圧延方向(RD:Rollig Direction)に等しい}をX軸、板幅方向(TD:Transverse Diretion)をY軸、板材の厚さ方向{板材の圧延法線方向(ND:Normal Direction)に等しい}をZ軸とする直角座標系を取り、銅合金板材中の各領域において、Z軸に垂直な(圧延面(XY面)に平行な)結晶面の指数(hkl)と、X軸に垂直な(YZ面に平行な)結晶面の指数[uvw]とを用いて、(hkl)[uvw]の形で表す。また、(132)[6−43]と(231)[3−46]などのように、銅合金の立方晶の対称性のもとで等価な方位については、ファミリーを表すカッコ記号を使用し、{hkl}<uvw>と表す。
まず1点目に挙げられるのは、X線回折法で測定可能なのは、ブラッグの回折条件を満足し、かつ充分な回折強度が得られる、ND//(111)、(200)、(220)、(311)、(420)面の5種類である。例えばND//(511)面やND//(951)面などの高指数で表現される結晶方位については、測定が困難である。即ち、EBSD測定を採用することにより、初めて、それらの高指数で表現される結晶方位に関する情報が得られ、それにより特定される金属組織と作用の関係が明らかになる。なお、本発明のS方位{231}<346>は、高指数であるため、X線回折測定は困難である。
以上のとおり、EBSD測定とX線回折測定とで得られる情報はその内容及び性質が異なる。
なお、本明細書において特に断らない限り、EBSD測定は、銅合金板材のND方向に対して行ったものである。
先述した通り、S方位{231}<346>からの方位のずれ角度が20°以内である結晶粒の面積率が5〜40%の場合に、良好な曲げ加工性を示す。しかし、銅合金板材の合金中には、上記範囲のS方位の他に、Cube方位{100}<001>、Copper方位{121}<111>、Brass方位{110}<112>、Goss方位{110}<001>、R1方位{352}<358>、RDW方位{102}<010>などが発生する。本発明においては、観測される全方位の面積に対して、S方位の面積率が上記の範囲にあれば、合金中にこれらの方位成分を含んでいることは許容される。
本発明の銅合金板材の平均結晶粒粒径の算出は下記の通り行う。
まず、TSL社のOIM Analysisを用いて、EBSD測定結果128×104μm2(800×1600μmの範囲内)において、大角粒界(20°以上)を結晶粒界とし、結晶粒の特定を行った。なお、先述の通り1測定点のステップサイズは0.05μmである。
続いて、結晶粒内のピクセル数をカウントすることで、各結晶粒の面積を算出し、これを平均化することで、平均結晶粒面積を求めた。具体的には、それぞれのピクセルを図2に示すように六角形として計算している。図2に示した条件では、1ピクセルあたりの面積は2.17×10−3μm2である。従って、それぞれの結晶粒内のピクセル数を数えることで一結晶粒あたりの面積を求め、この値の平均値をとれば、測定範囲内の結晶粒の平均面積を求めることができる。
最後に、このようにして求めた平均結晶粒面積を平均結晶粒径に変換した。この換算は、1つの結晶粒を円形であると仮定している。即ち、平均結晶粒面積を有する円の直径を平均結晶粒径として算出した。
本願では、このようにして結晶粒の平均粒径を算出し、平均結晶粒と称している。
本発明において、銅(Cu)に添加するチタン(Ti)について、添加量を制御することにより、Cu−Ti化合物を析出させて銅合金の強度を向上させることができる。Tiの含有量は1.0〜5.0質量%、好ましくは2.0〜4.0質量%、より好ましくは2.5〜3.5質量%である。Tiはこの規定範囲よりも添加量が多いと導電率を低下させ、また、少ないと強度が不足する。なお、本発明に係る銅合金のように第二合金成分としてTiを含有するものを「Ti系銅合金」と呼ぶことがある。
次に本合金への副添加元素の効果について示す。好ましい副添加元素としては、Si、Fe、Sn、Co、Zn、Ni、Ag、Mn、B、P、Mg、Cr、Zrが挙げられる。これらの副添加元素の含有量は、Si、Fe、Sn、Co、Zn、Ni、Ag、Mn、B、P、Mg、Cr、Zrからなる群から選ばれた少なくとも1種の総量で1質量%以下であると導電率を低下させる弊害を生じないため好ましい。添加効果を充分に活用し、かつ導電率を低下させないためには、この総量で、0.005〜1.0質量%であることが好ましく、0.01〜0.9質量%がさらに好ましく、0.03〜0.8質量%であることが特に好ましい。以下に、各元素の添加効果の例を示す。
Mg、Sn、Znは、添加することで耐応力緩和特性を向上させる。それぞれを単独で添加した場合よりも併せて添加した場合に相乗効果によって更に耐応力緩和特性が向上する。また、半田脆化が著しく改善する効果がある。
Mn、Ag、B、Pは、添加することで熱間加工性を向上させるとともに、強度を向上させる。
Cr、Zr、Feは、化合物や単体で微細に析出し、析出硬化に寄与する。また、化合物として50〜500nmの大きさで析出し、結晶粒成長を抑制することによって結晶粒径を微細にする効果があり、曲げ加工性を良好にする。
Ni、Co、Siは、それぞれの添加量を制御することにより、Ni−Si、Co−Si、Ni−Co−Siの化合物を析出させて銅合金の強度を向上させることができる。例えば、Ni−Si系では化合物Ni2Si相が銅合金の母相(マトリックス)中に析出して引張強度および導電性の向上に寄与する。
次に、本発明の銅合金板材の好ましい製造方法について説明する。
従来の析出型銅合金の製造方法は、銅合金素材を鋳造[工程1]して鋳塊を得て、これを均質化熱処理[工程2]し、熱間圧延[工程3]、水冷[工程4]、面削[工程5]、冷間圧延[工程6]をこの順に行い薄板化し、加工温度と張力を調整したテンションレベラー[工程7]により、部分的再結晶と転位付与を行う。次に、冷間圧延[工程8]を行い、700〜1000℃の温度範囲で中間溶体化熱処理[工程9]を行って溶質原子を再固溶させた後に、時効析出熱処理[工程10]と仕上げ冷間圧延[工程11]によって必要な強度を満足させるものである。この一連の工程の中で、銅合金板材の集合組織は、中間溶体化熱処理中[工程9]に起きる再結晶によっておおよそが決定し、仕上げ圧延[工程11]中に起きる方位の回転により、最終的に決定される。
少なくともTiを好ましくは1.0〜5.0質量%、より好ましくは1.5〜4.0質量%、さらに好ましくは2.0〜3.5質量%含有し、他の前記副添加元素については適宜含有するように元素を配合し、残部がCuと不可避不純物から成る銅合金素材を用意する。この銅合金素材を高周波溶解炉により溶解し、これを好ましくは0.1〜100℃/秒、より好ましくは1.0〜80℃/秒、さらに、好ましくは5.0〜50℃/秒の冷却速度で冷却して鋳造[工程1]し、鋳塊を得る。これを好ましくは800〜1020℃で3分から10時間、より好ましくは850〜1000℃で5分〜8時間、さらに好ましくは900〜980℃で10分〜5時間の均質化熱処理[工程2]した後、好ましくは700〜1020℃、より好ましくは750〜950℃、さらに好ましくは800〜900℃で熱間加工[工程3]を行った後に水焼入れ(水冷[工程4]に相当)を行う。この後、必要により、酸化スケール除去のために面削[工程5]を行ってもよい。その後に、好ましくは加工率80〜99.8%、より好ましくは85〜99%、さらに好ましくは90〜98%の冷間圧延[工程6]する。
ここで、テンションレベラーによる矯正[工程7]の昇温速度が遅すぎると、結晶粒成長が進行し結晶粒が粗大化し曲げシワが大きくなってしまう。昇温速度が速すぎると、S方位が十分に発達せず、疲労特性、曲げ加工性が劣る。また、焼鈍到達温度が規定値より低すぎる場合、S方位が発達せず、疲労特性、曲げ加工性が劣り、規定値より高すぎる場合は、結晶粒成長が進行し結晶粒が粗大化し曲げ加工表面に発生するシワが大きくなり特性が劣る。
加工率(%)=((t1−t2)/t1)×100
材料表面のスケールのための面削、バフ研磨、酸洗浄などによる溶解を、必要に応じて行ってもよい。
各熱処理や圧延の後に、板材表面の酸化や粗度の状態に応じて酸洗浄や表面研磨を行っても、S方位{231}<346>の面積率が本発明の範囲内であれば問題はない。
上記内容を満たすことで、例えばコネクタ用銅合金板材に要求される特性を満足することができる。本発明において、銅合金板材は下記の特性を有することが好ましい。
板バネ疲労特性は、負荷応力500MPaでの繰り返し回数が106回以上であることが好ましい。更に好ましくは107以上である。この詳細な測定条件は、特に断らない限り実施例に記載の通りである。
本発明例1〜本発明例12、比較例1〜比較例12について、表1に示す組成となるように、主原料CuとTi、試験例によってはそれ以外の副添加元素を配合し、溶解・鋳造した。
すなわち、Ti等を表1に示した量含有し、残部がCuと不可避不純物から成る合金を高周波溶解炉により溶解し、これを0.1〜100℃/秒の冷却速度で鋳造[工程1]して鋳塊を得た。これを800〜1020℃で3分から10時間の均質化熱処理[工程2]後、1020〜700℃で熱間加工[工程3]を行った。その後、水焼入れ(水冷[工程4]に相当)し、酸化スケール除去のために面削[工程5]を行った。
EBSD法により、測定面積が128×104μm2(800μm×1600μm)、スキャンステップは0.05μmの条件で測定を行った。スキャンステップは微細な結晶粒を測定するため、0.05μmステップで行った。解析では、128×104μm2のEBSD測定結果から、S方位の面積率、平均結晶粒面積、結晶粒の個数を確認した。電子線は走査電子顕微鏡のWフィラメントからの熱電子を発生源とした。なお、測定時のプローブ径は、約0.015μmである。
EBSD法の測定装置には、(株)TSLソリューションズ製 OIM5.0(商品名)を用いた。
EBSD法による測定結果から、128×104μm2の測定面積中の結晶粒径の平均値を、母相の平均結晶粒径とした。
疲労特性は、JCBA T308:2001(銅および銅合金薄板条の疲労特性試験方法)に準拠し、圧延平行・垂直方向の測定を行った。図1に説明図を示した(板バネ疲労試験)。試験片1はその一端が固定部2に挟まれて固定され、他端が上下方向に振動するナイフエッジ2に挟まれて曲げられる。試験片1の幅は、10mm±0.2mm、試験片1の固定トルクは、固定部3の下部2N・m、上部3N・mである。試験片1の負荷応力値は、下記の式(a)にて求めた。
500MPaの負荷応力にて試験を行い、材料が破断するまでの繰り返し回数を求めた。破断までの繰り返し回数が、圧延平行・垂直方向のいずれも107回以上を示したものを○印で表し、圧延平行・垂直方向のいずれか、もしくはいずれも107回未満のものを×印で表した。
疲労試験機には、アカシ製作所製、薄板疲労試験機(型式AST52B)を用いた。
σ:最大曲げ応力(N/mm2)
δ:たわみ量(試験片に与える片振幅)(mm)
l:試験片セット長さ(mm)
t:試験片厚さ(mm)
E:たわみ係数(N/mm2)
板材を幅10mm、長さは35mmとなるように加工した。これに曲げの軸が圧延方向に平行になるようにW曲げしたものをGW(Good Way)、圧延方向に垂直になるようにW曲げしたものをBW(Bad Way)とし、日本伸銅協会技術標準JCBA―T307(2007)に準拠して90°W曲げ加工後、圧縮試験機にて内側半径を付けずに180°密着曲げ加工を行った。曲げ加工表面を100倍の走査型電子顕微鏡で観察し、クラックの有無を調査した。クラックの無いものを○印で表し、クラックのあるものを×印で表した。ここでのクラックのサイズは、最大幅が30〜100μm、最大深さが10μm以上である。
圧延平行方向、垂直方向から切り出したJIS Z2201−13B号の試験片をJIS Z2241に準じて3本測定し、その平均値を示した。
20℃(±0.5℃)に保たれた恒温槽中で四端子法により比抵抗を計測して導電率を算出した。なお、端子間距離は100mmとした。
表2に示すように、本発明例1〜本発明例12の製造方法で、テンションレベラーによる矯正[工程7]は、昇温速度1〜30℃/秒、到達温度は100〜400℃、張力は100〜300MPaにて熱処理および加工を加えた。比較例1〜12では、本発明の製造方法における規定を満たさない場合を示した。比較例1、2、11、12はTi成分が範囲外であり、比較例1〜比較例12のテンションレベラーによる矯正[工程7]は、比較例2、3、4、9、10、11、12は加熱温度が範囲外であり、比較例1、2、3、4、5、6は張力が範囲外であった。
下記の表3に記載された合金組成(残部は銅(Cu))の銅合金に対して、テンションレベラーによる矯正[工程7]を行わない以外は前記実施例1と同様にして銅合金板材を作製した。得られた銅合金板材の供試材について、前記実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を表3にあわせて示す。
溶製にて3.0質量%のTiを添加し、残部銅および不可避不純物の組成を有するインゴットに対して、950℃で3時間加熱する均質化焼鈍の後、900〜950℃で熱間圧延を行い、板厚10mmの熱延板を得た。熱延板の面削後、冷間圧延して素条の板厚(2.0mm)とし、素条での第1次溶体化処理を行った。第1次溶体化の条件は、850℃で10分間加熱とした。次いで、中間の冷間圧延では最終板厚が0.10mmとなるように調整して冷間圧延した後、急速加熱が可能な焼鈍炉に挿入して最終の溶体化処理を行い、その後水冷した。このときの加熱条件は、材料温度がTiの固溶限が添加量と同じになる温度(Ti濃度3.2質量%で約800℃、Ti濃度2.0質量%で約730℃、Ti濃度5.0質量%で約885℃)を基準として熱処理を行った。次いで、到達温度400℃、保持時間0.4hにて焼鈍した後、加工率25%で最終冷間圧延し、350℃、6hで時効処理を行った。結果、得られた試験片は上記本発明に係る実施例とは製造条件が異なり、組織についても、S方位が5%未満であり、疲労特性、曲げ加工性について、本発明の要求特性を満たさない結果となった。
電気銅2kgを高周波真空溶解炉にて溶解し、溶湯成分がCu−3.0%TiとなるようにTiを添加した後、板厚30mm×幅60mm×長さ120mmのインゴットを鋳造した。次に、このインゴットを900℃に加熱し、この温度に1時間保持後、所定の板厚まで熱間圧延を行い、速やかに冷却した。表面の酸化スケールを面削した後、溶体化処理前の冷間圧延を板厚0.35mmになるまで行った後、150秒間の溶体化処理を施した。次に、板厚が0.2mmになる様に最終冷間圧延を行い、次に400℃×8hで時効処理を施して各試料を作製した。結果、得られた試験片は上記本発明に係る実施例とは製造条件が異なり、組織についてもS方位が5%未満であり、本発明例の要求特性を満たさない結果となった。
2 ナイフエッジ
3 固定部
Claims (5)
- Tiを1.0〜5.0質量%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、
銅合金母相の平均結晶粒径が、5.0〜50.0μmであり、
EBSD測定における結晶方位解析において、S方位{231}<346>からの方位のずれ角度が20°以内である結晶粒の面積率が5.0〜40.0%であること特徴とする銅合金材料。 - Tiを1.0〜5.0質量%含有し、さらにSi、Fe、Sn、Co、Zn、Ni、Ag、Mn、B、P、Mg、Cr、Zrからなる群から選ばれる1または2以上の元素を合計で0.005〜1.0質量%含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる銅合金板材であって、
銅合金母相の平均結晶粒径が、5.0〜50.0μmであり、
EBSD測定における結晶方位解析において、S方位{231}<346>からの方位のずれ角度が20°以内である結晶粒の面積率が5.0〜40.0%であることを特徴とする銅合金板材。 - 請求項1または2に記載の銅合金板材を製造する方法であって、
前記銅合金板材を与える組成から成る銅合金に、0.1〜100℃/秒の冷却速度での鋳造(工程1)、800〜1020℃で3分から10時間の均質化熱処理(工程2)、700〜1020℃での熱間圧延(工程3)、水冷(工程4)、加工率80〜99.8%の冷間圧延(工程6)、昇温速度1〜30℃/秒で加熱し、100〜400℃まで到達後、張力を100〜300MPaとするテンションレベラーによる矯正(工程7)、加工率2〜50%の冷間圧延(工程8)、600〜1000℃で5秒〜1時間の中間溶体化熱処理(工程9)、400〜700℃で5分〜1時間の時効析出熱処理(工程10)、圧延率3〜25%の仕上げ冷間圧延(工程11)をこの順に施すことを特徴とする銅合金板材の製造方法。 - 前記仕上げ冷間圧延の後、200〜600℃で5秒〜10時間の調質焼鈍(工程12)を施すことを特徴とする請求項3に記載の銅合金板材の製造方法。
- 請求項1または2に記載の銅合金板材からなるコネクタ。
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